説明

姿勢角決定装置およびその決定方法

【課題】複雑な関係にある座標系間であってもその姿勢関係を容易に,精度良く求めることのできる姿勢角決定装置およびその決定方法を提供すること。
【解決手段】本発明の姿勢角決定装置は,各リンクに設定された3軸直交座標系の各軸について,軸方向と重力ベクトルの方向との間の角度である傾斜角を取得する傾斜角取得部と,第1リンクと第2リンクとの姿勢関係を固定したまま最大3通りの全体姿勢を取らせる姿勢変化指示部と,各全体姿勢における各リンクについて各軸方向の傾斜角から傾斜ベクトルを求める傾斜ベクトル算出部と,各リンクについて全体姿勢ごとに求められた傾斜ベクトルにより傾斜行列を求める傾斜行列算出部と,傾斜行列算出部により求められた各リンクの傾斜行列に基づいて,一方と他方の逆行列との積を求めることにより,姿勢角を表すリンク行列を算出するリンク行列算出部とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,リンク機構によって接続された2つの座標系間の姿勢関係を決定する姿勢角決定装置およびその決定方法に関する。さらに詳細には,2つの座標系間の姿勢関係を3つの姿勢角(ヨー角φ,ピッチ角θ,ロール角ψ)で表すための姿勢角決定装置およびその決定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リンク機構によって接続された複数部材の姿勢制御を行う場合,一般に,各部材ごとにその位置座標を表す座標系を設け,まず部材の姿勢をその座標によって特定する。その後,座標間の姿勢関係を3つの姿勢角を用いて変換することにより,共通の座標で表している。従来,このような座標間の姿勢関係を求めるには,図面に基づいて寸法を計測したり,三次元測定器によって角度を実測することにより行っていた。
【0003】
例えば,特許文献1には,人間の大腿部,下腿部等の各部を剛体要素(リンク)として,各剛体要素に要素座標系を設定した剛体リンクモデルを作成し,そのモデルを用いて移動体の関節モーメントを推定する方法が開示されている。本文献に記載の技術では,例えば股関節に設けられた関節変位センサや発光/受光器等の出力を基にして,座標変換のための変換テンソルを作成し,それを用いて各関節要素や各剛体要素の位置が求められるとされている。
【特許文献1】特開2005−81537号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら,前記した従来の図面や実測による方法では,2つの座標系の配置が複雑になるにつれて作業が繁雑となり,姿勢角の決定が困難であった。特に,座標系同士がねじれの関係にあって,図面上でそれらの関係を明記できない場合等では,図面から姿勢の関係を読み取ることができない。また,座標系間の距離が長い場合あるいは,座標系間に障害物がある場合等では,三次元測定器による計測が困難であった。これらの条件が重なると,図面によっても実測によっても姿勢関係が求められないという問題点があった。また,座標系の設置について角度誤差がある場合では,図面上から得られる座標系間の姿勢関係では,精度が低いものとなるという問題点があった。
【0005】
また,特許文献1に記載の技術は,例えば股関節の関節変位センサ等によりリンク間の回転角が把握されている場合の変換方法である。さらに,股関節,膝関節,足首関節の3つの関節を通る脚平面を想定してその上での2次元量を利用することにより,移動しつつある人間の脚体の関節に作用するモーメントを推定するものであり,このままではリンク間の姿勢関係の取得には利用できない。
【0006】
本発明は,前記した従来の技術が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,複雑な関係にある座標系間であってもその姿勢関係を容易に,精度良く求めることのできる姿勢角決定装置およびその決定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題の解決を目的としてなされた本発明の姿勢角決定装置は,1以上の関節を介して接続された第1リンクおよび第2リンクを有するリンク機構として表現されるとともに,姿勢変化動作部に搭載または接続されている構造体における,第1リンクの座標系から見た第2リンクの座標系の姿勢角を決定する姿勢角決定装置であって,各リンクに設定された3軸直交座標系の各軸について,軸方向と重力ベクトルの方向との間の角度である傾斜角を取得する傾斜角取得部と,第1リンクと第2リンクとの姿勢関係を固定したまま,姿勢変化動作部に構造体の姿勢変化を指示して最大3通りの全体姿勢を取らせる姿勢変化指示部と,姿勢変化指示部の指示による各全体姿勢における各リンクについて,傾斜角取得部で取得された各軸方向の傾斜角から傾斜ベクトルを求める傾斜ベクトル算出部と,各リンクについて,傾斜ベクトル算出部で全体姿勢ごとに求められた傾斜ベクトルにより傾斜行列を求める傾斜行列算出部と,傾斜行列算出部により求められた各リンクの傾斜行列に基づいて,一方と他方の逆行列との積を求めることにより,姿勢角を表すリンク行列を算出する第1リンク行列算出部とを有するものである。
【0008】
本発明の姿勢角決定装置によれば,傾斜角取得部によって,各リンクに設定された3軸直交座標系の各軸方向と重力ベクトルの方向との間の角度である傾斜角が取得される。また,姿勢変化指示部によって,リンク機構は最大3通りの全体姿勢を取るように指示される。そして各全体姿勢において傾斜ベクトル算出部によって傾斜ベクトルが求められ,続いて,傾斜行列算出部によって傾斜ベクトルより傾斜行列が求められる。さらに,求められた傾斜行列に基づいて,姿勢角を表すリンク行列が算出される。従って,複雑な関係にある座標系間であってもその姿勢関係を容易に,高価な機構を用いず,小型な装置によって精度良く求めることが出来る。
【0009】
なお,「傾斜角取得部」,「傾斜ベクトル算出部」,「傾斜行列算出部」は,両リンクについてまとめて処理するものであっても良いし,各リンクのそれぞれに設けられているものであっても良い。また,傾斜ベクトルは傾斜角を成分とするベクトルである。傾斜行列は,傾斜ベクトルを並べたものであり,すなわち,傾斜角を軸および全体姿勢により2次元に配列した行列である。また,傾斜行列は,その座標系の傾斜角を表すものであるが,座標系から別の座標系を見たときの姿勢関係までは表現しない。
【0010】
また,傾斜角取得部は,各座標系の軸の数(3個)×リンクの数(2個)の都合6個の傾斜角を取得する。傾斜ベクトル算出部は,全体姿勢の数(最大3種)×リンクの数(2個)の傾斜ベクトルを算出する。傾斜行列算出部は,リンクの数(2個)の傾斜行列を算出する。
【0011】
さらに本発明では,傾斜角取得部が,傾斜角を,第1リンクおよび第2リンクにそれぞれ,互いに直交する3方向に設けられた水準器を用いて得ることが望ましい。このようにすれば,傾斜角を直接的に得ることができる。
【0012】
また本発明では,傾斜角取得部が,傾斜角を,第1リンクおよび第2リンクにそれぞれ,互いに直交する3方向に設けられた加速度センサの出力値から求めるものであっても良い。このようにすれば,傾斜角を容易に得ることができる。
【0013】
また本発明では,傾斜角取得部が,傾斜角を,第1リンクおよび第2リンクにそれぞれ,互いに直交する2方向に設けられた加速度センサの出力値と,各リンクごとの各加速度センサの出力値の2乗の和をその場所の重力加速度の値の2乗から差し引いた値の平方根とから求めるものとしてもよい。この場合,平方根の符号は,座標系の上下関係として外部信号またはGPS,マーカー等で与えられることが好ましい。このようにすれば,必要な加速度センサの個数や全体姿勢の変化の回数を減らすことができる。
【0014】
また,本発明の姿勢角決定装置は,1以上の関節を介して接続された第1リンクおよび第2リンクを有するリンク機構として表現されるとともに,姿勢変化動作部に搭載または接続されている構造体における,第1リンクの座標系から見た第2リンクの座標系の姿勢角を決定する姿勢角決定装置であって,各リンクに1方向が互いに平行となるように設定された3軸直交座標系の当該1方向以外の各方向の加速度値を取得する加速度値取得部と,第1リンクと第2リンクとの姿勢関係を固定したまま,姿勢変化動作部に構造体の姿勢変化を指示して,当該1方向に平行な軸の周りの回転による2通りの全体姿勢を取らせる姿勢変化指示部と,姿勢変化指示部の指示による各全体姿勢における各リンクについて,加速度値取得部で取得された各軸方向の加速度値から傾斜角を求める傾斜角測定部と,姿勢変化指示部の指示による各全体姿勢における各リンクについて,傾斜角測定部で求められた各軸方向の傾斜角から傾斜ベクトルを求める傾斜ベクトル算出部と,各リンクについて,傾斜ベクトル算出部で全体姿勢ごとに求められた傾斜ベクトルにより傾斜行列を求める傾斜行列算出部と,傾斜行列算出部により求められた各リンクの傾斜行列に基づいて,一方と他方の逆行列との積を求めることにより,姿勢角を表すリンク行列を算出する第1リンク行列算出部とを有するものであってもよい。
【0015】
すなわち,第1リンクの座標系と第2リンクの座標系との間に,1軸が互いに平行であるという関係がある場合は,処理をやや簡略化できる。一般的には加速度値取得部は,各リンクごとに軸の数(ここでは3軸なので3個)だけ加速度を取得することが必要であるが,この条件があれば,その平行な1軸を除いた2軸の加速度値を取得するのみでよい。すなわち,本発明では,加速度値取得部は,2軸×リンク数の都合4個の加速度値を取得する。従って,例えば加速度センサの出力値から加速度値を求める場合では,このような条件が満たされる場合には,一般的な場合より加速度センサの数を減らすことができる。さらに,全体姿勢の数も減らすことができる。
【0016】
また,本発明の姿勢角決定装置は,1以上の関節を介して接続された第1リンクおよび第2リンクを有するリンク機構として表現される構造体における,第1リンクの座標系から見た第2リンクの座標系の姿勢角を決定する姿勢角決定装置であって,各リンクに1方向が互いに平行かつ水平となるように設定された3軸直交座標系の当該1方向以外の任意の1方向の加速度値を取得する加速度値取得部と,各リンクについて,加速度値取得部で取得された加速度値から傾斜角を求める傾斜角測定部と,傾斜角測定部により求められた各リンクの傾斜角の差より姿勢角を算出する姿勢角計算部とを有するものであっても良い。
【0017】
すなわち,第1リンクの座標系と第2リンクの座標系との間に,1軸が互いに平行でありかつ水平であるという関係がある場合は,処理をさらに簡略化できる。加速度値取得部は,各リンクに1個ずつの都合2個の加速度値を取得すればよい。従って,加速度センサの数は2個で良く,また全体姿勢は1通りで良く,変化させる必要はないので,この場合は姿勢変化指示部を有する必要はない。
【0018】
また,本発明の姿勢角決定装置は,1以上の関節を介して接続された第1リンクおよび第2リンクを有するリンク機構として表現される構造体における,第1リンクの座標系から見た第2リンクの座標系の姿勢角を決定する姿勢角決定装置であって,各リンクに設けられそれぞれにおける加速度値を取得する加速度値取得部と,各リンクに設定された座標系間のヨー角を取得する第1ヨー角取得部と,加速度値取得部で取得された加速度値と,第1ヨー角取得部で取得されたヨー角とから,姿勢角を表すリンク行列を算出する第2リンク行列算出部とを有するものであっても良い。
【0019】
すなわち,加速度値取得部は,各リンクに1個ずつの都合2個の加速度値を取得すればよい。従って,加速度センサの数は2個で良く,また全体姿勢は1通りで良く,変化させる必要はないので,この場合は姿勢変化指示部を有する必要はない。ここで,ヨー角とは,2つの座標系間の1つの軸回りの姿勢角変化である。
【0020】
また,本発明の姿勢角決定装置は,1以上の関節を介して接続された第1リンクおよび第2リンクを有するリンク機構として表現される構造体における,第1リンクの座標系から見た第2リンクの座標系の姿勢角を決定する姿勢角決定装置であって,各リンクに設けられそれぞれにおける加速度値を取得する加速度値取得部と,各リンクについて,そこに設定された座標系と基準座標系との間のヨー角を取得する第2ヨー角取得部と,各リンクについて,加速度値取得部で取得された加速度値と,第2ヨー角取得部で取得されたヨー角とから,基準座標系に対する姿勢行列を求める第1姿勢行列算出部と,第1姿勢行列算出部により求められた各リンクの姿勢行列に基づいて,一方と他方の逆行列との積を求めることにより,姿勢角を表すリンク行列を算出する第1リンク行列算出部とを有するものであっても良い。
【0021】
すなわち,加速度値取得部は,各リンクに1個ずつの都合2個の加速度値を取得すればよい。従って,加速度センサの数は2個で良く,また全体姿勢は1通りで良く,変化させる必要はないので,この場合は姿勢変化指示部を有する必要はない。
【0022】
また,本発明の姿勢角決定装置は,1以上の関節を介して接続された第1リンクおよび第2リンクを有するリンク機構として表現される構造体における,第1リンクの座標系から見た第2リンクの座標系の姿勢角を決定する姿勢角決定装置であって,各リンクに設けられそれぞれにおける加速度値を取得する加速度値取得部と,各リンクに設けられそれぞれにおける角速度値を取得する角速度値取得部と,各リンクについて,加速度値取得部で取得された加速度値と,角速度値取得部で取得された角速度値とから,基準座標系に対する姿勢行列を求める第2姿勢行列算出部と,第2姿勢行列算出部により求められた各リンクの姿勢行列に基づいて,一方と他方の逆行列との積を求めることにより,姿勢角を表すリンク行列を算出する第1リンク行列算出部とを有するものであっても良い。
【0023】
すなわち,加速度値取得部は,各リンクに3個ずつの都合6個の加速度値を取得すればよい。また,角速度値取得部は,各リンクに3個ずつの都合6個の角速度値を取得すればよい。また全体姿勢は1通りで良く,変化させる必要はないので,この場合は姿勢変化指示部を有する必要はない。
【0024】
また,本発明の姿勢角決定装置は,1以上の関節を介して接続された第1リンクおよび第2リンクを有するリンク機構として表現される構造体における,第1リンクの座標系から見た第2リンクの座標系の姿勢角を決定する姿勢角決定装置であって,各リンクに設けられそれぞれにおける加速度値を取得する加速度値取得部と,各リンクに設けられた磁気センサと,各リンクについて,加速度値取得部で取得された加速度値と,磁気センサで取得された磁北方向との交差角の情報とから,基準座標系に対する姿勢行列を求める第3姿勢行列算出部と,第3姿勢行列算出部により求められた各リンクの姿勢行列に基づいて,一方と他方の逆行列との積を求めることにより,姿勢角を表すリンク行列を算出する第1リンク行列算出部とを有するものであっても良い。
【0025】
すなわち,加速度値取得部は,各リンクに2個ずつの都合4個の加速度値を取得すればよい。従って,加速度センサの数は4個で良く,また全体姿勢は1通りで良く,変化させる必要はないので,この場合は姿勢変化指示部を有する必要はない。
【0026】
さらに本発明では,各リンクに設けられた磁気センサを有し,第2姿勢行列算出部は,加速度値取得部で取得された加速度値と,角速度値取得部で取得された角速度値と,磁気センサで取得された磁北方向との交差角の情報とから,基準座標系に対する姿勢行列を求めることが望ましい。
【0027】
さらに本発明では,姿勢変化動作部が,姿勢変化装置を内蔵するロボットであり自ら全体姿勢を形成することが望ましい。
【0028】
また本発明は,1以上の関節を介して接続された第1リンクおよび第2リンクを有するリンク機構として表現されるとともに,姿勢変化動作部に搭載または接続されている構造体における,第1リンクの座標系から見た第2リンクの座標系の姿勢角を決定する姿勢角決定方法であって,各リンクに設定された3軸直交座標系の各軸について,軸方向と重力ベクトルの方向との間の角度である傾斜角を取得し,第1リンクと第2リンクとの姿勢関係を固定したまま,姿勢変化動作部に構造体の姿勢変化を指示して最大3通りの全体姿勢を取らせ,指示による各全体姿勢における各リンクについて,取得した各軸方向の傾斜角から傾斜ベクトルを求め,各リンクについて,全体姿勢ごとに求めた傾斜ベクトルにより傾斜行列を求め,求めた各リンクの傾斜行列に基づいて,一方と他方の逆行列との積を求めることにより,姿勢角を表すリンク行列を算出する姿勢角決定方法にも及ぶ。
【0029】
また本発明では,傾斜角を,第1リンクおよび第2リンクにそれぞれ,互いに直交する2方向に設けられた加速度センサの出力値と,各リンクごとの各加速度センサの出力値の2乗の和をその場所の重力加速度の値の2乗から差し引いた値の平方根とから求めることが望ましい。
【0030】
また本発明は,1以上の関節を介して接続された第1リンクおよび第2リンクを有するリンク機構として表現されるとともに,姿勢変化動作部に搭載または接続されている構造体における,第1リンクの座標系から見た第2リンクの座標系の姿勢角を決定する姿勢角決定方法であって,各リンクに1方向が互いに平行となるように設定された3軸直交座標系の当該1方向以外の各方向の加速度値を取得し,第1リンクと第2リンクとの姿勢関係を固定したまま,姿勢変化動作部に構造体の姿勢変化を指示して,当該1方向に平行な軸の周りの回転による2通りの全体姿勢を取らせ,指示による各全体姿勢における各リンクについて,取得した各軸方向の加速度値から傾斜角を求め,指示による各全体姿勢における各リンクについて,求めた各軸方向の傾斜角から傾斜ベクトルを求め,各リンクについて,全体姿勢ごとに求められた傾斜ベクトルにより傾斜行列を求め,求めた各リンクの傾斜行列に基づいて,一方と他方の逆行列との積を求めることにより,姿勢角を表すリンク行列を算出する姿勢角決定方法にも及ぶ。
【0031】
また本発明は,1以上の関節を介して接続された第1リンクおよび第2リンクを有するリンク機構として表現される構造体における,第1リンクの座標系から見た第2リンクの座標系の姿勢角を決定する姿勢角決定方法であって,各リンクに1方向が互いに平行かつ水平となるように設定された3軸直交座標系の当該1方向以外の任意の1方向の加速度値を取得し,各リンクについて,取得した加速度値から傾斜角を求め,求めた各リンクの傾斜角の差より姿勢角を算出する姿勢角決定方法にも及ぶ。
【0032】
また本発明は,1以上の関節を介して接続された第1リンクおよび第2リンクを有するリンク機構として表現される構造体における,第1リンクの座標系から見た第2リンクの座標系の姿勢角を決定する姿勢角決定方法であって,各リンクにおける加速度値を取得し,各リンクに設定された座標系間のヨー角を取得し,取得した加速度値と,取得したヨー角とから,姿勢角を表すリンク行列を算出する姿勢角決定方法にも及ぶ。
【0033】
また本発明は,1以上の関節を介して接続された第1リンクおよび第2リンクを有するリンク機構として表現される構造体における,第1リンクの座標系から見た第2リンクの座標系の姿勢角を決定する姿勢角決定方法であって,各リンクにおける加速度値を取得し,各リンクについて,そこに設定された座標系と基準座標系との間のヨー角を取得し,各リンクについて,取得した加速度値と,取得したヨー角とから,基準座標系に対する姿勢行列を求め,求めた各リンクの姿勢行列に基づいて,一方と他方の逆行列との積を求めることにより,姿勢角を表すリンク行列を算出する姿勢角決定方法にも及ぶ。
【0034】
また本発明は,1以上の関節を介して接続された第1リンクおよび第2リンクを有するリンク機構として表現される構造体における,第1リンクの座標系から見た第2リンクの座標系の姿勢角を決定する姿勢角決定方法であって,各リンクにおける加速度値を取得し,各リンクにおける角速度値を取得し,各リンクについて,取得した加速度値と,取得した角速度値とから,基準座標系に対する姿勢行列を求め,求めた各リンクの姿勢行列に基づいて,一方と他方の逆行列との積を求めることにより,姿勢角を表すリンク行列を算出する姿勢角決定方法にも及ぶ。
【0035】
また本発明は,1以上の関節を介して接続された第1リンクおよび第2リンクを有するリンク機構として表現される構造体における,第1リンクの座標系から見た第2リンクの座標系の姿勢角を決定する姿勢角決定方法であって,各リンクにおける加速度値を取得し,各リンクにおける磁北方向との交差角の情報を磁気センサで取得し,各リンクについて,取得した加速度値と,取得した磁北方向との交差角の情報とから,基準座標系に対する姿勢行列を求め,求めた各リンクの姿勢行列に基づいて,一方と他方の逆行列との積を求めることにより,姿勢角を表すリンク行列を算出する姿勢角決定方法にも及ぶ。
【0036】
また本発明では,姿勢変化動作部が,姿勢変化装置を内蔵するロボットであり,自ら全体姿勢を形成することが望ましい。
【発明の効果】
【0037】
本発明の姿勢角決定装置およびその決定方法によれば,複雑な関係にある座標系間であってもその姿勢関係を容易に,精度良く求めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下,本発明を具体化した最良の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,2つの座標系間の姿勢関係を得るための姿勢角決定装置である。ここで,姿勢角とは,例えばリンク等のなす角度(ヨー角φ,ピッチ角θ,ロール角ψ)をある座標系で表したものである。そして姿勢関係とは,その姿勢角を,別の座標系を基準として見た姿勢角に変換するための関係式である。
【0039】
まず,本形態の姿勢角決定装置によって姿勢角が決定される対象であるリンク機構の例を図1に示す。リンク機構とは,リンクと関節との2つの部位から構成されているものを指す。この図に示すリンク機構10は,3つのリンク11,12,13を有している。また,リンク11とリンク12とが関節14で,リンク12とリンク13とが関節15でそれぞれ接続されている。関節14は3つの回転自由度を持つ。関節15も同じく3つの回転自由度を持つ。
【0040】
またリンク機構上の二箇所には,第1座標系(x,y,z)と第2座標系(x,y,z)が設置されている。図1では第1座標系はリンク11に固定されており,第2座標系はリンク13に固定されている。第1座標系と第2座標系は,関節14と関節15を固定しておけば,互いに所定の姿勢関係を有している。関節14または関節15を動かすと,座標系間の姿勢関係は変化する。また両座標系間の姿勢関係を固定したままリンク機構10の全体としての姿勢を変更することも可能である。本形態の姿勢角決定装置は,このようなリンク機構10に設けられた2つの座標系間の姿勢関係を得るものである。
【0041】
次にリンク機構10の具体的な例をいくつか示す。リンク自体は,剛なものと柔なものとに大きく分けることができる。また,リンク同士の関係すなわち関節の状態としては,常に固定されている関係,動作中あるいは一定期間のみ固定される関係,常に柔軟な関係がある。固定されているとは,それらのリンクの間の姿勢は変化しないことを意味する。柔軟であるとは,リンク間の姿勢が変化することを意味する。
【0042】
まず,図2にリンクが剛であり関係が固定されている例を示す。これは,1つの剛なる物体上の異なる2面に設置された2つの座標系の関係である。すなわち,図2の例は,剛なリンクと固定した関節からなるリンク機構で表すことができる。この例では,第1面上に設置した第1座標系と第2面上に設置した第2座標系の姿勢関係は変化しない。またこの例では隣り合った面同士が直交関係になく,二つの座標系間の姿勢関係がネジレの位置にあるため,座標系間の姿勢関係を容易には求めることができない。この例で表すことができる事例としては,部品を組み立てた直後や部品を所定の場所に設置した直後で,部品内の面同士や部品と設置面との直交がでていない場合や,部品の形状に設計値からのズレがある場合などがある。
【0043】
次に,図3にリンクが剛であり,関係が一定期間のみ固定される例を示す。これは,可動リンクを持つロボットである。図3の例では,剛なリンクと、固定および非固定を自由に可変できる関節から成り立っている。この例で表すことができる事例としては,ロボットのリンク間角度が初期状態では不定であるが,ロボットの動作中は関節がサーボ機構によってソフト的に,またはネジなどによりハード的に固定されることでリンク機構が剛な関係であると見なせる場合などがある。固定された状態では各リンク上に置かれた二つの座標系間の関係は変化しない。図3の例では,第1座標系はロボットの胴体に,また第2座標系は腕上に設置されている。ただし関節部には関節角度を計測する装置がなく,関節角度を直接測定することはできない。
【0044】
また上記のタイプの別の例として、ロボットのリンク間角度が初期状態では不定であるが,リンク間角度の初期値が与えられるという初期化工程を経ることで、初期化後には関節部に設置された関節角度測定器により、関節角度が得られるものもある。この場合は関節が固定されていなくともよい。
【0045】
次に,図4にリンクが柔であり,関係が柔であるものの例を示す。図4の例は,常に柔らかく変形する構造体であり,このような構造体上の異なる2点に設置された2つの座標系の関係は,常に柔な関係である。従って,図4の例は,柔軟なリンク、またはリンクは剛であるが固定されない関節を持つリンク機構で表すことができる。リンク上に設置した第1座標系と第2座標系の姿勢関係は,リンクに働く重力方向の変化によって変化する。この例で表すことのできる事例としては,リンクがゴムのように容易に変形する物質で作られていたり,リンクを構成する板の剛性が低い場合などがある。なお,以上の説明に用いたリンクおよび関節は,第1座標系と第2座標系の関係をわかりやすく求めるために用いたものであり,実際にリンクあるいは関節が第1座標系および第2座標系の間に存在しなくてもよい。
【0046】
次に,固定リンクをもつリンク機構についての姿勢角を決定するための姿勢角決定装置20の概略構成を,図5のブロック図に基づいて説明する。これは,図2に示した変形しないリンク機構を対象とするものである。図2における第1座標系と第2座標系が,図1に示すリンク機構10で表されるリンク11,リンク12,リンク13および関節14,関節15で結びつけられているものとすることができる。
【0047】
この例では,図5に示すように,リンク機構10には測定対象の各座標系の各軸方向に沿って,それぞれ加速度センサが設けられる。すなわち,第1座標系のリンク11には,x1軸加速度センサ21,y1軸加速度センサ22,z1軸加速度センサ23が設けられている。また,第2座標系のリンク13には,x2軸加速度センサ24,y2軸加速度センサ25,z2軸加速度センサ26が設けられている。
【0048】
さらに,このリンク機構10には,全体姿勢を変化させるためのモータ等を有する姿勢変化動作器27が設けられている。この姿勢角決定装置20で姿勢角を算出するために,姿勢変化動作器27を動作させて,測定対象であるリンク機構10の姿勢を適宜変化させることが必要となる。そのために,姿勢角決定装置20はさらに,姿勢変化指令器28および計測回数カウント器29を有している。計測回数カウント器29は,リンク機構10の全体姿勢を変化をさせた回数をカウントする。そして,必要回数の姿勢変化が終了するまで,姿勢変化指令器28が姿勢変化動作器27に指令を出し,リンク機構10の全体姿勢を変化させる。
【0049】
また,姿勢角決定装置20には,x1軸加速度センサ21,y1軸加速度センサ22,z1軸加速度センサ23の傾斜角出力を受けて,その値をサンプリングするサンプリング器31と,x2軸加速度センサ24,y2軸加速度センサ25,z2軸加速度センサ26の出力を受けて,その値をサンプリングするサンプリング器32とを有する。ここでサンプリングされる値はそれぞれ,傾斜角の各軸方向の余弦値となっている。
【0050】
また,姿勢角決定装置20は,サンプリング器31の結果から傾斜ベクトルを算出する傾斜ベクトル算出器33と,サンプリング器32の結果から傾斜ベクトルを算出する傾斜ベクトル算出器34とを有する。これらの傾斜ベクトルは,各座標系の重力方向に対する傾斜を表す。さらに,姿勢角決定装置20は,傾斜ベクトル算出器33と傾斜ベクトル算出器34との算出結果を受けるレジスタ35,レジスタ35の出力を受けて各傾斜ベクトルから傾斜行列を算出する傾斜行列算出器36を有する。
【0051】
ここで,基準座標系から見た第1座標系への変換を姿勢行列T1,基準座標系から見た第2座標系への変換を姿勢行列T2としたとき,姿勢行列T1から姿勢行列T2への変換行列をリンク行列T12とする。姿勢角決定装置20は,リンク行列算出器37,リンク行列表示器38,姿勢角算出・表示器39を有している。リンク行列算出器37は,傾斜行列算出器36の結果を受けて,リンク行列T12を算出する。算出されたリンク行列は,リンク行列表示器38によって表示される。さらに,姿勢角算出・表示器39は,リンク行列T12を用いて姿勢角を算出し,表示する。
【0052】
この姿勢角決定装置20を用いて姿勢角を求める手順を簡単に説明する。まず,第1座標系と第2座標系との間には,リンク11〜13があり,各リンクの関係の設定が終了すると2つの座標系間の姿勢関係が固定される。この固定された姿勢関係を保持したまま,これらのリンク機構10の全体姿勢を条件に応じて最大3通りに変化させる。ここでは,まず最も一般的な例として,3通りに変化させる場合を説明する。
【0053】
全体姿勢を変化させた後,,その全体姿勢における加速度センサ21〜26の出力結果を取得する。これにより,最大3種類の取りうる姿勢についての傾斜角のデータを得る。すなわち,計測回数カウント器29によって計測回数をカウントしつつ,姿勢変化指令器28より姿勢変化動作器27へ姿勢を変化させる指示を送出する。そして,各全体姿勢において,計6個の加速度センサ21〜26によって,各軸方向の加速度を測定する。
【0054】
次に,各全体姿勢ごとに,各加速度センサ21〜23の出力から,サンプリング器31によって,第1座標系の各軸の重力方向に対する傾斜角を抽出する。また,各全体姿勢ごとに,各加速度センサ24〜26の出力から,サンプリング器32によって,第2座標系の各軸の重力方向に対する傾斜角を抽出する。さらに,これらの傾斜角から,傾斜ベクトル算出器33によって,第1座標系の傾斜ベクトルを算出する。また,同様に,傾斜ベクトル算出器34によって,第2座標系の傾斜ベクトルを算出する。
【0055】
これにより,各全体姿勢に対応する計3種類の傾斜ベクトルが得られるので,傾斜行列算出器36によって傾斜ベクトルを並べた傾斜行列を求める。続いて,この傾斜行列に基づいてリンク行列算出器37によってリンク行列T12を算出する。さらに,リンク行列表示器38によってリンク行列T12を表示する。さらに,リンク行列T12から姿勢角算出・表示器39によって,第1座標系から見た第2座標系の姿勢角(ヨー角φ,ピッチ角θ,ロール角ψ)が求められる。
【0056】
次に,各手順について詳しく説明する。まず,図2および図3に示した対象の例について,基準座標系(X,Y,Z)から見た第1座標系への姿勢行列T1,基準座標系から見た第2座標系への姿勢行列T2,第1座標系からみた第2座標系へのリンク行列T12の関係を,図6および図7に示す。ここでは,基準座標系は時間によりその姿勢や位置が変化せず,そのZ軸は重力ベクトルの逆方向を向いている。これら図6および図7の例は,図8に示すリンク構成として表すことができる。
【0057】
まず,リンク行列T12と各姿勢行列T1,T2との関係は次の式1で表される。
T2=T1・T12 …(式1)
この姿勢行列T1を,基準座標系から見た第1座標系の姿勢角(ヨー角φ1,ピッチ角θ1,ロール角ψ1)を用いて表すと,次の式2のようになる。
T1=RPY(φ1,θ1,ψ1
=Rot(Z,φ1)Rot(Y,θ1)Rot(X,ψ1) …(式2)
これは,まず基準座標系のZ軸回りにφ1回転させ,次にZ軸回りに回転した後のY軸回りにθ1回転させ,次にY軸回りに回転した後のX軸回りにψ1回転させることで,第1座標系が得られることを示している。
【0058】
同様に,姿勢行列T2を,基準座標系から見た第2座標系の姿勢角(ヨー角φ2,ピッチ角θ2,ロール角ψ2)を用いて表すと,次の式3のようになる。
T2=RPY(φ2,θ2,ψ2
=Rot(Z,φ2)Rot(Y,θ2)Rot(X,ψ2) …(式3)
また,リンク行列T12を,第1座標系から見た第2座標系の姿勢角(ヨー角φ12,ピッチ角θ12,ロール角ψ12)を用いて表すと,次の式4のようになる。
T12=RPY(φ12,θ12,ψ12
=Rot(z1,φ12)Rot(y1,θ12)Rot(x1,ψ12)…(式4)
これは,第1座標系から各軸のまわりに,φ12,θ12,ψ12の順番で回転させると,第2座標系が得られることを表している。
【0059】
ここで,図8に示すように,リンク11とリンク13には,各座標系の各軸方向への加速度を検出する加速度センサ21〜26が設けられている。さらに基準座標系のZ軸が重力と逆方向に設定されているので,各加速度センサ21〜26の出力から,第1,第2座標系の各軸の基準座標系のZ軸とのなす角が求められる。これは,運動していないリンク機構10では,重力の影響のみが各加速度センサ21〜26で測定されるからである。これらの各加速度センサ21〜26の出力から,第1,第2座標系の各姿勢行列T1,T2を求める方法について説明する。
【0060】
まず,姿勢行列T1,姿勢行列T2,リンク行列T12を一般形で要素表示すると,以下の式5,式6,式7に示すように表すことができる。
【0061】
【数1】

【0062】
【数2】

【0063】
【数3】

【0064】
これらを用いて,式1を要素表示すると,以下の式8となる。
【0065】
【数4】

【0066】
ここで,例えば姿勢行列T1の要素c1は,第1座標系のx1軸と基準座標系のZ軸とのなす傾斜角度の方向余弦である。すなわち,図9に示すように,第1座標系のx1軸と基準座標系のZ軸とのなす傾斜角度をγ1とすると,次の式9で表される。
1=cosγ1 …(式9)
同様に,姿勢行列T1,姿勢行列T2のうち,最下段の各要素が各座標系の各軸と基準座標系のZ軸との間の方向余弦を表しているので,各加速度センサ21〜26の出力値からc1,f1,i1,c2,f2,i2が求まる。
【0067】
そこで,式8の要素表示のうち,c1,f1,i1,c2,f2,i2に着目すると,以下の式10〜式12が得られる。
2=c1p+f1q+i1r …(式10)
2=c1s+f1t+i1u …(式11)
2=c1v+f1w+i1α …(式12)
【0068】
従って,式8は,以下の式13で表すことができる。この式13の左辺の右項を第2傾斜ベクトル,右辺を第1傾斜ベクトルと呼ぶ。
【0069】
【数5】

【0070】
次に,第1座標系と第2座標系との姿勢関係を保持したままで,リンク機構10の全体姿勢を3通りに変更させる。そして,各全体姿勢ごとに,各加速度センサ21〜26の出力値を得る。さらに,上記の手順と同様に,各全体姿勢における第1座標系の傾斜ベクトルおよび第2座標系の傾斜ベクトルを得ることができる。すなわち,各座標系についてそれぞれ3通りの傾斜ベクトルの組が得られる。ここで,リンク機構10の全体姿勢を変化させて得られた第1座標系の傾斜ベクトルの組を第1傾斜行列S1,第2座標系の傾斜ベクトルの組を第2傾斜行列S2とおく。すなわち,それぞれ3つの傾斜ベクトルの組をまとめて傾斜行列として表すことにより,リンク行列T12は,次の式14で表すことができる。
【0071】
【数6】

【0072】
式14において,例えばcjkのjは座標系の番号であり,kは測定回数を示している。また,式14の右辺第2項の逆行列が存在するためには,次の式15が成立する必要がある。
21・f22・i23+f21・i22・c23+c22・f23・i21−i21・f22・c23−f21・c22・i23−i22・f23・c21≠0 …(式15)
具体的には,基準座標系のZ軸回りの回転や,同じ軸回りの回転は姿勢を変化したことにならないので避ける。
【0073】
そして,式14で求められたリンク行列T12の各要素の値を使って,第1座標系から見た第2座標系の各姿勢角は,次の式16〜式18のように決定される。
φ12=atan2(q,p) …(式16)
θ12=atan2(−r,cosφ・p+sinφ・q) …(式17)
ψ12=atan2(sinφ・v−cosφ・w,−sinφ・s+cosφ・t) …(式18)
【0074】
従って,上記の式16〜式18を用いて,第2座標系は,第1座標系をまずz1軸回りにφ12,次に回転後のy2軸回りにθ12,最後に回転後のx2軸回りにψ12回転させることで表すことができる。これから,第1座標系と第2座標系との関係が得られた。ただし,x2軸がz1軸に平行近くになった場合には,式16からφ12が求まらない。このような場合には,第1座標系と第2座標系との関係を表すのに,姿勢角を用いる代わりにリンク行列T12を用いると良い。
【0075】
次に,式19にこのように求められるリンク行列T12の,具体例を示す。
【0076】
【数7】

【0077】
次に,この姿勢角決定方法を図10のフローチャートと図5のブロック図に基づいて説明する。リンク機構10の各リンク関係の設定が終了すると,まず,各加速度センサ21〜26による測定を開始する(S101)。そして,第1座標系の加速度センサ21〜23の傾斜角出力結果からサンプリング器31において,第1座標系のx1軸,y1軸,z1軸に関する傾斜角を抽出する(S102)。さらに,傾斜ベクトル算出器33において傾斜ベクトルを算出して,レジスタ35に記憶する(S103)。
【0078】
同様に,第2座標系の加速度センサ24〜26の結果からサンプリング器32において,第2座標系の傾斜角を抽出する(S104)。さらに,傾斜ベクトル算出器34において傾斜ベクトルを算出して,レジスタ35に記憶する(S105)。第1,第2座標系についての算出が終了したら,姿勢変化指令器28によって姿勢変化動作器27に指示を出し,第1,第2座標系の姿勢を変化させる(S106)。
【0079】
このとき,計測回数カウント器29で計測回数をカウントし,姿勢変化指令器28が姿勢変化動作器27に指令を発する。全体姿勢を3通りに変化させ,3種類の全体姿勢について,両座標系の傾斜ベクトルの組を算出する。3回の計測を実施したら(S107:Yes),傾斜行列算出器36によって,第1座標系の傾斜ベクトルの組から第1傾斜行列S1を,第2座標系の傾斜ベクトルの組から第2傾斜行列S2をそれぞれ生成する(S108)。
【0080】
続いて,第1傾斜行列S1と第2傾斜行列S2とを用いて,リンク行列算出器37によって,リンク行列T12を算出する(S109)。さらに,リンク行列表示器38によって,算出したリンク行列を表示する(S110)。そして,姿勢角算出・表示器39によって,求めたリンク行列を基に,第1座標系から第2座標系への姿勢角(φ,θ,ψ)を算出し表示する(S111)。以上で,この処理を終了する。
【0081】
次に,第1座標系と第2座標系との間に所定の関係がある場合の処理の簡略化について説明する。まず第1に,例えば,z1軸とz2軸とが平行である場合のように,両座標系のうちの1軸が平行であることが判っている場合では,その平行な軸に関する回転のみで記述できる。ただしここでは,z1軸とz2軸とが重力方向に平行である場合は除く。例えば,z1軸とz2軸とが平行である場合では,θ12,ψ12は回転に用いる必要がないので,φ12のみを含む次の式20で表記できる。
【0082】
【数8】

【0083】
また,この場合では,全体姿勢を変化させる回転軸をz1軸とすれば,z1軸とz2軸とにはいずれも加速度センサは不要である。すなわち,加速度センサ21,22,24,25の4個でよい。さらに,2通りの全体姿勢をとらせるだけでよい。そして,2回の測定結果から次の式21を用いてリンク行列T12を得ることができる。
【0084】
【数9】

【0085】
次に,図3の例のように,動作時に剛な構造物を対象とした姿勢角決定装置の具体的な構成の例を,図11のブロック図を参照して説明する。なお,図5に示した例と共通の部材については,同じ符号を付して説明を省略する。以下の,類似のブロック図についても同様である。この図11に示したのは,測定対象が動作時に剛な構造物であり,両座標系のうちの1軸(ここではz1軸とz2軸)が平行であるとともに,平行な回転軸の情報(あるいは全体姿勢の上下)が外部信号として得られる場合である。このようなリンク機構110に適用される姿勢角決定装置では,加速度センサは各座標系のx軸とy軸に設けるのみでよい。
【0086】
動作時に剛な構造物では,リンク機構110が有する関節が動作すると,動作中信号発生器111がリンク機構110が動作中であることを,リンク固定指示器112に送る。さらに,動作が終了するとリンク固定指示器112は,リンク機構110内にある関節の固定をリンク機構固定器113に指示する。これにより,リンク機構110の関節が固定される。
【0087】
ここで,傾斜角を測定中に各加速度センサ21,22,24,25に対し重力加速度以外の,例えば運動による並進加速度が印加されると,傾斜角の測定結果に誤差が生ずる。このため全体姿勢計測中は傾斜ベクトル算出器33,34から出力された傾斜ベクトルの各要素の値が安定している必要がある。そこで静止状態判定器114により,タイマー115でカウントした時間内に傾斜ベクトル算出器33,34から出力された傾斜ベクトルの各要素が一定か否かを判定し,各要素の変化量が規定値以内であれば,レジスタ35に取得した傾斜ベクトルを記録するように指示する。
【0088】
次に静止状態判定器114は姿勢変化指令器28に姿勢変化を指令してもよいことを伝える。姿勢変化指令器28は姿勢変化動作器27に全体姿勢を変化させるように指示する。姿勢変化動作器27は,第1座標系と第2座標系の姿勢関係が変化しないようリンク機構110の全体姿勢を変更する。各加速度センサ21,22,24,25の出力はサンプリング器31,32で常に取り込まれ,傾斜ベクトル算出器33,34において傾斜ベクトルが生成される。
【0089】
このとき,この例では外部から回転軸平行状態検知用信号116が得られるので,回転軸判定器117は,回転軸の判定を行い,傾斜ベクトル算出器33,34と計測回数カウント器29に対し,回転軸の軸名と,得られた複数軸の加速度信号のうち,傾斜行列を算出するために必要な加速度信号名、および必要計測回数を伝える。さらに,レジスタ35は,計測回数カウント器29から得られた計測回数値と,傾斜行列の各要素値を保存する。本計測は計測回数カウント器29が規定する回数繰り返され,必要な計測回数が完了したらリンク行列算出器37により,第1座標系からみた第2座標系のリンク行列が算出される。これをリンク行列表示器38により表示し,さらに,姿勢角算出・表示器39によって姿勢角に変換する。
【0090】
次に,測定対象が動作時に剛な構造物であり,両座標系のうちの1軸の組が平行であるが,平行な回転軸の情報(あるいは全体姿勢の上下)が外部信号としては得られない場合の例を,図12のブロック図に示す。この場合には,回転軸の判定を内部で行わなければならない。そのため,加速度センサ21〜26は各軸に計6個必要となっている。
【0091】
この例では,サンプリング器31,32において得られた傾斜角信号を回転軸判定器117に送る。回転軸判定器117は,第1座標系と第2座標系の同じ軸の傾斜角を比較し,それぞれの傾斜角値の変化量が特定の軸について既定値内であれば、当該軸が回転軸でありかつ当該軸が第1座標系および第2座標系において平行な軸であると判定する。回転軸判定器117は,このようにして判定された平行な軸の組をそれぞれの回転軸と判定する。さらに,傾斜ベクトル算出器33,34と計測回数カウント器29に対し,回転軸の軸名と,得られた複数軸の傾斜角信号のうち傾斜行列を算出するために必要な軸名、および必要計測回数を伝える。以下の処理は,上記の図11の例と同様である。
【0092】
次の例は,上記の図12の例に加えて,平行な1組の軸が水平面内にある場合である。例えば,上記の図12の例において,平行な軸の組であるとともに全体姿勢を変化させる回転軸がz1軸とz2軸であり,かつこれらが重力方向を法線にもつ水平面内にある場合である。この場合には,x1軸とx2軸,あるいは,y1軸とy2軸のいずれかの組み合わせのみに加速度センサを設置すればよい。すなわち,加速度センサ21と24の組み合わせまたは加速度センサ22と25の組み合わせのいずれかでよい。そして,全体姿勢を1通りに設定するだけでよい。この場合には,加速度センサの出力から得られる傾斜角からz1軸回りの姿勢角変化であるヨー角を得ることができる。
【0093】
また,第1の全体姿勢と第2の全体姿勢との間に,加速度センサを設置した軸が基準座標系のZ軸に平行にならない場合は,次の式22を式20に代入することでリンク行列T12を得ることができる。
ヨー角φ12=第2座標系の傾斜角−第1座標系の傾斜角 …(式22)
すなわち,この場合には回転軸がz1軸であるため,姿勢角のうちθ12,ψ12は回転に用いる必要がなく,リンク行列T12はヨー角φ12のみで表すことができる。
【0094】
また,第1の全体姿勢と第2の全体姿勢との間に,加速度センサを設置した軸が基準座標系のZ軸に平行になる場合は,次の式23と式20とからリンク行列T12を得ることができる。
ヨー角φ12=第2座標系の傾斜角+第1座標系の傾斜角 …(式23)
【0095】
さらに,重力加速度の大きさが既知で,座標系の上下(重力方向)が判る場合では,次のような簡略化が可能である。この場合の例を図13のブロック図に示す。この場合には,姿勢角決定装置は,加速度算出器118,119を有し,これらが座標系の上下識別用外部信号120を受ける。
【0096】
重力加速度の大きさが|G|であれば,例えば,z1軸方向の加速度azは,x1軸およびy1軸方向の加速度ax,ayと次の式24のような関係がある。
|G|=√(ax2+ay2+az2) …(式24)
従って,z1軸方向の加速度azは,加速度算出器118によりx1軸およびy1軸方向の加速度ax,ayを用いて次の式25のように表すことができる。
az=±√(|G|2−ax2−ay2) …(式25)
【0097】
さらに,座標系上下識別用外部信号120によりz1軸の上下が判ることから,azの符号が与えられる。以上のことから,z1軸とz2軸とにはいずれも加速度センサは不要であり,加速度センサ21,22,24,25の4個の測定結果からz1軸方向とz2軸方向との加速度も得ることができる。また,リンク行列T12は,式14から算出できる。なお,この第2の条件は,例えば地表上でおよそ直立して移動するロボット等では,一般に満たされるものである。
【0098】
次に,図3の例のように,動作時に剛な構造物を対象とした姿勢角決定装置のより一般的な構成を図14に示す。この例のリンク機構110も,図8の例と同様に,第1座標系と第2座標系が,リンク11,リンク12,リンク13および関節14,関節15で結びつけられているものとして表される。リンク機構110には測定対象の各座標系の各軸方向に沿って,それぞれ加速度センサが設けられる。すなわち,第1座標系のリンク11には,x1軸加速度センサ21,y1軸加速度センサ22,z1軸加速度センサ23が設けられている。また,第2座標系のリンク13には,x2軸加速度センサ24,y2軸加速度センサ25,z2軸加速度センサ26が設けられている。さらに,このリンク機構10には,全体姿勢を変化させるためのモータ等を有する姿勢変化動作器27を含む姿勢変化部が設けられている。
【0099】
動作時に剛な構造物では,リンク機構110が有する関節が動作すると,動作中信号発生器111がリンク機構110が動作中であることを,リンク固定指示器112に送る。さらに,動作が終了するとリンク固定指示器112は,リンク機構110内にある関節の固定をリンク機構固定器113に指示する。これにより,リンク機構110の関節が固定される。
【0100】
ここで,傾斜角を測定中に各加速度センサ21〜26に対し重力加速度以外の,例えば運動による並進加速度が印加されると,傾斜角の測定結果に誤差が生ずる。このため,全体姿勢計測中は傾斜ベクトル算出器33,34から出力された傾斜ベクトルの各要素の値が安定している必要がある。そこで静止状態判定器114により,タイマー115でカウントした時間内に傾斜ベクトル算出器33,34から出力された各傾斜ベクトルの各要素が一定か否かを判定し,各要素の変化量が規定値以内であれば,レジスタ35に取得した傾斜ベクトルを記録するように指示する。
【0101】
次に,静止状態判定器114は姿勢変化指令器28に姿勢変化を指令してもよいことを伝える。姿勢変化指令器28は姿勢変化動作器27に全体姿勢を変化させるように指示する。姿勢変化動作器27は,第1座標系と第2座標系の姿勢関係が変化しないようリンク機構110の全体姿勢を変更する。各加速度センサ21〜26の出力は,サンプリング器31,32で常に取り込まれ,傾斜ベクトル算出器33,34において傾斜ベクトルが生成される。
【0102】
レジスタ35は計測回数カウント器29から得られた計測回数値と,傾斜ベクトルの各要素値を保存する。本計測は計測回数カウント器29が規定する回数繰り返され,必要な計測回数が完了したらリンク行列算出器37により,第1座標系からみた第2座標系のリンク行列が算出される。これをリンク行列表示器38により表示し,さらに姿勢角算出・表示器39において姿勢角に変換し表示する。
【0103】
次に,図4に示したような,リンクが柔であり,関係が柔である構造物を対象とした姿勢角決定装置について説明する。このような構造物では,全体姿勢を変化させることで第1座標系と第2座標系の姿勢関係が変化するため,全体姿勢を変化させることによって測定誤差が増える恐れがある。そこで,全体姿勢を変化させずに姿勢角を測定することが好ましい。この例における構造物と各座標系との関係を図15に示す。また,姿勢角決定装置の概略構成を図16のブロック図に示す。
【0104】
この例では,図15に示すように,第1座標系および第2座標系上には,座標系のそれぞれの軸方向への加速度とそれぞれの軸回りの角速度を測定するための加速度センサ21〜26に加えて角速度センサ211〜216が設置されている。図16に示すように,加速度センサ21〜26からの出力は,サンプリング器31,32によってサンプリングされ,角速度センサ211〜216からの出力はサンプリング器217,218によってサンプリングされる。サンプリングされた出力は,合成器219,220に導入される。合成器219,220ではそれぞれのセンサ出力を基に、現在のもっとも確からしい姿勢を算出する。
【0105】
さらに,姿勢行列算出器221,222は合成器219,220の出力から姿勢行列を生成する。この結果,時間の経過とともに変化する第1座標系および第2座標系の基準座標系から見た姿勢行列T1,T2を,連続的に得ることができる。このようにして得られた姿勢行列と,次の式26から,リンク行列T12を得ることができる。
T12=T1-1・T2 …(式26)
ただし,T1:基準座標系から見た第1座標系への姿勢行列
T2:基準座標系から見た第2座標系への姿勢行列
T12:第1座標系から見た第2座標系へのリンク行列
この例の方法を採用すれば,全体姿勢は1通りでよく,変化させる必要はない。
【0106】
また,あるいは,図15に示すような例において,第1座標系および第2座標系上に,座標系のそれぞれの軸方向への加速度を測定するための加速度センサと,磁北方向を測定するための磁気センサとが設置されているものとしてもよい。加速度センサを用いれば各座標系上の各座標軸と基準座標系Z軸との間の角度として傾斜角が得られ,次に傾斜角から,ロール角ψおよびピッチ角θを求めることができる。ここで姿勢角としてロール角,ピッチ角,ヨー角を用いるときは,姿勢角表記の性質から,磁気センサをそれぞれの座標系のx軸に設置することで,ヨー角φの計算が容易となるため好ましい。また,x軸だけでなく各座標系のy軸,z軸に設置すれば,測定精度と信頼性が向上し,より好ましい構成となる。
【0107】
次に,さらに別の例を説明する。基準座標系からみた第1座標系の姿勢は,姿勢行列T1で表すことができる。姿勢行列T1の具体的な要素は上記した式2を展開して得られる次の式27で表される。
【0108】
【数10】

【0109】
このとき,姿勢行列T1の第3行第1列の成分は,第1座標系のx1軸と基準座標系のZ軸とのなす傾斜角度の方向余弦である。また,第3行第2列の成分は,第1座標系のy1軸と基準座標系のZ軸とのなす傾斜角度の方向余弦である。また,第3行第3列の成分は,第1座標系のz1軸と基準座標系のZ軸とのなす傾斜角度の方向余弦である。すなわち図9に示すように,第1座標系の各軸と基準座標系のZ軸とのなす傾斜角度をγ1〜γ3とおけば,傾斜角度の方向余弦は次の式28〜式30で表される。
【0110】
−sinθ1=cosγ1 …(式28)
cosθ1sinψ1=cosγ2 …(式29)
cosθ1cosψ1=cosγ3 …(式30)
さらに,これらの式から,基準座標系から見た第1座標系のロール角θ1,ピッチ角ψ1は,次の式31,式32で表される。
θ1=sin-1(−cosγ1) …(式31)
ψ1=tan-1(cosγ2/cosγ3) …(式32)
【0111】
加速度センサの出力は座標系の姿勢が基準座標系のZ軸回りに回転しても変化しないため,ヨー角φを得ることはできない。しかし,磁気センサを用いて磁北を求めることで,ヨー角φを得ることができる。具体的には,基準座標系からみた磁北方向と,第1座標系から見た磁北方向の差異分をヨー角φ1と置き,式31〜32および式2を用いて姿勢行列T1を求める。次に基準座標系からみた磁北方向と第2座標系から見た磁北方向の差異分をヨー角φ2と置き,第2座標系に関する式31〜32および式2から姿勢行T2を求める。姿勢行列T1および姿勢行列T2を式26に適用することで,リンク行列T12を得ることができる。
【0112】
また別の方法として,磁気センサを用いて第1座標系から見た第2座標系へのヨー角を直接求めてもよい。また本形態において磁気センサの代わりに,外部からの情報として,GPS(Global Positioning System)や,マーカーを用いてもよい。そして,次の式33において,磁気センサまたは外部情報で得られた第1座標系から見た第2座標系のヨー角を(φ2−φ1)に代入する。
【0113】
【数11】

【0114】
また姿勢角θ1,θ2,ψ1,ψ2を加速度センサの出力から求める。本手法によりリンク行列T12を求めることができる。このようにすれば,第1座標系および第2座標系に設置する加速度センサの個数はそれぞれ2個でよく,測定精度を向上することができる。また全体姿勢は1通りでよい。
【0115】
次に,さらに別の姿勢角決定装置の概略構成を図17のブロック図に示す。第1座標系および第2座標系上には,座標系のそれぞれの軸方向への加速度を測定するための加速度センサ21〜26と,それぞれの軸回りの角速度を測定するための角速度センサ211〜216と,磁北方向を測定するための磁気センサ231〜236を設置している。加速度センサ21〜26と角速度センサ211〜216を用いればロール角ψ,ピッチ角θ,ヨー角φを求めることができるが,角速度センサ211〜216の出力の時間的な変化により,ヨー角φが変化する場合がある。
【0116】
そこで角速度センサ211〜216の出力を磁気センサ231〜236の出力と比較して統合することによってヨー角φの変化量を低減することができる。また反対に,磁気センサ231〜236によって求められたヨー角φは外部磁界の影響を受けるが,この影響を角速度センサ211〜216の出力と比較して統合することによって低減することができる。
【0117】
この手法により角速度センサ211〜216と磁気センサ231〜236が互いの利点によって補完するため,姿勢角から得られる姿勢行列T1およびT2が角速度センサ211〜216の出力変動や外部磁界の影響を受にくくなり,姿勢行列T1およびT2から求まるリンク行列T12の測定精度を向上することができる。なおここでは柔軟な構造物について説明したが,常に剛な構造物や動作中のみ剛となるリンクをもつ構造物へ適用してもよい。またこの場合の全体姿勢は1通りでよい。
【0118】
さらに,図4に示したような,リンクが柔であり,関係が柔である構造物を対象とした別の姿勢角決定装置の例について説明する。外部から姿勢角φが与えられる場合の姿勢角決定装置の概略構成を図18に示す。このようなものでは,第1座標系および第2座標系上に設置された加速度センサ21,22,24,25からの加速度を用い,上記の式31,式32からロール角ψおよびピッチ角θが求まる。またヨー角は外部姿勢角信号241として与えられる。これら3つの姿勢角をもとに,姿勢行列算出器221,222において姿勢行列が得られる。この結果をレジスタ35に保存したのちリンク行列算出器37においてリンク行列を求める。
【0119】
なお,以上の各例において述べた加速度センサ,角速度センサ,磁気センサは,必ずしも第1座標系および第2座標系上に常設する必要はない。初期状態ではこれらセンサが第1座標系のみに設置され,ある全体姿勢において第1座標系の姿勢を計測後,これらセンサを第2座標系に移動し,同じ全体姿勢において第2座標系の姿勢を計測するのに用いてもよい。
【0120】
以上のような姿勢角決定装置が適用されるリンク機構の具体例を図19に示す。この例では,リンク11,12,13と,リンク同士を接続する関節14,15を有している。各リンク上には各リンクの姿勢を規定するために,それぞれ対応する座標系が設けられている。リンク11上の部位にはリンク11と一体となって動く第1座標系が,リンク12上の部位にはリンク12と一体となって動く第2座標系が,またリンク13上の部位にはリンク13と一体となって動く第3座標系が設置されている。
【0121】
ここで,関節14および関節15にはそれぞれのリンク角度を変化させるアクチュエータとしてのモータと,関節が接続するリンクのリンク角度を測定するエンコーダが配置されている。通常エンコーダは小型化,軽量化のために,絶対角度タイプではなく相対角度タイプが使われる。相対角度タイプでは初期値が不定であるため,リンク機構を初期化する前の状態では正しいリンク角度は得られない。このためリンク機構利用前には,各関節をその最大回転可能角度まで回転させ,ピンなどの機械的な突起部に押し当てることで関節角度の初期値を規定する初期化工程が必要である。この初期化工程には時間がかかること,またリンク機構の重量バランスが大きく崩れるため体勢が不安定になることといった課題があった。
【0122】
これに対して,本発明を利用した初期化工程の実施例について述べる。図19に示すように,このリンク機構には,計測中には第1座標系と第2座標系間の姿勢関係が一定となるよう,関節14および関節15にリンク機構固定器16,17が設置されている。リンク機構固定器16,17は,各リンク間角度を固定する機能を持つ。リンク機構固定器16,17としては,図20,図21,図22に示す三種類の手法がある。
【0123】
図20に示した手法では,リンク12には,リンク12とリンク13との間の角度変化を計測するためのエンコーダ311と,リンク2とリンク3の間の角度を変化させることができるモータ312と,モータ312を制御するためのコントローラ313が設置されている。そして,各全体姿勢についてリンク間の姿勢関係を計測している間は,継続的にエンコーダ311の出力をモニタする。そしてリンク固定指示器112(図11参照)の発する命令により,コントローラ313はモータ312に対してエンコーダ311の出力が常に一定となるようにサーボ方式による位置制御指令を出す。この結果,リンク12とリンク13の間の角度を位置制御により一定とすることができる。
【0124】
このサーボ方式による位置制御によるリンク間角度の固定手法には,はじめから関節にエンコーダ311およびモータ312が設置されている場合,追加装置が不要である利点がある。また本手法は電気的にリンク間の姿勢関係を固定しているため機械的な切り替え時間が不要であり,リンク間の姿勢関係測定といった初期化工程終了後,即座にリンク機構を利用することができる。このため初期化工程の効率化が可能となる。
【0125】
またあるいは,図21に示すように,リンク12から延びリンク13に押し当てることでリンク12に対するリンク13の動きを止めるための摩擦を用いたクラッチ314と,クラッチ314を作動させるためのアクチュエータ315が設置されているものとしてもよい。各全体姿勢についてリンク間の姿勢関係を計測している間は,リンク固定指示器112の発する命令によりクラッチ314の動作を有効とすることで,リンク12に対するリンク13の角度関係を固定できる。クラッチ314による固定方法は,エンコーダ311やモータ312を使用せずリンク固定機構が簡単になるという利点がある。
【0126】
またあるいは,図22に示すように,リンク12とリンク13の間に,ロッド+ピン316が設置されているものとしてもよい。このロッド+ピン316によりリンク同士を機械的に固定する。本固定手法は,他の手法にくらべ最も強固であるため,全体姿勢を変化させてもリンク間の姿勢関係を最も精度良く一定とすることができる。またロッド+ピン316による固定方法は電気信号を必要とせず,もっとも容易かつ確実な手法である。本手法による固定手法は,ロッド+ピン316を容易に取り外せないことから,リンク姿勢関係の計測後も,継続的にリンク間の姿勢関係を変えない用途に向いている。
【0127】
これらの固定手法を用いて求めた第1座標系から第2座標系へのリンク行列をT1,第2座標系から第3座標系へのリンク行列をT2とおく。このとき,第1座標系から見た第3座標系へのリンク行列T12は,次の式34で表される。
T12=T1・T2 …(式34)
【0128】
このようにすれば,リンク行列T12が求まるので,式34の逆関数を求めることで,関節14および関節15における関節角度を算出できる。逆関数の求め方の例は,「ロボット・マニピュレータ コロナ社 吉川恒夫訳」に記載されている。さらに,各関節角度の初期値が求まれば,初期化工程が終了した後の,任意の時間経過後の関節角度は,関節角度の初期値と関節角度の変化分を用いて,次の式35,式36によって表される。このとき,各関節角度の変化分は,相対角度タイプのエンコーダによって得られる。
関節14の角度=関節14の角度の初期値+関節14の角度の変化分 …(式35)
関節15の角度=関節15の角度の初期値+関節15の角度の変化分 …(式36)
【0129】
本実施例によれば,リンク機構の初期化工程をリンク機構の姿勢を大きく変化させなくとも,第1座標系および第3座標系の間の姿勢関係を容易にかつ高精度に求めることができる。また得られた座標系間の姿勢関係を利用して,各関節に設置されたリンク機構の初期化工程を簡便に行うことができる。
【0130】
以上詳細に説明したように本形態の姿勢角決定装置20によれば,姿勢関係を求めようとする両座標系の各軸方向にそれぞれ加速度センサ21〜26を備えているので,これらの測定結果から各軸の傾斜方向を算出することができる。さらに,この測定を姿勢を変化させて1〜3回行い,リンク行列算出器37により,リンク行列T12を算出することができる。従って,リンク行列T12から,リンク構造に含まれる両座標系の間の姿勢角が求められる。すなわち,図面や実測によることなく,複雑な関係にある座標系間であってもその姿勢関係を容易に,精度良く求めることができる。
【0131】
なお,本形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】本形態の姿勢角決定装置の対象部材の例を示す説明図である。
【図2】対象部材の具体例を示す説明図である。
【図3】対象部材の具体例を示す説明図である。
【図4】対象部材の具体例を示す説明図である。
【図5】本形態の姿勢角決定装置の概略構成を示すブロック図である。
【図6】対象部材の具体例を示す説明図である。
【図7】対象部材の具体例を示す説明図である。
【図8】対象部材のリンク構成を示す説明図である。
【図9】基準座標系のZ軸と他の座標系の軸との関係を示す説明図である。
【図10】本形態の姿勢角決定方法のアルゴリズムを示すフローチャートである。
【図11】姿勢角決定装置の別の例の概略構成を示すブロック図である。
【図12】姿勢角決定装置の別の例の概略構成を示すブロック図である。
【図13】姿勢角決定装置の別の例の概略構成を示すブロック図である。
【図14】姿勢角決定装置の別の例の概略構成を示すブロック図である。
【図15】対象部材のリンク構成を示す説明図である。
【図16】姿勢角決定装置の別の例の概略構成を示すブロック図である。
【図17】姿勢角決定装置の別の例の概略構成を示すブロック図である。
【図18】姿勢角決定装置の別の例の概略構成を示すブロック図である。
【図19】リンク機構の具体例を示す説明図である。
【図20】リンク機構固定器の具体例を示す説明図である。
【図21】リンク機構固定器の具体例を示す説明図である。
【図22】リンク機構固定器の具体例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0133】
10 リンク機構
11,12 リンク
20 姿勢角決定装置
21,22,23,24,25,26 加速度センサ
28 姿勢変化指令器
33 傾斜ベクトル算出器
34 傾斜ベクトル算出器
36 傾斜行列算出器
37 リンク行列算出器
39 姿勢角算出・表示器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上の関節を介して接続された第1リンクおよび第2リンクを有するリンク機構として表現されるとともに,姿勢変化動作部に搭載または接続されている構造体における,第1リンクの座標系から見た第2リンクの座標系の姿勢角を決定する姿勢角決定装置において,
各リンクに設定された3軸直交座標系の各軸について,軸方向と重力ベクトルの方向との間の角度である傾斜角を取得する傾斜角取得部と,
第1リンクと第2リンクとの姿勢関係を固定したまま,姿勢変化動作部に構造体の姿勢変化を指示して最大3通りの全体姿勢を取らせる姿勢変化指示部と,
前記姿勢変化指示部の指示による各全体姿勢における各リンクについて,前記傾斜角取得部で取得された各軸方向の傾斜角から傾斜ベクトルを求める傾斜ベクトル算出部と,
各リンクについて,前記傾斜ベクトル算出部で全体姿勢ごとに求められた傾斜ベクトルにより傾斜行列を求める傾斜行列算出部と,
前記傾斜行列算出部により求められた各リンクの傾斜行列に基づいて,一方と他方の逆行列との積を求めることにより,姿勢角を表すリンク行列を算出する第1リンク行列算出部とを有することを特徴とする姿勢角決定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の姿勢角決定装置において,前記傾斜角取得部は,傾斜角を,
第1リンクおよび第2リンクにそれぞれ,互いに直交する3方向に設けられた水準器を用いて得ることを特徴とする姿勢角決定装置。
【請求項3】
請求項1に記載の姿勢角決定装置において,前記傾斜角取得部は,傾斜角を,
第1リンクおよび第2リンクにそれぞれ,互いに直交する3方向に設けられた加速度センサの出力値から求めることを特徴とする姿勢角決定装置。
【請求項4】
請求項1に記載の姿勢角決定装置において,前記傾斜角取得部は,傾斜角を,
第1リンクおよび第2リンクにそれぞれ,互いに直交する2方向に設けられた加速度センサの出力値と,
各リンクごとの各加速度センサの出力値の2乗の和をその場所の重力加速度の値の2乗から差し引いた値の平方根とから求めることを特徴とする姿勢角決定装置。
【請求項5】
1以上の関節を介して接続された第1リンクおよび第2リンクを有するリンク機構として表現されるとともに,姿勢変化動作部に搭載または接続されている構造体における,第1リンクの座標系から見た第2リンクの座標系の姿勢角を決定する姿勢角決定装置において,
各リンクに1方向が互いに平行となるように設定された3軸直交座標系の当該1方向以外の各方向の加速度値を取得する加速度値取得部と,
第1リンクと第2リンクとの姿勢関係を固定したまま,姿勢変化動作部に構造体の姿勢変化を指示して,当該1方向に平行な軸の周りの回転による2通りの全体姿勢を取らせる姿勢変化指示部と,
前記姿勢変化指示部の指示による各全体姿勢における各リンクについて,前記加速度値取得部で取得された各軸方向の加速度値から傾斜角を求める傾斜角測定部と,
前記姿勢変化指示部の指示による各全体姿勢における各リンクについて,前記傾斜角測定部で求められた各軸方向の傾斜角から傾斜ベクトルを求める傾斜ベクトル算出部と,
各リンクについて,前記傾斜ベクトル算出部で全体姿勢ごとに求められた傾斜ベクトルにより傾斜行列を求める傾斜行列算出部と,
前記傾斜行列算出部により求められた各リンクの傾斜行列に基づいて,一方と他方の逆行列との積を求めることにより,姿勢角を表すリンク行列を算出する第1リンク行列算出部とを有することを特徴とする姿勢角決定装置。
【請求項6】
1以上の関節を介して接続された第1リンクおよび第2リンクを有するリンク機構として表現される構造体における,第1リンクの座標系から見た第2リンクの座標系の姿勢角を決定する姿勢角決定装置において,
各リンクに1方向が互いに平行かつ水平となるように設定された3軸直交座標系の当該1方向以外の任意の1方向の加速度値を取得する加速度値取得部と,
各リンクについて,前記加速度値取得部で取得された加速度値から傾斜角を求める傾斜角測定部と,
前記傾斜角測定部により求められた各リンクの傾斜角の差より姿勢角を算出する姿勢角計算部とを有することを特徴とする姿勢角決定装置。
【請求項7】
1以上の関節を介して接続された第1リンクおよび第2リンクを有するリンク機構として表現される構造体における,第1リンクの座標系から見た第2リンクの座標系の姿勢角を決定する姿勢角決定装置において,
各リンクに設けられそれぞれにおける加速度値を取得する加速度値取得部と,
各リンクに設定された座標系間のヨー角を取得する第1ヨー角取得部と,
前記加速度値取得部で取得された加速度値と,前記第1ヨー角取得部で取得されたヨー角とから,姿勢角を表すリンク行列を算出する第2リンク行列算出部とを有することを特徴とする姿勢角決定装置。
【請求項8】
1以上の関節を介して接続された第1リンクおよび第2リンクを有するリンク機構として表現される構造体における,第1リンクの座標系から見た第2リンクの座標系の姿勢角を決定する姿勢角決定装置において,
各リンクに設けられそれぞれにおける加速度値を取得する加速度値取得部と,
各リンクについて,そこに設定された座標系と基準座標系との間のヨー角を取得する第2ヨー角取得部と,
各リンクについて,前記加速度値取得部で取得された加速度値と,前記第2ヨー角取得部で取得されたヨー角とから,基準座標系に対する姿勢行列を求める第1姿勢行列算出部と,
前記第1姿勢行列算出部により求められた各リンクの姿勢行列に基づいて,一方と他方の逆行列との積を求めることにより,姿勢角を表すリンク行列を算出する第1リンク行列算出部とを有することを特徴とする姿勢角決定装置。
【請求項9】
1以上の関節を介して接続された第1リンクおよび第2リンクを有するリンク機構として表現される構造体における,第1リンクの座標系から見た第2リンクの座標系の姿勢角を決定する姿勢角決定装置において,
各リンクに設けられそれぞれにおける加速度値を取得する加速度値取得部と,
各リンクに設けられそれぞれにおける角速度値を取得する角速度値取得部と,
各リンクについて,前記加速度値取得部で取得された加速度値と,前記角速度値取得部で取得された角速度値とから,基準座標系に対する姿勢行列を求める第2姿勢行列算出部と,
前記第2姿勢行列算出部により求められた各リンクの姿勢行列に基づいて,一方と他方の逆行列との積を求めることにより,姿勢角を表すリンク行列を算出する第1リンク行列算出部とを有することを特徴とする姿勢角決定装置。
【請求項10】
1以上の関節を介して接続された第1リンクおよび第2リンクを有するリンク機構として表現される構造体における,第1リンクの座標系から見た第2リンクの座標系の姿勢角を決定する姿勢角決定装置において,
各リンクに設けられそれぞれにおける加速度値を取得する加速度値取得部と,
各リンクに設けられた磁気センサと,
各リンクについて,前記加速度値取得部で取得された加速度値と,前記磁気センサで取得された磁北方向との交差角の情報とから,基準座標系に対する姿勢行列を求める第3姿勢行列算出部と,
前記第3姿勢行列算出部により求められた各リンクの姿勢行列に基づいて,一方と他方の逆行列との積を求めることにより,姿勢角を表すリンク行列を算出する第1リンク行列算出部とを有することを特徴とする姿勢角決定装置。
【請求項11】
請求項9に記載の姿勢角決定装置において,
各リンクに設けられた磁気センサを有し,
前記第2姿勢行列算出部は,前記加速度値取得部で取得された加速度値と,前記角速度値取得部で取得された角速度値と,前記磁気センサで取得された磁北方向との交差角の情報とから,基準座標系に対する姿勢行列を求めることを特徴とする姿勢角決定装置。
【請求項12】
請求項1から請求項5までのいずれか1つに記載の姿勢角決定装置において,前記姿勢変化動作部は,
姿勢変化装置を内蔵するロボットであり自ら全体姿勢を形成することを特徴とする姿勢角決定装置。
【請求項13】
1以上の関節を介して接続された第1リンクおよび第2リンクを有するリンク機構として表現されるとともに,姿勢変化動作部に搭載または接続されている構造体における,第1リンクの座標系から見た第2リンクの座標系の姿勢角を決定する姿勢角決定方法において,
各リンクに設定された3軸直交座標系の各軸について,軸方向と重力ベクトルの方向との間の角度である傾斜角を取得し,
第1リンクと第2リンクとの姿勢関係を固定したまま,姿勢変化動作部に構造体の姿勢変化を指示して最大3通りの全体姿勢を取らせ,
前記指示による各全体姿勢における各リンクについて,取得した各軸方向の傾斜角から傾斜ベクトルを求め,
各リンクについて,全体姿勢ごとに求めた傾斜ベクトルにより傾斜行列を求め,
求めた各リンクの傾斜行列に基づいて,一方と他方の逆行列との積を求めることにより,姿勢角を表すリンク行列を算出することを特徴とする姿勢角決定方法。
【請求項14】
請求項13に記載の姿勢角決定方法において,傾斜角を,
第1リンクおよび第2リンクにそれぞれ,互いに直交する2方向に設けられた加速度センサの出力値と,
各リンクごとの各加速度センサの出力値の2乗の和をその場所の重力加速度の値の2乗から差し引いた値の平方根とから求めることを特徴とする姿勢角決定方法。
【請求項15】
1以上の関節を介して接続された第1リンクおよび第2リンクを有するリンク機構として表現されるとともに,姿勢変化動作部に搭載または接続されている構造体における,第1リンクの座標系から見た第2リンクの座標系の姿勢角を決定する姿勢角決定方法において,
各リンクに1方向が互いに平行となるように設定された3軸直交座標系の当該1方向以外の各方向の加速度値を取得し,
第1リンクと第2リンクとの姿勢関係を固定したまま,姿勢変化動作部に構造体の姿勢変化を指示して,当該1方向に平行な軸の周りの回転による2通りの全体姿勢を取らせ,
前記指示による各全体姿勢における各リンクについて,取得した各軸方向の加速度値から傾斜角を求め,
前記指示による各全体姿勢における各リンクについて,求めた各軸方向の傾斜角から傾斜ベクトルを求め,
各リンクについて,全体姿勢ごとに求められた傾斜ベクトルにより傾斜行列を求め,
求めた各リンクの傾斜行列に基づいて,一方と他方の逆行列との積を求めることにより,姿勢角を表すリンク行列を算出することを特徴とする姿勢角決定方法。
【請求項16】
1以上の関節を介して接続された第1リンクおよび第2リンクを有するリンク機構として表現される構造体における,第1リンクの座標系から見た第2リンクの座標系の姿勢角を決定する姿勢角決定方法において,
各リンクに1方向が互いに平行かつ水平となるように設定された3軸直交座標系の当該1方向以外の任意の1方向の加速度値を取得し,
各リンクについて,取得した加速度値から傾斜角を求め,
求めた各リンクの傾斜角の差より姿勢角を算出することを特徴とする姿勢角決定方法。
【請求項17】
1以上の関節を介して接続された第1リンクおよび第2リンクを有するリンク機構として表現される構造体における,第1リンクの座標系から見た第2リンクの座標系の姿勢角を決定する姿勢角決定方法において,
各リンクにおける加速度値を取得し,
各リンクに設定された座標系間のヨー角を取得し,
取得した加速度値と,取得したヨー角とから,姿勢角を表すリンク行列を算出することを特徴とする姿勢角決定方法。
【請求項18】
1以上の関節を介して接続された第1リンクおよび第2リンクを有するリンク機構として表現される構造体における,第1リンクの座標系から見た第2リンクの座標系の姿勢角を決定する姿勢角決定方法において,
各リンクにおける加速度値を取得し,
各リンクについて,そこに設定された座標系と基準座標系との間のヨー角を取得し,
各リンクについて,取得した加速度値と,取得したヨー角とから,基準座標系に対する姿勢行列を求め,
求めた各リンクの姿勢行列に基づいて,一方と他方の逆行列との積を求めることにより,姿勢角を表すリンク行列を算出することを特徴とする姿勢角決定方法。
【請求項19】
1以上の関節を介して接続された第1リンクおよび第2リンクを有するリンク機構として表現される構造体における,第1リンクの座標系から見た第2リンクの座標系の姿勢角を決定する姿勢角決定方法において,
各リンクにおける加速度値を取得し,
各リンクにおける角速度値を取得し,
各リンクについて,取得した加速度値と,取得した角速度値とから,基準座標系に対する姿勢行列を求め,
求めた各リンクの姿勢行列に基づいて,一方と他方の逆行列との積を求めることにより,姿勢角を表すリンク行列を算出することを特徴とする姿勢角決定方法。
【請求項20】
1以上の関節を介して接続された第1リンクおよび第2リンクを有するリンク機構として表現される構造体における,第1リンクの座標系から見た第2リンクの座標系の姿勢角を決定する姿勢角決定方法において,
各リンクにおける加速度値を取得し,
各リンクにおける磁北方向との交差角の情報を磁気センサで取得し,
各リンクについて,取得した加速度値と,取得した磁北方向との交差角の情報とから,基準座標系に対する姿勢行列を求め,
求めた各リンクの姿勢行列に基づいて,一方と他方の逆行列との積を求めることにより,姿勢角を表すリンク行列を算出することを特徴とする姿勢角決定方法。
【請求項21】
請求項13から請求項15までのいずれか1つに記載の姿勢角決定方法において,
前記姿勢変化動作部が,姿勢変化装置を内蔵するロボットであり,
自ら全体姿勢を形成することを特徴とする姿勢角決定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2008−2867(P2008−2867A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−170896(P2006−170896)
【出願日】平成18年6月21日(2006.6.21)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】