説明

多層プリント配線板形成用の積層体の製造方法、多層プリント配線板形成用の積層体、及び多層プリント配線板

【課題】導電性パンブの抵抗が低減された多層プリント配線板形成用の積層体の製造方法、多層プリント配線板形成用の積層体、及び多層プリント配線板を提供すること。
【解決手段】(1)第1金属シート上に、バインダー樹脂及び金属微粒子を含む導電性ペーストを塗工した後、加熱することにより該導電性ペーストを硬化させて、導電性バンプを形成する工程、(2)該第1金属シート上に非導電性シートを積層配置した後、加圧することにより該導電性バンプを該非導電性シートに貫通させる工程、(3)該第2金属シートを、該導電性バンプによって貫通された該非導電性シート上に積層配置して未加圧積層体を得る工程、(4)前記未加圧積層体を、100〜200℃で加熱しながら10〜100MPaで加圧する工程、を含む、多層プリント配線板形成用の積層体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層プリント配線板形成用の積層体の製造方法、多層プリント配線板形成用の積層体、及び多層プリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、銅箔等の基板シートの表面に略円錐状の導電性バンプが形成された導電性バンプ付基板シートと、プリプレグ等の非導電性シート(絶縁シート)とを交互に重ね合わせることにより形成される多層プリント配線板が知られている。このような多層プリント配線板においては、基板シートの表面に形成された導電性バンプが非導電性シートを貫通することによって、該非導電性シートの両側にある基板シート同士が導電性バンプによって電気的に接続されるようになっている(例えば、特許文献1乃至3等参照)。このような層間接続技術は、B2 it法(Buried Bump Interconnection Technology)としてよく知られている。
【0003】
近年、各種電子機器の小型化、高機能化にともなって、電子部品の高実装密度の要求は高まっており、配線基板の配線も高密度化が求められるになってきている。このような配線の高密度化に対応するためには、導電性バンプの微細化(小径化)が必要であるが、導電性バンプを微細化すると、導電性パンブの抵抗が大きくなり、配線基板間で十分な導通が得られなくなる(接続信頼性が低くなる)という問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許3167840号公報
【特許文献2】特開2004−6577号公報
【特許文献3】特開2002−305376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたものであって、導電性パンブの抵抗が低減された多層プリント配線板形成用の積層体の製造方法、多層プリント配線板形成用の積層体、及び多層プリント配線板を提供するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
(1)第1金属シート上に、バインダー樹脂及び金属微粒子を含む導電性ペーストを塗工した後、加熱することにより該導電性ペーストを硬化させて、導電性バンプを形成する工程、
(2)該第1金属シート上に非導電性シートを積層配置した後、加圧することにより該導電性バンプを該非導電性シートに貫通させる工程、
(3)第2金属シートを、該導電性バンプによって貫通された該非導電性シート上に積層配置して未加圧積層体を得る工程
(4)該未加圧積層体を、100〜300℃で加熱しながら10〜100MPaで加圧する工程、
を含む、多層プリント配線板形成用の積層体の製造方法
を提供するものである。
【0007】
本発明は、さらに
上記の多層プリント配線板形成用の積層体の製造方法を用いて作製した多層プリント配線板形成用の積層体
を提供するものである。
【0008】
本発明は、さらに
第1金属シート、第2金属シート、該第1金属シートと該第2金属シートとの間に挟まれる非導電性シート、及び該非導電性シートを貫通することで該第1の金属シートと該第2の金属シートを電気的に接続させる導電性バンプ、を含む多層プリント配線板形成用の積層体であって、
該導電性バンプに含まれる金属微粒子の形状が略扁平状であって、その長径が1.5〜15μm、短径が0.15〜1.5μmである、多層プリント配線板形成用の積層体
を提供するものである。
【0009】
本発明は、さらに
上記の多層プリント配線板形成用の積層体を用いて形成された多層プリント配線板
を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、導電性パンブの抵抗を低減することができる。これによって、導電性バンプをφ70μm以下に微細化させても十分な導通が得られ、多層プリント配線板における配線の高密度化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は本発明の多層プリント配線板形成用の積層体の製造方法を示した模式図であり、図1(a)〜(d)は工程(1)〜(4)をそれぞれ示す模式図である。
【図2】図2(a)は、本発明の比較例1で作製した未加圧積層体Aの銅箔/導電性バンプ界面付近の断面の電子顕微鏡写真であり、図2(b)は、本発明の実施例1で作製した積層体Aの銅箔/導電性バンプ界面付近の断面の電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、以下の説明において、必要により図面を参照するが、それらの図面は単に図解のために提供されるものであって、本発明はそれらの図面により何ら限定されるものではない。
【0013】
本発明の多層プリント配線板形成用の積層体の製造方法は、
(1)第1金属シート上に、バインダー樹脂及び金属微粒子を含む導電性ペーストを塗工した後、加熱することにより該導電性ペーストを硬化させて、導電性バンプを形成する工程、
(2)該第1金属シート上に非導電性シートを積層配置した後、加圧することにより該導電性バンプを該非導電性シートに貫通させる工程、
(3)第2金属シートを、該非導電性シート及び該導電性バンプ上に配置して未加圧積層体を得る工程
(4)前記未加圧積層体を、100〜300℃で加熱しながら10〜100MPaで加圧する工程、
を含む。
【0014】
工程(1):
図1(a)は、本発明の多層プリント配線板形成用の積層体の製造方法における工程(1)を示す模式図である。工程(1)では、第1金属シート1上に、バインダー樹脂及び金属微粒子を含む導電性ペーストを塗工した後、加熱することにより該導電性ペーストを硬化させて、導電性バンプ2を形成する。
【0015】
第1金属シート1を構成する金属は、導電性の金属であれば特に限定されない。例えば、金、銀、銅ならびにAlなどの金属及びこれら金属を含む合金などの導電体箔を使用することができるが、導電性とコストの両面を考慮すると、銅箔を使用することが好ましい。第1金属シート1の厚さは、特に限定されるものではないが、10〜100μm程度が好ましい
【0016】
導電性バンプ2は、金属微粒子とバインダー樹脂とを混合して調製された導電性ペーストをメタルマスクなどのマスクを用いて印刷した後、加熱することで形成される。印刷方法としてはスクリーン印刷などが挙げられる。加熱処理の温度、処理時間等は、用いる導電性ペーストの種類を考慮して適宜定めることができるが、一般的には150〜200℃程度で、10〜60分程度処理することが好ましい。
導電性ペースト中における金属微粒子の含有量は、バインダー樹脂成分の合計100質量部に対して、300質量部以上が好ましく、900質量部以上がより好ましく、1200質量部以上がさらに好ましい。導電性バンプ2の抵抗は、金属微粒子を多く配合するほど低下させることができる。また、このような金属微粒子の配合量増加による抵抗低減効果は、工程(4)の加圧処理による抵抗低減効果と相乗効果で作用する。即ち、工程(4)の加圧処理は、金属微粒子同士の接触点(接触面積)、金属微粒子/金属シート間の接触点(接触面積)の増加させることで導通経路の拡大をもたらし、抵抗低減効果を奏するものであるが、これは金属微粒子の配合量が多い場合に顕著に得られるものである。一方で、金属微粒子の含有量が多すぎると、他の特性、例えば、第1金属シート1や第2金属シート4との接着性や、導電性バンプ2の成形性、とのバランスが悪くなるため、金属微粒子の含有量は6000質量部以下が好ましく、5000質量部以下がより好ましく、4800質量部以下がさらに好ましい。
導電性ペーストは必要に応じて更に溶剤を含んでもよい。また、顔料、チクソトロピー付与剤、消泡剤、分散剤、防錆剤、還元剤等も、必要に応じて含まれる。
マスクの形状、開口径、厚さを調節し、一方導電性ペーストの粘性、チクソトロピー、表面張力、またはマスクの表面張力などの物性値を調節することにより導電性バンプ2を所望の形状に形成することができる。アスペクト比の高い導電性バンプ2を形成したい場合には、マスクを厚くし、開口径を小さくしてもよい、またはマスクを同じ位置に再配置し、スクリーン印刷を繰り返すようにしてもよい。
【0017】
前記金属微粒子としては、例えば銀粉、金粉、銅粉、ニッケル粉、白金粉、パラジウム粉、半田粉、前記金属の合金粉末等の金属粉末等を使用することができる。これらの導電性粉末は二種以上併用することもできる。導電性とコストの両面を考慮すると、銀粉が好ましい。
導電性粉末の形態は、本発明の目的に反しない限り任意である。本発明では、例えば樹枝状、りん片状、球状、フレーク状、凝集状の形態のものを使用できる。金属微粒子の平均粒径は好ましくは0.5〜5μmである。
導電性バンプ2の微細化という観点からは、より粒径の小さい金属微粒子を用いることが好ましく、具体的には平均粒径2μm以下の略球状微粒子を用いることが特に好ましい。
なお、上記平均粒径はレーザー回折法により測定した値である。
【0018】
前記バインダー樹脂としては、従来から用いられてきた導電性ペーストのバインダー樹脂の中から適当なものを選択して使用できる。例えば、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂等を挙げることができる。
【0019】
導電性バンプ2は、所定の位置に精度よく貫通型の導体配線部を形成するため、後述の工程(2)において非導電性シート3を容易に貫挿し得るように略円錐形または略角錐形に選択,設定されることが望ましい(ここで、略円錐形及び略角錐形は、厳密なものでなく、非導電性シート3を貫挿し得る程度に先端が尖っていればよい)。なお、導電性バンプ2の先端は、非導電性シート3を貫挿する際には尖っているが、後述の工程(4)において加圧された際には塑性変形し、導電性バンプ2は略円錐台形または略角錐台形になる。
【0020】
工程(1)は、第1金属シート1と導電性バンプ2との間に第1アンカー層(図示せず)を設ける工程を含んでもよい。第1アンカー層は、導電性バンプ2の金属微粒子を構成する金属及び第1金属シート1を構成する金属からなる群から選ばれる少なくとも一種の金属で構成される平均一次粒子径1〜100nmのナノ粒子を含んでなる層であるか、又は、ハンダからなる層である。なお、当該平均一次粒子径は走査型透過電子顕微鏡(STEM)により測定した値である。
第1アンカー層の厚さとしては、金属シート/金属微粒子間を少量で充填する観点から、好ましくは0.1〜3μm、より好ましくは0.5〜2μmである。
第1アンカー層を設けることによって、第1金属シート1と導電性バンプ2の間の接触抵抗を低減することが可能となる。
【0021】
第1アンカー層としてナノ粒子を含んでなる層を形成するには、例えば、第1金属シート1上に、ナノ粒子を含むペースト(以後、“第1ナノ粒子ペースト”とも呼ぶ)、導電性ペーストを順次塗布(印刷)し、加熱することで、第1金属シート1と導電性バンプ2の間に第1アンカー層を形成する方法が挙げられる。第1ナノ粒子ペースの塗工方法についても特に限定はされないが、メタルマスクなどのマスクを用いて印刷する方法が挙げられる。
第1ナノ粒子ペーストは、ナノ粒子以外の成分として溶剤等を含んでもよいが、第1アンカー層形成時には、実質的にはナノ粒子のみから形成されていることが、抵抗低減効果の観点から好ましい。ナノ粒子は、第1アンカー層が形成された段階では、その一部、又は全部が焼結体となっていてもよい。
【0022】
第1アンカー層のナノ粒子は、導電性バンプ2の金属微粒子を構成する金属で構成される方がより好ましく、ナノ粒子を構成する金属と導電性バンプ2の金属微粒子を構成する金属がともに銀であることが特に好ましい。
第1アンカー層のナノ粒子の平均一次粒子径は1〜100nmであり、1nm未満であると製造上困難であり、100nmを超えると低温焼結が困難である。第1アンカー層のナノ粒子の平均一次粒子径は、好ましくは5〜50nmである。
【0023】
本発明の第1アンカー層がハンダからなる層である場合のハンダとしては、公知のハンダ(鉛とスズを主成分とした合金)及び公知の無鉛ハンダ(スズを主成分とし、鉛の含有量を0.10質量%以下にした合金)を使用できる。環境負荷の低減という観点からは、無鉛ハンダが好ましく、その具体例としては、SnAgCu系ハンダ、SnZnBi系ハンダ、SnCu系ハンダ、SnAgInBi系ハンダ、SnZnAl系ハンダ等が挙げられる。
【0024】
第1アンカー層としてハンダからなる層を形成するには、例えば、第1金属シート1上に、ハンダペースト、導電性ペーストを順次塗布(印刷)し、加熱することで、第1金属シート1と導電性バンプ2の間に第1アンカー層を形成する方法が挙げられる。第1ハンダペーストの塗工方法についても特に限定はされないが、メタルマスクなどのマスクを用いて印刷する方法が挙げられる
本発明の第1アンカー層のハンダは、導電性バンプ2の金属微粒子を構成する金属及び第1金属シート1を構成する金属からなる群から選ばれる少なくとも一種の金属を含む合金であることが、抵抗低減の観点から好ましい。導電性バンプ2の金属微粒子を構成する金属または第1金属シート1を構成する金属と共通の金属を構成成分として有していることにより、導電性バンプ2または第1金属シート1との馴染みがよく、抵抗低減に寄与しているためと考えられる。
例えば、第1アンカー層のハンダがSnAgCu系ハンダ、導電性バンプ2の金属微粒子を構成する金属が銀、第1金属シート1を構成する金属が銅である様態が好ましい。
【0025】
工程(2):
図1(b)は、本発明の多層プリント配線板形成用の積層体の製造方法における工程(2)を示す模式図である。工程(2)では、導電性パンプ2が形成された第1金属シート1上に非導電性シート3を積層配置した後、加圧することにより該導電性バンプ2を該非導電性シート3に貫通させる。
加圧処理における圧力は、導電性バンプ2の硬度や用いる非導電性シート3の種類等を考慮して適宜定めることができるが、一般的には0.2〜0.4MPa程度が好ましい。
非導電性シート3としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリ4フッ化エチレン6フッ化プロピレン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂などの熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂などの熱硬化性樹脂、あるいはブタジエンゴム、ブチルゴム、天然ゴム、ネオプレンゴム、シリコーンゴムなどのゴム類が挙げられる。
これら合成樹脂は、単独でもよいが、絶縁性無機物や有機物系の充填物を含有してもよく、さらに、ガラスクロスやマット、有機合成繊維布やマット、あるいは紙などの補強材と組み合わせて成るシートであってもよい。
非導電性シート3の厚さは、特に限定されるものではないが、20〜400μm程度が好ましい。
【0026】
工程(3):
図1(c)は、本発明の多層プリント配線板形成用の積層体の製造方法における工程(3)を示す模式図である。工程(3)では、第2金属シート4を、導電性バンプ2によって貫通された非導電性シート3上に積層配置して未加圧積層体5を得る。
本工程(3)において、第1金属シート1と第2金属シート4が導電性バンプ2を介して、電気的に接続されることになるが、この時点では、第2金属シート4と導電性バンプ2の間の導通は十分ではない。
第2金属シート4を構成する金属は、導電性の金属であれば特に限定されない。例えば、金、銀、銅ならびにAlなどの金属及びこれら金属を含む合金などの導電体箔を使用することができるが、導電性とコストの両面を考慮すると、銅箔を使用することが好ましい。第2金属シート4の厚さは、特に限定されるものではないが、10〜100μm程度が好ましい。
なお、第1金属シート1及び第2金属シート4を構成する金属は、互いに同一でも異なっていてもよいが、同一である方が好ましい。
【0027】
工程(3)は、第2金属シート4と導電性バンプ2との間に第2アンカー層(図示せず)を設ける工程を含んでもよい。第2アンカー層は、導電性バンプ2の金属微粒子を構成する金属及び第2金属シート4を構成する金属からなる群から選ばれる少なくとも一種の金属で構成される平均一次粒子径1〜100nmのナノ粒子を含んでなる層であるか、又は、ハンダからなる層である。なお、当該平均一次粒子径は走査型透過電子顕微鏡(STEM)により測定した値である。
第2アンカー層の厚さとしては、金属シート/金属微粒子間を少量で充填する観点から、好ましくは0.1〜3μm、より好ましくは0.5〜2μmである。
第2アンカー層を設けることによって、第2金属シート4と導電性バンプ2の間の接触抵抗を低減することが可能となる。
第2アンカー層としてナノ粒子を含んでなる層を形成するには、例えば、第2金属シート4上にナノ粒子を含むペースト(以後“第2ナノ粒子ペースト”とも呼ぶ)を予め塗布しておいて、第2ナノ粒子ペーストが非導電性シート3を貫挿した導電性バンプ2の先端と当接するように、第2金属シート4を積層配置することで、第2金属シート4と導電性バンプ2の間に第2アンカー層を形成する方法が挙げられる。
第2ナノ粒子ペーストは、ナノ粒子以外の成分として溶剤等を含んでもよいが、第2アンカー層形成時には、実質的にはナノ粒子のみから形成されていることが、抵抗低減効果の観点からは、好ましい。ナノ粒子は、第2アンカー層が形成された段階では、その一部、又は全部が焼結体となっていてもよい。
【0028】
第2アンカー層のナノ粒子は導電性バンプ2の金属微粒子を構成する金属で構成される方がより好ましく、ナノ粒子を構成する金属と導電性バンプ2の金属微粒子を構成する金属がともに銀であることが特に好ましい。
第2アンカー層のナノ粒子の平均一次粒子径は1〜100nmであり、1nm未満であると製造上困難であり、100nmを超えると低温焼結が困難である。第2アンカー層のナノ粒子の平均一次粒子径は、好ましくは5〜50nmである
また、第1アンカー層のナノ粒子と第2アンカー層のナノ粒子は、同一であっても異なってもよいが、製造工程の簡略化という観点からは、同一である方が好ましい。
【0029】
第2アンカー層がハンダからなる層である場合のハンダとしては、公知のハンダ(鉛とスズを主成分とした合金)及び公知の無鉛ハンダ(スズを主成分とし、鉛の含有量を0.10質量%以下にした合金)を使用できる。環境負荷の低減という観点からは、無鉛ハンダ好ましく、その具体例としては、SnAgCu系ハンダ、SnZnBi系ハンダ、SnCu系ハンダ、SnAgInBi系ハンダ、SnZnAl系ハンダ等が挙げられる。
【0030】
第2アンカー層としてハンダからなる層を形成するには、例えば、第2金属シート4上にハンダペーストを予め塗布しておいて、ハンダペーストが非導電性シート3を貫挿した導電性バンプ2の先端と当接するように、第2金属シート4を積層配置することで、第2金属シート4と導電性バンプ2の間に第2アンカー層を形成する方法が挙げられる。
本発明の第2アンカー層のハンダは、導電性バンプ2の金属微粒子を構成する金属及び第2金属シート4を構成する金属からなる群から選ばれる少なくとも一種の金属を含む合金であることが、抵抗低減の観点から好ましい。導電性バンプ2の金属微粒子を構成する金属または第2金属シート4を構成する金属と共通の金属を構成成分として有していることにより、導電性バンプ2または第2金属シート4との馴染みがよく、抵抗低減に寄与しているためと考えられる。
例えば、第2アンカー層のハンダがSnAgCu系ハンダ、導電性バンプ2の金属微粒子を構成する金属が銀、第2金属シート4を構成する金属が銅である様態が好ましい。
また、第1アンカー層のハンダと第2アンカー層のハンダは、同一であっても異なってもよいが、製造工程の簡略化という観点からは、同一である方が好ましい。
【0031】
工程(4):
図1(d)は、本発明の多層プリント配線板形成用の積層体の製造方法における工程(4)を示す模式図である。工程(4)では、未加圧積層体5を、100〜300℃で加熱しながら、10〜100MPaで加圧する。これによって、多層プリント配線板形成用の積層体6が得られる。
前述の工程(3)において第2金属シート4と当接した導電性バンプ2は、本工程(4)において加熱しながら加圧することで塑性変形し、略円錐台形または略角錐台形になる。これにより第2金属シート4と導電性バンプ2の接触面積も拡大し、第2金属シート4と導電性バンプ2の間の導通が向上する。また、第1金属シート1と第2金属シート4が、非導電性シート3によって接着される。
本発明においては、10〜100MPaという高い圧力で加圧することにより、導電性バンプ2が圧縮され、導電性バンプ2中に分散している金属微粒子同士の接触点が増加し、導電性バンプ2自体の抵抗を低減するという効果、及び金属微粒子/第1金属シート(又は第2金属シート)間の接触点(接触面積)が増加し、導電性バンプと第1金属シート(又は第2金属シート)の間の接触抵抗を低減させるという効果をさらに奏している。導電性バンプ2は、工程(2)において非導電性シート3を貫通する必要があるため、高い硬度を有しているが、10〜100MPaという高い圧力を採用することにより、上述の効果が得られるものである。
加熱・加圧処理の温度は、100℃未満であると変形が不十分となり、300℃を超えると銅箔の変形が起きる可能性がある。好ましくは100〜250℃であり、より好ましくは125〜200℃である。
加熱・加圧処理の圧力は、10MPa未満であると変形が不十分となり、100MPaを超えるとペースト硬化物の凝集破壊が起きる可能性がある。好ましくは10〜80MPaであり、より好ましくは10〜50MPaである。
加熱・加圧処理の処理時間としては、10〜120分が好ましく、10〜60分がより好ましい。
加圧方式としては、定盤を用いて圧力をかける方法、ロールでプレスする方法等が適用できる。
【0032】
本発明の多層プリント配線板形成用の積層体は、上述した多層プリント配線板形成用の積層体の製造方法を用いて製造される。積層体6において、導電性バンプ2中に含まれる金属微粒子は、工程(4)の加圧により潰されて、略扁平状の形状となり、その長径は1.5〜15μm、短径は0.15〜1.5μmである。
【0033】
本発明の多層プリント配線板は上述した多層プリント配線板形成用の積層体6を用いて形成される。例えば、積層体の第1金属シート1及び第2金属シート4のうちランド領域と回路パターン(所定の領域)がマスクされ、その後エッチングなどによって、第1金属シート1及び第2金属シート4のうちランド領域と回路パターン以外が除去されて、回路が形成される。このようにして2層からなるプリント配線基板が生成される。より多くの層からなる多層プリント配線基板を生成する場合には、金属シート、非導電性シート、及び導電性バンプを用いて積層を繰り返せばよい。本発明における多層プリント配線板においては、少なくともその一部において上述した多層プリント配線板形成用の積層体6が用いられていればよく、すべての積層段階において100〜300℃で加熱しながら、10〜100MPaで加圧する必要はないが、抵抗低減効果の観点からは、すべての積層段階で100〜300℃で加熱しながら、10〜100MPaで加圧することが好ましい。
【実施例】
【0034】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。尚、本発明は以下に記載する方法になんら限定されるものではない。
【0035】
(1)未加圧積層体及び積層体の作製
[実施例1及び比較例1]
銀ペーストを以下の方法により作製した。
フェノールメラミン樹脂100質量部に対してブチルカブビトールアセテート130質量部を均一に混合し、樹脂溶液を得た。この樹脂溶液に平均粒径1μmの略球形銀粉(DOWAハイテック株式会社製、AG2−1C)900質量部を配合し、ヘラを用いてかき混ぜて軽くなじませた後、三本ロールミルを用いて分散し、銀ペーストを作製した。この銀ペーストを以下の通り、未加圧積層体A及び積層体Aの作製工程で使用した。
銅箔上に、銀ペーストを塗布し、200℃で20分加熱することで、銅箔上に導電性バンプを形成させた。この上にプリプレグを積層配置した後、0.3MPaで加圧することにより、導電性バンプをプリプレグに貫通させた。さらにその上に、銅箔を積層配置して未加圧積層体A(比較例1)を得た。この未加圧積層体Aを175℃に加熱しながら50MPaで加圧した状態を30分間維持することで、積層体A(実施例1)を得た。
図2(a)は、未加圧積層体Aの銅箔/導電性バンプ界面付近の断面の電子顕微鏡写真であり、図2(b)は、積層体Aの銅箔/導電性バンプ界面付近の断面の電子顕微鏡写真である。これらの図から、加圧により図上側に存在する銀微粒子が潰されて、銀微粒子同士の接触点が増加していることがわかる。
【0036】
[実施例2及び比較例2]
略球形銀粉の配合量を1500質量部に変更した以外は、実施例1及び比較例1と同様の方法で、銀ペーストを作製した。この銀ペーストを以下の通り、未加圧積層体B及び積層体Bの作製工程で使用した。
銅箔上に、銀ペーストを塗布し、200℃で20分加熱することで、銅箔上に導電性バンプを形成させた。この上にプリプレグを積層配置した後、0.3MPaで加圧することにより、導電性バンプをプリプレグに貫通させた。さらにその上に、銅箔を積層配置して未加圧積層体B(比較例2)を得た。この未加圧積層体Bを175℃に加熱しながら50MPaで加圧した状態を30分間維持することで、積層体B(実施例2)を得た。
【0037】
[実施例3及び比較例3]
(第1アンカー層及び第2アンカー層としてナノ粒子を含む層を設けた構成)
実施例1及び比較例1と同様の方法で、銀ペーストを作製した。
また、ナノ銀ペーストを以下の方法により作製した。
炭酸銀64gとラウリルアミンn−C1225NH279gを三つ口フラスコに固体のまま入れ、N2雰囲気下で120℃まで加熱した。120℃で5時間保持した後、70℃に降温するまで放置し、70℃にてメタノールを加えて数回洗浄し、得られた粉末を減圧下で乾燥させた。得られた粉末を走査型透過電子顕微鏡(STEM)により観察した結果、平均一次粒子径は7.5nmであった。得られた粉末にターピネオール10gを加え十分に攪拌し、ナノ銀ペーストを得た。
このようにして作製した銀ペースト及びナノ銀ペーストを以下の通り、未加圧積層体C及び積層体Cの作製工程で使用した。
銅箔上に、ナノ銀ペースト、銀ペーストを順次塗布し、200℃で20分加熱することで、銅箔上に、ナノ銀からなる第1アンカー層を介して導電性バンプを形成させた。この上にプリプレグを積層配置した後、0.3MPaで加圧することにより、導電性バンプをプリプレグに貫通させた。さらにその上に、予めナノ銀ペーストを塗布しておいた銅箔をナノ銀ペーストと導電性バンプが当接するように積層配置して未加圧積層体C(比較例3)を得た。この未加圧積層体Cを175℃に加熱しながら50MPaで加圧した状態を30分間維持することで、積層体C(実施例3)を得た。
【0038】
(2)抵抗の測定
上記比較例1〜3で得た未加圧積層体A〜C及び実施例1〜3で得た積層体A〜Cに対して、抵抗の測定を以下のようにおこなった。
ミリオームハイテスタ(3560 ACミリオームハイテスタ、日置電機株式会社)を用いて、積層体の第1金属シート(銅箔)および第2金属シート(銅箔)の露出している面に対し、+−端子をそれぞれ接触させることにより抵抗の測定を実施した。
【0039】
比較例1〜3と実施例1〜3の評価結果を以下の表1に示す。
【表1】

【符号の説明】
【0040】
1 第1金属シート
2 導電性バンプ
3 非導電性シート
4 第2金属シート
5 未加圧積層体
6 積層体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)第1金属シート上に、バインダー樹脂及び金属微粒子を含む導電性ペーストを塗工した後、加熱することにより該導電性ペーストを硬化させて、導電性バンプを形成する工程、
(2)該第1金属シート上に非導電性シートを積層配置した後、加圧することにより該導電性バンプを該非導電性シートに貫通させる工程、
(3)第2金属シートを、該導電性バンプによって貫通された該非導電性シート上に積層配置して未加圧積層体を得る工程
(4)該未加圧積層体を、100〜300℃で加熱しながら10〜100MPaで加圧する工程、
を含む、多層プリント配線板形成用の積層体の製造方法。
【請求項2】
前記金属微粒子が平均粒径2μm以下の球状微粒子である、請求項1に記載の多層プリント配線板形成用の積層体の製造方法。
【請求項3】
前記導電性ペーストが前記バインダー樹脂100質量部に対して、前記金属微粒子900質量部以上含む、請求項1又は2に記載の多層プリント配線板形成用の積層体の製造方法。
【請求項4】
前記金属微粒子を構成する金属が銀である、請求項1〜3のいずれかに記載の多層プリント配線板形成用の積層体の製造方法。
【請求項5】
前記工程(1)が前記第1金属シートと前記導電性ペーストとの間に第1アンカー層を設ける工程を含み、及び/又は前記工程(3)が前記第2金属シートと前記導電性バンプの間に第2アンカー層を設ける工程を含み、
該第1アンカー層が、前記導電性バンプの金属微粒子を構成する金属及び前記第1金属シートを構成する金属からなる群から選ばれる少なくとも一種の金属で構成される平均一次粒子径1〜100nmのナノ粒子を含んでなる層であるか、又はハンダからなる層であり、
該第2アンカー層が、前記導電性バンプの金属微粒子を構成する金属及び前記第2金属シートを構成する金属からなる群から選ばれる少なくとも一種の金属で構成される平均一次粒子径1〜100nmのナノ粒子を含んでなる層であるか、又はハンダからなる層である、
請求項1〜4のいずれかに記載の多層プリント配線板形成用の積層体の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の多層プリント配線板形成用の積層体の製造方法を用いて作製した多層プリント配線板形成用の積層体。
【請求項7】
第1金属シート、第2金属シート、該第1金属シートと該第2金属シートとの間に挟まれる非導電性シート、及び該非導電性シートを貫通することで該第1の金属シートと該第2の金属シートを電気的に接続させる導電性バンプ、を含む多層プリント配線板形成用の積層体であって、
該導電性バンプに含まれる金属微粒子の形状が略扁平状であって、その長径が1.5〜15μm、短径が0.15〜1.5μmである、多層プリント配線板形成用の積層体。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の多層プリント配線板形成用の積層体を用いて形成された多層プリント配線板。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−74628(P2012−74628A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219957(P2010−219957)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】