説明

室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物

【課題】非常に長い作業時間の確保が容易であり、揮発性を有する架橋剤由来のシラン単量体成分による不具合がなく、二液型RTVとしても好適に使用することができ、更に良好なゴム弾性を有する硬化物となり得る室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を提供する。
【解決手段】(A)分子鎖両末端が水酸基で封止されたジオルガノポリシロキサン:100質量部、(B)分子鎖中にアルキレン結合を介した加水分解性シリル基を有するポリシロキサン:1〜200質量部、(C)触媒:0.01〜10質量部を含有することを特徴とする室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業時間を非常に長く確保でき、また、未硬化時の反応性シラン化合物の揮発が殆どなく、シーリング剤、接着剤、コーティング剤又はポッティング剤用として好適な室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
縮合硬化型シリコーン系シーリング剤、接着剤、コーティング剤、ポッティング剤組成物は、建築、電気電子、輸送機、電装部品、家電製品等の非常に多くの分野で使用されている。通常、これら用途に使用される縮合硬化型シリコーン系シーリング剤、接着剤、コーティング剤、ポッティング剤組成物は、架橋剤として一分子中にケイ素原子に結合した加水分解可能な基を少なくとも3個有する有機ケイ素化合物及び/又はその部分加水分解物が使用される。これは本質的に3官能加水分解性シラン及び/又はその部分加水分解物を指すものであり、具体的には、アルキルトリメトキシシラン、アルキルトリブタノキシムシラン、アルキルトリアセトキシシラン、アルキルトリイソプロペノキシシランあるいはこれらの部分加水分解物である。これら反応性シランの反応性は非常に高いため、上記用途の大部分を占める速硬化性の要求に適合している。しかし、屋根防水、屋根塗膜防水、水中構造物塗料、船底塗料、壁面塗装等の大面積の構造物への塗装や、シーリング、接着、コーティング、ポッティング後の接着対象物の位置合わせ、面修正等では、逆に24時間を超えるような非常に長い作業可使時間が必要とされる場合があり、通常用いられる架橋剤ではそのように長い作業可使時間を得ることは非常に困難である。
【0003】
また、未硬化時に発生する架橋剤由来のシラン単量体成分、低分子シロキサンオリゴマーは、硬化直後の加熱による形状変化、有機塗装のはじき、電気接点の短絡、導通不良、作業場床のすべり等の不具合を発生してきた。従来、その主原因はベースポリマー中に含まれる低分子環状シロキサンであるとされてきた。しかしながら、ベースポリマーから出来得る限りの低分子環状シロキサンを取り除いても、問題は完全な解決には至らない場合が多く見られる。揮発性を有する架橋剤由来のシラン単量体成分もその原因となっている。
【0004】
縮合硬化型シリコーンシーリング材料として十分に長い可使時間を有するものは、特開昭51−62850号公報、特開昭52−108796号公報、特開昭55−92761号公報(特許文献1〜3)に記載されている脱アミノキシ型組成物である。しかし、脱アミノキシ型組成物は、硬化時に生成するジアルキルヒドロキシアミン特有の臭気を有し、また、良好な硬化物を得ながら可使時間を延長するのはおよそ12〜24時間が限界である。更に可使時間を延長するには、特許第2974231号公報、特開2001−181508号公報(特許文献4,5)のように揮発性のオルガノシロキサンを添加する手法があるが、揮発性のオルガノシロキサンによる周囲の汚染、及び硬化後の体積収縮をもたらすものであった。脱アミノキシ型組成物に代わる低臭気の組成物としては、脱アルコール型組成物が挙げられる。代表例としては、特公昭39−27643号公報(特許文献6)に記載のものが挙げられ、これには水酸基末端封鎖オルガノポリシロキサンとアルコキシシランと有機チタン化合物からなる組成物が開示されている。
【0005】
また、特開昭55−43119号公報(特許文献7)には、アルコキシシリル末端封鎖オルガノポリシロキサンとアルコキシシランとアルコキシチタンからなる組成物が開示されている。また、特公平7−39547号公報(特許文献8)には、シルエチレン基を含むアルコキシシリル末端封鎖オルガノポリシロキサンとアルコキシシランとアルコキシチタンからなる組成物が開示されている。更に、特開昭62−207369号公報(特許文献9)には、アルコキシシリル末端封鎖オルガノポリシロキサンと水酸基末端オルガノポリシロキサン、アルコキシシランとチタンからなる組成物が開示されており、耐油膨潤性、シェルフ・ライフ(保存性)が改良されるとしている。これらの脱アルコール型組成物は、何れも製造方法、保存安定性(経時変化の抑制)、耐油膨潤性といった種々の特性改良が検討されているものであり、特には脱アルコール型の組成物に特徴的に見られる保存安定性の面から、水分の不存在下で安定である深部硬化性を有さない所謂一液型の組成物であることが強調されている。これに対して、深部硬化性を有する二液型の組成物に関しては、一液型ほどの詳細な検討はほとんどなされていない。
【0006】
二液型の脱アルコール型KTV組成物としては、特許第2784045号公報(特許文献10)に両末端がシラノール基で封鎖されたオルガノポリシロキサン、トリアルコキシシラン及びその部分加水分解物、炭酸カルシウム、有機金属触媒からなる組成物が開示されている。また、特許第3210424号公報(特許文献11)には、両末端がシラノール基で封鎖されたオルガノポリシロキサン、アルコキシ基を2個有するトリシロキサン、トリ又はテトラアルコキシシラン及びその部分加水分解物、硬化触媒からなる組成物が開示されているが、何れも架橋剤としてはアルコキシシランを用いているため、十分な可使時間の確保のためには触媒量を減量するため、十分な機械物性を得られないものとなる。
【0007】
【特許文献1】特開昭51−62850号公報
【特許文献2】特開昭52−108796号公報
【特許文献3】特開昭55−92761号公報
【特許文献4】特許第2974231号公報
【特許文献5】特開2001−181508号公報
【特許文献6】特公昭39−27643号公報
【特許文献7】特開昭55−43119号公報
【特許文献8】特公平7−39547号公報
【特許文献9】特開昭62−207369号公報
【特許文献10】特許第2784045号公報
【特許文献11】特許第3210424号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、非常に長い作業時間の確保が容易であり、揮発性を有する架橋剤由来のシラン単量体成分による不具合がなく、二液型RTVとしても好適に使用することができ、更に良好なゴム弾性を有する硬化物となり得る室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、(A)分子鎖両末端が水酸基で封止されたジオルガノポリシロキサン:100質量部、(B)分子鎖中にアルキレン結合を介した加水分解性シリル基を有するポリシロキサン:1〜200質量部、(C)触媒:0.01〜10質量部を含有する室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物が、非常に長い作業時間の確保が容易であり、揮発性を有する架橋剤由来のシラン単量体成分による不具合がなく、更に良好なゴム弾性を有する硬化物となり得、シーリング剤、接着剤、コーティング剤、ポッティング剤等として有効であることを見出した。即ち、架橋剤としてアルコキシシラン及びその部分加水分解物を用いて触媒量で可使時間を確保するには限界があるため、これに代わり架橋剤自体の反応性が低いポリマー型のアルコキシシロキサンを用いることで十分な可使時間と硬化後の機械物性の両立を可能とした室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物が得られることを知見し、本発明をなすに至った。
【0010】
従って、本発明は、下記に示す室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を提供する。
〔1〕 (A)分子鎖両末端が水酸基で封止されたジオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)分子鎖中にアルキレン結合を介した加水分解性シリル基を有するポリシロキサン:1〜200質量部、
(C)触媒:0.01〜10質量部
を含有することを特徴とする室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
〔2〕 (A)成分が、下記一般式(1)で示されるジオルガノポリシロキサンである〔1〕記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
HO(R2SiO)kH (1)
(式中、Rは同一又は異種の非置換もしくは置換の1価炭化水素基であり、kは10以上の整数である。)
〔3〕 (B)成分が、下記一般式(2)〜(4)で示されるポリシロキサンから選ばれる1種又は2種以上である〔1〕又は〔2〕記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【化1】

(式中、R1は同一又は異種の炭素数1〜6のアルキル基もしくは炭素数2〜10のアルコキシアルキル基であり、R2は同一又は異種の非置換もしくは置換の1価炭化水素基であり、R3は炭素数1〜12のアルキレン基であり、mは1〜3の整数、nは1以上の整数、jは10以上の整数、hは2以上の整数である。)
〔4〕 更に、(D)充填剤を(A)成分100質量部に対して1〜500質量部含むことを特徴とする〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
〔5〕 (D)成分の充填剤が、煙霧質シリカ、沈降性シリカ及び炭酸カルシウムから選ばれるものであることを特徴とする〔4〕記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
〔6〕 シーリング剤、接着剤、コーティング剤又はポッティング剤用である〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、非常に長い作業時間の確保が容易であり、揮発性を有する架橋剤由来のシラン単量体成分による不具合がなく、更に良好なゴム弾性を有する硬化物となり得、シーリング剤、接着剤、コーティング剤、ポッティング剤等として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
[(A)成分]
(A)成分の分子鎖両末端が水酸基で封止されたジオルガノポリシロキサンとしては、下記一般式(1)で表されるジオルガノポリシロキサンが好ましい。
HO(R2SiO)kH (1)
(式中、Rは同一又は異種の非置換もしくは置換の1価炭化水素基であり、kは10以上の整数である。)
【0013】
上記式(1)中、Rはそれぞれ独立に非置換もしくは置換の1価炭化水素基であり、炭素数1〜20、特に1〜6のアルキル基、炭素数2〜20、特に2〜6のアルケニル基、炭素数6〜20、特に6〜12のアリール基、あるいはそれらの水素原子の一部がハロゲン原子で置換された基が例示され、具体的に、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、シクロヘキシル基等、アルケニル基としては、ビニル基、アリル基等、アリール基としては、フェニル基等、ハロゲン置換基としては、3,3,3−トリフルオロプロピル基等が例示される。またkは10以上の整数で、このジオルガノポリシロキサンの25℃における粘度が10〜10万mPa・sの範囲、好ましくは100〜5万mPa・sの範囲となる数である。
【0014】
なお、上記式(1)で示されるジオルガノポリシロキサンは、25℃における粘度が10〜100万mPa・sの範囲、特に100〜50万mPa・sの範囲であることが好ましく、10mPa・s未満では硬化物(ゴム)に十分な機械的特性が得られない場合があり、100万mPa・sより大きいと組成物の粘度が高くなり、作業性が悪くなる場合がある。ここで、粘度は回転粘度計により測定した値である。
【0015】
[(B)成分]
(B)成分の分子鎖中にアルキレン結合を介した加水分解性シリル基を好ましくは2〜10個、より好ましくは2〜5個有するポリシロキサンは、本組成物の架橋剤として作用するものである。(B)成分のポリシロキサンとしては、下記一般式(2)〜(4)で表されるポリシロキサンの1種又は2種以上が好ましい。
【0016】
【化2】

(式中、R1は同一又は異種の炭素数1〜6のアルキル基もしくは炭素数2〜10のアルコキシアルキル基であり、R2は同一又は異種の非置換もしくは置換の1価炭化水素基であり、R3は炭素数1〜12のアルキレン基であり、mは1〜3の整数、nは1以上の整数、jは10以上の整数、hは2以上の整数である。)
【0017】
上記式中、R1は同一又は異種の炭素数1〜6のアルキル基もしくは炭素数2〜10のアルコキシアルキル基であり、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、アルコキシアルキル基としては、メトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、ブトキシメチル基、ペンチロキシメチル基、ヘキシロキシメチル基、ヘプチロキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、プロポキシエチル基、ブトキシエチル基、ペンチロキシエチル基、ヘキシロキシエチル基、メトキシプロピル基、エトキシプロピル基、プロポキシプロピル基、ブトキシプロピル基、メトキシブチル基、エトキシブチル基、プロポキシブチル基、メトキシペンチル基、エトキシペンチル基、メトキシヘキシル基、メトキシヘプチル基等が挙げられる。
【0018】
また、R2は同一又は異種の非置換もしくは置換の1価炭化水素基であり、炭素数1〜20、特に1〜6のアルキル基、炭素数6〜20、特に6〜12のアリール基、あるいはそれらの水素原子の一部がハロゲン原子で置換された基等が例示され、具体的に、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、シクロヘキシル基等、アルケニル基としては、ビニル基、アリル基等、アリール基としては、フェニル基等、ハロゲン置換基としては、3,3,3−トリフルオロプロピル基等が例示される。
【0019】
3は炭素数1〜12、特に1〜6のアルキレン基であり、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基等が挙げられる。
mは1〜3の整数、nは1以上、好ましくは1〜5の整数、jは10以上、好ましくは100以上の整数、hは2以上、好ましくは2〜10の整数である。
【0020】
なお、(B)成分のポリシロキサンは、25℃における粘度が10〜100万mPa・sの範囲、特に100〜50万mPa・sの範囲であることが好ましく、粘度が小さすぎると硬化物(ゴム)に十分な機械的特性が得られない場合があり、大きすぎると組成物の粘度が高くなり、作業性が低下する場合がある。ここで、粘度は回転粘度計により測定した値である。
【0021】
本架橋剤は、相当するアルケニルシロキサンにヒドロシリル基とアルコキシ基を有するシラン、もしくは相当するヒドロシロキサンにアルケニル基とアルコキシ基を有するシランを触媒存在下で付加反応させることにより容易に得ることができる。
【0022】
この(B)成分のポリシロキサンの配合量は、(A)成分100質量部に対して1〜200質量部、好ましくは3〜150質量部である。1質量部未満では十分なゴム物性が得られず、200質量部を超えると組成物の深部硬化性が低下し、作業性が低下する。
【0023】
[(C)成分]
(C)成分の硬化触媒は、本発明の組成物において(A)成分と(B)成分の反応触媒として作用するものである。これには、ジオクテート錫等の錫エステル化合物、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクトエート等のアルキル錫エステル化合物、テトライソプロポキシチタン、テトラn−ブトキシチタン、テトラキス(2−エチルヘキソキシ)チタン、ジプロポキシビス(アセチルアセトナ)チタン、チタニウムイソプロポキシオクチレングリコール等のチタン酸エステル又はチタンキレート化合物、ナフテン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、亜鉛−2−エチルオクトエート、鉄−2−エチルヘキソエート、コバルト−2−エチルヘキソエート、マンガン−2−エチルヘキソエート、ナフテン酸コバルト、アルコキシアルミニウム化合物等の有機金属化合物、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノアルキル基置換アルコキシシラン、ヘキシルアミン、リン酸ドデシルアミン、テトラメチルグアニジン、ジアザビシクロノナン等のアミン化合物及びその塩、ベンジルトリエチルアンモニウムアセテート等の第4級アンモニウム塩、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、蓚酸リチウム等のアルカリ金属の低級脂肪酸塩、ジメチルヒドロキシルアミン、ジエチルヒドロキシルアミン等のジアルキルヒドロキシルアミン、テトラメチルグアニジルプロピルトリメトキシシラン、テトラメチルグアニジルプロピルメチルジメトキシシラン、テトラメチルグアニジルプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン等のグアニジル基を含有するシラン又はシロキサン等が例示される。特には、テトラメチルグアニジン、ジアザビシクロノナン等のアミン化合物、テトラメチルグアニジルプロピルトリメトキシシラン、テトラメチルグアニジルプロピルメチルジメトキシシラン、テトラメチルグアニジルプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン等のグアニジル基を含有するシラン又はシロキサン、錫エステル化合物、アルキル錫エステル化合物等が好適に使用されるが、これらはその1種に限定されず、2種もしくはそれ以上の混合物として使用してもよい。
【0024】
なお、これら硬化触媒の配合量は、(A)成分100質量部に対して0.01〜10質量部、好ましくは0.05〜5質量部である。0.01質量部未満では十分な硬化特性が得られず、10質量部を超える量では組成物の耐久性が低下する。
【0025】
[(D)成分]
(D)成分の充填剤は、本発明の組成物において補強剤、増量剤として作用するものである。充填剤として具体的には、表面処理又は無処理の煙霧質シリカ、湿式シリカ、沈降性シリカ、金属酸化物、金属水酸化物、ガラスビーズ、ガラスバルーン、樹脂ビーズ、樹脂バルーンなどが挙げられるが、特には煙霧質シリカ、沈降性シリカ、炭酸カルシウムが好ましく使用される。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0026】
これら充填剤の配合量は、(A)成分100質量部に対して1〜500質量部、特には5〜250質量部が好ましい。1質量部未満では補強剤、増量剤としての効果が得られない場合があり、500質量部を超える量では組成物の吐出性が低下して作業性が悪化する場合がある。
【0027】
[その他の成分]
本発明の組成物には、接着性が必要な場合に、接着性付与成分としてシランカップリング剤を配合することが好ましい。シランカップリング剤としては、業界内で公知のものが好適に使用される。特には加水分解性基として、アルコキシシリル基、アルケノキシシリル基を有するものが好ましく、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリイソプロペノキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジイソプロペノキシシラン等が例示される。特にはアミン系のシランカップリング剤の使用が好ましい。
【0028】
このシランカップリング剤の配合量は、(A)成分100質量部に対して0.1〜20質量部、特には0.2〜10質量部が好ましい。0.1質量部未満では十分な接着性が得られない場合があり、10質量部を超えると価格的に不利となる場合がある。
【0029】
また、本発明の組成物には、上記成分以外に一般に知られている添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で使用しても差し支えない。添加剤としては、チクソ性向上剤としてのポリエーテル、可塑剤としてのシリコーンオイル、イソパラフィン、架橋密度向上剤としてのトリメチルシロキシ単位とSiO2単位からなる網状ポリシロキサン等が挙げられ、必要に応じて顔料、染料、蛍光増白剤等の着色剤、防かび剤、抗菌剤、ゴキブリ忌避剤、海洋生物忌避剤等の生理活性添加剤、ブリードオイルとしてのフェニルシリコーンオイル、フロロシリコーンオイル、シリコーンと非相溶の有機液体等の表面改質剤、トルエン、キシレン、溶剤揮発油、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、低沸点イソパラフィン等の溶剤も添加することができる。
【0030】
本発明の組成物は、(A),(B),(C),必要により(D)成分を混合した1液型としても使用できる他、(B)成分と(C)成分を別梱包とした二液型、例えば(A),(B),(D)成分と(A),(C),(D)成分の二液タイプや、(A),(B),(D)成分と(C)成分等の二液タイプとして使用することもできる。二液タイプとすることにより、より保存安定性が確保できる。
【0031】
本発明のオルガノポリシロキサン組成物は、上記(A)〜(C)成分、必要に応じて(D)成分及びその他の成分を常法に準じて均一に混合することにより得ることができる。
【0032】
このようにして得られた本発明のオルガノポリシロキサン組成物は、硬化が非常に遅いことから作業時間を非常に長く確保でき、また、未硬化時の反応性シラン化合物の揮発が殆どないことから、シーリング剤、接着剤、コーティング剤、ポッティング剤等として好適に使用することができる。
【0033】
なお、上記オルガノポリシロキサン組成物の硬化条件は、通常の室温硬化性の縮合硬化型シリコーンゴム組成物の場合の硬化条件と同様でよく、一般には、温度5〜40℃、湿度10〜90%RHの環境下で、良好に使用される。
【実施例】
【0034】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において、粘度は回転粘度計により測定した25℃における値を示す。
【0035】
[実施例1]
両末端が水酸基で封鎖された粘度700mPa・sのジメチルポリシロキサンを100質量部、両末端がシルエチレン基を介してトリメトキシシリル基で封鎖された粘度700mPa・sのジメチルポリシロキサンを25質量部に、スズジオクトエートを0.2質量部加えて均一になるまで混合して組成物1を調製した。
【0036】
[実施例2]
実施例1において、両末端がシルエチレン基を介してトリメトキシシリル基で封鎖された粘度700mPa・sのジメチルポリシロキサンの添加量を50質量部とした以外は実施例1と同様の手法で組成物2を調製した。
【0037】
[比較例1]
実施例1において、両末端がシルエチレン基を介してトリメトキシシリル基で封鎖された粘度700mPa・sのジメチルポリシロキサン25質量部に代えて、メチルトリメトキシシランを5質量部とした以外は実施例1と同様の手法で組成物3を調製した。
【0038】
これらの実施例、比較例の組成物をガラスシャーレ中に入れ、23±2℃、50±5%RHの雰囲気下でその硬化性を確認、更に1日硬化させた後に150℃に加熱してその形状保持性を確認した。結果を表1に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
[実施例3]
両末端が水酸基で封鎖された粘度50,000mPa・sのジメチルポリシロキサンを35質量部、コロイダル炭酸カルシウムを40質量部、両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖された粘度100mPa・sのジメチルポリシロキサンを25質量部、両末端がシルエチレン基を介してトリメトキシシリル基で封鎖された粘度30,000mPa・sのジメチルポリシロキサンを20質量部に、スズジオクトエートを0.2質量部加えて均一になるまで混合して組成物4を調製した。
【0041】
[実施例4]
実施例3において、スズジオクトエート0.2質量部に代えて、ジオクチルスズジラウレートを1質量部とした以外は実施例3と同様の手法で組成物5を調製した。
【0042】
[比較例2]
実施例3において、両末端がシルエチレン基を介してトリメトキシシリル基で封鎖された粘度30,000mPa・sのジメチルポリシロキサン20質量部に代えて、メチルトリメトキシシランを5質量部とした以外は実施例3と同様の手法で組成物6を調製した。
【0043】
[実施例5]
実施例3において、両末端がシルエチレン基を介してトリメトキシシリル基で封鎖された粘度30,000mPa・sのジメチルポリシロキサン20質量部に代えて、両末端がシルエチレン基を介してトリメトキシシリル基で封鎖され、更に側鎖にシルエチレン基を介したトリメトキシシリル基を1個有する粘度30,000mPa・sのジメチルポリシロキサン20質量部とした以外は、実施例3と同様の手法で組成物7を調製した。
【0044】
これらの実施例、比較例の組成物をガラスシャーレ中に入れ、23±2℃、50±5%RHの雰囲気下でその硬化性を確認、更に1日硬化させた後に150℃に加熱してその形状保持性を確認した。また、2mm厚のシートを作製し、23±2℃、50±5%RHの雰囲気下で7日硬化させた後にJIS−K−6249に準じてそのゴム物性を測定した。結果を表2に示す。
【0045】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)分子鎖両末端が水酸基で封止されたジオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)分子鎖中にアルキレン結合を介した加水分解性シリル基を有するポリシロキサン:1〜200質量部、
(C)触媒:0.01〜10質量部
を含有することを特徴とする室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項2】
(A)成分が、下記一般式(1)で示されるジオルガノポリシロキサンである請求項1記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
HO(R2SiO)kH (1)
(式中、Rは同一又は異種の非置換もしくは置換の1価炭化水素基であり、kは10以上の整数である。)
【請求項3】
(B)成分が、下記一般式(2)〜(4)で示されるポリシロキサンから選ばれる1種又は2種以上である請求項1又は2記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【化1】

(式中、R1は同一又は異種の炭素数1〜6のアルキル基もしくは炭素数2〜10のアルコキシアルキル基であり、R2は同一又は異種の非置換もしくは置換の1価炭化水素基であり、R3は炭素数1〜12のアルキレン基であり、mは1〜3の整数、nは1以上の整数、jは10以上の整数、hは2以上の整数である。)
【請求項4】
更に、(D)充填剤を(A)成分100質量部に対して1〜500質量部含むことを特徴とする請求項1,2又は3記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項5】
(D)成分の充填剤が、煙霧質シリカ、沈降性シリカ及び炭酸カルシウムから選ばれるものであることを特徴とする請求項4記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項6】
シーリング剤、接着剤、コーティング剤又はポッティング剤用である請求項1乃至5のいずれか1項記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。

【公開番号】特開2006−131824(P2006−131824A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−324935(P2004−324935)
【出願日】平成16年11月9日(2004.11.9)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】