説明

安定な皮膚外用剤

【課題】 下記一般式(1)で表される化合物を含有する皮膚外用剤において、その剤形の安定性の向上した皮膚外用剤を提供することを課題とする。
【解決手段】 1)下記に示す一般式(1)に表される化合物及び/又はその塩と、2)1気圧、25℃で液状である、少なくとも3個の共役二重結合を有する化合物から選択される1種乃至は2種以上とを含有する皮膚外用剤とする。
【化1】


一般式(1)
(但し、式中R、Rはそれぞれ独立に炭素数3〜6のアルキル基を表し、Rは水素原子、炭素数1〜4のアシル基又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、Rは芳香族性を有する基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚外用剤に関し、更に詳しくは乳化形態の皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚におけるシミ、ソバカスや日焼け後の色素沈着は、皮膚内に存在する色素細胞(メラノサイト)の活性化によりメラニン生成が著しく亢進した状態である。これらの皮膚色素トラブルを防止又は改善する目的で、アスコルビン酸類、過酸化水素、コロイド硫黄、グルタチオン、ハイドロキノン又はカテコール等を配合した皮膚外用剤(特に美白剤)が知られている(例えば、非特許文献1、非特許文献2を参照)。しかしながら、これらの美白剤は何れも、美白効果、安定性及び安全性等の面から問題を有する場合が存したり、或いは、その効果が限られた症状にしか有効でなかったりする場合が存しており、これらの効果のみでは充分とは言えない状況にあると言える。又、美白作用の特徴としては、チロシナーゼ阻害効果、チロシナーゼ関連蛋白の分解、メラノサイトのデンドライトの伸長抑制によるメラニンの移送阻害など種々のものが存し、阻害点が多数存すると同時に阻害の回避経路も存し、単一な阻害では充分には効果を奏さない場合が存し、加えて、それぞれに適した化学構造が存すると考えられる。この様な観点に立って、本発明者らは、美白効果を有する新規の母核構造の化合物として、一般式(1)に表される化合物群を見出している。一般式(1)に表される化合物には、公知の化合物が存し、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(2‘−テノイル)フェノールであれば、前記美白作用以外に、抗酸化作用、プロスタグランディンの抑制を機序とする抗炎症作用、抗アレルギー作用や抗リウマチ作用を有することは知られている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、非特許文献3、非特許文献4を参照)。
【0003】
この様な作用を有する一般式(1)に表される化合物ではあるが、その製剤化については課題が存する。即ち、一般式(1)で表される化合物は、2種の芳香族基をケトン基で結んだ芳香族ケトン構造に起因して、その結晶性の良さと、芳香族性の強さ故に、他の油剤成分との相溶性が悪く、結晶の再析出の問題が存したり、その相溶に界面活性剤が消費されて、経時における乳化特性が損なわれる場合が存することである。又、前記相溶した系を形成するには、界面活性剤の種類も特定、限定されてくる傾向にあった。更には、乳化状態は有効成分の経皮吸収へ影響を及ぼすことも既に知られている(例えば、非特許文献5を参照)。これらを総合して、この様な製剤化の制限を緩和する手段の開発が、一般式(1)に表される化合物を含有する皮膚外用剤に於いては望まれていたと言える。
【0004】
一方、皮膚外用剤において、後記一般式(1)に表される化合物及び/又はその塩と、1気圧、25℃で液状である、少なくとも3個の共役二重結合を有する化合物から選択される1種乃至は2種以上とを組み合わせて製剤化する試みは為されていないし、この様な成分組み合わせにより、油相における一般式(1)に表される化合物の相溶性が向上し、乳化特性が安定することも全く知られていなかった。
【0005】
【特許文献1】特開昭53−141265号公報
【特許文献2】特開昭63−008380号公報
【特許文献3】特開昭63−502281号公報
【特許文献4】特表平06−501919号公報
【非特許文献1】George N, Ziakas et al, Bioorganic & Medicinal Chemistry, 14, 5616-5624 (2006)
【非特許文献2】Shaukath Ara. Khanum et al, Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters, 14, 5351-5355 (2004)
【非特許文献3】Agents and Action, Vol.12, No.5, 674-683, (1982)
【非特許文献4】Bioorganic & Medicinal Chemistry, Vol.11, 4207-4216, (2003)
【非特許文献5】Luppi B., et al, Drug Deli. 2002; 9(3):147-52
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、この様な状況に鑑みてなされたものであり、後記一般式(1)に表される化合物の有用性を担保すべく、かかる化合物に適した製剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この様な状況に鑑みて、本発明者らは、一般式(1)に表される化合物の有用性を担保すべく、かかる化合物に適した製剤を求めて、鋭意研究努力を重ねた結果、1気圧、25℃で液状である、少なくとも3個の共役二重結合を有する化合物から選択される1種乃至は2種以上とを共に乳化剤形に含有させることにより、求める製剤が得られることを見出し、発明を完成させるに至った。即ち、本発明は以下の通りである。
【0008】
(1) 1)下記に示す一般式(1)に表される化合物及び/又はその塩と、2)1気圧、25℃で液状である、少なくとも3個の共役二重結合を有する化合物から選択される1種乃至は2種以上とを含有する皮膚外用剤。
【0009】
【化1】

一般式(1)
(但し、式中R、Rはそれぞれ独立に炭素数3〜6のアルキル基を表し、Rは水素原子、炭素数1〜4のアシル基又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、Rは芳香族性を有する基を表す。)
【0010】
(2) 前記一般式(1)で表される化合物が、次に示す、一般式(2)又は一般式(3)で表される化合物であることを特徴とする、(1)に記載の皮膚外用剤。
【0011】
【化2】

一般式(2)
(但し、式中R及びRは一般式(1)と同じ基を表し、Rは水素原子、水酸基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアシルオキシ基又は炭素数1〜4のアルキルオキシ基を表し、Xは酸素原子、硫黄原子又は−NH−を表す。)
【0012】
【化3】

一般式(3)
(但し、式中Rは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、フェニル基、アルキルオキシ基、水酸基、メルカプト基、トリフルオロメチル基、アミノ基、アルキルアミノ基、ニトロ基、シアノ基、ホルミル基、カルボキシル基、アルキルアミド基、スルフェニル基、スルホニル基又はハロゲン原子を表す。)
【0013】
(3) 前記一般式(1)に表される化合物が、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(2‘−テノイル)フェノール、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾフェノン、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−4’−フルオロベンゾフェノン、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−4‘−クロロベンゾフェノン、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−4‘−メチルベンゾフェノン、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−4‘−メトキシベンゾフェノン、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−2’ ,4‘,6’−トリメチルベンゾフェノン、3,5−ジ−tert−ブチル−4,4‘−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,3’,5,5‘−テトラ−tert−ブチル−4,4‘−ジヒドロキシベンゾフェノン及び(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−ナフタレニルメタノンから選択されるものであることを特徴とする、(1)又は(2)に記載の皮膚外用剤。
(4) 前記1気圧、25℃で液状である、少なくとも3個の共役二重結合を有する化合物が、α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、δ−トコフェロール、ビタミンEニコチン酸エステル、酢酸トコフェロール、ビタミンD、ビタミンD、レチノール、レチナール、レチノイン酸、4−メトキシ桂皮酸乃至はその誘導体、アミノ安息香酸乃至はその誘導体、フェノキシエタノール、フェネチルアルコール、ケイヒ酸メチル、リリアール、アニソール、シクラメンアルデヒド、酢酸ジメチルベンジルカルビニル、サリチル酸イソペンチル、サリチル酸ベンジル、フェニル酢酸、酢酸スチラリル、2−イソブチル−3−メトキシピラジン、バニリン及びジャスミナールから選択されるものであることを特徴とする、(1)〜(3)何れか1項に記載の皮膚外用剤。
(5) 前記一般式(1)に表される化合物の含有量の和と、前記1気圧、25℃で液状である、少なくとも3個の共役二重結合を有する化合物の含有量の和との比が、質量比で1:1〜1:10であることを特徴とする、(1)〜(4)何れか1項に記載の皮膚外用剤。
(6) 前記一般式(1)に表される化合物の含有量の和と、前記1気圧、25℃で液状である、少なくとも3個の共役二重結合を有する化合物の含有量の和の総和と、油相における前記一般式(1)に表される化合物と前記1気圧、25℃で液状である、少なくとも3個の共役二重結合を有する化合物、以外の成分(油剤成分)の含有量の総和との比が、質量比で1:2〜1:50であることを特徴とする、(1)〜(5)何れか1項に記載の皮膚外用剤。
(7) 油剤成分が一般式(1)に表される化合物及びその塩を除いて、1気圧、25℃で液状である成分のみで構成されていることを特徴とする、(1)〜(6)何れか1項に記載の皮膚外用剤。
(8) メラニン生成抑制用であることを特徴とする、(1)〜(7)何れか1項に記載の皮膚外用剤。
(9) 乳化剤形であることを特徴とする、(1)〜(8)の何れか1項に記載の皮膚外用剤。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、一般式(1)に表される化合物の有用性を担保した、かかる化合物に適した製剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(1)本発明の皮膚外用剤の必須構成成分である一般式(1)で表される化合物
本発明の皮膚外用剤は一般式(1)で表される化合物及び/又はその塩を含有することを特徴とする。前記一般式(1)において、R及びRはそれぞれ独立に、炭素数3〜6のアルキル基、より好ましくは分岐構造を有する、例えば、1−メチルエチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、tert−ブチル基、アミル基などのアルキル基、特に好ましくはtert−ブチル基を表し、Rは水素原子、ホルミル基、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基などの炭素数1〜4のアシル基又はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの炭素数1〜4のアルキル基を表し、Rは芳香族性、より好ましくは、炭素数5〜15の芳香族性を有する基を表す。Rにおいては芳香族基のみで構成されていても良いし、脂肪族基を介在させていても良い。前記芳香族基は炭化水素であっても良いし、酸素原子、硫黄原子、窒素原子などの複素原子を有する複素芳香族基であっても良い。この芳香族基の種類により、本発明の皮膚外用剤の必須成分である一般式(1)に表される化合物は、一般式(2)で表される化合物と、一般式(3)に表される化合物に大別される。
【0016】
前記一般式(2)において、R及びRは一般式(1)と同じ基を表し、Rは水素原子、水酸基、メチル基、エチル基、プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などの炭素数1〜4のアルキル基、より好ましくはメチル基、ホルミル基、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基などの炭素数1〜4のアシル基、より好ましくはアセチル基、又はメトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブチルオキシ基などのアルキルオキシ基を表し、より好ましくは水素原子を表し、Xは酸素原子、硫黄原子、−NH−を表し、より好ましくは硫黄原子を表す。この様な一般式(2)で表される化合物の内、特に好ましいものは、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(2‘−テノイル)フェノールである。かかる一般式(2)で表される化合物は、フリー体で本発明の皮膚外用剤に使用することもできるが、アルカリなどを用いて塩とし、使用することも可能である。たとえばナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、トリエタノールアミン塩、トリエチルアミン塩等の有機アミン塩、リジン塩、アルギニン塩等の塩基性アミノ酸塩等が好ましく例示できる。
【0017】
【化4】

2,6−ジ−tert−ブチル−4−(2‘−テノイル)フェノール(化合物(1))
【0018】
また、これらの化合物は、任意の方法で製造することができ、例えば下記スキーム1又は2で概略される方法で製造することができるが、これらの方法に限定されない。勿論、置換基の種類などに応じて、適宜製造方法を目的に適した形に変更することも可能である。
【0019】
【化5】

スキーム1
【0020】
スキーム1における反応について簡単に説明する。
3,5−ジ−アルキル−4−ヒドロキシベンゾイックアシッドを塩化チオニルを用いて常法にて処理することにより、3,5−ジ−アルキル−4−ヒドロキシベンゾイックアシッドの酸クロリド体(A)とする。この酸クロリド体(A)を二硫化炭素などの適当な溶媒中で、塩化アルミニウム、四塩化チタンなどのルイス酸で処理する。次いで、チオフェン(B)を添加して、フリーデルクラフト反応させることで、一般式(2)の化合物を得ることができる。
【0021】
3,5−ジ−アルキル−4−ヒドロキシベンゾイックアシッドとしては、例えば、シグマ−アルドリッチ社より市販されている3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾイックアシッドを使用することができる。化合物(B)としては、Rが水素原子である無置換体やメチルチオフェン、メトキシチオフェンなどの置換体を使用することができる。ここで、化合物(B)としてチオフェンを用いた場合(X=S)には、一般式(2)で表される化合物が得られ、さらに、化合物(A)として3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾイックアシッドの酸クロリド体を用いた場合には、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(2’−テノイル)フェノール(化合物(1))が得られる。
【0022】
【化6】

スキーム2
【0023】
スキーム2における反応について簡単に説明する。
チオフェンカルボン酸を塩化チオニルを用いて常法にて処理することにより、チオフェンカルボン酸の酸クロリド体(C)とする。この酸クロリド体(C)を二硫化炭素などの適当な溶媒中で、塩化アルミニウム、四塩化チタンなどのルイス酸で処理する。次いで、2,6−ジアルキルフェノール(D)を添加して、フリーデルクラフト反応させることで一般式(2)の化合物を得ることができる。化合物(C)を得るためには、シグマ−アルドリッチ社より市販されているRが水素原子である2−チオフェンカルボン酸や3−メチル−2−チオフェンカルボン酸、5−メチル−2−チオフェンカルボン酸などを使用することができる。ここで、化合物(C)として、2−チオフェンカルボン酸の酸クロリドを用いた場合(X=S)には、一般式(2)で表される化合物が得られる。2,6−ジアルキルフェノール(D)としては、シグマ−アルドリッチ社より市販されている2,6−ジ−tert−ブチル−フェノール、2,6−ジ−イソプロピルフェノールなどを使用することができる。化合物(C)として2−チオフェンカルボン酸の酸クロリド、化合物(D)として2,6−ジ−tert−ブチル−フェノールを用いた場合には、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(2’−テノイル)フェノール(化合物(1))が得られる。
【0024】
前記チオフェン、チオフェンカルボン酸をフラン、フランカルボン酸に置き換えることにより、Xが酸素原子である、また、ピロール、ピロールカルボン酸に置き換えることにより、Xが−NH−である一般式(2)に表される化合物を製造することができる。
【0025】
一般式(3)において、Rは水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などのアルキル基、より好ましくはメチル基、ビニル基、プロペニル基、n−ブテニル基などのアルケニル基、より好ましくはプロペニル基、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブチルオキシ基などのアルキルオキシ基、より好ましくはメトキシ基、水酸基、メルカプト基、トリフルオロメチル基、アミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、iso−プロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基、sec−ブチルアミノ基、tert−ブチルアミノ基などのアルキルアミノ基、より好ましくはtert−ブチルアミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボニル基、カルボキシル基、メチルアミド基、スルフェニル基、スルホニル基又はハロゲン原子、より好ましくは塩素原子を表す。この様な一般式(3)で表される化合物の具体的な例としては、例えば、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾフェノン、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−4‘−フルオロベンゾフェノン、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−4’−クロロベンゾフェノン、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−4‘−メチルベンゾフェノン、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−4‘−メトキシベンゾフェノン、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−2’ ,4‘,6’−トリメチルベンゾフェノン、3,5−ジ−tert−ブチル−4,4‘−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,3’,5,5‘−テトラ−tert−ブチル−4,4‘−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−4‘−フェニルベンゾフェノン、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−(4’−メトキシビフェニル−4−イル)メタノン及び(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−ナフタレニルメタノンから選択されるものが好ましく例示できる。これらの内、より好ましいものは、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾフェノン、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−4’−フルオロベンゾフェノン、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−4‘−クロロベンゾフェノン、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−4‘−メチルベンゾフェノン、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−4‘−メトキシベンゾフェノン、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−2’ ,4‘,6’−トリメチルベンゾフェノン、3,5−ジ−tert−ブチル−4,4‘−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,3’,5,5‘−テトラ−tert−ブチル−4,4‘−ジヒドロキシベンゾフェノン及び(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−ナフタレニルメタノンから選択されるものである。
【0026】
かかる一般式(3)で表される化合物は、フリー体で本発明の皮膚外用剤に使用することもできるが、アルカリなどを用いて塩とし、使用することも可能である。たとえばナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、トリエタノールアミン塩、トリエチルアミン塩等の有機アミン塩、リジン塩、アルギニン塩等の塩基性アミノ酸塩等が好ましく例示できる。
【0027】
また、これらの一般式(3)で表される化合物は、任意の方法で製造することができ、例えば前記スキーム1又は2で概略される方法を適宜応用することによって製造することができるが、これらの方法に限定されない。
【0028】
例えば、前記スキーム1において、(置換)チオフェンの代わりに、種々の芳香族炭化水素を用いて、これと3,5−ジ−tert−ブチル−4−ベンゾイックアシッドの酸クロリド体を反応させることによって製造することが可能である。また、前記スキーム2において、チオフェンカルボン酸の代わりに、(置換)ベンゾイックアシッドを用いて、これを酸クロリド体とし、これを3,5−ジ−tert−ブチルフェノールと反応させることによって製造することが可能である。
【0029】
(2)本発明の皮膚外用剤の必須構成成分である前記1気圧、25℃で液状である、少なくとも3個の共役二重結合を有する化合物
本発明の皮膚外用剤は、一般式(1)で表される化合物に加えて、前記1気圧、25℃で液状である、少なくとも3個の共役二重結合を有する化合物を含有することを特徴としている。この様な化合物としては、前記1気圧、25℃で液状である、少なくとも3個の共役二重結合を有する化合物であれば、使用可能であるが、好ましいものとして以下のような化合物が挙げられる。α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、δ−トコフェロール、ビタミンEニコチン酸エステル、酢酸トコフェロール、ビタミンD、ビタミンD、レチノール、レチナール、レチノイン酸、p−メトキシ桂皮酸、p−メトキシ桂皮酸エチルエステル、p−メトキシ桂皮酸−2エチルヘキシルエステルのようなp−メトキシ桂皮酸乃至その誘導体、p−アミノ安息香酸−2エチルヘキシルエステル、N、N−ジメチル−p−アミノ安息香酸−2エチルヘキシルエステルのようなp−アミノ安息香酸乃至その誘導体、フェノキシエタノール、フェネチルアルコール、ケイヒ酸メチル、リリアール、アニソール、シクラメンアルデヒド、酢酸ジメチルベンジルカルビニル、サリチル酸イソペンチル、サリチル酸ベンジル、フェニル酢酸、酢酸スチラリル、2−イソブチル−3−メトキシピラジン、バニリン及びジャスミナールなどが好ましい。これらの中では、α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、δ−トコフェロール、ビタミンEニコチン酸エステル、酢酸トコフェロール、4−メトキシ桂皮酸−2エチルヘキシルエステル、フェノキシエタノールが、より好ましく、δ−トコフェロール、4−メトキシ桂皮酸−2エチルヘキシルエステルが特に好ましい。
【0030】
(3) 本発明の皮膚外用剤
本発明の皮膚外用剤は、上記一般式(1)で表される化合物及び/又はその塩と、1気圧、25℃で液状である、少なくとも3個の共役二重結合を有する化合物を必須成分として含む。本発明の皮膚外用剤においては、上記一般式(1)で表される化合物及び/又はその塩は唯一種類を含有しても、二種類以上を含有していてもよく、1気圧、25℃で液状である、少なくとも3個の共役二重結合を有する化合物も唯一種類を含有しても、二種類以上を含有していてもよい。
【0031】
本発明の皮膚外用剤における一般式(1)で表される化合物の好ましい含有率は、総量で0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上である。一方、上限は3質量%以下、好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.8質量%以下である。本発明の皮膚外用剤における1気圧、25℃で液状である、少なくとも3個の共役二重結合を有する化合物の好ましい含有率は、総量で0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.2質量%以上である。一方、上限は10質量%以下、好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。
【0032】
本発明の皮膚外用剤における 前記一般式(1)に表される化合物の含有量の和と、前記1気圧、25℃で液状である、少なくとも3個の共役二重結合を有する化合物の含有量の和との比が、質量比で1:1〜1:10であることが好ましい。これは、前記一般式(1)で表される化合物の結晶性が高く油剤等への溶解性が悪いため、これを安定に溶解しておくには(特に低温溶解性)、1気圧、25℃で液状である、少なくとも3個の共役二重結合を有する化合物を、この範囲で共存させることが好ましいからである。
【0033】
本発明の皮膚外用剤において、その剤形の安定性を向上させるには、一般式(1)で表される化合物、及び1気圧、25℃で液状である、少なくとも3個の共役二重結合を有する化合物、と共に、1気圧、25℃で液状であるような油剤成分を用いることにより、さらに相溶性が向上するので、この様な成分を含有することも好ましい。
【0034】
この様な1気圧25℃で、液状であるような油剤成分としては、例えば、マカデミアナッツ油、アボガド油、トウモロコシ油、オリーブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、サフラワー油、綿実油、ホホバ油、ヤシ油、パーム油などの植物油、流動パラフィン、スクワランなどの液体油、オレイン酸、パルミトレイン酸、イソステアリン酸、イソパルミチン酸などの不飽和又は分岐脂肪酸、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、ホホバアルコールなどの不飽和又は分岐アルコール、イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ−2−エチルヘキシル、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、2−エチルヘキサン酸パルミチルエステル、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリンなどのエステル油、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサンシロキサン等の環状ポリシロキサン、アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の変性ポリシロキサン等のシリコーン油等が挙げられる。これらの中では、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、イソステアリン酸が好ましく、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリンエステルが特に好ましい。この様な1気圧、25℃で液状であるような油剤を用いることによって、相溶性が向上し、さらに剤形の安定性が向上する。
【0035】
本発明の皮膚外用剤においては、前記一般式(1)に表される化合物の含有量の和と、前記1気圧、25℃で液状である、少なくとも3個の共役二重結合を有する化合物の含有量の和の総和と、油相における前記一般式(1)に表される化合物と前記1気圧、25℃で液状である、少なくとも3個の共役二重結合を有する化合物、以外の成分(油剤成分)の含有量の総和との比が、質量比で1:2〜1:50であることが好ましく、1:2〜1:10であることがより好ましく、1:2〜1:5であることが更に好ましい。この様な組成で用いることによって、前記一般式(1)に表される化合物の油性成分への相溶性が向上し、剤形が安定化されるからである。
【0036】
本発明の皮膚外用剤の油相における、前記一般式(1)に表される化合物と前記1気圧、25℃で液状である、少なくとも3個の共役二重結合を有する化合物以外の成分(油剤成分)は、1気圧、25℃で液状である油剤を、一般式(1)で表される化合物を除く、皮膚外用剤中の油相成分中に、70%以上含有することが好ましく、90%以上含有することがより好ましく、95%以上含有することが更に好ましく、1気圧、25℃で液状の油剤のみであることが特に好ましい。
【0037】
すなわち、本発明においては、油相成分が一般式(1)に表される化合物及びその塩を除いて、1気圧、25℃で液状である成分のみで構成されていることが特に好ましい。
【0038】
ここで、一般式(1)で表される化合物は油相に溶解しやすい性質を有するので、本願発明の皮膚外用剤は、油性剤形或いは乳化剤形とすることが好ましく、乳化剤形とすることがより好ましい。これは、乳化剤形とすることにより、保湿剤等の水性成分のような種々の成分をも含有できるからである。
【0039】
本願発明の皮膚外用剤において乳化剤形とする場合、乳化剤の少なくとも1種に、高分子量の乳化剤を用いることが好ましい。これは、高分子の乳化剤が、界面に配向しやすく水相をゲル化して界面膜を安定化し、以て、本願発明のような流動性の高い油剤を高濃度に含有する油相の乳化をより安定させるからである。このような乳化剤の含有量は、皮膚外用剤全量に対して、0.01質量%以上用いるのが好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上が更に好ましい。さらに、上限は5質量%以下で用いることが好ましく、3質量%以下がより好ましく、1質量%以下であることが更に好ましい。これは、使用量が少なすぎると、乳化粒子の安定化効果が低下する場合が存し、多すぎると、増粘効果により使用性を損なう場合が存するからである。この様なものとしては、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体が挙げられる。このものは「PEMULEN TR−1」、「PEMULEN TR−2」、「カーボポール1382」等としてGoodrich社より市販されているので、このものを用いることができ、好ましい。さらに乳化粒子を安定に保つために、水相に水溶性の高分子を含有させて、水相の粘度を上げることも好ましい。この様な高分子としては、カーボポール、カルボキシビニルポリマー、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0040】
また、本発明の皮膚外用剤においては、その剤形の安定性に支障をきたさない範囲で、一般式(1)で表される化合物と、1気圧、25℃で液状である、少なくとも3個の共役二重結合を有する化合物に加えて、医薬品、化粧品等に一般的に用いられる各種成分、すなわち、油脂、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸、高級アルコール、エステル類、油剤、水性成分、粉末成分、保湿剤、増粘剤、界面活性剤、粉体類、色剤、香料、pH調整剤、キレート剤、防腐剤、ビタミン類、その他の美白剤、抗炎症剤等を含みうる。
【0041】
この様な成分として、保湿剤としては、グリセリン、ジグリセリン、1,3−ブタンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、イソプレングリコール、1,2−ペンタンジオール、2,4−ヘキシレングリコール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール、ポリエチレングリコール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール等の多価アルコール類、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム等が挙げられ、増粘剤としては、グアガム、クインスシード、カラギーナン、ガラクタン、アラビアガム、ペクチン、マンナン、デンプン、カードラン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、グリコーゲン、ヘパラン硫酸、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、トラガントガム、ケラタン硫酸、コンドロイチン、ムコイチン硫酸、ヒドロキシエチルグアガム、カルボキシメチルグアガム、デキストラン、ケラト硫酸、ローカストビーンガム、サクシノグルカン、カロニン酸、キチン、キトサン、カルボキシメチルキチン、寒天、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ベントナイト等が挙げられる。
【0042】
界面活性剤としては、脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミンエーテル等のアニオン界面活性剤類、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類、イミダゾリン系両性界面活性剤(2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類、ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレート、セスキオレイン酸ソルビタン等)、グリセリン脂肪酸類(グリセリルモノステアレート等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコール等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノラウレート、POEソルビタンモノオレエート、モノステアリン酸ポリオキエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE−ソルビットモノラウレート等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE−グリセリンモノイソステアレート等)、POE脂肪酸エステル類(POEモノラウレート、POEモノオレート、POEジステアレート等)、POEアルキルエーテル類(POEセチルエーテル、POE2−オクチルドデシルエーテル等)、POEアルキルフェニルエーテル類(POEノニルフェニルエーテル等)、プルロニック(登録商標)類、POE・POPアルキルエーテル類(POE・POP2−デシルテトラデシルエーテル等)、テトロニック(登録商標)類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤類が挙げられる。
【0043】
ビタミン類としては、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB12などのビタミンB群類、ユビキノン類、葉酸類、パントテン酸、パンテチン、コエンザイムQ10などが挙げられる。
【0044】
無機顔料としては、表面を処理されていても良い、マイカ、タルク、カオリン、合成雲母、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸(シリカ)、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化コバルト、群青、紺青、酸化チタン、酸化亜鉛等が挙げられ、有機粉体類としては、表面を処理されていても良い、ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル、ナイロン粉末、オルガノポリシロキサンエラストマー等が挙げられ、パール剤類としては、表面を処理されていても良い、雲母チタン、魚燐箔、オキシ塩化ビスマス等が挙げられ、有機色素類としては、レーキ化されていても良い赤色202号、赤色228号、赤色226号、黄色4号、青色404号、黄色5号、赤色505号、赤色230号、赤色223号、橙色201号、赤色213号、黄色204号、黄色203号、青色1号、緑色201号、紫色201号、赤色204号等が挙げられる。
【0045】
本発明の皮膚外用剤は、剤形の安定性の向上を目的としており、その剤形の外観において、見た目の美しさも要求される化粧料に適用することが好ましい。
【0046】
本発明の皮膚外用剤は、一般式(1)で表される化合物を含有しているので、抗炎症効果を有しており、日焼け後のケア用に用いるのも好ましい形態である。
【0047】
また、一般式(I)で表される化合物が優れたメラニン生成抑制作用を有していることから、メラニン生成抑制用或いは美白用の皮膚外用剤として用いるのも好ましい形態である。
【0048】
本発明の皮膚外用剤は、通常の化粧料や医薬部外品等の皮膚外用剤の製造と同様にして製造することができる。
【0049】
以下に実施例及び試験例を参照して、本発明について更に詳細に説明を加えるが、本発明がこれらの実施例及び試験例によって限定を受けないことは言うまでもない。
【0050】
<製造例1>
2,6−ジ−tert−ブチル−4−(2’−テノイル)フェノール(化合物(1))の製造
3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾイックアシッド23.2gに塩化チオニル60gを加え、室温にて1時間撹拌した後、過剰の塩化チオニルを減圧下で留去した。これに二硫化炭素300mlを加えて溶解し、さらに塩化アルミニウム13.5gを添加した。40℃で、30分間撹拌した後に、チオフェン88.2gを添加した。次いで、反応液を10%塩酸中に注ぎ込み、ジクロロメタンにて抽出し、無水硫酸ナトリウムにて乾燥後、濃縮し、シリカゲルカラムにて分画精製し、化合物(1)を得た。
【0051】
<製造例2>3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾフェノン(化合物(2))の製造
ベンゾイルクロリド1.45gと2,6−ジ−tert−ブチルフェノール2.06gを塩化メチレン12mlに溶解し、塩化アルミニウム1.40gを添加し、室温で40分間撹拌した。反応液を氷水中に注ぎ込み、ジクロロメタンにて抽出し、無水硫酸ナトリウムにて乾燥後、濃縮し、シリカゲルカラムにて分画、精製し、化合物(2)を得た。
【0052】
<製造例3>3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−4’−フルオロベンゾフェノン(化合物(3))の製造
4−フルオロベンゾイルクロリドと2,6−ジ−tert−ブチルフェノールを用い、製造例2と同様に操作して、化合物(3)を得た。
【0053】
<製造例4>3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−4‘−クロロベンゾフェノン(化合物(4))の製造
4−クロロベンゾイルクロリドと2,6−ジ−tert−ブチルフェノールを用い、製造例2と同様に操作して、化合物(4)を得た。
【0054】
<製造例5>3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−4’−メチルベンゾフェノン(化合物(5))の製造
4−メチルベンゾイルクロリドと2,6−ジ−tert−ブチルフェノールを用い、製造例2と同様に操作して、化合物(5)を得た。
【0055】
<製造例6>3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−4‘−メトキシベンゾフェノン(化合物(6))の製造
4−メトキシベンゾイルクロリドと2,6−ジ−tert−ブチルフェノールを用い、製造例2と同様に操作して、化合物(6)を得た。
【0056】
<製造例7>3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−2’ ,4‘,6’−トリメチルベンゾフェノン(化合物(7))の製造
2,4,6−トリメチルベンゾイルクロリドと2,6−ジ−tert−ブチルフェノールを用い、製造例2と同様に操作して、化合物(7)を得た。
【0057】
<製造例8>3,5−ジ−tert−ブチル−4,4‘−ジヒドロキシベンゾフェノン(化合物(8))の製造
ジメチルホルムアミド3mlにナトリウムエタンチオレート0.34gを氷冷下、加えた。これに製造例6で製造した3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−4‘−メトキシベンゾフェノン0.53gを加え、4時間、加熱還流し、さらに一晩室温にて撹拌した。反応液を希塩酸に注ぎ込み、塩化メチレンにて抽出した。塩化メチレン層を無水硫酸ナトリウムにて、乾燥し、濃縮後、シリカゲルカラムにて分画精製し、化合物(8)を得た。
【0058】
<製造例9>3,3’,5,5‘−テトラ−tert−ブチル−4,4‘−ジヒドロキシベンゾフェノン(化合物(9))の製造
2,6−ジ−tert−ブチルベンゾイルクロリドと2,6−ジ−tert−ブチルフェノールを用い、製造例2と同様に操作して、化合物(9)を得た。
【0059】
<製造例10>(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−ナフタレニルメタノン(化合物(10))の製造
2−ナフチルクロリドと2,6−ジ−tert−ブチルフェノールを用い、製造例2と同様に操作して、化合物(10)を得た。
【0060】
<製造例11>3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−4‘−フェニルベンゾフェノン(化合物(11))の製造
4−ビフェニルカルボニルクロリドと2,6−ジ−tert−ブチルフェノールを用い、製造例2と同様に操作して、化合物(11)を得た。
【実施例1】
【0061】
下記に示す処方に従って水中油クリームを作製した。すなわち、(A)の各成分を混合し、80℃に加熱した。一方、(B)の各成分を混合し80℃に加熱した。(A)の混合物に、(B)の混合物を加えて撹拌して乳化させ、その後35℃にまで冷却して、クリーム1を製造した。実施例1のクリーム1の処方において、化合物(1)を水に置換したものを比較例1−1として、δ−トコフェロールを水に置換したものを比較例1−2として製造した。化合物(1)とδ−トコフェロールを共に水に置換したものを比較例1−3として製造した。
(A)
POE(30)ヘキシルデシルエーテル 2.0 質量%
2−エチルヘキサン酸トリグリセライド 7.0 質量%
メチルフェニルポリシロキサン 1.0 質量%
メチルパラベン 0.3 質量%
δ−トコフェロール 1.0 質量%
化合物(1) 0.5 質量%
(B)
「PEMULEN TR−2」(BFGoodrich社製) 0.2 質量%
カルボキシビニルポリマー 0.1 質量%
1,3−ブタンジオール 15.0 質量%
水酸化ナトリウム 0.1 質量%
精製水 72.8 質量%
【0062】
<試験例1> 本発明の皮膚外用剤の低温長期保存テスト1
実施例1、比較例1〜3の各サンプルをガラス製の保存容器に入れ密栓をして、20℃、5℃、−10℃の恒温室に6ヶ月間保管した。6ヶ月後に、各保管サンプルに関して、その内容物0.2を、スライドグラス上に延ばし、顕微鏡下、析出物の個数を数え、5例の平均を算出した。
【0063】
【表1】

【0064】
表1の結果より、化合物(1)のみを含有する比較例1−2において、20℃保管条件では、析出物は認められなかった。しかし、5℃保管において、析出物の認められたサンプルもあった。さらに、−10℃保管においては多数の析出物が認められた。それに対して、実施例1においては、−10℃保管においても析出物は認められず、化合物(1)を含有する剤形に於いて、δ−トコフェロールが化合物(1)の溶解性を向上させ、剤形の安定性が向上していることが判った。
【実施例2】
【0065】
実施例1の処方に於いて、化合物(1)を化合物(2)に代えたものを実施例2のクリームとして、製造した。さらに、実施例2のクリームにおいて、δ−トコフェロールを水に置換したものを比較例2として製造した。
【実施例3】
【0066】
実施例1の処方に於いて、化合物(1)を化合物(3)に代えたものを実施例3のクリームとして、製造した。さらに、実施例3のクリームにおいて、δ−トコフェロールを水に置換したものを比較例3として製造した。
【実施例4】
【0067】
実施例1の処方に於いて、化合物(1)を化合物(4)に代えたものを実施例4のクリームとして、製造した。さらに、実施例4のクリームにおいて、δ−トコフェロールを水に置換したものを比較例4として製造した。
【実施例5】
【0068】
実施例1の処方に於いて、化合物(1)を化合物(5)に代えたものを実施例5のクリームとして、製造した。さらに、実施例5のクリームにおいて、δ−トコフェロールを水に置換したものを比較例5として製造した。
【実施例6】
【0069】
実施例1の処方に於いて、化合物(1)を化合物(6)に代えたものを実施例6のクリームとして、製造した。さらに、実施例6のクリームにおいて、δ−トコフェロールを水に置換したものを比較例6として製造した。
【実施例7】
【0070】
実施例1の処方に於いて、化合物(1)を化合物(7)に代えたものを実施例7のクリームとして、製造した。さらに、実施例7のクリームにおいて、δ−トコフェロールを水に置換したものを比較例7として製造した。
【実施例8】
【0071】
実施例1の処方に於いて、化合物(1)を化合物(8)に代えたものを実施例8のクリームとして、製造した。さらに、実施例8のクリームにおいて、δ−トコフェロールを水に置換したものを比較例8として製造した。
【実施例9】
【0072】
実施例1の処方に於いて、化合物(1)を化合物(9)に代えたものを実施例9のクリームとして、製造した。さらに、実施例9のクリームにおいて、δ−トコフェロールを水に置換したものを比較例9として製造した。
【実施例10】
【0073】
実施例1の処方に於いて、化合物(1)を化合物(10)に代えたものを実施例10のクリームとして、製造した。さらに、実施例10のクリームにおいて、δ−トコフェロールを水に置換したものを比較例10として製造した。
【実施例11】
【0074】
実施例1の処方に於いて、化合物(1)を化合物(11)に代えたものを実施例11のクリームとして、製造した。さらに、実施例11のクリームにおいて、δ−トコフェロールを水に置換したものを比較例11として製造した。
【0075】
<試験例2> 本発明の皮膚外用剤の低温長期保存テスト2
実施例2〜10、比較例2〜10の各サンプルをガラス製の保存容器に入れ密栓をして、20℃、5℃、−10℃の恒温室に6ヶ月間保管した。6ヶ月後に、各保管サンプルに関して、その内容物0.2gを、スライドグラス上に延ばし、顕微鏡下、析出物の個数を数え、3例の平均を算出した。
【0076】
【表2】

【0077】
表2の結果より、化合物(2)〜化合物(11)のみを含有する比較例2〜11において、20℃保管においては析出物はほとんど認められなかった。しかし、5℃保管において、若干の析出物が認められた。さらに、−10℃保管においては多数の析出物が認められた。それに対して、δ−トコフェロールを含有する実施例においては、−10℃保管においても析出物は認められず、化合物(2)〜化合物(11)の溶解性が向上し、安定な剤形であることが判った。
【実施例12】
【0078】
下記に示す処方に従って水中油クリームを作製した。すなわち、(A)の各成分を混合し、80℃に加熱した。一方、(B)の各成分を混合し80℃に加熱した。(A)の混合物に、(B)の混合物を加えて撹拌して乳化させ、その後35℃にまで冷却して、クリーム2を製造した。実施例12において、レチノールを水に置換したものを比較例12として製造した。
(A)
POE(30)ヘキシルデシルエーテル 2.0 質量%
2−エチルヘキサン酸トリグリセライド 7.0 質量%
メチルフェニルポリシロキサン 1.0 質量%
メチルパラベン 0.3 質量%
レチノール 1.0 質量%
化合物(1) 0.5 質量%
(B)
「PEMULEN TR−2」(Goodrich社製) 0.2 質量%
キサンタンガム 0.1 質量%
1,3−ブタンジオール 15.0 質量%
水酸化ナトリウム 0.1 質量%
精製水 72.8 質量%
【実施例13】
【0079】
実施例12の処方に於いて、レチノールをp−メトキシ桂皮酸2−エチルヘキシルに代えたものを実施例13のクリームとして、製造した。
【実施例14】
【0080】
実施例12の処方に於いて、レチノールを酢酸トコフェロールに代えたものを実施例14のクリームとして、製造した。
【実施例15】
【0081】
実施例12の処方に於いて、レチノールをフェノキシエタノールに代えたものを実施例15のクリームとして、製造した。
【0082】
<試験例3> 本発明の化粧料の長期低温保存テスト3
実施例12〜15、比較例12の各サンプルをガラス製の保存容器に入れ密栓をして、20℃、5℃、−10℃の恒温室に6ヶ月間保管した。6ヶ月後に、各保管サンプルに関して、試験例1と同様の方法で、析出物を数え、3例の平均を算出した。
【0083】
【表3】

【0084】
表3の結果より、化合物(1)に加えて、レチノール、p−メトキシ桂皮酸2−エチルヘキシル、酢酸トコフェロール、フェノキシエタノールを含有する実施例12〜15においては、20℃、5℃保管に加えて、−10℃保管品においても析出物は認められなかった。それに対して、レチノール、p−メトキシ桂皮酸2−エチルヘキシル、酢酸トコフェロール、フェノキシエタノールなどを共存しない比較例12においては、5℃保管において、析出物の認められたサンプルもあった。さらに、−10℃保管においては多数の析出物が認められた。レチノール、p−メトキシ桂皮酸2−エチルヘキシル、酢酸トコフェロール、フェノキシエタノールもδ−トコフェロールと同様に、析出物の生成を抑制した。
【実施例16】
【0085】
下記に示す処方に従って水中油クリームを作製した。すなわち、(A)の各成分を混合し、80℃に加熱した。一方、(B)の各成分を混合し80℃に加熱した。(A)の混合物に、(B)の混合物を加えて撹拌して乳化させ、その後35℃にまで冷却して、実施例16のクリームを製造した。実施例16の処方において、δ−トコフェロールを水に置換したものを比較例16として製造した。
(A)
POE(30)ヘキシルデシルエーテル 2.0 質量%
2−エチルヘキサン酸トリグリセライド 7.0 質量%
メチルフェニルポリシロキサン 1.0 質量%
メチルパラベン 0.3 質量%
δ−トコフェロール 0.2 質量%
化合物(1) 0.5 質量%
(B)
「PEMULEN TR−2」(Goodrich社製) 0.2 質量%
カルボキシビニルポリマー 0.1 質量%
1,3−ブタンジオール 15.0 質量%
水酸化ナトリウム 0.1 質量%
精製水 73.6 質量%
【実施例17】
【0086】
下記に示す処方に従って水中油クリームを作製した。すなわち、(A)の各成分を混合し、80℃に加熱した。一方、(B)の各成分を混合し80℃に加熱した。(A)の混合物に、(B)の混合物を加えて撹拌して乳化させ、その後35℃にまで冷却して、実施例17のクリームを製造した。実施例17の処方において、δ−トコフェロールを水に置換したものを比較例17として製造した。
(A)
POE(30)ヘキシルデシルエーテル 2.0 質量%
2−エチルヘキサン酸トリグリセライド 7.0 質量%
メチルフェニルポリシロキサン 1.0 質量%
メチルパラベン 0.3 質量%
δ−トコフェロール 0.5 質量%
化合物(1) 0.5 質量%
(B)
「PEMULEN TR−2」(Goodrich社製) 0.2 質量%
キサンタンガム 0.1 質量%
1,3−ブタンジオール 15.0 質量%
水酸化ナトリウム 0.1 質量%
精製水 73.3 質量%
【実施例18】
【0087】
下記に示す処方に従って水中油クリームを作製した。すなわち、(A)の各成分を混合し、80℃に加熱した。一方、(B)の各成分を混合し80℃に加熱した。(A)の混合物に、(B)の混合物を加えて撹拌して乳化させ、その後35℃にまで冷却して、実施例18のクリームを製造した。実施例18の処方において、δ−トコフェロールを水に置換したものを比較例18として製造した。
(A)
POE(30)ヘキシルデシルエーテル 2.0 質量%
2−エチルヘキサン酸トリグリセライド 7.0 質量%
メチルフェニルポリシロキサン 1.0 質量%
メチルパラベン 0.3 質量%
δ−トコフェロール 3.0 質量%
化合物(1) 0.3 質量%
(B)
「PEMULEN TR−2」(Goodrich社製) 0.2 質量%
キサンタンガム 0.1 質量%
1,3−ブタンジオール 15.0 質量%
水酸化ナトリウム 0.1 質量%
精製水 71.0 質量%
【実施例19】
【0088】
下記に示す処方に従って水中油クリームを作製した。すなわち、(A)の各成分を混合し、80℃に加熱した。一方、(B)の各成分を混合し80℃に加熱した。(A)の混合物に、(B)の混合物を加えて撹拌して乳化させ、その後35℃にまで冷却して、実施例19のクリームを製造した。実施例19において、δ−トコフェロールとp−メトキシ桂皮酸2−エチルヘキシルを共に水に置換したものを比較例19として製造した。
(A)
POE(30)ヘキシルデシルエーテル 2.0 質量%
2−エチルヘキサン酸トリグリセライド 4.0 質量%
メチルフェニルポリシロキサン 0.5 質量%
メチルパラベン 0.3 質量%
δ−トコフェロール 1.0 質量%
p−メトキシ桂皮酸2−エチルヘキシル 1.0 質量%
化合物(1) 0.3 質量%
(B)
「PEMULEN TR−2」(Goodrich社製) 0.2 質量%
キサンタンガム 0.1 質量%
1,3−ブタンジオール 15.0 質量%
水酸化ナトリウム 0.1 質量%
精製水 75.5 質量%
【実施例20】
【0089】
下記に示す処方に従って水中油クリームを作製した。すなわち、(A)の各成分を混合し、80℃に加熱した。一方、(B)の各成分を混合し80℃に加熱した。(A)の混合物に、(B)の混合物を加えて撹拌して乳化させ、その後35℃にまで冷却して、比較例20のクリームを製造した。実施例20の処方において、δ−トコフェロールとp−メトキシ桂皮酸2−エチルヘキシルを共に水に置換したものを比較例20として製造した。
(A)
POE(30)ヘキシルデシルエーテル 2.0 質量%
2−エチルヘキサン酸トリグリセライド 2.5 質量%
メチルフェニルポリシロキサン 0.5 質量%
メチルパラベン 0.3 質量%
δ−トコフェロール 1.0 質量%
p−メトキシ桂皮酸2−エチルヘキシル 1.0 質量%
化合物(1) 0.3 質量%
(B)
「PEMULEN TR−2」(Goodrich社製) 0.2 質量%
キサンタンガム 0.1 質量%
1,3−ブタンジオール 15.0 質量%
水酸化ナトリウム 0.1 質量%
精製水 77.0 質量%
【実施例21】
【0090】
下記に示す処方に従って水中油クリームを作製した。すなわち、(A)の各成分を混合し、80℃に加熱した。一方、(B)の各成分を混合し80℃に加熱した。(A)の混合物に、(B)の混合物を加えて撹拌して乳化させ、その後35℃にまで冷却して、実施例21のクリームを製造した。実施例21の処方において、δ−トコフェロールとp−メトキシ桂皮酸2−エチルヘキシルを共に水に置換したものを比較例21として製造した。
(A)
POE(30)ヘキシルデシルエーテル 2.0 質量%
2−エチルヘキサン酸トリグリセライド 5.0 質量%
メチルフェニルポリシロキサン 1.0 質量%
固体パラフィン 1.0 質量%
メチルパラベン 0.3 質量%
δ−トコフェロール 1.0 質量%
p−メトキシ桂皮酸2−エチルヘキシル 1.0 質量%
化合物(1) 0.3 質量%
(B)
「PEMULEN TR−2」(Goodrich社製) 0.2 質量%
キサンタンガム 0.1 質量%
1,3−ブタンジオール 15.0 質量%
水酸化ナトリウム 0.1 質量%
精製水 73.0 質量%
【0091】
<試験例4> 本発明の化粧料の長期低温保存テスト4
実施例16〜21、比較例16〜21の各サンプルをガラス製の保存容器に入れ密栓をして、20℃、5℃、−10℃の恒温室に6ヶ月間保管した。6ヶ月後に、各保管サンプルに関して、試験例1と同様の方法で、析出物を数え、3例の平均を算出した。
【0092】
【表4】

【0093】
表4の実施例16〜実施例18の結果より、δ−トコフェロールが化合物(1)に比して少ない剤形では、本発明の効果が充分には得られないことが判った。また、油剤である2−エチルヘキサン酸トリグリセライドやメチルフェニルポリシロキサンの含有量が少ない実施例20や、固体の油脂を含有する実施例21では、本発明の効果が若干低下しており、25℃で液状の油剤の量比や、25℃で固体の油剤の量比も本発明の効果に影響を与えることが判った。
【0094】
<試験例5> 本発明の皮膚外用剤のメラニン生成抑制テスト
10名の被験者の前腕内側部に1.5cm×1.5cmの部位を4ヶ所設定し、4ヶ所の内の1部位には、実施例1で製造したクリームを、別の1部位には比較例1−1を、別の1部位には実施例5を、もう1部位には実施例6のクリームを、1週間、1日3回塗布した。1週間後に、4ヶ所の設定部位以外を遮光し、設定部位に紫外線を3日間連続で照射した。照射紫外線のエネルギー量は、予め測定してあった、被験者の1.0 MED(Minimum Erythema Dose:最小紅斑惹起エネルギー量)相当量であった(合計3.0MED相当量)。クリームの塗布は、紫外線の照射3日間も含めて、さらに1日3回を21日間連続して行った。初回の紫外線照射の7日後及び21日後に、紫外線を照射した部位について、初回の紫外線照射の7日後および21日後に、3ヶ所の設定部位及びその隣接部位(遮光されていた部位)の皮膚の明度(L値)を色彩色差計(コニカミノルタ色彩色差計CR300)にて測定した。測定結果について、10名の被験者の設定部位ごとに、L値の平均値を算出した。さらに、21日後の設定部位(紫外線照射部位)と紫外線非照射隣接部位とのL値の差(ΔL値:隣接部位のL値−紫外線照射部位のL値)を算出した。結果を表5に示す。
【0095】
【表5】

【0096】
表5に示すように、紫外線照射7日後には、実施例1、比較例1−1、実施例5、実施例6のクリーム塗布部位ともに、紫外線非照射部位よりもL値(明度)が下がっていた。すなわち、紫外線照射による色素沈着で、皮膚の明度が低下していることが判る。さらに、各塗布部位について、紫外線照射の21日後の設定部位と非照射部位とのL値(明度)の差を算出したΔL値を比較した。化合物(1)を含有しない比較例1−1のクリームと比べて、化合物(1)を含有する実施例1、化合物(5)を含有する実施例5、化合物(6)を含有する実施例6のクリームでは、非照射部位との差を示すΔL値が小さく、明度が回復していることが判る。すなわち、化合物(1)、化合物(5)、化合物(6)を含有するクリームは、色素沈着を著しく改善する作用に優れることが判かった。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明は、皮膚外用剤に応用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)下記に示す一般式(1)に表される化合物及び/又はその塩と、2)1気圧、25℃で液状である、少なくとも3個の共役二重結合を有する化合物から選択される1種乃至は2種以上とを含有する皮膚外用剤。
【化1】

一般式(1)
(但し、式中R、Rはそれぞれ独立に炭素数3〜6のアルキル基を表し、Rは水素原子、炭素数1〜4のアシル基又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、Rは芳香族性を有する基を表す。)
【請求項2】
前記一般式(1)で表される化合物が、次に示す、一般式(2)又は一般式(3)で表される化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の皮膚外用剤。
【化2】

一般式(2)
(但し、式中R及びRは一般式(1)と同じ基を表し、Rは水素原子、水酸基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアシルオキシ基又は炭素数1〜4のアルキルオキシ基を表し、Xは酸素原子、硫黄原子又は−NH−を表す。)
【化3】

一般式(3)
(但し、式中Rは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、フェニル基、アルキルオキシ基、水酸基、メルカプト基、トリフルオロメチル基、アミノ基、アルキルアミノ基、ニトロ基、シアノ基、ホルミル基、カルボキシル基、アルキルアミド基、スルフェニル基、スルホニル基又はハロゲン原子を表す。)
【請求項3】
前記一般式(1)に表される化合物が、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(2‘−テノイル)フェノール、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾフェノン、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−4’−フルオロベンゾフェノン、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−4‘−クロロベンゾフェノン、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−4‘−メチルベンゾフェノン、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−4‘−メトキシベンゾフェノン、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−2’ ,4‘,6’−トリメチルベンゾフェノン、3,5−ジ−tert−ブチル−4,4‘−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,3’,5,5‘−テトラ−tert−ブチル−4,4‘−ジヒドロキシベンゾフェノン及び(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−ナフタレニルメタノンから選択されるものであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の皮膚外用剤。
【請求項4】
前記1気圧、25℃で液状である、少なくとも3個の共役二重結合を有する化合物が、α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、δ−トコフェロール、ビタミンEニコチン酸エステル、酢酸トコフェロール、ビタミンD、ビタミンD、レチノール、レチナール、レチノイン酸、4−メトキシ桂皮酸乃至はその誘導体、アミノ安息香酸乃至はその誘導体、フェノキシエタノール、フェネチルアルコール、ケイヒ酸メチル、リリアール、アニソール、シクラメンアルデヒド、酢酸ジメチルベンジルカルビニル、サリチル酸イソペンチル、サリチル酸ベンジル、フェニル酢酸、酢酸スチラリル、2−イソブチル−3−メトキシピラジン、バニリン及びジャスミナールから選択されるものであることを特徴とする、請求項1〜3何れか1項に記載の皮膚外用剤。
【請求項5】
前記一般式(1)に表される化合物の含有量の和と、前記1気圧、25℃で液状である、少なくとも3個の共役二重結合を有する化合物の含有量の和との比が、質量比で1:1〜1:10であることを特徴とする、請求項1〜4何れか1項に記載の皮膚外用剤。
【請求項6】
前記一般式(1)に表される化合物の含有量の和と、前記1気圧、25℃で液状である、少なくとも3個の共役二重結合を有する化合物の含有量の和の総和と、油相における前記一般式(1)に表される化合物と前記1気圧、25℃で液状である、少なくとも3個の共役二重結合を有する化合物、以外の成分(油剤成分)の含有量の総和との比が、質量比で1:2〜1:50であることを特徴とする、請求項1〜5何れか1項に記載の皮膚外用剤。
【請求項7】
油剤成分が一般式(1)に表される化合物及びその塩を除いて、1気圧、25℃で液状である成分のみで構成されていることを特徴とする、請求項1〜6何れか1項に記載の皮膚外用剤。
【請求項8】
メラニン生成抑制用であることを特徴とする、請求項1〜7何れか1項に記載の皮膚外用剤。
【請求項9】
乳化剤形であることを特徴とする、請求項1〜8の何れか1項に記載の皮膚外用剤。

【公開番号】特開2008−308425(P2008−308425A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−156938(P2007−156938)
【出願日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(000113470)ポーラ化成工業株式会社 (717)
【Fターム(参考)】