説明

定着装置及びこれを備えた画像形成装置

【課題】ジャム検知に遅れを生じるようなことがなく、且つ、印刷品質を低下させることなくジャム検知を行うことができる簡単な構造の定着装置及びこれを備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】シート検知手段30のレバー31を加熱回転手段21と加圧回転手段22のニップNの近傍に配置することができ、ジャム検知に遅れを生じるようなことがない。また、レバー31の先端に取り付けた回転コロ42がシート2の裏面2bにころがり接触し、レバー31がシート2の裏面2bに擦りつけられるのを防止することができるため、両面印刷によってシート2の裏面2bにトナー画像が印刷された場合であっても、そのトナー画像がレバー31で擦り取られることがなく、印刷品質を低下させることなくジャム検知を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート(コピー用紙、プラスチックフィルム等)に転写されたトナー像をシートに定着させる定着装置、及びこれを備えた電子写真方式の画像形成装置(複写機,プリンタ,ファクシミリ装置,これらの複合機等)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図5は、従来から知られている電子写真方式の画像形成装置100を示すものである。この図5に示すように、電子写真方式の画像形成装置100は、給紙部101からシート102を画像形成部103に送り込み、画像形成部103によってシート102にトナー画像を転写し、そのトナー画像が転写されたシート102を定着装置104に送り込み、定着装置104によってトナー画像をシート102に定着させ、定着後のシート102を排紙トレイ105又は図示しない両面印刷用ユニット等に送り出すようになっている。
【0003】
定着装置104は、加熱回転手段106と加圧回転手段107とが回転しながら接触し、その接触部がシート102を挟持しながらシート搬送方向下流側のシート搬送路108に送り出すニップNを構成するようになっている。そして、この加熱回転手段106と加圧回転手段107の接触部であるニップNによってトナー画像が加熱・加圧されることにより、そのトナー画像がシート102に溶着する。
【0004】
加熱回転手段106と加圧回転手段107のニップNからシート搬送方向下流側へ送り出されるシート102は、溶着したトナー画像が加熱回転手段106側に接しているため、加熱回転手段106側に巻き付いてジャム(紙詰まり)を生じやすい。そこで、加熱回転手段106よりもシート搬送方向下流側で且つ加熱回転手段106と加圧回転手段107のニップNの近傍位置には分離手段110を配置し、定着後のシート102をその分離手段110によって加熱回転手段106から分離するようになっている。
【0005】
また、定着装置104の分離手段110よりもシート搬送方向下流側には、ニップNから送り出されたシート102がシート搬送路108に沿って正常に搬送されているか否かを検知するためのシート検知手段111が配置されており、シート検知手段111の作動状態に基づいて定着装置104でジャムが生じているか否かが画像形成装置100の作動制御用のコントローラ(図示せず)によって判断されるようになっている。
【0006】
シート検知手段111としては、非接触式のものと接触式のものとがある。非接触式のシート検知手段としてはフォトセンサが知られている。しかし、フォトセンサは、熱に弱いため、加熱回転手段106に近接して配置できず、ジャム検知に遅れを生じる虞がある。また、フォトセンサは、熱による故障を防止するため、冷却手段等を設置しなければならず、定着装置104の構造が複雑になるという不具合がある。そのため、シート検知手段111としては、接触式のシート検知手段が多く採用されている。なお、ジャム検知の遅れが大きい場合には、ジャムを生じたシート102が加熱回転手段106に巻き付く量が多くなり、ジャムを生じたシート102を定着装置104から取り除く作業が極めて困難になる。
【0007】
図6及び図7は、従来の接触式のシート検知手段111を示すものである。これらの図に示す接触式のシート検知手段111は、分離手段110よりもシート搬送方向下流側で且つ分離手段110の近傍のシート搬送路108に配置されるレバー112と、このレバー112の動きに連動する遮光部材113と、この遮光部材113によって光路が開放又は遮断されるフォトインタラプタ114とを有している。そして、この接触式のシート検知手段111は、加熱回転手段106と加圧回転手段107のニップNから送り出されたシート102の先端によってレバー112が倒されると、レバー112に連動して作動する遮光部材113がフォトインタラプタ114の発光部114aと受光部114bの間に位置して光路を遮断し、シート102の後端がシート検知位置を通過してレバー112が元の姿勢に復帰すると、遮光部材113がフォトインタラプタ114の発光部114aと受光部114bの間の光路を開放するようになっている。ここで、シート102の検知開始基準位置から所定時間経過しても、シート検知手段111がシート102の到達を検知できない場合には、定着装置104においてシート102の巻き込み等のジャムが発生したものと判断される。また、シート検知手段111がシート102の先端を検知した後、シート検知手段111が所定時間内にシート102の後端の通過を検知できない場合には、定着装置104においてジャムが発生したものと判断される(特許文献1参照)。
【0008】
なお、このような接触式のシート検知手段111は、熱に弱いフォトインタラプタ114をレバー112から離れた位置(熱源である加熱回転手段106から離れた位置)に配置することができるため、非接触式のシート検知手段に比較し、レバー112によるシート検知位置を加熱回転手段106と加圧回転手段107のニップNの近傍に配置することが可能になる。
【特許文献1】特開2005−301165号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、図6及び図7に示すような定着装置104において、シート検知手段111のレバー112は、加熱回転手段106と加圧回転手段107のニップNから送り出されたシート102の先端によって倒された後(図6の点線位置まで回動した後)、その先端がシート102の裏面102bに摺接することになる。この際、シート102の表面102a側だけにトナー画像が印刷される片面印刷の場合には、特に問題を生じることがないが、シート102の表裏にトナー画像が印刷される両面印刷の場合には、シート102の裏面102b側のトナー画像がレバー112の先端で擦り取られ、トナー画像に乱れを生じ、印刷品質の低下を招くという問題が生じる場合がある。
【0010】
そこで、本発明は、ジャム検知に遅れを生じるようなことがなく、且つ、印刷品質を低下させることなくジャム検知を行うことができる簡単な構造の定着装置及びこれを備えた画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明は、(1)シートの両面にトナー画像を転写することが可能な画像形成部よりもシート搬送方向下流側のシート搬送路に配置されて、回動しながら前記シートを加熱する加熱回転手段と、(2)この加熱回転手段側に押し付けられ、前記加熱回転手段との接触部にニップを形成しながら前記加熱回転手段と共に回動する加圧回転手段と、を有し、(3)前記ニップで前記シートを加熱・加圧し、前記シートにトナー像を定着させ、そのトナー像が定着された前記シートを前記加熱回転手段及び加圧回転手段によってシート搬送方向下流側へ送り出すようになっている定着装置に関するものである。この発明において、前記加熱回転手段及び前記加圧回転手段がハウジング内に収容されている。また、前記ニップよりもシート搬送方向下流側には、前記ニップから送り出された前記シートが前記シート搬送路に沿って移動しているか否かを検知するシート検知手段が配置されている。このシート検知手段は、前記シート搬送路内に突出する揺動可能なレバーと、このレバーの先端に回転自在に取り付けられた回転コロと、を有している。そして、本発明の定着装置は、前記ニップから送り出されたシートの先端によって前記レバーが押し倒されると、前記シートの裏面が前記レバーに摺接しないように、前記回転コロが前記シートの裏面に転がり接触して前記シートの移動を案内するようになっている。また、本発明の定着装置は、前記シートの後端が前記回転コロを通過すると、前記レバーが元の姿勢に復帰するようになっている。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1の発明における前記シート検知手段に特徴を有するものである。すなわち、本発明において、前記シート検知手段は、(1)前記レバーと、(2)前記レバーの揺動中心部に一体回動可能に取り付けられ、前記レバーの揺動中心線に沿って前記ハウジングの外部まで延びる連繋軸と、(3)この連繋軸の前記ハウジングの外部側に位置し、前記レバーと前記連繋軸を介して一体に揺動する遮光板と、(4)前記ハウジングの外部に位置し、前記遮光板によって発光部と受光部の間の光路が遮断又は開放されるフォトインタラプタと、を有することを特徴としている。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明の構成を共に限定するものである。すなわち、本発明において、前記シート検知手段が前記シートの先端を検知した位置から前記ニップの中心位置までのシート搬送方向に沿った長さ(L1)と、前記ニップの中心位置から前記ハウジングのシート進入口のシート搬送方向上流側端部までのシート搬送方向に沿った長さ(L2)との和(L1+L2)は、前記シートのうちの最小サイズのシートのシート搬送方向に沿った長さ(Lx)よりも小さいことを特徴としている。
【0014】
請求項4の発明は、シートにトナー画像を形成する画像形成部と、シートの両面に印刷することを可能にする両面印刷用ユニットと、前記請求項1又は2の発明に係る定着装置と、を備えたことを特徴とする画像形成装置に関するものである。
【0015】
請求項5の発明は、シートにトナー画像を形成する画像形成部と、シートの両面に印刷することを可能にする両面印刷用ユニットと、前記請求項3に記載の定着装置と、を備えた画像形成装置に関するものである。そして、本発明は、前記定着装置の前記シート進入口に隣り合うシート搬送路を移動可能に配置し、前記シート進入口に隣り合うシート搬送路を移動させることにより、前記シート進入口の周囲の空間が作業者の手を差し入れることができるように広げられる、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、シートの検知を熱に弱いフォトセンサ等の非接触式のセンサで直接的に行うものではなく、シート検知手段のレバーをシートの先端に接触させてシートの検知を行うようになっているため、非接触式のセンサでシート検知を行う場合に比較し、シート検知手段のレバーを加熱回転手段と加圧回転手段のニップの近傍に配置することができ、ジャム検知に遅れを生じるようなことがない。
【0017】
また、本発明は、レバー先端に取り付けた回転コロがシートの裏面にころがり接触し、レバーがシートの裏面に擦りつけられるのを防止することができるため、両面印刷によってシートの裏面にトナー画像が印刷された場合であっても、そのトナー画像がレバーで擦り取られることがなく、印刷品質を低下させることなくジャム検知を行うことができる。
【0018】
また、本発明は、フォトセンサ等の非接触式のセンサで直接的にシートの検知を行うようになっていないため、センサを熱から保護するための複雑な構成が必要とされない。したがって、定着装置及びこれを備えた画像形成装置の構造を簡単化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳述する。
【0020】
図1は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置1の模式的構造図である。
【0021】
(画像形成装置の全体構造)
この図1に示す画像形成装置1は、平面形状が四角形のシート(コピー用紙、プラスチックフィルム等のシート状の記録媒体)2を給紙カセット3からシート搬送路4に一枚ずつ送り出す給紙部5と、この給紙部5によって送り出されたシート2をシート搬送路4に沿って搬送するシート搬送手段6と、このシート搬送手段6によって搬送されたシート2を画像形成位置Pに送り込むレジストローラ7と、このレジストローラ7によって送り込まれたシート2にトナー画像を形成する(転写する)画像形成部8と、この画像形成部8でシート2に転写されたトナー画像をシート2に定着させる定着装置10と、この定着装置10から送り出されたシート2を表裏反転して再度レジストローラ7へ送る両面印刷ユニット11と、定着装置10から送り出されたシート2を排紙トレイ12上に排出する排紙部13と、この排紙部13から送り出されたシート2を積載できるようになっている排紙トレイ12と、装置本体14の上部に取り付けられて原稿等の画像を読み取るようになっている画像読み取り部15と、を備えている。なお、本実施形態の画像形成装置1は、定着装置10においてジャム(紙詰まり)が生じた場合、ジャムを生じたシート2を取り除き易くするため、定着装置10に隣り合うシート搬送方向上流側のシート搬送路4の一部(搬送ガイド16)を揺動できるようにして、定着装置10のシート進入口17の周囲の空間を十分に開放できるようにし、作業者の手を定着装置10のシート進入口17の近傍に差し入れることができるようにしてある(図2参照)。また、図1及び図2において、搬送ガイド16は、通常のシート搬送時においては実線位置の姿勢を保持し、定着装置10のジャム処理時に二点鎖線位置まで揺動する。
【0022】
(定着装置)
以下、図1乃至図4に基づいて本実施形態に係る定着装置10を説明する。なお、図2は、本実施形態に係る定着装置10の構造図を示すものである。また、図3は、図2のYa方向に沿って見たシート検知手段の構造図である。また、図4は、図3に示したシート検知手段のうちのハウジングの外部に位置する部分の側面図であり、図3のYb方向に沿って見た図である。
【0023】
図1及び図2示す定着装置10は、内部に空間18を有する略直方体状のハウジング20内に、加熱回転手段21と加圧回転手段(加圧ローラ)22とが回動できるように収容されている。
【0024】
加熱回転手段21は、加熱ローラ23と、定着ローラ24と、これら加熱ローラ23と定着ローラ24に掛け渡された無端状の定着ベルト25とを有している。
【0025】
このうち、加熱ローラ23は、熱伝導性に優れたアルミニウム(Al)や鉄(Fe)等の金属製円筒状部材の表面に、耐熱性に優れた樹脂(例えば、フッ素樹脂)のコーティング層又は被膜が形成されてなるものであり、金属製円筒状部材の内部空間に定着ベルト25を加熱するためのヒータ(熱源)26が収容されている。この加熱ローラ23は、その両端部がハウジング20の軸受け部(図示せず)に回動可能に支持されている。
【0026】
また、定着ローラ24は、芯金と、この芯金の外周面に形成された円筒状の弾性体層(例えば、シリコンゴム又はスポンジ部材(例えば、発泡させたシリコンゴム))と、で構成されている。この定着ローラ24は、その両端部がハウジング20の軸受け部(図示せず)に回動可能に支持され、図外のモータによって回転駆動されるようになっている。
【0027】
また、定着ベルト25は、無端状のベルト基材(例えば、ニッケル(Ni)やポリイミド樹脂の薄板)の外周表面にシリコンゴム膜を形成し、更にそのシリコンゴム膜の外表面にフッ素樹脂のコーティング層又は被膜が形成され、溶融したトナーが付着し難くなっている。
【0028】
このような加熱回転手段21は、定着ローラ24が図外のモータによって回転駆動されると、定着ローラ24と共に時計回り方向へ回動する定着ベルト25によって加熱ローラ23が回転させられるようになっている。
【0029】
加圧回転手段(加圧ローラ)22は、芯金の外周側に円筒状の弾性体(例えば、シリコンゴム)が一体に形成されたものであり、その外周面に溶融したトナーが付着し難くなっている。この加圧回転手段22は、その両端部がハウジング20の軸受け部(図示せず)に回動可能に支持されると共に、図示しないばね部材によって定着ベルト25を介して定着ローラ24へ押し付けられ、加熱回転手段21を構成する定着ベルト25との接触部にニップNを形成し、定着ローラ24及び定着ベルト25の回動(時計回り方向への回動)に伴って従動回転(反時計回り方向へ回転)するようになっている。
【0030】
加熱回転手段21と加圧回転手段22のニップNよりもシート搬送方向下流側で且つニップNの近傍には、分離手段としてのシート分離ブレード27が配置されている。このシート分離ブレード27は、その基端27a側がハウジング20の内部の空間18に張り出したブレード固定フレーム28に固定され、その先端27bがニップ近傍に位置し、定着ベルト25に貼り付いて巻き上げられようとするシートを定着ベルト25から分離するようになっている。
【0031】
また、加熱回転手段21と加圧回転手段22のニップNよりもシート搬送方向下流側で且つシート分離ブレード27よりもシート搬送方向下流側には、シート検知手段30が配置されている。
【0032】
このシート検知手段30は、図2乃至図4に示すように、加熱回転手段21と加圧回転手段22のニップNよりもシート搬送方向下流側のシート搬送路4に突出するレバー31と、このレバー31の揺動支点部に一端側が一体回動可能に嵌合する連繋軸32と、この連繋軸32の他端側に一体的に形成された遮光板33と、この遮光板33によって光路が遮断又は開放されるフォトインタラプタ34と、レバー31が起立した初期位置(図2の実線位置)に保持されるように遮光板33をハウジング20のストッパ35に押し付けるセンサばね36と、を有している。なお、図4に示すセンサばね36は、ハウジング20の外部に突出する連繋軸32の軸端側に巻き掛けられ、一端側が遮光板33の端部33aの下面側を支持し、他端側がハウジング20に係止されており、連繋軸32を常時一方向に回動付勢するようになっている。また、フォトインタラプタ34が画像形成装置1のコントローラ(CPU)37に接続されており、フォトインタラプタ34を構成する発光部34aと受光部34bの間の光路の遮断と開放の信号が画像形成装置1のコントローラ(CPU)37に入力されるようになっている(図1参照)。
【0033】
このシート検知手段30の連繋軸32は、その一端側がハウジング20に形成された軸受け部38に回動可能に支持され、その他端側がハウジング20に形成された軸受け部40に回動可能に支持されている(図3参照)。
【0034】
この連繋軸32の一端側に取り付けられたレバー31は、第1レバー部31aと第2レバー部31bとが対向するように組み付けられ、第1レバー部31aの先端側から第2レバー部31bの先端側へ向かって延びるコロ軸41が連繋軸32と平行になるように位置し、そのコロ軸41に円板状の回転コロ42が自由に回転できるように嵌合されている(図3参照)。回転コロ42の外径寸法は、レバー31の幅寸法dよりも大きいものが使用されており、仮にレバー31が図2の水平方向(矢印で示すシート搬送方向と平行)になるように倒れても、シート2の裏面2b側が回転コロ42に接触し、シート2の裏面2bがレバー31に摺接しないような寸法になっている(図2参照)。ここで、回転コロ42は、少なくともシート2の裏面2bと接触する表面がトナーによって汚れにくい(トナーが付着しにくい)材料(例えば、フッ素樹脂)で形成されている。なお、本実施形態においては、例えば、レバー31とシート搬送方向とのなす角θを33°とし、レバー31の揺動角度αを20°としているが、これに限定されるものではなく、シート搬送路4の形状等に応じて最適の数値が選択される。また、図3において、回転コロ42は、シート搬送路4の通紙幅方向のほぼ中央部に配置されているが、最小サイズのシートの先端及び後端を検知できる位置であればよい。
【0035】
また、連繋軸32の他端側の遮光板33は、図3に示すように、ハウジング20の外側に露出しており、レバー31の揺動角度αと同一の揺動角度αだけ連繋軸32を揺動軸として揺動し、ハウジング20の外側に取り付けられたフォトインタラプタ34の発光部34aと受光部34bの間の光路を遮断又は開放するようになっている。
【0036】
なお、シート検知手段30のうち、回転コロ42は、耐熱性樹脂(例えば、PPS)の外周面にフッ素樹脂のコーティング層又は被膜を形成するか、又は、全体をフッ素樹脂で形成するようになっている。また、レバー31,連繋軸32及び遮光板33は、耐熱性樹脂(例えば、PET)で形成するようになっている。なお、連繋軸32は、金属(例えば、SUS)で形成し、その端部に樹脂又は金属の遮光板33を一体回動できるように取り付けてもよい。
【0037】
ハウジング20は、耐熱性樹脂(例えば、PET)で形成されており、画像形成部8側からシート搬送路4に沿って搬送されるシート2を内部の空間18内に受け入れるシート進入口17と、加熱回転手段21と加圧回転手段22のニップNから送り出されたシート2をシート搬送方向下流側のシート搬送路4に送り出すシート排出口43とが形成されている(図1及び図2参照)。そして、ハウジング20は、シート進入口17及びシート排出口43以外からは熱が漏れにくい構造になっている。
【0038】
図2に示すように、シート進入口17は、シート搬送方向上流側から下流側(加熱回転手段21と加圧回転手段22のニップN側)へ向かうにしたがって開口面積を漸減するように、上縁側傾斜壁44と下縁側ガイド壁45が形成されている。そして、シート進入口17の下側(シート2の裏面2b側)に位置する下縁側ガイド壁45は、ハウジング20の側壁20aからシート搬送方向上流側に向かって突出する庇部45aと、この庇部45aの端部(ハウジング20の側壁20a)から加熱回転手段21と加圧回転手段22のニップN近傍まで延びる傾斜壁部45bとを有しており、未定着トナーが転写されていないシート2の裏面2b側をガイドして、シート2の先端を加熱回転手段21と加圧回転手段22のニップNに案内するようになっている。また、シート進入口17の上縁側傾斜壁44は、シート進入口17の下側の傾斜壁部45bから大きく離れており、画像形成部8から送り出されたシート2の未定着トナー画像が転写された表面2aに接触することがないように工夫されている。
【0039】
また、図2に示すように、シート排出口43の上縁側と下縁側には、加熱回転手段21と加圧回転手段22のニップNから送り出されたシート2を定着装置10よりもシート搬送方向下流側のシート搬送路4に案内するガイド壁46,47が形成されている。これらガイド壁46,47は、シート搬送方向上流側からシート搬送方向下流側へ向かうにしたがって開口面積を漸減するように形成されている。そして、シート排出口43の下縁側のガイド壁47には、レバー31の揺動を可能にする開口部48が形成されている。
【0040】
また、本実施形態の定着装置10は、加熱回転手段21と加圧回転手段22のニップNから送り出されたシート2の先端によってシート検知手段30のレバー31が押し倒され、シート検知手段30がシート2の先端を検知した位置(遮光板33がフォトインタラプタ34の発光部34aと受光部34bの間の光路を遮断した際の回転コロ42の回転中心位置)から加熱回転手段21と加圧回転手段22のニップNの中心位置までのシート搬送方向に沿った長さをL1とし、加熱回転手段21と加圧回転手段22のニップNの中心位置からハウジング20のシート進入口17のシート搬送方向上流側端部(下縁側ガイド壁45の庇部45aのシート搬送方向上流側端部)までのシート搬送方向に沿った長さをL2とすると、このL1とL2の和(L1+L2)が印刷する最小サイズのシート2のシート搬送方向に沿った長さ(Lx)よりも小さくなるように、シート検知手段30のレバー31,加熱回転手段21,及び加圧回転手段22が配置され、且つ、シート進入口17の庇部45aのシート搬送方向上流側端部が形成されている。なお、シート進入口17のシート搬送方向上流側端部は、下縁側ガイド壁45の庇部45aに限定されるものではなく、庇部45aがない場合、ハウジング20のシート進入口17の下縁側の側壁20aとなる。また、本実施形態において、最小サイズのシートは、通常はがきのうちの最小サイズのはがきを想定し、その長さを148mmとしている。また、ニップNの中心は、シート搬送方向に沿ったニップNの長さが所定幅(w)である場合、ニップNのシート搬送方向に沿った一端部からw/2の位置である。
【0041】
(定着装置におけるジャム検知)
以上のように構成された本実施形態の定着装置10におけるシート検知手段30は、加熱回転手段21と加圧回転手段22のニップNから送り出されて移動する定着済みのシート2の先端でレバー31が押され、そのレバー31がセンサばね36のばね力に抗して連繋軸32を揺動軸として所定角度まで押し倒され(回動させられ)、連繋軸32と一体に回動する遮光板33がフォトインタラプタ34を構成する発光部34aと受光部34bの間の光路を遮断すると、off信号を画像形成装置1のコントローラ(CPU)37へ出力するようになっている。なお、シート2の先端がレバー31の先端の回転コロ42に到達した後は、回転コロ42がシート2の裏面2bに転がり接触をする。
【0042】
そして、シート検知手段30は、シート2の後端が回転コロ42を通過すると、レバー31がセンサばね36のばね力で連繋軸32を揺動軸として回動して元の起立位置(初期位置)に復帰し、連繋軸32と一体に回動する遮光板33がフォトインタラプタ34を構成する発光部34aと受光部34bの間の光路を開放し、on信号を画像形成装置1のコントローラ37へ出力するようになっている。
【0043】
ここで、シート検知手段30のフォトインタラプタ34から出力されたoff信号が画像形成装置1のコントローラ37に入力された後、シートサイズ及びシート搬送速度に応じて定まるシート後端検知までの時間内にシート検知手段30のフォトインタラプタ34から画像形成装置1のコントローラ37にon信号が出力されないと、画像形成装置1のコントローラ37が定着装置10でジャムが発生したと判断し、画像形成装置1のコントローラ37からジャム処理のための制御信号が出力され、定着装置10等の作動が停止する。
【0044】
また、画像形成装置1のコントローラ37は、定着装置10のシート検知手段30におけるシート検知開始の基準位置を、レジストローラ7がシート2を画像形成部8に送り込む時とすると、そのレジストローラ7の作動時(レジストローラ7を駆動するモータ50の作動時)から所定時間経過(レジストローラ7からレバー31によるシート先端検知位置までのシート搬送方向に沿った距離及びシート搬送速度から定まる時間)が経過してもフォトインタラプタ34から画像形成装置1のコントローラ37にoff信号が出力されない場合、定着装置10でジャムが発生したと判断し、ジャム処理のための制御信号を出力し、定着装置10等の作動を停止するようになっている。なお、シート検知開始の基準位置は、上記態様に限定されるものではなく、定着装置10と画像形成部8との間に配置されるシート検知センサ(図示せず)がシート先端を検知する位置や、給紙部5の給紙センサ(図示せず)がシート2の先端を検知する位置など、画像形成装置1の構成上において最適の位置が設定される。
【0045】
(本実施形態の効果)
以上のように構成された定着装置10は、レバー31の先端に取り付けた回転コロ42がシート2の裏面2bにころがり接触し、レバー31がシート2の裏面2bに擦りつけられるのを防止することができるため、両面印刷によってシート2の裏面2bにトナー画像が印刷された場合であっても、そのシート2の裏面2bのトナー画像が擦り取られて乱れるようなことがなく、印刷品質を低下させることなくジャム検知を行うことができる。
【0046】
また、本実施形態の定着装置10は、シート検知手段30のレバー31及び回転コロ42をシート2に接触させてシート2の検知を行い、シート検知手段30のうちの熱に弱いフォトインタラプタ34をハウジング20の外部に配置し、フォトインタラプタ34をハウジング20の内部の熱から遮断するようになっているため、非接触式のセンサでシート検知を行う場合に比較し、シート検知手段30のレバー31を加熱回転手段21と加圧回転手段22のニップNの近傍に配置することができ、ジャム検知に遅れを生じるようなことがない。
【0047】
また、本実施形態の定着装置10は、フォトセンサ等の非接触式のセンサで直接的にシート2の検知を行うようになっていないため、センサを熱から保護するための冷却機構等の複雑な構成が必要とされない。したがって、本実施形態によれば、定着装置10及びこれを備えた画像形成装置1の構造を簡単化することができる。
【0048】
また、本実施形態の定着装置10は、最小サイズのシート2に印刷をする場合でも、ジャムしたシート2のシート搬送方向に沿った後端がハウジング20のシート進入口17のシート搬送方向上流側端部から出っ張ることになり、作業者がジャムしたシート2の後端を摘みやすくなり、ジャム処理作業が容易化する。
【0049】
なお、本実施形態の定着装置10は、図1に示したように、水平方向へ延びるシート搬送路4に配置する態様を例示したが、これに限られず、縦方向(水平方向に直交する方向)へ延びるシート搬送路に配置してもよく、また、斜め方向(水平方向に対して斜めに傾斜する方向へ延びるシート搬送路に配置してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施の形態に係る画像形成装置の模式的構造図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る定着装置の構造図である。
【図3】図2のYa方向に沿って見たシート検知手段の構造図である。
【図4】図3に示したシート検知手段のうちのハウジングの外部に位置する部分の側面図であり、図3のYb方向に沿って見た図である。
【図5】従来の画像形成装置の構造図を示すものである。
【図6】従来の定着装置とシート検知手段の関係を示す図である。
【図7】図6に示した従来のシート検知手段の平面図(図6のYc方向に沿って見た図)である。
【符号の説明】
【0051】
1……画像形成装置、2……シート、2a……裏面、4……シート搬送路、8……画像形成部、10……定着装置、11……両面印刷ユニット、16……搬送ガイド(シート搬送の一部)、17……シート進入口、20……ハウジング、21……加熱回転手段、22……加圧回転手段、30……シート検知手段、31……レバー、32……連繋軸、33……遮光板、34……フォトインタラプタ、34a……発光部、34b……受光部、42……回転コロ、N……ニップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートの両面にトナー画像を転写することが可能な画像形成部よりもシート搬送方向下流側のシート搬送路に配置されて、回動しながら前記シートを加熱する加熱回転手段と、
この加熱回転手段側に押し付けられ、前記加熱回転手段との接触部にニップを形成しながら前記加熱回転手段と共に回動する加圧回転手段と、を有し、
前記ニップで前記シートを加熱・加圧し、前記シートにトナー像を定着させ、そのトナー像が定着された前記シートを前記加熱回転手段及び加圧回転手段によってシート搬送方向下流側へ送り出すようになっている定着装置において、
前記加熱回転手段及び前記加圧回転手段がハウジング内に収容され、
前記ニップよりもシート搬送方向下流側には、前記ニップから送り出された前記シートが前記シート搬送路に沿って移動しているか否かを検知するシート検知手段が配置され、
前記シート検知手段は、前記シート搬送路内に突出する揺動可能なレバーと、このレバーの先端に回転自在に取り付けられた回転コロと、を有しており、
前記ニップから送り出されたシートの先端によって前記レバーが押し倒されると、前記シートの裏面が前記レバーに摺接しないように、前記回転コロが前記シートの裏面に転がり接触して前記シートの移動を案内し、
前記シートの後端が前記回転コロを通過すると、前記レバーが元の姿勢に復帰する、
ことを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記シート検知手段は、(1)前記レバーと、(2)前記レバーの揺動中心部に一体回動可能に取り付けられ、前記レバーの揺動中心線に沿って前記ハウジングの外部まで延びる連繋軸と、(3)この連繋軸の前記ハウジングの外部側に位置し、前記レバーと前記連繋軸を介して一体に揺動する遮光板と、(4)前記ハウジングの外部に位置し、前記遮光板によって発光部と受光部の間の光路が遮断又は開放されるフォトインタラプタと、を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記シート検知手段が前記シートの先端を検知した位置から前記ニップの中心位置までのシート搬送方向に沿った長さ(L1)と、前記ニップの中心位置から前記ハウジングのシート進入口のシート搬送方向上流側端部までのシート搬送方向に沿った長さ(L2)との和(L1+L2)は、前記シートのうちの最小サイズのシートのシート搬送方向に沿った長さ(Lx)よりも小さい、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の定着装置。
【請求項4】
シートにトナー画像を形成する画像形成部と、シートの両面に印刷することを可能にする両面印刷用ユニットと、前記請求項1又は2に記載の定着装置と、を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
シートにトナー画像を形成する画像形成部と、シートの両面に印刷することを可能にする両面印刷用ユニットと、前記請求項3に記載の定着装置と、を備え、
前記定着装置の前記シート進入口に隣り合うシート搬送路を移動可能に配置し、前記シート進入口に隣り合うシート搬送路を移動させることにより、前記シート進入口の周囲の空間が作業者の手を差し入れることができるように広げられる、ことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−186692(P2009−186692A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−25829(P2008−25829)
【出願日】平成20年2月6日(2008.2.6)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】