多針ミシン
【課題】多針ミシンに載置された糸駒を用いて刺繍模様の配色を簡単に行え、且つ多様な配色パターンの刺繍模様の縫製を行うことができる多針ミシンを提供する。
【解決手段】多針ミシンは、糸駒載置部に載置される複数の糸駒の糸色を糸駒色データとして記憶する糸駒色記憶手段を備える。多針ミシンの制御装置は、取得した乱数に基づいて、糸駒色記憶手段に記憶された複数の糸駒色データの中からランダムに色を抽出すると共に、抽出した糸駒色データを、刺繍模様における色別模様部の糸色データとして割り当てる(ステップB4〜B23)。
【解決手段】多針ミシンは、糸駒載置部に載置される複数の糸駒の糸色を糸駒色データとして記憶する糸駒色記憶手段を備える。多針ミシンの制御装置は、取得した乱数に基づいて、糸駒色記憶手段に記憶された複数の糸駒色データの中からランダムに色を抽出すると共に、抽出した糸駒色データを、刺繍模様における色別模様部の糸色データとして割り当てる(ステップB4〜B23)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸駒載置部に載置された複数の糸駒を使用して、複数の色別模様部からなる刺繍模様を縫製するための刺繍データに基づき縫製動作を実行する多針ミシンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、刺繍データに基づいて刺繍模様を縫製する多針ミシンが公知である。多針ミシンは、縫針を装着した針棒を複数備え、各針棒の縫針に異なる糸色の上糸が供給される。また、多針ミシンでは、多針ミシンに内蔵された記憶装置、或はROMカードやフレキシブルディスク等の外部の記憶装置に、複数の刺繍模様が記憶されている。ユーザは、複数の刺繍模様の中から、所望の刺繍模様を選択する。そして、多針ミシンは、選択された刺繍模様の刺繍データを読み込んで、加工布を保持した刺繍枠を移送機構により移送させながら、加工布に刺繍模様を刺繍する。
【0003】
通常、刺繍模様は複数の色別模様部からなる。つまり、刺繍模様の刺繍データは、色別模様部の色を特定する糸色データを含んでいる。各色別模様部は、糸色データとして予め設定された色(糸色)で縫製されるよう、複数の針棒の中から1つの針棒が選択され、選択された針棒が縫製位置に移動して縫製される。このとき、各色別模様部の色が加工布(生地)の色と類似していると、当該色別模様部と生地の区別が分かり難いという問題が発生する。具体的には、「花」の刺繍模様を、花びらの色別模様部の色と同色の生地に縫製した場合、花びらと生地の区別が分かり難くなり、花びらが無い奇妙な刺繍模様であると見間違う虞がある。
そこで、刺繍データ作成装置には、予め好ましい色の組合せを示す配色データを記憶させておき、当該配色データと生地の色等を示す生地データとに基づいて、色別模様部の糸色データの色を設定するようにしたものがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−57262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の刺繍データ作成装置では、生地の色と配色データに基づき、刺繍模様の色別模様部の色が一義的に決定される。しかし、ユーザとしては、色別模様部の色が生地の色で制約されるのではなく、色別模様部の夫々について「規定の色」ではない好みの色、或いは奇抜な色で縫製したい場合もある。また、このような刺繍模様の色の指定を行うには、色別模様部のデータを1つ1つ読み出して該当する糸色データの確認や指定を行わなければならず、手間がかかり面倒である。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、多針ミシンに載置された糸駒を用いて刺繍模様の配色を簡単に行え、且つ多様な配色パターンの刺繍模様の縫製を行うことができる多針ミシンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、本発明の請求項1の多針ミシンは、複数の糸駒が載置される糸駒載置部を有し、前記糸駒載置部に載置された複数の糸駒を使用して、複数の色別模様部からなる刺繍模様を縫製するための刺繍データであって前記色別模様部の色を特定する糸色データを含む刺繍データに基づいて、前記刺繍模様を縫製する多針ミシンにおいて、前記糸駒載置部に載置される複数の糸駒の糸色を糸駒色データとして記憶する糸駒色記憶手段と、前記糸駒色記憶手段に記憶された複数の糸駒色データの中から、前記色別模様部の糸色データとして用いる糸駒色データをランダムに抽出する抽出手段と、前記抽出手段により抽出された糸駒色データを前記色別模様部の糸色データとして割り当てる割当手段とを備え、前記割当手段により割り当てられた糸色データに基づいて、前記色別模様部毎に縫製を実行することを特徴とする。
【0008】
上記多針ミシンによれば、刺繍模様について、色別模様部の糸色データに対し抽出手段により抽出された色を割り当ててランダムな配色を行うことができる。よって、糸色データの確認や指定といった面倒な作業を省略して、刺繍模様の配色を簡単に行うことができる。更に、刺繍模様について、偶然性や意外性のある配色が可能となり、規定の配色にとらわれない多様な配色パターンを得ることができる。
特に、多針ミシンにおいて、抽出手段は糸駒載置部に載置される複数の糸駒の糸駒色データの中からランダムに色を抽出する。このため、糸駒載置部に載置されている糸駒をそのまま使用できるので、それ以外の糸駒を準備する必要が無く、配色や縫製に係る作業者の手間を極力省くことができる。
【0009】
請求項2の多針ミシンでは、請求項1の発明において、複数種類の前記刺繍データを記憶する刺繍データ記憶手段と、前記刺繍データ記憶手段に記憶された前記刺繍データの中から所望の刺繍データを選択するための模様選択手段を備え、前記糸駒色記憶手段は、前記模様選択手段で選択された刺繍データに含まれる色別模様部の糸色データを糸駒色データとして記憶することを特徴とする。
【0010】
請求項3の多針ミシンでは、請求項1または2の発明において、所望の糸駒の糸駒色データを入力する入力手段を備え、前記糸駒色記憶手段は、前記入力手段で入力した糸駒色データを優先して記憶することを特徴とする。
【0011】
請求項4の多針ミシンでは、請求項1から3までの何れかの発明において、前記糸駒載置部に載置された糸駒を含み、多針ミシンで使用可能な糸駒について、前記糸駒載置部への糸駒の載置数を超える糸駒色データを記憶する全糸色記憶手段と、前記色別模様部の糸色データとして前記抽出手段により抽出する糸駒色データを、前記糸駒色記憶手段の糸駒色データの中からランダムに抽出する第1モードと、前記全糸色記憶手段の糸駒色データの中からランダムに抽出する第2モードとの選択が可能なモード選択手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
請求項5の多針ミシンでは、請求項1から4までの何れかの発明において、前記糸駒載置部に載置されている糸駒の糸色を検出する検出手段を備え、前記糸駒色記憶手段は、前記検出手段が検出した糸駒の糸色を糸駒色データとして記憶することを特徴とする。
【0013】
請求項6の多針ミシンでは、請求項1から4までの何れかの発明において、前記糸駒色データを記憶した無線タグを有する糸駒について前記糸駒載置部に載置した状態で前記無線タグから前記糸駒色データを読み取る読取手段を備え、前記糸駒色記憶手段は、前記読取手段が読み取った糸駒の糸駒色データを記憶することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の多針ミシンによれば、刺繍模様について、色別模様部の糸色データに対し抽出手段により抽出された色を割り当ててランダムな配色を行うことができる。よって、糸色データの確認や指定といった面倒な作業を省略して、刺繍模様の配色を簡単に行うことができる。更に、刺繍模様について、偶然性や意外性のある配色が可能となり、規定の配色にとらわれない多様な配色パターンを得ることができる。
特に、多針ミシンにおいて、抽出手段は糸駒載置部に載置される複数の糸駒の糸駒色データの中からランダムに色を抽出する。このため、糸駒載置部に載置されている糸駒をそのまま使用できるので、それ以外の糸駒を準備する必要が無く、配色や縫製に係る作業者の手間を極力省くことができる。
【0015】
請求項2の多針ミシンによれば、請求項1の発明の効果に加え、糸駒色記憶手段は、模様選択手段で選択した刺繍データに含まれる色別模様部の糸色データを糸駒色データとして記憶する。よって、糸駒色データを入力する手間を省くことができると共に、糸駒載置部に、選択した刺繍模様の糸色データに対応する糸駒を載置することで、その糸駒を用いた配色と縫製を行うことができる。
【0016】
請求項3の多針ミシンによれば、請求項1または2の発明の効果に加え、糸駒色記憶手段に、入力手段で入力した糸駒色データを優先して記憶させることができる。よって、ユーザは、入力手段で好みの色を糸駒色データとして入力することで、ランダムな配色としながらもユーザの好みの色を簡単に採り入れることができる。
【0017】
請求項4の多針ミシンによれば、請求項1から3までの何れかの発明の効果に加え、モード選択手段によって、糸駒色記憶手段の糸駒色データの中からランダムに抽出する第1モードと、全糸色記憶手段の糸駒色データの中からランダムに抽出する第2モードとの選択が可能となる。よって、ユーザが、糸駒載置部に載置されている糸駒の糸色に限定することなく、より多くの配色パターンを所望する場合には、第2モードを選択して配色を行うことができる。
【0018】
請求項5の多針ミシンは、請求項1から4までの何れかの発明の効果に加え、糸駒載置部に糸駒を載置した場合、その糸駒の糸色を検出手段で検出して糸駒色記憶手段に記憶させることができる。よって、糸駒色データを入力する手間を省くことができると共に、実際に糸駒載置部に載置した糸駒の色を用いて、配色パターンを容易に得ることができる。
【0019】
請求項6の多針ミシンによれば、請求項1から4までの何れかの発明の効果に加え、糸駒載置部に載置した糸駒の糸色を、読取手段によって無線タグを利用して読み取ることができる。従って、読取手段が読み取った糸駒色データを糸駒色記憶手段に記憶させることで、糸駒色データを入力する手間を省くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態を示す多針ミシン全体の外観斜視図
【図2】電気的構成を示すブロック図
【図3】ミシンのRAMの記憶領域を説明するための概念図
【図4】刺繍データの一例を示す図
【図5】針棒糸色テーブルの一例を示す説明図
【図6】刺繍データの作成時におけるメニュー画面の一例を示す図
【図7】第1色替画面の一例を示す図
【図8】第2色替画面の一例を示す図
【図9】モード設定画面の一例を示す図
【図10】サムネイル表示画面の一例を示す図
【図11】拡大表示画面の一例を示す図
【図12】刺繍データ作成処理における糸色データの設定に係るフローチャート
【図13】色の抽出及び割り当て処理に係るフローチャート
【図14】追加選択処理に係るフローチャート
【図15】刺繍模様毎の配色処理に係るフローチャート
【図16】本発明の第2実施形態を示す図2相当図
【図17】本発明の第3実施形態を示すものであり、(a)は無線タグ及びタグリーダ/ライタの模式図、(b)は無線タグの電気的構成の概略を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0021】
<第1実施形態>
以下、本発明を多針式刺繍ミシン(以下、多針ミシンMと称す)に適用した第1実施形態について、図1〜図8を参照しながら説明する。図1に示す多針ミシンMに対して、ユーザ(使用者)が位置する方向を前方、その反対方向を後方として説明する。また、紙面右斜め下方を右方、その反対方向を左方とし、紙面上方を上方、その反対方向を下方とする。
【0022】
図1に示すように、多針ミシンMは、ミシン全体を支持する支持脚1と、支持脚1の後端部から立設された脚柱部2と、脚柱部2の上部から前方に延びるアーム部3と、アーム部3の前端部に装着された針棒ケース5とを備える。また、多針ミシンMは、制御全般を司る制御装置6(図2参照)や操作パネル7等を具備して構成されている。
前記支持脚1は、左右部位に前方に延びる脚部1a、1aを有し、上面から見て前方が開放した略U字状をなす。支持脚1の後側中央部には、前方に延びるシリンダベッド4が設けられている。シリンダベッド4の上面には針板4aが設けられており、針板4aに、後述する縫針の針落ち位置としての針穴(図示略)が形成されている。
【0023】
支持脚1の上側には、左右方向向きのキャリッジ8が配置されている。キャリッジ8の内部には、当該キャリッジ8の前側に設けられた枠取付台(図示略)をX方向(左右方向)に駆動させるためのX方向駆動機構9x(図2参照)が設けられている。左右の脚部1a内には、キャリッジ8をY方向(前後方向)に駆動させるY方向駆動機構9y(図2参照)が設けられている。X方向駆動機構9x及びY方向駆動機構9yは、後述するX軸モータ30及びY軸モータ31(図2参照)を夫々の駆動源とする。そして、刺繍縫製に供する加工布(図示略)は、矩形枠状の刺繍枠(図示略)に保持される。刺繍枠は、前記枠取付台に取付けられる。こうして、刺繍枠は、Y方向駆動機構9y及びX方向駆動機構9xの駆動により、キャリッジ8と共にY方向に移動し、枠取付台と共にX方向に移動する。刺繍枠のY方向とX方向の移動に伴って、加工布が移動される。
【0024】
前記針棒ケース5には、左右に配列された上下方向に延びる10本の針棒10(図2にのみ図示)が上下動可能に支持されている。各針棒10の下端部には、縫針(図示略)が夫々装着されている。各針棒10には、多針ミシンMを正面から見て右側から順に、1番から10番までの針棒番号が付されている。また、針棒ケース5には、各針棒10に対応する10個の天秤11が上下動可能に設けられている。
【0025】
針棒ケース5の上端部には、糸張力を調整するための10個の糸調子器12が配設された、傾斜状の糸調子台13が固定されている。糸調子台13の後方には、アーム部3上面の背面側に位置して、左右1対の糸駒台14と、糸絡みを防ぐための糸案内機構16とが設けられている。糸駒台14が糸駒載置部に相当する。
【0026】
図1に示すように、右側の糸駒台14と左側の糸駒台14は、何れも平面視にて略台形状をなす。糸駒台14には、5個の糸立棒14aが夫々設けられている。各糸立棒14aには糸駒15が夫々挿入される。つまり、左右1対の糸駒台14は、前記縫針の数と同じ10個の糸駒15を載置することができる。尚、図1では説明の便宜上、1個の糸駒15のみを示している。糸駒15から延びる上糸15aは、上記した糸案内機構16,糸調子器12,天秤11等を夫々経由して、各縫針の目孔(図示略)に夫々供給される。
【0027】
前記アーム部3の内部には、針棒ケース5をX方向へ移動させる針棒選択機構20(図2参照)が設けられている。針棒選択機構20は、駆動モータ(図示略)の駆動により、10組の針棒10及び天秤11の中から、1組の針棒10及び天秤11を縫製位置に移動させるよう択一的に切換える。縫製位置に移動した針棒10及び天秤11は、針棒駆動機構22(図2参照)により同期して上下動される。針棒駆動機構22は、脚柱部2に設けられたミシンモータ21(図2参照)の回転が、主軸(図示せず)介して伝達されて駆動される。また、シリンダベッド4の前端部には、下糸(図示略)を巻回した下糸ボビンを収容する回転釜(図示略)と、上糸15aと下糸とを切断するための切断機構19(図2参照)が設けられている。
前記針棒10及び天秤11と回転釜(図示略)との協働によって、前記刺繍枠に保持された加工布に、上糸15a及び下糸からなる縫目が形成される。このとき、刺繍枠は、後述する刺繍データに基づいて、X方向及びY方向に移送され、加工布に刺繍模様が縫製される。
【0028】
また、アーム部3の右側面には、操作パネル7が折り畳み可能に設けられている。操作パネル7には、例えば、縦長形状をなしフルカラー表示が可能な液晶カラーディスプレイ(以下、ディスプレイ7aと称す)が設けられている。ディスプレイ7aには、種々の刺繍模様や、縫製作業に必要な各種の機能を実行させる機能名が表示される。また、各針棒10に対応して設定されている上糸15aの情報や、後述する刺繍模様の色を設定するための設定画面等が表示される(図6参照)。また、ディスプレイ7aの前面には、透明電極からなる複数のタッチキーを有するタッチパネル7b(図2参照)が設けられている。タッチキーがユーザの指又はタッチペン(図示略)で押圧操作されることで、縫製模様の選択、各種パラメータの設定や機能の指示、後述する糸駒15交換時の設定等が可能になっている。
操作パネル7の前面下部には、起動停止スイッチ7c等の複数のスイッチが設けられ、側面部には、各種の刺繍模様の刺繍データ等が記憶されているUSBメモリ(図示略)などの外部記憶媒体が接続されるコネクタ7dが設けられている。
【0029】
続いて、多針ミシンMの制御系の構成について、図2のブロック図を参照しながら説明する。制御装置6は、マイクロコンピュータを主体に構成されており、内部にCPU24、ROM25、RAM26、EEPROM27、入出力インターフェース28(I/O)、それらを結ぶバス29等を有する。
【0030】
入出力インターフェース28には、操作パネル7におけるディスプレイ7a、タッチパネル7b、起動停止スイッチ7c、コネクタ7dが接続されている。また、入出力インターフェース28には、ミシンモータ21、針棒選択機構20、切断機構19、X軸モータ30、Y軸モータ31を夫々駆動する駆動回路32,33,34,35,36が接続されている。
【0031】
多針ミシンMにおいて、針棒10、縫針、回転釜、ミシンモータ21、針棒駆動機構22、針棒選択機構20、切断機構19、駆動回路32〜34等は、縫製手段40を構成し、加工布を保持する刺繍枠を移送するためのY方向駆動機構9y、X方向駆動機構9x、X軸モータ30、Y軸モータ31、駆動回路35,36等は、移送手段41を構成する。制御装置6は、後述する縫製制御プログラムや刺繍データ等に従って、上記した各種のアクチュエータを駆動制御することで、縫製手段40と移送手段41との協働による加工布に対する縫製動作を実行する。
【0032】
ROM25は、刺繍データ記憶手段として刺繍データを記憶すると共に、縫製制御プログラム、刺繍に用いられる複数種の糸に関する全ての情報であって後述の糸の色情報や品番等を含む全糸情報テーブルを記憶している。また、ROM25は、後述する刺繍データ処理プログラム、糸駒15から供給される上糸15aの糸色データと針棒10とをユーザが関連付けるための糸指定制御プログラム、操作パネル7のディスプレイ7aを制御する表示制御プログラム等を記憶している。尚、これら各種のプログラムやデータは、EEPROM25等を含む他の内部記憶手段や、前記USBメモリ等の外部記憶手段に記憶されてもよい。
【0033】
RAM26は、上記のプログラムやデータ、タッチパネル7bの操作等で入力された各種の設定値、制御装置6で演算された演算結果等を一時的に記憶するための記憶領域を有する。詳細には、図3に示すように、RAM26には、プログラム記憶領域261,設定記憶領域262,刺繍データ記憶領域263,フラグ記憶領域264,縫製条件記憶領域265,色情報記憶領域266,画像表示データ記憶領域267,作業領域268、抽出データ記憶領域269等、複数の記憶領域が設けられている。プログラム記憶領域261は、ROM25等から読み出された各種のプログラムを記憶する。設定記憶領域262は、プログラムの実行の際に参照される設定値やテーブル等を記憶する。刺繍データ記憶領域263は、刺繍データの色を設定する際の元(基準)となるデータを記憶する。フラグ記憶領域264は、プログラムの実行の際に使用される各種フラグを記憶する。縫製条件記憶領域265は、刺繍模様を縫製する際の各種縫製条件を記憶する。
【0034】
色情報記憶領域266は、刺繍模様の配色に用いられるデータを記憶するための領域で、後述するパレットテーブルや針棒糸色テーブル等を記憶する。また、抽出データ記憶領域269は、パレットテーブル等からランダムに抽出した色を一次的に記憶する。尚、画像表示データ記憶領域267は、ディスプレイ7aに表示する画面の画像データや表示設定を記憶し、作業領域268は、各種のプログラムの実行時に設定値等を予備的に記憶する。
【0035】
前記刺繍模様の一例として、図11に示すディスプレイ7aの画面104に表示された「花」の刺繍模様45を説明する。刺繍模様45は、例えば複数個(n個)の色別模様部である第1模様部451〜第n模様部45nからなる。具体的には例えば、花びらを構成する第1模様部451は紫の糸色で縫製され、葉を構成する第2模様部452はバラ色の糸色で縫製され、茎を構成する第3模様部453はマゼンタの糸色で縫製される。このように、模様部451〜45nは、夫々に色が設定される色別模様部であるが、各模様部451〜45nは相互に異なる色でなくてもよい。
【0036】
刺繍データは、刺繍模様をミシンMにより縫製するためのデータであり、複数個の色別模様部データからなる。例えば、図4に示すように、刺繍模様45の刺繍データの場合には、模様部451〜45n毎に設定された複数の針落ち位置データと、当該模様部451〜45nの縫製順序を特定するための縫製順序データ(模様1〜模様n)と、糸色データを含む。糸色データは、色別模様部毎に色を特定するために付されるデータであり、後述の割当手段により各色情報の中から色が割り当てられる。
【0037】
ここで、図4における一番上の縫製順序データ「模様1」は最初に縫製される順序を特定するもので、これに対応する「紫」は、実際には例えばRGB値で示される糸色データである。また、針落ち位置データ「Xa0、Ya0」…「XaN、YaN」は、紫の糸色に対応する縫針が順次針落ちする座標位置である。これと同様に、縫製順序が2番目以降の刺繍データについても、縫製順序データ「模様2」〜「模様n」と、糸色データ「バラ色」〜「赤」と、針落ち位置データ「XbN、YbN」〜「XnN、YnN」とが夫々含まれる。また、刺繍データは、ディスプレイ7aに表示する画像データ(例えばbmp等の画像データ)(図示略)を含み、刺繍模様の画像は各糸色データに割り当てられた色でディスプレイ7aに表示される。
【0038】
前記EEPROM27には、図5に示すように、糸駒15の糸色を各針棒10と対応付けた針棒糸色テーブルが記憶されている。詳しくは後述するように、縫製に際して糸駒15の交換が必要な場合、ディスプレイ7aには、前記刺繍データの糸色データに基づき各針棒10毎に糸色を割り当てた糸駒設定画面(図示略)が表示される。例えば、表示された糸色が図5に示す針棒番号順に割り当てられている場合を例にすると、ユーザは、その糸色を参照して針棒番号1〜10の針棒10に対応する「紫〜赤」の糸駒15を載置し、上糸15aの糸掛けを行う。これら上糸15aの糸色、つまり糸駒台14に載置された糸駒15の糸色が、糸駒色データとして当該針棒番号と対応付けられてEEPROM27に記憶されている。このように、EEPROM27は、糸駒台14に載置される糸駒15の糸駒色データを記憶する不揮発性の糸駒色記憶手段として構成されている。
【0039】
糸駒色データは、例えば、糸駒15の糸色に関する情報であって、RGB値で予め定義されている。詳しくは後述するように、糸駒色データは、ユーザにより選択した刺繍データの糸色データが、そのまま針棒番号と対応付けられてEEPROM27に記憶されるため、ユーザによる入力操作が不要である。また、EEPROM27の糸駒色データは、例えば、ユーザの好みに応じてタッチパネル7bの操作に基づき、ディスプレイ7aを見ながら針棒番号毎に設定することができる。タッチパネル7b及び制御装置6は、入力手段を構成する。
【0040】
EEPROM27には、針棒糸色テーブルにおける糸駒色データの他、多針ミシンMで使用可能な糸駒15について、糸駒台14への糸駒15の載置数(本実施形態では10個分)を超える全ての糸駒色データが記憶されている。具体的には、EEPROM25には、64色分のRGB値と当該RGB値に夫々対応付けられた1〜64のパレット別色番号とからなる64色パレットテーブル(図7の64色パレット53参照)が記憶されている。
【0041】
更に、64色パレットテーブルとは別に、全ての糸駒色データの中から予めユーザにより選択された複数の色が、300色パレットテーブル(図8の300色パレット56a参照)としてEEPROM25に記憶されている。300色パレットテーブルは、例えば、最大で300色分のRGB値、及び当該RGB値に夫々対応付けられた1〜300のパレット別色番号を、ユーザの好み等に応じて設定が可能なカスタムパレットテーブルである。こうして、EEPROM25は、糸駒台14への糸駒15の載置数を超える糸駒色データを記憶する糸駒色データを記憶するパレット記憶手段(全糸色記憶手段)として構成されている。
尚、RAM26の色情報記憶領域266は、上記した針棒糸色テーブル、64色パレットテーブル或は300色パレットテーブルにおける夫々の糸駒色データを一時的に記憶することから、糸駒色記憶手段及び全糸色記憶手段に相当する。
【0042】
そして、制御装置6は乱数発生手段として、針棒糸色テーブル、64色パレットテーブル或は300色パレットテーブルにおける糸駒色データの数を引数とする関数を用いて乱数を発生させる。具体的には、制御装置6は、糸駒台14上に載置される糸駒15の載置数(例えば1〜10の範囲)で乱数を発生させる。制御装置6は、発生した乱数と一致する針棒糸色テーブルの1〜10の針棒番号を照合し、当該針棒番号に対応するRGB値等を抽出する。このように、基本的に、針棒糸色テーブルの糸駒色データ(図5では10色分)の中からランダムに色を抽出するモードを第1モードと称する。
【0043】
他方、制御装置6は、64色或は300色パレットテーブルにおけるパレット色別番号の範囲(例えば1〜64の範囲)で乱数を発生させる。制御装置6は、発生した乱数と一致する64色パレットテーブルの1〜64のパレット別色番号を照合し、当該パレット別色番号に対応するRGB値等を抽出する。このように、64色或は300色パレットテーブルの糸駒色データの中からランダムに色を抽出するモードを第2モードと称する。
【0044】
次に、刺繍データの作成、特には糸色データの配色に際し、ディスプレイ7aに表示される画面について図6〜図11も参照しながら説明する。ここで、図6〜図11は、ディスプレイ7aにおける各表示画面100〜104を説明するための図である。ここで、各表示画面100〜104における刺繍模様の画像や64色及び300色パレット53,56a等は、ディスプレイ7aが液晶カラーディスプレイであることから、多数色を表示可能である。
【0045】
図6は、刺繍データの作成時における配色を行う前のメニュー画面100を例示している。メニュー画面100には、プレビュー画像を表示するプレビュー画像領域50、糸色データ指定領域52、糸色設定キー51aを含む各種の入力キー51等が設けられている。プレビュー画像は、ユーザにより選択された刺繍模様について該当する刺繍データにより刺繍を行った場合に、どのような刺繍結果となるのかを示す画像である。糸色設定キー51aに対応する前記タッチキーが押圧操作(以後、タッチ操作と称す)されることで、図7に示す第1色替画面101Aに切り換わる。
【0046】
第1色替画面101Aには、プレビュー画像領域50及び糸色データ指定領域52の他、前記64色パレット53、複数のパレット選択キー54a,54b、シャッフルキー55が設けられている。第1色替画面101Aでは、糸色に係る各種の設定が可能とされる。具体的には、糸色データ指定領域52には、プレビュー画像領域50の刺繍模様の色別模様部毎に対応する色が、その糸駒52aのイラストと共に示されている。ユーザは、糸駒52aをタッチ操作し、64色パレット53の中からユーザの所望する色を色別模様部毎に指定することができる。例えば、64色パレット53の最上段の1列は、左から順に前記64色パレットテーブルのパレット別色番号1〜8のRGB値が夫々割り当てられている。このように、64色パレット53は、上段から下段にわたって64色パレットテーブルの糸駒色データが段毎に8つずつ対応するように配置された64色のパレットである。
【0047】
尚、糸色データ指定領域52の直ぐ下側には、当該指定領域52における糸駒52aをスクロールさせるためのプラスキー52cとマイナスキー52dが設けられている。例えば刺繍模様45を構成する色別模様部の総数nが10の場合、現在表示されていない3個分の糸駒52aについて、プラスキー52cやマイナスキー52dのタッチ操作により表示させることができる。
【0048】
図8に示す第2色替画面101Bでは、第1色替画面101Aと同様にプレビュー画像領域50等が設けられると共に、64色パレット53に代えて300色パレット56aが設けられている。300色パレット56aは、前記RGB値に基づいて、300の升目のパレットに最大で300色の色の配置が可能で、前記のカスタムパレットテーブルに対応する。図8では300の升目からなる300色パレット56aのうち一部(50の升目)が示されている。一対のパレット選択キー54a,54bがタッチ操作されることで、第1及び第2色替画面101A、101B相互間で切り換わる。シャッフルキー55がタッチ操作されることで図9に示すモード設定画面102に切り換わる。
【0049】
モード設定画面102には、第1色替画面101Aと同様にプレビュー画像領域50等が設けられると共に、64色パレット53に代えてモード設定部58が設けられている。モード設定部58には、「64色パレットシャッフル」「カスタムパレットシャッフル」「針棒シャッフル」の夫々のキー58a,58b,58cが設けられている。「64色パレットシャッフル」或は「カスタムパレットシャッフル」の何れかをタッチ操作により選択すると、64色或は300色パレットテーブルの糸駒色データの中からランダムに色を抽出する第2モードに設定される。「針棒シャッフル」をタッチ操作により選択すると、針棒糸色テーブルの糸駒色データの中からランダムに色を抽出する第1モードに設定される。その後、図10に示すサムネイル表示画面103に切り換わる。尚、第1モードと第2モードを選択するためのタッチパネル7b、制御装置6は、モード選択手段に相当する。
【0050】
サムネイル表示画面103では、複数(例えば6個)の刺繍模様が表示される刺繍模様選択領域61、リターンキー62、セーブキー63、リフレッシュキー64等が設けられている。刺繍模様選択領域61は、前記糸色データとしてランダムに抽出した色を用いて生成した色の組合せが異なる複数の刺繍模様について、夫々の画像を縮小したサムネイル画像61aを表示する。後述するように、セーブキー63、サムネイル画像61aの順にタッチ操作すると、当該刺繍模様の刺繍データがEEPROM25に記憶される。また、リフレッシュキー64がタッチ操作されると、糸色データに対して新たに抽出された色が割り当てられ、現在表示されている6個の刺繍模様に代えて新たな6個の刺繍模様が表示される。リターンキー62がタッチ操作されると、モード設定画面102に戻り、刺繍模様のサムネイル画像がタッチ操作されると図11に示す拡大表示画面104に切り換わる。
【0051】
拡大表示画面104では、拡大画像領域65、クローズキー66、セットキー67等が設けられている。拡大画像領域65には、図10で選択されたサムネイル画像(同図にて太枠で囲われた画像61a)を拡大した1つの刺繍模様の画像が表示される。クローズキー66がタッチ操作されるとサムネイル表示画面103に戻る。また、セットキー67がタッチ操作されると、前記プレビュー画像の刺繍模様として拡大画像領域65の刺繍模様を表示したメニュー画面100に戻る。
【0052】
次に、刺繍データ処理プログラムの動作について、前記糸色データに関する配色を中心に図12〜図15を参照しながら説明する。図12〜図15は、刺繍データ処理プログラムに基づいて制御装置6が実行する処理手順を示すフローチャートである。
図12に示すステップA1では、刺繍模様に係る各種の設定処理が行われる。即ち、ユーザは、タッチパネル7bをタッチ操作して、ROM25から刺繍データを読み取り、その刺繍データに従ってディスプレイ7aの模様選択画面(図示略)を表示する。模様選択画面における複数の刺繍模様の中から、所望の刺繍模様をタッチ操作により選択すると、当該刺繍模様を表示した図6のメニュー画面100に切換る。
【0053】
また、ユーザは、メニュー画面100から前記糸駒設定画面に切換えて、選択した刺繍模様の縫製に必要な糸駒15を糸駒台14に載置する。例えば、刺繍模様の色別模様部の総数(図4で「n」に相当)が10で、当該画面に表示された色別模様部の各糸色が図5に示す針棒番号順に割り当てられるものとする。この場合、ユーザは、その糸色を参照して針棒番号1〜10の針棒10に対応する「紫〜赤」の10個の糸駒15を載置し、上糸15aの糸掛けを行う。糸駒台14に載置した糸駒15の糸色、つまり選択した刺繍模様の糸色データは糸駒色データとしてそのまま針棒番号と対応付けられてEEPROM27に記憶される。糸駒15を糸駒台14に載置した後、糸駒設定画面からメニュー画面100に戻る。
【0054】
そして、メニュー画面100で糸色設定キー51aをタッチ操作して、図7の第1色替画面101Aに切換える。ここで、第1色替画面101Aのプレビュー画像領域50の刺繍模様について、ユーザが色別模様部の色を変更したくない場合、該当する糸色データ指定領域52の糸駒52aの色をタッチ操作により指定する。こうして、指定された色は、RAM26の抽出データ記憶領域269に記憶される。当該指定数の上限は、その刺繍模様における色別模様部の総数nである。従って、ステップA1で全ての色別模様部について色の指定が行われた場合には、この処理を終了する(図示略)。
【0055】
前記糸色データ指定領域52の糸駒52aに対応する糸色データを、64色パレット53或は300色パレット56aから指定することができる。この場合、300色パレット56a(第2色替画面101B)は、第1色替画面101Aにおいてパレット選択キー54bをタッチ操作することで表示することができる。次いで、シャッフルキー55がタッチ操作されると、第1色替画面101A或は第2色替画面101Bからモード設定画面102に遷移する(ステップA2)。
【0056】
そして、モード設定画面102において、「64色パレットシャッフル」「カスタムパレットシャッフル」「針棒シャッフル」のキー58a〜58cのうち、何れかのキーがタッチ操作されると、ランダム配色処理が開始される(ステップA3参照)。具体的には、「針棒シャッフル」に設定した場合、図13のステップB0にて、針棒糸色テーブルがEEPROM27から読み出されてRAM26の色情報記憶領域266に展開される。一方、「64色パレットシャッフル」或は「カスタムパレットシャッフル」に設定した場合、64色或は300色パレットテーブルが色情報記憶領域266に記憶される。こうして、色情報記憶領域266における色の総数pは、「針棒シャッフル」では最大で10色、「64色パレットシャッフル」では64色、「カスタムパレットシャッフル」では最大で300色となる。
【0057】
次いでステップB1では、例えば選択した刺繍模様における色別模様部の総数nと、当該色別模様部で用いられる色数(設定配色数x)に基づいて、当該刺繍模様の配色の組合せ数Aが算出される。本実施形態における設定配色数xは、刺繍データにおける糸色データの種類の総数であり、色別模様部の色が互いに異なる場合には総数nと一致する(x=n)。尚、ユーザにより設定配色数xを入力するための色数設定部(図示略)を例えばディスプレイ7a(画面)上で表示する等、適宜変更してもよい。
【0058】
本実施形態では、例えば、サムネイル表示画面103に互いに配色の異なる6個の刺繍模様を表示するため、その表示に必要な組合せ数Aは、重複を持たない組合せになるようコンビネーションを用いて算出する。従って例えば、設定配色数xが1、色別模様部の総数nが1の場合、組合せ数Aは、pC1通りとなる。このように、刺繍模様の配色の組合せ数Aは、前記パレットテーブル或は針棒糸色テーブルにおける色の総数pと比例関係にあり、当該総数pが2以上で且つ前記設定配色数xが3以上の場合には、6以上になる。この場合、ステップB2にてNOと判断され、6個の刺繍データが作成されるように設定される(ステップB3)。また、前記ステップB1で算出された組合せ数Aが、6に満たない場合には(ステップB2にてYES)、その数の刺繍データが作成されることとなる。
【0059】
ステップB4において、制御装置6は、針棒シャッフルモードか否かを判断する。即ち、「64色パレットシャッフル」或は「カスタムパレットシャッフル」に設定された第2モードでは(ステップB4にてNO)、刺繍模様の配色に必要な色を、64色或は300色パレットテーブルから選出する(ステップB5〜)。一方、「針棒シャッフル」に設定された第1モードでは(ステップB4にてYES)、刺繍模様の配色に必要な色は、針棒糸色テーブルつまり既に糸駒台14に載置されている糸駒15の色から抽出される(ステップB23)。
【0060】
具体的には、先ず第2モードにあっては、設定配色数xについて、色を変更したくない色別模様部の数(ステップA1で指定した色別模様部の数)を差し引くことで、1つの刺繍模様で抽出する色の種類数iを算出する(ステップB5)。そして、制御装置6は、色情報記憶領域266における前記64色或は300色パレットテーブルにおける色の総数pの範囲で乱数を発生させる。例えば、配色に用いるパレットとして64色パレット53が設定されている場合、1〜64までの乱数を発生させる(ステップB6)。続いて、制御装置6は、取得した乱数と、前述したユーザにより載置されたパレットテーブルに基づいてランダムに色を抽出する(ステップB7〜B10)。詳細には、色情報記憶領域266に64色パレットテーブルが設定されている場合(ステップB8にてYES)、発生した乱数と一致する64色パレットテーブルの1〜64のパレット別色番号を照合する。そして、該当するパレット別色番号に対応する色(RGB値)を抽出し(ステップB9)、前記ステップA1で指定した色と重複しない場合には(ステップB11にてYES)、RAM26の抽出データ記憶領域269に記憶する(ステップB12)。
【0061】
このように、抽出した色が抽出データ記憶領域269に記憶されると、その都度、色の種類数iをi=i−1に更新する(ステップB13)。また、2色目以降の抽出についても(ステップB14にてYES)、ステップB6〜B11が実行され、既に抽出した色或は前記ステップA1で指定した色と重複しない場合には(ステップB11にてYES)、1色目と同様に色の記憶とiの減算が行われる。こうして、減算された色の種類数iが「0以下(ステップB14にてNO)」と判断されるまで、ステップB6〜B14が繰り返し実行される。これにより、抽出データ記憶領域269には、1つの刺繍模様で用いる色、つまりステップA1で指定した色とステップB6〜B14で抽出した色とが重複することなく記憶される。
【0062】
次いで、色別模様部の総数nと設定配色数xとの差である不足数Tを算出し(ステップB15)、不足数Tが生じる場合には(B16にてNO)、追加選択処理(ステップB17)に移行する。
即ち、図14に示すように、追加選択処理におけるステップC1では、配色処理の前提として色別模様部の数nと抽出データ記憶領域269の色の数とを同数にすべく、抽出データ記憶領域269の中から色を選択する。この場合、制御装置6は、抽出データ記憶領域269に記憶された色の総数の範囲内で、前述のように乱数を発生させて当該記憶領域269の色の中からランダムに色を選択することができる。選択した色は当該抽出データ記憶領域269に追加的に記憶すると共に(ステップC2)、不足数TをT=T−1に更新する(ステップC3)。こうして、不足数Tが無くなる(ステップC4にてNO)と判断されるまで、ステップD1〜D4が繰り返し実行される。これにより、抽出データ記憶領域269には、色別模様部の総数nと同じ数の色が記憶される。
【0063】
抽出データ記憶領域269の色の数と色別模様部の総数nとが一致する場合(ステップC4にてNO、或はステップB16にてYES)、配色処理に移行する(ステップB18)。
図15に示すように、配色処理では、色別模様部の糸色データ毎に、ユーザによる色の指定(ステップA1での指定)の有無が判断される(ステップD1)。ここで、各糸色データについて、ユーザの指定が有る場合には、該当する色が割り当てられ(ステップD2)、ユーザの指定がない場合には、ランダムに抽出した色が割り当てられる(ステップD3)。この割り当てに際し、予め抽出データ記憶領域269に記憶された色のシャッフルを行う。つまり、前記追加選択処理が行われ、抽出データ記憶領域269に重複した色が記憶された場合でも、抽出データ記憶領域269における複数の色をばらす後述の並び替え処理を実行することで、配色におけるランダム性を確保する。こうして、色別模様部の個数n分、ステップD1〜D4が繰り返し実行され、配色が完了すると、図13のステップB19にリターンする。
【0064】
上記の処理により、1つ目の刺繍模様の配色を終えると、その糸色データの全部をRAM26に記憶する(ステップB19にてYES、ステップB20)。そして、前記組合わせ数AをA=A−1に更新し(ステップB21)、ステップB4にリターンする(ステップB22にてYES)。また、2つ目以降の刺繍模様の配色についてもステップB4〜B19が実行され、既に作成した刺繍模様の配色と異なる場合には(ステップB19にてYES)、1つ目と同様に糸色データの記憶とAの減算が行われる(ステップB20,B21)。こうして、Aが「0以下(ステップB22にてNO)」と判断されるまでステップB4〜B22が繰り返し実行されることで、配色の異なるA個の刺繍模様の組合わせが作成される。この後、図12のステップA4にリターンする。
【0065】
上記した第2モードと異なり、「針棒シャッフル」に設定された第1モードでは(図13のステップB4にてYES)、以下の処理が行われる。
即ち、第1モードでは、色情報記憶領域266に記憶された針棒糸色テーブルの糸駒色データは、前記ステップA1で指定した色と重複する色を除いて、そのまま抽出データ記憶領域269に記憶される(ステップB23)。次いで、色別模様部の総数nと設定配色数xとの差である不足数Tを算出し(ステップB15)、不足数Tが生じる場合には(B16にてNO)、追加選択処理(ステップB17)に移行する。
【0066】
図14に示すように、追加選択処理におけるステップC1では、配色処理の前提として色別模様部の数nと抽出データ記憶領域269の色の数とを同数にするために、抽出データ記憶領域269の中から色を選択する。この場合、制御装置6は、抽出データ記憶領域269に記憶された色の総数の範囲内で、前述のように乱数を発生させて当該記憶領域269の色の中からランダムに色を選択する。選択した色は当該抽出データ記憶領域269に追加的に記憶すると共に、不足数TをT=T−1に更新する(ステップC2,C3)。こうして、不足数Tが無くなる(ステップC4にてNO)と判断されるまで、ステップD1〜D4が繰り返し実行される。これにより、第1モードでは、色別模様部の総数nと同じ数の色を、針棒糸色テーブルつまり糸駒台14に載置される糸駒15の糸色を利用して抽出し、抽出データ記憶領域269に記憶する。
【0067】
抽出データ記憶領域269の色の数と色別模様部の総数nとが一致する場合(ステップC4にてNO、或はステップB16にてYES)、配色処理に移行する(ステップB18)。図15に示す配色処理では、色別模様部の糸色データ毎に、ユーザによる色の指定(ステップA1での指定)の有無が判断される(ステップD1)。ここで、各糸色データについて、ユーザの指定が有る場合には、該当する色が割り当てられ(ステップD2)、ユーザの指定がない場合には、針棒糸色テーブルの色が割り当てられる(ステップD3)。この割り当てに際し、抽出データ記憶領域269における複数の色をばらす並び替え処理を実行することで、色のシャッフルを行う。
【0068】
例えば、ステップA1でのユーザの指定が無く、糸駒台14上に載置した糸駒15のみを利用して配色する場合、その糸駒15の載置数(例えば1〜10の範囲)で乱数を発生させる。制御装置6は、発生した乱数と一致する針棒糸色テーブルの1〜10の針棒番号を照合し、当該針棒番号に対応するRGB値を抽出する。こうして乱数を利用して、抽出データ記憶領域269から全ての色を抽出するまで処理を繰り返し、抽出した順に色を並び替える。そして、並び替えた後の色を順次、色別模様部毎に割り当てることで、刺繍模様について既定の色をシャッフルした配色を行うのである。
【0069】
他方、ステップA1で針棒糸色テーブルにない色が指定され、或はステップC1で抽出データ記憶領域269に重複した色が記憶された場合でも、乱数を利用して色をシャッフルすることができる。例えば、ユーザの指定が有る場合には該当する色を割り当て(ステップD2)、ユーザの指定がない場合、乱数を利用して抽出データ記憶領域269から該当する色を抽出して色別模様部毎に割り当てる(ステップD3)。
こうして、色別模様部の個数n分、ステップD1〜D4が繰り返し実行され、配色が完了すると、図13のステップB19にリターンする。尚、抽出処理及び割当処理は、前記ステップB4〜B23、C1〜C4、D1〜D4での方法に限定するものではなく、ランダムに色を抽出して割り当てるステップを含むものであればよい。
【0070】
上記の処理により、1つ目の刺繍模様の配色を終えると、その糸色データの全部をRAM26に記憶する(ステップB19にてYES、ステップB20)。そして、前記組合わせ数AをA=A−1に更新し(ステップB21)、ステップB4にリターンする(ステップB22にてYES)。また、2つ目以降の刺繍模様の配色についてもステップB23、B15〜B19が実行され、既に作成した刺繍模様の配色と異なる場合には(ステップB19にてYES)、1つ目と同様に糸色データの記憶とAの減算が行われる(ステップB20,B21)。こうして、Aが「0以下(ステップB22にてNO)」と判断されるまでステップB4、B23、B15〜B22が繰り返し実行されることで、配色の異なるA個の刺繍模様の組合わせが作成される。この後、図12のステップA4にリターンする。
【0071】
ステップA4では、サムネイル表示画面103に配色の異なるA個(図10では6個)の刺繍模様について、夫々の画像を縮小したサムネイル画像を表示する。ここで、例えば図10で右上の刺繍模様のサムネイル画像61aがタッチ操作されると図11に示す拡大表示画面104へ遷移する(ステップA5にてYES、ステップA6)。拡大表示画面104では、選択されたサムネイル画像を拡大した刺繍模様が表示される。この後、セットキー67がタッチ操作されると、前記プレビュー画像の刺繍模様として、拡大画像領域65の刺繍模様を表示したメニュー画面100に戻る(エンド)。
【0072】
前記サムネイル表示画面103において、リターンキー62がタッチ操作されると(ステップA7にてYES)、ステップA2へ移行してモード設定画面102が表示されることから、各種の設定処理からやり直し、再度ランダム配色処理を行うことができる。また、リフレッシュキー64がタッチ操作されると(ステップA8にてYES)、ステップB4へ移行して再びランダム配色処理が実行される。これにより、糸色データに対して新たに抽出された色が割り当てられ、現在表示されている6個の刺繍模様に代えて新たな6個の刺繍模様が表示される。
【0073】
一方、サムネイル表示画面103において、セーブキー63がタッチ操作されると(ステップA9にてYES)、セーブモードに移行する(ステップA10)。セーブモードでは、何れかのサムネイル画像61a(複数のサムネイル画像でもよい)をタッチ操作により選択すると、当該刺繍模様の刺繍データがEEPROM25に記憶される(ステップA11)。
上記したステップB4〜B23、C1〜C4、D1〜D4の実行に係る制御装置6は、前記糸色データとして用いる色をランダムに抽出する抽出手段、及び当該抽出した色を割り当てる割当手段に相当する。
【0074】
本実施形態の多針ミシンMでは、上記のように新たに配色した所望の刺繍データに基づいて色別模様部毎に縫製を実行することができる。この縫製に際して、刺繍データが第1モードにおいて針棒糸色テーブルの色のみで配色されている場合、糸駒台14に既に載置してある糸駒15を交換する必要がない。従って、糸駒台14に載置されている糸駒15の糸色で多様な配色パターンを得ることができ、使い勝手がよいものとすることができる。
【0075】
一方、例えば前記ステップA1で針棒糸色テーブル以外の色を指定したり、第2モードで64色或は300色パレットテーブルから色を配色した場合、ユーザは、前記糸駒設定画面に切換えて、当該刺繍模様の縫製に必要な糸駒15を交換する。この場合、前述のように、糸駒台14に載置する糸駒15の糸駒色データを、ユーザにより別途入力する必要がなく、所望の刺繍データに基づいてそのまま縫製を実行することができる。
【0076】
更には、糸駒設定画面において、前記入力手段によりユーザの好みの糸駒色データを針棒番号毎に設定することができる。具体的には例えば、タッチパネル7bのタッチ操作に基づいて、1番の針棒10には赤の上糸15a(糸駒15)、2番の針棒10には黄の上糸15a、3番の針棒10に…というように、EEPROM27に記憶してある糸駒色データを所望の色に更新する。或は、例えば10番の針棒10に対応する糸駒色データがない場合、当該針棒10に好みの糸駒色データを追加的に記憶させる。こうして、EEPROM27にユーザが入力した糸駒色データを優先的に記憶させると共に、糸駒台14に対応する色の糸駒15を載置する。そして、前記刺繍データ処理プログラムが実行されると、EEPROM27に記憶された更新後の糸駒色データの中から色が抽出される。従って、ユーザが入力した好みの糸駒15の色でランダムな配色を行うことができる。
【0077】
以上のように本実施形態の多針ミシンMは、糸駒載置部に載置される複数の糸駒の糸色を糸駒色データとして記憶する糸駒色記憶手段と、前記糸駒色記憶手段の中から糸色データとして用いる色をランダムに抽出して割り当てる抽出手段及び割当手段とを備える。
これにより、刺繍模様について、色別模様部の糸色データに対し抽出手段により抽出された色を割り当ててランダムな配色を行うことができる。よって、糸色データの確認や指定といった面倒な作業を省略して、刺繍模様の配色を簡単に行うことができる。更に、刺繍模様について、偶然性や意外性のある配色が可能となり、規定の配色にとらわれない多様な配色パターンを得ることができる。特に、多針ミシンにおいて、抽出手段は糸駒台14に載置される複数の糸駒の糸駒色データの中からランダムに色を抽出する。このため、糸駒台14に載置されている糸駒15をそのまま使用できるので、それ以外の糸駒を準備する必要が無く、配色や縫製に係る作業者の手間を極力省くことができる。
【0078】
前記ステップA1の実行に係る制御装置6とタッチパネル7bは、刺繍データの中から所望の刺繍データを選択するための模様選択手段に相当する。また、前記糸駒色記憶手段は、模様選択手段で選択した刺繍データに含まれる色別模様部の糸色データを糸駒色データとして記憶する。
よって、糸駒色データを入力する手間を省くことができると共に、糸駒台14に、選択した刺繍模様の糸色データに対応する糸駒15を載置することで、その糸駒15を用いた配色と縫製を行うことができる。
【0079】
所望の糸駒15の糸駒色データを入力する前記入力手段を備え、糸駒色記憶手段は、入力手段で入力した糸駒色データを優先して記憶する。
これによれば、ユーザは、入力手段で好みの色を糸駒色データとして入力することで、ランダムな配色としながらもユーザの好みの色を簡単に採り入れることができる。
【0080】
色別模様部の糸色データとして制御装置6により抽出する糸駒色データを、糸駒色記憶手段の糸駒色データの中からランダムに抽出する第1モードと、前記全糸色記憶手段の糸駒色データの中からランダムに抽出する第2モードとの選択が可能なモード選択手段を備える。
全糸色記憶手段は、多針ミシンMで使用可能な糸駒について、糸駒台14への糸駒15の載置数を超える糸駒色データを記憶する。よって、第2モードを選択して配色を行うことで、糸駒台14に載置されている糸駒15の糸色に限定されることなく、より多くの配色パターンを簡単に得ることができる。
【0081】
ディスプレイ7aにおいて、刺繍模様が各色別模様部の糸色データに割り当てられた色で表示される。従って、作成した刺繍データについて、色別模様部の色を視覚的に容易に把握することができる。
ディスプレイ7aのサムネイル表示画面103に、ランダムに配色された色の組合せが異なる刺繍模様の候補を複数提示させ、その候補の中から所望の刺繍データを選んでEEPROM25に記憶させることができる。従って、ユーザの使い勝手をよくすることができると共に、ユーザの好みや感性に応じた配色の刺繍データを容易に得ることができる。
【0082】
<第2実施形態>
図16は、本発明の第2実施形態を示すものであり、第1実施形態と異なるところを説明する。
1対の糸駒台14には、各糸駒15に対応する例えば10個の色検出器48(図16では1個のみ図示)が設けられている。色検出器48は、糸駒台14上において、支持体49(同図にのみ図示)により各糸駒15に対して夫々隣接するように配置され、糸駒台14上の各糸駒15の糸色を検出する検出手段として構成されている。詳細には、色検出器48は、被検出物としての糸駒15(上糸15a)に光を照射する発光素子48aと、糸駒15からの反射光に応じたRGB値を出力するカラーセンサ48bとを備える。発光素子48aとカラーセンサ48bは、支持体49により糸駒台14上に一体的に設けられている。また、図16に示すように、発光素子48aとカラーセンサ48bは、入出力インターフェース28に接続されている。カラーセンサ48bは、糸駒台14に糸駒15が載置された状態で、糸駒15からの反射光が入力されると、当該反射光の波長に応じたRGB値を出力する。
【0083】
上記構成により、糸駒台14に載置された各糸駒15は、色検出器48により夫々のRGB値が検出される。そして、制御装置6は、検出したRGB値を糸駒色データとして該当する針棒番号と対応付けてEEPROM27に記憶させる。これにより、糸駒色データを入力する手間を省くことができると共に、実際に糸駒台14に載置した糸駒15の色を用いて、配色パターンを容易に得ることができる。
尚、検出手段は、CMOS型イメージセンサやCCD型イメージセンサを用いて構成する等、適宜変更してもよい。
【0084】
<第3実施形態>
図17は、本発明の第3実施形態を示すものであり、上記実施形態と異なるところを説明する。
図17(a)に示すように、本第3実施形態の多針ミシンMでは、前記色検出器48に代えてタグリーダ/ライタ69が設けられている。タグリーダ/ライタ69は、入出力インターフェース28に接続されると共に、糸駒15に設けられた無線タグ70と非接触で無線通信を行い、糸駒15に関する情報を送受信する。
【0085】
糸駒15は、糸立棒14aを挿入する貫通孔15cが形成された円筒状のボビン15bを有し、ボビン15bの外周面に上糸15aが巻回されている。無線タグ70は、ボビン15bの貫通孔15c内周面に設けられている。図17(b)に示すように、無線タグ70は、ICチップと小型のアンテナ71とを備えた周知の構成のものが用いられる。ここで、ICチップは、制御部72を主体として、これに接続されるメモリ部73や通信部74を有すると共に、アンテナ71で受信した電波から電源電圧を生成する電源部75を有し、電源部75で得た電源電圧に基づいて動作する。通信部74は、アンテナ71で受信した電波に含まれるデータ信号が伝達されると、そのデータ信号を元のデータに復調する処理を行う。制御部72は、タグリーダ/ライタ69からの命令(コマンド)の内容に従って、メモリ部73の記憶内容の書き込み等を行う。また、制御部72は、タグリーダ/ライタ69からのコマンドの内容に従い、メモリ部73に保存しているデータを送信するための制御を通信部74に対して行い、メモリ部73から取出されたデータにより、通信部74において所定の周波数帯の搬送波が変調され、アンテナ71からタグリーダ/ライタ69側に送信される。送信されるデータには、メモリ部73に予め記憶された糸駒色データ、つまり糸駒15の糸色のRGB値等の糸情報が含まれる。
【0086】
一方、糸駒台14には、夫々の糸立棒14aに対応する位置に、無線タグ70と無線通信を行うためのタグリーダ/ライタ69のアンテナ69a(図17(a)参照)が設けられている。そして、タグリーダ/ライタ69は、糸駒台14上に載置された全ての糸駒15の糸駒色データを、各糸立棒14aのアンテナ69aを介して読み取る読取手段として構成されている。
【0087】
上記構成によれば、糸駒台14に載置された各糸駒15は、タグリーダ/ライタ69によって、夫々の無線タグ70から糸駒色データが読み取られる。そして、制御装置6は、読み取った糸駒色データを該当する針棒番号と対応付けてEEPROM27に記憶させる。これにより、糸駒色データを入力する手間を省くことができると共に、実際に糸駒台14に載置した糸駒15の色を用いて、配色パターンを容易に得ることができる。
【0088】
本発明は、上記した実施形態にのみ限定されるものではなく、次のように変形または拡張できる。
糸駒台14は、複数の糸駒15の載置が可能な構成にあって多針ミシンMに付設されていればよい。糸駒15の載置数は、針棒の個数等に応じて11以上或は9個以下とする構成としてもよい。また、糸駒台14は、左右で対をなす構成に限定するものではなく、多針ミシンMに対して固定され或は付設される糸駒載置部であればよい。
糸駒色記憶手段や全糸色記憶手段は、EEPROM25やRAM26に限定するものではなく、刺繍データ記憶手段は、ROM25に限定するものではない。これら記憶手段は、多針ミシンMに内蔵される他の内部記憶手段や、多針ミシンMに着脱可能に装着される外部記憶手段でもよい。
【符号の説明】
【0089】
M 多針ミシン
6 制御装置(抽出手段、割当手段、モード選択手段、入力手段、模様選択手段)
7b タッチパネル(モード選択手段、入力手段、模様選択手段)
14 糸駒載置部
15 糸駒
25 刺繍データ記憶手段
26,27 糸駒色記憶手段、全糸色記憶手段
48 検出手段
69 読取手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸駒載置部に載置された複数の糸駒を使用して、複数の色別模様部からなる刺繍模様を縫製するための刺繍データに基づき縫製動作を実行する多針ミシンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、刺繍データに基づいて刺繍模様を縫製する多針ミシンが公知である。多針ミシンは、縫針を装着した針棒を複数備え、各針棒の縫針に異なる糸色の上糸が供給される。また、多針ミシンでは、多針ミシンに内蔵された記憶装置、或はROMカードやフレキシブルディスク等の外部の記憶装置に、複数の刺繍模様が記憶されている。ユーザは、複数の刺繍模様の中から、所望の刺繍模様を選択する。そして、多針ミシンは、選択された刺繍模様の刺繍データを読み込んで、加工布を保持した刺繍枠を移送機構により移送させながら、加工布に刺繍模様を刺繍する。
【0003】
通常、刺繍模様は複数の色別模様部からなる。つまり、刺繍模様の刺繍データは、色別模様部の色を特定する糸色データを含んでいる。各色別模様部は、糸色データとして予め設定された色(糸色)で縫製されるよう、複数の針棒の中から1つの針棒が選択され、選択された針棒が縫製位置に移動して縫製される。このとき、各色別模様部の色が加工布(生地)の色と類似していると、当該色別模様部と生地の区別が分かり難いという問題が発生する。具体的には、「花」の刺繍模様を、花びらの色別模様部の色と同色の生地に縫製した場合、花びらと生地の区別が分かり難くなり、花びらが無い奇妙な刺繍模様であると見間違う虞がある。
そこで、刺繍データ作成装置には、予め好ましい色の組合せを示す配色データを記憶させておき、当該配色データと生地の色等を示す生地データとに基づいて、色別模様部の糸色データの色を設定するようにしたものがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−57262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の刺繍データ作成装置では、生地の色と配色データに基づき、刺繍模様の色別模様部の色が一義的に決定される。しかし、ユーザとしては、色別模様部の色が生地の色で制約されるのではなく、色別模様部の夫々について「規定の色」ではない好みの色、或いは奇抜な色で縫製したい場合もある。また、このような刺繍模様の色の指定を行うには、色別模様部のデータを1つ1つ読み出して該当する糸色データの確認や指定を行わなければならず、手間がかかり面倒である。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、多針ミシンに載置された糸駒を用いて刺繍模様の配色を簡単に行え、且つ多様な配色パターンの刺繍模様の縫製を行うことができる多針ミシンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、本発明の請求項1の多針ミシンは、複数の糸駒が載置される糸駒載置部を有し、前記糸駒載置部に載置された複数の糸駒を使用して、複数の色別模様部からなる刺繍模様を縫製するための刺繍データであって前記色別模様部の色を特定する糸色データを含む刺繍データに基づいて、前記刺繍模様を縫製する多針ミシンにおいて、前記糸駒載置部に載置される複数の糸駒の糸色を糸駒色データとして記憶する糸駒色記憶手段と、前記糸駒色記憶手段に記憶された複数の糸駒色データの中から、前記色別模様部の糸色データとして用いる糸駒色データをランダムに抽出する抽出手段と、前記抽出手段により抽出された糸駒色データを前記色別模様部の糸色データとして割り当てる割当手段とを備え、前記割当手段により割り当てられた糸色データに基づいて、前記色別模様部毎に縫製を実行することを特徴とする。
【0008】
上記多針ミシンによれば、刺繍模様について、色別模様部の糸色データに対し抽出手段により抽出された色を割り当ててランダムな配色を行うことができる。よって、糸色データの確認や指定といった面倒な作業を省略して、刺繍模様の配色を簡単に行うことができる。更に、刺繍模様について、偶然性や意外性のある配色が可能となり、規定の配色にとらわれない多様な配色パターンを得ることができる。
特に、多針ミシンにおいて、抽出手段は糸駒載置部に載置される複数の糸駒の糸駒色データの中からランダムに色を抽出する。このため、糸駒載置部に載置されている糸駒をそのまま使用できるので、それ以外の糸駒を準備する必要が無く、配色や縫製に係る作業者の手間を極力省くことができる。
【0009】
請求項2の多針ミシンでは、請求項1の発明において、複数種類の前記刺繍データを記憶する刺繍データ記憶手段と、前記刺繍データ記憶手段に記憶された前記刺繍データの中から所望の刺繍データを選択するための模様選択手段を備え、前記糸駒色記憶手段は、前記模様選択手段で選択された刺繍データに含まれる色別模様部の糸色データを糸駒色データとして記憶することを特徴とする。
【0010】
請求項3の多針ミシンでは、請求項1または2の発明において、所望の糸駒の糸駒色データを入力する入力手段を備え、前記糸駒色記憶手段は、前記入力手段で入力した糸駒色データを優先して記憶することを特徴とする。
【0011】
請求項4の多針ミシンでは、請求項1から3までの何れかの発明において、前記糸駒載置部に載置された糸駒を含み、多針ミシンで使用可能な糸駒について、前記糸駒載置部への糸駒の載置数を超える糸駒色データを記憶する全糸色記憶手段と、前記色別模様部の糸色データとして前記抽出手段により抽出する糸駒色データを、前記糸駒色記憶手段の糸駒色データの中からランダムに抽出する第1モードと、前記全糸色記憶手段の糸駒色データの中からランダムに抽出する第2モードとの選択が可能なモード選択手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
請求項5の多針ミシンでは、請求項1から4までの何れかの発明において、前記糸駒載置部に載置されている糸駒の糸色を検出する検出手段を備え、前記糸駒色記憶手段は、前記検出手段が検出した糸駒の糸色を糸駒色データとして記憶することを特徴とする。
【0013】
請求項6の多針ミシンでは、請求項1から4までの何れかの発明において、前記糸駒色データを記憶した無線タグを有する糸駒について前記糸駒載置部に載置した状態で前記無線タグから前記糸駒色データを読み取る読取手段を備え、前記糸駒色記憶手段は、前記読取手段が読み取った糸駒の糸駒色データを記憶することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の多針ミシンによれば、刺繍模様について、色別模様部の糸色データに対し抽出手段により抽出された色を割り当ててランダムな配色を行うことができる。よって、糸色データの確認や指定といった面倒な作業を省略して、刺繍模様の配色を簡単に行うことができる。更に、刺繍模様について、偶然性や意外性のある配色が可能となり、規定の配色にとらわれない多様な配色パターンを得ることができる。
特に、多針ミシンにおいて、抽出手段は糸駒載置部に載置される複数の糸駒の糸駒色データの中からランダムに色を抽出する。このため、糸駒載置部に載置されている糸駒をそのまま使用できるので、それ以外の糸駒を準備する必要が無く、配色や縫製に係る作業者の手間を極力省くことができる。
【0015】
請求項2の多針ミシンによれば、請求項1の発明の効果に加え、糸駒色記憶手段は、模様選択手段で選択した刺繍データに含まれる色別模様部の糸色データを糸駒色データとして記憶する。よって、糸駒色データを入力する手間を省くことができると共に、糸駒載置部に、選択した刺繍模様の糸色データに対応する糸駒を載置することで、その糸駒を用いた配色と縫製を行うことができる。
【0016】
請求項3の多針ミシンによれば、請求項1または2の発明の効果に加え、糸駒色記憶手段に、入力手段で入力した糸駒色データを優先して記憶させることができる。よって、ユーザは、入力手段で好みの色を糸駒色データとして入力することで、ランダムな配色としながらもユーザの好みの色を簡単に採り入れることができる。
【0017】
請求項4の多針ミシンによれば、請求項1から3までの何れかの発明の効果に加え、モード選択手段によって、糸駒色記憶手段の糸駒色データの中からランダムに抽出する第1モードと、全糸色記憶手段の糸駒色データの中からランダムに抽出する第2モードとの選択が可能となる。よって、ユーザが、糸駒載置部に載置されている糸駒の糸色に限定することなく、より多くの配色パターンを所望する場合には、第2モードを選択して配色を行うことができる。
【0018】
請求項5の多針ミシンは、請求項1から4までの何れかの発明の効果に加え、糸駒載置部に糸駒を載置した場合、その糸駒の糸色を検出手段で検出して糸駒色記憶手段に記憶させることができる。よって、糸駒色データを入力する手間を省くことができると共に、実際に糸駒載置部に載置した糸駒の色を用いて、配色パターンを容易に得ることができる。
【0019】
請求項6の多針ミシンによれば、請求項1から4までの何れかの発明の効果に加え、糸駒載置部に載置した糸駒の糸色を、読取手段によって無線タグを利用して読み取ることができる。従って、読取手段が読み取った糸駒色データを糸駒色記憶手段に記憶させることで、糸駒色データを入力する手間を省くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態を示す多針ミシン全体の外観斜視図
【図2】電気的構成を示すブロック図
【図3】ミシンのRAMの記憶領域を説明するための概念図
【図4】刺繍データの一例を示す図
【図5】針棒糸色テーブルの一例を示す説明図
【図6】刺繍データの作成時におけるメニュー画面の一例を示す図
【図7】第1色替画面の一例を示す図
【図8】第2色替画面の一例を示す図
【図9】モード設定画面の一例を示す図
【図10】サムネイル表示画面の一例を示す図
【図11】拡大表示画面の一例を示す図
【図12】刺繍データ作成処理における糸色データの設定に係るフローチャート
【図13】色の抽出及び割り当て処理に係るフローチャート
【図14】追加選択処理に係るフローチャート
【図15】刺繍模様毎の配色処理に係るフローチャート
【図16】本発明の第2実施形態を示す図2相当図
【図17】本発明の第3実施形態を示すものであり、(a)は無線タグ及びタグリーダ/ライタの模式図、(b)は無線タグの電気的構成の概略を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0021】
<第1実施形態>
以下、本発明を多針式刺繍ミシン(以下、多針ミシンMと称す)に適用した第1実施形態について、図1〜図8を参照しながら説明する。図1に示す多針ミシンMに対して、ユーザ(使用者)が位置する方向を前方、その反対方向を後方として説明する。また、紙面右斜め下方を右方、その反対方向を左方とし、紙面上方を上方、その反対方向を下方とする。
【0022】
図1に示すように、多針ミシンMは、ミシン全体を支持する支持脚1と、支持脚1の後端部から立設された脚柱部2と、脚柱部2の上部から前方に延びるアーム部3と、アーム部3の前端部に装着された針棒ケース5とを備える。また、多針ミシンMは、制御全般を司る制御装置6(図2参照)や操作パネル7等を具備して構成されている。
前記支持脚1は、左右部位に前方に延びる脚部1a、1aを有し、上面から見て前方が開放した略U字状をなす。支持脚1の後側中央部には、前方に延びるシリンダベッド4が設けられている。シリンダベッド4の上面には針板4aが設けられており、針板4aに、後述する縫針の針落ち位置としての針穴(図示略)が形成されている。
【0023】
支持脚1の上側には、左右方向向きのキャリッジ8が配置されている。キャリッジ8の内部には、当該キャリッジ8の前側に設けられた枠取付台(図示略)をX方向(左右方向)に駆動させるためのX方向駆動機構9x(図2参照)が設けられている。左右の脚部1a内には、キャリッジ8をY方向(前後方向)に駆動させるY方向駆動機構9y(図2参照)が設けられている。X方向駆動機構9x及びY方向駆動機構9yは、後述するX軸モータ30及びY軸モータ31(図2参照)を夫々の駆動源とする。そして、刺繍縫製に供する加工布(図示略)は、矩形枠状の刺繍枠(図示略)に保持される。刺繍枠は、前記枠取付台に取付けられる。こうして、刺繍枠は、Y方向駆動機構9y及びX方向駆動機構9xの駆動により、キャリッジ8と共にY方向に移動し、枠取付台と共にX方向に移動する。刺繍枠のY方向とX方向の移動に伴って、加工布が移動される。
【0024】
前記針棒ケース5には、左右に配列された上下方向に延びる10本の針棒10(図2にのみ図示)が上下動可能に支持されている。各針棒10の下端部には、縫針(図示略)が夫々装着されている。各針棒10には、多針ミシンMを正面から見て右側から順に、1番から10番までの針棒番号が付されている。また、針棒ケース5には、各針棒10に対応する10個の天秤11が上下動可能に設けられている。
【0025】
針棒ケース5の上端部には、糸張力を調整するための10個の糸調子器12が配設された、傾斜状の糸調子台13が固定されている。糸調子台13の後方には、アーム部3上面の背面側に位置して、左右1対の糸駒台14と、糸絡みを防ぐための糸案内機構16とが設けられている。糸駒台14が糸駒載置部に相当する。
【0026】
図1に示すように、右側の糸駒台14と左側の糸駒台14は、何れも平面視にて略台形状をなす。糸駒台14には、5個の糸立棒14aが夫々設けられている。各糸立棒14aには糸駒15が夫々挿入される。つまり、左右1対の糸駒台14は、前記縫針の数と同じ10個の糸駒15を載置することができる。尚、図1では説明の便宜上、1個の糸駒15のみを示している。糸駒15から延びる上糸15aは、上記した糸案内機構16,糸調子器12,天秤11等を夫々経由して、各縫針の目孔(図示略)に夫々供給される。
【0027】
前記アーム部3の内部には、針棒ケース5をX方向へ移動させる針棒選択機構20(図2参照)が設けられている。針棒選択機構20は、駆動モータ(図示略)の駆動により、10組の針棒10及び天秤11の中から、1組の針棒10及び天秤11を縫製位置に移動させるよう択一的に切換える。縫製位置に移動した針棒10及び天秤11は、針棒駆動機構22(図2参照)により同期して上下動される。針棒駆動機構22は、脚柱部2に設けられたミシンモータ21(図2参照)の回転が、主軸(図示せず)介して伝達されて駆動される。また、シリンダベッド4の前端部には、下糸(図示略)を巻回した下糸ボビンを収容する回転釜(図示略)と、上糸15aと下糸とを切断するための切断機構19(図2参照)が設けられている。
前記針棒10及び天秤11と回転釜(図示略)との協働によって、前記刺繍枠に保持された加工布に、上糸15a及び下糸からなる縫目が形成される。このとき、刺繍枠は、後述する刺繍データに基づいて、X方向及びY方向に移送され、加工布に刺繍模様が縫製される。
【0028】
また、アーム部3の右側面には、操作パネル7が折り畳み可能に設けられている。操作パネル7には、例えば、縦長形状をなしフルカラー表示が可能な液晶カラーディスプレイ(以下、ディスプレイ7aと称す)が設けられている。ディスプレイ7aには、種々の刺繍模様や、縫製作業に必要な各種の機能を実行させる機能名が表示される。また、各針棒10に対応して設定されている上糸15aの情報や、後述する刺繍模様の色を設定するための設定画面等が表示される(図6参照)。また、ディスプレイ7aの前面には、透明電極からなる複数のタッチキーを有するタッチパネル7b(図2参照)が設けられている。タッチキーがユーザの指又はタッチペン(図示略)で押圧操作されることで、縫製模様の選択、各種パラメータの設定や機能の指示、後述する糸駒15交換時の設定等が可能になっている。
操作パネル7の前面下部には、起動停止スイッチ7c等の複数のスイッチが設けられ、側面部には、各種の刺繍模様の刺繍データ等が記憶されているUSBメモリ(図示略)などの外部記憶媒体が接続されるコネクタ7dが設けられている。
【0029】
続いて、多針ミシンMの制御系の構成について、図2のブロック図を参照しながら説明する。制御装置6は、マイクロコンピュータを主体に構成されており、内部にCPU24、ROM25、RAM26、EEPROM27、入出力インターフェース28(I/O)、それらを結ぶバス29等を有する。
【0030】
入出力インターフェース28には、操作パネル7におけるディスプレイ7a、タッチパネル7b、起動停止スイッチ7c、コネクタ7dが接続されている。また、入出力インターフェース28には、ミシンモータ21、針棒選択機構20、切断機構19、X軸モータ30、Y軸モータ31を夫々駆動する駆動回路32,33,34,35,36が接続されている。
【0031】
多針ミシンMにおいて、針棒10、縫針、回転釜、ミシンモータ21、針棒駆動機構22、針棒選択機構20、切断機構19、駆動回路32〜34等は、縫製手段40を構成し、加工布を保持する刺繍枠を移送するためのY方向駆動機構9y、X方向駆動機構9x、X軸モータ30、Y軸モータ31、駆動回路35,36等は、移送手段41を構成する。制御装置6は、後述する縫製制御プログラムや刺繍データ等に従って、上記した各種のアクチュエータを駆動制御することで、縫製手段40と移送手段41との協働による加工布に対する縫製動作を実行する。
【0032】
ROM25は、刺繍データ記憶手段として刺繍データを記憶すると共に、縫製制御プログラム、刺繍に用いられる複数種の糸に関する全ての情報であって後述の糸の色情報や品番等を含む全糸情報テーブルを記憶している。また、ROM25は、後述する刺繍データ処理プログラム、糸駒15から供給される上糸15aの糸色データと針棒10とをユーザが関連付けるための糸指定制御プログラム、操作パネル7のディスプレイ7aを制御する表示制御プログラム等を記憶している。尚、これら各種のプログラムやデータは、EEPROM25等を含む他の内部記憶手段や、前記USBメモリ等の外部記憶手段に記憶されてもよい。
【0033】
RAM26は、上記のプログラムやデータ、タッチパネル7bの操作等で入力された各種の設定値、制御装置6で演算された演算結果等を一時的に記憶するための記憶領域を有する。詳細には、図3に示すように、RAM26には、プログラム記憶領域261,設定記憶領域262,刺繍データ記憶領域263,フラグ記憶領域264,縫製条件記憶領域265,色情報記憶領域266,画像表示データ記憶領域267,作業領域268、抽出データ記憶領域269等、複数の記憶領域が設けられている。プログラム記憶領域261は、ROM25等から読み出された各種のプログラムを記憶する。設定記憶領域262は、プログラムの実行の際に参照される設定値やテーブル等を記憶する。刺繍データ記憶領域263は、刺繍データの色を設定する際の元(基準)となるデータを記憶する。フラグ記憶領域264は、プログラムの実行の際に使用される各種フラグを記憶する。縫製条件記憶領域265は、刺繍模様を縫製する際の各種縫製条件を記憶する。
【0034】
色情報記憶領域266は、刺繍模様の配色に用いられるデータを記憶するための領域で、後述するパレットテーブルや針棒糸色テーブル等を記憶する。また、抽出データ記憶領域269は、パレットテーブル等からランダムに抽出した色を一次的に記憶する。尚、画像表示データ記憶領域267は、ディスプレイ7aに表示する画面の画像データや表示設定を記憶し、作業領域268は、各種のプログラムの実行時に設定値等を予備的に記憶する。
【0035】
前記刺繍模様の一例として、図11に示すディスプレイ7aの画面104に表示された「花」の刺繍模様45を説明する。刺繍模様45は、例えば複数個(n個)の色別模様部である第1模様部451〜第n模様部45nからなる。具体的には例えば、花びらを構成する第1模様部451は紫の糸色で縫製され、葉を構成する第2模様部452はバラ色の糸色で縫製され、茎を構成する第3模様部453はマゼンタの糸色で縫製される。このように、模様部451〜45nは、夫々に色が設定される色別模様部であるが、各模様部451〜45nは相互に異なる色でなくてもよい。
【0036】
刺繍データは、刺繍模様をミシンMにより縫製するためのデータであり、複数個の色別模様部データからなる。例えば、図4に示すように、刺繍模様45の刺繍データの場合には、模様部451〜45n毎に設定された複数の針落ち位置データと、当該模様部451〜45nの縫製順序を特定するための縫製順序データ(模様1〜模様n)と、糸色データを含む。糸色データは、色別模様部毎に色を特定するために付されるデータであり、後述の割当手段により各色情報の中から色が割り当てられる。
【0037】
ここで、図4における一番上の縫製順序データ「模様1」は最初に縫製される順序を特定するもので、これに対応する「紫」は、実際には例えばRGB値で示される糸色データである。また、針落ち位置データ「Xa0、Ya0」…「XaN、YaN」は、紫の糸色に対応する縫針が順次針落ちする座標位置である。これと同様に、縫製順序が2番目以降の刺繍データについても、縫製順序データ「模様2」〜「模様n」と、糸色データ「バラ色」〜「赤」と、針落ち位置データ「XbN、YbN」〜「XnN、YnN」とが夫々含まれる。また、刺繍データは、ディスプレイ7aに表示する画像データ(例えばbmp等の画像データ)(図示略)を含み、刺繍模様の画像は各糸色データに割り当てられた色でディスプレイ7aに表示される。
【0038】
前記EEPROM27には、図5に示すように、糸駒15の糸色を各針棒10と対応付けた針棒糸色テーブルが記憶されている。詳しくは後述するように、縫製に際して糸駒15の交換が必要な場合、ディスプレイ7aには、前記刺繍データの糸色データに基づき各針棒10毎に糸色を割り当てた糸駒設定画面(図示略)が表示される。例えば、表示された糸色が図5に示す針棒番号順に割り当てられている場合を例にすると、ユーザは、その糸色を参照して針棒番号1〜10の針棒10に対応する「紫〜赤」の糸駒15を載置し、上糸15aの糸掛けを行う。これら上糸15aの糸色、つまり糸駒台14に載置された糸駒15の糸色が、糸駒色データとして当該針棒番号と対応付けられてEEPROM27に記憶されている。このように、EEPROM27は、糸駒台14に載置される糸駒15の糸駒色データを記憶する不揮発性の糸駒色記憶手段として構成されている。
【0039】
糸駒色データは、例えば、糸駒15の糸色に関する情報であって、RGB値で予め定義されている。詳しくは後述するように、糸駒色データは、ユーザにより選択した刺繍データの糸色データが、そのまま針棒番号と対応付けられてEEPROM27に記憶されるため、ユーザによる入力操作が不要である。また、EEPROM27の糸駒色データは、例えば、ユーザの好みに応じてタッチパネル7bの操作に基づき、ディスプレイ7aを見ながら針棒番号毎に設定することができる。タッチパネル7b及び制御装置6は、入力手段を構成する。
【0040】
EEPROM27には、針棒糸色テーブルにおける糸駒色データの他、多針ミシンMで使用可能な糸駒15について、糸駒台14への糸駒15の載置数(本実施形態では10個分)を超える全ての糸駒色データが記憶されている。具体的には、EEPROM25には、64色分のRGB値と当該RGB値に夫々対応付けられた1〜64のパレット別色番号とからなる64色パレットテーブル(図7の64色パレット53参照)が記憶されている。
【0041】
更に、64色パレットテーブルとは別に、全ての糸駒色データの中から予めユーザにより選択された複数の色が、300色パレットテーブル(図8の300色パレット56a参照)としてEEPROM25に記憶されている。300色パレットテーブルは、例えば、最大で300色分のRGB値、及び当該RGB値に夫々対応付けられた1〜300のパレット別色番号を、ユーザの好み等に応じて設定が可能なカスタムパレットテーブルである。こうして、EEPROM25は、糸駒台14への糸駒15の載置数を超える糸駒色データを記憶する糸駒色データを記憶するパレット記憶手段(全糸色記憶手段)として構成されている。
尚、RAM26の色情報記憶領域266は、上記した針棒糸色テーブル、64色パレットテーブル或は300色パレットテーブルにおける夫々の糸駒色データを一時的に記憶することから、糸駒色記憶手段及び全糸色記憶手段に相当する。
【0042】
そして、制御装置6は乱数発生手段として、針棒糸色テーブル、64色パレットテーブル或は300色パレットテーブルにおける糸駒色データの数を引数とする関数を用いて乱数を発生させる。具体的には、制御装置6は、糸駒台14上に載置される糸駒15の載置数(例えば1〜10の範囲)で乱数を発生させる。制御装置6は、発生した乱数と一致する針棒糸色テーブルの1〜10の針棒番号を照合し、当該針棒番号に対応するRGB値等を抽出する。このように、基本的に、針棒糸色テーブルの糸駒色データ(図5では10色分)の中からランダムに色を抽出するモードを第1モードと称する。
【0043】
他方、制御装置6は、64色或は300色パレットテーブルにおけるパレット色別番号の範囲(例えば1〜64の範囲)で乱数を発生させる。制御装置6は、発生した乱数と一致する64色パレットテーブルの1〜64のパレット別色番号を照合し、当該パレット別色番号に対応するRGB値等を抽出する。このように、64色或は300色パレットテーブルの糸駒色データの中からランダムに色を抽出するモードを第2モードと称する。
【0044】
次に、刺繍データの作成、特には糸色データの配色に際し、ディスプレイ7aに表示される画面について図6〜図11も参照しながら説明する。ここで、図6〜図11は、ディスプレイ7aにおける各表示画面100〜104を説明するための図である。ここで、各表示画面100〜104における刺繍模様の画像や64色及び300色パレット53,56a等は、ディスプレイ7aが液晶カラーディスプレイであることから、多数色を表示可能である。
【0045】
図6は、刺繍データの作成時における配色を行う前のメニュー画面100を例示している。メニュー画面100には、プレビュー画像を表示するプレビュー画像領域50、糸色データ指定領域52、糸色設定キー51aを含む各種の入力キー51等が設けられている。プレビュー画像は、ユーザにより選択された刺繍模様について該当する刺繍データにより刺繍を行った場合に、どのような刺繍結果となるのかを示す画像である。糸色設定キー51aに対応する前記タッチキーが押圧操作(以後、タッチ操作と称す)されることで、図7に示す第1色替画面101Aに切り換わる。
【0046】
第1色替画面101Aには、プレビュー画像領域50及び糸色データ指定領域52の他、前記64色パレット53、複数のパレット選択キー54a,54b、シャッフルキー55が設けられている。第1色替画面101Aでは、糸色に係る各種の設定が可能とされる。具体的には、糸色データ指定領域52には、プレビュー画像領域50の刺繍模様の色別模様部毎に対応する色が、その糸駒52aのイラストと共に示されている。ユーザは、糸駒52aをタッチ操作し、64色パレット53の中からユーザの所望する色を色別模様部毎に指定することができる。例えば、64色パレット53の最上段の1列は、左から順に前記64色パレットテーブルのパレット別色番号1〜8のRGB値が夫々割り当てられている。このように、64色パレット53は、上段から下段にわたって64色パレットテーブルの糸駒色データが段毎に8つずつ対応するように配置された64色のパレットである。
【0047】
尚、糸色データ指定領域52の直ぐ下側には、当該指定領域52における糸駒52aをスクロールさせるためのプラスキー52cとマイナスキー52dが設けられている。例えば刺繍模様45を構成する色別模様部の総数nが10の場合、現在表示されていない3個分の糸駒52aについて、プラスキー52cやマイナスキー52dのタッチ操作により表示させることができる。
【0048】
図8に示す第2色替画面101Bでは、第1色替画面101Aと同様にプレビュー画像領域50等が設けられると共に、64色パレット53に代えて300色パレット56aが設けられている。300色パレット56aは、前記RGB値に基づいて、300の升目のパレットに最大で300色の色の配置が可能で、前記のカスタムパレットテーブルに対応する。図8では300の升目からなる300色パレット56aのうち一部(50の升目)が示されている。一対のパレット選択キー54a,54bがタッチ操作されることで、第1及び第2色替画面101A、101B相互間で切り換わる。シャッフルキー55がタッチ操作されることで図9に示すモード設定画面102に切り換わる。
【0049】
モード設定画面102には、第1色替画面101Aと同様にプレビュー画像領域50等が設けられると共に、64色パレット53に代えてモード設定部58が設けられている。モード設定部58には、「64色パレットシャッフル」「カスタムパレットシャッフル」「針棒シャッフル」の夫々のキー58a,58b,58cが設けられている。「64色パレットシャッフル」或は「カスタムパレットシャッフル」の何れかをタッチ操作により選択すると、64色或は300色パレットテーブルの糸駒色データの中からランダムに色を抽出する第2モードに設定される。「針棒シャッフル」をタッチ操作により選択すると、針棒糸色テーブルの糸駒色データの中からランダムに色を抽出する第1モードに設定される。その後、図10に示すサムネイル表示画面103に切り換わる。尚、第1モードと第2モードを選択するためのタッチパネル7b、制御装置6は、モード選択手段に相当する。
【0050】
サムネイル表示画面103では、複数(例えば6個)の刺繍模様が表示される刺繍模様選択領域61、リターンキー62、セーブキー63、リフレッシュキー64等が設けられている。刺繍模様選択領域61は、前記糸色データとしてランダムに抽出した色を用いて生成した色の組合せが異なる複数の刺繍模様について、夫々の画像を縮小したサムネイル画像61aを表示する。後述するように、セーブキー63、サムネイル画像61aの順にタッチ操作すると、当該刺繍模様の刺繍データがEEPROM25に記憶される。また、リフレッシュキー64がタッチ操作されると、糸色データに対して新たに抽出された色が割り当てられ、現在表示されている6個の刺繍模様に代えて新たな6個の刺繍模様が表示される。リターンキー62がタッチ操作されると、モード設定画面102に戻り、刺繍模様のサムネイル画像がタッチ操作されると図11に示す拡大表示画面104に切り換わる。
【0051】
拡大表示画面104では、拡大画像領域65、クローズキー66、セットキー67等が設けられている。拡大画像領域65には、図10で選択されたサムネイル画像(同図にて太枠で囲われた画像61a)を拡大した1つの刺繍模様の画像が表示される。クローズキー66がタッチ操作されるとサムネイル表示画面103に戻る。また、セットキー67がタッチ操作されると、前記プレビュー画像の刺繍模様として拡大画像領域65の刺繍模様を表示したメニュー画面100に戻る。
【0052】
次に、刺繍データ処理プログラムの動作について、前記糸色データに関する配色を中心に図12〜図15を参照しながら説明する。図12〜図15は、刺繍データ処理プログラムに基づいて制御装置6が実行する処理手順を示すフローチャートである。
図12に示すステップA1では、刺繍模様に係る各種の設定処理が行われる。即ち、ユーザは、タッチパネル7bをタッチ操作して、ROM25から刺繍データを読み取り、その刺繍データに従ってディスプレイ7aの模様選択画面(図示略)を表示する。模様選択画面における複数の刺繍模様の中から、所望の刺繍模様をタッチ操作により選択すると、当該刺繍模様を表示した図6のメニュー画面100に切換る。
【0053】
また、ユーザは、メニュー画面100から前記糸駒設定画面に切換えて、選択した刺繍模様の縫製に必要な糸駒15を糸駒台14に載置する。例えば、刺繍模様の色別模様部の総数(図4で「n」に相当)が10で、当該画面に表示された色別模様部の各糸色が図5に示す針棒番号順に割り当てられるものとする。この場合、ユーザは、その糸色を参照して針棒番号1〜10の針棒10に対応する「紫〜赤」の10個の糸駒15を載置し、上糸15aの糸掛けを行う。糸駒台14に載置した糸駒15の糸色、つまり選択した刺繍模様の糸色データは糸駒色データとしてそのまま針棒番号と対応付けられてEEPROM27に記憶される。糸駒15を糸駒台14に載置した後、糸駒設定画面からメニュー画面100に戻る。
【0054】
そして、メニュー画面100で糸色設定キー51aをタッチ操作して、図7の第1色替画面101Aに切換える。ここで、第1色替画面101Aのプレビュー画像領域50の刺繍模様について、ユーザが色別模様部の色を変更したくない場合、該当する糸色データ指定領域52の糸駒52aの色をタッチ操作により指定する。こうして、指定された色は、RAM26の抽出データ記憶領域269に記憶される。当該指定数の上限は、その刺繍模様における色別模様部の総数nである。従って、ステップA1で全ての色別模様部について色の指定が行われた場合には、この処理を終了する(図示略)。
【0055】
前記糸色データ指定領域52の糸駒52aに対応する糸色データを、64色パレット53或は300色パレット56aから指定することができる。この場合、300色パレット56a(第2色替画面101B)は、第1色替画面101Aにおいてパレット選択キー54bをタッチ操作することで表示することができる。次いで、シャッフルキー55がタッチ操作されると、第1色替画面101A或は第2色替画面101Bからモード設定画面102に遷移する(ステップA2)。
【0056】
そして、モード設定画面102において、「64色パレットシャッフル」「カスタムパレットシャッフル」「針棒シャッフル」のキー58a〜58cのうち、何れかのキーがタッチ操作されると、ランダム配色処理が開始される(ステップA3参照)。具体的には、「針棒シャッフル」に設定した場合、図13のステップB0にて、針棒糸色テーブルがEEPROM27から読み出されてRAM26の色情報記憶領域266に展開される。一方、「64色パレットシャッフル」或は「カスタムパレットシャッフル」に設定した場合、64色或は300色パレットテーブルが色情報記憶領域266に記憶される。こうして、色情報記憶領域266における色の総数pは、「針棒シャッフル」では最大で10色、「64色パレットシャッフル」では64色、「カスタムパレットシャッフル」では最大で300色となる。
【0057】
次いでステップB1では、例えば選択した刺繍模様における色別模様部の総数nと、当該色別模様部で用いられる色数(設定配色数x)に基づいて、当該刺繍模様の配色の組合せ数Aが算出される。本実施形態における設定配色数xは、刺繍データにおける糸色データの種類の総数であり、色別模様部の色が互いに異なる場合には総数nと一致する(x=n)。尚、ユーザにより設定配色数xを入力するための色数設定部(図示略)を例えばディスプレイ7a(画面)上で表示する等、適宜変更してもよい。
【0058】
本実施形態では、例えば、サムネイル表示画面103に互いに配色の異なる6個の刺繍模様を表示するため、その表示に必要な組合せ数Aは、重複を持たない組合せになるようコンビネーションを用いて算出する。従って例えば、設定配色数xが1、色別模様部の総数nが1の場合、組合せ数Aは、pC1通りとなる。このように、刺繍模様の配色の組合せ数Aは、前記パレットテーブル或は針棒糸色テーブルにおける色の総数pと比例関係にあり、当該総数pが2以上で且つ前記設定配色数xが3以上の場合には、6以上になる。この場合、ステップB2にてNOと判断され、6個の刺繍データが作成されるように設定される(ステップB3)。また、前記ステップB1で算出された組合せ数Aが、6に満たない場合には(ステップB2にてYES)、その数の刺繍データが作成されることとなる。
【0059】
ステップB4において、制御装置6は、針棒シャッフルモードか否かを判断する。即ち、「64色パレットシャッフル」或は「カスタムパレットシャッフル」に設定された第2モードでは(ステップB4にてNO)、刺繍模様の配色に必要な色を、64色或は300色パレットテーブルから選出する(ステップB5〜)。一方、「針棒シャッフル」に設定された第1モードでは(ステップB4にてYES)、刺繍模様の配色に必要な色は、針棒糸色テーブルつまり既に糸駒台14に載置されている糸駒15の色から抽出される(ステップB23)。
【0060】
具体的には、先ず第2モードにあっては、設定配色数xについて、色を変更したくない色別模様部の数(ステップA1で指定した色別模様部の数)を差し引くことで、1つの刺繍模様で抽出する色の種類数iを算出する(ステップB5)。そして、制御装置6は、色情報記憶領域266における前記64色或は300色パレットテーブルにおける色の総数pの範囲で乱数を発生させる。例えば、配色に用いるパレットとして64色パレット53が設定されている場合、1〜64までの乱数を発生させる(ステップB6)。続いて、制御装置6は、取得した乱数と、前述したユーザにより載置されたパレットテーブルに基づいてランダムに色を抽出する(ステップB7〜B10)。詳細には、色情報記憶領域266に64色パレットテーブルが設定されている場合(ステップB8にてYES)、発生した乱数と一致する64色パレットテーブルの1〜64のパレット別色番号を照合する。そして、該当するパレット別色番号に対応する色(RGB値)を抽出し(ステップB9)、前記ステップA1で指定した色と重複しない場合には(ステップB11にてYES)、RAM26の抽出データ記憶領域269に記憶する(ステップB12)。
【0061】
このように、抽出した色が抽出データ記憶領域269に記憶されると、その都度、色の種類数iをi=i−1に更新する(ステップB13)。また、2色目以降の抽出についても(ステップB14にてYES)、ステップB6〜B11が実行され、既に抽出した色或は前記ステップA1で指定した色と重複しない場合には(ステップB11にてYES)、1色目と同様に色の記憶とiの減算が行われる。こうして、減算された色の種類数iが「0以下(ステップB14にてNO)」と判断されるまで、ステップB6〜B14が繰り返し実行される。これにより、抽出データ記憶領域269には、1つの刺繍模様で用いる色、つまりステップA1で指定した色とステップB6〜B14で抽出した色とが重複することなく記憶される。
【0062】
次いで、色別模様部の総数nと設定配色数xとの差である不足数Tを算出し(ステップB15)、不足数Tが生じる場合には(B16にてNO)、追加選択処理(ステップB17)に移行する。
即ち、図14に示すように、追加選択処理におけるステップC1では、配色処理の前提として色別模様部の数nと抽出データ記憶領域269の色の数とを同数にすべく、抽出データ記憶領域269の中から色を選択する。この場合、制御装置6は、抽出データ記憶領域269に記憶された色の総数の範囲内で、前述のように乱数を発生させて当該記憶領域269の色の中からランダムに色を選択することができる。選択した色は当該抽出データ記憶領域269に追加的に記憶すると共に(ステップC2)、不足数TをT=T−1に更新する(ステップC3)。こうして、不足数Tが無くなる(ステップC4にてNO)と判断されるまで、ステップD1〜D4が繰り返し実行される。これにより、抽出データ記憶領域269には、色別模様部の総数nと同じ数の色が記憶される。
【0063】
抽出データ記憶領域269の色の数と色別模様部の総数nとが一致する場合(ステップC4にてNO、或はステップB16にてYES)、配色処理に移行する(ステップB18)。
図15に示すように、配色処理では、色別模様部の糸色データ毎に、ユーザによる色の指定(ステップA1での指定)の有無が判断される(ステップD1)。ここで、各糸色データについて、ユーザの指定が有る場合には、該当する色が割り当てられ(ステップD2)、ユーザの指定がない場合には、ランダムに抽出した色が割り当てられる(ステップD3)。この割り当てに際し、予め抽出データ記憶領域269に記憶された色のシャッフルを行う。つまり、前記追加選択処理が行われ、抽出データ記憶領域269に重複した色が記憶された場合でも、抽出データ記憶領域269における複数の色をばらす後述の並び替え処理を実行することで、配色におけるランダム性を確保する。こうして、色別模様部の個数n分、ステップD1〜D4が繰り返し実行され、配色が完了すると、図13のステップB19にリターンする。
【0064】
上記の処理により、1つ目の刺繍模様の配色を終えると、その糸色データの全部をRAM26に記憶する(ステップB19にてYES、ステップB20)。そして、前記組合わせ数AをA=A−1に更新し(ステップB21)、ステップB4にリターンする(ステップB22にてYES)。また、2つ目以降の刺繍模様の配色についてもステップB4〜B19が実行され、既に作成した刺繍模様の配色と異なる場合には(ステップB19にてYES)、1つ目と同様に糸色データの記憶とAの減算が行われる(ステップB20,B21)。こうして、Aが「0以下(ステップB22にてNO)」と判断されるまでステップB4〜B22が繰り返し実行されることで、配色の異なるA個の刺繍模様の組合わせが作成される。この後、図12のステップA4にリターンする。
【0065】
上記した第2モードと異なり、「針棒シャッフル」に設定された第1モードでは(図13のステップB4にてYES)、以下の処理が行われる。
即ち、第1モードでは、色情報記憶領域266に記憶された針棒糸色テーブルの糸駒色データは、前記ステップA1で指定した色と重複する色を除いて、そのまま抽出データ記憶領域269に記憶される(ステップB23)。次いで、色別模様部の総数nと設定配色数xとの差である不足数Tを算出し(ステップB15)、不足数Tが生じる場合には(B16にてNO)、追加選択処理(ステップB17)に移行する。
【0066】
図14に示すように、追加選択処理におけるステップC1では、配色処理の前提として色別模様部の数nと抽出データ記憶領域269の色の数とを同数にするために、抽出データ記憶領域269の中から色を選択する。この場合、制御装置6は、抽出データ記憶領域269に記憶された色の総数の範囲内で、前述のように乱数を発生させて当該記憶領域269の色の中からランダムに色を選択する。選択した色は当該抽出データ記憶領域269に追加的に記憶すると共に、不足数TをT=T−1に更新する(ステップC2,C3)。こうして、不足数Tが無くなる(ステップC4にてNO)と判断されるまで、ステップD1〜D4が繰り返し実行される。これにより、第1モードでは、色別模様部の総数nと同じ数の色を、針棒糸色テーブルつまり糸駒台14に載置される糸駒15の糸色を利用して抽出し、抽出データ記憶領域269に記憶する。
【0067】
抽出データ記憶領域269の色の数と色別模様部の総数nとが一致する場合(ステップC4にてNO、或はステップB16にてYES)、配色処理に移行する(ステップB18)。図15に示す配色処理では、色別模様部の糸色データ毎に、ユーザによる色の指定(ステップA1での指定)の有無が判断される(ステップD1)。ここで、各糸色データについて、ユーザの指定が有る場合には、該当する色が割り当てられ(ステップD2)、ユーザの指定がない場合には、針棒糸色テーブルの色が割り当てられる(ステップD3)。この割り当てに際し、抽出データ記憶領域269における複数の色をばらす並び替え処理を実行することで、色のシャッフルを行う。
【0068】
例えば、ステップA1でのユーザの指定が無く、糸駒台14上に載置した糸駒15のみを利用して配色する場合、その糸駒15の載置数(例えば1〜10の範囲)で乱数を発生させる。制御装置6は、発生した乱数と一致する針棒糸色テーブルの1〜10の針棒番号を照合し、当該針棒番号に対応するRGB値を抽出する。こうして乱数を利用して、抽出データ記憶領域269から全ての色を抽出するまで処理を繰り返し、抽出した順に色を並び替える。そして、並び替えた後の色を順次、色別模様部毎に割り当てることで、刺繍模様について既定の色をシャッフルした配色を行うのである。
【0069】
他方、ステップA1で針棒糸色テーブルにない色が指定され、或はステップC1で抽出データ記憶領域269に重複した色が記憶された場合でも、乱数を利用して色をシャッフルすることができる。例えば、ユーザの指定が有る場合には該当する色を割り当て(ステップD2)、ユーザの指定がない場合、乱数を利用して抽出データ記憶領域269から該当する色を抽出して色別模様部毎に割り当てる(ステップD3)。
こうして、色別模様部の個数n分、ステップD1〜D4が繰り返し実行され、配色が完了すると、図13のステップB19にリターンする。尚、抽出処理及び割当処理は、前記ステップB4〜B23、C1〜C4、D1〜D4での方法に限定するものではなく、ランダムに色を抽出して割り当てるステップを含むものであればよい。
【0070】
上記の処理により、1つ目の刺繍模様の配色を終えると、その糸色データの全部をRAM26に記憶する(ステップB19にてYES、ステップB20)。そして、前記組合わせ数AをA=A−1に更新し(ステップB21)、ステップB4にリターンする(ステップB22にてYES)。また、2つ目以降の刺繍模様の配色についてもステップB23、B15〜B19が実行され、既に作成した刺繍模様の配色と異なる場合には(ステップB19にてYES)、1つ目と同様に糸色データの記憶とAの減算が行われる(ステップB20,B21)。こうして、Aが「0以下(ステップB22にてNO)」と判断されるまでステップB4、B23、B15〜B22が繰り返し実行されることで、配色の異なるA個の刺繍模様の組合わせが作成される。この後、図12のステップA4にリターンする。
【0071】
ステップA4では、サムネイル表示画面103に配色の異なるA個(図10では6個)の刺繍模様について、夫々の画像を縮小したサムネイル画像を表示する。ここで、例えば図10で右上の刺繍模様のサムネイル画像61aがタッチ操作されると図11に示す拡大表示画面104へ遷移する(ステップA5にてYES、ステップA6)。拡大表示画面104では、選択されたサムネイル画像を拡大した刺繍模様が表示される。この後、セットキー67がタッチ操作されると、前記プレビュー画像の刺繍模様として、拡大画像領域65の刺繍模様を表示したメニュー画面100に戻る(エンド)。
【0072】
前記サムネイル表示画面103において、リターンキー62がタッチ操作されると(ステップA7にてYES)、ステップA2へ移行してモード設定画面102が表示されることから、各種の設定処理からやり直し、再度ランダム配色処理を行うことができる。また、リフレッシュキー64がタッチ操作されると(ステップA8にてYES)、ステップB4へ移行して再びランダム配色処理が実行される。これにより、糸色データに対して新たに抽出された色が割り当てられ、現在表示されている6個の刺繍模様に代えて新たな6個の刺繍模様が表示される。
【0073】
一方、サムネイル表示画面103において、セーブキー63がタッチ操作されると(ステップA9にてYES)、セーブモードに移行する(ステップA10)。セーブモードでは、何れかのサムネイル画像61a(複数のサムネイル画像でもよい)をタッチ操作により選択すると、当該刺繍模様の刺繍データがEEPROM25に記憶される(ステップA11)。
上記したステップB4〜B23、C1〜C4、D1〜D4の実行に係る制御装置6は、前記糸色データとして用いる色をランダムに抽出する抽出手段、及び当該抽出した色を割り当てる割当手段に相当する。
【0074】
本実施形態の多針ミシンMでは、上記のように新たに配色した所望の刺繍データに基づいて色別模様部毎に縫製を実行することができる。この縫製に際して、刺繍データが第1モードにおいて針棒糸色テーブルの色のみで配色されている場合、糸駒台14に既に載置してある糸駒15を交換する必要がない。従って、糸駒台14に載置されている糸駒15の糸色で多様な配色パターンを得ることができ、使い勝手がよいものとすることができる。
【0075】
一方、例えば前記ステップA1で針棒糸色テーブル以外の色を指定したり、第2モードで64色或は300色パレットテーブルから色を配色した場合、ユーザは、前記糸駒設定画面に切換えて、当該刺繍模様の縫製に必要な糸駒15を交換する。この場合、前述のように、糸駒台14に載置する糸駒15の糸駒色データを、ユーザにより別途入力する必要がなく、所望の刺繍データに基づいてそのまま縫製を実行することができる。
【0076】
更には、糸駒設定画面において、前記入力手段によりユーザの好みの糸駒色データを針棒番号毎に設定することができる。具体的には例えば、タッチパネル7bのタッチ操作に基づいて、1番の針棒10には赤の上糸15a(糸駒15)、2番の針棒10には黄の上糸15a、3番の針棒10に…というように、EEPROM27に記憶してある糸駒色データを所望の色に更新する。或は、例えば10番の針棒10に対応する糸駒色データがない場合、当該針棒10に好みの糸駒色データを追加的に記憶させる。こうして、EEPROM27にユーザが入力した糸駒色データを優先的に記憶させると共に、糸駒台14に対応する色の糸駒15を載置する。そして、前記刺繍データ処理プログラムが実行されると、EEPROM27に記憶された更新後の糸駒色データの中から色が抽出される。従って、ユーザが入力した好みの糸駒15の色でランダムな配色を行うことができる。
【0077】
以上のように本実施形態の多針ミシンMは、糸駒載置部に載置される複数の糸駒の糸色を糸駒色データとして記憶する糸駒色記憶手段と、前記糸駒色記憶手段の中から糸色データとして用いる色をランダムに抽出して割り当てる抽出手段及び割当手段とを備える。
これにより、刺繍模様について、色別模様部の糸色データに対し抽出手段により抽出された色を割り当ててランダムな配色を行うことができる。よって、糸色データの確認や指定といった面倒な作業を省略して、刺繍模様の配色を簡単に行うことができる。更に、刺繍模様について、偶然性や意外性のある配色が可能となり、規定の配色にとらわれない多様な配色パターンを得ることができる。特に、多針ミシンにおいて、抽出手段は糸駒台14に載置される複数の糸駒の糸駒色データの中からランダムに色を抽出する。このため、糸駒台14に載置されている糸駒15をそのまま使用できるので、それ以外の糸駒を準備する必要が無く、配色や縫製に係る作業者の手間を極力省くことができる。
【0078】
前記ステップA1の実行に係る制御装置6とタッチパネル7bは、刺繍データの中から所望の刺繍データを選択するための模様選択手段に相当する。また、前記糸駒色記憶手段は、模様選択手段で選択した刺繍データに含まれる色別模様部の糸色データを糸駒色データとして記憶する。
よって、糸駒色データを入力する手間を省くことができると共に、糸駒台14に、選択した刺繍模様の糸色データに対応する糸駒15を載置することで、その糸駒15を用いた配色と縫製を行うことができる。
【0079】
所望の糸駒15の糸駒色データを入力する前記入力手段を備え、糸駒色記憶手段は、入力手段で入力した糸駒色データを優先して記憶する。
これによれば、ユーザは、入力手段で好みの色を糸駒色データとして入力することで、ランダムな配色としながらもユーザの好みの色を簡単に採り入れることができる。
【0080】
色別模様部の糸色データとして制御装置6により抽出する糸駒色データを、糸駒色記憶手段の糸駒色データの中からランダムに抽出する第1モードと、前記全糸色記憶手段の糸駒色データの中からランダムに抽出する第2モードとの選択が可能なモード選択手段を備える。
全糸色記憶手段は、多針ミシンMで使用可能な糸駒について、糸駒台14への糸駒15の載置数を超える糸駒色データを記憶する。よって、第2モードを選択して配色を行うことで、糸駒台14に載置されている糸駒15の糸色に限定されることなく、より多くの配色パターンを簡単に得ることができる。
【0081】
ディスプレイ7aにおいて、刺繍模様が各色別模様部の糸色データに割り当てられた色で表示される。従って、作成した刺繍データについて、色別模様部の色を視覚的に容易に把握することができる。
ディスプレイ7aのサムネイル表示画面103に、ランダムに配色された色の組合せが異なる刺繍模様の候補を複数提示させ、その候補の中から所望の刺繍データを選んでEEPROM25に記憶させることができる。従って、ユーザの使い勝手をよくすることができると共に、ユーザの好みや感性に応じた配色の刺繍データを容易に得ることができる。
【0082】
<第2実施形態>
図16は、本発明の第2実施形態を示すものであり、第1実施形態と異なるところを説明する。
1対の糸駒台14には、各糸駒15に対応する例えば10個の色検出器48(図16では1個のみ図示)が設けられている。色検出器48は、糸駒台14上において、支持体49(同図にのみ図示)により各糸駒15に対して夫々隣接するように配置され、糸駒台14上の各糸駒15の糸色を検出する検出手段として構成されている。詳細には、色検出器48は、被検出物としての糸駒15(上糸15a)に光を照射する発光素子48aと、糸駒15からの反射光に応じたRGB値を出力するカラーセンサ48bとを備える。発光素子48aとカラーセンサ48bは、支持体49により糸駒台14上に一体的に設けられている。また、図16に示すように、発光素子48aとカラーセンサ48bは、入出力インターフェース28に接続されている。カラーセンサ48bは、糸駒台14に糸駒15が載置された状態で、糸駒15からの反射光が入力されると、当該反射光の波長に応じたRGB値を出力する。
【0083】
上記構成により、糸駒台14に載置された各糸駒15は、色検出器48により夫々のRGB値が検出される。そして、制御装置6は、検出したRGB値を糸駒色データとして該当する針棒番号と対応付けてEEPROM27に記憶させる。これにより、糸駒色データを入力する手間を省くことができると共に、実際に糸駒台14に載置した糸駒15の色を用いて、配色パターンを容易に得ることができる。
尚、検出手段は、CMOS型イメージセンサやCCD型イメージセンサを用いて構成する等、適宜変更してもよい。
【0084】
<第3実施形態>
図17は、本発明の第3実施形態を示すものであり、上記実施形態と異なるところを説明する。
図17(a)に示すように、本第3実施形態の多針ミシンMでは、前記色検出器48に代えてタグリーダ/ライタ69が設けられている。タグリーダ/ライタ69は、入出力インターフェース28に接続されると共に、糸駒15に設けられた無線タグ70と非接触で無線通信を行い、糸駒15に関する情報を送受信する。
【0085】
糸駒15は、糸立棒14aを挿入する貫通孔15cが形成された円筒状のボビン15bを有し、ボビン15bの外周面に上糸15aが巻回されている。無線タグ70は、ボビン15bの貫通孔15c内周面に設けられている。図17(b)に示すように、無線タグ70は、ICチップと小型のアンテナ71とを備えた周知の構成のものが用いられる。ここで、ICチップは、制御部72を主体として、これに接続されるメモリ部73や通信部74を有すると共に、アンテナ71で受信した電波から電源電圧を生成する電源部75を有し、電源部75で得た電源電圧に基づいて動作する。通信部74は、アンテナ71で受信した電波に含まれるデータ信号が伝達されると、そのデータ信号を元のデータに復調する処理を行う。制御部72は、タグリーダ/ライタ69からの命令(コマンド)の内容に従って、メモリ部73の記憶内容の書き込み等を行う。また、制御部72は、タグリーダ/ライタ69からのコマンドの内容に従い、メモリ部73に保存しているデータを送信するための制御を通信部74に対して行い、メモリ部73から取出されたデータにより、通信部74において所定の周波数帯の搬送波が変調され、アンテナ71からタグリーダ/ライタ69側に送信される。送信されるデータには、メモリ部73に予め記憶された糸駒色データ、つまり糸駒15の糸色のRGB値等の糸情報が含まれる。
【0086】
一方、糸駒台14には、夫々の糸立棒14aに対応する位置に、無線タグ70と無線通信を行うためのタグリーダ/ライタ69のアンテナ69a(図17(a)参照)が設けられている。そして、タグリーダ/ライタ69は、糸駒台14上に載置された全ての糸駒15の糸駒色データを、各糸立棒14aのアンテナ69aを介して読み取る読取手段として構成されている。
【0087】
上記構成によれば、糸駒台14に載置された各糸駒15は、タグリーダ/ライタ69によって、夫々の無線タグ70から糸駒色データが読み取られる。そして、制御装置6は、読み取った糸駒色データを該当する針棒番号と対応付けてEEPROM27に記憶させる。これにより、糸駒色データを入力する手間を省くことができると共に、実際に糸駒台14に載置した糸駒15の色を用いて、配色パターンを容易に得ることができる。
【0088】
本発明は、上記した実施形態にのみ限定されるものではなく、次のように変形または拡張できる。
糸駒台14は、複数の糸駒15の載置が可能な構成にあって多針ミシンMに付設されていればよい。糸駒15の載置数は、針棒の個数等に応じて11以上或は9個以下とする構成としてもよい。また、糸駒台14は、左右で対をなす構成に限定するものではなく、多針ミシンMに対して固定され或は付設される糸駒載置部であればよい。
糸駒色記憶手段や全糸色記憶手段は、EEPROM25やRAM26に限定するものではなく、刺繍データ記憶手段は、ROM25に限定するものではない。これら記憶手段は、多針ミシンMに内蔵される他の内部記憶手段や、多針ミシンMに着脱可能に装着される外部記憶手段でもよい。
【符号の説明】
【0089】
M 多針ミシン
6 制御装置(抽出手段、割当手段、モード選択手段、入力手段、模様選択手段)
7b タッチパネル(モード選択手段、入力手段、模様選択手段)
14 糸駒載置部
15 糸駒
25 刺繍データ記憶手段
26,27 糸駒色記憶手段、全糸色記憶手段
48 検出手段
69 読取手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の糸駒が載置される糸駒載置部を有し、前記糸駒載置部に載置された複数の糸駒を使用して、複数の色別模様部からなる刺繍模様を縫製するための刺繍データであって前記色別模様部の色を特定する糸色データを含む刺繍データに基づいて、前記刺繍模様を縫製する多針ミシンにおいて、
前記糸駒載置部に載置される複数の糸駒の糸色を糸駒色データとして記憶する糸駒色記憶手段と、
前記糸駒色記憶手段に記憶された複数の糸駒色データの中から、前記色別模様部の糸色データとして用いる糸駒色データをランダムに抽出する抽出手段と、
前記抽出手段により抽出された糸駒色データを前記色別模様部の糸色データとして割り当てる割当手段とを備え、
前記割当手段により割り当てられた糸色データに基づいて、前記色別模様部毎に縫製を実行することを特徴とする多針ミシン。
【請求項2】
複数種類の前記刺繍データを記憶する刺繍データ記憶手段と、
前記刺繍データ記憶手段に記憶された前記刺繍データの中から所望の刺繍データを選択するための模様選択手段を備え、
前記糸駒色記憶手段は、前記模様選択手段で選択された刺繍データに含まれる色別模様部の糸色データを糸駒色データとして記憶することを特徴とする請求項1記載の多針ミシン。
【請求項3】
所望の糸駒の糸駒色データを入力する入力手段を備え、
前記糸駒色記憶手段は、前記入力手段で入力した糸駒色データを優先して記憶することを特徴とする請求項1または2記載の多針ミシン。
【請求項4】
多針ミシンで使用可能な糸駒の糸色について、前記糸駒載置部への糸駒の載置数を超える糸駒色データを記憶する全糸色記憶手段と、
前記色別模様部の糸色データとして用いる糸駒色データを、前記糸駒色記憶手段の糸駒色データの中からランダムに抽出する第1モードと、前記全糸色記憶手段の糸駒色データの中からランダムに抽出する第2モードとの選択が可能なモード選択手段とを備えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の多針ミシン。
【請求項5】
前記糸駒載置部に載置された糸駒の糸色を検出する検出手段を備え、
前記糸駒色記憶手段は、前記検出手段が検出した糸駒の糸色を糸駒色データとして記憶することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の多針ミシン。
【請求項6】
前記糸駒色データを記憶した無線タグを有する糸駒について前記糸駒載置部に載置した状態で前記無線タグから前記糸駒色データを読み取る読取手段を備え、
前記糸駒色記憶手段は、前記読取手段が読み取った糸駒の糸駒色データを記憶することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の多針ミシン。
【請求項1】
複数の糸駒が載置される糸駒載置部を有し、前記糸駒載置部に載置された複数の糸駒を使用して、複数の色別模様部からなる刺繍模様を縫製するための刺繍データであって前記色別模様部の色を特定する糸色データを含む刺繍データに基づいて、前記刺繍模様を縫製する多針ミシンにおいて、
前記糸駒載置部に載置される複数の糸駒の糸色を糸駒色データとして記憶する糸駒色記憶手段と、
前記糸駒色記憶手段に記憶された複数の糸駒色データの中から、前記色別模様部の糸色データとして用いる糸駒色データをランダムに抽出する抽出手段と、
前記抽出手段により抽出された糸駒色データを前記色別模様部の糸色データとして割り当てる割当手段とを備え、
前記割当手段により割り当てられた糸色データに基づいて、前記色別模様部毎に縫製を実行することを特徴とする多針ミシン。
【請求項2】
複数種類の前記刺繍データを記憶する刺繍データ記憶手段と、
前記刺繍データ記憶手段に記憶された前記刺繍データの中から所望の刺繍データを選択するための模様選択手段を備え、
前記糸駒色記憶手段は、前記模様選択手段で選択された刺繍データに含まれる色別模様部の糸色データを糸駒色データとして記憶することを特徴とする請求項1記載の多針ミシン。
【請求項3】
所望の糸駒の糸駒色データを入力する入力手段を備え、
前記糸駒色記憶手段は、前記入力手段で入力した糸駒色データを優先して記憶することを特徴とする請求項1または2記載の多針ミシン。
【請求項4】
多針ミシンで使用可能な糸駒の糸色について、前記糸駒載置部への糸駒の載置数を超える糸駒色データを記憶する全糸色記憶手段と、
前記色別模様部の糸色データとして用いる糸駒色データを、前記糸駒色記憶手段の糸駒色データの中からランダムに抽出する第1モードと、前記全糸色記憶手段の糸駒色データの中からランダムに抽出する第2モードとの選択が可能なモード選択手段とを備えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の多針ミシン。
【請求項5】
前記糸駒載置部に載置された糸駒の糸色を検出する検出手段を備え、
前記糸駒色記憶手段は、前記検出手段が検出した糸駒の糸色を糸駒色データとして記憶することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の多針ミシン。
【請求項6】
前記糸駒色データを記憶した無線タグを有する糸駒について前記糸駒載置部に載置した状態で前記無線タグから前記糸駒色データを読み取る読取手段を備え、
前記糸駒色記憶手段は、前記読取手段が読み取った糸駒の糸駒色データを記憶することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の多針ミシン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2013−34697(P2013−34697A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173848(P2011−173848)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
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