説明

安全確認方法

【課題】洞道やトンネル等の空間内の安全性を低コストかつ安全に確認する。
【解決手段】まず、作業員は、トンネル1の入口からセンサノード2Aを投げる。次に、端末4がセンサノード2Aから異常情報を受信していないことを確認した後、端末4とともにトンネル1内を奥に進む。そして、端末4は、センサノード2Aから受信したRSSIによりセンサノード2Aとの間の距離dsを算出し、表示しながら、作業員の手によってセンサノード2Aに接近する。そして、距離dsが基準距離d0以下になった場合に、その旨のメッセージを出力する。作業員は、そのメッセージを認識した場合に、さらに奥に向かって、次のセンサノード2Bを投げる。センサノード2Bから異常情報を受信していないことを確認した後、センサノード2Bを目標にして、端末4とともにトンネル1内を奥に進む。作業員は、以上の手順を繰り返して、進入距離dまでの安全性を確認する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信機能付きセンサを用いた安全確認方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、洞道やトンネル内で作業する場合に、安全性を確保するために有毒ガスや酸欠状態等を検出することが必要であるが、作業者がガス検出装置を用いて作業箇所近辺を確認する方法があるが、この方法では、作業者自身の安全性に問題があった。そこで、そのような問題を解決するための技術が、特許文献1及び特許文献2に開示されている。特許文献1の技術は、トンネル等の長距離監視区域における光式ガス検知方法であり、予め敷設された光ファイバを用いてガスを検出する方法である。特許文献2の技術は、ガス検知システムであり、ガス検知情報を無線通信網や他のネットワーク経由により遠隔地で取得するシステムである。
【特許文献1】特開平8−68747号公報
【特許文献2】特開2003−296853号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に開示された技術には、ガスを検出するインフラ設備を事前に敷設する等の必要があり、コストや安全性に問題がある。特に、特許文献1の技術は、ガス検出のための専用設備を必要とし、工事中の箇所には導入できないという問題がある。また、特許文献2の技術は、ガスセンサを人体に添わせて取り付けられる形状を想定しており、ガスを検出したときには手遅れの可能性がある。
【0004】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、洞道やトンネル等の空間内の安全性を低コストかつ安全に確認することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、データ通信の中継機能及び異常状態の検出機能を有するセンサノードを用いて、所定の空間内の安全を確認する方法であって、前記センサノードと無線通信可能な端末を所持した人が、(1)所定の空間内において、1つのセンサノードを自身の進行方向へ離隔した箇所に設置し、(2)前記端末を用いて、設置した前記センサノードから検出結果及び受信信号強度表示信号を受信し、その検出結果から異常状態が検出されていなければ、その受信信号強度表示信号に基づいて前記センサノードからの距離を算出し、その距離が所定値以下になるか否かを確認しながら、前進し、(3)その距離が所定値以下になった箇所で、再び1つの新たなセンサノードを自身の進行方向へ離隔した箇所に設置し、(4)(2)及び(3)を繰り返しながら、所定の空間内を前進することを特徴とする。
この方法によれば、自らの安全を確保しながら、トンネルや洞道の入口から奥までの安全を確認することができる。また、センサノードを所定の距離を空けて設置するので、安価に安全を確認することができる。
【0006】
また、本発明は、安全確認方法であって、各センサノード間及びセンサノード・端末間にアドホック通信が確立され、前記センサノードが、当該センサノードに固有のノードIDを記憶部に記憶し、所定の空間内の異常状態を検出した場合に、その異常状態に関するデータを生成し、そのデータに前記ノードIDを付加し、前記アドホック通信によって前記端末に送信し、前記端末が、前記受信信号強度表示信号に基づいて算出した前記センサノードからの距離を用いて、前記センサノードの所定の空間内における位置を特定し、特定した位置及び前記センサノードのノードIDを含む設置位置情報を記憶部に記憶し、前記センサノードから前記異常状態に関するデータを受信した場合に、そのデータに付加された前記ノードIDを抽出し、前記設置位置情報を参照して、そのノードIDに対応する前記センサノードの前記位置を特定し、異常状態の検出位置として表示部に表示することを特徴とする。
この構成によれば、異常状態を検出したセンサノードの位置が端末の表示部に表示されるので、所定の空間内にいる作業員に対して異常状態の発生とその位置を認識させることができ、自らの安全を確保するように促すことができる。
【0007】
また、本発明は、安全確認方法であって、前記端末が、所定の空間の出入口の位置を含む空間情報を記憶部に記憶し、前記表示部に表示された前記センサノードの位置から前記出入口の位置へ向かう矢印を避難方向として表示し、前記センサノードから受信信号強度表示信号を受信しながら、受信した受信信号強度表示信号の時間的変化を検知し、その変化に応じて自らの移動方向を特定し、当該移動方向と、前記避難方向と比較し、一致しない場合には、正しい移動方向を表示することを特徴とする。
この構成によれば、トンネル内の火災等の非常時には、煙センサや温度センサを組み合わせて用いることによって、適切な避難ルートを案内するとともに、実際の移動方向を正しく指示するといった対応を行うことができる。
【0008】
なお、本発明は、1の中継ノード及び複数のセンサノードを設置した上で端末を用いて安全を確認する方法を含む。その他、本願が開示する課題及びその解決方法は、発明を実施するための最良の形態の欄、及び図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、洞道やトンネル等の空間内の安全性を低コストかつ安全に確認することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態を説明する。本発明の実施の形態に係る安全確認方法は、簡易にガスを検出する手段として、トンネル、洞道や配管等の内部に無線通信機能付きガスセンサである複数のセンサノードを作業員が投げながら配置し、任意の箇所におけるガスの存在をアドホック通信により遠隔で把握することで、ガスの存在箇所に近寄ることなく安全性を確認することができる。また、トンネル内における火災等の非常時には、煙センサや温度センサを組み合わせることにより、適切な避難ルートを案内するといった対応も可能である。
【0011】
≪トンネル内のノードの配置と安全確認方法の概要≫
図1は、センサノード2の配置及び安全確認方法の概要を示す図である。図1では、トンネル1内にセンサノード2A、2B、2C、・・・、2N及び複数の端末4が配置されている。ただし、端末4を持った作業員が徐々にトンネル1の内部奥へ進んでいることを示す。
【0012】
センサノード2A・・・2Nは、ガス濃度(CO濃度等)や温度を測定し、又は煙を検知し、その結果(センサ情報)を端末4に送信する。なお、センサノード2A・・・2Nから端末4に送信するデータは、必ずしもセンサ情報そのものではなく、センサ情報が所定の閾値を超えた場合に異常を示す情報(以下、異常情報という)であってもよい。また、「2A・・・2N」は、個々のセンサノードを特定する場合に用いる符号であり、センサノードを総称する場合には、センサノード2のように「2」の符号を用いるものとする。
【0013】
端末4は、トンネル1内の安全確認を行うために作業員が所持するものであり、センサノード2からRSSI(Received Signal Strength Indicator:受信信号強度表示信号)を受信し、そのRSSIによりセンサノード2との間の距離を算出する。また、センサノード2からセンサ情報を受信し、画面に表示することによって、作業員による安全確認を可能とする。端末4は、ノートPC(Personal Computer)や携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assistant)によって実現される。なお、端末4がセンサノード2から受信する情報は、ノードID、RSSI及びセンサ情報(異常情報を含む)である。
【0014】
続いて、作業員によるトンネル1内の安全確認方法について説明する。まず、作業員は、トンネル1の左端にある入口からトンネル1内に向かって、センサノード2Aを投げる。これにより、センサノード2Aは、トンネル1内の例えば、入口から数mの位置に配置されることになる。次に、作業員は、端末4がセンサノード2Aから異常情報を受信したか否かを確認し、異常情報を受信していなければ、端末4とともにトンネル1内を奥に進む。そして、端末4は、センサノード2AからRSSIを受信し、そのRSSIからセンサノード2Aとの間の距離dsを算出し、必要に応じて表示しながら、作業員の手によってセンサノード2Aに接近する。そして、距離dsが基準距離d0以下になった場合に、その旨のメッセージを出力する。作業員は、そのメッセージにより、センサノード2Aの近くに来たということを認識した場合に、さらにトンネル1内の奥に向かって、次のセンサノード2Bを投げる。そこで、センサノード2Bから異常情報を受信していないことを確認した後、センサノード2Bを目標にして、端末4とともにトンネル1内を奥に進む。作業員は、以上の手順を繰り返して、トンネル1内における進入距離dまでの安全性を確認する。
【0015】
なお、例えば、端末4が、トンネル1の入口から距離d1の位置においてセンサノード2Bから異常情報やRSSI等を受信する場合には、直接受信してもよいし、センサノード2Aを介したアドホック通信により受信してもよい。端末4が、トンネル1の入口から距離d1+d2の位置においてセンサノード2Cから受信する場合も同様であり、それ以降も同様である。また、端末4が異常情報を受信した場合には、作業員はそれ以上の前進を中止して、対応方法を検討する。
【0016】
本発明の実施の形態で用いるアドホック通信には、例えば、ZigBeeが適用可能である。ZigBeeは、IEEE 802.15.4におけるセンサネットワークの規格であり、特に、物理(PHY)層及びMAC(Media Access Control)層について規定されている。そして、低コスト及び低消費電力の特徴を有する。
【0017】
図2は、センサノード2に中継ノード3を付加した配置及び安全確認方法の概要を示す図である。図2では、トンネル1内に中継ノード3A、3B、・・・、3N及び複数の端末4が直線的に配置され、中継ノード3A、3B、・・・、3Nのそれぞれの周囲にセンサノード2が配置されている。ただし、端末4を持った作業員が徐々にトンネル1の内部奥へ進んでいることを示す。
【0018】
センサノード2は、ガス濃度や温度を測定し、又は煙を検知し、その結果(センサ情報)を同じグループに属する中継ノード3経由のアドホック通信により端末4に送信する。
【0019】
中継ノード3は、同じグループに属するセンサノード3からセンサ情報を受信し、そのセンサ情報を端末4に送信する。センサ情報の送信には、2通りの方法が考えられる。一方は、中継ノード3が各センサノード2のセンサ情報を定期的に取得し、グループに固有のグループID、ノードID及びセンサ情報をそのまま端末4に送信する方法である。他方は、中継ノード3が各センサノード2のセンサ情報を定期的に取得し、センサ情報が閾値を超えた場合に、グループID、ノードID及び異常の内容を示すメッセージを端末4に送信する方法である。なお、「3A・・・3N」は、個々の中継ノードを特定する場合に用いる符号であり、中継ノードを総称する場合には、中継ノード3のように「3」の符号を用いるものとする。また、中継ノード3間のデータ送受信については、例えば、中継ノード3Bであれば、データを中継ノード3C(図示せず)から受信して中継ノード3Aに送信するということを予め設定しておく。この場合、受信したデータに自らの情報(ノードID、同じグループのセンサノード2から受信したセンサ情報等)を付加して送信する。
【0020】
端末4は、トンネル1内の安全確認を行うために作業員が所持するものであり、センサノード2から中継ノード3経由でRSSIを受信し、そのRSSIによりセンサノード2との間の距離を算出する。また、センサノード2からセンサ情報を受信し、画面に表示することによって、作業員による安全確認を可能とする。例えば、グループID、ノードID、温度及び煙の有無をリスト形式で表示する。端末4は、ノートPCや携帯情報端末によって実現される。
【0021】
続いて、作業員によるトンネル1内の安全確認方法について説明する。まず、作業員は、トンネル1の入口からトンネル1内に向かって、複数のセンサノード2及び1つの中継ノード3Aをばら撒く。これにより、複数のセンサノード2及び1つの中継ノード3Aは、トンネル1内の例えば、入口から数mの位置に配置されることになる。そして、各ノード間において端末4までの通信経路を自律的に構成し、各センサノード2からのセンサ情報を端末4に収集する。このため、ばら撒いたセンサノード2の台数に対応した通信経路を構成し、その構成情報を各センサノード2及び中継ノード3が記憶することにより、同じグループに属するノード間における無線通信を確立する。
【0022】
次に、作業員は、端末4がセンサノード2から中継ノード3A経由で異常情報を受信したか否かを確認し、異常情報を受信していなければ、端末4とともにトンネル1内を奥に進む。そして、端末4は、センサノード2から中継ノード3A経由でRSSIを受信し、そのRSSIが最大であるセンサノード2との間の距離dmを算出し、必要に応じて表示しながら、作業員の手によってセンサノード2に接近する。そして、距離dmが基準距離d0以下になった場合に、その旨のメッセージを出力する。作業員は、そのメッセージにより、最大のRSSIを検出したセンサノード2の近くに来たということを認識した場合に、さらにトンネル1内の奥に向かって、次の複数のセンサノード2及び中継ノード3Bをばら撒く。そして、センサノード2から中継ノード3B経由で異常情報を受信していないことを確認した後、RSSIが最大のセンサノード2を目標にして、端末4とともにトンネル1内を奥に進む。作業員は、以上の手順を繰り返して、トンネル1内における進入距離dまでの安全性を確認する。
【0023】
なお、例えば、端末4が、トンネル1の入口から距離d1の位置において中継ノード3Bから異常情報やRSSI等を受信する場合には、直接受信してもよいし、中継ノード3Aを介したアドホック通信により受信してもよい。それ以降も同様である。また、端末4が異常情報を受信した場合には、作業員は対応方法を検討する必要がある。
【0024】
ここで、同じグループに属するものとしてばら撒く複数のノードの種類に応じて、センサノード2から端末4へのデータ転送を中継すべきノードが異なる。図2に示すように複数のセンサノード2及び中継ノード3をばら撒いた場合に、中継すべきノードは、距離に関係なくデフォルトで中継ノード3に特定される。この場合、中継ノード3は、近くのセンサノード2からデータを取得し、端末4に送信する。図2とは異なって、センサノード2だけをばら撒いた場合には、各センサノード2が個々に随時データ転送を中継する。また、センサ機能を有する中継ノードだけをばら撒いた場合には、端末4からいずれかの中継ノードに対してデータ転送の中継を指示する。そして、それ以外の中継ノードは、単なるセンサノード2として最寄の他ノードと通信する。
【0025】
アドホック通信は、図1では各センサノード2間及びセンサノード2・端末4間で確立し、実行され、図2では、各センサノード2間、センサノード2・中継ノード3間、各中継ノード3間及び中継ノード3・端末4間で確立し、実行される。
【0026】
≪ノード及び端末の構成≫
図3は、センサノード2の構成を示す図である。センサノード2は、無線通信部21、センサ22、処理部23及び記憶部24を備える。無線通信部21は、センサノード2で生成したデータを無線により送受信する機能やRSSIを測定する機能を有する。具体的には、アンテナやNIC(Network Interface Card)によって実現される。センサ22は、外部のガス濃度や温度を測定し、又は煙を検知し、その結果(センサ情報)を処理部23に出力する機能を有する。処理部23は、センサ22からセンサ情報を取得し、AD(Analog Digital)変換した後、記憶部24に記憶する機能や、センサ情報をデータ転送の形式にして、他のセンサノード2や中継ノード3に送信する機能を有する。具体的には、CPU(Central Processing Unit)が所定のメモリに格納されたプログラムを実行することによって実現される。記憶部24は、処理部23からデータを記憶したり、記憶したデータを読み出したりする。具体的には、フラッシュメモリやハードディスク装置等の不揮発性記憶装置によって実現される。
【0027】
図4は、中継ノード3の構成を示す図である。中継ノード3は、無線通信部31、処理部32及び記憶部33を備える。無線通信部31は、他の中継ノード3や端末4からデータ要求を受信したり、センサノード2から受信したデータを無線により送受信したりする機能を有する。具体的には、アンテナやNICによって実現される。処理部32は、センサノード2又は中継ノード3からデータを取得し、記憶部33に記憶する機能や、データ要求を受け付けて、データをデータ転送の形式に整え、他の中継ノード3や端末4に送信する機能を有する。具体的には、CPUが所定のメモリに格納されたプログラムを実行することによって実現される。記憶部33は、処理部32からデータを記憶したり、記憶したデータを読み出したりする。具体的には、フラッシュメモリやハードディスク装置等の不揮発性記憶装置によって実現される。
【0028】
図5は、端末の構成を示す図である。端末4は、無線通信部41、表示部42、入力部43、処理部44及び記憶部45を備える。無線通信部41は、センサノード2や中継ノード3との間でデータを無線により送受信する機能を有する。具体的には、アンテナやNICによって実現される。表示部42は、処理部44からのデータを表示する機能を有する。具体的には、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)等によって実現される。入力部43は、表示部42に表示された画面の切替や項目の入力等を行うために作業員が操作するものであり、その操作に伴って取得したデータを処理部44に受け渡す機能を有する。具体的には、マウス等のポインティングデバイスやキーボードによって実現される。処理部44は、無線通信部41からデータを受け付けて記憶部45に記憶したり、記憶部45に記憶したデータを読み出して表示部42に表示したりする。具体的には、CPUが所定のメモリに格納されたプログラムを実行することによって実現される。記憶部45は、処理部44からデータを記憶したり、記憶したデータを読み出したりする。具体的には、フラッシュメモリやハードディスク装置等の不揮発性記憶装置によって実現される。
【0029】
≪データの構成≫
図6は、センサノードの記憶部に記憶されるデータの構成を示す図である。センサノード2の記憶部24には、ノードID24A及び閾値24Bが記憶されている。ノードID24Aは、当該センサノード2に固有のコードである。閾値24Bは、異常情報として報告すべきセンサ情報(煙、温度、ガス濃度等)に関する閾値である。
【0030】
図7は、中継ノードの記憶部に記憶されるデータの構成を示す図である。中継ノード3の記憶部33には、ノードID33A及び閾値33Bが記憶されている。ノードID33Aは、当該中継ノード3に固有のコードである。閾値33Bは、当該中継ノード3がセンサ機能を有する場合に、異常情報として報告すべきセンサ情報(煙、温度、ガス濃度等)に関する閾値である。当該中継ノード3がセンサ機能を有しない場合には、閾値33Bは無効になる。
【0031】
図8は、端末の記憶部に記憶されるデータの構成を示す図である。端末4の記憶部45には、基準距離45A及びセンサノード設置距離情報45Bが記憶されている。図8(a)は、基準距離45Aを示す。基準距離45Aは、端末4とセンサノード2との間の離隔距離の所定値(d0)であり、端末4が所定値(d0)以内にセンサノード2に接近した場合に、次のセンサノード2をさらに奥に配置するための閾値である。
【0032】
図8(b)は、センサノード設置距離情報45Bの構成を示す。センサノード設置距離情報45Bは、ノードID45B1及び設置距離45B2を含むレコードからなる。ノードID45B1は、センサノード2に固有のコードである。設置距離45B2は、トンネルの入口からセンサノード2の設置箇所までの距離である。図8(b)に示した具体的な設定値の例は、図1に対応する。dk(k=1〜n)は、センサノード2を投げた直後に、そのセンサノード2から端末4が受信したRSSIによって求めることができる。なお、センサ機能を有する中継ノードがある場合には、センサノード設置距離情報45Bと同様の設置距離情報が設定されるものとする。
【0033】
≪処理の詳細≫
図9は、端末4における進入距離の算出処理を示すフローチャートである。まず、端末4は、センサノード2との基準距離d0を設定する(S901)。具体的には、作業員が基準距離d0を入力部43に入力し、入力された基準距離d0を処理部44が取得し、基準距離45Aとして記憶部45に記憶する。次に、作業員がセンサノード2を配置する(S902)。例えば、図1に示すように、トンネル1の入口からセンサノード2Aを投げることによって、センサノード2Aが所定の位置に配置される。
【0034】
続いて、端末4が、所定の位置に配置されたセンサノード2から異常状態の検出結果及びRSSIを受信する(S903)。図1に示すセンサノード2Aのように1つのセンサノード2が存在する場合には問題ないが、図2に示すように、同じグループに属するセンサノード2が複数存在する場合には、RSSIの最大値を選択的に受信する。なお、RSSIの受信は、例えば、端末4の無線通信部41における所定の回路が、受信した電波信号の強度を測定し、その強度を表示する信号をA/D(Analog/Digital)変換し、処理部44に出力することによる。そして、検出結果から異常状態が検出されていなければ、受信したRSSIからセンサノード2と、端末4との間の距離dsを算出する(S904)。具体的には、次の式1に従って計算する。

T−(R+Lp)= 10*log{(4π/λ)*ds} ・・・式1
T:端末4からの送信電力(dBm)
R:端末4における受信電力(dBm)=RSSI
Lp:マルチパスロス(dBm)
d0:任意設定の基準距離(m)

ここで、式1は、電波が障害物のない自由空間内を伝搬する場合の損失及び距離の関係を示したものであるため、電波伝搬環境に応じてdsの指数を適宜設定(例えば、2.0〜4.0)してもよい。
【0035】
なお、端末4が、センサノード2を配置した(S902)際の位置から移動していない状態で最初にRSSIを受信したときには、ノードID及び距離dsを累積した値(図8(b)参照)をセンサノード設置距離情報45Bとして記憶部45に記憶する。これによれば、最終的にはトンネル1全体の進入距離d(=d1+d2+d3+・・・+dn)を求めることができる(図1参照)。また、検出結果から異常状態が検出されていれば、作業員は、それ以上の前進を中止して、対応方法を検討する。
【0036】
次に、端末4が、センサノード2との間の距離dsが基準距離d0以下であるか否かを判定する(S905)。距離dsが基準距離d0より大きい場合には(S905のN)、表示部42に何も表示されないので、作業員がトンネル1内の奥に向かって端末4を移動する(S906)。そして、端末4は、所定時間の経過を待った(S907)後、再度センサノード2からRSSIを受信する(S903)。端末4が移動し、センサノード2に接近することによって、距離dsが基準距離d0に近い値になっていく。ただし、距離dsにはマルチパスによる測定誤差が含まれているが、基準距離d0に対して誤差を含む距離を適切に設定することにより、距離dsが基準距離d0以下であることを確実に判定することが可能である。
【0037】
距離dsが基準距離d0以下の場合には(S905のY)、端末4が、その旨を示すメッセージを表示部42に表示する(S908)。作業員は、このメッセージを参照して、調査を続行する場合には(S909のN)、再びセンサノード2を配置する(S902)。調査を終了する場合には(S909のY)、進入距離の算出処理を終了する。
【0038】
図10は、異常情報の取得処理を示すフローチャートである。例えば、図1に示すように、センサノード2は、温度や煙等のセンサ情報を検出し、端末4に送信する。端末4は、トンネル1内の進入距離dまで設置されたセンサノード2のアドホック通信により、侵入経路上の異常情報(火災、ガス発生等)を収集できる。また、端末4は、センサノード2から受信したRSSIによって、端末4の移動方向を判定し、安全な方向へ誘導することもできる。以下、詳細に説明する。
【0039】
まず、センサノード2が配置された時点で、各センサノード2及び端末4の間でアドホック通信を確立させる(S1001)。アドホック通信には、例えば、ZigBeeを適用可能である。次に、センサノード2が、センサ22から煙、温度、ガス濃度等のセンサ情報を取得する(S1002)。そして、取得したセンサ情報である煙、温度又はガス濃度が閾値24B以上であるか否かを判定する(S1003)。センサ情報が閾値24Bより小さければ(S1003のN)、新たにセンサ情報を取得する(S1002)。センサ情報が閾値24B以上であれば(S1003のN)、センサノード2が異常情報を端末4に送信する(S1004)。
【0040】
センサノード2の処理に対応して、端末4が、センサノード2から異常情報を受信する(S1005)。そして、受信した異常情報の検出箇所を表示部42に表示する(S1006)。具体的には、処理部44が、記憶部45に記憶されているセンサノード設置距離情報45Bを参照して、異常情報に含まれるノードIDに対応する距離を特定し、その距離に従って検出箇所の位置を決めることによって、図11に示すような画面を表示する。次に、画面表示された異常情報の検出箇所から避難すべき方向(避難方向)を指示する(S1007)。具体的には、トンネル内の検出箇所からトンネルの出入口(図11では、トンネル1Aの出入口5A及び5B)へ向かう方向を示す矢印を表示することにより、避難方向を指示する。トンネルが多方向に分かれている場合には、予め設定された出入口データベースに基づき、その出口への方向を指示する。これは、例えば、煙を検知した箇所からの避難を想定したものである。作業員は、端末4の表示部42に表示された指示に従って、移動することになる。
【0041】
作業員とともに移動する端末4は、特定のセンサノード2からRSSIを受信し、その受信を周期的に所定の回数繰り返すことによって、RSSIの時間的変化を検知し、端末4自らの移動方向を特定する(S1008)。例えば、RSSIが時間の経過とともに大きくなっていれば、異常情報の検出したセンサノード2に近付く方向に移動していることになる。また、RSSIが時間の経過とともに小さくなっていれば、当該センサノード2から遠ざかる方向に移動していることになる。そして、S1007で指示した避難すべき方向と比較することで、特定した移動方向が正しいか否かを判定する(S1009)。移動方向が正しくなければ(S1009のN)、正しい移動方向を指示して(S1010)、さらに自らの移動方向を特定する(S1008)。移動方向が正しければ(S1009のY)、異常情報の取得処理を終了する。
【0042】
なお、S1008では、端末4が、RSSIの時間的変化を検知することにより端末4自らの移動方向を特定するように説明したが、さらにRSSIから算出したセンサノード2と端末4との間の距離及びセンサノード設置距離情報45Bが示すセンサノード2の位置により端末4の位置を特定し、異常情報の検出したセンサノード2と端末4との位置関係を把握し、避難すべき方向や危険な方向を明確に表示するようにしてもよい。また、本処理の説明は、図1に示すセンサノード2の直線的配置について行ったが、図2に示すセンサノード2及び中継ノード3のばら撒き配置等についても適用可能である。
【0043】
以上本発明の実施の形態について説明したが、図1に示すセンサノード2及び端末4の各部を機能させるために、又は図2に示すセンサノード2、中継ノード3及び端末4の各部を機能させるために、処理部(CPU)で実行されるプログラムをコンピュータにより読み取り可能な記録媒体に記録し、その記録したプログラムをコンピュータに読み込ませ、実行させることにより、本発明の実施の形態に係る安全確認方法が実現されるものとする。なお、プログラムをインターネット等のネットワーク経由でコンピュータに提供してもよいし、プログラムが書き込まれた半導体チップ等をコンピュータに組み込んでもよい。
【0044】
以上説明した本発明の実施の形態によれば、トンネル1内で遠くに投げたり、ばら撒いたりしたセンサノード2から端末4が受信し、表示したセンサ情報を参照することにより、離れた位置からガス濃度を知ることができるので、安全かつ安価にトンネル1内の安全性を確認することができる。また、複数のセンサノード2及び中継ノード3を同じグループにして、センサノード2からのセンサ情報を中継ノード3経由で端末4が受信し、表示するので、トンネル1内のエリアを網羅し、きめ細かな安全確認を行うことができる。そして、ガスセンサ以外の組合せ(例えば、温度センサや煙センサ)を用いて、避難ルートを案内することも可能になる。
【0045】
以上、本発明を実施するための最良の形態について説明したが、上記実施の形態は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】センサノードの配置及び安全確認方法の概要を示す図である。
【図2】センサノードに中継ノードを付加した配置及び安全確認方法の概要を示す図である。
【図3】センサノードの構成を示す図である。
【図4】中継ノードの構成を示す図である。
【図5】端末の構成を示す図である。
【図6】センサノードの記憶部に記憶されるデータの構成を示す図である。
【図7】中継ノードの記憶部に記憶されるデータの構成を示す図である。
【図8】端末の記憶部に記憶されるデータの構成を示す図であり、(a)は基準距離45Aを示し、(b)はセンサノード設置距離情報45Bの構成を示す。
【図9】端末における進入距離の算出処理を示すフローチャートである。
【図10】異常情報の取得処理を示すフローチャートである。
【図11】異常情報の検出箇所を表示する画面例を示す図である。
【符号の説明】
【0047】
1 トンネル
2 センサノード
24 記憶部
24A ノードID
3 中継ノード
4 端末
45 記憶部
45A 基準距離(所定値)
45B センサノード設置距離情報(設置位置情報)
45B1 ノードID
45B2 設置距離
5 出入口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ通信の中継機能及び異常状態の検出機能を有するセンサノードを用いて、所定の空間内の安全を確認する方法であって、
前記センサノードと無線通信可能な端末を所持した人が、
(1)所定の空間内において、1つのセンサノードを自身の進行方向へ離隔した箇所に設置し、
(2)前記端末を用いて、設置した前記センサノードから検出結果及び受信信号強度表示信号を受信し、その検出結果から異常状態が検出されていなければ、その受信信号強度表示信号に基づいて前記センサノードからの距離を算出し、その距離が所定値以下になるか否かを確認しながら、前進し、
(3)その距離が所定値以下になった箇所で、再び1つの新たなセンサノードを自身の進行方向へ離隔した箇所に設置し、
(4)(2)及び(3)を繰り返しながら、所定の空間内を前進する
ことを特徴とする安全確認方法。
【請求項2】
請求項1に記載の安全確認方法であって、
各センサノード間及びセンサノード・端末間にアドホック通信が確立され、
前記センサノードは、
当該センサノードに固有のノードIDを記憶部に記憶し、
所定の空間内の異常状態を検出した場合に、その異常状態に関するデータを生成し、そのデータに前記ノードIDを付加し、前記アドホック通信によって前記端末に送信し、
前記端末は、
前記受信信号強度表示信号に基づいて算出した前記センサノードからの距離を用いて、前記センサノードの所定の空間内における位置を特定し、特定した位置及び前記センサノードのノードIDを含む設置位置情報を記憶部に記憶し、
前記センサノードから前記異常状態に関するデータを受信した場合に、そのデータに付加された前記ノードIDを抽出し、前記設置位置情報を参照して、そのノードIDに対応する前記センサノードの前記位置を特定し、異常状態の検出位置として表示部に表示する
ことを特徴とする安全確認方法。
【請求項3】
請求項2に記載の安全確認方法であって、
前記端末は、
所定の空間の出入口の位置を含む空間情報を記憶部に記憶し、
前記表示部に表示された前記センサノードの位置から前記出入口の位置へ向かう矢印を避難方向として表示し、
前記センサノードから受信信号強度表示信号を受信しながら、受信した受信信号強度表示信号の時間的変化を検知し、その変化に応じて自らの移動方向を特定し、
当該移動方向と、前記避難方向と比較し、一致しない場合には、正しい移動方向を表示する
ことを特徴とする安全確認方法。
【請求項4】
データ通信の中継機能を有する中継ノード及び異常状態の検出機能を有するセンサノードを用いて、所定の空間内の安全を確認する方法であって、
前記中継ノード及び前記センサノードと無線通信可能な端末を所持した人が、
(1)所定の空間内において、1つの中継ノード及び複数のセンサノードを自身の進行方向へ離隔した箇所に設置し、
(2)前記端末を用いて、設置した複数の前記センサノードから検出結果及び受信信号強度表示信号を受信し、その検出結果から異常状態が検出されていなければ、そのうち最大の受信信号強度表示信号に基づいて前記センサノードからの距離を算出し、その距離が所定値以下になるか否かを確認しながら、前進し、
(3)その距離が所定値以下になった箇所で、再び1つの中継ノード及び複数のセンサノードを離隔した箇所に設置し、
(4)(2)及び(3)を繰り返しながら、所定の空間内を前進する
ことを特徴とする安全確認方法。
【請求項5】
請求項4に記載の安全確認方法であって、
各センサノード間、センサノード・中継ノード間、各中継ノード間及び中継ノード・端末間にアドホック通信が確立され、
前記センサノードは、
当該センサノードに固有のノードIDを記憶部に記憶し、
所定の空間内の異常状態を検出した場合に、その異常状態に関するデータを生成し、そのデータに前記ノードIDを付加し、前記アドホック通信によって前記端末に送信し、
前記端末は、
前記最大の受信信号強度表示信号に基づいて算出した前記センサノードからの距離を用いて、前記センサノードの所定の空間内における位置を特定し、特定した位置及び前記センサノードのノードIDを含む設置位置情報を記憶部に記憶し、
前記センサノードから前記異常状態に関するデータを受信した場合に、そのデータに付加された前記ノードIDを抽出し、前記設置位置情報を参照して、そのノードIDに対応する前記センサノードの前記位置を特定し、異常状態の検出位置として表示部に表示する
ことを特徴とする安全確認方法。
【請求項6】
請求項5に記載の安全確認方法であって、
前記端末は、
所定の空間の出入口の位置を含む空間情報を記憶部に記憶し、
前記表示部に表示された前記センサノードの位置から前記出入口の位置へ向かう矢印を避難方向として表示し、
前記センサノードから受信信号強度表示信号を受信しながら、受信した受信信号強度表示信号の時間的変化を検知し、その変化に応じて自らの移動方向を特定し、
当該移動方向と、前記避難方向と比較し、一致しない場合には、正しい移動方向を表示する
ことを特徴とする安全確認方法。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−26219(P2009−26219A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−191109(P2007−191109)
【出願日】平成19年7月23日(2007.7.23)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ZIGBEE
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】