外観検査システムおよび外観検査方法
【課題】非透過層の表面上の欠陥のみを判別可能とすることで、歩留り向上につなげることができる外観検査システムおよび外観検査方法を提供することを目的とする。
【解決手段】カメラで撮像される画像において波長ごとに焦点距離が異なることを利用して、波長の短い青色成分については光透過層102の表面近くで焦点が合い、波長の長い赤色成分については非透過層101の表面近くで焦点が合うように、レンズ11−対象物100間の距離を設定する。これにより、撮像画像においては、光透過層102の表面上の欠陥に関しては赤色成分の方が輪郭がぼやけて面積が大きくなり、非透過層101の表面上の欠陥に関しては青色成分の方が輪郭がぼやけて面積が大きくなる。そこで、画像処理装置では、撮像画像の赤色成分と青色成分とを比較することで非透過層101上の像か否かを識別し、非透過層101の表面上の欠陥のみを判別する。
【解決手段】カメラで撮像される画像において波長ごとに焦点距離が異なることを利用して、波長の短い青色成分については光透過層102の表面近くで焦点が合い、波長の長い赤色成分については非透過層101の表面近くで焦点が合うように、レンズ11−対象物100間の距離を設定する。これにより、撮像画像においては、光透過層102の表面上の欠陥に関しては赤色成分の方が輪郭がぼやけて面積が大きくなり、非透過層101の表面上の欠陥に関しては青色成分の方が輪郭がぼやけて面積が大きくなる。そこで、画像処理装置では、撮像画像の赤色成分と青色成分とを比較することで非透過層101上の像か否かを識別し、非透過層101の表面上の欠陥のみを判別する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非透過層の一表面側に光透過層が積層された複層構造の構造体を検査対象に非透過層の表面上の欠陥の有無を検査する外観検査システムおよび外観検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、たとえばMEMS(Micro Electro Mechanical System)技術を用いた半導体製造プロセスにより作成されるセンサチップ等の構造体においては、目視での判断が難しい微細な欠陥をも検出可能な外観検査を行い、当該外観検査で良品(欠陥なし)と判断されたもののみを出荷することが一般的である。このような外観検査を行う外観検査システムとしては、対象物を撮像手段にて撮像し、得られた濃淡画像と、予め良品を撮像して得られる良品画像(マスタ画像)とを比較することで、対象物の欠陥の有無を判定するものが提案されている(たとえば特許文献1参照)。
【0003】
ところで、たとえばMEMS技術を用いて製造される構造体の一例として、図2に示すように、非透過層101となる半導体(たとえばシリコン)層と、光透過層102となるガラス板とを積層した複層構造のものが知られている。なお、図2の例では、半導体層におけるガラス板側の表面に凹凸が付けられており、当該凹凸によってガラス板と半導体層との間に空洞103が形成されている。
【0004】
このように非透過層101の一表面側に光透過層102が積層された複層構造の構造体を検査の対象物100とする場合、当該対象物100を光透過層102側から撮像することで、光透過層102の表面だけでなく、光透過層102を通して非透過層101の表面の画像を撮像することもできる。したがって、光透過層102の表面上の欠陥104(図5(a)参照)と、非透過層101の表面上(つまり、光透過層102の裏面側)の欠陥105(図5(b)参照)との両方を検出することができる。
【0005】
ここで、光透過層102の表面上の欠陥(たとえば光透過層102表面に付着した埃等の異物)104は、後の工程で除去可能であり、対象物100の動作・機能上の障害となるような致命的な欠陥ではなく、このような欠陥(以下、擬似欠陥という)104があっても対象物100としては良品となる。一方、非透過層101の表面上の欠陥(たとえば光透過層102と非透過層101との間に混入した埃等の異物)105は、後の工程で除去できず、対象物100の動作・機能上の障害となる致命的な欠陥であるから、このような欠陥105があると対象物100としては不良品となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−153804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、対象物100の画像と良品画像とを比較するだけの従来の外観検査方法では、光透過層102を通して非透過層101表面の画像を撮像するため、当該撮像画像から光透過層102の表面上の欠陥(擬似欠陥)か、あるいは非透過層101の表面上の欠陥かを識別することはできない。そのため、擬似欠陥があるだけの良品であっても不良品と誤って判断されてしまう無駄はねが生じ、歩留り低下につながるという問題がある。
【0008】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであって、非透過層の表面上の欠陥のみを判別可能とすることで、歩留り向上につなげることができる外観検査システムおよび外観検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、少なくとも非透過層の一表面側に光透過層が積層された積層体を対象物として、非透過層の表面上の欠陥を検査する外観検査システムであって、対象物を前記一表面側から撮像する撮像装置と、対象物を前記一表面側から照明する同軸落射照明用の照明装置と、撮像装置で撮像された非透過層の表面上の像から前記欠陥の有無を判定する画像処理装置とを備え、照明装置が、光透過層を透過する少なくとも2種類の異なる波長の照明光を対象物に照射し、撮像装置が、照明光の波長ごとの焦点距離の違いを利用し、一の波長の照明光で撮像される短波長画像と、前記一の波長よりも長波長となる他の波長の照明光で撮像される長波長画像とを比べると、短波長画像よりも長波長画像で非透過層の表面近くに焦点を合わせており、画像処理装置が、短波長画像と長波長画像とを比較した結果、短波長画像に比べて長波長画像でピントが合う部分を非透過層の表面上の像と判断する識別手段を有することを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、撮像装置が照明光の波長ごとに焦点距離が異なることを利用して、識別手段により、一の波長の照明光で撮像された長波長画像と他の波長の照明光で撮像された短波長光画像とを比較して、当該比較結果から非透過層の表面上の像を判別することができる。つまり、光透過層の表面上の像については短波長画像に比べ長波長画像で輪郭がぼけて面積が大きくなり、非透過層の表面上の像については長波長画像に比べ短波長画像で輪郭がぼけて面積が大きくなるので、たとえば当該面積の比較結果からいずれの欠陥かを識別することができる。したがって、光透過層の表面上の擬似欠陥があるだけの良品が誤って不良品と判断されてしまうことを防止でき、無駄はねが大幅に低減されて歩留りの向上につながるという利点がある。また、照明光の波長ごとに焦点距離が異なることを利用しているから、光透過層の表面と非透過層の表面とのそれぞれに焦点を合わせるための機械的な可動部は必要なく、システム構成の簡略化並びに検査時間の短縮を図ることができる。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記画像処理装置が、前記短波長画像および前記長波長画像についてそれぞれ濃淡値を所定の閾値で2値化処理を行う2値化手段を有し、前記識別手段が、2値化処理後の短波長画像と長波長画像との差をとり、短波長画像の一部分が残れば当該一部分を前記非透過層の表面上の像と判断することを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、比較的簡単な演算処理で非透過層の表面上の像を判別できるから、画像処理の高速化によって検査時間の短縮を図ることができる。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1の発明において、前記画像処理装置が、前記短波長画像および前記長波長画像についてそれぞれ各画素の濃淡値に基づき微分画像を生成する微分手段と、各微分画像についてそれぞれ画素値を所定の閾値で2値化処理を行う2値化手段とを有し、前記識別手段が、2値化処理後の短波長画像と長波長画像との差をとり、長波長画像の一部分が残れば当該一部分を前記非透過層の表面上の像と判断することを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、2値化処理の前に、各画像のうち焦点が合っていない部分を微分処理により予め除去することができるので、識別手段での判別精度が向上する。
【0015】
請求項4の発明は、請求項1の発明において、前記画像処理装置が、前記短波長画像および前記長波長画像についてそれぞれ濃淡値を所定の閾値で2値化処理を行う2値化手段と、2値化処理後の各画像について欠陥の候補となる画素群を結合してランドを形成するラベリング手段とを有し、前記識別手段が、短波長画像および長波長画像の各々に関しランドの重心位置を求め、当該重心位置が両画像間で重なる場合に、長波長画像のランドの面積と短波長画像のランドの面積とを比較し、短波長画像の方が大きければ当該ランドを前記非透過層の表面上の像と判断することを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、ラベリング手段により欠陥の候補となる画素群を結合してなるランドを形成するので、識別手段では、欠陥の候補となるランドのみを対象として判別を行うことができ、欠陥の検査精度が向上する。
【0017】
請求項5の発明は、請求項1ないし請求項4のいずれかの発明において、前記照明装置が、少なくとも2種類の異なる波長の光を含む白色光を出力する光源を有することを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、複数波長の照明光を1つの光源で実現することができるため、波長ごとに個別の光源を用いる場合に比べてシステム構成が簡単になる。
【0019】
請求項6の発明は、請求項1ないし請求項4のいずれかの発明において、前記照明装置が、互いに異なる波長の単色光をそれぞれ出力する複数の単色光源と、各単色光源の光出力の大きさを個別に調節する調光手段とを有することを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、照明光の波長ごとに光出力の大きさを個別に調節できるので、対象物の構造や撮像装置の各波長別の感度に起因した短波長画像、長波長画像の濃淡値のばらつきを補正することができる。
【0021】
請求項7の発明は、請求項1ないし請求項4のいずれかの発明において、前記照明装置が、前記一の波長の照明光として紫外線を出力する紫外光源と、前記他の波長の照明光として赤外線を出力する赤外光源とを有することを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、一の波長と他の波長とで波長差が比較的大きくなるため、短波長画像と長波長画像との間の焦点位置の差を広げることができ、より明確に、非透過層の表面上の像を判別可能となる。
【0023】
請求項8の発明は、請求項1ないし請求項7のいずれかの発明において、前記撮像装置がカラー画像を撮像可能であって、前記画像処理装置が、前記照明装置から前記一の波長と前記他の波長との両方の照明光が出力された状態で撮像されたカラー画像から、波長に基づいて前記短波長画像と前記長波長画像とをそれぞれ抽出する抽出手段を有することを特徴とする。
【0024】
この構成によれば、カラー画像を撮像可能な撮像装置を用いたことにより、検査に必要な短波長画像と長波長画像との両画像を1回の撮像で得ることができるから、光透過層の表面と非透過層の表面とのそれぞれに焦点を合わせて2回に分けて撮像する場合に比べて、システム構成の簡略化並びに検査時間の短縮を図ることができる。
【0025】
請求項9の発明は、少なくとも非透過層の一表面側に光透過層が積層された積層体を対象物として、対象物を前記一表面側から撮像する撮像装置と、光透過層を透過する少なくとも2種類の異なる波長の照明光を前記一表面側から対象物に照射する同軸落射照明用の照明装置と、撮像装置で撮像された非透過層の表面上の像から非透過層の表面上の欠陥の有無を判定する画像処理装置とを使用し、前記欠陥を検査する外観検査方法であって、撮像装置では、照明光の波長ごとの焦点距離の違いを利用し、一の波長の照明光で撮像される短波長画像と、前記一の波長よりも長波長となる他の波長の照明光で撮像される長波長画像とを比べると、短波長画像よりも長波長画像で非透過層の表面近くに焦点を合わせており、短波長画像と長波長画像とを比較した結果、短波長画像に比べて長波長画像でピントが合う部分を非透過層の表面上の像と判断する識別過程を有することを特徴とする。
【0026】
この発明によれば、識別過程において、一の波長の照明光で撮像された長波長画像と他の波長の照明光で撮像された短波長光画像とを比較して、当該比較結果から非透過層の表面上の像を判別することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、撮像装置のレンズが照明光の波長ごとに焦点位置が異なることを利用して、識別手段により、一の波長の照明光で撮像された長波長画像と他の波長の照明光で撮像された短波長光画像とを比較して、当該比較結果から光透過層の表面上の欠陥と非透過層の表面上の欠陥とを識別する。したがって、光透過層の表面上の擬似欠陥があるだけの良品が誤って不良品と判断されてしまうことを防止でき、無駄はねが大幅に低減されて歩留りの向上につながるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態1の原理を説明する説明図である。
【図2】同上の対象物を示し、(a)は概略平面図、(b)は概略断面図である。
【図3】同上の概略システム構成図である。
【図4】同上の画像処理装置の構成を示す概略ブロック図である。
【図5】(a)は光透過層表面の欠陥を示し、(b)は非透過層表面の欠陥を示す概略断面図である。
【図6】(a)は長波長画像、(b)は中波長画像、(c)は短波長画像の一例を示す説明図である。
【図7】同上の差分演算後の画像を示す説明図である。
【図8】(a)は長波長画像、(b)は中波長画像、(c)は短波長画像の一例を示す説明図である。
【図9】同上の差分演算後の画像を示す説明図である。
【図10】同上の動作を示すフローチャートである。
【図11】本発明の実施形態4の概略システム構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(実施形態1)
本実施形態の外観検査システムは、図2に示すように、光を反射する非透過層101の一表面側に光透過性を有する光透過層102を積層した複層構造の構造体を対象物100とし、当該対象物100の外観上の異常の有無を検査するものである。ここでは一例として、MEMS技術を用いて製造されるMEMSチップを検査対象とするが、この例に限らず、上述したような複層構造を持つ種々の構造体を検査対象とすることができる。
【0030】
図2の例では、対象物100は、半導体材料(ここではシリコンとする)から所定の形状に形成された非透過層101の一表面側に、ガラス板からなる光透過層102が接合された構造を有している。ここに、非透過層101の前記一表面には凹凸が付けられており、当該凹凸によって非透過層101と光透過層102との間に空洞103が形成されている。
【0031】
本実施形態の外観検査システムは、図3に示すように、対象物100を光透過層102側から撮像するカメラ(撮像装置)10と、対象物100に対してカメラ10の光軸と同軸方向から光を照射する同軸落射照明用の照明装置20と、カメラ10で撮像された画像を画像処理する画像処理装置30とを備えている。さらに、外観検査システムは、照明装置20に電力供給する照明用電源装置21と、対象物(MEMSチップ)100を載せるステージ50と、カメラ10の視野(撮像範囲)内に検査対象が位置するようにステージ50を移動させる駆動手段51とを備えている。対象物100は、光透過層102を上方(カメラ10側)に向けた状態でステージ50上に複数個並べて配置される。なお、これら複数個のMEMSチップはウェハから形成されており、ここでは各MEMSチップをダイシングにより個片化した後で外観検査が行われるものとするが、ウェハの状態で外観検査を行うようにしてもよい。
【0032】
カメラ10は、ステージ50上面に光軸が直交するようにステージ50の直上に配置され、その視野はステージ50上の1個の対象物100に対応するように設定されている。ここでは、ステージ50を移動させることによってステージ50に対するカメラ10の相対的な位置を変化させながら、各対象物100の画像をカメラ10で個別に撮像する。カメラ10としては、少なくともR(=600nm),G(=550nm),B(=450nm)の3波長の光に対する感度を持つことでカラー画像を撮像可能なカラーカメラを使用する。
【0033】
照明装置20は、カメラ10の光軸と直交する光軸を持つ光源22を具備し、カメラ10とステージ50との間において鏡面をカメラ10の光軸に対して45度傾けて配置されたハーフミラー23を利用して、光源22からの光が対象物(MEMSチップ)100側に反射されるように構成されている。すなわち、ハーフミラー23は、光源22からの光を対象物100に向けて反射するとともに、対象物100での反射光をカメラ10側に透過させる機能を有している。図3では、光源22から対象物100に照射する光を実線矢印で示し、対象物100での反射光を破線矢印で示す。なお、ハーフミラー23とステージ50との間には光学レンズ24が配設されている。
【0034】
照明装置20の光源22としては、光透過層102を透過し、且つ少なくともカメラ10で撮像可能な3波長(R,G,B)を含む白色光を出力する光源を使用する。具体的には、R(赤色),G(緑色),B(青色)の混色光により白色光を出力する発光ダイオード(LED)を用いるが、この例に限るものではなく、白熱電球などを用いてもよい。
【0035】
ここにおいて、カメラ10は屈折率が光の波長ごとに異なるレンズ11(図1参照)を有している。これにより、カメラ10においては光の波長ごとに焦点距離が異なることになる。
【0036】
すなわち、カメラ10にてレンズ11を通して撮像される画像の焦点位置は、図1に示すように光の波長ごとに異なることになる。図1では、上記3波長(R,G,B)のうち、最も波長が短い短波長成分たるB(青色)成分(図中、点線で示す)と、最も波長が長い長波長成分たるR(赤色)成分(図中、実線で表す)との結像の様子を模式的に表している。要するに、レンズ11の屈折率は波長の短い光ほど大きくなるため、B成分とR成分とでは、波長の短いB成分の方がレンズ11から焦点位置までの距離は短くなる。上記3波長(R,G,B)で比較したときには、R成分、G(緑色)成分、B成分の順に焦点位置までの距離が短くなる。
【0037】
そこで、本実施形態では、非透過層101の表面(光透過層102の裏面)上でG成分の焦点が合い、且つ、B成分とR成分とではB成分の方が光透過層102の表面近くで焦点が合い、R成分の方が非透過層101の表面近くで焦点が合うように、レンズ11−ステージ50間の距離を設定してある。その結果、カメラ10で撮像される画像においては、光透過層102の表面上の像に関してはB成分と比較してR成分あるいはG成分の方が輪郭はぼやけ、非透過層101の表面上の像に関してはR成分あるいはG成分と比較してB成分の方が輪郭はぼやけることとなる。
【0038】
ここで、画像処理装置30は、図4に示すように、カメラ10で撮像されたカラー画像を取り込む取込手段31と、取り込んだ画像からR成分の画像(以下、長波長画像という)を抽出するRフィルタ32と、B成分の画像(以下、短波長画像という)を抽出するBフィルタ33とを備えている。さらに、画像処理装置30は、取り込んだ画像からG成分の画像(以下、中波長画像という)を抽出するGフィルタ34と、長波長画像、短波長画像、中波長画像についてそれぞれ2値化処理を行う2値化手段35,36,37とを備えている。さらにまた、この画像処理装置30は、非透過層101の表面上の像か否かを判別する識別手段38と、対象物100の良否を判定する判定手段39と、判定結果を出力する出力手段40とを備えている。
【0039】
2値化手段35,36,37は、長波長画像、短波長画像、中波長画像の各画像の所定領域について2値化処理を行う。これらの2値化手段35,36,37は、各画像ごとに欠陥の特徴量抽出に適した所定の閾値を使用し、濃淡値が閾値を超える画素の画素値を「1」、その他の画素の画素値を「0」とする。ここでは、全ての2値化手段35,36,37にて同一の閾値を用いるものとし、当該閾値は、たとえば長波長画像においてぼやけて映る光透過層102表面上の像であっても画素値が「1」となるように、比較的低めに設定される。なお、各画素の濃淡値は、反射光の強度が高い部位ほど高くなるものとする。
【0040】
識別手段38は、2値化後の長波長画像と短波長画像とを比較することにより、画像中の像が非透過層101上の像か否かを識別し、非透過層101の表面上の欠陥のみを判別する。つまり、光透過層102の表面上の欠陥(擬似欠陥)については短波長画像に比べ長波長画像で輪郭がぼけて面積が大きくなり、非透過層101の表面上の欠陥については長波長画像に比べ短波長画像で輪郭がぼけて面積が大きくなるので、両画像を比較することにより擬似欠陥か欠陥かを識別することができる。
【0041】
具体的に説明すると、識別手段38は、2値化後の長波長画像と短波長画像との差分をとることで擬似欠陥と欠陥とを識別する。ここで、減算により負の画素値「−1」が生じた場合、当該画素の画素値は「0」とみなすものとする。
【0042】
要するに、図5(a)のような光透過層102の表面上の欠陥(擬似欠陥)104があれば、たとえば図6に示すように、長波長画像(図6(a))の欠陥部分(画素値「1」)104Rに比べて短波長画像(図6(c))の欠陥部分(画素値「1」)104Bの面積が小さくなるため、減算結果は次のようになる。つまり、長波長画像の各画素値から短波長画像の同一画素の画素値を減算すれば、図7に示すように長波長画像における欠陥部分104Rの一部が残るが、反対に、短波長画像から長波長画像を減算しても、短波長画像の欠陥部分104Bは残らない。
【0043】
一方、図5(b)のような非透過層101の表面上の欠陥105であれば、たとえば図8に示すように、長波長画像(図8(a))の欠陥部分(画素値「1」)105Rに比べて短波長画像(図8(c))の欠陥部分(画素値「1」)105Bの面積が大きくなるため、減算結果は次のようになる。つまり、長波長画像の各画素値から短波長画像の同一画素の画素値を減算しても、長波長画像の欠陥部分105Rは残らないが、反対に、短波長画像から長波長画像を減算すれば、図9のように短波長画像における欠陥部分105Bの一部が残ることとなる。
【0044】
したがって、差分演算の結果、長波長画像の欠陥部分が残った場合、当該欠陥は光透過層102の表面上の欠陥(擬似欠陥)104と判断され、短波長画像の欠陥部分が残った場合、当該欠陥は非透過層101の表面上の欠陥105と判断される。なお、差分演算の結果、欠陥部分以外の部分(たとえば、非透過層101の表面パターン)が残った場合、この部分が誤って欠陥と判断されないよう、たとえば予め良品を撮像して得られる差分画像と比較し、欠陥以外の部分は除去される。
【0045】
このとき非透過層101の表面上の欠陥105があると判断された対象物100に関しては、判定手段39にて良否の判定が行われる。この良否の判定には、非透過層101の表面上に焦点の合う中波長画像(図8(b))が用いられ、非透過層101上の欠陥105の面積(大きさ)、幅寸法などの特徴量から、当該対象物100について良品か不良品かが判断される。
【0046】
次に、本実施形態の外観検査システムを用いた外観検査方法について図10のフローチャートを参照して説明する。
【0047】
カメラ10で撮像された対象物100の画像は、取込手段31にて画像処理装置30に取り込まれる(S1)。このとき、画像処理装置30ではRフィルタ32、Bフィルタ33、Gフィルタ34からなる抽出手段にて、長波長画像(R成分)、短波長画像(B成分)、中波長画像(G成分)をそれぞれ抽出する(S2)。抽出された各画像は2値化手段35,36,37にて2値化される(S3)。
【0048】
識別手段38では、2値化後の長波長画像と短波長画像との差分をとり(S4)、短波長画像の欠陥部分が残った場合(S5:Yes)には非透過層101表面の欠陥105と判断し(S6)、それ以外は光透過層102表面の欠陥(擬似欠陥)104と判断する(S7)。つまり当該S4〜S7の処理(識別過程)にて、光透過層102の表面上の欠陥104と非透過層101の表面上の欠陥105とが識別される。
【0049】
ここで、非透過層101表面の欠陥(たとえば光透過層102と非透過層101との間に混入した埃等の異物)105は、後の工程で除去できず、対象物100の動作・機能上の障害となる致命的な欠陥であるから、このような欠陥105がある場合には、判定手段39での良否判定の対象とされる(S8)。判定手段39では、対象物100が不良品(S9)か良品(S10)かの判断がなされる。
【0050】
一方、光透過層102の表面上の欠陥(たとえば光透過層102表面に付着した埃等の異物)104は、後の工程で除去可能であり、対象物100の動作・機能上の障害となるような致命的な欠陥ではないから、このような欠陥(擬似欠陥)104があっても、判定手段39での良否判定は為されずに良品と判断される(S10)。
【0051】
以上説明した構成の外観検査システムによれば、波長ごとに焦点距離が異なることを利用して、識別手段38により、撮像画像から光透過層102の表面上の欠陥(擬似欠陥)104と非透過層101の表面上の欠陥105とを識別することができる。そのため、致命的ではない擬似欠陥があるだけの良品が不良品と誤って判断されてしまう無駄はねが大幅に低減し、歩留りの向上が期待できる。しかも、識別手段38は差分演算という簡単な処理を採用しているから、処理にかかる負荷を比較的小さく抑えることができ、検査の高速化を図ることができる。
【0052】
また、照明装置20に白色光を出力する光源22を用いているから、3波長(R,G,B)の各成分の画像を得るために波長ごとに個別の光源を用いる場合に比べて、照明装置20の構造が簡単になるという利点もある。さらに、カメラ10としても、カラー画像を撮像可能なカラーカメラを用いているから、複数の波長成分を含む画像を1回の撮像で取得することができ、各波長成分の画像を別々に撮像する場合に比べて検査時間を短縮することができる。
【0053】
ここで、単色の撮像画像の(たとえば中波長画像)のみに着目しても、光透過層102の表面上の欠陥104と非透過層101の表面上の欠陥105とで映り方に一応の差がある。ただし、単色の撮像画像のみでは、非透過層101の表面上に発生した淡色の欠陥105と、光透過層102上の濃色の欠陥104とでは濃淡値に殆ど差がなく、これらを識別することは困難である。これに対し、本実施形態では長波長画像(R成分)、短波長画像(B成分)、中波長画像(G成分)の焦点位置の違いに着目したことで、欠陥の濃淡にかかわらず、光透過層102の表面上の欠陥104と非透過層101の表面上の欠陥105とを確実に識別可能である。
【0054】
ところで、本実施形態では、R,G,Bの3波長間の焦点位置の違いを利用する例を示したが、この例に限らず、任意の互いに異なる波長間の焦点位置の違いを利用しても、同様の効果が期待できる。たとえば、照明装置20として、紫外線を出力する紫外光源および赤外線を出力する赤外光源を有するものを用い、撮像画像における紫外線成分と赤外線成分とを比較するようにしてもよい。このように波長の差を広げることにより、焦点位置の差も広がることになるため、より明確に、欠陥を識別することが可能となる。
【0055】
(実施形態2)
本実施形態の外観検査システムは、識別手段38での差分演算の前に、長波長画像(R成分)、短波長画像(B成分)、中波長画像(G成分)のそれぞれについて微分演算を行う微分手段(図示せず)を画像処理装置30に付加した点が実施形態1と相違する。
【0056】
微分手段は、各画像について、各画素の濃淡値に基づき微分値を求め、微分画像を生成する。ここで、各画素の微分値は、隣接する画素との濃淡値の差が大きい画素ほど高くなるものとする。
【0057】
2値化手段35,36,37は、各波長の微分画像について、それぞれ微分値が所定の閾値を超える画素の画素値を「1」、その他の画素の画素値を「0」として2値画像を生成する。ここでは、全ての2値化手段35,36,37にて同一の閾値を用いるものとし、当該閾値は、たとえば長波長画像においてぼやけて映る光透過層102表面の欠陥については画素値が「0」となるように、比較的高めに設定される。これにより、2値画像では、焦点が合わずに輪郭のぼけた部分は除去されることになる。
【0058】
識別手段38は、2値化後の長波長画像と短波長画像とを比較することにより、光透過層102の表面上の欠陥(擬似欠陥)か、あるいは非透過層101の表面上の欠陥かを識別する。
【0059】
要するに、光透過層102の表面上の欠陥(擬似欠陥)104であれば、短波長画像から長波長画像を減算すると、短波長画像における欠陥部分の一部が残るが、反対に、長波長画像から短波長画像を減算しても、長波長画像の欠陥部分は残らない。一方、非透過層101の表面上の欠陥105があれば、短波長画像から長波長画像を減算しても、短波長画像の欠陥部分は残らないが、反対に、長波長画像から短波長画像を減算すれば、長波長画像における欠陥部分の一部が残ることとなる。
【0060】
したがって、差分演算の結果、短波長画像の欠陥部分が残った場合、当該欠陥は光透過層102の表面上の欠陥(擬似欠陥)104と判断され、長波長画像の欠陥部分が残った場合、当該欠陥は非透過層101の表面上の欠陥105と判断される。
【0061】
以上説明した構成では、2値化処理の前に、各画像のうち焦点が合っていない部分を微分処理により予め除去するため、焦点の合った部分が際立つこととなり、欠陥の識別精度が向上するという利点がある。
【0062】
その他の構成および機能は実施形態1と同様である。
【0063】
(実施形態3)
本実施形態の外観検査システムは、2値化処理後に、長波長画像(R成分)、短波長画像(B成分)、中波長画像(G成分)のそれぞれについて欠陥の候補となる画素群を結合してランドを形成するラベリング手段(図示せず)を画像処理装置30に付加した点が実施形態1と相違する。
【0064】
ラベリング手段は、2値化後の各画像について、画素値「1」の画素同士が隣接している場合にこれらの画素を1つの塊(ランド)としてナンバリングし、各ランドに番号付けをして各々を識別可能とする。ここで、たとえば予め良品を撮像して得られる良品画像の2値画像と比較することで、欠陥の候補となるランド(以下、欠陥候補ランドという)を抽出することができる。
【0065】
識別手段38は、長波長画像、短波長画像、中波長画像のそれぞれに関して、ラベリング手段で抽出された欠陥候補ランドの重心位置を求め、当該重心位置がこれらの画像間で重なる場合に、当該欠陥候補ランド同士で面積を比較する。
【0066】
要するに、光透過層102の表面上の欠陥(擬似欠陥)104であれば、欠陥候補ランドは、短波長画像に比べて長波長画像や中波長画像で輪郭がぼけて面積が大きくなる。一方、非透過層101の表面上の欠陥であれば、欠陥候補ランドは、長波長画像や中波長画像に比べて短波長画像で輪郭がぼけて面積が大きくなる。
【0067】
したがって、欠陥候補ランドの面積を比較した結果、長波長画像や中波長画像の方が大きければ、当該欠陥は光透過層102の表面上の欠陥(擬似欠陥)104と判断され、短波長画像の方が大きければ、当該欠陥は非透過層101の表面上の欠陥105と判断される。
【0068】
以上説明した構成によれば、画像同士を比較するに当たり、予め各画像から欠陥の候補となる領域(欠陥候補ランド)が抽出されるので、識別手段38は、欠陥の候補となる領域のみを対象として画像同士の比較を行うことができ、欠陥の識別精度が向上するという利点がある。
【0069】
その他の構成および機能は実施形態1と同様である。
【0070】
(実施形態4)
本実施形態の外観検査システムは、図11に示すように、R,G,Bの各波長の単色光をそれぞれ出力する複数の単色光源22R,22G,22Bを照明装置20に使用した点が実施形態1の外観検査システムと相違する。
【0071】
各単色光源22R,22G,22Bは、それぞれ個別の照明用電源装置21R,21G,21Bに接続される。これら複数の単色光源22R,22G,22Bから出力された光は、光ファイバ25を通して導光され、互いに混色されることで白色光を実現する。ここで、各照明用電源装置21R,21G,21Bは各単色光源22R,22G,22Bからの光出力の大きさをそれぞれ調節する調光手段としての機能を有し、これにより、照明装置20からの照明光は波長(R,G,B)ごとに個別に調光制御される。
【0072】
以上説明した本実施形態の構成によれば、対象物100の構造(たとえば光透過層102の材質)やカメラ10の各波長別の感度によって、撮像画像において波長ごとに濃淡値のばらつきを生じることがあっても、照明光の光出力を波長ごとに個別に調節することで前記ばらつきを補正することができる。
【0073】
なお、ここでは複数の単色光源22R,22G,22Bは同時に点灯させるものとするが、これに限らず、各単色光源22R,22G,22Bを順次点灯させ、長波長画像(R成分)、中波長画像(G成分)、短波長画像(B成分)を個別に撮像するようにしてもよい。この場合、画像処理装置30において、Rフィルタ32、Bフィルタ33、Gフィルタ34からなる抽出手段を省略することができる。
【0074】
その他の構成および機能は実施形態1と同様である。
【符号の説明】
【0075】
10 カメラ(撮像装置)
11 レンズ
20 照明装置
22 光源
22R,22G,22B 単色光源
30 画像処理装置
35,36,37 2値化手段
38 識別手段
100 対象物
101 非透過層
102 光透過層
【技術分野】
【0001】
本発明は、非透過層の一表面側に光透過層が積層された複層構造の構造体を検査対象に非透過層の表面上の欠陥の有無を検査する外観検査システムおよび外観検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、たとえばMEMS(Micro Electro Mechanical System)技術を用いた半導体製造プロセスにより作成されるセンサチップ等の構造体においては、目視での判断が難しい微細な欠陥をも検出可能な外観検査を行い、当該外観検査で良品(欠陥なし)と判断されたもののみを出荷することが一般的である。このような外観検査を行う外観検査システムとしては、対象物を撮像手段にて撮像し、得られた濃淡画像と、予め良品を撮像して得られる良品画像(マスタ画像)とを比較することで、対象物の欠陥の有無を判定するものが提案されている(たとえば特許文献1参照)。
【0003】
ところで、たとえばMEMS技術を用いて製造される構造体の一例として、図2に示すように、非透過層101となる半導体(たとえばシリコン)層と、光透過層102となるガラス板とを積層した複層構造のものが知られている。なお、図2の例では、半導体層におけるガラス板側の表面に凹凸が付けられており、当該凹凸によってガラス板と半導体層との間に空洞103が形成されている。
【0004】
このように非透過層101の一表面側に光透過層102が積層された複層構造の構造体を検査の対象物100とする場合、当該対象物100を光透過層102側から撮像することで、光透過層102の表面だけでなく、光透過層102を通して非透過層101の表面の画像を撮像することもできる。したがって、光透過層102の表面上の欠陥104(図5(a)参照)と、非透過層101の表面上(つまり、光透過層102の裏面側)の欠陥105(図5(b)参照)との両方を検出することができる。
【0005】
ここで、光透過層102の表面上の欠陥(たとえば光透過層102表面に付着した埃等の異物)104は、後の工程で除去可能であり、対象物100の動作・機能上の障害となるような致命的な欠陥ではなく、このような欠陥(以下、擬似欠陥という)104があっても対象物100としては良品となる。一方、非透過層101の表面上の欠陥(たとえば光透過層102と非透過層101との間に混入した埃等の異物)105は、後の工程で除去できず、対象物100の動作・機能上の障害となる致命的な欠陥であるから、このような欠陥105があると対象物100としては不良品となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−153804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、対象物100の画像と良品画像とを比較するだけの従来の外観検査方法では、光透過層102を通して非透過層101表面の画像を撮像するため、当該撮像画像から光透過層102の表面上の欠陥(擬似欠陥)か、あるいは非透過層101の表面上の欠陥かを識別することはできない。そのため、擬似欠陥があるだけの良品であっても不良品と誤って判断されてしまう無駄はねが生じ、歩留り低下につながるという問題がある。
【0008】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであって、非透過層の表面上の欠陥のみを判別可能とすることで、歩留り向上につなげることができる外観検査システムおよび外観検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、少なくとも非透過層の一表面側に光透過層が積層された積層体を対象物として、非透過層の表面上の欠陥を検査する外観検査システムであって、対象物を前記一表面側から撮像する撮像装置と、対象物を前記一表面側から照明する同軸落射照明用の照明装置と、撮像装置で撮像された非透過層の表面上の像から前記欠陥の有無を判定する画像処理装置とを備え、照明装置が、光透過層を透過する少なくとも2種類の異なる波長の照明光を対象物に照射し、撮像装置が、照明光の波長ごとの焦点距離の違いを利用し、一の波長の照明光で撮像される短波長画像と、前記一の波長よりも長波長となる他の波長の照明光で撮像される長波長画像とを比べると、短波長画像よりも長波長画像で非透過層の表面近くに焦点を合わせており、画像処理装置が、短波長画像と長波長画像とを比較した結果、短波長画像に比べて長波長画像でピントが合う部分を非透過層の表面上の像と判断する識別手段を有することを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、撮像装置が照明光の波長ごとに焦点距離が異なることを利用して、識別手段により、一の波長の照明光で撮像された長波長画像と他の波長の照明光で撮像された短波長光画像とを比較して、当該比較結果から非透過層の表面上の像を判別することができる。つまり、光透過層の表面上の像については短波長画像に比べ長波長画像で輪郭がぼけて面積が大きくなり、非透過層の表面上の像については長波長画像に比べ短波長画像で輪郭がぼけて面積が大きくなるので、たとえば当該面積の比較結果からいずれの欠陥かを識別することができる。したがって、光透過層の表面上の擬似欠陥があるだけの良品が誤って不良品と判断されてしまうことを防止でき、無駄はねが大幅に低減されて歩留りの向上につながるという利点がある。また、照明光の波長ごとに焦点距離が異なることを利用しているから、光透過層の表面と非透過層の表面とのそれぞれに焦点を合わせるための機械的な可動部は必要なく、システム構成の簡略化並びに検査時間の短縮を図ることができる。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記画像処理装置が、前記短波長画像および前記長波長画像についてそれぞれ濃淡値を所定の閾値で2値化処理を行う2値化手段を有し、前記識別手段が、2値化処理後の短波長画像と長波長画像との差をとり、短波長画像の一部分が残れば当該一部分を前記非透過層の表面上の像と判断することを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、比較的簡単な演算処理で非透過層の表面上の像を判別できるから、画像処理の高速化によって検査時間の短縮を図ることができる。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1の発明において、前記画像処理装置が、前記短波長画像および前記長波長画像についてそれぞれ各画素の濃淡値に基づき微分画像を生成する微分手段と、各微分画像についてそれぞれ画素値を所定の閾値で2値化処理を行う2値化手段とを有し、前記識別手段が、2値化処理後の短波長画像と長波長画像との差をとり、長波長画像の一部分が残れば当該一部分を前記非透過層の表面上の像と判断することを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、2値化処理の前に、各画像のうち焦点が合っていない部分を微分処理により予め除去することができるので、識別手段での判別精度が向上する。
【0015】
請求項4の発明は、請求項1の発明において、前記画像処理装置が、前記短波長画像および前記長波長画像についてそれぞれ濃淡値を所定の閾値で2値化処理を行う2値化手段と、2値化処理後の各画像について欠陥の候補となる画素群を結合してランドを形成するラベリング手段とを有し、前記識別手段が、短波長画像および長波長画像の各々に関しランドの重心位置を求め、当該重心位置が両画像間で重なる場合に、長波長画像のランドの面積と短波長画像のランドの面積とを比較し、短波長画像の方が大きければ当該ランドを前記非透過層の表面上の像と判断することを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、ラベリング手段により欠陥の候補となる画素群を結合してなるランドを形成するので、識別手段では、欠陥の候補となるランドのみを対象として判別を行うことができ、欠陥の検査精度が向上する。
【0017】
請求項5の発明は、請求項1ないし請求項4のいずれかの発明において、前記照明装置が、少なくとも2種類の異なる波長の光を含む白色光を出力する光源を有することを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、複数波長の照明光を1つの光源で実現することができるため、波長ごとに個別の光源を用いる場合に比べてシステム構成が簡単になる。
【0019】
請求項6の発明は、請求項1ないし請求項4のいずれかの発明において、前記照明装置が、互いに異なる波長の単色光をそれぞれ出力する複数の単色光源と、各単色光源の光出力の大きさを個別に調節する調光手段とを有することを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、照明光の波長ごとに光出力の大きさを個別に調節できるので、対象物の構造や撮像装置の各波長別の感度に起因した短波長画像、長波長画像の濃淡値のばらつきを補正することができる。
【0021】
請求項7の発明は、請求項1ないし請求項4のいずれかの発明において、前記照明装置が、前記一の波長の照明光として紫外線を出力する紫外光源と、前記他の波長の照明光として赤外線を出力する赤外光源とを有することを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、一の波長と他の波長とで波長差が比較的大きくなるため、短波長画像と長波長画像との間の焦点位置の差を広げることができ、より明確に、非透過層の表面上の像を判別可能となる。
【0023】
請求項8の発明は、請求項1ないし請求項7のいずれかの発明において、前記撮像装置がカラー画像を撮像可能であって、前記画像処理装置が、前記照明装置から前記一の波長と前記他の波長との両方の照明光が出力された状態で撮像されたカラー画像から、波長に基づいて前記短波長画像と前記長波長画像とをそれぞれ抽出する抽出手段を有することを特徴とする。
【0024】
この構成によれば、カラー画像を撮像可能な撮像装置を用いたことにより、検査に必要な短波長画像と長波長画像との両画像を1回の撮像で得ることができるから、光透過層の表面と非透過層の表面とのそれぞれに焦点を合わせて2回に分けて撮像する場合に比べて、システム構成の簡略化並びに検査時間の短縮を図ることができる。
【0025】
請求項9の発明は、少なくとも非透過層の一表面側に光透過層が積層された積層体を対象物として、対象物を前記一表面側から撮像する撮像装置と、光透過層を透過する少なくとも2種類の異なる波長の照明光を前記一表面側から対象物に照射する同軸落射照明用の照明装置と、撮像装置で撮像された非透過層の表面上の像から非透過層の表面上の欠陥の有無を判定する画像処理装置とを使用し、前記欠陥を検査する外観検査方法であって、撮像装置では、照明光の波長ごとの焦点距離の違いを利用し、一の波長の照明光で撮像される短波長画像と、前記一の波長よりも長波長となる他の波長の照明光で撮像される長波長画像とを比べると、短波長画像よりも長波長画像で非透過層の表面近くに焦点を合わせており、短波長画像と長波長画像とを比較した結果、短波長画像に比べて長波長画像でピントが合う部分を非透過層の表面上の像と判断する識別過程を有することを特徴とする。
【0026】
この発明によれば、識別過程において、一の波長の照明光で撮像された長波長画像と他の波長の照明光で撮像された短波長光画像とを比較して、当該比較結果から非透過層の表面上の像を判別することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、撮像装置のレンズが照明光の波長ごとに焦点位置が異なることを利用して、識別手段により、一の波長の照明光で撮像された長波長画像と他の波長の照明光で撮像された短波長光画像とを比較して、当該比較結果から光透過層の表面上の欠陥と非透過層の表面上の欠陥とを識別する。したがって、光透過層の表面上の擬似欠陥があるだけの良品が誤って不良品と判断されてしまうことを防止でき、無駄はねが大幅に低減されて歩留りの向上につながるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態1の原理を説明する説明図である。
【図2】同上の対象物を示し、(a)は概略平面図、(b)は概略断面図である。
【図3】同上の概略システム構成図である。
【図4】同上の画像処理装置の構成を示す概略ブロック図である。
【図5】(a)は光透過層表面の欠陥を示し、(b)は非透過層表面の欠陥を示す概略断面図である。
【図6】(a)は長波長画像、(b)は中波長画像、(c)は短波長画像の一例を示す説明図である。
【図7】同上の差分演算後の画像を示す説明図である。
【図8】(a)は長波長画像、(b)は中波長画像、(c)は短波長画像の一例を示す説明図である。
【図9】同上の差分演算後の画像を示す説明図である。
【図10】同上の動作を示すフローチャートである。
【図11】本発明の実施形態4の概略システム構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(実施形態1)
本実施形態の外観検査システムは、図2に示すように、光を反射する非透過層101の一表面側に光透過性を有する光透過層102を積層した複層構造の構造体を対象物100とし、当該対象物100の外観上の異常の有無を検査するものである。ここでは一例として、MEMS技術を用いて製造されるMEMSチップを検査対象とするが、この例に限らず、上述したような複層構造を持つ種々の構造体を検査対象とすることができる。
【0030】
図2の例では、対象物100は、半導体材料(ここではシリコンとする)から所定の形状に形成された非透過層101の一表面側に、ガラス板からなる光透過層102が接合された構造を有している。ここに、非透過層101の前記一表面には凹凸が付けられており、当該凹凸によって非透過層101と光透過層102との間に空洞103が形成されている。
【0031】
本実施形態の外観検査システムは、図3に示すように、対象物100を光透過層102側から撮像するカメラ(撮像装置)10と、対象物100に対してカメラ10の光軸と同軸方向から光を照射する同軸落射照明用の照明装置20と、カメラ10で撮像された画像を画像処理する画像処理装置30とを備えている。さらに、外観検査システムは、照明装置20に電力供給する照明用電源装置21と、対象物(MEMSチップ)100を載せるステージ50と、カメラ10の視野(撮像範囲)内に検査対象が位置するようにステージ50を移動させる駆動手段51とを備えている。対象物100は、光透過層102を上方(カメラ10側)に向けた状態でステージ50上に複数個並べて配置される。なお、これら複数個のMEMSチップはウェハから形成されており、ここでは各MEMSチップをダイシングにより個片化した後で外観検査が行われるものとするが、ウェハの状態で外観検査を行うようにしてもよい。
【0032】
カメラ10は、ステージ50上面に光軸が直交するようにステージ50の直上に配置され、その視野はステージ50上の1個の対象物100に対応するように設定されている。ここでは、ステージ50を移動させることによってステージ50に対するカメラ10の相対的な位置を変化させながら、各対象物100の画像をカメラ10で個別に撮像する。カメラ10としては、少なくともR(=600nm),G(=550nm),B(=450nm)の3波長の光に対する感度を持つことでカラー画像を撮像可能なカラーカメラを使用する。
【0033】
照明装置20は、カメラ10の光軸と直交する光軸を持つ光源22を具備し、カメラ10とステージ50との間において鏡面をカメラ10の光軸に対して45度傾けて配置されたハーフミラー23を利用して、光源22からの光が対象物(MEMSチップ)100側に反射されるように構成されている。すなわち、ハーフミラー23は、光源22からの光を対象物100に向けて反射するとともに、対象物100での反射光をカメラ10側に透過させる機能を有している。図3では、光源22から対象物100に照射する光を実線矢印で示し、対象物100での反射光を破線矢印で示す。なお、ハーフミラー23とステージ50との間には光学レンズ24が配設されている。
【0034】
照明装置20の光源22としては、光透過層102を透過し、且つ少なくともカメラ10で撮像可能な3波長(R,G,B)を含む白色光を出力する光源を使用する。具体的には、R(赤色),G(緑色),B(青色)の混色光により白色光を出力する発光ダイオード(LED)を用いるが、この例に限るものではなく、白熱電球などを用いてもよい。
【0035】
ここにおいて、カメラ10は屈折率が光の波長ごとに異なるレンズ11(図1参照)を有している。これにより、カメラ10においては光の波長ごとに焦点距離が異なることになる。
【0036】
すなわち、カメラ10にてレンズ11を通して撮像される画像の焦点位置は、図1に示すように光の波長ごとに異なることになる。図1では、上記3波長(R,G,B)のうち、最も波長が短い短波長成分たるB(青色)成分(図中、点線で示す)と、最も波長が長い長波長成分たるR(赤色)成分(図中、実線で表す)との結像の様子を模式的に表している。要するに、レンズ11の屈折率は波長の短い光ほど大きくなるため、B成分とR成分とでは、波長の短いB成分の方がレンズ11から焦点位置までの距離は短くなる。上記3波長(R,G,B)で比較したときには、R成分、G(緑色)成分、B成分の順に焦点位置までの距離が短くなる。
【0037】
そこで、本実施形態では、非透過層101の表面(光透過層102の裏面)上でG成分の焦点が合い、且つ、B成分とR成分とではB成分の方が光透過層102の表面近くで焦点が合い、R成分の方が非透過層101の表面近くで焦点が合うように、レンズ11−ステージ50間の距離を設定してある。その結果、カメラ10で撮像される画像においては、光透過層102の表面上の像に関してはB成分と比較してR成分あるいはG成分の方が輪郭はぼやけ、非透過層101の表面上の像に関してはR成分あるいはG成分と比較してB成分の方が輪郭はぼやけることとなる。
【0038】
ここで、画像処理装置30は、図4に示すように、カメラ10で撮像されたカラー画像を取り込む取込手段31と、取り込んだ画像からR成分の画像(以下、長波長画像という)を抽出するRフィルタ32と、B成分の画像(以下、短波長画像という)を抽出するBフィルタ33とを備えている。さらに、画像処理装置30は、取り込んだ画像からG成分の画像(以下、中波長画像という)を抽出するGフィルタ34と、長波長画像、短波長画像、中波長画像についてそれぞれ2値化処理を行う2値化手段35,36,37とを備えている。さらにまた、この画像処理装置30は、非透過層101の表面上の像か否かを判別する識別手段38と、対象物100の良否を判定する判定手段39と、判定結果を出力する出力手段40とを備えている。
【0039】
2値化手段35,36,37は、長波長画像、短波長画像、中波長画像の各画像の所定領域について2値化処理を行う。これらの2値化手段35,36,37は、各画像ごとに欠陥の特徴量抽出に適した所定の閾値を使用し、濃淡値が閾値を超える画素の画素値を「1」、その他の画素の画素値を「0」とする。ここでは、全ての2値化手段35,36,37にて同一の閾値を用いるものとし、当該閾値は、たとえば長波長画像においてぼやけて映る光透過層102表面上の像であっても画素値が「1」となるように、比較的低めに設定される。なお、各画素の濃淡値は、反射光の強度が高い部位ほど高くなるものとする。
【0040】
識別手段38は、2値化後の長波長画像と短波長画像とを比較することにより、画像中の像が非透過層101上の像か否かを識別し、非透過層101の表面上の欠陥のみを判別する。つまり、光透過層102の表面上の欠陥(擬似欠陥)については短波長画像に比べ長波長画像で輪郭がぼけて面積が大きくなり、非透過層101の表面上の欠陥については長波長画像に比べ短波長画像で輪郭がぼけて面積が大きくなるので、両画像を比較することにより擬似欠陥か欠陥かを識別することができる。
【0041】
具体的に説明すると、識別手段38は、2値化後の長波長画像と短波長画像との差分をとることで擬似欠陥と欠陥とを識別する。ここで、減算により負の画素値「−1」が生じた場合、当該画素の画素値は「0」とみなすものとする。
【0042】
要するに、図5(a)のような光透過層102の表面上の欠陥(擬似欠陥)104があれば、たとえば図6に示すように、長波長画像(図6(a))の欠陥部分(画素値「1」)104Rに比べて短波長画像(図6(c))の欠陥部分(画素値「1」)104Bの面積が小さくなるため、減算結果は次のようになる。つまり、長波長画像の各画素値から短波長画像の同一画素の画素値を減算すれば、図7に示すように長波長画像における欠陥部分104Rの一部が残るが、反対に、短波長画像から長波長画像を減算しても、短波長画像の欠陥部分104Bは残らない。
【0043】
一方、図5(b)のような非透過層101の表面上の欠陥105であれば、たとえば図8に示すように、長波長画像(図8(a))の欠陥部分(画素値「1」)105Rに比べて短波長画像(図8(c))の欠陥部分(画素値「1」)105Bの面積が大きくなるため、減算結果は次のようになる。つまり、長波長画像の各画素値から短波長画像の同一画素の画素値を減算しても、長波長画像の欠陥部分105Rは残らないが、反対に、短波長画像から長波長画像を減算すれば、図9のように短波長画像における欠陥部分105Bの一部が残ることとなる。
【0044】
したがって、差分演算の結果、長波長画像の欠陥部分が残った場合、当該欠陥は光透過層102の表面上の欠陥(擬似欠陥)104と判断され、短波長画像の欠陥部分が残った場合、当該欠陥は非透過層101の表面上の欠陥105と判断される。なお、差分演算の結果、欠陥部分以外の部分(たとえば、非透過層101の表面パターン)が残った場合、この部分が誤って欠陥と判断されないよう、たとえば予め良品を撮像して得られる差分画像と比較し、欠陥以外の部分は除去される。
【0045】
このとき非透過層101の表面上の欠陥105があると判断された対象物100に関しては、判定手段39にて良否の判定が行われる。この良否の判定には、非透過層101の表面上に焦点の合う中波長画像(図8(b))が用いられ、非透過層101上の欠陥105の面積(大きさ)、幅寸法などの特徴量から、当該対象物100について良品か不良品かが判断される。
【0046】
次に、本実施形態の外観検査システムを用いた外観検査方法について図10のフローチャートを参照して説明する。
【0047】
カメラ10で撮像された対象物100の画像は、取込手段31にて画像処理装置30に取り込まれる(S1)。このとき、画像処理装置30ではRフィルタ32、Bフィルタ33、Gフィルタ34からなる抽出手段にて、長波長画像(R成分)、短波長画像(B成分)、中波長画像(G成分)をそれぞれ抽出する(S2)。抽出された各画像は2値化手段35,36,37にて2値化される(S3)。
【0048】
識別手段38では、2値化後の長波長画像と短波長画像との差分をとり(S4)、短波長画像の欠陥部分が残った場合(S5:Yes)には非透過層101表面の欠陥105と判断し(S6)、それ以外は光透過層102表面の欠陥(擬似欠陥)104と判断する(S7)。つまり当該S4〜S7の処理(識別過程)にて、光透過層102の表面上の欠陥104と非透過層101の表面上の欠陥105とが識別される。
【0049】
ここで、非透過層101表面の欠陥(たとえば光透過層102と非透過層101との間に混入した埃等の異物)105は、後の工程で除去できず、対象物100の動作・機能上の障害となる致命的な欠陥であるから、このような欠陥105がある場合には、判定手段39での良否判定の対象とされる(S8)。判定手段39では、対象物100が不良品(S9)か良品(S10)かの判断がなされる。
【0050】
一方、光透過層102の表面上の欠陥(たとえば光透過層102表面に付着した埃等の異物)104は、後の工程で除去可能であり、対象物100の動作・機能上の障害となるような致命的な欠陥ではないから、このような欠陥(擬似欠陥)104があっても、判定手段39での良否判定は為されずに良品と判断される(S10)。
【0051】
以上説明した構成の外観検査システムによれば、波長ごとに焦点距離が異なることを利用して、識別手段38により、撮像画像から光透過層102の表面上の欠陥(擬似欠陥)104と非透過層101の表面上の欠陥105とを識別することができる。そのため、致命的ではない擬似欠陥があるだけの良品が不良品と誤って判断されてしまう無駄はねが大幅に低減し、歩留りの向上が期待できる。しかも、識別手段38は差分演算という簡単な処理を採用しているから、処理にかかる負荷を比較的小さく抑えることができ、検査の高速化を図ることができる。
【0052】
また、照明装置20に白色光を出力する光源22を用いているから、3波長(R,G,B)の各成分の画像を得るために波長ごとに個別の光源を用いる場合に比べて、照明装置20の構造が簡単になるという利点もある。さらに、カメラ10としても、カラー画像を撮像可能なカラーカメラを用いているから、複数の波長成分を含む画像を1回の撮像で取得することができ、各波長成分の画像を別々に撮像する場合に比べて検査時間を短縮することができる。
【0053】
ここで、単色の撮像画像の(たとえば中波長画像)のみに着目しても、光透過層102の表面上の欠陥104と非透過層101の表面上の欠陥105とで映り方に一応の差がある。ただし、単色の撮像画像のみでは、非透過層101の表面上に発生した淡色の欠陥105と、光透過層102上の濃色の欠陥104とでは濃淡値に殆ど差がなく、これらを識別することは困難である。これに対し、本実施形態では長波長画像(R成分)、短波長画像(B成分)、中波長画像(G成分)の焦点位置の違いに着目したことで、欠陥の濃淡にかかわらず、光透過層102の表面上の欠陥104と非透過層101の表面上の欠陥105とを確実に識別可能である。
【0054】
ところで、本実施形態では、R,G,Bの3波長間の焦点位置の違いを利用する例を示したが、この例に限らず、任意の互いに異なる波長間の焦点位置の違いを利用しても、同様の効果が期待できる。たとえば、照明装置20として、紫外線を出力する紫外光源および赤外線を出力する赤外光源を有するものを用い、撮像画像における紫外線成分と赤外線成分とを比較するようにしてもよい。このように波長の差を広げることにより、焦点位置の差も広がることになるため、より明確に、欠陥を識別することが可能となる。
【0055】
(実施形態2)
本実施形態の外観検査システムは、識別手段38での差分演算の前に、長波長画像(R成分)、短波長画像(B成分)、中波長画像(G成分)のそれぞれについて微分演算を行う微分手段(図示せず)を画像処理装置30に付加した点が実施形態1と相違する。
【0056】
微分手段は、各画像について、各画素の濃淡値に基づき微分値を求め、微分画像を生成する。ここで、各画素の微分値は、隣接する画素との濃淡値の差が大きい画素ほど高くなるものとする。
【0057】
2値化手段35,36,37は、各波長の微分画像について、それぞれ微分値が所定の閾値を超える画素の画素値を「1」、その他の画素の画素値を「0」として2値画像を生成する。ここでは、全ての2値化手段35,36,37にて同一の閾値を用いるものとし、当該閾値は、たとえば長波長画像においてぼやけて映る光透過層102表面の欠陥については画素値が「0」となるように、比較的高めに設定される。これにより、2値画像では、焦点が合わずに輪郭のぼけた部分は除去されることになる。
【0058】
識別手段38は、2値化後の長波長画像と短波長画像とを比較することにより、光透過層102の表面上の欠陥(擬似欠陥)か、あるいは非透過層101の表面上の欠陥かを識別する。
【0059】
要するに、光透過層102の表面上の欠陥(擬似欠陥)104であれば、短波長画像から長波長画像を減算すると、短波長画像における欠陥部分の一部が残るが、反対に、長波長画像から短波長画像を減算しても、長波長画像の欠陥部分は残らない。一方、非透過層101の表面上の欠陥105があれば、短波長画像から長波長画像を減算しても、短波長画像の欠陥部分は残らないが、反対に、長波長画像から短波長画像を減算すれば、長波長画像における欠陥部分の一部が残ることとなる。
【0060】
したがって、差分演算の結果、短波長画像の欠陥部分が残った場合、当該欠陥は光透過層102の表面上の欠陥(擬似欠陥)104と判断され、長波長画像の欠陥部分が残った場合、当該欠陥は非透過層101の表面上の欠陥105と判断される。
【0061】
以上説明した構成では、2値化処理の前に、各画像のうち焦点が合っていない部分を微分処理により予め除去するため、焦点の合った部分が際立つこととなり、欠陥の識別精度が向上するという利点がある。
【0062】
その他の構成および機能は実施形態1と同様である。
【0063】
(実施形態3)
本実施形態の外観検査システムは、2値化処理後に、長波長画像(R成分)、短波長画像(B成分)、中波長画像(G成分)のそれぞれについて欠陥の候補となる画素群を結合してランドを形成するラベリング手段(図示せず)を画像処理装置30に付加した点が実施形態1と相違する。
【0064】
ラベリング手段は、2値化後の各画像について、画素値「1」の画素同士が隣接している場合にこれらの画素を1つの塊(ランド)としてナンバリングし、各ランドに番号付けをして各々を識別可能とする。ここで、たとえば予め良品を撮像して得られる良品画像の2値画像と比較することで、欠陥の候補となるランド(以下、欠陥候補ランドという)を抽出することができる。
【0065】
識別手段38は、長波長画像、短波長画像、中波長画像のそれぞれに関して、ラベリング手段で抽出された欠陥候補ランドの重心位置を求め、当該重心位置がこれらの画像間で重なる場合に、当該欠陥候補ランド同士で面積を比較する。
【0066】
要するに、光透過層102の表面上の欠陥(擬似欠陥)104であれば、欠陥候補ランドは、短波長画像に比べて長波長画像や中波長画像で輪郭がぼけて面積が大きくなる。一方、非透過層101の表面上の欠陥であれば、欠陥候補ランドは、長波長画像や中波長画像に比べて短波長画像で輪郭がぼけて面積が大きくなる。
【0067】
したがって、欠陥候補ランドの面積を比較した結果、長波長画像や中波長画像の方が大きければ、当該欠陥は光透過層102の表面上の欠陥(擬似欠陥)104と判断され、短波長画像の方が大きければ、当該欠陥は非透過層101の表面上の欠陥105と判断される。
【0068】
以上説明した構成によれば、画像同士を比較するに当たり、予め各画像から欠陥の候補となる領域(欠陥候補ランド)が抽出されるので、識別手段38は、欠陥の候補となる領域のみを対象として画像同士の比較を行うことができ、欠陥の識別精度が向上するという利点がある。
【0069】
その他の構成および機能は実施形態1と同様である。
【0070】
(実施形態4)
本実施形態の外観検査システムは、図11に示すように、R,G,Bの各波長の単色光をそれぞれ出力する複数の単色光源22R,22G,22Bを照明装置20に使用した点が実施形態1の外観検査システムと相違する。
【0071】
各単色光源22R,22G,22Bは、それぞれ個別の照明用電源装置21R,21G,21Bに接続される。これら複数の単色光源22R,22G,22Bから出力された光は、光ファイバ25を通して導光され、互いに混色されることで白色光を実現する。ここで、各照明用電源装置21R,21G,21Bは各単色光源22R,22G,22Bからの光出力の大きさをそれぞれ調節する調光手段としての機能を有し、これにより、照明装置20からの照明光は波長(R,G,B)ごとに個別に調光制御される。
【0072】
以上説明した本実施形態の構成によれば、対象物100の構造(たとえば光透過層102の材質)やカメラ10の各波長別の感度によって、撮像画像において波長ごとに濃淡値のばらつきを生じることがあっても、照明光の光出力を波長ごとに個別に調節することで前記ばらつきを補正することができる。
【0073】
なお、ここでは複数の単色光源22R,22G,22Bは同時に点灯させるものとするが、これに限らず、各単色光源22R,22G,22Bを順次点灯させ、長波長画像(R成分)、中波長画像(G成分)、短波長画像(B成分)を個別に撮像するようにしてもよい。この場合、画像処理装置30において、Rフィルタ32、Bフィルタ33、Gフィルタ34からなる抽出手段を省略することができる。
【0074】
その他の構成および機能は実施形態1と同様である。
【符号の説明】
【0075】
10 カメラ(撮像装置)
11 レンズ
20 照明装置
22 光源
22R,22G,22B 単色光源
30 画像処理装置
35,36,37 2値化手段
38 識別手段
100 対象物
101 非透過層
102 光透過層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも非透過層の一表面側に光透過層が積層された積層体を対象物として、非透過層の表面上の欠陥を検査する外観検査システムであって、対象物を前記一表面側から撮像する撮像装置と、対象物を前記一表面側から照明する同軸落射照明用の照明装置と、撮像装置で撮像された非透過層の表面上の像から前記欠陥の有無を判定する画像処理装置とを備え、照明装置は、光透過層を透過する少なくとも2種類の異なる波長の照明光を対象物に照射し、撮像装置は、照明光の波長ごとの焦点距離の違いを利用し、一の波長の照明光で撮像される短波長画像と、前記一の波長よりも長波長となる他の波長の照明光で撮像される長波長画像とを比べると、短波長画像よりも長波長画像で非透過層の表面近くに焦点を合わせており、画像処理装置は、短波長画像と長波長画像とを比較した結果、短波長画像に比べて長波長画像でピントが合う部分を非透過層の表面上の像と判断する識別手段を有することを特徴とする外観検査システム。
【請求項2】
前記画像処理装置は、前記短波長画像および前記長波長画像についてそれぞれ濃淡値を所定の閾値で2値化処理を行う2値化手段を有し、前記識別手段は、2値化処理後の短波長画像と長波長画像との差をとり、短波長画像の一部分が残れば当該一部分を前記非透過層の表面上の像と判断することを特徴とする請求項1記載の外観検査システム。
【請求項3】
前記画像処理装置は、前記短波長画像および前記長波長画像についてそれぞれ各画素の濃淡値に基づき微分画像を生成する微分手段と、各微分画像についてそれぞれ画素値を所定の閾値で2値化処理を行う2値化手段とを有し、前記識別手段は、2値化処理後の短波長画像と長波長画像との差をとり、長波長画像の一部分が残れば当該一部分を前記非透過層の表面上の像と判断することを特徴とする請求項1記載の外観検査システム。
【請求項4】
前記画像処理装置は、前記短波長画像および前記長波長画像についてそれぞれ濃淡値を所定の閾値で2値化処理を行う2値化手段と、2値化処理後の各画像について欠陥の候補となる画素群を結合してランドを形成するラベリング手段とを有し、前記識別手段は、短波長画像および長波長画像の各々に関しランドの重心位置を求め、当該重心位置が両画像間で重なる場合に、長波長画像のランドの面積と短波長画像のランドの面積とを比較し、短波長画像の方が大きければ当該ランドを前記非透過層の表面上の像と判断することを特徴とする請求項1記載の外観検査システム。
【請求項5】
前記照明装置は、少なくとも2種類の異なる波長の光を含む白色光を出力する光源を有することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の外観検査システム。
【請求項6】
前記照明装置は、互いに異なる波長の単色光をそれぞれ出力する複数の単色光源と、各単色光源の光出力の大きさを個別に調節する調光手段とを有することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の外観検査システム。
【請求項7】
前記照明装置は、前記一の波長の照明光として紫外線を出力する紫外光源と、前記他の波長の照明光として赤外線を出力する赤外光源とを有することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の外観検査システム。
【請求項8】
前記撮像装置はカラー画像を撮像可能であって、前記画像処理装置は、前記照明装置から前記一の波長と前記他の波長との両方の照明光が出力された状態で撮像されたカラー画像から、波長に基づいて前記短波長画像と前記長波長画像とをそれぞれ抽出する抽出手段を有することを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の外観検査システム。
【請求項9】
少なくとも非透過層の一表面側に光透過層が積層された積層体を対象物として、対象物を前記一表面側から撮像する撮像装置と、光透過層を透過する少なくとも2種類の異なる波長の照明光を前記一表面側から対象物に照射する同軸落射照明用の照明装置と、撮像装置で撮像された非透過層の表面上の像から非透過層の表面上の欠陥の有無を判定する画像処理装置とを使用し、前記欠陥を検査する外観検査方法であって、撮像装置では、照明光の波長ごとの焦点距離の違いを利用し、一の波長の照明光で撮像される短波長画像と、前記一の波長よりも長波長となる他の波長の照明光で撮像される長波長画像とを比べると、短波長画像よりも長波長画像で非透過層の表面近くに焦点を合わせており、短波長画像と長波長画像とを比較した結果、短波長画像に比べて長波長画像でピントが合う部分を非透過層の表面上の像と判断する識別過程を有することを特徴とする外観検査方法。
【請求項1】
少なくとも非透過層の一表面側に光透過層が積層された積層体を対象物として、非透過層の表面上の欠陥を検査する外観検査システムであって、対象物を前記一表面側から撮像する撮像装置と、対象物を前記一表面側から照明する同軸落射照明用の照明装置と、撮像装置で撮像された非透過層の表面上の像から前記欠陥の有無を判定する画像処理装置とを備え、照明装置は、光透過層を透過する少なくとも2種類の異なる波長の照明光を対象物に照射し、撮像装置は、照明光の波長ごとの焦点距離の違いを利用し、一の波長の照明光で撮像される短波長画像と、前記一の波長よりも長波長となる他の波長の照明光で撮像される長波長画像とを比べると、短波長画像よりも長波長画像で非透過層の表面近くに焦点を合わせており、画像処理装置は、短波長画像と長波長画像とを比較した結果、短波長画像に比べて長波長画像でピントが合う部分を非透過層の表面上の像と判断する識別手段を有することを特徴とする外観検査システム。
【請求項2】
前記画像処理装置は、前記短波長画像および前記長波長画像についてそれぞれ濃淡値を所定の閾値で2値化処理を行う2値化手段を有し、前記識別手段は、2値化処理後の短波長画像と長波長画像との差をとり、短波長画像の一部分が残れば当該一部分を前記非透過層の表面上の像と判断することを特徴とする請求項1記載の外観検査システム。
【請求項3】
前記画像処理装置は、前記短波長画像および前記長波長画像についてそれぞれ各画素の濃淡値に基づき微分画像を生成する微分手段と、各微分画像についてそれぞれ画素値を所定の閾値で2値化処理を行う2値化手段とを有し、前記識別手段は、2値化処理後の短波長画像と長波長画像との差をとり、長波長画像の一部分が残れば当該一部分を前記非透過層の表面上の像と判断することを特徴とする請求項1記載の外観検査システム。
【請求項4】
前記画像処理装置は、前記短波長画像および前記長波長画像についてそれぞれ濃淡値を所定の閾値で2値化処理を行う2値化手段と、2値化処理後の各画像について欠陥の候補となる画素群を結合してランドを形成するラベリング手段とを有し、前記識別手段は、短波長画像および長波長画像の各々に関しランドの重心位置を求め、当該重心位置が両画像間で重なる場合に、長波長画像のランドの面積と短波長画像のランドの面積とを比較し、短波長画像の方が大きければ当該ランドを前記非透過層の表面上の像と判断することを特徴とする請求項1記載の外観検査システム。
【請求項5】
前記照明装置は、少なくとも2種類の異なる波長の光を含む白色光を出力する光源を有することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の外観検査システム。
【請求項6】
前記照明装置は、互いに異なる波長の単色光をそれぞれ出力する複数の単色光源と、各単色光源の光出力の大きさを個別に調節する調光手段とを有することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の外観検査システム。
【請求項7】
前記照明装置は、前記一の波長の照明光として紫外線を出力する紫外光源と、前記他の波長の照明光として赤外線を出力する赤外光源とを有することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の外観検査システム。
【請求項8】
前記撮像装置はカラー画像を撮像可能であって、前記画像処理装置は、前記照明装置から前記一の波長と前記他の波長との両方の照明光が出力された状態で撮像されたカラー画像から、波長に基づいて前記短波長画像と前記長波長画像とをそれぞれ抽出する抽出手段を有することを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の外観検査システム。
【請求項9】
少なくとも非透過層の一表面側に光透過層が積層された積層体を対象物として、対象物を前記一表面側から撮像する撮像装置と、光透過層を透過する少なくとも2種類の異なる波長の照明光を前記一表面側から対象物に照射する同軸落射照明用の照明装置と、撮像装置で撮像された非透過層の表面上の像から非透過層の表面上の欠陥の有無を判定する画像処理装置とを使用し、前記欠陥を検査する外観検査方法であって、撮像装置では、照明光の波長ごとの焦点距離の違いを利用し、一の波長の照明光で撮像される短波長画像と、前記一の波長よりも長波長となる他の波長の照明光で撮像される長波長画像とを比べると、短波長画像よりも長波長画像で非透過層の表面近くに焦点を合わせており、短波長画像と長波長画像とを比較した結果、短波長画像に比べて長波長画像でピントが合う部分を非透過層の表面上の像と判断する識別過程を有することを特徴とする外観検査方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−256185(P2010−256185A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−107032(P2009−107032)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
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