説明

孔の中心および複数の孔の中心間距離を測定する方法ならびにそれらの方法に用いる孔挿入用光ファイバー

【課題】微小な内径の孔の中心や孔の中心間距離を正確に測定できる方法を提供する。
【解決手段】コア2002の外径よりも大きくクラッド2004の外径よりも小さい寸法の外径で形成され、その先端に光を拡散させる光拡散部30が形成された小径部24と、小径部24の周囲から被覆2006の周囲にわたり形成された金属膜26Aからなる挿入部28とを備える孔挿入用光ファイバー20を複数本用意する。被測定部の孔12の一方の端部に挿入部28を挿入し、光ファイバー22に光を供給し、孔12の他方の端部側で、孔12内で光拡散部30により拡散された光の画像を画像処理することで孔12の中心間距離を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、孔の中心および複数の孔の中心間距離を測定する方法ならびにそれらの方法に用いる孔挿入用光ファイバーに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、種々の製品に形成された孔のピッチを測定する場合、従来では、孔の延在方向の一方の端部から光を照射し、孔の延在方向の他方の端部において、照射された光による孔の画像を撮像素子で撮像し、得られた各孔の2次元画像データを信号処理部で画像処理することにより、複数の孔の中心間距離を算出するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−121330
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、孔が微小な内径を有する場合、光の照射状態の如何によっては、孔内で光量のムラが生じ、その結果、得られた各孔の2次元画像データが誤差を含むものとなり、孔の中心間距離を正確に算出できず、正確に測定できない不具合があった。
このような不具合は、単一の孔の中心位置を測定する場合にも同様に生じる。
本発明は前記事情に鑑み案出されたものであって、本発明の目的は、微小な内径の孔の中心位置や孔の中心間距離を正確に測定できる方法を提供することにある。
また、本発明の目的は、それらの測定方法に用いられて好適な孔挿入用光ファイバーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため本発明の孔の中心を測定する方法は、コアと、コアを囲むクラッドと、クラッドを覆う被覆からなる光ファイバーの端部に、前記コアを中心として前記コアの外径よりも大きく前記クラッドの外径よりも小さい寸法の外径で形成され、その先端に光を拡散させる光拡散部が形成された小径部と、前記小径部の周囲から前記被覆の周囲にわたり形成された金属膜からなる挿入部とを備える孔挿入用光ファイバーを用意し、被測定部の孔の延在方向の一方の端部に前記挿入部を挿入し、前記光ファイバーに光を供給し、前記孔の延在方向の他方の端部側で、前記孔内で前記光拡散部により拡散された光の画像を画像処理することで前記孔の中心位置を算出することを特徴とする。
また、本発明の孔の中心間距離を測定する方法は、コアと、コアを囲むクラッドと、クラッドを覆う被覆からなる光ファイバーの端部に、前記コアを中心として前記コアの外径よりも大きく前記クラッドの外径よりも小さい寸法の外径で形成され、その先端に光を拡散させる光拡散部が形成された小径部と、前記小径部の周囲から前記被覆の周囲にわたり形成された金属膜からなる挿入部とを備える孔挿入用光ファイバーを複数用意し、被測定部の複数の孔の延在方向の一方の端部に前記挿入部をそれぞれ挿入し、前記各光ファイバーに光を供給し、前記複数の孔の延在方向の他方の端部側で、前記各孔内で前記光拡散部により拡散された光の画像を画像処理することで前記複数の孔の中心間距離を算出するようにしたことを特徴とする。
また、本発明の孔挿入用光ファイバーは、コアと、コアを囲むクラッドと、クラッドを覆う被覆からなる光ファイバーの端部に、前記コアを中心として前記コアの外径よりも大きく前記クラッドの外径よりも小さい寸法の外径で形成され、その先端に光を拡散させる光拡散部が形成された小径部と、前記小径部の周囲から前記光ファイバーの被覆の周囲にわたり形成された金属膜からなる挿入部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、微小な孔内で光拡散部から光が確実に出射され、孔の延在方向の他方の端部側において鮮明な孔の画像が得られ、孔の中心位置や中心間距離を高い精度で算出し、測定することが可能となる。
また、孔の中心位置や中心間距離を測定すべき被測定部が多数の場合、挿入部が何回も孔に挿脱されるが、挿入部は、金属膜によりコアおよびクラッドが保護されているので、挿入部が破損する不具合もなく、測定作業を効率良く行なう上で有利となり、特に、量産品の検査に好適となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】MTコネクタの斜視図である。
【図2】MTコネクタの両端の孔に挿入する孔挿入用光ファイバーの説明図であり、(A)は被覆からクラッドが露出している正面図、(B)はクラッドにフェルールを装着した断面正面図である。
【図3】MTコネクタの両端の孔を除いた4つの孔に挿入する孔挿入用光ファイバーの説明図であり、(A)は被覆からクラッドが露出している正面図、(B)はクラッドに小径部を形成した断面正面図、(C)は小径部に挿入部を形成した断面正面図である。
【図4】MTコネクタの孔に孔挿入用光ファイバーを挿入し、孔の中心間距離を測定する際の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面にしたがって説明する。
本実施の形態では、図1に示すように、被測定部であるMTコネクタ(多心光コネクタ)10に形成された孔12の中心間距離を測定する場合について説明する。
MTコネクタ10は矩形板状のハウジング14を備え、ハウジング14には幅方向に間隔をおいて複数の孔12が貫通形成されている。
両端に位置する2つの孔12Aの内径は、700μmであり、残りの4つの孔12Bの内径は125μmである。
【0009】
それら孔12の中心間距離を測定するに際して、図2、図3に示すように、まず、2つの孔12Aにそれぞれ挿入される2本の孔挿入用光ファイバー20Aと、4つの孔12Bにそれぞれ挿入される4本の孔挿入用光ファイバー20Bを用意する。
本実施の形態では、本発明が4本の孔挿入用光ファイバー20Bに適用されている。
【0010】
それら孔挿入用光ファイバー20は、コア2002と、コア2002を囲むクラッド2004と、クラッド2004を覆う被覆2006からなる光ファイバー22の端部に設けられたものである。
2本の孔挿入用光ファイバー20Aは、光ファイバー22のクラッド2004にフェルール25が装着されることで構成されている。
4本の孔挿入用光ファイバー20Bは、光ファイバー22の端部に小径部24と、挿入部28とを備えて構成されている。なお、4本の孔挿入用光ファイバー20Bには、4芯テープ芯が用いられ、光ファイバー22としてガラス製光ファイバーが用いられている。
小径部24は、コア2002を中心としてコア2002の外径よりも大きくクラッド2004の外径よりも小さい寸法の外径で形成され、その先端に光を拡散させる光拡散部30が形成されている。
光拡散部30は、コア2002の先端を、例えば、曇りガラス状に微細な凹凸を形成することで構成され、光拡散部30は、孔挿入用光ファイバー20Aにも設けられている。
挿入部28は、小径部24の周囲から被覆2006の周囲にわたり形成された金属膜26Aで構成されている。金属膜26Aを構成する金属として、例えば、ニッケルなどが採用可能である。
【0011】
本実施の形態では、両端の2つの孔12Aにそれぞれ挿入される2本の孔挿入用光ファイバー20Aでは、フェルール25の外径は、孔12に挿脱できる寸法、例えば、700μmよりも小さい寸法で形成されている。
また、4つの孔12Bにそれぞれ挿入される4本の孔挿入用光ファイバー20Bでは、挿入部28の外径は、4つの孔12Bに挿脱できる寸法、例えば、125μmよりも小さい寸法で形成されている。
挿入部28は孔12内に挿入できる外径であればよく、孔12内でがたつく程度の外径で形成されていればよい。
【0012】
次に、孔12の中心間距離を測定する手順について説明する。
図4に示すように、まず、孔12の延在方向の一方の端部に孔挿入用光ファイバー20のフェルール25と挿入部28を挿入する。詳細には、両端の孔12Aの延在方向の一方の端部に孔挿入用光ファイバー20Aのフェルール25を挿入し、残りの4つの孔12Bの延在方向の一方の端部に孔挿入用光ファイバー20Bの挿入部28を挿入する。
次に、各孔挿入用光ファイバー20に光を供給し、孔12の延在方向の他方の端部側において、各孔12内において光拡散部30で拡散された光による孔12の画像を撮像素子40で撮像する。
そして、得られた各孔12の2次元画像データを信号処理部42で画像処理することにより、複数の孔12の中心間距離が算出される。なお、拡散された光による孔12の画像から複数の孔12の中心間距離を算出する方法には、従来公知の様々な手法が採用可能である。
【0013】
本実施の形態によれば、微小な各孔12内で光拡散部30から光が確実に出射され、各孔12の延在方向の他方の端部側において、各孔12の断面の単位面積当たりの光量が均一となり、撮像素子40により鮮明な孔12の画像が得られ、高い精度の2次元画像データが得られる。したがって、信号処理部42で孔12の中心位置を高い精度で算出でき、し、これにより孔12の中心間距離を高い精度で算出し、測定することが可能となる。
また、中心間距離を測定すべきMTコネクタ10が多数の場合、挿入部28が何回も孔12に挿脱されるが、挿入部28は、金属膜26Aによりコア2002およびクラッド2004が保護されているので、挿入部28はフェルール25と同様に破損する不具合もなく、測定作業を効率良く行なう上で有利となり、特に、量産品の検査に好適となる。
【0014】
なお、本実施の形態では、孔12の中心間距離を測定する場合について説明したが、ハウジングの基準面に対する孔12の中心位置を測定する場合にも同様に適用可能である。
また、発明の孔挿入用光ファイバー20は、孔12の中心間距離や孔12の中心位置を測定する場合に限定されず、その他の用途にも広く適用可能である。
【符号の説明】
【0015】
10……MTコネクタ、12、12A、12B……孔、20、20A、20B……孔挿入用光ファイバー、24……小径部、26A……金属膜、28……挿入部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアと、コアを囲むクラッドと、クラッドを覆う被覆からなる光ファイバーの端部に、前記コアを中心として前記コアの外径よりも大きく前記クラッドの外径よりも小さい寸法の外径で形成され、その先端に光を拡散させる光拡散部が形成された小径部と、
前記小径部の周囲から前記被覆の周囲にわたり形成された金属膜からなる挿入部とを備える孔挿入用光ファイバーを用意し、
被測定部の孔の延在方向の一方の端部に前記挿入部を挿入し、
前記光ファイバーに光を供給し、
前記孔の延在方向の他方の端部側で、前記孔内で前記光拡散部により拡散された光の画像を画像処理することで前記孔の中心位置を算出する、
ことを特徴とする孔の中心を測定する方法。
【請求項2】
コアと、コアを囲むクラッドと、クラッドを覆う被覆からなる光ファイバーの端部に、前記コアを中心として前記コアの外径よりも大きく前記クラッドの外径よりも小さい寸法の外径で形成され、その先端に光を拡散させる光拡散部が形成された小径部と、
前記小径部の周囲から前記被覆の周囲にわたり形成された金属膜からなる挿入部とを備える孔挿入用光ファイバーを複数用意し、
被測定部の複数の孔の延在方向の一方の端部に前記挿入部をそれぞれ挿入し、
前記各光ファイバーに光を供給し、
前記複数の孔の延在方向の他方の端部側で、前記各孔内で前記光拡散部により拡散された光の画像を画像処理することで前記複数の孔の中心間距離を算出するようにした、
ことを特徴とする孔の中心間距離を測定する方法。
【請求項3】
コアと、コアを囲むクラッドと、クラッドを覆う被覆からなる光ファイバーの端部に、前記コアを中心として前記コアの外径よりも大きく前記クラッドの外径よりも小さい寸法の外径で形成され、その先端に光を拡散させる光拡散部が形成された小径部と、
前記小径部の周囲から前記光ファイバーの被覆の周囲にわたり形成された金属膜からなる挿入部と、
を備えることを特徴とする孔挿入用光ファイバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−257327(P2011−257327A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−133549(P2010−133549)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(000155724)株式会社雄島試作研究所 (34)
【Fターム(参考)】