説明

外用組成物

【課題】精油の配合濃度が低濃度であっても、充分な芳香療法の効果を奏するように調製された外用組成物を提供する。また、所定の香料の組み合わせによって鼻腔を拡張することができる外用組成物を提供する。
【解決手段】ハッカ油及び柑橘系精油からなる群より選択される少なくとも1種、ペパーミント油ならびにl−メントールを含有する外用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香料を含有する外用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
耳鼻科領域の疾患は、気道の閉塞感など不快な感覚を伴うものもある。鼻では、アレルゲンやウイルスの侵入により、炎症が起こり粘膜の腫脹や膿がたまる事により、いわゆる鼻詰まりの症状を生じる。これらの症状の治療には、抗ヒスタミン剤、ステロイド剤、抗生剤などの種々の薬剤が多岐の投与法で使用されているが、眠気を生じやすい、適用禁忌がある、副作用があるなど安全性や汎用性の面で問題があった。
【0003】
一方、上記のような化学療法に頼らずに鼻詰まり等の症状の改善を図る方法として芳香療法が挙げられる。芳香療法は、植物に含まれる揮発性の精油を利用して、心身の健康を増進するものであり、適当な使用法においては副作用のない安全なものであることが知られている。通常外用で使用され、当該療法では精油成分の濃度を1〜3%とすると効果を奏するといわれており(例えば、非特許文献1を参照)、安全性の面を考慮するとなるべく低濃度での使用が勧められる。しかし、あまりに低濃度であると効果を奏しないことが懸念されている。
【非特許文献1】アロマテラピー<芳香療法>の理論と実際 ロバート・ティスランド 著、高山林太郎 訳
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、所定の香料を組み合わせることで、組成物中に含有される精油の濃度が低濃度であっても、鼻腔を拡張することができるという芳香療法の効果を十分に奏するように調製された外用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、所定の香料の組み合わせ(香料成分)を含有する外用組成物を使用することで、組成物中の香料が低濃度であっても、その香料成分を吸入することで、鼻腔が拡張されること、つまり、充分に芳香療法の効果が得られることが確認された。当該外用組成物は、鼻粘膜に直接的に使用した場合には、吸入に加えて香料成分が粘膜を通じて吸収されるため鼻腔拡張効果にさらに優れ、かつ味や清涼感の点で優れた使用感を実現し得るものであった。本発明は、これらの知見に基づいて、さらに研究を重ねて完成されたものである。
【0006】
即ち、本発明は、下記に掲げる発明を提供する:
項1.ハッカ油及び柑橘系精油からなる群より選択される少なくとも1種、ペパーミント油ならびにl−メントールを含有する外用組成物。
項2.ハッカ油及び柑橘系精油からなる群より選択される少なくとも1種、ならびにペパーミント油及びl−メントールを総量で0.001〜1重量%含有する、項1記載の外用組成物。
項3.ペパーミント油1重量部に対し、l−メントールを0.03〜0.15重量部、ハッカ油を0.017〜0.037重量部及び/又は柑橘系精油を0.05〜0.3重量部の割合で含有する、項1又は2記載の外用組成物。
項4.柑橘系精油が、レモン油、ライム油、グレープフルーツ油、オレンジ油、マンダリン油及びベルガモット油からなる群より選択される少なくとも1種である、項1〜3のいずれかに記載の外用組成物。
項5.更に、基剤として(A)第四級アンモニウム塩系防腐剤、(B)エデト酸及び/又はその塩、並びに(C)ポリソルベートを含有し、該基剤中、
(A)第四級アンモニウム塩系防腐剤1重量部に対して、(C)ポリソルベートを0.5〜110重量部、且つ
(C)ポリソルベート1重量部に対して、(B)エデト酸及び/又はその塩を0.001〜1.5重量部の割合で含有する項1〜4のいずれかに記載の外用組成物。
項6.前記基剤が、(A)第四級アンモニウム塩系防腐剤1重量部に対して、(C)ポリソルベートを1〜60重量部、且つ
(C)ポリソルベート1重量部に対して、(B)エデト酸及び/又はその塩を0.002〜0.08重量部の割合で含有する、項5記載の外用組成物。
項7.外用組成物中に、(A)第四級アンモニウム塩系防腐剤を0.0001〜0.02重量%含有する、項5又は6に記載の外用組成物。
項8.鼻に適用される組成物である、請求項1〜7のいずれかに記載の組成物。
項9.組成物中の、ハッカ油及び柑橘系精油からなる群より選択される少なくとも1種、ペパーミント油ならびにl−メントールの濃度を、総量で0.001〜3重量%に調製する工程を含む、外用組成物の製造方法。
項10.前記組成物が、ペパーミント油1重量部に対し、ハッカ油を0.017〜0.037重量部及び/又は柑橘系精油を0.05〜0.3重量部の割合で含有する、項9に記載の外用組成物の製造方法。
【0007】
以下、本発明について、詳述する。
【0008】
本発明の外用組成物は、特定の香料の組み合わせによって調製される香料成分を含有することを特徴とする。以下、本発明の外用組成物の各成分について説明する。
【0009】
(i)香料成分
本発明において使用される香料成分は、ハッカ油及び柑橘系精油からなる群より選択される少なくとも1種、ならびにペパーミント油及びl−メントールを組み合わせて調製されるものである。
【0010】
本発明において使用される柑橘系精油は、従来公知のものから選択することができ、特に限定されないが、例えばレモン油、ライム油、グレープフルーツ油、オレンジ油、マンダリン油、ベルガモット油等が挙げられる。これらの柑橘系精油のうち、好ましくはレモン油、ライム油、グレープフルーツ油、オレンジ油であり、より好ましくはレモン油、ライム油、グレープフルーツ油である。これらの柑橘系精油は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0011】
上記柑橘系精油は、各種柑橘類を原料として従来公知の方法によって調製することができる。調製方法の例として、水蒸気蒸留法、溶媒抽出法など一般的な方法を採用することができる。また、本発明においては、柑橘類の皮を圧搾して得られる所謂「エッセンス」を使用することもできる。
【0012】
また、簡便な方法としては、柑橘系精油として商業的に入手可能なものを使用することができ、例えば長谷川香料株式会社、高砂香料工業株式会社、稲畑香料株式会社等から入手することができる。
【0013】
本発明において使用されるハッカ油は、上記の精油調製方法に従って得られたものを用いることができる。また、簡便には商業的に入手可能なものを用いることもでき、上記柑橘系精油と同様の販売元から入手することができる。
【0014】
ペパーミント油についても、上記の精油調製方法に従って得られたものを用いてもよく、上記柑橘系精油と同様の販売元から入手することもできる。
【0015】
l−メントールについては、例えば、長岡実業株式会社、東洋薄荷工業株式会社、高砂香料工業株式会社等から購入することができる。
【0016】
本発明の外用組成物中には、ハッカ油及び柑橘系精油からなる群より選択される少なくとも1種、ならびにペパーミント油及びl−メントールからなる香料成分を総量で0.001〜1重量%、好ましくは0.035〜1重量%、より好ましくは0.06〜1重量%含有する。
【0017】
また、前記香料成分は、ペパーミント油1重量部に対し、ハッカ油0.017〜0.037重量部、好ましくは0.021〜0.033重量部、柑橘系精油を0.05〜0.3重量部、好ましくは0.08〜0.17;l−メントールを0.03〜0.15重量部、好ましくは0.05〜0.13重量部の割合で含有する。また、ハッカ油および柑橘系精油は組み合わせて使用することができる。
【0018】
香料成分を上記のような割合で配合するによって、より一層優れた鼻腔拡張効果が奏される。従来の芳香療法の分野では、約1〜3重量%の精油を用いることが一般的であり、あまりに低濃度の場合は充分な効果が得られないと考えられていた。しかしながら、本発明者らは、上記所定の香料を組み合わせて配合した外用剤を使用することによって、従来よりも組成物中の香料濃度が低濃度領域であっても充分に本発明の鼻腔拡張効果が奏されることを見出した。
【0019】
本発明の好ましい実施態様としては、例えば、ペパーミント油1重量部に対して、l−メントール0.05〜0.13重量部;ハッカ油0.021〜0.033重量部、又はレモン油0.08〜0.17重量部もしくはライム油0.08〜0.17重量部の割合で含有する香料成分を、総量で0.035〜1重量%含有する外用組成物が挙げられる。
【0020】
上記香料成分に加え、本発明の効果を損なわない範囲で、他の香料を組み合わせて用いることもできる。本発明において使用され得る上記以外の香料としては、例えばエチルブチレート、リナロール、オクタナール、デカナール、シトロネラール、ゲラニルアセテート等の合成香料;ラベンダー、カモミール、クレリセージ、サイプレス、サンダルウッド、ジュニパー、ゼラニウム、ティートゥリー、マージョラム、ユーカリ、レモングラス、ローズ、ローズウッド、ローズマリー、ジャスミン、セージ、パセリ、タイム、ラベンサラ、オレガノ、バジル、フェンネル、スイートマジョラム、ウインターグリーン、エストラゴン、サイプレス、イモーテル、コリアンダー、ジンジャー、キャラウェイ、スペアミント、スズラン、パチョリ、オランダすいせん、びゃくだん、チョウジ、テレビン、ローマカミツレ、チモール、シナモン、杉葉、カヤプテなどの精油等が挙げられる。これらの香料を使用する場合の配合量は、本発明の効果を奏するように、上記香料成分における各種香料の配合量を参照することによって適宜設定することができる。ただし、他の香料として精油を使用する場合は、本発明の外用組成物中の精油の総量を1重量%未満とすることが望ましい。
【0021】
本発明の所定の香料成分を含有する外用組成物は、香料成分の濃度が従来の芳香療法の分野で一般的に知られている濃度よりも低濃度であっても鼻腔を拡張する効果に優れており、鼻づまり等の違和感の解消に有用である。本発明において使用される香料成分によって鼻腔拡張効果が得られることは、本発明者等によって初めて見出されたものである。また、本発明の外用組成物は、使用時の苦味が少なく、清涼感があり、優れた使用感が得られることから、鼻粘膜への直接適用にも適している。
【0022】
(ii)基剤
本発明の外用組成物は、用途に合わせ、従来公知の方法に従って適宜好適な剤型に調整して用いることができる。本発明の外用組成物を鼻に適用する場合の剤型としては、例えば、ジェル剤、軟膏剤、クリーム剤、液剤(乳液剤、鼻洗浄用、点鼻用含む)、浴用剤、吸入剤(スプレー様、エアゾール様含む)、貼付剤等が挙げられる。
【0023】
これら製剤に製する為に基剤を適当量配合することが必要である。例えば、以下に限られるものではないが、パラフィン、ワセリン、スクワラン、パラフィン、白ロウ、プラスチベース、シリコン油、シリコン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、オリーブ油、綿実油、大豆油、ヤシ油などの油系基剤;エタノール(無水含む)、メタノール、イソプロピルメチルセルロースなどの低級アルコール;セタノール、ステアリルアルコールなどの高級アルコール;脂肪酸エステル(ミリスチン酸イソプロピル、ソルビタン脂肪酸エステルなど)、高級脂肪酸塩型乳化剤;高度精製卵黄レシチン、大豆レシチン、精製大豆レシチン、サラシミツロウ、プロピレンカーボネート、卵黄リン脂質、卵黄油、ヤシ油脂肪酸、ラウリル硫酸ナトリウム、その他イオン性、非イオン性界面活性剤などの乳化剤;リン酸、酢酸、塩酸、水酸化ナトリウムなどのpH調整剤、カオリン、酸化チタン、タルク、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、酸化鉄、酸化亜鉛、デンプン類などの粉末成分;水;カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸及びその部分中和物、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、プルラン、寒天、ゼラチン、アルギン酸及びその塩、カラギーナン、ガム類などの水溶性高分子;天然ゴム;イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、ポリエチレンエラストマー等の合成ゴム;スチレン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマーなどの熱可塑性エラストマー;ポリエチレンテレフタラート等のポリエステル;ポリプロピレン、ポリアセタール、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン等の熱可塑性合成樹脂;合成繊維から構成される布帛(不織布、織物、編物);天然繊維から構成される布帛(不織布、織物、編物);金属フォイルなどの支持体などが挙げられる。
【0024】
また、本発明の外用組成物は、例えば、鼻腔粘膜などへの直接的な適用により香料成分の吸入及び吸収が得られる際に特に効果を奏することができる。例えば、鼻腔粘膜に適用する場合、本発明の外用組成物は、粘膜への適用が容易であるという点から水性の基剤であることが好ましい。また、水や生理食塩水そのものを単独で基剤として使用することもできる。
【0025】
また、鼻粘膜への刺激が少なく、安定性が高い(析出物が発生しにくい)基剤を用いることによって、さらに鼻腔洗浄の用途に適した組成物を提供することができる。この様な観点から、上記香料成分を、(A)第四級アンモニウム塩系防腐剤、(B)エデト酸及び/又はその塩、(C)ポリソルベート類を所定の割合で含有する基剤に配合することが好ましい。以下、当該基剤の各成分について説明する。
【0026】
(A)第四級アンモニウム塩系防腐剤
第四級アンモニウム塩系防腐剤とは、防腐及び/又は殺菌作用を有する第四級アンモニウム塩であり、公知の防腐及び/又は殺菌成分である。第四級アンモニウム塩系防腐剤としては、具体的には、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化デカリニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルピリジニウムなどが例示される。これらの中でも、危険性が低く無臭であるうえに抗菌スペクトルが広く、安全性および有効性に優れる点から、好ましくは、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化デカリニウムであり、更に好ましくは塩化ベンザルコニウムである。当該(A)成分は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0027】
(B)エデト酸及び/又はその塩
エデト酸とは、別名エチレンジアミン四酢酸とも称されており、公知の化合物である。本発明の外用組成物において、(B)成分として使用されるエデト酸の塩としては、例えば、2ナトリウム塩、2ナトリウムカルシウム塩、4ナトリウム塩等が挙げられる。これらのエデト酸の塩は、二水物や四水物等の水和物であってもよい。これらの中でも、安全性に優れ、水に対する溶解度が高いためポリソルベート等の他成分に作用しやすい点から、好ましくは、エデト酸の2ナトリウム塩であり、更に好ましくはエデト酸の2ナトリウム塩である。当該(B)成分は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0028】
(C)ポリソルベート
ポリソルベートとは、ソルビタン脂肪酸エステルにエチレンオキシド20モルを付加させた親水性の非イオン界面活性剤である。本発明に使用されるポリソルベートとして、具体的には、ポリソルベート80(ポリオキシエチレンソルビタンオレエート)、ポリソルベート65(ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート)、ポリソルベート60(ポリオキシエチレンソルビタンステアレート)、ポリソルベート40(ポリオキシエチレンソルビタンパルミテート)、ポリソルベート20(ポリオキシエチレンソルビタンラウレート)、ポリソルベート85(ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート)等が例示される。これらの中でも、外用組成物の安定性、とくに(A)第四級アンモニウム塩系防腐剤の溶解性を一層向上させるという点から、好ましくはポリソルベート80、ポリソルベート60であり、更に好ましくはポリソルベート80である。当該(C)成分は、1種を単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0029】
本発明の外用組成物の安定性をより向上させ、特に粘膜に適用する場合に感じる刺激性をより一層低減させて使用感をも良好にするという観点から、上記(A)〜(C)成分の組み合わせ態様として、塩化ベンザルコニウム、エデト酸の2ナトリウム塩、及びポリソルベート80の組み合わせが好適に例示される。
【0030】
本発明の外用組成物において、前記(A)成分1重量部に対する(C)成分の配合比率は、0.5〜110重量部であり、好ましくは0.7〜100重量部であり、より好ましくは1〜60重量部である。当該配合比率が0.5重量部未満または110重量部を超えると、低温下および高温下での安定性が低下し、析出物が発生したり、不快な臭いがする。
【0031】
また、本発明の外用組成物において、前記(C)成分1重量部に対する(B)成分の配合比率は、0.001〜1.5重量部であり、好ましくは0.002〜1重量部であり、より好ましくは0.002〜0.08重量部である。当該配合比率が0.001重量部未満であると、高温下での安定性が低下し、また、1.5重量部を超えると、低温下および高温下での安定性が低下する。安定性が低下すると、析出物が発生したり、不快な臭いがする傾向がある。
【0032】
上記の比率を具備するように(A)、(B)及び(C)成分を含有することにより、優れた安定性を獲得し、粘膜使用時でも刺激性がなく良好な使用感を得ることができる。
【0033】
本発明の外用組成物において、前記(A)成分の濃度としては、前記(A)〜(C)成分の配合比率、(A)成分の種類等に応じて異なるが、該組成物当たり、通常0.01×10−2〜0.1重量%、好ましくは0.01×10−1〜0.05重量%、更に好ましくは0.02×10−1〜0.02重量%である。このような範囲内で、(A)成分を含有することにより、防腐乃至殺菌作用を有効に発揮させることができる。
【0034】
また、前記(B)及び(C)成分の濃度については、前述する(A)〜(C)成分の配合比率を充足する範囲内で設定される限り特に制限されないが、これらの成分の配合量の一例として、外用組成物当たり、通常(B)成分が0.01×10−4〜1.8重量%且つ(C)成分が0.05×10−2〜2.2重量%;好ましくは(B)成分が0.02×10−4〜1.2重量%且つ(C)成分が0.07×10−2〜2重量%;更に好ましくは(B)成分が0.02×10−4〜0.1重量%且つ(C)成分が0.01×10−1〜1.2重量%が例示される。
【0035】
(A)成分を0.02重量%以下で含有する組成物では、従来、40℃以上の温度条件では析出物の発生が顕著になり、特に安定性が損なわれ易くなるという問題点があったが、(A)、(B)及び(C)成分が上記の比率を満たすことにより、低濃度で(A)成分を含有していながらも、優れた安定性を備えることができる。従って、低濃度で(A)成分を含有する組成物における長年の問題点を解決するという観点から、本発明の外用組成物の好適な一実施態様として、(A)成分が0.02重量%以下の低濃度であることが挙げられる。低濃度で(A)成分を含有する場合として、より具体的には、外用組成物当たり、(A)成分が、0.01×10−2〜0.02重量%、好ましくは0.01×10−1〜0.01重量%、更に好ましくは0.02×10−1〜0.05×10−1重量%となる濃度が例示される。このような濃度で(A)成分を使用することによって、特に鼻腔粘膜の洗浄等を目的とする場合に好適である。
【0036】
また、(A)成分を0.02重量%以下で含有する場合において、前記(B)及び(C)成分の濃度については、前述する(A)〜(C)成分の配合比率を充足する範囲内で適宜設定されるが、これらの成分の濃度として、外用組成物当たり、(B)成分が0.01×10−4〜0.1重量%且つ(C)成分が0.05×10−2〜1.2重量%;好ましくは(B)成分が0.02×10−4〜0.05重量%且つ(C)成分が0.07×10−2〜0.12重量%;更に好ましくは(B)成分が0.02×10−4〜0.25×10−1重量%且つ(C)成分が0.01×10−1〜0.06重量%が挙げられる。
【0037】
以上のように(A)〜(C)成分を含有する基剤は、析出物や不快な臭いが発生することがなく、経時的安定性や温度変化に対する安定性に優れ、しかも粘膜に適用する場合も低刺激性であり使用感が良好である。従って、本発明の外用組成物の基剤として好適に使用することができる。
【0038】
(iii)その他の成分
本発明の外用組成物には、使用感を向上させるために、多価アルコール及び等張化剤の中の1種又は2種以上を組み合わせて配合しておくことが望ましい。特に、その使用感を、長期保存や温度変化等に影響されず安定で、しかも良好なものにするには、多価アルコール及び等張化剤の両方を組み合わせて含有することが望ましい。
【0039】
ここで、多価アルコールとしては、例えば、グリセリン(濃グリセリンを含む)、プロピレングリコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、マンニトール、キシリトール等が挙げられる。これらの多価アルコールは1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの多価アルコール中で、外用組成物の等張化に加え、味および香りの点で優れることから、好ましくはグリセリンである。多価アルコールを配合する場合、その配合割合としては、例えば0.0125〜3重量%、好ましくは0.05〜2.5重量%、更に好ましくは0.2〜2重量%が挙げられる。
【0040】
等張化剤としては、具体的には、塩化ナトリウム、塩化カリウム、ホウ酸、ホウ砂等が挙げられる。これらの中で、好ましくは塩化ナトリウム、塩化カリウムが挙げられる。これらの等張化剤は、1種のみを使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。等張化剤を配合する場合、その配合割合は、他の成分の配合量等に応じて適宜設定されるが、通常0.15重量%〜1.5重量%、好ましくは0.3〜1.2重量%、更に好ましくは0.45〜0.9重量%となる割合が挙げられる。
【0041】
前記多価アルコールおよび等張化剤を組み合わせて使用し、前記範囲の配合量とすることで、特に優れた使用感の外用組成物とすることができる。
【0042】
本発明の外用組成物において、グリセリン、塩化ナトリウムを組み合わせて含有させることにより、特に良好な使用感を付与することができる。また、かかる態様の外用組成物によれば、長期保存又は環境的影響によっても、その良好な使用感が損なわれることがない。
【0043】
本発明の外用組成物には、上記成分の他に、消炎剤、殺菌剤、抗菌剤、収斂剤、充血除去剤、抗アレルギー剤、抗ヒスタミン剤、ビタミン類、アミノ酸類等の薬理成分や、溶解剤、増粘剤、界面活性剤、pH調整剤、酸化防止剤、着色剤、防腐剤、緩衝剤、安定化剤等の添加剤を適当量含んでいても良い。
【0044】
本発明の外用組成物を水性組成物とする場合、滅菌水、蒸留水、精製水、海洋深層水等に上記香料成分及び基剤の配合成分を所定量添加して溶解させ、必要に応じて滅菌処理に供することにより製することができる。
【0045】
上記所定の香料成分及び基剤を含む本発明の外用組成物は、鼻腔の拡張を目的として適用することができる。適用箇所としては鼻周辺(鼻下など)、胸部、頸部など鼻に近い箇所または鼻腔内があげられる。鼻に近い箇所に適用することで、本発明の外用組成物から揮発した香料成分を鼻呼吸を介して吸入することが可能になる。とくに効果的な適用箇所としては、香料成分の吸収および吸収の両方の効果が得られる、鼻腔内への直接的な適用があげられる。
【0046】
本発明の外用組成物の適用の方法としては、適用箇所により適宜選択することができるが、例えば、クリーム剤、軟膏剤、ジェル剤、液剤の塗布、貼付剤の貼付、液剤による鼻腔洗浄、ネブライザー、加圧式定量噴霧式吸入器などによる吸入などがあげられる。
【0047】
本発明の外用組成物は、(A)〜(C)成分を上記の割合で含有する基剤を使用する場合、光が透過可能な透明容器にも充填できる。従来、析出物が発生し易い外用組成物は、内容物を目視にて確認できない容器に充填されることが一般的であった。従来は、このような容器を使用することによって、析出物の発生が認識されて使用者に不快な心理的影響を与えるのを回避していた。これに対して、本発明の外用組成物は、(A)〜(C)成分を上記の割合で含有する基剤を使用する場合、透明容器に充填するのに適している。即ち、本発明の外用組成物を透明容器に充填した場合、長期間保存しても、析出物が発生することなく安定であるので、容器内の外用組成物の性状を目視できるようにしても、使用者に不快な心理的影響を与える等の不都合はない。更に、本発明の外用組成物を透明容器に充填することによって、使用者にとっては、容器内部の残存量を容易に確認可能になるという利点があり、その実用的価値が高められている。
【0048】
本発明の外用組成物を充填できる透明容器は、ガラス製、ポリエチレンテレフタレート製、ポリエチレン製、ポリプロピレン製等のいずれであってもよいが、特にガラス製又はポリエチレンテレフタレート製に充填することにより、本発明の外用組成物は、経時的安定性や温度変化に対する安定性をより有効に発揮することができる。
【発明の効果】
【0049】
本発明の外用組成物は、所定の香料を含有することによって、優れた鼻腔拡張効果を発揮し得るものである。本発明のこの様な効果に基づいて鼻通気性を良くすることができることから、鼻づまりの症状の改善を目的とする用途にも好適に使用され得る。また、本発明の外用組成物に含有される所定の香料成分によれば、従来の芳香療法の分野においては充分な効果を奏することができないと考えられていた低濃度領域であっても、優れた鼻腔拡張効果を発揮することができ、安全性の高いものである。さらに、本発明の外用組成物は、使用時の苦味が少なく、清涼感があり、良好な使用感が得られることから、鼻粘膜への直接適用においても問題がない。
【0050】
本発明の外用組成物は用途により、多様な製剤に製することができるが、さらに、上記所定の基剤を使用することによって、粘膜へ適用しても刺激が少なく、より一層使用感に優れた外用組成物を提供することができる。本発明において好適な上記基剤は、(A)第四級アンモニウム塩系防腐剤を含有していながら、透明容器内で経時的安定性や温度変化に対する安定性等に優れ、しかも粘膜に適用した際の使用感が良好なものである。
【0051】
また、従来、第四級アンモニウム塩系防腐剤を0.02重量%以下で含有する組成物では、40℃以上の温度条件では不安定になるため、製造時における滅菌処理、市場における流通段階での保管、使用者による保管等によって、上記温度条件下に晒されると、析出物の発生が顕著になるという問題点があった。これに対して、(A)〜(C)成分を上記の割合で含有する基剤を用いた本発明の外用組成物では、第四級アンモニウム塩系防腐剤を0.02重量%以下で含有していながらも、優れた安定性を備えおり、その有用性は極めて高いといえる。
【0052】
また、(A)〜(C)成分を上記の割合で含有する基剤を使用することによって、本発明の外用組成物を透明容器に充填した場合、内部の残存量を容易に確認できるという利点だけでなく、長期保存をしても、また温度変化等の環境的影響を受けても安定であるという有利な効果があり、その実用的価値は非常に高いものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0053】
以下、実施例及び処方例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0054】
試験例1.鼻腔抵抗値試験
表1に示す組成の外用組成物を調製した。具体的には、香料成分およびポリソルベート80を表1に示す処方にしたがい溶解し、混和液を調製した。他方、香料成分およびポリソルベート80以外の成分を水に溶解し、水溶液を調製した。調製した混和液と水溶液を混合して外用組成物を調製した。
【0055】
実施例5及び6については、実施例1の基剤のうち水10重量%を除いたものを調製し、これを撹拌しながら、CVP(カルボキシビニルポリマー)及びHPC−H(ヒドロキシプロピルセルロース−H)を徐々に加え、一様になったところに残りの水および/またはエタノールを加え、さらに撹拌してゲル状に調製した。
【0056】
パネラー(12人)に、調製した実施例1〜4の外用組成物(10ml/片鼻)で鼻洗浄を実施した。鼻洗浄は、表1に示される各組成物を鼻腔内に流し込み、口より排出することによって行った。また、実施例5及び6については適量を鼻周辺及び鼻腔内に指で塗布し、1分間放置後に、立体遮蔽を除くべく製剤をふき取った。
【0057】
鼻腔通気度計MPR-3100(日本光電工業(株)製)を用いて鼻洗浄前と鼻洗浄10分後の鼻腔通気度を測定した。測定及び評価方法は以下の通りである。
【0058】
鼻腔通気度計で被験者の鼻腔圧が100Paのときの気流速度を測定し、以下の式によって鼻腔通気度を算出した。
鼻腔通気度(l/sec/Pa)=気流速度(l/sec)/鼻腔圧(Pa)
ここで、鼻腔抵抗値=1/鼻腔通気度であることから、以下のように定義される。
鼻腔抵抗値(Pa/l/sec)=鼻腔圧(Pa)/気流速度(l/sec)
上記評価方法については、『鼻腔通気度の臨床検査への応用 -鼻粘膜の腫脹・収縮による鼻腔通気度の変化についての検討-』深見 雅也;耳鼻咽喉科展望 1998年31巻 補冊6号 第635〜658頁を参照した。
【0059】
上記式から求められた鼻腔抵抗値に基づいて、鼻洗浄前と洗浄後の鼻腔抵抗値の比を求め、パネラーの平均値を算出した。洗浄後の鼻腔抵抗値が洗浄前に比べて20%以上改善していた組成物について、充分な鼻腔拡張効果が確認されたものとした。
【0060】
結果を下記表1に示す。
表中の略語は、以下の通りである。
EDTA・2Na:エデト酸2ナトリウム
CVP:カルボキシビニルポリマー
HPC−H:ヒドロキシプロピルセルロース−H
【0061】
【表1】

【0062】
表1に示されるように、本発明の外用組成物によれば、ハッカ油、ペパーミント油及びl−メントールを含有する組成物を用いた場合に充分な鼻腔拡張効果が確認された(実施例1、5及び6)。また、柑橘系精油のいずれか1種と、ペパーミント油及びl−メントールを含有する組成物を用いた場合にも充分な鼻腔拡張効果が確認された(実施例2〜4)。
【0063】
一方、ペパーミント油のみを含む組成物(比較例1)、l−メントールのみを含む組成物(比較例5)、ペパーミント油とl−メントールのみを含む組成物(比較例3)、ペパーミント油とハッカ油のみを含む組成物(比較例4)については、いずれも充分な鼻腔拡張効果が得られないことが示された。

試験例2.官能評価
パネラー(8人)に対して鼻洗浄を行い、官能評価を行った。官能評価は、清涼感及び苦味について各々5段階評価(最低1点、最高5点)として合計点を算出し、下記表2のとおり評価して、○以上を合格とした。なお、鼻洗浄は、試験例1に記載の方法に従った。
【0064】
【表2】

【0065】
結果を表3に示す。
【0066】
【表3−1】

【0067】
【表3−2】

【0068】
表3−1及び表3−2に示されるように、ペパーミント油1重量部に対してl−メントールを0.05〜0.13重量部;ハッカ油を0.017〜0.037重量部又は柑橘系精油を0.05〜0.25重量部の割合で含有する外用組成物(実施例1〜3,7〜20)は、良好な清涼感が得られ、苦味が低減されていた。
【0069】
また、ペパーミント油1重量部に対してl−メントールを0.08〜0.13重量部;ハッカ油を0.021〜0.033重量部の割合で含有する外用組成物(実施例8〜12)は、さらに清涼感に優れたものであることが示された。
【0070】
一方、ペパーミント油に対するl−メントール、ハッカ油又は柑橘系精油の配合割合が、いずれか1つでも本発明の範囲外である比較例1及び比較例6〜12については、良好な清涼感及び苦味の十分な低減効果が認められず、使用感の点で満足のいくものではないことが示された。
【0071】
処方例
表4〜7に記載の処方例にしたがい、外用組成物を調製した。
【0072】
表4及び5に記載の液剤については、香料成分およびポリソルベート80を表に示す処方にしたがい溶解し、混和液を調製した。他方、香料成分およびポリソルベート80以外の成分を水に溶解し、水溶液を調製した。調製した混和液と水溶液を混合して液剤を調製した。
【0073】
【表4】

【0074】
【表5】

【0075】
表6に記載のゲル剤、軟膏剤、クリーム剤は、定法に従い調製した。
【0076】
【表6】

【0077】
表7に記載の貼付剤は、香料成分及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油5〜N−メチル−2−ピロリドンを処方のとおり量りとり、加温溶解する。別にカルボキシビニルポリマー、カオリンおよびエデト酸ナトリウムを処方の通り混合する。更に精製水を一部とり、ポリビニルアルコールを混合する。以上できたものと水残部を撹拌混合して水系を製する。別にD−ソルビトール液、濃グリセリン、酸化チタン、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、カルメロースナトリウムおよびポリアクリル酸部分中和物を処方の通り量りとり、撹拌してグリセリン系を製する。水系及びグリセリン系を練合し、均一になったものを支持体(不織布)に展延、裁断して製した。
【0078】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハッカ油及び柑橘系精油からなる群より選択される少なくとも1種、ペパーミント油ならびにl−メントールを含有する外用組成物。
【請求項2】
ハッカ油及び柑橘系精油からなる群より選択される少なくとも1種、ならびにペパーミント油及びl−メントールを総量で0.001〜1重量%含有する、請求項1記載の外用組成物。
【請求項3】
ペパーミント油1重量部に対し、l−メントールを0.03〜0.15重量部、ハッカ油を0.017〜0.037重量部及び/又は柑橘系精油を0.05〜0.3重量部の割合で含有する、請求項1又は2記載の外用組成物。
【請求項4】
柑橘系精油が、レモン油、ライム油、グレープフルーツ油、オレンジ油、マンダリン油及びベルガモット油からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれかに記載の外用組成物。

【公開番号】特開2008−247821(P2008−247821A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−91791(P2007−91791)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000186588)小林製薬株式会社 (518)
【Fターム(参考)】