説明

定着装置、画像形成装置、定着装置の温度制御方法、プログラムおよび記録媒体

【課題】 複数の加熱手段に通電して点灯させる際に、突入電流と複数の加熱手段の同時点灯による電流とを許容電流範囲に抑えつつ、安定した温度制御を行い、かつ定着性能を維持することができる定着装置、画像形成装置、定着装置の温度制御方法、プログラムおよび記録媒体を提供する。
【解決手段】 温度偏差算出部53は、加熱部材32の第1,第2検知温度に基づいて第1,第2温度偏差を算出する。出力決定部55は、第1,第2温度偏差の組み合わせに対応する増減通電量に基づいて、加熱部材32に対して制御すべき通電量である制御通電量を決定する。パターン選択決定部57は、決定された制御通電量を基に、パターン記憶部58に記憶した複数の通電パターンの中から、通電期間の重なりが最も少ない通電パターンを選択する。電力制御部56は、選択された通電パターンに従って、駆動制御部41に駆動信号を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式の画像形成装置に備えられる定着装置、画像形成装置、定着装置の温度制御方法、プログラムおよび記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機あるいはプリンタなどの電子写真方式の画像形成装置に用いられる定着装置としては、熱ローラ定着方式の定着装置が多用されている。熱ローラ定着方式の定着装置は、互いに圧接されたローラ対、たとえば定着ローラおよび加圧ローラを備えている。この熱ローラ定着方式の定着装置は、ローラ対の両方あるいはいずれか1つの内部に配置されたハロゲンヒータなどからなる加熱手段によってローラ対を所定の温度、たとえば定着目標温度に加熱した後、未定着トナー画像が形成された記録紙をローラ対の圧接部、たとえば定着ニップ部に給紙する。そして、圧接部を通過させることによって熱と圧力とを、未定着トナー画像が形成された記録紙に与えてトナー画像の定着を行うようになっている。
【0003】
カラー画像形成装置に備えられる定着装置においては、定着ローラ表層にシリコンゴムなどからなる弾性層を設けた弾性ローラを用いることが一般的である。定着ローラを弾性ローラとすることによって、定着ローラ表面が、未定着トナー画像の凹凸に対応して弾性変形し、トナー画像面を覆い包むように接触するので、モノクロに比べてトナー量の多いカラーの未定着トナー画像に対して、良好に加熱定着を行うことが可能となる。また、定着ニップ部の出口での弾性層の歪み解放効果によって、モノクロに比べてオフセットしやすいカラーのトナーに対して、離型性を向上することができる。
【0004】
さらに、定着ニップ部のニップ形状が上側、つまり定着ローラ側に凸、いわゆる逆ニップ形状となることから、記録紙の剥離性能を向上させることができ、剥離爪などの剥離手段を用いずとも記録紙の剥離、すなわちセルフストリッピングが可能となり、剥離手段に起因する画像欠陥を解消することができる。
【0005】
このようなカラー画像形成装置に備えられるカラー定着装置において、プロセス速度、すなわち記録材の搬送速度の高速化に対応するためには、定着ニップ部のニップ幅を広くする必要がある。ニップ幅を広くする方法としては、定着ローラの弾性層を厚くする方法と定着ローラ径を大きくする方法との2つの方法がある。
【0006】
しかしながら、従来の技術のように定着ローラ内部に加熱手段がある構成において、プロセス速度を高速化する場合、定着ローラの弾性層を厚くする方法では、弾性層の熱伝導性が低いために、定着ローラ表面への熱供給が不十分になり、定着ローラ表面の温度が低下してしまうという問題がある。また、定着ローラ径を大きくする方法では、各ローラの熱容量が大きくなるので、ウォームアップ時間が長くなったり、消費電力が増大したりするという問題がある。
【0007】
これらの問題を解決するために、近年、定着ローラと加熱ローラとの間に定着ベルトを掛け渡し、定着ベルトを介して定着ローラと加圧ローラとを圧接させた構成のベルト定着方式のカラー定着装置が使用されるようになってきている。この種のベルト定着方式の定着装置は、熱容量が小さい定着ベルトを加熱するので、ウォームアップ時間が短く、また定着ローラにハロゲンランプなどの熱源を内蔵する必要がないので、スポンジゴムなどからなる低硬度の弾性層を厚く設けることができ、広いニップ幅を確保することができる。
【0008】
上述したような熱ローラ定着方式あるいはベルト定着方式の定着装置において、さらなるウォームアップ時間の短縮を図るためには、加熱部材、たとえば定着ローラあるいは定着ベルトの低熱容量化、あるいは加熱部材を加熱する加熱手段の高出力化を行うことが考えられる。しかしながら、加熱部材の低熱容量化、あるいは複数の消費電力の大きな加熱手段を用いて加熱を行う場合、許容電流の範囲内で制御を行うには、複数の加熱手段を相互に関連させて制御を行う必要がある。しかし、熱供給が不十分であると、温度低下が大きくなり、定着性能に影響が出る。すなわち、従来の温度制御方法を前提して、複数の高出力な加熱手段を単純に制御すると、許容電流をオーバーして、安全性が損なわれる。また、単純に許容電流の範囲に収まるようにすると、各々の加熱手段の通電時間が短くなり、熱供給が不足する状態になる。
【0009】
特許文献1に記載される画像記録装置は、温度の安定性向上と、スイッチング素子の寿命低下を抑制するために、メインヒータおよびサブヒータの点灯制御において、点灯と消灯との順序を周期ごとに変えるようにしたものである。具体的には、ヒータ制御は、たとえば500msを1周期として、500ms内のヒータ点灯時間を調整する。温調温度を下回った場合、500msのヒータ駆動周期内におけるヒータのオン時間を10%減らして、ヒータを点灯する。このとき、周期内でのオン/オフの順序を周期ごとに、オンからオフとオフからオンとを交互に行う。また、温度が下がり続ける場合、1周期内の点灯時間を5%増加させる。このように、点灯と消灯との順序あるいは点灯時間の割合を周期ごとに変化させることによって、温度変化の少ない安定した温度調整を行い、スイッチング素子の寿命を延ばそうとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平8−234617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1には、ヒータが消費する電力、あるいはヒータに流れる電流についての記載がなく、特許文献1に記載される従来の技術は、大電力のヒータを点灯させる場合、あるいは、複数の異なる定格電力のヒータを点灯させる場合の許容電流については、考慮されていない。特に、大電力のヒータを用いて電力を抑制しながら通電するときには、損失の少ない点灯と、必要な熱供給の確保と、通電時の許容電流のバランスを取りながらの温度制御とが必要であるが、これらについても考慮されていない。したがって、特許文献1に記載される従来の技術は、許容電流を考慮した温度制御を行うものではない。
【0012】
また、許容電流が考慮されないと、複数のヒータが意図しないタイミングで重なって点灯してしまうことによる過剰な電流を抑制することができず、この過剰な電流による意図しない加熱が生じることもあり得る。この意図しない加熱による温度リップルによって、温度が不均一になり、定着性低下および高温オフセットなどによる画像劣化、巻き付きあるいは剥離不良などの記録紙への影響、さらに過剰加熱による消費電力の上昇などが発生することもある。
【0013】
本発明の目的は、複数の加熱手段に通電して点灯させる際に、突入電流と複数の加熱手段の同時点灯による電流とを許容電流範囲に抑えつつ、安定した温度制御を行い、かつ定着性能を維持することができる定着装置、画像形成装置、定着装置の温度制御方法、プログラムおよび記録媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、回転可能に設けられ、現像剤を定着する定着部材と、回転可能に設けられ、定着部材とともに記録材に加圧する加圧部材と、通電によって定着部材を加熱する複数の加熱手段と、複数の加熱手段への通電を制御する温度制御手段とを含み、定着部材と加圧部材との間を構成するニップ部に挿入される記録材を、定着部材と加圧部材とで挟持しながら搬送することによって、記録材上の未定着画像を定着させる定着装置であって、
温度制御手段は、
予め定める周期内で通電期間と非通電期間とを切り換えて複数の加熱手段への通電を制御するための複数の通電パターンを記憶するパターン記憶部と、
各加熱手段の通電電力設定に応じて、パターン記憶部に記憶される複数の通電パターンの中から、通電期間の重なりが小さくなる通電パターンを選択するパターン選択決定部と、
パターン選択決定部によって選択された通電パターンに基づいて複数の加熱手段への通電を制御する駆動部とを含むことを特徴とする定着装置である。
【0015】
また本発明は、前記複数の加熱手段は、該複数の加熱手段の定格電力値の合計が、印字動作するときに供給することができる許容電力よりも大きい電力であることを特徴とする。
【0016】
また本発明は、前記温度制御手段は、位相制御による通電を併用して、前記加熱手段に通電することを特徴とする。
【0017】
また本発明は、前記パターン記憶部は、前記複数の加熱手段のうち2つの加熱手段を選択し、選択した2つの加熱手段について、複数の通電パターンを記憶することを特徴とする。
【0018】
また本発明は、前記パターン記憶部は、複数の通電パターンを1つの通電パターン群として、複数の通電パターン群を記憶し、
前記パターン選択決定部は、異なる2つの加熱手段の組み合わせの中から、加熱手段の選択状態に対応して、前記通電パターン群から1つの通電パターン群を選択し、選択した通電パターン群から、通電しようとする加熱手段の選択状態に合った通電パターンを選択することを特徴とする。
【0019】
また本発明は、前記パターン記憶部は、基準となる1つの加熱手段への通電の開始時刻から遅れて通電を開始するまでの遅延時間である駆動ディレイが、予め定める標準となる遅延時間に設定された通電パターンと、予め定める標準となる遅延時間とは異なる遅延時間に設定された通電パターンとを、前記基準となる1つの加熱手段を除く残余の加熱手段ごとに記憶することを特徴とする。
【0020】
また本発明は、前記パターン記憶部に予め設定する通電パターンは、前記複数の加熱手段それぞれのデューティの値から、デューティの点灯周期を変更して設定することを特徴とする。
【0021】
また本発明は、前記パターン記憶部に予め設定する通電パターンは、前記複数の加熱手段それぞれの通電量から、位相制御における位相角を変更して設定することを特徴とする。
【0022】
また本発明は、前記パターン記憶部に予め設定する通電パターンは、前記複数の加熱手段それぞれのデューティの値から、それぞれのデューティの値を補正して設定し、
前記温度制御手段は、補正後のデューティの値で前記複数の加熱手段を駆動することを特徴とする。
【0023】
また本発明は、前記温度制御手段は、複数の加熱手段への通電を制御するとき、通電開始から徐々に位相角を大きくして通電するスローアップ制御と、通電終了までに徐々に位相角を小さくして通電するスローダウン制御とを行い、
前記記憶部に予め設定する通電パターンは、前記複数の加熱手段それぞれのデューティの値から、前記スローアップ及びスローダウンを行うときの位相角を変更して設定することを特徴とする。
【0024】
また本発明は、前記温度制御手段は、複数の加熱手段への通電を制御するとき、通電期間に交流電源周波数に同期して、半波長単位あるいは全波長単位で間引く制御を行い、
前記記憶部に予め設定する通電パターンは、前記複数の加熱手段それぞれのデューティの値から、前記半波長単位あるいは全波長単位で間引く時の間引きパターンを変更して設定することを特徴とする。
【0025】
また本発明は、前記記憶部に予め設定する通電パターンは、前記複数の加熱手段それぞれのデューティの値から、前記複数の加熱手段に供給する電圧値の変更状態を設定することを特徴とする。
【0026】
また本発明は、前記記憶部に予め設定する通電パターンは、前記記載の通電パターンの設定を複数組み合わせて設定することを特徴とする。
【0027】
また本発明は、前記複数の加熱手段のうち少なくとも1つは、抵抗発熱体であることを特徴とする。
【0028】
また本発明は、前記抵抗発熱体は、複数の分岐部に分岐されており、
前記パターン記憶部に予め設定する通電パターンは、前記複数の加熱手段それぞれのデューティの値から、前記温度制御手段が前記複数に分岐した分岐部への通電状態を設定することを特徴とする。
【0029】
また本発明は、前記定着部材は、無端状のベルト部材であることを特徴とする。
また本発明は、前記記載の定着装置を備えることを特徴とする画像形成装置である。
【0030】
また本発明は、回転可能に設けられ、現像剤を定着する定着部材と、回転可能に設けられ、定着部材とともに記録材に加圧する加圧部材と、通電によって定着部材を加熱する複数の加熱手段と、予め定める周期内で通電期間と非通電期間とを切り換えて複数の加熱手段への通電を制御するための複数の通電パターンを記憶するパターン記憶部とを含み、定着部材と加圧部材との間を構成するニップ部に挿入される記録材を、定着部材と加圧部材とで挟持しながら搬送することによって、記録材上の未定着画像を定着させる定着装置が実行する定着装置の温度制御方法であって、
各加熱手段の通電電力設定に応じて、パターン記憶部に記憶される複数の通電パターンの中から、通電期間の重なりが小さくなる通電パターンを選択するパターン選択決定ステップと、
パターン選択決定ステップで選択された通電パターンに基づいて複数の加熱手段への通電を制御する通電制御ステップとを含むことを特徴とする定着装置の温度制御方法である。
【0031】
また本発明は、回転可能に設けられ、現像剤を定着する定着部材と、回転可能に設けられ、定着部材とともに記録材に加圧する加圧部材と、通電によって定着部材を加熱する複数の加熱手段と、予め定める周期内で通電期間と非通電期間とを切り換えて複数の加熱手段への通電を制御するための複数の通電パターンを記憶するパターン記憶部と、コンピュータとを含み、定着部材と加圧部材との間を構成するニップ部に挿入される記録材を、定着部材と加圧部材とで挟持しながら搬送することによって、記録材上の未定着画像を定着させる定着装置に含まれるコンピュータを、
各加熱手段の通電電力設定に応じて、パターン記憶部に記憶される複数の通電パターンの中から、通電期間の重なりが小さくなる通電パターンを選択するパターン選択決定部と、
パターン選択決定部によって選択された通電パターンに基づいて複数の加熱手段への通電を制御する駆動部とを含む温度制御手段として機能させるためのプログラムである。
【0032】
また本発明は、前期記載のプログラムを記録したコンピュータ読取り可能な記録媒体である。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、回転可能に設けられ、現像剤を定着する定着部材と、回転可能に設けられ、定着部材とともに記録材に加圧する加圧部材と、通電によって定着部材を加熱する複数の加熱手段と、複数の加熱手段への通電を制御する温度制御手段とを含み、定着部材と加圧部材との間を構成するニップ部に挿入される記録材を、定着部材と加圧部材とで挟持しながら搬送することによって、記録材上の未定着画像を定着させるにあたって、温度制御手段は、パターン記憶部、パターン選択決定部および駆動部を含む。パターン記憶部は、予め定める周期内で通電期間と非通電期間とを切り換えて複数の加熱手段への通電を制御するための複数の通電パターンを記憶する。パターン選択決定部は、各加熱手段の通電電力設定に応じて、パターン記憶部に記憶される複数の通電パターンの中から、通電期間の重なりが小さくなる通電パターンを選択する。そして、駆動部は、パターン選択決定部によって選択された通電パターンに基づいて複数の加熱手段への通電を制御する。
【0034】
従来の技術では、定着部材と加圧部材との間のニップ部に挿入される記録材を、定着部材と加圧部材とで挟持しながら搬送することによって、記録材上の未定着画像を熱と圧力とによって定着させるにあたって、複数の加熱手段に通電することによって発生した熱を、定着部材および加圧部材に供給する際、必要な電力を加熱手段に供給するが、複数の加熱手段が同時に通電された場合に、許容電流値を超えてしまうことがある。
【0035】
特に、ウォームアップ時間を短縮するために、定着装置の各部材を低熱容量化したり、消費電力の大きな加熱手段で短時間に加熱したり、記録材の高速な搬送に熱供給能力を追従させるような場合では、複数設けた消費電力の大きな加熱手段を同時点灯させると、許容電流値を超える可能性が高く、この過剰電流によってハーネスが過熱したり、過剰電流による発熱過多で、温度安定性が損なわれたりし、端子部分などの接続部で不用意な発熱が発生することがある。
【0036】
本発明では、複数の加熱手段への通電に際して、ウォームアップ動作、待機動作、印字動作など複数の動作モードごとに、各々の加熱手段の通電電力設定が設けられ、その通電電力設定に応じて、予め定めた複数の通電パターンの中から、各々の加熱手段の通電期間の重なりが少ない通電パターンを選択し、選択した通電パターンに基づいて通電制御する。
【0037】
こうすることによって、複数の加熱手段を個別に設定した通電パターンで駆動するよりも、電流の流れる通電期間の重なりが少ない通電パターンを、動作モードおよび印字条件などによって適宜選択して通電するので、通電期間の重なりが減少し、重なりによって過剰に流れる電流を抑制することができる。
【0038】
また本発明によれば、前記複数の加熱手段は、該複数の加熱手段の定格電力値の合計が、印字動作するときに供給することができる許容電力よりも大きい電力である。
【0039】
従来の技術では、複数の加熱手段に通電するときに、定着装置で許容される範囲内の電流値で通電する必要があり、各々の加熱手段の定格電力が大きい場合、同時に駆動すると、定着装置で許容される電流値を超えてしまうことがある。同時に駆動する加熱手段のそれぞれの定格電力が比較的小さく、その合計が、印字動作時に供給できる許容電力以下であれば、同時駆動しても、突入電流を考慮すれば、定常的に各加熱手段を駆動することができる。しかし、加熱手段のそれぞれの定格電力が大きいと、デューティ駆動する場合でも、同時に点灯するタイミングでは、大きな電流が流れる。同時に点灯する時間が短ければ、あまり影響が出ないが、同時に点灯する時間が長時間続くと、過剰に流れた電流によって、ハーネスの過熱が生じたり、端子部分などの接続部で不用意な発熱が発生したりすることがある。
【0040】
本発明では、同時に駆動する加熱手段の定格電力値の合計が、印字動作時に供給できる許容電力よりも大きい場合に、特に有効で、過剰電流の抑制によって、定常的に各加熱手段を駆動しても、異常な発熱に至らないように安全に制御することができる。
【0041】
また、従来の技術では、低熱容量化、あるいは加熱手段の大電力化などで、短時間でウォームアップさせたりする場合、プロセスなどの各動作順序の工夫、および処理を簡略化することによって、画像形成装置全体で必要な電力を抑えて、定着装置の許容電力を大きくし、加熱手段の定格電力を大きくすることができる。また、印字動作時は、各プロセスが動作するので、定着装置の許容電力は、ウォームアップ時に比べて低くなる。この場合、短時間ウォームアップのために用いられる大きな定格電力の加熱手段では、複数の加熱手段を同時駆動すると、過剰に電流が流れることになり、安全性への障害となってしまう。しかし、本発明では、デューティ制御によって駆動し、同時点灯での重なりを低減して、過剰電流を抑制することができる。
【0042】
また本発明によれば、前記温度制御手段は、位相制御による通電を併用して、前記加熱手段に通電する。
【0043】
従来の技術では、ウォームアップ時に比べて印字動作時に許容電力が小さくなることが多く、単純に駆動すると、過剰に電流が流れてしまう。また、定着部材の温度は、定着性能に影響が出るため、安定している必要があり、電流を抑制しすぎると、加熱能力が不足してしまう。本発明では、デューティ制御によって駆動して加熱手段の電力を調整するだけでなく、位相制御によって電力を調整しながら、デューティ制御でも電力を調整する方法を併用することで、電流を抑えながら、必要な加熱能力を確保することができるようになる。また、必要な熱を定着部材に供給することができるので、定着性能を損なうことなく、過剰電流による弊害も解消することができる。
【0044】
また本発明によれば、前記パターン記憶部は、前記複数の加熱手段のうち2つの加熱手段を選択し、選択した2つの加熱手段について、複数の通電パターンを記憶する。
【0045】
従来の技術では、複数の加熱手段を有した定着装置では、すべてを同時に点灯させることは、許容電力の制限上あまりなく、どちらかというと、複数の加熱手段のうち、2つないし3つ程度を駆動することが多い。特に、2つの加熱手段を用いる頻度は多く、定着部材を中央部と両端部の2つの領域に分けて加熱する際、2つの加熱手段を併用する必要があり、それぞれが比較的定格電力が大きいと、定着部材の全ての幅を加熱するには、2つの加熱手段を同時に点灯させなければならない。また、それぞれの加熱手段の定格電力が比較的大きいと、同時に点灯させるとき、過剰に電流が流れるという弊害がある。
【0046】
また、2つの加熱手段について、それぞれ通電期間と非通電期間とを設けて、デューティを設定することによって電力調整して点灯させても、通電期間が重なる期間が存在し、通電期間が重なる期間が長いと、過剰に電流が流れる期間が長くなり、弊害が出てしまう。
【0047】
本発明では、このように複数の加熱手段を用いて加熱する場合でも、そのうちの2つを選択して、本発明を適用することで、過剰電流による弊害を抑えることができる。
【0048】
また、2つの加熱手段を選択して重なりが少ない通電パターンを設定するが、選択した加熱手段の組み合わせによっては、複数の通電パターンの組である通電パターン群を設けておき、加熱手段の組み合わせに合わせて、通電パターンの組を適宜切り換えて用いるようにすると、より効果的である。
【0049】
また本発明によれば、前記パターン記憶部は、複数の通電パターンを1つの通電パターン群として、複数の通電パターン群を記憶し、前記パターン選択決定部は、異なる2つの加熱手段の組み合わせの中から、加熱手段の選択状態に対応して、前記通電パターン群から1つの通電パターン群を選択し、選択した通電パターン群から、通電しようとする加熱手段の選択状態に合った通電パターンを選択する。
【0050】
従来の技術では、複数の加熱手段を有した定着装置では、すべてを同時に点灯させることは、許容電力の制限上あまりなく、どちらかというと、複数の加熱手段のうち、2つないし3つ程度を駆動することが多い。特に、2つの加熱手段を用いる頻度は多く、定着部材を中央部と両端部の2つの領域に分けて加熱する際、2つの加熱手段を併用する必要があり、それぞれが比較的定格電力が大きいと、定着部材の全ての幅を加熱するには、2つの加熱手段を同時に点灯させなければならない。また、それぞれの加熱手段の定格電力が比較的大きいと、同時に点灯させるとき、過剰に電流が流れるという弊害がある。
【0051】
また、2つの加熱手段について、それぞれ通電期間と非通電期間とを設けて、デューティを設定することによって電力調整して点灯させても、通電期間が重なる期間が存在し、通電期間が重なる期間が長いと、過剰に電流が流れる期間が長くなり、弊害が出てしまう。
【0052】
従来の技術では、このように複数の加熱手段を用いて加熱する場合でも、そのうちの2つを選択して、本発明を適用することで、過剰電流による弊害を抑えることができる。
【0053】
また、2つの加熱手段を選択して重なりが少ない通電パターンを設定するが、選択した加熱手段の組み合わせによっては、複数の通電パターンの組である通電パターン群を設けておき、加熱手段の組み合わせに合わせて、通電パターンの組を適宜切り換えて用いるようにすると、より効果的である。
【0054】
また本発明によれば、前記パターン記憶部は、基準となる1つの加熱手段への通電の開始時刻から遅れて通電を開始するまでの遅延時間である駆動ディレイが、予め定める標準となる遅延時間に設定された通電パターンと、予め定める標準となる遅延時間とは異なる遅延時間に設定された通電パターンとを、前記基準となる1つの加熱手段を除く残余の加熱手段ごとに記憶する。
【0055】
従来の技術では、パターン記憶部に記憶される通電パターンとしては、複数種類考えられ、複数の加熱手段について、それぞれ通電期間と非通電期間とを設けてデューティで駆動するとき、1つの加熱手段を基準にして、一定の駆動ディレイを設けて、前記基準とする加熱手段の点灯開始から他の加熱手段を遅れて駆動することによって、同時に点灯する重なりを低減することができるが、各加熱手段に対して加熱能力を高めて駆動するときには、それぞれの通電期間が長くなり、点灯状態の重なりも増えて、電流が過剰に流れる状況が増加する。
【0056】
本発明では、一定の駆動ディレイで、他の加熱手段を駆動するのではなく、設定されたそれぞれのデューティの値に応じて、所定周期内で駆動が終了するように駆動ディレイを可変させる。こうすることで、点灯の重なりが最小化されて、同時に点灯する期間が低減されて、過剰電流を抑制することができる。条件によっては、重なりを完全になくすことができない場合も有り得るが、その重なる期間が極短時間であれば、影響のない範囲で、その重なりを許容することもできるし、他の駆動ディレイに設定された通電パターンを併用することによっても、さらに抑制することができる。
【0057】
また本発明によれば、前記パターン記憶部に予め設定する通電パターンは、前記複数の加熱手段それぞれのデューティの値から、デューティの点灯周期を変更して設定する。
基本的な効果は、請求項6と同じである。
【0058】
したがって、1つの加熱手段を基準にして、一定の駆動ディレイを設けて、前記基準とする加熱手段の点灯開始から他の加熱手段を遅れて駆動する駆動ディレイを設けても、通電の重なりが大きくなってしまう場合、デューティを設定するときの所定周期である点灯周期を可変にして、通電の重なりを低減して、過剰電流を抑制することができる。
【0059】
この際、もともと設定したデューティの場合に得られる時間平均した平均電力に等しくなるように、設定されていたデューティを補正しつつ、点灯周期を可変にして、最終的に、前記平均電力と同等になるようにする。
【0060】
すなわち、通電の重なりが比較的小さい場合は、点灯周期を少し長くして、前記平均電力が同等になるようにし、比較的大きい場合は、点灯周期を長くしつつ、デューティの値も可変して、前記平均電力を同等になるようにする。
【0061】
これは、電力が比較的小さい場合は、少し点灯周期を長くするだけで、平均電力を同等にしつつ通電の重なりを低減することができるが、比較的大きい場合は、点灯周期を長くするだけでは、必要な加熱能力を維持しながら、通電の重なりを低減するには不十分であることが多く、点灯周期の可変とデューティの可変とを併用して対応することで、同時に点灯する期間が低減されて、過剰電流を抑制することができる。
【0062】
条件によっては、重なりを完全になくすことができない場合も有り得るが、その重なる期間が極短時間であれば、影響のない範囲で、その重なりを許容することもできるし、他の通電パターンの設定を併用することでも、さらに抑制することができる。
【0063】
また本発明によれば、前記パターン記憶部に予め設定する通電パターンは、前記複数の加熱手段それぞれの通電量から、位相制御における位相角を変更して設定する。
【0064】
したがって、デューティ、点灯周期、または駆動ディレイを変更して通電の重なる期間を低減する方法以外に、位相制御によって電力を抑制する方法を併用する。すなわち、通電期間が重なっている期間が少なくなると、過剰電流も減るので、その重なりが少なくなるように、位相制御の位相角を変更して、各々の加熱手段による通電が重なる期間を少なくして、実質的に過剰電流を抑制することによっても、デューティ、点灯周期、または駆動ディレイを変更した場合と同様の効果が得られる。
【0065】
当初から位相制御を併用していない場合においても、通常は位相制御を用いずに駆動するが、通電の重なりが大きくなると、位相制御の位相角を変更して、重なり具合を小さくするように駆動する。また、当初から位相制御を併用していても、現在駆動しているときの位相角の値から、通電の重なり期間が少なくなるように、位相角を変更して駆動することによって、重なりによる過剰電流を抑制することができる。
【0066】
この場合も、時間平均の平均電力が同等になるように、位相角の変更を行うほうがよい。ただし、位相角の設定次第では、位相制御による無効電力が増加するので、無効電力を考慮しながら、デューティ、点灯周期、または駆動ディレイの変更も併用することによって、より効果的に過剰電流を抑制することができる。
【0067】
また本発明によれば、前記パターン記憶部に予め設定する通電パターンは、前記複数の加熱手段それぞれのデューティの値から、それぞれのデューティの値を補正して設定し、前記温度制御手段は、補正後のデューティの値で前記複数の加熱手段を駆動する。
【0068】
したがって、デューティの値のみで、通電の重なりを少なくする通電パターンを用いる方法は、比較的簡便な方法であり、比較的簡便な方法によって重なりを抑制することができる。
【0069】
また本発明によれば、前記温度制御手段は、複数の加熱手段への通電を制御するとき、通電開始から徐々に位相角を大きくして通電するスローアップ制御と、通電終了までに徐々に位相角を小さくして通電するスローダウン制御とを行い、前記記憶部に予め設定する通電パターンは、前記複数の加熱手段それぞれのデューティの値から、スローアップ制御およびスローダウン制御を行うときの位相角を変更して設定する。
【0070】
したがって、通常、電力の大きな加熱手段を点灯したり、消灯したりするときに、加熱手段の特性および電源の能力などによって、電圧変動が生じて、照明器具などに点灯障害を与えたり、通信機器への通信障害を与えたりする(以下これらを総称して「フリッカ」という)。このとき、急激な電圧変動が生じないように、点灯開始から徐々に印加電圧を大きくするスローアップ制御、および消灯までに徐々に印加電圧を小さくするスローダウン制御を行う。そのとき、前述した位相制御の位相角を徐々に変更して、印加電圧を変更するようにしており、スローアップ制御およびスローダウン制御は、フリッカ対策の有効な手段である。
【0071】
ここでは、このフリッカ対策で用いているスローアップ制御およびスローダウン制御時の位相角変更の手法を、通電の重なり抑制に用い、各加熱手段のデューティの値に応じて、スローアップ制御およびスローダウン制御時の位相角を変更して、重なりを低減する。
【0072】
スローアップ制御およびスローダウン制御中の重なりが、多少存在しても、電圧の増加中、あるいは減少中であるので、一部に重なりが存在しても、許容できるレベルにすることができる。
【0073】
つまり、一つの加熱手段のスローダウン制御中に、他の加熱手段のスローアップ制御を行えば、単純にそれぞれを消灯および点灯を行う場合に比べて、重なりを小さくすることができ、過剰電流を低減することができる。
【0074】
条件によっては、重なりを完全になくすことができない場合も有り得るが、その重なる期間が極短時間であれば、影響のない範囲で、その重なりを許容することもできるし、他の通電パターンの設定を併用することによって、さらに抑制することができる。
【0075】
また本発明によれば、前記温度制御手段は、複数の加熱手段への通電を制御するとき、通電期間に交流電源周波数に同期して、半波長単位あるいは全波長単位で間引く制御を行い、前記記憶部に予め設定する通電パターンは、前記複数の加熱手段それぞれのデューティの値から、前記半波長単位あるいは全波長単位で間引く時の間引きパターンを変更して設定する。
【0076】
したがって、通電時の電力制御で、半波あるいは全波長単位で交流波形を間引いて加熱手段に通電する方法を用いている場合、間引き方、または間引きパターンを変更して、各々の間引きパターンの重なりが少なくなるようにすることでも、過剰電流を抑制することが可能である。
【0077】
この場合、間引きパターンの重なりを完全になくすことができなくても、その重なる位置、すなわち時間的な位置が、離れていれば、時間的に平均化されて、その重なりが目立たなくなって、過剰電流が流れても、極短時間で、影響のない範囲に調整することも可能である。すなわち、複数の半波長あるいは全波長で重なりが存在しても、各々の加熱手段の間引きパターンを変更して、重なる半波長または全波長が連続しないように、間を空けて間引くと、時間平均で見ると影響がない程度に抑制することができる。
【0078】
条件によっては、重なりを完全になくすことができない場合も有り得るが、その重なる期間が極短時間であれば、影響のない範囲で、その重なりを許容することもできるし、他の通電パターンの設定を併用することによって、さらに抑制することができる。
【0079】
また本発明によれば、前記記憶部に予め設定する通電パターンは、前記複数の加熱手段それぞれのデューティの値から、前記複数の加熱手段に供給する電圧値の変更状態を設定する。
【0080】
したがって、各加熱手段の電力調整において、供給する交流の電圧値を定格電圧から低くして、加熱手段に印加する電圧の交流電圧変更手段の電圧値の変更状態、つまり電圧設定を変更することによっても、通電の重なりを小さくすることができ、過剰電流を抑制することができる。
【0081】
条件によっては、通電の重なりを完全になくすことができない場合も有り得るが、その重なる期間が極短時間であれば、影響のない範囲で、その重なりを許容することもできるし、他の通電パターンの設定を併用することによっても、さらに抑制することができる。
【0082】
また本発明によれば、前記記憶部に予め設定する通電パターンは、前記通電パターンの設定を複数組み合わせて設定する。
【0083】
したがって、前記通電パターンを併用して用いることによって、単独の通電パターンを用いる場合に比べて、より効果的に通電の重なりを低減することができ、それによる過剰電流を抑制することができるようになる。
【0084】
また本発明によれば、前記複数の加熱手段のうち少なくとも1つは、抵抗発熱体であるので、従来から用いられているハロゲンヒータよりも、低熱容量で加熱効率のよい加熱手段とすることができる。
【0085】
また本発明によれば、前記抵抗発熱体は、複数の分岐部に分岐されており、前記パターン記憶部に予め設定する通電パターンは、前記複数の加熱手段それぞれのデューティの値から、前記温度制御手段が前記複数に分岐した分岐部への通電状態を設定する。
【0086】
したがって、抵抗発熱体が、記録材のサイズに合わせて、途中で分岐しており、それぞれの発熱量もサイズに合わせて単独で供給することができるように、比較的大きいもので、このような抵抗発熱体を用いる際には、本発明を用いることで、より効果的に通電の重なりを低減することができ、それによる過剰電流を抑制することができる。
【0087】
また本発明によれば、前記定着部材は、無端状のベルト部材である。
したがって、短時間ウォームアップを行い、熱容量を小さくした定着装置では、本発明で記載したような大電力の複数の加熱手段による加熱を行うことで、短時間で印字可能な状態にすることができ、印字しないときは、加熱しないで待機させることができるので、省エネルギー性能を高めることができる。さらに、使用したいときに直ぐに印字可能にすることができ、ユーザの利便性を損なうことなく、省エネルギー性能を付与することができる。この無端状ベルトを単独で用いて、ニップ部に加熱手段を配置して直接ニップ部を加熱する方法と、無端状ベルトを、加熱手段、バックアップ部材、および張力を付与する張架部材にて張架し、加熱手段、バックアップ部材、および張架部材の外周に巻回して加熱する方法のいずれの構成にも用いることができる。また、さらには、加圧部材も無端状ベルトとした構成においても有効である。
【0088】
また本発明によれば、前記定着装置を備える。
したがって、前記定着装置、すなわち過剰電流が少ないことによって、安全性が高く、かつ省エネルギー性能の高い定着装置を用いた画像形成装置は、画像形成装置で最も電力消費の大きな定着装置で省エネルギー性能が高まり、画像形成装置全体で省エネルギーによるエネルギー効率の向上と、過剰電流によるハーネスなどの過熱がなく、安全性の高い画像形成装置にすることができる。また、過剰に加熱されることがなくなるので、画像不良のない無駄なエネルギーを発生させない画像形成装置とすることができる。さらに、画像不良による記録紙の廃棄、および不要な印字動作によるエネルギー消費を低減することができるので、省エネルギー性能をさらに向上することができる。
【0089】
また本発明によれば、回転可能に設けられ、現像剤を定着する定着部材と、回転可能に設けられ、定着部材とともに記録材に加圧する加圧部材と、通電によって定着部材を加熱する複数の加熱手段と、予め定める周期内で通電期間と非通電期間とを切り換えて複数の加熱手段への通電を制御するための複数の通電パターンを記憶するパターン記憶部とを含み、定着部材と加圧部材との間を構成するニップ部に挿入される記録材を、定着部材と加圧部材とで挟持しながら搬送することによって、記録材上の未定着画像を定着させる定着装置が、定着装置の温度制御方法を実行するにあたって、
パターン選択決定ステップでは、各加熱手段の通電電力設定に応じて、パターン記憶部に記憶される複数の通電パターンの中から、通電期間の重なりが小さくなる通電パターンを選択する。そして、通電制御ステップでは、パターン選択決定ステップで選択された通電パターンに基づいて複数の加熱手段への通電を制御する。
【0090】
従来の技術では本定着装置の温度制御方法を用いることによって、定着部材と加圧部材との間のニップ部に挿入される記録材を、定着部材と加圧部材とで挟持しながら搬送することによって、記録材上の未定着画像を熱と圧力によって定着させるにあたって、複数の加熱手段に通電することによって発生した熱を、定着部材および加圧部材に供給する際、必要な電力を加熱手段に供給するが、複数の加熱手段が同時に通電された場合に、許容電流値を超えてしまうことがある。
【0091】
特に、ウォームアップ時間を短縮する為に、定着装置の各部材を低熱容量化したり、消費電力の大きな加熱手段で短時間に加熱したり、記録材の高速な搬送に熱供給能力を追従させるような場合では、複数設けた消費電力の大きな加熱手段を同時点灯させると、許容電流値を超える可能性が高く、この過剰電流によってハーネスが過熱したり、過剰電流による発熱過多で、温度安定性が損なわれたりし、端子部分などの接続部で不用意な発熱が発生することがある。
【0092】
本発明では、複数の加熱手段への通電に際して、ウォームアップ動作、待機動作、印字動作など複数の動作モードごとに、各々の加熱手段の通電電力設定が設けられ、その通電電力設定に応じて、予め定めた複数の通電パターンの中から、各々の加熱手段の通電期間の重なりが少ない通電パターンを選択し、選択した通電パターンに基づいて通電制御する。
【0093】
こうすることによって、複数の加熱手段を個別に設定した通電パターンで駆動するよりも、電流の流れる通電期間の重なりが少ない通電パターンを、動作モードおよび印字条件などによって適宜選択して通電するので、通電期間の重なりが減少し、重なりによって過剰に流れる電流を抑制することができる。
【0094】
また本発明によれば、回転可能に設けられ、現像剤を定着する定着部材と、回転可能に設けられ、定着部材とともに記録材に加圧する加圧部材と、通電によって定着部材を加熱する複数の加熱手段と、予め定める周期内で通電期間と非通電期間とを切り換えて複数の加熱手段への通電を制御するための複数の通電パターンを記憶するパターン記憶部と、コンピュータとを含み、定着部材と加圧部材との間を構成するニップ部に挿入される記録材を、定着部材と加圧部材とで挟持しながら搬送することによって、記録材上の未定着画像を定着させる定着装置に含まれるコンピュータを、プログラムによって、各加熱手段の通電電力設定に応じて、パターン記憶部に記憶される複数の通電パターンの中から、通電期間の重なりが小さくなる通電パターンを選択するパターン選択決定部と、パターン選択決定部によって選択された通電パターンに基づいて複数の加熱手段への通電を制御する駆動部とを含む温度制御手段として機能させることができる。
【0095】
したがって、温度制御手段を、本プログラムを用いて動作させることによって、過剰電流を少なくすることができ、安全性が高く、かつ省エネルギー性能の高い良好な定着温度制御を実現できる。
【0096】
また本発明によれば、前記プログラムを記録したコンピュータ読取り可能な記録媒体として提供することができる。したがって、温度制御手段を本記録媒体に記録させているプログラムを用いて動作させることによって、過剰電流を少なくすることができ、安全性が高く、かつ省エネルギー性能の高い良好な定着温度制御を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の一実施形態である画像形成装置1の構成を示す断面図である。
【図2】定着ユニット30の構成を示す断面図である。
【図3】加熱部材32を拡大した断面図である。
【図4】抵抗発熱層32aを内周面側から見た平面図である。
【図5】制御部40の構成を示すブロック図である。
【図6】定着ユニット30に備えられる温度制御部42が実行する第1の温度制御処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図7】第1出力設定テーブル81の一例を示す図である。
【図8】電力制御部56による通電量の制御波形の例を示す図である。
【図9】通電パターンの一例を示す図である。
【図10A】パターン記憶部58に記憶される駆動ディレイ増減幅、駆動ディレイの値および点灯周期の増減幅の例を示す図である。
【図10B】パターン記憶部58に記憶される駆動ディレイ増減幅、駆動ディレイの値および点灯周期の増減幅の例を示す図である。
【図11】抵抗発熱部32g1〜32g3への通電パターンの他の例を示す図である。
【図12】定着ユニットの他の例である定着ユニット30aの構成を示す断面図である。
【図13】定着ユニットの他の例である定着ユニット30bの構成を示す断面図である。
【図14】定着ユニット30bに備えられる温度制御部42が実行する第2の温度制御処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図15】出力規定テーブルおよびレベル変更値テーブルの例を示す図である。
【図16】位相制御法での位相角を変更することによって通電期間の重なりを小さくした通電パターンの一例を示す図である。
【図17】駆動ディレイを設けても通電期間の重なりのある通電パターンの例を示す図である。
【図18】位相制御法での位相角を変更することによって通電期間の重なりを小さくした通電パターンの他の例を示す図である。
【図19】印加電圧を徐々に変化させる通電パターンの一例を示す図である。
【図20】定着ユニットの他の例である定着ユニット30cの構成を示す断面図である。
【0098】
【図21】定着ユニットの他の例である定着ユニット30dの構成を示す断面図である。
【図22】定着ユニットの他の例である定着ユニット30eの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0099】
図1は、本発明の一実施形態である画像形成装置1の構成を示す断面図である。画像形成装置1は、たとえばカラープリンタによって構成され、以下、カラープリンタによって構成される画像形成装置1について説明する。しかしながら、画像形成装置1は、カラープリンタに限定されるものではなく、電子写真方式の画像形成装置であればよく、たとえばカラー複合機、カラー複写機、モノクロ複合機、モノクロ複写機、あるいはモノクロプリンタなどであってもよい。本発明に係る定着装置の温度制御方法は、画像形成装置1で実行される。
【0100】
画像形成装置1は、4組の可視画像形成ユニット100a〜100d、露光ユニット15、中間転写ベルトユニット10、二次転写ユニット14、定着装置30、内部給紙ユニット16、手差し給紙ユニット17、給紙ローラ19および図示しない主制御部を含んで構成される。
【0101】
図示しない主制御部は、たとえば図示しない中央処理装置(以下「CPU」という)および図示しない記憶装置を含み、CPUが記憶装置に記憶されるプログラムを実行することによって、4組の可視画像形成ユニット100a〜100d、露光ユニット15、中間転写ベルトユニット10、二次転写ユニット14、定着装置30、内部給紙ユニット16および手差し給紙ユニット17などの各構成要素を制御する。
【0102】
画像形成装置1において扱われる画像データは、ブラック(略称;K)、シアン(略称;C)、マゼンタ(略称;M)、イエロー(略称;Y)の4色を用いたカラー画像に対応したデータである。画像形成装置1は、4色を用いたカラー画像を処理するために、4色に対応する4組の可視画像形成ユニット100a〜100dを有し、これら4組の可視画像形成ユニット100a〜100dによってそれぞれ形成される4色のトナー画像が中間転写ベルトユニット10に備えられる中間転写ベルト11上で重ね合わされるようになっている。
【0103】
可視画像形成ユニット100aは、トナー画像担持体である回転可能に備えられた感光体101aの周囲に、帯電ユニット103a、現像ユニット102a、およびクリーニングユニット104aが感光体101aの回転方向に沿ってこの順で配置された構成である。
【0104】
帯電ユニット103aは、感光体101aの表面を、所定の電位に均一に帯電させるためのものである。本実施形態では、帯電ユニット103aとして、オゾンを極力発生させることなく、感光体101aの表面を一様に帯電させるために、帯電ローラ方式、具体的には、接触帯電方式を採用している。帯電ユニット103aの構成は、帯電ローラ方式に限定されるものではなく、たとえば、コロナ放電方式などの非接触型の帯電器を用いてもよく、あるいはブラシ帯電などの接触型の帯電器を用いてもよい。
【0105】
現像ユニット102aは、感光体101a上に形成された静電潜像を現像剤によって顕像化する現像処理を行う。現像剤(以下「トナー」ともいう)は、たとえば、非磁性トナーである非磁性一成分現像剤、非磁性トナーとキャリアとからなる非磁性二成分現像剤、あるいは磁性トナーである磁性現像剤などを用いることができる。
【0106】
クリーニングユニット104aは、トナー画像を中間転写ベルト11に転写した後に感光体101a表面に残留したトナーを除去し、かつ回収するためのものである。
【0107】
可視画像形成ユニット100b〜100dは、現像処理に用いるトナーの色が異なる以外は可視画像形成ユニット100aと実質的に同様の構成である。すなわち、各可視画像形成ユニット100b〜100dの各現像ユニット102a〜102dには、それぞれブラック(B),イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C)のトナーが収容されている。
【0108】
露光ユニット15は、光学系ユニットであり、帯電ユニット103a〜103dによって帯電された感光体101a〜101dを画像データに応じて露光することによって、各感光体101a〜101dの表面に画像データに応じた静電潜像を形成する。露光ユニット15には、レーザ照射部151および反射ミラー152などを備えたレーザスキャニングユニット(略称:LSU)が用いられている。露光ユニット15は、たとえば、発光素子をアレイ状に並べた構成であり、たとえばEL(Electro-Luminescence)あるいはLED(Light Emitting Diode)を用いた書込みヘッドなどによって構成されてもよい。
【0109】
中間転写ベルトユニット10は、中間転写ベルト11、テンションローラである中間転写ベルト駆動ローラ11a、テンションローラである中間転写ベルト従動ローラ11b、中間転写ベルトクリーニングユニット12、および中間転写ローラ13a〜13dを備えている。中間転写ベルト11は、厚さ100μm〜150μm程度のフィルムからなる無端状のベルトであり、中間転写ローラ13a〜13d、中間転写ベルト駆動ローラ11a、および中間転写ベルト従動ローラ11bに張架され、図1に示した矢印B方向に回転駆動される。
【0110】
感光体101a〜101d上に形成された各色のトナー画像は、中間転写ベルト11に順次重ね合うように転写され、中間転写ベルト11上にカラーのトナー画像、つまり多色トナー画像が形成されるようになっている。
【0111】
中間転写ローラ13a〜13dは、感光体101a〜101dにおける現像ユニット102a〜102dとの対向部と、クリーニングユニット104a〜104dとの対向部との間の位置において、中間転写ベルト11を介して、感光体101a〜101dに対向するように配置されている。そして、これら中間転写ローラ113a〜113dにトナーの帯電極性、つまりマイナス極性とは、逆極性、つまりプラス極性の高電圧を印加することによって感光体101a〜101d上のトナー画像が中間転写ベルト11上に転写されるようになっている。
【0112】
中間転写ベルト11上に形成されたトナー画像は、中間転写ベルト駆動ローラ11aと二次転写ユニット14との対向部に搬送され、この対向部に搬送される記録用紙などの記録材上に転写されるようになっている。中間転写ベルトクリーニングユニット12は、中間転写ベルト11に当接し、記録材上へのトナー画像の転写後に中間転写ベルト11上に残留したトナーを除去し、かつ回収する。
【0113】
本発明の一実施形態である定着装置(以下「定着ユニット」ともいう)30は、ベルト懸架部材である定着ローラ31と、ベルト懸架部材である加熱部材32と、定着ローラ31および加熱部材32に懸架された定着部材である定着ベルト33と、定着ローラ31に対して定着ベルト33を介して所定の荷重で圧接する加圧部材である加圧ローラ34とを備えている。
【0114】
定着装置30は、二次転写ユニット14によってトナー画像が転写された記録材を、加圧ローラ34と加熱部材32によって加熱された定着ベルト33との圧接部(以下「定着ニップ部N」ともいう)に、所定の定着速度および所定の用紙間隔で給紙し、この圧接部を通過させて、熱と圧力とによって、トナー画像を記録材に定着させる。定着速度とは、記録材の搬送速度、いわゆるプロセス速度のことである。本実施形態では、定着速度を225mm/secとしている。また、記録材同士の搬送間隔は、A4サイズの記録用紙を横送りで、複写速度、つまり1分あたりのコピー枚数が51枚/分となるように設定している。
【0115】
記録材における未定着トナー画像(以下、「未定着画像」ともいう)が形成された面は、定着ベルト33に当接し、記録材における未定着トナー画像が形成された面とは反対側の面は、加圧ローラ34に当接する。定着装置30の詳細については後述する。
【0116】
内部給紙ユニット16は、画像形成に使用する記録材を蓄積しておくためのものである。手差し給紙ユニット17は、画像形成装置1の側壁に折り畳み自在に設けられ、手差しによる記録材の給紙を行うためのものである。排紙トレイ18は、画像形成済みの記録材を載置するためのトレイである。
【0117】
画像形成装置1には、内部給紙ユニット16からピックアップローラ16aによって給紙される記録材、および手差し給紙ユニット17からピックアップローラ17aによって給紙される記録材を、二次転写ユニット14あるいは定着装置30を経由させて、排紙トレイ18に送るための用紙搬送路が設けられている。用紙搬送路には、記録材を搬送するためのローラ部材rが多数配置されている。
【0118】
給紙ローラ19は、内部給紙ユニット16あるいは手差し給紙ユニット17から搬送された記録材を所定の搬送タイミングで二次転写ユニット14へ搬送する。具体的には、給紙ローラ19は、記録材を搬送しないときは、一時回転を停止している。内部給紙ユニット16あるいは手差し給紙ユニット17から搬送された記録材は、給紙ローラ19へ突き当たって停止する。給紙ローラ19は、所定の搬送タイミングになったときに、記録材を搬送する時間分だけ回転して、記録材を二次転写ユニット14へ搬送する。搬送された記録材は、二次転写ユニット14で、転写ベルト11に形成されたトナー像が、この記録材に転写されて、未定着のトナー像を記録材上に形成する。
【0119】
図2は、定着ユニット30の構成を示す断面図である。定着装置30は、定着ローラ31と、加熱部材32と、定着ローラ31および加熱部材32に懸架された定着ベルト33と、定着ローラ31に対して定着ベルト33を介して所定の荷重で圧接する加圧ローラ34とを備えている。所定の荷重は、たとえば216ニュートン(N)である。定着ニップ部Nのニップ幅、すなわち、定着ベルト33と加圧ローラ34とが当接する部分の記録材搬送方向の幅は、たとえば7mmである。
【0120】
定着ベルト33に対向する位置には、定着ベルト33の温度を検知するためのサーミスタ35aおよびサーミスタ35bが備えられており、加圧ローラ34に対向する位置には、加圧ローラ34の温度を検知するためのサーミスタ35cが備えられている。サーミスタ35aは、温度検知部および中央温度検知部であり、サーミスタ35bは、温度検知部および端部温度検知部であり、サーミスタ35cは、温度検知部および加圧部材温度検知部である。
【0121】
サーミスタ35aは、定着ベルト33が加熱部材32に巻き付けられている領域における定着ベルト33の幅方向の略中心、具体的には幅方向の中心から25mmずれた対向する位置に設けられている。サーミスタ35bは、定着ベルト33が加熱部材32に巻き付けられている領域における定着ベルト33の幅方向の端部近傍、具体的には幅方向の中心から150mmずれた位置の近傍に対向する位置に設けられている。また、サーミスタ35cは加圧ローラ34における軸方向の中心から軸方向に沿って150mmずれた位置において加圧ローラ34に対向するように配置されている。定着ベルトの幅は、たとえば320mmである。定着ベルトの幅は、定着装置30の構成によって適宜調節可能であるが、最低限度、印字可能な記録材の幅以上であればよい。
【0122】
加圧ローラ34の内部には、加圧ローラ34を加熱するためのヒータランプ36が備えられている。ヒータランプ36は、ハロゲンランプおよび加圧部材加熱部である。サーミスタ35a〜35cの温度検知結果は、図5で後述する温度制御部42に伝達され、温度制御部42は、各サーミスタ35a〜35cの温度検知結果に基づいて、定着ベルト33および加圧ローラ34の表面温度をそれぞれ所定の温度に近づけるように加熱部材32およびヒータランプ36への通電を制御するようになっている。サーミスタ35aは、たとえば非接触式のサーミスタであり、サーミスタ35b,35cは、接触式のサーミスタである。加熱部材32およびヒータランプ36は、加熱部材である。
【0123】
定着ローラ31は、定着ベルト33を介して加圧ローラ34に圧接することによって定着ニップ部Nを形成する。定着ローラ31は、図示しないモータ、ギア、アクチュエータおよび通電素子などからなる駆動手段によって、図2に示した矢印B1方向に回転駆動される。そして、定着ローラ31が回転駆動されると、定着ローラ31に懸架された定着ベルト33が定着ローラ31に従動回転し、さらに定着ベルト33に圧接している加圧ローラ34が定着ベルト33に従動回転するようになっている。本実施形態では、定着ローラ31を回転駆動させ、定着ベルト33および加圧ローラ34をそれに従動回転させる構成としているが、この構成に限定されるものではなく、たとえば、加圧ローラ34を回転駆動させてもよく、あるいは定着ローラ31および加圧ローラ34の両方を回転駆動させてもよい。あるいはまた、定着ベルト33に当接する駆動ローラを設け、この駆動ローラを回転駆動させるようにしてもよい。
【0124】
定着ローラ31は、円柱状の芯金31aの周囲に弾性層31bを形成した2層構造である。芯金31aの材質は、特に限定されるものではないが、たとえば、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、チタンもしくはマグネシウムなどの金属、あるいはそれらの金属の合金である。弾性層31bの材質は、適度な耐熱性および弾力性を有する材質であれば特に限定されるものではないが、たとえば、シリコンゴム、フッ素ゴムなどのゴム材料である。芯金31aは、中実の円柱状のものに限定されるものではなく、たとえば中空の円筒状のものであってもよい。
【0125】
本実施形態では、定着ローラ31は、たとえば、直径18mmの円柱状のステンレス鋼からなる芯金31aの周囲に厚さ5mmのシリコンスポンジゴムからなる弾性層31bを形成した、直径28mm、長さ320mmの円柱状のローラ部材である。また、加圧ローラ34は、内側から順に円筒状の芯金34a、弾性層34b、離型層34cが形成された3層構造である。
【0126】
芯金34aの材質は、適度な強度および熱伝導性を有するものであればよく、特に限定されるものではないが、たとえば、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、チタンもしくはマグネシウムなどの金属あるいはそれらの金属の合金である。弾性層34bの材質は、適度な耐熱性および弾力性を有する材質であれば特に限定されるものではないが、たとえば、シリコンゴムもしくはフッ素ゴムなどのゴム材料である。離型層34cの材質は、耐熱性および離型性に優れた材質であればよく、たとえば、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体(以下「PFA」という)、あるいはポリテトラフルオロエチレン(以下「PTFE」という)などのフッ素樹脂が適している。
【0127】
本実施形態では、加圧ローラ34は、たとえば外径24mm、肉厚2mmの鉄合金(以下「STKM」という)からなる芯金34aの周囲に厚さ3mmのシリコンソリッドゴムからなる弾性層34bを形成し、さらにその周囲に厚さ30μmのPFAチューブからなる離型層34cを装着した外径30mmの円筒状のローラ部材である。
【0128】
加圧ローラ34は、内部に、加圧ローラ34を内面から加熱するためのヒータランプ36が配置される。ヒータランプ36は、温度制御部42によって制御される。具体的には、温度制御部42は、後述する電源回路からヒータランプ36への通電を制御、つまり電源回路からヒータランプ36に供給される電力を制御する。ヒータランプ36は、電源回路から供給される電力に応じて発光、具体的には、赤外線を放射して発光する。
【0129】
電源回路は、高電圧かつ大電流に耐えうる駆動素子を備えており、温度制御部42からの制御信号に応じてそれらの駆動素子を動作させることによって供給電力を制御するようになっている。加圧ローラ34の内周面は、ヒータランプ36からの赤外線を吸収して加熱され、加圧ローラ34全体が加熱される。本実施形態では、定格電力300Wのヒータランプ36を用いている。ヒータランプ36が放射する赤外線を吸収しやすくするために、加圧ローラ34の内面に赤外線の波長域に良好な吸収特性を有する耐熱黒色塗料を塗布してもよい。
【0130】
定着ベルト33は、加熱部材32が発生する熱によって所定の温度に加熱され、定着ニップ部Nを通過する未定着トナー画像が形成された記録材Pを加熱するためのものであり、定着ローラ31および加熱部材32に回転可能に張架されている。定着ベルト33は、定着ローラ31が回転駆動されると、定着ローラ31に従動回転するようになっている。
【0131】
本実施形態では、定着ベルト33は、中空円筒状の図示しない基材の表面に、図示しない弾性層を形成し、さらにその表面に図示しない離型層を形成した3層構造の無端状のベルト部材である。基材の材質は、特に限定されるものではなく、たとえば、ポリイミド、ポリアミドもしくはアラミド樹脂などの耐熱樹脂、あるいはステンレスもしくはニッケルなどの圧延もしくは電鋳によって製作された金属材料である。弾性層の材質は、耐熱性および弾性に優れた材質であれば特に限定されるものではないが、たとえば、シリコンゴムもしくはフッ素ゴムなどのエラストマー材料である。離型層の材質は、耐熱性および離型性に優れた材質であれば特に限定されるものではないが、たとえば、PFAもしくはPTFEなどのフッ素樹脂である。離型層は、PFAもしくはPTFEなどのフッ素樹脂からなるチューブ部材を弾性層の外周面に装着したものであってもよく、弾性層の外周面をPFAもしくはPTFEなどのフッ素樹脂でコーティング、つまり被覆したものであってもよい。基材としてポリイミドなどの耐熱樹脂を用いる場合、加熱部材32との摩擦抵抗を低減するために、耐熱樹脂にフッ素樹脂を内添させてもよい。
【0132】
本実施形態では、定着ベルト33は、厚さ70μmのポリイミドからなる基材の外周面に、厚さ150μmのシリコンゴムからなる弾性層を形成し、さらにこの弾性層の外周面に厚さ30μmのPFAチューブからなる離型層を設けた内径50mm、長さ315mmの無端状のベルト部材を用いたものである。内径は、内周長を円周率πで除算した値である。定着ベルト33の定着ローラ31に対する当接角度θは、たとえば185°である。当接角度θは、定着ローラ31の軸方向に垂直な断面において、定着ベルト33の回転によって、定着ベルト33が定着ローラ31に当接し始める点と定着ローラ31の軸心とを結ぶ直線と、定着ベルト33が定着ローラ31から離れる点と定着ローラ31の軸心とを結ぶ直線とのなす角度である。
【0133】
図3は、加熱部材32を拡大した断面図である。加熱部材32は、定着ローラ31とともに定着ベルト33を懸架し、かつ定着ベルト33を加熱する部材である。加熱部材32は、定着ベルト33と当接する領域に、内側から順に抵抗発熱層32aと、絶縁層32bと、基材層32cと、加熱部材32と定着ベルト33との間の摩擦抵抗を低減するためのコート層32dとが形成された4層構造からなる面状発熱体である。
【0134】
基材層32cは、外径28mm、厚さ1mmのアルミニウム合金製パイプの一部を軸方向に沿って切除したものである。基材層32cの外周面に、厚さ20μmの四フッ化エチレン樹脂であるPTFEからなるコート層32dが形成され、基材層32cの内周面に、厚さ30μmのポリイミドからなる絶縁層32bが形成される。絶縁層32bの内周面には、抵抗発熱層32aが設けられる。定着ベルト33と加熱部材32との接触幅は、たとえば44mmである。接触幅は、定着ベルト33の回転方向の幅であり、加熱ニップ幅ともいう。
【0135】
加熱部材32の軸方向両端部における定着ベルト33と当接しない領域は、直径20mmのアルミニウム合金製パイプからなる支持部が取り付けられており、この支持部が定着装置30のサイドフレームに固定されている。すなわち、定着ベルト33が回転しても加熱部材32は回転せず、定着ベルト33は、加熱部材32の表面を摺動するようになっている。
【0136】
図4は、抵抗発熱層32aを内周面側から見た平面図である。図4(a)は抵抗発熱層32aの一例である抵抗発熱層32a1を内周面側から見た平面図であり、図4(b)は抵抗発熱層32aの他の例である抵抗発熱層32a2を内周面側から見た平面図であり、図4(c)は抵抗発熱層32aのさらに他の例である抵抗発熱層32a3を内周面側から見た平面図である。加熱部材32は、図2に示したように円弧状に湾曲しているが、説明の便宜上、図4では加熱部材32を平板状に引き伸ばした形態で抵抗発熱層32a1〜32a3を描いている。
【0137】
図4(a)に示した抵抗発熱層32a1は、内周面に、それぞれ電気抵抗線からなる3つの抵抗発熱部32g1,32g2,32g3が形成されている。
【0138】
抵抗発熱部32g1は、加熱部材32の軸線方向の中央部の領域を加熱し、抵抗発熱部32g2,32g3は、それぞれ加熱部材32の軸線方向の両端部の領域を加熱する。
【0139】
抵抗発熱部32g2,32g3は、図示しないハーネスで並列接続されており、温度制御部42は、中央部の領域を加熱する抵抗発熱部32g1と、両端部の領域を加熱する抵抗発熱部32g2,32g3との2つのグループに分けて制御する。本実施形態では、両端部の2つの領域は同時に加熱するようにしているが、個別に加熱するようにしてもよいし、パターンの分割についても通紙の基準あるいは記録材のサイズを考慮して、適宜変更することが可能である。
【0140】
3つの抵抗発熱部32g1〜32g3は、抵抗発熱層32a1の軸方向に沿って、それぞれ延伸するとともに、各々の領域の軸方向の端部で折り返されることによって、面状に配置される面状発熱体を構成している。抵抗発熱部32g1〜32g3は、加熱手段である。加熱手段は、たとえば加熱部材32の内部、表面あるいは裏面などに形成、あるいは配置されている通電により発熱する発熱体であり、1つの加熱部材に、複数の加熱手段が形成される場合もある。
【0141】
抵抗発熱部32g1の一端は、給電部32e1に接続され、他端は給電部32f1に接続され、抵抗発熱部32g2の一端は、給電部32e2に接続され、他端は給電部32f2に接続され、抵抗発熱部32g3の一端は、給電部32e3に接続され、他端は給電部32f3に接続されている。
【0142】
温度制御部42は、給電部32e1と給電部32f1との間、給電部32e2と給電部32f2との間、および給電部32e3と給電部32f3との間のそれぞれに、電源回路からの交流電圧を印加することによって、抵抗発熱部32g1〜32g3のそれぞれを発熱させる。たとえば、給電部32e1と給電部32f1との間、給電部32e2と給電部32f2との間、および給電部32e3と給電部32f3との間に、100ボルト(V)の交流電圧を印加すると、中央部を加熱する抵抗発熱部32g1は約700ワット(W)、1つの端部を加熱する抵抗発熱部32g2は約250W、他方の端部を加熱する抵抗発熱部32g3は約250Wの熱エネルギーを発生する。
【0143】
定着装置30は、複数の加熱手段、たとえば抵抗発熱部32g1〜32g3への通電のために、ウォームアップ動作、待機動作および印字動作のそれぞれの動作について、定着装置30で許容することができる電力を通電電力として設定している。ウォームアップ動作モード、待機動作モードおよび印字動作モードなどの複数の動作モード毎に、定着装置30以外の各部が必要とする電力配分がなされるので、画像形成装置1は、常に最大電力で動作している訳ではない。すなわち、画像形成装置1は、各々の加熱手段に対して通電電力設定を設けて、許容電力の範囲内で割り当てを行っている。
【0144】
ウォームアップ動作時は、できるだけ早く印字可能状態にするために、定着装置30に多く電力を割り当てるための通電電力設定としている。印字可能状態になった後の待機動作時は、最小限の温度維持を可能として各部を動作させるための通電電力設定としている。印字動作時は、トナーの画像形成、記録材への転写、および記録材上のトナーの定着など複数の動作を同時行うための通電電力設定としている。たとえば、定着装置30では、ウォームアップ動作時は1200Wの通電電力設定、待機動作時は1100Wの通電電力設定、印字動作時は1000Wの通電電力設定としている。
【0145】
たとえば、定着装置として、100ボルト(V)の定格で定格電力1200Wの場合、中央部を加熱する抵抗発熱部32g1は約700ワット(W)、1つの端部を加熱する抵抗発熱部32g2は約250W、他方の端部を加熱する抵抗発熱部32g3は約250Wの熱エネルギーを発生する。したがって、ウォームアップ動作時は、複数の加熱手段の定格電力値の合計は、定着装置の許容電力と同じ電力である。しかし、印字動作時では、複数の加熱手段の定格電力値の合計は1200Wのままであるが、定着装置の許容電力は1000Wになり、複数の加熱手段の定格電力値の合計は、定着装置の印字動作時に供給できる許容電力よりも大きい電力となる。
【0146】
抵抗発熱層32aは、図4(a)に示す抵抗発熱層32a1のような分割パターンの抵抗発熱層に限定されるものではなく、図4(b)に示す抵抗発熱層32a2のように、印字する記録材のサイズおよび幅に応じて、抵抗発熱部が途中で分岐するパターンの抵抗発熱層であってもよいし、図4(c)に示す抵抗発熱層32a3のように、部分的に抵抗発熱層の幅あるいは体積抵抗値を調整して、発熱分布を自由に変更した配置とする抵抗発熱層であってもよい。
【0147】
図4(b)に示す抵抗発熱層32a2は、内周面に、電気抵抗線からなる抵抗発熱部32g10が形成されている。抵抗発熱部32g10は、共通部32g11および3つの分岐部32g12〜32g14から構成される。共通部32g11の一端は、給電部32e10に接続される。抵抗発熱部32g10は、共通部32g11の他端側で3つの分岐部32g12〜14に分岐し、分岐部32g12は、給電部32f10に接続され、分岐部32g13は、給電部32f11から延びる発熱しない給電用パターン32f111に接続され、分岐部32g14は、給電部32f12から延びる発熱しない給電用パターン32f121に接続される。給電用パターン32f121は、給電用パターン32f111よりも長い。
【0148】
図4(c)に示す抵抗発熱層32a3は、内周面に、2つの電気抵抗線からなる抵抗発熱部32g20,32g30が形成されている。抵抗発熱部32g20は、一端が給電部32e20に接続され、他端が給電部32f20に接続され、抵抗発熱部32g30は、一端が給電部32e30に接続され、他端が給電部32f30に接続される。抵抗発熱部32g20は、中央部32g22の幅が、両端部32g21の幅よりも細い構成であり、抵抗発熱部32g30は、中央部32g32の幅が、両端部32g31の幅よりも太い構成である。抵抗発熱部32g20の両端部32g21の幅と、抵抗発熱部32g30の両端部32g31の幅とは、同じ幅である。中央部32g22の発熱量は、両端部32g21の発熱量よりも小さく、中央部32g32の発熱量は、両端部32g31の発熱量よりも大きい。
【0149】
材料組成および厚みにもよるが、図4(a)に示した実施形態では、抵抗発熱層32a1は、各抵抗発熱部の線材の幅が1.0mm〜2.4mmであり、隣り合う抵抗発熱部の線材同士の間隔が1.0mm〜2.4mmである。隣り合う抵抗発熱部の線材同士は、同一の抵抗発熱部の線材における折り返された部分同士を含む。抵抗発熱層32a1は、抵抗発熱部32g1が加熱部材32の軸線方向の中央部約200mmの幅の領域を加熱し、抵抗発熱部32g2,32g3が加熱部材32の軸線方向の両端部約58mmの幅のそれぞれの領域を加熱し、全体として、最大サイズの記録材よりも少し広い幅で加熱する。抵抗発熱層32a1における抵抗発熱部32g1〜32g3で発生した熱は、絶縁層32b、基材層32c、およびコート層32dを介して定着ベルト33に伝熱する。
【0150】
本実施形態では、基材層32cは、熱伝導性の高いアルミニウム合金である。したがって、抵抗発熱層32aの各抵抗発熱部32g1〜32g3で発生した熱を、基材層32cによって加熱部材32の周面の全域に分散させることができるので、各抵抗発熱部32g1〜32g3のパターン形状に起因して定着ベルト33の加熱むらが生じることを緩和することができる。また、定着ベルト33と加熱部材32との軸方向についての接触幅に比べて定着ベルト33に対する軸方向についての接触幅が小さい小サイズの記録材を連続通紙した場合であっても、加熱部材32の軸方向の温度分布を均一化し、非通紙部において過昇温が生じることを防止することができる。基材層32cは、アルミニウム合金に限定されるものではなく、熱伝導性のよい銅もしくはマグネシウムなどの合金であってもよい。また、基材にセラミックを用いることもでき、電気絶縁性および耐熱性を向上させた基材層とすることも可能である。
【0151】
図5は、制御部40の構成を示すブロック図である。温度制御手段である制御部40は、画像形成装置1の上述した主制御部に含めて構成されてもよく、また、主制御部とは別に構成され、主制御部と協同して定着装置30の動作を制御するものであってもよい。
【0152】
制御部40は、駆動制御部41、温度制御部42および図示しない記憶装置を含んで構成される。図示しない記憶装置は、たとえばRAM(Random Access Memory)によって構成され、データを一時的に記憶する。制御部40に含まれる各部は、当該各部で取り扱うデータをこのRAMに必要に応じて書き込んで一時的に記憶させ、あるいはRAMから必要に応じて読み出したりすることができるようになっている。
【0153】
駆動制御部41は、定着ローラ31および加圧ローラ34を駆動するための駆動手段43の動作を制御する。駆動制御部41は、画像形成装置1の主制御部からの制御命令、およびサーミスタ35a〜35cの温度検知結果などに応じた所定のタイミングで、定着ローラ31を回転駆動させたり、回転を停止させたりするように、駆動手段43を制御する。
【0154】
主制御部は、ユーザからの指示入力、記録材の載置状態、搬送状態もしくはサイズ検知結果、画像形成装置1の各部の動作状態、画像形成装置1における画像形成モード、たとえばカラーモードであるか、モノクロモードであるか、厚紙モードであるかなどの画像形成モード、および画像形成装置1に備えられる各種センサの検知結果などに応じて、駆動制御部41に、定着ローラ31および加圧ローラ34の回転を制御させるための信号を送る。各種センサは、たとえば、記録材の通過位置を光学的あるいは機械的に検出するセンサ、モータおよび可動部などの機械的な状態を検出するセンサ、カバーおよび清掃部材の取り付け状態を検出するセンサ、ならびに加圧ローラ34の加圧状態を検出するセンサなどが挙げられる。
【0155】
温度制御部42は、サーミスタ35a〜35cの温度検知結果などに応じて、加熱部材32に備えられる抵抗発熱層32aおよび加圧ローラ34の内部に備えられるヒータランプ36への通電量を制御することによって、定着ベルト33および加圧ローラ34の表面温度を制御する。温度制御部42は、センサデータ入力部51、温度記憶部52、温度偏差算出部53、テーブル記憶部54、出力決定部55、電力制御部56、パターン選択決定部57およびパターン記憶部58を含んで構成される。
【0156】
センサデータ入力部51は、サーミスタ35a〜35cの出力信号に基づいて、温度変化を抵抗値の変化として検出し、検出した抵抗値変化を電圧値変化に変換し、さらにこの電圧値変化をコンピュータで取り扱うことのできるデジタル信号に変換する。そして、センサデータ入力部51は、温度検知結果を示すこのデジタル信号を温度記憶部52および温度偏差算出部53に出力する。サーミスタ35a〜35cは、たとえば、温度が高くなると抵抗値が小さくなり、温度が低くなると抵抗値が大きくなる係数、いわゆる負の温度係数を有している。
【0157】
温度記憶部52は、サーミスタ35a〜35cによる過去所定時間分の温度検知結果、および現在検知した温度の温度検知結果を記憶する。所定時間は、たとえば、加熱部材32およびヒータランプ36の温度制御周期の整数倍に設定する。加熱部材32およびヒータランプ36の温度制御周期は、加熱部材32およびヒータランプ36への通電量の制御周期である。具体的には、定着装置30では、所定時間を1秒前あるいは2秒前に設定している。
【0158】
温度偏差算出部53は、サーミスタ35aによる現在の検知温度である第1検知温度と、予め設定されている定着ベルト33の目標温度(以下「制御目標温度」ともいう)との偏差である第1温度偏差、および第1検知温度とサーミスタ35aによる前記所定時間前の検知温度である第2検知温度との偏差である第2温度偏差を算出し、算出した第1温度偏差および第2温度偏差を出力決定部55に送る。温度偏差算出部53は、第2検知温度を温度記憶部52から読み出す。また、第1検知温度については、温度偏差算出部53が温度記憶部52から読み出してもよく、あるいはセンサデータ入力部51が温度偏差算出部53に送るようにしてもよい。
【0159】
温度偏差算出部53は、サーミスタ35cによる温度検知結果についても同様に、サーミスタ35cによる現在の検知温度である第3検知温度と、予め設定されている加圧ローラ34の目標温度との偏差である第3温度偏差、および第3検知温度とサーミスタ35cによる前記所定時間前の検知温度である第4検知温度との偏差である第4温度偏差を算出し、出力決定部55に送る。
【0160】
テーブル記憶部54は、第1温度偏差と第2温度偏差との組み合わせと、加熱部材32へ供給すべき電力量とを対応付けた第1出力設定テーブル、および第3温度偏差と第4温度偏差との組み合わせとヒータランプ36へ供給すべき電力量とを対応付けた第2出力設定テーブルを記憶している。第1出力設定テーブルは、出力直接設定テーブルおよび中央部用テーブルであり、第2出力設定テーブルは、加圧部材用テーブルである。
【0161】
出力決定部55は、温度偏差算出部53から入力される第1温度偏差および第2温度偏差に応じた通電量を、テーブル記憶部54に記憶されている第1出力設定テーブルから読み出し、加熱部材32への通電量を決定し、電力制御部56へ送る。また、出力決定部55は、温度偏差算出部53から入力される第3温度偏差および第4温度偏差に応じた通電量をテーブル記憶部54に記憶されている第2出力設定テーブルから読み出し、ヒータランプ36への通電量を決定し、電力制御部56へ伝達する。
【0162】
出力決定部55は、サーミスタ35bの温度検知結果、つまり定着ベルト33の幅方向端部近傍の温度と、サーミスタ35aの温度検知結果、つまり定着ベルト33の幅方向中央部の温度との差に応じて、第1出力設定テーブルから読み出した通電量を補正するように構成されてもよい。たとえば、この差に応じて定着ベルト33における幅方向の端部、つまり記録材に当接しない非通紙領域から定着ベルト33における幅方向中央部、つまり記録材に当接する通紙領域への伝熱量などを考慮して、通紙領域の温度が目標温度に近づくように補正すればよい。あるいは、温度偏差算出部53が、サーミスタ35bによる前記所定時間前の検知温度と、サーミスタ35bによる現在の検知温度との偏差を算出し、出力決定部55がその偏差に応じて第1出力設定テーブルから読み出した通電量を補正するようにしてもよい。
【0163】
出力決定部55は、各加熱部材に対して動作モードごとに設定されている通電電力設定に応じた通電量を決定する。具体的には、第1出力設定テーブルを動作モードごとに設けておくことによって、動作モードに応じた第1出力設定テーブルから通電量を読み出すことによって実現することができる。
【0164】
電力制御部56は、出力決定部55で決定した通電量に対応した通電パターンを受け取って、駆動制御部41を経由し、通電パターンの指示に従って、駆動手段43を介して電源回路44から加熱部材32への供給電力を制御する。
【0165】
パターン記憶部58は、複数の通電パターンを記憶する。パターン記憶部58に記憶される複数の通電パターンは、基本となる通電パターンよりも通電期間の重なりが小さくなる通電パターンである。通電期間の重なりが小さくなる通電パターンは、少なくとも1つの通電パターンが記憶され、通電期間の重なりがない通電パターンが可能な場合は、通電期間の重なりがない通電パターンも記憶される。通電期間の重なりは、たとえば1つ加熱手段に通電する期間が他の加熱手段に通電する期間と重なることである。通電期間のデューティあるいは駆動ディレイを変えることによって、通電期間の重なりを調整する。通電期間のデューティは、所定の周期で通電および非通電を繰り返すとき、通電期間を周期で除算した値を百分率で表したものである。駆動ディレイは、通電の開始を周期の開始時点から遅らせる遅延時間であり、周期に対する遅延時間の割合で表わされる。以下、「通電」を「点灯」ともいう。通電パターンの詳細については、図9を参照して後述する。
【0166】
パターン選択決定部57は、出力決定部55に接続されている。
パターン選択決定部57は、パターン記憶部58に記憶される複数の通電期間の重なりが小さくなる通電パターンの中から、出力決定部55で決定した通電量に基づいて、通電パターンの1つを選択決定し、選択決定した通電パターンを出力決定部55へ送る。たとえば、定格電力700Wの加熱部材を点灯周期1秒で通電するとき、通電量399Wとするために、57%のデューティの通電パターンを選択する。また、同じ定格700Wの加熱部材を点灯周期1秒で通電するとき、通電量560Wとするために、80%のデューティでの通電パターンを選択し、別の加熱部材として定格500Wの加熱部材を点灯周期1秒で通電するとき、通電量400Wとするために、80%のデューティの通電パターンを選択する。この場合、通電期間の重なりは、60%になる。出力決定部55は、選択決定された通電パターンを受け取ると、受け取った通電パターンに則って、駆動制御部41に駆動信号を送る。
【0167】
図6は、定着ユニット30に備えられる温度制御部42が実行する第1の温度制御処理の処理手順を示すフローチャートである。制御部40は、たとえば、主制御部から定着処理の開始が知らされると、ステップA1に移る。
【0168】
ステップA1では、センサデータ入力部51は、サーミスタ35aの検知信号を受け付け、この検知信号に基づいて第1検知温度を、所定の時間ごと、たとえば1秒ごとに検出する。ステップA2では、センサデータ入力部51は、検出した第1検出温度を温度記憶部52に記憶させる。
【0169】
ステップA3では、温度偏差算出部53は、温度記憶部52から第1検知温度および第2検知温度を読み出す。第2検知温度は、1秒前に記憶された第1検知温度であり、温度偏差算出部53は、新たに第1検知温度を検出して温度記憶部52に記憶するとき、温度記憶部52に記憶されている第1検知温度を第2検知温度として温度記憶部52に記憶する。ステップA4では、温度偏差算出部53は、読み出した第1検知温度および第2検知温度に基づいて、第1温度偏差および第2温度偏差を算出し、出力決定部55に出力する。
【0170】
ステップA5では、出力決定部55は、温度偏差算出部53によって算出された第1温度偏差および第2温度偏差の組み合わせに対応する後述する増減通電量を、テーブル記憶部54に記憶している第1出力設定テーブルから読み出し、読み出した増減通電量に基づいて、加熱部材32に対して制御すべき通電量である制御通電量を決定する。
【0171】
図7は、第1出力設定テーブル81の一例を示す図である。第1出力設定テーブル81は、テーブル記憶部54に記憶されている。第1出力設定テーブル81には、加熱部材32ごとの基準通電量(以下「基準電力量」ともいう)と、第1温度偏差と第2温度偏差との組み合わせに応じて増減すべき通電量である増減通電量とが予め設定されている。増減通電量は、加熱部材32に供給可能な通電量の最大値(以下「定格電力」ともいう)に対する相対値で表わされている。図7に示す第1出力設定テーブル81の例では、増減通電量のみが、百分率の相対値で、第1温度偏差と第2温度偏差との組み合わせごとに示されており、基準通電量は省略されている。図7に示した第1出力設定テーブル81は、複数の加熱手段に共通のテーブルであるが、第1温度偏差と第2温度偏差との組み合わせごとに示される増減通電量が、加熱手段ごとに異なる場合は、第1出力設定テーブル81を加熱手段ごと設けておく。
【0172】
出力決定部55は、第1出力設定テーブルから読み出した基準通電量に、第1出力設定テーブルから読み出した増減通電量を加減算した通電量を、加熱部材32に対する制御通電量として決定する。
【0173】
たとえば、目標温度が165℃に設定されており、サーミスタ35aの検知温度、つまり第1検知温度が164℃、サーミスタ35aの1秒前の検知温度、つまり第2検知温度が169℃の場合、第1温度偏差=第1検知温度−目標温度=164−165=−1℃となり、第2温度偏差=第1検知温度−第2検知温度=164−169=−5℃となる。したがって、この場合、増減通電量は、図7に示した第1出力設定テーブルから、相対値50%であり、加熱部材32に対する制御通電量は、基準通電量に最大通電量の50%を加算した値に設定される。すなわち、基準通電量が最大通電量の50%に設定されている場合には、加熱部材32に対する制御通電量は、50%+50%=100%に決定される。
【0174】
また、目標温度が165℃に設定されており、サーミスタ35aの検知温度、つまり第1検知温度が163℃、サーミスタ35aの1秒前の検知温度。つまり第2検知温度が163℃の場合、第1温度偏差=第1検知温度−目標温度=163−165=−2℃となり、第2温度偏差=第1検知温度−第2検知温度=163−163=0℃となる。したがって、この場合、増減通電量は、図7に示した第1出力設定テーブルから、相対値13%であり、加熱部材32に対する制御通電量は、基準通電量に最大通電量の13%を加算した値に設定される。すなわち、基準通電量が最大通電量の50%に設定されている場合には、加熱部材32に対する制御通電量は、50%+13%=63%に設定される。
【0175】
出力決定部55は、複数の加熱部材32のそれぞれに対する制御通電量を決定すると、決定した制御通電量をパターン選択決定部57へ送る。
【0176】
ステップA6では、パターン選択決定部57は、出力決定部55が決定した制御通電量を基に、パターン記憶部58に記憶した複数の通電パターンの中から、各加熱部材の通電量にあった通電パターンをそれぞれ選択する。各加熱部材の通電量にあった通電パターンとは、各加熱部材の通電量になる通電パターン、または各加熱部材の通電量になる通電パターンがないときは、各加熱部材の通電量に最も近い通電量になる通電パターンのことである。
【0177】
具体的には、パターン選択決定部57は、複数の加熱部材32に対する制御通電量を基に、パターン記憶部58から、これら複数の加熱部材32に対する1つの通電パターンを選択して読み出す。たとえば、抵抗発熱層32aが抵抗発熱層32a1で、抵抗発熱部32g1の点灯率が63%、かつ抵抗発熱部32g2,32ag3の点灯率が22.5%であり、3つの抵抗発熱部32g1〜32g3を点灯、つまり通電する場合、パターン選択決定部57は、通電期間の重なりが少ない通電パターンとして、抵抗発熱部32g2,32ag3に対する駆動ディレイが通常50%のところ、駆動ディレイ65%の通電パターンを選択する。点灯率は、点灯周期に対する点灯時間の割合であり、この例では、百分率で表されている。駆動ディレイは、点灯の開始を点灯周期の開始時点から遅らせる遅延時間であり、点灯周期に対する遅延時間の割合で表わされ、この例では、百分率で表されている。そして、パターン選択決定部57は、選択した通電パターンを電力制御部56に送る。
【0178】
ステップA7では、電力制御部56は、パターン選択決定部57によって選択された通電パターンに従って、駆動制御部41に駆動信号を出力する。すなわち、電力制御部56は、パターン選択決定部57から受け取った通電パターンに従って、駆動制御部41に通電の指示を行い、駆動手段43を介して電源回路44から加熱部材32への供給電力を制御する。
【0179】
図8は、電力制御部56による通電量の制御波形の例を示す図である。図8(a)は、デューティ制御法による制御波形91を示し、図8(b)は、位相制御法による制御波形92を示す。
【0180】
通電パターンは、デューティ制御または位相制御における所定の制御単位での通電時間を設定しているものである。図8(a)では、デューティ制御を用い、これに各通電パターンに応じた点灯周期単位の通電時間で制御し、図8(b)では、各通電パターンに応じた、半波長単位の通電時間を制御する。定着装置30は、通電時間を制御することによって、通電量、つまり単位時間当たりの発熱量を制御する。
【0181】
通電パターンに適用する制御方法には、たとえば3つの制御方法、具体的には、(1)デューティ制御のみで制御して、これに通電パターンを適用する制御方法、(2)位相制御のみで制御して、これに通電パターンを適用する制御方法、および(3)デューティ制御と位相制御との併用に対して通電パターンを適用する制御方法がある。(3)の制御方法では、デューティ制御で、点灯周期内での通電時間を設定し、位相制御で、その点灯時間中の半波長において、半波長単位の通電時間を設定し通電する。
【0182】
これらの制御方法は、制御する際の、通電状態が異なるので、過剰電流の抑制に対する効果も、それぞれ少しずつ異なる。したがって、通電状態が異なることによって、通電パターンの設定もそれぞれ異なる。
【0183】
(1)と(2)とは、ともに通電パターンとして、それぞれの加熱手段に対する通電時間の比率および駆動ディレイで設定される。(3)は、通電パターンとして、点灯周期内の通電時間、半波長単位の通電時間、および駆動ディレイで設定される。単位時間当たりの発熱量を変更するのに、点灯周期内の通電時間、および半波長単位の通電時間の2つのパラメータで設定することができるので、より柔軟な設定が可能であり、通電期間の重なりが完全になくせなくても、重なりの状態での過剰電流が少ないので、通電期間の重なりを許容できる範囲が広くなる。
【0184】
デューティ制御法では、電力制御部56は、出力決定部55によって決定された制御通電量に基づいて、加熱部材32への通電をオン(以下「ON」という)にする通電時間と、加熱部材32への通電をオフ(以下「OFF」という)にする非通電時間との比(以下「デューティ」という))を決定し、加熱部材32への通電をデューティ制御法によって制御する。たとえば、制御通電量が最大通電量に決定されている場合には、点灯周期(以下「インターバル時間」という)Tiの全時間において通電をONにする。また、制御通電量が最大通電量の63%に決定されている場合には、図8(a)に示すように、インターバル時間Ti中の63%に対応する時間Tonだけ通電をONにし、残り37%に対応する時間Toffでは通電をOFFにする。
【0185】
複数の通電パターンは、デューティ制御と位相制御とで、異なる内容で独立している。加熱手段、たとえばヒータの通電量を制御する際に、デューティ制御と位相制御とでは、異なる制御方法である。仮に同じ通電比率、つまりデューティで駆動しても、デューティ制御は、ヒータに通電している全期間を制御するが、位相制御では、交流電源の各半周期内、たとえば50Hzであれば10ms、60Hzであれば約8.3msの半周期内での位相角を制御する。位相角を制御することによって、電流の流れ方を変化させることができるので、それぞれの制御方法に応じて、過剰電流を抑制する最適な通電パターンも異なる。
【0186】
本実施形態では、加熱部材32として抵抗性発熱体である抵抗発熱層32aを用いている。特に、抵抗性発熱体は、通電期間と非通電期間との繰り返しによる突入電流が、従来技術の定着装置の加熱手段として多用されているハロゲンランプに比べて小さいので、ちらつきの原因となるフリッカを防止し、それによる過剰電流も小さくすることができる。
【0187】
加熱部材32への通電量の制御方法は、上述したようなデューティ制御法に限るものではなく、たとえば、電源回路44から加熱部材32に供給される交流電源電圧の位相を制御する位相制御法を用いてもよい。位相制御法では、電力制御部56は、交流電圧の半波長ごとに通電時間を規定し、交流電圧の半波長ごとの通電時間に応じて、導通時間の位相角を制御して電力制御を行う。具体的には、図8(b)に示すように、交流電圧の半波長の周期T1ごとに、通電時間T1onの間だけ通電をONにし、非通電時間T1offの間だけ通電をOFFにする。
【0188】
位相制御法では、ハロゲンランプのような誘導性発熱体の突入電流を抑えながら、電力制御を行うことができる。つまり、ハロゲンランプのような誘導性発熱体に対して、通電ONと通電OFFとを短時間で切り換えると、誘導性負荷による電流変動が大きくなり、交流電源の大きな電圧変動を誘発するので、位相制御法は、このような誘導性発熱体を用いる場合の電力制御に好適である。
【0189】
さらに、上述したデューティ制御法と位相制御法とを組み合わせて、加熱部材32に供給する電力量を制御してもよい。この場合、たとえば、出力決定部55の決定した制御通電量に応じて、デューティ制御を行うか、位相制御を行うかを予め設定された条件に基づいて適宜選択するようにしてもよい。あるいは、インバータを用いて交流電圧を直流電圧に変換してパルス駆動する構成とし、出力決定部55の決定した制御通電量に応じて交流電圧の振幅を制御するようにしてもよい。あるいはまた、パルス駆動するときの駆動信号のパルス幅もしくはパルス数などを制御することによって通電量を制御してもよい。
【0190】
ステップA8では、温度制御部42は、定着処理が終了したか否かを判定する。主制御部から定着処理の終了が知らされていると、第1の温度制御処理を終了し、主制御部から定着処理の終了が知らされていないと、ステップA1に戻り、ステップA1〜A7までの処理を繰り返す。
【0191】
図6に示したフローチャートでは、1つの加熱手段に対する第1の温度制御処理の処理手順を示したが、加熱手段が複数あるときは、同じ処理がそれぞれの加熱手段に対して、並列に行われる。加熱手段が複数ある場合については後述する。
【0192】
図9は、通電パターンの一例を示す図である。図9に示した通電パターンは、抵抗発熱層32a1に対する通電パターンである。通電パターンは、位相制御またはデューティ制御において、ヒータ1を何%通電、ヒータ2を何%通電、および駆動ディレイを何%というように設定するパターンである。この通電パターンのこれらのパーセンテージ、つまり百分率に対応して、位相制御では、半波長単位の通電時間が設定され、デューティ制御では点灯周期単位の通電時間が設定される。ヒータ1は、たとえば抵抗発熱部32g1であり、ヒータ2は、たとえば抵抗発熱部32g2,32g3である。
【0193】
ヒータ1信号,ヒータ2信号は、電力制御部56が駆動制御部41を介して駆動手段43に送る駆動制御信号であり、ヒータ1信号は、抵抗発熱部32g1への通電を制御する駆動制御信号であり、ヒータ2信号は、抵抗発熱部32g2,32g3への通電を制御する駆動制御信号である。図9(a)は、抵抗発熱部32g2,32g3に対する駆動ディレイが50%の通電パターンであり、図9(b)は、抵抗発熱部32g2,32g3に対する駆動ディレイが65%の通電パターンである。
【0194】
図9(a)に示す通電パターンの場合、すなわち、抵抗発熱部32g1の点灯率が63%、かつ抵抗発熱部32g2,32g3の点灯率が22.5%であり、抵抗発熱部32g2,32g3に対する駆動ディレイTd1が50%の通電パターンの場合、抵抗発熱部32g2,32g3が導通を開始し始めた時から13%の重なりが生じる。重なりは、ヒータ1信号がONになっている期間Tton1と、ヒータ2信号がONになっている期間Tton2とが重なっている期間Twであり、重なっている期間Twの点灯周期Ttsに対する割合で表わされる。図9(a)に示した例では、重なっている期間Twは、時刻t1から時刻t2までの期間である。
【0195】
図9(b)に示す通電パターンの場合、すなわち、抵抗発熱部32g1の点灯率が63%、かつ抵抗発熱部32g2,32g3の点灯率が22.5%であり、抵抗発熱部32g2,32g3に対する駆動ディレイTd2が65%の通電パターンの場合、ヒータ1信号がONになっている期間Tton1と、ヒータ2信号がONになっている期間Tton2との重なりは生じない。この場合、抵抗発熱部32g1の導通が終了した後、抵抗発熱部32g2,32g3が遅れて通電が開始され、点灯率22.5%の通電が行なわれた後、1つの点灯周期Ttsが終了する。
【0196】
パターン記憶部58には、図9(a)に示す通電パターンと図9(b)に示す通電パターンとが記憶されており、パターン選択決定部57は、これらの通電パターンのうち、通電期間の重なりがない通電パターン、通電期間の重なりがない通電パターンがないときは、通電期間の重なりが最も少ない通電パターンを選択する。パターン選択決定部57が図9(b)に示す通電パターンを選択することによって、図9(a)に示す通電パターンが選択されたときに発生する13%分の重なりによる過剰電流が一時的に流れてしまうところを、通電期間の重なりをなくして、それぞれの加熱部材を駆動することができる。あるいは、通電期間の重なりがない通電パターンがないときは、パターン選択決定部57が通電期間の重なりが最も少ない通電パターンを選択するので、通電期間の重なりをより少なくして、それぞれの加熱部材を駆動することができる。
【0197】
通電期間の重なりが小さい通電パターンとしては、たとえば、通電期間の重なり0%、3%、5%、8%および10%の通電パターンがパターン記憶部58に記憶される。通電期間の重なりは、重なっている期間を、通電の周期で除算して百分率で表している。このとき、それぞれ、ヒータ1とヒータ2との通電比率は異なる。通電比率は、デューティのことであり、画像形成装置1の動作状態で、必要とする電流量が異なるので、それぞれの動作状態によって、過剰電流の程度も異なり、それぞれの動作状態に合わせて最適な動作になるようにするために、通電期間の重なりが小さくなる複数の通電パターンを設けている。ここで、通電期間の重なりが小さいとは、当初の基本となる通電条件での通電期間の重なりに比べて小さいという意味で、必ずしも1つに限定されるものではない。
【0198】
パターン記憶部58は、複数の通電パターンを記憶しておく際に、通電パターンを記憶する順序を、通電期間の重なりの小さい順に並べて記憶する。また、優先度の高い加熱手段の順に並べて記憶しておいてもよいし、さらに通電比率順に並べて記憶しておいてもよいし、通電期間の重なりが小さい順に並べておくとともに、点灯制御する際に、容易に選択することができる順序で記憶しておいてもよい。
【0199】
通電パターンは、図9に示すように、複数の加熱手段、たとえばヒータ1およびヒータ2への通電時間、通電比率、つまりデューティ、および駆動ディレイなどによって定義されるパターンである。すなわち、通電パターンに定義されているそれぞれのヒータへの通電比率によって、個々のヒータの発熱量が決まり、それによる電流量が決まる。通電パターンに定義されている駆動ディレイによって、基準とするヒータの駆動開始から遅れて、他のヒータが駆動させる。通電パターンに定義される通電時間、通電比率および駆動ディレイは、制御周期内での電流量を可能な限り平均化して、ヒータの駆動による過剰電流を抑制することができるように定義される。各ヒータへの通電時間、通電比率および駆動ディレイは、1組のセットとして扱い、動作モード、および時々刻々変化させるための通電量の設定に併せて、複数の通電パターンを予めパターン記憶部に記憶させておく。
【0200】
通電パターンとしては、図9に示した通電パターンが1つの例である。図9に示した通電パターンは、各ヒータへの通電比率、つまりデューティ、および駆動ディレイを規定したものである。図9に示した通電パターンでは、各ヒータへの通電比率は同じで、駆動ディレイの異なる通電パターンを切り換えて用いる例である。
【0201】
パターン記憶部58は、図4(b)に示した抵抗発熱層32a2のように、抵抗発熱層32a2が分岐している場合は、分岐している分岐部ごとに通電パターンを記憶する。この場合、分岐している分岐部それぞれが加熱手段である。
【0202】
通電比率が異なるパターンとしては、たとえば、通電パターン1として、ヒータ1の通電比率が60%で、ヒータ2の通電比率が50%で、駆動ディレイが50%で、点灯重なりが10%の通電パターン、通電パターン2として、ヒータ1の通電比率が55%で、ヒータ2の通電比率が45%で、駆動ディレイが50%で、点灯重なりが0%の通電パターン、通電パターン3として、ヒータ1の通電比率が60%で、ヒータ2の通電比率が45%で、駆動ディレイが50%で、点灯重なりが5%の通電パターン、通電パターン4として、ヒータ1の通電比率が60%で、ヒータ2の通電比率が40%で、駆動ディレイが60%で、点灯重なりが0%の通電パターン、通電パターン5として、ヒータ1の通電比率が60%で、ヒータ2の通電比率が45%で、駆動ディレイが60%で、点灯重なりが5%の通電パターンなどがある。点灯重なりは、通電期間の重なりのことである。
【0203】
パターンの差は、僅かであるが、点灯重なりの大小、通電比率の大小、および各ヒータの定格値などを考慮して設定することによって、過剰電流抑制の効果が得られる。また、ヒータの点灯時の優先度を設けて、優先度を考慮して通電パターンを設定しておくことも可能である。
【0204】
また、パターン記憶部58は、「デューティの点灯周期を変更して設定」された通電パターン、「位相制御における位相角を変更して設定」された通電パターン、「複数の加熱手段それぞれのデューティの値から、それぞれのデューティの値を補正して設定」された通電パターン、「複数の加熱手段それぞれのデューティの値から、スローアップおよびスローダウンを行うときの位相角を変更して設定」された通電パターン、「複数の加熱手段それぞれのデューティの値から、半波長単位あるいは全波長単位で間引く時の間引きパターンを変更して設定」された通電パターン、「複数の加熱手段それぞれのデューティの値から、複数の加熱手段に供給する電圧値の変更状態を設定」された通電パターン、および「複数組み合わせて設定」された通電パターンなどの通電パターンも記憶する。
【0205】
「デューティの点灯周期を変更して設定」された通電パターンは、たとえば、通常の点灯周期が1秒のところを、1.5秒として、各々の加熱手段の通電パターンを変更して設定された通電パターンである。
【0206】
「位相制御における位相角を変更して設定」された通電パターンは、通電期間の重なりが小さくなる通電パターンを選択して、実際に通電するときの制御方法が位相制御を用いる場合に、通電のデューティではなく、その位相角を変更して設定された通電パターンであり、重なりを小さくし、過剰電流を抑制することができる。この通電パターンの例としては、上述したデューティ制御の場合との通電パターンの例と同様である。
【0207】
「複数の加熱手段それぞれのデューティの値から、それぞれのデューティの値を補正して設定」された通電パターンは、それぞれの加熱手段の通電パターンとして設定されたデューティに対して、デューティの値そのものを設定するのではなく、−○○%〜+△△%というように、補正するデューティ値で、通電期間の重なりが小さくなる通電パターンを設定した通電パターンである。たとえば、通電パターンA’1については、ヒータ1は補正するデューティ値が0%で、ヒータ2は補正するデューティ値が−10%で、駆動ディレイは50%という通電パターンである。通電パターンA’2については、ヒータ1は補正するデューティ値が−5%で、ヒータ2は補正するデューティ値が−7%で、駆動ディレイ:55%という通電パターンである。通電パターンA’3については、ヒータ1は補正するデューティ値が−3%で、ヒータ2は補正するデューティ値が−5%で、駆動ディレイ:60%という通電パターンである。
【0208】
「複数の加熱手段それぞれのデューティの値から、スローアップおよびスローダウンを行うときの位相角を変更して設定」された通電パターンは、後述する図19に示すように、通電開始時のスローアップ、および通電終了時のスローダウン制御のときの通電パターンである。具体的には、一定の位相角になるまで位相角を少しずつ大きく、あるいは一定の位相角から少しずつ小さく位相制御する際、通電期間の重なりが小さくなるように、位相角の値および通電を開始するタイミングを変更した通電パターンである。非通電期間に、重なりのある通電期間分を割り振るようにすることによって、通電時の電流が平準化され、過剰電流が流れている時間を低減する、あるいは無くすことができる。
【0209】
「複数の加熱手段それぞれのデューティの値から、半波長単位あるいは全波長単位で間引く時の間引きパターンを変更して設定」された通電パターンは、後述する図19で説明するように、特定の半波長の通電を意図的に非導通として、他の加熱手段の通電に割り振り、電流の平準化を意図している通電パターンである。
【0210】
また、「複数の加熱手段それぞれのデューティの値から、複数の加熱手段に供給する電圧値の変更状態を設定」された通電パターンは、通電時間およびその通電の開始のタイミングだけでなく、過剰電流が流れてしまうような状況で、加熱手段に印加する電圧値を、100Vから、たとえば80Vあるいは70Vに変更して、電流の平準化を意図している通電パターンである。そして、それに加えてデューティの値を変更することも併用したり、上記のその他方法も併用したりして、過剰電流を抑制する。 パターン記憶部58は、上述した通電パターンを複数組み合わせて設定された通電パターンを記憶することも可能である。
【0211】
また、パターン記憶部58は、複数の加熱手段のうち2つの加熱手段、たとえば抵抗発熱部とハロゲンヒータとを選択し、選択した2つの加熱手段について、複数の通電パターンを記憶する。
【0212】
図10Aおよび図10Bは、パターン記憶部58に記憶される駆動ディレイ増減幅、駆動ディレイの値および点灯周期の増減幅の例を示す図である。パターン記憶部58には、基本となる通電パターンよりも通電期間の重なりが小さくなる通電パターンが記憶される。
図10A(a)は、基本となる通電パターンAに対応する通電期間の重なりが小さくなる通電パターン91a、および駆動ディレイの増減幅91aを示す図である。基本となる通電パターンAに対応する通電期間の重なりが小さくなる通電パターン91aには、通電パターンA’1〜A’5が記載され、それぞれ駆動ディレイが「50%」、「40%」、「55%」、「60%」および「65%」である。また、抵抗発熱部32g1〜32g3に対する通電期間が、通電パターンごとに示されるが、図10Aでは、具体的な通電期間の記載は省略している。駆動ディレイの増減幅92aは、駆動ディレイとして増減可能な値を百分率表示で示している。具体的には、駆動ディレイとして増減可能な値は、「−10%」、「−7.5%」、「−5%」、「−2.5%」、「0%」、「+2.5%」、「+5%」、「+7.5%」および「+10%」のうちのいずれかである。
【0213】
駆動ディレイは、通電パターンごとに設定されている駆動ディレイの値を用いてもよいし、基本となる通電パターンの駆動ディレイに対して、駆動ディレイの増減幅92aに示される増減幅で増減してもよいし、通電パターンごとに設定されている駆動ディレイの値に対して、駆動ディレイの増減幅92aに示される増減幅で増減してもよい。通電期間の重なり程度に合わせて調整することは可能である。
【0214】
図10A(b)は、基本となる通電パターンBに対応する通電期間の重なりが小さくなる通電パターン91b、および駆動ディレイの増減幅92bを示す図であり、図10A(c)は、基本となる通電パターンCに対応する通電期間の重なりが小さくなる通電パターン、91cおよび駆動ディレイの増減幅92cを示す図であり、図10A(a)と同様な値が示されている。
【0215】
図10A(d)は、点灯周期の増減幅93を示す図である。点灯周期の増減幅93は、点灯周期として増減可能な値を百分率表示で示している。具体的には、点灯周期として増減可能な値は、「−10%」、「−5%」、「0%」、「+5%」、「+10%」、「+15%」、「+20%」および「+25%」のうちのいずれかである。
【0216】
図10B(e)は、抵抗発熱部32g1の駆動ディレイの増減値を定格電力と通電量との組み合わせについての通電パターン94aを示した図である。図10B(f)は、抵抗発熱部32g2の駆動ディレイの増減値を定格電力と通電量との組み合わせについての通電パターン94bを示した図である。図10B(g)は、抵抗発熱部32g3の駆動ディレイの増減値を定格電力と通電量との組み合わせについての通電パターン94cを示した図である。
【0217】
定格電力1は、たとえばA地域向けの定格電力であり、定格電力2は、たとえばB地域向けの定格電力であり、定格電力3は、たとえばC地域向けの定格電力である。通電量1〜5は、出力決定部55によって決定された制御通電量に対応する通電量の例示である。
【0218】
図10B(e)に示した通電パターン94aでは、定格電力1〜3に対する駆動ディレイの増減値は、それぞれ通電量1のとき、「−10%」、「−12%」、「−15%」であり、通電量2のとき、「−4%」、「−6%」、「−7%」であり、通電量3のとき、「+2%」、「±0%」、「−2%」であり、通電量4のとき、「+5%」、「+1%」、「+2%」であり、通電量5のとき、「+8%」、「+6%」、「+8%」である。
【0219】
図10B(f)に示した通電パターン94bでは、定格電力1〜3に対する駆動ディレイの増減値は、それぞれ通電量1のとき、「−15%」、「−17%」、「−20%」であり、通電量2のとき、「−8%」、「−7%」、「−10%」であり、通電量3のとき、「+4%」、「±0%」、「−5%」であり、通電量4のとき、「+4%」、「+3%」、「±0%」であり、通電量5のとき、「+6%」、「+8%」、「+5%」である。
【0220】
図10B(g)に示した通電パターン94cでは、定格電力1〜3に対する駆動ディレイの増減値は、それぞれ通電量1のとき、「−8%」、「−12%」、「−15%」であり、通電量2のとき、「−7%」、「−6%」、「−10%」であり、通電量3のとき、「−5%」、「−2%」、「−5%」であり、通電量4のとき、「−2%」、「+2%」、「±0%」であり、通電量5のとき、「+2%」、「+4%」、「+5%」である。
【0221】
駆動ディレイの変更だけでは通電期間の重なりを完全になくすことは困難な場合がある。たとえば、いずれの加熱部材の定格電力も大きいために、いずれの加熱部材も大きなデューティで駆動しなければならない場合、いずれの加熱部材への通電期間も、他の加熱部材への非通電期間期間よりも長いので、いくら駆動ディレイを大きくしても、重なりを完全になくすことは困難である。
【0222】
そこで、駆動ディレイの変更による通電期間の重なりの低減の他に、点灯周期の変更も併用して、通電期間の重なりをさらに低減するような通電パターンを設定する。
【0223】
パターン記憶部58は、複数の加熱手段、たとえばヒータを点灯させる状態、あるいは2つのヒータのうち1つを点灯させ、他を消灯させる状態、および点灯させる場合の通電量に応じて、通電パターンを複数記憶している。状態が変化した場合は、変化後の状態について、通電期間の重なりが小さくなる通電パターンに切り換えて制御する。
【0224】
すなわち、変化前の基本となる通電パターン、たとえば通電パターンAが一旦決定した後、通電パターンAよりも通電期間の重なりが小さくなる通電パターン、たとえば通電パターンA’2を選択して制御する。次に、点灯状態などが変化して、基本となる通電パターンが、変化前の通電パターンAから通電パターンBに変化すると、通電パターンBよりも通電期間の重なりが小さくなる通電パターン、たとえば通電パターンB’3を選択して制御する。ここで、変化後の通電期間の重なりが小さくなるパターンを選択するとき、制御が複雑にならないように、通電パターンA’2を元にするのではなく、通電パターンBを元にして、その通電パターンBでの通電期間の重なりが小さくなるパターンを選択する。
【0225】
具体的には、たとえば、通電パターン変化前の例としては、定着装置の通電量が当初1Wのとき、基本となる変化前の通電パターンは、通電パターンAであり、ヒータ1の通電比率が60%で、ヒータ2の通電比率が50%で、駆動ディレイが50%で、点灯重なりが0%である。通電パターンAよりも通電期間の重なりが小さくなる通電パターンは、通電パターンA’2であり、ヒータ1の通電比率が55%で、ヒータ2の通電比率が45%で、駆動ディレイが55%で、点灯重なりが0%である。そして、通電状態が変化して、通電量が2Wになったとき、通電パターン変化後の例としては、基本となる変化後の通電パターン(変化後の当初の通電パターン)は、通電パターンBであり、ヒータ1の通電比率が70%で、ヒータ2の通電比率が40%で、駆動ディレイが50%で、点灯重なりが20%)である。通電パターンBよりも通電期間の重なりが小さくなる通電パターンは、通電パターンB’3であり、ヒータ1の通電比率が65%で、ヒータ2の通電比率が40%で、駆動ディレイが60%で、点灯重なりが5%)である。
【0226】
図10A(a)に示した通電パターンは、1つの通電パターン群を形成し、図10A(b)に示した通電パターンは、1つの通電パターン群を形成し、図10A(c)に示した通電パターンは、1つの通電パターン群を形成する。このように、通電に用いる複数の加熱手段の点灯条件の組み合わせ、定着装置の動作モード、画像形成装置1のオプションの利用状況、および画像形成装置1の動作モードなどに応じて、通電パターン群を複数記憶しておき、これらの状況に応じて、通電パターン群を切り換えて用いる。複数の通電パターン群を記憶しておくことによって、通電パターン群を1つしか記憶してない場合に比べて、柔軟な通電制御を行うことができ、優先度の低い加熱手段への影響を少なくすることができ、定着性能の低下を可能な限り小さくしつつ、過剰電流を抑制することができる。
【0227】
パターン記憶部58は、これら複数の通電パターン群を記憶しておき、パターン選択決定部57が、出力決定部55からの情報を基にして、複数の通電パターン群の中から、対応する通電パターン群を選択し、更に選択した通電パターン群の中から、通電期間の重なりが小さくなる通電パターンを選択して、これを通電制御に用いる。
【0228】
パターン選択決定部57は、異なる2つの加熱手段の組み合わせの中から、加熱手段の選択状態に対応して、複数の通電パターン群から1つの通電パターン群を選択する。異なる2つの加熱手段の組み合わせとは、複数の加熱手段、たとえばヒータ1、ヒータ2、ヒータ3およびヒータ4の4つの加熱手段がとある場合、4つの加熱手段の内の2つの加熱手段を駆動するとき、その2つの加熱手段を選択する組み合わせのことであり、その組み合わせは、複数ある。パターン記憶部58は、そのそれぞれの組み合わせに対して、通電パターン群を対応させて記憶する。加熱手段の選択状態とは、どの過熱手段を通電に使用するか選択した状態のことである。複数の加熱手段が設けられていいても、常に全てに通電する訳ではなく、表面温度の到達状態および許容される通電量などに応じて、必要な加熱手段を適宜選択して通電する。
【0229】
図11は、抵抗発熱部32g1〜32g3への通電パターンの他の例を示す図である。図9に示した例と同様に、ヒータ1信号,ヒータ2信号は、電力制御部56が駆動制御部41を介して駆動手段43に送る駆動制御信号であり、ヒータ1信号は、抵抗発熱部32g1への通電を制御する駆動制御信号であり、ヒータ2信号は、抵抗発熱部32g2,32g3への通電を制御する駆動制御信号である。図11に示す通電パターンは、点灯周期の変更も併用して、通電期間の重なりをさらに低減した通電パターンである。
【0230】
図11(a)に示した例では、ヒータ1信号がONになっている期間Tton1と、ヒータ2信号がONになっている期間Tton2とは、期間Twで重なっている。このとき、点灯周期はTts1であり、駆動ディレイはTd1である。図11(b)に示した例では、点灯周期Tts2を図11(a)に示した点灯周期Tts1に時間ΔTsを加算した値とするとともに、駆動ディレイTd2を図11(a)に示した駆動ディレイTd1に時間ΔTsを加算した値とすることによって、ヒータ1信号がONになっている期間Tton1と、ヒータ2信号がONになっている期間Tton2とが重なっている期間Twを「0」としている。
【0231】
このように、点灯周期の変更も併用する場合、それぞれの加熱部材の通電期間と点灯時の電力との積、すなわち、電力量が、変更の前後で、略同等になるようにする。変更の前後で電力量を略同等にすることによって、加熱部材が発生する熱も、略同等にすることができ、温度の低下を引き起こさずに、通電期間の重なりによる過剰電流も低減することができるようになる。図11示した通電パターンは、駆動ディレイおよび点灯周期の変更によって、通電期間の重なりを低減したが、前述した位相制御による電力制御を併用することもできる。
【0232】
図6に示した第1の温度制御処理では、加熱部材32の抵抗発熱層32aについて説明したが、温度制御部42は、ヒータランプ36についても同様の方法で温度制御行う。たとえば、図2に示した加圧ローラ34に内包するヒータランプ36の場合は、センサデータ入力部51は、サーミスタ35cの検知信号を受け付けて第3検知温度を検出し、検出した第3検出温度を温度記憶部52に記憶させる。温度偏差算出部53は、温度記憶部52から第3検知温度および第4検知温度を読み出し、これら各検知温度に基づいて第3温度偏差および第4温度偏差を算出する。出力決定部55は、テーブル記憶部54に記憶している第2出力設定テーブルから、第3温度偏差および第4温度偏差の組み合わせに対応する増減通電量を読み出し、読み出した増減通電量に基づいて制御通電量を決定する。パターン選択決定部57は、決定された制御通電量と他の加熱部材の制御通電量とから、通電パターンを選択決定する。電力制御部56は、選択設定された通電パターンに基づいて電源回路44からヒータランプ36および各加熱部材への通電量を制御する。
【0233】
図2示した定着ユニット30の構成では、定着部材である定着ベルト33を、定着ローラ31と加熱部材32とで懸架したベルト定着方式について説明したが、このベルト定着方式に限定されるものではなく、たとえば、図12に示すような定着ユニット30aの構成にも適用することができる。
【0234】
図12は、定着ユニットの他の例である定着ユニット30aの構成を示す断面図である。
【0235】
図2に示した定着ユニット30では、定着ベルト33を、定着ベルト33を加熱する加熱部材32と、加圧部材である加圧ローラ34と、定着ベルト33とニップ部を形成する定着ローラ31とで懸架しているが、図12に示す定着ユニット30aでは、定着ローラ31を廃止し、定着ベルト33を懸架する構成を用いずに、定着ベルト33aのニップ部の内面側に加熱部材321を配置した構成である。
【0236】
図12に示した定着ユニット30aの加熱部材321は、面状発熱体321aおよび給電端子321bを含んで構成される。面状発熱体321aは、平板状、すなわち図4(a)〜(c)に示した抵抗発熱層32aの平板状の形状そのものであり、加熱部材321は、耐熱樹脂ホルダで保持されて、定着ベルト33aを介して加圧ローラ34に圧接され、定着ベルト33aと加圧ローラ34との間のニップ部に記録材を挟持搬送する。
【0237】
図12に示した定着ユニット30aも、上述した制御部40が加熱部材321への通電を、定着ユニット30の場合と同様に制御する構成であり、その作用および効果も定着ユニット30の場合と同様である。
【0238】
図13は、定着ユニットの他の例である定着ユニット30bの構成を示す断面図である。説明の便宜上、図2に示した定着ユニット30と同様の機能を有する部材については定着ユニット30の部材と同じ参照符を付し、重複を避けるために、その説明を省略する。定着装置30bは、図2に示した定着装置30に代えて画像形成装置1に備えられるものである。
【0239】
定着装置30bは、図2に示した定着装置30における加熱部材32に代えて、加熱部材である加熱ローラ132を備えており、加熱ローラ132の内部にハロゲンランプなどからなる中央加熱部材であるヒータランプ133aおよび端部加熱部材であるヒータランプ133bを備えている。
【0240】
加熱ローラ132は、たとえば、外径28mm、かつ肉厚0.5mmのアルミニウムからなる中空円筒状のローラ部材である。加熱ローラ132の両端部は、耐熱樹脂製の断熱ブッシュおよびボールベアリングからなる支持部材によって、回転可能に保持されている。この支持部材は、定着ローラ31から遠ざかる方向にバネなどの付勢部材によって付勢されたフレームに固定されている。付勢部材によって付勢されているので、定着ローラ31および加熱ローラ132に張架される定着ベルト33に所定の張力が付与されるようになっている。定着ベルト33に所定の張力が付与されるようになっているので、定着ローラ31が回転駆動されて定着ベルト33が定着ローラ31に従動回転すると、加熱ローラ132が定着ベルト33に従動回転するようになっている。
【0241】
加熱ローラ132の内部には、ヒータランプ133a,133bが配置されている。ヒータランプ133aは、加熱ローラ132の軸方向中央部の所定幅の領域に設けられており、ヒータランプ133bは、加熱ローラ132の軸方向両端部の所定幅の領域に設けられている。サーミスタ35aは、定着ベルト33および加熱ローラ132を介してヒータランプ133aに対向する位置に配置されており、サーミスタ35bは、定着ベルト33および加熱ローラ132を介してヒータランプ133bに対向する位置に配置されている。
【0242】
ヒータランプ133a,133bの動作は、温度制御部42によって制御される。具体的には、温度制御部42は、電源回路44からヒータランプ133a,133bに供給、つまり通電する電力を制御する。ヒータランプ133a,133bは、電源回路44から供給される電力に応じて発光し、ヒータランプ133a,133bから赤外線が放射される。ヒータランプ133a,133bから放射される赤外線によって、加熱ローラ132の内周面が赤外線を吸収して加熱され、加熱ローラ132全体が加熱される。ヒータランプ133a,133bが放射する赤外線を吸収しやすくするために、加熱ローラ132の内面に赤外線の波長域に良好な吸収特性を有する耐熱黒色塗料が塗布されてもよい。
【0243】
図14は、定着ユニット30bに備えられる温度制御部42が実行する第2の温度制御処理の処理手順を示すフローチャートである。制御部40は、たとえば、主制御部から定着処理の開始が知らされると、ステップB1に移る。ステップB1〜B4の処理は、図6に示したステップA1〜A4の処理と同様であり、重複を避けるために、説明は省略する。図14に示す第2の温度制御処理では、第2温度検知温度を1.5秒前の検知温度としている。
【0244】
ステップB5では、ステップB4で温度偏差算出部53が第1温度偏差および第2温度偏差を算出した後、出力決定部55は、テーブル記憶部54に記憶させている出力設定テーブルである後述するレベル変更値テーブルから第1温度偏差および第2温度偏差の組み合わせに対応する後述するレベル変更値を読み出す。
【0245】
ステップB6では、出力決定部55は、テーブル記憶部54に記憶させている出力規定テーブルに示される現在の位置に対応するレベルに対して、ステップB5で読み出したレベル変更値だけ変更したレベルの位置に、現在の位置を変更するとともに、変更後の現在の位置に対応するレベルの出力値を、テーブル記憶部54に記憶させている出力規定テーブルから読み出し、読み出した出力値を制御通電量として決定する。出力値は、電力量である。
【0246】
図15は、出力規定テーブルおよびレベル変更値テーブルの例を示す図である。出力規定テーブルは、ヒータランプごとの複数の出力規定テーブルを含み、テーブル記憶部54に記憶されている。
【0247】
図15(a)は、ヒータランプ133aについての出力規定テーブルである第1出力規定テーブル82の一例を示す。図15(a)に示した第1出力規定テーブル82は、レベル、出力値および位置の3つの項目についてのテーブルである。レベルは、ヒータランプ133aに対する通電量を定格電力に対する割合に応じて分割する15段階のレベルを示す。出力値は、ヒータランプ133aに対する通電量を、定格電力に対する割合に応じて分割した通電量の値をレベルに応じて示している。出力値は、定格電力に対する百分率で示されている。位置は、前回ヒータランプへの通電量がいずれのレベルに設定されたかを示し、白い丸印が、該当するレベルに対応する位置に示される。
【0248】
図15(a)に示した第1出力規定テーブル82では、レベルには、「1」〜「15」のレベルが下降順にしめされている。出力値には、レベル「15」が「100」、レベル「14」が「75」、レベル「13」が「70」、ベル「12」が「60」、レベル「11」が「50」、レベル「10」が「35」、レベル「9」が「30」、レベル「8」が「28」、レベル「7」が「25」、レベル「6」が「21」、レベル「5」が「10」、レベル「4」が「7」、レベル「3」が「5」、レベル「2」が「3」、レベル「1」が「0」である。位置は、レベル「11」に対応する位置に白い丸印が示されている。すなわち、前回設定されたヒータランプ133aへの通電量は、定格電力の50%に相当するレベル11である場合の例を示している。
【0249】
レベル変更値テーブルは、中央部用テーブルである第1レベル変更値テーブル、加圧部材用テーブルである第2レベル変更値テーブル、および端部用テーブルである第3レベル変更値テーブルを含み、テーブル記憶部54に記憶されている。
【0250】
中央部用テーブルである第1レベル変更値テーブルは、目標温度と現在の第1検知温度との温度偏差である第1温度偏差と、所定時間前の第2検知温度と現在の検知温度との温度偏差である第2温度偏差との組み合わせごとに、対応する通電量のレベル変更値が設定されたレベル変更値テーブルである。加圧部材用テーブルである第2レベル変更値テーブルは、目標温度と現在の第3検知温度との温度偏差である第3温度偏差と、所定時間前の第4検知温度と現在の検知温度との温度偏差である第4温度偏差との組み合わせごとに、対応する通電量のレベル変更値が設定されたレベル変更値テーブルである。端部用テーブルである第3レベル変更値テーブルは、目標温度と現在の第5検知温度との温度偏差である第5温度偏差と、所定時間前の第6検知温度と現在の検知温度との温度偏差である第6温度偏差との組み合わせごとに、対応する通電量のレベル変更値が設定されたレベル変更値テーブルである。
【0251】
図15(b)は、第1温度偏差と第2温度偏差との組み合わせに応じたヒータランプ133aに対する通電量のレベル変更値が設定された第1レベル変更値テーブル83の一例を示す。たとえば、定着ベルト33の目標温度が165℃に設定されており、サーミスタ35aの検知温度である第1検知温度が161℃であり、サーミスタ35aについて、第1検知温度のうち第2検知温度とすべき時間である所定時間、たとえば1.5秒前の検知温度である第2検知温度が165℃であり、現在のヒータランプ133aへの通電量がレベル11、つまり定格電力の50%である場合、図15(b)に示すレベル変更値テーブルからレベル変更値は「2」なので、図15(a)に示す出力規定テーブルに基づいてレベル11をレベル13に変更する。これにより、ヒータランプ133aへの通電量はレベル13に対応する定格電力の70%に変更される。
【0252】
また、定着ベルト33の目標温度が170℃に設定されており、サーミスタ35aの検知温度である第1検知温度が172℃であり、サーミスタ35aの前記所定時間前の検知温度である第2検知温度が165℃であり、現在のヒータランプ133aへの通電量がレベル7、つまり定格電力の25%である場合、図15(b)に示すレベル変更値テーブルからレベル変更値は「−1」なので、図15(a)に示す出力規定テーブルに基づいてレベルをレベル6に変更する。これにより、ヒータランプ133aへの通電量はレベル6に対応する定格電力の21%に変更される。
【0253】
なお、現在のレベル数にレベル変更値テーブルから読み出したレベル変更値を加算するとレベルの値の最大値、たとえば図15(a)に示した例の場合「15」を上回る場合には変更後のレベルの値を最大値、つまり「15」に設定し、レベルの値の最小値、たとえば図15(a)に示した例の場合「1」を下回る場合には変更後のレベルの値を最小値、つまり「1」に設定する。
【0254】
ステップB7では、パターン選択決定部57は、出力決定部55が決定した制御通電量を基に、パターン記憶部に記憶した複数の通電期間の重なりが小さくなる通電パターンの中から、複数の加熱部材の通電量にあった通電パターンを選択する。ステップB8では、電力制御部56は、パターン選択決定部57によって選択された通電パターンに従って駆動制御部41に駆動信号を出力する。ステップB9では、温度制御部42は、が終了したか否かを判定する。主制御部から定着処理の終了が知らされていると、第2の温度制御処理を終了し、主制御部から定着処理の終了が知らされていないと、ステップB1に戻り、ステップB1〜B8までの処理を繰り返す。
【0255】
温度制御部42は、ヒータランプ133bおよびヒータランプ36に対する温度制御についても、ヒータランプ133aに対する温度制御と同様の方法で行う。
【0256】
すなわち、図13に示した定着ユニット30bの構成では、センサデータ入力部51は、サーミスタ35a〜35cの検知信号を受け付け、これら各検知信号に基づいて、サーミスタ35aの検知温度である第1検知温度、サーミスタ35bの検知温度である第3検知温度、およびサーミスタ35cの検知温度である第5検知温度をそれぞれ検出する。そして、検出した第1検知温度、第3検知温度および第5検知温度を温度記憶部52に記憶させる。
【0257】
次に、温度偏差算出部53は、温度記憶部52から第1検知温度、および所定時間前、たとえば1.5秒前の第1検知温度である第2検知温度を読み出し、読み出した第1検知温度および第2検知温度に基づいて、第1温度偏差および第2温度偏差を算出し、算出した第1温度偏差および第2温度偏差を出力決定部55に送る。同様に、温度偏差算出部53は、温度記憶部52から第3検知温度および所定時間前の第3検知温度である第4検知温度を読み出し、読み出した第3検知温度および第4検知温度に基づいて、第3温度偏差および第4温度偏差を算出し、算出した第3温度偏差および第4温度偏差を出力決定部55に送る。また同様に、温度偏差算出部53は、温度記憶部52から第5検知温度および所定時間前の第5検知温度である第6検知温度を読み出し、読み出した第5検知温度および第6検知温度に基づいて、定着ベルト33の目標温度と第5検知温度との偏差である第5温度偏差、および第5検知温度と第6検知温度との偏差である第6温度偏差を算出し、算出した第5温度偏差および第6温度偏差を出力決定部55に送る。
【0258】
次に、出力決定部55は、温度偏差算出部53から受け取った第1温度偏差および第2温度偏差の組み合わせに基づいて、ヒータランプ133aに供給する電力量を決定し、第3温度偏差および第4温度偏差の組み合わせに基づいて、ヒータランプ36に供給する電力量を決定し、第5温度偏差および第6温度偏差の組み合わせに基づいて、ヒータランプ133bに供給する電力量を決定する。
【0259】
具体的には、出力決定部55は、第1温度偏差と第2温度偏差との組み合わせに応じたレベル変更値を第1レベル変更値テーブル83から読み出し、第1出力規定テーブルにおける現在のレベルを、このレベル変更値分だけ変更するとともに、ヒータランプ133aに対する通電量を変更後のレベルに応じた通電量に変更して制御通電量とする。同様に、出力決定部55は、第3温度偏差と第4温度偏差との組み合わせに応じたレベル変更値を第2レベル変更値テーブルから読み出し、ヒータランプ36に対応する出力規定テーブルである第2出力規定テーブルにおける現在のレベルを、このレベル変更値分だけ変更するとともに、ヒータランプ36に対する通電量を変更後のレベルに応じた通電量に変更して制御通電量とする。また同様に、出力決定部55は、第5温度偏差と第6温度偏差との組み合わせに応じたレベル変更値を第3レベル変更値テーブルから読み出し、ヒータランプ133bに対応する出力規定テーブルである第3出力規定テーブルにおける現在のレベルを、このレベル変更値分だけ変更するとともに、ヒータランプ133bに対する通電量を変更後のレベルに応じた通電量に変更して制御通電量とする。
【0260】
次に、パターン選択決定部57は、パターン選択決定部57は、出力決定部55が決定した制御通電量を基に、パターン記憶部58に記憶した複数の通電パターンの中から、各加熱部材の通電量にあった通電パターンをそれぞれ選択する。そして、電力制御部56は、パターン選択決定部57によって選択された通電パターンに従って、ヒータランプ36およびヒータランプ133a,133bに対する通電量を制御する。
【0261】
図6に示した第1の温度制御処理および図14に示した第2の温度制御処理は、定着処理の実行中だけでなく、定着処理を迅速に行える温度状態を維持して待機する準備(以下「Ready」という)待機状態においても、上述した制御方法に基づいて各部の温度制御を行うようになっている。
【0262】
図13に示した定着ユニット30bでは、定着ベルト33の幅方向中央部に対応する位置に備えられるヒータランプ133aと、定着ベルト33の幅方向両端部に対応する位置に備えられるヒータランプ133bと、加圧ローラ34の内部に備えられたヒータランプ36とを備えている。そして、定着ベルト33における幅方向中央部の現在の検知温度と定着ベルト33の目標温度との偏差である第1温度偏差と、第1温度偏差と所定時間前の定着ベルト33における幅方向中央部の検知温度との偏差である第2温度偏差との組み合わせに基づいて、ヒータランプ133aへの通電量を制御する。また、加圧ローラ34の現在の検知温度と加圧ローラ34の目標温度との偏差である第3温度偏差と、第3温度偏差と所定時間前の加圧ローラ34の検知温度との偏差である第4温度偏差との組み合わせに基づいて、ヒータランプ36への通電量を制御する。また、定着ベルト33における幅方向端部の現在の検知温度と定着ベルト33の目標温度との偏差である第5温度偏差と、第5温度偏差と所定時間前の定着ベルト33における幅方向端部の検知温度との偏差である第6温度偏差との組み合わせに基づいて、ヒータランプ133bへの通電量を制御する。
【0263】
したがって、各ヒータランプに対する過去の温度検知部の出力を、次の出力値の制御に反映されることができる。すなわち、過去の温度検知部の出力が各々の制御するタイミングにおいて、影響を及ぼし、その累積が、現在の制御に反映される。したがって、定着ベルト33および加圧ローラ34の温度リップルを簡単な構成で効果的に抑制し、その電力制御において、通電期間の重なりを低減して、過剰電流による過熱を抑制することができる。そして、過加熱あるいは熱量不足に起因する画質の低下および記録材の巻き付きなどの不具合を防止しつつ、余分なエネルギー消費が削減できるので、省エネルギー化を図ることができる。
【0264】
図16は、位相制御法での位相角を変更することによって通電期間の重なりを小さくした通電パターンの一例を示す図である。ヒータ1信号は、ヒータランプ133aを駆動する信号であり、ヒータ2信号は、ヒータランプ133bを駆動する信号である。
【0265】
加熱部材への通電制御は、通電期間の重なりが少なくなる通電パターンの構成として、位相制御法での位相角を変更する構成によって行ってもよい。位相角で通電期間の重なりを小さくする方法は、たとえば、図16に示す通電パターンのように、出力決定部55が決定した制御通電量になる位相角で、ヒータランプ133aとヒータランプ133bを駆動するが、それぞれの通電期間の一部が重なる期間twが存在する。
【0266】
図17は、駆動ディレイを設けても通電期間の重なりのある通電パターンの例を示す図である。図17に示した通電パターンは、図16に示した位相制御のみの通電パターンに、デューティ制御を加えた通電パターンである。
【0267】
ヒータ信号1は、通電期間Tton1に位相制御を行い、非通電期間Ttoff1は通電を停止する信号である。ヒータ信号2は、通電期間Tton2に位相制御を行い、非通電期間Ttoff2は通電を停止する信号である。ヒータ信号2は、ヒータ信号1に対して駆動ディレイTdで通電期間Tton2を開始する。駆動ディレイTdは、非通電期間Ttoff2に等しいので、通電期間Tton1と通電期間Tton2との重なりTwは、通電期間Tton1の開始から駆動ディレイTdの時間が経過した時点で始まり、通電期間Tton1の終了時点で終了する。通電期間Tton1と通電期間Tton2とが重なるTwの期間では、ヒータ1信号とヒータ2信号とは、位相制御による重なりtwが生じている。
【0268】
図18は、位相制御法での位相角を変更することによって通電期間の重なりを小さくした通電パターンの他の例を示す図である。図17に示す通電パターンのように、駆動ディレイを設けていても、ヒータ1信号とヒータ2信号とが重なる場合は、その重なる部分で過剰電流が流れることになる。
【0269】
図16に示したでは、ゼロクロスポイントからの位相角で通電を開始して、次のゼロクロスポイントになる前でOFFとなるようにしている。しかしながら、図18に示した例では、通電期間の重なる期間twにおいて、ヒータ1信号でヒータランプ133aを駆動し、ヒータ2信号でヒータランプ133bを駆動するとき、まず基準とするヒータランプ133aを通電し、その後所定の駆動ディレイtdを設けて、駆動ディレイtdの経過後にヒータランプ133bを駆動する。最初にヒータランプ133bを駆動するときは、ヒータランプ133aへの通電とヒータランプ133bへの通電とが重なるので、この期間での通電は、ヒータランプ133aへの通電を開始する前のヒータランプ133aの非通電期間中に、ヒータランプ133bを駆動する。
【0270】
その際、ヒータランプ133bの供給電力が不足する場合があるが、ヒータランプ133aの通電が終了した後のヒータランプ133bを単独駆動する期間tsに、通電の重なりを低減する際に少なくなった分を補填するように、出力決定部55が当初設定していた通電量よりも大きい通電量に補正して、出力を行う。このように、通常位相制御を行う時の非通電期間中を、他の加熱部材の通電期間に割り当てて、不足した分を、その後の単独駆動時に賄うようにすれば、熱供給不足を起こさずに、かつ過剰電流も抑えることができる。
【0271】
図19は、印加電圧を徐々に変化させる通電パターンの一例を示す図である。
交流電源の電圧が高い地域では、加熱部材への通電と非通電との切換での電圧変動が大きい。そこで、非通電から通電および通電から非通電へと切り換えるときには、加熱部材への印加電圧が徐々に大きくおよび徐々に小さくなるように、スローアップおよびスローダウンの制御を行うことがある。スローアップおよびスローダウンの制御は、印加電圧が徐々に変化するように、図19に示すような通電パターンで、非通電から通電および通電から非通電に切り換えるときに、電圧を徐々に変化させるように実行される。
【0272】
各加熱部材への通電期間の重なりがある場合には、各加熱部材への通電量から、通常設定されているスローアップおよびスローダウンの通電パターンの中から、通電期間の重なりが小さくなる通電パターンを選択して、通電の開始および終了を行って、過剰電流を抑制する。
【0273】
すなわち、基準とする一つの加熱手段のスローダウン期間中の位相角を少し小さめにし、その代わり他の加熱手段の最終の通電量に到達するまでのスローアップ期間中も少し小さめにする。図19(a)、(b)に示した波形では共に、左から右に移るにつれて、半波長の期間での通電時間が大きくなっている。このとき、この1波長の期間中、たとえば周波数50Hzであれば20msの期間中、あるいは周波数60Hzであれば16.67msの期間中の時間平均電圧は、前述の半波長中の通電時間に応じて大きくなる。簡単な例であると、実効電圧が100Vで最大値が約141Vの交流電源において、周波数50Hzでは10ms通電、すなわち、常にオンであれば、当然実効値100Vの電圧になる。また、5ms通電であれば、実効値70.7Vになる。通電時間と実効値電圧とは必ずしも比例する訳ではない。表1に、通電時間および実効値電圧の具体例を示す。
【表1】

【0274】
そして、この通電時間は、半波長間通電、たとえば周波数50Hzであれば10ms間通電、あるいは周波数60Hzであれば8.333ms間通電で、位相角180°に対応する。上記のように、位相角、つまり通電時間を変えることによって、実効値が変化するので、図19に示した斜線部の面積が多くなると、つまり位相角が大きくなると、印加電圧が大きくなる。したがって、通電開始初期は、低い印加電圧で行い、徐々に印加電圧を大きくしていくことによって、急激な電圧変動を抑えて、ノイズの発生、および電圧変動による誤動作を抑制することができる。
【0275】
また、全体の点灯周期を少し長くして、適用前の通電量に実質的に略同等となるようにする。こうすることで、通電期間の重なりによる電流量は小さくなり、過剰電流が流れなくなる。スローアップおよびスローダウンの制御では、他の機器へのノイズの影響が出ないように配慮して通電パターンが設定されている。
【0276】
電力制御方法は、上述した実施形態で用いた位相制御法に限定されるものではなく、たとえば通電期間中に、所定の通電量になるように、半波長単位あるいは全波長単位で、通電および非通電を繰り返してもよい。換言すると、半波長単位あるいは全波長単位で、通電を間引く電力制御を行ってもよい。この場合、一つの加熱部材の通電中でない間引き状態のときに、他の加熱部材を通電し、通電量が不足する場合は、単独駆動時、元々の通電量と実質的に同等の通電量になるようにし、あるいは、点灯周期を変更して、元々の通電量と実質的に同等の通電量になるようにする。
【0277】
半波長単位通電を間引く電力制御および全波長単位で通電を間引く電力制御について、図16を用いて説明する。ヒータ1では、最初から、常に半波長単位の通電時間が少し短くなった通電、たとえば80%の通電を行っている。ここで、半波長単位で通電を間引くとは、ヒータ1について、最初から2つの半波は通電し、第3番目は本来通電するが、これを非通電とする。第4番目および第5番目は通電し、第6番目は非通電とする。そして、第7番目以降も同様に通電および非通電を繰り返す。このように、半波波長単位で、通電を非通電にして、本来は通電するところを非通電OFFとして、結果的に時間平均の通電量を小さく、つまり電流が流れるのを抑制するようにし、その間に他のヒータ2に通電する。このように、半波長ごとに、通電の有無を設定して、部分的に歯抜けの通電を行うことを、制御では、一般的に間引くと称する。
【0278】
元々の通電量と実質的に同等の通電量になるようにするとは、単位時間当たりの通電量が実質的に同等になるようにすることであり、たとえば、通電を開始するタイミング、あるいは点灯周期などを変更して、時間平均した通電量が当初通電量と同じになるように調整する。また、図18に示すように、元々は通電しない非通電期間中にも、足りない分を通電して、時間平均した通電量が同じになるようにする。
【0279】
また、点灯周期を変更するとは、たとえば、通常の点灯周期が1秒のとき、点灯周期を、0.75秒、1.25秒あるいは1.5秒のように変更することである。点灯周期の変更は、制御性能、加熱手段の定格電力などの諸特性を考慮し、かつ通電期間の重なりの低減効果も考慮して決定される。
【0280】
また、通電量の制御は、上述した電力制御方法に限定されるものではなく、たとえば、印加する交流電圧の印加電圧を変更する電圧変更手段を設けて、この電圧変更手段の電圧設置値を、パターン選択決定部57が、パターン記憶部58から選択決定して、加熱部材32を駆動する。電圧変更手段は、通電期間の重なりでの交流電圧の印加電圧を、それぞれ低くして、実質的に流れる電流を小さく抑える。そして、通常の単独駆動期間中は、所定の印加電圧で駆動するように電圧変更手段が交流電圧を低くしているが、通電期間の重なりを小さくするために、通電量を抑制した分を補填するように、単独駆動する期間に、交流電圧の印加電圧を少し高めに変更する。
【0281】
さらにまた、これらの通電パターンを用いる電力制御方法と合わせて、それぞれの加熱手段に通電するデューティの値を補正して、通電期間の重なりを直接小さくする方法を併用してもよい。
【0282】
図20は、定着ユニットの他の例である定着ユニット30cの構成を示す断面図である。上述した各実施形態では、定着ローラ、定着ベルト、および加圧ローラを1組だけ備えた定着装置を用いる構成について説明したが、これらの構成に限定されるものではない。定着装置は、たとえば、図20に示すように、図2に示した定着装置30と、この定着装置30に対して記録材搬送方向の下流側に備えられる第2の定着装置60とを備えた定着装置30cを用いてもよい。
【0283】
定着装置30cは、内部にヒータランプ65を備えた定着ローラ61と、内部にヒータランプ66を備えた加圧ローラ62とを所定の荷重で当接させた構成である。定着ローラ61および加圧ローラ62は、互いに逆方向に回転駆動する。そして、回転駆動されている定着ローラ61と加圧ローラ62との間に記録材を通紙させることによって、定着装置30によって記録材上に一次定着されたトナー像をより強固に記録材に定着させる。
【0284】
定着ローラ61との対向部にはサーミスタ63が配置され、加圧ローラ62との対向部にはサーミスタ64が配置されている。サーミスタ63による定着ローラ61の温度検知結果、およびサーミスタ64による加圧ローラ62の温度検知結果に基づいて、温度制御部42は、ヒータランプ65,66への通電量を制御するようになっている。ヒータランプ65,66に対する温度制御方法は、たとえば加熱部材32およびヒータランプ36に対する温度制御方法と同様の方法を用いて行うことができる。
【0285】
定着ローラ61および加圧ローラ62は特に限定されるものではなく、熱ローラ定着方式の定着装置において従来から用いられているものを用いてもよい。定着装置30cは、定着ローラ61および加圧ローラ62として、内側から順に芯金、弾性層、および離型層が形成された3層構造のものを用いる。芯金には、たとえば、鉄、ステンレス鋼、アルミニウムもしくは銅などの金属あるいはそれらの金属の合金などが用いられる。弾性層には、シリコンゴムもしくはフッ素ゴムなどの耐熱性を有するゴム材料が適しており、離型層は、PFAもしくはPTFEなどのフッ素樹脂が適している。
【0286】
定着装置30と定着装置60との間には、搬送ガイド板または搬送ローラなどのガイド部材70が設けられている。定着装置30で一次定着処理された記録材Pは、ガイド部材70に沿って搬送されて、定着装置60で2次定着処理されて排出されるようになっている。
【0287】
記録材が薄い場合あるいは定着処理を素早く行いたい場合には、定着装置30によって一次定着処理された記録材の搬送方向をガイド部材70によって切り換えて、定着装置60を介さずに排出するための迂回経路に搬送させ、この迂回経路に配設される複数の搬送ローラ71a,71bによって定着装置30cの外部に排出するようにしてもよい。
【0288】
定着ローラ61および加圧ローラ62を加熱するための加熱手段は、ヒータランプに限定されるものではなく、たとえば誘導加熱を利用した誘導加熱方式の加熱手段を用いてもよく、あるいはヒータランプと誘導加熱方式の加熱手段とを適宜組み合わせて用いてもよい。
【0289】
図21は、定着ユニットの他の例である定着ユニット30dの構成を示す断面図である。図21に示した定着ユニット30dは、図2に示した定着装置30を2組備えた構成である。すなわち、図20に示した定着ユニット30cに含まれる定着装置60に代えて図2に示した定着装置30を備えた構成である。
【0290】
定着ユニット30c,30dなどの2段階定着方式の定着装置を用いる構成では、各定着装置の熱容量を小さくすることができるので、熱応答性を高めて定着処理を迅速に行うことができる。また、図2に示した定着装置30の加熱部材32およびヒータランプ36に対する上述した温度制御方法を適用することによって、温度リップルを低減することができる。
【0291】
図22は、定着ユニットの他の例である定着ユニット30eの構成を示す断面図である。図21に示した定着ユニット30dでは、加圧部材として加圧ローラ34を用いているが、これに限定されるものではなく、たとえば図22に示すように、加圧部材として加圧ベルト33bを用いたツインベルト定着方式(以下「ツインベルト方式」ともいう)の定着装置30eを用いてもよい。
【0292】
定着装置30eは、定着ローラ31、加熱部材32、定着パッド38a、定着パッド38aに回転可能に懸架された定着ベルト33、加圧ローラ34、テンションローラである懸架ローラ39、加圧パッド38b、および加圧パッド38bに回転可能に懸架された加圧ベルト33bを備えている。サーミスタ35a,35bは定着ベルト33の表面温度を検知して温度制御部42に伝達し、サーミスタ35cは加圧ベルト33bの表面温度を検知して温度制御部42に伝達するようになっている。温度制御部42は、定着装置30と同様の方法で加熱部材32およびヒータランプ36への通電量を制御するようになっている。
【0293】
定着パッド38aおよび加圧パッド38bは、定着ローラ31と加圧ローラ34とが定着ベルト33および加圧ベルト33bを介して圧接する位置に対して記録材搬送方向の上流側で定着ベルト33および加圧ベルト33bを介して所定の荷重で圧接するように配置される構成となっている。この構成としているので、定着パッド38aと加圧パッド38bとの対向部から定着ローラ31と加圧ローラ34との対向部までの広い範囲に定着ニップ部が形成され、搬送される記録材Pを効率的に加熱できるようになっている。
【0294】
定着パッド38aと加圧パッド38bとの圧接力は、定着ローラ31と加圧ローラ34との圧接力よりも小さく設定されている。したがって、この構成では、定着ニップ部の最下流部分である定着ローラ31と加圧ローラ34との対向部において、記録材搬送方向の圧力分布が最大になる。この圧力分布によって、定着ベルト33と加圧ベルト33bとが回転時にスリップすることを防止することができる。
【0295】
定着ローラ31、加熱部材32、定着ベルト33、および加圧ローラ34は、図2に示した定着ベルト33と同様のものである。加圧ベルト33bは、定着ベルト33と同様のものである。定着パッド38aおよび加圧パッド38bを構成する材料は、たとえばポリフェニレンサルファイド樹脂(略称:PPS)などを用いることができる。
【0296】
懸架ローラ39の構成は、特に限定されるものではないが、加圧ベルト33bからの熱伝導性が低いものを用いることが好ましい。懸架ローラ39は、外径30mm、内径26mmの鉄合金製の芯金の周囲にシリコーンスポンジ層を設けたローラ部材によって構成されている。
【0297】
回転体ではない定着パッド38aと回転体ではない加圧パッド38bとで定着ニップ部を形成すると、定着ベルト33の内周面は、定着パッド38aに摺擦され、加圧ベルト33bの内周面は、加圧パッド38bに摺擦される。定着ベルト33の内周面と定着パッド38aとの摩擦係数、および加圧ベルト33bの内周面と加圧パッド38bとの摩擦係数が大きいと、摺動抵抗が大きくなる。摺動抵抗が大きくなることに起因して、画像のずれ、ギア破損、駆動モータの消費電力アップなどの問題が発生し、特にツインベルト方式において、この問題が顕著である。そこで、摺動抵抗を減らすために、定着ベルト33に接触する定着パッド38aの接触面、および加圧ベルト33bに接触する加圧パッド38bの接触面には、低摩擦シート層がそれぞれ設けられている。低摩擦シート層を設けることによって、定着ベルト33との摺擦による定着パッド38aの摩耗、および加圧ベルト33bとの摺擦による加圧パッド38b摩耗が低減されるとともに、摺動抵抗も低減することができるので、良好なベルト走行性およびベルト耐久性が得られる。
【0298】
図22に示した定着装置30eのようなツインベルト方式の定着装置においても、図2に示した定着装置30の加熱部材32およびヒータランプ36に対する上述した温度制御方法を適用することにより、温度リップルを低減することができる。
【0299】
上述した各実施形態において、画像形成装置1の主制御部、および定着装置30,30a〜30eの制御部40を、コンピュータ、たとえばCPUおよびMPUなどのプロセッサを用いてソフトウェアによって実現してもよい。この場合、画像形成装置1、定着装置30,30a〜30eは、たとえば各機能を実現するプログラムの命令を実行するCPU、CPUによって実行されるプログラムを格納するROM(read only memory)、CPUによって実行されるプログラムを展開するためのRAM(random access memory)、CPUによって実行されるプログラムおよび各種データを格納するためのメモリなどの記憶装置、あるいは記録媒体などを備えている。そして、画像形成装置1、および定着装置30,30a〜30eの上述した機能を実現するプログラムのプログラムコードをコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、画像形成装置1、および定着装置30,30a〜30eに供給し、そのコンピュータが記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出して実行することによって、本発明の目的は達成される。プログラムコードは、実行形式プログラム、中間コードプログラムまたはソースプログラムである。
【0300】
記録媒体としては、たとえば、磁気テープおよびカセットテープなどのテープ系、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスクなどの磁気ディスクおよびCD−ROM(Compact Disk Read Only Memory)/MO(Magneto Optical disk)/MD(Mini Disc)/DVD(Digital Versatile Disk)/CD−R(Compact Disk Recordable)などの光ディスクを含むディスク系、メモリカードを含むICカード/光カードなどのカード系、あるいはマスクROM/EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)/EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)/フラッシュROMなどの半導体メモリ系などの記録媒体を用いることができる。
【0301】
また、画像形成装置1、および定着装置30,30a〜30eを通信ネットワークと接続可能に構成し、通信ネットワークを介して上述したプログラムコードを供給してもよい。この通信ネットワークとしては、特に限定されるものではなく、たとえば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN(Local Area Network)、ISDN(Integrated Services Digital Network)、VAN(Value Added Network)、CATV(Community Antenna Television)通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、あるいは衛星通信網などが利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されるものではなく、たとえば、IEEE(Institute of Electrical and Electronic Engineers)1394、USB(Universal Serial Bus)、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、あるいはADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)回線などの有線でも、IrDA(Infrared Data
Association)およびリモートコン図ローラのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR(High Data Rate)、携帯電話網、衛星回線、あるいは地上波デジタル網などの無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。
【0302】
また、画像形成装置1の主制御部、および定着装置30,30a〜30eの制御部40は、プログラムを用いて実現されるものに限定されるものではなく、たとえばハードウェアロジックによって構成されるものであってもよく、処理の一部を行うハードウェアと当該ハードウェアの制御および残余の処理を行うプログラムを実行する演算手段とを組み合わせたものであってもよい。
【0303】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、各請求項に開示した範囲で、種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0304】
1 画像形成装置
10 中間転写ベルトユニット
11 中間転写ベルト
11a 中間転写ベルト駆動ローラ
11b 中間転写ベルト従道ローラ
12 中間転写ベルトクリーニングユニット
13a〜13d 中間転写ローラ
14 二次転写ユニット
15 露光ユニット
16 内部給紙ユニット
16a,17a ピックアップローラ
17 手差し給紙ユニット
18 排紙トレイ
19 給紙ローラ
30,30b〜30e,60 定着装置
31,61 定着ローラ
31a 芯金
32,321 加熱部材
32a,32a1〜32a3 抵抗発熱層
32b 絶縁層
32c 基材層
32d コート層
32e1〜32e3,32f1〜32f3 給電部
33,33a 定着ベルト
33b 加圧ベルト
34,62 加圧ローラ
34a 芯金
34b 弾性層
34c 離型層
35a〜35c,63,64 サーミスタ
36,65,66,133a,133b ヒータランプ
38a 定着パッド
38b 加圧パッド
39 懸架ローラ
40 制御部
41 駆動制御部
42 温度制御部
43 駆動手段
44 電源回路
51 センサデータ入力部
52 温度記憶部
53 温度偏差算出部
54 テーブル記憶部
55 出力決定部
56 電力制御部
57 パターン選択決定部
58 パターン記憶部
70 ガイド部材
71a,71b 搬送ローラ
100a〜100d可視画像形成ユニット
101a〜101d 感光体
102a〜102d 現像ユニット
103a〜103d 帯電ユニット
104a〜104d クリーニングユニット
132 加熱ローラ
151 レーザ照射部
152 反射部
321a 面状発熱体
321b 給電端子
r ローラ部材
M 未定着トナー
N 定着ニップ部
P 記録材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能に設けられ、現像剤を定着する定着部材と、回転可能に設けられ、定着部材とともに記録材に加圧する加圧部材と、通電によって定着部材を加熱する複数の加熱手段と、複数の加熱手段への通電を制御する温度制御手段とを含み、定着部材と加圧部材との間を構成するニップ部に挿入される記録材を、定着部材と加圧部材とで挟持しながら搬送することによって、記録材上の未定着画像を定着させる定着装置であって、
温度制御手段は、
予め定める周期内で通電期間と非通電期間とを切り換えて複数の加熱手段への通電を制御するための複数の通電パターンを記憶するパターン記憶部と、
各加熱手段の通電電力設定に応じて、パターン記憶部に記憶される複数の通電パターンの中から、通電期間の重なりが小さくなる通電パターンを選択するパターン選択決定部と、
パターン選択決定部によって選択された通電パターンに基づいて複数の加熱手段への通電を制御する駆動部とを含むことを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記複数の加熱手段は、該複数の加熱手段の定格電力値の合計が、印字動作するときに供給することができる許容電力よりも大きい電力であることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記温度制御手段は、位相制御による通電を併用して、前記加熱手段に通電することを特徴とする請求項1または2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記パターン記憶部は、前記複数の加熱手段のうち2つの加熱手段を選択し、選択した2つの加熱手段について、複数の通電パターンを記憶することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の定着装置。
【請求項5】
前記パターン記憶部は、複数の通電パターンを1つの通電パターン群として、複数の通電パターン群を記憶し、
前記パターン選択決定部は、異なる2つの加熱手段の組み合わせの中から、加熱手段の選択状態に対応して、前記通電パターン群から1つの通電パターン群を選択し、選択した通電パターン群から、通電しようとする加熱手段の選択状態に合った通電パターンを選択することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の定着装置。
【請求項6】
前記パターン記憶部は、基準となる1つの加熱手段への通電の開始時刻から遅れて通電を開始するまでの遅延時間である駆動ディレイが、予め定める標準となる遅延時間に設定された通電パターンと、予め定める標準となる遅延時間とは異なる遅延時間に設定された通電パターンとを、前記基準となる1つの加熱手段を除く残余の加熱手段ごとに記憶することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の定着装置。
【請求項7】
前記パターン記憶部に予め設定する通電パターンは、前記複数の加熱手段それぞれのデューティの値から、デューティの点灯周期を変更して設定することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の定着装置。
【請求項8】
前記パターン記憶部に予め設定する通電パターンは、前記複数の加熱手段それぞれの通電量から、位相制御における位相角を変更して設定することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の定着装置。
【請求項9】
前記パターン記憶部に予め設定する通電パターンは、前記複数の加熱手段それぞれのデューティの値から、それぞれのデューティの値を補正して設定し、
前記温度制御手段は、補正後のデューティの値で前記複数の加熱手段を駆動することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の定着装置。
【請求項10】
前記温度制御手段は、複数の加熱手段への通電を制御するとき、通電開始から徐々に位相角を大きくして通電するスローアップ制御と、通電終了までに徐々に位相角を小さくして通電するスローダウン制御とを行い、
前記記憶部に予め設定する通電パターンは、前記複数の加熱手段それぞれのデューティの値から、前記スローアップ及びスローダウンを行うときの位相角を変更して設定することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の定着装置。
【請求項11】
前記温度制御手段は、複数の加熱手段への通電を制御するとき、通電期間に交流電源周波数に同期して、半波長単位あるいは全波長単位で間引く制御を行い、
前記記憶部に予め設定する通電パターンは、前記複数の加熱手段それぞれのデューティの値から、前記半波長単位あるいは全波長単位で間引く時の間引きパターンを変更して設定することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の定着装置。
【請求項12】
前記記憶部に予め設定する通電パターンは、前記複数の加熱手段それぞれのデューティの値から、前記複数の加熱手段に供給する電圧値の変更状態を設定することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の定着装置。
【請求項13】
前記記憶部に予め設定する通電パターンは、請求項6〜請求項12に記載の通電パターンの設定を複数組み合わせて設定することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の定着装置。
【請求項14】
前記複数の加熱手段のうち少なくとも1つは、抵抗発熱体であることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1つに記載の定着装置。
【請求項15】
前記抵抗発熱体は、複数の分岐部に分岐されており、
前記パターン記憶部に予め設定する通電パターンは、前記複数の加熱手段それぞれのデューティの値から、前記温度制御手段が前記複数に分岐した分岐部への通電状態を設定することを特徴とする請求項14に記載の定着装置。
【請求項16】
前記定着部材は、無端状のベルト部材であることを特徴とする請求項1〜15のいずれか1つに記載の定着装置。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか1つに記載の定着装置を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項18】
回転可能に設けられ、現像剤を定着する定着部材と、回転可能に設けられ、定着部材とともに記録材に加圧する加圧部材と、通電によって定着部材を加熱する複数の加熱手段と、予め定める周期内で通電期間と非通電期間とを切り換えて複数の加熱手段への通電を制御するための複数の通電パターンを記憶するパターン記憶部とを含み、定着部材と加圧部材との間を構成するニップ部に挿入される記録材を、定着部材と加圧部材とで挟持しながら搬送することによって、記録材上の未定着画像を定着させる定着装置が実行する定着装置の温度制御方法であって、
各加熱手段の通電電力設定に応じて、パターン記憶部に記憶される複数の通電パターンの中から、通電期間の重なりが小さくなる通電パターンを選択するパターン選択決定ステップと、
パターン選択決定ステップで選択された通電パターンに基づいて複数の加熱手段への通電を制御する通電制御ステップとを含むことを特徴とする定着装置の温度制御方法。
【請求項19】
回転可能に設けられ、現像剤を定着する定着部材と、回転可能に設けられ、定着部材とともに記録材に加圧する加圧部材と、通電によって定着部材を加熱する複数の加熱手段と、予め定める周期内で通電期間と非通電期間とを切り換えて複数の加熱手段への通電を制御するための複数の通電パターンを記憶するパターン記憶部と、コンピュータとを含み、定着部材と加圧部材との間を構成するニップ部に挿入される記録材を、定着部材と加圧部材とで挟持しながら搬送することによって、記録材上の未定着画像を定着させる定着装置に含まれるコンピュータを、
各加熱手段の通電電力設定に応じて、パターン記憶部に記憶される複数の通電パターンの中から、通電期間の重なりが小さくなる通電パターンを選択するパターン選択決定部と、
パターン選択決定部によって選択された通電パターンに基づいて複数の加熱手段への通電を制御する駆動部とを含む温度制御手段として機能させるためのプログラム。
【請求項20】
請求項19に記載のプログラムを記録したコンピュータ読取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2011−221106(P2011−221106A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−87391(P2010−87391)
【出願日】平成22年4月5日(2010.4.5)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】