説明

媒体搬送装置、画像読取装置および画像形成装置

【課題】原稿トレイに置かれた原稿を最上位から順に搬送する場合に、最上位の原稿の移動に伴って連れ回りする部材の連れ回り量を検知しなくても、最上位の原稿を他の原稿と分離する前に、被搬送媒体の寸法を特定することができる原稿搬送装置を提供する。
【解決手段】原稿搬送装置の構成として、原稿トレイに置かれた原稿を繰り出しロール13で繰り出すとともに、繰り出した原稿を送り出しロール対14、15により1枚ずつ分離して送り出す場合に、送り出しロール対14、15により送り出された原稿1の後端が繰り出しロール13との接触位置を通過するときに鉛直方向に生じる回転軸13Aの位置の変化を変位センサ5で検知する仕組みを採用し、少なくとも変位センサ5の検知結果を用いて、原稿のサイズを特定するものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体搬送装置、画像読取装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開2001−177699号公報)には、自動原稿送り装置から送出された原稿の先端を原稿の主走査サイズ検知位置まで搬送した後に原稿の主走査方向の少なくとも一端を検知する原稿読取素子からなる主走査サイズセンサと、前記主走査サイズ検知位置と自動原稿送り装置の原稿載置位置との間の原稿搬送路の途中には主走査サイズ検知位置から原稿の副走査方向基準長さ分だけ離間した副走査サイズ検知位置に設けられ、原稿の副走査方向長さが前記基準長さ以上か未満かを検知する副走査サイズセンサと、主走査サイズセンサおよび副走査サイズセンサからの検知情報に基づいて原稿のサイズを判定するサイズ判定手段とを備える原稿読取装置が開示されている。
【0003】
特許文献2(特開2004−48282号公報)には、原稿読み取り装置に向けて供給されるサイズの異なる原稿を同時に載置することのできる原稿トレイと、この原稿トレイに載置されるサイズの異なる原稿の中から最大主走査方向サイズの一方の原稿サイドに合わせて変位されて位置決めされる奥側ガイドと、この奥側ガイドと略同一の変位量によって変位するとともに、最大主走査方向サイズの他方の原稿サイドに合わせて位置決めされる手前側ガイドと、位置決めされた奥側ガイドの位置を基準として同時に載置された最大主走査方向サイズ以外の主走査方向サイズを有する原稿を検知する原稿検知センサとを有する原稿送り装置が開示されている。
【0004】
特許文献3(特開2004−107018号公報)には、原稿が配置される原稿配置部と、原稿を原稿載置部から所定の搬送経路に沿って原稿読取部に搬送する搬送手段とを備え、搬送手段により原稿読取部に搬送されてきた原稿を読み取る原稿読取部と、原稿読取部による原稿読み取り開始前に原稿の幅を検知するセンサと、センサによる原稿の幅情報のみで原稿のサイズを特定するサイズ特定手段とを備える原稿読取装置が開示されている。
【0005】
特許文献4(特開平6−130762号公報)には、複数の原稿をサイズごとのセット順序の制約なしで原稿トレイに混載可能な自動原稿給送装置において、原稿給紙ローラの後方に原稿トレイ上の最上紙に接触して該最上紙の移動に伴って連れ回りする回転部材を設けるとともに、該回転部材の上記連れ回り量を検知する手段と、該連れ回り量に対応する原稿サイズを特定する原稿サイズ特定手段とを備える自動原稿給送装置が開示されている。
【0006】
特許文献5(特開平6−11922号公報)には、原稿を載置セットする原稿セット部と、給紙部から繰り出された原稿を画像読み取り部に搬送して画像の読み取りを行なわせる搬送部と、読み取り後の原稿を搬送して所定の場所に再スタックする搬出部とを有する原稿給送装置において、繰り出される原稿の給送方向での動きを検知する第1の検知手段と、上記原稿の給送方向と直交する方向の長さを検知する第2の検知手段と、上記第1、第2の検知手段からの検知信号を組み合わせることにより原稿セット部から搬送される原稿のサイズを特定するサイズ判定手段と、上記サイズ判定手段からの判定信号を出力するサイズ信号出力手段とを備えて構成されていることを特徴とする原稿給送装置が開示されている。
【0007】
特許文献6(特開平6−75448号公報)には、原稿を載置セットする原稿セット部と、給紙部から繰り出された原稿を画像読み取り部に搬送して画像の読み取りを行なわせる搬送部と、読み取り後の原稿を搬送して所定の場所に再スタックする搬出部とを有する原稿給送装置において、繰り出される原稿の給送方向での動きを検知する第1の検知手段と、上記原稿の給送方向と直交する方向の長さを検知する第2の検知手段と、上記第1、第2の検知手段からの検知信号を組み合わせることにより原稿セット部から搬送される原稿のサイズを特定するサイズ判定手段と、上記サイズ判定手段からの判定信号を表示するサイズ表示手段とを備え、上記第2の検知手段のうちの一つは、原稿の載置状態を検知する手段として用いられ、原稿載置状態が異常な場合を検知したときには、その状態を警告するための信号を出力することを特徴とする原稿給送装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−177699号公報
【特許文献2】特開2004−48282号公報
【特許文献3】特開2004−107018号公報
【特許文献4】特開平6−130762号公報
【特許文献5】特開平6−11922号公報
【特許文献6】特開平6−75448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、媒体置き部に置かれた被搬送媒体を最上位から順に搬送する場合に、最上位の被搬送媒体の移動に伴って連れ回りする部材の連れ回り量を検知しなくても、最上位の被搬送媒体を他の被搬送媒体と分離する前に、被搬送媒体の寸法を特定することができる仕組みを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、
被搬送媒体が置かれる媒体置き部と、
前記媒体置き部に置かれた被搬送媒体の最上面に接触する状態で配置された接触部材と、
前記媒体置き部に置かれた被搬送媒体を最上位の被搬送媒体から順に搬送する搬送手段と、
前記搬送手段によって搬送された前記最上位の被搬送媒体の後端が前記接触部材との接触位置を通過するときに鉛直方向に生じる前記接触部材の物理的な状態の変化を検知する検知手段と、
前記搬送手段によって搬送された前記最上位の被搬送媒体の寸法を、少なくとも前記検知手段の検知結果を用いて特定する特定手段と
を備える媒体搬送装置
に係るものである。
【0011】
請求項2に記載の発明は、
前記検知手段は、前記接触部材の物理的な状態の変化として、前記接触部材の位置の変化を検知する
請求項1記載の媒体搬送装置
に係るものである。
【0012】
請求項3に記載の発明は、
前記接触部材は、前記媒体置き部に置かれた被搬送媒体の最上面に接触して回転する回転体を有する
請求項1又は2記載の媒体搬送装置
に係るものである。
【0013】
請求項4に記載の発明は、
前記搬送手段は、
前記媒体置き部に置かれた被搬送媒体を最上位の被搬送媒体から順に繰り出す繰り出し部材を含み、
前記繰り出し部材が前記接触部材を兼ねている
請求項1、2又は3記載の媒体搬送装置
に係るものである。
【0014】
請求項5に記載の発明は、
前記繰り出し部材は、前記媒体置き部に置かれた被搬送媒体の最上面に接触しつつ回転する回転部材からなり、
前記検知手段は、前記接触部材を兼ねる前記繰り出し部材の物理的な状態の変化として、前記回転部材と一体に回転する回転軸又は当該回転軸を支持する軸受け部材の物理的な状態の変化を検知する
請求項4記載の媒体搬送装置
に係るものである。
【0015】
請求項6に記載の発明は、
原稿を搬送する原稿搬送装置と、
前記原稿搬送装置によって搬送された原稿の画像を読み取る読取手段とを備え、
前記原稿搬送装置は、
原稿が置かれる原稿置き部と、
前記原稿置き部に置かれた原稿の最上面に接触する状態で配置された接触部材と、
前記原稿置き部に置かれた原稿を最上位の原稿から順に搬送する搬送手段と、
前記搬送手段によって搬送された前記最上位の原稿の後端が前記接触部材との接触位置を通過するときに鉛直方向に生じる前記接触部材の物理的な状態の変化を検知する検知手段と、
前記搬送手段によって搬送された前記最上位の原稿の寸法を、少なくとも前記検知手段の検知結果を用いて特定する特定手段と
を備える
画像読取装置
に係るものである。
【0016】
請求項7に記載の発明は、
原稿を搬送する原稿搬送装置と、
前記原稿搬送装置によって搬送された原稿の画像を読み取る画像読取装置と、
前記画像読取装置によって読み取られた原稿の画像を記録媒体に記録する画像記録装置とを備え、
前記原稿搬送装置は、
原稿が置かれる原稿置き部と、
前記原稿置き部に置かれた原稿の最上面に接触する状態で配置された接触部材と、
前記原稿置き部に置かれた原稿を最上位の原稿から順に搬送する搬送手段と、
前記搬送手段によって搬送された前記最上位の原稿の後端が前記接触部材との接触位置を通過するときに鉛直方向に生じる前記接触部材の物理的な状態の変化を検知する検知手段と、
前記搬送手段によって搬送された前記最上位の原稿の寸法を、少なくとも前記検知手段の検知結果を用いて特定する特定手段と
を備える
画像形成装置
に係るものである。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の発明によれば、媒体置き部に置かれた被搬送媒体を最上位から順に搬送する場合に、最上位の被搬送媒体の移動に伴って連れ回りする部材の連れ回り量を検知しなくても、最上位の被搬送媒体を他の被搬送媒体と分離する前に、被搬送媒体の寸法を特定することが可能な媒体搬送装置を実現することできる。
【0018】
請求項2に記載の発明によれば、本構成を採用しない場合に比べて、接触部材の物理的な状態の変化を簡易な構成で検知することができる。
【0019】
請求項3に記載の発明によれば、被搬送媒体に接触する接触部材の摩耗を防止することができる。
【0020】
請求項4に記載の発明によれば、本構成を採用しない場合に比べて、部品点数を削減することができる。
【0021】
請求項5に記載の発明によれば、被搬送媒体との接触によって回転部材に付着する汚れ等に起因した検知の誤差を回避することができる。
【0022】
請求項6に記載の発明によれば、原稿置き部に置かれた原稿を最上位から順に搬送する場合に、最上位の原稿の移動に伴って連れ回りする部材の連れ回り量を検知しなくても、最上位の原稿を他の原稿と分離する前に、原稿の寸法を特定することが可能な原稿搬送装置を備える画像読取装置を実現することができる。
【0023】
請求項7に記載の発明によれば、原稿置き部に置かれた原稿を最上位から順に搬送する場合に、最上位の原稿の移動に伴って連れ回りする部材の連れ回り量を検知しなくても、最上位の原稿を他の原稿と分離する前に、原稿の寸法を特定することが可能な原稿搬送装置を備える画像形成装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態に係る画像形成装置の構成を示す概略図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る画像読取装置の構成の一部を示す平面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る画像読取装置の構成の一部を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る画像読取装置の全体構成を示す概略図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る画像形成装置の外観を示す斜視図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る画像読取装置の主要部の構成を示す側面概略図である。
【図7】回転軸の支持機構の一例を示す図である。
【図8】変位センサの構成例を示す図である。
【図9】変位センサの原理を説明する図である。
【図10】変位センサの出力信号レベルの変化を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態に係る画像読取装置の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図12】原稿トレイに置かれた原稿を搬送する場合に、原稿のサイズを特定するために行なわれる処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る媒体搬送装置を、例えば、被搬送媒体の一例としての原稿を搬送する原稿搬送装置に適用した場合の具体的な実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、本発明に係る媒体搬送装置は、原稿搬送装置に限らず、例えば、用紙等の記録媒体を被搬送媒体として取り扱う、手差し給紙機構を備える用紙搬送装置などに適用してもよい。
【0026】
(用語の定義)
本発明の実施の形態においては、以下のように用語を定義したうえで、具体的な発明の内容を説明することとする。なお、前述の「背景技術」の欄に記載した用語は、各特許文献に記載された用語であり、ここで定義する用語と必ずしも同一の語義で用いられているとは限らない。
【0027】
「原稿のサイズ(寸法)」は、「原稿幅」と「原稿長」によって規定されるものとする。「原稿幅」とは、原稿の画像を主走査方向と副走査方向に読み取り走査する場合の、「主走査方向」の原稿サイズをいい、「原稿長」とは「副走査方向」の原稿サイズをいう。また、原稿の搬送方向で規定すると、「原稿幅」とは、原稿の搬送方向と直交する方向の原稿サイズをいい、「原稿長」とは、原稿の搬送方向の原稿サイズをいう。このため、「原稿幅方向」は、原稿の搬送方向と直交する方向に相当し、「原稿長方向」は、原稿の搬送方向に相当するものとなる。
【0028】
「主走査方向」とは、キャリッジ等の走査体に搭載された光学系(ランプ、ミラー等)を用いて原稿の画像を読み取るときに、原稿と走査体が相対的に移動する方向に対して垂直な方向をいう。「副走査方向」とは、走査体に搭載された光学系を用いて原稿の画像を読み取るときに、原稿と走査体が相対的に移動する方向をいう。このため、「主走査方向」は、「副走査方向」に直交する方向となる。また、「主走査方向」は、原稿の搬送方向と直交する方向(原稿幅方向)に相当し、「副走査方向」は、原稿の搬送方向(原稿長方向)に相当するものとなる。
【0029】
「原稿の先端」とは、原稿の搬送方向の下流側を向いて配置される原稿端をいい、「原稿の後端」とは、原稿の搬送方向の上流側を向いて配置される原稿端をいう。「原稿の側端」とは、原稿の搬送方向と直交する方向の原稿端をいう。
【0030】
(本発明の実施の形態に係る画像形成装置の構成)
図1は本発明の実施の形態に係る画像形成装置の構成を示す概略図である。画像形成装置100は、大きくは、画像記録装置110と、画像読取装置10とを備えている。
【0031】
画像読取装置10は、画像形成装置100の上部に配置されている。画像記録装置110は、画像形成装置100の下部に配置されている。
【0032】
画像読取装置10は、原稿の画像を光学的に読み取るとともに、その読み取った画像を画像信号に変換する。画像記録装置110は、画像読取装置10が変換した画像信号に基づいて、用紙等の記録媒体Pに画像を記録する。
【0033】
ここで、本実施の形態に係る画像記録装置110の構成について説明する。
【0034】
本実施の形態に係る画像記録装置110は、図1に示すように、その下部に複数の記録媒体収容部120、121を備えている。
【0035】
記録媒体収容部120、121には、それぞれ、サイズの異なる記録媒体Pが収容されている。例えば、記録媒体収容部120には、B5サイズの記録媒体Pが収容され、記録媒体収容部121には、B4サイズの記録媒体Pが収容される。
【0036】
記録媒体収容部120、121の先端側(図1において右端側)の直上には、記録媒体Pの上面の先端側に接触して回転し、記録媒体収容部120、121から記録媒体Pを送り出す送り出しロール126が配置されている。
【0037】
画像記録装置110内には、記録媒体収容部120、121の先端部から延出して、S字状に湾曲し、画像記録装置110の上部へ向かって延びる搬送路122が形成されている。
【0038】
この搬送路122に沿って、記録媒体の搬送方向の上流側から順に、複数(例えば、6つ)の搬送ロール対164と、レジストロール168とが配置されている。各々の搬送ロール対164およびレジストロール168は、それぞれ、記録媒体Pを挟持した状態で搬送する。
【0039】
記録媒体収容部121の上方には、記録媒体Pに画像を記録する画像記録部130が配置されている。画像記録部130は、記録方式の一例として、電子写真方式に基づいて記録媒体Pに画像を形成(印刷出力)する構成となっている。
【0040】
記録媒体収容部120、121に収容された記録媒体Pは、送り出しロール126により送り出され、各搬送ロール対164およびレジストロール168によって搬送路122を搬送されて画像記録部130へ送られる。
【0041】
画像記録部130は、記録媒体収容部120、121から送られてきた記録媒体Pに、例えば、シアン、マゼンタ、イエローおよびブラックの各色のトナーを用いてカラー画像を形成する。ちなみに、画像記録部130は、カラー画像を形成する以外にも、ブラックのトナーを用いて白黒画像を形成する場合もある。
【0042】
画像記録部130には、4つの感光体ドラム112が並んで回転可能に設けられている。各感光体ドラム112は、図示しない駆動部により、矢印Kの方向に回転する。
【0043】
各感光体ドラム112の左斜め下部には、帯電ロール114が感光体ドラム112に接触するように配置されている。帯電ロール114は、感光体ドラム112の表面を所定の電位に帯電する。
【0044】
帯電後、各感光体ドラム112の下方に配置された各露光ヘッド116から出射された光によって露光が行われ、画像読取装置10が変換した画像信号に応じた潜像が感光体ドラム112の表面に形成される。
【0045】
各色の現像器118の現像ロール119には、所定の極性に帯電した各色のトナーが保持されている。各感光体ドラム112の表面に形成された潜像は、現像ロール119に現像バイアスを印加することで現像され各色のトナー像となる。
【0046】
4個の各感光体ドラム112にそれぞれ形成された各色のトナー像は、各感光体ドラム112の上方に配置された中間転写ベルト113上に第1転写ロール115で転写され、中間転写ベルト113上に重畳されてフルカラーのトナー像となる。
【0047】
記録媒体収容部120、121から送り出されると共に搬送ロール対164で搬送された記録媒体Pは、レジストロール168により所定のタイミングで第2転写ロール132と中間転写ロール134との間に送られ、フルカラーのトナー像が記録媒体Pに転写される。このとき、トナー像は中間転写ロール134側の記録媒体Pの面に転写される。
【0048】
フルカラーのトナー像が転写された記録媒体Pは、定着器136に送られる。定着器136は熱と圧力とで記録媒体Pにトナー像を定着する。トナー像が定着した記録媒体Pは、排出ロール142によって排紙トレイ140へ排出される。
【0049】
なお、中間転写ベルト113と記録媒体Pとにトナー像は全て転写されずに、一部は感光体ドラム112および中間転写ベルト113に残留トナーとして残る。感光体ドラム112上の残留トナーはクリーニングロール144により除去され、中間転写ベルト113上の残留トナーはクリーニング装置138によって除去される。
【0050】
(本発明の実施の形態に係る画像読取装置の構成)
次に、本発明の実施の形態に係る画像読取装置の構成について、上記図1とあわせて図2〜図4を用いて説明する。
【0051】
本実施の形態に係る画像読取装置10は、原稿の画像を読み取る機能の他に、原稿を搬送する原稿搬送装置としての機能を有している。画像読取装置10の上部には、原稿が置かれる原稿置き部の一例としての原稿トレイ11と、この原稿トレイ11を上昇および下降させるトレイリフタ12とが設けられている。原稿トレイ11は、原稿の搬送中(搬送開始から搬送終了まで)は同じ位置(高さ)に停止した状態に維持される。原稿トレイ11には、通常は、複数枚の原稿をひとまとめに重ね合わせた原稿束が置かれるが、原稿が1枚だけ置かれる場合もあり得る。また、原稿トレイ11には、同一サイズの原稿だけでなく、原稿のサイズを規定する原稿長および原稿幅のうち、少なくとも一方のサイズが異なる複数枚の原稿(原稿束)を同時に置く(混載する)ことが可能となっている。
【0052】
画像読取装置10は、原稿トレイ11に置かれた原稿を最上位の原稿から順に搬送する搬送手段の一例としての搬送部37と、搬送部37によって搬送された原稿の画像を読み取る読取手段の一例としての読取部70と、読取部70によって読み取られた原稿の画像に基づく画像信号を処理する処理装置80とを備えている。
【0053】
搬送部37は、繰り出しロール13と送り出しロール対14、15とを備えている。さらに搬送部37は、原稿を搬送するための搬送路として、第1搬送路31、第2搬送路32、第3搬送路33、第4搬送路34、第5搬送路35および第6搬送路36を備えている。
【0054】
繰り出しロール13は、原稿トレイ11に原稿が置かれていない待機時には、原稿トレイ11から離間するように上方に退避した位置に保持される。そして、原稿トレイ11に原稿が置かれた状態で原稿搬送を開始するときに、退避位置から下降して原稿の最上面に接触し、この状態で回転することにより、原稿トレイ11から原稿を繰り出す。
【0055】
繰り出しロール13は、トレイリフタ12により上昇された原稿トレイ11に置かれた原稿を最上位の原稿から順に繰り出す。送り出しロール対14、15は、繰り出しロール13によって繰り出された原稿を1枚ずつ分離した状態で搬送方向の下流側へと送り出す。繰り出しロール13は、繰り出し部材の一例として設けられ、送り出しロール対14、15は、送り出し部材の一例として設けられたものである。
【0056】
第1搬送路31は、原稿トレイ11に置かれた原稿が最初に送り出される搬送路である。この第1搬送路31には、上述した送り出しロール対14、15の他に、テイクアウェイロール16、プレレジロール17、レジロール18、プラテンロール19およびアウトロール20が、搬送路の上流側から下流側に順に配置されている。また、第1搬送路31には、搬送される原稿のループ状態に応じて、支点を中心に回動するバッフル41が設けられている。
【0057】
テイクアウェイロール16は、送り出しロール対14、15によって1枚ずつ分離して送り出された原稿を更に下流側のロールに向けて搬送する。プレレジロール17は、テイクアウェイロール16によって搬送された原稿を更に下流側のロールに向けて搬送すると共に、当該搬送した原稿の先端をレジロール18に突き当てた状態で予め設定された搬送量だけ原稿を搬送することにより、レジロール18の手前(上流側)で原稿をループ状に撓ませる、いわゆるループの形成を行う。原稿のループの形成に際して、バッフル41は支点を中心に外側に逃げるように変位することで、原稿のループ形成を妨げることのないように機能する。
【0058】
レジロール18は、当該レジロール18への突き当てによって一旦、原稿の搬送を停止した後に、タイミングを合わせて回転を再開し、読取部70に対してレジストレーション調整を施しながら原稿を供給する。プラテンロール19は、読み込み中(第2プラテンガラス72Bを通過中)の原稿の搬送をアシストする。アウトロール20は、読み込まれた原稿を更に下流に搬送する。
【0059】
第2搬送路32および第3搬送路33は、アウトロール20の下流側で分岐している。第2搬送路32と第3搬送路33の分岐部分には、切り替えゲート42が設けられている。切り替えゲート42は、アウトロール20によって搬送された原稿の進路を第2搬送路32又は第3搬送路33を切り替える。
【0060】
第2搬送路32の終端部には第1排出ロール21が設けられている。第1排出ロール21は、第2搬送路32へと搬送された原稿を排出トレイ40上に排出するものである。
【0061】
第3搬送路33の下流側には、第3搬送路33を経由した原稿をスイッチバックさせるための第4搬送路34が形成されている。第4搬送路34には、原稿のスイッチバックを行うインバータロール22およびインバータピンチロール23が設けられている。
【0062】
第5搬送路35は、第4搬送路34でインバータロール22およびインバータピンチロール23によりスイッチバックされた原稿を、第1搬送路31に導くために、第4搬送路34と第1搬送路31とをつないでいる。
【0063】
第6搬送路36は、第4搬送路34でインバータロール22およびインバータピンチロール23によりスイッチバックされた原稿を、第2搬送路32に導くために、第4搬送路34と第2搬送路32とをつないでいる。第6搬送路36の途中には第2排出ロール24が配置されている。
【0064】
切り替えゲート43は、第4搬送路34でインバータロール22およびインバータピンチロール23によりスイッチバックされた原稿の進路を、第5搬送路35又は第6搬送路36に切り替える。
【0065】
読取部70は、画像読取装置10の下部に設けられている。読取部70は、搬送部37によって搬送された原稿の画像を光学的に読み取るための構成を有している。読取部70の筐体を形成する装置フレーム71の上部には、原稿台の一例として、第1プラテンガラス72Aと第2プラテンガラス72Bが設けられている。
【0066】
第1プラテンガラス72Aは、画像の読み取り対象となる原稿(本を含む)を静止させた状態に置いて、当該静止状態の原稿の画像を読み取るための原稿台となる。第2プラテンガラス72Bは、画像の読み取り対象となる原稿を上記原稿トレイ11に置いて搬送部37により搬送した場合に、当該搬送中(移動中)の原稿の画像を読み取るための原稿台となる。
【0067】
読取部70の装置フレーム71の内部には、フルレートキャリッジ73と、ハーフレートキャリッジ75とが組み込まれている。フルレートキャリッジ73には、原稿に光を照射する照明ランプ74と、原稿から得られた反射光を受光する第1ミラー76Aが搭載されている。ハーフレートキャリッジ75には、第1ミラー76Aから得られた光を結像部へ導く第2ミラー76Bおよび第3ミラー76Cが搭載されている。
【0068】
結像部は、結像レンズ77およびCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ78を用いて構成されている。結像レンズ77は、第3ミラー76Cによって反射された光学像を光学的に縮小する。CCDイメージセンサ78は、結像レンズ77によって結像された光学像を光電変換することにより、画像信号を生成する。CCDイメージセンサ78は駆動基板79に実装されている。CCDイメージセンサ78によって得られた画像信号は駆動基板79を介して処理装置80に送られる。処理装置80は、画像信号を露光ヘッド116へ送るようになっている。
【0069】
第1プラテンガラス72Aに置かれた原稿の画像を読み取る場合は、フルレートキャリッジ73とハーフレートキャリッジ75とが、2:1の割合でスキャン方向(矢印方向)に移動する。このとき、フルレートキャリッジ73の照明ランプ74の光が原稿の被読み取り面に照射されると共に、その原稿からの反射光が第1ミラー76A、第2ミラー76Bおよび第3ミラー76Cの順に反射されて結像レンズ77に導かれる。
【0070】
結像レンズ77に導かれた光は、CCDイメージセンサ78の受光面に結像される。CCDイメージセンサ78は1次元のセンサであり、1ライン分を同時に処理している。このライン方向(主走査方向)の1ライン単位の読み取りを、スキャン方向に移動するフルレートキャリッジ73とハーフレートキャリッジ75の移動中に繰り返し実行することにより、原稿の1ページ分の画像が読み取られる。
【0071】
一方、第2プラテンガラス72Bは、例えば長尺の板状構造をなす透明なガラスプレートで構成される。搬送部37によって搬送される原稿がこの第2プラテンガラス72Bの上を通過する。このとき、フルレートキャリッジ73とハーフレートキャリッジ75とは、図1に示す実線の位置(左端)に停止した状態にあり、この状態で搬送中の原稿の画像が次のように読み取られる。
【0072】
まず、搬送部37のプラテンロール19で第2プラテンガラス72Bの上面に押し付けられた原稿の被読み取り面に対して、フルレートキャリッジ73の照明ランプ74の光が照射されると共に、その原稿からの反射光が第1ミラー76A、第2ミラー76Bおよび第3ミラー76Cの順に反射されて結像レンズ77に導かれる。そして、上記同様に一次元のセンサであるCCDイメージセンサ78によって1ライン分を同時に処理する。この1ライン単位の読み取りを、第2プラテンガラス72B上を移動する原稿の移動中(搬送中)に繰り返し実行することにより、原稿の1ページ分の画像が読み取られる。
【0073】
本実施の形態に係る画像読取装置10では、原稿の搬送方向Aと直交する方向の中心位置を基準として原稿を搬送し、この搬送中の原稿の画像を読み取るセンターレジストレーションが採用されている。このセンターレジストレーションを実現するにあたっては、主走査方向で原稿をセンター振り分けとして位置決めする一対の原稿ガイド61,62を原稿トレイ11上に設けている。
【0074】
一対の原稿ガイド61,62は、原稿トレイ11に置かれた原稿を主走査方向で位置決めする位置決め部材の一例として設けられたものである。一対の原稿ガイド61,62のうち、一方の原稿ガイド61は、画像形成装置100を使用(操作)する使用者の立ち位置から見て奥側に配置され、他方の原稿ガイド62は、当該使用者の立ち位置から見て手前側に配置されている。このため、以降の説明では、一方の原稿ガイド61を奥側ガイド61とも呼び、他方の原稿ガイド62を手前側ガイド62とも呼ぶ。
【0075】
奥側ガイド61および手前側ガイド62は、原稿トレイ11に形成されたスライド溝65により、原稿の搬送方向Aと直交する方向(原稿幅方向)に移動可能に構成されている。
【0076】
また、奥側ガイド61および手前側ガイド62は、それぞれ原稿の一方(奥側)の側端と他方(手前側)の側端に突き当てられることにより、原稿の両方の側端位置を揃えるようにして原稿を位置決めする。
【0077】
さらに、奥側ガイド61および手前側ガイド62は、原稿トレイ11の裏側(原稿トレイの内側)に設けられたラック63とそれぞれ連結されている。奥側ガイド61から延びるラック63と手前側ガイド62から延びるラック63は、共通のピニオン64に噛み合っている。各ラック63とピニオン64の噛み合いにより、奥側ガイド61および手前側ガイド62は、原稿幅方向で互いに同量ずつ接近又は離間する方向に移動するようになっている。その際、奥側ガイド61および手前側ガイド62が原稿幅方向の中心位置から左右均等となる位置に配置されていれば(センター振り分けがなされていれば)、奥側ガイド61および手前側ガイド62の間の中心位置は、これらのガイドがスライドした後であっても同じ位置に維持される。
【0078】
画像読取装置10は、図3に示すように、原稿トレイ11に置かれた原稿の原稿幅を検知する第1原稿幅検知手段の一例としての第1原稿幅検知センサ50を備えている。第1原稿幅検知センサ50は、奥側ガイド61のスライド移動に伴って、奥側ガイド61と一体に移動する移動体52に沿って配置された複数の光センサ54を備えている。
【0079】
移動体52は、断面L字状に屈曲された板体で構成され、奥側ガイド61のラック63と一体に構成されている。移動体52には、複数の開口53が設けられている。各々の開口53は、移動体52の移動方向(原稿幅方向)において、互いに異なる位置に設けられている。なお、ここでは移動体52に複数の開口53を設けているが、当該開口53に代えて、例えば、切り欠き(不図示)を設けてもよい。
【0080】
第1原稿幅検知センサ50を構成する複数の光センサ54は、それぞれ、発光部54Aと受光部54Bとを有する。上述した移動体52の開口53が形成された部分は、各々の光センサ54の発光部54Aと受光部54Bの間を移動するようになっている。そして、光センサ54の発光部54Aと受光部54Bの間に移動体52の開口53が位置する状態では、発光部54Aから照射された光を受光部54Bが受光するため、光センサ54がオン状態となる。また、光センサ54の発光部54Aと受光部54Bの間に移動体52の開口53が位置しない状態では、発光部54Aから照射された光が移動体52で遮られて受光部54Bが受光しないため、光センサ54がオフ状態となる。
【0081】
第1原稿幅検知センサ50を構成する複数の光センサ54のセンサ個数を3つとした場合は、3つの光センサ54のオンオフ状態が原稿ガイド61、62の位置によって8つのパターンで切り替わるように、移動体52の各開口53と各光センサ54の相対的な位置関係が設定されている。
【0082】
さらに詳述すると、まず、説明の便宜上、図3に示すように、3つの光センサ54を手前側ガイド62に近い側から順に、光センサ54−1、光センサ54−2、光センサ54−3と区別するとともに、移動体52に形成された4つの開口53を手前側ガイド62に近い側から順に、開口53―1、開口53−2、開口53−3、開口53−4と区別する。
【0083】
そうした場合、3つの光センサ54−1、54−2、54−3のオンオフ状態のパターンは、原稿ガイド61、62の位置に応じて、以下の表1に示すように、8つのパターンのうちのいずれか1つに該当するものとなる。
【0084】
【表1】

【0085】
表1において、パターン1は、光センサ54−1がオンで、光センサ54−2、54−3がオフとなるパターンである。パターン2は、光センサ54−1、54−2、54−3がすべてオフとなるパターンである。パターン3は、光センサ54−1、54−3がオフで、光センサ54−2がオンとなるパターンである。パターン4は、光センサ54−1、54−2がオンで、光センサ54−3がオフとなるパターンである。
【0086】
パターン5は、光センサ54−1、54−3がオンで、光センサ54−2がオフとなるパターンである。パターン6は、光センサ54−1、54−2がオフで、光センサ54−3がオンとなるパターンである。パターン7は、光センサ54−1がオフで、光センサ54−2、54−3がオンとなるパターンである。パターン8は、光センサ54−1、54−2、54−3がすべてオンとなるパターンである。
【0087】
このように各光センサ54−1、54−2、54−3のオンオフ状態のパターンの違いを利用すれば、原稿ガイド61、62の位置が、上記オンオフのパターンの違いで識別される8つの位置のいずれに存在するかを把握可能となる。また、原稿ガイド61、62は、原稿トレイ11に置かれた原稿を位置決めするにあたって、当該原稿の両方の側端に同時に突き当てられる。このため、原稿を位置決めした状態の原稿ガイド61,62の位置は、原稿トレイ11に置かれた原稿の原稿幅に対応した位置となる。
【0088】
したがって、上述した3つの光センサ54−1、54−2、54−3のオンオフ状態が上記8つのパターンのいずれに該当するかにより、原稿トレイ11に置かれた原稿の原稿幅を検知可能となる。ただし、原稿トレイ11にサイズの異なる原稿が置かれた場合は、原稿ガイド61、62を最大幅の原稿の両側端に突き当てて原稿を位置決めすることになる。このため、第1原稿幅検知センサ50(光センサ54−1、54−2、54−3)を用いて検知される原稿の原稿幅は、原稿トレイ11に置かれた原稿のうち、原稿幅が最大となる原稿の原稿幅(以下、「最大原稿幅」)に対応したものとなる。
【0089】
なお、原稿トレイ11に置かれた原稿の原稿幅を検知する第1原稿幅検知手段の構成としては、上記の構成に限らず、例えば、ピニオン64の回転量および回転方向に基づいて、奥側ガイド61および手前側ガイド62の位置を認識することにより、奥側ガイド61および手前側ガイド62により位置決めされた原稿の原稿幅を検知する構成であってもよい。
【0090】
本実施の形態では、図2に示すように、第1搬送路31におけるフィードロール14の下流側の近傍に、搬送部37により原稿トレイ11から1枚ずつ分離して搬送された原稿の原稿幅を検知する第2原稿幅検知手段の一例としての第2原稿幅検知センサ66が設けられている。
【0091】
第2原稿幅検知センサ66は、例えば、複数(図例では4つ)の反射型の光センサを用いて構成されている。第2原稿幅検知センサ66は、原稿トレイ11に置かれると予想される原稿の原稿幅の検知を考慮して、各センサの配置間隔が決定されている。
【0092】
例えば、原稿幅方向(主走査方向)でセンター振り分けの基準となる中心位置に近い側(内側)の検知センサ66から数えて、1つ目、2つ目、3つ目、4つ目と区別すると、A5サイズの短手寸法(182mm)に相当する原稿幅の原稿を搬送した場合は、1つ目の検知センサ66だけがオン状態となり、A4サイズの短手寸法(210mm)に相当する原稿幅の原稿を搬送した場合は、2つ目までの検知センサ66がオン状態となり、B4サイズの短手寸法(257mm)に相当する原稿幅の原稿を搬送した場合は、3つ目までの検知センサ66がオン状態となり、A3サイズの短手寸法(297mm)に相当する原稿幅の原稿を搬送した場合は、4つの検知センサ66がすべてオン状態となる条件を満たす位置関係で、各々の検知センサ66が原稿幅方向に位置をずらして配置されている。
【0093】
なお、図2に示す構成例では、異なるサイズの原稿G1、G2を原稿トレイ11に混載するにあたって、各々の原稿G1、G2の奥側の側端を奥側ガイド61に突き当てて当該原稿G1、G2の奥側の側端位置を揃えることを前提に、第2原稿幅検知センサ66を手前側ガイド62寄りに配置しているが、これに限らない。例えば、図示はしないが、各々の原稿の手前側の側端を手前側ガイド62に突き当てて当該原稿の手前側の側端位置を揃えることを前提に、第2原稿幅検知センサ66を奥側ガイド61寄りに配置してもよい。
【0094】
また、本実施の形態では、図4に示すように、原稿トレイ11に置かれた原稿の原稿長を検知する原稿長検知手段の一例としての原稿長検知センサ56が設けられている。原稿長検知センサ56は、原稿トレイ11上で、当該原稿トレイ11に置かれた原稿の原稿長を検知するものである。原稿トレイ11には、原稿のサイズの違いにかかわらず、すべての原稿が、原稿の先端位置を揃えた状態で置かれる。このため、原稿の後端位置は、原稿トレイ11に置かれた原稿の原稿長に依存したものとなる。即ち、原稿長が長い原稿と原稿長が短い原稿を比較すると、原稿長が長い原稿の後端位置は、原稿長が短い原稿の後端位置よりも、繰り出しロール13から離れたところに位置するものとなる。
【0095】
原稿長検知センサ56は、例えば、複数(図例では4つ)の反射型の光センサを用いて構成されている。原稿長検知センサ56は、原稿トレイ11に置かれると予想される原稿の原稿長の検知を考慮して、各センサの配置間隔が決定されている。
【0096】
例えば、原稿長方向で繰り出しロール13に近い側の検知センサ56から数えて、1つ目、2つ目、3つ目、4つ目と区別すると、A5サイズの短手寸法(182mm)に相当する原稿長の原稿を原稿トレイ11に置いた場合は、1つ目の検知センサ56だけがオン状態となり、A4サイズの短手寸法(210mm)に相当する原稿長の原稿を原稿トレイ11に置いた場合は、2つ目までの検知センサ56がオン状態となり、B4サイズの短手寸法(257mm)に相当する原稿長の原稿を原稿トレイ11に置いた場合は、3つ目までの検知センサ56がオン状態となり、A3サイズの短手寸法(297mm)に相当する原稿長の原稿を原稿トレイ11に置いた場合は、4つの検知センサ56がすべてオン状態となる条件を満たす位置関係で、各々の検知センサ56が原稿長方向に位置をずらして配置されている。
【0097】
原稿トレイ11にサイズの異なる原稿を置いた場合は、原稿長検知センサ56を構成する複数の光センサのうち、オン状態となる光センサの個数は、原稿長が最大の原稿のサイズによって決まる。このため、原稿トレイ11上で原稿長検知センサ56を用いて検知される原稿の原稿長は、原稿トレイ11に置かれた原稿のうち、原稿長が最大となる原稿の原稿長(以下、「最大原稿長」)に対応したものとなる。
【0098】
原稿検知センサ68、69は、第1搬送路31の途中に設けられている。原稿検知センサ68は、原稿の搬送方向において、送り出しロール対14、15よりも下流側で、かつテイクアウェイロール16よりも上流側に配置されている。原稿検知センサ69は、原稿の搬送方向において、プレレジロール17よりも下流側で、かつレジロール18よりも上流側に配置されている。原稿検知センサ68、69は、それぞれのセンサ位置で、搬送部37により原稿トレイ11から1枚ずつ分離して搬送される原稿の先端および後端の通過を検知する。原稿検知センサ68、69は、例えば反射型の光センサを用いて構成されている。
【0099】
第1原稿幅検知センサ50、第2原稿幅検知センサ66、原稿長検知センサ56および原稿検知センサ68、69は、それぞれ制御部90に電気的に接続されている。そして、第1原稿幅検知センサ50、第2原稿幅検知センサ66、原稿長検知センサ56および原稿検知センサ68、69の各検知信号は、制御部90に取り込まれるようになっている。
【0100】
制御部90は、画像読取装置10を含む画像形成装置100全体の動作を制御する。
このため、搬送部37の各種ロールの動作やゲートの切り替え動作等は、制御部90によって制御される。
【0101】
また、図5に示すように、画像読取装置10の筐体表面には、画像形成装置100を使用(操作)する使用者が操作可能な操作部の一例としての操作パネル58が設けられている。この操作パネル58は、表示手段の一例としての表示パネル59を備えている。
【0102】
ここで、本実施の形態に係る画像読取装置10は、異なるサイズの原稿の搬送を許容する搬送モード(以下、「混載モード」)と、異なるサイズの原稿の搬送を許容しない(換言すると、同一サイズの原稿のみの搬送を許容する)搬送モード(以下、「通常モード」)を有している。
【0103】
本実施の形態では、混載モードにおいて、異なるサイズの原稿を同時に重ねて原稿トレイ11の上に置き、その原稿束から原稿を1枚ずつ搬送し、その原稿の画像を読み取るようになっている。
【0104】
混載モードは、操作パネル58を通じて使用者が選択することで設定される。混載モードが選択されると、制御部90が混載モードに基づく処理を行う。
【0105】
通常モードでは、原稿トレイ11に正しく原稿が置かれ、それに合わせて原稿ガイド61、62の位置が正しく調整されていれば、第1原稿幅検知センサ50による原稿幅の検知結果、および、原稿長検知センサ56による原稿長の検知結果に基づいて、原稿のサイズを特定しても特に問題はない。しかしながら、混載モードでは、異なるサイズの原稿が原稿トレイ11に置かれるため、第1原稿幅検知センサ50の検知結果と原稿長検知センサ56の検知結果から特定される原稿のサイズと、実際に原稿トレイ11から搬送される原稿のサイズが一致(整合)しない場合がある。
【0106】
このため、混載モードでは、第1原稿幅検知センサ50の検知結果と原稿長検知センサ56の検知結果に加えて、又は、それらの検知結果とは別に、第2原稿幅検知センサ66の検知結果と、後述する変位センサの検知結果に基づいて、原稿のサイズを特定する。これらの検知結果は、原稿のサイズ検知に関する情報の一例として、制御部90に取り込まれる。そして、制御部90は、搬送部37によって搬送される最上位の原稿のサイズを、少なくとも変位センサの検知結果を用いて特定する特定手段としての機能をもつ。
【0107】
制御部90が特定した原稿のサイズは、画像形成装置100の画像形成動作に適用する画像形成条件、例えば、画像読取装置10で原稿の画像を読み取るときの読み取り範囲や、コピー処理に適用するコピー倍率、コピー処理に使用する記録媒体Pのサイズなど、を決定するために利用される。
【0108】
図6は本発明の実施の形態に係る画像読取装置の主要部の構成を示す側面概略図である。図6においては、前述の原稿トレイ11に置かれた複数枚の原稿(原稿束)1の最上面1Aに繰り出しロール13が接触する状態で配置されている。繰り出しロール13は、原稿トレイ11を「媒体置き部」の一例とし、原稿を「被搬送媒体」の一例としたときに、「媒体置き部に置かれた被搬送媒体の最上面に接触する状態で配置された接触部材」を兼ねるものとなっている。原稿トレイ11に置かれた原稿1の最上面とは、原稿トレイ11に置かれた原稿1,…のうち、最上位(一番上)の原稿1の上面をいう。繰り出しロール13の下側の外周面は、前述したように原稿搬送を開始するときに繰り出しロール13が退避位置から下降することで、例えば、繰り出しロール13自身の質量(自重)、又は図示しない弾性体(ばね等)を用いた押圧力により、原稿1の最上面1Aに接触する状態に保持される。
【0109】
繰り出しロール13は、原稿トレイ11に置かれた原稿1の最上面1Aに接触しつつ回転する回転部材の一例として設けられたものである。繰り出しロール13の外周面は、例えば、ゴムなどのように摩擦係数の高い弾性材料を用いて形成されている。このため、繰り出しロール13を回転させると、これに接触する最上位の原稿1が送り出しロール対14、15に向けて繰り出される。
【0110】
このとき、原稿間の密着力が強いと、最上位の原稿1と一緒に、その下側の原稿(最上位の原稿から数えて2枚目の原稿や3枚目の原稿など)が一緒に繰り出されることがある。ただし、送り出しロール対14、15の間では、上側の送り出しロール14の回転によって最上位の原稿1に搬送方向(矢印方向)の搬送力が付与される一方、下側の送り出しロール15によって最上位以外の原稿に搬送方向と逆向きの戻し力が付与される。つまり、下側の送り出しロール15は、原稿を1枚ずつ分離する分離手段として機能する。分離手段の機能は、例えば、下側の送り出しロール15を図示しないワンウェイクラッチで回転可能に支持する構成を採用することで付与される。
【0111】
かかる構成を採用した場合は、送り出しロール対14、15の間に原稿1が1枚だけ挟み込まれた状態では、図6のように、送り出しロール14の回転に伴う原稿1の移動に連れ回るかたちで、送り出しロール15が送り出しロール14と反対方向に回転する。これに対して、送り出しロール対14、15の間に複数枚の原稿1が挟み込まれた状態では、上記ワンウェイクラッチに支持された送り出しロール15が送り出しロール14と同一方向に回転することで、最上位以外の原稿が送り出しロール15の回転によって原稿トレイ11側に戻される。このため、一対の送り出しロール14、15からは、原稿1が1枚ずつ分離された状態で送り出される。
【0112】
繰り出しロール13は回転軸13Aに取り付けられている。回転軸13Aは、例えば、断面円形の金属製のシャフトを用いて構成されている。回転軸13Aの両端部には、例えば、図7に示すように、軸受け部材2が取り付けられている。軸受け部材2は、回転軸13Aを回転自在な状態で支持する部材である。軸受け部材2は、例えば、画像読取装置10のフレーム部材3に設けられた縦長の長孔3Aに嵌め込まれている。フレーム部材3の長孔3Aは、その長軸が鉛直方向(上下方向)と平行になる向きで配置されている。そして、軸受け部材2は長孔3Aの長軸方向に移動自在となっている。このため、軸受け部材2は、回転軸13Aおよび繰り出しロール13と一体になって鉛直方向に変位可能となっている。ここで記述する鉛直方向とは、重力が作用する方向と平行な方向(地平面に対して垂直な方向)をいう。
【0113】
繰り出しロール13および回転軸13Aは互いに一体に回転するようになっている。回転軸13Aの一端側には、当該回転軸13Aに回転駆動力を伝達する部材の一例として、図8に示すように歯車4が取り付けられている。歯車4は、回転軸13Aの中心軸方向において、例えば、上記軸受け部材2が取り付けられる位置よりも外側又は内側に取り付けられる。歯車4は、繰り出しロール13および回転軸13Aと一体に回転するように、回転軸13Aに同軸上に取り付けられている。歯車4には、図示しない駆動モータ(例えば、ステッピングモードなど)を駆動源として回転する駆動歯車又は当該駆動歯車に噛み合う従動歯車が、噛み合っている。なお、ここでは回転軸13Aに歯車4を取り付けているが、この歯車4に代えて、図示しないプーリを回転軸13Aに取り付けてもよい。
【0114】
回転軸13Aの中心軸方向において、繰り出しロール13と歯車4との間には、変位センサ5が配置されている。変位センサ5は、繰り出しロール13の回転軸13Aの位置の変化(変位)を検知するセンサである。回転軸13Aは、前述したように鉛直方向に変位することから、変位センサ5は、鉛直方向における回転軸13Aの変位(高さの変化)を検知するものとなる。
【0115】
変位センサ5は、アクチュエータ6と、一対のセンサ素子7、8とを用いて構成されている。アクチュエータ6は、図示しない支持機構により、鉛直方向に移動自在に設けられている。アクチュエータ6は、遮光部6Aおよび接触部6Bを一体に有する。遮光部6Aは、側面視三角形(図例では二等辺三角形)の板状に形成されている。接触部6Bは、アクチュエータ6の最下部に、遮光部6Aよりも幅広の板状に形成されている。アクチュエータ6は、回転軸13Aの上に乗るかたちで、その接触部6Bの下面(平坦面)が回転軸13Aの外周面の頂部に接触している。このため、アクチュエータ6と回転軸13Aの接触状態は、当該回転軸13Aの中心軸方向に沿う線接触の状態となっている。
【0116】
ここで、上記駆動モータの駆動に伴って回転軸13Aが回転した場合は、当該回転軸13Aの位置が鉛直方向に変位しないかぎり、アクチュエータ6の位置が、鉛直方向を含めていずれの方向にも変位しないように、アクチュエータ6が上記支持機構(不図示)により支持されている。
【0117】
一対のセンサ素子7、8は、回転軸13Aの中心軸方向において、アクチュエータ6の遮光部6Aを両側から挟み込むように配置されている。一対のセンサ素子7、8とアクチュエータ6の遮光部6Aとの間には、それぞれ隙間が介在している。また、一対のセンサ素子7、8は、アクチュエータ6の遮光部6Aを介して互いに対向する状態に配置されている。一対のセンサ素子7、8は、それぞれ位置が固定された状態で設けられている。このため、回転軸13Aと一緒にアクチュエータ6が鉛直方向に変位しても、一対のセンサ素子7、8の位置は変わらずに維持される。
【0118】
一対のセンサ素子7、8のうち、例えば、一方のセンサ素子7は発光素子、他方のセンサ素子8は受光素子となっている。一方のセンサ素子7は、アクチュエータ6の遮光部6Aを水平方向に横切るライン状の光を出射する。他方のセンサ素子8は、一方のセンサ素子7から出射されたライン状の光のうち、アクチュエータ6の遮光部6Aで遮光されずに到達した光を受光する。
【0119】
他方のセンサ素子8は、受光量に応じたレベル(例えば、電圧レベル、電流レベルなど)の電気信号を出力する。また、一対のセンサ素子7、8の間でアクチュエータ6が鉛直方向に変位すると、アクチュエータ6の遮光部6Aが側面視三角形に形成されていることから、一方のセンサ素子7から出射された光のうち、他方のセンサ素子8で受光される受光量が変化する。
【0120】
具体的には、アクチュエータ6が鉛直方向で上方に変位した場合は、一対のセンサ素子7、8による発光・受光位置が、アクチュエータ6の遮光部6Aで相対的に下方に変位する。また、アクチュエータ6が鉛直方向で下方に変位した場合は、一対のセンサ素子7、8による発光・受光位置が、アクチュエータ6の遮光部6Aで相対的に上方に変位する。
【0121】
ここで、例えば、図9(A)に示すように、一対のセンサ素子7、8による発光・受光位置が、アクチュエータ6の高さ方向で第1の高さ位置H1にある場合と、それよりも下方の第2の高さ位置H2にある場合を想定する。
【0122】
一対のセンサ素子7、8による発光・受光位置が上記第1の高さ位置H1にある場合は、図9(B)に示すように、センサ素子7からセンサ素子8に向けて光が出射され、一対のセンサ素子7、8による発光・受光位置が上記第2の高さ位置H2にある場合は、図9(C)に示すように、センサ素子7からセンサ素子8に向けて光が出射される。その場合、一対のセンサ素子7、8の間で光を遮るアクチュエータ6(遮光部6A)の長さが変わるため、一対のセンサ素子7、8による発光・受光位置が上記第2の高さ位置H2にある場合よりも、上記第1の高さ位置H1にある場合の方が、センサ素子8の受光量が多くなる。
【0123】
つまり、アクチュエータ6が鉛直方向で上方に変位した場合は、一方のセンサ素子7から出射された光のうち、アクチュエータ6の遮光部6Aで遮光される光の量が増加するため、他方のセンサ素子8で受光される光の量が減少する。また、アクチュエータ6が鉛直方向で下方に変位した場合は、一方のセンサ素子7から出射された光のうち、アクチュエータ6の遮光部6Aで遮光される光の量が減少するため、他方のセンサ素子8で受光される光の量が増加する。このように他方のセンサ素子8の受光量が増減すると、それに応じて他方のセンサ素子8から出力される電気信号のレベルが変化する。
【0124】
そこで、変位センサ5の検知結果を取り込む制御部90においては、他方のセンサ素子8から出力される電気信号のレベルが、予め設定された閾値以上に変化(増加又は減少)した場合に、アクチュエータ6が鉛直方向で変位したと認識する仕組みになっている。アクチュエータ6は、繰り出しロール13を支持する回転軸13Aと共に鉛直方向に変位するため、変位センサ5を用いてアクチュエータ6の変位を認識するということは、繰り出しロール13や回転軸13Aの変位を認識することにもなる。
【0125】
前述した「閾値」に関しては、例えば、画像形成装置100の制御部90をCPU(中央演算処理装置)、ROM(Read-Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等のコンピュータのハードウェア資源を用いて構成するものとすると、不揮発性メモリの一例であるROM(例えば、EPROMなど)に制御用のプログラムと共に記憶しておけばよい。
【0126】
ここで、原稿トレイ11に置かれた原稿を搬送部37で搬送する場合は、繰り出しロール13によって繰り出した原稿を送り出しロール対14,15により1枚ずつ分離して第1搬送路31に送り出すことになる。その際、送り出しロール対14、15に挟まれて搬送される原稿の後端が原稿トレイ11上で繰り出しロール13との接触位置を通過すると、繰り出しロール13の位置が鉛直方向(原稿の厚み方向)で変化する。具体的には、送り出しロール対14、15により分離して送り出された原稿の後端が繰り出しロール13との接触位置を通過する瞬間に、繰り出しロール13の位置が鉛直方向で原稿の厚み寸法相当だけ下方に変化する。つまり、繰り出しロール13との接触位置において、送り出しロール対14、15により送り出された原稿の後端が通過すると、これに伴って原稿トレイ11上で原稿の最上面の高さが低くなる。この原稿の最上面の高さの変化により、繰り出しロール13が下方に変位する。
【0127】
このとき、繰り出しロール13を支持する回転軸13Aや、当該回転軸13Aに接触する変位センサ5のアクチュエータ6も、繰り出しロール13と一緒に下方に変位する。本実施の形態においては、上述のように分離して送り出された原稿の後端が繰り出しロール13との接触位置を通過する前と後で、変位センサ5(他方のセンサ素子8)から出力される電気信号のレベルが、上記閾値以上に変化するようになっている。したがって、制御部90においては、上述のように分離して送り出された原稿の後端が繰り出しロール13との接触位置を通過したか否かを、変位センサ5から出力される電気信号のレベルの変化から認識可能となる。
【0128】
具体的には、例えば、変位センサ5から出力される電気信号のレベルを、ある時間間隔(例えば、数msec間隔)で時系列に順に取り込みつつ、前回取り込んだ電気信号のレベルと今回取り込んだ電気信号のレベルとの差を求める。そして、求めた電気信号のレベル差が、上記閾値未満であれば、原稿の後端が繰り出しロール13との接触位置を通過していないと認識する。また、求めた電気信号のレベル差が、上記閾値以上であれば、原稿の後端が繰り出しロール13との接触位置を通過したと認識する。
【0129】
図10は変位センサ5から出力される電気信号のレベルの変化を示す図である。図10においては、縦軸に変位センサ5から出力される電気信号のレベルをとり、横軸に時間をとっている。上述のように繰り出しロール13によって繰り出した原稿を送り出しロール対14,15により1枚ずつ分離して第1搬送路31に送り出すと、当該原稿の後端が繰り出しロール13との接触位置を通過するタイミングTcで、変位センサ5の出力信号レベルが上記閾値以上に変化する。
【0130】
このように変位センサ5の出力信号レベルが変化するタイミングTcは、送り出しロール対14、15により送り出された原稿の先端通過を原稿検知センサ68が検知したタイミングTsを基準に考えると、送り出しロール対14、15により送り出される原稿の原稿長が長くなるほど、タイミングTsからタイミングTcまでの経過時間が長くなる。また、送り出しロール対14、15を回転させるための駆動モータの回転量に関しても、タイミングTsからタイミングTcまでの間に、当該駆動モータの回転量は、原稿の原稿長が長くなるほど多くなる。
【0131】
図11は本発明の実施の形態に係る画像読取装置の処理手順の一例を示すフローチャートである。ここでは、原稿トレイ11に置かれた原稿の画像を読み取る場合の処理手順について説明する。
【0132】
まず、制御部90は、操作パネル58に設けられたスタートボタンが押下されたかどうかを判断する(ステップS1)。そして、スタートボタンが押下されたと判断すると、搬送部37を駆動して原稿の搬送を開始する(ステップS2)。これにより、原稿トレイ11に置かれた原稿のうち、最上位の原稿が繰り出しロール13の回転によって繰り出されるとともに、繰り出された原稿が送り出しロール対14、15の回転によって1枚ずつ分離された状態で送り出される。
【0133】
次に、テイクアウェイロール16、プレレジロール17およびレジロール18を順に経て、原稿の先端が第2プラテンガラス72Bに到達すると、制御部90からの指示に基づいて、当該原稿の画像を読取部70が読み取る(ステップS3)。
【0134】
その際、プレレジロール17によって搬送された原稿の先端は、回転停止状態のレジロール18に突き当てられ、この状態でプレレジロール17が所定量だけ原稿を搬送することにより、レジロール18の上流側で原稿がループ状に撓んだ状態となる。そして、この状態のもとで、レジロール18が回転を開始することにより、原稿が第2プラテンガラス72B上の原稿読み取り位置に向けて搬送される。
【0135】
次に、制御部90は、両面読み取りモードが指定されているかどうかを確認する(ステップS4)。両面読み取りモードの指定は、上記スタートボタンを押下する前に、使用者が操作パネル58を操作して行なう。
【0136】
両面読み取りモードが指定されていると判断した場合は、原稿の反転搬送を行なう(ステップS5)。原稿の反転搬送は、次のような手順で行なう。
【0137】
まず、第2プラテンガラス72B上を通過した原稿を、切り替えゲート42によって第1搬送路31から第3搬送路33へと送り込んだ後、第3搬送路33から第4搬送路34へと送り込む。次に、第4搬送路34でインバータロール22およびインバータピンチロール23により原稿をスイッチバックさせた後、切り替えゲート43によって第4搬送路34から第5搬送路35へと原稿を送り込む。こうして第5搬送路35へと送り込まれた原稿は、プレレジロール17の手前(上流側)で第1搬送路31に合流する。
【0138】
次に、上記同様に、プレレジロール17およびレジロール18を順に経て、原稿の先端が第2プラテンガラス72Bに到達すると、制御部90からの指示に基づいて、当該原稿の画像を読取部70が読み取る(ステップS6)。
【0139】
次に、原稿を表裏反転した状態で排出トレイ40上に排出する(ステップS7)。原稿の反転排出は、次のような手順で行なう。
【0140】
まず、第2プラテンガラス72B上を通過した原稿を、切り替えゲート42によって第1搬送路31から第3搬送路33へと送り込んだ後、第3搬送路33から第4搬送路34へと送り込む。次に、第4搬送路34でインバータロール22およびインバータピンチロール23により原稿をスイッチバックさせた後、切り替えゲート43によって第4搬送路34から第6搬送路36へと原稿を送り込む。次に、第6搬送路36上で原稿を第2排出ロール24により第1排出ロール21に向けて搬送する。次に、第1排出ロール21によって原稿を排出トレイ41に排出する。
【0141】
一方、上記ステップS4で両面読み取りモードが指定されていないと判断した場合は、原稿の排出を行なう(ステップS8)。原稿の排出は、第2プラテンガラス72B上を通過した原稿を、切り替えゲート42によって第1搬送路31から第2搬送路32に送り込んだ後、第1排出ロール21によって排出トレイ41に排出することで行なう。
【0142】
図12は原稿トレイに置かれた原稿を搬送する場合に、原稿のサイズを特定するために行なわれる処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0143】
まず、制御部90は、操作パネル58を操作する使用者が、原稿搬送モードの選択候補として予め用意されている通常モードおよび混載モードのうち、混載モードを選択(指定)したかどうかを確認する(ステップS11)。そして、使用者が混載モードを選択しなかったと判断すると、通常モードに基づく処理を実行する(ステップS12)。
【0144】
これに対して、使用者が混載原稿モードを選択したと判断すると、上記スタートボタンの押下により使用者からスタートの指示を受けた段階(ステップS13で肯定判定した段階)で、第1原稿幅検知センサ50を用いて原稿幅(最大原稿幅)を検知した後(ステップS14)、原稿長検知センサ56を用いて原稿長(最大原稿長)を検知する(ステップS15)。なお、ステップS14の処理とステップS15の処理は、どちらを先に行なってもよい。
【0145】
次に、制御部90は、ステップS16において、上記ステップS2と同様に搬送部37を駆動して原稿の搬送を開始した後、第2原稿幅検知センサ66を用いて原稿幅を検知する(ステップS17)。第2原稿幅検知センサ66は、送り出しロール対14,15よりも搬送方向の下流側に配置されている。このため、第2原稿幅検知センサ66が検知する原稿幅は、送り出しロール対14、15によって1枚ずつ分離して送り出された原稿の原稿幅に対応したものとなる。
【0146】
次に、制御部90は、変位センサ5を用いて原稿長を検知する(ステップS18)変位センサ5を用いた原稿長の検知処理は、少なくとも送り出しロール対14、15により送り出された原稿の後端が、当該送り出しロール対14、15の間を通過する前(換言すると、原稿が完全に分離される前)に行なわれる。以下に、変位センサ5を用いた原稿長の検知処理の一例を記述する。
【0147】
まず、原稿長=182mmの原稿を搬送する場合と原稿長=364mmの原稿を搬送する場合を比較すると、変位センサ5の出力信号レベルが閾値以上に変化するタイミングは、例えば、原稿検知センサ68が原稿の先端通過を検知するタイミングを起点に考えると、原稿長の違いにより、前者の方が後者よりも早くなる。
【0148】
このため、定型のA版サイズとB版サイズに限定して考えると、上記ステップS17で検知した原稿幅が、例えば、B5サイズの長手寸法やB4サイズの短手寸法に相当する257mmであった場合、当該原稿幅から想定(予測)される原稿長の候補は、例えば、予め上記の不揮発性メモリに記憶された原稿サイズ対応表を用いることで、B5サイズの短手寸法に相当する182mmと、B4サイズの長手寸法に相当する364mmの2つに絞られる。
【0149】
そうした場合、制御部90は、例えば、原稿長が短い方の候補(本例では182mm)の原稿を搬送したときに変位センサ5の出力信号レベルが閾値以上に変化すると予想されるタイミングと、原稿長が長い方の候補(本例では364mm)の原稿を搬送したときに変位センサ5の出力信号レベルが閾値以上に変化すると予想されるタイミングとの間(例えば、中間時点)に基準タイミングを設定する。そして、基準タイミングに到達する前に、変位センサ5の出力信号レベルが閾値以上に変化した場合は、原稿長=182mmと検知する。また、基準タイミングを過ぎても、変位センサ5の出力信号レベルが閾値以上に変化しなかった場合は、原稿長=364mmと検知する。
【0150】
基準タイミングは、搬送する原稿の原稿長が変わっても、時間軸上で変化することのないタイミング、例えば、前述したように送り出しロール対14、15により送り出された原稿の先端通過を上流側の原稿検知センサ68が検知したタイミングや、下流側の原稿検知センサ69が検知したタイミングなど、を起点に設定すればよい。また、例えば、送り出しロール対14、15により送り出された原稿の先端通過を上流側の原稿検知センサ68が検知したタイミングから、予め設定された一定時間が経過したタイミングを起点に、上記基準タイミングを設定してもよい。
【0151】
ここでは、説明の便宜上、原稿幅から想定される原稿長の候補を2つとし、変位センサ5の出力信号レベルが閾値以上に変化するタイミングが、上記基準タイミングに到達する前か後かによって、候補の一方を原稿長として検知するものとしたが、これに限らない。例えば、原稿幅から想定される原稿長の候補が3つである場合は、次のように原稿長を検知すればよい。
【0152】
すなわち、原稿長の候補のうち、最も原稿長が短い候補の原稿を搬送したときに変位センサ5の出力信号レベルが閾値以上に変化すると予想されるタイミングと、原稿長が2番目に短い候補の原稿を搬送したときに変位センサ5の出力信号レベルが閾値以上に変化すると予想されるタイミングとの間(例えば、中間の時点)に第1の基準タイミングを設定する。さらに、原稿長が2番目に短い候補の原稿を搬送したときに変位センサ5の出力信号レベルが閾値以上に変化すると予想されるタイミングと原稿長が最も長い候補の原稿を搬送したときに変位センサ5の出力信号レベルが閾値以上に変化すると予想されるタイミングとの間(例えば、中間の時点)に第2の基準タイミングを設定する。
【0153】
そして、第1の基準タイミングに到達する前に、変位センサ5の出力信号レベルが閾値以上に変化した場合は、原稿長が最も短い原稿に合わせて原稿長を検知する。また、第1の基準タイミングから第2の基準タイミングに至るまでの間に、変位センサ5の出力信号レベルが閾値以上に変化した場合は、原稿長が2番目に短い原稿に合わせて原稿長を検知する。また、第2の基準タイミングが過ぎても、変位センサ5の出力信号レベルが閾値以上に変化しなかった場合は、原稿長が最も長い原稿に合わせて原稿長を検知する。
【0154】
第2原稿幅検知センサ66を用いて検知される原稿幅から想定される原稿長の候補は、検知の対象にインチ系列の原稿(レター、ハーフレター、リーガルなど)を含めても、おおむね3つ以下に絞り込まれるが、それ以上に候補数が多くなる場合は、各々の候補の原稿長に合わせて、上記基準タイミングの設定数を増やせばよい。
【0155】
また、上述した原稿長の検知方法はあくまで一例であり、これ以外の方法で原稿長を検知してもよい。
【0156】
例えば、原稿検知センサ68が原稿の先端通過を検知してから変位センサ5の出力信号レベルが閾値以上に変化するまでの経過時間と、原稿の原稿長との関係を対応付けた対応表や演算プログラムを、上記の不揮発性メモリに記憶しておき、実際に装置内蔵のタイマー等を用いて測定した上記経過時間を基に、上記対応表から原稿長を読み出すか、上記演算プログラムで原稿長を演算することで、原稿長を求めてもよい。
【0157】
また、例えば、送り出しロール対14、15を回転させるための駆動モータの回転量に関して、原稿検知センサ68が原稿の先端通過を検知してから変位センサ5の出力信号レベルが閾値以上に変化するまでの間の上記駆動モータの回転量と、原稿の原稿長との関係を対応付けた対応表や演算プログラムを、上記の不揮発性メモリに記憶しておき、実際に装置内蔵のエンコーダ等を用いて計測した駆動モータの回転量を基に、上記対応表から原稿長を読み出すか、上記演算プログラムで原稿長を演算することで、原稿長を求めてもよい。
【0158】
こうして原稿幅および原稿長を検知したら、制御部90は、それらの検知情報から、原稿のサイズを特定(確定)する(ステップS19)。例えば、上記ステップS17で検知した原稿幅が257mmで、上記ステップS18で検知した原稿長が182mmであった場合は、原稿サイズが「縦置き」のB5サイズであると特定する。また、上記ステップS17で検知した原稿幅が257mmで、上記ステップS18で検知した原稿長が364mmであった場合は、原稿サイズが「横置き」のB4サイズであると特定する。ここで記述する「縦置き」とは、原稿の長辺部を搬送方向に向けて原稿トレイ11に原稿を置く形態を意味し、「横置き」とは、原稿の短辺部を搬送方向に向けて原稿トレイ11に原稿を置く形態を意味する。制御部90による原稿サイズの特定は、上記ステップS3で原稿画像の読み取りを開始する前、さらに詳しくは、レジロール18による原稿の搬送を開始する前に行なわれる。
【0159】
(変形例)
本発明の実施の形態においては、繰り出しロール13の回転軸13Aの変位を、変位センサ5を用いて検知する構成としたが、これに限らず、回転軸13Aを支持する軸受け部材2の変位を、図示しない変位センサで検知する構成としてもよい。また、これ以外にも、例えば、回転軸13Aに取り付けられた繰り出しロール13の変位を、図示しない変位センサで検知する構成としてもよい。
【0160】
本発明の実施の形態においては、繰り出しロール13が「接触部材」を兼ねるとしたが、これに限らず、繰り出しロール13とは別に「接触部材」を設けた構成を採用してもよい。また、かかる構成を採用した場合は、媒体置き部の一例となる原稿トレイ11に置かれた原稿(被搬送媒体)の最上面に、図示しない接触部材の回転体を接触させた状態とし、当該接触状態のもとで、原稿の移動にしたがって接触部材の回転体が回転(連れ回り)するものとしてもよい。
【0161】
本発明の実施の形態においては、搬送部37によって搬送される最上位の原稿の後端が繰り出しロール13との接触位置を通過するときに鉛直方向に生じる繰り出しロール13の物理的な状態の変化として、鉛直方向に生じる繰り出しロール13の位置の変化を検知する構成としたが、これに限らず、例えば、鉛直方向に生じる繰り出しロール13の振動(振幅)の変化を検知する構成としてもよい。かかる構成を採用した場合は、最上位の原稿の後端が繰り出しロール13との接触位置を通過するときに、繰り出しロール13の振動(振幅)が瞬間的に大きくなる。したがって、繰り出しロール13の振動(振幅)が予め設定された閾値以上に変化したときに、原稿トレイ11上で最上位の原稿の後端が繰り出しロール13との接触位置を通過したと制御部90が認識するようにすればよい。
【符号の説明】
【0162】
2…軸受け部材、5…変位センサ、10…画像読取装置、11…原稿トレイ、13…繰り出しロール、13A…回転軸、37…搬送部、90…制御部、100…画像形成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被搬送媒体が置かれる媒体置き部と、
前記媒体置き部に置かれた被搬送媒体の最上面に接触する状態で配置された接触部材と、
前記媒体置き部に置かれた被搬送媒体を最上位の被搬送媒体から順に搬送する搬送手段と、
前記搬送手段によって搬送された前記最上位の被搬送媒体の後端が前記接触部材との接触位置を通過するときに鉛直方向に生じる前記接触部材の物理的な状態の変化を検知する検知手段と、
前記搬送手段によって搬送された前記最上位の被搬送媒体の寸法を、少なくとも前記検知手段の検知結果を用いて特定する特定手段と
を備える媒体搬送装置。
【請求項2】
前記検知手段は、前記接触部材の物理的な状態の変化として、前記接触部材の位置の変化を検知する
請求項1記載の媒体搬送装置。
【請求項3】
前記接触部材は、前記媒体置き部に置かれた被搬送媒体の最上面に接触して回転する回転体を有する
請求項1又は2記載の媒体搬送装置。
【請求項4】
前記搬送手段は、
前記媒体置き部に置かれた被搬送媒体を最上位の被搬送媒体から順に繰り出す繰り出し部材を含み、
前記繰り出し部材が前記接触部材を兼ねている
請求項1、2又は3記載の媒体搬送装置。
【請求項5】
前記繰り出し部材は、前記媒体置き部に置かれた被搬送媒体の最上面に接触しつつ回転する回転部材からなり、
前記検知手段は、前記接触部材を兼ねる前記繰り出し部材の物理的な状態の変化として、前記回転部材と一体に回転する回転軸又は当該回転軸を支持する軸受け部材の物理的な状態の変化を検知する
請求項4記載の媒体搬送装置。
【請求項6】
原稿を搬送する原稿搬送装置と、
前記原稿搬送装置によって搬送された原稿の画像を読み取る読取手段とを備え、
前記原稿搬送装置は、
原稿が置かれる原稿置き部と、
前記原稿置き部に置かれた原稿の最上面に接触する状態で配置された接触部材と、
前記原稿置き部に置かれた原稿を最上位の原稿から順に搬送する搬送手段と、
前記搬送手段によって搬送された前記最上位の原稿の後端が前記接触部材との接触位置を通過するときに鉛直方向に生じる前記接触部材の物理的な状態の変化を検知する検知手段と、
前記搬送手段によって搬送された前記最上位の原稿の寸法を、少なくとも前記検知手段の検知結果を用いて特定する特定手段と
を備える
画像読取装置。
【請求項7】
原稿を搬送する原稿搬送装置と、
前記原稿搬送装置によって搬送された原稿の画像を読み取る画像読取装置と、
前記画像読取装置によって読み取られた原稿の画像を記録媒体に記録する画像記録装置とを備え、
前記原稿搬送装置は、
原稿が置かれる原稿置き部と、
前記原稿置き部に置かれた原稿の最上面に接触する状態で配置された接触部材と、
前記原稿置き部に置かれた原稿を最上位の原稿から順に搬送する搬送手段と、
前記搬送手段によって搬送された前記最上位の原稿の後端が前記接触部材との接触位置を通過するときに鉛直方向に生じる前記接触部材の物理的な状態の変化を検知する検知手段と、
前記搬送手段によって搬送された前記最上位の原稿の寸法を、少なくとも前記検知手段の検知結果を用いて特定する特定手段と
を備える
画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−51746(P2011−51746A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−203311(P2009−203311)
【出願日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】