説明

容器体、電子デバイス、及び電子デバイスの製造方法

【課題】封止材の溶融による封止孔の完全封止に要する時間を長期化させたり、溶融に要するエネルギー量を増大させて生産性を低下させることなく、シンプルな抜気構造によって封止部材が封止孔から排出されるガスによって飛散することを防止する。
【解決手段】電子部品30を搭載する容器本体3と、容器本体に固定されることにより電子部品搭載面を含む内部空所Sを形成する蓋体20と、容器本体、又は蓋体の少なくとも何れか一方に貫通形成された複数の封止孔41、42と、を備えた容器体2であって、各封止孔は、容器本体、又は蓋体の外面に形成された凹所11aの内底面に貫通形成されており、各封止孔間に位置する凹所内底面にはメタライズ層45aが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動素子、その他の電子部品を収容する容器体、この容器体を備えた電子デバイス、及びこの電子デバイスの製造方法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
HDD(ハード・ディスク・ドライブ)、モバイルコンピュータ、あるいはICカード等の小型の情報機器や、携帯電話、自動車電話、またはページングシステム等の移動体通信機器において、近年、装置の小型薄型化がめざましく、それらに用いられる圧電デバイスも小型薄型化が要求されている。また、それとともに、装置の回路基板に表面実装が可能な表面実装タイプの圧電デバイスが求められている。
圧電振動子のように容器内に圧電振動素子を気密封止した構造の電子デバイスの製造工程にあっては、封止孔を有した容器内に圧電振動素子を収容した後で、この容器を真空チャンバー内に配置して真空吸引しつつ加熱することにより封止孔から内部ガスを排出し、ガスの排出を完了した後で封止部材を用いて封止孔を封止している。
封止工程では、真空チャンバー内において封止孔が上向きとなるように容器をセットし、封止孔を塞ぐように球状の金属製封止部材を載置してから封止部材にレーザー光を照射して溶融させることにより封止孔を封止する。
電子デバイスの小型化に伴って封止部材も小型化し、例えば直径0.3mm程度の金属球が使用される。このような小型、軽量の金属球は、真空吸引する際に容器内部から封止孔を経て排出されてくるガスによって押し上げられて容器外へ飛散し易く、飛散すると封止工程を実施できなくなり、これが圧電デバイスの生産性を低下させる原因となっている。
真空引きによって封止部材が飛散することを防止するために、真空引きの速度を低下させることが行われているが、生産性の低下を招くばかりでなく、電子デバイス内の真空度の低下、バラツキによって完成品の特性を低下させる原因となっている。
【0003】
これに対して特許文献1には、容器内に圧電振動素子を気密封止することが可能な小型の振動子用容器が開示されている。この容器は、振動子片を内蔵したパッケージの開口側を板状の蓋体によって被冠することにより、パッケージが封止される。蓋体には、パッケージ内と外部とを連通すると共に、少なくとも内周面に金属膜によりメタライズ層が設けられた貫通穴が形成されている。貫通穴を、封止材を溶融することによりパッケージ内を封止する。貫通穴は、大径の主貫通穴と、主貫通穴に連通連接された小径の副貫通穴とからなる達磨形を成している。主貫通穴内に載置した球状の封止材が溶融する時に、副貫通穴からパッケージ内のガスを容易に排気することができる、と記載されている。
しかし、図14(a)(b)に示すように減圧によるガス抜き工程において、蓋体200に形成した主貫通穴200a内に封止材202を位置決め載置した状態で、主貫通穴と連通して隣接配置された副貫通穴200bからガス排気を行おうとした場合、副貫通穴200bから排出されるガスの勢いにより封止材が浮き上がり易くなることは明かであり、封止材の飛散を防止することは難しい。つまり、主貫通穴200aと副貫通穴200bは連通することにより一つの大きな開口面積を有した長穴を構成しており、長穴であるために、封止に際して溶融した封止材が長穴の全長に渡って流動しにくく、両貫通穴を封止し切れないこととなる。
【0004】
また、主貫通穴200aに封止材202を載置した状態では、封止材202は主貫通穴200aの内周縁全体と接触している訳ではなく、副貫通穴200bとの連通部200cでは何れの貫通穴の内周縁とも接触していない。このため、レーザー光Lを封止材の中心部Cに照射して溶融させるときに封止材の溶融の仕方は一様でなくなる。即ち、図15(a)(b)に示すように主貫通穴200aの内周縁と接触した封止材の部分Aから溶融が進行し、何れの貫通穴の内周縁とも接触していない部分Bでの進行は遅延する。このため、溶融しにくい部分Bを介して封止材202と対面している副貫通穴200bに対しては溶融した封止材の流入、進行が遅くなり、封止しにくい状態にある。しかも、図15(a)中に矢印で示すように先行して溶融した部分Aからの表面張力によって溶融が遅延している部分Bが部分A側に引きつけられるため、益々副貫通穴200b内に溶融した封止材が移動し難くなる。
また、特許文献1には副貫通穴200bの内周面をメタライズすると記載されているが、例えば直径0.3mm程度の封止材を着座させるに適した主貫通穴200aの直径を0.15mm程度とすると、副貫通穴200bの内径は0.07mm程度となる。このような小径の副貫通穴の内周面にメタライズを行うと、ほぼ間違いなく副貫通穴はメタライズ用の金属によって埋設されてしまう。従って、少なくとも副貫通穴200bを主貫通穴200aと同時に貫通形成した後で両貫通穴の内周面をメタライズすることは不可能であり、主貫通穴を形成してメタライズを行ってから蓋体に機械的加工によって副貫通穴を形成するしか適当な方法はない。
【0005】
このようにして加工された副貫通穴200bの内周面にはメタライズ層203が施されていない。従って、主貫通穴内に着座した封止材を溶融させた際に、溶融金属が直接副貫通穴内に直接流入するルートを経て副貫通穴内に充満し、冷却後にこれを塞ぐには多大の時間を要し、生産性を低下させることとなる。一方、蓋体の表面はメタライズされているため、溶融した封止材の一部は蓋体表面に沿って移動し易く、図14(b)中に矢印で示した迂回したルートを経て副貫通穴の外周側から内部に進入してゆく。このため、生産性の低下が著しくなる。
また、特許文献2にはリッド基板の外面に設けた半球状の外部側凹部の内底面に、球状の封止材の直径よりも長い楕円形の封止孔を形成した構成例が開示されているが、特許文献2の封止孔も特許文献1と同様に封止材を着座させる孔部分と、抜気用の孔部分とが連通しているため、封止材の飛散防止効果が低く、また封止材の直径を超えて延びる孔部分を溶融した封止材が封止するのに多大な時間とエネルギー量を要し、生産性が低下することが明かである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−50581公報
【特許文献2】特開2010−124476公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
要するに、封止孔の形状として、球形の封止材を載置する円形の孔部分の周縁部から抜気用の細長い孔部分を連続形成した場合には、ガス排気時に封止材が押し上げられて容器外へ飛散することを防止することが難しく、また溶融した封止材が抜気用の細長い孔部分に充満してこれを効率的に塞ぐことが難しかった。
要するに、封止孔の形状が長穴状となっている場合には、封止孔の一部を塞ぐように載置された封止部材を溶融した時に、溶融した金属材料は封止孔内を流動して封止孔内に充満する移動経路をとりにくく、封止孔周辺の表面(メタライズ膜)上を移動する迂回したルートを経て封止部材により塞がれていない孔部分の外周側から内部に進入してゆく。このため、生産性の低下が著しくなる。
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、封止材の溶融による封止孔の完全封止に要する時間を長期化させたり、溶融に要するエネルギー量を増大させて生産性を低下させることなく、シンプルな抜気構造によって封止部材が封止孔から排出されるガスによって飛散することを防止することができる電子デバイスの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0009】
[適用例1]本適用例に係る容器体は、電子部品を収容するための容器体であって、該容器体は貫通して独立した複数の封止孔を備えていることを特徴とする。
【0010】
互いに独立した複数の封止孔は、共に封止工程において溶融した封止部材によって封止される。封止孔間に介在するメタライズ層が、溶融状態となった封止部材が副封止孔側へ流動して副封止孔内に充填されることを促進する。個々の封止孔の開口面積が過大とならないので、封止部材によって封止し易くなる。容器体内部のガスを排出する際に、封止部材によって塞がれていない一方の封止孔からガスを排出することができ、封止部材がガスにより浮き上がり飛散することを防止できる。
【0011】
[適用例2]本適用例に係る電子デバイスは、請求項1に記載の容器体と、該容器体の内部空所に収容された電子部品と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
[適用例3]本適用例に係る電子デバイスの製造方法は、封止部材の少なくとも一部を前記封止孔内に配置する封止部材配置工程と、前記封止部材配置工程の後に、前記容器体の内部空所を減圧する減圧工程と、前記減圧工程の後に、前記封止部材を溶融させて前記各封止孔を封止する溶融工程と、を含んでいることを特徴とする。
【0013】
一つの封止孔に軽量の封止部材を着座させた状態で容器体内部のガスを排出する際に、大半のガスは他の封止孔から排出されるので、封止部材が浮き上がって容器体から飛散することを防止できる。ガス排出効率を高めてその時間を短縮できる。他の封止孔は開口面積が一つの封止孔よりも小さいことにより、溶融した封止部材によって封止し易くなる。また、一つの封止孔とは独立した孔であるため、ガス排出時に主封止孔に嵌合した封止部材を浮き上がらせて飛散させることがない。
【0014】
[適用例4]本適用例に係る電子デバイスの製造方法は、前記封止部材配置工程では、前記複数の封止孔のうち開口面積が最も大きい封止孔に前記封止部材を着座させ、前記他の封止孔のうち少なくとも一つは、前記封止部材によって閉塞されないことを特徴とする。
【0015】
このため、後段の減圧工程において、容器体内部から封止孔を経由して排出されるガスによって封止部材が飛散することを防止できるので、電子デバイスの製造工程における生産性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の電子デバイスの一例としての圧電デバイスの第1の実施の形態を示した概略平面図である。
【図2】(a)は図1のX−X線概略断面図であり、(b)は封止部材充填前の要部断面図である。
【図3】(a)は図1の底面図であり、(b)は封止部材充填前の底面図である。
【図4】(a)及び(b)は容器本体に圧電振動素子を搭載する状態を説明する縦断面図、及び容器本体に蓋体を固定する手順を説明する図である。
【図5】(a)及び(b)は容器体の封止孔に封止部材を配置してチャンバー内に配置した状態を示す説明図、及びその要部拡大図である。
【図6】本発明に係る電子デバイスの製造方法を説明するフローチャートである。
【図7】減圧工程における温度プロファイルの一例を示した図である。
【図8】(a)及び(b)は本発明の封止孔の他の構成例を示す説明図である。
【図9】(a)及び(b)は本発明の封止孔の他の構成例を示す説明図である。
【図10】(a)は本発明の他の実施形態に係る封止孔の構成を示す容器体の底面図であり、(b)は凹所のX−X断面拡大図である。
【図11】凹所を円弧状に構成した構成例を示す断面図である。
【図12】(a)は、本発明の圧電デバイスの異なる実施の形態の構成を示す概略平面図であり、(b)は(a)のX−X線概略断面図である。
【図13】本発明の実施形態に係る圧電デバイスを利用した電子機器の一例としてのデジタル式携帯電話装置の概略構成を示す図である。
【図14】(a)及び(b)は従来例に係る封止孔に封止部材を載置した状態を示す縦断面図、及び平面図である。
【図15】(a)及び(b)は図14の封止部材を溶融させた状態を示す縦断面図、及び平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を図面に示した実施の形態により詳細に説明する。
図1乃至図3は、本発明の電子デバイスの一例としての圧電デバイスの第1の実施の形態を示しており、図1はその概略平面図、図2(a)は図1のX−X線概略断面図であり、(b)は封止部材充填前の要部断面図であり、図3(a)は図1の底面図であり、(b)は封止部材充填前の底面図である。
これらの図において、圧電デバイス1は、圧電振動子を構成した例を示しており、圧電デバイス1は、容器体2内に圧電振動素子(電子部品)30を気密封止した構成を有している。
容器体2は、容器本体3と、容器本体3上に搭載された圧電振動素子30を気密封止するために組み付けられる蓋体20と、から構成されている。
容器本体3は、例えば、セラミックグリーンシートを積層して焼結した酸化アルミニウム質焼結体等の基板で形成されている。複数の各基板は、その内側に所定の孔を形成することで、積層した場合に内側に所定の内部空間Sを形成するようにされている。すなわち、図2(a)に示すように、本実施形態の容器本体3は、例えば、平板状の第1の積層基板11と、その上に重ねられる複数の孔を有した第2の積層基板12と、その上に重ねられる環状の第3の積層基板13と、から形成されている。
容器本体3の内部空間S内において左端部付近において、内部空間Sに露出して底部を構成するベースとなる第2の積層基板12(の電子部品搭載面)には、Au及びNiメッキが施された電極部15、15が設けられている。この電極部15、15は、外部と接続されて駆動電圧を供給するものである。この各電極部15、15の上に導電性接着剤16、16が塗布され、この導電性接着剤16、16の上に圧電振動素子30の基部31が載置されて、導電性接着剤16、16が硬化されるようになっている。
【0018】
圧電振動素子30の基部31の導電性接着剤16、16と触れる部分には、駆動電圧を伝えるための引出電極(図示せず)が形成されており、これにより、圧電振動素子30は、駆動用電極が容器本体3側の電極部15、15と導電性接着剤16、16を介して電気的に接続されている。
圧電振動素子30を構成する圧電基板は、例えば水晶で形成されており、水晶以外にもタンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム等の圧電材料を利用することができる。本実施形態の場合、圧電振動素子30は、容器本体3側と固定される基部31と、この基部31から、図において右方に向けて二股に別れて平行に延びる一対の振動腕34、35を備えており、全体が音叉のような形状とされた、所謂、音叉型圧電振動素子が利用されている。
容器本体3の開放された上面には、低融点ガラス等のロウ材33を介して、金属製の蓋体20が接合されることにより封止されている。蓋体20は該容器本体に固定されることにより第2の積層基板12の上面(電子部品搭載面)を含む内部空所Sを形成する手段である。
次いで、容器本体3内に圧電振動素子30を固定した後で、両封止孔41、42に封止部材(金属製封止部材)38が溶融充填されることにより、容器2内を気密状態に封止する。
【0019】
また、容器本体3の底面のほぼ中央付近には、容器本体3の底板を構成する2枚の積層基板11、12のうちの外側の第1の積層基板11に大径の開口部11aを貫通形成することにより凹所11a(封止孔形成領域)が形成される。この凹所11aの内底面に相当する第2の積層基板12には2つの封止孔41、42が近接して貫通形成される。
要するに、複数の封止孔のうちの一つは、溶融することにより全ての封止孔41、42を封止する封止部材38を着座させる主封止孔41であり、他の封止孔は主封止孔41に着座した溶融前の封止部材38によって閉塞されない副封止孔42である。
【0020】
大径の主封止孔41には後述する減圧工程において球状の封止部材38が嵌合配置され、小径の副封止孔42には封止部材が載置されないことにより、減圧工程において容器体内部からガスを排気する際のガス抜き用の孔として利用される。主封止孔41と副封止孔42とは連続(連通)しない独立した孔であり、第2の積層基板12上に積層されたメタライズ層45aを介して離間配置されている。主封止孔41、及び副封止孔42は、共に一回の封止工程において溶融した封止部材38によって封止される。従って、両封止孔41、42間の距離は、溶融することによって凹所11a(封止孔形成領域)内に展開した封止部材によって封止することができる程度の距離とする。個々の封止孔の開口面積が過大とならないので、封止部材によって封止し易くなる。また、後述するように封止孔間に介在するメタライズ層45aが、溶融状態となった主封止孔41内の封止部材が副封止孔42側へ流動して副封止孔内に充填されることを促進する。
【0021】
円形の凹所(封止孔形成領域)11aと、これと同心円状に配置された円形の主封止孔41との境界には段部40があり、好ましくは、段部40と、主封止孔41の内周面には後述する封止部材38である金属ボール(例えば、金ゲルマニウム合金(Au/Ge))に対して、濡れ性のよい金属、例えば、金メッキ等が、所定の下地層の上に形成されることにより被覆(メタライズ)されている。また、主封止孔41内を含む凹所11a内をメタライズする際に、凹所11aの内底面に相当する第2の積層基板12の外面にもメタライズ層が形成される。副封止孔42は例えば直径0.07mm程度の小径であるため、副封止孔を貫通形成してからメタライズを行うと、内部がメタライズ金属により埋まってしまうため、副封止孔42は主封止孔41の内周面、及び凹所11aの内底面に対するメタライズが完了してから工具を用いて形成するのが好ましい。この場合、副封止孔42の内周面にはメタライズ層が存在しない。
【0022】
本例では、封止孔41、42に充填される封止部材38として、後述する封止工程で詳しく説明するように、特に金ゲルマニウム合金(Au/Ge)が用いられている。なお、封止部材としては任意の金属材料を使用することができる。
さらに、この実施形態では、容器本体3を構成する第2の積層基板12には、図において右端部付近に孔を形成することにより、この積層基板12の厚みに対応した凹部43が形成されている。この凹部43は、圧電振動素子30の下方に位置している。これにより、本実施形態では、容器本体3に外部から衝撃が加わった場合に、圧電振動素子30の自由端が矢印D方向に変位して振れた場合においても、容器本体3の内側底面と接触することを防止している。
【0023】
本実施形態に係る圧電デバイス1は以上のように、容器本体外面に設けた凹所(封止孔形成領域)11a内に、封止部材38を位置決めさせる主封止孔41の他に、主封止孔41とは独立して離間配置されたガス排気用の副封止孔42を設けたため、後述する減圧工程において容器体内のガスを排気する際に封止部材がガスによって押し出されて凹所11a内から脱落するという不具合を解決することができる。
【0024】
また、主封止孔41と副封止孔42とは、凹所11a内底面に形成されたメタライズ層45aを介して近接配置しているため、後述する封止工程において主封止孔内に嵌合していた封止部材が溶融してその一部がメタライズ層45a上を経由して副封止孔42側へ流動して流入し易くなり、封止不良が発生することを防止できる。
図14において説明したように、仮に2つの封止孔41、42間が連通して長穴状になっている場合には、両封止孔間にメタライズ層45aが存在しないため、主封止孔41内に着座した状態で溶融された封止部材の一部は副封止孔42(内壁にはメタライズ層が存在しない)に向かって流動するよりも、メタライズ層が存在する主封止孔の外周縁に展開し易い状態となる。つまり、溶融した封止部材の一部は直接副封止孔42を封止するために副封止孔内に流入するのではなく、主封止孔の外周に位置するメタライズ層上を経由して(迂回して)副封止孔42内に流入し、その内部に充填してから固化することとなる。このため、両封止孔を封止するのに要する時間が長期化し、生産性の低下につながる。また、両封止孔間には第2の積層基板12の一部が介在しているため、副封止孔から容器体内部のガスが排出される際に、ガス流による圧力が主封止孔41内に嵌合している封止部材に影響を及ぼしてこれを浮上させて飛散させる、とう虞もない。
仮に、2つの封止孔41、42が連通してすることによって形成される一つの長孔の全開口面積と、独立した2つの封止孔41、42の合計開口面積が同一であったとしても、前者の場合には後者に比して溶融した封止部材が全開口部を封止するのに要する時間が長くなり、必要なエネルギー量が多くなる。
【0025】
また、圧電デバイス1の容器本体3の封止孔41、42が金ゲルマニウム合金(Au/Ge)でなる封止部材38により封止されている。このため、封止後の圧電デバイス1を実装する工程において、熱が加えられた場合に、金ゲルマニウム合金は融点が高く、容易に溶融しないことから、容器体2内部の真空状態が封止部材の一部溶融によりリークされることが有効に防止される。しかも、封止部材38に鉛を含有していないことから、鉛を原因とする環境汚染を回避することができる。
【0026】
次に、本発明の電子デバイスの製造方法は、次の如き特徴的な構成を有する。
即ち、本発明は、内部に空所Sを有すると共に該空所を容器体外部と連通させる複数の独立した封止孔41、42を外壁(容器本体3、或いは蓋体20)に設けた凹所11a内に有した容器体2と、両封止孔間に位置するメタライズ層45と、溶融した後で固化することによりメタライズ層表面を介して封止孔41、42に跨って展開し、且つ各封止孔内に充填されてこれらを封止する封止部材38と、各封止孔を封止された容器体内に気密封止された電子部品30と、を有した電子デバイスの製造方法に関するものである。
本発明に係る製造方法の第1の特徴的な構成は、互いに離間配置された独立孔である各封止孔41、42を内底面に有した凹所(封止孔形成領域)11aが上向きとなるように容器体2をセットする容器体セット工程と、封止部材38を主封止孔41上に配置する封止部材配置工程と、封止部材が凹所11a内に配置された容器体2を真空チャンバー内に配置し、該真空チャンバー内を減圧することにより副封止孔42を介して容器体の内部空所Sを減圧する減圧工程と、内部空所Sが減圧された状態で、封止部材を溶融、固化させる溶融工程と、を有し、溶融した封止部材の一部が両封止孔間に位置するメタライズ層上を流動して副封止孔内に流入するようにした点にある。
【0027】
次に、図6は本発明に係る電子デバイスの製造方法を説明するフローチャートである。
図6において、容器体、及び圧電振動素子の製造工程は図示を省略し、容器本体準備工程(ステップS1)、圧電振動素子の準備工程(ステップS2)としてそれぞれ簡略化して示した。
ステップS1に示す容器本体3準備工程では、容器本体3を製造して準備する。容器本体3は、例えば、セラミック、ガラスなどの絶縁材料を用いて形成し、さらに具体的には、酸化アルミニウム質のセラミックグリーンシートなどを成形して用いることができる。そのセラミックグリーンシートなどの材料を成形して、凹所となる開口部11aを設けた第1の積層基板11と、主封止孔41(及び副封止孔42)を設けた第2の積層基板12を積層し、さらに第2の積層基板12上に矩形環状の第3の積層基板13を積層させ、その後焼成することによって段差を有する凹部が形成された容器本体3の外形を得る。
なお、直径が極めて小さい(例えば、0.07mm程度)副封止孔42をメタライズ前に形成すると、メタライズ用の金属が孔内に入り込んで孔を封止してしまう虞があるため、ステップS1では主封止孔41のみを形成した第2の積層基板12を用い、メタライズ後に副封止孔42を機械加工によって形成するのが好ましい。
なお、開口部11a、及び各封止孔41、42は円形の穴であってもよいし、非円形の穴であってもよい。
【0028】
次に、絶縁材料からなる容器本体3の外面適所に、例えば、タングステンメタライズを施した上に、ニッケルめっきおよび金めっきを行ない、さらにフォトリソグラフィーを併用するなどの方法により、第1の積層基板11の外底面に設けられた外部実装端子(図示せず)、第2の積層基板12の上面に設けられた電極部15等を形成する。前記メタライズ工程において、凹所11aの内底面に位置する第2の積層基板外面、及び主封止孔41内周面に封止部材とのなじみのよい金属膜を形成する。副封止孔42は主封止孔と同時に第2の積層基板に貫通形成した上でメタライズ処理を施しても良いし、主封止孔にメタライズ処理を施した後で副封止孔だけを別途形成してもよい。後者の場合にはメタライズ層によって副封止孔内部が塞がれることを防止できる。なお、容器本体3に設けられた上記の各種端子は、対応する端子同士を、引き回し配線や、各積層基板に予め形成されたスルーホールなどの層内配線により接続する。
【0029】
ステップS2に示す圧電振動素子の準備工程では、圧電振動素子30を製造して準備する。圧電振動素子30の製造においては、まず、結晶軸に対して所定のカット角で切り出された大判の圧電基板、例えば水晶基板(水晶ウェハー)を準備し、フォトリソグラフィーを用いたウエットエッチング、またはドライエッチングすることにより、水晶基板の外形を形成する。
次に、スパッタリングや蒸着などにより、水晶基板面に励振電極や外部接続端子などの電極形成を行う。電極形成は、圧電振動素子の外形が形成された水晶基板の表面に、スパッタリングや蒸着により、クロム層を下地として形成し、その上に金層を積層させて形成することができる。
そして、複数の圧電振動素子30が形成されたウェハーをダイシングすることにより、個片の圧電振動素子を複数得る。
【0030】
次に、圧電振動素子接合工程について説明する。
ステップS3に示した圧電振動素子接合工程では、容器本体3の凹部内に設けた電極部15上に導電性接着剤16を用いて圧電振動素子30を配置して電気的、機械的な接続を伴う接合を行う。
具体的には、図4(a)において、容器本体3の外周壁上面に予め封止ガラス等のロウ材33を塗布すると共に、凹部内の電極部15上に導電性接着剤16を塗布し、圧電振動素子30の基部31に設けられている引出し電極(図示せず)の箇所を載せ、軽く荷重をかけて位置決めし、導電性接着剤16を硬化させることにより、圧電振動素子30を容器本体3内にマウントする。
【0031】
次に、ステップS4の圧電振動素子30の周波数調整工程を行う。
周波数調整工程では、まず、圧電振動素子30の初期周波数を測定し、その初期周波数と目標周波数との差を許容範囲まで小さく調整することにより行う。圧電振動素子30の周波数調整は、例えば、レーザーやイオンビームを圧電振動素子30に照射してその一部を所定量エッチングすることにより行う。圧電振動素子30は、その振動部の質量を軽くすることにより振動周波数が高くなることが知られており、例えば、圧電振動素子30に形成された励起電極以外の電極パターンの一部をエッチングすることによって、励起電極の形状を変化させることなく圧電振動素子30の周波数を高く調整することができる。この質量削減方式による周波数調整方法を用いる場合には、圧電振動素子30の初期の周波数を目標周波数に対して低めの周波数となるようにつくり込みを行っておく。
【0032】
また、上記の質量削減方式とは逆に、圧電振動素子30の振動部に質量を付加して周波数を低下させることにより周波数調整を行うこともできる(質量付加方式)。質量付加の方法としては、スパッタリング法や蒸着法などにより圧電振動素子30の振動部に金属膜を堆積させる方法などを利用することができる。この質量付加方式により周波数調整を行う場合には、圧電振動素子30の初期の周波数は目標周波数に対して高めの周波数となるようにつくり込みを行う。
次に、ステップS5に示すように、容器本体3の外周壁の開放された上端に蓋体20を接合する。容器本体3と蓋体20との接合は、容器本体3の上端面上に、例えば、コバール(Fe−Ni−Co)合金などからなるロウ材としてのシールリングを設け、そのシールリングを介して、蓋体20をシーム溶接することにより行うことができる。
具体的には、図4(b)に示すように、例えば、窒素雰囲気を形成するためのチャンバー51内において、支持台53上のトレイ54に、蓋体20を載置し、その上に上述したロウ材33が蓋体20と接触するように容器本体3を逆さにして載置し、上から錘52により荷重をかけながら、チャンバー51内を加熱する。これにより、ロウ材33を溶融して硬化させることにより蓋体20を接合する。尚、この工程は、チャンバー51に代えて、窒素雰囲気が管理されたベルト炉に圧電デバイス1を通して行うようにしてもよい。
容器本体3上に蓋体20が接合されて形成された内部空間S内に接合された圧電振動素子30を、次に、封止工程(S6〜S10)に移して封止を行う。
【0033】
封止工程は、例えば、図5(a)に示すように真空チャンバー51aなどの内部に圧電振動素子を収容した容器体2(容器本体3、蓋体20)を収容して行う。この際、凹所11a(封止孔41、42)が上向きとなるように、容器体2の上下を逆にしてセットする。
まず、ステップS6に示すように、容器本体3の底面に設けた凹所11a内の主封止孔41内に、金とゲルマニウムとの合金、あるいは、金と錫との合金などからなる球状の封止部材38を配置する。この球状の封止部材38の配置は、主封止孔41が有する内周の形状を利用して行うことができる。すなわち、内部空所S側の主封止孔41と、主封止孔41よりも大きな同心の(外部側の)開口部(凹所)11aとの間の段差形状(段部40)を利用することにより、主封止孔41の外部側から入れ込んだ球状の封止部材38が主封止孔41内の段部40に保持されて配置される(図5(b))を参照)。即ち、主封止孔41は封止部材38が内部空所S内に脱落しない程度の開口径を有すると共に、その孔内に封止部材38が嵌合した際に主封止孔内周全体で封止部材外周面と接触するようにその寸法、形状を選定する。
【0034】
図5(a)の工程をさらに詳しく説明する。図5(a)の一部を拡大して示す図5(b)に表されているように、球形の金ゲルマニウム合金(Au/Ge)合金の封止部材38が配置される主封止孔41は、所定の内径n1を備える内側の主封止孔41と、主封止孔41と連通して設けられると共に、主封止孔41よりも大きな内径n2を備えて外側に開口した開口部11aとを備えている。球形の金ゲルマニウム合金(Au/Ge)合金の封止部材38の直径n3は、主封止孔41の内径n1よりも大きく、開口部11aの内径n2よりも僅かに小さく形成されている。
このため、球形の金ゲルマニウム合金の封止部材(Au/Ge)38は、図示されているように、主封止孔41の内周縁の段部40の稜線上にほぼ全周が接触して保持されている。この球形の金ゲルマニウム合金(Au/Ge)合金の封止部材38に、図示のように、レーザー光Lを照射する。このレーザー光Lは、金ゲルマニウム合金(Au/Ge)合金の封止部材38の融点が360度程度であるにもかかわらず、本実施形態の封止部材38は光を吸収しやすい性質をもつため、金すずの場合とほぼ同じ条件で照射することで、球形の金ゲルマニウム合金(Au/Ge)合金38を適切に溶融することができる。
【0035】
次に、ステップS7の減圧工程において、図5(a)に示すように、主封止孔41内に封止部材38を載置した容器体2を真空チャンバー51a内に配置し、真空チャンバー51a内を図示しない真空排気手段により真空引きし、好ましくは、高真空状態とする。真空チャンバー内を減圧することにより容器本体3の内部空所Sを減圧し、副封止孔42を介して、加熱により生成された容器体2内部のガスを容器体2の外部に排出させる。すなわち、ステップS3で説明した圧電振動素子30と電極部15とを接合に供する銀ペーストなどの導電性接着剤16などの硬化の過程で発生する有害なガス(アウトガス)や、容器体2内部(内部空所S)の水分が蒸発した気体を、この減圧工程で副封止孔42から外部に排出させる。
減圧工程において、封止部材が主封止孔から排出されるガス圧によって押し出されて飛散する虞がないため、真空引き時に封止部材が飛び出して脱落する虞が大幅に低減する。このため、真空引きの速度、強度を高めることができ、生産性を高めることができる。また、同時に容器体内の真空度を高めて真空度のバラツキをなくすることができるので、デバイス特性の向上、特性バラツキの減少を図ることができる。
なお、図7は、減圧工程における温度プロファイルの一例を示している。すなわち、真空チャンバー51a内を例えば、10−3Pa(パスカル)程度の高真空とする。そして、T1時間(例えば、20分)の間、250度ないし300度、好ましくは、260度以上にまで加熱する。この温度をT2時間(例えば、30分)維持して、容器体2内の例えば導電性接着剤16等から生成される気体成分を容器体2外に排出する。
【0036】
続いて、真空チャンバー51a内の温度と気圧を保持したまま、真空孔封止工程(第2の溶融工程)をT3時間(例えば、20分)行う。この時、周囲の温度が高くても、金ゲルマニウム合金(Au/Ge)の封止部材38の融点は高いので、溶融されることなく、従来260度程度であった加熱温度を280度程度まで上げて、効果的に上記気体成分の追い出しを行うことができる。
引き続いて、ステップS8の封止部材溶融工程、ステップS9の封止部材硬化工程、ステップS10の大気開放工程を順次実施する。
即ち、封止部材溶融工程、及び封止部材硬化工程では、図5に示したレーザー照射手段55から、封止部材38に向けてレーザー光Lを照射して、封止部材38を溶融、固化することにより、主封止孔41、及び副封止孔42を完全に塞ぐ(S8、S9))。
その後大気開放して終了する(ステップS10)。
【0037】
このように、本実施形態の方法では、容器本体3の底部に形成された主封止孔41内に球形に形成した金ゲルマニウム合金(Au/Ge)の封止部材38を配置して減圧、及び加熱を行うことにより、封止部材により塞がれていない副封止孔42から内部空所S内のガスを排出することができるため、封止部材38がガス圧力により飛散して後段の封止部材溶融工程が実施できなくなるという不具合がなくなる。
また、ガス排出専用の副封止孔からガスを排出するようにしたことにより、ガス排出効率が高まり、ガス排出工程に要する時間を短縮して生産性を高めることができる。また、ガス抜きが徹底して行われるため、完成した電子デバイスの特性が向上する。また、副封止孔は主封止孔よりも開口面積が小さく、しかも主封止孔との間に溶融金属が移動し易いメタライズ面45aが存在しているため、溶融工程において封止部材による封止が容易、確実となる。
【0038】
この金ゲルマニウム合金(Au/Ge)の封止部材38は、融点が高いが、酸化されやすく、表面に酸化膜が形成されやすく、酸化膜が存在すると、加熱により流れにくくなり、封止作業がその分困難になる。ところが、金ゲルマニウム合金(Au/Ge)を球形にして、レーザー光を照射すると、酸化膜のために、光を吸収しやすく、容易に溶融され、酸化膜が主封止孔41の外側に向かって表面に押し出される。これにより、封止部材38の合金成分を主封止孔41内に適切に流すことで、主封止孔41を完全に塞ぐことができる。また、封止部材38が主封止孔41を封止するのに十分なエネルギー量を超えたエネルギー量をレーザー光により照射することにより、このエネルギー量によって溶融した封止部材の一部が副封止孔42との間に位置するメタライズ層45a表面へ流動、展開して行き、副封止孔42内に充填されるので、両封止孔41、42が共に完全に封止される。また、個々の封止孔は独立しており、個々の開口面積が過大とならないので、封止部材によって封止し易くなる。特に、副封止孔は主封止孔よりも開口面積が小さいため、封止が容易、且つ確実である。
【0039】
また、図14において説明した従来例とは異なり、封止部材38は主封止孔41の内周縁のほぼ全体と接触しているため、レーザー光を照射したときに封止部材はこの接触部を中心として全体として均等に溶融してゆく。つまり、図14のように封止孔の内周縁と封止部材とが接触しない領域が存在しないため、副封止孔42と対面する部位の封止部材も他の部位と均等に溶融し、メタライズ層45aの表面へ向けて迅速に流動、展開してゆく。このため、封止部材は全体として均等に全方位へ向けて溶融、展開することができ、副封止孔42を素早く封止することができる。
【0040】
封止後の圧電デバイス1を実装する工程において、熱が加えられた場合に、金ゲルマニウム合金の封止部材38は融点が高く、容易に溶融しないことから、容器体2内部の真空状態が封止部材の一部溶融によりリークすることが有効に防止される。しかも、封止部材38に鉛を含有していないことから、鉛を原因とする環境汚染を回避することができる。
図8及び図9は夫々本発明の封止孔の他の構成例を示す説明図である。
本発明の封止孔は、封止部材を位置決めする主封止孔41の他に、減圧時に封止部材によって封止されないガス抜き用の独立孔としての副封止孔42をメタライズ層45aを介して近接配置した構成が特徴的であるが、副封止孔の個数、配置箇所は種々選定可能である。
【0041】
図8(a)に示したように、主封止孔41の外径側のメタライズ層45a上に90度の周方向間隔で、封止部材38によって塞がれない位置に、4個の独立した副封止孔42を配置している。主封止孔41と各副封止孔42との間にはメタライズ層45aが介在している。
なお、副封止孔42の数は任意であり、副封止孔42の合計開口面積が大きくなればガス抜き効率が高まって、主封止孔内に嵌合配置された封止部材がガス圧力により飛散する確率がより低くなる一方で、前記合計開口面積が過大となれば、封止部材による封止効果が低減する虞がある。また、副封止孔42の形状は図示のように円形であってもよいし、その他の任意の形状であってもよい。
【0042】
図8(b)は主封止孔41内に封止部材38を着座させて溶融する場合の拡大説明図であり、溶融した封止部材は矢印で示すようにメタライズ層45aの表面を経て直線的な経路を経て各副封止孔42内に移動し、これらを封止するため、封止に要する時間を短くして生産性を向上させることができる。また、副封止孔の封止不良も発生しない。
副封止孔42を複数個設けることにより、一つの孔の開口面積が必要以上に大きくなることを防止する効果が高まり、溶融した封止部材が確実に各封止孔に広がり、封止漏れを防止できる。また、仮に封止前の段階において副封止孔の一つが封止部材により塞がれたとしても、他の副封止孔によってガス抜きを行うことができる。複数の副封止孔を設けることによりガス抜き用の孔の開口面積を増大できるので、ガス抜きに要する時間を短縮して生産性を高めることができる。
【0043】
次に、図9は副封止孔の形状を非円形とした例を示している。この例では、図9(a)に示すように副封止孔42を外径方向へ向かう程幅寸法が漸増する三角形状としているため、主封止孔41内に配置された封止部材が溶融して凹所11a内底面のメタライズ層45a上を外径方向へ流動した際に、(b)中に矢印で示すように副封止孔のテーパー状に拡開する2つの端縁42aに沿って副封止孔内に入りやすくなり、これを塞ぎやすくなる。
なお、本例における副封止孔42は、外径方向へ向かうほど内径が漸増する形状であれば、どのような形状であってもよい。例えば、前記2つの端縁42aが曲線であってもよい。
【0044】
次に、図10(a)は本発明の他の実施形態に係る封止孔の構成を示す容器体の底面図であり、(b)は凹所のX−X断面拡大図である。
図10(a)は、凹所11aの縦断面形状を略円弧状に湾曲した形状とし、その内底面中心部に設けた主封止孔41の外径方向にメタライズ層45aを介して、少なくとも一つ、本例では4個の副封止孔42を配置している。主封止孔41は封止部材38を位置決めする手段であり、副封止孔42は主封止孔41内に着座した封止部材38によって塞がれない位置に配置されているガス抜き用の孔である。なお、副封止部材の開口部の一部が封止部材によって覆われていたとしても、ガス抜きに影響がない程度であれば差し支えない。
本例における副封止孔42は、二枚の積層基板11、12に跨って貫通形成されているが、凹所11a内に形成されている点において上記実施形態と同様である。
【0045】
このように構成した場合においても、減圧工程において封止部材の浮き上がりによる飛散を防止しながら副封止孔42から効果的にガス抜きを行うことができる。
なお、図11は凹所11aを略円弧状に構成した場合の他の構成例に係る断面図である。この例では凹所が円弧状に構成されており、凹所の内底面によって封止部材を位置決めすることができるため、主封止孔41を省略している。即ち、左右対称な円弧状の断面形状を有した凹所11a内に球状の封止部材38を配置した場合には封止部材は凹所内底面の中央部に静止するのが一般である。このため封止部材を位置決めするための主封止孔41を省略することができる。一方、ガス抜き用の副封止孔42については、凹所内の封止部材により塞がれない凹所内壁に形成することにより、減圧時にガス抜き機能を発揮し得るように構成している。
この場合、副封止孔42は、凹所内底面の中心部を中心として外径方向に複数個、周方向に沿って配置するのが好ましい。各副封止孔が封止部材を包囲するように配置されているため、各封止孔から均等に排出されるガス圧によって封止部材が凹所中心部に位置決め保持されるからである。
【0046】
図12(a)は、本発明の圧電デバイスの異なる実施の形態の構成を示す概略平面図である。図において、圧電デバイス60は、圧電振動素子30を用いて、圧電発振器を形成した例を示しており、第1の実施の形態と同一の符号を付した箇所は共通する構成であるから、重複した説明は省略し、相違点を中心に説明する。
図12(b)は、図12(a)のX−X線概略断面図であり、容器本体61は、その製造の際に、第1の実施形態の容器本体3よりも多くのセラミックシートの積層基板を用いて製造されている。これにより、容器本体61には、増えた分の積層基板を利用して中央付近に凹部62が形成されており、その内側底部には、図示しない電極が設けられている。この電極上には、集積回路63が実装されている。集積回路63は、所定の分周回路等を構成していて、圧電振動素子30の駆動電極と電気的に接続され、集積回路63から出力された駆動電圧が圧電振動素子30に与えられるようになっている。
容器本体61の貫通孔37に充填されている封止部材38は、第1の実施形態で説明したものと同じであり、同一の封止工程で封止されたものである。したがって、本実施形態も第1の実施形態と同様の作用効果を発揮することができる。このように、本発明は、圧電振動子に限らず、図12のような圧電発振器やフィルタ等、その名称にかかわらず、容器本体内に圧電振動素子を収容して、蓋体により封止する構成のあらゆる圧電デバイスに適用できる。
【0047】
図13は、本発明の上述した実施形態に係る圧電デバイスを利用した電子機器の一例としてのデジタル式携帯電話装置の概略構成を示す図である。図13において、送信者の音声を受信するマイクロフォン108及び受信内容を音声出力とするためのスピーカ109を備えており、さらに、送受信信号の変調及び復調部に接続された制御部としての集積回路等でなるコントローラ101を備えている。コントローラ101は、送受信信号の変調及び復調の他に画像表示部としてのLCDや情報入力のための操作キー等でなる情報の入出力部102や、RAM、ROM等でなる情報記憶手段103の制御を行うようになっている。このため、コントローラ101には、圧電デバイス1が取り付けられて、その出力周波数をコントローラ101に内蔵された所定の分周回路(図示せず)等により、制御内容に適合したクロック信号として利用するようにされている。このコントローラ101に取付けられる圧電デバイス1は、圧電デバイス1単体でなくても、圧電デバイス1と、所定の分周回路等とを組み合わせた発振器である図12のような圧電デバイス60であってもよい。
コントローラ101は、さらに、温度補償水晶発振器(TCXO)105と接続され、温度補償水晶発振器105は、送信部107と受信部106に接続されている。これにより、コントローラ101からの基本クロックが、環境温度が変化した場合に変動しても、温度補償水晶発振器105により修正されて、送信部107及び受信部106に与えられるようになっている。
【0048】
このように、制御部を備えた携帯電話装置110のような電子機器に、上述した実施形態に係る圧電デバイスを利用することにより、製造工程において、容器本体内に正しく位置決めされた圧電振動素子を備える圧電デバイスを使用していることによって、正確なクロック信号を生成することができる。
本発明は上述の実施形態に限定されない。各実施形態の各構成はこれらを適宜組み合わせたり、省略し、図示しない他の構成と組み合わせることができる。
【0049】
上記実施形態では複数の独立した封止孔を容器本体側に形成したが、蓋体側に複数の独立した封止孔を設けても良い。そして、このような電子デバイスに対して、本発明による封止方法を適用することができる。要するに、本発明は容器体の外面の何れかの部位に封止孔を有した電子デバイス一般に対して適用することができる。なお、蓋体に複数の封止孔を形成する場合には、凹所を形成せずに、フラットな蓋体面に複数の封止孔を形成してもよい。
また、上記実施形態に係る容器本体3は上面に凹部を有した絶縁基板としたが、凹部を有しない平板状の絶縁基板上に電子部品を搭載し、電子部品を含む絶縁基板上の空間をバスタブ形(逆椀形)の蓋体により封止するようにした電子デバイスに対しても本発明の封止方法を適用することができる。この場合、封止孔は絶縁基板側に設けても良いし、蓋体側に設けても良い。
【符号の説明】
【0050】
1…圧電デバイス(電子デバイス)、2…容器体、3…容器本体、11、12…積層基板、11a…凹所(開口部=(封止孔形成領域))、15…電極部、16…導電性接着剤、20…蓋体、30…圧電振動素子(電子部品)、31…基部、33…ロウ材、34、35…振動腕、37…貫通孔、38…封止部材、40…段部、41…主封止孔、42…副封止孔、43…凹部、42a…端縁、45…メタライズ層、45a…メタライズ層、51…チャンバー、51a…真空チャンバー、52…錘、53…支持台、54…トレイ、55…レーザー照射手段、60…圧電デバイス、61…容器本体、62…凹部、63…集積回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を収容するための容器体であって、
該容器体は貫通して独立した複数の封止孔を備えていることを特徴とする電子部品用の容器体。
【請求項2】
請求項1に記載の容器体と、該容器体の内部空所に収容された電子部品と、を備えたことを特徴とする電子デバイス。
【請求項3】
請求項2に記載の電子デバイスの製造方法であって、
封止部材の少なくとも一部を前記封止孔内に配置する封止部材配置工程と、
前記封止部材配置工程の後に、前記容器体の内部空所を減圧する減圧工程と、
前記減圧工程の後に、前記封止部材を溶融させて前記各封止孔を封止する溶融工程と、
を含んでいることを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【請求項4】
前記封止部材配置工程では、前記複数の封止孔のうち開口面積が最も大きい封止孔に前記封止部材を着座させ、前記他の封止孔のうち少なくとも一つは、前記封止部材によって閉塞されないことを特徴とする請求項3に記載の電子デバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−98609(P2013−98609A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236934(P2011−236934)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】