説明

多面体構造ポリシロキサン変性体、及び該変性体を含有する組成物。

【課題】 成型加工性、透明性、耐熱性、耐光性等に優れ、耐衝撃性に優れる多面体構造ポリシロキサン変性体、及び該変性体を含有する組成物を提供すること
【解決手段】 式[XR2SiO−SiO3/2]a[XR2SiO−(R2SiO)m−SiO3/2]b[R'−(R2SiO)n−SiO3/2]c(a〜cは0または1以上の整数、a+b+cは6〜24の整数、b+cは1以上の整数、m、nは1以上の整数;Rは、アルキル基、アリール基であり、それぞれが複数ある場合は、互いに同一であっても異なっていてもよい;R'は、他の多面体構造ポリシロキサン;Xは、水素原子、アルケニル基であり、同一であっても異なっていてもよい)を構成単位とする多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)に、ヒドロシリル基もしくはアルケニル基を含有する化合物(b)をヒドロシリル化させて得られることを特徴とする、多面体構造ポリシロキサン変性体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成型加工性、透明性、耐熱性、耐光性等に優れ、耐衝撃性に優れる多面体構造ポリシロキサン変性体、及び該変性体を含有する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリシロキサン系組成物は、耐熱性、耐寒性、耐候性、耐光性、化学的安定性、電気特性、難燃性、耐水性、透明性、着色性、非粘着性、非腐食性に優れており、様々な産業で利用されている。中でも、多面体構造を有するポリシロキサンで構成された組成物は、その特異的な化学構造から、さらに優れた耐熱性、耐光性、化学的安定性、低誘電性等を示すことが知られている。
【0003】
しかしながら、多面体構造ポリシロキサンは、一般に、多官能性で固体の化合物であり、反応の制御が難しく、ハンドリング性、成型加工性に乏しいため、材料化が困難であった。例えば、官能基含有ポリシロキサンを用いたヒドロシリル化硬化性組成物が開示されているが(非特許文献1)、該当技術では、出発原料である多面体構造ポリシロキサンが多官能性の固形物であるため、硬化反応の制御、ハンドリング性や成形加工性にさらなる改良の余地がある。
【0004】
この他にも、エポキシ基やフェニル基を含有する多面体骨格を有するポリシロキサンを用いた硬化性組成物(特許文献1〜3)が開示されているが、高温条件下では、加熱による着色が見られるなど、ポリシロキサン系組成物の特性が活かしきれていない。
【0005】
上記のように、多面体骨格を有するポリシロキサン化合物を用いた材料の開示は見られるが、その特徴を十分に有し、ハンドリング性、成型加工性に優れた液状化合物に関する例は見られていない。
【0006】
また、多面体構造ポリシロキサンを用いた硬化性樹脂については、硬化させたときの硬化物に強度が不足しており、耐衝撃性に弱いといった課題がある。
【0007】
以上のように、多面体構造ポリシロキサンの特徴を十分に発現し、ハンドリング、成型加工性に優れ、かつ、硬化物の耐衝撃性に弱いという課題を解決可能な材料の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2004−529984
【特許文献2】特開2004−359933
【特許文献3】特開2006−22207
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】J.Am.Chem.Soc.1998,120,8380−8391
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するべく、成型加工性、透明性、耐熱性、耐光性等に優れ、耐衝撃性に優れる多面体構造ポリシロキサン変性体、及び該変性体を含有する組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、以下の構成を有することにより課題が解決することを見いだした。すなわち本発明は、以下の構成を有するものである。
【0012】
1).式
[XR2SiO−SiO3/2]a[XR2SiO−(R2SiO)m−SiO3/2]b[R'−(R2SiO)n−SiO3/2]c(a〜cは0または1以上の整数、a+b+cは6〜24の整数、b+cは1以上の整数、m、nは1以上の整数;Rは、アルキル基、アリール基であり、それぞれが複数ある場合は、互いに同一であっても異なっていてもよい;R'は、他の多面体構造ポリシロキサン;Xは、水素原子、アルケニル基であり、同一であっても異なっていてもよい)を構成単位とする多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)に、ヒドロシリル基もしくはアルケニル基を含有する化合物(b)をヒドロシリル化させて得られることを特徴とする、多面体構造ポリシロキサン変性体。
【0013】
2).20℃で液状であることを特徴とする、1)に記載の多面体構造ポリシロキサン変性体。
【0014】
3).分子中に少なくとも3個のヒドロシリル基、またはアルケニル基を有することを特徴とする、1)、または2)に記載の多面体構造ポリシロキサン変性体。
【0015】
4).ヒドロシリル基もしくはアルケニル基を含有する化合物(b)が、ヒドロシリル基もしくはアルケニル基を含有するシロキサン化合物であることを特徴とする、1)〜3)のいずれか1に記載の多面体構造ポリシロキサン変性体。
【0016】
5).多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)が、多面体構造を有するケイ酸塩とモノクロロシランとジクロロシランの混合物とを反応させて得られることを特徴とする、1)〜4)のいずれか1に記載の多面体構造ポリシロキサン変性体。
【0017】
6).1)〜5)のいずれか1に記載の多面体構造ポリシロキサン変性体を含有することを特徴とする、ポリシロキサン系組成物。
【0018】
7).硬化剤を含有することを特徴とする、6)に記載のポリシロキサン系組成物。
【0019】
8).硬化剤が、少なくとも1つ以上のアルケニル基、またはヒドロシリル基を含有することを特徴とする7)に記載のポリシロキサン系組成物。
【0020】
9).硬化剤が、分子量1000未満のポリシロキサンを必須成分とすることを特徴とする、79または8)に記載のポリシロキサン系組成物。
【0021】
10).ヒドロシリル化触媒を含有することを特徴とする、6)〜9)のいずれか1に記載のポリシロキサン系組成物。
【0022】
11).6)〜10)のいずれか1に記載のポリシロキサン系組成物を用いて得られる硬化物。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、成型加工性、透明性、耐熱性、耐光性等に優れ、耐衝撃性に優れる多面体構造ポリシロキサン変性体、及び該変性体を含有する組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)>
本多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)は、側鎖にシロキサン結合を有する、または2個以上の多面体構造ポリシロキサンがシロキサン結合で連結したオリゴマーからなるものであり、以下の式(1)、で表されるシロキサン単位からなるものである。
【0025】
本多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)は、側鎖にシロキサン結合を導入、またはシロキサン結合で連結することにより、液状成分とすることが可能である。
【0026】
[XR2SiO−SiO3/2]a[XR2SiO−(R2SiO)m−SiO3/2]b[R'−(R2SiO)n−SiO3/2]c (1)
(a〜cは0または1以上の整数、a+b+cは6〜24の整数、b+cは1以上の整数、m、nは1以上の整数である、Rは、アルキル基、アリール基であり、それぞれが複数ある場合は、互いに同一であっても異なっていてもよい、R'は他の多面体構造ポリシロキサン、Xは水素原子、またはアルケニル基であり、同一であっても異なっていてもよい)。
【0027】
Xは、ヒドロシリル化触媒存在下、ヒドロシリル化反応により後述するヒドロシリル基もしくはアルケニル基を含有する化合物(b)を変性させる置換基であり、水素原子またはアルケニル基である。
【0028】
Rは、アルキル基、アリール基であり、それぞれが複数ある場合は、互いに同一であっても異なっていてもよい。本発明におけるRは、耐熱性、耐光性の観点から、メチル基であることが好ましい。
【0029】
(1)式中のシロキサン結合部位(R2SiO)m、(R2SiO)nは、多面体構造ポリシロキサン系化合物を液状化するために有用な成分であり、m、nはそれぞれ1以上の整数であれば特に限定はないが、1〜20の整数であることが望ましい。また、上記シロキサン結合部位は、本発明における多面体構造ポリシロキサンおよび得られる硬化物の物性を調整する上で重要であり、m数を調整することによって、架橋密度の調整、皮膜性、レベリング性、脆さ改善などが可能となる。
【0030】
<多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)の製造方法>
本発明において、所望の多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)を得るために、多面体構造を有するケイ酸塩を前駆体として使用してもよい。
【0031】
多面体構造を有するケイ酸塩の合成方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いて合成できる。具体的には、テトラアルコキシシランを4級アンモニウムヒドロキシド等の塩基存在下で加水分解縮合させる方法が挙げられる。
【0032】
テトラアルコキシシランとしては、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラブトキシシラン等が例示できる。4級アンモニウムヒドロキシドとしては、2−ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドが例示できる。本発明においては、テトラアルコキシランの替わりに、シリカや稲籾殻等のシリカ含有する物質からも、同様の多面体構造を有するケイ酸塩を得ることが可能である。
【0033】
所望の多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)は、前記多面体構造を有するケイ酸塩をクロロシランを用いてシリル化することにより得ることができる。
【0034】
クロロシランは、シリル化後の生成物が前記した式(1)で表される化合物として得られる限り特に限定はされない。
【0035】
クロロシランの添加量は、特に限定されないが、前駆体である多面体構造を有するケイ酸塩のケイ素原子の1個に対して、クロロシランの塩素原子の総数が0.5〜10個になるように用いることが好ましく、0.8〜5であることがさらに好ましい。
【0036】
本発明における多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)の製造方法では、シリル化の際に、モノクロロシランにジクロロシランを併用して用いることにより、モノクロロシラン単独で用いる場合に比べ、添加するクロロシランのモル数を減少させることができるため、より効果的に多面体構造ポリシロキサン系化合物を得ることができる。
【0037】
モノクロロシランとしては、ジメチルヒドロクロロシラン、メチルフェニルヒドロクロロシラン、ジフェニルヒドロクロロシラン、ジメチルビニルクロロシラン、メチルフェニルビニルクロロシラン、ジフェニルビニルクロロシラン等が例示できる。
【0038】
ジクロロシランとしては、ジメチルジクロロシラン、メチルフェニルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン等が例示できる。
【0039】
モノクロロシランとジクロロシランの添加量の比率としては、モノクロロシラン8モルに対して、ジクロロシランを0.1〜4モル、さらには0.4〜3モル、特には0.6〜2.5モルの範囲で用いることが好ましい。クロロシランの添加量が多いと、多面体構造を化学構造に含まないシロキサン化合物が副生する場合があり、少なすぎると生成物内に固形物が残存したり、ゲル化したりする場合がある。
【0040】
<ヒドロシリル基もしくはアルケニル基を含有する化合物(b)>
本発明におけるヒドロシリル基もしくはアルケニル基含有化合物(b)は、分子中にヒドロシリル基またはアルケニル基を1個以上含有する化合物、好ましくは2個以上であれば特に制限はないが、得られる変性ポリシロキサンの透明性、耐熱性、耐光性の観点から、ヒドロシリル基もしくはアルケニル基を有するシロキサン化合物であることが好ましく、さらには、ヒドロシリル基もしくはアルケニル基を有する環状シロキサン、ヒドロシリル基もしくはアルケニル基を有する直鎖状シロキサンであることが好ましい。
【0041】
本発明におけるヒドロシリル基もしくはアルケニル基含有化合物(b)は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0042】
前記アルケニル基を有する直鎖状シロキサンとしては、ジメチルシロキサン単位とメチルビニルシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジフェニルシロキサン単位とメチルビニルシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、メチルフェニルシロキサン単位とメチルビニルシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジメチルビニルシリル基で末端が封鎖されたポリシロキサン、などが例示される。
【0043】
前記アルケニル基を有する環状シロキサンとしては、1,3,5,7−ビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−プロピル−3,5,7−トリビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−ジビニル−3,7−ジヘキシル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5−トリビニル−トリメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタビニル−1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9,11−ヘキサビニル−1,3,5,7,9,11−ヘキサメチルシクロシロキサンなどが例示される。
【0044】
前記ヒドロシリル基を有する直鎖状シロキサンの具体例としては、ジメチルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジフェニルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、メチルフェニルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジメチルハイドロジェンシリル基で末端が封鎖されたポリシロキサン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、などが例示される。
【0045】
前記ヒドロシリル基を有する環状シロキサンの具体例としては、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−プロピル−3,5,7−トリハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−ジハイドロジェン−3,7−ジヘキシル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5−トリハイドロジェン−トリメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタハイドロジェン−1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9,11−ヘキサハイドロジェン−1,3,5,7,9,11−ヘキサメチルシクロシロキサンなどが例示される。
【0046】
本発明における環状シロキサンとしては、工業的入手性および変性させる場合の反応性、あるいは、得られる硬化物の耐熱性、耐光性、強度等の観点から、具体的に例えば、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンを好適に用いることができる。
【0047】
本発明においては、耐熱性、耐光性の観点から、Si原子上は、水素原子、ビニル基およびメチル基から構成されることが好ましい。
【0048】
<ヒドロシリル化触媒>
本発明では、多面体構造ポリシロキサン変性体の合成、および、該化合物を用いたポリシロキサン系組成物を硬化させる際に、ヒドロシリル化触媒を用いることができる。
【0049】
本発明で用いるヒドロシリル化触媒としては、通常ヒドロシリル化触媒として公知のものを用いることができ特に制限はない。
【0050】
具体的には例示すれば、白金−オレフィン錯体、塩化白金酸、白金の単体、担体(アルミナ、シリカ、カーボンブラック等)に固体白金を担持させたもの;白金−ビニルシロキサン錯体、例えば、Ptn(ViMe2SiOSiMe2Vi)n、Pt〔(MeViSiO)4m;白金−ホスフィン錯体、例えば、Pt(PPh34、Pt(PBu34;白金−ホスファイト錯体、例えば、Pt〔P(OPh)34、Pt〔P(OBu)34(式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を表し、n、mは整数を表す)、Pt(acac)2、また、Ashbyらの米国特許第3159601及び3159662号明細書中に記載された白金−炭化水素複合体、並びにLamoreauxらの米国特許第3220972号明細書中に記載された白金アルコラ−ト触媒も挙げられる。
【0051】
また、白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh33、RhCl3、Rh/Al23、RuCl3、IrCl3、FeCl3、AlCl3、PdCl2・2H2O、NiCl2、TiCl4、等が挙げられる。これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用しても構わない。触媒活性の点から塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体、Pt(acac)2等が好ましい。
【0052】
<多面体構造ポリシロキサン変性体>
多面体構造ポリシロキサン変性体は、ヒドロシリル化触媒の存在下、前記多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)とヒドロシリル基もしくはアルケニル基を有する化合物(b)とのヒドロシリル化反応により合成することができる。
【0053】
ヒドロシリル化反応させることにより、多面体構造ポリシロキサン変性体、あるいは、多面体構造ポリシロキサン変性体を用いて得られる硬化物に、より高い耐熱性や耐光性、耐衝撃性を付与することが可能となる。この際、多面体構造ポリシロキサン変性体のアルケニル基またはヒドロシリル基は、すべて反応する必要はなく、一部残存していてもよい。
【0054】
ヒドロシリル基もしくはアルケニル基を有する化合物(b)の添加量は、多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)のアルケニル基またはヒドロシリル基の個数1個あたり、Si原子に直結した水素原子またはアルケニル基の数が2.5〜20個になるように用いることが好ましい。添加量が少ないと、架橋反応によりゲル化が進行するため、多面体構造ポリシロキサン変性体のハンドリング性が劣り、多すぎると、硬化物の物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0055】
また、多面体構造ポリシロキサン変性体の合成時には、過剰量のヒドロシリル基もしくはアルケニル基を有する化合物(b)を存在させて、例えば減圧・加熱条件下にて、未反応のヒドロシリル基もしくはアルケニル基を有する化合物(b)を取り除くことが好ましい。
【0056】
多面体構造ポリシロキサン変性体の合成時に用いるヒドロシリル化触媒の添加量としては特に制限はないが、例えば、多面体構造ポリシロキサン系化合物のアルケニル基1モルに対して10-1〜10-10モルの範囲で用いるのがよい。好ましくは10-4〜10-8モルの範囲で用いるのがよい。ヒドロシリル化触媒が多すぎると、ヒドロシリル化触媒の種類によっては、短波長の光に吸収を示すため、得られる硬化物の耐光性が低下する恐れがあり、また、硬化物が発泡する恐れもある。また、ヒドロシリル化触媒が少なすぎると、反応が進まず、目的物が得られない恐れがある。
【0057】
ヒドロシリル化反応の反応温度としては、30〜400℃、さらに好ましくは、40〜250℃であることが好ましく、より好ましくは、45〜140℃である。温度が低すぎると反応が十分に進行せず、温度が高すぎると、ゲル化が生じ、ハンドリング性が悪化する恐れがある。
【0058】
このようにして得られた多面体構造ポリシロキサン変性体は、各種化合物、特にはシロキサン系化合物との相溶性を確保でき、さらに、分子内にヒドロシリル基またはアルケニル基が導入されていることから、各種アルケニルまたヒドロシリル基を有する化合物と反応させることが可能となる。具体的には、後述の硬化剤と反応させることにより、硬化物を得ることができる。
【0059】
この際、多面体構造ポリシロキサン変性体におけるヒドロシリル基またはアルケニル基は、分子中に少なくとも3個含有することが好ましい。ヒドロシリル基またはアルケニル基が3個未満である場合、得られる硬化物の強度が不十分となる恐れがある。
【0060】
また、本発明における多面体構造ポリシロキサン変性体は、温度20℃において液状とすることも可能である。多面耐構造ポリシロキサン変性体を液状とすることで、ハンドリング性に優れることから好ましい。
【0061】
<硬化剤>
本発明における硬化剤は、分子中に少なくとも1個のアルケニル基もしくはヒドロシリル基を有するものであれば、特に限定はされないが、衝撃強度付与の観点から、分子量が1000未満のポリシロキサンを必須成分とすることが好ましい。分子量が1000未満のものを用いることで、具体的に、例えば、衝撃強度の向上効果がみられる。
【0062】
本発明における硬化剤においては、1分子中に少なくともアルケニル基もしくはヒドロシリル基を2個含有するものが好ましく、アルケニル基もしくはヒドロシリル基を有するポリシロキサンが好ましい。
【0063】
さらには、耐熱性、耐光性の観点から、アルケニル基もしくはヒドロシリル基を有する直鎖状ポリシロキサン、アルケニル基もしくはヒドロシリル基を有する環状シロキサン、分子末端にアルケニル基もしくはヒドロシリル基を有するポリシロキサン、が好ましい例として挙げることができる。
【0064】
また、さらなる耐熱性、耐光性の観点から、本発明における硬化剤におけるアルケニル基もしくはヒドロシリル基以外の置換基としては、メチル基、または、水素原子であることが好ましい。これらアルケニル基もしくはヒドロシリル基を有するポリシロキサンは1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0065】
前記アルケニル基を有する直鎖状シロキサンの具体例としては、ジメチルシロキサン単位とメチルビニルシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジフェニルシロキサン単位とメチルビニルシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、メチルフェニルシロキサン単位とメチルビニルシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジメチルビニルシリル基で末端が封鎖されたポリシロキサン、などが例示される。
【0066】
前記アルケニル基を有する環状シロキサンの具体例としては、1,3,5,7−ビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−プロピル−3,5,7−トリビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−ジビニル−3,7−ジヘキシル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5−トリビニル−トリメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタビニル−1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9,11−ヘキサビニル−1,3,5,7,9,11−ヘキサメチルシクロシロキサンなどが例示される。
【0067】
分子末端にアルケニル基を有するポリシロキサンの具体例としては、先に例示したジメチルアルケニル基で末端が封鎖されたポリシロキサン、ジメチルアルケニルシロキサン単位とSiO2単位、SiO3/2単位、SiO単位からなる群において選ばれる少なくとも1つのシロキサン単位からなるポリシロキサンなどが例示される。
【0068】
前記ヒドロシリル基を有する直鎖状シロキサンの具体例としては、ジメチルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジフェニルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、メチルフェニルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジメチルハイドロジェンシリル基で末端が封鎖されたポリシロキサン、などが例示される。
【0069】
前記ヒドロシリル基を有する環状シロキサンの具体例としては、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−プロピル−3,5,7−トリハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−ジハイドロジェン−3,7−ジヘキシル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンなどが例示される。
【0070】
分子末端にヒドロシリル基を有するポリシロキサンの具体例としては、先に例示したジメチルハイドロジェンシリル基で末端が封鎖されたポリシロキサン、ジメチルハイドロジェンシロキサン単位(H(CH32SiO1/2単位)とSiO2単位、SiO3/2単位、SiO単位からなる群において選ばれる少なくとも1つのシロキサン単位からなるポリシロキサンなどが例示される。
【0071】
本発明においては、耐熱性、耐光性の観点から、Si原子上は、水素原子、ビニル基およびメチル基から構成されることが好ましい。
【0072】
硬化剤の添加量は種々設定できるが、アルケニル基1個あたり、Si原子に直結した水素原子が0.3〜5個、好ましくは、0.5〜3個となる割合で添加されることが望ましい。アルケニル基の割合が少なすぎると、発泡等による外観不良が生じやすくなり、また、多すぎると、硬化物の物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0073】
硬化剤としては、分子量1000未満のポリシロキサンを用いることが好ましい。また、分子量1000未満のポリシロキサンは、硬化物の合成(100重量%)に対し、5重量%〜55重量%、さらに好ましくは10〜50重量%となる範囲で用いることが好ましい。分子量1000未満のポリシロキサンが多すぎると、低応力が不十分となり、クラック等を発生させる恐れがあり、また、少なすぎると、衝撃に対する強度が低下する恐れがある。
【0074】
<硬化遅延剤>
硬化遅延剤は、本発明のポリシロキサン系組成物の保存安定性を改良あるいは、硬化過程でのヒドロシリル化反応の反応性を調整するための成分である。本発明においては、硬化遅延剤としては、ヒドロシリル化触媒による付加型硬化性組成物で用いられている公知のものが使用でき、具体的には脂肪族不飽和結合を含有する化合物、有機リン化合物、有機イオウ化合物、窒素含有化合物、スズ系化合物、有機過酸化物等が挙げられる。これらを単独使用、または2種以上併用してもよい。
【0075】
前記の脂肪族不飽和結合を含有する化合物としては、具体的には3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブチン、3−ヒドロキシ−3−フェニル−1−ブチン、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、1−エチニル−1−シクロヘキサノール等のプロパギルアルコール類、エン−イン化合物類、無水マレイン酸、マレイン酸ジメチル等のマレイン酸エステル類等が例示できる。
【0076】
有機リン化合物としては、具体的にはトリオルガノフォスフィン類、ジオルガノフォスフィン類、オルガノフォスフォン類、トリオルガノフォスファイト類等が例示できる。
【0077】
有機イオウ化合物としては、具体的にはオルガノメルカプタン類、ジオルガノスルフィド類、硫化水素、ベンゾチアゾール、チアゾール、ベンゾチアゾールジサルファイド等が例示できる。
【0078】
窒素含有化合物としては、具体的にはN,N,N′,N′−テトラメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、N,N−ジブチルエチレンジアミン、N,N−ジブチル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N,N′,N′−テトラエチルエチレンジアミン、N,N−ジブチル−1,4−ブタンジアミン、2,2’−ビピリジン等が例示できる。
【0079】
スズ系化合物としては、具体的にはハロゲン化第一スズ2水和物、カルボン酸第一スズ等が例示できる。
【0080】
有機過酸化物としては、具体的にはジ−t−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、過安息香酸t−ブチル等が例示されうる。これらのうち、マレイン酸ジメチル、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、1−エチニル−1−シクロヘキサノールが、特に好ましい硬化遅延剤として例示できる。
【0081】
硬化遅延剤の添加量は、特に限定するものではないが、ヒドロシリル化触媒1モルに対して10-1〜103モルの範囲で用いるのが好ましく、1〜100モルの範囲で用いるのがより好ましい。また、これらの硬化遅延剤は単独で使用してもよく、2種類以上組み合わせて使用してもよい。
【0082】
<ポリシロキサン系組成物>
本発明のポリシロキサン系組成物は、多面体構造ポリシロキサン変性体に、硬化剤、必要に応じて、ヒドロシリル化触媒、硬化遅延剤、接着性付与剤を加えることにより得ることができる。本発明のポリシロキサン系組成物は、透明な液状樹脂組成物として取り扱うことが可能である。
【0083】
液状組成物とすることにより、パッケージ、基板等に流し込み、加熱して硬化させることでコーティング剤、封止剤として好適に用いることが可能である。また、本組成物は型に流し込み、加熱することで、高い透明性、耐熱性、耐光性、耐衝撃性、加工性等に優れる硬化物を得ることが可能となる。
【0084】
液状のポリシロキサン系組成物を硬化させた硬化物は、例えば1mm厚さの硬化物での透過率は700nmの光線で75%以上となるものを得ることが可能である。また、耐熱性が良好であることから、高温にさらした場合においても透過率の低下が小さい硬化物を得ることが可能である。また、多面体構造ポリシロキサン変性体が液状であることで、本発明のポリシロキサン系組成物が容易に液状として得ることができるので好ましい。
【0085】
硬化させる際に温度を加える場合は、好ましくは、30〜400℃、さらに好ましくは40〜250℃である。硬化温度が高くなり過ぎると、得られる硬化物に外観不良が生じる傾向があり、低すぎると硬化が不十分となる。また、2段階以上の温度条件を組み合わせて硬化させてもよい。具体的には例えば、70℃、120℃、150℃、180℃の様に段階的に硬化温度を引き上げていくことで、良好な硬化物を得ることが可能となる。
【0086】
本発明においては、必要に応じて、ヒドロシリル化触媒を追加して用いることができる。
【0087】
硬化時間は硬化温度、用いるヒドロシリル化触媒の量及びヒドロシリル基の量その他、本願組成物のその他の配合物の組み合わせにより適宜選択することができるが、あえて例示すれば、1分〜24時間、好ましくは10分〜16時間行うことにより、良好な硬化物を得ることができる。
【0088】
本発明におけるポリシロキサン系組成物は、具体的に例えば、所定の型枠に、注入あるいは塗布して使用することが可能である。注入あるいは塗布した後、上述の硬化条件にて、硬化させることで、耐衝撃性に優れた硬化物を得ることが可能である。
【0089】
本発明に用いるポリシロキサン系組成物には、上記必須成分に加え、任意成分として本発明の効果を妨げない範囲で、必要に応じて、シリカ、粉砕石英、炭酸カルシウム、カーボンなどの充填剤を添加してもよい。
【0090】
また、本発明のポリシロキサン系組成物には、必要に応じて接着性付与剤、着色剤、耐熱性向上剤などの各種添加剤や反応制御剤、離型剤あるいは充填剤用分散剤などを任意で添加することができる。
【0091】
この充填剤用分散剤としては、例えば、ジフェニルシランジオール、各種アルコキシシラン、カーボンファンクショナルシラン、シラノール基含有低分子量シロキサンなどが挙げられる。
【0092】
また、本発明のポリシロキサン系組成物を難燃性、耐火性にするためには二酸化チタン、炭酸マンガン、Fe23、フェライト、マイカ、ガラス繊維、ガラスフレークなどの公知の添加剤を添加してもよい。なお、これら任意成分は、本発明の効果を損なわないように最小限の添加量に止めることが好ましい。
【0093】
本発明に用いるポリシロキサン系組成物は、上記した成分をロール、バンバリーミキサー、ニーダーなどの混練機を用いたり、遊星式攪拌脱泡機を用いて均一に混合し、必要に応じ加熱処理を施したりすることにより得ることができる。
【0094】
本発明のポリシロキサン系組成物は、成形体として使用することができる。成形方法としては、押出成形、圧縮成形、ブロー成形、カレンダー成形、真空成形、発泡成形、射出成形、液状射出成形、注型成形などの任意の方法を使用することができる。
【0095】
本発明によるポリシロキサン系組成物から得られる成形体は、耐熱性、耐光性に優れる。
【0096】
本発明のポリシロキサン系組成物は、光学材料用組成物として用いることができる。ここで言う光学材料とは、可視光、赤外線、紫外線、X線、レーザーなどの光をその材料中を通過させる用途に用いる材料一般を示す。
【0097】
本発明において得られる変性体および組成物の用途としては、具体的には、カラーフィルター、レジスト材料、液晶ディスプレイ分野における基板材料、パッシベーション膜、導光板、プリズムシート、偏向板、位相差板、視野角補正フィルム、接着剤、偏光子保護フィルムなどの液晶用フィルムなどの液晶表示装置周辺材料が例示される。
【0098】
また、次世代フラットパネルディスプレイとして期待されるカラーPDP(プラズマディスプレイ)の封止剤、反射防止フィルム、光学補正フィルム、ハウジング材、前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤、またLED表示装置に使用されるLED素子のモールド材、前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤、またプラズマアドレス液晶(PALC)ディスプレイにおける基板材料、導光板、プリズムシート、偏向板、位相差板、視野角補正フィルム、接着剤、偏光子保護フィルム、また有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイにおける前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤、またフィールドエミッションディスプレイ(FED)における各種フィルム基板、前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤が例示される。
【0099】
光記録分野では、VD(ビデオディスク)、CD/CD−ROM、CD−R/RW、DVD−R/DVD−RAM、MO/MD、PD(相変化ディスク)、光カード用のディスク基板材料、ピックアップレンズ、保護フィルム、封止剤、接着剤が例示される。
【0100】
光学機器分野では、スチールカメラのレンズ用材料、ファインダプリズム、ターゲットプリズム、ファインダーカバー、受光センサー部が例示される。また、ビデオカメラの撮影レンズ、ファインダーが例示される。またプロジェクションテレビの投射レンズ、保護フィルム、封止剤、接着剤などが例示される。光センシング機器のレンズ用材料、封止剤、接着剤、フィルムなどが例示される。
【0101】
光部品分野では、光通信システムでの光スイッチ周辺のファイバー材料、レンズ、導波路、素子の封止剤、接着剤などが例示される。光コネクタ周辺の光ファイバー材料、フェルール、封止剤、接着剤などが例示される。光受動部品、光回路部品ではレンズ、導波路、LED素子の封止剤、接着剤などが例示される。光電子集積回路(OEIC)周辺の基板材料、ファイバー材料、素子の封止剤、接着剤などが例示される。
【0102】
光ファイバー分野では、装飾ディスプレイ用照明・ライトガイドなど、工業用途のセンサー類、表示・標識類など、また通信インフラ用および家庭内のデジタル機器接続用の光ファイバーが例示される。
【0103】
半導体集積回路周辺材料では、LSI、超LSI材料用のマイクロリソグラフィー用のレジスト材料が例示される。
【0104】
自動車・輸送機分野では、自動車用のランプリフレクタ、ベアリングリテーナー、ギア部分、耐蝕コート、スイッチ部分、ヘッドランプ、エンジン内部品、電装部品、各種内外装品、駆動エンジン、ブレーキオイルタンク、自動車用防錆鋼板、インテリアパネル、内装材、保護・結束用ワイヤーネス、燃料ホース、自動車ランプ、ガラス代替品が例示される。また、鉄道車輌用の複層ガラスが例示される。また、航空機の構造材の靭性付与剤、エンジン周辺部材、保護・結束用ワイヤーネス、耐蝕コートが例示される。
【0105】
建築分野では、内装・加工用材料、電気カバー、シート、ガラス中間膜、ガラス代替品、太陽電池周辺材料が例示される。農業用では、ハウス被覆用フィルムが例示される。
【0106】
次世代の光・電子機能有機材料としては、次世代DVD、有機EL素子周辺材料、有機フォトリフラクティブ素子、光−光変換デバイスである光増幅素子、光演算素子、有機太陽電池周辺の基板材料、ファイバー材料、素子の封止剤、接着剤などが例示される。
【実施例】
【0107】
次に本発明の組成物を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0108】
<試験方法>
(光線透過率)
紫外可視分光光度計V−560(日本分光株式会社製)を用い、温度20℃/湿度50%の条件下、波長700nmでの光線透過率を測定した。
【0109】
(耐衝撃性試験)
ハイドロショット(島津製作所製)を用い、25℃の雰囲気で、8cm角、4mm厚の板状成形体を打ち抜くエネルギーを測定した。
【0110】
(製造例1)
48%コリン水溶液1262gにテトラエトキシシラン1083gを加え、室温で2時間激しく攪拌した。反応系内が発熱し、均一溶液になった段階で、攪拌を緩め、さらに12時間反応させた。次に、反応系内に生成した固形物に、メタノール1000mLを加え、均一溶液とした。
【0111】
ジメチルビニルクロロシラン537g、トリメチルクロロシラン645gおよびヘキサン1942mLの溶液を激しく攪拌しながら、メタノール溶液をゆっくりと滴下した。滴下終了後、1時間反応させた後、有機層を抽出、濃縮することにより、固形物を得た。次に、生成した固形物をメタノール中で激しく攪拌することにより洗浄し、ろ別することにより、ケイ素原子8個がシロキサン結合によりかご型の立体構造を有する多面体構造ポリシロキサン系化合物(以下、化合物Aと略す)を白色固体として536g得た。
【0112】
得られた化合物は、ジメチルビニルシリル基とトリメチルシリル基が3:5の割合で導入された、多面体構造ポリシロキサン系化合物であることを、1H−NMRにより確認した。
【0113】
(製造例2)
製造例1で得た化合物A40g、および、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(ユミコアプレシャスメタルズジャパン製、Pt−VTSC−3X)9.25μLをトルエン80gに溶解させた。このようにして得られた溶液を、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン61.87gをトルエン62gに溶解させた溶液にゆっくりと滴下し、95℃で3時間反応させ、室温まで冷却した。
【0114】
反応終了後、溶媒と過剰量加えた1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンを留去することにより、多面体構造ポリシロキサン変性体(以下、化合物Bと称す)62gを得た。得られた化合物は、透明液体であり、1H−NMRにより、ビニル基は消失し、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン由来のSiH基が導入されていることを確認した。
【0115】
(製造例3)
ジメチルビニルクロロシラン161g、ジメチルジクロロシラン31gおよびヘキサン242mLの溶液を激しく攪拌しながら、製造例1と同様の手法で得られたメタノール溶液500mLをゆっくりと滴下した。滴下終了後、1時間反応させた後、有機層を抽出し、セライト(和光純薬工業株式会社製)を用いてろ過し、ろ液を濃縮することにより、ケイ素原子8個がシロキサン結合によりかご型の立体構造を有する多面体構造ポリシロキサン化合物(以下、化合物Cと称す)を粘性固体として83g得た。得られた化合物は、カゴ型構造のSi原子にジメチルビニルシリル基が導入され、一部はジメチルシリル基によって別のカゴ型構造と連結している多面体構造ポリシロキサン系化合物であることを、1H−NMRにより確認した。
【0116】
(製造例4)
製造例3で得た化合物C23g、および、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(ユミコアプレシャスメタルズジャパン製、Pt−VTSC−3X)13.33μLをトルエン55gに溶解させた。このようにして得られた溶液を、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン82.30gをトルエン82gに溶解させた溶液にゆっくりと滴下し、95℃で2時間反応させ、室温まで冷却した。
【0117】
反応終了後、溶媒と過剰量加えた1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンを留去することにより、多面体構造ポリシロキサン変性体(以下、化合物Dと称す)57.08gを得た。得られた化合物は、透明液体であり、1H−NMRにより、ビニル基は消失し、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン由来のSiH基が導入されていることを確認した。
【0118】
(実施例1)
製造例4で得た化合物D20gに、ビニル基を末端に含有する直鎖状ポリジメチルシロキサン(LS−7250、信越シリコーン製、分子量184)4.93g、三次元構造を有するビニル基含有ポリシロキサン(MQV−7、クラリアント社製、ビニル基含有量3.5モル/kg、)8.21gを加え、ポリシロキサン系組成物を調整した。
【0119】
得られたポリシロキサン系組成物を型枠に流し込み、60℃で3時間、80℃で1時間、100℃で1時間、120℃で1時間、150℃で1時間、180℃で1時間加熱して硬化させ、厚さ4mmの成型体を得、耐衝撃性試験を行った。また、同組成物を1mm厚の型枠に流し込み、同様の条件にて加熱して硬化させることで、1mm厚の評価用成形体を得、光線透過率試験を行った。結果を表1に示す。
【0120】
(比較例1)
製造例2で得た化合物B14.10gに、ビニル基を末端に含有する直鎖状ポリジメチルシロキサン(DMS−V03、アヅマックス製、分子量800)2.09g、三次元構造を有するビニル基含有ポリシロキサン(MQV−7、クラリアント社製、ビニル基含有量3.5モル/kg)13.95gを加え、ポリシロキサン系組成物を調整した。
【0121】
得られたポリシロキサン系組成物を型枠に流し込み、60℃で3時間、80℃で1時間、100℃で1時間、120℃で1時間、150℃で1時間、180℃で1時間加熱して硬化させ、厚さ4mmの成型体を得、耐衝撃性試験を行った。また、同組成物を1mm厚の型枠に流し込み、同様の条件にて加熱して硬化させることで、1mm厚の評価用成形体を得、光線透過率試験を行った。結果を表1に示す。
【0122】
【表1】

【0123】
以上のように、本発明の多面体構造ポリシロキサン変性体より得られる組成物は、透明性、耐熱性、耐衝撃性に優れている。また、液状組成物としての取り扱いも可能となるため、加工性・成形性にも優れることが明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】

[XR2SiO−SiO3/2]a[XR2SiO−(R2SiO)m−SiO3/2]b[R'−(R2SiO)n−SiO3/2]c(a〜cは0または1以上の整数、a+b+cは6〜24の整数、b+cは1以上の整数、m、nは1以上の整数;Rは、アルキル基、アリール基であり、それぞれが複数ある場合は、互いに同一であっても異なっていてもよい;R'は、他の多面体構造ポリシロキサン;Xは、水素原子、またはアルケニル基であり、同一であっても異なっていてもよい)を構成単位とする多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)に、ヒドロシリル基もしくはアルケニル基を含有する化合物(b)をヒドロシリル化させて得られることを特徴とする、多面体構造ポリシロキサン変性体。
【請求項2】
20℃で液状であることを特徴とする、請求項1に記載の多面体構造ポリシロキサン変性体。
【請求項3】
分子中に少なくとも3個のヒドロシリル基、またはアルケニル基を有することを特徴とする、請求項1、または2に記載の多面体構造ポリシロキサン変性体。
【請求項4】
ヒドロシリル基もしくはアルケニル基を含有する化合物(b)が、ヒドロシリル基もしくはアルケニル基を含有するシロキサン化合物であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の多面体構造ポリシロキサン変性体。
【請求項5】
多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)が、多面体構造を有するケイ酸塩とモノクロロシランとジクロロシランの混合物とを反応させて得られることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の多面体構造ポリシロキサン変性体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の多面体構造ポリシロキサン変性体を含有することを特徴とする、ポリシロキサン系組成物。
【請求項7】
硬化剤を含有することを特徴とする、請求項6に記載のポリシロキサン系組成物。
【請求項8】
硬化剤が、少なくとも1つ以上のアルケニル基、またはヒドロシリル基を含有することを特徴とする請求項7に記載のポリシロキサン系組成物。
【請求項9】
硬化剤が、分子量1000未満のポリシロキサンを必須成分とすることを特徴とする、請求項7または8に記載のポリシロキサン系組成物。
【請求項10】
ヒドロシリル化触媒を含有することを特徴とする、請求項6〜9のいずれか1項に記載のポリシロキサン系組成物。
【請求項11】
請求項6〜10のいずれか1項に記載のポリシロキサン系組成物を用いて得られる硬化物。

【公開番号】特開2011−105883(P2011−105883A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−264109(P2009−264109)
【出願日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】