説明

外断熱装飾仕上げ工法及び構造体

【課題】建築物外壁面の外断熱構造基材に対する仕上施工において、その仕上外観の意匠性を高める。
【解決手段】建築物外壁面の壁体材料上に断熱材層を設けた外断熱構造基材に対し、接着材層を介して、補強材層及び装飾材層から構成される化粧シート建材を施工する。前記装飾材層としては、(1)結合材、及び有色骨材を含有する組成物により形成されたもの、(2)結合材、着色顔料、及び粉粒体を含有する組成物により形成されたもの、(3)多彩模様塗料により形成されたもの、のいずれか、またはこれらを組み合わせたものが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な外断熱装飾仕上げ工法及び構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、商業施設、集合住宅、戸建住宅等の建築物においては、高断熱化・高気密化によって、冷暖房費の節約を図り、省エネルギー化、省資源化を実現しようとする動きが盛んである。
一般に、断熱設計を施していない建築物では、冬期の暖房時には屋根、床、窓、壁等の部位から室内の熱が逃げ、夏期の冷房時にはこれら部位から屋外の熱が侵入してしまう。このような熱損失の約3分の1は壁面に起因すると言われている。そのため、建築物の省資源化を実現するには、室内と屋外を隔てる外壁の高断熱化が不可欠である。近年、外壁表面に断熱性材料を設けた壁面構造が種々提案されている。一例として、建築物外壁表面に、ポリスチレンフォームやフェノールフォーム等による断熱材層を設け、その上層にシート材等を設けた壁面構造等が知られている(例えば特許文献1等)。
しかしながら、特許文献1等に記載のシート材は、平坦で単色のものが殆どであり、意匠性には乏しいのが現状である。
【0003】
【特許文献1】特開2005−213912号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上述のような問題点に鑑みなされたもので、建築物外壁面の外断熱構造基材に対する仕上施工において、その仕上外観の意匠性を高めることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、建築物外壁面の外断熱構造基材に対し、接着材層を介して、補強材層及び装飾材層から構成される化粧シート建材を施工することに想到し、本発明を完成させるに到った。すなわち、本発明は以下の特徴を有するものである。
【0006】
1.建築物外壁面の壁体材料上に断熱材層を設けた外断熱構造基材に対し、
接着材層を介して、
補強材層及び装飾材層から構成される化粧シート建材を施工する外断熱装飾仕上げ工法。
2.前記外断熱構造基材は、断熱材層上に補強層を設けたものであり、該補強層は、ポリマーセメント層及び/または網状体からなるものである1.記載の外断熱装飾仕上げ工法。
3.前記装飾材層は、
(1)結合材、及び有色骨材を含有する組成物により形成されたもの、
(2)結合材、着色顔料、及び粉粒体を含有する組成物により形成されたもの、
(3)多彩模様塗料により形成されたもの、
のいずれか、またはこれらを組み合わせたものである1.または2.記載の外断熱装飾仕上げ工法。
4.前記化粧シート建材は目地模様を有するものである1.〜3.のいずれかに記載の外断熱装飾仕上げ工法。
5.前記接着材層は、結合材、及び平均粒子径が0.1〜100μmである粉粒体を必須成分とし、当該粉粒体の容積濃度が40〜90%である接着材により形成されたものである1.〜4.のいずれかに記載の外断熱装飾仕上げ工法。
【0007】
6.建築物外壁面の構造体であって、
壁体材料上に断熱材層を設けた外断熱構造基材に対し、
接着材層を介して、
補強材層及び装飾材層から構成される化粧シート建材が積層された外断熱装飾仕上げ構造体。
7.前記外断熱構造基材は補強層を有し、該補強層は、ポリマーセメント層及び/または網状体からなるものである6.記載の外熱装飾仕上げ構造体。
8.前記装飾材層は、
(1)結合材、及び有色骨材を含有する組成物により形成されたもの、
(2)結合材、着色顔料、及び粉粒体を含有する組成物により形成されたもの、
(3)多彩模様塗料により形成されたもの、
のいずれか、またはこれらを組み合わせたものである6.または7.記載の外断熱装飾仕上げ構造体。
9.前記化粧シート建材は目地模様を有するものである6.〜8.のいずれかに記載の外断熱装飾仕上げ構造体。
10.前記接着材層は、結合材、及び平均粒子径が0.1〜100μmである粉粒体を必須成分とし、当該粉粒体の容積濃度が40〜90%である接着材により形成されたものである6.〜9.のいずれかに記載の外断熱装飾仕上げ構造体。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、建築物外壁面の外断熱構造基材に対する仕上施工において、その仕上面の意匠性を高めることができる。
具体的に、本発明では化粧シート建材の施工により、種々の多色模様や凹凸模様を表出することができる。さらに、このような化粧シート建材を用いることで、仕上面における割れ発生等を防止することができ、長期にわたり美観性を維持することができる。また、このような化粧シート建材は、大判化が可能であり、タイル等とは異なる多彩感や重厚感を有する意匠性を表出することも可能となる。
さらに、本発明では、化粧シート建材を接着材によって外断熱構造基材に貼り付けるため、仕上面の防水性、耐久性等において長期的に安定な性能を確保することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0010】
本発明では、外断熱構造基材を施工対象とする。この外断熱構造基材は、建築物外壁面の壁体材料上に、断熱材層、並びに必要に応じ補強層を有するものである。
このうち壁体材料は、建築物外壁面を構成するものである。具体的には、コンクリート、モルタル、セメントボード、押出成形板、スレート板、PC板、ALC板、繊維強化セメント板、金属系サイディングボード、窯業系サイディングボード、セラミック板、珪酸カルシウム板、プラスチックボード、硬質木片セメント板、合板、煉瓦、タイル等が用いられる。このような材料は、既存塗膜層等を有するものであってもよい。
【0011】
断熱材層は、外壁面に断熱性を付与するものである。断熱材層としては、断熱性能を有する各種材料が使用できるが、ポリスチレンフォーム、ポリウレタンフォーム、フェノールフォーム、ポリエチレンフォーム等の発泡有機樹脂断熱材が好適である。このような発泡有機樹脂断熱材は、熱伝導率が低く、優れた断熱性能を有する。板状の発泡有機樹脂断熱材は、接着材や金具等を用いて基材に固定化することができる。本発明では、現場発泡型の材料により断熱材層を形成することもできる。また、発泡有機樹脂の粒状物とセメント等との混練物により、断熱材層を形成することもできる。
断熱材層の厚みは特に限定されないが、通常5〜150mm程度である。
【0012】
断熱材層上には、必要に応じ、ポリマーセメント層及び/または網状体からなる補強層が設けられる。このような補強層は、強度、耐久性、割れ防止性、寸法安定性等の性能を付与するものである。断熱材として、板状の発泡有機樹脂断熱材を用いる場合、補強層は必須である。
【0013】
ポリマーセメント層としては、水硬性石灰、ポルトランドセメント、高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント、アルミナセメント等のセメントと、エチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、フッ素樹脂、セルロース、ポリビニルアルコール等の樹脂、珪砂等の細骨材、及び必要に応じ各種添加剤を含む組成物から得られるもの等が挙げられる。
網状体としては、パルプ繊維、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、アラミド繊維、ビニロン繊維、ポリエチレン繊維、ポリアリレート繊維、PBO繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、塩化ビニル繊維、セルロース繊維、ロックウール、ガラス繊維、シリカ繊維、シリカ−アルミナ繊維、カーボン繊維、炭化珪素繊維等の繊維や、鉄、銅等の金属細線等が網状に形成されたもの等が挙げられる。
本発明における補強層としては、特に、ポリマーセメント層に網状体が埋め込まれた形態が好適である。
本発明においては、断熱材層上に常法によってポリマーセメント層及び/または網状体からなる補強層が形成され、適切に養生されたものを外断熱構造基材として利用することができる。
【0014】
本発明では、上記外断熱構造基材に対し、接着材を用いて化粧シート建材を貼り付ける。このような接着材は、化粧シート建材の固定化のみならず、仕上面の防水性、耐久性等の向上にも有効に作用するものである。接着材を使用せずに、釘、鋲等の固定具を用いる場合は、仕上面の意匠性、防水性等に悪影響を与えるおそれがあり、固定具周辺の着色処理、防水処理等が別途必要となる。これに対し、本発明では、接着材を用いることにより、このような固定具に起因する問題点を解決することができる。
【0015】
接着材としては、外断熱構造基材と化粧シート建材とを接着可能なものであれば、特に限定されず各種接着材が使用できる。具体的には、例えば、セメント、石膏等を主成分とする無機系接着材、ゴム系、エポキシ系、アクリル系、ウレタン系等の樹脂を主成分とする有機系接着材等が挙げられる。本発明では、市販または公知の粘着材を接着材として用いることもできる。
【0016】
本発明における接着材としては、結合材、及び平均粒子径が0.1〜100μmである粉粒体を必須成分とし、粉粒体の容積濃度が40〜90%(より好ましくは50〜85%、さらに好ましくは60〜80%)であるものが好適である。このような接着材を用いることにより、仕上面の割れ防止性、接着性等を高めることができる。さらに、このような接着材は、外断熱構造基材における不陸等の修正にも有効である。
接着材における結合材としては、例えばゴム系、エポキシ系、アクリル系、ウレタン系等の各種樹脂が使用できる。粉粒体の平均粒子径は、通常0.1〜100μmであるが、好ましくは0.3〜50μm、より好ましくは0.5〜30μmである。なお粉粒体の平均粒子径は、遠心沈降式粒度分布測定装置によって測定される50%粒子径の値である。
【0017】
接着材を着色する場合には、着色顔料を用いて適宜調色を行えばよい。この際、接着材の色調を、装飾材層に近似した色相(共色)に設定しておけば、化粧シート建材の隠蔽性が低い場合であっても違和感のない仕上りとなる。
また、本発明では、接着材層を化粧シート建材の目地部として露出させることもできる。この場合には、所望の目地色に合わせて接着材の色調を適宜選定すればよい。
【0018】
着色顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、黒鉛、黒色酸化鉄、銅クロムブラック、コバルトブラック、銅マンガン鉄ブラック、べんがら、モリブデートオレンジ、パーマネントレッド、パーマネントカーミン、アントラキノンレッド、ペリレンレッド、キナクリドンレッド、黄色酸化鉄、チタンイエロー、ファーストイエロー、ベンツイミダゾロンイエロー、クロムグリーン、コバルトグリーン、フタロシアニングリーン、群青、紺青、コバルトブルー、フタロシアニンブルー、キナクリドンバイオレット、ジオキサジンバイオレット等を使用することができる。
【0019】
接着材層は、上記接着材を公知の方法で塗付することによって形成できる。塗付方法としては、例えば、鏝塗り、へら塗り、ローラー塗り等が可能である。接着材は、外断熱構造基材の表面に塗付すればよいが、化粧シート建材の裏面に塗付することも可能である。接着材の塗付け量は、通常0.1〜2kg/m程度である。化粧シート建材を貼り付けるタイミングは、接着材の性能が発現される範囲内で設定すればよい。通常は、接着材の硬化前に貼り付ければよい。なお、接着材の塗付前に、外断熱構造基材の表面を下塗材等で処理しておくこともできる。
下塗材としては、弾性下塗材が好適である。このような弾性下塗材は、仕上面における割れ、剥れ、膨れ等の防止に効果的である。
【0020】
本発明における化粧シート建材は、補強材層及び装飾材層から構成されるものである。このような化粧シート建材は、装飾材層によって、種々の多色模様や凹凸模様を表出することができ、基材の不陸等を目立たなくすることもできる。さらに、このような化粧シート建材は、適度な可とう性と強度を有するものである。そのため、本発明では、仕上面における割れ発生等を防止することができ、長期にわたり美観性を維持することができる。また、このような化粧シート建材は、大判化しても割れや欠け等が生じ難いため、本発明では、大判の化粧シート建材によって、タイル等とは異なる多彩感や重厚感を有する意匠性を表出することも可能となる。化粧シート建材としては、通常、正方形、長方形等の矩形のものを用いる。その寸法は、一辺100〜1500mm(好ましくは200〜1000mm)程度、厚さ0.5〜15mm(好ましくは1〜10mm)程度である。
【0021】
化粧シート建材における補強材層としては、繊維が0.2mm〜30mm(好ましくは0.5mm〜20mm)の間隔で配列された網目構造を有する繊維質シート、および/または、目付が100g/m以下(好ましくは50g/m以下)である不織布を使用することが好ましい。
【0022】
繊維としては、無機繊維、有機繊維等、あるいは無機繊維と有機繊維が複合化されたもの等が挙げられる。繊維の太さは、0.01mm〜1.5mm程度であることが好ましい。なお、ここでいう繊維の太さとは、網目構造を形成する1本の太さのことであり、繊維1本または2本以上からなる糸状の束の太さである。
【0023】
装飾材層としては、多色模様及び/または凹凸模様を有するものが使用できる。なお、ここに言う多色模様とは、少なくとも2色以上の色彩が視認可能な状態で混在する模様のことである。また、凹凸模様とは、概ね0.2〜5mm程度の高低差を有する表面模様のことである。凹凸模様としては、例えば砂壁状、ゆず肌状、繊維壁状、さざ波状、スタッコ状、凹凸状、月面状、櫛引状、虫喰状等の各種模様が挙げられる。
【0024】
具体的に、装飾材層としては、(1)結合材、及び有色骨材を含有する組成物により形成されたもの、(2)結合材、着色顔料、及び粉粒体を含有する組成物により形成されたもの、(3)多彩模様塗料により形成されたもの、のいずれか、またはこれらを組み合わせたものが好適である。
【0025】
上記(1)では、有色骨材によって多色模様、凹凸模様を形成することができる。(1)の組成物中の結合材としては、例えば酢酸ビニル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂、フッ素樹脂等の有機系結合材、セメント、石膏、水ガラス等の無機系結合材、あるいはこれらの複合系等を使用することができる。この中でも、有機系結合材が好適である。
【0026】
有色骨材としては、通常、粒子径0.05〜5mmの骨材を使用する。このような有色骨材としては、自然石、自然石の粉砕物等の天然骨材、及び着色骨材等の人工骨材から選ばれる少なくとも1種以上を好適に使用することができる。具体的には、例えば、大理石、御影石、蛇紋岩、花崗岩、蛍石、寒水石、長石、石灰石、珪石、珪砂、砕石、雲母、珪質頁岩、及びこれらの粉砕物、陶磁器粉砕物、セラミック粉砕物、ガラス粉砕物、ガラスビーズ、樹脂粉砕物、樹脂ビーズ、ゴム粒、金属粒等が挙げられる。また、貝殻、珊瑚、木材、炭、活性炭等の粉砕物を使用することもできる。さらに、これらの表面を、顔料、染料、釉薬等で表面処理を行うことにより着色被覆したもの等も使用できる。このような骨材の2種以上を適宜組み合せて使用することにより、種々の多色模様を表出することができる。
有色骨材は、結合材の固形分100重量部に対し、通常100〜4000重量部、好ましくは150〜3000重量部、より好ましくは200〜2000重量部の比率で混合する。有色骨材の混合比率がこのような範囲内であれば、意匠性、ひび割れ防止性等の点において好適である。
【0027】
上記(2)の装飾材層では、着色顔料によって色彩が付与され、さらに、粉粒体の作用により厚膜化が可能となり、種々の凹凸模様が形成できる。(2)の装飾材層を形成する組成物のうち、結合材としては上記(1)と同様のものが使用できる。着色顔料としては、接着材で例示したものと同様のものが使用できる。着色顔料の混合比率は、結合材の固形分100重量部に対し、通常1〜300重量部(好ましくは2〜200重量部)程度である。
【0028】
粉粒体としては、体質顔料、骨材等が使用できる。このうち体質顔料としては、例えば、重質炭酸カルシウム、軽微性炭酸カルシウム、カオリン、クレー、陶土、チャイナクレー、珪藻土、含水微粉珪酸、タルク、バライト粉、硫酸バリウム、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、シリカ粉、水酸化アルミニウム等が挙げられる。体質顔料の粒子径は、通常50μm未満(好ましくは0.5μm以上50μm未満)である。体質顔料の混合比率は、結合材の固形分100重量部に対し、通常10〜1000重量部(好ましくは20〜500重量部)程度である。
【0029】
骨材としては、例えば、寒水石、長石、石灰石、珪石、珪砂、砕石、雲母、珪質頁岩、及びこれらの粉砕物、ガラスビーズ、樹脂ビーズ、樹脂粉砕物、ゴム粒、金属粒等が使用できる。骨材の粒子径は、通常0.05〜5mmである。骨材の混合比率は、結合材の固形分100重量部に対し、通常10〜2000重量部(好ましくは30〜1500重量部)程度である。
(2)では、粉粒体として中空粒子を含むこともできる。このような中空粒子を用いることにより、装飾材層を軽量化し、基材への負荷を軽減することができる。さらに、断熱性向上等を図ることもできる。
【0030】
上記(3)では、多彩模様塗料によって多色模様が形成でき、さらに凹凸模様を形成することもできる。上記(3)では、結合材及び粉粒体を含有するベース層上に多彩模様塗料が塗付されたものを使用することもできる。この場合、ベース層として凹凸模様を有するものを使用することで、凹凸感を高めることができる。一方、平坦なベース層に大柄の多彩模様塗料を塗付することにより、大理石調等の仕上げとすることもできる。このようなベース層は、結合材及び粉粒体を含有する組成物により形成できる。ベース層における結合材、粉粒体としては、上記(2)と同様のものが使用できる。ベース層として、上記(2)を用いる態様も好適である。なお、本発明では、上記(1)や(2)においても、適宜このようなベース層を設けることができる。
【0031】
多彩模様塗料は、液状またはゲル状の2色以上の色粒が分散媒に懸濁したものである。これらは水中油型(O/W型)、油中水型(W/O型)、油中油型(O/O型)、水中水型(W/W型)に分類することができる。
【0032】
多彩模様塗料における色粒は、樹脂と着色顔料、及び必要に応じ各種添加剤等を含む着色塗料が、分散媒中に粒状に分散されたものである。着色塗料を粒状に分散させる方法は特に限定されず、公知の方法を採用することができる。具体的には、分散安定剤等を含む水性分散媒に、着色塗料を分散させる方法等を採用することができる。
着色塗料中の樹脂としては、塗料のビヒクルとして作用するものであればよく、公知の樹脂を特に制限なく使用することができる。樹脂が溶剤可溶型樹脂及び/または非水分散型樹脂である場合は、溶剤型着色塗料が得られ、これを水性分散媒に分散させると水中油型(O/W型)の多彩模様塗料となる。また、樹脂が水溶性樹脂及び/または水分散性樹脂である場合は、水性着色塗料が得られ、これを水性分散媒に分散させると水中水型(W/W型)の多彩模様塗料となる。
【0033】
色粒の粒子径や形状は、適宜設定することができる。具体的には、製造時における攪拌羽根の形状、攪拌槽に対する攪拌羽根の大きさや位置、攪拌羽根の回転速度、着色塗料の粘性、分散安定剤の添加方法や濃度、水性分散媒の粘性等を適宜選択・調整すればよい。色粒の粒子径は、特に限定されないが、通常0.01〜10mm(好ましくは0.1〜5mm)程度である。
【0034】
本発明では、上記(1)〜(3)の装飾材層に粒子径0.05〜5mmの骨材または粉粒体が含まれることにより、化粧シート建材内の応力が緩和され、長期にわたり安定した仕上面を維持することもできる。このような骨材または粉粒体としては、前記接着材における粉粒体よりも平均粒子径が大であるものが好適である。
【0035】
本発明における化粧シート建材は、上記補強材層と装飾材層が積層されたものであれば、特に限定されず公知の方法で製造することができる。例えば、(i)補強材の上に、上述した装飾材用組成物を塗付積層して硬化させる方法、(ii)型枠の内面に装飾材用組成物を流し込み、補強材を載置ないし埋設し、硬化後に脱型する方法、(iii)装飾材用組成物を加熱ニーダー、圧延ロール等を用いて、成形して得られる装飾材層と、補強材とを積層する方法、等により製造することができる。本発明では、2種以上の装飾材用組成物によって装飾材層を形成することもでき、また装飾材層の表面に意匠材等を散在させることもできる。
本発明において好適な化粧シート建材としては、補強材層の上に、上記(2)の装飾材層が積層され、さらに上記(1)または上記(3)の装飾材層が積層されたものが挙げられる。
【0036】
化粧シート建材としては、目地模様を有するものを使用することもできる。このような化粧シート建材によって施工を行えば、意匠性向上を図ることができる。目地模様としては、例えばタイル調模様、レンガ調模様、幾何学的模様、水玉模様、縞模様、格子模様、渦巻き模様、紋章柄の他、動植物、器物、文字等をデザイン化した図形模様等が可能である。このような目地模様は、化粧シート建材の成形時に付与すればよい。目地部の色調は適宜設定することができる。
【0037】
本発明の化粧シート建材では、装飾材層の上に、必要に応じ透明層を設けることもできる。また、親水化処理、撥水化処理等を行うこともできる。
このうち透明層は、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂、フッ素樹脂等を結合材とする透明塗料によって形成することができる。このような透明層は、公知の艶消し剤等によって艶の程度を調整することもできる。また、本発明の効果を阻害しない限り、着色を施すこともできる。
【0038】
本発明では、接着材を用いて化粧シート建材を順次基材に貼り付けていく。本発明では、化粧シート建材の貼り付け時に、化粧シート建材間に目地部を設けることもできる。この場合は、接着材層が目地部として現れることとなり、装飾材層と接着材層の色調の組合せにより、種々の意匠性を表出することが可能となる。目地幅は、通常0.5〜10mm程度である。
【0039】
本発明では、化粧シート建材を貼り付けた後に、壁面の一部乃至全体に透明塗料を塗付することもできる。
【実施例】
【0040】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
【0041】
(接着材1の製造)
アクリル樹脂エマルション(固形分50重量%)を100重量部、造膜助剤5重量部、増粘剤6重量部、分散剤3重量部、酸化チタン分散液4重量部、黄色酸化鉄分散液12重量部、黒色酸化鉄分散液0.2重量部、弁柄分散液1.8重量部、重質炭酸カルシウム(平均粒子径5μm)300重量部、消泡剤1重量部を常法により均一に混合して、接着材1を製造した。この接着材1における粉粒体の容積濃度は70%である。
【0042】
(接着材2の製造)
アクリル樹脂エマルション(固形分50重量%)を100重量部、造膜助剤5重量部、増粘剤6重量部、分散剤3重量部、酸化チタン分散液4重量部、黄色酸化鉄分散液12重量部、黒色酸化鉄分散液0.2重量部、弁柄分散液1.8重量部、重質炭酸カルシウム(平均粒子径5μm)192重量部、消泡剤1重量部を常法により均一に混合して、接着材2を製造した。この接着材2における粉粒体の容積濃度は60%である。
【0043】
(接着材3の製造)
アクリル樹脂エマルション(固形分50重量%)を100重量部、造膜助剤5重量部、増粘剤6重量部、分散剤3重量部、酸化チタン分散液4重量部、黄色酸化鉄分散液12重量部、黒色酸化鉄分散液0.2重量部、弁柄分散液1.8重量部、重質炭酸カルシウム(平均粒子径5μm)460重量部、消泡剤1重量部を常法により均一に混合して、接着材3を製造した。この接着材3における粉粒体の容積濃度は78%である。
【0044】
(化粧シート建材1の製造)
御影石調の凹凸を有するシリコンゴム製型枠内に、装飾材用組成物1(アクリル樹脂100重量部(固形分)、粒子径0.1〜2mmの着色骨材混合物(黒色:褐色=2:8)360重量部、造膜助剤18重量部、増粘剤6重量部、消泡剤3重量部の混合物)を流し込み、一旦ガラスクロスを載置した後、さらに装飾材用組成物1を型枠内に流し込み、型枠ごと40℃で3日間養生した後脱型した。以上の製造方法によって、乾燥膜厚3〜5mmの化粧シート建材1を得た。
【0045】
(化粧シート建材2の製造)
砂岩調の凹凸を有するシリコンゴム製型枠内に、装飾材用組成物2(アクリル樹脂100重量部(固形分)、酸化チタン分散液7重量部、黄色酸化鉄分散液24重量部、黒色酸化鉄分散液0.4重量部、弁柄分散液3.5重量部、重質炭酸カルシウム(平均粒子径8μm)150重量部、粒子径0.1〜0.3mmの寒水石280重量部、造膜助剤18重量部、増粘剤8重量部、消泡剤4重量部の混合物)を流し込み、一旦ガラスクロスを載置した後、さらに装飾材用組成物2を型枠内に流し込み、型枠ごと40℃で3日間養生した後脱型した。以上の製造方法によって、乾燥膜厚3〜5mmの化粧シート建材2を得た。
【0046】
(化粧シート建材3の製造)
御影石調の凹凸を有するシリコンゴム製型枠内に、装飾材用組成物3(アクリル樹脂100重量部(固形分)、酸化チタン分散液8重量部、黄色酸化鉄分散液23重量部、黒色酸化鉄分散液0.4重量部、弁柄分散液3.6重量部、重質炭酸カルシウム(平均粒子径8μm)180重量部、粒子径0.1〜0.3mmの寒水石250重量部、造膜助剤18重量部、増粘剤8重量部、消泡剤4重量部の混合物)を流し込み、一旦ガラスクロスを載置した後、さらに装飾材用組成物3を型枠内に流し込み、型枠ごと40℃で2日間養生した後脱型した。脱型後のベース層表面にW/W型多彩模様塗料(黒色色粒:褐色色粒=2:8)を塗付け量0.4kg/mでスプレー塗装し、40℃で1日間養生することによって、乾燥膜厚3〜5mmの化粧シート建材3を得た。
【0047】
(化粧シート建材4の製造)
御影石調の凹凸を有するシリコンゴム製型枠内に、装飾材用組成物4(アクリル樹脂100重量部(固形分)、酸化チタン分散液8重量部、黄色酸化鉄分散液23重量部、黒色酸化鉄分散液0.4重量部、弁柄分散液3.6重量部、重質炭酸カルシウム(平均粒子径8μm)400重量部、粒子径0.1〜0.3mmの寒水石120重量部、中空粒子(平均粒子径40μm、密度0.025g/cm)30重量部、造膜助剤18重量部、増粘剤8重量部、消泡剤4重量部の混合物)を流し込み、一旦ガラスクロスを載置した後、さらに装飾材用組成物4を型枠内に流し込み、型枠ごと40℃で2日間養生した後脱型した。脱型後のベース層表面にW/W型多彩模様塗料(黒色色粒:褐色色粒=2:8)を塗付け量0.4kg/mでスプレー塗装し、40℃で1日間養生することによって、乾燥膜厚3〜5mmの化粧シート建材4を得た。
【0048】
(試験例1)
スレート板上に、板状のポリスチレンフォームを貼り付け断熱材層を形成し、さらにその上に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂20重量部、アミン硬化剤20重量部、ポルトランドセメント100重量部、タルク80重量部、酸化チタン80重量部、水30重量部、添加剤1重量部からなるスラリーを塗付け量0.5kg/mで塗付し、さらにその上にガラスメッシュを積層し、さらにその上に該スラリーを塗付け量0.5kg/mで塗付して補強層を形成したものを塗装対象の基材とした。
この基材の全面に対し、接着材1を塗付け量0.8kg/mでローラー塗装し、直ちに化粧シート建材1を貼り付けた後、14日間養生した。なお、以上の工程はすべて標準状態(気温23℃、相対湿度50%)下で行った。
上記方法により、御影石調の美観性を有する仕上面を得ることができた。また、上記方法で得られた試験体を300×300mmに切り出して耐久性試験を実施したところ、異常は認められなかった。なお、耐久性試験は、水浸漬(23℃)18時間→−20℃3時間→80℃3時間を1サイクルとする温冷繰返しを合計10サイクル行うことにより行った。
【0049】
(試験例2)
化粧シート建材1に替えて化粧シート建材2を使用した。これ以外は、試験例1と同様の方法で試験体を作製した。
試験例2では、砂岩調の美観性を有する仕上面を得ることができ、耐久性試験においても異常は認められなかった。
【0050】
(試験例3)
化粧シート建材1に替えて化粧シート建材3を使用した。これ以外は、試験例1と同様の方法で試験体を作製した。
試験例3では、御影石調の美観性を有する仕上面を得ることができ、耐久性試験においても異常は認められなかった。
【0051】
(試験例4)
化粧シート建材1に替えて化粧シート建材4を使用した。これ以外は、試験例1と同様の方法で試験体を作製した。
試験例4では、御影石調の美観性を有する仕上面を得ることができ、耐久性試験においても異常は認められなかった。
【0052】
(試験例5)
化粧シート建材1に替えて化粧シート建材4を使用し、接着材1に替えて接着材2を使用した。これ以外は、試験例1と同様の方法で試験体を作製した。
試験例5では、御影石調の美観性を有する仕上面を得ることができ、耐久性試験においても異常は認められなかった。
【0053】
(試験例6)
化粧シート建材1に替えて化粧シート建材4を使用し、接着材1に替えて接着材3を使用した。これ以外は、試験例1と同様の方法で試験体を作製した。
試験例6では、御影石調の美観性を有する仕上面を得ることができ、耐久性試験においても異常は認められなかった。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明構造体の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0055】
A:外断熱構造基材
B:接着材層
C:化粧シート建材
1:壁体材料
2:断熱材層
3:補強層
4:補強材層
5:装飾材層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物外壁面の壁体材料上に断熱材層を設けた外断熱構造基材に対し、
接着材層を介して、
補強材層及び装飾材層から構成される化粧シート建材を施工する外断熱装飾仕上げ工法。
【請求項2】
前記外断熱構造基材は、断熱材層上に補強層を設けたものであり、該補強層は、ポリマーセメント層及び/または網状体からなるものである請求項1記載の外断熱装飾仕上げ工法。
【請求項3】
前記装飾材層は、
(1)結合材、及び有色骨材を含有する組成物により形成されたもの、
(2)結合材、着色顔料、及び粉粒体を含有する組成物により形成されたもの、
(3)多彩模様塗料により形成されたもの、
のいずれか、またはこれらを組み合わせたものである請求項1または2記載の外断熱装飾仕上げ工法。
【請求項4】
前記化粧シート建材は目地模様を有するものである請求項1〜3のいずれかに記載の外断熱装飾仕上げ工法。
【請求項5】
前記接着材層は、結合材、及び平均粒子径が0.1〜100μmである粉粒体を必須成分とし、当該粉粒体の容積濃度が40〜90%である接着材により形成されたものである請求項1〜4のいずれかに記載の外断熱装飾仕上げ工法。
【請求項6】
建築物外壁面の構造体であって、
壁体材料上に断熱材層を設けた外断熱構造基材に対し、
接着材層を介して、
補強材層及び装飾材層から構成される化粧シート建材が積層された外断熱装飾仕上げ構造体。
【請求項7】
前記外断熱構造基材は補強層を有し、該補強層は、ポリマーセメント層及び/または網状体からなるものである請求項6記載の外熱装飾仕上げ構造体。
【請求項8】
前記装飾材層は、
(1)結合材、及び有色骨材を含有する組成物により形成されたもの、
(2)結合材、着色顔料、及び粉粒体を含有する組成物により形成されたもの、
(3)多彩模様塗料により形成されたもの、
のいずれか、またはこれらを組み合わせたものである請求項6または7記載の外断熱装飾仕上げ構造体。
【請求項9】
前記化粧シート建材は目地模様を有するものである請求項6〜8のいずれかに記載の外断熱装飾仕上げ構造体。
【請求項10】
前記接着材層は、結合材、及び平均粒子径が0.1〜100μmである粉粒体を必須成分とし、当該粉粒体の容積濃度が40〜90%である接着材により形成されたものである請求項6〜9のいずれかに記載の外断熱装飾仕上げ構造体。

【図1】
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【公開番号】特開2008−308980(P2008−308980A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−122770(P2008−122770)
【出願日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願人】(000180287)エスケー化研株式会社 (227)
【Fターム(参考)】