説明

多成分系、その製造方法およびその使用

(A)イソシアネート反応性の官能基を有し、イソシアネート基を有しておらず、かつ化学線により活性化可能な結合を有する反応性の官能基を有するか、または該官能基を有していない少なくとも1の成分、および(B)イソシアネート基を有し、イソシアネート反応性の官能基を有しておらず、かつ化学線により活性化可能な結合を有する反応性の官能基を有するか、または該官能基を有していない少なくとも1の成分を含有し、その際、両方の成分(A)または(B)の1方は、化学線により活性化可能な結合を有する官能基を有しており、かつその際、成分(A)は、(L)少なくとも1のイソシアネート反応性の官能基を有する低分子量、オリゴマーおよび高分子量の光安定剤からなる群から選択される光安定剤、ならびに(P)少なくとも1のイソシアネート反応性の官能基を有する光開始剤を含有する多成分系、その製造方法および熱と化学線とにより硬化可能な混合物を製造するためのその使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規の多成分系に関する。さらに本発明は多成分系の新規の製造方法に関する。さらに本発明は、新規の多成分系の使用および新規の熱および化学線(デュアル・キュア)硬化可能な混合物を製造するための新規の方法により製造された多成分系に関する。本発明は特に、デュアル・キュア硬化した熱硬化性(duroplastisch)材料、特にシート、成形部材、被覆、接着層およびシーリングを製造するための新規のデュアル・キュア硬化可能な混合物の使用に関する。
【0002】
(A)イソシアネート反応性の官能基を有し、イソシアネート基を有しておらず、かつ化学線により活性化可能な結合を有する反応性の官能基を有するか、または該官能基を有していない少なくとも1の成分、および
(B)イソシアネート基を有し、イソシアネート反応性の官能基を有しておらず、かつ化学線により活性化可能な結合を有する反応性の官能基を有するか、または該官能基を有していない少なくとも1の成分
を含有し、その際、両方の成分(A)または(B)の少なくとも1つは、化学線により活性化可能な結合を有する官能基を有している多成分系は、自体公知である。通常、その成分(A)および/または(B)は、光安定剤および光開始剤を含有している。周知の通り、これらの公知の多成分系は、デュアル・キュア硬化可能な被覆材料を製造するために使用される。
【0003】
ドイツ特許出願DE10010416A1から、特に2成分系または多成分系から製造することができる多数の物理的もしくは熱によりおよび/または化学線により硬化可能な被覆材料が公知である(DE10010416A1、第1頁第1〜41行目を参照のこと)。
【0004】
デュアル・キュア硬化可能な被覆材料は、化学線により活性化可能な結合を有する反応性の官能基を有する(DE10010416A1、第8頁第45〜59行目を参照のこと)。特に2成分系または多成分系がこれらの反応性官能基を有しており、デュアル・キュア硬化可能な被覆材料を製造するために使用されることは記載されていない。
【0005】
DE10010416A1の全ての物理的または熱および/または化学線により硬化可能な被覆材料は、少なくとも1の光安定剤を共重合して含有している少なくとも1の(メタ)アクリレートコポリマーを含有している。明示的に挙げられている4つの光安定剤モノマーの1つは、イソシアネート反応性のヒドロキシル基も有している(DE10010416A1、第3頁第31行目〜第5頁第32行目、第14頁第44行目〜第17頁第20行目の製造例1〜5と関連させて参照のこと)。例1〜5から、ヒドロキシル基を有する光安定剤モノマーが特に有利であることは導き出すことができない。同様に、ヒドロキシル基を有する光安定剤モノマーを共重合して含有している(メタ)アクリレートコポリマーが、多成分系をそこから製造することができる、熱および化学線により硬化可能な被覆材料において使用するために適切であることはほとんど示唆されていない。というのも、実施例からは単に熱により硬化可能な1成分系が明らかであるにすぎないからである(DE10010416A1、第17頁第21行目〜第18頁第28行目を参照のこと)。
【0006】
DE10010416A1の第12頁第11行目および12行目からさらに、Roempp Lexikon Lacke und Druckfarben、Georg Thieme Verlag、Stuttgart、New York、1998年、第444〜446頁から公知の光開始剤を、化学線により、またはデュアル・キュア硬化可能な公知の被覆材料中で使用することができることが明らかである。この文献箇所では、9の化合物群に由来する15の化合物が化学式により記載されている。これらの光開始剤の1つ(2−ヒドロキシ−1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−メチル−1−プロパン)は、イソシアネート反応性のヒドロキシル基を有する。ここには、該光開始剤が特に多成分系を製造するデュアル・キュア硬化可能な被覆材料のために適切でありうることについての示唆は一切ない。
【0007】
ドイツ国特許出願DE10010416A1から公知の物理的または熱および/または化学線により硬化可能な被覆材料から、優れた光学的および機械的特性面を有し、耐引掻性であり、かつ耐酸性であり、かつその際、特に高い耐候性および耐食性を有するクリアコーティングが得られる。
【0008】
ドイツ国特許DE10042152A1から、デュアル・キュア硬化可能なクリアコートを製造するために使用される2成分系が公知である。公知のデュアル・キュア硬化可能なクリアコートは、イソシアネート反応性の官能基を有していない2つの光開始剤(Ciba Spezialitaetenchemie社のIrgacure(登録商標)184およびRahn Chemie社のGenocure(登録商標)MBF)および1つの難揮発性光開始剤(BASF AG社のLucirin(登録商標)TPO)ならびにイソシアネート反応性の官能基を有していない光開始剤(Ciba Spezialitaetenchemie社のTinuvin(登録商標)292)およびイソシアネート反応性のヒドロキシル基を有している光開始剤(Ciba Spezialitaetenchemie社のTinuvin(登録商標) 400)を含有している。公知のデュアル・キュア硬化可能なクリアコートは、優れたレオロジー特性、極めて良好な適用特性、極めて良好な耐用性および極めて良好なレベリングを有しており、かつ光沢、透明性および清澄さ、耐候性および耐黄変性に関して市場のあらゆる要求を満足するクリアコーティングを提供する。
【0009】
公知の被覆材料から製造される、熱および化学線により硬化した被覆は、光沢、透明性および清澄さ、耐候性および耐黄変性ならびに耐食性、耐引掻性および耐酸性を有する優れた特性面にもかかわらず、公知の被覆は、揮発性有機化合物を放出するという問題を生じ、これは特に主として、またはもっぱら熱により硬化している影帯域に由来する。この放出がわずかであるとしても、これはしばしば、特に新しい自動車の車内で現れる不快なにおいによって認識可能である。この「新車」のにおいは、自動車ユーザーに公知であり、ユーザーからはしばしば不快であると認識されている。
【0010】
本発明の課題は、新規の熱および化学線により(デュアル・キュア)硬化可能な混合物を製造するために適切であり、デュアル・キュア硬化の際に、揮発性有機化合物を放出しないか、またはごくわずかに放出するにすぎない新規のデュアル・キュア硬化した熱硬化性材料を提供する、新規の多成分系を提供することである。
【0011】
その際、該新規の多成分系は容易な方法で製造することができるべきである。
【0012】
ここから製造される新規の熱および化学線により(デュアル・キュア)硬化可能な混合物はさらに、優れたレオロジー特性、極めて良好な適用特性、極めて良好な耐用性および極めて良好なレベリングを有しているべきである。
【0013】
新規のデュアル・キュア硬化可能な混合物は、新規のデュアル・キュア硬化した熱硬化性材料、特にシート、成形部材、被覆、接着層およびシーリングを製造するために適切であるべきである。特に新規の被覆材料として、光沢、透明性および清澄さ、耐候性および耐黄変性ならびに耐食性、耐引掻性および耐酸性に関して、公知の被覆よりも優れていないとしても公知の被覆に匹敵する、新規の被覆を製造するために適切であるべきである。
【0014】
これに応じて、
(A)イソシアネート反応性の官能基を有し、イソシアネート基を有しておらず、かつ化学線により活性化可能な結合を有する反応性の官能基を有するか、または該官能基を有していない少なくとも1の成分、および
(B)イソシアネート基を有し、イソシアネート反応性の官能基を有しておらず、かつ化学線により活性化可能な結合を有する反応性の官能基を有するか、または該官能基を有していない少なくとも1の成分を含有し、
その際、両方の成分(A)または(B)の少なくとも1つは、化学線により活性化可能な結合を有する官能基を有しており、かつその際、成分(A)または成分(A)の少なくとも1つは、
(L)少なくとも1のイソシアネート反応性の官能基を有する低分子量、オリゴマーおよび高分子量の光安定剤からなる群から選択される少なくとも1の光安定剤、ならびに
(P)少なくとも1のイソシアネート反応性の官能基を有する少なくとも1の光開始剤を含有する新規の多成分系が判明した。
【0015】
以下では新規の多成分系を「本発明による多成分系」とよぶ。
【0016】
さらに、
(A)イソシアネート反応性の官能基を有し、イソシアネート基を有しておらず、かつ化学線により活性化可能な結合を有する官能基を有するか、または該官能基を有していない少なくとも1の成分、および
(B)イソシアネート基を有し、イソシアネート反応性の官能基を有しておらず、かつ化学線により活性化可能な結合を有する反応性の官能基を有するか、または該官能基を有していない少なくとも1の成分
を含有し、その際、両方の成分(A)または(B)の少なくとも1つは、化学線により活性化可能な結合を有する官能基を有している多成分系を、成分(A)と(B)とを別々に製造することにより製造する新規の方法が判明し、この場合、成分(A)または成分(A)の少なくとも1つに、
(1)少なくとも1のイソシアネート反応性官能基を有する低分子量、オリゴマーおよび高分子量の光安定剤からなる群から選択される少なくとも1の光安定剤(L)、ならびに
(2)少なくとも1のイソシアネート反応性の官能基を有する少なくとも1の光開始剤(P)
を添加する。
【0017】
以下では、本発明による系を製造する新規の方法を「本発明による方法」とよぶ。
【0018】
さらに、熱および化学線により硬化可能な混合物を製造するための、本発明による系および本発明による方法により製造した多成分系の新規の使用が判明し、これを以下では本発明による「使用」とよぶ。
【0019】
他の本発明の対象は発明の詳細な説明から明らかである。
【0020】
公知先行技術に照らし合わせると、本発明の根底を成す課題を本発明による系、本発明による方法および本発明による使用によって解決することができたことは意想外であり、かつ当業者にとっては予期し得なかったことである。
【0021】
本発明による系が、揮発性有機化合物を全く放出しないか、または極めてわずかに放出するにすぎない新規のデュアル・キュア硬化した熱硬化性材料をもたらす新規のデュアル・キュア硬化可能な混合物の製造のために特に適していることは特に意想外であった。
【0022】
その際、本発明による系は容易な方法で製造することができる。
【0023】
ここから製造される本発明によるデュアル・キュア硬化可能な混合物は、優れたレオロジー特性、極めて良好な適用特性、極めて良好な耐用性および極めて良好なレベリングを有する。
【0024】
本発明によるデュアル・キュア硬化可能な混合物は、新規のデュアル・キュア硬化した熱硬化性材料、特に新規のシートおよび成形材料を製造するために、ならびに新規の被覆材料、接着剤およびシーラントとして新規の被覆、接着層およびシーリングを製造するために好適である。
【0025】
特に新規の被覆材料として、光沢、透明性および清澄さ、耐候性および耐黄変性ならびに耐食性、耐引掻性および耐酸性に関して、公知の被覆よりも優れていないとしても、これらの公知の被覆に匹敵する、新規の被覆を製造するために適切である。
【0026】
さらに、新規のシートは熱安定性および耐引裂性が優れていることが判明したので、支持体として、または包装材料として適切であった。新規の成形部材は特に寸法安定性である。新規の接着層は、著しく変化する条件下でも高い接着力を有していた。さらに新規のシーリングは、あらゆる種類の支持体を攻撃的な媒体に対しても継続的に封止した。
【0027】
本発明による系は多成分系である、つまりイソシアネート反応性の官能基を少なくとも1つ、特に1つ有する成分(A)、およびイソシアネート基を少なくとも1つ、特に1つ有する成分(B)を含有する。成分(A)および(B)は、その目的に応じた使用まで相互に別々に貯蔵される。
【0028】
有利には成分(A)中に含有されているイソシアネート反応性の官能基は、ヒドロキシル基、チオール基および第1級および第2級アミノ基からなる群から選択される。特にイソシアネート反応性の官能基はヒドロキシル基である。
【0029】
当然のことながら、成分(A)は遊離のイソシアネート基を有していない。しかし該成分は、通例かつ公知のブロック剤、例えばドイツ国特許出願DE10042152A1、第6頁段落[0062]に記載されているブロック剤によりブロックされているブロックトイソシアネート基を有していてもよい。
【0030】
成分(A)は、化学線により活性化可能な結合を有する反応性の官能基を有していてよく、またはこれらの反応性官能基を有していなくてもよい。成分(B)が、この種の反応性の官能基を有していない場合、これらは成分(A)中に必然的に含有されている。
【0031】
化学線により活性化可能な結合を有している反応性の官能基は、本発明による系から製造されるデュアル・キュア硬化可能な混合物を化学線により硬化するために役立つ。本発明の範囲で化学線とは、電磁線、例えば近赤外線(NIR)、可視光線、UV線、X線又はガンマ線、特にUV線、および粒子線、例えば電子線、アルファ線、ベータ線または中性子線、特に電子線であると解釈される。化学線により活性化可能な適切な結合の例は、特許出願DE10042152A1、第3頁段落[0021]〜[0027]から公知である。有利には、特にアクリレートおよび/またはメタクリレート基中に含有されているオレフィン不飽和の二重結合を使用する。
【0032】
成分(A)は有利には、その製造および適用の条件下で、特に室温で液状である。
【0033】
少なくとも1のイソシアネート反応性の官能基を有する少なくとも1の光安定剤(L)、および同様に少なくとも1のイソシアネート反応性の官能基を有する少なくとも1の光開始剤(P)の本発明による本質的な使用まで、成分(A)の物質組成は、特別な点はなく、通常、多成分系の、イソシアネートを有していない成分において使用される全ての成分を使用することができ、これは、本発明による系の特別な利点である。
【0034】
成分(A)を構成するために適切な成分は、物理的に、熱により、化学線により、および熱と化学線とにより硬化可能な結合剤、熱により、および熱と化学線とにより硬化可能な、ポリイソシアネート以外の架橋剤、熱により、化学線により、および熱と化学線とにより硬化可能な低分子量およびオリゴマーの反応性希釈剤ならびに添加剤からなる群から選択することができる。
【0035】
添加剤は、本発明の意味でのイソシアネート反応性の官能基を有していない着色および/または効果を付与する顔料、分子分散可溶性の着色剤、光安定剤、例えばUV吸収剤およびリバースラジカル捕捉剤(HALS)、特に難揮発性もしくは不揮発性の光安定剤、本発明の意味でのイソシアネート反応性の官能基を有していない光開始剤、特に難揮発性もしくは不揮発性の光開始剤、酸化防止剤、低沸点および高沸点の有機溶剤、水、レオロジー調整剤、脱気剤、湿潤剤、乳化剤、スリップ助剤、重合防止剤、熱架橋のための触媒、熱に不安定なラジカル開始剤、カップリング剤、レベリング剤、塗膜形成助剤、難燃剤、腐食防止剤、流動助剤、ワックス、乾燥剤、殺生物剤および艶消し剤からなる群から選択することができる。
【0036】
成分(A)を構成するために適切な成分は、
国際特許出願WO03/016411A1、第14頁第9行目〜第34頁第9行目、第34頁第28行目〜第36頁第11行目および第7頁第1行目〜第14頁第7行目、
ドイツ国特許出願DE10010416A1、第11頁第29行目〜第12頁第9行目、第12頁第13〜51行目、
Roempp Lexikon Lacke und Druckfarben、Georg Thieme Verlag、Stuttgart、New York、1998年、≫Verdickungsmittel≪、第599〜600頁、Johan Bieleman、≫Lackadditive≪、Wiley−VCH、Weinheim、New York、1998年、第51〜59頁および第65頁、
ドイツ国特許出願DE19841842A1第4頁第45行目〜第5頁第4行目、
ドイツ国特許出願DE19924170A1、第2欄第3行目〜第7欄第24行目、
ドイツ国特許出願DE19924171A1第2頁第44行目〜第9頁第32行目、
ドイツ国特許出願DE19924172A1、第2頁第44行目〜第3頁第32行目、
ドイツ国特許出願DE10042152A1第2頁段落、[0010]〜第6頁段落[0066]および第7頁段落[0071]〜第11頁段落[0093]、
ドイツ国特許出願DE10126647A1、第2頁段落[0009]〜第6頁段落[0066]および
ドイツ国特許出願DE10154030A1、第11欄段落[0064]〜第12欄段落[0071]
に詳細に記載されている。該成分は通例かつ公知の、有効な量で使用する。
【0037】
本発明による系にとって重要なことは、その成分(A)が少なくとも1の、特に少なくとも2の、光安定剤(L)を含有していることである。
【0038】
光安定剤(L)は、少なくとも1の、特に1のイソシアネート反応性の官能基を有する低分子量、オリゴマーおよび高分子量の光安定剤からなる群から選択される。有利にはこれは、UV吸収剤およびリバースラジカル捕捉剤からなる群から選択される。有利にはUV吸収剤(L)は、ベンゾトリアゾールおよびトリアジンからなる群から、およびリバースラジカル捕捉剤(L)は、立体障害環式アミン、特にHALSからなる群から選択される。
【0039】
有利にはイソシアネート反応性の官能基はヒドロキシル基である。その際、ベンゾトリアゾール構造に直接隣接して配置されており、従ってトリアゾール環の窒素と相互に作用し合うヒドロキシル基、ならびに立体的に強く障害された、例えば2つの第三ブチル基の間に配置されているフェノール基は、本発明の意味でのイソシアネート反応性の官能基ではない。
【0040】
適切な低分子量の光安定剤(L)の例は、
商品名Tinuvin(登録商標) 400でCiba Spezialitaetenchemie社から市販されている2−(4−((2−ヒドロキシ−3−ウンデシル−オキシプロピル)−オキシル)−2−ヒドロキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンと、2−(4−((2−ヒドロキシ−3−トリデシル−オキシプロピル)−オキシル)−2−ヒドロキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンとからなる混合物、
1のトリアジン基と2の環式立体障害アミノエーテル基を有するCiba Spezialitaetenchemie社の試験製品Tinuvin(登録商標) CGL 052、および
ドイツ国特許出願DE10010416A1、第4頁に記載されている光安定剤モノマー(a3)
である。
【0041】
適切なオリゴマーおよびポリマーの光安定剤(L)の例は、ドイツ特許出願DE10010416A1、第3頁第31行目〜第5頁第32行目および第14頁第42行目〜第17頁第20行目に記載されている光安定剤モノマー(a3)の(メタ)アクリレートコポリマーである。
【0042】
成分(A)における本発明により使用される光安定剤(L)の含有率は、極めて広い範囲で変化してよく、かつ個別事例の要求に応じて適合させる。有利には光安定剤(L)は、光安定剤にとって通例かつ公知の有効な量で、そのつど(A)に対して、有利には0.1〜5質量%、好ましくは0.2〜4.5質量%、特に有利には0.3〜4質量%、とりわけ有利には0.4〜3.5質量%および殊に0.5〜3質量%の量で使用する。
【0043】
本発明による系にとってさらに、その成分が、少なくとも1、特に1のイソシアネート反応性の官能基を有する少なくとも1の光開始剤(P)および特に少なくとも2の光開始剤(P)を含有することが重要である。
【0044】
有利には光開始剤(P)は、ベンジルモノケタール、アセトフェノン誘導体、ベンジルホルメート、モノアシルホスフィンオキシドおよびジアシルホスフィンオキシドからなる群から選択される。特に光開始剤(P)はアセトフェノン誘導体である。
【0045】
有利にはイソシアネート反応性の官能基は、ヒドロキシル基である。その際、隣接するカルボニル基を有するケト−エノール−互変異性体を介して相互に作用し合うか、かつ/または立体的に強く障害されるヒドロキシル基は、本発明の意味でのイソシアネート反応性の官能基ではない。
【0046】
適切な光開始剤(P)の1例は、
1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパノ−1−オン
であり、これは商標Irgacure(登録商標)2959でCiba Spezialitaetenchemie社から市販されている。
【0047】
成分(A)における本発明により使用される光開始剤(P)の含有率は、極めて広い範囲で変化してよく、かつ個別事例の要求に応じて適合させる。有利には光開始剤(P)は、光開始剤にとって通例かつ公知の有効な量で、そのつど(A)に対して、有利には0.1〜5質量%、好ましくは0.2〜4.5質量%、特に有利には0.3〜4質量%、とりわけ有利には0.4〜3.5質量%および殊に0.5〜3質量%の量で使用する。
【0048】
本発明による系の成分(B)は、イソシアネート基を有する。
【0049】
成分(B)は、前記のブロックトイソシアネート基を副次的な量で、つまり存在するブロックトイソシアネート基とブロックされていないイソシアネート基とに対して、<50当量%、有利には<40当量%、好ましくは<30当量%およびとりわけ<20当量%の量で含有されていてよい。
【0050】
当然のことながら、成分(B)は、前記のイソシアネート反応性の官能基を有していない。
【0051】
成分(B)は、化学線により活性化可能な結合を有する前記の反応性の官能基を有していてよく、またはこれらの反応性官能基を有していなくてもよい。成分(A)が、この種の反応性官能基を有していない場合、これらは成分(B)中に必然的に含有されている。
【0052】
成分(B)は有利には、その製造および適用の条件下で、特に室温で液状である。
【0053】
成分(B)は、ポリイソシアネートを含有しているか、またはポリイソシアネートからなる。
【0054】
ポリイソシアネートとして、通常塗料分野で使用されるポリイソシアネート、つまりいわゆる塗料用ポリイソシアネートを使用することができる。有利にはこれらの平均イソシアネート官能価は、2〜6以下であり、特に>2〜≦6である。適切なポリイソシアネートの例は例えばドイツ特許出願DE10042152A1、第4頁、段落[0037]〜第6頁段落[0063]、ドイツ特許出願DE10010416A1、第8頁第28〜44行目、または国際特許出願WO03/016411、第33頁第27行目〜第34頁第9行目に記載されている。
【0055】
成分(B)は、ポリイソシアネートと反応しない限り、前記の添加剤を含有していてよい。特に成分(B)は、本発明の意味での前記のイソシアネート反応性の官能基を有していない光安定剤および光開始剤を含有していてよい。この種の成分(B)は、欧州特許出願EP0952170A1、第5頁、段落[0042]および[0043]に、第6頁、段落[0046]および[0051]ならびに第7頁段落[0054]および[0057]との関連で記載されている。
【0056】
有利には本発明による系は本発明による方法を用いて製造する。このために本発明による系の成分(A)および(B)を、前記の成分から相互に別々に製造し、かつ本発明によるその使用まで、相互に別々に貯蔵する。
【0057】
本発明による方法にとって重要なことは、前記の光安定剤(L)および光開始剤(P)を本発明による系の成分(A)または複数の成分(A)の1つに添加することである。有利には本発明による方法は化学線を排除して実施する。
【0058】
有利には成分(A)および(B)の製造は、そのつどの成分を相互に混合し、かつ得られる混合物を均質化することにより得られる。その際、有利には通例かつ公知の混合法および装置、例えば攪拌反応器、攪拌ミル、押出機、混練機、ウルトラツラックス、インライン溶解機、スタチックミキサー、マイクロミキサー、歯車式分散機、放圧ノズルおよび/またはマイクロ流動化装置を、有利には化学線の排除下に使用する。
【0059】
任意の本発明による系の得られる成分(A)および(B)は、有利には通例の、有機溶剤を含有する成分、水性成分および/または実質的に、または完全に溶剤および水不含の液状の成分(100%系)である。
【0060】
本発明による系は極めて多種多様に使用することができる。特に本発明による系は、熱および化学線により(デュアル・キュア)硬化可能な混合物(「本発明による混合物」)を製造するために使用される。
【0061】
有利には本発明による混合物を、新規のデュアル・キュア硬化した熱硬化性材料の製造のために使用する。
【0062】
有利には本発明による混合物を、新規のシートおよび成形部材を製造するために、ならびに新規の被覆材料、接着剤およびシーラントとして、新規の被覆、接着層およびシーリングを製造するために使用する。
【0063】
有利には本発明による混合物は被覆材料である(「本発明による被覆材料」)。
【0064】
特に有利には本発明による被覆材料を、新規の電着塗料、プライマー層、サーフェイサーまたは耐ストーンチッププライマー、ベースコート、ソリッドカラーコートおよびクリアコートとして、新規の電着コーティング、プライマーコーティング、サーフェイサーコーティングまたは耐ストーンチッププライマー、ベースコーティング、ソリッドカラーコーティングおよびクリアコーティングを製造するために使用する。これらの本発明によるコーティングは単層であっても多層であってもよい。特に有利には、多層であり、かつその際、少なくとも2つのコーティング、特に少なくとも1の電着コーティング、少なくとも1のサーフェイサーコーティングまたは耐ストーンチッププライマーならびに少なくとも1のベースコーティングおよび少なくとも1のクリアコーティングまたは少なくとも1のソリッドカラーコーティングを含んでいてよい。特に有利には本発明による多層コーティングは、少なくとも1のベースコーティングおよび少なくとも1のクリアコーティングを含む。
【0065】
本発明による多層コーティングのクリアコーティングを本発明による混合物から製造することが特に有利である。クリアコーティングは、多層コーティングの最も外側の層であり、これは実質的に光学的な全体の印象(外観)を決定し、かつ着色および/または効果を付与するベースコーティングを、機械的および科学的な損傷および放射線による損傷から保護するものである。本発明によるクリアコーティングは、光沢、透明性および清澄さ、耐候性および耐黄変性ならびに耐食性、耐引掻性および耐酸性に関して優れた特性面を有している。意外なことに、本発明によるコーティングは高い結露水(Schwitzwasser)安定性を有している。しかし特に本発明によるクリアコーティングは、90℃以上の温度でもごくわずかな揮発性有機化合物を放出するのみであるので、閉鎖された空間、特に新しい自動車の車内でも、においによる負荷をもはや引き起こさない。
【0066】
においの負荷が存在しないという特別な利点は、本発明による成形部材、シート、その他の被覆、接着層およびシーリグにおいても存在する。
【0067】
本発明による熱硬化性材料、特に本発明による成形部材、シート、被覆、接着層およびシーリングは、方法的に特別な点はなく、使用目的に応じて本発明による混合物を、通例かつ公知の一時的な、または永久的な支持体上に適用する。
【0068】
有利には本発明によるシートおよび成形部材の製造のために、本発明によるシートおよび成形部材を損傷することなく容易に除去することができる、通例かつ公知の一時的な支持体、例えば金属およびプラスチックウェブまたは金属、ガラス、プラスチック、木材もしくはセラミックからなる中空体を使用することができる。
【0069】
本発明による混合物を、被覆、接着剤およびシーリングの製造のために使用する場合、永久的な支持体、例えば移動手段の車体、特に自動車の車体、およびこれらの部材、屋内および屋外の領域での建築物およびその部材、ドア、窓および家具、ならびに工業的な塗装の範囲で、ガラス中空体、コイル、コンテナ、包装材料、小部品、電子工業、機械および光学部材および白物家電の部材を使用する。本発明によるシートおよび成形部材は同様に支持体として使用することができる。
【0070】
方法上では、本発明による混合物の適用は特別な点はなく、全ての慣用かつ公知の、その都度の混合物に適した適用法、例えば吹き付け塗布、噴霧塗布、ブレード塗布、刷毛塗り、フローコーティング、浸漬塗布、散布塗布又はローラー塗布によって行うことができる。有利には吹き付け塗布法が使用される。
【0071】
適用の際に、本発明による混合物の早すぎる架橋を回避するために、化学線を排除して作業することが推奨される。
【0072】
本発明による多層コーティングを製造するために、ウェット・オン・ウェット法および構造物を適用することができ、これらは例えばドイツ国特許出願DE19930067A1、第15頁第23行目〜第16頁第36行目から公知である。本発明による多層コーティングの全ての層を、本発明による混合物から製造することができることは本発明による使用の特に本質的な利点である。
【0073】
本発明による混合物の硬化は、一般には所定の休止時間又はフラッシュオフ時間後に行われる。これは30秒〜2時間、有利には1分〜1時間、特に1〜45分間の期間であってよい。休止時間は例えば適用された本発明による混合物のレベリングおよび脱気のため、および揮発性成分、例えば場合により存在する溶剤の気化のために役立つ。フラッシュオフは、硬化にはなお不十分な高められた温度によって、および/または空気湿度の低下によって促進させることができる。
【0074】
適用された混合物の熱硬化は、例えば気体状、液状及び/又は固体の高温の媒体、例えば高温の空気、加熱油又は加熱ローラを用いて、又はマイクロ波放射線、赤外光及び/又は近赤外光(NIR)を用いて行われる。有利には、加熱は、循環式加熱炉(Umluftofen)中で、またはIRランプ及び/又はNIRランプでの照射によって行われる。化学線による硬化の際と同様に、熱硬化もまた段階的に行うことができる。有利には、熱硬化は室温〜200℃の温度で行われる。
【0075】
有利には化学線による硬化の際に、103〜3×104、有利には2×103〜2×104、好ましくは3×103〜1.5×104および特に5×103〜1.2×104Jm2の線量を使用する。その際、放射線強度は1×100〜3×105、有利には2×100〜2×105、好ましくは3×100〜1.5×105であり、特に5×100〜1.2×105Wm2である。
【0076】
化学線を用いた硬化のために、常用の及び公知の放射線源及び光学的な補助手段が使用される。適切な放射線源の例は、VISIT社のフラッシュランプ、高圧水銀ランプまたは低圧水銀ランプ(これらは場合によりドープされている)または電子線源である。それらの装置は原則的に公知であり、かつ加工材料の条件と方法パラメータに適合させることができる。自動車ボディのような複雑な形状の加工材料の場合に、放射線が直接到達しない領域(影の領域)、例えば中空部、褶曲部及び他の構造に依存するアンダーカット部は、点状、小面積または周囲照射装置を用いて、中空部分又は縁部を硬化させるための自動的な運動装置と接続して硬化させることができる。
【0077】
これらの硬化法の装置および条件は例えばR.Holmes、U.V. and E.B. Curing Formulations for Printing Inks, Coatings and Paints、SITA Technology、Academic Press、London、英国、1984、ドイツ国特許出願DE19818735A1、第10欄、第31行目〜第11欄、第16行目、R.Stephen Davidson、≫Exploring the Science, Technology and Applications of U.V. and E.B. Curing≪、Sita Technology Ltd.、London、1999年またはDipl.−Ing. Peter Klamann、≫eltosch System−Kompetenz,UV−Technik,Leitfaden fuer Anwender≪、第2頁、1998年10月に記載されている。特に有利には、化学線による硬化を酸素が低減された雰囲気中で実施する。「酸素が低減された」とは、雰囲気中の酸素の含量が空気の酸素含量(20.95体積%)よりも低いことを意味する。有利には、酸素が低減された雰囲気の最大含量は18体積%、有利には16体積%、特に有利には14体積%、殊に有利には10体積%、特に6.0体積%である。
【0078】
熱硬化も化学線による硬化も、段階的に実施することができる。その際、これらの硬化は連続的(順次)に、または同時に行うことができる。本発明によれば、連続的な硬化が有利であり、かつ従って有利に使用される。
【0079】
得られる本発明による熱硬化性材料、特に本発明によるシート、成形部材、被覆、接着層およびシーリングは、
屋内および屋外領域のあらゆる種類の移動手段ならびのその部材、
屋内および屋外領域の建築物ならびにその部材、および
ドア、窓および家具ならびに
工業用コーティングの範囲内で、特にガラス中空体、コイル、コンテナ、包装材料、小部品、例えばナット、ボルト、リムまたはホールキャップ、電気工学部材、例えば巻成体(スプール、ステーター、ローター)、機械的な部材、光学的な部材および白物家電のための部材、例えばラジエーター、家庭用電化製品、冷蔵庫のライニングまたは洗濯機のライニング
のコーティング、接着、封止、被覆および包装のために好適である。
【0080】
本発明による被覆により被覆された、本発明による接着層により接着された、本発明によるシーリングにより封止された、および/または本発明によるシートおよび/または成形部材により被覆もしくは包装された本発明による支持体は、特に長い寿命と結びついて優れた使用特性を有している。
【0081】
実施例及び比較例
製造例1
メタクリレートコポリマー(結合剤)の製造
攪拌機、モノマー混合物および開始剤溶液のための2つの滴下漏斗、窒素供給管、温度計、加熱装置および還流冷却器を備えた適切な反応器中に、158〜172℃の沸点範囲を有する芳香族炭化水素の留分650質量部を秤量した。溶剤を140℃に加熱した。その後、エチルヘキシルアクリレート652質量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート383質量部、スチレン143質量部、4−ヒドロキシブチルアクリレート212質量部およびアクリル酸21質量部からなるモノマー混合物を、4時間以内に、および芳香族溶剤113質量部およびt−ブチルペルエチルヘキサノエート113質量部からなる開始剤溶液を、4.5時間以内に、均一に前記の装入物に計量供給した。モノマー混合物と開始剤溶液の添加と同時に開始した。開始剤供給の終了後、得られた反応混合物をさらに2時間、撹拌下で140℃に加熱し、引き続き冷却した。得られたメタクリレートコポリマーの溶液を、1−メトキシプロピルアセテート−2、ブチルグリコールアセテートおよびブチルアセテートからなる混合物で希釈した。
【0082】
得られる溶液は、循環式乾燥室(1h/130℃)中で測定して65%の固体含有率、15mgKOH/g固体の酸価、175mgKOH/gのOH価および−21℃のガラス転移温度を有していた。
【0083】
製造例2
Aerosil(登録商標)のペーストを製造するためのメタクリレートコポリマーの製造
利用容量4lを有し、攪拌機、モノマー混合物および開始剤溶液のための2つの滴下漏斗、窒素供給管、温度計および還流冷却器を備えた実験室用反応器中に、158〜172℃の沸点範囲を有する芳香族炭化水素の留分720gを秤量した。溶剤を140℃に加熱した。140℃に達した後、2−エチルヘキシルメタクリレート450g、n−ブチルメタクリレート180g、スチレン210g、ヒドロキシエチルアクリレート180g、4−ヒドロキシブチルアクリレート450gおよびアクリル酸30gからなるモノマー混合物を4時間以内に、および前記の芳香族溶剤90g中のt−ブチルペルエチルヘキサノエート150gの開始剤溶液を、4.5時間以内に、均質に反応器に供給した。モノマー混合物と開始剤溶液の添加と同時に開始した。開始剤の供給が終了した後で、反応混合物をさらに2時間、140℃に保持し、かつその後冷却した。得られるポリマー溶液は、循環式乾燥炉(1h/130℃)中で測定して、65%の固体含有率、15mgKOH/gの酸価、3dPas(前記の芳香族溶剤中のポリマーの60%の溶液で測定、23℃でICIプレート/コーンの粘度計を使用)の粘度を有していた。
【0084】
製造例3
Aerosil(登録商標)のペーストの製造
Vollrath社の実験室用攪拌ミル中に、製造例2のメタクリレートコポリマー323.2g、ブタノール187.2g、キシレン200.8gおよびAerosil(登録商標)812(Degussa社、Hanau)88.8gからなる粉砕材料800gを、石英砂(粒径0.71mm)1100gと一緒に秤量し、かつ水で冷却しながら30分間粉砕した。
【0085】
実施例1及び比較例V1
例1のクリアコート1および比較例V1のクリアコートV1の製造
クリアコート1およびV1を、第1表に記載されている成分を記載の順序で混合し、かつ得られた混合物を均質化することにより製造した。
第1表:例1のクリアコート1と、比較例V1のクリアコートV1の物質組成(質量部)
成分 例1 比較例V1
成分(A):
製造例1の結合剤 33.6 33.6
Setalux(登録商標) C91756
(Akzo Nobel Resins、Bergen op Zoom;
レオロジー添加剤) 14.4 14.4
製造例3のAerosil(登録商標)
のペースト 2.9 2.9
Sartomer(登録商標)444D(ペンタエリトリット
トリアクリレート) 19.2 19.2
ブチルアセテート98/100 25.9 25.9
2−(4−((2−ヒドロキシ−3−ウンデシル−オキシプロピル)オキシル)−2−ヒドロキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンと、2−(4−((2−ヒドロキシ−3−トリデシル−オキシプロピル)−オキシル)−2−ヒドロキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン(Ciba Spezialitaetenchemie社のTinuvin(登録商標)400)とからなる混合物(L) 1.0 −
Ciba Spezialitaetenchemie社のTinuvin(登録商標)CGL 052の試験製品(L)、1のトリアジン基および2の環式の立体障害アミノエーテル基を有する
1.0 −
2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−アミル−フェニル)−2H−ベンゾトリアゾール(Ciba Spezialitaetenchemie社のTinuvin(登録商標)328)
− 1.0
ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート(Ciba Spezialitaetenchemie社のTinuvin(登録商標)292)
− 1.0
1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(P)(Ciba Spezialitaetenchemie社のIrgacure(登録商標)2959)
1.0 −
ジフェニル−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ホスフィンオキシド(BASF AG社のLucirin(登録商標)TPO)
0.5 0.5
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン(Ciba Spezialitaetenchemie社のIrgacure(登録商標) 184 ) − 1.0
添加剤(Byk Chemie社のByk(登録商標)375)
0.5 0.5
合計: 100 100
成分(B):
Bayer AG社のイソシアナトアクリレートRoskydal(登録商標)UA VPLS 2337(三量体ヘキサメチレンジイソシアネートベース、イソシアネート基の含有率12質量%)
37.34 37.34
Bayer AG社のイソシアナトアクリレート Roskydal(登録商標) UA VP FWO 3003-77、三量体イソホロンジイソシアネートベース(酢酸ブチル中70.5%、粘度1500mPas、イソシアネート基の含有率6.7質量%)
9.34 9.34
Bayer AG社のDesmodur(登録商標) N 3300
(三量体ヘキサメチレンジイソシアネート)
6.65 6.65
酢酸ブチル98/100 4.67 4.67
合計: 58 58
クリアコート1およびV2は極めて良好なポットライフおよび極めて良好な適用特性を有していた。特にこれらは優れたレベリングおよび特にわずかな流れを形成する傾向を有していたので、高い膜厚でも問題なく適用することができた。
【0086】
例2および比較例V2
例2の多層コーティング1および比較例V2の多層コーティングV1の製造
例2の多層コーティングを製造するために例1のクリアコート1を使用した。
【0087】
比較試験V2の多層コーティングV1を製造するために、比較試験V1のクリアコートV1を使用した。
【0088】
多層コーティング1およびV1を製造するために、鋼板をカソード電着し、かつ170℃で20分間焼き付けた電着コーティングを用いて乾燥膜厚18〜22μmで被覆した。引き続き、該鋼板を、通常プラスチック支持体のために使用される、BASF Coatings AG社の市販の2成分水性サーフェイサーで被覆した。得られるサーフェイサー層を90℃で30分間焼き付けて、35〜40μmの乾燥膜厚が得られた。その後、BASF Coatings AG社の市販のメタリック−水性ベースコートを、それぞれ12〜15μmの膜厚で適用し、その後、得られる水性ベースコート層を80℃で10分間フラッシュオフした。引き続き、クリアコート1および2を、それぞれ40〜45μmの膜厚で、十字にフローカップガンで空気圧により適用した。
【0089】
水性ベースコート層およびクリアコート層1およびV1の硬化は、室温で5分間、80℃で10分間行い、次いで線量104Jm2(1000mJcm-2)および放射線強度83Wm2で、IST社の鉄ドープした水銀ランプを用いてUV光で照射し、最後に140℃で20分間照射した。多層コーティング1およびV1が得られた。
【0090】
多層コーティング1およびV1は、同等であり、かつ光沢、透明性および清澄さ、耐候性および耐黄変性、耐食性、耐引掻性および耐酸性に関して、優れた特性を有していた。意外なことに、これらはまた、通常かつ公知の結露水一定気候試験(Schwitzwasser-Konstantklima-Test)(SSK)により測定して、高い結露水安定性も有していた。
【0091】
例3および比較例3
クリアコートから製造されたクリアコーティングの放出特性
例3のために、例1のクリアコート1を使用した。これをアルミニウムシート上に、室温で5分および80℃で10分の熱硬化およびIST社の鉄でドープされた水銀ランプによる、線量104Jm-2(1000mJcm-2)および放射線強度83Wm-2でのUV光によって放射線硬化後に、乾燥膜厚40μmを有するクリアコーティング1が得られるような湿潤膜厚で適用した。
【0092】
比較試験V3のために、比較試験V1のクリアコートV1を使用した。クリアコーティングV1は、例3に記載したとおりに製造したが、ただし、クリアコート1の代わりにクリアコートV1を使用した。クリアコーティングV1が得られた。
【0093】
クリアコーティング1およびV1の放出特性を、自動車産業団体から刊行されている推奨VDA 278(09/2002版)の「非金属性の自動車材料の特徴付のために有機放出の熱による脱着の分析」により確認した。これに応じて、90℃(VOC)および120℃(FOG)で放出される物質を測定した。この場合、そのつどクリアコーティング1およびV1の部分量を不活性ガス流中で加熱し、かつその際に放出される物質を、ガスクロマトグラフィーの低温冷却されるインジェクタ中で−150℃に凍結させた。そのつどの物質混合物を分離した後で、個々の物質を物質選択的な検出器で、可能な限り同定した。VOCおよびFOGの測定は、同じ部分試料を用いて実施した。気体状の放出(VOC)の定量化は、外部のトルエン標準に対して行い、凝縮可能な放出(FOG)はヘキサデカンに対して行った。
【0094】
クリアコーティング1では、VOCの全放出は3ppm(目標値:100ppm)であり、かつFOGの全放出は118ppm(目標値:250ppm)であった。
【0095】
これに対してクリアコーティングV1の場合、VOCの全放出は158ppm(目標値:100ppm)であり、かつFOGの全放出は1302ppm(目標値:250ppm)であった。
【0096】
従って、両方のクリアコーティングは、その放出特性において相互に顕著に異なっている。クリアコーティング1の場合、全放出の目標値をはるかに下回っていたのに対し、クリアコーティングV1の場合にははるかに上回っている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)イソシアネート反応性の官能基を有し、イソシアネート基を有しておらず、かつ化学線により活性化可能な結合を有する官能基を有するか、または該官能基を有していない、少なくとも1の成分、および
(B)イソシアネート基を有し、イソシアネート反応性の官能基を有しておらず、かつ化学線により活性化可能な結合を有する官能基を有するか、または該官能基を有していない、少なくとも1の成分を含有し、その際、両方の成分(A)または(B)の少なくとも1つは、化学線により活性化可能な結合を有する官能基を有している多成分系において、
成分(A)または成分(A)の少なくとも1つは、
(L)少なくとも1のイソシアネート反応性官能基を有する低分子量、オリゴマーおよび高分子量の光安定剤からなる群から選択される少なくとも1の光安定剤、ならびに
(P)少なくとも1のイソシアネート反応性の官能基を有する少なくとも1の光開始剤
を含有することを特徴とする、多成分系。
【請求項2】
イソシアネート反応性の官能基が、ヒドロキシル基、チオール基および第1級および第2級アミノ基からなる群から選択されていることを特徴とする、請求項1記載の多成分系。
【請求項3】
イソシアネート反応性の官能基がヒドロキシル基であることを特徴とする、請求項2記載の多成分系。
【請求項4】
光安定剤(L)が、UV吸収剤およびリバースラジカル捕捉剤からなる群から選択されていることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の多成分系。
【請求項5】
UV吸収剤(L)が、ベンゾトリアゾールおよびトリアジンからなる群から選択されており、かつリバースラジカル捕捉剤(L)が、立体障害環式アミンからなる群から選択されていることを特徴とする、請求項4記載の多成分系。
【請求項6】
光開始剤(P)が、ベンジルモノケタール、アセトフェノン誘導体、ベンジルホルメート、モノアシルホスフィンオキシドおよびジアシルホスフィンオキシドからなる群から選択されていることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の多成分系。
【請求項7】
光開始剤(P)が、アセトフェノン誘導体であることを特徴とする、請求項6記載の多成分系。
【請求項8】
成分(A)および/または(B)が、少なくとも1のイソシアネート反応性の官能基を有していない光安定剤を含有していることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の多成分系。
【請求項9】
成分(A)および/または(B)が、少なくとも1のイソシアネート反応性の官能基を有していない光開始剤を含有していることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の多成分系。
【請求項10】
イソシアネート反応性の官能基を有していない光開始剤が、難揮発性であるか、または不揮発性であることを特徴とする、請求項9記載の多成分系。
【請求項11】
化学線が、紫外線であることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の多成分系。
【請求項12】
化学線により活性化可能な結合が、オレフィン二重結合であることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載の多成分系。
【請求項13】
化学線により活性化可能なオレフィン二重結合を有する反応性の官能基が、アクリレート基および/またはメタクリレート基であることを特徴とする、請求項12記載の多成分系。
【請求項14】
(A)イソシアネート反応性の官能基を有し、イソシアネート基を有しておらず、かつ化学線により活性化可能な結合を有する官能基を有するか、または該官能基を有していない、少なくとも1の成分、および
(B)イソシアネート基を有し、イソシアネート反応性の官能基を有しておらず、かつ化学線により活性化可能な結合を有する官能基を有するか、または該官能基を有していない、少なくとも1の成分を含有し、
その際、両方の成分(A)または(B)の少なくとも1つは、化学線により活性化可能な結合を有する官能基を有している多成分系を、成分(A)と(B)とを別々に製造することにより製造する方法において、成分(A)または成分(A)の少なくとも1つに、
(1)少なくとも1のイソシアネート反応性の官能基を有する低分子量、オリゴマーおよび高分子量の光安定剤からなる群から選択される少なくとも1の光安定剤(L)、ならびに
(2)少なくとも1のイソシアネート反応性の官能基を有する少なくとも1の光開始剤(P)
を添加することを特徴とする、多成分系の製造方法。
【請求項15】
方法を化学線の排除下で実施することを特徴とする、請求項14記載の方法。
【請求項16】
熱および化学線により(デュアル・キュア)硬化可能な混合物を製造するための、請求項1から13までのいずれか1項記載の多成分系または請求項14または15記載の方法により得られる多成分系の使用。
【請求項17】
デュアル・キュア硬化可能な混合物を、デュアル・キュア硬化した熱硬化性材料、特にシート、成形部材、被覆、接着層およびシーリングを製造するために使用することを特徴とする、請求項16記載の使用。
【請求項18】
被覆材料を、単層および多層のコーティングを製造するために使用することを特徴とする、請求項17記載の使用。
【請求項19】
被覆材料が電着コーティング、プライマーコーティング、サーフェイサーコーティングおよびストーンチップ保護用プライマー、ベースコーティング、ソリッドカラーコーティングおよびクリアコーティングを製造するための、電着コート、プライマーコート、クリアコート、ソリッドカラーコート、ベースコート、サーフェイサーおよびストーンチップ保護用プライマーであることを特徴とする、請求項17または18記載の使用。
【請求項20】
成形部材およびシートならびに被覆材料、接着剤およびシーラントから製造される被覆、接着層およびシーリングを、
屋内および屋外領域での移動手段ならびにこれらの部材のために、
屋内および屋外領域での建築物ならびにこれらの部材のために、
ドア、窓および家具ならびに
ガラス中空体、コイル、コンテナ、包装材料、小部品、電子工学、機械および光学部材および白物家電の部材の工業用被覆の範囲で
被覆、包装、塗装、接着および封止のために使用することを特徴とする、請求項17から19までのいずれか1項記載の使用。

【公表番号】特表2008−524355(P2008−524355A)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−546003(P2007−546003)
【出願日】平成17年11月15日(2005.11.15)
【国際出願番号】PCT/EP2005/055994
【国際公開番号】WO2006/067003
【国際公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(390008981)ビーエーエスエフ コーティングス アクチェンゲゼルシャフト (155)
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings AG
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D−48165 Muenster,Germany
【Fターム(参考)】