多層積層回路基板
【課題】金属回路の断線が生じにくい多層積層回路基板を提供する。
【解決手段】多層積層回路基板1は、樹脂フィルム100と回路層200とを交互に積層させた積層構造を含む多層積層回路基板であって、上記樹脂フィルム100は、1つ以上のマルチ導通部110を有し、上記マルチ導通部110は、直径10μm以上3000μm以下の領域を占め、かつ2つ以上の導通ビア120を有し、該導通ビア120は、5μm以上300μm以下の内径を有することを特徴とする。
【解決手段】多層積層回路基板1は、樹脂フィルム100と回路層200とを交互に積層させた積層構造を含む多層積層回路基板であって、上記樹脂フィルム100は、1つ以上のマルチ導通部110を有し、上記マルチ導通部110は、直径10μm以上3000μm以下の領域を占め、かつ2つ以上の導通ビア120を有し、該導通ビア120は、5μm以上300μm以下の内径を有することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層積層回路基板に関し、特に金属回路の断線が生じにくい多層積層回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
我々の身の回りにある製品、たとえば電気製品、電子製品、半導体製品、アンテナ回路基板、ICカード、ロボット等はいずれも場所をとらない小型製品に人気が集中しており、さらに小型化した製品の登場が期待されている。このような製品のニーズに対応するため、製品の外形を小型化するというアプローチと、製品の内部を小型化するというアプローチとの両面から製品の小型化の技術開発が進められてきた。ところが、製品の外形を小型化するというアプローチによる製品の小型化はもはや限界に近いと言われ、製品の内部の小型化に期待が寄せられるようになってきた。
【0003】
このような状況下で、製品の内部を小型化するアプローチとして、製品に用いられる回路基板を軽薄短小な回路構造にするという方法が近年特に注目を集めている。従来の回路基板は、平面に1層または2層の回路を形成し、その回路そのものを微細化することによって回路基板を小型化することが検討されていたが、平面上に形成される回路の微細化だけでは小型化に限界があったため、回路基板を多層化して立体的に回路を形成する多層積層回路基板が検討されるようになってきた。
【0004】
このような多層積層回路基板は、ビルドアップ法により作製されるのが一般的である。ビルドアップ法とは、絶縁性の樹脂フィルム上に形成された導電層をエッチングすることによりそれを部分的に除去して金属回路を形成し、その金属回路上に接着剤を塗布して、さらに導電層が形成された樹脂フィルムを貼り合わせる。その後、貼り合わせた樹脂フィルムの導通部に導通ビアを形成して、当該導通ビアの内部にめっきまたはペースト等を充填する。そして、貼り合わせた樹脂フィルムの導電層をエッチングすることによりそれを部分的に除去して金属回路を形成する。以後、これらの工程を繰り返して、金属回路を多層化させていくという手法である。しかしながら、このビルドアップ法により形成した多層積層回路基板は、それ自体に熱が加わると、金属回路に断線が生じるという問題があった。
【0005】
特許文献1〜6にはこれらの課題を解決するために様々な試みがなされているが、いずれの多層積層回路基板においても上述の問題を十分に解決できるものではなかった。以下に、特許文献1〜6に示される多層積層回路基板の概略を説明する。
【0006】
特許文献1の多層積層回路基板は、2層の樹脂フィルムの金属回路の接続に鉛を含まない低融点のはんだを用いることにより、樹脂フィルム同士の接合強度を高め、金属回路の断線を防止しようとするものである。しかしながら、この多層積層回路基板は熱が加わったときに低融点はんだが再融解してしまい、金属回路が断線してしまう。
【0007】
特許文献2には、表面側の金属回路から裏面側の金属回路まで貫通するように開けられた導通ビアにはんだを充填することによって、フレキシブル基板と補強基板との接合強度を高めて接合し、金属回路の断線を防止することが記載されているが、特許文献1と同様熱が加わったときに金属回路の断線が生じやすかった。
【0008】
特許文献3には、バンプにより樹脂フィルム同士を接合する多層積層回路基板が記載されている。しかしながら、バンプは径を小さくすることが困難であるから、多層積層回路基板の小型化に対応できないという問題があった。
【0009】
特許文献4には、多層積層回路基板の導通ビアに導電性樹脂を充填することによる多層積層回路基板が示されているが、長期間導通させた際の熱により金属回路に断線が生じるという懸念は残されていた。
【0010】
特許文献5には、樹脂フィルムの積層に際して導通ビアに導電性ペーストを充填することによって、表裏の樹脂フィルム同士の接着性を高めているが、導電性ペーストと樹脂フィルムとの密着が十分とはいえなかった。
【0011】
さらに、特許文献6には、樹脂フィルム同士の貼り付けに接着剤を用いることによって、積層した樹脂フィルム同士の位置ズレを防止する多層積層回路基板が記載されているが、位置ズレを防止するだけでは金属回路の断線を十分に防止できるとはいえなかった。
【特許文献1】特開2005−243911号公報
【特許文献2】特開2007−266481号公報
【特許文献3】特開2008−60582号公報
【特許文献4】特開2007−335631号公報
【特許文献5】特開2005−223010号公報
【特許文献6】特開2008−91439号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
以上のように、特許文献1〜6はいずれも樹脂フィルム同士の接着手段または接着材料を改良することにより、金属回路の断線が起こりにくい多層積層回路基板を提供するものであった。
【0013】
しかしながら、いずれの多層積層回路基板も導通部が1つの導通ビアにより形成されたものであることから、それ自体に熱が加わると、樹脂フィルムの熱膨張係数と導通ビア内の金属回路の熱膨張係数とが異なるため、これらの熱膨張の差により導通ビア内の金属回路に圧縮または引張のストレスがかかり、導通ビア内の金属回路が断線してしまうという共通の問題を有していた。
【0014】
また別の問題として、たとえば多層積層回路基板に熱が加わった場合、多層積層回路基板に含まれる複数の樹脂フィルムにおいて熱源からの距離に応じて各樹脂フィルムに膨張差が生じ、多層積層回路基板が歪められ、樹脂フィルムに形成されている導通ビア内の金属回路にストレスがかかり、金属回路が断線してしまうという問題もあった。本発明は、上記のような現状に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、金属回路の断線が生じにくい多層積層回路基板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の多層積層回路基板は、樹脂フィルムと回路層とを交互に積層させた積層構造を含む多層積層回路基板であって、上記樹脂フィルムは、1つ以上のマルチ導通部を有し、上記マルチ導通部は、直径10μm以上3000μm以下の領域を占め、かつ2つ以上の導通ビアを有し、該導通ビアは、5μm以上300μm以下の内径を有することを特徴とする。
【0016】
また、上記の樹脂フィルムの厚みをTとし、上記の導通ビアの内径をdとすると、0<d/T≦60であることが好ましい。
【0017】
また、上記の樹脂フィルムは、長尺状のものを加工して用いることが好ましい。
また、本発明は、多層積層回路基板を用いる部品または製品である。
【0018】
また、上記製品は、電気製品、電子製品、半導体製品、アンテナ回路基板、ICカード、太陽電池、自動車またはロボットのいずれかであることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の多層積層回路基板は、上記の各構成を有することにより、金属回路の断線が生じにくいという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
<多層積層回路基板>
以下、本発明の多層積層回路基板について図1を参照しつつ説明する。図1は、本発明の多層積層回路基板の一例を示す模式的断面図である。なお、本発明の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表わすものとする。
【0021】
本発明の多層積層回路基板1は、図1に示されるように、樹脂フィルム100と回路層200とを交互に積層させた積層構造を含む。なお、図1は樹脂フィルム100を3層積層させた構造を示しているが、本発明における積層構造の最小積層数は、樹脂フィルム100を2層積層させたものである。この場合、回路層200の積層数は2層または3層とすることができる。一方、本発明における積層構造の最多積層数は、特に限定されず、用途に応じて積層させることができるが、通常、樹脂フィルム100を2〜30層程度積層させたものが一般的である。
【0022】
ここで、本発明の多層積層回路基板1の樹脂フィルム100は、1つ以上のマルチ導通部110を有し、該マルチ導通部110には樹脂フィルムの表裏を貫通する2つ以上の導通ビア120を設けることを特徴とする。このように樹脂フィルム100の表裏を貫通する導通ビア120を2つ以上設けることにより、金属回路の断線を生じにくくすることができる。以下に本発明の多層積層回路基板に含まれる各構成部を説明する。
【0023】
<樹脂フィルム>
本発明の多層積層回路基板には、2層以上の樹脂フィルムが含まれる。そして、それらの樹脂フィルムは、絶縁性の材料からなり、この種の用途に用いられる従来公知の樹脂フィルムをいずれも用いることができる。このような樹脂フィルムとして、たとえばポリイミド(PI)系、アクリル系、液晶ポリマ(LCP)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等の樹脂フィルムを用いることができる。
【0024】
そのような樹脂フィルム100は、長尺状のものを加工して用いることが好ましい。そのような長尺状の樹脂フィルムとしては、たとえば、1〜10000m程度の長さを有するものが好ましく、100〜3000m程度のものがより好ましい。長尺状のものを用いることにより連続加工することができ、生産効率を向上させることができる。1m未満では、ロール状に巻いた形状のものとして用いることが困難であり加工効率が低下するため好ましくなく、10000mを超えると、後述の下地層の形成において連続加工を妨げられる虞があるため好ましくない。
【0025】
なお、樹脂フィルムが「長尺状のもの」とは上記のような長さを有し、ロール状に巻いた形状のものとして用いるのに適したものをいうが、上記のような長さに満たないものであっても、複数の枚葉の樹脂フィルムを貼り合わせることにより、長尺状のものとして取り扱えるようにしたものも含むものとする。
【0026】
また、樹脂フィルム100の厚みは、3μm以上200μm以下であることが好ましい。樹脂フィルム100の厚みが3μmよりも薄いと作業性が悪くなりすぎるため好ましくなく、200μmよりも厚くなると、導通ビア120が加工しにくくなるため好ましくない。
【0027】
<回路層>
本発明の樹脂フィルム100上に形成される回路層200には金属回路50が含まれる。また、回路層200の金属回路50以外の部分は、絶縁性の接着性樹脂70が充填されていてもよく、この接着性樹脂70を介して樹脂フィルム100同士を相互に貼り付けることができる。このように本発明の回路層200は、金属回路50のみによって構成されていてもよいし、金属回路50と接着性樹脂70とにより構成されていてもよい。
【0028】
<金属回路>
金属回路50は、めっき層140を含み、さらにこのめっき層140と樹脂フィルム100との間に下地層130を含むこともできる。なお、本発明においては導通ビア120内に形成される下地層130およびめっき層140も便宜的に金属回路50と呼ぶ場合がある。
【0029】
ここで、下地層130はめっき層140と樹脂フィルム100との密着性を向上させる作用をなすものであり、1層で形成してもよいし、2層以上で形成してもよい。下地層130が2層以上で形成される場合は、酸化防止層と下地金属層とを含むことが好ましい。このような下地層は、どのような方法で形成してもよいが、たとえば無電解めっき、蒸着、スパッタ等により形成することができる。特に正確に膜厚を制御するという観点からスパッタにより形成することが好ましい。
【0030】
この酸化防止層は、Ni、Cr、Ti、CoおよびSiからなる群より選択された少なくとも1種の金属または該金属を少なくとも1種含む合金により構成することが好ましく、その層厚は、2〜20nmとすることが好ましい。
【0031】
また、下地金属層は、酸化防止層上に形成されることが好ましく、Cu、Au、Ag、Sn、Ni、BiおよびZnからなる群より選択された少なくとも1種の金属または該金属を少なくとも1種含む合金により構成することが好ましい。また、下地金属層の層厚は、50〜500nm程度とすることが好ましい。
【0032】
また、上記めっき層140は、電気めっきにより形成される層であり、Cu、Au、Ag、Sn、Ni、BiおよびZnからなる群より選択された少なくとも1種の金属または該金属を少なくとも1種含む合金により構成することが好ましく、CuまたはCuを含む合金により構成することがより好ましい。なお、前述の下地金属層を形成する場合、下地金属層とめっき層140とは同一の材料を用いることが好ましい。
【0033】
<接着性樹脂>
接着性樹脂70は、多層積層回路基板に用いられる樹脂フィルム100同士を相互に貼り付けることができるものであれば、どのようなものを用いてもよく、たとえば、エポキシ系の樹脂、アクリル系の樹脂およびポリイミド系の樹脂等を用いることができる。
【0034】
<マルチ導通部>
本発明の多層積層回路基板1を構成する各樹脂フィルム100は、1つ以上のマルチ導通部110を有し、このマルチ導通部には、2つ以上の導通ビア120が設けられる。ここで、マルチ導通部とは、金属回路の構成上、当該樹脂フィルムの表裏の両面の金属回路の導通が所望される部位に形成されるものであって、樹脂フィルムの表裏を貫通する導通ビアが2つ以上形成されることにより表裏の導通を保障するものである。
【0035】
そして、当該マルチ導通部は、所望の部位に近接連関して形成された複数の導通ビアの全てを含み、その断面積が最小となる円柱状領域のことをいい、当該断面積は樹脂フィルム上において直径10μm以上3000μm以下の領域を占めることが好ましい。すなわち、たとえば図2に示されるように、近接連関する導通ビア120が3つある場合、この3つの導通ビアの全てを含み、かつ円柱状領域の断面の面積が最小となる領域のことをマルチ導通部110という。
【0036】
このマルチ導通部の直径は、上述の通り10μm以上3000μm以下であることが好ましい。マルチ導通部の直径が10μm未満では、樹脂フィルムの表裏に形成される金属回路の導通を十分に保障できない場合があり、また、3000μmを超えると、金属回路の占める面積そのものが過大となり所期の目的に反することとなる。
【0037】
このようにマルチ導通部に2つ以上の導通ビアを設けることによって、熱の適用時に樹脂フィルムと導通ビア内の金属回路との熱膨張係数の差に起因して導通ビア内の金属回路にかかる圧縮または引張のストレスをこれらの各導通ビアに分散することができ、金属回路の断線を抑制することができる。
【0038】
しかも、このように2つ以上の導通ビアを設けていれば、たとえ1つの導通ビアで金属回路の断線が生じても、他の導通ビアにより導通が保たれているので、樹脂フィルムの表裏に形成された金属回路が完全に断線されないという効果もある。
【0039】
さらに、従来技術のように導通ビアを1つだけ形成する場合に比し、導通ビアの内径を小さくすることができることから、導通ビア内の金属回路にかかる圧縮または引張のストレスの影響を一層低減できるという効果もある。本発明は、これらの作用の相乗効果によって、金属回路の断線を飛躍的に抑制することができる。
【0040】
<導通ビア>
本発明のマルチ導通部110に含まれる導通ビア120は、樹脂フィルム100の表裏を貫通するように設けられる孔であり、この導通ビア内に金属回路を形成することにより樹脂フィルム100の表裏の金属回路を導通することができる。
【0041】
ここで、導通ビア内に金属回路を形成するとは、導通ビアの内壁面に金属回路を形成することをいい、このように形成される金属回路は、導通ビアの全体を充填するように形成されていてもよいし、スルホール状に導通ビア内に空洞が残るように形成されていてもよい。
【0042】
また、この導通ビアは、樹脂フィルムの表裏の金属回路の導通を保障するという観点からその内径を大きくすることが好ましいが、その内径を大きくするほど前述のように熱が加わったときに導通ビア内の金属回路にかかる圧縮または引張のストレスが集中するため、金属回路の断線が生じやすくなる。
【0043】
したがって、導通ビアは、5μm以上300μm以下の内径であることが好ましく、10μm以上50μm以下の内径であることがより好ましく、15μm以上20μm以下の内径であることがさらに好ましい。また、熱が加わったときの導通ビアの切断を防止するという観点から、その断面は、0.2mm2以下であることが好ましい。
【0044】
導通ビアの内径が300μmよりも大きいと、上述の理由により導通ビア内の金属回路が断線されやすくなるため好ましくない。また、導通ビアの内径が5μmより小さいと導通ビアの加工が困難となるばかりか、導通ビアにめっき層を形成させるべく電気めっきをする際にめっき液が導通ビア内に浸入しにくくなることからも好ましくない。
【0045】
また、導通ビア120を形成する個数は、マルチ導通部1箇所に対し2〜7個程度を形成することが好ましく、3〜5個程度を形成することがより好ましい。これに対し、前述の通り、1つの導通部に対し1つの導通ビアのみを形成すると、前述の理由から金属回路の断線が起こりやすくなるため好ましくない。また、導通ビアを8個以上形成すると、マルチ導通部の面積が広くなりすぎるという点で好ましくなく、導通ビアの加工時間が長くなりコストが高くなってしまうという点からも好ましくない。
【0046】
導通ビアの内径とマルチ導通部に含まれる導通ビアの個数との関係は、たとえば導通ビアの内径が5μm以上50μm未満の場合2〜7個の導通ビアを形成することが好ましく、導通ビアの内径が50μm以上300μm以下の場合2個または3個の導通ビアを形成することが好ましい。
【0047】
ただし、導通ビアの大きさが構造上やむをえず大きくならざるを得ない場合等にあっては、その部位に限ってマルチ導通部の代わりに従来のように導通ビア1つで導通部を形成してもよい。しかし、熱のストレスによる金属回路の断線を避けるという観点からすれば、1つのマルチ導通部に対し上述の範囲内で可能な限り多くの導通ビアを設けることが好ましいことは言うまでもない。
【0048】
また、上記の樹脂フィルムの厚みをTとし、上記の導通ビアの内径をdとすると、0<d/T≦60であることが好ましく、0.01≦d/T≦6であることがより好ましく、0.3≦d/T≦2であることがさらに好ましい。このようにd/Tの値を特定の数値範囲内に制御することにより、熱のストレスによる導通ビア内の金属回路の断線を極めて有効に防止することができる。なお、d/Tの値が60よりも大きくなると、樹脂フィルムの厚みに対して導通ビアの内径が大きすぎるため、熱が加わったときに導通ビア内の金属回路にかかる圧縮または引張のストレスが大きくなりすぎて、導通ビア内の金属回路が断線しやすくなるため好ましくない。
【0049】
<樹脂フィルムの熱膨張係数>
本発明の多層積層回路基板に用いられる樹脂フィルムの熱膨張係数は、1ppm/℃以上300ppm/℃以下が好ましく、2ppm/℃以上200ppm/℃以下がより好ましく、3ppm/℃以上150ppm/℃以下がさらに好ましい。樹脂フィルムの熱膨張係数が1ppm/℃より小さくなると、樹脂フィルムがもろくなってしまうため好ましくなく、300ppm/℃より大きくなると、熱が加わったときの樹脂フィルムの膨張により、多層積層回路基板が歪められ、導通ビア内の金属回路にストレスがかかってしまい、金属回路に断線が生じやすくなるため好ましくない。ここで、本発明において、熱膨張係数とは、樹脂フィルムの幅方向に対する垂直方向(すなわち、長手方向)の熱膨張係数をいうものとする。
【0050】
なお、多層積層回路基板の歪みやすい部分には、熱膨張係数が大きい樹脂フィルムを用いることが好ましく、樹脂フィルムの厚みは厚くすることが好ましい。
【0051】
また、本発明の多層積層回路基板に含まれる樹脂フィルムのうち、いずれか1層の樹脂フィルムの熱膨張係数は、他の少なくとも1層の樹脂フィルムの熱膨張係数と異なることが好ましい。このように少なくとも1層の樹脂フィルムに他の樹脂フィルムと異なった熱膨張係数を有するものを用いることにより、これらの樹脂フィルム間において熱源からの距離に応じて生じる膨張差を緩和することができ、以って導通ビア内の金属回路の断線を抑制することができる。
【0052】
<多層積層回路基板の使用態様>
本発明の多層積層回路基板は、たとえば図3に示されるように、多層積層回路基板の最下面の金属回路50とリジッド基板301とが、接着金属401により貼り付けられ、多層積層回路基板の最上面の金属回路50とSi基板302とが、密着金属402により貼り付けられる構成として用いることができる。この場合、接着金属401と密着金属402とはいずれもはんだにより形成されることが好ましいが、密着金属402に関しては、はんだによる形成に限られるものではなく、ボンディングまたはスタットピンとバンプとの組み合わせによって形成してもよい。また、Si基板302にはリジッド基板または銅基板を用いてもよく、リジッド基板301にはSi基板または銅基板を用いてもよい。また、熱が加わったときのこれらの切断を防止するという観点から、接着金属401および密着金属402の断面は、0.2mm2以下であることが好ましい。
【0053】
このような多層積層回路基板の使用態様の場合、最上層のSi基板302は熱膨張係数が小さく、最下層のリジッド基板301は熱膨張係数が大きいので、これらの間に積層される樹脂フィルムの熱膨張係数は、Si基板302側の樹脂フィルムほど熱膨張係数が小さく、リジッド基板301側の樹脂フィルムほど熱膨張係数が大きくなるように、樹脂フィルムを選定することが好ましい。
【0054】
より具体的には、Si基板302の近くに積層される樹脂フィルムの熱膨張係数は、2ppm/℃以上10ppm/℃以下が好ましく、3ppm/℃以上5ppm/℃以下がより好ましい。熱膨張係数が2ppm/℃よりも小さいと、多層積層回路基板がもろくなりすぎて扱いにくくなるため好ましくなく、熱膨張係数が10ppm/℃よりも大きくなると、Si基板302の熱膨張係数と樹脂フィルムの熱膨張係数との差が大きくなりすぎて多層積層回路基板に歪みが生じ、導通ビア内の金属回路に断線が生じやすくなるため好ましくない。
【0055】
また、リジッド基板301の近くに積層される樹脂フィルムの熱膨張係数は、リジッド基板301の熱膨張係数に近い材料を用いることが好ましい。また、リジッド基板が屈曲している場合には、この屈曲に対応できる樹脂フィルムを用いることが好ましい。また、上記のSi基板またはリジッド基板のいずれか一方もしくは両方に、銅基板を用いる場合、銅基板の近くに積層される樹脂フィルムの熱膨張係数は、銅基板の熱膨張係数(16.8ppm/℃)に近い材料を用いることが好ましく、その値は10ppm/℃以上20ppm/℃以下であることが好ましく、15ppm/℃以上18ppm/℃以下であることがより好ましい。
【0056】
<部品または製品>
本発明の多層積層回路基板は、一般的な部品または製品に用いられる。この製品には、たとえば電気製品、電子製品、半導体製品、アンテナ回路基板、ICカード、太陽電池、自動車またはロボット等を挙げることができる。
【0057】
<多層積層回路基板の製造方法>
本発明の多層積層回路基板の製造は、まず樹脂フィルム100の各マルチ導通部に表裏を貫通するような2つ以上の導通ビア120を形成した後、樹脂フィルム100の表面全体(導通ビアの内壁面を含む)に亘って下地層130を形成し、その上に電気めっきによりめっき層140を形成する。
【0058】
その後、下地層130とめっき層140との一部を除去して金属回路50を形成し、接着性樹脂70によって別の樹脂フィルム100を貼り付ける。続いて、この新たに貼り付けられた樹脂フィルム100のマルチ導通部の位置に2つ以上の導通ビアを形成し、その後上記と同様にして金属回路を形成する。以上の操作を長尺状の樹脂フィルムを用いて連続的に繰り返し行なうことにより本発明の多層積層回路基板は製造される。
【0059】
上述のように金属回路50を電気めっきで形成されるめっき層により構成すれば、導通ビア内の金属回路に断線が生じにくく、しかも樹脂フィルムを多層化してもコストの向上を抑制できるため好ましい。
【0060】
なお、本発明の多層積層回路基板1の金属回路50は、たとえばエッチング法とセミアディティブ法のいずれの方法により形成してもよい。エッチング法は、樹脂フィルムの表面(導通ビアの内壁面を含む)の全面に電気めっきによりめっき層を形成し、その後不要な部分となるめっき層と下地層とをエッチングにより除去することにより金属回路を形成する方法である。
【0061】
一方、セミアディティブ法は、樹脂フィルムの表面(導通ビアの内壁面を含む)上の回路とならない部分に対してレジストによりマスキングした後、電気めっきにより必要な厚みのめっき層を形成し、その後レジストを剥離して金属回路を形成する方法である。
【0062】
以下においては、金属回路の形成方法としてセミアディティブ法を例にとり多層積層回路基板の製造方法を説明する。当該製造方法は、導通ビア形成工程、下地層形成工程、レジスト形成工程、露光工程、現像工程、活性化工程、めっき層形成工程、レジスト剥離工程、ソフトエッチング工程および樹脂フィルム積層工程をこの順に繰り返すことによって多層積層回路基板を製造する方法である。これらの工程を以下に説明する。
【0063】
<導通ビア形成工程>
まず、樹脂フィルム100に対して、マルチ導通部を形成するように3つの導通ビア120を形成する(図4)。ここで、導通ビアの深さと樹脂フィルムの厚みとが等しくなるように導通ビアの形成を調節できる装置であればどのような装置でもよいが、小径かつ低コストで導通ビアを形成できるという観点から、UV−YAGレーザを用いることが好ましい。
【0064】
<下地層形成工程>
次に、イオンガンにより樹脂フィルム100の表面(導通ビアの内壁面を含む)を前処理した後、樹脂フィルム100の表面(導通ビアの内壁面を含む)に酸化防止層を形成し、酸化防止層上にさらに下地金属層を形成することにより下地層130を形成することができる(図5)。下地層130に含まれる酸化防止層と下地金属層とは、たとえば無電解めっき、蒸着、スパッタ等により形成することができる。なお、酸化防止層または下地金属層のいずれか一方もしくは両方は形成されない場合もある。
【0065】
<レジスト形成工程>
上記工程によって、樹脂フィルム100上に形成した下地層130の表面を酸で洗浄し、下地層130に含まれる下地金属層の表面を活性化させた後レジストを形成する(図示せず)。このレジストは、レジストをフィルム化したドライフィルムを貼り合わせる方法により形成してもよいし、レジストインクを塗布する方法により形成してもよい。
【0066】
ドライフィルムを貼り合わせる方法は、少量生産に適していることから多品種の製品に対応することができ、しかも貼り合わせ作業の工程も煩雑でないという点で優れているが、製造コストが高くなるという問題を有する。
【0067】
一方、レジストインクを塗布する方法は、大量生産に適していることから製造コストを低減することができる点で優れているが、塗布の工程が煩雑になるという問題を有する。以下においては、ドライフィルムを貼り合わせる方法によるレジストの形成を説明する。
【0068】
まず、図5に示される下地層130の形成された樹脂フィルム100をラミネート巻取装置の送出シャフトにセットし、樹脂フィルム100の先端を巻取シャフトにセットした上で、樹脂フィルム100の下地層130上にドライフィルムを貼り付けながら巻取シャフトを回転させて巻き取りを行なう。このようにして樹脂フィルム100にドライフィルムが貼り付けられ、樹脂フィルムの下地層上にレジストが形成される(図示せず)。
【0069】
上述のラミネート時の温度は、30〜150℃であることが好ましく、60〜110℃であることがより好ましい。また、ラミネート時の圧力は、0.3〜5kg/cm2であることが好ましく、2〜3kg/cm2であることがより好ましい。また、ラミネートした樹脂フィルムの巻取時のラインスピードは、0.1〜10m/分であることが好ましく、0.5〜3m/分であることがより好ましい。
【0070】
<露光工程>
次に、上記でレジストを形成した樹脂フィルム上に、所望の金属回路のパターンに対応したマスクを重ね合わせた後、UV露光しマスクで覆われていない部分を感光させる。ここでマスクで覆われていた部分は、次の現像工程で除去され、後述するめっき層形成工程においてめっき層が形成されることにより金属回路が形成される。
【0071】
この露光に用いられる露光装置は、平行光露光装置を用いてもよいし、ダイレクト露光装置を用いてもよい。しかし、微細回路を形成するという観点からは平行光露光装置を用いることが好ましく、樹脂フィルムの収縮に対応して露光する位置を調整することができるという観点からはダイレクト露光装置を用いることが好ましい。
【0072】
<現像工程>
次に、上述の露光工程のマスクで覆われた部分のレジスト170を弱アルカリ溶液により現像する。これにより図6に示すようなレジスト170を形成した樹脂フィルム100を得ることができる。現像に用いられる弱アルカリ溶液は、炭酸ソーダまたはアミン系の材料を用いることが好ましい。また、弱アルカリ溶液のpHは7以上13以下であることが好ましく、8.5以上10.0以下であることがより好ましい。弱アルカリ溶液のpHが7より小さいとレジストが除去されないため好ましくなく、pHが13より高いと、上記露光工程においてマスクで覆われていない部分のレジスト170も全て剥離されてしまうため好ましくない。
【0073】
また、弱アルカリ溶液の温度は10〜70℃であることが好ましく、20〜35℃であることがより好ましい。弱アルカリ溶液の温度が10℃より低いとレジスト170が除去されないため好ましくなく、弱アルカリ溶液の温度が70℃より高いと、UV露光した部分のレジスト170も剥離するため好ましくない。なお、現像の処理時間はレジストの種類により異なるため、一律に規定することはできないが、通常20秒以上300秒以下程度とすることが好ましい。
【0074】
<活性化工程>
次に、現像した後の樹脂フィルム100上の下地層130(下地金属層)の表面を酸系の溶液で活性化する。これにより、めっき層と下地層(下地金属層)との密着不良を防止することができる。この活性化に用いられる酸系の溶液は、酸性を示すものであればどのようなものでもよいが、低コストで活性化できるという観点から、HCl、H2SO4、過硫酸アンモニウム等を用いることが好ましい。
【0075】
また、酸系の溶液に含まれる酸の濃度は、0.5〜20質量%であることが好ましく、3〜10質量%であることがより好ましい。酸系の溶液の濃度が0.5質量%よりも低いと下地層(下地金属層)の表面が活性化されにくいため好ましくなく、酸系の溶液の濃度が20質量%よりも高いと下地層(下地金属層)の表面に異常が発生する虞があるため好ましくない。
【0076】
また、活性化するときの酸系の溶液の温度は10〜70℃であることが好ましく、30〜50℃であることがより好ましい。酸系の溶液の温度を10℃より低くすると下地層の活性化に時間がかかりすぎるため好ましくなく、酸系の溶液の温度を70℃よりも高くすると環境面での問題が生じることから好ましくない。また、処理時間は下地層(下地金属層)の表面状態により異なるため、一律に規定することはできないが、通常3秒以上300秒以下程度とすることが好ましい。
【0077】
<めっき層形成工程>
次に、上記で活性化した下地層130上に電気めっきすることによって、図7に示すようなめっき層140を形成する。この電気めっきに用いられるめっき液は、めっき層を形成する金属を含む酸性の溶液であればどのようなものでもよいが、めっき液自体が安定であり、かつ低コストでめっきできるという観点から硫酸銅、ピロリン酸銅等を用いることが好ましい。なお、めっき液に硫酸銅を用いる場合、硫酸銅の濃度は30〜300g/lであることが好ましく、70〜150g/lであることがより好ましい。また、このめっき液の塩素イオン濃度は10〜100ppmであることが好ましく、40〜70ppmであることがより好ましい。
【0078】
また、めっき液に用いられる酸性の溶液としては硫酸を用いることが好ましく、硫酸を用いる場合、硫酸の濃度は50〜300g/lであることが好ましく、80〜200g/lであることがより好ましい。
【0079】
また、電気めっきするときの電流密度は、0.1〜10A/dm2であることが好ましく、0.5〜4A/dm2であることがより好ましい。また、電気めっきするときのめっき液の温度は20〜60℃が好ましく、30〜40℃がより好ましい。なお、めっき時間についてはめっき層の層厚により異なるため一律に規定することはできないが、通常600秒以上6000秒以下程度とすることが好ましい。
【0080】
<レジスト剥離工程>
次に、上述のめっき層形成工程により金属回路を形成した後にアルカリ液を用いてレジスト剥離を行なう。レジスト剥離に用いられるアルカリ液は、アルカリ性を示す溶液であればどのようなものでもよいが、アルカリ液自体の安定性やアルカリ液のコストの観点から、水酸化ナトリウムやアルコール系のものを用いることが好ましい。
【0081】
また、アルカリ液に水酸化ナトリウムを用いる場合、水酸化ナトリウムの濃度は0.1〜50質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることがより好ましい。また、レジスト剥離に用いられるアルカリ液の温度は30〜90℃であることが好ましく、50〜70℃であることがより好ましい。なお、レジスト剥離の処理時間は、レジストの剥離状態により異なるため、一律に規定することはできないが、通常20秒以上120秒以下程度とすることが好ましい。
【0082】
<ソフトエッチング工程>
次に、下地層130をソフトエッチングにより剥離除去することによって、図8に示すような金属回路50が形成された樹脂フィルムが得られる。下地層に含まれる下地金属層の剥離に用いられる薬品は、どのようなものを用いてもよいが、低コストであるという観点から過硫酸アンモニウムを用いることが好ましい。この過硫酸アンモニウムを用いる場合、過硫酸アンモニウムの濃度は1〜20%であることが好ましく、5〜10%であることがより好ましい。
【0083】
また、下地金属層をソフトエッチングするときの処理温度は、20〜60℃であることが好ましく、30〜40℃であることがより好ましい。なお、このソフトエッチングの剥離にかける時間は、下地金属層の厚みや薬品の濃度および温度により異なるため、一律に規定することはできないが、通常30秒以上200秒以下程度とすることが好ましい。
【0084】
また、酸化防止層の剥離に用いられる薬品としては、ニッケルクロム剥離液(商品名:NC(日本化学工業株式会社製))を用いることが好ましい。また、この薬品を用いる場合、この薬品の濃度は60〜100%であることが好ましい。この薬品の濃度が60%より低いと剥離時間がかかるため好ましくない。
【0085】
また、酸化防止層をソフトエッチングするときの処理温度は、35〜55℃であることが好ましい。なお、このソフトエッチングの剥離にかける時間は酸化防止層の厚みや薬品の濃度および温度により異なるため、一律に規定することはできないが、通常20秒以上300秒以下程度とすることが好ましい。
【0086】
<樹脂フィルム積層工程>
次に、上述のようにして得られた回路付樹脂フィルム(金属回路が形成された樹脂フィルム)の表裏いずれか一方もしくは両方の面に対して、別の樹脂フィルムを積層する方法としては、接着性樹脂70の付いた樹脂フィルムをラミネートにより回路付樹脂フィルムの片面に貼り合わせる方法、および回路付樹脂フィルムの金属回路形成面に対し接着性樹脂70を塗布してから金属回路が未だ形成されていない樹脂フィルムをラミネートにより貼り合わせる方法等があり、いずれの方法によっても図9に示すように樹脂フィルムを積層することができる。
【0087】
なお、後者の樹脂フィルムの積層方法によれば、金属回路の厚みが厚い場合に金属回路による樹脂フィルムの表面凹凸を少なくすることができることから、より接合強度を高めることができるというメリットがある。
【0088】
また、上述の回路付樹脂フィルムの表裏のいずれかの面もしくは両面に対して、別の樹脂フィルム100を積層するときの温度は、30〜300℃であることが好ましく、積層にかける圧力は0.1〜20kg/cm2であることが好ましい。また、この樹脂フィルムの積層にかける時間は、1秒以上3時間以下であることが好ましい。
【0089】
そして、その後導通ビア形成工程を行なうというように、上記で説明した各工程を繰り返すことによって、図1に示されるような本発明の多層積層回路基板を製造することができる。以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0090】
<実施例1>
実施例1では、金属回路の形成方法としてエッチング法を採用し、以下の各工程により多層積層回路基板を作製した。
【0091】
<導通ビア形成工程>
多層積層回路基板に用いられる樹脂フィルム100として、ロール状に巻かれた長尺状のポリイミドフィルム(長さ50m、厚さ38μm、商品名:カプトンEN150(東レ・デュポン株式会社製))を用いた。この樹脂フィルムの熱膨張係数は、16ppm/℃以上17ppm/℃以下であり、250mm幅でスリット加工されたものを用いた。この樹脂フィルム100をUV−YAGレーザ装置にセットし、UV−YAGレーザ装置のプログラムを設定して1つのマルチ導通部に対し、15μmの内径の導通ビア120を3箇所形成した(図4)。
【0092】
<洗浄工程>
上記で導通ビア120が形成された樹脂フィルム100を洗浄装置にセットし、下地層の形成工程においてピンホールが発生することを抑制するために樹脂フィルム100の表面を洗浄した。
【0093】
<下地層形成工程>
次に、上記で表面を洗浄した樹脂フィルム100をスパッタ装置に投入し、真空ポンプにより1×10-3Paの圧力に設定した上で、イオンガンにN2ガスを注入して、それを照射することによって樹脂フィルムの表面を前処理した。その後、スパッタリング法によりAr雰囲気下でNiとCrとの合金(NiとCrとの重量比がNi:Cr=80:20)からなる酸化防止層を樹脂フィルム上に形成し、その上にCuからなる下地金属層を形成することにより下地層130を形成した(図5)。
【0094】
そして、スパッタ装置の真空状態を解除して下地層130が形成された樹脂フィルム100を取り出し、樹脂フィルム100の一部をサンプリングした。そして、そのサンプルに対して集束イオンビーム(FIB:Focused Ion Beam)を照射することにより、断面を観察した。その結果、酸化防止層は厚さ10nmであり、下地金属層は厚さ350nmであることを確認した。さらに導通ビア120内にもこれらの下地層130が形成されていることを確認した。
【0095】
<めっき層形成工程>
次に、下地層が形成された樹脂フィルム100を銅めっき装置にセットし、硫酸により下地層を活性化させた後に水洗した。その後、めっき液(硫酸200g/l、硫酸銅90g/l、塩素イオン濃度50ppmからなるもの)を充填しためっき浴に当該樹脂フィルムを浸漬することにより、下地層130上に銅めっきを行ない、再度水洗して乾燥させ、樹脂フィルム100の表面にめっき層140を形成した(図10)。このようにして得られた樹脂フィルムの一部をサンプリングした。そして、そのサンプルに対してFIBを照射することにより、断面を観察したところ、下地層130とめっき層140とを含む合計の厚さが18.5μmであった。
【0096】
<金属回路形成工程>
次に、上記のようにしてめっき層140を形成した樹脂フィルム100の表裏の両面に対して、250mm幅のスリット加工されたドライフィルム(商品名:NIT215(ニチゴー・モートン株式会社製))をラミネートし、金属回路のパターンのマスクを重ね合わせた後、それをロール式の露光装置にセットして露光を行なった。
【0097】
その後、現像とエッチングとレジスト剥離とを連続して行なうことができるロール式のエッチング装置に樹脂フィルム100をセットしてエッチング処理を行ない、金属回路50を形成した(図8)。この樹脂フィルムをサンプリングし、100倍の倍率の顕微鏡で金属回路50の断線、ショート等の検査を行なった。その結果、図8で示される金属回路50に断線、ショート等の不良は観察されなかった。
【0098】
<樹脂フィルム積層工程>
次に、上記のようにして金属回路を形成した樹脂フィルム100の表裏の両面に、接着性樹脂70が塗布された厚さ38μmのポリイミドフィルム(カプトンEN150(東レ・デュポン株式会社製))を貼付け、3層の樹脂フィルム100と2層の回路層200とからなる積層体を得た(図9)。
【0099】
この積層体の上下の樹脂フィルム100の全面を5倍の拡大鏡を用いてシワ、エアー噛み等の検査を行なった。その結果、この積層体の上下の樹脂フィルムにシワ、エアー噛み等の不良は観察されなかった。
【0100】
<導通ビア形成工程−2>
次に、上述した導通ビア形成工程と同様の方法を用いることによって、上記で得られた積層体の上下の樹脂フィルム100に対し、各マルチ導通部に3つの導通ビア120を形成した(図11)。その後、上記で導通ビアが形成された積層体の上下の樹脂フィルム100の表面を洗浄した。
【0101】
<下地層形成工程−2>
次に、上記で得られた積層体をスパッタ装置にセットし、上述した下地層形成工程と同一の条件および方法によって、この積層体の上下の樹脂フィルム100の表面にNi−Crからなる酸化防止層と、Cuからなる下地金属層とを含む下地層130をスパッタリング法により形成した(図12)。
【0102】
そして、上記の下地層を形成した積層体の一部をサンプリングした。そして、そのサンプルに対してFIBを照射することにより断面を観察した。その結果、酸化防止層は厚さ10nmであり、下地金属層は厚さ350nmであることを確認した。
【0103】
<めっき層形成工程−2>
次に、Cuめっき装置に上記で得られた下地層を形成した積層体をセットして、上述のめっき層形成工程と同一の条件により上記で形成した下地層の全面にめっき層140を形成した(図13)。その後、この積層体の一部をサンプリングしてFIBを照射して断面を観察した。その結果、この積層体の上下の樹脂フィルム100上のめっき層140と下地層130との合計の厚さはいずれも18.5μmであることを確認した。
【0104】
<金属回路形成工程−2>
次に、上記で得られためっき層を形成した積層体の上下の樹脂フィルム100に対して、ドライフィルム(商品名:NIT215(ニチゴー・モートン株式会社製))をラミネートし、次にロール式の露光装置にそれをセットして露光を行なった。
【0105】
その後、現像とエッチングとレジスト剥離とを連続して行ない、この積層体の上下の樹脂フィルム100の表面に金属回路50を形成した(図1)。以上により本発明の多層積層回路基板を作製した。
【0106】
そして、これをサンプリングし、このサンプルを100倍の顕微鏡を用いて金属回路の断線、ショート等の検査を行なった。その結果、この多層積層回路基板の金属回路に断線、ショート等の不良は観察されなかった。
【0107】
<実施例2〜12>
実施例2〜12の多層積層回路基板は、実施例1の多層積層回路基板に対して、マルチ導通部一箇所の導通ビアの個数と導通ビアの内径とが以下の表1に示すように異なることを除き、実施例1と同様の方法により作製した。たとえば、表1中の実施例3は、マルチ導通部1箇所に対し実施例1で形成した導通ビアと同様の導通ビアを5つ形成したことを示し、実施例5は、マルチ導通部一箇所に対し内径が50μmの導通ビアを3つ形成したことを示す。
【0108】
<比較例1〜3>
比較例1〜3の多層積層回路基板は、マルチ導通部を形成せず、1つの導通部に対し1つの導通ビアを形成したことを除き、その他は実施例1と同様の方法により作製した(表1参照)。たとえば表1中の比較例1では内径15μmの導通ビアを、比較例2では内径50μmの導通ビアを、比較例3では内径300μmの導通ビアを各導通部当たり1つずつ形成したことを示す。
【0109】
【表1】
【0110】
<導通検査>
実施例1〜12および比較例1〜3の多層積層回路基板に対し、LCRメータ(品番:NDH−2000(カスタム株式会社製))を用いて、多層積層回路基板の端子両端での導通検査を行なった。その結果、実施例1〜12および比較例1〜3のいずれの多層積層回路基板においても導通の異常は観察されなかった。
【0111】
実施例1〜12および比較例1〜3の多層積層回路基板の金属回路は、およそ200個のマルチ導通部(比較例においては導通部)が設けられているが、そのうちのマルチ導通部(比較例においては導通部)の1箇所でも断線が生じていれば、導通の異常が計測されることから、多層積層回路基板を作製した段階では、金属回路は断線していないことが明らかとなった。
【0112】
<温度変化サイクル試験>
実施例1〜12および比較例1〜3の多層積層回路基板に対し、サイクル試験機(型式:TSA−41L−A(ESPEC株式会社製))を用いて、2つの異なる設定温度を一定時間間隔で交互に繰り返して保持する温度変化サイクル試験を行なった。具体的には、−40℃で30分間保持した後、120℃で30分間保持することを1サイクルとし、500サイクルごとに導通検査を行なった。回路内に含まれている複数のマルチ導通部のうち、1箇所でも導通不良が起きた時点でサイクル試験を終了することとし、3000サイクルまで行なった。
【0113】
実施例1〜12の多層積層回路基板は、3000サイクル終了時においても導通不良は認められなかった。これに対し、比較例1の多層積層回路基板は、2000サイクル終了時に、比較例2の多層積層回路基板は1500サイクル終了時に、比較例3の多層積層回路基板は1000サイクル終了時に導通不良が確認された。
【0114】
上記の結果から、実施例1〜12の多層積層回路基板は、比較例1〜3の多層積層回路基板に比べて、熱が加わったときの金属回路の断線が格段に生じにくいことが明らかとなった。これは、実施例1〜12の多層積層回路基板にマルチ導通部を設けたことによることは明らかである。
【0115】
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の実施の形態および実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
【0116】
今回開示された実施の形態および実施例は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明によれば、金属回路の断線が生じにくい多層積層回路基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】本発明の多層積層回路基板の一例を示す模式的な断面図である。
【図2】図1のマルチ導通部の上面からの拡大平面図である。
【図3】本発明の多層積層回路基板の使用態様の一例を示す模式的な断面図である。
【図4】マルチ導通部を形成した後の樹脂フィルムを示す模式的な断面図である。
【図5】下地層を形成した後の樹脂フィルムを示す模式的な断面図である。
【図6】レジストを現像した後の樹脂フィルムを示す模式的な断面図である。
【図7】めっき層を形成した後の樹脂フィルムを示す模式的な断面図である。
【図8】ソフトエッチングした後の樹脂フィルムを示す模式的な断面図である。
【図9】金属回路を形成した樹脂フィルムの表裏の両面に、さらに樹脂フィルムを積層させた状態を示す模式的な断面図である。
【図10】下地層にめっき層を形成した後の樹脂フィルムを示す模式的な断面図である。
【図11】樹脂フィルムを3層積層した積層体の上下面に、導通ビアを形成した後の状態を示す模式的な断面図である。
【図12】樹脂フィルムを3層積層した積層体の上下面に、下地層を形成した後の状態を示す模式的な断面図である。
【図13】樹脂フィルムを3層積層した積層体の上下面に、めっき層を形成した後の状態を示す模式的な断面図である。
【符号の説明】
【0119】
1 多層積層回路基板、50 金属回路、70 接着性樹脂、100 樹脂フィルム、110 マルチ導通部、120 導通ビア、130 下地層、140 めっき層、170 レジスト、200 回路層、301 リジッド基板、302 Si基板、401 接着金属、402 密着金属。
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層積層回路基板に関し、特に金属回路の断線が生じにくい多層積層回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
我々の身の回りにある製品、たとえば電気製品、電子製品、半導体製品、アンテナ回路基板、ICカード、ロボット等はいずれも場所をとらない小型製品に人気が集中しており、さらに小型化した製品の登場が期待されている。このような製品のニーズに対応するため、製品の外形を小型化するというアプローチと、製品の内部を小型化するというアプローチとの両面から製品の小型化の技術開発が進められてきた。ところが、製品の外形を小型化するというアプローチによる製品の小型化はもはや限界に近いと言われ、製品の内部の小型化に期待が寄せられるようになってきた。
【0003】
このような状況下で、製品の内部を小型化するアプローチとして、製品に用いられる回路基板を軽薄短小な回路構造にするという方法が近年特に注目を集めている。従来の回路基板は、平面に1層または2層の回路を形成し、その回路そのものを微細化することによって回路基板を小型化することが検討されていたが、平面上に形成される回路の微細化だけでは小型化に限界があったため、回路基板を多層化して立体的に回路を形成する多層積層回路基板が検討されるようになってきた。
【0004】
このような多層積層回路基板は、ビルドアップ法により作製されるのが一般的である。ビルドアップ法とは、絶縁性の樹脂フィルム上に形成された導電層をエッチングすることによりそれを部分的に除去して金属回路を形成し、その金属回路上に接着剤を塗布して、さらに導電層が形成された樹脂フィルムを貼り合わせる。その後、貼り合わせた樹脂フィルムの導通部に導通ビアを形成して、当該導通ビアの内部にめっきまたはペースト等を充填する。そして、貼り合わせた樹脂フィルムの導電層をエッチングすることによりそれを部分的に除去して金属回路を形成する。以後、これらの工程を繰り返して、金属回路を多層化させていくという手法である。しかしながら、このビルドアップ法により形成した多層積層回路基板は、それ自体に熱が加わると、金属回路に断線が生じるという問題があった。
【0005】
特許文献1〜6にはこれらの課題を解決するために様々な試みがなされているが、いずれの多層積層回路基板においても上述の問題を十分に解決できるものではなかった。以下に、特許文献1〜6に示される多層積層回路基板の概略を説明する。
【0006】
特許文献1の多層積層回路基板は、2層の樹脂フィルムの金属回路の接続に鉛を含まない低融点のはんだを用いることにより、樹脂フィルム同士の接合強度を高め、金属回路の断線を防止しようとするものである。しかしながら、この多層積層回路基板は熱が加わったときに低融点はんだが再融解してしまい、金属回路が断線してしまう。
【0007】
特許文献2には、表面側の金属回路から裏面側の金属回路まで貫通するように開けられた導通ビアにはんだを充填することによって、フレキシブル基板と補強基板との接合強度を高めて接合し、金属回路の断線を防止することが記載されているが、特許文献1と同様熱が加わったときに金属回路の断線が生じやすかった。
【0008】
特許文献3には、バンプにより樹脂フィルム同士を接合する多層積層回路基板が記載されている。しかしながら、バンプは径を小さくすることが困難であるから、多層積層回路基板の小型化に対応できないという問題があった。
【0009】
特許文献4には、多層積層回路基板の導通ビアに導電性樹脂を充填することによる多層積層回路基板が示されているが、長期間導通させた際の熱により金属回路に断線が生じるという懸念は残されていた。
【0010】
特許文献5には、樹脂フィルムの積層に際して導通ビアに導電性ペーストを充填することによって、表裏の樹脂フィルム同士の接着性を高めているが、導電性ペーストと樹脂フィルムとの密着が十分とはいえなかった。
【0011】
さらに、特許文献6には、樹脂フィルム同士の貼り付けに接着剤を用いることによって、積層した樹脂フィルム同士の位置ズレを防止する多層積層回路基板が記載されているが、位置ズレを防止するだけでは金属回路の断線を十分に防止できるとはいえなかった。
【特許文献1】特開2005−243911号公報
【特許文献2】特開2007−266481号公報
【特許文献3】特開2008−60582号公報
【特許文献4】特開2007−335631号公報
【特許文献5】特開2005−223010号公報
【特許文献6】特開2008−91439号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
以上のように、特許文献1〜6はいずれも樹脂フィルム同士の接着手段または接着材料を改良することにより、金属回路の断線が起こりにくい多層積層回路基板を提供するものであった。
【0013】
しかしながら、いずれの多層積層回路基板も導通部が1つの導通ビアにより形成されたものであることから、それ自体に熱が加わると、樹脂フィルムの熱膨張係数と導通ビア内の金属回路の熱膨張係数とが異なるため、これらの熱膨張の差により導通ビア内の金属回路に圧縮または引張のストレスがかかり、導通ビア内の金属回路が断線してしまうという共通の問題を有していた。
【0014】
また別の問題として、たとえば多層積層回路基板に熱が加わった場合、多層積層回路基板に含まれる複数の樹脂フィルムにおいて熱源からの距離に応じて各樹脂フィルムに膨張差が生じ、多層積層回路基板が歪められ、樹脂フィルムに形成されている導通ビア内の金属回路にストレスがかかり、金属回路が断線してしまうという問題もあった。本発明は、上記のような現状に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、金属回路の断線が生じにくい多層積層回路基板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の多層積層回路基板は、樹脂フィルムと回路層とを交互に積層させた積層構造を含む多層積層回路基板であって、上記樹脂フィルムは、1つ以上のマルチ導通部を有し、上記マルチ導通部は、直径10μm以上3000μm以下の領域を占め、かつ2つ以上の導通ビアを有し、該導通ビアは、5μm以上300μm以下の内径を有することを特徴とする。
【0016】
また、上記の樹脂フィルムの厚みをTとし、上記の導通ビアの内径をdとすると、0<d/T≦60であることが好ましい。
【0017】
また、上記の樹脂フィルムは、長尺状のものを加工して用いることが好ましい。
また、本発明は、多層積層回路基板を用いる部品または製品である。
【0018】
また、上記製品は、電気製品、電子製品、半導体製品、アンテナ回路基板、ICカード、太陽電池、自動車またはロボットのいずれかであることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の多層積層回路基板は、上記の各構成を有することにより、金属回路の断線が生じにくいという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
<多層積層回路基板>
以下、本発明の多層積層回路基板について図1を参照しつつ説明する。図1は、本発明の多層積層回路基板の一例を示す模式的断面図である。なお、本発明の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表わすものとする。
【0021】
本発明の多層積層回路基板1は、図1に示されるように、樹脂フィルム100と回路層200とを交互に積層させた積層構造を含む。なお、図1は樹脂フィルム100を3層積層させた構造を示しているが、本発明における積層構造の最小積層数は、樹脂フィルム100を2層積層させたものである。この場合、回路層200の積層数は2層または3層とすることができる。一方、本発明における積層構造の最多積層数は、特に限定されず、用途に応じて積層させることができるが、通常、樹脂フィルム100を2〜30層程度積層させたものが一般的である。
【0022】
ここで、本発明の多層積層回路基板1の樹脂フィルム100は、1つ以上のマルチ導通部110を有し、該マルチ導通部110には樹脂フィルムの表裏を貫通する2つ以上の導通ビア120を設けることを特徴とする。このように樹脂フィルム100の表裏を貫通する導通ビア120を2つ以上設けることにより、金属回路の断線を生じにくくすることができる。以下に本発明の多層積層回路基板に含まれる各構成部を説明する。
【0023】
<樹脂フィルム>
本発明の多層積層回路基板には、2層以上の樹脂フィルムが含まれる。そして、それらの樹脂フィルムは、絶縁性の材料からなり、この種の用途に用いられる従来公知の樹脂フィルムをいずれも用いることができる。このような樹脂フィルムとして、たとえばポリイミド(PI)系、アクリル系、液晶ポリマ(LCP)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等の樹脂フィルムを用いることができる。
【0024】
そのような樹脂フィルム100は、長尺状のものを加工して用いることが好ましい。そのような長尺状の樹脂フィルムとしては、たとえば、1〜10000m程度の長さを有するものが好ましく、100〜3000m程度のものがより好ましい。長尺状のものを用いることにより連続加工することができ、生産効率を向上させることができる。1m未満では、ロール状に巻いた形状のものとして用いることが困難であり加工効率が低下するため好ましくなく、10000mを超えると、後述の下地層の形成において連続加工を妨げられる虞があるため好ましくない。
【0025】
なお、樹脂フィルムが「長尺状のもの」とは上記のような長さを有し、ロール状に巻いた形状のものとして用いるのに適したものをいうが、上記のような長さに満たないものであっても、複数の枚葉の樹脂フィルムを貼り合わせることにより、長尺状のものとして取り扱えるようにしたものも含むものとする。
【0026】
また、樹脂フィルム100の厚みは、3μm以上200μm以下であることが好ましい。樹脂フィルム100の厚みが3μmよりも薄いと作業性が悪くなりすぎるため好ましくなく、200μmよりも厚くなると、導通ビア120が加工しにくくなるため好ましくない。
【0027】
<回路層>
本発明の樹脂フィルム100上に形成される回路層200には金属回路50が含まれる。また、回路層200の金属回路50以外の部分は、絶縁性の接着性樹脂70が充填されていてもよく、この接着性樹脂70を介して樹脂フィルム100同士を相互に貼り付けることができる。このように本発明の回路層200は、金属回路50のみによって構成されていてもよいし、金属回路50と接着性樹脂70とにより構成されていてもよい。
【0028】
<金属回路>
金属回路50は、めっき層140を含み、さらにこのめっき層140と樹脂フィルム100との間に下地層130を含むこともできる。なお、本発明においては導通ビア120内に形成される下地層130およびめっき層140も便宜的に金属回路50と呼ぶ場合がある。
【0029】
ここで、下地層130はめっき層140と樹脂フィルム100との密着性を向上させる作用をなすものであり、1層で形成してもよいし、2層以上で形成してもよい。下地層130が2層以上で形成される場合は、酸化防止層と下地金属層とを含むことが好ましい。このような下地層は、どのような方法で形成してもよいが、たとえば無電解めっき、蒸着、スパッタ等により形成することができる。特に正確に膜厚を制御するという観点からスパッタにより形成することが好ましい。
【0030】
この酸化防止層は、Ni、Cr、Ti、CoおよびSiからなる群より選択された少なくとも1種の金属または該金属を少なくとも1種含む合金により構成することが好ましく、その層厚は、2〜20nmとすることが好ましい。
【0031】
また、下地金属層は、酸化防止層上に形成されることが好ましく、Cu、Au、Ag、Sn、Ni、BiおよびZnからなる群より選択された少なくとも1種の金属または該金属を少なくとも1種含む合金により構成することが好ましい。また、下地金属層の層厚は、50〜500nm程度とすることが好ましい。
【0032】
また、上記めっき層140は、電気めっきにより形成される層であり、Cu、Au、Ag、Sn、Ni、BiおよびZnからなる群より選択された少なくとも1種の金属または該金属を少なくとも1種含む合金により構成することが好ましく、CuまたはCuを含む合金により構成することがより好ましい。なお、前述の下地金属層を形成する場合、下地金属層とめっき層140とは同一の材料を用いることが好ましい。
【0033】
<接着性樹脂>
接着性樹脂70は、多層積層回路基板に用いられる樹脂フィルム100同士を相互に貼り付けることができるものであれば、どのようなものを用いてもよく、たとえば、エポキシ系の樹脂、アクリル系の樹脂およびポリイミド系の樹脂等を用いることができる。
【0034】
<マルチ導通部>
本発明の多層積層回路基板1を構成する各樹脂フィルム100は、1つ以上のマルチ導通部110を有し、このマルチ導通部には、2つ以上の導通ビア120が設けられる。ここで、マルチ導通部とは、金属回路の構成上、当該樹脂フィルムの表裏の両面の金属回路の導通が所望される部位に形成されるものであって、樹脂フィルムの表裏を貫通する導通ビアが2つ以上形成されることにより表裏の導通を保障するものである。
【0035】
そして、当該マルチ導通部は、所望の部位に近接連関して形成された複数の導通ビアの全てを含み、その断面積が最小となる円柱状領域のことをいい、当該断面積は樹脂フィルム上において直径10μm以上3000μm以下の領域を占めることが好ましい。すなわち、たとえば図2に示されるように、近接連関する導通ビア120が3つある場合、この3つの導通ビアの全てを含み、かつ円柱状領域の断面の面積が最小となる領域のことをマルチ導通部110という。
【0036】
このマルチ導通部の直径は、上述の通り10μm以上3000μm以下であることが好ましい。マルチ導通部の直径が10μm未満では、樹脂フィルムの表裏に形成される金属回路の導通を十分に保障できない場合があり、また、3000μmを超えると、金属回路の占める面積そのものが過大となり所期の目的に反することとなる。
【0037】
このようにマルチ導通部に2つ以上の導通ビアを設けることによって、熱の適用時に樹脂フィルムと導通ビア内の金属回路との熱膨張係数の差に起因して導通ビア内の金属回路にかかる圧縮または引張のストレスをこれらの各導通ビアに分散することができ、金属回路の断線を抑制することができる。
【0038】
しかも、このように2つ以上の導通ビアを設けていれば、たとえ1つの導通ビアで金属回路の断線が生じても、他の導通ビアにより導通が保たれているので、樹脂フィルムの表裏に形成された金属回路が完全に断線されないという効果もある。
【0039】
さらに、従来技術のように導通ビアを1つだけ形成する場合に比し、導通ビアの内径を小さくすることができることから、導通ビア内の金属回路にかかる圧縮または引張のストレスの影響を一層低減できるという効果もある。本発明は、これらの作用の相乗効果によって、金属回路の断線を飛躍的に抑制することができる。
【0040】
<導通ビア>
本発明のマルチ導通部110に含まれる導通ビア120は、樹脂フィルム100の表裏を貫通するように設けられる孔であり、この導通ビア内に金属回路を形成することにより樹脂フィルム100の表裏の金属回路を導通することができる。
【0041】
ここで、導通ビア内に金属回路を形成するとは、導通ビアの内壁面に金属回路を形成することをいい、このように形成される金属回路は、導通ビアの全体を充填するように形成されていてもよいし、スルホール状に導通ビア内に空洞が残るように形成されていてもよい。
【0042】
また、この導通ビアは、樹脂フィルムの表裏の金属回路の導通を保障するという観点からその内径を大きくすることが好ましいが、その内径を大きくするほど前述のように熱が加わったときに導通ビア内の金属回路にかかる圧縮または引張のストレスが集中するため、金属回路の断線が生じやすくなる。
【0043】
したがって、導通ビアは、5μm以上300μm以下の内径であることが好ましく、10μm以上50μm以下の内径であることがより好ましく、15μm以上20μm以下の内径であることがさらに好ましい。また、熱が加わったときの導通ビアの切断を防止するという観点から、その断面は、0.2mm2以下であることが好ましい。
【0044】
導通ビアの内径が300μmよりも大きいと、上述の理由により導通ビア内の金属回路が断線されやすくなるため好ましくない。また、導通ビアの内径が5μmより小さいと導通ビアの加工が困難となるばかりか、導通ビアにめっき層を形成させるべく電気めっきをする際にめっき液が導通ビア内に浸入しにくくなることからも好ましくない。
【0045】
また、導通ビア120を形成する個数は、マルチ導通部1箇所に対し2〜7個程度を形成することが好ましく、3〜5個程度を形成することがより好ましい。これに対し、前述の通り、1つの導通部に対し1つの導通ビアのみを形成すると、前述の理由から金属回路の断線が起こりやすくなるため好ましくない。また、導通ビアを8個以上形成すると、マルチ導通部の面積が広くなりすぎるという点で好ましくなく、導通ビアの加工時間が長くなりコストが高くなってしまうという点からも好ましくない。
【0046】
導通ビアの内径とマルチ導通部に含まれる導通ビアの個数との関係は、たとえば導通ビアの内径が5μm以上50μm未満の場合2〜7個の導通ビアを形成することが好ましく、導通ビアの内径が50μm以上300μm以下の場合2個または3個の導通ビアを形成することが好ましい。
【0047】
ただし、導通ビアの大きさが構造上やむをえず大きくならざるを得ない場合等にあっては、その部位に限ってマルチ導通部の代わりに従来のように導通ビア1つで導通部を形成してもよい。しかし、熱のストレスによる金属回路の断線を避けるという観点からすれば、1つのマルチ導通部に対し上述の範囲内で可能な限り多くの導通ビアを設けることが好ましいことは言うまでもない。
【0048】
また、上記の樹脂フィルムの厚みをTとし、上記の導通ビアの内径をdとすると、0<d/T≦60であることが好ましく、0.01≦d/T≦6であることがより好ましく、0.3≦d/T≦2であることがさらに好ましい。このようにd/Tの値を特定の数値範囲内に制御することにより、熱のストレスによる導通ビア内の金属回路の断線を極めて有効に防止することができる。なお、d/Tの値が60よりも大きくなると、樹脂フィルムの厚みに対して導通ビアの内径が大きすぎるため、熱が加わったときに導通ビア内の金属回路にかかる圧縮または引張のストレスが大きくなりすぎて、導通ビア内の金属回路が断線しやすくなるため好ましくない。
【0049】
<樹脂フィルムの熱膨張係数>
本発明の多層積層回路基板に用いられる樹脂フィルムの熱膨張係数は、1ppm/℃以上300ppm/℃以下が好ましく、2ppm/℃以上200ppm/℃以下がより好ましく、3ppm/℃以上150ppm/℃以下がさらに好ましい。樹脂フィルムの熱膨張係数が1ppm/℃より小さくなると、樹脂フィルムがもろくなってしまうため好ましくなく、300ppm/℃より大きくなると、熱が加わったときの樹脂フィルムの膨張により、多層積層回路基板が歪められ、導通ビア内の金属回路にストレスがかかってしまい、金属回路に断線が生じやすくなるため好ましくない。ここで、本発明において、熱膨張係数とは、樹脂フィルムの幅方向に対する垂直方向(すなわち、長手方向)の熱膨張係数をいうものとする。
【0050】
なお、多層積層回路基板の歪みやすい部分には、熱膨張係数が大きい樹脂フィルムを用いることが好ましく、樹脂フィルムの厚みは厚くすることが好ましい。
【0051】
また、本発明の多層積層回路基板に含まれる樹脂フィルムのうち、いずれか1層の樹脂フィルムの熱膨張係数は、他の少なくとも1層の樹脂フィルムの熱膨張係数と異なることが好ましい。このように少なくとも1層の樹脂フィルムに他の樹脂フィルムと異なった熱膨張係数を有するものを用いることにより、これらの樹脂フィルム間において熱源からの距離に応じて生じる膨張差を緩和することができ、以って導通ビア内の金属回路の断線を抑制することができる。
【0052】
<多層積層回路基板の使用態様>
本発明の多層積層回路基板は、たとえば図3に示されるように、多層積層回路基板の最下面の金属回路50とリジッド基板301とが、接着金属401により貼り付けられ、多層積層回路基板の最上面の金属回路50とSi基板302とが、密着金属402により貼り付けられる構成として用いることができる。この場合、接着金属401と密着金属402とはいずれもはんだにより形成されることが好ましいが、密着金属402に関しては、はんだによる形成に限られるものではなく、ボンディングまたはスタットピンとバンプとの組み合わせによって形成してもよい。また、Si基板302にはリジッド基板または銅基板を用いてもよく、リジッド基板301にはSi基板または銅基板を用いてもよい。また、熱が加わったときのこれらの切断を防止するという観点から、接着金属401および密着金属402の断面は、0.2mm2以下であることが好ましい。
【0053】
このような多層積層回路基板の使用態様の場合、最上層のSi基板302は熱膨張係数が小さく、最下層のリジッド基板301は熱膨張係数が大きいので、これらの間に積層される樹脂フィルムの熱膨張係数は、Si基板302側の樹脂フィルムほど熱膨張係数が小さく、リジッド基板301側の樹脂フィルムほど熱膨張係数が大きくなるように、樹脂フィルムを選定することが好ましい。
【0054】
より具体的には、Si基板302の近くに積層される樹脂フィルムの熱膨張係数は、2ppm/℃以上10ppm/℃以下が好ましく、3ppm/℃以上5ppm/℃以下がより好ましい。熱膨張係数が2ppm/℃よりも小さいと、多層積層回路基板がもろくなりすぎて扱いにくくなるため好ましくなく、熱膨張係数が10ppm/℃よりも大きくなると、Si基板302の熱膨張係数と樹脂フィルムの熱膨張係数との差が大きくなりすぎて多層積層回路基板に歪みが生じ、導通ビア内の金属回路に断線が生じやすくなるため好ましくない。
【0055】
また、リジッド基板301の近くに積層される樹脂フィルムの熱膨張係数は、リジッド基板301の熱膨張係数に近い材料を用いることが好ましい。また、リジッド基板が屈曲している場合には、この屈曲に対応できる樹脂フィルムを用いることが好ましい。また、上記のSi基板またはリジッド基板のいずれか一方もしくは両方に、銅基板を用いる場合、銅基板の近くに積層される樹脂フィルムの熱膨張係数は、銅基板の熱膨張係数(16.8ppm/℃)に近い材料を用いることが好ましく、その値は10ppm/℃以上20ppm/℃以下であることが好ましく、15ppm/℃以上18ppm/℃以下であることがより好ましい。
【0056】
<部品または製品>
本発明の多層積層回路基板は、一般的な部品または製品に用いられる。この製品には、たとえば電気製品、電子製品、半導体製品、アンテナ回路基板、ICカード、太陽電池、自動車またはロボット等を挙げることができる。
【0057】
<多層積層回路基板の製造方法>
本発明の多層積層回路基板の製造は、まず樹脂フィルム100の各マルチ導通部に表裏を貫通するような2つ以上の導通ビア120を形成した後、樹脂フィルム100の表面全体(導通ビアの内壁面を含む)に亘って下地層130を形成し、その上に電気めっきによりめっき層140を形成する。
【0058】
その後、下地層130とめっき層140との一部を除去して金属回路50を形成し、接着性樹脂70によって別の樹脂フィルム100を貼り付ける。続いて、この新たに貼り付けられた樹脂フィルム100のマルチ導通部の位置に2つ以上の導通ビアを形成し、その後上記と同様にして金属回路を形成する。以上の操作を長尺状の樹脂フィルムを用いて連続的に繰り返し行なうことにより本発明の多層積層回路基板は製造される。
【0059】
上述のように金属回路50を電気めっきで形成されるめっき層により構成すれば、導通ビア内の金属回路に断線が生じにくく、しかも樹脂フィルムを多層化してもコストの向上を抑制できるため好ましい。
【0060】
なお、本発明の多層積層回路基板1の金属回路50は、たとえばエッチング法とセミアディティブ法のいずれの方法により形成してもよい。エッチング法は、樹脂フィルムの表面(導通ビアの内壁面を含む)の全面に電気めっきによりめっき層を形成し、その後不要な部分となるめっき層と下地層とをエッチングにより除去することにより金属回路を形成する方法である。
【0061】
一方、セミアディティブ法は、樹脂フィルムの表面(導通ビアの内壁面を含む)上の回路とならない部分に対してレジストによりマスキングした後、電気めっきにより必要な厚みのめっき層を形成し、その後レジストを剥離して金属回路を形成する方法である。
【0062】
以下においては、金属回路の形成方法としてセミアディティブ法を例にとり多層積層回路基板の製造方法を説明する。当該製造方法は、導通ビア形成工程、下地層形成工程、レジスト形成工程、露光工程、現像工程、活性化工程、めっき層形成工程、レジスト剥離工程、ソフトエッチング工程および樹脂フィルム積層工程をこの順に繰り返すことによって多層積層回路基板を製造する方法である。これらの工程を以下に説明する。
【0063】
<導通ビア形成工程>
まず、樹脂フィルム100に対して、マルチ導通部を形成するように3つの導通ビア120を形成する(図4)。ここで、導通ビアの深さと樹脂フィルムの厚みとが等しくなるように導通ビアの形成を調節できる装置であればどのような装置でもよいが、小径かつ低コストで導通ビアを形成できるという観点から、UV−YAGレーザを用いることが好ましい。
【0064】
<下地層形成工程>
次に、イオンガンにより樹脂フィルム100の表面(導通ビアの内壁面を含む)を前処理した後、樹脂フィルム100の表面(導通ビアの内壁面を含む)に酸化防止層を形成し、酸化防止層上にさらに下地金属層を形成することにより下地層130を形成することができる(図5)。下地層130に含まれる酸化防止層と下地金属層とは、たとえば無電解めっき、蒸着、スパッタ等により形成することができる。なお、酸化防止層または下地金属層のいずれか一方もしくは両方は形成されない場合もある。
【0065】
<レジスト形成工程>
上記工程によって、樹脂フィルム100上に形成した下地層130の表面を酸で洗浄し、下地層130に含まれる下地金属層の表面を活性化させた後レジストを形成する(図示せず)。このレジストは、レジストをフィルム化したドライフィルムを貼り合わせる方法により形成してもよいし、レジストインクを塗布する方法により形成してもよい。
【0066】
ドライフィルムを貼り合わせる方法は、少量生産に適していることから多品種の製品に対応することができ、しかも貼り合わせ作業の工程も煩雑でないという点で優れているが、製造コストが高くなるという問題を有する。
【0067】
一方、レジストインクを塗布する方法は、大量生産に適していることから製造コストを低減することができる点で優れているが、塗布の工程が煩雑になるという問題を有する。以下においては、ドライフィルムを貼り合わせる方法によるレジストの形成を説明する。
【0068】
まず、図5に示される下地層130の形成された樹脂フィルム100をラミネート巻取装置の送出シャフトにセットし、樹脂フィルム100の先端を巻取シャフトにセットした上で、樹脂フィルム100の下地層130上にドライフィルムを貼り付けながら巻取シャフトを回転させて巻き取りを行なう。このようにして樹脂フィルム100にドライフィルムが貼り付けられ、樹脂フィルムの下地層上にレジストが形成される(図示せず)。
【0069】
上述のラミネート時の温度は、30〜150℃であることが好ましく、60〜110℃であることがより好ましい。また、ラミネート時の圧力は、0.3〜5kg/cm2であることが好ましく、2〜3kg/cm2であることがより好ましい。また、ラミネートした樹脂フィルムの巻取時のラインスピードは、0.1〜10m/分であることが好ましく、0.5〜3m/分であることがより好ましい。
【0070】
<露光工程>
次に、上記でレジストを形成した樹脂フィルム上に、所望の金属回路のパターンに対応したマスクを重ね合わせた後、UV露光しマスクで覆われていない部分を感光させる。ここでマスクで覆われていた部分は、次の現像工程で除去され、後述するめっき層形成工程においてめっき層が形成されることにより金属回路が形成される。
【0071】
この露光に用いられる露光装置は、平行光露光装置を用いてもよいし、ダイレクト露光装置を用いてもよい。しかし、微細回路を形成するという観点からは平行光露光装置を用いることが好ましく、樹脂フィルムの収縮に対応して露光する位置を調整することができるという観点からはダイレクト露光装置を用いることが好ましい。
【0072】
<現像工程>
次に、上述の露光工程のマスクで覆われた部分のレジスト170を弱アルカリ溶液により現像する。これにより図6に示すようなレジスト170を形成した樹脂フィルム100を得ることができる。現像に用いられる弱アルカリ溶液は、炭酸ソーダまたはアミン系の材料を用いることが好ましい。また、弱アルカリ溶液のpHは7以上13以下であることが好ましく、8.5以上10.0以下であることがより好ましい。弱アルカリ溶液のpHが7より小さいとレジストが除去されないため好ましくなく、pHが13より高いと、上記露光工程においてマスクで覆われていない部分のレジスト170も全て剥離されてしまうため好ましくない。
【0073】
また、弱アルカリ溶液の温度は10〜70℃であることが好ましく、20〜35℃であることがより好ましい。弱アルカリ溶液の温度が10℃より低いとレジスト170が除去されないため好ましくなく、弱アルカリ溶液の温度が70℃より高いと、UV露光した部分のレジスト170も剥離するため好ましくない。なお、現像の処理時間はレジストの種類により異なるため、一律に規定することはできないが、通常20秒以上300秒以下程度とすることが好ましい。
【0074】
<活性化工程>
次に、現像した後の樹脂フィルム100上の下地層130(下地金属層)の表面を酸系の溶液で活性化する。これにより、めっき層と下地層(下地金属層)との密着不良を防止することができる。この活性化に用いられる酸系の溶液は、酸性を示すものであればどのようなものでもよいが、低コストで活性化できるという観点から、HCl、H2SO4、過硫酸アンモニウム等を用いることが好ましい。
【0075】
また、酸系の溶液に含まれる酸の濃度は、0.5〜20質量%であることが好ましく、3〜10質量%であることがより好ましい。酸系の溶液の濃度が0.5質量%よりも低いと下地層(下地金属層)の表面が活性化されにくいため好ましくなく、酸系の溶液の濃度が20質量%よりも高いと下地層(下地金属層)の表面に異常が発生する虞があるため好ましくない。
【0076】
また、活性化するときの酸系の溶液の温度は10〜70℃であることが好ましく、30〜50℃であることがより好ましい。酸系の溶液の温度を10℃より低くすると下地層の活性化に時間がかかりすぎるため好ましくなく、酸系の溶液の温度を70℃よりも高くすると環境面での問題が生じることから好ましくない。また、処理時間は下地層(下地金属層)の表面状態により異なるため、一律に規定することはできないが、通常3秒以上300秒以下程度とすることが好ましい。
【0077】
<めっき層形成工程>
次に、上記で活性化した下地層130上に電気めっきすることによって、図7に示すようなめっき層140を形成する。この電気めっきに用いられるめっき液は、めっき層を形成する金属を含む酸性の溶液であればどのようなものでもよいが、めっき液自体が安定であり、かつ低コストでめっきできるという観点から硫酸銅、ピロリン酸銅等を用いることが好ましい。なお、めっき液に硫酸銅を用いる場合、硫酸銅の濃度は30〜300g/lであることが好ましく、70〜150g/lであることがより好ましい。また、このめっき液の塩素イオン濃度は10〜100ppmであることが好ましく、40〜70ppmであることがより好ましい。
【0078】
また、めっき液に用いられる酸性の溶液としては硫酸を用いることが好ましく、硫酸を用いる場合、硫酸の濃度は50〜300g/lであることが好ましく、80〜200g/lであることがより好ましい。
【0079】
また、電気めっきするときの電流密度は、0.1〜10A/dm2であることが好ましく、0.5〜4A/dm2であることがより好ましい。また、電気めっきするときのめっき液の温度は20〜60℃が好ましく、30〜40℃がより好ましい。なお、めっき時間についてはめっき層の層厚により異なるため一律に規定することはできないが、通常600秒以上6000秒以下程度とすることが好ましい。
【0080】
<レジスト剥離工程>
次に、上述のめっき層形成工程により金属回路を形成した後にアルカリ液を用いてレジスト剥離を行なう。レジスト剥離に用いられるアルカリ液は、アルカリ性を示す溶液であればどのようなものでもよいが、アルカリ液自体の安定性やアルカリ液のコストの観点から、水酸化ナトリウムやアルコール系のものを用いることが好ましい。
【0081】
また、アルカリ液に水酸化ナトリウムを用いる場合、水酸化ナトリウムの濃度は0.1〜50質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることがより好ましい。また、レジスト剥離に用いられるアルカリ液の温度は30〜90℃であることが好ましく、50〜70℃であることがより好ましい。なお、レジスト剥離の処理時間は、レジストの剥離状態により異なるため、一律に規定することはできないが、通常20秒以上120秒以下程度とすることが好ましい。
【0082】
<ソフトエッチング工程>
次に、下地層130をソフトエッチングにより剥離除去することによって、図8に示すような金属回路50が形成された樹脂フィルムが得られる。下地層に含まれる下地金属層の剥離に用いられる薬品は、どのようなものを用いてもよいが、低コストであるという観点から過硫酸アンモニウムを用いることが好ましい。この過硫酸アンモニウムを用いる場合、過硫酸アンモニウムの濃度は1〜20%であることが好ましく、5〜10%であることがより好ましい。
【0083】
また、下地金属層をソフトエッチングするときの処理温度は、20〜60℃であることが好ましく、30〜40℃であることがより好ましい。なお、このソフトエッチングの剥離にかける時間は、下地金属層の厚みや薬品の濃度および温度により異なるため、一律に規定することはできないが、通常30秒以上200秒以下程度とすることが好ましい。
【0084】
また、酸化防止層の剥離に用いられる薬品としては、ニッケルクロム剥離液(商品名:NC(日本化学工業株式会社製))を用いることが好ましい。また、この薬品を用いる場合、この薬品の濃度は60〜100%であることが好ましい。この薬品の濃度が60%より低いと剥離時間がかかるため好ましくない。
【0085】
また、酸化防止層をソフトエッチングするときの処理温度は、35〜55℃であることが好ましい。なお、このソフトエッチングの剥離にかける時間は酸化防止層の厚みや薬品の濃度および温度により異なるため、一律に規定することはできないが、通常20秒以上300秒以下程度とすることが好ましい。
【0086】
<樹脂フィルム積層工程>
次に、上述のようにして得られた回路付樹脂フィルム(金属回路が形成された樹脂フィルム)の表裏いずれか一方もしくは両方の面に対して、別の樹脂フィルムを積層する方法としては、接着性樹脂70の付いた樹脂フィルムをラミネートにより回路付樹脂フィルムの片面に貼り合わせる方法、および回路付樹脂フィルムの金属回路形成面に対し接着性樹脂70を塗布してから金属回路が未だ形成されていない樹脂フィルムをラミネートにより貼り合わせる方法等があり、いずれの方法によっても図9に示すように樹脂フィルムを積層することができる。
【0087】
なお、後者の樹脂フィルムの積層方法によれば、金属回路の厚みが厚い場合に金属回路による樹脂フィルムの表面凹凸を少なくすることができることから、より接合強度を高めることができるというメリットがある。
【0088】
また、上述の回路付樹脂フィルムの表裏のいずれかの面もしくは両面に対して、別の樹脂フィルム100を積層するときの温度は、30〜300℃であることが好ましく、積層にかける圧力は0.1〜20kg/cm2であることが好ましい。また、この樹脂フィルムの積層にかける時間は、1秒以上3時間以下であることが好ましい。
【0089】
そして、その後導通ビア形成工程を行なうというように、上記で説明した各工程を繰り返すことによって、図1に示されるような本発明の多層積層回路基板を製造することができる。以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0090】
<実施例1>
実施例1では、金属回路の形成方法としてエッチング法を採用し、以下の各工程により多層積層回路基板を作製した。
【0091】
<導通ビア形成工程>
多層積層回路基板に用いられる樹脂フィルム100として、ロール状に巻かれた長尺状のポリイミドフィルム(長さ50m、厚さ38μm、商品名:カプトンEN150(東レ・デュポン株式会社製))を用いた。この樹脂フィルムの熱膨張係数は、16ppm/℃以上17ppm/℃以下であり、250mm幅でスリット加工されたものを用いた。この樹脂フィルム100をUV−YAGレーザ装置にセットし、UV−YAGレーザ装置のプログラムを設定して1つのマルチ導通部に対し、15μmの内径の導通ビア120を3箇所形成した(図4)。
【0092】
<洗浄工程>
上記で導通ビア120が形成された樹脂フィルム100を洗浄装置にセットし、下地層の形成工程においてピンホールが発生することを抑制するために樹脂フィルム100の表面を洗浄した。
【0093】
<下地層形成工程>
次に、上記で表面を洗浄した樹脂フィルム100をスパッタ装置に投入し、真空ポンプにより1×10-3Paの圧力に設定した上で、イオンガンにN2ガスを注入して、それを照射することによって樹脂フィルムの表面を前処理した。その後、スパッタリング法によりAr雰囲気下でNiとCrとの合金(NiとCrとの重量比がNi:Cr=80:20)からなる酸化防止層を樹脂フィルム上に形成し、その上にCuからなる下地金属層を形成することにより下地層130を形成した(図5)。
【0094】
そして、スパッタ装置の真空状態を解除して下地層130が形成された樹脂フィルム100を取り出し、樹脂フィルム100の一部をサンプリングした。そして、そのサンプルに対して集束イオンビーム(FIB:Focused Ion Beam)を照射することにより、断面を観察した。その結果、酸化防止層は厚さ10nmであり、下地金属層は厚さ350nmであることを確認した。さらに導通ビア120内にもこれらの下地層130が形成されていることを確認した。
【0095】
<めっき層形成工程>
次に、下地層が形成された樹脂フィルム100を銅めっき装置にセットし、硫酸により下地層を活性化させた後に水洗した。その後、めっき液(硫酸200g/l、硫酸銅90g/l、塩素イオン濃度50ppmからなるもの)を充填しためっき浴に当該樹脂フィルムを浸漬することにより、下地層130上に銅めっきを行ない、再度水洗して乾燥させ、樹脂フィルム100の表面にめっき層140を形成した(図10)。このようにして得られた樹脂フィルムの一部をサンプリングした。そして、そのサンプルに対してFIBを照射することにより、断面を観察したところ、下地層130とめっき層140とを含む合計の厚さが18.5μmであった。
【0096】
<金属回路形成工程>
次に、上記のようにしてめっき層140を形成した樹脂フィルム100の表裏の両面に対して、250mm幅のスリット加工されたドライフィルム(商品名:NIT215(ニチゴー・モートン株式会社製))をラミネートし、金属回路のパターンのマスクを重ね合わせた後、それをロール式の露光装置にセットして露光を行なった。
【0097】
その後、現像とエッチングとレジスト剥離とを連続して行なうことができるロール式のエッチング装置に樹脂フィルム100をセットしてエッチング処理を行ない、金属回路50を形成した(図8)。この樹脂フィルムをサンプリングし、100倍の倍率の顕微鏡で金属回路50の断線、ショート等の検査を行なった。その結果、図8で示される金属回路50に断線、ショート等の不良は観察されなかった。
【0098】
<樹脂フィルム積層工程>
次に、上記のようにして金属回路を形成した樹脂フィルム100の表裏の両面に、接着性樹脂70が塗布された厚さ38μmのポリイミドフィルム(カプトンEN150(東レ・デュポン株式会社製))を貼付け、3層の樹脂フィルム100と2層の回路層200とからなる積層体を得た(図9)。
【0099】
この積層体の上下の樹脂フィルム100の全面を5倍の拡大鏡を用いてシワ、エアー噛み等の検査を行なった。その結果、この積層体の上下の樹脂フィルムにシワ、エアー噛み等の不良は観察されなかった。
【0100】
<導通ビア形成工程−2>
次に、上述した導通ビア形成工程と同様の方法を用いることによって、上記で得られた積層体の上下の樹脂フィルム100に対し、各マルチ導通部に3つの導通ビア120を形成した(図11)。その後、上記で導通ビアが形成された積層体の上下の樹脂フィルム100の表面を洗浄した。
【0101】
<下地層形成工程−2>
次に、上記で得られた積層体をスパッタ装置にセットし、上述した下地層形成工程と同一の条件および方法によって、この積層体の上下の樹脂フィルム100の表面にNi−Crからなる酸化防止層と、Cuからなる下地金属層とを含む下地層130をスパッタリング法により形成した(図12)。
【0102】
そして、上記の下地層を形成した積層体の一部をサンプリングした。そして、そのサンプルに対してFIBを照射することにより断面を観察した。その結果、酸化防止層は厚さ10nmであり、下地金属層は厚さ350nmであることを確認した。
【0103】
<めっき層形成工程−2>
次に、Cuめっき装置に上記で得られた下地層を形成した積層体をセットして、上述のめっき層形成工程と同一の条件により上記で形成した下地層の全面にめっき層140を形成した(図13)。その後、この積層体の一部をサンプリングしてFIBを照射して断面を観察した。その結果、この積層体の上下の樹脂フィルム100上のめっき層140と下地層130との合計の厚さはいずれも18.5μmであることを確認した。
【0104】
<金属回路形成工程−2>
次に、上記で得られためっき層を形成した積層体の上下の樹脂フィルム100に対して、ドライフィルム(商品名:NIT215(ニチゴー・モートン株式会社製))をラミネートし、次にロール式の露光装置にそれをセットして露光を行なった。
【0105】
その後、現像とエッチングとレジスト剥離とを連続して行ない、この積層体の上下の樹脂フィルム100の表面に金属回路50を形成した(図1)。以上により本発明の多層積層回路基板を作製した。
【0106】
そして、これをサンプリングし、このサンプルを100倍の顕微鏡を用いて金属回路の断線、ショート等の検査を行なった。その結果、この多層積層回路基板の金属回路に断線、ショート等の不良は観察されなかった。
【0107】
<実施例2〜12>
実施例2〜12の多層積層回路基板は、実施例1の多層積層回路基板に対して、マルチ導通部一箇所の導通ビアの個数と導通ビアの内径とが以下の表1に示すように異なることを除き、実施例1と同様の方法により作製した。たとえば、表1中の実施例3は、マルチ導通部1箇所に対し実施例1で形成した導通ビアと同様の導通ビアを5つ形成したことを示し、実施例5は、マルチ導通部一箇所に対し内径が50μmの導通ビアを3つ形成したことを示す。
【0108】
<比較例1〜3>
比較例1〜3の多層積層回路基板は、マルチ導通部を形成せず、1つの導通部に対し1つの導通ビアを形成したことを除き、その他は実施例1と同様の方法により作製した(表1参照)。たとえば表1中の比較例1では内径15μmの導通ビアを、比較例2では内径50μmの導通ビアを、比較例3では内径300μmの導通ビアを各導通部当たり1つずつ形成したことを示す。
【0109】
【表1】
【0110】
<導通検査>
実施例1〜12および比較例1〜3の多層積層回路基板に対し、LCRメータ(品番:NDH−2000(カスタム株式会社製))を用いて、多層積層回路基板の端子両端での導通検査を行なった。その結果、実施例1〜12および比較例1〜3のいずれの多層積層回路基板においても導通の異常は観察されなかった。
【0111】
実施例1〜12および比較例1〜3の多層積層回路基板の金属回路は、およそ200個のマルチ導通部(比較例においては導通部)が設けられているが、そのうちのマルチ導通部(比較例においては導通部)の1箇所でも断線が生じていれば、導通の異常が計測されることから、多層積層回路基板を作製した段階では、金属回路は断線していないことが明らかとなった。
【0112】
<温度変化サイクル試験>
実施例1〜12および比較例1〜3の多層積層回路基板に対し、サイクル試験機(型式:TSA−41L−A(ESPEC株式会社製))を用いて、2つの異なる設定温度を一定時間間隔で交互に繰り返して保持する温度変化サイクル試験を行なった。具体的には、−40℃で30分間保持した後、120℃で30分間保持することを1サイクルとし、500サイクルごとに導通検査を行なった。回路内に含まれている複数のマルチ導通部のうち、1箇所でも導通不良が起きた時点でサイクル試験を終了することとし、3000サイクルまで行なった。
【0113】
実施例1〜12の多層積層回路基板は、3000サイクル終了時においても導通不良は認められなかった。これに対し、比較例1の多層積層回路基板は、2000サイクル終了時に、比較例2の多層積層回路基板は1500サイクル終了時に、比較例3の多層積層回路基板は1000サイクル終了時に導通不良が確認された。
【0114】
上記の結果から、実施例1〜12の多層積層回路基板は、比較例1〜3の多層積層回路基板に比べて、熱が加わったときの金属回路の断線が格段に生じにくいことが明らかとなった。これは、実施例1〜12の多層積層回路基板にマルチ導通部を設けたことによることは明らかである。
【0115】
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の実施の形態および実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
【0116】
今回開示された実施の形態および実施例は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明によれば、金属回路の断線が生じにくい多層積層回路基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】本発明の多層積層回路基板の一例を示す模式的な断面図である。
【図2】図1のマルチ導通部の上面からの拡大平面図である。
【図3】本発明の多層積層回路基板の使用態様の一例を示す模式的な断面図である。
【図4】マルチ導通部を形成した後の樹脂フィルムを示す模式的な断面図である。
【図5】下地層を形成した後の樹脂フィルムを示す模式的な断面図である。
【図6】レジストを現像した後の樹脂フィルムを示す模式的な断面図である。
【図7】めっき層を形成した後の樹脂フィルムを示す模式的な断面図である。
【図8】ソフトエッチングした後の樹脂フィルムを示す模式的な断面図である。
【図9】金属回路を形成した樹脂フィルムの表裏の両面に、さらに樹脂フィルムを積層させた状態を示す模式的な断面図である。
【図10】下地層にめっき層を形成した後の樹脂フィルムを示す模式的な断面図である。
【図11】樹脂フィルムを3層積層した積層体の上下面に、導通ビアを形成した後の状態を示す模式的な断面図である。
【図12】樹脂フィルムを3層積層した積層体の上下面に、下地層を形成した後の状態を示す模式的な断面図である。
【図13】樹脂フィルムを3層積層した積層体の上下面に、めっき層を形成した後の状態を示す模式的な断面図である。
【符号の説明】
【0119】
1 多層積層回路基板、50 金属回路、70 接着性樹脂、100 樹脂フィルム、110 マルチ導通部、120 導通ビア、130 下地層、140 めっき層、170 レジスト、200 回路層、301 リジッド基板、302 Si基板、401 接着金属、402 密着金属。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂フィルムと回路層とを交互に積層させた積層構造を含む多層積層回路基板であって、
前記樹脂フィルムは、1つ以上のマルチ導通部を有し、
前記マルチ導通部は、直径10μm以上3000μm以下の領域を占め、かつ2つ以上の導通ビアを有し、
前記導通ビアは、5μm以上300μm以下の内径を有する、多層積層回路基板。
【請求項2】
前記樹脂フィルムの厚みをTとし、
前記導通ビアの内径をdとすると、0<d/T≦60である、請求項1に記載の多層積層回路基板。
【請求項3】
前記樹脂フィルムは、長尺状のものを加工して用いる、請求項1または2に記載の多層積層回路基板。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の多層積層回路基板を用いる部品または製品。
【請求項5】
前記製品は、電気製品、電子製品、半導体製品、アンテナ回路基板、ICカード、太陽電池、自動車またはロボットのいずれかである、請求項4に記載の製品。
【請求項1】
樹脂フィルムと回路層とを交互に積層させた積層構造を含む多層積層回路基板であって、
前記樹脂フィルムは、1つ以上のマルチ導通部を有し、
前記マルチ導通部は、直径10μm以上3000μm以下の領域を占め、かつ2つ以上の導通ビアを有し、
前記導通ビアは、5μm以上300μm以下の内径を有する、多層積層回路基板。
【請求項2】
前記樹脂フィルムの厚みをTとし、
前記導通ビアの内径をdとすると、0<d/T≦60である、請求項1に記載の多層積層回路基板。
【請求項3】
前記樹脂フィルムは、長尺状のものを加工して用いる、請求項1または2に記載の多層積層回路基板。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の多層積層回路基板を用いる部品または製品。
【請求項5】
前記製品は、電気製品、電子製品、半導体製品、アンテナ回路基板、ICカード、太陽電池、自動車またはロボットのいずれかである、請求項4に記載の製品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−45155(P2010−45155A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−207767(P2008−207767)
【出願日】平成20年8月12日(2008.8.12)
【出願人】(500356038)FCM株式会社 (10)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月12日(2008.8.12)
【出願人】(500356038)FCM株式会社 (10)
【Fターム(参考)】
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