説明

多段式自動変速機の油圧制御装置

【課題】リニアソレノイドバルブのオイルの消費流量を少なくすることにより、自動変速機の効率を向上させる多段式自動変速機の油圧制御装置を提供する
【解決手段】ガレージシフト時に使用されないリニアソレノイドバルブSL3への元圧供給回路a,a,a,a,a12には、その中途部に振分け切換えバルブ36が介在している。振分け切換えバルブ36は、P、R、Nレンジ時及び前進1速段エンジンブレーキ時と、それ以外のDレンジ時と、でその位置を切換えるように構成されている。エンジンからの入力回転数が低いP,R,Nレンジ時では、元圧供給油路a,a,a,a,a12は振分け切換えバルブ36で遮断され、リニアソレノイドバルブSL3の入力ポートSL3aへの元圧(ライン圧)の供給が切断される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車輌などに搭載される多段式自動変速機の油圧制御装置に係り、詳しくは、係合圧制御用ソレノイドバルブに元圧を供給する元圧供給油路の油路構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、リニアソレノイドバルブの出力性能の向上に伴って、クラッチやブレーキの油圧サーボにリニアソレノイドバルブにより調圧した係合圧を直接供給するように構成された自動変速機の油圧制御装置が案出されており、このような油圧制御装置においては、近年、環境問題などの観点から自動変速機の高効率化、車輌の燃費向上が求められている。
【0003】
例えば、上記自動変速機のリニアソレノイドバルブに、ノーマルオープン(N/O)タイプを用いると、当該リニアソレノイドバルブに対応するクラッチ或いはブレーキを係合しない状態で消費電力が拡大し、車輌の燃費向上の妨げとなるため、ノーマルクローズ(N/C)タイプで構成することが好ましい。
【0004】
一方、制御用コンピュータ(ECU)のダウンや配線の断線等に起因して、上記リニアソレノイドバルブを含む全てのソレノイドバルブが非通電にされる、いわゆるソレノイド・オールオフフェールが生じた場合、上述のようにノーマルクローズタイプであると油圧を出力しなくなるため、つまり油圧サーボに係合圧を供給することができず、特に走行中にソレノイド・オールオフフェールが生じた場合に変速段が形成できずにニュートラル(N)状態となってしまうことになる。
【0005】
そこで、従来、リニアソレノイドバルブをノーマルクローズタイプで構成したものにあって、特定のリニアソレノイドバルブの排出ポートから油圧を逆入力させる油圧制御装置が提案されている(特許文献1参照)。このものは、例えば走行中にソレノイド・オールオフフェールが生じた場合、前進7速段を形成する第2クラッチC−2及び第3クラッチC−3に接続されたリニアソレノイドバルブSLC2,SLC3の排出ポートに前進レンジ圧を逆入力させ得るように構成されており、正常状態における燃費向上を図ると共に、オールオフフェール時における前進7速段の形成によるフェールセーフ機能も達成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−177932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
また、更なる車輌の燃費向上のための課題として、リニアソレノイドバルブのオイルの消費流量の問題が指摘されている。リニアソレノイドバルブは、その径が他のバルブよりも大きいため、バルブボディとの隙間から比較的多くのオイルが漏れると共に、その内部に設けられたバルブの隙間からもオイルが漏れてしまうため、オイルの消費流量が多くなってしまう。
【0008】
一方、自動変速機のオイルポンプは、発進時などに油圧不足に陥らないように、入力回転数の低い非走行レンジ(例えばP,Nレンジ)及びガレージシフト時(例えばN−DやP−Dシフト時)の必要吐出量によりサイズが決定されるため、全てのリニアソレノイドバルブに常時元圧を供給していると、非走行レンジ及びガレージシフト時のオイルの消費流量が増えて、オイルポンプが大型化してしまう。
【0009】
それにより、オイルポンプにおける動力損失が大きくなると共に、自動変速機自体も大きなものとなってしまい、自動変速機の効率化、車輌の燃費向上の妨げとなっている。
【0010】
そこで本発明は、リニアソレノイドバルブのオイルの消費流量を少なくすることにより、自動変速機の効率及び車輌の燃費を向上させる、多段式自動変速機の油圧制御装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に係る発明は、複数の摩擦係合要素(C−1,C―2,C―3,C−4,B−1,B−2)、これら複数の摩擦係合要素を係脱させる複数の油圧サーボ(51,52,53,54,61,62)、及び該油圧サーボより少なくとも1つ少ない複数の係合圧制御用ソレノイドバルブ(SL1,SL2,SL3,SL4,SL5)、前記複数の係合圧制御用ソレノイドバルブの少なくとも1つ(例えばSL2)からの係合圧を前記複数の油圧サーボ(51,52,53,54,61,62)のうちの2つ(例えば52,62)に振分ける振分け切換えバルブ(36)を備え、該振分け切換えバルブ(36)が、少なくとも後進レンジ(Rレンジ)、非走行レンジ(N及びPレンジ)、及び前進レンジ(Dレンジ)の特定変速段(例えば1速エンジンブレーキ時)の際に前記2つの油圧サーボ(例えば52,62)の一方(62)に前記係合圧を供給し得る第1の位置(左半位置)となり、かつこれら以外の前進レンジ(例えばエンジンブレーキ時を除く前進1速段及び前進2〜8速段)の際に前記2つの油圧サーボ(例えば52,62)の他方(52)に前記係合圧を供給し得る第2の位置(右半位置)となるように構成された多段式自動変速機の油圧制御装置(20)において、
前記複数の係合圧制御用ソレノイドバルブ(SL1,SL2,SL3,SL4,SL5)のうちの、前記前進レンジ(Dレンジ)における前記特定変速段(例えば前進1速段エンジンブレーキ時)以外の所定変速段(例えばエンジンブレーキ時を除く前進1段及び、前進2〜8速段)に係合される摩擦係合要素(例えばC−2,C―3,C−4,B−1)の油圧サーボ(例えば52,53,54,61)に係合圧(例えばPSL3,PSL4,PSL5)を出力し得る所定変速段用の係合圧制御用ソレノイドバルブ(例えばSL3,
SL4,SL5)に元圧を供給する元圧供給油路(例えばa,a〜a,a10〜a12)に前記振分け切換えバルブ(36)が介在するように構成し、
前記振分け切換えバルブ(36)が前記第1の位置(左半位置)の際に、前記所定変速段用の係合圧制御用ソレノイドバルブ(例えばSL3)に対する元圧を遮断する、
ことを特徴とする多段式自動変速機の油圧制御装置(20)にある。
【0012】
請求項2に係る発明は、前記所定変速段は、前記非走行レンジ(N及びPレンジ)と、前記前進レンジ(Dレンジ)又は前記後進レンジ(Rレンジ)と、の切換え時に形成されない変速段(例えば前進3速段)である、
ことを特徴とする請求項1記載の多段式自動変速機の油圧制御装置(20)にある。
【0013】
請求項3に係る発明は、前記非走行レンジ(N及びPレンジ)から前記前進レンジ(Dレンジ)又は前記後進レンジ(Rレンジ)への切換え制御時に、前記振分け切換えバルブ(36)を前記第1の位置(左半位置)とする制御手段(6)を備えた、
ことを特徴とする請求項1又は2記載の多段式自動変速機の油圧制御装置(20)にある。
【0014】
請求項4に係る発明は、前記振分け切換えバルブ(36)は、前記第1の位置(左半位置)となるようにスプール(36p)を付勢する付勢手段(36s)と、前進発進時に係合される摩擦係合要素(C−1)の油圧サーボ(51)に供給される係合圧(PS1)を入力して前記付勢手段(36s)の付勢力に抗して前記スプール(36p)を前記第2の位置(右半位置)に切換えさせる前進係合圧入力油室(36i)と、前記第2の位置(右半位置)の際に前記元圧を入力して前記スプール(36p)を該第2の位置(右半位置)にロックすると共に、前記所定変速段用(例えば前進3速段)の係合圧制御用ソレノイドバルブ(SL3)に前記元圧を供給する元圧通過油室(36j)と、を有してなる、
請求項1乃至3いずれか記載の多段式自動変速機の油圧制御装置(20)にある。
【0015】
請求項5に係る発明は、前記非走行レンジ(P及びNレンジ)におけるパーキングレンジ(Pレンジ)ではパーキングシリンダ(33)に対する元圧を遮断してパーキング状態とし、かつ前記パーキングレンジ以外では前記パーキングシリンダ(33)に対する元圧を供給してパーキング解除状態とするように切換えられると共に、切換えられた位置に保持されるパーキング切換えバルブ(32)と、
前記パーキング解除状態を前記パーキング状態に切換える切換え信号圧(PS2)を前記パーキング切換えバルブ(32)に出力する非解除信号圧出力ソレノイドバルブ(S2)と、
前記パーキング状態を前記パーキング解除状態に切換える切換え信号圧(PS1)を前記パーキング切換えバルブ(32)に出力する解除信号圧出力ソレノイドバルブ(S1)と、を備え、
前記振分け切換えバルブ(36)は、前記第2の位置(右半位置)にロックされた前記スプール(36p)を前記第1の位置(左半位置)に復帰させるロック解除圧を入力するロック解除圧入力油室(36a)を有し、
前記解除信号圧出力ソレノイドバルブ(S1)の信号圧(PS1)を、前記振分け切換えバルブ(36)に対する前記ロック解除圧として兼用してなる、
請求項4記載の多段式自動変速機の油圧制御装置(20)にある。
【0016】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これは、発明の理解を容易にするための便宜的なものであり、特許請求の範囲の構成に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る発明によると、後進レンジ、非走行レンジ及び前進レンジの特定変速段の際と、それ以外の前進レンジの際とで位置が切換わる振分け切換えバルブを、特定変速段以外の前進レンジ時に係合圧を出力し得る係合圧制御用ソレノイドバルブの元圧供給用油路に介在するように構成することにより、該係合圧制御用ソレノイドバルブの元圧を、振分け切換えバルブによって遮断することができる。それにより、エンジンからの入力回転が小さい、上記後進レンジ、非走行レンジ時及びガレージシフト時における、係合圧制御用ソレノイドバルブのオイルの消費流量を低減することができ、以ってオイルポンプを小さくすることができる。また、新たなバルブを追加することもないため、バルブボディが拡大することもない。そして、これら効果が相俟って、自動変速機の効率の向上及び車輌の燃費向上を図ることができる。
【0018】
請求項2に係る発明によると、ガレージシフト時に使用されることのない係合圧制御用ソレノイドバルブの、後進レンジ、非走行レンジ時及びガレージシフト時におけるオイル消費量を低減することができるため、円滑に非走行レンジから走行レンジへの移行を可能にしつつ、オイルポンプを小型化することができる。
【0019】
請求項3に係る発明によると、発進変速段もしくは後進変速段を達成するためにエンジンの回転数が低い際に比較的多くの油圧を使用するガレージシフト制御時において、係合圧制御用ソレノイドバルブのオイルの消費流量を低減することが出来る。
【0020】
請求項4に係る発明によると、前進係合圧入力油室に、発進時に係合される摩擦係合要素の係合圧を供給することによって、振分け切換えバルブを容易に第2の位置に切換えることができ、全ての係合圧制御用ソレノイドバルブに元圧を供給して円滑に前進走行レンジへと移行することができる。
【0021】
請求項5に係る発明によると、解除信号圧出力ソレノイドバルブの信号圧により、振分け切換えバルブを第1の位置に復帰させることにより、パーキング時に確実に係合圧制御用ソレノイドバルブの元圧を振分け切換えバルブにおいて遮断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係る自動変速機構を示すスケルトン図。
【図2】本発明の実施形態に係る自動変速機の作動表。
【図3】本発明の実施形態に係る油圧制御装置を示す概略図。
【図4】本発明の実施形態に係る油圧制御装置の作動表。
【図5】(a)N−D時の振分け切換えバルブの動作を示すタイムチャート、(b)P−D時の振分け切換えバルブの動作を示すタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る実施の形態を図面に沿って説明する。
【0024】
[自動変速機の構成]
まず、本発明を適用し得るシフトバイワイヤ方式の自動変速機1(以下、単に「自動変速機」という)の概略構成について図1に沿って説明する。図1に示すように、例えばFRタイプ(フロントエンジン、リヤドライブ)の車輌に用いて好適な自動変速機1は、不図示のエンジンに接続し得る自動変速機1の入力軸11を有しており、該入力軸11の軸方向を中心としてトルクコンバータ7と、変速機構2とを備えている。
【0025】
上記トルクコンバータ7は、自動変速機1の入力軸11に接続されたポンプインペラ7aと、作動流体を介して該ポンプインペラ7aの回転が伝達されるタービンランナ7bとを有しており、該タービンランナ7bは、上記入力軸11と同軸上に配設された上記変速機構2の入力軸12に接続されている。また、該トルクコンバータ7には、ロックアップクラッチ10が備えられており、該ロックアップクラッチ10が係合されると、上記自動変速機1の入力軸11の回転が変速機構2の入力軸12に直接伝達される。
【0026】
上記変速機構2には、入力軸12(及び中間軸13)上において、プラネタリギヤDPと、プラネタリギヤユニットPUとが備えられている。上記プラネタリギヤDPは、サンギヤS1、キャリヤCR1、及びリングギヤR1を備えており、該キャリヤCR1に、サンギヤS1に噛合するピニオンP1及びリングギヤR1に噛合するピニオンP2を互いに噛合する形で有している、いわゆるダブルピニオンプラネタリギヤである。
【0027】
また、該プラネタリギヤユニットPUは、4つの回転要素としてサンギヤS2、サンギヤS3、キャリヤCR2、及びリングギヤR3を有し、該キャリヤCR2に、サンギヤS2及びリングギヤR3に噛合するロングピニオンP4と、該ロングピニオンP4及びサンギヤS3に噛合するショートピニオンP3とを互いに噛合する形で有している、いわゆるラビニヨ型プラネタリギヤである。
【0028】
上記プラネタリギヤDPのサンギヤS1は、例えばミッションケース3に一体的に固定されているボス部3bに接続されて回転が固定されている。該ボス部3bは、オイルポンプボディから延設されている。また、上記キャリヤCR1は、上記入力軸12に接続されて、該入力軸12の回転と同回転(以下、「入力回転」という。)になっていると共に、第4クラッチC−4(摩擦係合要素)に接続されている。更に、リングギヤR1は、該固定されたサンギヤS1と該入力回転するキャリヤCR1とにより、入力回転が減速された減速回転になると共に、第1クラッチC−1(摩擦係合要素)及び第3クラッチC−3(摩擦係合要素)に接続されている。
【0029】
上記プラネタリギヤユニットPUのサンギヤS2は、係止手段としての第1ブレーキB−1(摩擦係合要素)に接続されてミッションケース3に対して固定自在となっていると共に、上記第4クラッチC−4及び上記第3クラッチC−3に接続されて、第4クラッチC−4を介して上記キャリヤCR1の入力回転が、第3クラッチC−3を介して上記リングギヤR1の減速回転が、それぞれ入力自在となっている。また、上記サンギヤS3は、第1クラッチC−1に接続されており、上記リングギヤR1の減速回転が入力自在となっている。
【0030】
更に、上記キャリヤCR2は、中間軸13を介して入力軸12の回転が入力される第2クラッチC−2(摩擦係合要素)に接続されて、該第2クラッチC−2を介して入力回転が入力自在となっており、また、係止手段としてのワンウェイクラッチF−1及び第2ブレーキB−2(摩擦係合要素)に接続されて、該ワンウェイクラッチF−1を介してミッションケース3に対して一方向の回転が規制されると共に、該第2ブレーキB−2を介して回転が固定自在となっている。そして、上記リングギヤR3は、不図示の駆動車輪に回転を出力する出力軸15に接続されている。
【0031】
そして、上述した変速機構2は、図2に示した各変速段と、各クラッチ及び各ブレーキとの関係を表した係合表に示された組み合わせで各クラッチ及び各ブレーキを作動させることにより、前進1速〜8速の変速段と、後進1速の変速段を達成する。
【0032】
[油圧制御装置の全体構成]
つづいて、本発明に係る油圧制御装置20の全体構成について、図3に基づいて説明する。なお、各バルブにおける実際のスプールは1本であるが、スプール位置の切換え位置或いはコントロール位置を説明するため、図3中に示す右半分の状態を「右半位置」、左半分の状態を「左半位置」という。
【0033】
油圧制御装置20は、主に各種の元圧となる油圧を調圧・生成するための、ストレーナ、オイルポンプ、プライマリレギュレータバルブ、セカンダリレギュレータバルブ、ソレノイドモジュレータバルブ、及びリニアソレノイドバルブSLT等を備えており、本実施の形態では、これらライン圧Pを発生させるオイルポンプ及びプライマリレギュレータバルブを合わせてライン圧発生源5として図示している。
【0034】
また、該油圧制御装置20は、複数のリニアソレノイドバルブ(係合圧制御用ソレノイドバルブ)SL1〜SL5と、これらリニアソレノイドバルブSL1〜SL5により調圧された係合圧に基づき上記クラッチC−1〜C−4及びブレーキB−1,B−2を係脱し得る油圧サーボ51,52,53,54,61,62と、パーキング切換えバルブ32と、パーキングシリンダ33と、元圧切換えバルブ35と、振分け切換えバルブ36と、これらバルブ32,35,36を制御する第1〜第3ソレノイドバルブS1,S2,S3と、を備えており、制御部6からの制御信号に基づいてこれらソレノイドバルブSL1〜SL5,S1〜S3を電気的に制御し、上記摩擦係合要素C−1〜C−4,B−1,B−2を係脱させている。
【0035】
なお、本油圧制御装置20における第3ソレノイドバルブS3以外のソレノイドバルブ、即ちリニアソレノイドバルブSL1〜SL5、並びに第1及び第2ソレノイドバルブS1,S2は、非通電時(以下、「オフ」ともいう。)に入力ポートと出力ポートとを遮断し、通電時(以下、「オン」ともいう。)に連通する、いわゆるノーマルクローズ(N/C)タイプのものが用いられており、反対に第3ソレノイドバルブS3だけにノーマルオープン(N/O)タイプのものが用いられている。
【0036】
また、上記ライン圧発生源5によって調圧されたライン圧Pは、それぞれ油路a,a及び油路aを介して、上記ノーマルクローズ(N/C)タイプの第1及び第2ソレノイドバルブS1,S2の入力ポートS1a,S2aに入力されていると共に、油路a,a,a,aを介して、ノーマルオープン(N/O)タイプの第3ソレノイドバルブS3の入力ポートS3aに入力されている。
【0037】
更に、上記ライン圧Pは、不図示のパーキング装置のパークシリンダ33を作動させる元圧として、油路a,aを介してパーキング切換えバルブ32の入力ポート32bに入力されていると共に、リニアソレノイドバルブSL1〜SL5を作動させる元圧として、それぞれ油路a,a,a及び油路a,a,a,aを介して元圧切換えバルブ35の入力ポート35b及び、振分け切換えバルブ36の入力ポート36bに入力されている。
【0038】
[油圧制御装置の変速操作部の構成]
ついで、油圧制御装置20の変速操作部の構成について説明する。上記パーキング切換えバルブ32は、1本のスプール32pと、該スプール32pの一端側に縮設されて該スプール32pを図中上側に付勢するスプリング32sとを有していると共に、その両端部にはそれぞれ第1制御油室32a及び第2制御油室32cが形成されており、該第1制御油室32aには油路b,b1を介して第1ソレノイドバルブ(解除信号圧出力ソレノイドバルブ)S1の出力ポートS1bからの信号圧PS1が入力され、第2制御油室32cには油路cを介して第2ソレノイドバルブ(非解除信号圧出力ソレノイドバルブ)S2の出力ポートS2bからの信号圧PS2が入力されるように構成されている。
【0039】
また、パーキング切換えバルブ32は、排出ポートEXと、ライン圧Pが供給される入力ポート32bと、スプール32pの移動に応じて入力ポート32bと連通又は遮断される出力ポート32dと、を有しており、該出力ポート32dは、パーキング装置(不図示)のパーキングシリンダ33に油路nを介して連通している。そのため、第1ソレノイドバルブS1から第1油圧室32aに信号圧PS1が出力されると、スプール32pが右半位置になり、ライン圧Pがパーキングシリンダ33に入力されて、パーキング解除状態になるように構成されている。なお、上記信号圧PS1は、油路bから分岐して、油路bを介して振分け切換えバルブ36の第1制御油室(ロック解除圧入力油室)36aにも入力される。
【0040】
一方、ノーマルオープンタイプの上記第3ソレノイドバルブS3は、非通電状態にあっては、ライン圧Pを信号圧PS3として出力ポートS3bから元圧切換えバルブ35の制御油室35aに油路jを介して出力し、通電状態にあっては、該信号圧PS3を遮断するように構成されている。
【0041】
元圧切換えバルブ35は、上記制御油室35aと、ライン圧Pが入力される入力ポート35bと、出力ポート35cと、入力(出力)ポート35dと、出力ポート35eと、入力ポート35fと、排出ポートEXと、スプール35pと、該スプール35pを図の上方に付勢するスプリング35sとを有している。該スプール35pは、制御油室35aに上記信号圧PS3が入力された際に図の下方に移動して右半位置にされ、それ以外はスプリング35sの付勢力により図の上方に移動して左半位置にされる。
【0042】
そして、上記出力ポート35cは、左半位置において、入力ポート35bと連通し、ガレージシフト時(N−D,N−R,P−D,P―R時)に使用される可能性のあるソレノイドバルブSL2,SL1,SL4,SL5の入力ポートSL2a,SL1a,SL4a,SL5aに、油路a〜a11を介して、ライン圧Pを元圧として供給するように構成されている。
【0043】
また、上記元圧切換えバルブ35が右半位置において、入力ポート35bは、出力ポート35eと連通し、該出力ポート35eは、振分け切換えバルブ36のポート36e,36f及び油路d,d1を介して、元圧切換えバルブ35の入力ポート35fと連通する。そして、該入力ポート35fが、出力ポート35d及び油路d3,d4を介してリニアソレノイドバルブSL2,SL3の排出ポートSL2c,SL3cと接続することにより、ソレノイド・オールフェール時にあっては、入力ポート35bに入力されたライン圧Pが上記リニアソレノイドバルブSL2及びSL3の排出ポートSL2c,SL3cに逆入力されるように構成されている。
【0044】
また、上記振分け切換えバルブ36は、上述したポート36e,36fの他に、第1ソレノイドバルブS1の信号圧PS1が入力される第1制御油室36aと、リニアソレノイドバルブSL2の出力ポートSL2bから出力される係合圧PSL2を入力する入力ポート36cと、油路eを介してブレーキB−2の油圧サーボ62に接続している出力ポート36gと、油路eを介してクラッチC−2の油圧サーボ52に接続している出力ポート36hと、リニアソレノイドバルブSL1の出力ポートSL1bからの係合圧PSL1を油路gを介して入力する第2制御油室(前進係合圧入力油室)36iと、スプール36pと、該スプール36pを図の下方に付勢するスプリング(付勢手段)36sと、詳しくは後述する入力ポート36b及び出力ポート36dと、を有している。
【0045】
そして、リニアソレノイドバルブSL2からの係合圧PSL2を、非走行レンジ(P及びNレンジ),Rレンジ及び前進1速段エンジンブレーキの場合には、スプール36pが左半位置になって油圧サーボ62に出力し、それ以外の場合には、スプール36pが右半位置になって上記係合圧PSL2を油圧サーボ52に、振分けて出力するように構成されている。
【0046】
該振分け切換えバルブ36のスプール36pは、第1制御油室36aに第1ソレノイドバルブS1からの信号圧PS1が入力されない状態で第2制御油室36iに出力ポートSL1bから係合圧PSL1が入力されると、図の上方に移動して右半位置になる。また、スプール36pは、図中最下部に形成された小径ランド部と、その上方の大径ランド部とを有しており、該小径ランド部と大径ランド部間に設けられた油室(元圧通過油室)36jに、上記入力ポート36bからライン圧Pが入力され得るように構成されている。従って、振分け切換えバルブ36は、スプリング36sの付勢力に抗してスプール36pが上方に移動した右半位置になると入力ポート36bから上記油室36jにライン圧Pが入力されて、上側の大径ランド部と下側の小径ランド部との受圧面積の差に基づき、該スプール36pがスプリング36sの付勢方向と逆方向、即ち図の上方に該スプリング36sの付勢力よりも強い力で付勢されてロックされる。該ロック状態において第1制御油室36aに出力ポートS1bからの信号圧PS1が入力されると、該信号圧PS1による付勢力とスプリング36sによる付勢力とが相俟って上記ロックの付勢力に打ち勝つため、スプール36pは図の下方に移動して左半位置にされる。
【0047】
ついで、上述した振分け切換えバルブ36の入力ポート36b及び出力ポート36dについて詳しく説明する。入力ポート36bには油路aを介してライン圧Pが入力され、出力ポート36dは、油路a12を介して、リニアソレノイドバルブSL3の入力ポートSL3aと接続しており、これら入力ポート36b及び出力ポート36dは、スプール36pが右半位置の際には連通し、左半位置の際には遮断されるように構成されている。
【0048】
また、上記油路a,a12は、リニアソレノイドバルブSL3へ元圧を供給する元圧供給油路a,a,a,a,a12を形成しており、これら油路a,a12が入力ポート36b及び出力ポート36dに接続することによって振分け切換えバルブ36は、リニアソレノイドバルブSL3の元圧供給油路a,a,a,a,a12に介在して配置されている。
【0049】
上述したように、振分け切換えバルブ36のスプール36pは、P、R、Nレンジ及び前進1速段エンジンブレーキ時には、左半位置になり、それ以外の場合には、スプール36pが右半位置になるため、ガレージシフト(N−R,N−D,P―D、P―R)時に使用されないリニアソレノイドバルブSL3への元圧は、P、R、Nレンジ及び前進1速段エンジンブレーキ時には、振分け切換えバルブ36において遮断され、それ以外の場合には、スプール36pが右半位置になって振分け切換えバルブ36で遮断されることなく供給されるように構成されている。
【0050】
[各変速段の作用]
続いて、上記油圧制御装置20における各変速段の作用について、図4の本自動変速機の作動表及び図3とに基づいて説明する。
【0051】
[前進1速段〜前進8速段時の作用]
シフトレンジがDレンジ(前進1速段エンジンブレーキ時を除く)にある場合、制御部6からの制御信号により、第1及び第2ソレノイドバルブS1,S2がオフされると共に、第3ソレノイドバルブS3はオンされる。そのため、これら第1乃至第3ソレノイドバルブS1〜S3の出力ポートS1b〜S3bのいずれからも信号圧PS1
S3は出力されないが、パーキング切換えバルブ32のスプール32pは、大径ランド部と小径ランド部の受圧面積の差によって右半位置にロックされており、パーキングシリンダ33にライン圧Pが供給されてパーキング解除状態が保たれる。
【0052】
また、スプリング35sの付勢力により、元圧切換えバルブ35は、スプール35pが左半位置となるため、入力ポート35bに作用するライン圧Pは、出力ポート35cからリニアソレノイドバルブSL1,SL2,SL4,SL5の全てに向けて出力される。
【0053】
ここで、リニアソレノイドバルブSL1をオンすると、その出力ポートSL1bから油圧サーボ51に係合圧PSL1が供給されてクラッチC−1が係合し、ワンウェイクラッチF−1の係止と相俟って、前進1速段が達成される。
【0054】
ここで、リニアソレノイドバルブSL1,SL5をオンすると、リニアソレノイドバルブSL1にあっては、その出力ポートSL1bから油圧サーボ51に係合圧PSL1が供給されてクラッチC−1が係合し、またリニアソレノイドバルブSL5にあっては、その出力ポートSL5bから油圧サーボ61に係合圧PSL5が供給されて第1ブレーキB−1が係止され、これにより、前進2速段が達成される。
【0055】
そして、上記前進2速段の際と同様に、制御部6により図4の作動表に示すとおりにリニアソレノイドバルブSL1〜SL5を制御して、係合圧PSL1〜PSL5を出力することにより、図2の係合表に示す通りに摩擦係合要素が係合し、前進3速段から前進8速段の各変速段が達成される。
【0056】
なお、前進1速段のエンジンブレーキ時には、第1ソレノイドS1がオンされて、振分け切換えバルブ36が左半位置になると共に、リニアソレノイドバルブSL1及びSL2がオンされる。そして、リニアソレノイドバルブSL1から油圧サーボ51に係合圧PSL1が出力されるとクラッチC−1が係合し、リニアソレノイドバルブSL2から係合圧PSL2が出力されると、該係合圧PSL2は振分け切換えバルブ36の出力ポート36gから油路e1を介して油圧サーボ62に出力され、ブレーキB−2が係止される。これにより、前進1速段のエンジンブレーキが達成される。
【0057】
[ソレノイドバルブ・オールオフフェール時の作用]
ついで、ソレノイド・オールオフフェール時について説明する。本自動変速機の油圧制御装置20にあっては、ソレノイドバルブ、各種切換えバルブ、各種コントロールバルブ等における故障を検出した際に、制御部6の制御で、全てのソレノイドバルブをオフにするソレノイド・オールオフフェールモードに移行する。なお、例えば断線・ショート等が生じた場合にあっても、同様にソレノイドがオールオフとなるので、本明細書中にあっては、これらの状態も含め、ソレノイド・オールオフフェールモードとする。
【0058】
例えば車輌がDレンジで走行中に、何らかの原因によって、ソレノイド・オールオフフェールモードとされると、全てのソレノイドバルブがオフされる(故障時となる)。この際、全てのソレノイドバルブがオフされることにより、ノーマルオープンタイプの第3ソレノイドバルブS3だけ信号圧PS3を出力する状態となり、他のソレノイドバルブは信号圧ないし係合圧の出力を停止するため、特にリニアソレノイドバルブSL2,SL3にあっては、出力ポートSL2b,SL3bと排出ポートSL2c,SL3cとが連通した状態とされる。
【0059】
また、元圧切換えバルブ35にあっては、オンしている第3ソレノイドバルブS3の信号圧PS3が制御油室35aに入力され、スプリング35sの付勢力に打勝って、スプール35pが右半位置(逆入力圧出力位置)に切換わるため、入力ポート35bに入力されるライン圧Pは出力ポート35eから出力されて、振分け切換えバルブ36の入力ポート36eに入力される。この際、該振分け切換えバルブ36は、上述のように大径ランド部と小径ランド部との受圧面積の差に基づき右半位置にロックされているため、入力ポート36eに入力されたライン圧Pは、出力ポート36fから元圧切換えバルブ35の逆圧入力ポート35fに入力され、出力ポート35dを介して、リニアソレノイドバルブSL2,SL3の排出ポートSL2c,SL3cに、それぞれ逆入力圧P35dとして入力される。
【0060】
これにより、排出ポートSL2cから逆入力圧P35dが入力されたリニアソレノイドバルブSL2は、排出ポートSL2cから係合圧PSL2として出力され、振分け切換えバルブ36の入力ポート36cから出力ポート36hを介して油圧サーボ52に供給され、第2クラッチC−2が係合される。同時に、排出ポートSL3cから逆入力圧P35dが入力されたリニアソレノイドバルブSL3は、その出力ポートSL3bから油圧サーボ53に係合圧PSL3を供給するため、これにより、第3クラッチC−3が係合される。従って、上記第2クラッチC−2の係合と相俟って、前進7速段が達成される。
【0061】
以上のように、車輌が前進レンジで走行中のソレノイド・オールオフフェールモードにあっては、第2クラッチC−2と第3クラッチC−3とが係合された前進7速段とされる。
【0062】
[P,N,Rレンジ時及びガレージシフト時の作用]
一方、シフトレンジがPレンジにある場合、制御部6からの制御信号により、第1ソレノイドバルブS1がオフされると共に、第2及び第3ソレノイドバルブS2,S3はオンされて、出力ポートS2bから信号圧PS2が出力される。これにより、パーキング切換えバルブ32では、第2制御油室32cのみに信号圧PS2が作用するため、スプリング32sの付勢力と相俟ってスプール32pが左半位置となり、入力ポート32bへのライン圧Pの入力が遮断される。すると、不図示のパーキングロッドがスプリングの付勢力によってパーキングポール側に移動し、該パーキングポールがウエッジにより押圧されてパークギヤと噛合うことによりパーキング状態となる。
【0063】
この際、制御部6により第3ソレノイドバルブS3はオンされており、元圧切換えバルブ35は、その制御油室35aに出力ポートS3bからの信号圧PS3が作用されず、スプール35pが左半位置となる。それにより、入力ポート35bに作用するライン圧Pは、出力ポート35cから、ガレージシフト(N−D,N−R,P−D,P―R)時に使用され得るリニアソレノイドバルブSL1,SL2,SL4,SL5の全てに向けて出力されるが、これらリニアソレノイドバルブSL1,SL2,SL4,SL5は何れもオフ状態であるため、係合圧PSL1,PSL2,PSL4,PSL5は出力されない。
【0064】
一方、上記ガレージシフト時に使用されることのないリニアソレノイドバルブSL3への元圧(ライン圧P)の供給は、スプリング36sによりスプール36pが左半位置に付勢されて、入力ポート36bが遮断されているため、元圧供給油路a,a,a,a,a12に介在している振分け切換えバルブ36において遮断される。
【0065】
また、シフトレバーがNレンジに操作されると、第2ソレノイドバルブS2がオフされると共に第1ソレノイドバルブS1がオンされる。すると、第1ソレノイドバルブS1からパーキング切換えバルブ32に制御圧PS1が出力され、スプール32pをスプリング32sの付勢力に抗して右半位置に移動させる。そして、ライン圧Pがパーキングシリンダ33へ供給されると、上述したウエッジがパーキングポールから離脱してパーキング状態が解除され、ニュートラル状態が達成される。
【0066】
ついで、ガレージシフト時の作用について説明をする。上記ニュートラル状態からシフトレバーがDレンジに操作されて、N−Dシフト制御が開始されると、図5(a)に示すように、リニアソレノイドバルブSL1がオンされてクラッチC−1の油圧サーボ51に係合圧PSL1が出力され始める。この係合圧PSL1は、係合ショックが生じないように、がた詰めフェーズ(図5のa)、係合フェーズ(図5のb)、完了制御フェーズ(図5のc)と序々に油圧を上昇させてクラッチC−1を締結させる。
【0067】
また、上記係合圧PSL1は油路g1を介して振分け切換えバルブ36の第2制御油室36iにも出力される。
【0068】
一方、上記N−D過渡中において、第1ソレノイドバルブS1は、ニュートラル時と同様にオンされており、振分け切換えバルブ36の第1制御油室36aには油路bを介して信号圧PS1が出力されている。
【0069】
そのため、振分け切換えバルブ36のスプール36pには、上記信号圧PS1及びスプリング36sによる図3の下方側に付勢する力と、係合圧PSL1による図3の上方側に付勢する力とが働くが、第2制御油室36i側のランド部が第1制御油室36a側のランド部に比して小径に形成されているため、これらランド部の受圧面積の差及びスプリング36sの付勢力によって、スプール36pはニュートラル時と同様に左半位置に維持される。
【0070】
よって、スプール36pにより入力ポート36bは遮断されており、ライン圧Pは、上述したN−D過渡中の間(クラッチC−1の係合制御中)、リニアソレノイドバルブSL3の入力ポートSL3aには供給されずに、振分け切換えバルブ36において遮断される。
【0071】
また、N−Dシフト制御が終了してDレンジになると、第1ソレノイドバルブS1がオフされて上記第1制御油室36aに第1ソレノイドバルブS1から制御圧PS1が出力されなくなるため、第2制御油室36iに作用する係合圧PSL1によりスプール36pが右半位置に移動する。そして、上述のリニアソレノイドバルブSL3へ上記ライン圧Pが元圧として入力ポート36bから供給されると共に、ワンウェイクラッチF―1が係合して前進1速段が達成される。
【0072】
また、この時、パーキング切換えバルブ32は、第1ソレノイドバルブS1からの制御圧PS1が出力されなくなっても、上述した大径ランド部と小径ランド部の受圧面積の差によってスプール32pが右半位置にロックされており、パーキングシリンダ33にライン圧Pを出力して、パーキング解除状態を維持している。
【0073】
なお、N−D時の係合ショックを低減する目的で、ガレージシフトの際に前進1速段ではなく、高速段側の前進2速段を目標変速段とするスコート制御を行う場合、リニアソレノイドバルブSL1及びSL5がオンされて、クラッチC−1が係合されると共に、ブレーキB−1が係止される。
【0074】
一方、ニュートラル状態からシフトレバーがRレンジに操作されると、制御部6によりリニアソレノイドバルブSL2,SL4がオンされ、出力ポートSL2bから振分け切換えバルブ36の入力ポート36cに係合圧PSL2が出力されるが、第1ソレノイドバルブS1のオンを維持して、スプール36pが左半位置になっていることで、上記係合圧PSL2は、上記入力ポート36cから出力ポート36gを介して油圧サーボ62に供給され、これにより、ブレーキB−2が係止される。同時に、上記リニアソレノイドバルブSL4のオン作動により、元圧切換えバルブ35の出力ポート35cからのライン圧Pが、出力ポートSL4bから油圧サーボ54に係合圧PSL4として調圧出力され、第4クラッチC−4が係合される。従って、上記第2ブレーキB−2の係止と相俟って、後進段Rが達成される。
【0075】
また、PレンジからRレンジに移行する場合は、第2ソレノイドバルブS2をオフすると共に第1ソレノイドバルブS1をオンし、振分け切換えバルブ36を左半位置にしてリニアソレノイドバルブSL3の元圧Pを遮断すると共に、パーキングシリンダ33にライン圧Pを供給してパーキング解除状態にする以外、上述したニュートラル状態からの移行と全く同様に作動する。
【0076】
ついで、PレンジからDレンジに移行する場合について説明をする。図5(b)に示すように、シフトレバーがPレンジからDレンジに操作されて、P−Dシフト制御が開始されると、N−Dシフト制御時と同様にリニアソレノイドバルブSL1がオンされてクラッチC−1の油圧サーボ51に係合圧PSL1が出力され始める。
【0077】
上記P−Dシフト制御が開始されると、オフされていた第1ソレノイドバルブS1がオンされ、パーキング切換えバルブ32の第1制御油室32a及び振分け切換えバルブ36の第1制御油室36aに信号圧PS1が出力される。
【0078】
パーキング切換えバルブ32の第1制御油室32aに信号圧PS1が出力されると、スプール32pが右半位置となり、パーキングシリンダ33にライン圧Pが供給されてパーキング解除状態になる。なお、スプール32pは、ライン圧Pによって右半位置にロックされる。
【0079】
また、C−1の油圧サーボ51に係合圧PSL1が出力された状態で、振分け切換えバルブ36の第1制御油室36aに信号圧PS1が出力されると、スプール36pには、該信号圧PS1及びスプリング36sによる図3の下方側に付勢する力と、係合圧PSL1による図3の上方側に付勢する力とが働くが、上述したランド部の受圧面積の差及びスプリング36sの付勢力によって、スプール36pは左半位置に移動する。
【0080】
それにより、スプール36pにより入力ポート36bが遮断され、ライン圧Pは、P−D過渡中はリニアソレノイドバルブSL3の入力ポートSL3aに供給されずに、振分け切換えバルブ36において遮断される。
【0081】
また、N−Dシフト制御が終了してDレンジになると、第1ソレノイドバルブS1がオフされ、上記第1制御油室36aに第1ソレノイドバルブS1から制御圧PS1が出力されなくなるため、第2制御油室36iに作用する係合圧PSL1によりスプール36pが移動して振分け切換えバルブ36は右半位置になる。そして、上述のリニアソレノイドバルブSL3へ元圧としてのライン圧Pが入力ポート36bから供給されると共に、ワンウェイクラッチF―1が係合して前進1速段が達成される。
【0082】
以上のように、多段式自動変速機の油圧制御装置20を構成したことにより、新たなバルブ類を追加せずに、振分け切換えバルブ36を元圧供給油路a,a,a,a,a12に介在させることによって、ガレージシフト時に使用することのない上記ソレノイドバルブSL3の元圧を、振分け切換えバルブ36において遮断することができる。
【0083】
それにより、径が大きいため、振分け切換えバルブ36に比してバルブボディとの隙間などから漏れるオイル量が多い、ソレノイドバルブSL3に常に元圧であるライン圧Pを供給する必要がなく、オイルの消費流量を低減することができる。
【0084】
特に、振分け切換えバルブ36は、P,R,Nシフト時及び前進1速段のエンジンブレーキ時と、それ以外の変速段(エンジンブレーキ時を除く前進1速段〜前進8速段)において、スプール36pが切換わるため、エンジンからの入力回転数が低く、クラッチC−1(及びB−1)を係合させるために油圧を使用して油圧不足に陥りやすいガレージシフト時において、該ガレージシフトに使用しないリニアソレノイドバルブSL3の元圧を遮断することができる。また、P,R,Nシフト時においてリニアソレノイドバルブSL3の元圧を遮断することができる。
【0085】
そのため、オイルポンプの必要吐出量を減らすことができ、オイルポンプを小型化することにより、自動変速機全体の高効率化及びコンパクト化を図ることができ、以って、車輌の燃費も向上させることができる。また、新たにバルブの追加がないため、バルブボディが拡大して重力が増加し、車輌の燃費を悪化させるようなこともない。
【0086】
なお、エンジンブレーキ時に係合圧を出力するソレノイドバルブSL1,SL2以外の全てのソレノイドバルブSL3〜SL5の元圧供給回路a,a〜a,a10〜a12に、振分け切換えバルブ36を介在させても良いが、特にガレージシフト時に使用されないリニアソレノイドバルブの元圧供給回路に振分け切換えバルブ36を介在させることが望ましい。例えば、上述したスコート制御を行わない場合、リニアソレノイドバルブSL3だけでなく、リニアソレノイドバルブSL5への元圧も振分け切換えバルブ36を介して供給してもよい。
【0087】
また、以上説明した本実施の形態においては、本油圧制御装置20を前進8速段、及び後進1速段を可能とする多段式自動変速機1に適用する場合を一例として説明したが、勿論これに限るものではなく、特に前進変速段が多い自動変速機であれば好適であるものの、有段式の自動変速機であればどのようなものにも適用できる。
【符号の説明】
【0088】
6 制御部(制御手段)
20 油圧制御装置
32 パーキング切換えバルブ
33 パーキングシリンダ
36 振分け切換えバルブ
36p スプール
36s スプリング(付勢手段)
36i 第2制御油室(前進係合圧入力油室)
36j 油室(元圧通過油室)
S1 第1ソレノイドバルブ(解除信号圧出力ソレノイドバルブ)
S2 第2ソレノイドバルブ(非解除信号圧出力ソレノイドバルブ)
51,52,53,54,61,62 油圧サーボ
C−1,C―2,C―3,C−4 クラッチ(摩擦係合要素)
B―1,B―2 ブレーキ(摩擦係合要素)
SL1,SL2,SL3,SL4,SL5 リニアソレノイドバルブ(係合圧制御用ソレノイドバルブ)
a,a,a,a,a12 元圧供給油路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の摩擦係合要素、これら複数の摩擦係合要素を係脱させる複数の油圧サーボ、及び該油圧サーボより少なくとも1つ少ない複数の係合圧制御用ソレノイドバルブ、前記複数の係合圧制御用ソレノイドバルブの少なくとも1つからの係合圧を前記複数の油圧サーボのうちの2つに振分ける振分け切換えバルブを備え、該振分け切換えバルブが、少なくとも後進レンジ、非走行レンジ、及び前進レンジの特定変速段の際に前記2つの油圧サーボの一方に前記係合圧を供給し得る第1の位置となり、かつこれら以外の前進レンジの際に前記2つの油圧サーボの他方に前記係合圧を供給し得る第2の位置となるように構成された多段式自動変速機の油圧制御装置において、
前記複数の係合圧制御用ソレノイドバルブのうちの、前記前進レンジにおける前記特定変速段以外の所定変速段に係合される摩擦係合要素の油圧サーボに係合圧を出力し得る所定変速段用の係合圧制御用ソレノイドバルブに元圧を供給する元圧供給油路に前記振分け切換えバルブが介在するように構成し、
前記振分け切換えバルブが前記第1の位置の際に、前記所定変速段用の係合圧制御用ソレノイドバルブに対する元圧を遮断する、
ことを特徴とする多段式自動変速機の油圧制御装置。
【請求項2】
前記所定変速段は、前記非走行レンジと、前記前進レンジ又は前記後進レンジと、の切換え時に形成されない変速段である、
ことを特徴とする請求項1記載の多段式自動変速機の油圧制御装置。
【請求項3】
前記非走行レンジから前記前進レンジ又は前記後進レンジへの切換え制御時に、前記振分け切換えバルブを前記第1の位置とする制御手段を備えた、
ことを特徴とする請求項1又は2記載の多段式自動変速機の油圧制御装置。
【請求項4】
前記振分け切換えバルブは、前記第1の位置となるようにスプールを付勢する付勢手段と、前進発進時に係合される摩擦係合要素の油圧サーボに供給される係合圧を入力して前記付勢手段の付勢力に抗して前記スプールを前記第2の位置に切換えさせる前進係合圧入力油室と、前記第2の位置の際に前記元圧を入力して前記スプールを該第2の位置にロックすると共に、前記所定変速段用の係合圧制御用ソレノイドバルブに前記元圧を供給する元圧通過油室と、を有してなる、
請求項1乃至3いずれか記載の多段式自動変速機の油圧制御装置。
【請求項5】
前記非走行レンジにおけるパーキングレンジではパーキングシリンダに対する元圧を遮断してパーキング状態とし、かつ前記パーキングレンジ以外では前記パーキングシリンダに対する元圧を供給してパーキング解除状態とするように切換えられると共に、切換えられた位置に保持されるパーキング切換えバルブと、
前記パーキング解除状態を前記パーキング状態に切換える切換え信号圧を前記パーキング切換えバルブに出力する非解除信号圧出力ソレノイドバルブと、
前記パーキング状態を前記パーキング解除状態に切換える切換え信号圧を前記パーキング切換えバルブに出力する解除信号圧出力ソレノイドバルブと、を備え、
前記振分け切換えバルブは、前記第2の位置にロックされた前記スプールを前記第1の位置に復帰させるロック解除圧を入力するロック解除圧入力油室を有し、
前記解除信号圧出力ソレノイドバルブの信号圧を、前記振分け切換えバルブに対する前記ロック解除圧として兼用してなる、
請求項4記載の多段式自動変速機の油圧制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−223326(P2010−223326A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−70994(P2009−70994)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】