説明

太陽電池用電極フィルム、これを用いた太陽電池の製造方法、並びに太陽電池

【課題】シリコン系光電変換素子上に容易に形成することができ、且つ得られる太陽電池に低い全抵抗値及び高い発電効率を付与することができる太陽電池用電極フィルムを提供すること。
【解決手段】透明フィルム、その表面に設けられた透明電極薄膜、及び透明電極薄膜上にストライプ状又はメッシュ状に金属電極からなるシリコン系太陽電池用電極フィルムであって、透明電極薄膜の厚さが10〜400nmの範囲にあり、金属電極の厚さが1〜200μmの範囲にあり、その幅が0.01〜1.0mmの範囲にあることを特徴とする太陽電池用電極フィルム;これを用いた太陽電池の製造方法;及び太陽電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池の電極をシリコン基板上に形成するために有利に使用することができる太陽電池用電極フィルム、及び太陽電池の製造方法、並びに太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池に使用される光電変換素子の種類としては、単結晶シリコン型、アモルファスシリコン型、多結晶シリコン型、その他化合物型等を挙げることができる。
【0003】
単結晶シリコン型の場合は、半導体製造と同じプロセスによって製造されるため、変換効率は高いが、製品単価は高くなる。また、光吸収係数が小さいため、ある程度の厚さが必要であり(50μm以上が好ましい)、高価な高純度シリコンの使用量が増えるため、材料費が高くなる。一方、多結晶シリコンを用いると、生産コストは下げられるが、太陽電池の厚さを減らすことはできないため、依然として材料費としては高価である。
【0004】
このため、低コストで且つ大面積に作製できるアモルファスシリコン太陽電池の研究が進められている。アモルファスシリコン太陽電池の構造は一般的には、基板上に薄膜のp層、i層及びn層からなる半導体接合(光電変換素子)の上に表面の抵抗を低くするための透明電極薄膜(透明導電膜)を積層したものである。この透明電極薄膜は金属に比べて導電率が低いため、太陽電池セルの内部抵抗が高くなる問題があるが、これを解決するためにグリッド電極やバスバーによって内部抵抗を減らす努力がなされている。グリッド電極は太陽電池セル上に比較的細い金属からなる電極を設け、電流を集めるためのものであって、グリッド電極によって集められた電流を更に集めるためのバスバーと呼ばれる比較的太い金属からなる電極を設けるのが一般的である。
【0005】
一方、前記グリッド電極やバスバーは不透明であるため、太陽電池の有効面積の損失となることから、グリッド電極やバスバーの面積を減らし、且つ電流を有効に取り出すためにグリッド電極及びバスバーの比抵抗を小さくし、且つ電極の断面積を増加することが有効な手段である。
【0006】
一般に電極材料としては、銀(比抵抗:1.62×10-6Ω)や銅(比抵抗:1.72×10-6Ω)等の比抵抗の低い材料が用いられる。安価な材料が求められる場合は、アルミニウム(比抵抗:2.75×10-6Ω)、亜鉛(比抵抗:5.9×10-6Ω)等も用いられる。これらの電極の形成法としては、蒸着法(フォトリソ法)、メッキ法及び印刷法等の方法が一般的に用いられている。
【0007】
蒸着法は、品質は良好ではあるが高価な真空系の設備が必要であるため、コストがかさむ上に、同じ理由で製造に時間がかかる。また、パターニングの際にはマスキングも必要であるとの問題がある(例、特許文献1(特開平9−275221号公報))。メッキ法では、Niの無電解メッキ等が一般的に実用化されているが、やはりパターニングの際には、マスクが必要であるという点と、剥離し易さが問題となっている。印刷法はコストも低く、パターニングできることもあり、銀ペーストをスクリーン印刷して高温でシンターしてコンタクトする方法が実用化されている。
【0008】
【特許文献1】特開平9−275221号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の光電変換素子の上に表面の抵抗を低くするために使用される酸化物の透明電極は、金属電極に比べて体積固有抵抗率が大きいことから、太陽電池の大面積化に相応してその面積を大きくした場合、光電変換素子から集電電極部までの抵抗値が大きくなり、並行抵抗(シャント抵抗)が高くなることから、電流電圧特性の形状因子(フィルファクタ)が低下する傾向がある。このような透明電極に、前述の金属グリッド電極を設けることにより、抵抗値を低下させることができることから、単位面積当たりの変換効率を向上させることができるが、抵抗値を下げるために金属グリッド電極の幅を大きくすると開口率が低下し、単位面積当たりの発電効率が低下するとの問題がある。
【0010】
また、太陽電池の透明電極上への電極の形成は、高精度の電極を得ようとした場合、蒸着法が有利であるが、上記のように煩雑であり、作業の困難さを伴うものである。また従来の方法では、電極形成後、他のセルとの結合をハンダ等で行うため、その作業が煩雑である。従って、光電変換素子であるシリコン基板(層)上に、高精度の電極を、容易に、高い生産性で得ることが求められている。
【0011】
従って、本発明の目的は、シリコン系光電変換素子上に容易に形成することができ、且つ低い全抵抗値及び高い開口率を有する太陽電池用電極フィルムを提供することを目的とする。
【0012】
また、本発明の目的は、シリコン系光電変換素子上に容易に形成することができ、且つ得られる太陽電池に低い全抵抗値及び高い発電効率を付与することができる太陽電池用電極フィルムを提供することを目的とする。
【0013】
さらに、本発明の目的は、シリコン系光電変換素子上に、透明電極と共に金属電極を容易に形成することができ、且つ得られる太陽電池に低い全抵抗値及び高い発電効率を付与することができる太陽電池用電極フィルムを提供することを目的とする。
【0014】
また、本発明の目的は、低い全抵抗値及び高い発電効率を有する太陽電池を容易に製造する方法を提供することを目的とする。
【0015】
さらにまた本発明の目的は、生産性に優れ、低い全抵抗値及び高い発電効率を有する太陽電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、
透明フィルム、その表面に設けられた透明電極薄膜、及び透明電極薄膜上にストライプ状又はメッシュ状に金属電極からなるシリコン系太陽電池用電極フィルムであって、
透明電極薄膜の厚さが10〜400nmの範囲にあり、金属電極の厚さが1〜200μm(特に1〜150μm)の範囲にあり、その幅が0.01〜1.0mmの範囲にあることを特徴とする太陽電池用電極フィルムにある。
【0017】
本発明の太陽電池用電極フィルムの好ましい態様を以下に列記する。
(1)金属電極の体積固有抵抗率が、1.0×10-7〜1.0×10-4Ω・cm(特に5.0×10-7〜1.0×10-5Ω・cm)の範囲にあり、透明電極薄膜の体積固有抵抗率が、1.0×10-5〜1.0×10-3Ω・cmの範囲にある。太陽電池用電極フィルムの全抵抗の低下と高い開口率との両方を同時に満足させ易い。
(2)金属電極の厚さ(μm)×金属電極の厚さ幅(mm)の値が、0.1〜50の範囲、さらに0.1〜10の範囲、特に0.5〜10の範囲である。太陽電池用電極フィルムの全抵抗の低下と高い開口率との両方を同時に満足させ易い。
(3)金属電極の厚さ(μm)×金属電極の厚さ幅(mm)×透明電極薄膜の厚さ(nm)の値が、10〜10000の範囲、さらに10〜1000の範囲、特に10〜500の範囲である。太陽電池用電極フィルムの全抵抗の低下と高い開口率との両方を同時に満足させ易い。
(4)開口率90%以上、特に95%以上である。
(5)金属電極の厚さが5〜50μmの範囲にある。太陽電池用電極フィルムの全抵抗の低下と高い開口率との両方を同時に満足させ易い。
(6)金属電極の幅が0.05〜0.5mmの範囲にある。太陽電池用電極フィルムの全抵抗の低下と高い開口率との両方を同時に満足させ易い。
(7)金属電極が一般にストライプ状に設けられている。太陽電池に設けられる電極としては、発電される電流を集めるグリッド電極(フィンガー電極)、主にインターコネクタ接続用のバスバー電極を挙げることができるが、本発明の電極は、前者のグリッド電極(フィンガー電極)であることが好ましい。
【0018】
本発明では、アモルファス系シリコン太陽電池において、基板上に薄膜のp層、i層及びn層からなる半導体接合体(光電変換素子)の上に表面の抵抗を低くするための透明電極薄膜の表面に設けられるグリッド電極(フィンガー電極)であることが好ましい。
(8)金属電極が、金属蒸着膜、或いは金属蒸着膜及びその表面に設けられたメッキ層からなる。高精度、低抵抗の電極が得られやすい。
(9)金属電極が、金属粒子とバインダ樹脂からなる金属印刷膜、或いはこの金属印刷膜及びその表面に設けられたメッキ層からなる。特に生産性に有利である。
(10)金属電極が、銀、銅、金、白金、パラジウム、ステンレス、アルミニウム、ニッケル、鉄、真鍮、或いはこれらの合金、特に銀、銅、金、白金、パラジウム、及びニッケルから選択される少なくとも1種の金属を含有している。銅が好ましい。
(11)透明電極薄膜が、金属酸化物から形成されている。金属酸化物が、酸化チタン、酸化錫、酸化アルミニウム、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化シリコン、酸化ジルコニウム、酸化スズ−酸化アンチモン(ATO)、酸化亜鉛−酸化アルミニウム(ZAO)からなる群から選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。
(12)透明フィルムが、長尺状のプラスチックフィルムである。透明フィルムは、耐候性に優れたフィルムであることが好ましい。
【0019】
また、本発明は、
光電変換素子の表面に、熱又は光硬化型透明接着剤或いは導電性微粒子を含有する熱又は光硬化型透明接着剤を介して、上記の太陽電池用電極フィルムを、金属電極がシリコン基板の表面に接触するように載置、圧着し、圧着と同時、又は圧着後に、透明接着剤を硬化させることを特徴とする太陽電池の製造方法にもある。
【0020】
本発明の太陽電池の製造方法の好ましい態様を以下に列記する。
(1)熱又は光硬化型透明接着剤が、ポリエステル不飽和化合物を含んでいる。
(2)ポリエステル不飽和化合物が、不飽和ポリエステル、又は(メタ)アクリロイル基を有する飽和ポリエステルである。
(3)導電性微粒子を含有する熱又は光硬化型透明接着剤が、導電性微粒子をポリエステル不飽和化合物に対して0.1〜15容量%含んでいる。
(4)導電性微粒子の平均粒径が、0.1〜100μmの範囲にある。
(5)熱又は光硬化型透明接着剤が、シート状でも、液状でも良いが、シート状が好ましい。
(6)光電変換素子が、結晶シリコン層又はアモルファスシリコン層を含む。
【0021】
さらに本発明は、
光電変換素子の表面に、前記の太陽電池用電極フィルムが、金属電極がシリコン基板の表面に接触するように設けられ、且つ金属電極間の空隙が、熱又は光硬化型透明接着剤又は導電性微粒子を含有する熱又は光硬化型透明接着剤の硬化物で埋められていることを特徴とする太陽電池にもある。
【0022】
本発明の太陽電池の好ましい態様を以下に列記する。
(1)熱又は光硬化型透明接着剤が、ポリエステル不飽和化合物を含んでいる。
(2)ポリエステル不飽和化合物が、不飽和ポリエステル、又は(メタ)アクリロイル基を有する飽和ポリエステルである。
(3)導電性微粒子を含有する熱又は光硬化型透明接着剤が、導電性微粒子をポリエステル不飽和化合物に対して0.1〜15容量%含んでいる。
(4)導電性微粒子の平均粒径が、0.1〜100μmの範囲にある。
(5)熱又は光硬化型透明接着剤が、シート状でも、液状でも良いが、シート状が好ましい。
(6)光電変換素子が、結晶シリコン層又はアモルファスシリコン層を含む。
【発明の効果】
【0023】
本発明の太陽電池用電極フィルムは、透明フィルム上に特定の厚さの透明電極薄膜及び特定の寸法の金属電極が設けられている。この電極フィルムは、低い電気抵抗及び高い開口率を有するので、このフィルムを光電変換素子(シリコン層)上に設けて得られる太陽電池は低い全抵抗値及び高い発電効率を示す。また、この電極フィルムには、一般に、光電変換素子(シリコン層)上に設けるべき透明電極薄膜及び金属電極が、太陽電池セルの多数個分形成されており、従って、この電極フィルムを用いることにより、多数個又は多数個分の或いは大面積の光電変換素子上に、透明電極薄膜及び金属電極を連続的に形成することが可能である。即ち、本発明では、透明フィルム上に透明電極薄膜を蒸着法等により設け、そしてその上に金属電極を、従来の蒸着法(パターニング法)、めっき法、或いは印刷法等を利用して形成しているが、透明フィルム上には透明電極薄膜及び金属電極を太陽電池セルの多数個分が形成されており、従って、このような蒸着等の煩雑な工程はまとめて行うことができることから、本発明の太陽電池用電極フィルムを用いることにより太陽電池(セル)を高い生産性で製造することができる。
【0024】
さらに、本発明の太陽電池用電極フィルムを用いることにより、上記のように、精度の高い金属電極の形成が可能な蒸着法等を採用しても、高い生産性が保持できることから、高精度の金属電極を容易に形成することも可能である。さらに、本発明では、透明電極薄膜も同時に形成可能であり、この点でも生産性に優れたものである。さらにまた、太陽電池セルを取り付ける部分、及び太陽電池セル間の配線を形成しておき、これらを光電変換素子に同時に形成することができることから、電極形成後、他のセルとの結合をハンダ等で行う等の煩雑な作業を行う必要がないとの利点もある。
【0025】
また、本発明の太陽電池は、本発明の太陽電池用電極フィルムを用いて、その金属電極が光電変換素子に接触する状態で接着固定されている。その際、特に本発明の特定の熱又は光硬化型透明接着剤(一般にポリエステル不飽和化合物を含む)を用いることにより容易に且つ正確に接着固定することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の太陽電池用電極フィルム、これを用いた太陽電池の製造方法、及び太陽電池について、図面参照しながら詳細に説明する。
【0027】
図1(1)に、本発明の太陽電池用電極フィルムの基本構造の概略断面図を示す。透明フィルム11上に、透明電極薄膜12が設けられ、その上に金属電極13がストライプ状に設けられている。金属電極13としては、発電された電流を集めるグリッド電極(フィンガー電極)、主にインターコネクタ接続用のバスバー電極、及び集電電極を挙げることができるが、本発明の電極は、グリッド電極(フィンガー電極)であることが好ましい。本発明では、例えば、結晶シリコン系太陽電池のp型層又はn型層上に表面の抵抗を低くするための透明電極薄膜の表面に設けられるグリッド電極(フィンガー電極)であるか、或いはアモルファスシリコン太陽電池において、基板上に薄膜のp型層、i型層及びn型層からなる半導体接合体(光電変換素子)の上に表面の抵抗を低くするための透明電極薄膜の表面に設けられるグリッド電極(フィンガー電極)であることが好ましい。金属電極13がメッシュ状に形成されていても良い。
【0028】
透明電極薄膜12は、上記のように、シリコン層上(例、p型層又はn型層上)に、表面の抵抗を低くするために設けられるが、本発明のように電極上に設けても同様の効果が得られる。
【0029】
本発明においては、上記透明電極薄膜12の厚さが10〜400nmの範囲(特に10〜200nmの範囲)にあり、金属電極13の厚さが1〜200μm(特に1〜150μm)の範囲にあり、その幅が0.01〜1.0mmの範囲にあることが必要である。
【0030】
図1(2)に、上記図1(1)の太陽電池用電極フィルムを模式的に描いた部分拡大斜視図を示す。透明電極薄膜12の厚さがtであり、金属電極13の厚さがh、幅がdであり、電極フィルムの全長が2L(実際は電極フィルムを正方形とした場合の全長に相当)であり、金属電極13の電極間距離が2Wである。そして、透明電極薄膜12の抵抗(Ω)R12及び金属電極13の抵抗(Ω)R13、及び全抵抗(Ω)Rは下記式より求められる。
【0031】
R=R12+R13
12=ρ12×W/(2L×t)
13=ρ13×L/(d×h)
(尚、ρ12は透明電極薄膜12の体積固有抵抗率(Ω・cm)、ρ13は金属電極13の体積固有抵抗率(Ω・cm)を表す)
【0032】
上記透明電極薄膜12の厚さtを10〜400nmの範囲、特に10〜200nmの範囲、金属電極13の厚さhを1〜100μmの範囲、特に5〜50μmの範囲、金属電極の幅を0.01〜1.0mmの範囲、特に0.01〜0.1mmの範囲とすることにより、全抵抗を低く且つ開口率を高くすることができる。この場合、抵抗値は、例えば、透明電極薄膜12の裏面に厚さ100nmのアモルファスシリコン層を形成して測定されるのが一般的である。
【0033】
本発明の太陽電池用電極フィルムにおいて、さらに、金属電極の厚さh(μm)×金属電極の厚さ幅d(mm)の値が、0.1〜50の範囲、さらに0.1〜10の範囲、特に0.5〜10の範囲であることが好ましい。全抵抗を低く且つ開口率を高くすることがさらに容易となる。即ち、材料の選定の容易さ、金属電極の形成の容易さが向上する。特に、金属電極の厚さ(μm)×金属電極の厚さ幅(mm)×透明電極薄膜の厚さ(nm)の値が、10〜10000の範囲、さらに10〜1000の範囲、特に10〜500の範囲であることが好ましい。全抵抗を低く且つ開口率を高くすることがさらに容易となる。即ち、材料の選定の容易さ、金属電極の形成の容易さが向上する。
【0034】
金属電極の体積固有抵抗率(ρ13)が、1.0×10-7〜1.0×10-4Ω・cmの範囲(特に5.0×10-7〜1.0×10-5Ω・cmの範囲)にあることが好ましい。また、透明電極薄膜の体積固有抵抗率(ρ12)が、1.0×10-5〜1.0×10-3Ω・cmの範囲にあることが好ましい。全抵抗を低く且つ開口率を高くすることがさらに容易となる。金属電極の体積固有抵抗率は、バインダ等の添加剤を使用する場合があるため、金属本来の体積固有抵抗率より大きくなりがちであり、本発明の金属電極の寸法の設定は、このような実際に得られる金属電極に好適なものである。
【0035】
開口率は90%以上、特に95%以上であることが好ましい。上限は一般に99%である。
【0036】
結晶シリコン系光電変換素子の上(例、p型層又はn型層の上)に、上記本発明の太陽電池用電極フィルムを用いて、金属電極及び透明電極薄膜を形成する方法について説明する。図2に示すように、結晶シリコン系光電変換素子25の上に、シート状の熱又は光硬化型透明接着剤24Aを介して、図1(1)に示した、透明フィルム21上に透明電極薄膜22及び金属電極23が積層された太陽電池用電極フィルムを、金属電極23と光電変換素子25が対向するようにして載置、押圧した後、或いは押圧と同時に、熱又は光硬化型透明接着剤24Aを熱又は光により硬化させる。24A’は硬化した熱又は光硬化型透明接着剤である。上記熱又は光硬化型透明接着剤24Aは、金属電極23と光電変換素子25とが直接接触するように、特有の流動性を有している。
【0037】
図3には、シート状の熱又は光硬化型透明接着剤24Aの代わりに、導電性微粒子を含有するシート状の熱又は光硬化型透明接着剤34Bを用いて、結晶シリコンの光電変換素子35の上に透明電極薄膜及び金属電極を形成する方法の1例が示されている。結晶シリコン系光電変換素子35の上に、図1(1)に示した、透明フィルム31上に透明電極薄膜32及び金属電極33が積層された太陽電池用電極フィルムを同様に載置、押圧した後、或いは押圧と同時に、導電性微粒子34Cを含有する熱又は光硬化型透明接着剤34Bを熱又は光により硬化させる。34B’は硬化した導電性微粒子を含有する熱又は光硬化型透明接着剤である。導電性微粒子を含有するシート状の熱又は光硬化型透明接着剤34Bは、導電性微粒子が金属電極23と光電変換素子25との間に入り込み、且つ導電性微粒子が金属電極23と光電変換素子25との両方に直接接触するように、設計されている。即ち、導電性微粒子を含有する熱又は光硬化型透明接着剤34Bは、好適な粒径の導電性微粒子を特定量含有し、且つ特有の流動性を有している。硬化した導電性微粒子を含有する熱又は光硬化型透明接着剤34B’は、上記のように金属電極と光電変換素子間では導通するが、横方向の金属電極間では導通されない。これは導電性微粒子が横方向には連続的に繋がっていないためである。
【0038】
アモルファスシリコン系光電変換素子の上(例、フィルム基板上の薄膜のp層、i層及びn層からなる半導体接合体の表面)に、上記本発明の太陽電池用電極フィルムを用いて、金属電極及び透明電極薄膜を形成する方法について説明する。図4に示すように、アモルファスシリコン系光電変換素子45{フィルム基板45A(一般に基板両側に電極を有する)とその上のアモルファス系シリコン層45B}の上に、シート状の熱又は光硬化型透明接着剤44Aを介して、図1(1)に示した、透明フィルム41上に透明電極薄膜42及び金属電極43が積層された太陽電池用電極フィルムを、金属電極43と光電変換素子45が対向するようにして載置し、これらを圧着した後、熱又は光硬化型透明接着剤44Aを熱又は光により硬化させる。44A’は硬化した熱又は光硬化型透明接着剤である。熱又は光硬化型透明接着剤44Aは、金属電極43とシリコン基板45上のアモルファス系シリコン層45Bとが直接接触するように、特有の流動性を有している。
【0039】
図5には、図4におけるシート状の熱又は光硬化型透明接着剤44Aの代わりに、導電性微粒子を含有するシート状の熱又は光硬化型透明接着剤54Bを用いて、アモルファスシリコンの光電変換素子55(フィルム基板55Aとその上のアモルファスシリコン層55B)の上に透明電極薄膜及び金属電極を形成する方法の1例が示されている。アモルファスシリコンの光電変換素子55のアモルファスシリコン層55B上に、図1(1)に示した、透明フィルム51上に透明電極薄膜52及び金属電極53が積層された太陽電池用電極フィルムを同様に圧着し、その後導電性微粒子を含有する熱又は光硬化型透明接着剤54Bを熱又は光により硬化させる。54B’は硬化した導電性微粒子を含有する熱又は光硬化型透明接着剤である。導電性微粒子54Cを含有するシート状の熱又は光硬化型透明接着剤54Bは、前述のように、導電性微粒子が金属電極53と光電変換素子55との間に入り込み、且つ導電性微粒子が金属電極53と光電変換素子55との両方に直接接触するように、設計されている。
【0040】
上記のように、本発明の特定の(導電性微粒子を含有する)熱又は光硬化型透明接着剤を用いることにより、金属電極と光電変換素子との良好な接触を達成しながら堅固な接着を得ることができる。
【0041】
また、本発明の太陽電池用電極フィルムでは、例えば、透明フィルムの透明電極薄膜上に、金属電極に加えて、光電変換素子を取り付ける部分、及び太陽電池セル間の配線を形成しておき、これらを光電変換素子に同時に形成することができる。これにより、電極形成後、他のセルとの結合をハンダ等で行う等の煩雑な作業を行う必要がない。
【0042】
前述したように、本発明の太陽電池用電極フィルムは、光電変換素子上に設けるべき透明電極薄膜及び金属電極を、太陽電池セルの多数個分が形成された長尺状のフィルムであることが好ましい。これにより、連続的に太陽電池セル多数個分の光電変換素子上に、透明電極薄膜及び金属電極を形成することができ、多数の太陽電池セルを連続的に製造することが可能である。また大面積のアモルファスシリコン系光電変換素子に対しても、容易に透明電極薄膜及び金属電極を形成することができる。
【0043】
結晶シリコン系光電変換素子を用いた場合の太陽電池の連続製造方法の1例を図6(図2又は3に対応)に示す。ロール(図示せず)により送られてきた、長尺状の透明フィルム61に透明電極薄膜62及び金属電極63が積層された太陽電池用電極フィルム(金属電極上)が、支持体66上に配置された光電変換素子65の上に、シート状の(金属微粒子を含有しても良い)熱又は光硬化型透明接着剤64を介して、光電変換素子65と金属電極63とが接触するように、ロール67により押圧、積層される。その際、光電変換素子65上には、ロール68によりシート状の熱硬化型透明接着剤64が予め押圧、積層されている。この後加熱又は加熱加圧若しくは減圧加熱により熱又は光硬化型透明接着剤64を硬化させても良いが、ロール67として加熱ロールを用いて、圧着時に硬化させることも可能である。このロール67で加熱する場合は、一般にその表面温度が130〜170℃とし、上記太陽電池用電極フィルムの表面と1〜60秒間接触していることが好ましい。光硬化させる場合は、一般にロール圧着後、紫外線等を透明接着剤64に照射して行われる。結晶シリコン系光電変換素子65を、長尺状の太陽電池用電極フィルムと共に、次々と送ることにより、連続的に光電変換素子65に透明電極薄膜62及び金属電極63を形成することができる。
【0044】
アモルファスシリコン系光電変換素子を用いた場合の太陽電池の連続製造方法の1例を図7(図4又は5に対応)に示す。ロール(図示せず)により送られてきた、長尺状の透明フィルム71に透明電極薄膜72及び金属電極73が積層された太陽電池用電極フィルム(金属電極)が、別のロール(図示せず)により送られてきた長尺状の透明フィルム75A上に形成されたアモルファスシリコンの光電変換素子75B上に、シート状の熱又は光硬化型透明接着剤74を介して、ロール77及びロール79により押圧、積層される。その際、光電変換素子75B上には、ロール78によりシート状の熱硬化型透明接着剤74が予め押圧、積層されている。そして、太陽電池用電極フィルム(金属電極)の光電変換素子75Bへの積層は、上記加熱ロール77及び加熱ロール79により光電変換素子75Bと金属電極73とが接触するようになされる。この後加熱又は加熱加圧若しくは減圧加熱により熱又は光硬化型透明接着剤74を硬化させても良いが、ロール77及びロール79として加熱ロールを用いて、圧着時に硬化させることも可能である。このロール77及びロール79で加熱する場合は、一般にその表面温度が130〜170℃とし、上記太陽電池用電極フィルムの表面と1〜60秒間接触していることが好ましい。光硬化させる場合は、一般にロール圧着後、紫外線等を透明接着剤74に照射して行われる。これにより長尺状の太陽電池が得られるので、必要により所望の大きさに裁断することにより個々の太陽電池セルを得ることができる。
【0045】
上記透明フィルム11,21,31,41,51,61,71が、太陽電池の一部として使用されるので、耐候性に優れたフィルムであることが好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド(PI)、ポリカーボネート(PC)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアリレート等の樹脂フィルム基板を挙げることができる。耐候性に優れた好ましいフィルムの例としては、表面フッ素処理プラスチックフィルム、フッ素樹脂フィルム、メタクリル樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、紫外線吸収剤含有プラスチックフィルム(例、PET)を挙げることができる。
【0046】
上記紫外線吸収剤含有プラスチックフィルムは、紫外線吸収剤に加えて、光安定剤および老化防止剤を含んでいてもよい。
【0047】
紫外線吸収剤としては、特に制限されないが、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシロキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤が好ましく挙げられる。なお、上記ベンゾフェノン系紫外線吸収剤の配合量は、フィルムの樹脂100質量部に対して0.01〜5質量部であることが好ましい。
【0048】
光安定剤としてはヒンダードアミン系と呼ばれる光安定剤を用いることが好ましく、例えば、LA−52、LA−57、LA−62、LA−63LA―63p、LA−67、LA−68(いずれも旭電化(株)製)、Tinuvin744、Tinuvin 770、Tinuvin 765、Tinuvin144、Tinuvin 622LD、CHIMASSORB 944LD(いずれもチバ・ガイギー社製)、UV−3034(B.F.グッドリッチ社製)等を挙げることができる。なお、上記光安定剤は、単独で使用しても、2種以上組み合わせて用いてもよく、その配合量は、フィルムの樹脂100質量部に対して0.01〜5質量部であることが好ましい。
【0049】
老化防止剤としては、例えばN,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナミド〕等のヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系熱安定剤、ラクトン系熱安定剤、ビタミンE系熱安定剤、イオウ系熱安定剤等が挙げられる。
【0050】
アモルファス系シリコン層が設けられる透明フィルム55A,75Aとしては、一般にポリイミドフィルムが使用される。一般にフィルムの片側又は両側に金属電極が設けられている。ガラス板を用いる場合もある。
【0051】
上記透明フィルム上に設けられる透明電極薄膜12,22,32,42,52,62,72は、金属酸化物から形成されている。金属酸化物は、透明で高導電性の材料であれば特に限定はない。金属酸化物としては、例えば、酸化チタン(TiO2 )、酸化錫(SnO2 )、酸化インジウム錫(ITO、いわゆるインジウムドープ酸化スズ)、酸化アルミニウム(Al23 )、酸化インジウム(In23 )、酸化亜鉛(ZnO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化シリコン(酸化ケイ素:SiO2 )、酸化ジルコニウム(ZrO2 )、酸化スズ−酸化アンチモン(ATO、いわゆるアンチモンドープ酸化スズ)、酸化亜鉛−酸化アルミニウム(ZAO;いわゆるアルミニウムドープ酸化亜鉛)等を挙げることができる。
【0052】
透明電極薄膜は、一般に気相成膜法により形成される。その形成方法としては、特に制限はないが、スパッタリング、イオンプレーティング、電子ビーム蒸着、真空蒸着、化学蒸着を挙げることができる。一般的にはスパッタリング法で成膜するのが好ましい。化学蒸着法としては、常圧CVD法、減圧CVD法、プラズマCVD法が挙げられる。その層厚は、前述のように10〜200nmである。
【0053】
上記金属酸化物としては、例えば、金属アルコキシド系化合物、金属アシレート系化合物および金属キレート系化合物からなる群から選ばれた少なくとも一つに由来する有機成分を含有する金属酸化物を用いることも可能である。このように、金属アルコキシド系化合物等に由来する有機成分を含有する金属酸化物を用いると、例えば、ウエットコーティングにより薄膜を形成することができ、金属アルコキシド系化合物等の加水分解および熱分解により、金属酸化物薄膜中に有機成分(アルキル基等)を残存させることができるため、スパッタ蒸着法により薄膜を形成する場合に比べて、金属膜との接着性が向上するとともに、コストが安くなる場合がある。
【0054】
上記透明電極薄膜上に設けられる金属電極13,23,33,43,53,63,73は、一般に、以下のような構成を有する。
【0055】
金属電極はストライプ状又はメッシュ状(一般にストライプ状)であり、通常グリッド電極(フィンガー電極)として用いられる。バスバー電極又は集電電極として用いても良い。このようなストライプ状の金属電極は、透明フィルムの透明電極薄膜上に形成された銅箔等の層をストライプ状にエッチング加工し、開口部を設けたもの、透明フィルムの透明電極薄膜上に導電性インクをストライプ状に印刷したもの、後述する印刷メッシュ法により形成されたもの等を挙げることができる。
【0056】
ストライプ状電極の幅は、前述のように0.01mm〜1mm、特に0.01〜0.1mmである。開口率40〜98%、特に90〜98%のものが好ましい。上記範囲に設定することにより、必要な導電性及び光透過性を確保することが容易である。メッシュ状のものも同様である。
【0057】
なお、金属電極の開口率とは、当該金属電極領域の投影面積における開口部分が占める面積割合を言う。
【0058】
金属箔等の導電性の箔をパターンエッチングしたもの場合、金属箔の金属としては、銀、銅、金、白金、パラジウム、ステンレス、アルミニウム、ニッケル、鉄、真鍮、或いはこれらの合金、好ましくは銀、銅、金、白金、パラジウム、及びニッケル、特に銅、ステンレス、アルミニウムが用いられる。
【0059】
金属箔の厚さは、薄過ぎると取扱い性やパターンエッチングの作業性等の面で好ましくなく、厚過ぎると得られるフィルムの厚さに影響を及ぼし、エッチング工程の所要時間が長くなることから、1〜100μmとするのが好ましい。
【0060】
或いは、金属電極を、透明フィルムの透明電極薄膜に導電性インキをストライプ状にパターン印刷して形成しても良い(金属印刷膜)。次のような導電性インキを用い、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法、静電印刷法等により透明基板の表面に印刷することができる。
【0061】
一般に、粒径100μm以下のカーボンブラック粒子、或いは銅、アルミニウム、ニッケル等の金属又は合金の粒子等の導電性材料の粒子を50〜90重量%濃度にPMMA、ポリ酢酸ビニル、エポキシ樹脂等のバインダ樹脂に分散させたものである。このインクは、トルエン、キシレン、塩化メチレン、水等の溶媒に適当な濃度に希釈または分散させて透明基板の板面に印刷により塗布し、その後必要に応じ室温〜120℃で乾燥させ基板上に塗着させる。上記と同様の導電性材料の粒子をバインダ樹脂で覆った粒子を静電印刷法により直接塗布し熱等で固着させる。
【0062】
このようにして形成される印刷膜の厚さは、薄過ぎると導電性が不足するので好ましくなく、厚過ぎると得られるフィルムの厚さに影響を及ぼすことから、0.5〜100μmとするのが好ましい。
【0063】
このようなパターン印刷によれば、パターンの自由度が大きく、任意の幅、厚さ及び開口率の電極を形成することができる。
【0064】
本発明では、ストライプ状の金属電極として、前記の印刷メッシュ法で行うことが好ましい。
【0065】
上記印刷メッシュ法について、図8にその金属電極の形成方法を説明する概略図を示す。まず(1)、(2)に示すように透明基板1上に水等の溶剤に対して可溶な材料を用いて電極間の形状の帯部2を印刷する。次いで、(3)に示すように、透明基板1の帯部の上及び帯部2の間の透明基板露出面のすべてを覆うように導電材料層3を形成する。帯部上にも導電材料層3が設けられるが、余り厚すぎると後の洗浄で帯部を除去できなくなる。次に、この透明基板1を水等の溶剤によって洗浄する。この際、必要に応じ、超音波照射やブラシ、スポンジ等で擦るなどの溶解促進手段を併用してもよい。導電材料層3は、金属を蒸着することにより形成することも、低抵抗が得られやすく好ましい。
【0066】
上記洗浄により、(4)に示すように可溶性の帯部2が溶解し、この帯部2上の導電材料も透明基板1から剥れて除去される。そして、帯部同士の間の領域に形成された導電材料よりなる電極4が透明基板1上に残る。この電極4は、帯部2間の領域を占めるものであるから、全体としてはストライプ状となる。
【0067】
従って、帯部2間の間隙を狭くしておくことにより、線幅の小さいストライプ状の電極4が形成される。また、各帯部2の面積を広くすることにより、開口率の大きな電極パターン4が形成される。帯部2を形成するための前記水等に対して可溶な印刷材料は、微粒子を分散させる必要のないものであり、低粘性のものでも充分使用できる。この低粘性の印刷材料を使用することにより、微細なストライプパターンとなるようにストライプを印刷することができる。なお、上記(4)の工程後、必要に応じ仕上げ洗浄(リンス)し、乾燥することが好ましい。
【0068】
上記方法において、帯部の代わりにドットを印刷すると、メッシュ状の金属電極が得られる。
【0069】
上記印刷メッシュ法において形成される塗工による電極としては、ポリマー中に無機化合物の導電性粒子が分散された塗工層を挙げることができる。
【0070】
導電性粒子を構成する無機化合物としては、例えば、アルミニウム、ニッケル、インジウム、クロム、金、バナジウム、スズ、カドミウム、銀、プラチナ、銅、チタン、コバルト、鉛等の金属、合金;或いは、酸化チタン(TiO2 )、酸化錫(SnO2 )、酸化インジウム錫(ITO、いわゆるインジウムドープ酸化スズ)、酸化アルミニウム(Al23 )、酸化インジウム(In23 )、酸化亜鉛(ZnO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化シリコン(酸化ケイ素:SiO2 )、酸化ジルコニウム(ZrO2 )、酸化スズ−酸化アンチモン(ATO、いわゆるアンチモンドープ酸化スズ)、酸化亜鉛−酸化アルミニウム(ZAO;いわゆるアルミニウムドープ酸化亜鉛)等の導電性酸化物等を挙げることができる。特に、ITOが好ましい。平均粒径は10〜10000nm、特に10〜50nmが好ましい。
【0071】
ポリマーの例としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、マレイン酸樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ポリイミド樹脂、含ケイ素樹脂等を挙げることができる。さらに、これらの樹脂のうち熱硬化性樹脂であることが好ましい。
【0072】
上記塗工による電極の形成は、ポリマー(必要により溶剤を用いて)中に上記導電性微粒子を混合等により分散させて塗工液を作製し、この塗工液を、透明基板上に塗工し、適宜乾燥、硬化させる。熱可塑性樹脂を用いた場合は、塗工後乾燥することにより、熱硬化型の場合は、乾燥、熱硬化することにより得られる。紫外線硬化性樹脂を用いた場合は、塗工後、必要に応じて乾燥し、紫外線照射することにより得られる。
【0073】
上記塗工形成された電極の厚さとしては、0.01〜5μm、特に0.05〜3μmが好ましい。前記厚さが、0.01μm未満であると、導電性が充分でないことがあり、一方5μmを超えると、得られるフィルムの透明性を低下させる場合がある。
【0074】
前記の図8で示した印刷メッシュ法において、電極を気相成膜法により形成する場合(金属蒸着膜)、その形成方法としては、特に制限はないが、スパッタリング、イオンプレーティング、電子ビーム蒸着、真空蒸着、化学蒸着等の気相製膜法や、印刷、塗工等が挙げることができるが、気相製膜法(スパッタリング、イオンプレーティング、電子ビーム蒸着、真空蒸着、化学蒸着)が好ましい。前記の金属箔の金属或いは導電性粒子を構成する無機化合物を用いて導電層を形成することができる。電極を気相成膜法で形成した場合は、その層厚は、0.01〜10μm、さらに2〜8μm、特に3〜6μmが好ましい。
【0075】
上記電極上に、さらに金属メッキ層を、導電性を向上させるためは設けることが好ましい。その場合の導電層の層厚は、1〜100μmであり、特に5〜50μmが好ましい。金属メッキ層は、公知の電解メッキ法、無電解メッキ法により形成することができる。メッキに使用される金属としては、一般に銅、銅合金、ニッケル、アルミ、銀、金、亜鉛又はスズ等を使用することが可能であり、好ましくは銅、銅合金、銀、又はニッケルであり、特に経済性、導電性の点から、銅又は銅合金を使用することが好ましい。
【0076】
本発明の太陽電池(セル)の製造方法において、上記の太陽電池用電極フィルムを、金属電極がシリコン基板の表面に接触するように載置して接着するために、熱又は光硬化型透明接着剤或いは導電性微粒子を含有する熱又は光硬化型透明接着剤が用いられる。これらの接着剤は一般にフィルム状である。
【0077】
上記熱又は光硬化型透明接着剤及び導電性微粒子を含有する熱又は光硬化型透明接着剤は、一般に以下の構成を有する。
【0078】
上記熱又は光硬化型透明接着剤は、ポリエステル不飽和化合物を含むことが好ましい。ポリエステル不飽和化合物は、不飽和多塩基酸を含む多塩基酸と多価アルコールとを反応させることによって得られる不飽和ポリエステル、或いは(メタ)アクリロイル基が導入された溶剤に可溶な飽和共重合ポリエステル等のラジカル反応硬化性のポリエステル不飽和化合物である。即ち、本発明に係るポリエステル不飽和化合物とは、 不飽和ポリエステル化合物、(メタ)アクリロイル基を有する飽和ポリエステルの2種類が好ましい。なお、溶剤に可溶な飽和共重合ポリエステルは、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸セロソルブ、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン、ソルベッソ100等に可溶である。
【0079】
上記溶剤に可溶な飽和共重合ポリエステルとしては、テレフタル酸とエチレングリコール及び/又は1,4−ブタンジオールを主たる構成成分とし、全酸成分の5〜50モル%のフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン酸等の酸成分及び/又は全アルコール成分の5〜50モル%の量で1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール等のアルコール成分を1種又は2種以上で共重合したものである。
【0080】
このような飽和共重合ポリエステルへの(メタ)アクリロイル基の導入方法としては、(1) イソシアネートアルキル(メタ)アクリレートを飽和共重合ポリエステルのヒドロキシル基と反応させる方法、(2) アルキル(メタ)アクリレートと飽和共重合ポリエステルのヒドロキシル基とのエステル交換反応による方法、(3) ジイソシアネート化合物とヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとの反応によるイソシアナトアルキル(メタ)アクリレートを飽和共重合ポリエステルのヒドロキシル基と反応させる方法を利用することができる。
【0081】
ポリエステル不飽和化合物の数平均分子量は、2000〜6000、特に3000〜5000が好ましい。
【0082】
上記熱又は光硬化型透明接着剤及び導電性微粒子を含有する熱又は光硬化型透明接着剤おいては、その物性(機械的強度、接着性、光学的特性、耐熱性、耐湿性、耐候性、架橋速度等)の改良や調節のために、樹脂組成物にアクリロイル基、メタクリロイル基又はエポキシ基を有する反応性化合物(モノマー)を含むことが好ましい。この反応性化合物としては、アクリル酸又はメタクリル酸誘導体、例えばそのエステル及びアミドが最も一般的であり、エステル残基としてはメチル、エチル、ドデシル、ステアリル、ラウリルのようなアルキル基のほかに、シクロヘキシル基、テトラヒドロフルフリル基、アミノエチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル基等が挙げられる。また、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多官能アルコールとのエステルも同様に用いられる。アミドとしては、ダイアセトンアクリルアミドが代表的である。多官能架橋助剤としては、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセリン等のアクリル酸又はメタクリル酸エステル等が挙げられる。また、エポキシ基含有化合物としては、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、フェノール(EO)5グリシジルエーテル、p−t−ブチルフェニルグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリジグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、グリシジルメタクリレート、ブチルグリシジルエーテル等が挙げられる。また、エポキシ基を含有するポリマーをアロイ化することによって同様の効果を得ることができる。耐熱、耐湿熱試験後の接着性を向上させるには、上記グリシジル基を有するモノマーの使用が好ましい。
【0083】
これらの反応性化合物は1種又は2種以上の混合物として、前記ポリエステル不飽和化合物100重量部に対し、通常0.5〜80重量部、好ましくは0.5〜70重量部添加して用いられる。この配合量が80重量部を超えると接着剤の調製時の作業性や成膜性を低下させることがある。
【0084】
本発明においては、上記硬化型透明接着剤の熱硬化のための硬化剤として有機過酸化物を使用するが、この有機過酸化物としては、70℃以上の温度で分解してラジカルを発生するものであればいずれも使用可能であるが、半減期10時間の分解温度が50℃以上のものが好ましく、成膜温度、調製条件、硬化(貼り合わせ)温度、被着体の耐熱性、貯蔵安定性を考慮して選択される。
【0085】
使用可能な有機過酸化物としては、例えば2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン3、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイド、α,α'−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、n−ブチル−4,4'−ビス (t−ブチルパーオキシ)バレレート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート、メチルエチルケトンパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキシル−2,5−ビスパーオキシベンゾエート、ブチルハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、ヒドロキシヘプチルパーオキサイド、クロロヘキサノンパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、クミルパーオキシオクトエート、サクシニックアシッドパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ(2−エチルヘキサノエート)、m−トルオイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド等を挙げることができる。これらの有機過酸化物は1種を単独で用いても2種以上を併用しても良い。
【0086】
このような有機過酸化物はポリエステル不飽和化合物100重量部に対して好ましくは0.1〜10重量部配合される。
【0087】
また、本発明においては、上記硬化型透明接着剤の光硬化のために、光によってラジカルを発生する光増感剤を配合するが、この光増感剤(光重合開始剤)としては、ラジカル光重合開始剤が好適に用いられる。ラジカル光重合開始剤のうち、水素引き抜き型開始剤としてベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−ベンゾイル−4'−メチルジフェニルサルファイド、イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、4−(ジエチルアミノ)安息香酸エチル等が使用可能である。また、ラジカル光重合開始剤のうち、分子内開裂型開始剤としてベンゾインエーテル、ベンゾイルプロピルエーテル、ベンジルジメチルケタール、α―ヒドロキシアルキルフェノン型として、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、アルキルフェニルグリオキシレート、ジエトキシアセトフェノンが、また、α―アミノアルキルフェノン型として、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパノン−1、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1が、またアシルフォスフィンオキサイド等が用いられる。これらの光増感剤は1種を単独で用いても2種以上を併用しても良い。
【0088】
このような光増感剤はポリエステル不飽和化合物100重量部に対して好ましくは0.1〜10重量部配合される。
【0089】
本発明の上記硬化型透明接着剤には、接着促進剤としてシランカップリング剤を添加することが好ましい。シランカップリング剤としては、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等の1種又は2種以上の混合物が用いられる。
【0090】
これらのシランカップリング剤の添加量は、ポリエステル不飽和化合物100重量部に対し通常0.01〜5重量部で充分である。
【0091】
また、本発明の上記硬化型透明接着剤には、加工性や貼り合わせ性等の向上の目的で炭化水素樹脂を含むことができる。この場合、炭化水素樹脂は天然樹脂系、合成樹脂系のいずれでもよい。天然樹脂系では、ロジン、ロジン誘導体、テルペン系樹脂が好適に用いられる。ロジンではガム系樹脂、トール油系樹脂、ウッド系樹脂を用いることができる。ロジン誘導体としてはロジンをそれぞれ水素化、不均一化、重合、エステル化、金属塩化したものを用いることができる。テルペン系樹脂ではα−ピネン、β−ピネン等のテルペン系樹脂の他、テルペンフェノール樹脂を用いることができる。また、その他の天然樹脂としてダンマル、コバル、シェラックを用いてもよい。一方、合成樹脂系では石油系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン系樹脂が好適に用いられる。石油系樹脂では脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、共重合系石油樹脂、水素化石油樹脂、純モノマー系石油樹脂、クマロンインデン樹脂を用いることができる。フェノール系樹脂ではアルキルフェノール樹脂、変性フェノール樹脂を用いることができる。キシレン系樹脂ではキシレン樹脂、変性キシレン樹脂を用いることができる。
【0092】
このような炭化水素樹脂の添加量は適宜選択されるが、ポリエステル不飽和化合物100重量部に対して1〜200重量部が好ましく、更に好ましくは1〜100重量部である。
【0093】
以上の添加剤のほか、本発明の上記硬化型透明接着剤には、老化防止剤、紫外線吸収剤、染料、加工助剤等を本発明の目的に支障をきたさない範囲で用いてもよい。
【0094】
導電性粒子含有硬化型透明接着剤に使用される導電性微粒子としては、電気的に良好な導体であれば良く、種々のものを使用することができる。例えば、銅、銀、ニッケル等の金属ないし合金粉末、このような金属又は合金で被覆された樹脂又はセラミック粉体等を使用することができる。また、その形状についても特に制限はなく、りん片状、樹枝状、粒状、ペレット状等の任意の形状をとることができる。
【0095】
なお、導電性粒子としては、弾性率が1.0×107〜1.0×1010Paであるものが好ましい。即ち、本発明のプラスチックフィルムを基材とする太陽電池用電極フィルム、或いはシリコン基板等の被接着体の接着で導電性粒子含有硬化型透明接着剤フィルム(異方性導電フィルム)を使用する場合、導電性粒子として弾性率の高いものを用いると、被接着体にクラックが生じる等の破壊や圧着後の粒子の弾性変形回復によるスプリングバック等が発生し、安定した導通性能を得ることができない恐れがあるため、上記弾性率範囲の導電性粒子を用いることが好ましい。これにより、被接着体の破壊を防止し、圧着後の粒子の弾性変形回復によるスプリングバックの発生を抑制し、導電性粒子の接触面積を広くすることが可能になって、より安定した信頼性の高い導通性能を得ることができる。なお、弾性率が1.0×107Paより小さいと、粒子自身の損傷が生じ、導通特性が低下する場合があり、1.0×1010Paより大きいと、スプリングバックの発生が生じる恐れがある。このような導電性粒子としては、上記のような弾性率を有するプラスチック粒子の表面を前述の金属又は合金で被覆したものが好適に用いられる。
【0096】
本発明において、このような導電性粒子の含有量は、前記ポリエステル不飽和化合物に対して0.1〜15容量%であることが好ましく、また、この導電性粒子の平均粒径は0.1〜100μmであることが好ましい。このように、含有量及び粒径を規定することにより、隣接した回路間で導電性粒子が凝縮し、短絡し難くなり、良好な導電性を得ることができるようになる。
【0097】
導電性粒子含有硬化型透明接着剤は、このような導電性粒子を硬化性接着剤中に分散させてなるものであるが、この硬化性接着剤としては、メルトインデックス(MFR)が1〜3000、特に1〜1000、とりわけ1〜800であることが好ましく、また、70℃における流動性が105Pa・s以下であることが好ましく、従って、このようなMFR及び流動性が得られるように前記ポリエステル不飽和化合物や各種添加剤の配合を適宜調整することが望ましい。
【0098】
上記の硬化性透明接着剤(フィルム)は、前記ポリエステル不飽和化合物樹脂を前述の添加剤、必要により導電性粒子と所定の配合で均一に混合し、押出機、ロール等で混練した後、カレンダーロール、Tダイ押出、インフレーション等の成膜法により所定の形状に成膜することにより製造される。なお、成膜に際しては、ブロッキング防止、被着体との圧着を容易にするため等の目的で、エンボス加工を施してもよい。
【0099】
このようにして得られた硬化性接着剤フィルムを被着体と貼り合わせるには、前述の方法に加えて、常法、例えば、熱プレスによる貼り合わせ法や、押出機、カレンダーによる直接ラミネート法、フィルムラミネーターによる加熱圧着法等の手法を用いることができる。
【0100】
本発明の硬化性透明接着剤フィルムにおける硬化条件としては、熱硬化の場合は、用いる有機過酸化物の種類に依存するが、通常70〜170℃、好ましくは70〜150℃で、通常10秒〜120分、好ましくは20秒〜60分である。
【0101】
また、光増感剤を用いる光硬化の場合は、光源として紫外〜可視領域に発光する多くのものが採用でき、例えば超高圧、高圧、低圧水銀灯、ケミカルランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、マーキュリーハロゲンランプ、カーボンアーク灯、白熱灯、レーザー光等が挙げられる。照射時間は、ランプの種類、光源の強さによって一概には決められないが、数十秒〜数十分程度である。
【0102】
また、硬化促進のために、予め得られた積層体を40〜120℃に加温し、これに紫外線を照射しても良い。
【0103】
導電性微粒子含有硬化性透明接着剤(異方性導電フィルム)においては、上記接着時の加圧で、加圧方向(フィルム厚さ方向)に導電性が生じるが、この加圧力は適宜選定され、通常3MPa、特に2〜3MPaの加圧力とすることが好ましい。
【0104】
上記異方性導電フィルムは、フィルム厚さ方向に10Ω以下、特に5Ω以下の導電性を有し、面方向の抵抗は106Ω以上、特に109Ω以上であることが好ましい。
【0105】
以上のようにして得られる太陽電池(セル)は、前記図2〜5に示したような基本構成を有する。図9に結晶シリコン系太陽電池の代表例を、図10にアモルファスシリコン系太陽電池の代表例を示す。
【0106】
図9において、厚さ300〜500nm程度のP型多結晶のシリコン基板99A、その一方の表面にn型層99B、その上に本発明の金属電極93、硬化型透明接着剤の硬化層94、透明電極薄層92及び透明フィルム91が設けられ、シリコン基板(i型)99Aの他方の表面にはn型層99C及び裏面電極100が設けられている。n型層99Bと金属電極93との間には、反射防止膜が一般に設けられる。透明フィルム91は適宜除去することもできる。
【0107】
図10において、トップセル層(p型、i型、n型の積層体)109A、その一方の表面に本発明の金属電極103、硬化型透明接着剤の硬化層104、透明電極薄層102及び透明フィルム101が設けられ、トップセル層(p型、i型、n型の積層体)109Aの他方の表面には、ボトムセル層(p型、i型、n型の積層体)109B、裏面電極110B、透明フィルム110A及び裏面電極110Cが設けられている。n型層109Bと金属電極103との間には、反射防止膜が一般に設けられる。裏面電極110Cは設けられなくても良い。透明フィルム101は適宜除去することもできる。
【0108】
また、上記図9及び10で示した太陽電池において、本発明では金属電極と裏面電極等との配線が容易であること示すために、図11に本発明の太陽電池及びその製造方法の例を、アモルファスシリコン系太陽電池を例にとって示す。
【0109】
図11(1)には、アモルファスシリコン系太陽電池を製造するために使用する本発明の太陽電池用電極フィルムの平面図が示されている。長尺状の透明フィルム111の表面に各太陽電池セル用のメッシュ状の金属電極113(べた電極部113Aを含む)が複数形成されおり、透明フィルム111とメッシュ電極113との間には透明電極112が設けられている。
【0110】
上記太陽電池用電極フィルムを、図11(2)に示すように、裏面側の透明フィルム120Aに接着剤114Bにより接着された太陽電池セル119を備えた裏面電極120Bに、硬化型透明接着剤114Aを介して押圧、加熱等により接合、一体化する。このように接合することにより、太陽電池セル上に本発明の金属電極を形成することができるだけでなく、金属電極と裏面電極の連結をも、この1回の接合で同時に行うことができる。しかも連続的にこのような接合を行うことができるので、生産性においても極めて優れている。得られた太陽電池を図11(3)に示す。114B’は接着剤の硬化層、114A’は硬化型透明接着剤の硬化層である。
【0111】
本発明の太陽電池において、上記の態様以外に、例えば、透明フィルムの透明電極薄膜上の端部に、金属電極に加えて、太陽電池セルを取り付ける部分、及び太陽電池セル間の配線を形成しておき、これらを光電変換素子に同時に形成することができ、これにより、電極形成後、他のセルとの結合をハンダ等で行う等の煩雑な作業を行う必要もない。
【0112】
上記太陽電池の構造は代表的なものにすぎず、シリコンからなる光電変換素子を用いる太陽電池で、本発明の特定の構成、即ち透明フィルム、透明電極、金属電極及び硬化型透明接着剤を含むものであれば全てのシリコン系太陽電池が本発明の太陽電池に当たる。
【0113】
本発明の太陽電池を用いたモジュールは、例えば、前述の図12に示すように、表面側透明保護部材121及び裏面側透明保護部材122の間に配置された本発明の複数の太陽電池用セル124が、表面側封止膜123A及び裏面側封止膜123Bによって封止された構造を一般に採用している。なお、本発明において、太陽電池セルに対して受光面側を「表面側」と称し、太陽電池用セルの受光面とは反対面側を「裏面側」とする。
【0114】
上記の太陽電池モジュールでは、表面側透明保護部材121と太陽電池セル124との間に配置される表面側封止膜123Aは、エチレン・酢酸ビニル共重合体を含む表面側封止膜用組成物が硬化した透明フィルムであり、一方裏面側保護部材122と太陽電池セル124との間に配置される裏面側封止膜123Bは、エチレン・酢酸ビニル共重合体及び白色無機顔料を含む裏面側封止膜用組成物が硬化した膜である。
【0115】
表面側に用いられる封止膜は、エチレン・酢酸ビニル共重合体を含む表面側封止膜用組成物を成膜したもの(表面側硬化前封止膜)を、硬化(架橋)させることにより得られる。表面側封止膜用組成物は、エチレン・酢酸ビニル共重合体の他に必要に応じて、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール(PVB樹脂)、変性PVBなどのポリビニルアセタール系樹脂、塩化ビニル樹脂を、併用しても良いが、エチレン・酢酸ビニル共重合体のみを用いることが好ましい。
【0116】
上記エチレン・酢酸ビニル共重合体としては、エチレン・酢酸ビニル共重合体における酢酸ビニルの含有量が、エチレン・酢酸ビニル共重合体100質量部に対して10〜40質量部、特に20〜30質量部であることが好ましい。酢酸ビニルの含有量が、下限未満であると、高温で架橋硬化させる場合に得られる樹脂膜の透明度が充分でなくなる恐れがあり、上限を超えると、加工性が低下する恐れがある。
【0117】
裏面側封止膜は、エチレン・酢酸ビニル共重合体及び白色無機顔料を含む裏面側封止膜用組成物を成膜したもの(裏面側硬化前封止膜)を、硬化させることにより得られる。エチレン・酢酸ビニル共重合体等の樹脂は、上記表面側封止膜用組成物と同じものが使用可能である。裏面側封止膜と表面側封止膜との界面における光の反射や均一に分散された白色無機顔料による乱反射で、太陽電池セル同士の間に入射した光や、セルを通過した光を乱反射させ、再度セルに入射させることができるようになり、太陽電池に入射した光の利用効率が高まり、発電効率を向上させることができる。
【実施例】
【0118】
以下、本発明を実施例により説明する。本発明は、以下の実施例により制限されるものではない。
【0119】
[実施例1]
本発明の太陽電池用電極フィルムが、光電変換素子上に設けられた場合、高い開口率で低い全抵抗を有することを示すために、図1(2)の透明電極の裏面にアモルファスシリコン層が形成された積層体を用いて実験を行った。
【0120】
<太陽電池用電極フィルムの作製>
ポリエチレンテレフタレートフィルム(幅:1000mm、長さ1000mm;L(図1(2)=500mm)の表面に、スパッタリングによりITOを蒸着し、ITOの透明電極薄膜(厚さ:26nm(=t))を形成した。
【0121】
ITOの透明電極薄膜上に、ポリビニルアルコールの20%水溶液を、所定の電極間の形状(帯状)を印刷した。帯部同士間の間隔は開口率を満足するように変化させ、帯部の幅(d)を0.005〜1mmに変化させた。印刷厚さは、乾燥後で約5μmである。
【0122】
その上に、銅を平均膜厚0.1μmとなるように真空蒸着した。次いで、常温の水に浸漬し、スポンジで擦ることにより帯部を溶解除去し、次いで水でリンスした後、乾燥してPETフィルム上に透明電極薄膜及び金属電極前駆層(導電層)を形成した。
【0123】
金属電極前駆層にさらに以下の条件で銅メッキを施し、透明電極薄膜及び金属電極を有する太陽電池用電極フィルムを得た。
【0124】
(電気めっき液)
硫酸銅:70g/L、 濃硫酸:200g/L、 塩酸(37質量%):15g/L
電流密度:2A/dm2
時間:100秒。
【0125】
このフィルム表面の電極は、正確にストライプのネガパターンに対応したストライプ状のものであり、線幅は1mm、帯部の幅(d)に対応して開口率は90〜97%であった。また、電極(銅層)の平均厚さは10μmであった。
【0126】
<半導体層付き太陽電池用電極フィルムの作製>
市販のポリイミドフィルムであるカプトン(東レ・デュポン株式会社商標)200V(厚さ50μm)に、スパッタリング装置にてステンレススチールターゲットよりフィルム上に厚さ100nmのステンレススチール製電極を形成した。次いで、真空反応器中の支持電極上に上記処理フィルムを設置し、反応器内を一旦10-5Torrに排気し、支持電極の温度を300℃に高めた後、対抗電極と支持電極に30Wの13.56MHzの高周波電圧を印加しつつアルゴンガスを器内に導入して1Torrのアルゴン雰囲気下でプレスパッタし、次いで水素ガスで10%に希釈したSiH4同様に水素ガスで1%に希釈したPH3ガスを導入し、0.8Torrの雰囲気化でフィルム上に200オングストロームのn型アモルファスシリコン層を形成する。引き続き、SiH4のみを導入し、厚さ6000オングストロームのi型アモルファスシリコン層を積層し、さらにSiH4ガス中に1%のB26を含有するものを導入し、厚さ200オングストロームのp型アモルファスシリコン層を形成した。こうして合計100nmのp型アモルファスシリコン層を形成した。
【0127】
次いでこのアモルファスシリコン半導体層上に、太陽電池用電極フィルムからPETを除去し、このpin型アモルファスシリコン半導体層上に、透明電極がアモルファスシリコン半導体層と接触するように、導電性微粒子含有硬化性接着剤を介して載置し、150℃、20分加熱して半導体層付き太陽電池用電極フィルム(太陽電池)を得た。
【0128】
<評価>
得られた半導体層付き太陽電池用電極フィルムは以下の特性を有する:
アモルファスシリコン半導体層
体積固有抵抗率=1.0×10-4Ω・cm
透明電極薄膜
体積固有抵抗率ρ12=5.2×10-4Ω・cm
厚さt=26nm
金属電極
体積固有抵抗率ρ13=1.7×10-6Ω・cm
厚さh=10μm
幅d=0.005〜1mm
長さ2L=1000mm
開口率90〜97%
金属電極間距離2W=0.45〜16.2mm(開口率90%の時2W=0.45〜4.5mmで、開口率97%の時2W=1.62〜16.2mm)
【0129】
上記条件で、実施例1に基づき開口率90〜97%で変化させながら太陽電池用電極フィルムを得、全抵抗と金属電極幅dとの関係を示すグラフを得た。図13に示す。グラフより、開口率97%の高い開口率であっても、上記条件において、金属電極幅d0.05〜0.5mm程度の比較的広い幅において低い全抵抗値を示している。
【0130】
金属電極幅d0.05〜0.5mmでは、金属電極の厚さ(μm)×金属電極の厚さ幅(mm)の値:0.5〜5;金属電極の厚さ(μm)×金属電極の厚さ幅(mm)×透明電極薄膜の厚さ(nm)の値:12.8〜128の範囲となる。
【0131】
[実施例2]
実施例1と同様の手順で、下記の寸法、特性を有する半導体層付き太陽電池用電極フィルムを得た。
【0132】
<評価>
得られた半導体層付き太陽電池用電極フィルムは以下の特性を有する:
アモルファスシリコン半導体層
体積固有抵抗率=1.0×10-4Ω・cm
透明電極薄膜
体積固有抵抗率ρ12=4.0×10-4Ω・cm
厚さt=300nm
金属電極
体積固有抵抗率ρ13=1.6×10-6Ω・cm
厚さh=30μm
幅d=0.005〜1mm
長さ2L=1000mm
開口率90〜97%
金属電極間距離2W=0.08〜32.3mm(開口率90%の時2W=0.08〜9.0mmで、開口率97%の時2W=0.3〜32.3mm)
【0133】
上記条件で、実施例1に基づき開口率90〜97%で変化させながら太陽電池用電極フィルムを得、全抵抗と金属電極幅dとの関係を示すグラフを得た。図14に示す。グラフより、開口率97%の高い開口率であっても、上記条件において、金属電極幅d0.01〜1mm程度の広い範囲において、低い全抵抗値を示している。
【0134】
金属電極幅d0.01〜1mmでは、金属電極の厚さ(μm)×金属電極の厚さ幅(mm)の値:0.3〜30;金属電極の厚さ(μm)×金属電極の厚さ幅(mm)×透明電極薄膜の厚さ(nm)の値:90〜9000の範囲となる。
【0135】
[実施例3]
実施例1と同様の手順で、下記の寸法、特性を有する半導体層付き太陽電池用電極フィルムを得た。
【0136】
<評価>
得られた半導体層付き太陽電池用電極フィルムは以下の特性を有する:
アモルファスシリコン半導体層
体積固有抵抗率=1.0×10-4Ω・cm
透明電極薄膜
体積固有抵抗率ρ12=5.2×10-4Ω・cm
厚さt=26nm
金属電極
体積固有抵抗率ρ13=6.0×10-6Ω・cm
厚さh=100μm
幅d=0.005〜1mm
長さ2L=1000mm
開口率90〜97%
金属電極間距離2W=0.08〜3.2mm(開口率90%の時2W=0.08〜0.9mmで、開口率97%の時2W=0.3〜3.2mm)
【0137】
上記条件で、実施例1に基づき開口率90〜97%で変化させながら太陽電池用電極フィルムを得、全抵抗と金属電極幅dとの関係を示すグラフを得た。図15に示す。グラフより、開口率97%の高い開口率であっても、上記条件において、金属電極幅d0.01〜0.1mm程度の範囲において、低い全抵抗値を示している。
【0138】
金属電極幅d0.01〜0.1mmでは、金属電極の厚さ(μm)×金属電極の厚さ幅(mm)の値:1〜10;金属電極の厚さ(μm)×金属電極の厚さ幅(mm)×透明電極薄膜の厚さ(nm)の値:26〜260の範囲となる。
【0139】
[参考例1]
実施例1において、金属電極の体積固有抵抗率ρ13=1.0×10-4Ω・cmとした以外同様にして半導体層付き太陽電池用電極フィルムを得た。
【0140】
上記条件で、開口率90〜97%で変化させながら太陽電池用電極フィルムを得、全抵抗と金属電極幅dとの関係を示すグラフを得た。金属電極の体積固有抵抗値ρ13=1.0×10-4Ω・cmと高いため、高い開口率で低い全抵抗値が得られなかった。
【0141】
[参考例2]
実施例2において、金属電極の厚さを3μmとした以外同様にして半導体層付き太陽電池用電極フィルムを得た。
【0142】
上記条件で、開口率90〜97%で変化させながら太陽電池用電極フィルムを得、全抵抗と金属電極幅dとの関係を示すグラフを得た。金属電極の厚さが薄いため、高い開口率で低い全抵抗値が得られなかった。
【0143】
[参考例3]
実施例3において、金属電極の厚さを0.1μmとした以外同様にして半導体層付き太陽電池用電極フィルムを得た。
【0144】
上記条件で、開口率90〜97%で変化させながら太陽電池用電極フィルムを得、全抵抗と金属電極幅dとの関係を示すグラフを得た。金属電極の厚さが薄いため、高い開口率で低い全抵抗値が得られなかった。
【0145】
[実施例4]
<太陽電池用電極フィルムの作製>
長尺状ポリエチレンテレフタレートフィルム(幅:600mm、長さ100m)の表面に、スパッタリングによりITOを蒸着し、ITOの透明電極薄膜(厚さ:20nm)を形成した。
【0146】
ITOの透明電極薄膜上に、ポリビニルアルコールの20%水溶液を、所定の電極間の形状(帯状)を印刷した。帯部同士間の間隔は100μmであり、帯部の幅が10mmである。印刷厚さは、乾燥後で約5μmである。
【0147】
その上に、銅を平均膜厚0.1μmとなるように真空蒸着した。次いで、常温の水に浸漬し、スポンジで擦ることにより帯部を溶解除去し、次いで水でリンスした後、乾燥してPETフィルム上に透明電極薄膜及び金属電極前駆層(導電層)を形成した。
【0148】
金属電極前駆層にさらに以下の条件で銅メッキを施し、透明電極薄膜及び金属電極を有する太陽電池用電極フィルムを得た。
【0149】
(電気めっき液)
硫酸銅:70g/L、 濃硫酸:200g/L、 塩酸(37質量%):15g/L
電流密度:2A/dm2
時間:100秒。
【0150】
このフィルム表面の電極は、正確にストライプのネガパターンに対応したストライプ状のものであり、線幅は0.1mm、開口率は97%であった。また、電極(銅層)の平均厚さは10μmであった。
【0151】
<太陽電池の作製>
飽和ポリエステルの水酸基をメタクリロキシ基に置換したポリマー((株)帝人製ポリエステル「UE3600」の水酸基をメタクリル変性したもの)のトルエン25重量%溶液を調製し、このポリマー100質量部に対して、
2質量部のベンゾイルパーオキサイド、3質量部のリン酸メタクリレート(P1M;共栄化学(株)製)、20質量部のポリエチレングリコールジアクリレート、0.5質量部のシランカップリング剤(γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)、及び4質量部の導電性微粒子(16GNR10.0MX;日本化学工業(株)製);
を混合し、これをバーコーターによりセパレーターであるPET上に塗布し、幅5mm、厚さ15μmの導電性微粒子含有硬化性接着剤フィルムを成膜した。
【0152】
P型多結晶であるシリコン基板を用意し、かつ、PSG膜を形成したうえでの熱処理を実行することによって深さが0.3μm程度とされたn型層をシリコン基板の一面側に形成した後、このシリコン基板の他面上にAlペーストをスクリーン印刷法でもって印刷し、近赤外線炉中で焼成することによってp型層と裏面電極とを形成した。次いで、n型層上に反射防止膜を形成したうえ、その上に、上記導電性微粒子含有硬化性接着剤フィルムを載置し、PETを除去し、導電性微粒子含有硬化性接着剤フィルム上に、前記太陽電池用電極フィルムを、電極が接着剤と接触するように載置し、150℃、20分加熱して太陽電池を得た。
【0153】
得られた太陽電池は生産性に優れたものであったが、シート抵抗は、従来のものに匹敵するものであった。
【0154】
[実施例5]
実施例4において、太陽電池の作製を下記のように行った以外は同様にして太陽電池を得た。
【0155】
<太陽電池の作製>
実施例1と同様にして導電性微粒子含有硬化性接着剤フィルムを成膜した。
【0156】
市販のポリイミドフィルムであるカプトン(東レ・デュポン株式会社商標)200V(厚さ50μm)に、スパッタリング装置にてステンレススチールターゲットよりフィルム上に厚さ100nmのステンレススチール製電極を形成した。次いで、真空反応器中の支持電極上に上記処理フィルムを設置し、反応器内を一旦10-5Torrに排気し、支持電極の温度を300℃に高めた後、対抗電極と支持電極に30Wの13.56MHzの高周波電圧を印加しつつアルゴンガスを器内に導入して1Torrのアルゴン雰囲気下でプレスパッタし、次いで水素ガスで10%に希釈したSiH4同様に水素ガスで1%に希釈したPH3ガスを導入し、0.8Torrの雰囲気化でフィルム上に200オングストロームのn型アモルファスシリコン層を形成する。引き続き、SiH4のみを導入し、厚さ6000オングストロームのi型アモルファスシリコン層を積層し、さらにSiH4ガス中に1%のB26を含有するものを導入し、厚さ200オングストロームのp型アモルファスシリコン層を形成した。
【0157】
次いでこのpin型アモルファスシリコン半導体層を形成したフィルムに、上記導電性微粒子含有硬化性接着剤フィルムを載置し、PETを除去し、導電性微粒子含有硬化性接着剤フィルム上に、前記太陽電池用電極フィルムを、電極が接着剤と接触するように載置し、150℃、20分加熱して太陽電池を得た。
【0158】
得られた太陽電池は生産性に優れたものであったが、シート抵抗は、従来のものに匹敵するものであった。
【図面の簡単な説明】
【0159】
【図1】(1)は本発明の太陽電池用電極フィルムの基本構造の概略断面図であり、(2)は(1)の太陽電池用電極フィルムの部分拡大斜視図である。
【図2】本発明の太陽電池用電極フィルムを用いて、結晶シリコン系太陽電池を製造する方法の1例を説明する図である。
【図3】本発明の太陽電池用電極フィルムを用いて、結晶シリコン系太陽電池を製造する方法の別の1例を説明する図である。
【図4】本発明の太陽電池用電極フィルムを用いて、アモルファスシリコン系太陽電池を製造する方法の1例を説明する図である。
【図5】本発明の別の太陽電池用電極フィルムを用いて、アモルファスシリコン系太陽電池を製造する方法の別の1例を説明する図である。
【図6】本発明の結晶シリコン系太陽電池を連続的に製造する方法の1例を示す概略図である。
【図7】本発明のアモルファスシリコン系太陽電池を連続的に製造する方法の1例を示す概略図である。
【図8】本発明のストライプ状の金属電極の形成方法を説明するための概略図である。
【図9】本発明の結晶シリコン系太陽電池の1例を示す概略図である。
【図10】本発明のアモルファスシリコン系太陽電池の1例を示す概略図である。
【図11】配線の状態を示す本発明の太陽電池及びその製造方法の例を示す概略図である。
【図12】本発明の太陽電池を含む太陽電池モジュールの1例を示す概略図である。
【図13】実施例1で得られた開口率90〜97で、全抵抗と金属電極幅dとの関係を示すグラフである。
【図14】実施例2で得られた開口率90〜97で、全抵抗と金属電極幅dとの関係を示すグラフである。
【図15】実施例3で得られた開口率90〜97で、全抵抗と金属電極幅dとの関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0160】
11、21,31,41、51,61,71 透明フィルム
12、22,32,42,52,62,72 透明電極薄膜
13、23,33,43,53,63,73 金属電極
24A,44A 熱又は光硬化型透明接着剤
34B,55B 導電性微粒子含有熱又は光硬化型透明接着剤
25、35,45,55,65,75 光電変換素子
121 表面側透明保護部材
122 裏面側保護部材
123A 表面側封止膜
123B 裏面側封止膜
124 太陽電池セル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明フィルム、その表面に設けられた透明電極薄膜、及び透明電極薄膜上にストライプ状又はメッシュ状に金属電極からなるシリコン系太陽電池用電極フィルムであって、
透明電極薄膜の厚さが10〜400nmの範囲にあり、そして金属電極の厚さが1〜200μmの範囲にあり、その幅が0.01〜1.0mmの範囲にあることを特徴とする太陽電池用電極フィルム。
【請求項2】
金属電極がストライプ状に設けられている請求項1に記載の太陽電池用電極フィルム。
【請求項3】
金属電極の体積固有抵抗率が、1.0×10-7〜1.0×10-4Ω・cmの範囲にあり、透明電極薄膜の体積固有抵抗率が、1.0×10-5〜1.0×10-3Ω・cmの範囲にある請求項1又は2に記載の太陽電池用電極フィルム。
【請求項4】
金属電極の厚さ(μm)×金属電極の厚さ幅(mm)の値が、0.1〜50の範囲である請求項1〜3のいずれか1項に記載の太陽電池用電極フィルム。
【請求項5】
金属電極の厚さ(μm)×金属電極の厚さ幅(mm)×透明電極薄膜の厚さ(nm)の値が、10〜10000の範囲である請求項1〜4のいずれか1項に記載の太陽電池用電極フィルム。
【請求項6】
開口率90%以上である請求項1〜5のいずれか1項に記載の太陽電池用電極フィルム。
【請求項7】
金属電極の厚さが5〜50μmの範囲にある請求項1〜6のいずれか1項に記載の太陽電池用電極フィルム。
【請求項8】
金属電極の幅が0.05〜0.5mmの範囲にある請求項1〜7のいずれか1項に記載の太陽電池用電極フィルム。
【請求項9】
金属電極が、金属蒸着膜、或いは金属蒸着膜及びその表面に設けられたメッキ層からなる請求項1〜8のいずれか1項に太陽電池用電極フィルム。
【請求項10】
金属電極が、金属粒子とバインダ樹脂からなる金属印刷膜、或いは該金属印刷膜及びその表面に設けられたメッキ層からなる請求項1〜9のいずれか1項に太陽電池用電極フィルム。
【請求項11】
金属電極が、銀、銅、金、白金、パラジウム、及びニッケルから選択される少なくとも1種の金属を含有している請求項1〜10のいずれか1項に記載の太陽電池用電極フィルム。
【請求項12】
透明電極薄膜が、金属酸化物から形成されている請求項1〜11のいずれか1項に記載の太陽電池用電極フィルム。
【請求項13】
金属酸化物が、酸化チタン、酸化錫、酸化アルミニウム、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化シリコン、酸化ジルコニウム、酸化スズ−酸化アンチモン(ATO)、酸化亜鉛−酸化アルミニウム(ZAO)からなる群から選ばれた少なくとも1種である請求項12に記載の太陽電池用電極フィルム。
【請求項14】
透明フィルムが、長尺状フィルムである請求項1〜13のいずれか1項に記載の太陽電池用電極フィルム。
【請求項15】
シリコン系光電変換素子の表面に、熱又は光硬化型透明接着剤或いは導電性微粒子を含有する熱又は光硬化型透明接着剤を介して、請求項1〜14のいずれか1項に記載の太陽電池用電極フィルムを、金属電極が光電変換素子の表面に接触するように載置、圧着し、圧着と同時に又は圧着後、透明接着剤を硬化させることを特徴とする太陽電池の製造方法。
【請求項16】
熱又は光硬化型透明接着剤が、ポリエステル不飽和化合物を含んでいる請求項15に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項17】
ポリエステル不飽和化合物が、不飽和ポリエステル、又は(メタ)アクリロイル基を有する飽和ポリエステルである請求項16に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項18】
導電性微粒子を含有する熱又は光硬化型透明接着剤が、導電性微粒子をポリエステル不飽和化合物に対して0.1〜15容量%含んでいる請求項16又は17に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項19】
導電性微粒子の平均粒径が、0.1〜100μmの範囲にある請求項15〜18のいずれか1項に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項20】
熱又は光硬化型透明接着剤及び導電性微粒子を含有する熱又は光硬化型透明接着剤が、シート状である請求項15〜19のいずれか1項に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項21】
光電変換素子が、結晶シリコン層又はアモルファスシリコン層を含む請求項15〜20のいずれか1項に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項22】
シリコン系光電変換素子の表面に、請求項1〜14のいずれか1項に記載の太陽電池用電極フィルムが、金属電極が光電変換素子の表面に接触するように設けられ、且つ金属電極間の空隙が、熱又は光硬化型透明接着剤又は導電性微粒子を含有する熱又は光硬化型透明接着剤の硬化物で埋められていることを特徴とする太陽電池。
【請求項23】
光電変換素子が、結晶シリコン層又はアモルファスシリコン層を含む請求項22に記載の太陽電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−99574(P2009−99574A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−266473(P2007−266473)
【出願日】平成19年10月12日(2007.10.12)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】