説明

太陽電池裏面保護膜用易接着性ポリエステルフィルムおよびそれを用いた太陽電池裏面保護膜

【課題】 優れた機械的性質、耐熱性および耐湿性を備えながら、EVAとの密着性に優れたポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】 ポリエステルフィルムおよびそのうえに塗設された皮膜からなり、皮膜はポリビニルアルコール(A)を含む塗液をフィルムに塗布して形成されることを特徴とする、太陽電池裏面保護膜用易接着性ポリエステルフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は太陽電池裏面保護膜用易接着性ポリエステルフィルムに関し、詳しくは、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に易接着性塗膜を備え、太陽電池の封止樹脂であるエチレン−酢酸ビニル共重合体(以下、EVAと略す場合がある)と優れた接着を示す太陽電池裏面保護膜用易接着性ポリエステルフィルムおよびそれを用いた太陽電池裏面保護膜に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光発電システムは、クリーンエネルギーを利用する発電手段の一つとして、普及が進んでいる。太陽電池モジュールの構造は、例えば実開平6−38264号公報に記載があるように、一般的には、受光側のガラス基板と、裏面保護膜との間に、複数の板状太陽電池素子を挟み、内部の隙間に封止樹脂を充填した構造となっている。封止樹脂として、透明性が高く、耐湿性が優れていることから、EVA樹脂が用いられる。
【0003】
裏面保護膜としては、例えば特開平11−261085号公報、特開平11−186575号公報などに、ポリエチレン系樹脂やポリエステル系樹脂シート、フッ素樹脂フィルムが用いられることが記載されている。しかし、これらの保護膜は、EVAとの接着性が必ずしも十分でなく長期耐久性に不安が残る。
【0004】
ところで、ポリエステルフィルム、特にポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートの二軸延伸フィルムは、優れた機械的性質、耐熱性、耐湿性を備え、太陽電池裏面保護膜としても優れた性能を有する。しかし、ポリエステルフィルム、特に二軸延伸し、高度に配向結晶化したポリエステルフィルムは、その表面が不活性であり、EVAとの接着性は極めて悪い。
【0005】
ポリエステルフィルムとEVAとの接着性を改善するために、特開2003−60218号公報には、スチレン・オレフィン共重合体樹脂からなる熱接着層を積層することが提案されている。しかし、その効果は十分でなく、特に大型の太陽光発電システムを構築する際には使用できないものであった。
【0006】
【特許文献1】特開平11−261085号公報
【特許文献2】特開平11−186575号公報
【特許文献3】特開2003−60218号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる従来技術の問題点を解消し、優れた機械的性質、耐熱性および耐湿性を備えながら、EVAとの密着性に優れた太陽電池裏面保護膜用易接着性ポリエステルフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明は、ポリエステルフィルムおよびそのうえに塗設された皮膜からなり、皮膜はポリビニルアルコール(A)を含む塗液をフィルムに塗布して形成されることを特徴とする、太陽電池裏面保護膜用易接着性ポリエステルフィルムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、かかる従来技術の問題点を解消し、優れた機械的性質、耐熱性および耐湿性を備えながら、EVAとの密着性に優れたポリエステルフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
[ポリエステルフィルム]
[ポリエステル]
ポリエステルフィルムを構成するポリエステルとしては、芳香族ポリエステルを用いることができる。例えばテレフタル酸、イソフタル酸、2,6―ナフタレンジカルボン酸、4,4′―ジフェニルジカルボン酸といった芳香族ジカルボン酸成分と、例えばエチレングリコール、1,4―ブタンジオール、1,4―シクロヘキサンジメタノール、1,6―ヘキサンジオールといったジオール成分とから構成される芳香族ポリエステルを用いるとよい。特に、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン―2,6―ナフタレンジカルボキシレートが好ましい。なお、ポリエステルは、共重合ポリエステルであってもよい。
【0011】
ポリエステルには、製膜時のフィルムの巻取り性や、太陽電池用裏面保護膜加工工程におけるフィルムの搬送性等を良くするため、必要に応じて滑剤として微粒子を含有させてもよい。かかる微粒子としては、無機微粒子、有機微粒子のいずれを用いてもよい。無機微粒子とて、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、カオリン、酸化珪素、酸化亜鉛を例示することができる。有機微粒子として、架橋アクリル樹脂粒子、架橋ポリスチレン樹脂粒子、尿素樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、架橋シリコーン樹脂粒子を例示することができる。
【0012】
ポリエステルフィルムには、着色剤、帯電防止剤、酸化防止剤、潤滑剤、触媒、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン―プロピレン―ポリマー、オレフィン系アイオノマーのような他の樹脂等も、機械強度などのフィルム特性を損なわない範囲で任意に含有させてもよい。
太陽電池裏面保護膜として用いる際に表面反射率を向上したり意匠を整えるために、白色や黒色、また他の色に着色するために、染料や顔料を含有させてもよい。
【0013】
[紫外線吸収剤]
本発明におけるポリエステルフィルムを構成するポリエステルには、フィルムの耐候性を向上させるために、紫外線吸収剤を含有してもよい。この紫外線吸収剤としては、、2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(4,4’−ジフェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)および2,2’−(2,6−ナフチレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)を例示することができる。
【0014】
紫外線吸収剤を含有させる場合、その含有量は、ポリエステルと紫外線吸収剤の合計100重量%あたり好ましくは0.1〜5重量%、さらに好ましくは0.2〜3重量%である。0.1%未満であると紫外線劣化防止効果が小さく、5重量%を超えるとポリエステルの製膜特性が低下して好ましくない。
【0015】
前記紫外線吸収剤のポリエステルへの添加方法は特に限定されないが、ポリエステル重合工程、フィルム製膜前の溶融工程でのポリマー中への練込み、二軸延伸フィルムへの含浸、などを挙げることができ、特にポリエステル重合度低下を防止する意味でもフィルム製膜前の溶融工程でのポリマー中への練込みが好ましい。その際、紫外線吸収剤の練込みは、化合物粉体の直接添加法、マスターバッチ法などにより行うことができる。
【0016】
[皮膜]
ポリエステルフィルムのうえの皮膜は、ポリビニルアルコール(A)を含有する塗液を塗布して形成される。塗液中の固形分100重量%あたりのポリビニルアルコールの含有量は好ましくは10〜30重量%である。
【0017】
ポリビニルアルコールの含有量が10重量%未満であるとEVAとの接着性が十分に得られないことがあり好ましくなく、30重量%を超えると耐湿性に劣ることがあり好ましくない。
【0018】
ポリビニルアルコールは、そのケン化度が好ましくは70〜90mol%である。90mol%を超えるとEVAとの接着性が十分に得られないことがあり好ましくなく、70mol%未満であると耐湿性に劣ることがあり好ましくない。
【0019】
[微粒子]
塗液は、塗液中の固形分100重量%に対して平均粒径が20〜200nmの微粒子(B)を3〜20重量%含有することが好ましい。微粒子の含有量が3重量%未満ではフィルムがブロッキングしやすくなり好ましくなく、20重量%を超えるとEVAとの接着性が低下することがあり好ましくない。微粒子を含有する場合、微粒子の粒径が20nm未満ではフィルムがブロッキングしやすくなり、200nmを超えるとEVAとの接着性が低下することがある。かかる微粒子の種類としては、無機の微粒子として、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、カオリン、酸化珪素、酸化亜鉛の微粒子を例示することができる。また、有機の微粒子としては、架橋アクリル樹脂粒子、架橋ポリスチレン樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、架橋シリコーン樹脂粒子を例示することができる。
【0020】
[架橋剤]
塗液は、塗液中の固形分100重量%に対して下記式(I)で表わされる架橋剤(C)を5〜20重量%含有することが好ましい。
【0021】
【化1】

【0022】
架橋剤(C)を含有することにより、さらに耐湿性を向上させることがでる。含有量が5重量%未満であると耐湿性向上の効果が現されないため好ましくない。20重量%を超えて含有させると、塗膜の形成が困難となり、結果としてEVAとの接着性が低下することがあり好ましくない。
【0023】
架橋剤(C)に加えて、他のエポキシ基を有する化合物も併用してもよい。これらの化合物の例としては、ソルビトトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアネート、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルなどのポリエポキシ化合物、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル等のジエポキシ化合物、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテルなどのモノエポキシ化合物を挙げることができる。
【0024】
これらのエポキシ化合物を化合物(C)と併用する場合、架橋剤(C)とこれらのエポキシ化合物との合計量が、塗液の固形分100重量%あたり5〜20重量%の範囲で用いることが好ましい。
【0025】
[ポリマーバインダー]
塗液はポリマーバインダー(D)を含有することが好ましい。ポリマーバインダーを含有する場合、固形分100重量%あたり30〜90重量%含有することが好ましい。30重量%未満であると塗布層がもろくなる結果、EVAとの接着性が保てなくなることがあり好ましくなく、90重量%を超えると相対的にポリビニルアルコールの添加量が低下するためにEVAとの接着性が低下することがあり好ましくない。
【0026】
ポリマーバインダー(D)としては、好ましくはポリエステル樹脂またはアクリル樹脂を用いる。これらの樹脂のガラス転移点は、好ましくは20〜100℃、さらに好ましくは30〜90℃である。20℃未満であるとフィルム同士のブロッキングが発生する場合があり好ましくなく、100℃を超えると塗布層が脆くなり接着性が保てなくなる場合があるため好ましくない。
【0027】
かかるガラス転移点が20〜100℃の範囲であるポリエステル樹脂としては、以下のような多塩基酸またはそのエステル形成誘導体とポリオールまたはそのエステル形成誘導体からなるものを用いることができる。すなわち、多塩基酸成分としてはテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、2、6ーナフタレンジカルボン酸、1、4ーシクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ダイマー酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等が挙げられる。これら酸成分を2種以上用いて共重合ポリエステル樹脂を合成する。また、若干量ながら不飽和多塩基酸成分のマレイン酸、イタコン酸等及びp−ヒドロキシ安息香酸等の如きヒドロキシカルボン酸を用いることができる。また、ポリオール成分としては、エチレングリコール、1、4ーブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1、6ーヘキサンジオール、1、4ーシクロヘキサンジメタノール、キシレングリコール、ジメチロールプロパン、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール等が挙げられる。また、これらモノマーが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0028】
また、ガラス転移点が20〜100℃の範囲であるアクリル樹脂としては、以下に例示するようなアクリルモノマーを重合してなるアクリル樹脂を用いることができる。このアクリルモノマーとしては、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2ーエチルヘキシル基、シクロヘキシル基等);2ーヒドロキシエチルアクリレート、2ーヒドロキシエチルメタクリレート、2ーヒドロキシプロピルアクリレート、2ーヒドロキシプロピルメタクリレート等の水酸基含有モノマー;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有モノマー;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、スチレンスルホン酸及びその塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、第三級アミン塩等)等のカルボキシ基またはその塩を含有するモノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−アルキルアクリルアミド、N−アルキルメタクリルアミド、N、N−ジアルキルアクリルアミド、N、N−ジアルキルメタクリレート(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等)、Nーアルコキシアクリルアミド、N−アルコキシメタクリルアミド、N、N−ジアルコキシアクリルアミド、N、N−ジアルコキシメタクリルアミド(アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基等)、アクリロイルモルホリン、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、 N−フェニルメタクリルアミド等のアミド基を含有するモノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物のモノマー;ビニルイソシアネート、アリルイソシアネート、スチレン、αーメチルスチレン、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルトリアルコキシシラン、アルキルマレイン酸モノエステル、アルキルフマール酸モノエステル、アルキルイタコン酸モノエステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、塩化ビニリデン、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、ブタジエン等のモノマーが挙げられる。
【0029】
このなかで、水酸基を含むモノマー、例えば2ーヒドロキシエチルアクリレート、2ーヒドロキシエチルメタクリレート、2ーヒドロキシプロピルアクリレート、2ーヒドロキシプロピルメタクリレート、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなどが2〜20モル%、好ましくは4〜15モル%含まれていることが好ましい。
【0030】
塗液には、さらに濡れ剤、帯電防止剤、着色剤、界面活性剤、紫外線吸収剤等を含有させてもよい。濡れ剤を含有する場合、その含有量は例えば固形分100重量%あたり1〜20重量%である。
【0031】
なお、塗液に含有される微粒子や架橋剤、場合によりさらに濡れ剤を比較的多く含有する場合にはポリマーバインダーの量を相対的に少なくすることで固形分の合計量が100重量%となるようにすればよい。
【0032】
[製造方法]
本発明においては、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に前記成分を用いた皮膜が塗設されている。この皮膜は、延伸可能なポリエステルフィルムに皮膜を形成する成分を含む水性液を塗布した後、乾燥、延伸し、必要に応じて熱処理することにより塗設することが好ましい。この水性液の固形分濃度は、通常30重量%以下であり、10重量%以下がさらに好ましい。
【0033】
前記の延伸可能なポリエステルフィルムとは、未延伸ポリエステルフィルム、一軸延伸ポリエステルフィルム又は二軸延伸ポリエステルフィルムである。このうちフィルムの押出し方向(縦方向)に一軸延伸した縦延伸ポリエステルフィルムが特に好ましい。
【0034】
水性塗液をフィルムに塗布する際には、塗布性を向上させるための予備処理としてフィルム表面にコロナ表面処理、火炎処理、プラズマ処理等の物理処理を施すか、あるいは組成物と共にこれと化学的に不活性な界面活性剤を併用することが好ましい。
【0035】
かかる界面活性剤は、ポリエステルフィルムへの水性塗液の濡れを促進するものであり、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン―脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸金属石鹸、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩等のアニオン型、ノニオン型界面活性剤を挙げることができる。界面活性剤は、塗膜を形成する組成物中に、1〜10重量%含まれていることが好ましい。この範囲であれば40mN/m以下にすることができ、塗布層のハジキを防止可能である。
【0036】
ポリエステルフィルムへ水性液を塗布する場合は、通常の塗工工程、即ち二軸延伸熱固定したポリエステルフィルムに該フィルムの製造工程と切り離した工程で行うと、芥、塵埃等を巻込み易く、好ましくない。かかる観点より、クリーンな雰囲気での塗布、即ちフィルム製造工程での塗布が好ましい。特に好ましい塗布方法は、フィルムの結晶配向が完了する前のポリエステルフィルムに塗液を塗布し、乾燥、延伸、熱処理して塗設する方法である。この塗布方法によれば、皮膜(塗膜)のポリエステルフィルムへの密着性がさらに向上する。
【0037】
塗布方法としては、公知の任意の塗布法が適用できる。例えばロールコート法、グラビアコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、含浸法及びカーテンコート法などを単独または組合せて用いることができる。塗布量は走行しているフイルム1m当り、0.5〜20g、さらには1〜10gが好ましい。水性液は水分散液又は乳化液として用いるのが好ましい。なお、塗膜は、必要に応じ、フィルムの片面のみに形成してもよいし、両面に形成してもよい。
【0038】
水性液を塗布した延伸可能なポリエステルフィルムは、乾燥、延伸処理工程に導かれるが、かかる処理は、従来から当業界に蓄積された条件で行うことができる。好ましい条件としては、例えば乾燥条件は90〜130℃×2〜10秒であり、延伸温度は90〜150℃、延伸倍率は縦方向3〜5倍、横方向3〜5倍、必要ならば再縦方向1〜3倍であり、熱固定する場合は180〜250℃×2〜60秒である。
かかる処理後の二軸配向ポリエステルフィルムの厚さは50〜250μmであること、また塗膜の厚さは0.01〜1μmであることが好ましい。
【0039】
[裏面保護膜の製造]
本発明のポリエステルフィルムは、単独または2枚以上を貼り合わせて、裏面保護膜として使用できるが、ガスバリア性を付与させる目的で、ガスバリア性を有するフィルムや箔を積層することが好ましい。ここでガスバリア性とは、水蒸気バリア性のことを指し、JIS Z0208−73に準じて測定した水蒸気の透過率が、5g/(m・24h)以下であることが好ましい。ガスバリア性を有するフィルムとしては、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリ塩化ビニリデンコートフィルム、ポリフッ化ビニリデンコートフィルム、酸化ケイ素蒸着フィルム、酸化アルミニウム蒸着フィルム、アルミニウム蒸着フィルムなどが例示でき、箔としては、アルミニウム箔、銅箔などが例示できる。これらのフィルムまたは箔は、本発明のポリエステルフィルムのEVA接着面の反対側に積層したり、またEVA接着側を外側にして2枚のポリエステルフィルムで挟みこむ構造をとることができる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例により本発明を更に説明する。なお、各特性値は以下の方法で測定した。
(1)ガラス転移点(Tg)
デュポン製 Thermal Analyst 2000型 示差熱量計にて、20℃/分の昇温速度にて測定した。
【0041】
(2)固有粘度
オルソクロロフェノール溶媒による溶液の粘度を35℃にて測定し求めた。
【0042】
(3)EVAとの接着性
フィルムを20mm幅×100mm長にカットしたものを2枚、EVAシート(ハイシート工業(株)製 SOLAR EVA(R) SC4)を20mm幅×50mm長にカットしたものを1枚、それぞれ準備する。EVAシートがフィルムのほぼ中央に位置するよう、またフィルムの易接性を評価したい面がEVA側になるよう、フィルム/EVAシート/フィルムの順に重ねて、ヒートシーラー(テスター産業(株)製 TP−701−B)にてプレスを行った。圧着条件は、120℃・0.02MPaにて5分圧着後、150℃に昇温し、プレス圧を0.1MPaに上げて25分圧着する。熱圧着した試料を、23℃、50%RH雰囲気下において、JIS−Z0237に準じて、上下のクリップに未接着部のフィルムを挟み、剥離角180°、引張速度100mm/分で接着力を測定した。
◎:20N/20mm以上 ・・・接着性非常に良好
○:10N/20mm以上、20N/20mm未満・・・接着性良好
△: 5N/20mm以上〜10N/20mm未満・・・接着性やや良好
×: 5N/20mm未満・・・接着性不良
【0043】
(4)EVAとの接着耐久性
上記(3)にて作成した熱圧着サンプルを、JIS−C8917−1998に準じて85℃・85%RHで1000時間処理した後に、上記(3)同様に接着力を評価し、処理前の接着力と比較して評価した。
◎:接着性保持率75%以上 ・・・接着耐久性非常に良好
○:接着性保持率50%以上、75%未満・・・接着性耐久性良好
△:接着性保持率25%以上、50%未満・・・接着性やや良好
×:接着性保持率 25%未満・・・接着性不良
【0044】
(5)耐候性
上記(3)にて作成したサンプルを、サンシャインウェザーメーター(スガ試験機(株)性、WEL−SUN−HCL型)を使用し、JIS−K−6783bに準じて、1000時間(屋外曝露1年間に相当)照射することにより屋外曝露促進試験を行った。上記(3)同様に接着性を測定し、促進試験前の接着性と比較して評価を行った。
◎:接着性保持率75%以上 ・・・耐候性非常に良好
○:接着性保持率50%以上、75%未満・・・耐候性良好
△:接着性保持率25%以上、50%未満・・・耐候性やや良好
×:接着性保持率 25%未満・・・耐候性不良
【0045】
[実施例1〜4および比較例1]
粒子径1.7μmの多孔質SiOを120ppm含むポリエチレンテレフタレート(固有粘度:0.62)を20℃に維持した回転冷却ドラム上に溶融押出しして未延伸フィルムとした。次いで縦方向に100℃で3.2倍に延伸した後、その両面に下記塗膜用組成物(表1)の濃度8%の水性塗液をロールコーターで均一に塗布した。
【0046】
【表1】

【0047】
ポリビニルアルコールA−1:ケン化度86〜89mol%のポリビニルアルコール
ポリビニルアルコールA−2:ケン化度74〜78mol%のポリビニルアルコール
微粒子B−1:平均粒径100nmの球状シリカ粒子
微粒子B−2:平均粒径100nmの架橋アクリル粒子
科挙剤C−1:下式(I−1)に示す化合物
【化2】

化合物C−2:下式(I−2)に示す化合物
【化3】

バインダーD−1:酸成分が2,6―ナフタレンジカルボン酸65モル%/イソフタル酸30モル%/5−ナトリウムスルホイソフタル酸5モル%、グリコール成分がエチレングリコール90モル%/ジエチレングリコール10モル%で構成されている共重合ポリエステル(Tg=80℃)。
バインダーD−2:酸成分がテレフタル酸80モル%/イソフタル酸15モル%/5−ナトリウムスルホイソフタル酸5モル%、グリコール成分がエチレングリコール60モル%/ジエチレングリコール40モル%で構成されている共重合ポリエステル(Tg=43℃)。
濡れ剤:ポリオキシエチレン(n=7)ラウリルエーテル
【0048】
次いで、この塗布フィルムを引き続いて95℃で乾燥し、横方向に110℃で3.4倍に延伸し、225℃で幅方向に3%収縮させ熱固定し、厚さ50μmのポリエステルフィルムを得た。なお、塗膜の厚さは0.08μmであった。これらの評価結果を表2に示す。
【0049】
[実施例5]
粒子径1.7μmの多孔質SiOを80ppmと下記式(A)に示す紫外線吸収剤を1重量%含有するポリエチレンテレフタレート(固有粘度:0.62)を20℃に維持した回転冷却ドラム上に溶融押出しして未延伸フィルムとした。
【化4】

以降は、実施例1と同様にフィルムを得た。このポリエステルフィルムの評価結果を表2に示す。
【0050】
[比較例2]
水性液を塗布しない以外は、実施例1と同様にフィルムを得た。得られたポリエステルフィルムの特性を表2に示す。
【0051】
[実施例6]
ポリエチレン−2,6−ナフタレート(固有粘度:0.58)を60℃に維持した回転冷却ドラム上に溶融押出しして未延伸フィルムとした。次いで縦方向に140℃で3.2倍に延伸した後、その片面に実施例1で用いた水性塗液をロールコーターで均一に塗布した。
【0052】
次いで、この塗布フィルムを引き続いて130℃で乾燥し、横方向に150℃で3.4倍に延伸し、240℃で幅方向に3%収縮させ熱固定し、厚さ50μmのポリエステルフィルムを得た。なお、塗膜の厚さは0.05μmであった。
これらの評価結果を表2に示す。
【0053】
【表2】

【0054】
表2に示す結果から明らかなように、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムはEVAとの接着性に優れ、太陽電池裏面保護膜用ポリエステルフィルムとして有用である。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明のポリエステルフィルムは、優れた機械的性質、耐熱性、耐湿性を有しながら、EVAとの密着性に優れており、太陽電池裏面保護膜用ポリエステルフィルムとして有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルフィルムおよびそのうえに塗設された皮膜からなり、皮膜はポリビニルアルコール(A)を含む塗液をフィルムに塗布して形成されることを特徴とする、太陽電池裏面保護膜用易接着性ポリエステルフィルム。
【請求項2】
塗液がポリビニルアルコール(A)を固形分100重量%あたり10〜30重量%含有する、請求項1記載の太陽電池裏面保護膜用易接着性ポリエステルフィルム。
【請求項3】
ポリビニルアルコール(A)のケン化度が70〜90mol%である、請求項1または2に記載の太陽電池裏面保護膜用易接着性ポリエステルフィルム。
【請求項4】
塗液がさらに平均粒径が20〜200nmの微粒子(B)を固形分100重量%あたり3〜20重量%含有する、請求項1〜3のいずれかに記載の太陽電池裏面保護膜用易接着性ポリエステルフィルム。
【請求項5】
塗液がさらに下記式(I)で表わされる架橋剤(C)を固形分100重量%あたり5〜20重量%含有する、請求項1〜4のいずれかに記載の太陽電池裏面保護膜用易接着性ポリエステルフィルム。
【化1】

【請求項6】
塗液がさらにポリマーバインダー(D)を固形分100重量%あたり30〜90重量%含有する、請求項請求項1〜5のいずれかに記載の太陽電池裏面保護膜用易接着性ポリエステルフィルム。
【請求項7】
ポリマーバインダー(D)がガラス転移点20〜100℃のポリエステル樹脂またはアクリル樹脂である、請求項6記載の太陽電池裏面保護膜用易接着性ポリエステルフィルム。
【請求項8】
ポリエステルフィルムが2軸延伸ポリエステルフィルムであり、皮膜は結晶配向が完了する前に塗布され、乾燥、延伸、熱処理して塗設される、請求項1〜7のいずれかに記載の太陽電池裏面保護膜用易接着性ポリエステルフィルム。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の太陽電池裏面保護膜用易接着性ポリエステルフィルムからなる太陽電池裏面保護膜。

【公開番号】特開2006−335853(P2006−335853A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−161470(P2005−161470)
【出願日】平成17年6月1日(2005.6.1)
【出願人】(301020226)帝人デュポンフィルム株式会社 (517)
【Fターム(参考)】