説明

密閉型二次電池

【課題】 高出力用途に適した安全性の高い密閉型二次電池を提供することを目的とする。
【解決手段】 密閉型二次電池における封口板8において、金属製薄肉弁体10の上方には前記金属製薄肉弁体10の上方に突出した屈曲部10bよりも大きく外径よりも小さい開口部を備えたスペーサ14を配置し、金属製防爆弁体12の上方には、前記金属製防爆弁体12の下方に突出した屈曲部12bよりも大きく外径よりも小さい開口部を備えたスペーサ14と金属製キャップ13、または金属製キャップ13を配置して、過充電等による電池内圧異常発生時には前記金属製薄肉弁体10と前記金属製防爆弁体12の変形を制御、抑制し、所定の圧力で確実に破断させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の電池内圧に達したとき確実に破断する安全機能を有し、体積効率の良い封口板構造を持つ密閉型二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
密閉型二次電池は、軽量、小型で高エネルギー密度であることから、携帯電話を始めとする民生用機器から電気自動車や電動工具等駆動用電源など各種用途に用いられている。中でも現在の民生用機器に使用されているリチウムイオン二次電池の封口板は一般的に次のような構造を有する。
【0003】
例えば特許文献1では、内部端子をなす金属製有孔フィルタ内に薄肉部を備えた金属製薄肉弁体、樹脂製ガスケット、開口部を備えたPTC(Positive Temperature Coefficient)素子、薄肉部と下方に突出した屈曲部を備えた金属製防爆弁体、外部端子をなす金属製キャップを順に配置し、金属製有孔フィルタの周囲をかしめて密閉している。金属製防爆弁体の下方に突出した屈曲部と金属製薄肉弁体とは樹脂製ガスケットを挟んで溶接している。電池が誤って過充電され電池内圧が異常に上昇した際には、まず、電池内部で上昇した内圧を金属製薄肉弁体が受圧し、押し上げられて金属製防爆弁体の屈曲部が反転する。さらに上昇する内圧を受圧した金属製薄肉弁体の薄肉部の一部が破断し開口する。開口部を通して金属製防爆弁体が受圧することにより、溶接部を基点に金属製薄肉弁体が引き剥がされ完全に破断することで電流経路を遮断し電池内部のガス発生を抑制する。また何らかの不具合が生じ、電池内圧が異常発生した場合には金属製防爆弁体が破断して外部へガスを放出するという安全機能を具備している。
【特許文献1】特開平11−339767号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献1の場合、電気自動車や電動工具用途では、通常使用において大電流放電を行うので抵抗の高いPTC素子は使用できない。しかし上記特許文献1に記載されたような構成において、金属製薄肉弁体および金属製防爆弁体の薄肉部の破断圧は、上方に配置されるPTC素子の開口部面積によって制御しているためPTC素子の代替として開口部を有するスペーサが必要である。また大電流放電を行うので電池内部の発熱により民生機器用途よりも電池内圧が上昇するため通常使用時の誤遮断を防止しつつ、過充電等による異常時に電流経路を遮断するように金属製薄肉弁体の破断圧を高くする必要がある。
【0005】
例えば、破断圧を高くしようとする場合には薄肉部の厚みを厚くすれば良い。しかし薄肉部が引き剥がれるまでの金属製薄肉弁体の変形量が大きくなる。またスペーサの開口面積によって、金属製防爆弁体の屈曲部の反転距離量や金属製薄肉弁体の変形量を抑制しているので、所定の破断圧力に対する反転距離量が小さく、金属製薄肉弁体の変形量が大きい場合には薄肉部が完全に破断できずに一部が導通した状態が継続し、異常時に所定内圧で電流経路を遮断することができない。
【0006】
一方、金属製防爆弁体の屈曲部の反転距離量を充分にする手段としてスペーサの開口部面積を大きくすると、金属製防爆弁体の屈曲部の反転距離が大きくなるので金属製薄肉弁体の破断時の変形量が充分に確保され完全に破断する。但し、充分な反転距離量を確保するということは金属製防爆弁体の変形が大きくなるということであるので、金属製キャップの頭部を高くしなければならず封口板体積が増大する課題を有していた。
【0007】
そこで本発明はこのような従来の課題を解決するもので、内部ガス受圧による弁体の変形量をスペーサの開口部の面積で制御し、金属製キャップの頭部高さをそのままに封口板の体積効率を低下させることなく、所定の電池内圧に達したとき確実に破断する安全機能を有した密閉型二次電池を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明の密閉型二次電池は、正極板と負極板とセパレータとを介して捲回した電極群と電解液とを金属製有底ケースに収容し、封口板を前記金属製有底ケースに装着して前記金属製有底ケースの周囲をかしめて封口した構造を有し、前記封口板は金属製薄肉弁体と金属製防爆弁体とがガスケットを挟んで接合され、前記金属製薄肉弁体には上方に、前記金属製防爆弁体には下方に突出した屈曲部を備えた構造を有し、かつ前記金属製薄肉弁体の上部には前記金属製薄肉弁体の上方に突出した屈曲部よりも大きく外径よりも小さい開口部を備えたスペーサを配置し、前記金属製防爆弁体の上部には前記金属製防爆弁体の下方に突出した屈曲部よりも大きく外径よりも小さい開口部を備えたスペーサと金属製キャップ、または金属製キャップを配置したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
以上のように本発明によれば、安全性が高い密閉型二次電池を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明においては、正極板と負極板とセパレータとを介して捲回した電極群と電解液とを金属製有底ケースに収容し、封口板を前記金属製有底ケースに装着して前記金属製有底ケースの周囲をかしめて封口した密閉型二次電池において、前記封口板は金属製薄肉弁体と金属製防爆弁体とがガスケットを挟んで接合され、前記金属製薄肉弁体には上方に、前記金属製防爆弁体には下方に突出した屈曲部を備えた構造を有し、かつ前記金属製薄肉弁体の上部には前記金属製薄肉弁体の上方に突出した屈曲部よりも大きく外径よりも小さい開口部を備えたスペーサ、及び前記金属製防爆弁体の上部には前記金属製防爆弁体の下方に突出した屈曲部よりも大きく外径よりも小さい開口部を備えたスペーサと金属製キャップ、または金属製キャップを配置した構成を有する。これにより、過充電された際など所定の電池内圧で金属製薄肉弁体が確実に破断して電流経路を遮断し、さらに何らかの不具合による異常な電池内圧上昇時にも所定の電池内圧に達した時に確実に金属製防爆弁体が破断することができる。
【0011】
また、前記金属製防爆弁体の上部に配置したスペーサは、前記金属製防爆弁体に接する最下面の開口部面積が最大となるように開口部面積の異なる数種類の板状部材を積み重ねた構成にしてもよい。これにより、前記金属製防爆弁体の屈曲部の反転距離が大きくなり金属製薄肉弁体の変形量が充分に確保されるため、過充電された際など所定の電池内圧で金属製薄肉弁体破断の確実性がより一層向上し、電流経路を遮断し、さらに何らかの不具合による異常な電池内圧上昇時にも所定の電池内圧に達した時により一層確実に金属製防爆弁が破断することができる。
【0012】
また、前記金属製防爆弁体の上部に配置したスペーサは上面の開口部面積が下面の開口部面積よりも小さくなるような構成にしてもよい。これにより、前記金属製防爆弁体の屈曲部の反転距離が大きくなり金属製薄肉弁体の変形量が充分に確保されるため、過充電された際など所定の電池内圧で金属製薄肉弁体破断の確実性がより一層向上し、高安全性な密閉型二次電池を提供することができる。
【0013】
(実施の形態)
以下、本発明の実施の形態における密閉型二次電池について、効果が最も顕著な円筒型
リチウムイオン二次電池の図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は本発明の実施の形態における円筒型リチウムイオン二次電池の概略縦断面図である。図1において円筒型リチウムイオン二次電池は、アルミニウム箔集電体に正極活物質を主体とする正極合剤が塗着された正極板1と、銅箔集電体に負極活物質を主体とする負極合剤が塗着された負極板2と、それら両極間に厚み25μmのセパレータ3を配置し、渦巻き状に巻かれた円筒状の極板群4を備えている。アルミニウム箔集電体には正極リード集電体5がレーザ溶接されている。銅箔集電体には負極リード集電体6が抵抗溶接されている。極板群4は金属製有底ケース7に収納されている。負極リード集電体6は金属製有底ケース7の底部と抵抗溶接され電気的に接続されている。正極リード集電体5は金属製有底ケース7の開放端から封口板8の金属製フィルタ9にレーザ溶接され電気的に接続されている。金属製有底ケース7の開放端から非水電解液を注入する。金属製有底ケース7の開放端には溝を入れて座が形成され、正極リード集電体5を折り曲げ、金属製有低ケース7の座部に樹脂製アウターガスケット15と封口板8が装着され、金属製有底ケース7の開放端全周囲をかしめて封口されている。
【0015】
正極活物質には複合酸化物、具体的にはコバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウムや、それらの変性体などを用いることができる。変性体として、アルミニウム、マグネシウムなどの元素を含有させることができる。また、コバルト、ニッケルおよびマンガン元素を混合して含有させることもできる。これら正極活物質を、導電剤(正極電位下で安定な黒鉛・カーボンブラック・金属粉末などが用いられる)及び結着剤(正極電位下で安定なポリフッ化ビニリデン(PVDF)・四フッ化エチレン(PTFE)などが用いられる)と混練し、集電体(アルミニウムの箔・穿孔体などが用いられる)に塗着する。集電体の一端に未塗着部を設け正極リード集電体5(アルミニウム)を溶接し取りつけて正極板1が製作される。
【0016】
負極活物質としては、天然黒鉛、人造黒鉛、アルミニウムやそれを主体とする種々の合金、酸化スズなどの金属酸化物、金属窒化物を用いることができる。これら負極活物質を、導電剤(負極電位下で安定な黒鉛・カーボンブラック・金属粉末などが用いられる)および結着剤(負極電位下で安定なスチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)・カルボキシメチルセルロース(CMC)などが用いられる)と混練し、集電体(銅箔・銅穿孔体などが用いられる)に塗着する。集電体の一端に未塗着部を設け負極リード集電体6(銅、ニッケルなどが用いられる)を溶接し取りつけることにより負極板2が作製される。
【0017】
これら正負極板(正極板1、負極板2)を、セパレータ3(ポリオレフィンからなる微多孔膜・不織布などが用いられる)を介して正極リード集電体5と負極リード集電体6が違方向から取り出されるように捲回することにより、極板群4が構成される。このあと金属製有底ケース7(鉄、ニッケル、ステンレスなどが用いられる)に上記極板群4を挿入し、負極リード集電体6を金属製有底ケース7の有底部に溶接して電気的に接続する。
【0018】
電解液としては非水電解液や、ポリマ材料に非水電解液を含ませたゲル電解質が挙げられる。非水電解液は非水溶媒と溶質とからなる。溶質として、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)などのリチウム塩が挙げられる。非水溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどの環状カーボネート類や、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートおよびエチルメチルカーボネートなどの鎖状カーボネート類などが好ましいが、これらに限定されない。非水溶媒は1種を単独で用いてもよいが2種以上を組み合わせてもよい。また、添加剤としてはビニレンカーボネート、シクロヘキシルベンゼン、ジフェニルエーテルなどが挙げられる。
【0019】
封口板8は、アルミニウムなどからなる金属製フィルタ9と金属製フィルタ9の内部に
アルミニウムなどからなる金属製薄肉弁体10と金属製薄肉弁体10の上部に前記金属製薄肉弁体10の上方に突出した屈曲部10bよりも大きく、前記金属製薄肉弁体10の外径よりも小さい開口部を備えたステンレスなどからなるスペーサ14、樹脂製インナーガスケット11(架橋型ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、四フッ化エチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)樹脂、四フッ化エチレン(PTFE)樹脂などが用いられる)、アルミニウムなどからなる金属製防爆弁体12の順に配置し金属製薄肉弁体10と金属製防爆弁体12とを溶接結合する。さらに前記金属製防爆弁体12の上部に前記金属製防爆弁体12の下方に突出した屈曲部12bよりも大きく、前記金属製防爆弁体12の外径よりも小さい開口部を備えた鉄、ニッケル、銅、アルミニウム、これらのクラッド材などからなる金属製キャップ13を配置し、これらを収納配置した金属製フィルタ9の周縁部をかしめて封止する。ここで前記結合形成部には、レーザ溶接や抵抗溶接、超音波溶接等を用いることが好ましい。
【0020】
以上の手順を経て金属製有底ケース7の開口部より取り出した正極リード集電体5と封口板8を溶接し、封口板8を金属製有底ケース7に装着し、樹脂製インナーガスケット 11を介して金属製有底ケース7の周囲をかしめて封口することにより、本発明の円筒型リチウムイオン二次電池が形成される。
【0021】
次に、上記構成の密閉型二次電池の封口板8を用いた電池において、図2を用いて電流経路遮断動作を用いて説明する。図2において金属製フィルタ9の有孔部を通して発生したガスが金属製薄肉弁体10を押圧する。押圧により変形を生じた金属製薄肉弁体10が金属製防爆弁体12を押し上げて屈曲部12bが反転する。さらにガスで押圧されると金属製薄肉弁体10の円形薄肉部10aの一部が引き剥がれ開口する。開口部分を通して、上方に配置されている金属製防爆弁体12が押圧され変形すると、溶接点Sを基点に金属製薄肉弁体10が引張られて円形薄肉部10aが完全に破断し電流経路を絶つ。さらに金属製防爆弁体12が押圧されるとC形薄肉部12aが破断に至る。上述した動作の中で電池が所定内圧に達したとき電流経路を遮断する円形薄肉部10a全周が破断する上で重要なことは、金属製薄肉弁体10が破断するまでに変形した高さ10cと金属製防爆弁体12の屈曲部12bの反転高さ12cである。変形高さ10c終端と円形薄肉部10aの破断終端が接触してはならず、変形高さ10cが小さい場合にその間隔が充分確保できる。
【0022】
一方、金属製防爆弁体12の反転高さ12cは溶接部Sの端位置から円形薄肉部10aの破断終端までの距離と、円形薄肉部10aの変形高さ10cと変形高さ10c終端と円形薄肉部10aの間隔と許容できることが必須であり、許容できない場合には円形薄肉部10aが全破断しない。図3において、電池内圧がさらに上昇した場合には金属製防爆弁体12が破断に至るが、屈曲部12bが反転した後のC形薄肉部12aの変形が大きいとキャップの頭部に当り破断を妨げることになるため変形量を抑制することが重要である。
【0023】
以上述べたように所定の内圧で金属製薄肉弁体10および金属製防暴弁12を破断するために必要なことは、弁体の材質や薄肉部の厚み以外に、内圧による両弁体の変形を制御することである。この変形を制御しているのは上方に配置したスペーサの開口部である。
【0024】
なお上述したのは円筒型リチウムイオン二次電池の形態および構成手順であったが、角型リチウムイオン電池やニッケル水素蓄電池やニッケルカドミウム蓄電池などを電池として構成する場合も、一般的に用いられる材料を駆使することにより、上述内容と同様に本発明の効果を活用することができる。
【0025】
(実施例1)
図4は本発明の密閉型二次電池における封口板8の構成図である。図4において封口板
8は以下のようにして作製した。アルミニウムをプレス加工して複数の開口部を有する皿状の直径25mmの金属製フィルタ9を作製した。続いて厚み0.15mmのアルミニウム箔を直径23mmの円盤状に打ち抜き後、図5に示すように中央部に円形薄肉部10aを刻印で形成した後に、上型にR形状のパンチ、下型には受け型をセットしたプレス機で挟み込み突出した屈曲部10bを形成し金属製薄肉弁体10を得た。次に厚み0.15mmのアルミニウム箔を直径21mmの円盤状に打抜いた後、図6に示すように中央部にC形薄肉部12aを作製した後に、上型にR形状のパンチ、下型には受け型をセットしたプレス機で挟み込み、突出した屈曲部12bを形成し金属製防爆弁体12を得た。スペーサ14は0.3mmのステンレス材を外径23mm、開口直径11mmにプレス加工し作製した。続いて、ポリプロピレン樹脂を射出成形で外径23mm、開口部直径11mm、厚み0.5mmの樹脂製インナーガスケット11を作製した。
【0026】
次に鉄材を外径21mm、開口直径11mmでキャップ形状にプレス加工した後ニッケルメッキを3μm程度施して金属製キャップ13を作製した。以上のようにして得た封口板8の構成部品を以下のように組み立てた。金属製フィルタ9内に金属製薄肉弁体10を突出した屈曲部10bが上方に向くように配置し、金属製薄肉弁体10の上方にスペーサ14を配置し、続いてスペーサ14上方に樹脂製インナーガスケット11、樹脂製インナーガスケット11の上方に突出した屈曲部12bが下方に向くように金属製防爆弁体12を配置した。金属製薄肉弁体10の中心部と金属製防爆弁体12の中心部にレーザ溶接機を用いて溶接部Sを形成した。続いて金属製キャップ13を金属製防爆弁体12の上方に配置した。このように構成部品を収納した金属製フィルタ9の周縁部をかしめて密閉、一体化した。
【0027】
次に正極板1は以下のようにして作製した。正極活物質を主体とする正極合剤として、コバルト酸リチウム粉末を85重量部、導電剤として炭素粉末を10重量部、および結着剤としてポリフッ化ビニリデン(以下、PVDFと略す)のN−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと略す)溶液をPVDFが5重量部相当を混合した。この混合物を厚み15μmのアルミニウム箔集電体に、塗布、乾燥した後、圧延して厚みが100μmの正極板1を作製した。
【0028】
負極板2は以下のようにして作製した。負極活物質を主体とする負極合剤として人造黒鉛粉末を95重量部、及び結着剤としてPVDFのNMP溶液をPVDFが5重量部相当を混合する。この混合物を厚み10μmの銅箔集電体に、塗布、乾燥した後、圧延して厚みが110μmの負極板2を作製した。
【0029】
非水電解液は以下のように調製した。非水溶媒として、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートを体積比1:1で混合し、これに溶質として、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)が1mol/Lになるように溶解した。このように調製した非水電解液を15ml用いた。
【0030】
以上の手順を経て、実施例1の密閉型二次電池を得た。この電池は直径25mm、高さ65mmの円筒型リチウムイオン二次電池で電池の設計容量は2000mAhであった。
【0031】
(実施例2)
図7は本発明の密閉型二次電池における封口板8の構成図である。図7において、金属製フィルタ9内に金属製薄肉弁体10を突出した屈曲部10bが上方に向くように配置し、金属製薄肉弁体10の上方に樹脂製インナーガスケット11、樹脂製インナーガスケット11の上方に突出した屈曲部12bが下方に向くように金属製防爆弁体12を配置した。金属製薄肉弁体10の中心部と金属製防爆弁体12の中心部にレーザ溶接機を用いて溶接部Sを形成した。続いて金属製防爆弁体10の上方に開口部直径13mmのスペーサ1
4を配置し、スペーサ14の上方に開口部直径11mmの金属製キャップ13を配置した。このように部品を収納した金属製フィルタ9の周縁部をかしめて密閉、一体化したこと以外は実施例1と同様の方法で封口板8を作製し、電池を作製した。また、正極板1と負極板2の作製、及び電解液の調整については、実施例1と同様の方法にて行った。
【0032】
以上の手順を経て、実施例2の密閉型二次電池を得た。この電池は、寸法と設計容量が実施例1と同様の円筒型リチウムイオン二次電池である。
【0033】
(実施例3)
図8は本発明の密閉型二次電池における封口板8の構成図である。図8において、図9に示す上面開口部直径が11mm、下面開口部直径が13mmの上下面で開口面積が異なるスペーサ14を作製し、開口部直径が13mmの面が金属製防爆弁体12に接し、開口部直径11mmの面が金属製キャップ13の下部に配置したこと以外は実施例1と同様の方法で封口板8を作製し、電池を作製した。また、正極板1と負極板2の作製、及び電解液の調整については、実施例1と同様の方法にて行った。
【0034】
以上の手順を経て、実施例3の密閉型二次電池を得た。この電池は、寸法と設計容量が実施例1と同様の円筒型リチウムイオン二次電池である。
【0035】
上述した実施例の電池のおよび封口板8を以下の方法により評価した。
【0036】
(電流遮断圧・ベント圧抜き取り検査)
組立完成した封口板8を各々30個づづ抜き取り電流遮断圧およびベント圧の測定を行った。検査合格電流遮断圧は1.1MPa〜1.5MPaで、検査合格ベント圧は2.1MPa〜2.6MPaである。測定方法は以下のとおりである。封口板を下受け治具にセットする。上押さえ治具をエアーシリンダーで下降させて挟み込み封口板8を密閉状態にする。このとき治具は封口板8を介して導通状態にあるとランプが点灯して知らせる。続いて下受け治具の貫通孔を通じて封口板8を昇圧する。金属薄肉弁体10の薄肉部10aが破断すると治具が不導通になりランプが消灯する。不導通となった圧力を電流遮断圧として記録する。さらに昇圧を継続し金属製防暴弁体12の薄肉部12aが破断し、上押え治具の貫通孔を通じて外部へ放出したとき圧力をベント圧として記録した。測定の結果を表1に示した。
【0037】
【表1】

【0038】
(パルス放電試験)
完成電池を1250mAの定電流で4.2Vまで充電し、1250mAの定電流で3.0Vまで放電するというサイクルを3回行い活性化した後、40Aで20秒間、5秒間休止のパルス放電を行い、サイクル中の電流遮断誤作動の有無を確認した。結果を表2に示した。
【0039】
【表2】

【0040】
(過充電試験)
完成電池を1250mAの定電流で4.2Vまで充電し、1250mAの定電流3.0
Vまで放電するというサイクルを3回行い活性化した後、8000mAの定電流で過充電試験を行った。結果を図10に示した。
【0041】
表1において実施例1の封口板8の構成においては、金属製薄肉弁体10の上方には突出した屈曲部10bよりも大きく外径よりも小さい開口部を有するスペーサ14、金属製防爆弁体12の上方は突出した屈曲部12bよりも大きい内径を有する金属製キャップ13をそれぞれ配置しており、電池内圧が上昇した際、金属製薄肉弁体の上方にスペーサ14が配置されていることにより円形薄肉部10aの変形を抑制でき、さらに変形高さ10b終端と円形薄肉部10aの間隔を充分に許容できるので検査合格電流遮断圧内で確実に破断している。また、昇圧された封口板の金属製防暴弁体12の上方に配されている金属製キャップ13が屈曲部12b反転後のC形薄肉部12aの変形を抑制しており、金属製キャップ13の頭部に当節することなく検査合格ベント圧内で確実に破断をしている。
【0042】
実施例2の封口板8の構成においては、金属製防爆弁体10の上方に突出した屈曲部10bよりも大きく外径よりも小さい開口部を有するスペーサ14を配置し、スペーサ14の上方にスペーサ14の開口部よりも小さい内径を有する金属製キャップ13を配している。
【0043】
また、金属製防爆弁体12の周縁に上面と下面の開口部面積が異なる部材で構成したスペーサ14を配置しており、昇圧した際、スペーサ14の開口部によって溶接部Sの端位置から円形薄肉部10aの破断終端までの距離と、円形薄肉部10aの変形高さ10cと変形高さ10c終端と円形薄肉部10aの間隔を充分に許容できるように反転高さ12bを制御しているため、検査合格電流遮断圧内で確実に破断している。
【0044】
さらに、昇圧された封口板8は金属製防暴弁体12の上方に配置されているスペーサ14の開口部よりも小さい内径を有する金属製キャップ13が反転後の屈曲部12bの変形を抑制しているので、金属製キャップ13の頭部に当節することなく薄肉部12aが検査合格ベント圧内で確実に破断をしている。
【0045】
実施例3の封口板8の構成においては、金属製防爆弁体12の周縁に上面と下面の開口部面積が異なるスペーサ14を配置しており、一方の開口部面積によって溶接部Sの端位置から円形薄肉部10aの破断終端までの距離と、円形薄肉部10aの変形高さ10cと変形高さ10c終端と円形薄肉部10aの間隔を充分に許容できるように反転高さ12bを制御しているので、検査合格電流遮断圧内で確実に破断している。
【0046】
さらに、昇圧された封口板8は反転後の屈曲部12bの変形をもう一方の開口部面積で屈曲部12bの反転後におけるC形薄肉部12aの変形を抑制しているので、金属製キャップ13の頭部に当節することなく薄肉部12aが検査合格ベント圧内で確実に破断をしている。
【0047】
表2において実施例1および実施例2、3の電池は高出力用途で通常仕様が大電流放電であるため、民生用途よりも電池内部の発熱により電池内圧が上昇するため破断圧力を高く設定していることからパルス放電サイクル中の誤遮断がないことを確認した。
【0048】
図10において実施例1および実施例2、3の電池は過充電試験において、電池内圧が1.2MPa〜1.3MPa封口板8の電流遮断が動作しており、異常時に電流経路が確実に遮断することを確認した。
【0049】
以上のように本発明の密閉型二次電池用の封口板8では通常仕様の大電流放電サイクル中に誤遮断することなく、且つ過充電等の異常時は確実に電流経路を遮断する大電流放電
を適し、安全機能を有した密閉型二次電池を提供できるのは明かである。
【産業上の利用可能性】
【0050】
以上のように、本発明によれば高出力に適し、且つ安全性の高い密閉型二次電池を提供することができる。本発明による密閉型二次電池は例えば、大電流充放電を要する電動工具や電気自動車などの駆動用電池にも適用することができる。またノートパソコン、携帯電話、デジタルスチルカメラ電子機器の駆動電源用電池などにも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施形態である円筒型リチウムイオン電池の概略縦断面図
【図2】本発明の一実施形態における電流遮断動作後の密閉型二次電池における封口板の断面図
【図3】本発明の一実施形態における金属製防爆弁体動作後の密閉型二次電池における封口板の断面図
【図4】本発明の密閉型二次電池における封口板の断面図
【図5】本発明の一実施形態における金属製薄肉弁体の斜視図
【図6】本発明の一実施形態における金属製防爆弁体の斜視図
【図7】本発明の密閉型二次電池における封口板の断面図
【図8】本発明の密閉型二次電池における封口板の断面図
【図9】本発明の一実施形態におけるスペーサの斜視図
【図10】本発明の密閉型二次電池における過充電試験結果を示すグラフ
【符号の説明】
【0052】
1 正極板
2 負極板
3 セパレータ
4 極板群
5 正極リード集電体
6 負極リード集電体
7 金属製有底ケース
8 封口板
9 金属製フィルタ
10 金属製薄肉弁体
10a 円形薄肉部
10b 屈曲部
10c 反転高さ
11 樹脂製インナーガスケット
12 金属製防爆弁体
12a C形薄肉部
12b 屈曲部
12c 反転高さ
13 金属製キャップ
14 スペーサ
15 樹脂製アウターガスケット
S 溶接部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極板と負極板とセパレータとを介して捲回した電極群と電解液とを金属製有底ケースに収容し、封口板を前記金属製有底ケースに装着して前記金属製有底ケースの周囲をかしめて封口した密閉型二次電池であって、前記封口板は金属製薄肉弁体と金属製防爆弁体とがガスケットを挟んで接合され、前記金属製薄肉弁体には上方に、前記金属製防爆弁体には下方に突出した屈曲部を備えた構造を有し、かつ前記金属製薄肉弁体の上部には前記金属製薄肉弁体の上方に突出した屈曲部よりも大きく外径よりも小さい開口部を備えたスペーサ、及び前記金属製防爆弁体の上部には前記金属製防爆弁体の下方に突出した屈曲部よりも大きく外径よりも小さい開口部を備えたスペーサと金属製キャップ、または金属製キャップを配置したことを特徴とする密閉型二次電池。
【請求項2】
前記スペーサは前記金属製防爆弁体の上部に配置し、前記金属製防爆弁体に接する最下面の開口部面積が最大となるように開口部面積の異なる数種類の板状部材を積み重ねた構成にしたことを特徴とする請求項1記載の密閉型二次電池。
【請求項3】
前記スペーサは前記金属製防爆弁体の上部に配置し、上面の開口部面積が下面の開口部面積よりも小さくなるように構成したことを特徴とする請求項1記載の密閉型二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−18962(P2007−18962A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−201505(P2005−201505)
【出願日】平成17年7月11日(2005.7.11)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】