説明

容積流を制御する弁

本発明は、容積流を制御する弁(1)、特に自動車の加熱及び/又は冷却システムにおける容積流を制御する弁(1)であって、少なくとも1つの制御開口(3)を備えた円板形状の弁体(2)が設けられていて、該弁体は、容積流を制御するために、少なくとも1つの貫流開口(11)を備えた円板形状のシール体(11)と共働するようになっており、円板形状の弁体(2)は、該弁体を回転させるためにピニオン(42)が係合する外歯列(49)を有している形式のものに関する。このような形式の弁において本発明の構成では、ピニオン(42)と円板形状の弁体(2)の外歯列(49)とは、エボロイド歯列(43,44)を介して互いに共働するようになっている。本発明による弁は、特に自動車の加熱及び/又は冷却システムにおける容積流を制御するために、設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容積流を制御する弁、特に自動車の加熱及び/又は冷却システムにおける容積流を制御する弁であって、少なくとも1つの制御開口を備えた円板形状の弁体が設けられていて、該弁体は、容積流を制御するために、少なくとも1つの貫流開口を備えた円板形状のシール体と共働するようになっており、円板形状の弁体は、該弁体を回転させるためにピニオンが係合する外歯列を有している形式のものに関する。
【0002】
DE102006053311A1に基づいて公知の、容積流を制御する弁では、電動機がウォームとウォーム歯車とから成るウォーム伝動装置を駆動する。この伝動装置は、円板形状の弁体の被動軸を回転させ、この被動軸は弁体の真ん中に係合している。従ってこの公知の構成では、円板形状の弁体の中心に係合する中央の駆動装置が設けられている。前記ドイツ連邦共和国特許公開公報の第6頁における段落0047には、ウォーム伝動装置の代わりに、弁は外歯列を備えた円板であってもよく、この場合には外歯列にピニオン又はウォームが係合する構成が、開示されている。
【0003】
発明の利点
本発明による容積流を制御する弁では、冒頭に述べた形式の弁において、ピニオンと円板形状の弁体の外歯列とは、エボロイド歯列を介して互いに共働するようになっている。このように構成された本発明による、容積流を制御する弁には、公知の構成に比べて、構成が単純化され、ひいては組立てが簡単になるという利点が得られ、さらに、高い伝達比が得られることによって弁体のトルクが高められるという利点が得られる。さらに加えて、弁体の回動に対する高い調節精度と改善された伝動装置効率という利点も得ることができる。
【0004】
本発明によるエボロイド歯列によって、ただ1つの伝動装置段において大きな伝達比を有利に得ることができる。特に、円板形状の弁体への極めて直接的な力伝達と、ウォーム伝動装置に比べて良好な伝動装置効率とが生ぜしめられる。また、大きな直径における伝動装置遊びによってエボロイド歯列における角度遊びが小さくなるので、調節精度はさらに高まる。さらに、大きな直径において力が導入されることによって、全体として比較的僅かな歯列力しか必要がない、という利点もある。そしてこれにより、調節精度が高まると同時に、高い伝達状態の実現によってトルクが高まる。エボロイド歯列によってこの場合、円板形状の弁体と電動機式の駆動装置のモータ軸線との間における角度ずれが不要になる。
【0005】
本発明の別の利点及び別の構成は、請求項2以下及びその他の記載に開示されている。
【0006】
円板形状の弁体の外歯列が、歯セグメントとして形成されていると、高い調節精度と共に弁の構造を簡単にすることができる。この場合外歯列が弁体の周方向において約100〜140°の領域にわたって設けられていると、有利である。
【0007】
また外歯列が押出し被覆によって弁体に設けられていると、製造が簡単になる。
【0008】
さらにまた、円板形状のシール体が、少なくとも1つの環状のリングを介して円板形状の弁体にシール作用をもって接触していると、単純な構造と共に良好なシール作用を得ることができる。
【0009】
歯列を良好に保護するために有利な構成では、弁はハウジングスリーブを有していて、該ハウジングスリーブには内壁側にシールリングが接触しており、該シールリングはシールリップを介して円板形状の弁体の、シール体とは反対側の面に接触している。
【0010】
シール体が弁の調節駆動装置に向けられた面に、少なくとも1つの静的な成形パッキンを有していると、単純な構造と共に良好なシール作用が得られる。この場合に少なくとも1つの成形パッキンをエラストマパッキンとして形成すると有利である。
【0011】
弁の確実な運転のために有利な構成では、弁体へのシール体の圧着が、少なくとも1つの静的な成形パッキンとシールリングとを介して行われる。
【0012】
次に図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】円板形状の弁体の側から本発明による弁を見て示す斜視図である。
【図2】円板形状のシール体の側から本発明による弁を見て示す斜視図である。
【図3】円板形状のシール体の側から本発明による弁を見た側面図である。
【図4】弁を図3のIV−IVに沿って断面して示す図である。
【図5】図4に示した弁の一部を拡大して示す図である。
【0014】
発明の実施の形態
本発明による弁1は、特に自動車のヒータシステム及び/又は冷却システムにおける容積流を制御するために、設けられている。このような機関冷却システム用調整弁は、CCV(Coolant Control Valve クーラントコントロール弁)という概念で知られている。このような弁は、内燃機関からの冷媒回路においてクーラ分岐部とバイパス分岐部との間において冷媒温度を調整する。これによって、冷却システムの出力を必要に合わせて内燃機関の運転状態に合わせることができる、温度管理が可能になる。例えば内燃機関の暖機段階において冷却水流を減じることができる。これにより急激な加熱によってモータオイル粘度は素早く低下し、これによって室内の最適化されたエアコンディショニングと同時に、特にアイドリング時及び部分負荷運転時における消費を減じることができる。冷却回路における調整弁によって、従来用いられているサーモスタットの代わりを果たすことができる。
【0015】
回転円板弁(Drehscheibenventil)とも呼ぶことができる弁1は、少なくとも1つの制御開口3を備えた円板形状の弁体2を有している。回転可能に形成された弁体2は、そのために真ん中で軸4によって貫通されており、この軸4を用いて弁体2は、例えば図4に示されたスリーブ5を介して片持ち式に、軸4を中心にして回転可能に支承されている。回転可能に形成された弁体2には、この弁体2よりも幾分小径に形成された定置の円板形状のシール体10が接触しており、このシール体10はその真ん中で軸4を、例えば該軸4よりも大径の貫通開口8によって、僅かな半径方向間隔をもって取り囲んでいる。
【0016】
シール体10は不動であり、弁1のハウジングの一部である。シール体10は例えば、図2及び図3に詳しく示された複数の貫通開口を有している。図示の実施例では、第1の大きな貫通開口11と第2の中位の貫通開口12と第3の小さな貫通開口14とが設けられている。これらの貫通開口11,12,14は、シール体10の、弁体2とは反対側の面15において、静止(statisch)している成形パッキン17によって取り囲まれている。付加的に、面15を画定している側縁もまた、成形パッキン18によって取り囲まれていることができる。これらの成形パッキン17,18は例えば、貫通開口11,12,14への図示されていない接続部の接続時において、もしくは、弁体2の制御開口3により経路が相応に解放されるや否や、媒体特に冷媒や冷却水が流れるようになる、弁1の別のハウジング部分の接続時において、シールとして作用する。それぞれの貫通開口11,12,14に対する制御開口3の位置に応じて、実際の貫流面は相応に変化することができ、つまり弁体2の回転によって容積流を制御することができる。円板形状の弁体2は従って調整円板とも呼ぶことができる。成形パッキン17,18はエラストマパッキンとして形成されていることができる。
【0017】
媒体は例えば、図示されていない接続ハウジング部分(図4で見てハウジングスリーブ25の右側に接続されている)を介して、制御開口3に達し、この制御開口3からさらに、円板形状の弁体2の回転位置に応じて、貫通開口11,12,14のうちのいずれか1つに達する。弁1の機能は冷却水流の遮断及び調整であり、これは、位置固定のシール体10に対する弁体2の回転運動によって達成される。これによって種々異なった横断面が所望のように増減される。図2には、弁体2の制御開口3とシール体10の第1の大きな貫通開口11との完全な開放位置が示されている。
【0018】
弁体2は面で、円板形状のシール体10に接触していることができる。弁体2はしかしながらまた、図4及び図5に示されているように、面で接触しておらず、シール体10に対して軸方向間隔を有することもできる。そのために、シール体10の、弁体2に向けられた側の面20には、縁リング21の形の環状の隆起部が設けられている。縁リング21は、半径方向においてシール体10の外面26を起点として、幾分半径方向内側に向かってかつ周方向においては完全に延びている。これによって縁リング21は縁部側において該縁リング21のリング幅で、内方に向かって、シール体10を縁取っているもしくは取り囲んでいる。さらに同様に各1つの別のリング22が、各貫通開口11,12,14を取り囲んで設けられていてもよく、このようなリング22はそれぞれ貫通開口11,12,14をその周囲において取り囲み、画成し、もしくは縁取っている。このように構成されていると、弁体2とシール体10とは単に縁リング21,22を介してのみ接触していることになる。円板形状のシール体10はまた、シール円板と呼ぶこともできる。
【0019】
弁体2を駆動するために、弁体2は電動機式の調節駆動装置40を有しており、この調節駆動装置40は例えば駆動軸41を介してピニオン42を駆動する。電動機式の調節駆動装置40は、ステップモータ又はこれに類したものであってよい。ピニオン42はその歯で、弁体2の外歯列49に係合している。本発明によればピニオン42と円板形状の弁体2の外歯列49とは、エボロイド歯列(Evoloidverzahnung)43,44を介して互いに共働する。ピニオン42及び外歯列49は共にインボリュート歯列43,44として形成されていて、伝動装置を形成している。エボロイド歯列43,44は、インボリュート歯列の特殊な変化形態であり、特にピニオン42が僅かな歯数しか有しないような場合でも、連続的に係合する歯列を提供する。図示の実施形態ではピニオン42は例えば3つの歯を有している。さらに少ない数の歯、例えばただ1つの歯しか有していないような構成も可能である。これによって、ただ1つの伝動装置段において大きな伝達比もしくは歯車比を得ることができる。特に、円板形状の弁体2への極めて直接的な力伝達及び良好な伝動装置効率が得られる。また、大きな直径における伝動装置遊び(Getriebespiel)によってエボロイド歯列43,44における角度遊び(Winkelspiel)が小さくなるので、調節精度はさらに高まる。
【0020】
さらに、比較的大きな直径への力導入が行われるので、全体として比較的小さな歯列力しか必要がない、という利点がある。また、円板形状の弁体2の外歯列49が歯セグメントとして形成されていて、弁体2の全周の一部に設けられているだけで、十分かつ有利である。この場合歯セグメントつまり円板形状の弁体2の外歯列49は、周方向において約100〜140°の領域を占めている。外歯列49は押出し被覆(umspritzen)によって簡単に、弁体2の周囲に設けることができる。原則的には次のような伝動装置、つまり必要な重なり(Sprungueberdeckung)を、ずらされて配置されていて直ぐ歯を備えた複数の歯車によって達成することができるような伝動装置も、可能である。
【0021】
図4に示されているように、ハウジングスリーブ25は半径方向においても軸方向においても弁体2とシール体10とを取り囲んでいる。弁体2における外歯列49だけが、例えば切り欠かれている。弁体2の右側、つまり弁体2の、該弁体2の調節駆動装置40とは反対側の面32には、環状のシールリング35が設けられており、このシールリング35は、一方ではシールリップ37で弁体2の面32に支持されていて、他方ではスリーブ形状の部分38でハウジングスリーブ25の内面36に接触している。シールリング35のスリーブ形状の部分38とシールリップ37とは、断面図で見てL字形の形を成している。ピニオン42と外歯列49とによって歯列室50をカプセル化するために、駆動室52は弁1の残りの内室53に対して、シールリング35もしくはそのシールリップ37とシール体10の縁リング21とを用いて隔てられることができる。このシール箇所は100%のシール性を有していない。むしろこのシール箇所の課題は、例えば鋳物砂のような大きな異物が歯列室50内に侵入することを阻止することである。弁体2へのシール体10の圧着は、例えばシールリング35及び成形パッキン17,18を介して行うことができ、これによって良好なシール作用を得ることができる。シールリング35及びそのシールリップ37は、歯列室50をカプセル化するために働く。
【0022】
本発明による弁は、特に自動車の加熱及び/又は冷却システムにおける、容積流を制御するために設けられている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容積流を制御する弁、特に自動車の加熱及び/又は冷却システムにおける容積流を制御する弁であって、少なくとも1つの制御開口を備えた円板形状の弁体が設けられていて、該弁体は、容積流を制御するために、少なくとも1つの貫流開口を備えた円板形状のシール体と共働するようになっており、円板形状の弁体は、該弁体を回転させるためにピニオンが係合する外歯列を有している形式のものにおいて、
ピニオン(42)と円板形状の弁体(2)の外歯列(49)とは、エボロイド歯列(43,44)を介して互いに共働することを特徴とする、容積流を制御する弁。
【請求項2】
円板形状の弁体(2)の外歯列(49)は、歯セグメントとして形成されている、請求項1記載の弁。
【請求項3】
外歯列(49)は弁体(2)の周方向において約100〜140°の領域にわたって設けられている、請求項2記載の弁。
【請求項4】
外歯列(49)は押出し被覆によって弁体(2)に設けられている、請求項2又は3記載の弁。
【請求項5】
円板形状のシール体(10)は、少なくとも1つの環状のリング(21;22)を介して円板形状の弁体(2)にシール作用をもって接触している、請求項1から4までのいずれか1項記載の弁。
【請求項6】
弁(1)はハウジングスリーブ(25)を有していて、該ハウジングスリーブ(25)には内壁側にシールリング(35)が接触しており、該シールリング(35)はシールリップ(37)を介して円板形状の弁体(2)の、シール体(10)とは反対側の面(32)に接触している、請求項1から5までのいずれか1項記載の弁。
【請求項7】
シール体(10)は弁(1)の調節駆動装置(40)に向けられた面(15)に、少なくとも1つの静的な成形パッキン(17;18)を有している、請求項1から6までのいずれか1項記載の弁。
【請求項8】
少なくとも1つの成形パッキン(17;18)はエラストマパッキンとして形成されている、請求項7記載の弁。
【請求項9】
弁体(2)へのシール体(10)の圧着が、少なくとも1つの静的な成形パッキン(17;18)とシールリング(35)とを介して行われる、請求項5から8までのいずれか1項記載の弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−505999(P2012−505999A)
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−532570(P2011−532570)
【出願日】平成21年10月5日(2009.10.5)
【国際出願番号】PCT/EP2009/062874
【国際公開番号】WO2010/046225
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】