説明

多結晶シリコンウェーハ

【課題】太陽電池に適用することにより、高い光電変換効率を得られる多結晶シリコンウェーハを提供する。
【解決手段】硝酸、酢酸および弗酸からなる混酸液に浸漬し、転位を顕在化させたとき、ウェーハ表面において観察される亜粒界の占有率が10%以下であることを特徴とする多結晶シリコンウェーハ。前記亜粒界の占有率を6%以下にすると、さらに光電変換効率を高めることができるので望ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池に使用される多結晶シリコンウェーハに関し、さらに詳しくは、太陽電池に適用することにより高い光電変換効率を得ることができる、亜粒界の形成が少ない多結晶シリコンウェーハに関する。
【0002】
以下の説明で、「亜粒界」とは、結晶粒内において、増殖した転位によって形成された複数のネットワークによって仕切られた複数の粒をいう。
【背景技術】
【0003】
近年、CO2排出による地球温暖化問題やエネルギー資源の枯渇問題が深刻化しており、それらの問題の対応策の一つとして、無尽蔵に降りそそぐ太陽光エネルギーを活用する太陽光発電が注目されている。太陽光発電は、太陽電池を使用して太陽光エネルギーを直接電力に変換する発電方式であり、太陽電池の基板には、多結晶のシリコンウェーハを用いるのが主流である。
【0004】
太陽電池用の多結晶シリコンウェーハは、一方向性凝固の多結晶シリコン鋳塊を素材とし、この鋳塊をスライスして製造される。このため、太陽電池の普及を図るには、シリコンウェーハの品質を確保するとともに、コストを低減する必要があり、その前段階で、高品質のシリコンインゴットを安価に製造することが要求される。この要求に対応できる方法として、例えば、特許文献1や特許文献2に開示されるように、電磁誘導を利用した連続鋳造方法であるEMC法(Electromagnetic Casting法、電磁鋳造法)が実用化されている。
【0005】
図1は、EMC法に用いる代表的な連続鋳造装置(以下、「EMC炉」という。)の構成を示す模式図である。同図に示すように、EMC炉はチャンバー1を備える。チャンバー1は、内部を外気から隔離し鋳造に適した不活性ガス雰囲気に維持する二重壁構造の水冷容器である。チャンバー1の上壁には、開閉可能なシャッター2を介し、図示しない原料供給装置が連結されている。チャンバー1は、上部の側壁に不活性ガス導入口5が設けられ、下部の側壁に排気口6が設けられている。
【0006】
チャンバー1内には、無底冷却ルツボ7、高周波コイル8、アフターヒーター9および均熱筒10が配置されている。無底冷却ルツボ7は、融解容器としてのみならず、鋳型としても機能し、熱伝導性および電気伝導性に優れた金属(例えば、銅)製の角筒体で、チャンバー1内に吊り下げられている。この無底冷却ルツボ7は、上部を残して周方向で複数の短冊状の素片に分割され、内部を流通する冷却水によって強制冷却される。
【0007】
高周波コイル8は、無底冷却ルツボ7を囲繞するように、無底冷却ルツボ7と同芯に周設され、図示しない電源装置に接続されている。アフターヒーター9は、無底冷却ルツボ7の下方に無底冷却ルツボ7と同芯に複数連設され、無底冷却ルツボ7から引き下げられるインゴット3を加熱して、その軸方向に適切な温度勾配を与える。均熱筒10は、アフターヒーター9の下方にアフターヒーター9と同芯に配置され、インゴット3を長時間かけて室温まで冷却する。
【0008】
また、チャンバー1内には、原料供給装置に連結されたシャッター2の下方に原料導入管11が取り付けられている。シャッター2の開閉に伴って、粒状や塊状のシリコン原料12が原料供給装置から原料導入管11内に供給され、無底冷却ルツボ7内に装入される。
【0009】
チャンバー1の底壁には、均熱筒10の下方に、インゴット3を抜き出すための引出し口4が設けられ、この引出し口4にはガスシール部が設けられている。インゴット3は、引出し口4を貫通して下降する支持台15によって支えられながら引き下げられる。
【0010】
無底冷却ルツボ7の上方には、プラズマトーチ14が昇降可能に設けられている。プラズマトーチ14は、図示しないプラズマ電源装置の一方の極に接続され、他方の極は、インゴット3側に接続されている。このプラズマトーチ14は、下降させた状態で無底冷却ルツボ7内に挿入される。
【0011】
このようなEMC炉を用いたEMC法では、無底冷却ルツボ7にシリコン原料12を装入し、高周波コイル8に交流電流を印加するとともに、下降させたプラズマトーチ14に通電を行う。このとき、無底冷却ルツボ7を構成する短冊状の各素片が互いに電気的に分割されていることから、高周波コイル8による電磁誘導に伴って各素片内で渦電流が発生し、無底冷却ルツボ7の内壁側の渦電流が無底冷却ルツボ7内に磁界を発生させる。これにより、無底冷却ルツボ7内のシリコン原料12は電磁誘導加熱されて融解し、溶融シリコン13が形成される。また、プラズマトーチ14とシリコン原料12、さらには溶融シリコン13との間にプラズマアークが発生し、そのジュール熱によっても、シリコン原料12が加熱されて融解し、電磁誘導加熱の負担を軽減して効率良く溶融シリコン13が形成される。
【0012】
溶融シリコン13は、無底冷却ルツボ7の内壁の渦電流に伴って生じる磁界と、溶融シリコン13の表面に発生する電流との相互作用により、溶融シリコン13の表面の内側法線方向に力(ピンチ力)を受けるため、無底冷却ルツボ7と非接触の状態に保持される。無底冷却ルツボ7内でシリコン原料12を融解させながら、溶融シリコン13を支える支持台15を徐々に下降させると、高周波コイル8の下端から遠ざかるにつれて誘導磁界が小さくなることから、発熱量およびピンチ力が減少し、さらに無底冷却ルツボ7からの冷却により、溶融シリコン13は外周部から凝固が進行する。そして、支持台15の下降に伴ってシリコン原料12を連続的に装入し、融解および凝固を継続することにより、溶融シリコン13が一方向に凝固し、インゴット3を連続して鋳造することができる。
【0013】
このようなEMC法によれば、溶融シリコン13と無底冷却ルツボ7との接触が軽減されるため、その接触に伴う無底冷却ルツボ7からの不純物の汚染が防止され、高品質のインゴット3を得ることができる。しかも、連続鋳造であることから、安価に一方向凝固されたインゴット3を製造することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特許第3005633号公報
【特許文献2】特許第2696664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
太陽電池を用いた太陽光発電の活用には、発電効率に相当する光電変換効率の向上が重要である。本発明者らが検討したところ、太陽電池に適用される多結晶シリコンウェーハの亜粒界が少ないほど光電変換効率が高いことを知見した。
【0016】
本発明は、上記知見に鑑みてなされたものであり、亜粒界の形成が少なく、光電変換効率の高い太陽電池を得ることのできる多結晶シリコンウェーハを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、上記目的を達成するため、多結晶シリコンウェーハの亜粒界量とこの多結晶シリコンウェーハを適用した太陽電池の光電変換効率との関係について、さらに検討した。その結果、多結晶シリコンウェーハを、硝酸1.0体積%、酢酸10体積%および弗酸1.0体積%からなる混酸液に浸漬し、転位を顕在化させたときに表面に観察される亜粒界の占有率が10%以下である場合に、良好な光電変換効率が得られることを知見した。
【0018】
本発明は、この知見に基づいて完成されたものであり、硝酸、酢酸および弗酸からなる混酸液に浸漬し、転位を顕在化させたとき、ウェーハ表面において観察される亜粒界の占有率が10%以下であることを特徴とする多結晶シリコンウェーハを要旨とする。
【0019】
本発明において、「占有率」とは、観察される亜粒界が多結晶シリコンウェーハの表面に占める面積の比率をいう。
【0020】
本発明の多結晶シリコンウェーハは、前記亜粒界の占有率が6%以下であることが望ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の多結晶シリコンウェーハは、表面において観察される亜粒界の占有率が10%以下であるため、太陽電池に適用することにより、高い光電変換効率を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】EMC炉の構成を示す模式図である。
【図2】無底冷却ルツボにおける溶融シリコンの冷却挙動を示す模式図である。
【図3】鋳造方向に対して垂直に切断したインゴットの断面写真である。
【図4】アフターヒーターで加熱中のインゴットの模式図である。
【図5】エッチング処理後の多結晶シリコンウェーハ表面の欠陥像であり、同図(a)は画像撮影装置で観察された状態の画像、同図(b)は二値化した画像を示す。
【図6】インゴット(EMC結晶)を分割する位置を示す模式図である。
【図7】光電変換効率測定用の試料の作成手順を示す工程図であり、同図(a)は切り出した状態のウェーハ、同図(b)はダメージ層を除去したウェーハ、同図(c)はn+層およびPSG膜が形成されたウェーハ、同図(d)は保護フィルムを貼付したウェーハ、同図(e)はシリコンが露出した状態のウェーハ、同図(f)はアルミニウム電極が蒸着されたウェーハ、同図(g)は銀電極を塗布したウェーハ、同図(h)は銀電極を焼成したウェーハを、それぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の多結晶シリコンウェーハは、上述の通り、硝酸、酢酸および弗酸からなる混酸液に浸漬し、転位を顕在化させたとき、ウェーハ表面において観察される亜粒界の占有率が10%以下であることを特徴とする。
【0024】
本発明者らは、本発明の多結晶シリコンウェーハの製造方法を確立するため、EMC法で鋳造中のインゴットにおける亜粒界の形成を抑制する方法について検討した。
【0025】
図2は、無底冷却ルツボにおける溶融シリコンの冷却挙動を示す模式図である。高周波コイル8を用いてインゴット3を育成するEMC法では、インゴット3を水冷された無底冷却ルツボ7で局所的に冷却する。そのため、溶融シリコン13と共存した状態(固液共存状態)のインゴット3では、外周部と中心部との温度差が必然的に大きくなり、同図に示すように、固液界面16の形状が大きく下に凸の状態となる。それとともに、インゴット13を形成する結晶粒の成長方向は結晶面内(鋳造方向に垂直な同一面内)で変化する。すなわち、インゴット13の外周近傍では水平(鋳造方向に垂直)に近く、インゴット13の中心に近づくほど鉛直方向上向き(鋳造方向の反対方向)に近くなる。インゴット13の外周近傍では結晶粒径の小さな微細晶(チル晶)が形成され、中心部ではやや結晶粒径の大きな柱状晶が形成される。
【0026】
図3は、鋳造方向に対して垂直に切断したインゴットの断面写真である。固液界面の形状が大きく下に凸の状態となると、上述のように結晶面内で結晶粒の成長方向が変化するため、同図に示すように、インゴットの外周では微結晶(チル晶)が形成され、中心部では柱状晶が形成される。
【0027】
固化したインゴット3は、成長軸の下方向にゆっくり引き出され、均熱筒に入った後、長時間かけて室温まで冷却される。インゴット3中の結晶欠陥はこの冷却過程で形成されるため、固化後の熱履歴を制御することにより結晶欠陥を低減することができる。
【0028】
一般的に、多結晶中に存在する主な結晶欠陥は転位である。多結晶を構成する結晶粒内で発生した転位は、結晶粒内外の温度差で生じる熱応力を駆動力として結晶粒内を伝播し、やがては結晶粒界で停止する。さらに大きな熱応力が付加されると、結晶粒内で発生した転位が増殖し、やがては小さなネットワークを形成する。この転位のネットワークが結晶粒内で複数形成されると、ひとつの結晶粒の中に転位で仕切られた複数の粒が形成されることになり、これを結晶学的に亜粒界と呼ぶ。
【0029】
上述のように、本発明者らは、太陽電池に適用される多結晶シリコンウェーハ中の亜粒界が少ないほど、光電変換効率が高いことを知見した。そこで、以下では亜粒界の発生源である転位の発生を抑制する方法について考える。
【0030】
図4は、アフターヒーターで加熱中のインゴットの模式図である。亜粒界は、転位の伝播と増殖の繰り返しの素過程で形成されるため、必要以上に転位を伝播させなければ亜粒界は形成されない。インゴットの連続鋳造時の転位の伝播の駆動力は、結晶面内の熱応力である。そのため、同図に示す、固化後のインゴット3の外周部3aと中心部3bの温度差を小さくすれば、結晶面内の熱応力を小さくし、転位の伝播を抑制することができる。
【0031】
しかし、実際にはインゴット3の外周部3aと中心部3bの温度差を0(ゼロ)にすることは不可能であり、すなわち結晶面内の熱応力は常に発生している。
【0032】
結晶面内の熱応力を小さくする他の方法としては、転位が伝播しやすい、すなわち転位の伝播速度が大きい固液界面近傍の高温帯(シリコンの融点から1200℃の温度帯)を徐冷する方法が挙げられる。具体的には、シリコンの固液界面近傍の温度制御に用いられるアフターヒーターの温度、熱量を制御することにより、インゴットの表面の温度を意図的に高くして、結晶面内の熱応力を小さくする方法である。この方法によれば、結晶面内の熱応力を小さくし、亜粒界の形成源である転位の伝播を抑制することができる。
【0033】
高温帯よりも低温の、1200℃未満の温度帯においても転位は伝播する。しかし、この温度帯では、転位の伝播速度は高温帯と比較すると小さいため結果的に徐冷による欠陥低減効果を得ることができない。
【0034】
なお、従来のEMC法では、シリコンの固液界面近傍の温度は、湯漏れ防止やクラック低減対策として制御された因子であり、結晶欠陥、特に亜粒界の低減のためには従来制御されていなかった。
【0035】
結晶欠陥の低減効果の確認、すなわちインゴットから切り出された多結晶シリコンウェーハの表面における、亜粒界の占有率の測定には、以下の方法を適用できる。
【0036】
図5は、エッチング処理後の多結晶シリコンウェーハ表面の欠陥像であり、同図(a)は画像撮影装置で観察された状態の画像、同図(b)は二値化した画像を示す。まず、多結晶シリコンウェーハを、多結晶用途のエッチング液である硝酸、酢酸および弗酸の混酸液に浸漬し、エッチング処理を施す。エッチング処理を施した多結晶シリコンウェーハは、画像撮影装置で観察すると同図(a)に示すように、欠陥の密度が高い領域ほど白く、低い領域ほど黒く見える。光学顕微鏡で観察すると、この欠陥は亜粒界の集合体であることが確認できる。そして、画像撮影装置で得られた画像を、同図(b)に示すように白黒二値化し、多結晶シリコンウェーハの表面に占める白色の部分の領域の比率を算出することにより、亜粒界の占有率を算出することができる。
【実施例】
【0037】
本発明の多結晶シリコンウェーハの効果を確認するため、以下の試験を行った。
【0038】
1.試験方法
EMC法によって、4本のインゴット(以下、「EMC結晶」という。)を連続鋳造した。チャージ量は2.8m、鋳造長さは7m、トップ部分の抵抗の目標値は1.5Ωcmとした。各EMC結晶の鋳造時の、結晶の固液界面近傍温度を制御するアフターヒーターの設定温度は、表1に示す値とした。
【0039】
【表1】

【0040】
図6は、EMC結晶を分割する位置を示す模式図である。図6に示すように、EMC結晶20は鋳造方向に垂直な面において縦2個、横3個に分割し、鋳造方向を長手方向とする6個の分割結晶21とした。本実施例では、斜線を付した位置の分割結晶21を用いて試験を行った。
【0041】
表1に示すように、結晶Aは、製造方法を方法1として、アフターヒーターの設定温度を従来の温度(1275℃)で鋳造した。結晶B〜Fは、製造方法を方法2〜6として、それぞれアフターヒーターの設定温度を1270℃、1265℃、1260℃、1280℃および1300℃とした。このようにして鋳造した結晶A〜Fのボトム側から2500mmの位置からそれぞれウェーハを切り出した。
【0042】
切り出したウェーハは、混酸液(硝酸1.0体積%、酢酸10体積%および弗酸1.0体積%)に1分間浸漬した。その後、画像撮影装置によって、前記図5に示すようなウェーハ表面の欠陥像を得た。画像撮影装置によって得たウェーハ表面の欠陥像に対して画像解析を行うことにより、亜粒界(欠陥像における白色の領域)の占有率を算出した。
【0043】
また、結晶A〜Fから切り出したウェーハを実際のソーラセルプロセスに導入し、光電変換効率を測定した。
【0044】
図7は、光電変換効率測定用の試料の作成手順を示す工程図であり、同図(a)は切り出した状態のウェーハ、同図(b)はダメージ層を除去したウェーハ、同図(c)はn+層およびPSG膜が形成されたウェーハ、同図(d)は保護フィルムを貼付したウェーハ、同図(e)はシリコンが露出した状態のウェーハ、同図(f)はアルミニウム電極が蒸着されたウェーハ、同図(g)は銀電極を塗布したウェーハ、同図(h)は銀電極を焼成したウェーハを、それぞれ示す。
【0045】
まず、図7(a)に示す切り出した状態のウェーハ40の表面に形成されたダメージ層41を、洗浄液を用いて同図(b)に示すように除去した。次に、ウェーハ40をリン(P)デポジション炉に導入し、POCl3を拡散源とするリン拡散を行った。これにより、同図(c)に示すようにウェーハ40の表層にはn+層42が形成され、表面にはPSG膜43が形成された。
【0046】
次に、図7(d)に示すように、ウェーハ40のおもて面に保護フィルム44を貼付し、この状態でn+層42をエッチング除去した。これにより、同図(e)に示すように、ウェーハ40の裏面はシリコンが露出した状態となった。次に、同図(f)に示すように、露出したウェーハ40の裏面にアルミニウム(Al)電極45を蒸着し、同図(g)に示すようにウェーハ40のおもて面にペースト状の銀(Ag)電極46を塗布した。最後に、同図(h)に示すように、熱処理によってペースト状の銀電極46を焼成した。これにより、銀電極46に含まれるフィラーがPSG膜43を突き抜けるため、銀電極46とn+層42とが接続される。ウェーハ40の裏面のアルミニウム電極45を先に形成したのは、銀の拡散による接合破壊を防ぐためである。
【0047】
このような方法で作成した試料に対し、ソーラーシミュレータおよびカーブトレーサー測定器により、光電変換効率を測定した。
【0048】
2.試験結果
各EMC結晶の、ウェーハ表面において観察される亜粒界の占有率および光電変換効率を、表2に示す。
【0049】
【表2】

【0050】
表2に示すように、結晶A〜C、EおよびFは亜粒界の占有率が10%以下であり、亜粒界の占有率を10%以下とする本発明の条件を満足した。結晶Dは亜粒界の占有率が12%であり、本発明の条件を満足しなかった。
【0051】
また、結晶Aと結晶Fの結果から、アフターヒーターの設定温度を従来よりも25℃高くすることによって、亜粒界の占有率が減少したことがわかる。これは、固液界面近傍の熱応力が緩和されたからである。
【0052】
光電変換効率は、亜粒界の占有率が6%以下である、結晶EおよびFから切り出したウェーハにおいて16.0%以上の優れた値であった。特に、亜粒界の占有率が最も小さい結晶Dから切り出したウェーハにおいて、16.3%という高い値が得られた。一方、亜粒界の占有率が10%よりも大きかった結晶Dから切り出したウェーハでは、12.9%と低い値であった。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の多結晶シリコンウェーハは、表面において観察される亜粒界の占有率が10%以下であるため、太陽電池に適用することにより、高い光電変換効率を得ることができる。
【符号の説明】
【0054】
1:チャンバー、 2:シャッター、 3:インゴット、3a:外周部、
3b:中心部、 4:引出し口、 5:不活性ガス導入口、 6:排気口、
7:無底冷却ルツボ、 8:高周波コイル、 9:アフターヒーター、
10:均熱筒、 11:原料導入管、 12:シリコン原料、 13:溶融シリコン、
14:プラズマトーチ、 15:支持台、 16:固液界面、 20:EMC結晶、
21:分割結晶、 40:ウェーハ、 41:ダメージ層、 42:n+層、
43:PSG膜、 44:保護フィルム、 45:アルミニウム電極、 46:銀電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硝酸、酢酸および弗酸からなる混酸液に浸漬し、転位を顕在化させたとき、ウェーハ表面において観察される亜粒界の占有率が10%以下であることを特徴とする多結晶シリコンウェーハ。
【請求項2】
前記亜粒界の占有率が6%以下であることを特徴とする請求項1に記載の多結晶シリコンウェーハ。

【図1】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−173753(P2011−173753A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−38634(P2010−38634)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(302006854)株式会社SUMCO (1,197)
【Fターム(参考)】