容器用型枠及びそれを用いた鉢形容器の製造方法
【課題】木材チップの最適な配合及び成型方法を確立することにより、所要の強度を有した見栄えのよい鉢形容器を製造することができる技術を提供すること。
【解決手段】接着剤が混入された木材チップTを型枠内で加圧成型することで、底部11と周壁部12とを有する鉢形容器1を制作するための容器用型枠2であって、基板20上にセットされる円筒状の外型枠21と、基板20上の外型枠21内にセットされる円錐台状の内型枠22と、基板20上の内型枠22と外型枠21との間に配置され、鉢形容器1の上縁部13を成型するリング型枠23とを備える。リング型枠23は、木材チップTに接触する成型面23aが鉢形容器1の上縁部13に丸みを付けるための曲面に形成されている。
【解決手段】接着剤が混入された木材チップTを型枠内で加圧成型することで、底部11と周壁部12とを有する鉢形容器1を制作するための容器用型枠2であって、基板20上にセットされる円筒状の外型枠21と、基板20上の外型枠21内にセットされる円錐台状の内型枠22と、基板20上の内型枠22と外型枠21との間に配置され、鉢形容器1の上縁部13を成型するリング型枠23とを備える。リング型枠23は、木材チップTに接触する成型面23aが鉢形容器1の上縁部13に丸みを付けるための曲面に形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダム流木チップ等の木材チップを活用して鉢形容器を製造するのに好適な容器用型枠及びそれを用いた鉢形容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
木材類を細かくチップ化し、それを圧縮加工して容器類を製作する技術は従来から知られている。例えば特許文献1には、木材等によって生ずる木屑を素材として、飲食用容器や植木鉢などを製作する技術が記載されている。
【0003】
この特許文献1に記載の飲食用容器は、水に不溶性の接着剤を混入した木屑を相互に圧着状態とすることによって容器となる壁部を構成したもので、それを構成する木屑には、平均厚さが0.5〜2mm、平均面積が0.25〜9平方センチ程度のものが使用されている。
【特許文献1】特開2000−342420号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の飲食用容器や植木鉢のような容器は、その型枠内に接着剤の混入された木材チップを投入し、圧縮加工(加圧成型)して製造することができるものの、仕上がり精度が悪いという問題がある。この仕上がり精度は、木材チップの大きさや均一性、接着剤の配合等に起因する素材の良否、その素材を使用した製造方法、等に大きく左右される問題がある。
【0005】
素材に関して、例えば木材チップの長さが1cm前後にも及ぶ場合には、容器の縁部分や角部分に欠けが生じやすくなる問題がある。製造方法に関しては、型枠内に木材チップを一度に投入しても、その木材チップが型枠の隅々まで行き渡らずに成型むらができ、容器の見栄えが悪くなるという問題がある。
【0006】
よって、本発明の課題は、木材チップの最適な配合及び成型方法を確立することにより、所要の強度を有した見栄えのよい鉢形容器を製造することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明では以下の手段を採用した。
本発明は、接着剤が混入された木材チップを型枠内で加圧成型することで、底部と周壁部とを有する鉢形容器を制作するための容器用型枠であって、基板上にセットされる円筒状の外型枠と、前記基板上の前記外型枠内にセットされる円錐台状の内型枠と、前記基板上の前記内型枠と外型枠との間に配置され、前記鉢形容器の上縁部を成型するリング型枠とを備え、前記リング型枠は、前記木材チップに接触する成型面が前記鉢形容器の上縁部に丸みを付けるための曲面に形成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、基板上にセットされる内型枠と外型枠の間にリング型枠を配置し、そのリング型枠の木材チップに接触する成型面を鉢形容器の上縁部に丸みを付けるための曲面に形成してあるので、これにより製造した鉢形容器の上縁部の欠損を未然に防止できる形状とすることができる。また、内型枠は円錐台状となっているので、リング型枠を内型枠と外型枠の間に配置(セット)する作業は、内型枠の外周にリング型枠を上から落とし込むように装着する簡便な操作で済ますことができる。また、内型枠と外型枠とリング型
枠の僅か三種類の型枠で容器用型枠を構成することができる。
【0009】
ここで、前記内型枠としては、前記基板上に設けられていることが望ましい。内型枠と基板とを別部材とし、両者の相対的な位置決めを高精度に行えるようにネジ結合等により一体に連結する構造としても良い。更に、基板上に内型枠を溶接により一体に連結する構造とすることもできる。
【0010】
一方、本発明は、上記の容器用型枠を用いて底部と周壁部とを有する鉢形容器を製造する方法であって、前記容器用型枠を基台上にセットする工程と、前記容器用型枠内に木材チップを投入し、外型枠の上面開口側から挿入される加圧部材により加圧成型する成型工程と、加圧成型された鉢形容器から内型枠及び外型枠を脱型する脱型工程と、脱型後の鉢形容器を乾燥させる乾燥工程とを含むことを特徴としている。その際、前記成型工程では、型枠内の木材チップに対する加圧部材の加圧面が内型枠の上面よりも下方に位置するように加圧成型する第1成型工程と、前記加圧面が内型枠の上面と略同一高さとなるように加圧成型する第2成型工程と、成型される鉢形容器の底面と前記加圧面とが同一高さとなるように加圧成型する第3成型工程とを行うことが望ましい。
【0011】
本発明の製造方法によれば、容器用型枠と加圧部材を用いて成型工程を行う際に、第1成型工程、第2成型工程及び第3成型工程の三段階に分けて成型するので、容器用型枠内での木材チップを容器用型枠の隅々にまで行き渡らせることが可能になり、その分、成型むらを無くして高精度に成型する(見栄え良く仕上げる)ことができる。特に、第2成型工程において、型枠内に投入した木材チップを内型枠の上面と略同一高さとなるように加圧成型することで、一層目と二層目の間に隙間ができないように成型することが可能になる。
【0012】
本発明において、前記第1成型工程及び第2成型工程では、内型枠と外型枠との間に進入可能な環状の加圧面を有する環状加圧部材を用いることが望ましい。このようにすれば、第1成型工程において、型枠内の木材チップに対する環状加圧部材の加圧面が内型枠の上面よりも下方に位置するように加圧成型することが可能になる。さらに第2成型工程においては、型枠内での木材チップの加圧面が内型枠の上面と略同一高さとなるように加圧成型することができる。
【0013】
また、前記第3成型工程では、前記外型枠内においてその外型枠の内周面に面接触する外周面と、前記鉢形容器の底面を成型する円形の加圧面と、その加圧面の中央から突出した円柱状の小突起とを有する円盤状加圧部材を用いることが望ましい。このように、加圧面の中央から突出した円柱状の小突起を有する円盤状加圧部材を用いた場合、鉢形容器底面の脱型時に、即ち円盤状加圧部材の脱型時において、小突起を中心に円盤状加圧部材を回転させることで容易に脱型することができる。
【0014】
前記木材チップは、長さ2〜5mmの中サイズチップと、長さ2mm未満の小サイズチップとを含み、かつ、小サイズチップよりも中サイズチップの配合割合が多いことが望ましい。このように長さ2mm未満の小サイズチップを配合することで、小サイズチップが中サイズチップ間に入り込んでそれらが混合される形態となる。これにより、容器用型枠内での木材チップを容器用型枠の隅々にまで行き渡らせることが可能になり、その分、成型むらを無くして高精度に成型する(見栄え良く仕上げる)ことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の容器用型枠及び鉢形容器の製造方法によれば、木材チップの最適な配合及び成型方法を確立することにより、所要の強度を有した見栄えのよい鉢形容器を製造することができる。さらに、鉢形容器の上縁部は丸みを持った形状となり、欠損を防ぐことができ
る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施例について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施例に係る鉢形容器とその加圧装置を示す斜視図である。図2は実施例に係る鉢形容器の加圧装置の正面図を、図3はその平面図を、図4は側面図をそれぞれ示す。図5は実施例に係る容器用型枠と加圧部材を示す斜視図である。図6は実施例に係る容器用型枠を用いた製造方法を示す工程図である。
【実施例】
【0017】
この実施例に係る鉢形容器の製造方法では、鉢形容器1を容器用型枠2と加圧装置(圧縮加工装置)3とを用いて製造する。
【0018】
鉢形容器1は、図1に示すように、底部11と周壁部12とを有し、上面が開口したいわゆる植木鉢状の容器であり、接着剤が混入された木材チップを素材として形成されている。木材チップとしては、木材資源の保護や木材有効利用の観点から、ダム流木を所定の大きさにチップ化したもの(ダム流木チップ)が用いられている。鉢形容器1は、その外径が上部から下部にかけて同一の円筒状であり、その内径が上部から下部に向かうに従って次第に小さくなる鉢形に形成されている。この鉢形容器1の上縁部13は、図6に示すように丸みが付けられている。
【0019】
成型用の金型である容器用型枠2は、接着剤が混入された木材チップTを型枠内で加圧成型することで、底部11と周壁部12とを有する鉢形容器1を制作するために用いられる。即ち、この実施例の容器用型枠2は、基板20上にセットされる円筒状の外型枠21と、基板20上の外型枠21内にセットされる円錐台状の内型枠22と、基板20上の内型枠22と外型枠21との間に配置され、鉢形容器1の上縁部13を成型するリング型枠23とを備えている。
【0020】
外型枠21は、鉢形容器1の外周面を成型するための内周面を有する円筒状に形成されている。外型枠21の内周面は、この実施例ではその内径が下部から上部にかけて同一となるように形成されている。内型枠22は、鉢形容器1の内周面を形成するための外周面を有する円錐台状に形成されている。内型枠22の外周面は、この実施例ではその外径が下部から上部に向かうに従い次第に小さくなるように形成されている。なお、外型枠21の外周面には、脱型時の操作を容易にするための取っ手21aが設けられている。
【0021】
基板20は矩形の金属板により形成され、円錐台状の内型枠22と一体に構成(溶接止め)されている。基板20の一辺の長さは内型枠22及び外型枠21の底部の外径よりも長く形成されている。これにより、基板20上には内型枠22の周囲に添わせてリング型枠23を装着可能になっている。基板20の下面中央には後述するフレームに沿って移動させるガイド20aが設けられている。
【0022】
リング型枠23は、図1及び図6に示すように、木材チップTに接触する成型面23aが鉢形容器1の上縁部13に丸みを付けるための曲面に形成されている。リング型枠23は、この実施例では合成樹脂により形成されている。リング型枠23は、その上面に対応する成型面23aと、基板20の表面に面接触する下面23bと、内周面23c及び外周面23dとを有している。内周面23c及び外周面23dは、基板20の表面に対して鉛直な面に形成されている。従って、リング型枠23の内周面23cは加圧成型時にその上部のくぼみ(成型面23a部分)が拡がり、内型枠22の外周面に接触し、リング型枠23の外周面23dは外型枠21の内周面に面接触するように形成されている。
【0023】
加圧装置3は、容器用型枠2を載置する基台31と、電動油圧ポンプ32により駆動される油圧シリンダ33と、油圧シリンダ33の駆動力によって容器用型枠2内に投入された木材チップTを加圧する加圧部材5とを備えている。
【0024】
基台31は、この実施例では互いに並行にかつ水平に配置した溝形鋼からなる下部フレーム31a、31aと、その両端を支持する下部支持材34、34と、下部支持材34、34の下にそれぞれ設けられた高さ調整材35、35とを有している。さらに、この基台31の上方には、下部支持材34、34に対し複数の支持ボルト36を介して支持された上部支持材37、37が配置されている。そして、それら上部支持材37、37間に、溝形鋼からなる上部フレーム31b、31bが互いに並行にかつ水平に架設されている。
【0025】
油圧シリンダ33は上部フレーム31b、31b間に配置されて鉛直に支持されている。この油圧シリンダ33には二つのフランジ33f、33fが上部フレーム31b、31bを上下から挟むように間隔をおいて設けられている。これにより油圧シリンダ33は基台31に対して鉛直に保持されている。油圧シリンダ33のシリンダロッド33aは下方に向いていてその端部には円盤状の加圧盤33bが設けられている。
【0026】
加圧部材5は、円筒状の環状加圧部材51と、全体が円形の円盤状加圧部材52と、凸型加圧部材53とを有している。環状加圧部材51は、内型枠22と外型枠21との間に進入可能な環状の加圧面51aを有する円筒状に形成されている。具体的には、円筒部の下部外周に沿って環状フランジ51bが形成されている。従って、加圧面51aの幅は円筒部の肉厚寸法と環状フランジ51bの幅寸法の合計となっている。
【0027】
円盤状加圧部材52は、外型枠21内においてその外型枠21の内周面に面接触する外周面52aと、鉢形容器1の底面を成型する円形の加圧面52bと、その加圧面52bの中央から突出した円柱状の小突起52cとを有している(図6参照)。この円盤状加圧部材52の上面中央部には短寸の円柱部52dが設けられている。円柱状の小突起52cはこれを中心にして相対回転させることで脱型容易にするためであり、短寸の円柱部52dはこの円盤状加圧部材を掴みやすくするために設けられたものである。
【0028】
凸型加圧部材53は、円盤部53aと、その上面側に同軸に設けられた円柱部53bとを有している。この凸型加圧部材53は後述するように主に油圧シリンダ33のストローク調整用として用いられる。さらに、環状加圧部材51及び円盤状加圧部材52もそれぞれがストローク調整として用いることができるように構成されている。
【0029】
次に、鉢形容器1の製造方法について、図7〜図12を参照して具体的に説明する。図7〜図11は鉢形容器1の製造工程図であり、図12はそのフロー図である。本発明では、このフロー図に示すように、一次圧縮工程、二次圧縮行程、三次圧縮行程及び仕上げ工程とを行う。以下、これらを工程順に説明する。
【0030】
<一次圧縮行程>
鉢形容器1を製造するには、まず、図1に示すように容器用型枠2を基台31上にセットする工程を行う。この工程では、図7(A)に示すように、基台31上に基板20付きの内型枠22を載せる。その際、ガイド20a部分を下部フレーム31a、31a間に挿入することで、内型枠22を左右方向(下部フレームの長さ方向)にのみスライド可能に配置する。次に、内型枠22の外側にリング型枠23を装着する。このリング型枠23は初めから内型枠22に装着しておいても良い。
【0031】
次に、図7(B)に示すように、基板20上の内型枠22の外側に、外型枠21を内型枠22と同軸に配置して容器用型枠1をセットする。しかる後、容器用型枠1内に木材チ
ップTを投入する(図8(C)参照)。
【0032】
この木材チップTとして、実施例では長さ2〜5mmの中サイズチップと、長さ2mm未満の小サイズチップとを7:3の割合で配合し、接着剤を混入して混連したものを用いている。一例として、植木鉢6号相当の鉢形容器1を成型するには、木材チップ2.4リットル、接着剤300cc(市販品:商品名「ポリゾールSNS−100」)程度を必要とする。木材チップTは、製造する鉢形容器1の個数分、一度に作ることも可能であるが、比較的硬化速度の早い接着剤を混入する関係で、鉢形容器1の製造タイミングに合わせて一個分ずつ作ることが好ましい。
【0033】
この木材チップTを容器用型枠1内に投入したら、次いで、図8(D)に示すように、外型枠21の上面開口側から挿入される加圧部材5と加圧装置3を用いて加圧成型する成型工程を行う。この成型行程では、投入された木材チップTに対する加圧部材5の加圧面51aが内型枠22の上面22aよりも図6(A)に示すように下方に位置するように加圧成型する工程(第1成型工程)を行う。このときの木材チップ投入量は、内型枠の上面22aまでが目安となる。これは上記の一例では略1リットルに相当する。
【0034】
この第1成型工程での加圧部材5としては、図5に示すように、環状加圧部材51と、円盤状加圧部材52と、凸型加圧部材53とを順に重ねて同時に用いる。そして、一番上の凸型加圧部材53を油圧シリンダ33で駆動される加圧盤33bで押圧することことにより加圧成型する。この際、油圧シリンダ33が自動停止する(最大ストロークとなる)まで加圧する。この第1成型工程において、凸型加圧部材53と円盤状加圧部材52は、油圧シリンダ33のストローク調整(加圧部材の加圧面が上下移動して到達する範囲の調整)として利用される。換言すればスペーサ部材として用いられる。
【0035】
<二次圧縮行程>
この第1成型工程を終えたら、圧縮面の目荒らしを実施し、その上から必要量(略1リットル)の木材チップTを投入する(図9(E)参照)。そして、投入した木材チップTの表面整形を実施した後に、図9(F)及び図6(B)に示すように加圧面51aが内型枠22の上面22aと略同一高さとなるように加圧成型する第2成型工程を行う。
【0036】
この第2成型工程での加圧部材5としては、図5及び図9(F)に示すように、環状加圧部材51と、円盤状加圧部材52とを順に重ねて同時に用いる。そして、一番上の円盤状加圧部材52を油圧シリンダ33で駆動される加圧盤33bで押圧することことにより加圧成型する。この第2成型工程でも、油圧シリンダ33が自動停止する(最大ストロークとなる)まで加圧する。この第2成型工程において、円盤状加圧部材52は、油圧シリンダ33のストローク調整(加圧部材の加圧面が上下移動して到達する範囲の調整)として利用される。
【0037】
<三次圧縮行程>
この第2成型工程を終えたら、圧縮面の目荒らしを実施し、その上から必要量(残量)の木材チップTを投入する(図10(G)参照)。そして、投入した木材チップTの表面整形を実施した後に加圧部材5をセットし、次いで、図6(C)に示すように、成型される鉢形容器1の底面と加圧面52bとが同一高さとなるように加圧成型する第3成型工程を行う。
【0038】
この第3成型工程での加圧部材5としては、図5、図10(H)及び図11(I)に示すように、円盤状加圧部材52と凸型加圧部材53とを順に重ねて同時に用いる。そして、一番上の凸型加圧部材53を油圧シリンダ33で駆動される加圧盤33bで押圧することことにより加圧成型する。この第3成型工程でも、油圧シリンダ33が自動停止する(
最大ストロークとなる)まで加圧する。この第3成型工程において、凸型加圧部材52は、油圧シリンダ33のストローク調整として利用される。
【0039】
なお、第3成型工程においては、油圧シリンダ33が自動停止するまで加圧した後、一度だけ圧力開放し、木材チップTの圧縮面のレベルを確認する。そして、確認レベルが予定通りであれば再圧縮(30秒程度)してから、脱型工程、乾燥工程へと移行する。なお、確認レベルが予定以下の場合、木材チップTを追加して再圧縮した後、脱型工程、乾燥工程へと移行する。脱型工程では、図11(J)に示すように取っ手21aを利用して脱型する。
【0040】
脱型工程において、円盤状加圧部材52は図示のように薄い円板状であるため脱型し難い形状である。しかし、この円盤状加圧部材52には小突起52cが設けられているため、この小突起52cを中心に回転させることで、容易に脱型することができる。
【0041】
実施例によれば、基板20上にセットされる内型枠22と外型枠21の間にリング型枠23を配置し、そのリング型枠23の木材チップTに接触する成型面23aを鉢形容器1の上縁部13に丸みを付けるための曲面に形成してあるので、これにより製造した鉢形容器1の上縁部13の欠損を未然に防止できる形状とすることができる。
【0042】
また、内型枠22は円錐台状となっているので、リング型枠23を内型枠22と外型枠21の間に配置(セット)する作業は、内型枠22の外周にリング型枠23を上から落とし込むように装着する簡便な操作で済ますことができる。また、内型枠22と外型枠21とリング型枠23の僅か三種類の型枠で容器用型枠1を構成することができる。
【0043】
また、内型枠22を基板20上に設け、基板20の下面にガイド20aを設けているので、加圧装置3及び加圧部材5を用いた加圧時には、容器用型枠2を油圧シリンダ33の真下に移動させ、木材チップTの投入時には容器用型枠2をスライドさせることで、シリンダロッド33aや加圧盤33bが邪魔にならないように作業を行うことができる。
【0044】
また、実施例の製造方法によれば、容器用型枠2と加圧部材5を用いて成型工程を行う際に、第1〜第3成型工程の三段階に分けて成型するので、容器用型枠2内での木材チップTを容器用型枠2の隅々にまで行き渡らせることが可能になり、その分、成型むらを無くして高精度に成型する(見栄え良く仕上げる)ことができる。
【0045】
なお、上記実施例では、長さ2〜5mmの中サイズチップと、長さ2mm未満の小サイズチップとを7:3の配合割合としたが、本発明はこれに限定されない。但し、小サイズチップよりも中サイズチップの配合割合が多いことが望ましい。これは、長さ2mm未満の小サイズチップを配合することで、小サイズチップが中サイズチップ間に入り込んでそれらが混合される形態となるからである。これにより、容器用型枠2内での木材チップTを容器用型枠2の隅々にまで行き渡らせることが可能になり、この点からも、成型むらを無くして高精度に成型する(見栄え良く仕上げる)ことができる。
【0046】
なお、上記実施例において、鉢形容器1はその外径が上部から下部にかけて同一の有底筒状に形成した例を示したが、通常の植木鉢と同様に、その外径が上部から下部に向かうに従って次第に小さくなる有底筒状に形成しても良い。その場合には、外型枠21の内周面形状もその鉢形容器に対応した形状とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施例に係る加圧装置の概略斜視図。
【図2】本発明の実施例に係る加圧装置の正面図。
【図3】本発明の実施例に係る加圧装置の平面図。
【図4】本発明の実施例に係る加圧装置の側面図。
【図5】本発明の実施例に係る容器用型枠と加圧部材の斜視図。
【図6】本発明の実施例に係る容器用型枠を用いた製造方法を示す工程図。
【図7】本発明の実施例に係る製造方法を示す工程図である。
【図8】本発明の実施例に係る製造方法を示す工程図である。
【図9】本発明の実施例に係る製造方法を示す工程図である。
【図10】本発明の実施例に係る製造方法を示す工程図である。
【図11】本発明の実施例に係る製造方法を示す工程図である。
【図12】本発明の実施例に係る製造方法を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0048】
1 鉢形容器
11 底部
12 周壁部
13 上縁部
2 容器用型枠
20 基板
21 外型枠
22 内型枠
23 リング型枠
3 加圧装置
5 加圧部材
51 環状加圧部材
52 円盤状加圧部材
53 凸型加圧部材
T 木材チップ
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダム流木チップ等の木材チップを活用して鉢形容器を製造するのに好適な容器用型枠及びそれを用いた鉢形容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
木材類を細かくチップ化し、それを圧縮加工して容器類を製作する技術は従来から知られている。例えば特許文献1には、木材等によって生ずる木屑を素材として、飲食用容器や植木鉢などを製作する技術が記載されている。
【0003】
この特許文献1に記載の飲食用容器は、水に不溶性の接着剤を混入した木屑を相互に圧着状態とすることによって容器となる壁部を構成したもので、それを構成する木屑には、平均厚さが0.5〜2mm、平均面積が0.25〜9平方センチ程度のものが使用されている。
【特許文献1】特開2000−342420号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の飲食用容器や植木鉢のような容器は、その型枠内に接着剤の混入された木材チップを投入し、圧縮加工(加圧成型)して製造することができるものの、仕上がり精度が悪いという問題がある。この仕上がり精度は、木材チップの大きさや均一性、接着剤の配合等に起因する素材の良否、その素材を使用した製造方法、等に大きく左右される問題がある。
【0005】
素材に関して、例えば木材チップの長さが1cm前後にも及ぶ場合には、容器の縁部分や角部分に欠けが生じやすくなる問題がある。製造方法に関しては、型枠内に木材チップを一度に投入しても、その木材チップが型枠の隅々まで行き渡らずに成型むらができ、容器の見栄えが悪くなるという問題がある。
【0006】
よって、本発明の課題は、木材チップの最適な配合及び成型方法を確立することにより、所要の強度を有した見栄えのよい鉢形容器を製造することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明では以下の手段を採用した。
本発明は、接着剤が混入された木材チップを型枠内で加圧成型することで、底部と周壁部とを有する鉢形容器を制作するための容器用型枠であって、基板上にセットされる円筒状の外型枠と、前記基板上の前記外型枠内にセットされる円錐台状の内型枠と、前記基板上の前記内型枠と外型枠との間に配置され、前記鉢形容器の上縁部を成型するリング型枠とを備え、前記リング型枠は、前記木材チップに接触する成型面が前記鉢形容器の上縁部に丸みを付けるための曲面に形成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、基板上にセットされる内型枠と外型枠の間にリング型枠を配置し、そのリング型枠の木材チップに接触する成型面を鉢形容器の上縁部に丸みを付けるための曲面に形成してあるので、これにより製造した鉢形容器の上縁部の欠損を未然に防止できる形状とすることができる。また、内型枠は円錐台状となっているので、リング型枠を内型枠と外型枠の間に配置(セット)する作業は、内型枠の外周にリング型枠を上から落とし込むように装着する簡便な操作で済ますことができる。また、内型枠と外型枠とリング型
枠の僅か三種類の型枠で容器用型枠を構成することができる。
【0009】
ここで、前記内型枠としては、前記基板上に設けられていることが望ましい。内型枠と基板とを別部材とし、両者の相対的な位置決めを高精度に行えるようにネジ結合等により一体に連結する構造としても良い。更に、基板上に内型枠を溶接により一体に連結する構造とすることもできる。
【0010】
一方、本発明は、上記の容器用型枠を用いて底部と周壁部とを有する鉢形容器を製造する方法であって、前記容器用型枠を基台上にセットする工程と、前記容器用型枠内に木材チップを投入し、外型枠の上面開口側から挿入される加圧部材により加圧成型する成型工程と、加圧成型された鉢形容器から内型枠及び外型枠を脱型する脱型工程と、脱型後の鉢形容器を乾燥させる乾燥工程とを含むことを特徴としている。その際、前記成型工程では、型枠内の木材チップに対する加圧部材の加圧面が内型枠の上面よりも下方に位置するように加圧成型する第1成型工程と、前記加圧面が内型枠の上面と略同一高さとなるように加圧成型する第2成型工程と、成型される鉢形容器の底面と前記加圧面とが同一高さとなるように加圧成型する第3成型工程とを行うことが望ましい。
【0011】
本発明の製造方法によれば、容器用型枠と加圧部材を用いて成型工程を行う際に、第1成型工程、第2成型工程及び第3成型工程の三段階に分けて成型するので、容器用型枠内での木材チップを容器用型枠の隅々にまで行き渡らせることが可能になり、その分、成型むらを無くして高精度に成型する(見栄え良く仕上げる)ことができる。特に、第2成型工程において、型枠内に投入した木材チップを内型枠の上面と略同一高さとなるように加圧成型することで、一層目と二層目の間に隙間ができないように成型することが可能になる。
【0012】
本発明において、前記第1成型工程及び第2成型工程では、内型枠と外型枠との間に進入可能な環状の加圧面を有する環状加圧部材を用いることが望ましい。このようにすれば、第1成型工程において、型枠内の木材チップに対する環状加圧部材の加圧面が内型枠の上面よりも下方に位置するように加圧成型することが可能になる。さらに第2成型工程においては、型枠内での木材チップの加圧面が内型枠の上面と略同一高さとなるように加圧成型することができる。
【0013】
また、前記第3成型工程では、前記外型枠内においてその外型枠の内周面に面接触する外周面と、前記鉢形容器の底面を成型する円形の加圧面と、その加圧面の中央から突出した円柱状の小突起とを有する円盤状加圧部材を用いることが望ましい。このように、加圧面の中央から突出した円柱状の小突起を有する円盤状加圧部材を用いた場合、鉢形容器底面の脱型時に、即ち円盤状加圧部材の脱型時において、小突起を中心に円盤状加圧部材を回転させることで容易に脱型することができる。
【0014】
前記木材チップは、長さ2〜5mmの中サイズチップと、長さ2mm未満の小サイズチップとを含み、かつ、小サイズチップよりも中サイズチップの配合割合が多いことが望ましい。このように長さ2mm未満の小サイズチップを配合することで、小サイズチップが中サイズチップ間に入り込んでそれらが混合される形態となる。これにより、容器用型枠内での木材チップを容器用型枠の隅々にまで行き渡らせることが可能になり、その分、成型むらを無くして高精度に成型する(見栄え良く仕上げる)ことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の容器用型枠及び鉢形容器の製造方法によれば、木材チップの最適な配合及び成型方法を確立することにより、所要の強度を有した見栄えのよい鉢形容器を製造することができる。さらに、鉢形容器の上縁部は丸みを持った形状となり、欠損を防ぐことができ
る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施例について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施例に係る鉢形容器とその加圧装置を示す斜視図である。図2は実施例に係る鉢形容器の加圧装置の正面図を、図3はその平面図を、図4は側面図をそれぞれ示す。図5は実施例に係る容器用型枠と加圧部材を示す斜視図である。図6は実施例に係る容器用型枠を用いた製造方法を示す工程図である。
【実施例】
【0017】
この実施例に係る鉢形容器の製造方法では、鉢形容器1を容器用型枠2と加圧装置(圧縮加工装置)3とを用いて製造する。
【0018】
鉢形容器1は、図1に示すように、底部11と周壁部12とを有し、上面が開口したいわゆる植木鉢状の容器であり、接着剤が混入された木材チップを素材として形成されている。木材チップとしては、木材資源の保護や木材有効利用の観点から、ダム流木を所定の大きさにチップ化したもの(ダム流木チップ)が用いられている。鉢形容器1は、その外径が上部から下部にかけて同一の円筒状であり、その内径が上部から下部に向かうに従って次第に小さくなる鉢形に形成されている。この鉢形容器1の上縁部13は、図6に示すように丸みが付けられている。
【0019】
成型用の金型である容器用型枠2は、接着剤が混入された木材チップTを型枠内で加圧成型することで、底部11と周壁部12とを有する鉢形容器1を制作するために用いられる。即ち、この実施例の容器用型枠2は、基板20上にセットされる円筒状の外型枠21と、基板20上の外型枠21内にセットされる円錐台状の内型枠22と、基板20上の内型枠22と外型枠21との間に配置され、鉢形容器1の上縁部13を成型するリング型枠23とを備えている。
【0020】
外型枠21は、鉢形容器1の外周面を成型するための内周面を有する円筒状に形成されている。外型枠21の内周面は、この実施例ではその内径が下部から上部にかけて同一となるように形成されている。内型枠22は、鉢形容器1の内周面を形成するための外周面を有する円錐台状に形成されている。内型枠22の外周面は、この実施例ではその外径が下部から上部に向かうに従い次第に小さくなるように形成されている。なお、外型枠21の外周面には、脱型時の操作を容易にするための取っ手21aが設けられている。
【0021】
基板20は矩形の金属板により形成され、円錐台状の内型枠22と一体に構成(溶接止め)されている。基板20の一辺の長さは内型枠22及び外型枠21の底部の外径よりも長く形成されている。これにより、基板20上には内型枠22の周囲に添わせてリング型枠23を装着可能になっている。基板20の下面中央には後述するフレームに沿って移動させるガイド20aが設けられている。
【0022】
リング型枠23は、図1及び図6に示すように、木材チップTに接触する成型面23aが鉢形容器1の上縁部13に丸みを付けるための曲面に形成されている。リング型枠23は、この実施例では合成樹脂により形成されている。リング型枠23は、その上面に対応する成型面23aと、基板20の表面に面接触する下面23bと、内周面23c及び外周面23dとを有している。内周面23c及び外周面23dは、基板20の表面に対して鉛直な面に形成されている。従って、リング型枠23の内周面23cは加圧成型時にその上部のくぼみ(成型面23a部分)が拡がり、内型枠22の外周面に接触し、リング型枠23の外周面23dは外型枠21の内周面に面接触するように形成されている。
【0023】
加圧装置3は、容器用型枠2を載置する基台31と、電動油圧ポンプ32により駆動される油圧シリンダ33と、油圧シリンダ33の駆動力によって容器用型枠2内に投入された木材チップTを加圧する加圧部材5とを備えている。
【0024】
基台31は、この実施例では互いに並行にかつ水平に配置した溝形鋼からなる下部フレーム31a、31aと、その両端を支持する下部支持材34、34と、下部支持材34、34の下にそれぞれ設けられた高さ調整材35、35とを有している。さらに、この基台31の上方には、下部支持材34、34に対し複数の支持ボルト36を介して支持された上部支持材37、37が配置されている。そして、それら上部支持材37、37間に、溝形鋼からなる上部フレーム31b、31bが互いに並行にかつ水平に架設されている。
【0025】
油圧シリンダ33は上部フレーム31b、31b間に配置されて鉛直に支持されている。この油圧シリンダ33には二つのフランジ33f、33fが上部フレーム31b、31bを上下から挟むように間隔をおいて設けられている。これにより油圧シリンダ33は基台31に対して鉛直に保持されている。油圧シリンダ33のシリンダロッド33aは下方に向いていてその端部には円盤状の加圧盤33bが設けられている。
【0026】
加圧部材5は、円筒状の環状加圧部材51と、全体が円形の円盤状加圧部材52と、凸型加圧部材53とを有している。環状加圧部材51は、内型枠22と外型枠21との間に進入可能な環状の加圧面51aを有する円筒状に形成されている。具体的には、円筒部の下部外周に沿って環状フランジ51bが形成されている。従って、加圧面51aの幅は円筒部の肉厚寸法と環状フランジ51bの幅寸法の合計となっている。
【0027】
円盤状加圧部材52は、外型枠21内においてその外型枠21の内周面に面接触する外周面52aと、鉢形容器1の底面を成型する円形の加圧面52bと、その加圧面52bの中央から突出した円柱状の小突起52cとを有している(図6参照)。この円盤状加圧部材52の上面中央部には短寸の円柱部52dが設けられている。円柱状の小突起52cはこれを中心にして相対回転させることで脱型容易にするためであり、短寸の円柱部52dはこの円盤状加圧部材を掴みやすくするために設けられたものである。
【0028】
凸型加圧部材53は、円盤部53aと、その上面側に同軸に設けられた円柱部53bとを有している。この凸型加圧部材53は後述するように主に油圧シリンダ33のストローク調整用として用いられる。さらに、環状加圧部材51及び円盤状加圧部材52もそれぞれがストローク調整として用いることができるように構成されている。
【0029】
次に、鉢形容器1の製造方法について、図7〜図12を参照して具体的に説明する。図7〜図11は鉢形容器1の製造工程図であり、図12はそのフロー図である。本発明では、このフロー図に示すように、一次圧縮工程、二次圧縮行程、三次圧縮行程及び仕上げ工程とを行う。以下、これらを工程順に説明する。
【0030】
<一次圧縮行程>
鉢形容器1を製造するには、まず、図1に示すように容器用型枠2を基台31上にセットする工程を行う。この工程では、図7(A)に示すように、基台31上に基板20付きの内型枠22を載せる。その際、ガイド20a部分を下部フレーム31a、31a間に挿入することで、内型枠22を左右方向(下部フレームの長さ方向)にのみスライド可能に配置する。次に、内型枠22の外側にリング型枠23を装着する。このリング型枠23は初めから内型枠22に装着しておいても良い。
【0031】
次に、図7(B)に示すように、基板20上の内型枠22の外側に、外型枠21を内型枠22と同軸に配置して容器用型枠1をセットする。しかる後、容器用型枠1内に木材チ
ップTを投入する(図8(C)参照)。
【0032】
この木材チップTとして、実施例では長さ2〜5mmの中サイズチップと、長さ2mm未満の小サイズチップとを7:3の割合で配合し、接着剤を混入して混連したものを用いている。一例として、植木鉢6号相当の鉢形容器1を成型するには、木材チップ2.4リットル、接着剤300cc(市販品:商品名「ポリゾールSNS−100」)程度を必要とする。木材チップTは、製造する鉢形容器1の個数分、一度に作ることも可能であるが、比較的硬化速度の早い接着剤を混入する関係で、鉢形容器1の製造タイミングに合わせて一個分ずつ作ることが好ましい。
【0033】
この木材チップTを容器用型枠1内に投入したら、次いで、図8(D)に示すように、外型枠21の上面開口側から挿入される加圧部材5と加圧装置3を用いて加圧成型する成型工程を行う。この成型行程では、投入された木材チップTに対する加圧部材5の加圧面51aが内型枠22の上面22aよりも図6(A)に示すように下方に位置するように加圧成型する工程(第1成型工程)を行う。このときの木材チップ投入量は、内型枠の上面22aまでが目安となる。これは上記の一例では略1リットルに相当する。
【0034】
この第1成型工程での加圧部材5としては、図5に示すように、環状加圧部材51と、円盤状加圧部材52と、凸型加圧部材53とを順に重ねて同時に用いる。そして、一番上の凸型加圧部材53を油圧シリンダ33で駆動される加圧盤33bで押圧することことにより加圧成型する。この際、油圧シリンダ33が自動停止する(最大ストロークとなる)まで加圧する。この第1成型工程において、凸型加圧部材53と円盤状加圧部材52は、油圧シリンダ33のストローク調整(加圧部材の加圧面が上下移動して到達する範囲の調整)として利用される。換言すればスペーサ部材として用いられる。
【0035】
<二次圧縮行程>
この第1成型工程を終えたら、圧縮面の目荒らしを実施し、その上から必要量(略1リットル)の木材チップTを投入する(図9(E)参照)。そして、投入した木材チップTの表面整形を実施した後に、図9(F)及び図6(B)に示すように加圧面51aが内型枠22の上面22aと略同一高さとなるように加圧成型する第2成型工程を行う。
【0036】
この第2成型工程での加圧部材5としては、図5及び図9(F)に示すように、環状加圧部材51と、円盤状加圧部材52とを順に重ねて同時に用いる。そして、一番上の円盤状加圧部材52を油圧シリンダ33で駆動される加圧盤33bで押圧することことにより加圧成型する。この第2成型工程でも、油圧シリンダ33が自動停止する(最大ストロークとなる)まで加圧する。この第2成型工程において、円盤状加圧部材52は、油圧シリンダ33のストローク調整(加圧部材の加圧面が上下移動して到達する範囲の調整)として利用される。
【0037】
<三次圧縮行程>
この第2成型工程を終えたら、圧縮面の目荒らしを実施し、その上から必要量(残量)の木材チップTを投入する(図10(G)参照)。そして、投入した木材チップTの表面整形を実施した後に加圧部材5をセットし、次いで、図6(C)に示すように、成型される鉢形容器1の底面と加圧面52bとが同一高さとなるように加圧成型する第3成型工程を行う。
【0038】
この第3成型工程での加圧部材5としては、図5、図10(H)及び図11(I)に示すように、円盤状加圧部材52と凸型加圧部材53とを順に重ねて同時に用いる。そして、一番上の凸型加圧部材53を油圧シリンダ33で駆動される加圧盤33bで押圧することことにより加圧成型する。この第3成型工程でも、油圧シリンダ33が自動停止する(
最大ストロークとなる)まで加圧する。この第3成型工程において、凸型加圧部材52は、油圧シリンダ33のストローク調整として利用される。
【0039】
なお、第3成型工程においては、油圧シリンダ33が自動停止するまで加圧した後、一度だけ圧力開放し、木材チップTの圧縮面のレベルを確認する。そして、確認レベルが予定通りであれば再圧縮(30秒程度)してから、脱型工程、乾燥工程へと移行する。なお、確認レベルが予定以下の場合、木材チップTを追加して再圧縮した後、脱型工程、乾燥工程へと移行する。脱型工程では、図11(J)に示すように取っ手21aを利用して脱型する。
【0040】
脱型工程において、円盤状加圧部材52は図示のように薄い円板状であるため脱型し難い形状である。しかし、この円盤状加圧部材52には小突起52cが設けられているため、この小突起52cを中心に回転させることで、容易に脱型することができる。
【0041】
実施例によれば、基板20上にセットされる内型枠22と外型枠21の間にリング型枠23を配置し、そのリング型枠23の木材チップTに接触する成型面23aを鉢形容器1の上縁部13に丸みを付けるための曲面に形成してあるので、これにより製造した鉢形容器1の上縁部13の欠損を未然に防止できる形状とすることができる。
【0042】
また、内型枠22は円錐台状となっているので、リング型枠23を内型枠22と外型枠21の間に配置(セット)する作業は、内型枠22の外周にリング型枠23を上から落とし込むように装着する簡便な操作で済ますことができる。また、内型枠22と外型枠21とリング型枠23の僅か三種類の型枠で容器用型枠1を構成することができる。
【0043】
また、内型枠22を基板20上に設け、基板20の下面にガイド20aを設けているので、加圧装置3及び加圧部材5を用いた加圧時には、容器用型枠2を油圧シリンダ33の真下に移動させ、木材チップTの投入時には容器用型枠2をスライドさせることで、シリンダロッド33aや加圧盤33bが邪魔にならないように作業を行うことができる。
【0044】
また、実施例の製造方法によれば、容器用型枠2と加圧部材5を用いて成型工程を行う際に、第1〜第3成型工程の三段階に分けて成型するので、容器用型枠2内での木材チップTを容器用型枠2の隅々にまで行き渡らせることが可能になり、その分、成型むらを無くして高精度に成型する(見栄え良く仕上げる)ことができる。
【0045】
なお、上記実施例では、長さ2〜5mmの中サイズチップと、長さ2mm未満の小サイズチップとを7:3の配合割合としたが、本発明はこれに限定されない。但し、小サイズチップよりも中サイズチップの配合割合が多いことが望ましい。これは、長さ2mm未満の小サイズチップを配合することで、小サイズチップが中サイズチップ間に入り込んでそれらが混合される形態となるからである。これにより、容器用型枠2内での木材チップTを容器用型枠2の隅々にまで行き渡らせることが可能になり、この点からも、成型むらを無くして高精度に成型する(見栄え良く仕上げる)ことができる。
【0046】
なお、上記実施例において、鉢形容器1はその外径が上部から下部にかけて同一の有底筒状に形成した例を示したが、通常の植木鉢と同様に、その外径が上部から下部に向かうに従って次第に小さくなる有底筒状に形成しても良い。その場合には、外型枠21の内周面形状もその鉢形容器に対応した形状とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施例に係る加圧装置の概略斜視図。
【図2】本発明の実施例に係る加圧装置の正面図。
【図3】本発明の実施例に係る加圧装置の平面図。
【図4】本発明の実施例に係る加圧装置の側面図。
【図5】本発明の実施例に係る容器用型枠と加圧部材の斜視図。
【図6】本発明の実施例に係る容器用型枠を用いた製造方法を示す工程図。
【図7】本発明の実施例に係る製造方法を示す工程図である。
【図8】本発明の実施例に係る製造方法を示す工程図である。
【図9】本発明の実施例に係る製造方法を示す工程図である。
【図10】本発明の実施例に係る製造方法を示す工程図である。
【図11】本発明の実施例に係る製造方法を示す工程図である。
【図12】本発明の実施例に係る製造方法を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0048】
1 鉢形容器
11 底部
12 周壁部
13 上縁部
2 容器用型枠
20 基板
21 外型枠
22 内型枠
23 リング型枠
3 加圧装置
5 加圧部材
51 環状加圧部材
52 円盤状加圧部材
53 凸型加圧部材
T 木材チップ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着剤が混入された木材チップを型枠内で加圧成型することで、底部と周壁部とを有する鉢形容器を制作するための容器用型枠であって、
基板上にセットされる円筒状の外型枠と、
前記基板上の前記外型枠内にセットされる円錐台状の内型枠と、
前記基板上の前記内型枠と外型枠との間に配置され、前記鉢形容器の上縁部を成型するリング型枠とを備え、
前記リング型枠は、前記木材チップに接触する成型面が前記鉢形容器の上縁部に丸みを付けるための曲面に形成されていることを特徴とする容器用型枠。
【請求項2】
前記基板上に前記内型枠が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の容器用型枠。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の容器用型枠を用いて底部と周壁部とを有する鉢形容器を製造する方法であって、
前記容器用型枠を基台上にセットする工程と、
前記容器用型枠内に木材チップを投入し、外型枠の上面開口側から挿入される加圧部材により加圧成型する成型工程と、
加圧成型された鉢形容器から内型枠及び外型枠を脱型する脱型工程と、
脱型後の鉢形容器を乾燥させる乾燥工程とを含むことを特徴とする、鉢形容器の製造方法。
【請求項4】
前記成型工程では、型枠内の木材チップに対する加圧部材の加圧面が内型枠の上面よりも下方に位置するように加圧成型する第1成型工程と、前記加圧面が内型枠の上面と略同一高さとなるように加圧成型する第2成型工程と、成型される鉢形容器の底面と前記加圧面とが同一高さとなるように加圧成型する第3成型工程とを行うことを特徴とする請求項3に記載の鉢形容器の製造方法。
【請求項5】
前記第1成型工程及び第2成型工程では、内型枠と外型枠との間に進入可能な環状の加圧面を有する環状加圧部材を用いることを特徴とする、請求項4に記載の鉢形容器の製造方法。
【請求項6】
前記第3成型工程では、前記外型枠内においてその外型枠の内周面に面接触する外周面と、前記鉢形容器の底面を成型する円形の加圧面と、その加圧面の中央から突出した円柱状の小突起とを有する円盤状加圧部材を用いることを特徴とする、請求項4に記載の鉢形容器の製造方法。
【請求項7】
前記木材チップは、長さ2〜5mmの中サイズチップと、長さ2mm未満の小サイズチップとを含み、かつ、小サイズチップよりも中サイズチップの配合割合が多いことを特徴とする、請求項3に記載の鉢形容器の製造方法。
【請求項1】
接着剤が混入された木材チップを型枠内で加圧成型することで、底部と周壁部とを有する鉢形容器を制作するための容器用型枠であって、
基板上にセットされる円筒状の外型枠と、
前記基板上の前記外型枠内にセットされる円錐台状の内型枠と、
前記基板上の前記内型枠と外型枠との間に配置され、前記鉢形容器の上縁部を成型するリング型枠とを備え、
前記リング型枠は、前記木材チップに接触する成型面が前記鉢形容器の上縁部に丸みを付けるための曲面に形成されていることを特徴とする容器用型枠。
【請求項2】
前記基板上に前記内型枠が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の容器用型枠。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の容器用型枠を用いて底部と周壁部とを有する鉢形容器を製造する方法であって、
前記容器用型枠を基台上にセットする工程と、
前記容器用型枠内に木材チップを投入し、外型枠の上面開口側から挿入される加圧部材により加圧成型する成型工程と、
加圧成型された鉢形容器から内型枠及び外型枠を脱型する脱型工程と、
脱型後の鉢形容器を乾燥させる乾燥工程とを含むことを特徴とする、鉢形容器の製造方法。
【請求項4】
前記成型工程では、型枠内の木材チップに対する加圧部材の加圧面が内型枠の上面よりも下方に位置するように加圧成型する第1成型工程と、前記加圧面が内型枠の上面と略同一高さとなるように加圧成型する第2成型工程と、成型される鉢形容器の底面と前記加圧面とが同一高さとなるように加圧成型する第3成型工程とを行うことを特徴とする請求項3に記載の鉢形容器の製造方法。
【請求項5】
前記第1成型工程及び第2成型工程では、内型枠と外型枠との間に進入可能な環状の加圧面を有する環状加圧部材を用いることを特徴とする、請求項4に記載の鉢形容器の製造方法。
【請求項6】
前記第3成型工程では、前記外型枠内においてその外型枠の内周面に面接触する外周面と、前記鉢形容器の底面を成型する円形の加圧面と、その加圧面の中央から突出した円柱状の小突起とを有する円盤状加圧部材を用いることを特徴とする、請求項4に記載の鉢形容器の製造方法。
【請求項7】
前記木材チップは、長さ2〜5mmの中サイズチップと、長さ2mm未満の小サイズチップとを含み、かつ、小サイズチップよりも中サイズチップの配合割合が多いことを特徴とする、請求項3に記載の鉢形容器の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−126610(P2008−126610A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−316831(P2006−316831)
【出願日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】
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