説明

太陽電池モジュール用裏面保護シートおよびそれを用いた太陽電池モジュール

【課題】本発明は、長期間にわたる過酷な自然環境に耐え得る、耐熱性、耐候性、耐加水分解性、防湿性、軽量性等の諸特性に優れ、水蒸気(水分)や酸素等の侵入を防止するガスバリア性を著しく向上させ、高温・高湿環境下でのガスバリア性能および太陽電池としての電力出力特性を長期にわたり維持することが可能な耐久性を有し、かつ、安価な太陽電池モジュール用裏面保護シートおよびそれを用いた太陽電池モジュールを提供することを目的とする。
【解決手段】耐侯性・耐加水分解性を有するフィルム基材の少なくとも片面に無機化合物からなる蒸着層を有するガスバリア性フィルムと、前記ガスバリア性フィルムに配置された耐熱性を有するフィルム基材とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュール用裏面保護シートおよびそれを用いた太陽電池モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化問題に対する内外各方面の関心が高まる中、二酸化炭素の排出抑制のために、種々努力が続けられている。化石燃料の消費量の増大は、大気中の二酸化炭素の増加をもたらし、その温室効果により地球の気温が上昇し、地球環境に重大な影響を及ぼす。化石燃料の代替エネルギーとしては、様々な検討がされているが、クリーンなエネルギー源である太陽光発電に対する期待が高まっている。
【0003】
太陽電池は太陽光のエネルギーを直接電気に換える太陽光発電システムの心臓部を構成するものであり、シリコン、カドミウム−テルル 、ゲルマニウム−ヒ素などの半導体が用いられる。現在、多用されているものに、単結晶、多結晶シリコン、アモルファスシリコン等がある。その構造としては、太陽電池素子単体をそのままの状態で使用することはなく、一般的に数枚〜数十枚の太陽電池素子を直列、並列に配線し、長期間(約20年)に亘って素子を保護するため種々パーケージングが行われ、ユニット化されている。このパッケージに組み込まれたユニットを太陽電池モジュールと呼び、一般的に太陽光が当たる面をガラスで覆い、太陽電池内の太陽電池モジュールの固定および保護、電気絶縁の目的でエチレン−酢酸ビニル共重合体等の熱可塑性プラスチックらなる充填材で間隙を埋め、さらに太陽電池モジュール裏面を封止用シートで保護された構成からなっている。
【0004】
これらの太陽電池モジュールは、屋外で使用されるため、その構成、材質構造などにおいて、長期間にわたる過酷な自然環境に耐え得る、耐熱性、耐候性、耐加水分解性、防湿性等の耐久性が要求されると共に、裏面保護シートには外部からの水蒸気(水分)や酸素の進入を遮断するためのガスバリア性が要求される。これは水蒸気(水分)の透過により充填材が剥離、変色したり、配線の腐蝕を起こした場合、モジュールの出力そのものに影響を及ぼす恐れがあるためである。
【0005】
従来、この太陽電池裏面保護シートとしては、ポリフッ化ビニル等のフッ素系樹脂フィルムでアルミニウム箔をサンドイッチした積層構造の裏面保護シートが多く用いられていた(例えば、特許文献1、2)。
【0006】
しかしながら、このポリフッ化ビニル等のフッ素系樹脂フィルムは、耐候性や耐加水分解性に優れるものの機械的強度が弱く、太陽電池モジュール作製時に加えられる140℃〜150℃の熱プレスの熱により軟化し、太陽電池素子電極部の突起物が充填材層を貫通し、裏面保護シートを構成する内面のポリフッ化ビニル等のフッ素系樹脂フィルムを貫通し、裏面保護シート中のアルミニウム箔に接触することにより、太陽電池素子とアルミニウム箔が短絡して電池性能に悪影響を及ぼすという欠点があった。また、フッ素系樹脂フィルムやアルミニウム箔等の金属箔を使用するために、廃棄・処理方法によっては、環境への負荷も懸念される材料を使用している点も、クリ−ンエネルギ−を標榜するシステムの部材として最適ではなく、太陽電池モジュールの低価格化、軽量化の点でも障害となっていた。
【0007】
そこで、上記の問題点を解消するために、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)基材の片面に、無機酸化物の蒸着膜を設け、さらに、上記の無機酸化物の蒸
着膜を設けたフィルム基材の両面に、白色化剤と紫外線吸収剤とを含む耐熱性のポリプロピレン系樹脂フィルムを積層することを特徴とする太陽電池モジュ−ル用裏面保護シ−トおよびそれを使用した太陽電池モジュ−ルが提案されている(例えば、特許文献3)。
【特許文献1】特表平8−500214号
【特許文献2】特表2002−520820号
【特許文献3】特開2001−111077号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記で提案した太陽電池モジュ−ル用裏面保護シ−トおよびそれを使用した太陽電池モジュ−ルは、太陽電池モジュ−ル用裏面保護シ−ト、太陽電池モジュ−ル等において必要とされる諸特性をそれなりに充足し得るものではあるが、未だ十分に満足し得るものではなく、特に、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム基材の片面に、無機酸化物の蒸着膜を設けたバリアフィルムのポリエチレンテレフタレート(PET)が高温・高湿下で加水分解劣化等を生じ、水蒸気(水分)バリアが低下して、太陽電池の長期耐久性維持が困難であるという問題点を有するものである。
【0009】
本発明は、長期間にわたる過酷な自然環境に耐え得る、耐熱性、耐候性、耐加水分解性、防湿性、軽量性等の諸特性に優れ、水蒸気(水分)や酸素等の侵入を防止するガスバリア性を著しく向上させ、高温・高湿環境下でのガスバリア性能および太陽電池としての電力出力特性を長期にわたり維持することが可能な耐久性を有し、かつ、安価な太陽電池モジュール用裏面保護シートおよびそれを用いた太陽電池モジュールを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、即ち、
請求項1に係る発明は、
耐侯性・耐加水分解性を有するフィルム基材の少なくとも片面に無機化合物からなる蒸着層を有するガスバリア性フィルムと、前記ガスバリア性フィルムに配置された耐熱性を有するフィルム基材とを有することを特徴とする太陽電池モジュール用裏面保護シートである。
【0011】
請求項2に係る発明は、
前記無機化合物からなる蒸着層を有するガスバリア性フィルムが、耐侯性・耐加水分解性を有するフィルム基材上に、透明プライマー層、無機化合物からなる蒸着層、複合被膜からなるオーバーコート層とを順次積層してなることを特徴とする請求項1記載の太陽電池モジュール用裏面保護シートである。
【0012】
請求項3に係る発明は、
前記耐侯性・耐加水分解性を有するフィルム基材が、ガラス転移点温度(Tg)40℃であることを特徴とする請求項1または2記載の太陽電池モジュール用裏面保護シートである。
【0013】
請求項4に係る発明は、
前記耐侯性・耐加水分解性を有するフィルム基材が、ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートの酸およびグリコール変性コポリエステル(PCTA)フィルムから選ばれるポリエステル基材またはポリカーボネート系基材であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール用裏面保護シートである。
【0014】
請求項5に係る発明は、
前記耐熱性を有するフィルム基材が、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムもしくはフッ化ビニル樹脂(PVF)フィルム、フッ化ビニリデン樹脂(PVDF)フィルム、三フッ化塩化エチレン樹脂(PCTFE)フィルム、エチレン・四フッ化エチレン共重合体(ETFE)フィルム、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルム、四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)フィルムから選ばれるフッ素系基材であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール用裏面保護シートである。
【0015】
請求項6に係る発明は、
前記フッ素系基材が、ポリフッ化ビニル(PVF)フィルムであることを特徴とする請求項5記載の太陽電池モジュール用裏面保護シートである。
【0016】
請求項7に係る発明は、
前記無機化合物が、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化錫、酸化亜鉛あるいはそれらの混合物であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール用裏面保護シートである。
【0017】
請求項8に係る発明は、
前記蒸着層の厚さが、5〜300nmの範囲であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール用裏面保護シートである。
【0018】
請求項9に係る発明は、
前記オーバーコート層を構成する複合被膜が、水酸基含有高分子化合物と金属アルコキシドおよびまたはその加水分解物およびまたはその重合物の少なくとも1種類以上とを 含有する複合被膜であることを特徴とする請求項2記載の太陽電池モジュール用裏面保護シートである。
【0019】
請求項10に係る発明は、
前記水酸基含有高分子化合物が、ポリビニルアルコールまたはポリ(ビニルアルコール−co−エチレン)、セルロース、デンプンのうち少なくとも1種類以上を含有することを特徴とする請求項9記載の太陽電池モジュール用裏面保護シートである。
【0020】
請求項11に係る発明は、
前記金属アルコキシドが、シランアルコキシド、シランカップリング剤であることを特徴とする請求項9または10記載の太陽電池モジュール用裏面保護シートである。
【0021】
請求項12に係る発明は、
前記耐熱性を有するフィルム基材が、白色化剤で着色されていることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール用裏面保護シートである。
【0022】
請求項13に係る発明は、
請求項1〜12のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール用裏面保護シートを用いたことを特徴とする太陽電池モジュールである。
【0023】
請求項14に係る発明は、
耐侯性・耐加水分解性を有するフィルム基材の片面に無機化合物からなる蒸着層を有するガスバリア性フィルムの両面に、耐熱性を有するフィルム基材を積層してなる太陽電池モジュール用裏面保護シートにおいて、前記ガスバリア性フィルムの耐侯性・耐加水分解
性を有するフィルム基材が太陽電池モジュール裏面の充填材層側に位置するように前記太陽電池モジュール用裏面保護シートを配設してなることを特徴とする請求項13記載の太陽電池モジュールである。
【発明の効果】
【0024】
本発明の太陽電裏面保護シートは、耐侯性・耐加水分解性を有するガラス転移点温度(Tg)40℃以上のフィルム基材の少なくとも片面に無機化合物からなる蒸着層を有するガスバリア性フィルムの両面に耐熱性フィルム基材を積層した基本構成に、さらに、上記上記ガスバリア性フィルムとして、耐侯性・耐加水分解性を有するフィルム基材上に、透明プライマー層、無機化合物からなる蒸着層、複合被膜からなるオーバーコート層とを順次積層してなるガスバリア性フィルムを使用することができる構成であるから、長期間にわたる過酷な自然環境に耐え得る、耐熱性、耐候性、耐加水分解性、防湿性、軽量性等の諸特性に優れ、水蒸気(水分)や酸素等の侵入を防止するガスバリア性を著しく向上させた太陽電池モジュール用裏面保護シートを提供できる。そして、本発明の太陽電池モジュール裏面保護シートのガスバリア性フィルムの耐侯性・耐加水分解性を有するフィルム基材が太陽電池モジュール裏面の充填材層側に位置するように一体に積層してなる太陽電池モジュールであるから、高温・高湿環境下でのガスバリア性能および太陽電池としての電気出力特性を長期にわたり維持することが可能な耐久性を有し、かつ、安価な太陽電池モジュールを提供することができる。
【0025】
本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートは、勿論、長期間にわたる過酷な自然環境に耐え得るものであるが、さらに、高温高湿環境下の過酷な促進評価試験条件においてもガスバリア特性や太陽電池としての電気出力特性を維持することが可能とするものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1〜図4は、本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートについてその一実施例の層構成を示す断面図である。図5および図6は、本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートを用いた太陽電池モジュールについてその一実施例の層構成を示す断面図である。
【0027】
本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートは、耐侯性・耐加水分解性を有するフィルム基材の少なくとも片面に無機化合物からなる蒸着層を有するガスバリア性フィルムと、前記ガスバリア性フィルムに配置された耐熱性を有するフィルム基材とを有する。
【0028】
本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートの構成の一実施例として、図1で示すように、耐侯性・耐加水分解性を有するフィルム基材(21)の片面に無機化合物からなる蒸着層(22)を設けたガスバリア性フィルム(20)の両面に、耐熱性を有するフィルム基材を積層してなる構成の裏面保護シート(1)である。そして、ガスバリア性フィルム(20)と耐熱性を有するフィルム基材(10,30)とをドライラミネーション積層方式により積層することができる。
【0029】
また、本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートの一実施例として、図2で示すように、耐侯性・耐加水分解性を有するフィルム基材(41)の両面に無機化合物からなる蒸着層(42)を設けたガスバリア性フィルム(40)の両面に、耐熱性を有するフィルム基材(10,30)を積層してなる構成の裏面保護シート(2)である。そして、ガスバリア性フィルム(40)と耐熱性を有するフィルム基材(10,30)とをドライラミネーション積層方式により積層することができる。
【0030】
本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シート(1,2)は、耐侯性・耐加水分解性を
有するフィルム基材(21,41)を用いた構成であるから、外部からの水蒸気(水分)や酸素等の侵入を防止するガスバリア性を著しく向上させ、長期にわたりガスバリア性能を維持することが可能な優れたれたガスバリア性を有する。したがって、長期間にわたる過酷な自然環境に耐え得る、耐熱性、耐候性、耐加水分解性、防湿性、軽量性等の諸特性に優れ、従来のガスバリア性フィルムを構成するポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが高温・高湿環境下で加水分解劣化等を生じ、水蒸気(水分)バリア性が低下するという問題点を解消できる。
【0031】
さらに、本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートは、図3で示すように、耐侯性・耐加水分解性を有するフィルム基材(51)の片面に、透明プライマー層(53)、無機化合物からなる蒸着層(52)、複合被膜からなるオーバーコート層(54)とを順次積層してなる無機化合物からなる蒸着層を設けたガスバリア性フィルム(50)の両面に、フィルム基材(10,30)を積層してなる構成の裏面保護シート(3)であっても良い。そして、ガスバリア性フィルム(50)と耐熱性を有するフィルム基材(10,30)とをドライラミネーション積層方式法により積層することができる。
【0032】
さらに、本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートは、図4で示すように、耐侯性・耐加水分解性を有するフィルム基材(61)の両面に、透明プライマー層(63)、無機化合物からなる蒸着層(62)、複合被膜からなるオーバーコート層(64)とを順次積層してなる無機化合物からなる蒸着層を設けたガスバリア性フィルム(60)の両面に、フィルム基材(10,30)を積層してなる構成の裏面保護シート(4)である。そして、ガスバリア性フィルム(60)と耐熱性を有するフィルム基材(10,30)とをドライラミネーション積層方式法により積層することができる。
【0033】
本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シート(3,4)は、上記の構成からなるものであるから、長期間にわたる過酷な自然環境に耐え得る、耐熱性、耐候性、耐加水分解性、防湿性、軽量性等の諸特性に優れ、特に、ガスバリア性フィルムを構成するフィルム基材として、従来のガスバリア性フィルムを構成するポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが高温・高湿環境下で加水分解劣化等を生じ、水蒸気(水分)バリア性の低下とバリアフィルムの加水分解による劣化という問題点を解決した。さらに、この基材フィルム(51,61)の少なくとも片面に透明プライマー層(53,63)、無機化合物からなる蒸着層(52,62)、複合被膜からなるオーバーコート層(54,64)とを順次積層してなる無機化合物からなる蒸着層を設けた構成のガス構成であるから、外部からの水蒸気(水分)や酸素等の侵入を防止するガスバリア性をさらに著しく向上させ、長期にわたりガスバリア性能を維持することが可能な著しく優れたれたガスバリア性を有する。
【0034】
本発明で用いられる耐侯性・耐加水分解性を有するフィルム基材(21,41,51,61)としては、耐侯性・耐加水分解性を有するものであれば良く、ガラス転移点温度(Tg)40℃以上のポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、さらに、下記の一般式(1)で表されるポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートの酸およびグリコール変性コポリエステル(PCTA)フィルム等が挙げられる。上記のPCTAフィルムとしては、例えば、イーストマン社製の「PCTA13319」が好適に使用される。
【0035】
【化1】

【0036】
本発明で用いられる耐熱性を有するフィルム基材(10,30)としては、耐熱性を有するものであれば良く、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムもしくはフッ化ビニル樹脂(PVF)フィルム、フッ化ビニリデン樹脂(PVDF)フィルム、三フッ化
塩化エチレン樹脂(PCTFE)フィルム、エチレン・四フッ化エチレン共重合体(ETFE)フィルム、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルム、四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)フィルムから選ばれるフッ素系基材が上げられる。特に、耐侯性、高度の物理的靭性、化学的不活性、良好な耐摩耗性、耐汚れ性の点からポリフッ化ビニル(PVF)フィルムとして、例えば、デュポンセイ社製の「テドラー」(登録商標)フィルムが好適に使用される。
【0037】
上記のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムは、例えば、例えば、固相重合を施すことにより、重合度を上げ、エチレンテレフタレート環状三量体を減少させた、固有粘度が0.6(dl/g)以上で、かつ、環状三量体含有量が0.5重量%以下のポリエステル樹脂を溶融押し出し製膜して得られるポリエステルフィルム、特に、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを使用することができる。このポリエステルフィルムは、耐熱性に優れ、かつ、機械的強度、耐候性、耐加水分解性にも優れるものである。
【0038】
具体的には、例えば、90mol%以上がエチレンテレフタレート単位からなり、アンチモン、ゲルマニウム、チタン化合物から選ばれる重合触媒金属化合物をいずれか一種含むポリエステルであって、これらの重合触媒金属化合物量が、該ポリエステルに対し金属として0.2mol/ton以上1mol/ton以下であり、かつエチレンテレフタレート環状三量体含有量がポリエステルに対し0.5重量%以下であるポリエステル組成物により達成される。
【0039】
そして、ポリエステルは、エチレンテレフタレート成分がポリエステルに対し90mol%以上からなることが耐熱性、機械特性の点で好ましいが、その他共重合成分として各種ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とジオールを10mol%以内の範囲で共重合してもよい。共重合しうるジカルボン酸成分としては、例えばイソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−
ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸などを挙げることができる。また、共重合しうる脂環族ジカルボン酸成分としては1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等を挙げることができる。また、ジオール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2−ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン等の脂肪族、脂環族、芳香族ジオール等を挙げることができる。これらの成分は1種のみ用いてもよく、また2種以上併用しても良い。
【0040】
本発明において使用されるポリエステルは従来公知のポリエステルの製造方法に従って製造することができる。すなわち、酸成分としてジアルキルエステルを用い、これとジオール成分とでエステル交換反応させた後、この反応の生成物を減圧下で加熱して、余剰のジオール成分を除去しつつ重縮合させることによって製造することができる。
【0041】
こうして得られたポリエステルは、固相重合を施すことにより、さらに重合度を上げることができ、かつ環状三量体を低減させることができる。この固相重合を経て得られたポリエステルは、環状三量体量の充分少ない耐熱性を有するポリエステルフィルムを得るためには、固有粘度0.6(dl/g)以上、エチレンテレフタレート環状三量体の含有量が0.5重量%以下とする必要がある。
上記のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムもしくはフッ化ビニル樹脂(PVF)フィルム、フッ化ビニリデン樹脂(PVDF)フィルム、三フッ化塩化エチレン樹脂
(PCTFE)フィルム、エチレン・四フッ化エチレン共重合体(ETFE)フィルム、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルム、四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)フィルムから選ばれるフッ素系基材等の耐熱性を有するフィルム基材(10,30)には、太陽電池モジュ−ルにおいて透過した太陽光を光反射あるいは光拡散させて再利用するために光反射性、光拡散性等を付与することを目的として白色化剤を添加することができる。その他、さらに、太陽電池モジュ−ルに意匠性、装飾性等を付与し、また、太陽電池モジュ−ルを屋根等に設置した場合、照り返す太陽光等を光反射あるいは光拡散させるという作用効果を奏するものであり、例えば、塩基性炭酸鉛、塩基性硫酸鉛、塩基性けい酸鉛、亜鉛華、硫化亜鉛、リトポン、三酸化アンチモン、アナタス形酸化チタン、ルチル形酸化チタン、その他等の白色顔料の1種ないし2種以上を使用することができる。その使用量としては、ポリプロピレン系樹脂組成物において、0.1重量%〜30重量%位、好ましくは、0.5重量%〜10重量%位添加して使用することが望ましいものである。
【0042】
次に、本発明で使用される、特に、水蒸気(水分)や酸素等の侵入を防止するガスバリア性を著しく向上させた無機化合物からなる蒸着層を設けたガスバリア性フィルム(50,60)について詳細に説明する。このガスバリア性フィルムは、ガラス転移点温度(Tg)80℃以上の耐侯性・耐加水分解性を有するフィルム基材(51,61)の少なくとも片面に、透明プライマー層(53,63)、無機化合物からなる蒸着層(52,62)、複合被膜からなるオーバーコート層(54,64)とを順次積層してなるものである。
【0043】
上記のフィルム基材(51,61)としては、ガラス転移点温度(Tg)40℃以上のポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートの酸およびグリコール変性コポリエステル(PCTA)フィルムが使用される。
【0044】
上記のフィルム基材の積層表面には密着性を向上させるために、例えば、プラズマ処理、コロナ放電処理、オゾン処理、グロー放電処理その他の前処理を任意に施すことができる。
【0045】
フィルム基材の厚さはとくに制限を受けるものではないが、透明プライマー層、無機化合物層、複合被膜層を形成する場合の加工性を考慮すると、実用的には3〜200μmの範囲が好ましく、特に6〜30μmとすることが好ましい。
【0046】
次に、透明プライマー層(53,63)について詳しく説明する。この層は、フィルム基材(51,61)と無機化合物層(52,62)との間の密着性を高めることを目的とする。
【0047】
上記の透明プライマー層の樹脂として用いることができるのは、シランカップリング剤或いはその加水分解物と、ポリオール及びイソシアネート化合物等との複合物である必要がある。
【0048】
上記シランカップリング剤の例としては、任意の有機官能基を含むシランカップリング剤を用いることができ、例えばエチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等のシランカップリングあるいはその加水分解物の1種ないしは2種以上を用いることができる。
【0049】
さらに、これらのシランカップリング剤のうち、ポリオールの水酸基またはイソシアネート化合物のイソシアネート基と反応する官能基を持つものが特に好ましい。例えばγ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシランのようなイソシアネート基を含むもの、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシランのようなメルカプト基を含むものや、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−フェニルアミノプロピルトリメトキシシランのようなアミノ基を含むものがある。さらにγ−グリシドオキシプロピルトリメトキシシランやβ−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のようにエポキシ基を含むものや、ビニルトリメトキシシラン、ビニル(β−メトキシエトキシ)シラン等のようなシランカップリング剤にアルコール等を付加し水酸基等を付加したものでも良く、これら1種ないしは2種以上を用いることができる。これらのシランカップリング剤は、一端に存在する有機官能基がポリオールとイソシア化合物からなる複合物中で相互作用を示し、もしくはポリオールの水酸基またはイソシアネート化合物のイソシアネート基と反応する官能基を含むシランカップリング剤を用いることで共有結合をもたせることによりさらに強固な透明プライマー層を形成し、他端のアルコキシ基等の加水分解によって生成したシラノール基が無機化合物中の金属や、無機化合物の表面の活性の高い水酸基等と強い相互作用により無機化合物との高い密着性を発現し、目的の物性を得ることができるものである。よって上記シランカップリング剤を金属アルコキシドとともに加水分解反応させたものを用いても構わない。また上記シランカップリング剤のアルコキシ基がクロロ基、アセトキシ基等になっていても何ら問題はなく、これらのアルコキシ基、クロロ基、アセトキシ基等が加水分解し、シラノール基を形成するものであればこの複合物に用いることができる。
【0050】
また、ポリオールとは、高分子中に二つ以上のヒドロキシル基をもつもので、後に加えるイソシアネート化合物中のイソシアネート基と反応させるものである。中でもアクリル酸誘導体モノマーを重合させて得られるポリオールもしくは、アクリル酸誘導体モノマーおよびその他のモノマーとを共重合させて得られるポリオールであるアクリルポリオールが特に好ましい。中でもエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレートやヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシルブチルメタクリレートなどのアクリル酸誘導体モノマーを単独で重合させたものや、スチレン等のその他のモノマーを加え共重合させたアクリルポリオール等が好ましく用いられる。またイソシアネート化合物との反応性を考慮するとヒドロキシル価が5〜200(KOHmg/g)の範囲であることが好ましい。
【0051】
ポリオールとシランカップリング剤の配合比は、重量比換算で1/1〜1000/1の範囲であることが好ましく、より好ましくは2/1〜100/1の範囲にあることである。溶解および希釈溶剤としては、溶解および希釈可能であれば特に限定されるものではなく、例えば酢酸エチル・酢酸ブチル等のエステル類、メタノール・エタノール・イソプロピルアルコール等のアルコール類、メチルエチルケトン等のケトン類、トルエン・キシレン等の芳香族炭化水素類等が単独及び任意に配合したものが用いることができる。しかし、シランカップリング剤を加水分解するために塩酸等の水溶液を用いることがあるため、共溶媒としてイソプロピルアルコール等と極性溶媒である酢酸エチルを任意に混合した溶媒を用いることが好ましい。
【0052】
また、シランカップリング剤とポリオールの配合時に反応を促進させるために反応触媒を添加しても一向に構わない。添加される触媒としては、反応性及び重合安定性の点から塩化錫(SnCl2、SnCl4)、オキシ塩化錫(SnOHCl、Sn(OH)2Cl2)、錫アクコキシド等の錫化合物であることが好ましい。添加量は、少なすぎても多すぎても触媒効果が得られないため、3官能オルガノシランに対してモル比換算で1/10〜1/10000の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは1/100〜1/2000の範囲にあることである。
【0053】
混入するイソシアネート化合物は、ポリオールと反応してできるウレタン結合によりプラスチック基材1や無機化合物層2との間の密着性を高めるために添加されるもので主に架橋剤もしくは硬化剤として作用する。これを達成するためにイソシアネート化合物としては、芳香族系のトリレンジイソシアネート(TDI)やジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、脂肪族系のキシレンジイソシアネート(XDI)やヘキサレンジイソシアネート(HMDI)などのモノマー類と、これらの重合体や誘導体等が用いられ、これらを1種または2種以上用いることができる。
【0054】
ポリオールとイソシアネート化合物の配合比は特に制限されるのもではないが、イソシアネート化合物が少なすぎると硬化不良になる場合があり、またそれが多すぎるとブロッキング等が発生し加工上問題がある。そこでポリオールとインソシアネート化合物との配合比としては、イソシアネート化合物由来のNCO基がポリオール由来のOH基の50倍以下であることが好ましく、特に好ましいのはNCO基とOH基が当量で配合される場合である。混合方法は、周知の方法が使用可能で特に限定しない。
【0055】
さらに、上記混合物の調液時に液安定性を向上させるために、金属アルコキシド或いはその加水分解物を添加しても一向に構わない。この金属アルコキシドとは、テトラエトキシシラン(Si(OC254)、トリプロポキシアルミニウム(Al(OC373)など一般式M(OR)n(M:金属元素、R:CH3、C25などの一般式Cn2n+1で表わされるアルキル基)で表せるもの或いはその加水分解物である。なかでもテトラエトキシシランやトリプロポキシアルミニウム或いは両者の混合物が、水系の溶媒中において比較的安定であるので好ましい。この金属アルコキシドの加水分解物を得る方法は、シランカップリング剤とともに加水分解を行っても構わないし、単独に酸等を添加して行ったのち添加しても構わない。
【0056】
透明プライマー層は、このようなシランカップリング剤を直接或いはあらかじめ加水分解反応させたものまたは金属アルコキシドとともに加水分解したもの(このときに上述した反応触媒等を一緒に添加しても一向に構わない)を、ポリオールやイソシアネート化合物と混合して複合溶液を作製するか、またシランカップリング剤、ポリオールを溶媒中にあらかじめ混合しておき(この時上述した反応触媒、金属アルコキシドを一緒に添加しても一向に構わない)加水分解反応を行ったもの、更にはシランカップリング剤とポリオールを混合しただけのもの(この時上述した反応触媒、金属アルコキシドを一緒に添加しても一向に構わない)の中に、イソシアネート化合物を加え複合液を作製しプラスチック基材1にコーティングして形成する。
【0057】
この複合溶液中に各種添加剤、例えば、3級アミン、イミダゾール誘導体、カルボン酸の金属塩化合物、4級アンモニウム塩、4級ホスホニウム塩等の硬化促進剤や、フェノール系、硫黄系、ホスファイト系等の酸化防止剤、レベリング剤、流動調整剤、触媒、架橋反応促進剤、充填剤等を添加することも一向に構わない。
【0058】
透明プライマー層の厚さは、均一に塗膜が形成することができれば特に限定しないが、一般的に0.001〜2μmの範囲であることが好ましい。厚さが0.01μmより薄いと均一な塗膜が得られにくく密着性が低下する場合がある。また厚さが2μmを越える場合は厚いために塗膜にフレキシビリティを保持させることができず、外的要因により塗膜に亀裂を生じる恐れがあるため好ましくない。特に好ましいのは0.03〜0.5μmの範囲内にあることである。
【0059】
透明プライマー層の形成方法としては、例えば、オフセット印刷法、グラビア印刷法、
シルクスクリーン印刷法等の周知の印刷方式や、ロールコート、ナイフエッジコート、グラビアコートなどの周知の塗布方式を用いることができる。乾燥条件については、一般的に使用される条件で構わない。また、反応を促進させるために、高温のエージング室等に数日放置することででも可能である。
【0060】
次に、無機化合物層(52,62)について詳しく説明する。無機化合物層は、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化錫、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、あるいはそれらの混合物などの無機化合物の蒸着膜からなり、透明性を有しかつ酸素、水蒸気等のガスバリア性を有する層であればよい。各種殺菌耐性を配慮するとこれらの中では、特に酸化アルミニウム及び酸化珪素を用いることがより好ましい。ただし無機化合物層の材料は、上述した無機化合物に限定されず、上記条件に適合するものであれば用いることが可能である。
【0061】
無機化合物層の厚さは、用いられる無機化合物の種類・構成により最適条件が異なるが、一般的には5〜300nmの範囲内が望ましく、その値は適宜選択される。ただし膜厚が5nm未満であると均一な膜が得られないことや膜厚が十分ではないことがあり、ガスバリア材としての機能を十分に果たすことができない場合がある。また膜厚が300nmを越える場合は薄膜にフレキシビリティを保持させることができず、成膜後に折り曲げ、引っ張りなどの外的要因により、薄膜に亀裂を生じるおそれがあるので問題がある。より好ましくは、10〜150nmの範囲内にあることである。
【0062】
無機化合物層をフィルム基材上に形成する方法としては種々在り、通常の真空蒸着法により形成することができる。また、その他の薄膜形成方法であるスパッタリング法やイオンプレーティング法、プラズマ気相成長法(CVD)などを用いることも可能である。但し、生産性を考慮すれば、現時点では真空蒸着法が最も優れている。真空蒸着法の加熱手段としては電子線加熱方式や抵抗加熱方式、誘導加熱方式のいずれかの方式を用いることが好ましいが、蒸発材料の選択性の幅広さを考慮すると電子線加熱方式を用いることがより好ましい。また無機化合物層3とプラスチック基材1との密着性及び無機化合物層(33)の緻密性を向上させるために、プラズマアシスト法やイオンビームアシスト法を用いて蒸着することも可能である。また、無機化合物層の透明性を上げるために蒸着の際、酸素等の各種ガスなど吹き込む反応蒸着を用いても一向に構わない。
【0063】
次いで、複合被膜からなるオーバーコート層(54,64)を説明する。この複合被膜層はガスバリア性を持った被膜層であり、水溶性高分子と1種以上の金属アルコキシドまたはその加水分解物を含む水溶液或いは水/アルコール混合溶液を主剤とするコーティング剤を用いて形成される。例えば、水溶性高分子を水系(水或いは水/アルコール混合)溶媒で溶解させたものに金属アルコキシドを直接、或いは予め加水分解させるなど処理を行ったものを混合したものを溶液とする。この溶液を無機化合物層3にコーティング後、加熱乾燥し形成される。コーティング剤に含まれる各成分について詳細に説明する。
【0064】
複合被膜層のコーティング剤に用いられる水溶性高分子は、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。特にポリビニルアルコール(以下、PVAと略す)を複合被膜層4のコーティング剤に用いた場合にガスバリア性が最も優れるので好ましい。ここでいうPVAは、一般にポリ酢酸ビニルをけん化して得られるものである。PVAとしては例えば、酢酸基が数十%残存している、いわゆる部分けん化PVAから酢酸基が数%しか残存していない完全PVA等用いることができ、これ以外のものを用いても一向に構わない。
【0065】
また、金属アルコキシドは、一般式、M(OR)n(M:Si,Ti,Al,Zr等の金属、R:CH3,C25等のアルキル基)で表せる化合物である。具体的にはテトラエ
トキシシラン〔Si(OC254〕、トリイソプロポキシアルミニウム〔Al(O−2’−C373〕などがあげられ、中でもテトラエトキシシラン、トリイソプロポキシアルミニウムが加水分解後、水系の溶媒中において比較的安定であるので好ましい。
【0066】
この溶液中にガスバリア性を損なわない範囲で、イソシアネート化合物、シランカップリング剤、あるいは、分散剤、安定化剤、粘度調整剤、着色剤などの公知の添加剤を必要に応じて加えることも可能である。
【0067】
コーティング剤の塗布方法としては、通常用いられるディッピング法、ロールコーティング法、スクリーン印刷法、スプレー法、グラビア印刷法などの従来公知の方法を用いることが可能である。
【0068】
複合被膜層の厚さは、コーティング剤の種類や加工機や加工条件によって最適条件異なり特に限定しない。但し、乾燥後の厚さが、0.01μm以下の場合は、均一な塗膜が得られなく十分なガスバリア性を得られない場合があるので好ましくない。また厚さが50μmを超える場合は膜にクラックが生じ易くなるため問題となる場合がある。好ましくは0.01〜50μmの範囲にあり、より好ましくは0.1〜10μmの範囲にあることである。
【0069】
本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートを構成する各種基材を積層する方法としては、例えば、ドライラミネ−ション積層方式を採用して積層することができる。ドライラミネ−ション用接着剤としては、接着強度が長期間の屋外使用で劣化によるデラミネーションなどを生じないこと、さらに接着剤が黄変しないことなどが必要であり、高耐熱性、耐湿熱性等に対応するために、接着剤を構成するビヒクルの主成分としての樹脂等が、架橋ないし硬化して三次元網目状の架橋構造等を形成し得るものを使用することが望ましい。具体的には、上記のラミネ−ト用接着剤層を構成する接着剤が、硬化剤または架橋剤の存在下、熱または光等からなる反応エネルギ−により架橋構造を形成することが好ましい。例えば、2液硬化型ポリウレタン系接着剤等脂肪族系・脂環系イソシアネ−ト、あるいは、芳香族系イソシアネ−ト等のイソシアネ−ト系の硬化剤または架橋剤の存在下、熱、または光からなる反応エネルギ−によりラミネ−ト用接着剤が架橋構造を形成することにより、耐熱性、耐候性、耐湿熱性等に優れた太陽電池モジュ−ル用裏面保護シ−トを製造し得る。
【0070】
上記において、脂肪族系イソシアネ−トとしては、例えば、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネ−ト(HDI)、脂環系イソシアネ−トとしては、例えば、イソホロンジイソシアネ−ト(IPDI)、芳香族系イソシアネ−トとしては、例えば、トリレンジイソシアネ−ト(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネ−ト(MDI)、ナフチレンジイソシアネ−ト(NDI)、トリジンジイソシアネ−ト(TODI)、キシリレンジイソシアネ−ト(XDI)等を使用することができる。
【0071】
なお、上記の接着剤中には、紫外線劣化等を防止するために、紫外線吸収剤あるいは光安定化剤を添加することができる。その使用量としては、その粒子形状、密度等によって異なるが、約0.1〜10重量%位が好ましい。
【0072】
上記の接着剤は、例えば、ロ−ルコ−ト法、グラビアロ−ルコ−ト法、キスコ−ト法、その他等のコ−ト法、あるいは、印刷法等によって施すことができ、その塗布量としては2〜20g/m2(乾燥状態)位、好ましくは3〜10g/m2(乾燥状態)の範囲が望ましい。
【0073】
上記で得られる本発明の太陽電池モジュ−ル用裏面保護シートは、長期間にわたる過酷
な自然環境に耐え得る、耐熱性、耐候性、耐加水分解性、防湿性、軽量性等の諸特性に優れている。また、水蒸気(水分)や酸素等の侵入を防止するガスバリア性を著しく向上させ、高温・高湿環境下でのガスバリア性能および太陽電池としての電気出力特性を長期にわたり維持することが可能な耐久性を有し、かつ、安価な太陽電池用裏面保護シートである。
【0074】
次に、本発明の太陽電池用裏面保護シートを使用した太陽電池モジュールについて説明する。図5および図6は、本発明の太陽電池用裏面保護シートを使用した太陽電池モジュールについてその一実施例の層構成を示す断面図である。
【0075】
本発明の太陽電池モジュールは、例えば、図5で示すように、太陽電池モジュ−ル用表面保護シ−ト(73)、表面側の充填材層(71)、配線(72)を配設した光起電力素子としての太陽電池素子(70)、裏面側充填材層(74)、および、耐侯性・耐加水分解性を有するフィルム基材(21)の少なくとも片面に無機化合物からなる蒸着層(22)を設けたガスバリア性フィルム(20)と、耐熱性を有するフィルム基材(10,30)とを有する本発明の太陽電裏面保護シート(1)の上記耐侯性・耐加水分解性を有するフィルム基材(21)が太陽電池モジュールの裏面の充填材層(74)側に配置し、次いで、これらを、真空吸引等により一体化して加熱圧着するラミネ−ション法等の通常の成形法を利用し、上記の各層を一体成形体として加熱圧着成形して、枠体(75)を装着して太陽電池モジュ−ルを製造することができる。
【0076】
上記太陽電池モジュ−ルを構成する通常の太陽電池モジュ−ル用表面保護シ−ト(73)としては、太陽光の透過性、絶縁性等を有し、さらに、耐候性、耐熱性、耐光性、耐水性、防湿性、防汚性、その他等の諸特性を有し、物理的あるいは化学的強度性、強靱性等に優れ、極めて耐久性に富み、さらに、光起電力素子としての太陽電池素子の保護ということから、耐スクラッチ性、衝撃吸収性等に優れていることが必要である。上記の表面保護シ−トとしては、具体的には、公知のガラス板等、さらに、例えば、ポリアミド系樹脂(各種のナイロン)、ポリエステル系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリカ−ボネ−ト系樹脂、アセタ−ル系樹脂、その他等の各種の樹脂フィルムないしシ−トを使用することもできる。上記の樹脂のフィルムないしシ−トとしては、2軸延伸した延伸フィルムないしシ−トを使用することができる。また、その樹脂のフィルムないしシ−トの厚さとしては、強度、剛性、腰等を保持するに必要な最低限の厚さであればよく、厚すぎると、コストを上昇するという欠点もあり、逆に、薄すぎると、強度、剛性、腰等が低下して好ましくないものである。本発明においては、上記のような理由から、約12〜200μm位、より好ましくは、約25μm〜150μm位が最も望ましい。
【0077】
上記太陽電池モジュ−ルを構成する太陽電池モジュ−ル用表面保護シ−トの下に積層する充填材層(71)としては、太陽光が入射し、これを透過して吸収することから透明性を有することが必要であり、また、表面保護シ−トおよび裏面保護シ−トとの接着性を有することも必要であり、光起電力素子としての太陽電池素子の表面の平滑性を保持する機能を果たすために熱可塑性を有すること、さらには、光起電力素子としての太陽電池素子の保護ということから、耐スクラッチ性、衝撃吸収性等に優れていることが必要である。具体的には、上記の充填剤層としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマ−樹脂、エチレン−アクリル酸、または、酸変性ポリオレフィン系樹脂、ポリビニルブチラ−ル樹脂、シリコ−ン系樹脂、エポキシ系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、その他等の樹脂の1種ないし2種以上の混合物を使用することができる。本発明においては、上記の充填材層を構成する樹脂には、耐熱性、耐光性、耐水性等の耐候性等を向上させるために、その透明性を損なわない範囲で、例えば、架橋剤、熱酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、光酸化防止剤、その他等の添加剤を任意に添加し、混合することができるもの
である。なお、本発明においては、太陽光の入射側の充填材としては、耐光性、耐熱性、耐水性等の耐候性等の性能面と価格面を考慮すると、エチレン−酢酸ビニル系樹脂が望ましい素材である。なお、上記の充填材層の厚さとしては、200〜1000μm位、好ましくは、350〜600μm位が望ましい。
【0078】
上記太陽電池モジュ−ルを構成する光起電力素子としての太陽電池素子(70)としては、従来公知のもの、例えば、単結晶シリコン型太陽電池素子、多結晶シリコン型太陽電池素子等の結晶シリコン太陽電子素子、シングル接合型あるいはタンデム構造型等からなるアモルファスシリコン太陽電池素子、ガリウムヒ素(GaAs)やインジウム燐(InP)等のIII−V族化合物半導体太陽電子素子、カドミウムテルル(CdTe)や銅インジウムセレナイド(CuInSe2)等のII−VI族化合物半導体太陽電子素子、有機太陽電池素子、その他等を使用することができる。さらに、薄膜多結晶性シリコン太陽電池素子、薄膜微結晶性シリコン太陽電池素子、薄膜結晶シリコン太陽電池素子とアモルファスシリコン太陽電池素子とのハイブリット素子等も使用することができる。
【0079】
上記太陽電池モジュ−ルを構成する光起電力素子の下に積層する裏面側の充填材層(74)としては、上記の太陽電池モジュ−ル用表面保護シ−トの下に積層する表面側の充填材層と同材質のものが使用できる、裏面保護シ−トとの接着性を有することも必要であり、光起電力素子としての太陽電池素子の裏面の平滑性を保持する機能を果たすために熱可塑性を有すること、さらには、光起電力素子としての太陽電池素子の保護ということから、耐スクラッチ性、衝撃吸収性等に優れていることが必要である。
【0080】
上記太陽電池モジュ−ルを構成する枠体(75)としては、一般的にはアルミニウム型材が使用される。
【0081】
上記の本発明の太陽電池モジュ−ルは、特に、従来のガスバリア性フィルムを構成するポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが高温・高湿下で加水分解劣化等を生じ、水蒸気(水分)バリア性の低下と加水分解による劣化という問題点を解決した。これらの問題点を解決するには、ガラス転移点温度(Tg)40℃以上の耐侯性・耐加水分解性を有するフィルム基材(21)を使用し、無機化合物からなる蒸着層(22)を設けたガスバリア性フィルム(20)の両面に耐熱性を有するフィルム基材(10,30)を積層した太陽電池モジュ−ル用裏面保護シ−ト(1)を使用し、長期間にわたる過酷な自然環境に耐え得る、耐熱性、耐候性、耐加水分解性、防湿性、軽量性等の諸特性に優れ、特に、水蒸気(水分)や酸素等の侵入を防止するガスバリア性を著しく向上させた。この個おから、高温・高湿環境下でのガスバリア性能および太陽電池としての電力出力特性を長期にわたり維持することが可能な耐久性を有する太陽電池モジュ−ルが得られる。
【0082】
また、図6には、本発明の一実施例としての太陽電池モジュ−ル用裏面保護シ−ト(3)を用いた太陽電池モジュ−ルについての層構成を示した。
【0083】
この太陽電池モジュ−ル用裏面保護シ−ト(3)は、特に、従来のガスバリア性フィルムを構成するポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが高温・高湿環境下で加水分解劣化等を生じ、水蒸気(水分)バリア性の低下と強度劣化の問題点を解決した。解決する方法としては、ガラス転移点温度(Tg)40℃以上の耐侯性・耐加水分解性を有するフィルム基材(51)を使用し、さらに、このフィルム基材(51)に、透明プライマー層(53)、無機化合物からなる蒸着層(52)、複合被膜からなるオーバーコート層(54)とを順次積層してなるた無機化合物からなる蒸着層(22)を設けたガスバリア性フィルム(50)の両面に、耐熱性を有するフィルム基材(10,30)を積層した太陽電池モジュ−ル用裏面保護シ−ト(3)を使用し、長期間にわたる過酷な自然環境に耐え得る、耐熱性、耐候性、耐加水分解性、防湿性、軽量性等の諸特性に優れ、特に、水蒸気(水分)や酸素等の侵入を防止するガスバリア性をさらに著しく向上させた。このことから、高温・高湿環境下でのガスバリア性能および太陽電池としての電力出力特性を長期にわたり維持することが可能な、さらに耐久性を向上させた太陽電池モジュ−ルが得られる。
【実施例】
【0084】
以下、本発明の実施例を挙げて具体的に本発明を説明する。まず、本発明の下記の実施例において使用した材料について下記に記す。
【0085】
[耐熱性を有するフィルム基材]
・厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(PET#50)で数平均分子量が23,000、末端カルボキシル基濃度(酸価)が13(mmol/kg)で環状オリゴマー0.5wt%のPETフィルム
・厚さ188μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(PET#188)で数平均分子量が23,000、末端カルボキシル基濃度(酸価)が13(mmol/kg)で環状オリゴマー0.5wt%のPETフィルム
・厚さ25μmの白色ポリフッ化ビニル(PVF)フィルム[デュポン社製「テドラー」(登録商標)](白色テドラー#25)
・厚さ38μmの白色ポリフッ化ビニル(PVF)フィルム[デュポン社製「テドラー」(登録商標)](白色テドラー#38)
[耐侯性・耐加水分解性を有するフィルム基材]
・厚さ15μm、ガラス転移点温度(Tg)45℃のポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム(PBT#15)
・厚さ12μm、ガラス転移点温度113℃のポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム(PEN#12)
・厚さ12μm、ガラス転移点温度92℃のポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートの酸およびグリコール変性コポリエステル(PCTA)フィルム[イーストマン社製「PCTA13319」](PCTA#12)
[無機化合物からなる蒸着層を設けたガスバリア性フィルムにおけるプライマー層を形成するプライマー剤]
・プライマー剤(A)
希釈溶媒中、(2−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメチルシラン(EETMS)とアクリルポリオールをEETMSに対し、5.0倍量(重量比)混合し、さらに触媒として塩化錫(SnCl2)/メタノール溶液(0.003mol/gに調整したもの)ををEETMSに対し、1/135molになるように添加し攪拌する。次いでイソシアネート化合物としてトリレンジイソシアネート(TDI)をアクリルポリオールのOH基に対しNCO基が等量となるように加えた混合溶液を任意の濃度に希釈したものである。
・アクリル・ポリエステル系コート剤(C)
[無機化合物からなる蒸着層を設けたガスバリア性フィルムにおける複合被膜からなるオーバーコート層を形成するオーバーコート剤]
・オーバーコート剤(B)
希釈溶媒中、γ−イソシアネートプロピルトリメチルシラン1重量部に対し、アクリルポリオールを9重量部及びポリエステルポリオール1重量部を量りとり混合し攪拌する。次いで、イソシアネート化合物としてトリレンジイソシアネート(TDI)をアクリルポリオールとポリエステルポリオールのOH基に対しNCO基が等量となるように加えた混合溶液を任意の濃度に希釈したものである。
・アクリル・ポリエステル系コート剤(C)
<実施例1>
予め、耐侯性・耐加水分解性を有するフィルム基材であるPEN#12フィルム基材の片面上に、プライマー層としてプライマー剤(A)のコーティング剤をグラビアコート法
により厚さ0.2μm(乾燥状態)形成した。次いで、このプライマー層上に電子線加熱方式による真空蒸着装置により、厚さ20nmのシリカからなる無機化合物薄膜層を形成した。さらに、その上にオーバーコート剤(B)のコーティング剤をグラビアコーターで塗布し乾燥機で100℃、1分間乾燥させ、厚さ0.3μm(乾燥状態)の被膜層からなるオーバーコート層を形成した無機化合物からなる蒸着層(VM)を設けたガスバリア性フィルム(1)を得た。このガスバリア性フィルム(1)のPEN#12フィルム基材側に上記PET#50を、また、蒸着層(VM)側に上記PET#188をドライラミネート積層法により、固形分30重量%の2液硬化型ポリウレタン系接着剤を用いて[塗布量5g/m2(乾燥状態)]積層して、図3で示す、耐侯性・耐加水分解性を有するフィルム基材の片面に無機化合物からなる蒸着層を設けたガスバリア性フィルムの両面に、耐熱性を有するフィルム基材を積層してなる本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートを作製した。
【0086】
<実施例2>
実施例1で使用したガスバリア性フィルム(1)の無機化合物薄膜層の代わりに、厚さ30nmのアルミナからなる無機化合物薄膜層を形成した以外は実施例1と同様のガスバリア性フィルム(2)を使用して実施例1と同様にして本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートを作製した。
【0087】
<実施例3>
実施例1で使用したガスバリア性フィルム(1)のプライマー剤(A)の代わりにアクリル・ポリエステル系コート剤(C)を、また、オーバーコート剤(B)の代わりにアクリル・ポリエステル系コート剤(C)とオーバーコート剤(B)の混合からなるオーバーコート剤を使用した以外は実施例1と同様のガスバリア性フィルム(3)を使用して実施例1と同様にして本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートを作製した。
【0088】
<実施例4>
実施例3で使用したガスバリア性フィルム(3)のプライマー剤としてのアクリル・ポリエステル系コート剤(C)の代わりに、アクリルポリエステル系コート剤(C)とプライマー剤(A)の混合からなるプライマー剤を使用した以外は実施例3と同様のガスバリア性フィルム(4)を使用して実施例3と同様にして本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートを作製した。
【0089】
<実施例5>
実施例1のガスバリア性フィルム(1)のPEN#12フィルム基材側に上記PET#50を、また、蒸着層(VM)側にPET#188を積層する代わりに、実施例1のガスバリア性フィルム(1)の両面に白色PVF#38を積層した以外は実施例1と同様にして本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートを作製した。
【0090】
<実施例6>
実施例2のガスバリア性フィルム(2)のPEN#12フィルム基材側に上記PET#50を、また、蒸着層(VM)側にPET#188を積層する代わりに、ガスバリア性フィルム(2)の両面に白色PVF#38を積層した以外は実施例2と同様にして本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートを作製した。
【0091】
<実施例7>
実施例5のガスバリア性フィルム(1)のPEN#12フィルム基材の代わりにPCTA#12フィルム基材を使用した以外は実施例5と同様のガスバリア性フィルム(5)を使用して、PCTA#12フィルム基材に白色PVF#25を積層した以外は実施例5と同様にして本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートを作製した。
【0092】
<実施例8>
実施例1のガスバリア性フィルム(1)のPEN#12フィルム基材の代わりにPBT#15フィルム基材を使用した以外は実施例1と同様のガスバリア性フィルム(6)を使用した以外は実施例1と同様にして本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートを作製した。
【0093】
<実施例9>
実施例1のガスバリア性フィルム(1)のPEN#12フィルム基材の代わりにPET#12フィルム基材を使用した以外は実施例1と同様のガスバリア性フィルム(7)を使用した以外は実施例1と同様にして本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートを作製した。
【0094】
<実施例10>
実施例2のガスバリア性フィルム(1)のPEN#12フィルム基材の代わりにPET#12フィルム基材を使用した以外は実施例1と同様のガスバリア性フィルム(8)を使用した以外は実施例1と同様にして本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートを作製した
<比較例1>
本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートの性能と比較するための比較例として、
実施例1のガスバリア性フィルム(1)を使用して、オーバーコート層を設けない以外は実施例1と同様にして太陽電池モジュール用裏面保護シートを作製した。
【0095】
<比較例2>
本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートの性能と比較するための比較例として、
実施例1のガスバリア性フィルム(1)の代わりに実施例9で使用したガスバリア性フィルム(7)を使用して、プライマー層を設けない以外は実施例1と同様にして太陽電池モジュール用裏面保護シートを作製した。
【0096】
<比較例3>
実施例1で使用したガスバリア性フィルム(1)の無機化合物薄膜層を30nmの厚さとしたガスバリア性フィルム(9)を使用し、プライマー層およびオーバーコート層を設けない以外は実施例1と同様にして太陽電池モジュール用裏面保護シートを作製した。
【0097】
さらに、上記の実施例1〜10および比較例1〜3で得られた太陽電池モジュール用裏面保護シートを用いて、図6で示す構成の太陽電池モジュール(6)を作製した。ガラス板からなる太陽電池モジュ−ル用表面保護板(73)、100μmのエチレンー酢酸ビニルシートからなる充填材シートからなる表面側充填材層(71)、予め配線(72)を配設した光起電力素子としての太陽電池素子(70)、100μmのエチレンー酢酸ビニルシートからなる充填材シートからなる裏面側充填材層(74)から構成される裏面側充填材層(74)側に、実施例1〜10および比較例1〜3で得られた太陽電池モジュール用裏面保護シートの耐侯性・耐加水分解性を有するフィルム基材が太陽電池モジュールの裏面の充填材層側に配置し、かつ、無機化合物からなる蒸着層がその反対面に位置するように順次に積層し、上記の各層を真空吸引等により一体化して150℃、20分間熱プレスにより加熱圧着成形により一体成形体として、端部をアルミニウムからなる枠体(75)を装着して、太陽電池モジュ−ルを作成した。
【0098】
上記で得られた太陽電池モジュール用裏面保護シートおよびこの裏面保護シートを用いた太陽電池モジュールについて、下記の試験法に基づいて初期の水蒸気バリア性および高温・高湿試験後における水蒸気バリア性と太陽電池モジュ−ルの電力出力について評価し
た。その評価結果を太陽電池モジュール用裏面保護シートの構成と共に下記表1〜3に示す。
【0099】
[水蒸気バリア性の評価]
水蒸気透過率測定装置(MOCON社製)を用いて、40℃−90%RHの測定雰囲気における水蒸気透過率を測定した。
【0100】
[高温・高湿試験]
温度85℃、湿度85%、1000hrの環境試験を行った。
【0101】
[電力出力評価]
JIS規格C8991に基づいて、太陽電池モジュールの高温・高湿環境試験を行い、試験前後の光起電力の出力を測定して、出力保持率を測定した。
【0102】
【表1】

【0103】
【表2】

【0104】
【表3】

【0105】
表1〜3の結果から、実施例1〜10で得られた本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートは、高温・高湿試験後の水蒸気透過率が試験前の初期の水蒸気透過率と殆ど変化せず、高温・高湿試験後においてもガスバリア性を維持している。これに対して、比較例1〜3で得られた太陽電池モジュール用裏面保護シートは、高温・高湿試験後の水蒸気透過率が著しく増大し、高温・高湿環境下でのガスバリア性能が維持できず、長期間にわたる過酷な自然環境に耐え得ることが困難であることを示唆するものである。したがって、実施例1〜10で得られた本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートを使用した太陽電池モジュールに比較して、比較例1〜3で得られた太陽電池モジュール用裏面保護シートを使用した太陽電池モジュールは太陽電池モジュールの太陽電池として電力出力特性(出力保持率)においても劣る。
【0106】
このことは、本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートは、ガラス転移点温度(Tg)40℃以上の耐侯性・耐加水分解性を有するフィルム基材の少なくとも片面に無機化合物からなる蒸着層を有するガスバリア性フィルムと、このガスバリア性フィルムに配置された耐熱性を有するフィルム基材とを有する構成の裏面保護シートであるから、長期間にわたる過酷な自然環境に耐え得る、耐熱性、耐候性、耐加水分解性、防湿性、軽量性等の諸特性に優れる、特に、水蒸気(水分)や酸素等の侵入を防止するガスバリア性を著しく向上する。このことから、高温・高湿環境下でのガスバリア性能および太陽電池としての電力出力特性を長期にわたり維持することが可能な耐久性を有し、かつ、安価な太陽電池用裏面保護シートおよびそれを用いた太陽電池モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートについてその一実施例の層構成を示す断面図である。
【図2】本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートについてその一実施例の層構成を示す断面図である。
【図3】本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートについてその一実施例の層構成を示す断面図である。
【図4】本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートについてその一実施例の層構成を示す断面図である。
【図5】本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートを用いた太陽電池モジュールについてその一実施例の層構成を示す断面図である。
【図6】本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートを用いた太陽電池モジュールについてその一実施例の層構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0108】
1、2、3、4・・・太陽電池モジュール用裏面保護シート
5、6・・・太陽電池モジュール
10、30・・・耐熱性を有するフィルム基材
20、40、50、60・・・無機化合物からなる蒸着層を設けたガスバリア性フィルム21、41、51、61・・・耐侯性・耐加水分解性を有するフィルム基材
22、42、52、62・・・無機化合物からなる蒸着層
53、63・・・プライマー層
54、64・・・オーバーコート層
70・・・光起電力素子としての太陽電池素子
71・・・表面側充填材層
72・・・配線
73・・・太陽電池モジュール表面保護シート
74・・・裏面側充填材層
75・・・枠体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐侯性・耐加水分解性を有するフィルム基材の少なくとも片面に無機化合物からなる蒸着層を有するガスバリア性フィルムと、前記ガスバリア性フィルムに配置された耐熱性を有するフィルム基材とを有することを特徴とする太陽電池モジュール用裏面保護シート。
【請求項2】
前記無機化合物からなる蒸着層を有するガスバリア性フィルムが、耐侯性・耐加水分解性を有するフィルム基材上に、透明プライマー層、無機化合物からなる蒸着層、複合被膜からなるオーバーコート層とを順次積層してなることを特徴とする請求項1記載の太陽電池モジュール用裏面保護シート。
【請求項3】
前記耐侯性・耐加水分解性を有するフィルム基材が、ガラス転移点温度(Tg)40℃であることを特徴とする請求項1または2記載の太陽電池モジュール用裏面保護シート。
【請求項4】
前記耐侯性・耐加水分解性を有するフィルム基材が、ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートの酸およびグリコール変性コポリエステル(PCTA)フィルムから選ばれるポリエステル基材またはポリカーボネート系基材であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール用裏面保護シート。
【請求項5】
前記耐熱性を有するフィルム基材が、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムもしくはフッ化ビニル樹脂(PVF)フィルム、フッ化ビニリデン樹脂(PVDF)フィルム、三フッ化塩化エチレン樹脂(PCTFE)フィルム、エチレン・四フッ化エチレン共重合体(ETFE)フィルム、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルム、四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)フィルムから選ばれるフッ素系基材であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール用裏面保護シート。
【請求項6】
前記フッ素系基材が、ポリフッ化ビニル(PVF)フィルムであることを特徴とする請求項5記載の太陽電池モジュール用裏面保護シート。
【請求項7】
前記無機化合物が、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化錫、酸化亜鉛あるいはそれらの混合物であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール用裏面保護シート。
【請求項8】
前記蒸着層の厚さが、5〜300nmの範囲であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール用裏面保護シート。
【請求項9】
前記オーバーコート層を構成する複合被膜が、水酸基含有高分子化合物と金属アルコキシドおよびまたはその加水分解物およびまたはその重合物の少なくとも1種類以上とを 含有する複合被膜であることを特徴とする請求項2記載の太陽電池モジュール用裏面保護シート。
【請求項10】
前記水酸基含有高分子化合物が、ポリビニルアルコールまたはポリ(ビニルアルコール−co−エチレン)、セルロース、デンプンのうち少なくとも1種類以上を含有することを特徴とする請求項9記載の太陽電池モジュール用裏面保護シート。
【請求項11】
前記金属アルコキシドが、シランアルコキシド、シランカップリング剤であることを特徴とする請求項9または10記載の太陽電池モジュール用裏面保護シート。
【請求項12】
前記耐熱性を有するフィルム基材が、白色化剤で着色されていることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール用裏面保護シート。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール用裏面保護シートを用いたことを特徴とする太陽電池モジュール。
【請求項14】
耐侯性・耐加水分解性を有するフィルム基材の片面に無機化合物からなる蒸着層を有するガスバリア性フィルムの両面に、耐熱性を有するフィルム基材を積層してなる太陽電池モジュール用裏面保護シートにおいて、前記ガスバリア性フィルムの耐侯性・耐加水分解性を有するフィルム基材が太陽電池モジュール裏面の充填材層側に位置するように前記太陽電池モジュール用裏面保護シートを配設してなることを特徴とする請求項13記載の太陽電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−227203(P2008−227203A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−64453(P2007−64453)
【出願日】平成19年3月14日(2007.3.14)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】