説明

外部用天然木化粧単板仕上げ不燃建材及び外部用天然木化粧単板仕上げ不燃建材の製造方法

【課題】長期に亘って外装材としての美観を保つことが可能な外部用天然木化粧単板仕上げ不燃建材を提供する。
【解決手段】建築用の外装材として使用される外部用天然木化粧単板仕上げ不燃建材1であって、ケイ酸カルシウムに吸水防止剤を均一に分散してなる基材2と、基材2の表面に塗布される無溶剤型の自己浸透型含浸剤3と、所定の寸法安定化処理を施してなる化粧単板5と、基材2に化粧単板5を接着する水性高分子イソシアネート系接着剤4と、化粧単板5の表面に施されるアクリルシリコーン系塗装6とからなる。化粧単板5は、ポリエチレングリコール水溶液に浸漬する等により寸法安定化処理が施される。基材2の撥水性を高めることができるとともに、化粧単板5の寸法安定性を確保することができ、さらに化粧単板5の紫外線による急激な変色を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部用天然木化粧単板仕上げ不燃建材及び外部用天然木化粧単板仕上げ不燃建材の製造方法に関し、特に、建築用の外装材として好適な外部用天然木化粧単板仕上げ不燃建材及び外部用天然木化粧単板仕上げ不燃建材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築用の天然木化粧単板仕上げ不燃建材には様々なタイプのものがあり、例えば、下地(基材)に不燃材を用い、この下地に接着剤を介して0.2〜0.3mmの厚さの天然木化粧単板を熱圧着し、この天然木化粧単板の表面に塗装を施した天然木化粧単板仕上げ不燃建材が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特公昭50−18043号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記のような構成の天然木化粧単板仕上げ不燃建材にあっては、建築用の内装材として使用することを前提として設計、製造されているため、そのまま外装材として使用した場合には様々な問題が生じる。
【0004】
例えば、下地(基材)に比重が0.5〜1.5程度の吸水性の高い不燃材を使用しているため、外気に晒されることにより凍結融解を起こしたり、接着剤や化粧単板が早期に劣化してしまう問題が生じる。また、化粧単板に、含水率の変化による膨張収縮によって割れが生じたり、剥離が生じたり、紫外線による急激な変色が生じる等の問題が生じる。このため、外装材としての美観が著しく損なわれるため、外装材として使用することが困難であった。
【0005】
一方、上記のような構成の下地にポリエチレングリコール等の低、中分子の有機物を表層含浸又は加圧含浸させて吸水性を低下させ、水分の浸入を防止することによって下地の寸法安定性を確保することが行われている。
【0006】
しかし、表層含浸及び加圧含浸は、加工に多くの工程を有するとともに、各工程に対応した設備が必要になるため、加工に時間と手間がかかり、また設備費も高く付くため、製造コストが高くついてしまう。また、ポリエチレングリコールは、水溶性の低、中分子の液状物であるため、経時的に外部の水分との接触、拡散、及び重力の作用等によって、下地から再溶出してしまう問題があり、長期的に安定した撥水性が得られない。
【0007】
さらに、吸水防止剤を内添することにより耐水性能を高めるように構成した天然木化粧単板仕上げ不燃建材(ケイ酸カルシウム建材)が提案されている。しかし、このような構成の天然木化粧単板仕上げ不燃建材(ケイ酸カルシウム建材)にあっては、成形前の原料混合において、撥水性を有し水と分離しやすい吸水防止剤をケイ酸カルシウムスラリ内に均一に分散させることができないため、耐水性能を高めることが困難である。
【0008】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、外装材として使用しても、凍結融解を起こしたり、接着剤や化粧単板が早期に劣化したり、含水率の変化による膨張収縮によって化粧単板に割れが生じたり、剥離が生じたり、紫外線による急激な変色が生じたりすることがなく、外装材としての美観を長期に亘って維持することができるとともに、製造が容易で設備費も安く済み、製造コストを安く抑えることができる外部用天然木化粧単板仕上げ不燃建材及び外部用天然木化粧単板仕上げ不燃建材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記のような課題を解決するために、本発明は、以下のような手段を採用している。
すなわち、請求項1に係る発明は、建築用の外装材として使用される外部用天然木化粧単板仕上げ不燃建材であって、ケイ酸カルシウムに吸水防止剤を均一に分散してなる基材と、該基材の表面に塗布される無溶剤型の自己浸透型含浸剤と、所定の寸法安定化処理を施してなる化粧単板と、前記基材に前記化粧単板を接着する水性高分子イソシアネート系接着剤と、前記化粧単板の表面に施されるアクリルシリコーン系塗装とからなることを特徴とする。
【0010】
本発明による外部用天然木化粧単板仕上げ不燃建材によれば、基材は、全体に亘って吸水防止剤が均一に分散されるとともに、表面に無溶剤型の自己浸透型含浸剤が塗布されることになるので、全体に亘って均一の良好な撥水性が得られることになる。また、化粧単板は、所定の寸法安定化処理が施されるとともに、表面にアクリルシリコーン系塗装が施されることになるので、寸法安定性を確保することができるとともに、紫外線によって急激に変色するのを防止できる。従って、外装材として使用した場合に、外装材としての美観を長期に亘って維持することができる。
【0011】
請求項2に係る発明は、建築用の外装材として使用される外部用天然木化粧単板仕上げ不燃建材であって、ケイ酸カルシウムに無機質繊維と吸水防止剤及びスチレン−ブタジエンゴムとを均一に分散してなる基材と、該基材の表面に塗布される無溶剤型の自己浸透型含浸剤と、所定の寸法安定化処理を施してなる化粧単板と、前記基材に前記化粧単板を接着する水性高分子イソシアネート系接着剤と、前記化粧単板の表面に施されるアクリルシリコーン系塗装とからなることを特徴とする。
【0012】
本発明による外部用天然木化粧単板仕上げ不燃建材によれば、基材は、全体に亘って無機質繊維及び吸水防止剤が均一に分散されるとともに、表面に無溶剤型の自己浸透型含浸剤が塗布されることになるので、全体に亘って均一の良好な撥水性が得られることになる。また、化粧単板は、所定の寸法安定化処理が施されるとともに、表面にアクリルシリコーン系塗装が施されることになるので、寸法安定性を確保することができるとともに、紫外線によって急激に変色するのを防止できる。従って、外装材として使用した場合に、外装材としての美観を長期に亘って維持することができる。
また、ケイ酸カルシウムに、スチレン−ブタジエンゴム及び予め混合した無機質繊維と吸水防止剤とを添加混合することにより、無機質繊維の表面及び繊維間に付着又は吸着した吸水防止剤がケイ酸カルシウム中に均一に分散されることになる。従って、基材の吸水性を全体に亘って均一な低い状態とすることができるので、基材の全体に亘って均一な良好な撥水性が得られることになる。
【0013】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載の外部用天然木化粧単板仕上げ不燃建材であって、前記化粧単板は、ポリエチレングリコール水溶液に浸漬することにより、ポリエチレングリコール水溶液を塗布することにより、又はシリコーン変性イソシアネート化合物を塗布することにより、寸法安定化処理が施されていることを特徴とする。
【0014】
本発明による外部用天然木化粧単板仕上げ不燃建材によれば、化粧単板は、ポリエチレングリコール水溶液に浸漬することにより、ポリエチレングリコール水溶液を塗布することにより、又はシリコーン変性イソシアネート化合物を塗布することにより、ポリエチレングリコール又はシリコーン変性イソシアネート化合物が含浸され、化粧単板の寸法安定性が高められることになる。
【0015】
請求項4に係る発明は、建築用の外装材として使用される外部用天然木化粧単板仕上げ不燃建材の製造方法であって、所定の原調工程、反応工程を経てケイ酸カルシウムを製造し、このケイ酸カルシウムに無機質繊維と吸水防止剤及びスチレン−ブタジエンゴムとを添加混合して、ケイ酸カルシウム中に無機質繊維と吸水防止剤とを均一に分散させ、これを原料として脱水成形工程、乾燥工程を経て基材を成形し、この基材の表面に無溶剤型の自己浸透型含浸剤を塗布することにより表面処理を施し、ポリエチレングリコール水溶液に浸漬することにより、ポリエチレングリコール水溶液を塗布することにより、又はシリコーン変性イソシアネート化合物を塗布することにより、化粧単板に寸法安定化処理を施し、前記基材と前記化粧単板とを水性高分子イソシアネート系接着剤を介して接着し、さらに、前記化粧単板の表面にアクリルシリコーン系塗装を施すことを特徴とする。
【0016】
本発明による外部用天然木化粧単板仕上げ不燃建材の製造方法によれば、所定の原調工程、反応工程を経ることによりケイ酸カルシウムが製造され、このケイ酸カルシウムに、スチレン−ブタジエンゴム及び予め混合した無機質繊維と吸水防止剤とを添加混合することにより、吸水防止剤がケイ酸カルシウム中に均一に分散される。そして、これを原料として脱水成形工程、乾燥工程を経ることにより所定の形状の基材が成形され、この基材の表面に無溶剤型の自己浸透型含浸剤を塗布することにより、基材の表面に表面処理が施される。そして、ポリエチレングリコール水溶液に浸漬することにより、ポリエチレングリコール水溶液を塗布することにより、又は化粧単板にシリコーン変性イソシアネート化合物を塗布することにより、化粧単板に寸法安定化処理が施される。そして、基材と化粧単板とを水性高分子イソシアネート系接着剤を介して接着し、化粧単板の表面にアクリルシリコーン系塗装を施すことにより、外部用天然木化粧単板仕上げ不燃建材が製造されることになる。
このような過程を経て製造された外部用天然木化粧単板仕上げ不燃建材は、外装材として使用した場合に、基材の全体に亘って均一な良好な撥水性が得られるとともに、化粧単板の寸法安定性を確保することができ、さらに、化粧単板の紫外線による急激な変色を防止できるので、外装材としての美観を長期に亘って維持することができる。
【0017】
請求項5に係る発明は、請求項4に記載の外部用天然木化粧単板仕上げ不燃建材の製造方法であって、前記基材の原料を製造する際に、予め、無機質繊維と吸水防止剤を混合し、この後に、この混合物とケイ酸カルシウム及びスチレン−ブタジエンゴムとを混合することを特徴とする。
【0018】
本発明による外部用天然木化粧単板仕上げ不燃建材の製造方法によれば、無機質繊維と吸水防止剤とを予め混合することにより、無機質繊維の表面及び繊維間に吸水防止剤が付着又は吸着され、この混合物とケイ酸カルシウム及びスチレン−ブタジエンゴムとを混合することにより、ケイ酸カルシウム中に無機質繊維及び吸水防止剤を均一に分散させることができる。
【発明の効果】
【0019】
以上、説明したように、本発明による外部用天然木化粧単板仕上げ不燃建材及び外部用天然木化粧単板仕上げ不燃建材の製造方法によれば、基材の全体に亘って無機質繊維及び吸水防止剤を均一に分散させることができるので、基材の吸水性を全体に亘って均一な低い状態、すなわち撥水性を全体に亘って均一な良好な状態とすることができるとともに、化粧単板の寸法安定性を確保することができ、さらに化粧単板の紫外線による急激な変色を防止することができる。
従って、建築用の外装材として使用した場合に、外気に晒されても、凍結融解を起こしたり、化粧単板や接着剤が早期に劣化したり、含水率の変化による膨張収縮によって化粧単板に割れや剥離が生じたりするようなことはなく、さらに化粧単板が紫外線によって急激に変色したりするようなこともないので、外装材としての美観を長期に亘って維持することができ、外装材として長期に亘って使用し続けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面に示す本発明の実施の形態について説明する。
図1には、本発明による外部用天然木化粧単板仕上げ不燃建材の一実施の形態が示されていて、この外部用天然木化粧単板仕上げ不燃建材1は、建築用の外装材に好適なものであって、不燃建材である基材2と、基材2に水性高分子イソシアネート系接着剤4を介して接着される化粧単板5とを備えている。
【0021】
基材2は、ケイ酸カルシウムに無機質繊維(ガラス繊維等)と吸水防止剤の一例としての撥水剤とを均一に分散させたものを原料とし、この原料を用いて周知の成形法により所定の形状(四角形板状等)に成形したものであって、吸水防止剤の一例としての撥水剤によって吸水性が全体に亘って均一に低く抑えられ、全体に亘って均一な撥水性が得られるように構成されている。
【0022】
ケイ酸カルシウムは、所定量の消石灰、シリカ粉末、及び水を混合させて混合物を製造し、この混合物に対して予備反応(1次反応)及び高温加圧反応(オートクレーブ反応)を経ることによって製造される。
【0023】
予め、無機質繊維と撥水剤とを混合し、この後に、この混合物とケイ酸カルシウム及びスチレン−ブタジエンゴムとを混合することが好ましい。このような混合物を先に製造することにより、無機質繊維の表面及び繊維間に撥水剤を付着又は吸着させることができるので、ケイ酸カルシウム中に無機質繊維及び撥水剤を均一に分散させることができる。
【0024】
本実施の形態においては、重量比で、ケイ酸カルシウム:75〜89%、無機質繊維(ガラス繊維等):11%以下、スチレン−ブタジエンゴム及び撥水剤:6%以下となるように、ケイ酸カルシウムに撥水剤を添加混合している。
【0025】
基材2は、プレスを用いて周知の脱水成形法により成形され、成形後に乾燥、研磨、切断を経ることにより所定の形状(四角形板状等)に形成される。基材2の表面には、乾燥後に無溶剤型の自己浸透型含浸剤(ウレタン系シーラー)を塗布することにより表面処理(下塗り3)が施される。無溶剤型の自己浸透型含浸剤は、基材2の細胞間隙に浸透するとともに、一部は細胞内部にまで浸透する特性を有し、基材2の撥水性を高める。
【0026】
水性高分子イソシアネート系接着剤4としては、例えば、マルカUVボンド(商品名、中部サイデン株式会社)、ピーアイボンド(商品名、株式会社オーシカ)が挙げられる。マルカUVボンドは、真空プレス接着による曲面、3方張り等の接着に適用可能な接着剤であり、ピーアイボンドは、平プレス接着による平面等の接着に適用可能な接着剤である。
【0027】
マルカUVボンドは、キャタリストG(商品名、中部サイデン株式会社)を添加剤とし、キャタリストGの添加量を変更することにより、耐温水性能、耐煮沸性能を自在に変えることができる等の特性を有している。
【0028】
マルカUVボンドの性状は、外観:白濁高粘稠液、粘度(mPs−s):6000±2000(30℃)、pH:6.0±1.0、不揮発分(%):42±2、水混和性(25℃):20倍以上、可使時間(25℃):約2.5時間(キャタリストG(商品名、中部サイデン株式会社)10%添加時)である。キャタリストGの性状は、外観:暗褐色液、粘度(mPs−s):200±100(25℃)、不揮発分(%):100、水混和性(25℃):1倍以上である。
【0029】
ピーアイボンドは、架橋剤を添加剤とする。ピーアイボンド(ピーアイボンド5300)の性状は、外観:乳白色粘稠液、不揮発分(%):60、粘度/25℃:10Pa−s、pH:6.4である。架橋剤(架橋剤H−30)の性状は、外観:黒褐色均質液体、粘度/25℃:0.025Pa−sである。
【0030】
化粧単板5としては、例えば、0.2〜0.3mmの厚さの天然木化粧単板(ケヤキ、ナラ、セン、カバ、セン、ヒノキ等)が用いられ、この化粧単板5に対して所定の寸法安定化処理が施される。
【0031】
寸法安定化処理としては、例えば、化粧単板5をポリエチレングリコール10〜30%水溶液(平均分子量:200〜1000程度)に浸漬する、化粧単板5にポリエチレングリコール10〜30%水溶液(平均分子量:200〜1000程度)を塗布する、化粧単板5にシリコーン変性イソシアネート化合物を塗布する等の方法が挙げられる。
【0032】
化粧単板5の表面には、アクリルシリコーン系塗装による表面処理(上塗り6)が施され、この上塗り6によって化粧単板5が紫外線によって急激に変色するのを防止でき、天然木と同様に、化粧単板5を経時的に自然に変色させることができる。
【0033】
次に、上記のように構成した本発明による外部用天然木化粧単板仕上げ不燃建材1の製造方法について説明する。
この外部用天然木化粧単板仕上げ不燃建材1の製造方法は、図2に示すように、基材2を成形する基材成形工程と、化粧単板5に所定の処理を施す化粧単板処理工程と、基材成形工程で得られた基材2と化粧単板処理工程で得られた化粧単板5とを接着する接着工程とを備えている。
【0034】
(1)基材成形工程
基材成形工程は、図3に示すように、原調工程、反応工程、プレス工程、ライン工程、出荷工程から構成される。以下、各工程について説明する。
【0035】
1)原調工程
原調工程では、所定量の消石灰、シリカ、及び水を混合させて混合物を製造し、この混合物を計量により所定量用意する。
【0036】
2)反応工程
反応工程は、予備反応(1次反応)と高温加圧反応(オートクレーブ反応)からなり、原調工程で製造された混合物に対して、予備反応(1次反応)、及び高温加圧反応(オートクレーブ反応)を施すことにより、所定の性状のケイ酸カルシウムを製造する。
【0037】
3)プレス工程
プレス工程では、まず、反応工程で得られたケイ酸カルシウムに無機質繊維(ガラス繊維等)と撥水剤とを添加混合し、成形の原料を製造する。
この場合、予め無機質繊維と撥水剤とを混合し、この後に、この混合物とケイ酸カルシウムとを混合することが好ましい。このような混合物を先に製造することにより、無機質繊維の表面及び繊維間に撥水剤を付着又は吸着させることができるので、ケイ酸カルシウム中に無機質繊維及び撥水剤を均一に分散させることができる。
なお、本実施の形態においては、重量比で、ケイ酸カルシウム:75〜89%、無機質繊維(ガラス繊維等):11%以下、スチレン−ブタジエンゴム及び撥水剤:6%以下となるように、ケイ酸カルシウムに撥水剤を添加混合している。次に、原料を用いてプレスにより脱水成形を行い、乾燥させることにより所定の形状の基材2を成形する。
【0038】
4)ライン工程
ライン工程では、脱水成形により成形された基材2に対して、研磨、切断を行うことにより、所定の寸法とし、これを積付けする。
この場合、基材2の表面に、無溶剤型の自己浸透型含浸剤(ウレタン系シーラー)を塗布し、表面処理(下塗り3)を施す。この無溶剤型の自己浸透型含浸剤は、基材2の細胞間隙に浸透するとともに一部は細胞内部にまで浸透し、基材2の撥水性を高める。
【0039】
5)出荷工程
出荷工程では、積付けした基材2を包装し、出荷する。
【0040】
このようにして、所定の組成、形状の基材2を製造することができる。本実施の形態においては、ケイ酸カルシウム:75〜89%、無機質繊維:11%以下、有機物(スチレン−ブタジエンゴム及び撥水剤):6%以下の基材2が得られた。
【0041】
(2)化粧単板処理工程
化粧単板処理工程は、化粧単板5に寸法安定化処理を施す工程であって、化粧単板5には、0.2〜0.3mmの厚さの天然木化粧単板(ケヤキ、ナラ、セン、カバ、セン、ヒノキ等)が用いられる。
【0042】
まず、化粧単板5をポリエチレングリコール10〜30%水溶液(平均分子量:200〜1000程度)に浸漬し、化粧単板5にポリエチレングリコール10〜30%水溶液(平均分子量:200〜1000程度)を塗布し、又は化粧単板5にシリコーン変性イソシアネート化合物を塗布する。
【0043】
次に、化粧単板5の表面にアクリルシリコーン系塗装による表面処理(上塗り6)を施す。この上塗り6により化粧単板5が紫外線によって急激に変色するのが防止され、天然木と同様に、自然な速度で変色させることができる。
なお、化粧単板5の表面への上塗り6は、後述する接着工程の後に行ってもよい。
【0044】
(3)接着工程
接着工程は、基材成形工程で得られた基材2に化粧単板処理工程で得られた化粧単板5を水性高分子イソシアネート系接着剤4を介して接着する工程であって、水性高分子イソシアネート系接着剤4には、マルカUVボンド(商品名、中部サイデン株式会社)又はピーアイボンド(商品名、株式会社オーシカ)が用いられる。基材2の上部に水性高分子イソシアネート系接着剤4を介して化粧単板5を周知の接着法により接着することにより、基材2と化粧単板5とが一体化された外部用天然木化粧単板仕上げ不燃建材1が製造される。
【0045】
上記のように構成した本実施の形態による外部用天然木化粧単板仕上げ不燃建材及び外部用天然木化粧単板仕上げ不燃建材の製造方法にあっては、基材2の全体に亘って撥水剤を均一に分散させることができるので、基材2の吸水性を全体に亘って均一な低い状態とすることができ、全体に亘って均一な良好な撥水性が得られる。また、化粧単板5の寸法安定性を確保することができるとともに、紫外線による急激な変色を防止することもできる。従って、建築用の外装材として使用した場合に、外気に晒されても、凍結融解を起こしたり、化粧単板5や接着剤4が早期に劣化したり、含水率の変化による膨張収縮によって化粧単板5に割れや剥離が生じたりするようなことはなく、さらに化粧単板5が紫外線によって急激に変色したりするようなこともないので、長期に亘って美観が損なわれるようなことはなく、外装材として長期に亘って使用し続けることができる。
【0046】
以下に、原料組成が同じで、成形前の混合方法が異なる試験体を複数製造し、その吸水率を比較した結果を示す。
<実施例1>
原料組成は、ケイ酸カルシウム:90.8%、ガラス繊維:4.6%、パルプ:0.6%、撥水剤:4.0%とした。
試験体Aは、原料混合時に予めガラス繊維と撥水剤とをよく混合し、ガラス繊維に撥水剤を十分に付着させ、又は吸着させた後、他の原料(ケイ酸カルシウム、パルプ)と混合し、成形した。
試験体Bは、各原料を別々に投入し、混合し、成形した。
試験体A、試験体Bともに成形後乾燥し、見掛け比重:0.35前後、水分:1%前後に調整し、JIS A 5430 の吸水率試験を実施した。その結果、試験体Aは吸水率:4.7%、試験体Bは吸水率:10.5%であった。
【0047】
<実施例2>
原料組成は、ケイ酸カルシウム:83.0%、ガラス繊維:;4.6%、ラテックス:8.3%、撥水剤:4.1%とした。
試験Cは、実施例1と同様に原料混合時に予めガラス繊維と撥水剤とをよく混合し、ガラス繊維に撥水剤を十分に付着させ又は吸着させた後、他の原料(ケイ酸カルシウム、ラテックス)と混合し、成形した。
試験体Dは、各原料を別々に投入し、混合し、成形した。
試験体C、試験体Dともに成形後乾燥し、見掛け比重:0.55前後、水分:1%前後に調整し、JIS A 5430の吸水率試験を実施した。その結果、試験体Cは吸水率:3.1%、試験体Dは吸水率:6.4%であった。
【0048】
これらの結果から、予めガラス繊維と撥水剤とをよく混合し、この混合物と他の原料(ケイ酸カルシウム、パルプ、ラテックス)とを混合したものを成形の原料とした方が吸水率が低く、より高い耐水性能を有する建材が得られることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明による外部用天然木化粧単板仕上げ不燃建材の一実施の形態を示した概略図である。
【図2】本発明による外部用天然木化粧単板仕上げ不燃建材の製造方法の工程図である。
【図3】基材成形工程の説明図である。
【符号の説明】
【0050】
1 外部用天然木化粧単板仕上げ不燃建材
2 基材
3 下塗り
4 水性高分子イソシアネート系接着剤
5 化粧単板
6 上塗り

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築用の外装材として使用される外部用天然木化粧単板仕上げ不燃建材であって、
ケイ酸カルシウムに吸水防止剤を均一に分散してなる基材と、該基材の表面に塗布される無溶剤型の自己浸透型含浸剤と、所定の寸法安定化処理を施してなる化粧単板と、前記基材に前記化粧単板を接着する水性高分子イソシアネート系接着剤と、前記化粧単板の表面に施されるアクリルシリコーン系塗装とからなることを特徴とする外部用天然木化粧単板仕上げ不燃建材。
【請求項2】
建築用の外装材として使用される外部用天然木化粧単板仕上げ不燃建材であって、
ケイ酸カルシウムに無機質繊維と吸水防止剤及びスチレン−ブタジエンゴムとを均一に分散してなる基材と、該基材の表面に塗布される無溶剤型の自己浸透型含浸剤と、所定の寸法安定化処理を施してなる化粧単板と、前記基材に前記化粧単板を接着する水性高分子イソシアネート系接着剤と、前記化粧単板の表面に施されるアクリルシリコーン系塗装とからなることを特徴とする外部用天然木化粧単板仕上げ不燃建材。
【請求項3】
前記化粧単板は、ポリエチレングリコール水溶液に浸漬することにより、ポリエチレングリコール水溶液を塗布することにより、又はシリコーン変性イソシアネート化合物を塗布することにより、寸法安定化処理が施されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の外部用天然木化粧単板仕上げ不燃建材。
【請求項4】
建築用の外装材として使用される外部用天然木化粧単板仕上げ不燃建材の製造方法であって、
所定の原調工程、反応工程を経てケイ酸カルシウムを製造し、このケイ酸カルシウムに無機質繊維と吸水防止剤及びスチレン−ブタジエンゴムとを添加混合して、ケイ酸カルシウム中に無機質繊維と吸水防止剤とを均一に分散させ、これを原料として脱水成形工程、乾燥工程を経て基材を成形し、この基材の表面に無溶剤型の自己浸透型含浸剤を塗布することにより表面処理を施し、
ポリエチレングリコール水溶液に浸漬することにより、ポリエチレングリコール水溶液を塗布することにより、又はシリコーン変性イソシアネート化合物を塗布することにより、化粧単板に寸法安定化処理を施し、
前記基材と前記化粧単板とを水性高分子イソシアネート系接着剤を介して接着し、
さらに、前記化粧単板の表面にアクリルシリコーン系塗装を施すことを特徴とする外部用天然木化粧単板仕上げ不燃建材の製造方法。
【請求項5】
前記基材の原料を製造する際に、予め、無機質繊維と吸水防止剤を混合し、この後に、この混合物とケイ酸カルシウム及びスチレン−ブタジエンゴムとを混合することを特徴とする請求項4に記載の外部用天然木化粧単板仕上げ不燃建材の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−291694(P2006−291694A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−329998(P2005−329998)
【出願日】平成17年11月15日(2005.11.15)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(000225304)株式会社内外テクノス (10)
【出願人】(501173461)太平洋マテリアル株式会社 (307)
【出願人】(592012384)小野田化学工業株式会社 (20)
【出願人】(397020984)大谷塗料株式会社 (5)
【Fターム(参考)】