説明

多孔質体の洗浄方法

【課題】 多孔質体の多孔質構造を変化させることなく短時間で洗浄する。
【解決手段】 陽極化成により形成された多孔質体を洗浄する洗浄方法において、陽極化成終了後に、アルコール、酢酸等を含む洗浄液により多孔質体を洗浄する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、半導体体を陽極化成処理する方法に関し、特に陽極化成処理後の多孔質体の洗浄方法の技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】多孔質シリコンは、A.Uhlir及びD.R.Turnerにより、弗化水素(以降HFと略記する)の水溶液(フッ酸)中において正電位にバイアスされた単結晶シリコンの電解研磨の研究過程において発見されたものである。
【0003】その後多孔質シリコンの反応性に富む性質を利用して、シリコン集積回路製造工程において厚い絶縁物の形成が必要な素子間分離工程に応用する検討がなされ、多孔質シリコン酸化膜による完全分離技術(FIPOS:Full Isolation by PorousOxidized Silicon) などが開発された(K.Imai,Solid State Electron 24, 159,1981)。
【0004】また最近では、多孔質シリコン基板上に成長させたシリコンエピタキシャル層を、必要に応じて酸化膜を介して非晶質基板上や単結晶シリコン基板上に貼り合わせて、SOI基板を得る発明が特許第2608351号公報、米国特許第5371037号公報等により提案されている。
【0005】その他、特開平6-338631号公報には、所謂フォトルミネッセンスやエレクトロルミネッセンス材料等の発光材料として多孔質シリコンに注目した技術が開示されている。
【0006】多孔質体の形成には、一般的に陽極化成処理が用いられている。
【0007】多孔質体の形成の具体例として、シリコン基板に陽極化成処理を施して多孔質シリコンを製造する装置を図10に示す。
【0008】図10の装置は、特開昭60-94737号公報に提案されたものである。この陽極化成装置は、被処理体としてのシリコン基板Wを挟むようにして、耐HF性のテフロン(米国du Pont社の登録商標)製の陽極化成槽1、2を配置してなる。槽1、2には、夫々白金の陰電極3及び正電極4が設けられている。槽1、2は、シリコン基板Wと接する側壁部に溝を有し、この溝に夫々フッ素ゴム製のOリング5、6のような封止材がはめ込まれている。そして、槽1、2とシリコン基板Wとは、このOリング5、6によりシールされている。このようにしてシールされた槽1、2には、夫々HF溶液7、8が満たされている。
【0009】この他にも幾つかの陽極化成装置は提案されている。
【0010】これに対して、陽極化成処理を行なった後の多孔質半導体基板の洗浄方法に関しては特開平10−64870号公報に報告例があるが、それ以外の報告例は極めて少ないようである。
【0011】構造的に表面活性度の高い多孔質体に対しては、有機物や付着パーティクル、または付着メタルなどを除去するために一般的に用いられる、硫酸と過酸化水素の水溶液(以下SPMと称する) 、アンモニアと過酸化水素の水溶液(以下SC−1と称する)、塩酸と過酸化水素の水溶液(以下SC−2と称する)などの薬液が使用できない。そこで、それらに代えて超音波エネルギーを付与した純水を用いて、多孔質層表面に付着した異物を除去する洗浄方法が、上記特開平10−64870号公報に開示されている。図11はその洗浄工程のフローチャートである。陽極化成されてできた多孔質体は、超音波エネルギーを付与された純水で洗浄され、乾燥される。
【0012】更にその公報には、オゾン水または過酸化水素水で多孔質層表面を親水性処理した後、超音波エネルギーを付与された純水で洗浄する方法についても記載されている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら多孔質半導体の洗浄では、表面もさる事ながら微細な孔中に入っている化成電解液をいかにして除去するかが重要である。何故ならばいかに表面を清浄にしても、孔中に残存した電解液(通常は濃度10重量%〜50重量%のHF溶液)は、多孔質体の構造を変化させる。
【0014】又、孔内から徐々にHFガスとして気化し離脱したHFは、周辺の装置を腐蝕させ、更には、腐蝕により発生したパーティクルが基板を汚染する場合もある。
【0015】或いは、孔内のHFと純水との置換に時間を要すため、長時間の純水洗浄が必要となる。この場合には、純水中で多孔質が破砕して、大量のパーティクルを発生するこという弊害を引き起こすこともある。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明の目的は、多孔質体の多孔質構造を変化させることなく、且つ短い洗浄時間であっても十分に多孔質体から化成液を除去できる多孔質体の洗浄方法を提供することにある。
【0017】本発明の別の目的は周辺の装置を腐蝕させ難い多孔質体の洗浄方法を提供することにある。
【0018】本発明は、陽極化成により形成された多孔質体を洗浄する洗浄方法において、陽極化成終了後に、アルコール及び/又は酢酸を含む洗浄液により前記多孔質体を洗浄する洗浄工程を含むことを特徴とする。
【0019】
【発明の実施の形態】図1は本発明の洗浄方法を示すフローチャートである。
【0020】先ず、工程S1では、陽極化成により非多孔質体を処理して多孔質体を形成する。
【0021】続いて、工程S2において、多孔質体を100%アルコール又はアルコール水溶液中に浸漬したり、多孔質体に100%アルコール又はアルコール水溶液を滴下したり、多孔質体を100%アルコール又はアルコール水溶液の蒸気に晒したりして、洗浄を行う。
【0022】次に、必要に応じて、工程S3において、純水を用いて多孔質体を洗浄する。この場合も多孔質体を純水中に浸漬したり、多孔質体に純水を滴下したり、多孔質体を水蒸気に晒したりすればよい。この時、超音波振動子等を用いて、超音波エネルギーを純水に付与して洗浄することも好ましいものである。
【0023】そして、工程S4において、多孔質体を乾燥して、一連の洗浄工程を終了する。
【0024】通常、シリコン等の半導体に陽極化成処理を行ない多孔質体を形成する場合、比較的濃度の高いHF溶液中でシリコン基板に電界をかけることにより行われる。陰電極に対向するシリコン表面(このシリコン表面が実質的な陽極となる)が電界方向に沿って延びる微細な孔を形成するようにエッチングされ、その結果多孔質構造となる。
【0025】この時の、孔の径は数十nm〜数百nmに分布し、孔の密度は1011個/cm2以上に達する。孔の径や密度は陽極化成の条件、即ちHF濃度、化成電圧または化成電流の値、基板の導電型や比抵抗などによって変わる。これらの条件を調節して多孔度(porosity)を制御すれば、発光材料として最適な構造や、エピタキシャル成長の下地構造体として最適な多孔質体を比較的容易に作れる。
【0026】しかし、設計どおりに得られた多孔質体といえども、陽極化成処理後の洗浄が十分でないと多孔質層の構造変化が起こってしまったり、二次的な汚染に繋がってしまうこともある。
【0027】これらが起こる原因は、図2に示すように、前述したように孔の中に残存したHFが、ガスとなって徐々に揮発するためである。従って孔の中に化成液であるHF溶液を残存させないような洗浄方法が要求される。
【0028】陽極化成処理を行なった後、基板を純水で洗浄するだけでは多孔質層表面のHF成分は取り除けるものの、孔の中に残存するHFは取り除き難い。これは図3に示すようにHF溶液に触れていた結果、多孔質層表面が疎水性になってしまい、その後に水洗を行なっても水が孔の中に浸透し難くなっているためである。具体的には、化成後の多孔質体を浸している純水の比抵抗の経時変化を測定してみると、比抵抗が元の値に戻らないという現象が起こる。これは即ち、孔中の電界液が直ぐには水置換できないため、孔内で徐々に気化したHFが純水中に溶け込む速度が遅いためである。
【0029】又、孔の中を洗浄するためには、少なくとも、陽極化成終了後、3分以内に槽内の化成液を純水で置換し、純水リンスを十分に行なう必要がある。しかしながら、それでは洗浄プロセスの自由度が狭く、洗浄装置の設計も制限される。
【0030】本発明者らは、各種実験を繰返し行った結果、100%アルコールやアルコールを添加した純水を用いて洗浄することにより、孔内における化成液と洗浄液との置換が容易に可能になることを発見し、本発明をなしたのである。
【0031】一旦、アルコールを含む洗浄液に多孔質体を浸すと、図4に示すように、洗浄液は微細な孔中に浸透し、孔中に残存していた化成液と混合される。そして、そのまま大気中に多孔質体を晒しても、暫くの間は表面の濡れ性を保ったままでいる。この多孔質体を改めて、図5に示すように純水に浸すことによって、水は容易に孔中に浸透し、残存する化成液を純水と置換できる。
【0032】その後は、多孔質体の孔中に純水が残存したとしても、その水は自然に蒸発する。その際、蒸発するのは水分だけなので、周辺の装置を腐蝕させたりや多孔質体の構造自身を変質させたり、劣化させたりすることはない。
【0033】本発明にもちいられる多孔質体としては、Si、Ge、GaAs、GaAlAs等の半導体が挙げられる。とりわけ多孔度が70%未満の多孔質体Siはエピタキシャル成長の下地材料として、多孔度70%以上のSiは発光材料として好ましいものである。
【0034】本発明に用いられる陽極化成処理は、HF水溶液、HFとアルコールの水溶液等の中で行われる。
【0035】本発明の洗浄工程に用いられるアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノールなどが使用可能であり、アルコールを少なくとも4重量%以上より好ましくは10重量%以上含むものであればよい。
【0036】又、アルコールを含む洗浄液による洗浄後は、多孔質体を純水で洗浄することが好ましい。この時、前述したとおり600KHzから2MHzの範囲の超音波エネルギーを付与した純水洗浄をおこなうと、HFとの置換効率がより高まる。
【0037】本発明の場合には、陽極化成処理終了後、化成液から洗浄液に多孔質体を移すまでの時間は早い方が好ましいが、3分以内に限定されるものではなく、概ね10分まで長くすることができる。
【0038】次に、図6を参照して本発明に用いられる洗浄装置について説明する。
【0039】図6に示した洗浄装置は陽極化成装置を兼ねた構成である。装置の構成は、大まかには基板ホルダーとしても機能し且つ化成液液及び洗浄液を収容できる槽1と、多数の穴が設けられた平板状の陰電極3、昇降可能な陽電極4からなる。槽1は四弗化エチレン樹脂等のフルオロカーボン系耐フッ素材料からなり、槽1の底部に開口部9を有している。そしてこの開口部9の内側の縁に沿って基板吸着リングのような封止材5が槽1の底部に取付けられている。基板吸着リングは吸着部が平坦であり、その面内に、被処理体を減圧吸着し、加圧開放するための減圧/加圧用の連通路22に連通する減圧溝(不図示)が形成されている。シリコンウエハのよな被処理体Wの裏面の外周部が基板吸着リングに吸着され、保持される。この状態で供給ノズル27から化成液7として電解液が注がれ、陰電極3が電解液に浸される。陰電極3は陽極化成する被処理体とほぼ同径の白金板でできており、陽極化成中に発生する水素のような反応副生成物のガスを電極面から除去できるように、パンチ状の孔が開いている。陽電極4は槽1の開口部9を通って、直接被処理体Wの裏面に接触する。この陽電極4は直接電解液に触れることがないので、アルミニウムで形成されている。陽電極4は支持台25上に昇降手段24とともに載置され、被処理体を減圧吸着し、加圧開放するための減圧/加圧用の連通路23が付設されている。
【0040】陽極化成処理にあたっては、昇降手段24により最上位に陽電極4を上げておいて、そこに被処理体Wを載置する。連通路23を減圧して被処理体Wを吸着させる。陽電極4を降ろして槽1の底部に被処理体Wを接触させる。連通路22を減圧して被処理体Wの周辺を封止材5に吸着させる。準備ができたら、供給ノズル27からHF溶液を槽1内に供給し所定量に達したら陰電極3と陽電極4との間に直流電圧を印加する。この時、HF溶液の供給を継続して、オーバーフローさせながら陽極化成処理を続けてもよい。
【0041】陽極化成処理終了後は、陽電極4を降下させるとともに陰電極3を槽1内から待避させ、ドレイン21を開いて、そこから化成液7を槽外に排出し、槽1内を一旦空にする。その後、供給ノズル27からアルコールを含む洗浄液を供給する。この時も、洗浄液をオーバーフローさせながら洗浄してもよい。
【0042】更には、再びドレイン21を開いて、アルコールを含む洗浄液を排出した後、供給ノズル27から純水を槽1内に供給する。必要に応じて超音波振動子をノズル27又は槽1に付設して純水の洗浄液に超音波エネルギーを付与できるようにすることも好ましいものである。
【0043】純水洗浄後は、ドレイン21を開いて純水を排出し、連通路22の真空吸着を止め、陽電極4を上昇させ、連通路23における真空吸着を止めて被処理体Wを取り出す。
【0044】図6は、装置の構成を理解し易いように、陽電極4が下降位置にある時の様子が描かれている。
【0045】図7は、本発明に用いられる多孔質体の洗浄装置の別の例を示している。
【0046】図7の装置は、図6に示したものとほぼ同じ構成の陽極化成装置40と、アルコール洗浄装置41と、純水洗浄装置42とを具備している。
【0047】陽極化成装置により陽極化成を行なった後、化成処理された被処理体Wは、槽1の化成液を完全に排液した後、不図示の水平移載ロボットによりアルコール洗浄装置41に移される。アルコール洗浄槽33は回転式チャックホルダー34で被処理体Wの裏面を真空吸着して保持し、その状態で被処理体Wの上方のノズル35からアルコールを含む洗浄液が供給される。この装置で被処理体Wを所定の回転数で回転させながら、所定時間アルコールを含む洗浄液を被処理体に向けて噴出する。こうして、アルコール洗浄が行われる。
【0048】次いで、アルコール洗浄が済んだ被処理体Wは、不図示の水平移載ロボットにより、純水洗浄装置42に移される。被処理体Wは基板チャック37により被処理体の端部を外方より挟み保持する仕組みになっている。そして、上部ノズル38及び下部ノズル39から純水が供給されるようになっている。ここでも被処理体を所定の回転数で回転させながら、上部ノズル38、下部ノズル39の両方から純水を噴出し、所定の時間洗浄が行われる。更に、純水の噴出を止めて、被処理体基板の回転を継続させてスピン乾燥を行うこともできる。
【0049】図8の装置は、本発明に用いられる純水洗浄装置を示している。これは、図7の純水洗浄装置42を変形したもので、槽36に密閉型の蓋51を設け、純水リンス後に槽36と蓋51とで形成された密閉空間を排気路52より排気することで、密閉空間内を減圧状態にしながらスピン乾燥できる装置である。孔中に水分が残ると、その後の処理工程に悪影響を及ぼすことがある。例えば、続いて多孔質シリコン上に気相エピタキシャル成長を行なう場合、エピタキシャル成長チャンバー内に多孔質体の孔内から微量の水分が蒸発、拡散し、エピタキシャル成長膜に欠陥をもたらすことがある。これを防止するために最後に真空脱気を行うとかなり有効である。
【0050】図9の装置は、本発明に用いられるアルコール洗浄装置を示している。洗浄槽53にはアルコールを含む洗浄液の蒸気を供給するノズル54が設けられている。上方から被処理体Wを槽53内の挿入し、ノズル54からアルコールを含む洗浄液の蒸気を供給して槽内を蒸気で満たし洗浄を行う。その後被処理体Wを槽から外部の乾燥雰囲気に徐々に取り出せば、被処理体のアルコールは揮発し、被処理体を乾燥させることができる。70%以上の多孔度のように、多孔度が極めて高い該多孔質体に直接純水を噴射したいり、超音波水を付与したりして、物理的な洗浄を行なうと、多孔質体が破砕してしまう。そこで、このような装置を用いると高多孔度の多孔質体であっても多孔質体を破壊することなく洗浄できる。多孔度が70%以上の多孔質シリコンは発光材料として応用されるものであり、従来のように陽極化成後純水のみで洗浄を行なった場合に比べて、陽極化成後、アルコール蒸気洗浄・乾燥を行ったものは多孔質構造に変化がないので、長時間安定的に発光強度を持続することができる。
【0051】本発明においては、アルコールに代えて酢酸を用いることもできる。
【0052】
【実施例】(第1実施例)図6の装置にシリコンウエハをセットし、電解液として、49重量%HF濃度のフッ酸と水とエタノールとを1:1:1の体積比で混合した化成用電解液を槽内に供給し、ウエハに7mA/cm2の定電流となるような直流の電圧を10分間印加した。その結果多孔度が約20%の多孔質シリコン層が12μmの厚さで、シリコンウエハの一方の表面に均一に形成された。
【0053】続いて電解液をドレインから排液し、上部からイソプロパノールと水を1:10の体積比で混合した洗浄液を槽内に注入した。この洗浄液を槽内に満たしたまま1分間保持し洗浄を行った後、洗浄液を排液した。
【0054】次いで上部から純水を注ぎ入れた。純水はオーバーフローさせ、約20分間ウエハを洗浄(リンス)した。その後ウエハを取り出し、スピン乾燥装置により乾燥させた。その後、このウエハを1週間の大気放置したが、ウエハに何ら変化は見られなかった。
【0055】(比較例1)上述したアルコールを含む洗浄液による洗浄工程を省き、陽極化成の後、直ちに純水で洗浄したウエハをスピン乾燥し、10時間の大気中に放置したところ、ウエハの多孔質シリコン表面が構造変化し白濁化した。
【0056】(第2実施例)図7の装置40により、シリコンウエハを第1実施例と同じ条件で陽極化成した。次いで化成処理されたウエハを、化成用電解液を完全に排液した後、水平移載ロボットにより洗浄装置41に移した。ノズルからエタノール(100%)をウエハに向けて供給しつつウエハを500r.p.m.で自転させ、20秒間ウエハ表面を洗浄した。
【0057】次いで水平移載ロボットにより純水洗浄装置42に移し、上部ノズル及び下部ノズルから純水を噴出しつつ、ウエハを400r.p.m.で自転させ、15分間洗浄した。洗浄後、純水の噴出を停止し、同じ装置内でウエハを800r.p.m.で回転して乾燥させた。
【0058】この方法で洗浄したウエハの多孔質シリコン表面は、第1実施例と同様に非常に安定な状態であった。
【0059】(第3実施例)第3の実施例は図7の装置を用いて、第2実施例同様に陽極化成処理、アルコール洗浄、純水洗浄、乾燥を行った。第2実施例と異なる点は、純水洗浄の際に、上部ノズルの先端に超音波振動子が埋め込まれたものを用い、超音波振動が付与された純水をウエハに供給し、より洗浄の効果を高めた。第2の実施例では約15分間の純水洗浄が必要なところ、純水に超音波を作用させることによって10分間の洗浄で同じ効果が得られた。
【0060】(第4実施例)第4の実施例は、図8に示した純水洗浄装置を用いて純水洗浄と乾燥を行った例である。
【0061】陽極化成の条件、及びアルコール洗浄の条件は、第2の実施例と同様に行なった。その後純水洗浄を行ない、次いで同じ槽内で基板を密閉した状態にして、スピン乾燥と同時に真空脱気乾燥を行なった。これにより孔中の水分の残存も殆どなくなり、より安定な多孔質シリコンを得ることができた。
【0062】(第5実施例)電解液として10体積%のフッ酸水溶液を使用し、陽極化成時の電流密度が10mA/cm2の定電流となるように7分間電圧を印加して、比抵抗0.007Ωcmのn型シリコンウエハの表面を多孔質化した。その結果、多孔度が約70%の多孔質シリコン層がウエハ表面に形成された。このウエハを直ちに図9の洗浄装置に入れイソプロパノール蒸気によりアルコール洗浄を行い、ウエハを上方に引き上げつつ乾燥させた。
【0063】この洗浄及び乾燥方法を用いたことで、高多孔度の多孔質シリコンでもその構造を変化させることなく洗浄できた。
【0064】
【発明の効果】以上説明したように多孔質体の洗浄において、陽極化成後にアルコールを含む洗浄液や洗浄蒸気などの雰囲気に多孔質体を晒すことによって、孔中の残存化成液の洗浄が不十分であったために起こっていた多孔質体自身の劣化、蒸発した化成液成分による周辺装置の腐蝕、また、それらから生じるコンタミネーションなどが抑制できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による多孔質体の洗浄工程のフローチャートを示す図。
【図2】陽極化成処理直後の多孔質半導体の模式的断面図。
【図3】図2の状態の多孔質半導体を陽極化成直後に純水洗浄した多孔質体の模式的断面図。
【図4】本発明のアルコール洗浄の作用を説明するための模式図。
【図5】本発明に用いられる純水洗浄の作用を説明するための模式図。
【図6】本発明に用いられる陽極化成装置兼洗浄装置を示す模式図。
【図7】本発明に用いられる別の陽極化成装置及び洗浄装置を示す模式図。
【図8】本発明に用いられる別の洗浄兼乾燥装置を示す模式図。
【図9】本発明に用いられる更に別の洗浄兼乾燥装置を示す模式図。
【図10】従来の陽極化成装置を示す模式図。
【図11】従来の多孔質体の洗浄工程のフローチャートを示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 陽極化成により形成された多孔質体を洗浄する洗浄方法において、陽極化成終了後に、アルコール及び/又は酢酸を含む洗浄液により前記多孔質体を洗浄する洗浄工程を含むことを特徴とする多孔質体の洗浄方法。
【請求項2】 前記洗浄工程の後、純水により前記多孔質体を更に洗浄することを特徴とする請求項1記載の多孔質体の洗浄方法。
【請求項3】 前記アルコールを含む洗浄液は、アルコールを含む水溶液である請求項1記載の多孔質体の洗浄方法。
【請求項4】 前記アルコールを含む洗浄液は、アルコールからなる請求項1記載の多孔質体の洗浄方法。
【請求項5】 前記洗浄工程は、アルコールからなる洗浄液により洗浄する工程と、アルコール水溶液からなる洗浄液により洗浄する工程とを含む請求項1記載の多孔質体の洗浄方法。
【請求項6】 前記洗浄工程は、前記洗浄液の蒸気に前記多孔質体を晒す工程を含む請求項1記載の多孔質体の洗浄方法。
【請求項7】 前記洗浄工程は、前記洗浄液中に前記多孔質体を浸漬する工程を含む請求項1記載の多孔質体の洗浄方法。
【請求項8】 前記洗浄工程の後、超音波エネルギーが付与された純水により前記多孔質体を洗浄することを特徴とする請求項1記載の多孔質体の洗浄方法。
【請求項9】 前記多孔質体は70%未満の多孔度の領域を含む請求項8記載の多孔質体の洗浄方法。
【請求項10】 前記洗浄工程の後、純水により前記多孔質体を洗浄し、その後、前記多孔質体をスピン乾燥し、更に真空脱気乾燥する請求項1記載の多孔質体の洗浄方法。
【請求項11】 前記洗浄工程は、前記洗浄液の蒸気に前記多孔質体を晒し、該蒸気中から該蒸気外へ前記多孔質体を相対的に移動させて乾燥する請求項1記載の多孔質体の洗浄方法。
【請求項12】 前記多孔質体は70%以上の多孔度の領域を含む請求項11記載の多孔質体の洗浄方法。
【請求項13】 前記多孔質体は、非多孔質体の基材表面に形成されている請求項1記載の多孔質体の洗浄方法。
【請求項14】 前記多孔質体は半導体からなる請求項1記載の多孔質体の洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図7】
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【図9】
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【図11】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図10】
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【公開番号】特開2000−277479(P2000−277479A)
【公開日】平成12年10月6日(2000.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−83600
【出願日】平成11年3月26日(1999.3.26)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】