説明

実装品およびその製造方法

【課題】反応性多層フォイルを用いて基板と部品とを接合する場合の、溶融金属の飛散やボイドの発生を低減し、性能の安定した実装品を得る。
【解決手段】実装基板10の接合面に、複数の凸部12を形成すると共に、被接合部材40に、凸部12に対応して開口42を形成する。凸部12を形成した基板10の上に、溶融金属層を介して反応性多層フォイルを配置し、その上に溶融金属層を介して開口42を設けた被接合部材40を配置し、開口42の直下に凸部12が位置するようにする。その状態で被接合部材40を押圧しながら反応性多層フォイルに点火し、部材と実装基板を接合する。開口42が接合時に溶融して押し出される溶融金属及びボイドの逃げ道となり、溶融金属の飛散やボイドの残留が防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に、給電配線、LEDチップ付きサブマウント基板、チップ部品、SMD(表面実装品)等の部品や部材を実装する際の接合技術に関し、特に、基板と部品等との接合に反応性多層フォイルを利用した実装品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、サブマウント基板からの給電配線の実装や、LEDチップ付きサブマウント基板の金属基板やヒートシンクへの実装は、半田のリフローやろう付けによって行われているが、近年、反応性多層フォイルを用いて接合する方法が提案されている(特許文献1など)。反応性多層フォイルは、例えばAlとNiの極めて薄い層を交互に多数積層し全体として厚み数10μm程度にしたフィルムであり、エネルギーを供給することによって点火され、瞬時に高温となる。接合すべき材料の間に可溶材料を介して反応性多層フォイルを挟み込み、点火することにより、その反応熱によって可溶材料が溶融し、二つの材料を接合することができる。
【0003】
この反応性多層フォイルを使用した接合は、半田のリフローやろう付に比べて、熱の伝播速度、熱の局所化において優れている。熱の伝播速度が速いことにより、接合プロセスが非常に高速で可能となる。また加熱は極めて局所的であるため、接合される材料は、ほとんど熱を吸収せず、熱損傷なしに接合できる。また接合は強力であり、熱伝導性もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2007−511369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように反応性多層フォイルを使用した接合は、従来の半田付けやろう付けでは得られない種々の利点があるが、これを実装基板に適用した場合に、次のような問題がある。
【0006】
反応性多層フォイルを用いて給電配線や電子部品等(以下、被接合部材という)を接合する際に、被接合部材側から圧力が加えられると、反応性多層フォイルと被接合部材との間に介在する半田等の可溶材料が、反応性多層フォイルによって瞬時に溶融し、その一部が多層フォイルの側面から飛び出し飛散する。この飛散物が、実装基板上の二つの配線パターンにまたがって残留した場合には、配線の短絡を引き起こす。また実装基板上に付着した飛散物が、製品使用時に脱落した場合には、製品に不具合を起こす可能性がある。
【0007】
また被接合部材を反応性多層フォイル及び可溶材料の上に積層した状態では、可溶性材料と被接合部材との間に空隙が存在しており、加圧下で可溶性材料が溶融したときに、一部はボイドとして端部より排出されるが、一部は接合部内に留まり、被接合部材の放熱性や接合信頼性を妨げることとなる。
【0008】
さらに反応性多層フォイルは、スパーク後発熱しながら連鎖的に反応し合金化するが、その際多数に分断された状態となり、接合が完了した状態では、約15〜20%収縮する。この分断され収縮した箇所には、接合材が充填される必要があるが、接合材が充填されない場合には接合不良の原因となる。
【0009】
本発明は、実装品製造プロセスにおいて反応性多層フォイルを使用した接合に生じうる上記問題を解決することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、反応性多層フォイルによって接合される二つの被接合部材に、溶融した可溶性材料を吸収し且つボイドを逃がすための構造を設けることにより、上記課題を解決する。
【0011】
即ち本発明の実装品は、実装基板と、当該実装基板に接合される部材と、前記実装基板と部材とを接合する接合層とを備え、前記接合層は、反応性多層フォイルの両面を金属材料で挟み込んだ構造を有し、前記部材の前記基板に接合される接合部に、外部に通じる開口部を備え、前記基板は、前記部材の開口部に対応する位置に、前記接合層側に突出する凸部を備える。
【0012】
また本発明の実装品の製造方法は、実装基板に、金属材料からなる接合層を介して部材を接合してなる実装品の製造方法であって、接合部に開口または溝が形成された部材を用意するステップ(1)と、前記実装基板の接合部に、前記部材の開口または溝に対応する凸部を形成するステップ(2)と、前記凸部が形成された実装基板の上に、可溶性金属材料層を介して反応性多層フォイルを配置するステップ(3)と、前記実装基板の凸部と、前記部材の開口または溝が対応するように、前記反応性多層フォイルの上に、可溶性金属材料層を介して前記部材を配置するステップ(4)と、前記部材を前記実装基板に対し押圧した状態で、前記反応性多層フォイルに点火エネルギーを供給し、前記反応性多層フォイルの発熱とそれによる前記金属材料の溶融を利用して、前記部材を前記実装基板に接合するステップ(5)と、を含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、実装基板と部材とを多層フォイルを用いて接合する際に、部材の接合部に開口部を設けたことにより、加圧によって溶融された金属材料を開口部で吸収できるので、側部に移動する金属材料を減らし、側部からの金属材料の飛散とそれによる悪影響をなくすことができる。また開口部の壁面に金属材料が付着することによって、接合面積を拡大し接合強度を向上させることができる。また開口部は、部材と接合層との間に存在した空隙に起因するボイドの逃げ道を提供し、これにより接合部内部に留まるボイドを大幅に低減し、接合不良や部品性能への影響をなくすことができる。
【0014】
さらに接合層を挟んで、部材の開口のほぼ中央に、実装基板の凸部が位置する構造となるため、多層フォイルの収縮時の断裂を凸部が位置する開口の直下に誘発させることができる。これにより、開口を通じたボイドの排出経路を確保することができるとともに、開口の直下に集まる溶融金属の余剰分の流れを分断箇所に導くことができ、部品等と実装基板との平行性を保つことができ、良好な接合が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実装品の第一の実施形態を示す図。
【図2】図1の実装品の要部を示す図で、(a)は接合部を上から見た上面図、(b)は(a)のA−A’断面図、(c)は基板のみを上から見た上面図である。
【図3】本発明の実装品に用いる接合シートを示す断面図。
【図4】第一の実施形態における接合時のメカニズムを説明する図。
【図5】本発明の実装品の第一の実施形態の変更例を示す図で、(a)は接合部を上から見た上面図、(b)は基板のみを上から見た上面図である。
【図6】本発明の実装品の第一の実施形態の別の変更例を示す図で、(a)は接合部を上から見た上面図、(b)は(a)のB−B’断面図である。
【図7】本発明の実装品の第二の実施形態を示す断面図。
【図8】図7の実装品のリフレクタを示す図で、(a)は正面図、(b)は底面図、(c)は側面図である。
【図9】本発明の実装品の製造工程(a)〜(j)を示す図。
【図10】本発明の実装品の製造方法において、溶融金属層の形成方法の異なる実施例(a)〜(d)を示す図。
【図11】本発明の実装品の製造の実施例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第一の実施形態>
本発明の実装品の一例として、サブマウント基板に形成された電極パッドに給電配線が接続された実装品の実施形態を図1、図2を参照して説明する。図1は、本実施形態の実装品を上から見た図であり、左上と右下の2か所に基板と接続端子の接合部がある。右下の接合部については、接合前の要素を別々に示している。図2は、図1の実装品の電極パッドと接続端子の接合部の構造を示し、(a)は接合部を上から見た上面図、(b)は(a)のA−A’断面図、(c)は、(a)の基板のみを上から見た上面図である。
【0017】
本実施形態の実装品は、図1に示すように、実装基板10の上にLEDチップ等の電子部品20が実装されるとともに、電子部品20に給電するための電極パッド11が形成されており、この電極パッド11に接続端子40が接合された構造を有している。電極パッド11は、反応性多層フォイル35を用いた接合層30によって接続端子40に接合されており、この接合構造に特徴を有する。
【0018】
実装基板10は、ガラスエポキシ(FR−4)、セラミック、アルミニウム等の金属などの耐熱材料からなり、電子部品20と接続端子40とを電気的に接続する配線パターン(図示せず)が形成されている。電極パッド11は、Au/Snなどの導電性金属材料を蒸着等によって基板10上に形成したものであり、図2(c)に示すように、その表面に凸部(凸条)12が形成されている。なお図2(c)において、後述する接続端子40の開口42の位置を点線で示している。
【0019】
凸部12の高さは、その形状や接合層30に用いる反応性多層フォイルの厚みによっても異なるが、反応性多層フォイルと基板10との間に設けられる溶融金属層の厚みと同じかそれより低く、溶融金属層の厚みとほぼ同等であることが好ましく、下限は約50%、上限は約100%である。上述した範囲より高さが高すぎると、接合前に反応性多層フォイルを積層したときに、多層フォイルを分断してしまう可能性がある。また高さが低すぎると、反応時に凸部の位置で効果的に分断させることができない。
凸部12の幅は、後述する接続端子40の開口42の幅より狭く、好適には開口42の幅の1/2以下である。
【0020】
凸部12は、電極パッド11とともに、電解メッキ等により形成することができる。例えば、タングステン等の材料で基板上に電極パッド11と凸部12を形成し、その上に電解メッキを施す。凸部12の形状が図示するような凸状の場合には、Alワイヤ等を電極パッド11上に接着して形成することも可能である。
【0021】
接続端子40は、電極パッド11の形状に合わせた形状を持つ平板状の部材で、接合層30を構成する材料に対し濡れ性の良い材料、例えばCu、Feなどを基材としたものや合金などから構成されている。或いは、Alなどを基材とし、接合層の材料に対し濡れ性を高める表面処理を施したり、Ni、Sn膜などを形成したものであってもよい。
【0022】
接続端子40は、電極パッド11の凸部12に対応する位置に、接続端子40の厚み方向に貫通する開口42が形成されている。開口42は、接合面(接続端子40の基板側底面)と直交する方向に接続端子40を貫通している。開口42と凸部12の位置が一致することにより、図2(b)に示す断面図で見たときに、電極パッド11と接続端子40との間の接合層30を、開口42の両側の部分(開口の縁)と凸部12とで三点支持する構造になっている。後述する図4における矢印の方向から三点支持する構造になっている。
【0023】
開口42の高さ即ち接続端子40の厚みは、接合面(接続端子40の基板側底面)と直交する方向の高さ(接続端子の厚み)が、図3に示す多層フォイル30’の接続端子40側の溶融金属層31の厚みより大きいことが好ましい。特に、開口42の高さ即ち接続端子40の厚みは、接続端子40側の溶融金属層31の厚みの2倍から20倍とすることが好ましい。それにより、接続端子40と実装基板(電極パッド11)を接合したときに、溶融した接合層30の金属材料が開口から上にはみ出すことなく、余剰の金属材料を開口部分で吸収することができる。開口の大きさ(面積)や幅は、開口が余剰の金属材料を吸収することができ、且つ開口を除く接続端子40の面積が、接合の作業性を妨げず且つ必要な接合強度を得られる面積を有していればよい。具体的には、開口と開口との間隙が、開口幅の2倍以下であることが好ましい。
【0024】
接合層30は、図3に示すように、反応性多層フォイル35(以下、多層フォイルともいう)の両面を溶融金属層31、33で挟んだ構造の接合部材30’から形成されている。反応性多層フォイル35は、2種の異なる金属薄膜を蒸着やスパッタリングにより交互に数千積層した構造を有し、自己伝播発熱反応を行うフィルムで、電気パルスの印加などのエネルギー供給により点火して(微小スパーク)、発熱する。発熱反応は極めて短い時間で伝播し、局所的に最高反応温度1350℃〜1500まで達する。多層フォイルには、Al/Ni、Al/Ti、Ni/Si、Nb/Siなどがあり、また厚みは40μm〜80μm程度である。溶融金属層31、33や実装基板10の材料の種類に応じて適切な材料、厚みのものを選択して用いることができる。
【0025】
反応性多層フォイル35は、部材、ここでは接続端子40の接合面積よりも、若干面積が小さいものを用いることが好ましい。本実施の形態では、反応性多層フォイル35への点火を、接続端子40の開口42から行うことができるので、点火のために反応性多層フォイル35を側面から覗かせる必要がなく、小さい外形サイズのものを用いることができる。
【0026】
溶融金属層31、33は、反応性多層フォイル35の発熱前までは、固体として存在し、反応性多層フォイルの発熱により溶融する金属層である。溶融金属層31、33は、はんだ、鉛フリーはんだ、Snなどの金属からなり、多層フォイル35の両面に、上述した金属の薄膜をめっき等によって形成しておくことができる。或いは、基板10の電極パッド11の表面及び/または接続端子40の表面に、設けることも可能である。その場合には、反応性多層フォイル35は溶融金属層を設けないもの、或いは片面のみに溶融金属層を設けたものを使用することができる。いずれの場合にも、電極パッド11及び接続端子40と多層フォイル35との間に介在する金属薄膜を多層フォイル35の発熱反応により溶融させることにより、接合層30を形成することができる。溶融金属層31、33の厚みは、限定されるものではないが、約5μm〜20μmとすることができる。
【0027】
本実施形態の実装品は、電極パッド11と接続端子40とが多層フォイル35によって接合されているため、電極パッド11と接続端子40とが接合時の熱をほとんど受けていないので熱損傷がなく、強力に接合されている。
【0028】
本実施形態の実装品において、開口42と凸部12の構造によってもたらされる効果を、図4を参照して説明する。図4に示すように、本実施形態の実装品は、接合層30を接続端子40の開口42の両側の部分と、電極パッド11の凸部12とで挟み込む構造を有しているので、接合時に接続端子40側から圧力をかけた場合に、凸部12の直上即ち開口42が設けられた位置で反応性多層フォイル35が分断されるように誘導することができる。圧力によって溶融した金属は移動するが、開口42はその逃げ場として機能し、開口42に吸収される。同時に開口42の直下で反応性多層フォイルが分断されるので、集まった溶融金属は、その分断箇所にも流れ、分断箇所を充填する。このように開口42と分断箇所が溶融金属の受け皿となり、接合部の側面への溶融金属の流れを低減することができる。また接続端子40と電極パッド11との平行性が保たれる。さらに分断箇所では多層フォイルが途切れているため、基板10と多層フォイルとの間の空隙に存在した空気(ボイド)も移動しやすくなり、開口42側に移動し、接続端子40と多層フォイルとの間に存在した空気とともに開口42から逃がすことができる。これによりボイドに起因する接続不良を防止することができる。
【0029】
以上説明したように、本実施の形態によれば、強固に接合され、信頼性の高い実装品が提供される。
【0030】
なお、以上の実施形態では、電極パッド11の凸部12及び接続端子40の開口42が、それぞれ、3つ設けられ且つ細長い形状を有する場合を示しているが、開口の形状や数は、上述した三点支持構造が得られるものであれば、図示するものに限定されない。
【0031】
開口と凸部の形状の変更例を図5に示す。図5(a)は、接合部を上から見た上面図、(b)は、(a)の基板のみを上から見た上面図である。この変更例では、接続端子40に四角形の開口44を多数(図では12個)形成し、基板10の接合部11には対応する位置に同数の円形の凸部14を形成している。これら基板10と接続端子40は接合層30によって接合されており、その際、凸部14がほぼ開口44の中心に位置するように配置されている。
【0032】
開口44の幅や凸部14の幅、高さは、図2に示す実施形態と同様である。典型的な例として、溶融金属層の厚みをa、凸部の高さをbとするとき、a≒bであり、開口の高さをeとするとき、e≧a×0.1である。また開口の幅をc、凸部の幅をdとするとき、好ましくはd≦c/2であり、また開口と開口との間隙fは、f≦c×2である。
このような開口44と凸部14の組合せによって、接合時に溶融した接合層30の溶融金属が開口44に吸収されているので、結合部側面からの溶融金属のはみ出しが極めて少なく且つ開口44を除く接続端子40の面積が少なくとも強固な結合が得られる。またボイドが開口44から排出されているので、ボイドに起因する結合不良がない。
【0033】
また図2では、平板状の部材に細長い開口が形成された接続端子40を示したが、開口は接合面方向の一方に開放していてもよい。例えば、図6(a)、(b)に示すように、先端を複数の線材で構成した接続端子40についても、各線材46の間に電極パッド11の凸部12が位置するように、接合層30及び電極パッド11を重ねた構造とすることにより、ボイドや溶融金属材料飛散の問題がなく、線材46と電極パッド11との接合が強固な実装品とすることができる。
【0034】
<第二の実施形態>
第一の実施形態は、電極パッドと接続端子との接合部に本発明を適用した実施形態であるが、第二の実施形態は、実装基板と部品、特にリフレクタ等の傾斜した構造体に本発明を適用したものである。
【0035】
図7及び図8に本実施形態の実装品の一例を示す。図7は、実装品の全体図、図8(a)、(b)、(c)は、リフレクタの正面図、底面図および側面図である。
本実施形態においても、実装基板10の接合部(接合用のパターンが形成された部分)15とリフレクタ60とが反応性多層フォイルからなる接合層30で接合された構造を有することは、第一の実施形態と同じである。また基板10の接合部15には、複数の凸部(凸条)16が形成されている。凸部16の高さは、第一の実施形態における凸部12の高さと同様であり、接合層30を構成する溶融金属層の厚みとほぼ同じ程度の高さであることが好ましい。
【0036】
リフレクタ60は、図8(b)に示すように、一端から他端に向かって高さが変化し、その傾斜した上面が光を反射するリフレクタとして機能する。リフレクタ60の底面には、基板10の接合部15に形成された凸部16に対応して、複数の溝62が形成されている。複数の溝62は、接合面の方向に沿って形成されている。溝62は、両端で外部に開放しており、接合部15との接合時に接合層30の溶融金属を吸収する空隙を構成すると共に、溶融金属からボイドを逃がす逃げ道を提供する。特に、図示の実施形態では、溝62の形状をリフレクタ60の傾斜面に併せて、一端から他端にかけて高さ(溝の深さ)が大きくなるようにしているため、高さが一定の溝に比べ溶融金属やボイドを逃がしやすい。
【0037】
つまり、部品側の接合部に形成される開口は、第一の実施形態に示すように接合部の上面まで貫通しているものに限られず、外部まで通じるものであれば、接合部材の底面に形成された溝として形成することができる。
また、溝62の接合面(リフレクタ60の実装基板10側底面を含む平面)と直交する方向の高さは、少なくとも、最も高い端部が、溶融金属層で埋まらない高さとする。溝62の接合面と直交する方向の高さは、少なくとも両端部(最も高い部分)において、多層フォイル30’のリフレクタ60側の溶融金属層31の厚みより大きいことが好ましく、両端部における高さは、リフレクタ60側の溶融金属層31の2倍から20倍とすることが好ましい。
【0038】
<製造方法の実施形態>
次に本発明の実装品の製造方法を説明する。図9に工程の一例を示す。
図9に示す工程(a)〜(f)により、被接合部材40を接続するための接合部(電極パッド部分)11をベース基板10に形成する。具体的には、まず、ベース基板10を洗浄した後(a)、ベース基板10にタングステンペーストをパターン印刷し(b)、硬化させる(c)。さらにその上にタングステンペーストをリブ状に印刷し(d)、硬化させる(e)。タングステンのパターン及びリブが形成された部分に、ニッケル、金等の良導性の金属の薄膜を電解メッキで設ける(f)。なお金属薄膜は、電解メッキの他、スパッタや蒸着により設けることもできる。これにより、凸部12を有する接合部11が形成されたベース基板10を得る。
【0039】
次に、図9に示す工程(g)〜(j)により、ベース基板10と被接合部材40とを接合部材30’により接合する。そのため、まず凸部12と同じ間隔で開口42が形成された被接合部材例えば接続端子40を用意する。また反応性多層フォイルとして、被接合部材より大きさが一回り小さい多層フォイルを用意する。図示する実施形態では、反応性多層フォイル35の両面に、溶融金属層31、33をメッキ等によって形成したものを接合部材30’として用いている。上記のベース基板10と被接合部材40との間に、接合部材30’を挟んで、被接合40とベース基板10とを積層する(g)。この際、ベース基板10の凸部12と被接合部材40の開口42とが一致するように配置する。
【0040】
次いで、被接合部材40の上から加圧する(h)。加圧の圧力は、特に限定されないが、例えば0.35N/mm2程度とする。この状態で多層フォイル35に点火する(i)。点火の方法には、電気パルスの印加や抵抗熱などの電気的方法や、レーザー照射などの光学的方法、熱的方法、機械的方法などがあり、いずれを採用することも可能である。点火エネルギーの供給は、被接合部材40の開口42を通して行うことができる。例えば電圧印加の場合、プローブを用いて数Vの電圧を瞬間的に印加することにより点火する。
【0041】
多層フォイル35は、点火後直ちに発熱し、その上下に積層された溶融金属層31、33の金属を溶融させる。溶融金属層31、33が溶融することによって、溶融金属層33と実装基板(接合部11)10、溶融金属層31と被接合部材40とがそれぞれ接合し、結果として実装基板10と被接合部材40が接合する(j)。溶融金属層31、33が溶融する際に、所定の圧力が加えられているため、多層フォイル35はその厚みと直交する方向に分断されるが、図4に示したように、圧力は被接合部材40の開口42の端部では下側に、基板10の凸部12では上側に働くことになり、分断は凸部12の直上で起こるように誘導される。多層フォイル35が分断された箇所には、溶融した金属が流れ込みやすくなるため、接合部材30’が溶融収縮する場合の体積変化をこの分断箇所で吸収することができる。またこの分断箇所の直上は、開口42が位置するため、基板10と接合部材30’との間の空隙や接合部材30’と被接合部材40との間の空隙に存在した空気を、この分断箇所及び開口42を通って外部に逃がすことができ、接合層30内や層間に留まるボイドを大幅に低減することができる。
【0042】
さらに、溶融した金属の殆どを、分断箇所と開口42とで吸収することができるので、接合層30の側面から押し出される溶融金属の量を大幅に低減することができ、金属飛散物の発生を防止することができる。特に、接合部材30’のサイズを被接合部材40のサイズより一回り小さくすることにより、側面からのはみ出しを効果的に防止することができる。
【0043】
なお、図9に示す製造例では、接合部材30’として、両面に溶融金属層31、33を設けた反応性多層フォイル35を用いているが、溶融金属層を基板側或いは被接合部材側に設けることにより、接合部材30’に設ける溶融金属層を省略することも可能である。図10(a)〜(d)に、溶融金属層の形成方法が異なる実施例を示す。図10(a)は、反応性多層フォイル35の両面に溶融金属層31、33を設けて、基板10側及び被接合部材40側には金属層を設けない場合、(b)は、被接合部材40側に金属層31’を設けて、反応性多層フォイル35の被接合部材側の面には金属層を設けない場合、(c)は、基板10側に金属層33’を設けて、反応性多層フォイル35の基板側の面には金属層を設けない場合、(d)は、反応性多層フォイルの両面に溶融金属層31、33を設けるとともに、基板10側と被接合部材40側の両方に金属層31’、33’を設ける場合である。接合をより強固にするためには、(d)が最も好適である。
【0044】
上記の場合において、溶融金属層と開口の高さとの関係は、いずれも、開口の高さが、反応性多層フォイルと被接合部材40との間に設けられた金属材料層の総厚み((a)および(c)の場合は31の厚み、(b)の場合は、31’の厚み、(d)の場合は31と31’の合計厚み)より大きいことが好ましく、反応性多層フォイルと被接合部材40との間に設けられた金属層の総厚みの2倍から20倍とすることが好ましい。
【0045】
また、上記の場合において、溶融金属層と凸部の高さとの関係は、いずれも、凸部の高さが、反応性多層フォイルとベース基板10との間に設けられた金属材料層の総厚み((a)および(b)の場合は33の厚み、(c)の場合は、33’の厚み、(d)の場合は33と33’の合計厚み)と同じかそれより低く、反応性多層フォイルとベース基板10との間に設けられた金属材料層の総厚みとほぼ同等であることが好ましい。
【0046】
なお、基板側や被接合部材側に金属層を設ける場合も、反応性多層フォイルに金属層を設ける場合と同様であり、めっき等によって0.01〜0.1μm程度の金属層を形成する。
【0047】
本実施形態の実装品の製造方法によれば、実装基板10の、部材接合部の上面に、予め反応性多層フォイル35の分断箇所を誘導する凸部を設けると共に、部材側にこの凸部に対応する開口を形成しておくことにより、多層フォイル35による接合時に、溶融金属の飛散や接合層中にボイドが残留する問題を防止することができる。接合時の接合層の体積変化を開口が吸収することができるので、基板に対する部材の平行性を保つことができ、強固な接合を図ることができる。
【0048】
なお、本発明の製造方法において、多層フォイル35の側面からの溶融金属の飛散を防止するための他の手段、例えば、多層フォイルの側面を覆う樹脂シートを配置すること、などを併用してもよいことは言うまでもない。
【実施例】
【0049】
本発明の実装品の製造方法を図1に示すサブマウント基材への給電配線実装に適用した実装例を図11に示す。なお、図11は、接合直前の状態を示している。この実装例では、厚み0.5mmのサブマウント基板10の上に、タングステンペーストの印刷によって、厚み0.2mmの給電パッド11を形成し、さらにその上に厚み0.2mm、幅0.5mm、長さ6mmのリブ12を形成した。タングステン部に、電解メッキで、下地Ni膜とSn膜を順次形成した。なおNi膜の厚みは好ましくは1〜20μm、より好ましくは4〜8μmである。またSn膜の厚みは好ましくは1〜40μm、より好ましくは5〜10μmである。
【0050】
一方、サイズ4mm×8mm、厚み0.3mmの接続端子40の3か所の穴加工を行い、約0.5mm×6mmの開口を作成し、端子全体にSnメッキを施した。また厚み0.02mmの多層フォイルの両面に、厚み0.02mmの接合材メッキを施した接合部材(サイズ:約3.2mm×7.2mm、厚み0.06mm)を用意し、上述の給電パッド11に載せ、その上に接続端子40を載せた。
【0051】
接続端子40の上から0.32kgの荷重をかけ、開口42から覗いている反応性多層フォイルにプローブを当てて、約9Vの電圧をかけた。これにより瞬時に反応性多層フォイルが反応し、接続端子40は基板10に接合された。
【0052】
目視により観察したところ、接続端子40の端部からの接合材のはみ出しや飛散は見られなかった。また、接続端子40を破断しない限度の力(20N以下)で基板10から引き剥がそうとしても引き剥がすことができず、強固な接合が保たれていることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の実装品とその製造方法は、サブマウント基板からの給電配線の実装、LEDチップ付きサブマウント基板の金属基板やヒートシンクへの実装、チップ部品のガラスエポキシ基板や金属基板への実装、SMD(Surface Mount Device)リード部のガラスエポキシ基板や金属基板への実装など、種々の部品の実装に適用することができる。
【符号の説明】
【0054】
10・・・実装基板、11・・・電極パッド(接合部)、12、14・・・凸部、30・・・接合層、31、33・・・溶融金属層、35・・・反応性多層フォイル、40・・・被接合部材、42、44・・・開口、46・・・線材、60・・・リフレクタ、62・・・溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実装基板と、当該実装基板に搭載された部材と、前記実装基板と部材とを接合する接合層とを備えた実装品であって
前記接合層は、反応性多層フォイルの両面を金属材料で挟み込んだ構造を有し、
前記部材の前記基板に接合される接合部に、外部に通じる開口部を備え、
前記基板は、前記部材の開口部に対応する位置に、前記接合層側に突出する凸部を備えたことを特徴とする実装品。
【請求項2】
請求項1に記載の実装品において、
前記開口部は、接合面と直交する方向に前記接合部を貫通する開口であることを特徴とする実装品。
【請求項3】
請求項1に記載の実装品において、
前記開口部は、接合面の方向に沿って形成された溝であることを特徴とする実装品。
【請求項4】
請求項1に記載の実装品において、
前記部材の接合部は、先端が複数の線材で構成され、前記開口部は各線材との間の空間であることを特徴とする実装品。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の実装品において、
前記開口部の前記接合面と直交する方向の高さが、前記接合層を形成する前記部材側の金属材料層の厚みより大きいことを特徴とする実装品。
【請求項6】
実装基板に、金属材料からなる接合層を介して部材を接合してなる実装品の製造方法であって、接合部に開口または溝が形成された部材を用意するステップ(1)と、前記実装基板の接合部に、前記部材の開口または溝に対応する凸部を形成するステップ(2)と、前記凸部が形成された実装基板の上に、可溶性金属材料層を介して反応性多層フォイルを配置するステップ(3)と、前記実装基板の凸部と、前記部材の開口または溝が対応するように、前記反応性多層フォイルの上に、可溶性金属材料層を介して前記部材を配置するステップ(4)と、前記部材を前記実装基板に対し押圧した状態で、前記反応性多層フォイルに点火エネルギーを供給し、前記反応性多層フォイルの発熱とそれによる前記金属材料の溶融を利用して、前記部材を前記実装基板に接合するステップ(5)と、を含むことを特徴とする実装品の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の実装品の製造方法であって、
前記可溶性金属材料層の少なくとも一方は、予め前記反応性多層フォイルに形成された層であることを特徴とする実装品の製造方法。
【請求項8】
請求項6に記載の実装品の製造方法であって、
前記反応性多層フォイルの接合面積は、前記部材の接合部または前記実装基板の接合部の外形サイズよりも小さいことを特徴とする実装品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−186214(P2012−186214A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−46639(P2011−46639)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】