説明

多結晶シリコン破砕物の製造方法および多結晶シリコンの破砕装置

【課題】多結晶シリコンを所望の大きさの塊に破砕して、最大目的寸法の管理ができるとともに、破砕時に微粉の発生を抑えることができる、多結晶シリコン破砕物の製造方法および多結晶シリコンの破砕に適した破砕装置を提供する。
【解決手段】破砕装置1は、塊状の多結晶シリコンを破砕する1次破砕手段10と、1次破砕手段により破砕された多結晶シリコン破砕物のうち、サイズの大きい多結晶シリコン破砕物を破砕する2次破砕手段20とを有しており、1次破砕手段10の各ロール3に設けられる破砕歯5は、その先端面55が球面状に形成されるとともに、側面56が円錐面状に形成され、2次破砕手段20の各ロール3に設けられる破砕歯5は、その先端面55が球面状に形成されるとともに、側面56が円柱面状に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体用シリコン等の原料である多結晶シリコンを塊状に破砕して多結晶シリコン破砕物を製造する方法及び多結晶シリコンを破砕する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップに使用されるシリコンウエハは、例えばチョクラルスキー(CZ)法により製造された単結晶シリコンから作製される。そして、このCZ法による単結晶シリコンの製造には、例えば、シーメンス法によって棒状に形成された多結晶シリコンを塊状に破砕したものが用いられる。
この多結晶シリコンの破砕は、図14に示すように、多結晶シリコンのロッドRを数mm〜数cmの大きさの塊Cにするものであり、ロッドRを熱衝撃等によって適宜の大きさに砕いた後に、ハンマーで直接叩き割る方法が一般的であるが、作業者の負担が大きく、棒状の多結晶シリコンから所望の大きさの塊を得るには非効率である。
【0003】
特許文献1には、棒状の多結晶シリコンをロールクラッシャーで破砕して塊状のシリコンを得る方法が開示されている。このロールクラッシャーは、一つのロールをハウジング内に収容したシングルロールクラッシャーであり、そのロール表面には複数の歯が形成され、これら歯とハウジングの内壁面との隙間に多結晶シリコンを挟むことによって連続的に衝撃を与えて棒状の多結晶シリコンを破砕する。
【0004】
一方、特許文献2及び特許文献3には、粗く破砕された塊状の多結晶シリコンを破砕する破砕装置が提案されている。これらの装置は、二つのロールを備え、各ロールの隙間に塊状の多結晶シリコンを挟んで破砕するダブルロールクラッシャーである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−122902号公報
【特許文献2】特表2009−531172号公報
【特許文献3】特開2006−192423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、この種のロールクラッシャーにおいては、特許文献1ではロールとハウジングの内壁面との間、特許文献2及び特許文献3では両ロールの間の間隙が、得られる破砕物の最大目的寸法として設定される。しかしながら、これらのロールとハウジングの内壁面との間や両ロール間の間隙に、破砕された塊状の多結晶シリコンが押し込まれ、すり潰されるために、多結晶シリコンの微粉が発生される割合が多くなっている。したがって、多結晶シリコンを所望の大きさにする際の破砕効率が低いものとなっている。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、多結晶シリコンを所望の大きさの塊に破砕して、最大目的寸法の管理ができるとともに、破砕時に微粉の発生を抑えることができる、多結晶シリコン破砕物の製造方法および多結晶シリコンの破砕に適した破砕装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の多結晶シリコンの破砕装置は、塊状の多結晶シリコンを破砕する1次破砕手段と、前記1次破砕手段により破砕された多結晶シリコン破砕物のうち、サイズの大きい多結晶シリコン破砕物を破砕する2次破砕手段とを有しており、各破砕手段は、平行な軸線回りに互いに逆回転する一対のロール間に多結晶シリコンを挟み込んで破砕する構成とされ、各ロールには、外周面上に複数の破砕歯が半径方向外方に突出して設けられ、前記1次破砕手段の各ロールに設けられる破砕歯は、その先端面が球面状に形成されるとともに、側面が円錐面状に形成され、前記2次破砕手段の各ロールに設けられる破砕歯は、その先端面が球面状に形成されるとともに、側面が円柱面状に形成されていることを特徴とする。
【0009】
1次破砕手段においては、各破砕歯の側面を円錐面状に形成し、各破砕歯の間に形成される空間を大きく設けていることから、破砕歯の先端で破砕された多結晶シリコン破砕物が押しつぶされて微細化されることを回避できる。
また、2次破砕手段においては、各破砕歯の側面を円柱面状に形成し、各破砕歯の間隔を平行に設けており、1次破砕手段で破砕しきれなかったサイズの大きい多結晶シリコン破砕物を、高い確率で所望の大きさに破砕することができる。
このように、二段階の破砕手段を構成することにより、多結晶シリコンを所望の大きさの塊に破砕して、最大目的寸法の管理ができるとともに、破砕時に多結晶シリコンの破砕物がすり潰されて過度に微細化されることを回避できるので、微粉が生成される割合を低減させることができる。
なお、破砕歯の先端面が球面状に形成されていることから、各破砕歯の先端と多結晶シリコンとは点接触状態となり、また、その破砕歯の側面も円錐面状又は円柱面状に形成されているので、破砕歯の側面が多結晶シリコンに接触する際には線接触状態となる。したがって、破砕歯と多結晶シリコンとは点接触又は線接触状態となるから、多結晶シリコンが破砕歯により押しつぶされて微細粉が生じることが防止される。
【0010】
また、本発明の多結晶シリコンの破砕装置において、前記1次破砕手段の一対のロールは同調して回転し、各ロールの前記破砕歯が最も近接する位置において、前記破砕歯の先端どうしが対向するように設けられているとよい。
この場合、各ロールの破砕歯は同じ角度及びタイミングで塊状の多結晶シリコンに当接するため、破砕後の多結晶シリコン破砕物のサイズを、各ロールの各破砕歯の間隔で形成される空間サイズ以下とすることができ、塊が押しつぶされて過度に微細化されることを回避することができる。
【0011】
さらに、本発明の多結晶シリコンの破砕装置において、前記1次破砕手段の両ロールに設けられる破砕歯は、高さの高い破砕歯と、高さの低い破砕歯とが少なくとも前記ロールの周方向又は幅方向に交互に設けられるとともに、両ロールの前記破砕歯どうしが最も近接する位置において、前記高さの高い破砕歯と、前記高さの低い破砕歯との先端どうしが対向するように設けられているとよい。
高さの異なる破砕歯を交互に設けることによって、両ロールの対向部において各破砕歯の先端どうしの間隔で形成される空間位置が、破砕歯の配置ごとにロールの半径方向にずれて配置される。これにより、細長い破砕物が投入されたとしても、ロールの周方向又は幅方向に隣接する破砕歯に接触して破砕されるので、破砕物が破砕されずに通過してしまうことを低減することができる。そして、破砕物を所望の大きさの塊に破砕することができる。
【0012】
本発明の多結晶シリコン破砕物の製造方法は、塊状の多結晶シリコンを破砕する1次破砕工程と、前記1次破砕工程により破砕された多結晶シリコン破砕物を複数のサイズに選別する選別工程と、前記選別工程により破砕された多結晶シリコン破砕物のうち、サイズの大きい多結晶シリコン破砕物を破砕する2次破砕工程とを有しており、各破砕工程は、平行な軸線回りに逆回転する一対のロール間に多結晶シリコンを挟み込むことにより破砕するものであり、各ロールには、外周面上に複数の破砕歯が半径方向外方に突出して設けられ、前記1次破砕工程では、先端面が球面状に形成されるとともに、側面が円錐面状に形成された破砕歯を有するロールにより破砕を行い、前記2次破砕工程では、先端面が球面状に形成されるとともに、側面が円柱面状に形成された破砕歯を有するロールにより破砕を行うことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の多結晶シリコン破砕物の製造方法は、前記破砕装置のいずれかを用いて多結晶シリコンの破砕物を製造することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、多結晶シリコンを所望の大きさの塊に破砕して、最大目的寸法の管理ができるとともに、破砕時に微粉の発生を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る多結晶シリコンの破砕装置の一実施形態を示す模式図である。
【図2】破砕手段の一部を透視した斜視図である。
【図3】ロール表面の斜視図である。
【図4】1次破砕手段の破砕歯ユニットの斜視図である。
【図5】破砕歯ユニットを背面から見た斜視図である。
【図6】1次破砕手段の破砕歯の斜視図であり、(a)が高さの低い破砕歯、(b)が高さの高い破砕歯を示す。
【図7】1次破砕手段のロール対向部における位置関係を説明する正面図である。
【図8】2次破砕手段の破砕歯ユニットの斜視図である。
【図9】2次破砕手段の破砕歯の斜視図である。
【図10】2次破砕手段のロール対向部における位置関係を説明する正面図である。
【図11】2次破砕手段のロール対向部における位置関係の一例を説明する正面図である。
【図12】第2実施形態における1次破砕手段の破砕歯ユニットを示す斜視図である。
【図13】第2実施形態における1次破砕手段のロール対向部における位置関係を説明する正面図である。
【図14】多結晶シリコンのロッドを破砕して塊状としたものを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る多結晶シリコンの破砕装置およびその破砕装置を用いた多結晶シリコン破砕物の製造方法の実施形態を図面を参照しながら説明する。
本実施形態の多結晶シリコンの破砕装置1は、直径120mm、長さ1800mmの多結晶シリコンロッドを粗破砕して最大辺の長さが90mm〜110mmの塊状としたものを破砕し、最大辺の長さが7mm〜45mmのサイズ(Sサイズ)の多結晶シリコン破砕物を製造する装置である。
破砕装置1は、図1に示すように、塊状の多結晶シリコンC1を所定の大きさに破砕する1次破砕手段10と、1次破砕手段10により破砕された多結晶シリコン破砕物C2を、複数のサイズに選別する選別手段40と、選別された多結晶シリコン破砕物のうち、サイズの大きい多結晶シリコン破砕物を破砕する2次破砕手段20とを有している。
なお、選別手段40は、多結晶シリコン破砕物を、最大辺の長さが45mmを超えるLサイズの破砕物CL、最大辺の長さが7mm以上45mm以下のSサイズの破砕物CS、最大辺の長さ7mm未満の微粉CPに選別するものである。選別手段40は、目開きの大きさが異なる二つのメッシュコンベア41,42により構成され、一段目のメッシュコンベア41でLサイズの破砕物CLと、Lサイズ未満の破砕物とを選別し、二段目のメッシュコンベア42でSサイズの破砕物CSと微粉CPとを選別することができる。
【0017】
各破砕手段10,20は、図2に示すように、ハウジング2内に、二つのロール3がその回転軸線4を水平方向に向けて平行に配置されており、両ロール3の外周面に複数の破砕歯5が半径方向外方に向けて突設されている。また、ハウジング2内には、両ロール3の両端部に、それら両ロール3の間隙の側方を閉塞する一対の仕切り板9が、ロール3の回転軸線4と直交し相互に一定の間隔をおいて平行に設けられている。
【0018】
各ロール3の外周面は、図3に示すように、均一な円弧面ではなく、軸方向に沿う長尺な平坦面31を周方向に連結して構成された多面体状に形成されている。各平坦面31の両端部にねじ穴32が設けられ、これら平坦面31に、図4に示す破砕歯ユニット8が一つずつ固定されている。
破砕歯ユニット8は、図4及び図5に示すように、ロール3の平坦面31に当接する短冊状の固定カバー7と、この固定カバー7に取り付けられる複数個の破砕歯5とから構成されている。
破砕歯5は、超硬合金により、図6及び図9に示すように、柱状部53とその基端部で拡径する若干の厚さのつば部54とが一体に形成された形状とされている。柱状部53は、その先端面55が球面状に形成されるとともに、側面56が円錐面状又は円柱面状に形成されている。つば部54は、円形板の両側部を柱状部53の長手方向と平行に切除した形状とされ、その切除した部分により、平面部57が180°反対向きに形成されている。
【0019】
また、固定カバー7は、ロール3の平坦面31と同じ幅、長さの短冊状に形成され、その長手方向に相互間隔をおいて破砕歯固定孔71が貫通状態に形成され、両端部にねじ挿通孔72が形成されている(図5参照)。これら破砕歯固定孔71は、図5に示すように、固定カバー7の厚さの半分までが破砕歯5の柱状部53の基端部の側面形状に対応した断面円形の嵌合孔73とされ、残りの半分が破砕歯5のつば部54に対応して平面部74を有する拡径部75とされている。そして、破砕歯5は、固定カバー7の嵌合孔73に柱状部53を嵌合した状態でつば部54が拡径部75に嵌合し、固定カバー7の平面部74とつば部54の平面部57とが当接することにより、固定カバー7に回り止めされた状態に保持される。
この場合、この固定カバー7は拡径部75をロール3表面に向け、嵌合孔73から破砕歯5の柱状部53を突出させた状態として、ロール3の各平坦面31に重ねられ、その両端部がねじ33によりロール表面に固定される。
【0020】
各破砕歯ユニット8は、隣接する破砕歯ユニット8の破砕歯5がロール3の周方向に連続して並ばないように、図4及び図8に示すように、破砕歯5が千鳥状に配列した状態に取り付けられる。
1次破砕手段10の両ロール3に設けられる各破砕歯5は、つば部54から破砕歯の先端までの突出高さが高い破砕歯5Lと、突出高さの低い破砕歯5Sの二種類で構成されている。各破砕歯5L,5Sは、図6に示すように、柱状部53の側面56が、つば部54から長手方向の途中位置までは円柱面状に形成されるが、その途中位置よりも先端部分は球面状に形成された先端面55に連続する円錐面状に形成されている。この場合、柱状部53の基端部に位置する、側面56の円柱面状部分56aは、固定カバー7に取り付けた際に、固定カバー7の表面から突出しない程度の長さに形成される。
【0021】
また、突出高さの異なる二種類の破砕歯5L,5Sは、図4に示すように、ロール3の周方向に同じ突出高さの破砕歯が隣接しないように、隣接する破砕歯ユニット8ごとに高さの高い破砕歯5L又は高さの低い破砕歯5Sが配列されている。これら破砕歯5L,5Sが設けられた破砕歯ユニット8が、ロール3の周方向に交互に取り付けられて、高さの高い破砕歯5Lと、高さの低い破砕歯5Sとが、交互に配置される。
【0022】
一方、両ロール3の間では、図7に示すように、その対向部(両ロール3の破砕歯どうしが最も近接する位置)において両ロール3にそれぞれ設けられる高さの高い破砕歯5Lと高さの低い破砕歯5Sの先端面55どうしが対向するように配置される。高さの高い破砕歯5Lと、高さの低い破砕歯5Sとがロール3の周方向に交互に設けられることによって、両ロール3の対向部において破砕歯5L,5Sの先端面55どうしの空間位置が破砕歯5L,5Sの配置ごとに、ロール3の半径方向にずれて配置される。つまり、両ロール3の対向部において、矢印Aで示す破砕歯5Lと破砕歯5Sとが対峙して形成される空間位置は、両ロール3間の中心位置よりも左側にあるが、ロール3が回転して次の破砕歯5Lと破砕歯5Sとが対峙するときには、空間位置は両ロール3間の中心位置よりも右側にずれて配置され、ロール3の回転に伴って空間位置が左右に交互にずれて配置されることとなる。
なお、この図7においては、千鳥状に配列されている破砕歯5のうち、同一円周上に配置される一列の破砕歯を実線で示し、他の列の破砕歯を二点鎖線で示している。
【0023】
また、2次破砕手段20の両ロールに設けられる各破砕歯5Mは、図9に示すように、柱状部53の先端面55が球面状に形成され、側面56が円柱面状に形成されている。また、各破砕歯ユニット8は、上述したように、隣接する破砕歯ユニット8の破砕歯5がロール3の周方向に連続して並ばないように、図8に示すように、破砕歯5が千鳥状に配列した状態に取り付けられる。この場合、両ロール3の間では、図10に示すように、その対向部において両ロール3の破砕歯5Mの先端面55どうしが対向するように配置されているが、図11に示すように、両ロール3の破砕歯5Mの先端面55どうしが対向しないように、周方向にずらして配置することもできる。
【0024】
そして、この実施形態では、破砕後の多結晶シリコン破砕物のサイズとして、最大辺の長さが7mm以上45mm以下となるSサイズの破砕物を得るようにしており、その大きさの破砕物を得るために、各破砕手段10,20の破砕歯は以下のように設定されている。
1次破砕手段10の各破砕歯5L,5Sにおいては、図6に示すように、柱状部53の底面の直径D1が14mm、先端面55が直径6mmの球面状に形成され、固定カバー7の表面から破砕歯の先端までの突出高さは、図7に示すように、高さの高い破砕歯5Lの突出高さHLが30mm、高さの低い破砕歯5Sの突出高さHSが20mmに設定されている。また、ロール3の軸方向に隣接する破砕歯どうしの間隔L11は22mmとされ、ロール3の回転方向に隣接する破砕歯どうしの間隔L12は26mmとされている。さらに、両ロール3の対向部において、破砕歯5Lと破砕歯5Sとの先端面どうしの対向距離G1が10mmに設定されている。
2次破砕手段20の各破砕歯5Mにおいては、柱状部53の直径D2が14mm(図9参照)、突出高さHMが20mmとされている(図10参照)。また、ロール3の軸方向に隣接する破砕歯どうしの間隔L21は26mmとされ、ロール3の回転方向に隣接する破砕歯どうしの間隔L22も26mmとされている。破砕歯5Mの先端面どうしの対向距離G2は、10mmに設定されている。
【0025】
また、各破砕手段10,20の両ロール3を収容するハウジング2は、コンタミ防止のため、ポリプロピレン等の樹脂製とされ、あるいは金属製のハウジングの内面にテトラフルオロエチレンのコーティングをしたものが用いられる。
ハウジング2内には、両ロール3の両端部にロール3の軸線4と直交して配置される一対の仕切り板9がハウジング2の内壁面との間に一定の間隔をおいて平行に設けられている。これら仕切り板9は、ハウジング2に固定されており、両ロール3の半分以上を係合するように、ロール3の直径よりも若干大きい径の円弧状にくり抜いた2個の切欠91が形成され、これら切欠91内に各ロール3の両端部を係合した状態で、両ロール3の間に架け渡されるように配置されている。この仕切り板9をロール3に係合した状態では、仕切り板9の切欠91の内周面とロール3の外周面との間には、ロール3の回転を阻害しない程度に若干の隙間が形成され、また、ロール3の両端部に設けられている破砕歯ユニット8固定用のねじ33が仕切り板9の外側方に配置され、両仕切り板9がロール3の対向部からその上下の空間を挟んだ状態としている。そして、これら仕切り板9に挟まれた空間が多結晶シリコン破砕空間92とされ、ハウジング2の上面には、その破砕空間92の真上に配置されるように投入口93が設けられる。これら仕切り板9も、ハウジング2と同様にポリプロピレン等の樹脂製、あるいは金属製のものにテトラフルオロエチレンのコーティングをしたものが用いられる。
なお、このハウジング2には、両ロール3を回転駆動するギヤボックス(図示略)等が備えられ、ギヤボックスには排気装置(図示略)が接続されて、ハウジング2及びギヤボックスの内部空間が排気されるようになっている。
【0026】
このように構成した破砕装置1を用いて多結晶シリコン破砕物を製造する場合、まず、1次破砕手段10の両ロール3を回転させた状態で、ハウジング2の投入口93から両仕切り板9の間の多結晶シリコン破砕空間92に予め粗く破砕した適宜の大きさの多結晶シリコンC1を投入する。投入された多結晶シリコンは、両ロール3の破砕歯5の間で破砕されて、大部分がLサイズおよびSサイズの破砕物に細分化され、少量の微粉CPを含む多結晶シリコン破砕物C2が生成される(1次破砕工程)。
1次破砕手段10により破砕された多結晶シリコン破砕物は、選別手段30によって各サイズに選別される(選別工程)。
次に、選別された多結晶シリコン破砕物のうち、サイズの大きいLサイズの破砕物CLのみが、両ロール3を回転させた状態の2次破砕手段20の多結晶シリコン破砕空間92に投入される。2次破砕手段20に投入された破砕物CLは、両ロール3の破砕歯5の間で破砕され、大部分がSサイズの破砕物に生成される(2次破砕工程)。
【0027】
このとき、1次破砕手段10においては、各破砕歯5の側面56を円錐面状に形成し、各破砕歯5の間に形成される空間を大きく設けていることから、破砕歯5の先端で破砕された多結晶シリコン破砕物が押しつぶされて微細化されることを回避することができる。
また、1次破砕手段10の一対のロール3は同調して回転し、各ロール3の破砕歯5が、最も近接する位置において、破砕歯5の先端どうしが対向するように設けられていることから、各ロール3の破砕歯5は、同じ角度及びタイミングで塊状の多結晶シリコンに当接する。そのため、破砕後の多結晶シリコン破砕物のサイズを、各ロール3の各破砕歯5の間隔で形成される空間サイズ以下とすることができ、塊が押しつぶされて過度に微細化されることを回避することができる。
【0028】
また、高さの高い破砕歯5Lと高さの低い破砕歯5Sとを交互に設けることによって、両ロール3の対向部において破砕歯5L,5Sの先端面55どうしの間隔で形成される空間位置が、破砕歯5L,5Sの配置ごとにロール3の半径方向にずれて配置される。仮に、細長い多結晶シリコンが投入されたとしても、多結晶シリコンが狭小間隙Ga(図7参照)に正確に向きを一致させた姿勢で投入され、その投入時の姿勢を維持した状態でその狭小間隙Gaを通過する確率は極めて低く、多結晶シリコンは周方向に隣接する破砕歯5L,5Sに接触して破砕される。したがって、多結晶シリコンが破砕されずに通過してしまうことを防止することができ、効率的に多結晶シリコンを所望の大きさの塊に破砕することができる。
【0029】
2次破砕手段20においては、各破砕歯5Mの側面56を円柱面状に形成し、各破砕歯5Mの間隔を平行に設けており、1次破砕手段10で破砕しきれなかったサイズの大きい多結晶シリコン破砕物を、高い確率で所望の大きさに破砕することができる。
また、各破砕手段10,20の各破砕歯5は、その先端面55が球面状に形成されているので、この先端面55と多結晶シリコンとは点接触となり、また、柱状部53の側面56が円錐面状又は円柱面状に形成されているので、この側面56と多結晶シリコンとは点接触又は線接触となる。このため、多結晶シリコンに対して破砕歯5は点接触又は線接触状態で衝撃を付加するので、多結晶シリコンを面で押しつぶすようなことはない。
【0030】
このように、本実施形態の破砕装置1では、二段階の破砕手段を構成することにより、多結晶シリコンを所望の大きさの塊に破砕して、最大目的寸法の管理ができるとともに、破砕時に多結晶シリコンの破砕物がすり潰されて過度に微細化されることを回避できるので、微粉が生成される割合(ロス率)を低減させることができる。
【0031】
なお、各破砕手段10,20の両ロール3の両端部上に配置されている仕切り板9は、その間で破砕される多結晶シリコンの塊がハウジング2の内壁面とロール3の端面との間に侵入してつぶされることを防止しており、多結晶シリコンの塊を両ロール3の間で破砕して下方に通過させることができる。
【0032】
また、この破砕装置1においては、破砕歯5を超硬合金によって形成しているので、この破砕歯5から多結晶シリコンに不純物が混入することが防止される。一方、破砕歯ユニット8を固定するねじ33は一般には金属製のものが用いられるが、このねじ33は仕切り板9により多結晶シリコン破砕空間92の外方に配置されているため、多結晶シリコンに接触することがなく、多結晶シリコン破砕空間92を囲む仕切り板9、ハウジング2がポリプロピレン等の樹脂製とされ、あるいはテトラフルオロエチレンのコーティングがなされているので、破砕途中の多結晶シリコンに不純物が混入することが防止される。したがって、この破砕装置1によれば、半導体原料用の多結晶シリコンとして高品質のものを得ることができる。
【0033】
さらに、本実施形態においては、個々の破砕歯5を固定カバー7により保持して破砕歯ユニット8を構成し、この破砕歯ユニット8をロール3の表面に固定しているので、一部の破砕歯5に欠損等が生じたとしても、その欠損が生じた破砕歯5のみを交換すればよく、その場合、破砕歯ユニット8はねじ止めによりロール3に固定されているとともに、破砕歯5は固定カバー7の破砕歯固定孔71に嵌合されているだけであり、その交換作業も容易である。この固定カバー7は強度確保のためにはステンレス鋼等により製作するのがよいが、その表面にポリプロピレンやテトラフルオロエチレン等の樹脂を被覆しておけば、多結晶シリコンと接触した場合でもコンタミを防止することができる。
【0034】
図12及び図13は、本発明の第2実施形態を示す。第1実施形態の破砕装置1では、1次破砕手段10において、高さの高い破砕歯5Lと高さの低い破砕歯5Sをロール3の周方向のみに交互に配列して設けていたが、第2実施形態では、図12に示すように、高さの高い破砕歯5Lと高さの低い破砕歯5Sを、ロール3の周方向及び幅方向に交互に配列して設けた。
第2実施形態の1次破砕手段の両ロール3の間では、図13に示すように、その対向部において両ロール3にそれぞれ設けられる高さの高い破砕歯5Lと高さの低い破砕歯5Sの先端面55どうしが対向するように配置される。これら高さの高い破砕歯5Lと高さの低い破砕歯5Sとがロール3の周方向に交互に設けられることによって、両ロール3の対向部において破砕歯5L,5Sの先端面55どうしの空間位置も破砕歯5L,5Sの配置ごとにロール3の半径方向にずれて配置される。
【0035】
これにより、細長い破砕物が投入されたとしても、ロール3の周方向に隣接する破砕歯5L,5Sに接触して破砕されるので、破砕物が破砕されずに通過してしまうことを低減することができる。
その他の構成は、上述の実施形態のものと同じであり、共通部分に同一符号を付して説明を省略する。
【実施例】
【0036】
次に、実施例について比較例と対比して説明する。
実施例として、図1に示す構成の破砕装置1を用いて、直径120mm、長さ1800mmの多結晶シリコンロッドを粗破砕して最大辺の長さが90mm〜110mmの塊状とした多結晶シリコンの破砕を行った。また、比較例として、破砕装置1の1次破砕手段10と2次破砕手段20による破砕順序を逆にした破砕装置を構成し、多結晶シリコンの破砕を行った。つまり、比較例は、側面が円柱面状の破砕歯で1次破砕を行い、側面が円錐面状の破砕歯で2次破砕を行った。
そして、破砕工程毎に得られた多結晶シリコンの破砕物に含まれるLサイズ、Sサイズ、微分の破砕物の割合を調べた。表1に結果を示す。
なお、実施例および比較例において2次破砕工程で各破砕手段に投入される多結晶シリコンは、1次破砕工程により破砕された多結晶シリコン破砕物のうち、Lサイズのものだけである。そのため、「2次破砕後」の結果は、1次破砕工程時に破砕されて得られたLサイズの破砕物に対する割合を示している。
【0037】
【表1】

【0038】
表1からわかるように、実施例の破砕装置においては、1次破砕後の微粉の割合が低く、その後の2次破砕工程においても、微粉の割合が低く抑えられ、Sサイズの破砕物への変換効率が高くなっていることがわかる。
このように、1次破砕工程を円錐面状の破砕歯で行い、2次破砕工程を円柱面状の破砕歯で行うことにより、多結晶シリコンを所望の大きさの塊に破砕して、最大目的寸法の管理ができるとともに、破砕時に微粉の発生を抑えることができる。
【0039】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態で説明した破砕歯の対向間隔等の諸寸法は、必ずしもこれに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0040】
1 多結晶シリコンの破砕装置
2 ハウジング
3 ロール
4 回転軸線
5,5L,5S,5M 破砕歯
7 固定カバー
8 破砕歯ユニット
9 仕切り板
10 1次破砕手段
20 2次破砕手段
31 平坦面
32 ねじ穴
33 ねじ
40 選別手段
41,42 メッシュコンベア
53 柱状部
54 つば部
55 先端面
56 側面
56a 円柱面状部分
57 平面部
71 破砕歯固定孔
72 ねじ挿通孔
73 嵌合孔
74 平面部
75 拡径部
91 切欠
92 多結晶シリコン破砕空間
93 投入口


【特許請求の範囲】
【請求項1】
塊状の多結晶シリコンを破砕する1次破砕手段と、前記1次破砕手段により破砕された多結晶シリコン破砕物のうち、サイズの大きい多結晶シリコン破砕物を破砕する2次破砕手段とを有しており、各破砕手段は、平行な軸線回りに互いに逆回転する一対のロール間に多結晶シリコンを挟み込んで破砕する構成とされ、各ロールには、外周面上に複数の破砕歯が半径方向外方に突出して設けられ、前記1次破砕手段の各ロールに設けられる破砕歯は、その先端面が球面状に形成されるとともに、側面が円錐面状に形成され、前記2次破砕手段の各ロールに設けられる破砕歯は、その先端面が球面状に形成されるとともに、側面が円柱面状に形成されていることを特徴とする多結晶シリコンの破砕装置。
【請求項2】
前記1次破砕手段の一対のロールは同調して回転し、各ロールの前記破砕歯が最も近接する位置において、前記破砕歯の先端どうしが対向するように設けられていることを特徴とする請求項1記載の多結晶シリコンの破砕装置。
【請求項3】
前記1次破砕手段の両ロールに設けられる破砕歯は、高さの高い破砕歯と、高さの低い破砕歯とが少なくとも前記ロールの周方向又は幅方向に交互に設けられるとともに、両ロールの前記破砕歯どうしが最も近接する位置において、前記高さの高い破砕歯と、前記高さの低い破砕歯との先端どうしが対向するように設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の多結晶シリコンの破砕装置。
【請求項4】
塊状の多結晶シリコンを破砕する1次破砕工程と、前記1次破砕工程により破砕された多結晶シリコン破砕物を複数のサイズに選別する選別工程と、前記選別工程により破砕された多結晶シリコン破砕物のうち、サイズの大きい多結晶シリコン破砕物を破砕する2次破砕工程とを有しており、各破砕工程は、平行な軸線回りに逆回転する一対のロール間に多結晶シリコンを挟み込むことにより破砕するものであり、各ロールには、外周面上に複数の破砕歯が半径方向外方に突出して設けられ、前記1次破砕工程では、先端面が球面状に形成されるとともに、側面が円錐面状に形成された破砕歯を有するロールにより破砕を行い、前記2次破砕工程では、先端面が球面状に形成されるとともに、側面が円柱面状に形成された破砕歯を有するロールにより破砕を行うことを特徴とする多結晶シリコン破砕物の製造方法。
【請求項5】
請求項1から3に記載の破砕装置のいずれかを用いて多結晶シリコンの破砕物を製造することを特徴とする多結晶シリコン破砕物の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−236746(P2012−236746A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107706(P2011−107706)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】