説明

媒体カールを測定する角度付アレイセンサ法及びシステム

【課題】確実なマーキングが達成され、インクカートリッジへのダメージが防止されるように、媒体カールを測定する。
【解決手段】1つ以上のカールした媒体シート132〜138が、先端縁及び後端縁のどちらか又は両方からカーラーをもつローラ/ニップのセットを経て、角度付アレイセンサ130へ向かって、プロセス方向に前進させられる。クロスプロセス方向に回転ベクトルをもつ角度付アレイセンサ130は、シートカールの関数を計算するために、カーラーから出る媒体シートに対し角度を付けて、媒体前進装置の上流又は下流に配置される。シートカールの関数は、前進する媒体シートが角度付アレイセンサ130にあるアレイと接触するポイントを測定することによって得られる。このようなカール測定アプローチは、環境的に引き起こされるエラーに対する正確性とロバスト性を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は一般的にプリンタ、マルチファンクション装置、複写装置、ファックス装置などのレンダリング装置に関する。また、実施形態はレンダリング装置において使用されるカール検出センサに関連する。さらに実施形態は、前端縁及び後端縁媒体カールの測定に関連する。
【背景技術】
【0002】
レンダリング(例えば印刷)動作中に発生し、高濃度画像及び多色レンダリングにより悪化させられ得る、用紙ジャム及び整列エラーの根本的原因として、媒体カールが考えられることが多い。媒体カールは、例えば、相対湿度、用紙質量、用紙サイズ、画像の両脇又は画像の量などの様々な要因によって引き起こされ得る。ししながら、シートのカールは、周囲湿度や用紙の吸湿の変化に起因して、用紙の未印刷シートに関しても発生し得る。シートカールは、また、吸引又はその他の押し下げ力を使用するシート搬送システムにおいてシート押し下げ動作を向上させる目的でも強要され得る。
【0003】
シートカールは、適切なシート供給を妨げて、シート供給のジャム、遅延、又は整列エラーを誘引し得る。シートカールが出力部で生じた場合、適切な積み重ね機能その他の仕上げ機能を妨げ得る。さらに、用紙のシートが含む水分量は、そのレンダリングプロセスから劇的に変化し、カールを引き起こし又は悪化させ得る。シートカールの問題は、第2面に画像形成材料をレンダリングするためシートを再供給又は再循環させる両面印刷でも、特に、熱定着を経るシートの第2経路及び片側が他方よりも高濃度画像であるときのいずれか又は両方が含まれる場合に、発生し得る。確実なマーキングが達成され、インクカートリッジへのダメージが防止されるように、媒体カールは測定され制御されねばならない。
【0004】
種々の媒体カールセンサ及び制御システムが、電子写真レンダリング技術で知られている。このような従来技術のシステムは、通常、例えば、媒体シートの高さ/カールを検出するためのシングルクロスビームセンサ又はデュアルクロスビームセンサといった複合ビームセンサを使用する。このようなビームセンサと、ニップ、搬送ベルト及び媒体に対するそれらの正確な位置決めは、センサ反応特性の流動性のさらなる機会を誘引する。加えて、これら従来技術のカール測定アプローチは、空気流、機械振動、エッジフリップなどに起因したエッジエラーの傾向があり、したがって、測定が正確ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上の事項に鑑みると、ここに詳細に開示するような、前端縁及び後端縁媒体カールを正確に測定する、改良された角度付アレイセンサシステム及び方法が必要であると思われる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
角度付アレイセンサを使用して先端縁及び後端縁媒体カールを正確に測定するシステム及び方法がここに開示される。1つ以上のカールした媒体シート(例えば、用紙、写真媒体、印刷媒体等)が、先端縁及び後端縁のどちらか又は両方から媒体前進装置を経て、角度付アレイセンサ(例えば、コンタクトイメージセンサ(CIS)モジュールやCCDリニアイメージセンサ)へ向かって、プロセス方向に前進させられ得る。クロスプロセス方向に回転ベクトルをもつ角度付アレイセンサは、シートカールの関数を計算するために、カーラーから出る媒体シートに対し角度を付けて、媒体前進装置の上流又は下流に配置可能である。シートカールの関数は、前進する媒体シートが角度付アレイセンサにあるアレイと接触するポイントを測定することによって得ることができる。このようなカール測定アプローチは、環境的に引き起こされるエラーに対する正確性とロバスト性を向上させる。
【0007】
カールした媒体シートは、左側及び右側のいずれか又は両方で角度付アレイセンサへ進入し、先端縁カール及び後端縁カールのいずれか又は両方の関数をそれぞれ決定するために、媒体前進装置を通して進む。システムは、アレイセンサがシート媒体カールを正確に測定できるように、カールした媒体シートの縁を拘束する。媒体シートのアレイセンサ接触ポイントは、シートカール、アレイ位置、及び角度の関数であり得る。シート縁の存在を検出するために、アレイセンサにある各画素から情報を得ることができる。選択的に、第2のアレイセンサが、媒体シートに関する二方向カールを測定するために追加可能である。このようなシステム及び方法は、ノイズを低減し精度を向上させるための、媒体カールの複合測定を可能にする。さらに、ここに述べる配送方法及び装置は、開示した角度付アレイセンサ近傍で媒体を拘束し得る。拘束又は接触は、アレイ接触ポイントのより正確な媒体カール測定を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施形態による角度付アレイセンサを備えたカール測定システムを表した概略図である。
【図2】実施形態による異なる位置で角度付アレイセンサに接触する種々のカールした媒体シートを説明する、カール測定システムのグラフである。
【図3】実施形態によるセンサ測定値の関数として媒体シートカールを表したグラフである。
【図4】実施形態による一対の角度付アレイセンサを備えた二方向カール測定システムを表した概略図である。
【図5】実施形態による角度付アレイセンサを使用して正確な媒体カールを測定する方法の論理的処理ステップを説明した処理の高レベルフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本非限定例において示される特定の値及び構成は変更可能であり、少なくとも一つの実施形態を説明するためにのみ引用され、開示範囲を制限する目的をもつものではない。ここに説明する構成において、進入(左から右)及び排出(右から左)することを示した媒体シート(単に「媒体」とも称する)は、同等の構成である。すなわち、媒体は、構成の設計及び使用されるレンダリング装置の型式に従って、左から入って右へ出る、又は右から入って左から出る、あるいは、左又は右から入出することが可能である。
【0010】
図1は、実施形態による角度付アレイセンサ130を備えたカール測定システム100を表した概略図を示す。カール測定システム100は、用紙ジャム及び整列エラーを避けるために、1つ以上のカールした媒体シート150に関する媒体カール132〜138を測定するために使用され得る。カール測定システム100は、電子写真レンダリング装置における用紙又は透明フィルムなどのマーキングエンジンにおける媒体シート150の先端縁位置及び後端縁位置のいずれか又は両方を測定する流れの中で実行可能である。ここで使用されるレンダリング装置という用語は、プリンタ、FAX装置、複写装置等とそれらの複合のいずれか又は両方のような装置又はシステムを示し得ることに留意されたい。
【0011】
システム100は、通常、角度付アレイセンサ130及び搬送ニップ110,120を含む。上流位置に配置されるか又は配置されない搬送ニップ110,120の機能は、搬送ニップで接するように用紙を拘束することである。これがカール測定の精度を向上させる。しかしながら、搬送ニップ110,120は角度付センサへシートを届け得る方法の一例であるに過ぎないことを理解されたい。他の配置及び装置が可能であることが理解される。搬送ニップ110,120は、媒体シート150を受け取って角度付アレイセンサ130へ送るために、媒体経路160の対向位置に配置することが可能である。用語「媒体」は、一般に、用紙のシートを示し、典型的には積み上げられ、搬送ニップ110,120は、その山積みから一番上のシートを引き出し、レンダリング装置へ配送する。一例として、媒体シート150は、レンダリング装置から最初に出る用紙の縁を示す先端縁をもつとして説明される。レンダリング装置から最後に離れる用紙の縁は、後端縁と称する。
【0012】
カールした媒体シート150は、媒体カール132〜138を正確に測定するために、先端縁及び後端縁のいずれか又は両方から搬送ニップ110,120を経て、角度付アレイセンサ130へ向かって進められ得る。角度付アレイセンサ130は、例えば、設計事項に従って、直線状画素列で構成された電荷結合素子又はコンタクトイメージセンサなどであり得ることに留意されたい。コンタクトイメージセンサ(CIS)は、平坦模様や文書を走査して、容易な記憶、表示、編集又は転送性を提供するための電子フォーマットとするべく使用される光電素子である。センサは、文書に示された画像をセンサ画素で再生する。
【0013】
コンタクトイメージセンサは、通常、光源、レンズ、及びセンサからなるモジュールとして提供される。モジュールは、コンタクトイメージセンサ(CIS)モジュールと呼ばれる。CCDリニアイメージセンサは、光の画像を電気信号に変換するために使用される。CCDリニアイメージセンサは、1つ以上の、垂直電荷結合素子(VCCD)と、水平電荷結合素子(HCCD)と、伝送される画像電荷を感知して感知画像電荷を外部周辺回路へ転送する感知アンプとを含む。提示したセンサに代えて、他のタイプの角度付アレイセンサが使用可能であることを理解されたい。
【0014】
図2は、実施形態による異なる位置で角度付アレイセンサ130に接触する種々のカールした媒体シート150を説明する、カール測定システム100のグラフ表示を示す。図1〜図5において、おおよそ、同一の又は類似した部分には同じ符号が付してあることに留意されたい。カールした媒体シート150は、先端縁及び後端縁のいずれか又は両方から搬送ニップ110,120による媒体前進装置170を通して、角度付アレイセンサ130へ向け、プロセス方向に進められる。角度付アレイセンサ130は、媒体前進装置170の上流又は下流に、搬送ニップ110,120から出る媒体シート150に対し角度を付けて(例えば15°)、設けられる。角度付アレイセンサ130は、クロスプロセス方向において回転ベクトルをもつ。媒体シートカール関数は、前進した媒体シート150が角度付アレイセンサ130にあるアレイと接触するポイント(例えば接触ポイント)を測定することにより得られる。
【0015】
カールした媒体シート150は、左側及び右側のいずれか又は両方で角度付アレイセンサ130に進入し、搬送ニップ110,120からなる媒体前進装置を通して進み、先端縁カール関数及び後端縁カール関数のいずれか又は両方がそれぞれ決定される。システム100は、アレイセンサ120がシート媒体カール132〜138を正確に測定することができるように、カールした媒体シート150の縁を拘束する。アレイセンサ130にある各画素からシートの縁の存在を検出するための情報が得られる。媒体シート150は拘束により、x<0の領域においてほぼ平坦に保持される。媒体シート150の先端縁、すなわち、x>0の座標をもつシートの部分では、自由にその形状をとることが許容される。図2は、x>0で自然な形状を呈している種々のカール半径の媒体シート150を示す。
【0016】
図3は、実施形態によるセンサ測定値の関数としてシート媒体カール132〜138を表したグラフ300を示す。媒体シート150の角度付アレイセンサ130との接触ポイントは、シート媒体カール132〜138、アレイ位置、及びアレイ角度の関数であり得る。グラフ300において、x軸はアレイセンサ130と接触したポイントのx座標の測定値を表し、y軸は、媒体シート150にある媒体カール132〜138の測定値を表す。左から右へ「シート検知」が最初に発生したセンサ130からの情報がx座標を表す。次のように、シートカール半径R及び直線で描かれるセンサ面形状に関してシートカールを計算することができる。
【数1】

【数2】

式中、
【数3】

【数4】

【数5】

【数6】

【数7】

【0017】
ポイント(x,y)及び(x,y)は、座標平面に関してセンサアレイ130の回転ベクトルのエンドポイントを表し、dは、センサアレイ回転ベクトルの長さを表す。式1及び式2は、角度付アレイセンサ130に対する媒体150の正確な接触ポイントを決定することが可能である。カール測定システム100は、高感度、すなわち小さいセンサ角度で媒体150のカール132〜138を測定する能力をもつ。このようなシステム及び方法は、ノイズを減らし精度を向上させるために媒体シートカールの複合測定を可能にする。
【0018】
図4は、実施形態による一対の角度付アレイセンサ130を備えた二方向カール測定システム400を表した概略図を示す。二方向カール測定システム400は、媒体経路160の両側に角度付アレイセンサ130を有し、媒体シート150の正方向カール及び負方向カールの両方を測定するように構成可能である。二方向測定システム400は、媒体シート150の単一方向カールを測定する場合には不要である。
【0019】
図5は、実施形態による角度付アレイセンサ130を使用して正確な媒体シートカール132〜138を測定する方法500の論理的処理ステップを説明した処理の高レベルフローチャートを示す。ブロック150に示すように、1つ以上のカールした媒体シート150が、カーラーを備えたニップを経て角度付アレイセンサへ向かってプロセス方向に前進させられる。次に、ブロック520に示すように、角度付アレイセンサが、カーラーから出る媒体シート150に対し角度を付けて媒体前進装置の下流又は上流に配置される。
【0020】
角度付アレイセンサ130は、各画素の情報で媒体シート150の縁の存在を検出可能なので、カール測定に最適である。媒体シートカール132〜138の関数は、ブロック530に示すように、前進する媒体シート150が角度付アレイセンサ130にあるアレイに接触した接触ポイントを測定することにより得られる。その後、ブロック540に示すように、シートカール関数を使用して正確なシートカールが決定される。このようなアプローチは、空気流、機械振動、エッジフリップなどにより誘起されるエラーを除去し、正確なシートカール132〜138の測定値を提供する。
【0021】
配送装置が、ここに開示した角度付アレイセンサより上流又は下流にあり得る。さらに、配送方法及び装置又はシステムのいずれか又は両方は、角度付センサ近傍で媒体を拘束するように構成可能である。拘束又は接触は、アレイ接触ポイントのより正確な媒体カール測定を可能にする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体シートカールを測定する方法であって、
少なくとも1つのカールした媒体シートを、縁から媒体前進装置を経て、クロスプロセス方向に回転ベクトルをもつ角度付アレイセンサへ向かって、プロセス方向に前進させるステップと、
前記少なくとも1つのカールした媒体シートが前記角度付アレイセンサにあるアレイと接触するポイントを測定してシートカールの関数を求め、これにより、環境的に引き起こされるエラーに対する正確性とロバスト性を向上させるステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記シートカールの関数を計算するために、前記媒体前進装置の上流又は下流に、前記カーラーから出る前記媒体シートに対し角度を付けて前記角度付アレイセンサを配置することをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記角度付アレイセンサで前記シート媒体カールを正確に測定するために、前記カールした媒体シートの縁を拘束することをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
媒体シートカールを測定するシステムであって、
クロスプロセス方向に回転ベクトルを有する角度付アレイセンサと、
少なくとも1つのカールした媒体シートを、縁から前記角度付アレイセンサへ向けてプロセス方向に前進させる媒体前進装置と、
環境的に引き起こされるエラーに対する正確性とロバスト性を向上させるべく、シートカールの関数を求めるために、前記少なくとも1つのカールした媒体シートが前記角度付アレイセンサにあるアレイと接触するポイントを測定する測定装置と、
を含むシステム。
【請求項5】
前記角度付アレイセンサは、前記シートカールの関数を計算するために、前記媒体前進装置の上流又は下流に、前記カーラーから出る前記媒体シートに対し角度を付けて配置される、請求項4記載のシステム。
【請求項6】
前記角度付アレイセンサにある前記アレイの各画素の情報から前記シートの縁の存在が検出される、請求項4記載のシステム。
【請求項7】
二方向媒体カールを測定する補助として第2の角度付アレイセンサをさらに含む、請求項4記載のシステム。
【請求項8】
媒体シートカールを測定するシステムであって、
クロスプロセス方向に回転ベクトルを有する角度付アレイセンサと、
少なくとも1つのカールした媒体シートを、縁から前記角度付アレイセンサへ向けてプロセス方向に前進させる媒体前進装置と、
環境的に引き起こされるエラーに対する正確性とロバスト性を向上させるべく、シートカールの関数を求めるために、前記少なくとも1つのカールした媒体シートが前記角度付アレイセンサにあるアレイと接触するポイントを測定する測定装置と、
を含み、
前記角度付アレイセンサは、前記シートカールの関数を計算するために、前記媒体前進装置の上流又は下流に、該カーラーから出る前記媒体シートに対し角度を付けて配置される、システム。
【請求項9】
前記カールした媒体シートの縁が、前記角度付アレイセンサで前記シート媒体カールを正確に測定するために拘束可能であり、
前記シートカールが、前記少なくとも1つのカールした媒体シートが前記角度付アレイセンサに先端縁から進入するときに測定可能であり、
前記シートカールが、前記少なくとも1つのカールした媒体シートが前記角度付アレイセンサに後端縁から進入するときに測定可能である、請求項8記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−121729(P2012−121729A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255596(P2011−255596)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】