説明

変速機におけるリバースシフト装置

【課題】アイドルギヤを軸線方向に移動させる方式の変速機のリバースシフト装置において、アイドルギヤの強度を確保し、またギヤ鳴りが生じないようにする。
【解決手段】 リバースアーム55は、その被駆動孔55bに挿入したリバースフォーク51の駆動ピン51cにより揺動され、アイドルギヤ50bはこのリバースアームにより軸線方向に移動されて、後進ギヤ列50の駆動ギヤ50a及び従動ギヤ50cの間に噛合離脱される。駆動ピン51cの外径はリバースアームの被駆動孔の平坦な両内側面の間の幅よりも小として被駆動孔との間に隙間を設ける。リバースアームと変速機ケーシング10の間には、リバースアームをその揺動範囲内の所定の中間位置を境界としてそれから離れる外向きに弾性的に付勢するジャンプオーバ機構JOを設けて、駆動ピンを被駆動孔の一方の内側面に当接させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動ギヤ及び従動ギヤ並びに軸線方向に移動してこの両ギヤと噛合離脱されるアイドルギヤよりなる後進ギヤ列を備えた自動車などの変速機におけるリバースシフト装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の変速機におけるリバースシフト装置としては、本件出願人が先に出願した特許文献1において従来技術として開示したものがある。図7〜図10に示すように、この変速機の変速機ケーシング10は、第1及び第2ケーシング11,13とそれらの間に液密に介在されるシフトブラケット12よりなり、この3者11〜13は一体的にボルト止めされて、その内部は第1ケーシング11側の第1室S1と第2ケーシング13の第2室S2に分離されている。この変速機では、互いに平行に配置されたカウンタ軸16及び出力軸17が軸受を介して変速機ケーシング10内に回転自在に支持され、出力軸17の一端には、クラッチを介してエンジンにより回転駆動される入力軸15がニードル軸受を介して同軸的かつ回転自在に連結され、出力軸17の他端は駆動車輪に連結されている。カウンタ軸16には伝達ギヤ対18を介して入力軸15の回転が常に伝達され、カウンタ軸16と出力軸17の間には、選択的に動力伝達を行う複数対の変速ギヤ対20〜23が第1室S1内に、1組の後進ギヤ列24が第2室S2内に設けられている。
【0003】
主として図7に示すように、第1速及び第2速ギヤ対20,21の各駆動ギヤはカウンタ軸16に固定され、各従動ギヤは出力軸17に回転自在に支持されている。この両従動ギヤの間に設けられた第1切換クラッチ機構25は、出力軸17と共に回転するクラッチハブ25aとその外周に軸線方向摺動可能にスプライン係合されたスリーブ25bを備えた周知の同期噛み合い機構である。このスリーブ25bが図示の中立位置にある状態では、その両側の各従動ギヤは何れも出力軸17に連結されず自由に回転されるが、後述するシフト機構29(図10参照)の一部である第1シフトフォーク40によりスリーブ25bが第1速ギヤ対20側に移動されればその従動ギヤが出力軸17に連結されて第1速ギヤ対20による動力伝達がなされ、第2速ギヤ対21側に移動されれば同様にして第2速ギヤ対21による動力伝達がなされる。また、第3速ギヤ対22の駆動ギヤはカウンタ軸16に固定され、従動ギヤは出力軸17の入力軸15側となる一端部に回転自在に支持されている。第3速ギヤ対22の従動ギヤと伝達ギヤ対18の駆動ギヤの間に設けられた第2切換クラッチ機構26は、第1切換クラッチ機構25と同様な同期噛み合い機構で、第2シフトフォーク41によりスリーブ26bが第3速ギヤ対22側に移動されればその従動ギヤが出力軸17に連結されて第3速ギヤ対22による動力伝達がなされ、スリーブ26bが伝達ギヤ対18側に移動されればその駆動ギヤが出力軸17に連結され、入力軸15と出力軸17が直結されて第4速による動力伝達がなされる。
【0004】
第5速ギヤ対23の駆動ギヤ23aはカウンタ軸16に回転自在に支持され、従動ギヤ23bは出力軸17に固定され、駆動ギヤ23aをカウンタ軸16に連結離脱する第3切換クラッチ機構27は、駆動ギヤ23aと同軸的に一体形成されて外周に外歯スプライン27a1が形成され円周方向2箇所に切欠部27a2が形成されたクラッチハブ27aと、その外歯スプライン27a1に軸線方向摺動可能に係合される内歯スプライン27b2が内周に形成されたスリーブ27bと、その内歯スプライン27b2に軸線方向摺動可能に係合される外歯スプライン27c1が外周に形成されてカウンタ軸16の先端に固定された回転部材27cと、この回転部材27cとクラッチハブ27aの間に設けられ回転部材27cとの間に円錐摩擦クラッチが形成されたシンクロナイザリング27dと、スリーブ27bの軸線方向何れの向きでも移動の初期にシンクロナイザリング27dを回転部材27cに押圧して駆動ギヤ23aと回転部材27cの同期を行う(これによりカウンタ軸16と出力軸17は駆動及び従動ギヤ23a,23bによる所定の変速比で同期される)2個の半円弧状のレバー部材27eよりなる、いわゆるレバータイプの同期噛み合い機構である。スリーブ27bの内周の内歯スプライン27b2の軸線方向中央には円周方向に沿って台形断面形状の切欠き溝27b3が形成されており、図7の第3切換クラッチ機構27の上半部に示す中立位置では、スプリング(図示省略)により外向きに付勢された各レバー部材27eの中央の先端部は切欠き溝27b3の底面に弾性的に押圧されている。
【0005】
後述するシフト機構29の一部である第3シフトフォーク42により第3切換クラッチ機構27のスリーブ27bが回転部材27c側(図7において右向き)に移動されれば、先ずスリーブ27bの内歯スプライン27b2がシンクロナイザリング27dの外歯スプライン27d1と係合され、次いでレバー部材27eの先端部が切欠き溝27b3の左側の傾斜した側面の根元部に当たり右側に移動して、レバー部材27eはクラッチハブ27aの端面と当接される基端部の一側27e1(図8参照)を中心として揺動し、先端部付近がシンクロナイザリング27dに当接してこれを右向きに押圧する。これによりクラッチハブ27aと回転部材27cの回転が同期された後、クラッチハブ27aは第3切換クラッチ機構27の下半部に示す第5速シフト位置まで移動し(図7参照)、内歯スプライン27b2が回転部材27cの外歯スプライン27c1と係合して第5速ギヤ対23の駆動ギヤ23aはカウンタ軸16に連結され、第5速ギヤ対23による動力伝達がなされる。この状態ではレバー部材27eは前述のスプリング(図示省略)に抗して内向きに移動されてスリーブ27bの内歯スプライン27b2の歯先に乗り上げている。
【0006】
主として図7及び図9に示すように、後進ギヤ列24はカウンタ軸16に一体的に形成された駆動ギヤ24aと、第1切換クラッチ機構25のスリーブ25bの外周に一体形成されて常に出力軸17と共に回転される従動ギヤ24cと、カウンタ軸16及び出力軸17と平行に変速機ケーシング10に設けられた支持軸24dにより回転及び軸線方向自在に支持されたアイドルギヤ24bにより構成されており、アイドルギヤ24bの一部の外周には環状溝24b1が同軸的に形成されている。変速機ケーシング10内の下部に支持軸24dと略直交方向に延びるように配置されたリバースアーム43の基端部は、支持軸24dから離れた位置において支持軸24d及びリバースアーム43の長手方向と直交する枢支ピン44により変速機ケーシング10に揺動自在に支持され、リバースアーム43の先端部に形成したピン43はアイドルギヤ24bの環状溝24b1に係合されている。リバースアーム43が次に述べるシフト機構29の一部であるリバースフォーク34により枢支ピン44廻りに揺動されれば、アイドルギヤ24bは駆動ギヤ24a及び従動ギヤ24cの両者から離脱される実線で示す離脱位置と、この両者と噛合されて後進ギヤ列24による動力伝達がなされる二点鎖線で示す噛合位置との間で支持軸24dに沿った軸線方向に移動される。
【0007】
次に図10によりシフト機構29の説明をする。シフト機構29の3本のフォークシャフト30〜32はそれぞれの一端にシフトピース30a〜32aが一体的に設けられ、各シフトピース30a〜32aの端面から同一距離離れた位置にストップリング30c〜32cが係止されている。各フォークシャフト30〜32は、各先端部及び各シフトピース30a〜32aと各ストップリング30c〜32cの間の部分が、変速機ケーシング10の第1ケーシング11及びシフトブラケット12に同一ピッチで同一平面上に形成された支持孔11a〜11c及び保持孔12a〜12cに軸線方向摺動自在に嵌合されている。これにより互いに平行に配置された各フォークシャフト30〜32は、各シフトピース30a〜32aの端面がシフトブラケット12の一側面と当接する位置と各ストップリング30c〜32cがシフトブラケット12の他側面と当接する位置の間で軸線方向移動可能である。またシフトブラケット12には、保持孔12a〜12cと同一平面上に保持孔12cと平行に隣接して、固定シャフト33を保持する保持孔12dが形成されている。
【0008】
シフトブラケット12には、各保持孔12a〜12cと直交しそれらの中心を通って保持孔12dに達するガイド孔12eが形成されている。第1シフトピース30aの端面とストップリング30cの間となる第1フォークシャフト30の上側となる外周面には軸線方向に多少の距離をおいて3個のノッチ30dが形成されている。この各ノッチ30dと、ガイド孔12e内に設けたボール36と、ガイド孔12eの入口を閉じる栓部材36bとの間に設けられてこのボール36を各ノッチ30d側に押圧するスプリング36aにより、第1フォークシャフト30を中立位置及びその軸線方向両側の各シフト位置に弾性的に係止するデテント装置が形成される。図示は省略したが同様のデテント装置は第2及び第3フォークシャフト31,32にも設けられている。また保持孔12aと保持孔12cの間となるガイド孔12eに軸線方向摺動自在に設けた2本のインターロックピン38と、各フォークシャフト30〜32の各外周面に形成した複数の凹部(符号30eはその1つを示す)と、第2フォークシャフト31のこの凹部を設けた位置を貫通するように形成した孔に設けた連動ピン38aにより、各フォークシャフト30〜32が同時にシフトされることを阻止するインターロック機構が形成されている。第1及び第2フォークシャフト30及び31の中間部には第1及び第2切換クラッチ機構25及び26のスリーブ25b,26bを前述のように移動させる第1及び第2シフトフォーク40,41が固定され、第3フォークシャフト32の第3シフトピース32aの先端には前述のように第3切換クラッチ機構27のスリーブ27bを移動させる第3シフトフォーク42が形成されている。
【0009】
リバースアーム43を作動させるリバースフォーク34は、図9及び図10に示すように、平行に形成された1対の案内孔34d,34eに第3フォークシャフト32と固定シャフト33を摺動自在に挿通することによりシフト機構29に組み付けられる。リバースフォーク34は、第3フォークシャフト32が図示の中立位置にある状態において一端面が第3フォークシャフト32に係止されたストップリング32cと当接する図示の中立位置と、他端面が固定シャフト33に係止されたストップリング33aと当接するリバースシフト位置の間で移動可能である。リバースフォーク34から下方に延びるアーム部34b(図9参照)の先端に設けたヘッド部34hから突出する駆動ピン34cは、リバースアーム43の長手方向中間部に形成した長孔43bの平坦な両内側面の間に実質的に隙間なく摺動自在に挿入されてストップリング34gとワッシャにより抜け止めされ、これによりリバースアーム43はリバースフォーク34の移動と連動して枢支ピン44回りに揺動され、アイドルギヤ24bは離脱位置と噛合位置との間で移動される。
【0010】
図10に示すように、リバースフォーク34には案内孔34eから半径方向に延びる有底のガイド孔34fが形成され、固定シャフト33の外周面には2個のノッチ33bが形成されている。この両ノッチ33bと、ガイド孔34f内に設けたボール37と、このボール37を各ノッチ33b側に押圧するスプリング37aにより、リバースフォーク34を中立位置とリバースシフト位置に弾性的に係止するデテント装置が形成される。更にリバースフォーク34の両案内孔34d,34eはそれらの間の最小肉厚よりも大径の孔34aにより連通され、この孔34aと対応する第3フォークシャフト32と固定シャフト33の外周面には、凹部32d及び凹部33cが形成され、孔34a内には凹部32dと凹部33cに交互に係合されるボール35が収容されている。このような構成により、第3フォークシャフト32を図に示す中立位置から左向きに移動すれば、リバースフォーク34はストップリング32cにより押されて第3フォークシャフト32と共に移動し、第3フォークシャフト32がリバースシフト位置に達すれば、駆動ピン34c及びリバースアーム43を介してアイドルギヤ24bを噛合位置に移動して後進ギヤ列24による動力伝達が行われ、また第3フォークシャフト32を中立位置に戻せばリバースフォーク34も元に戻る。しかし第3フォークシャフト32を図示の中立位置から右向きに移動した場合には、リバースフォーク34はそのデテント装置によりその位置に保持され、ボール35が凹部33cに入って係止されるので停止されたままであり、移動されることはない。
【0011】
シフト機構29の各フォークシャフト30〜32が中立位置にある状態では、各フォークシャフト30〜32に設けた各シフトピース30a〜32aの半径方向先端部及びこれに形成したコ字形の切欠き(図10では第1シフトピース30aの切欠き30bのみが示され、その他の切欠きは他の部材の陰に隠れている)は、各フォークシャフト30〜32と直交する方向に一列に整列されている。この状態において、自動または手動の変速操作装置(図示省略)のセレクト動作によりシフトアンドセレクトシャフトが回動されてその先端に設けた作動アーム(何れも図示省略)の先端部が各シフトピース30a〜32aの切欠き内に選択的に係合され、次いで変速操作装置のシフト動作によりシフトアンドセレクトシャフトを軸線方向の右または左向きに往復動することにより、作動アームにより選択されたフォークシャフト30,31または32が右向きまたは左向きに往復動される。
【0012】
第3フォークシャフト32をシフトアンドセレクトシャフトの作動アームにより選択して図7及び図10において右向き(第5速側)にシフトすれば、前述のように先ずシンクロナイザリング27dが回転部材27cに係合してクラッチハブ27aと回転部材27cの回転が同期がなされ、次にスリーブ27bの内歯スプライン27b2が回転部材27cの外歯スプライン27c1と係合して第5速ギヤ対23の駆動ギヤ23aはカウンタ軸16に連結され(図7の第3切換クラッチ機構27の下半部参照)、第5速ギヤ対23による動力伝達がなされる。このように第3フォークシャフト32を右向きにシフトしても、リバースフォーク34は前述のように中立位置(図10参照)に停止されたままである。
【0013】
また、同様に第3フォークシャフト32を選択して図7及び図10において左向き(リバース側)にシフトすれば、前述のように先ずシンクロナイザリング27dが回転部材27cに係合してカウンタ軸16と出力軸17は所定の変速比で同期されるが、後進への変速時には駆動車輪に連結される出力軸17は実質的に停止されているので、カウンタ軸16も実質的に停止される。そしてリバースフォーク34はストップリング32cにより押されて第3フォークシャフト32と共に移動し、リバースフォーク34の駆動ピン34cが長孔43bの両内側面の間に隙間なく挿入されたリバースアーム43は基端側の枢支ピン44を中心として揺動し、先端のピン43を介してアイドルギヤ24bを移動して、第3フォークシャフト32及びリバースフォーク34がリバースシフト位置に達すれば、リバースアーム43及びアイドルギヤ24bは噛合位置に達して、アイドルギヤ24bは駆動ギヤ24a及び従動ギヤ24cと噛合される。
【0014】
駆動ギヤ24a及び従動ギヤ24cは、上述のように同期されて何れも実質的に停止されているカウンタ軸16及び出力軸17に設けられているので、この噛合の際にギヤ鳴りが生じることはない。またリバースフォーク34、リバースアーム43及びアイドルギヤ24bは、第3フォークシャフト32の中立位置から左向き(リバース側)へのシフトに応じてはシフトされるが、中立位置から右向き(第5速側)へのシフトに応じてはシフトされないので、その分だけこれらの部材34,43,24bの移動量は小さくなり、これによりこれらの部材がシフトブラケット12などの周辺の部材と干渉することを避けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特願2010−054942号(段落〔0002〕〜〔0011〕、図1、図7〜図9)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
この種の変速機におけるリバースシフト装置では、ギヤの強度確保のために各ギヤの噛合い長さを確保する必要がある。軸線方向に移動しない駆動ギヤと従動ギヤの噛合い長さの確保は比較的容易であるが、軸線方向に移動するアイドルギヤの場合は噛合い長さを含む歯の全長をその長手方向の移動量より大きくすることはできないという制限がある。一方、リバースフォーク、リバースアーム及びアイドルギヤは、上述のようにそれらの部材と周辺の部材との干渉を避けるためにはそれらの移動量を増大させることは困難であるので、アイドルギヤの歯の全長を増大させてギヤの強度を確保することは困難であるという問題がある。本発明はリバースフォークの移動量を増大させることなくリバースアームの移動量を増大させることにより、このような問題を解決することを目的とする。(本件はリバースアーム43の移動量をそのままにしてリバースアーム43の揺動角を大きくしているのでこのように説明しましたが、宜しいでしょうか???。なお、別の手段としてリバースアーム43の長孔43bを枢支ピン44側に寄せてレバー比を大きくすることも考えられますが、それでは何か不都合があるのでしょうか?)
また、この種の変速機におけるリバースシフト装置では、ギヤ鳴りを防止するためには、カウンタ軸16と出力軸17の間の同期が完了した後に、移動するアイドルギヤ24bを駆動ギヤ24a及び従動ギヤ24cと噛合させる必要がある。そのためには、リバースシフト開始時において、移動するアイドルギヤ24bの先端に設けるチャンファ24b1と、これと対向する駆動ギヤ24a及び従動ギヤ24cの各先端に設ける各チャンファ24a1,24c1(特に後に噛合する方のギヤの先端に設けるチャンファ)との間に、同期に必要なシフトストロークよりも大きい距離をおく必要があるので、アイドルギヤ24bの歯の全長は、その距離だけその長手方向移動量より短くしなければならないという問題がある。本発明はこのような問題も併せて解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
このために、本発明による変速機におけるリバースシフト装置は、 変速機ケーシング内に互いに平行に回転自在に支持されたカウンタ軸及び出力軸と、この両軸の間で動力伝達を行う複数対の変速ギヤ対及び1組の後進ギヤ列と、これらの変速ギヤ対及び後進ギヤ列による両軸の間の動力伝達を選択的に切り換えるシフト機構を備え、後進ギヤ列は、それぞれカウンタ軸及び出力軸に設けられてそれらと共に回転する駆動ギヤ及び従動ギヤ並びに両軸と平行に変速機ケーシングに設けられた支持軸により回転及び軸線方向移動自在に支持されたアイドルギヤよりなり、シフト機構は、基端部が変速機ケーシングに支持軸と直交する軸線廻りに揺動可能に支持されると共に先端部がアイドルギヤの外周に形成された環状溝に摺動可能に挿入され中間部に基端部と先端部を結ぶ方向に長い長孔で支持軸と直交する軸線と平行な方向に貫通する被駆動孔が形成されたリバースアームと、支持軸と平行に移動可能に変速機ケーシングに支持されて被駆動孔内に係合される駆動ピンを備えたリバースフォークを更に備え、リバースフォークを軸線方向に移動させてリバースアームを揺動させることにより、アイドルギヤを駆動及び従動ギヤの両者と噛合される噛合位置とこの両者から離脱される離脱位置との間で支持軸の軸線方向に移動させるようにした変速機におけるリバースシフト装置において、リバースアームと変速機ケーシングの間には、リバースアームをその揺動範囲内の所定の中間位置を境界としてそれから離れる外向きに弾性的に付勢するジャンプオーバ機構を設け、リバースフォークの駆動ピンはその外径をリバースアームの被駆動孔の長手方向中間部の平坦な両内側面の間の幅よりも小として、被駆動孔との間に隙間を形成し、リバースアームが所定の中間位置よりも、その先端部が離脱位置にあるアイドルギヤと係合する側にあるときは、駆動ピンを被駆動孔の長手方向中間部の平坦な両内側面の一方に弾性的に当接させ、リバースアームが所定の中間位置よりも、その先端部が噛合位置にあるアイドルギヤと係合する側にあるときは、駆動ピンを被駆動孔の長手方向中間部の平坦な両内側面の他方に弾性的に当接させたことを特徴とするものである。
【0018】
前項に記載の変速機におけるリバースシフト装置において、リバースフォークは、複数対の変速ギヤ対の何れか1つによる両軸の間の動力伝達を選択的に切り換える1つの切換クラッチ機構を作動させる1つのフォークシャフトに、この1つのフォークシャフトがその中立位置から1つの切換クラッチ機構を作動させる向きにシフトされた場合には移動されないが中立位置から前述した向きとは逆のリバースシフト位置に向かう向きにシフトされた場合にはこの1つのフォークシャフトと共に移動されるように連結され、1つの切換クラッチ機構は1つのフォークシャフトにより何れの向きにシフトされた場合でもシフトストロークの初期にカウンタ軸と出力軸を所定の変速比で同期する同期機構を備えたものとすることが好ましい。
【0019】
前項に記載の変速機におけるリバースシフト装置において、互いに対向するように配置された第1及び第2ストッパ部とこの両者を一体的に連結する連結部よりなり変速機ケーシングに固定されたリバースブラケットを更に備え、リバースアームの基端部は連結部に設けられた支持ピンにより揺動可能に支持され、ジャンプオーバ機構により前述のように弾性的に付勢されたリバースアームはアイドルギヤの離脱位置においてその一部に設けた突起部が第1ストッパ部に当接することにより位置決め停止されると共に、第2ストッパ部に当接して停止されたリバースフォークの駆動ピンに被駆動孔の一側が当接することによりアイドルギヤの噛合位置で位置決め停止されるものとすることが好ましい。
【0020】
前項に記載の変速機におけるリバースシフト装置において、突起部が第1ストッパ部に当接することによるリバースアームの位置決め停止は1つのフォークシャフトがその中立位置に戻る前に行われると共に、この1つのフォークシャフトがその中立位置に戻れば駆動ピンは被駆動孔の一方の平坦な内側面から離れるようにすることが好ましい。
【0021】
前2項に記載の変速機におけるリバースシフト装置において、ジャンプオーバ機構は、リバースアームの支持ピンから離れた位置にそれと平行に形成した引掛け穴と、リバースアームの揺動範囲内の所定の中間位置において支持ピンと引掛け穴の各中心線を結ぶ平面上となるリバースブラケットの一部に引掛け穴と平行に形成された引掛け穴と、コイルばねの両端を外向きに延長し各先端の折曲部を各引掛け穴に係止した捩りコイルスプリングよりなるものとするのがよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、リバースアームと変速機ケーシングの間には、リバースアームをその揺動範囲内の所定の中間位置を境界としてそれから離れる外向きに弾性的に付勢するジャンプオーバ機構を設け、リバースフォークの駆動ピンはその外径をリバースアームの被駆動孔の長手方向中間部の平坦な両内側面の間の幅よりも小として、被駆動孔との間に隙間を形成し、リバースアームが所定の中間位置よりも、その先端部が離脱位置にあるアイドルギヤと係合する側にあるときは、駆動ピンを被駆動孔の長手方向中間部の平坦な両内側面の一方に弾性的に当接させ、リバースアームが所定の中間位置よりも、その先端部が噛合位置にあるアイドルギヤと係合する側にあるときは、駆動ピンを被駆動孔の長手方向中間部の平坦な両内側面の他方に弾性的に当接させており、リバースシフトに際し中立位置から移動するリバースフォークの駆動ピンは、先ず被駆動孔の一方の内側面に当接しこれを押してリバースアームをジャンプオーバ機構の付勢力に抗してリバースフォークの移動と共に揺動し、揺動範囲内の所定の中間位置を過ぎればジャンプオーバ機構の付勢力の向きが逆になるので、リバースアームは被駆動孔の他方の内側面が駆動ピンに当接する位置まで瞬間的に揺動され、その後は被駆動孔の他方の内側面が駆動ピンに当接したままでリバースフォークの移動と共に揺動される。このようにリバースアームは揺動の途中で駆動ピンの外径と被駆動孔の両内側面の間の幅の差に相当する分だけ瞬間的に揺動され、その他のときはリバースフォークと共に移動されるので、リバースアームの揺動角はこの瞬間的に揺動する角度だけ、リバースアームに形成した長孔の両内側面の間に駆動ピンが実質的に隙間なく摺動自在に挿入される前述した従来技術の揺動角に比して大となる。これによりリバースフォークの移動量が同じであれば、リバースアーム及びアイドルギヤの移動量は前述の従来技術に比して大となるので、その分だけアイドルギヤの噛合い長さを含む歯の全長を長くしてその強度を確保することが可能となる。
【0023】
リバースフォークは、複数対の変速ギヤ対の何れか1つによる両軸の間の動力伝達を選択的に切り換える1つの切換クラッチ機構を作動させる1つのフォークシャフトに、この1つのフォークシャフトがその中立位置から1つの切換クラッチ機構を作動させる向きにシフトされた場合には移動されないが中立位置から前述した向きとは逆のリバースシフト位置に向かう向きにシフトされた場合にはこの1つのフォークシャフトと共に移動されるように連結され、1つの切換クラッチ機構はこの1つのフォークシャフトにより何れの向きにシフトされた場合でもシフトストロークの初期にカウンタ軸と出力軸を所定の変速比で同期する同期機構を備えた請求項2の発明によれば、リバースフォークは1つの変速ギヤ対によるカウンタ軸と出力軸の間の動力伝達を選択的に切り換える1つの切換クラッチ機構を作動させる1つのフォークシャフトを利用して作動され、専用のフォークシャフトが不要となるので構造が簡略化され、またリバースフォークはこの1つのフォークシャフトが1つの切換クラッチ機構を作動させる向きにシフトされた場合には移動されないので、リバースフォーク、リバースアーム及びアイドルギヤの移動量を小さくして、これらの部材がシフトブラケットなどの周辺の部材と干渉するおそれを減少させることができる。
【0024】
互いに対向するように配置された第1及び第2ストッパ部とこの両者を一体的に連結する連結部よりなり変速機ケーシングに固定されたリバースブラケットを更に備え、リバースアームの基端部は連結部に設けられた支持ピンにより揺動可能に支持され、ジャンプオーバ機構により前述のように弾性的に付勢されたリバースアームはアイドルギヤの離脱位置においてその一部に設けた突起部が第1ストッパ部に当接することにより位置決め停止されると共に、第2ストッパ部に当接して停止されたリバースフォークの駆動ピンに被駆動孔の一側が当接することによりアイドルギヤの噛合位置で位置決め停止されるものとした請求項3の発明によれば、ジャンプオーバ機構により所定の中間位置を境界としてそれから離れる向きに弾性的に付勢されているリバースアームの揺動範囲は第1及び第2ストッパ部により規制されるので、周囲の部材と干渉するおそれは減少する。またリバースブラケット、リバースアーム及びジャンプオーバ機構は1つにサブアセンブリして変速機ケーシングに取り付けることができるので、組み付けが容易となる。
【0025】
突起部が第1ストッパ部に当接することによるリバースアームの位置決め停止は1つのフォークシャフトがその中立位置に戻る前に行われると共に、この1つのフォークシャフトがその中立位置に戻れば駆動ピンは被駆動孔の一方の平坦な内側面から離れるようにした請求項4の発明によれば、第3フォークシャフトをその中立位置からリバース側に移動した場合、リバースフォークの駆動ピンが被駆動孔の内側面の一方に当接するまではリバースアームは揺動されないので、後進ギヤ列も移動されない。従ってその間のリバースフォークのストロークに対応する分だけ中立位置におけるアイドルギヤの各歯の移動方向先端部とこれと対向する駆動ギヤまたは従動ギヤの各歯の移動方向先端部の間の距離を小さくすることができる。従ってその分だけアイドルギヤの歯の長さを大にすることができるので、アイドルギヤの強度を確保することができる。
【0026】
ジャンプオーバ機構が、リバースアームの支持ピンから離れた位置にそれと平行に形成した引掛け穴と、リバースアームの揺動範囲内の所定の中間位置において支持ピンと引掛け穴の各中心線を結ぶ平面上となるリバースブラケットの一部に引掛け穴と平行に形成された引掛け穴と、コイルばねの両端を外向きに延長し各先端の折曲部を各引掛け穴に係止した捩りコイルスプリングよりなる請求項5の発明によれば、ジャンプオーバ機構は実質的にただ1つのスプリングにより構成されるので、ジャンプオーバ機構の構造はきわめて簡単なものになる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明による変速機におけるリバースシフト装置の一実施形態の要部を示す断面図である。
【図2】図1に示す実施形態の2−2線に沿った平面図である。
【図3】図1に示す実施形態の後進ギヤ列を示す断面図である。
【図4】図1〜図3に示す実施形態のリバースフォークのストロークに対するアイドルギヤのストロークの特性を示す図である。
【図5】図1〜図3に示す実施形態のリバースシフト時の各時点における要部の各部材の作動を示す図である。
【図6】図1〜図3に示す実施形態のリバース戻しシフト時の各時点における要部の各部材の作動を示す図である。
【図7】従来技術によるリバースシフト装置を備えた変速機の一例の全体構造を示す長手方向に沿った断面図である。
【図8】図7の第3切換クラッチ機構部分の拡大断面図である。
【図9】図7及び図10の9−9線に沿った断面図である。
【図10】図7に示す従来技術のシフト機構を示す正面図である。
【図11】本発明による変速機のジャンプオーバ機構の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、主として図1〜図6により、本発明による変速機におけるリバースシフト装置の実施形態の説明をする。この実施形態は、前述した従来技術のシフト機構29の一部であるリバースフォーク51及びリバースアーム55とそれらの関連部材を除き、前述した従来技術と実質的に同じ構造である。従って以下においては、前述した従来技術と重複する部分については説明を省略し、主としてリバースフォーク51及びリバースアーム55とそれらの関連部材の構造及び作用につき説明する。
【0029】
先ず図1及び図3により後進ギヤ列50の構造の説明をする。この後進ギヤ列50は、カウンタ軸16に一体的に形成された駆動ギヤ50aと、第1切換クラッチ機構25のスリーブ25bの外周に一体形成されて常に出力軸17と共に回転される従動ギヤ50cと、カウンタ軸16及び出力軸17と平行に変速機ケーシング10に設けられた支持軸50dにより回転及び軸線方向自在に支持されたアイドルギヤ50bにより構成されている。アイドルギヤ50bは、実線で示す離脱位置と二点鎖線で示す噛合位置との間で、支持軸50dに沿った軸線方向に移動される。この後進ギヤ列50は、図7及び図9で説明した従来技術の後進ギヤ列24と実質的に同一構造であるが、後述するリバースフォーク51及びリバースアーム55とそれらの関連部材の構造により、前述した従来技術に比してアイドルギヤ50bの歯の長さを大にして、強度を確保することが可能である。
【0030】
次に図1及び図2により、リバースアーム55及びその関連部材の構造の説明をする。リバースアーム55はリバースブラケット53を介して変速機ケーシング10のシフトブラケット12に取り付けられ、リバースブラケット53とリバースアーム55の間にはジャンプオーバ機構JOが設けられている。リバースブラケット53は打ち抜き成形した金属の厚板をコ字状に折曲したもので、互いに対向するように平行に配置された第1及び第2ストッパ部53a,53bとこの両者をその片側の一側において一体的に連結する連結部53cよりなるものである。第1ストッパ部53aには、リバースブラケット53をボルト57により変速機ケーシング10のシフトブラケット12に取り付けるための2個のねじ穴53fが形成され、またジャンプオーバ機構JOを取り付けるために、連結部53cと反対側にはこれと平行に延びる細長い突出部53dが形成されている。連結部53cには、第1及び第2ストッパ部53a,53bの間に、支持ピン54が立設されてかしめにより固定され、この支持ピン54はリバースブラケット53をシフトブラケット12に固定した状態では、アイドルギヤ50bの支持軸50dと直交している。
【0031】
図1及び図2に示すように、リバースアーム55は、基端部の枢支穴55cがリバースブラケット53の支持ピン54に回動自在に嵌合されてストップリング54aにより抜け止めされ、先端側はカウンタ軸16を囲むように大きく湾曲され、その先端部55aは後進ギヤ列50のアイドルギヤ50bの外周に形成された環状溝50b2に実質的に隙間なく摺動可能に挿入されている。リバースアーム55の基端部と先端部55aを結ぶ長手方向の中間部の基端部寄りの位置には、長手方向に沿った長孔で支持ピン54と平行な方向に貫通する被駆動孔55bが形成されている。このように支持ピン54により回転自在に支持されたリバースアーム55の、図2における反時計回転方向の揺動は、被駆動孔55bの下側に形成した突起部55dが第1ストッパ部53aに当接することにより停止される。
【0032】
リバースフォーク51は、前述した従来技術のリバースフォーク34と同様、支持軸50dと平行な第3フォークシャフト32及び固定シャフト33に移動可能に支持され、図1においてリバースフォーク51から左下方に延びるアーム部51aの先端には、リバースアーム55の被駆動孔55bを形成した部分の上面に下面が当接するヘッド部51bが設けられ、このヘッド部51bの下面から突出する駆動ピン51cは被駆動孔55b内に挿入されている。この駆動ピン51cはその外径を被駆動孔55bの長手方向中間部の平坦な両内側面の間の幅よりも小として、両内側面との間に相当な隙間を形成している。このリバースフォーク51は、前述した従来技術と同様、第3フォークシャフト32がその中立位置から第3切換クラッチ機構27を作動させる向きにシフトされた場合には移動されないが、中立位置から前述した向きとは逆のリバースシフト位置に向かう向きにシフトされた場合には第3フォークシャフト32と共に移動されるように、シフト機構29に組み込まれている。
【0033】
次に図1及び図2により、リバースアーム55をその揺動範囲内の所定の中間位置を境界としてそれから離れる外向きに弾性的に付勢するジャンプオーバ機構JOの説明をする。前述のように第1ストッパ部53aの連結部53cと反対側に設けられて連結部53cと平行に延びる細長い突出部53dの先端部には、支持ピン54と平行に引掛け穴53eが形成されており、またリバースアーム55には支持ピン54からの距離が引掛け穴53eよりも離れた位置に支持ピン54と平行に引掛け穴55eが形成されている。支持ピン54と各引掛け穴53e,55eの各中心線の間の位置関係は、図2に示す離脱位置では、先端部55aの中心線は支持ピン54と引掛け穴53eの各中心線を結ぶ平面の下側に位置しているが、リバースアーム55が離脱位置から噛合位置に向けて揺動して揺動範囲内の所定の中間位置(例えば揺動範囲の1/3程度)となったときに支持ピン54と各引掛け穴53e,55eの各中心線が一平面上に並び、それ以後は先端部55aの中心線は支持ピン54と引掛け穴53eの各中心線を結ぶ平面の上側に位置するように設定する。そして、コイルばねの両端を外向きに延長して各先端を折曲した捩りコイルスプリング56をその両先端部が接近する向きに撓ませて、図に示すように各折曲部を各引掛け穴53e,55eに挿入して、両引掛け穴53e,55eを外向きに付勢する。この両引掛け穴53e,55eと上述のように組み付けた捩りコイルスプリング56により、リバースアーム55をその揺動範囲内の所定の中間位置を境界としてそれから離れる外向きに弾性的に付勢するジャンプオーバ機構JOが構成される。なおこの実施形態では、支持ピン54の中心からの距離は引掛け穴55eの方が引掛け穴53eよりも離れているものとして説明したが、これと逆に支持ピン54の中心からの距離は引掛け穴53eの方が引掛け穴55eよりも離れていてもよい。
【0034】
上述した実施形態では、リバースフォーク51は、第3フォークシャフト32が中立位置にある状態において一端面が第3フォークシャフト32に係止されたストップリング32cと当接する中立位置と、他端面が固定シャフト33に係止されたストップリング33aと当接するリバースシフト位置の間で移動可能であり、一方、支持ピン54により回転自在に支持されたリバースアーム55の揺動範囲は、図2に示すように被駆動孔55bの下側の突起部55dが第1ストッパ部53aに当接することにより停止される離脱位置と、ヘッド部51bの端面が第2ストッパ部53bに当接して停止された状態で被駆動孔55bの他方の内側面(図2において下側となる内側面)が駆動ピン51cに当接する噛合位置の間である。そしてリバースフォーク51とリバースアーム55の間の連動関係は、突起部55dが第1ストッパ部53aに当接しリバースアーム55が離脱位置に達して停止された時点においては、第3フォークシャフト32と共に移動するリバースフォーク51はまだ中立位置に達せず、その後多少距離更に移動して中立位置に達するように設定されている。従って第3フォークシャフト32及びリバースフォーク51の中立位置においては、図2に示すように、リバースフォーク51の駆動ピン51cは被駆動孔55bの一方の内側面(図2において上側となる内側面)から離れている。
【0035】
次に図4〜6により上記実施形態の作動の説明をする。図4の実線は図1〜図3で説明した実施形態のリバースフォークのストロークに対する後進ギヤ列のアイドルギヤのストロークの特性を示す図であり、破線は図7〜図10で説明した従来技術の、リバースフォークのストロークに対する後進ギヤ列のアイドルギヤのストロークの特性を示す図である。図5及び図6は図1〜図3に示す実施形態の、リバースシフト時及びリバース戻しシフト時の各時点における要部の各部材の作動を示す図である。先ず図4及び図5により、第3フォークシャフト32が中立位置からリバースシフト位置まで移動するリバースシフト時の作動の説明をする。
【0036】
図5(a) は第3フォークシャフト32が中立位置にある状態を示し、リバースアーム55は突起部55dがジャンプオーバ機構JOにより第1ストッパ部53aに当接された離脱位置にあり、従ってアイドルギヤ50bは図3の実線で示す離脱位置にある。この中立位置では、上述のようにリバースフォーク51の駆動ピン51cは、リバースアーム55の被駆動孔55bの一方の内側面(図2において上側となる内側面)から離れている。この状態は図4のグラフの原点で示されている。
【0037】
図5(b) は、第3フォークシャフト32が中立位置からリバースシフト位置に向かってストロークが開始されて、駆動ピン51cが被駆動孔55bの一方の内側面に当接した状態を示す。この状態では図5(a) の場合と同様、リバースアーム55は突起部55dが第1ストッパ部53aに当接された離脱位置にあり、アイドルギヤ50bも離脱位置にある。この状態は図4のグラフ上の(s1,0)点で示されている。
【0038】
図5(c) は、第3フォークシャフト32のリバースシフト位置に向かう移動によりリバースフォーク51が更に移動した状態を示し、リバースアーム55は被駆動孔55bの一方の内側面に当接する駆動ピン51cにより押し上げられ、ジャンプオーバ機構JOによる付勢力に抗して揺動を開始する。この揺動により、リバースアーム55の先端部55aが外周の環状溝50b2に摺動可能に挿入されたアイドルギヤ50bは移動され、その先端のチャンファ50b1は、駆動ギヤ50a及び従動ギヤ50cの先端の各チャンファ50a1,50c1と当接して噛合が開始される。そして引掛け穴55eが支持ピン54と引掛け穴55eの各中心線を結ぶ平面上となるリバースアーム55の揺動範囲内の所定の中間位置(図5(c) に実線で示す)に達すれば、図4のグラフ上では(s3,g2)点に達する。この時点で、ジャンプオーバ機構JOによりリバースアーム55に加えられる弾性的付勢力の向きは反時計回転方向から時計回転方向に切り替わるので、駆動ピン51cに対するリバースアーム55の被駆動孔55bの当接面は一方の内側面から他方の内側面に切り替わり、リバースアーム55は実線の位置から二点鎖線の位置に瞬間的に移動し、図4のグラフ上では(s3,g3)点に瞬間的に移動する。
【0039】
図5(d) は、第3フォークシャフト32のリバースシフト位置に向かう移動によりリバースフォーク51が更に移動した状態を示し、ジャンプオーバ機構JOにより時計回転方向に付勢されたリバースアーム55は被駆動孔55bの他方の内側面に当接する駆動ピン51cと共に更に揺動する。これによりアイドルギヤ50bは更に移動され、駆動ギヤ50a及び従動ギヤ50cとの間の歯の噛合長さは増大する。この状態は図4のグラフ上の(s4,g4)点で示されている。
【0040】
そして第3フォークシャフト32がリバースシフト位置に達すれば、図5(e) に示すように、リバースフォーク51はヘッド部51bの端面がリバースブラケット53の第2ストッパ部53bに当接するリバースシフト位置に達して停止され、リバースアーム55のそれ以上の揺動も停止される。この状態では図3の二点鎖線50bAに示すように、アイドルギヤ50bは歯の実質的全長において駆動ギヤ50a及び従動ギヤ50cと噛合する。この状態は図4のグラフ上の(s5,g5)点で示されている。
【0041】
次に図4及び図6により、第3フォークシャフト32がリバースシフト位置から中立位置まで移動するリバースシフト戻し時の作動の説明をする。図6(a) は、第3フォークシャフト32がリバースシフト位置にある状態を示し、図5(e) で示す状態と同じである。
【0042】
図6(b) は、第3フォークシャフト32が中立位置に向かって多少移動してリバースフォーク51のヘッド部51bが第2ストッパ部53bから多少離れた状態を示し、被駆動孔55bの他方の内側面が駆動ピン51cに当接されたリバースアーム55は、ジャンプオーバ機構JO付勢力に抗して駆動ピン51cにより押し下げられて揺動している。これによりアイドルギヤ50bは離脱側に多少戻され、駆動ギヤ50a及び従動ギヤ50cとの間の歯の噛合長さは減少する。この状態は図4のグラフ上の(s4,g4)点で示されている。
【0043】
図6(c) は、第3フォークシャフト32の中立位置に向かう移動によりリバースフォーク51が更に移動した状態を示し、リバースアーム55は被駆動孔55bの他方の内側面に当接する駆動ピン51cにより更に押し下げられて揺動し、アイドルギヤ50bと駆動ギヤ50a及び従動ギヤ50cとの間の歯の噛合長さは更に減少する。そして引掛け穴55eが支持ピン54と引掛け穴55eの各中心線を結ぶ平面上となるリバースアーム55の揺動範囲内の所定の中間位置(図6(c) に実線で示す)に達すれば、図4のグラフ上では(s2,g2)点に達する。この時点で、ジャンプオーバ機構JOによりリバースアーム55に加えられる弾性的付勢力の向きは時計回転方向から反時計回転方向に切り替わるので、駆動ピン51cに対するリバースアーム55の被駆動孔55bの当接面は他方の内側面から一方の内側面に切り替わり、リバースアーム55は実線の位置から二点鎖線の位置に瞬間的に移動し、図4のグラフ上では(s2,g1)点に瞬間的に移動する。
【0044】
図6(d) は、第3フォークシャフト32の中立位置に向かう移動によりリバースフォーク51が更に移動して、リバースアーム55は突起部55dが第1ストッパ部53aに当接して揺動が停止される離脱位置になり、アイドルギヤ50bは駆動ギヤ50a及び従動ギヤ50cから離脱される離脱位置になる。この状態は図4のグラフ上の(s1,0)点で示されている。
【0045】
そして第3フォークシャフト32が中立位置に達すれば、図6(e) に示すようにリバースフォーク51だけが移動して、駆動ピン51cはリバースアーム55の被駆動孔55bの一方の内側面から離れて、図5(a) に示す状態に戻る。
【0046】
上述した実施形態では、リバースアーム55と変速機ケーシング10の間には、リバースアーム55をその揺動範囲内の所定の中間位置を境界としてそれから離れる外向きに弾性的に付勢するジャンプオーバ機構JOを設け、リバースフォーク51の駆動ピン51cはその外径をリバースアーム55の被駆動孔55bの長手方向中間部の平坦な両内側面の間の幅よりも小として被駆動孔55bとの間に隙間を形成し、リバースアーム55が所定の中間位置よりも、その先端部55aが離脱位置にあるアイドルギヤ50bと係合する側にあるときは、駆動ピン51cを被駆動孔55bの長手方向中間部の平坦な両内側面の一方に弾性的に当接させ、リバースアーム55が所定の中間位置よりも、その先端部55aが噛合位置にあるアイドルギヤ50bと係合する側にあるときは、駆動ピン51cを被駆動孔55bの長手方向中間部の平坦な両内側面の他方に弾性的に当接させている。従って第3フォークシャフト32によるリバースシフトに際し、第3フォークシャフト32と共に中立位置から移動するリバースフォーク51の駆動ピン51cは、先ず被駆動孔55bの一方の内側面に当接してこれを押し、リバースアーム55は、ジャンプオーバ機構JOの付勢力に抗してリバースフォーク51の移動と共に揺動され、揺動範囲内の所定の中間位置を過ぎればジャンプオーバ機構JOの付勢力の向きが逆になるので、被駆動孔55bの他方の内側面が駆動ピン51cに当接する位置までリバースアーム55が瞬間的に揺動され、その後は被駆動孔55bの他方の内側面が駆動ピン51cに当接したままでリバースフォーク51の移動と共に揺動される。
【0047】
このようにこの実施形態のリバースアーム55はその揺動の途中で、駆動ピン51cの外径と被駆動孔55bの両内側面の間の幅の差に相当する分だけ瞬間的に揺動方向で前側に揺動され、その他のときはリバースフォーク51と共に移動されるので、リバースアーム55の揺動角はこの瞬間的に揺動する角度だけ、リバースアーム43に形成した長孔43bの両内側面の間に駆動ピン34cが実質的に隙間なく摺動自在に挿入される前述した従来技術の揺動角に比して大となる。これによりリバースフォーク51と34の移動量が同じであれば、この実施形態のリバースアーム55及びアイドルギヤ50bの移動量は前述した従来技術よりも大となるので、その分だけアイドルギヤ50bの噛合い長さを含む歯の全長を長くしてその強度を確保することができなる。
【0048】
上述した実施形態では、リバースフォーク51は、第5速ギヤ対23による両軸の間の動力伝達を選択的に切り換える第3切換クラッチ機構27を作動させる第3フォークシャフト32に、この第3フォークシャフト32がその中立位置から第3切換クラッチ機構27を作動させる向きにシフトされた場合には移動されないが、中立位置から前述した向きとは逆のリバースシフト位置に向かう向きにシフトされた場合には第3フォークシャフト32と共に移動されるように連結され、第3切換クラッチ機構27はこの第3フォークシャフト32により何れの向きにシフトされた場合でもシフトストロークの初期にカウンタ軸16と出力軸17を、第5速ギヤ対23による所定の変速比で同期する同期機構を備えている。このようにすれば、リバースフォーク51は第3切換クラッチ機構27を作動させる第3フォークシャフト32により作動され、リバースフォーク51のための専用のフォークシャフトが不要となるので構造が簡略化され、またリバースフォーク51はこの第3フォークシャフト32が第3切換クラッチ機構27を作動させる向きにシフトされた場合には移動されないので、リバースフォーク34、リバースアーム43及びアイドルギヤ24bの移動量を小さくして、これらの部材がシフトブラケット12などの周辺の部材と干渉するおそれを減少させることができる。
【0049】
なお上述した実施形態では、第3フォークシャフト32により何れの向きにシフトされた場合でもシフトストロークの初期にカウンタ軸16と出力軸17を所定の変速比で同期する第3切換クラッチ機構27の同期機構として、いわゆるレバータイプの同期噛み合い機構を使用しており、このようにすれば第3フォークシャフト32を何れの向きにシフトされた場合でも1組のシンクロナイザリングによりカウンタ軸16と出力軸17を所定の変速比で同期がなされるので構造が簡略化される。しかし本発明はこれに限られるものではなく、第3切換クラッチ機構27はシフトの向きにより異なる2組のシンクロナイザリングを使用して同期を行うものにしてもよい。
【0050】
また上述した実施形態では、互いに対向するように配置された第1及び第2ストッパ部53a,53bとこの両者を一体的に連結する連結部53cよりなり変速機ケーシング10に固定されたリバースブラケット53を更に備え、リバースアーム55の基端部は連結部53cに設けられた支持ピン54により揺動可能に支持され、ジャンプオーバ機構JOにより前述のように弾性的に付勢されたリバースアーム55は、アイドルギヤ50bの離脱位置においてその一部に設けた突起部55dが第1ストッパ部53aに当接することにより位置決め停止されると共に、第2ストッパ部53bに当接して停止されたリバースフォーク51の駆動ピン51cに被駆動孔55bの一側が当接することによりアイドルギヤ50bの噛合位置で位置決め停止されるようにしている。このようにすれば、リバースブラケット53,リバースアーム55及びジャンプオーバ機構JOは1つのサブアセンブリにまとめて変速機ケーシング10に取り付けることができるので、組み付けが容易となる。またジャンプオーバ機構JOにより所定の中間位置を境界としてそれから離れる外向きに弾性的に付勢されているリバースアーム55の揺動範囲は第1及び第2ストッパ部53a,53bにより規制されるので、周囲の部材と干渉するおそれは減少する。
【0051】
また上述した実施形態では、突起部55dが第1ストッパ部53aに当接することによるリバースアーム55の位置決め停止は1つのフォークシャフト32がその中立位置に戻る前に行われると共に、この1つのフォークシャフト32がその中立位置に戻れば駆動ピン51cは被駆動孔55bの一方の平坦な内側面から離れるようにしており、このようにすれば第3フォークシャフト32をその中立位置からリバース側に向けて移動させた場合、リバースフォーク51の駆動ピン51cが被駆動孔55bの一方の内側面に当接するまではリバースアーム55は揺動されないので、後進ギヤ列50のアイドルギヤ50bも移動されない。従ってその間のリバースフォーク51のストロークに対応する分だけ中立位置におけるアイドルギヤ50bの各歯の移動方向先端部とこれと対向する駆動ギヤ50aまたは従動ギヤ50cの各歯の先端部の間の距離を小さくすることができるので、その分だけアイドルギヤ50bの歯の長さを大にして、アイドルギヤ50bの強度を確保することができる。
【0052】
これを図4により説明すれば次の通りである。リバースフォーク34のストロークの初期においてカウンタ軸16と出力軸17は所定の変速比で同期され、その位置は図4に示す同期完了位置Sfである。この同期完了位置Sfにおける本発明によるリバースシフト装置のアイドルギヤ50bのストローク位置はGaであり、図7〜図10で説明した従来技術によるリバースシフト装置のアイドルギヤ24bのストローク位置はGbである。これに対しアイドルギヤ50b(または24b)と、駆動ギヤ50a(または24a)または従動ギヤ50c(または24c)の何れか一方(同時に噛合しない場合は遅れて噛合する方)が噛合を開始するストローク位置(噛合開始位置)はGsであり、同期完了位置Sfにおける本発明と従来技術のアイドルギヤ50b,24bのストローク位置Ga,Gbは、噛合開始位置Gsに対しそれぞれ差L1,L2だけ早くなっている。この差L1,L2はリバース切換時のギヤ鳴りを防ぐためにはある所定値以上とする必要があるが、この所定値をわずかに越えていれば充分であり、それ以上早くする必要はない。従って本発明によるリバースシフト装置のアイドルギヤ50bは、その先端のチャンファ50b1の位置を距離「L1−L2」だけ延ばしてストローク位置Gaをストローク位置Gbに合わせるようにしても図7〜図10で説明した従来技術と同程度のギヤ鳴り防止効果を得ることができ、この延ばした分だけアイドルギヤ50bの歯の長さを大にして、アイドルギヤ50bの強度を確保することができる。なお以上の説明では、同期完了位置Sfはリバースフォーク51のストローク位置s1とs2の間にあるものとして説明したが、これに限られるものではなく、同期完了位置Sfはストローク位置s1より早く、あるいはストローク位置s2より遅くしてもよい。
【0053】
更に上述した実施形態では、ジャンプオーバ機構JOは、リバースアーム55の支持ピン54から離れた位置にそれと平行に形成した引掛け穴55eと、リバースアーム55の揺動範囲内の所定の中間位置において支持ピン54と引掛け穴55eの各中心線を結ぶ平面上となるリバースブラケット53の一部に引掛け穴55eと平行に形成された引掛け穴53eと、コイルばねの両端を外向きに延長し各先端の折曲部を各引掛け穴55e,53eに係止した捩りコイルスプリング56よりなるものとしており、このようにすればジャンプオーバ機構JOは実質的にただ1つのスプリング56により構成されるので、ジャンプオーバ機構JOの構造をきわめて簡単なものとすることができる。
【0054】
しかしながらジャンプオーバ機構JOはこのような構造に限られるものではなく、図11に示すような構造としてもよい。この変形例のジャンプオーバ機構JOAは、リバースアーム55Aの基端部の外周に半径方向に突出して形成した山形のカム部55fと、リバースブラケット53Aの第1ストッパ部53aからリバースアーム55Aの先端部55aとは反対側に延長して折り曲げた突出部53gに取り付けた付勢手段58により構成されている。この付勢手段58は、開口側にフランジを形成した有底円筒状のホルダ58aの内周面に摺動自在に嵌合したスライダ58bをコイルスプリング58dにより外向きに弾性的に付勢し、スライダ58bの先端側にボール58cを回転自在に保持したものである。この付勢手段58は、支持ピン54をかしめる前に、ホルダ58aを突出部53gに形成した取付穴53hにリバースアーム55A側から差し込んでフランジを突出部53gに当て、ボール58cをコイルスプリング58dによりによりカム部55fに押圧するように取り付ける。リバースアーム55Aに対するカム部55fの角度は、リバースアーム55をその揺動範囲内の所定の中間位置とした場合にカム部55fの頂部がボール58cに当接するような角度に設定する。このようにすればジャンプオーバ機構JOAは、リバースアーム55をその揺動範囲内の所定の中間位置を境界としてそれから離れる外向きに弾性的に付勢する。
【符号の説明】
【0055】
10…変速機ケーシング、16…カウンタ軸、17…出力軸、20〜23…変速ギヤ対、27…1つの切換クラッチ機構(第3切換クラッチ機構)、29…シフト機構、32…1つのフォークシャフト(第3フォークシャフト)、50…後進ギヤ列、50a…駆動ギヤ、50b…アイドルギヤ、50b2…環状溝、50c…従動ギヤ、50d…支持軸、51…リバースフォーク、51c…駆動ピン、53…リバースブラケット、53a…第1ストッパ部、53b…第2ストッパ部、53c…連結部、53e…引掛け穴、54…支持ピン、55…リバースアーム、55a…先端部、55b…被駆動孔、55d…突起部、55e…引掛け穴、56…捩りコイルスプリング、JO…ジャンプオーバ機構。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変速機ケーシング内に互いに平行に回転自在に支持されたカウンタ軸及び出力軸と、この両軸の間で動力伝達を行う複数対の変速ギヤ対及び1組の後進ギヤ列と、これらの変速ギヤ対及び後進ギヤ列による前記両軸の間の動力伝達を選択的に切り換えるシフト機構を備え、
前記後進ギヤ列は、それぞれ前記カウンタ軸及び出力軸に設けられてそれらと共に回転する駆動ギヤ及び従動ギヤ並びに前記両軸と平行に前記変速機ケーシングに設けられた支持軸により回転及び軸線方向移動自在に支持されたアイドルギヤよりなり、
前記シフト機構は、基端部が前記変速機ケーシングに前記支持軸と直交する軸線廻りに揺動可能に支持されると共に先端部が前記アイドルギヤの外周に形成された環状溝に摺動可能に挿入され中間部に前記基端部と先端部を結ぶ方向に長い長孔で前記支持軸と直交する軸線と平行な方向に貫通する被駆動孔が形成されたリバースアームと、前記支持軸と平行に移動可能に前記変速機ケーシングに支持されて前記被駆動孔内に係合される駆動ピンを備えたリバースフォークを更に備え、
前記リバースフォークを前記軸線方向に移動させて前記リバースアームを揺動させることにより、前記アイドルギヤを前記駆動及び従動ギヤの両者と噛合される噛合位置とこの両者から離脱される離脱位置との間で前記支持軸の軸線方向に移動させるようにした変速機におけるリバースシフト装置において、
前記リバースアームと変速機ケーシングの間には、前記リバースアームをその揺動範囲内の所定の中間位置を境界としてそれから離れる外向きに弾性的に付勢するジャンプオーバ機構を設け、
前記リバースフォークの駆動ピンはその外径を前記リバースアームの被駆動孔の長手方向中間部の平坦な両内側面の間の幅よりも小として、前記被駆動孔との間に隙間を形成し、
前記リバースアームが前記所定の中間位置よりも、その先端部が前記離脱位置にある前記アイドルギヤと係合する側にあるときは、前記駆動ピンを前記被駆動孔の長手方向中間部の平坦な両内側面の一方に弾性的に当接させ、前記リバースアームが前記所定の中間位置よりも、その先端部が前記噛合位置にある前記アイドルギヤと係合する側にあるときは、前記駆動ピンを前記被駆動孔の長手方向中間部の平坦な両内側面の他方に弾性的に当接させる
ことを特徴とする変速機におけるリバースシフト装置。
【請求項2】
請求項1に記載の変速機におけるリバースシフト装置において、
前記リバースフォークは、前記複数対の変速ギヤ対の何れか1つによる前記両軸の間の動力伝達を選択的に切り換える1つの切換クラッチ機構を作動させる1つのフォークシャフトに、この1つのフォークシャフトがその中立位置から前記1つの切換クラッチ機構を作動させる向きにシフトされた場合には移動されないが前記中立位置から前述した向きとは逆のリバースシフト位置に向かう向きにシフトされた場合にはこの1つのフォークシャフトと共に移動されるように連結され、
前記1つの切換クラッチ機構は前記1つのフォークシャフトにより何れの向きにシフトされた場合でもシフトストロークの初期に前記カウンタ軸と出力軸を所定の変速比で同期する同期機構を備えている
ことを特徴とする変速機におけるリバースシフト装置。
【請求項3】
請求項2に記載の変速機におけるリバースシフト装置において、
互いに対向するように配置された第1及び第2ストッパ部とこの両者を一体的に連結する連結部よりなり前記変速機ケーシングに固定されたリバースブラケットを更に備え、
前記リバースアームの基端部は前記連結部に設けられた支持ピンにより揺動可能に支持され、
前記ジャンプオーバ機構により前述のように弾性的に付勢された前記リバースアームは前記アイドルギヤの離脱位置においてその一部に設けた突起部が前記第1ストッパ部に当接することにより位置決め停止されると共に、前記第2ストッパ部に当接して停止された前記リバースフォークの駆動ピンに前記被駆動孔の一側が当接することにより前記アイドルギヤの噛合位置で位置決め停止される
ことを特徴とする変速機におけるリバースシフト装置。
【請求項4】
請求項3に記載の変速機におけるリバースシフト装置において、
前記突起部が前記第1ストッパ部に当接することによる前記リバースアームの位置決め停止は前記1つのフォークシャフトがその中立位置に戻る前に行われると共に、前記1つのフォークシャフトがその中立位置に戻れば前記駆動ピンは前記被駆動孔の一方の平坦な内側面から離れることを特徴とする変速機におけるリバースシフト装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の変速機におけるリバースシフト装置において、
前記ジャンプオーバ機構は、前記リバースアームの前記支持ピンから離れた位置にそれと平行に形成した引掛け穴と、前記リバースアームの揺動範囲内の前記所定の中間位置において前記支持ピンと引掛け穴の各中心線を結ぶ平面上となる前記リバースブラケットの一部に前記引掛け穴と平行に形成された引掛け穴と、コイルばねの両端を外向きに延長し各先端の折曲部を前記各引掛け穴に係止した捩りコイルスプリングよりなる
ことを特徴とする変速機におけるリバースシフト装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2012−237367(P2012−237367A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106419(P2011−106419)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(592058315)アイシン・エーアイ株式会社 (490)
【Fターム(参考)】