説明

対象物追跡装置及びプログラム

【課題】対象物が路面に接する接地位置が撮影範囲から外れたり、遮られたりしている場合であっても、自車両の直近まで対象物を追跡して、精度よく対象物の路面上の位置を推定する。
【解決手段】対象物検出部42で、過去の撮像画像から求められた対象物の路面上の位置、及び車両運動情報に基づいて、現在の対象物の路面上での位置を予測して、対応する現在の撮像画像上の位置に検出枠を設定することで対象物を検出し、第1の位置推定部48で、検出枠範囲判定部44で検出枠の下側領域が撮影範囲内であると判定された場合に、検出枠内の画像の足元位置に基づいて、対象物の現在位置を推定し、第2の位置推定部50で、検出サイズ判定部46で検出枠のサイズが予め定めた大きさ以上であると判定された場合に、過去の撮像画像における対象物に対する現在の撮像画像における対象物の拡大率に基づいて、対象物の路面上の現在位置を推定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物追跡装置及びプログラムに係り、特に、自車両周辺の対象物を撮像した撮像画像に基づいて、対象物を追跡する対象物追跡装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自車両と歩行者等の対象物との衝突を回避または緩和するために作動する衝突安全システムにおいては、自車両に対する対象物の衝突位置や衝突時の姿勢等の情報が要求されるため、撮像装置で撮像された画像から対象物を検出して追跡することが行われている。
【0003】
例えば、追跡対象の物体が道路面に接する空間点の画像座標内の投影を表す画素を抽出し、道路面内の対応する空間点の運動を、道路面内の空間点の位置と道路面内の関係速度とを成分とする少なくとも4次元の状態ベクトルを使用する状態推定器によって追跡する物体追跡の方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
また、歩行者を追跡中、その歩行者が見えなくなったとき、手前に障害物があればその後ろに歩行者が隠れたものと判断し、手前に障害物が無い場合には転倒などの事態が発生したものと判断し、さらに、障害物に隠れたり、転倒したりした歩行者についてそれぞれの時系列的な位置情報に基づいて、その後の位置を推定する衝突危険度判定装置が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−89365号公報
【特許文献2】特開2008−21269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、一般的に撮像装置は車室内などの路面から所定高さの位置に取付けられることが多いため、上記の特許文献1に記載の技術では、自車両の直近に存在する対象物の接地位置(例えば、歩行者の足元位置)が、撮影範囲から外れたり、ボンネット等の自車両の一部により遮られたりした場合には、衝突直前まで対象物を追跡することができない、という問題がある。
【0007】
また、上記の特許文献2に記載の技術では、対象物の時系列的な位置情報に基づく予測位置では、高い精度で対象物を追跡することができない、という問題がある。
【0008】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、対象物が路面に接する接地位置が撮影範囲から外れたり、遮られたりしている場合であっても、自車両の直近まで対象物を追跡して、精度よく対象物の路面上の現在位置を推定することができる対象物追跡装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、 路面から所定高さの位置に取付けられて、自車両周辺の対象物を撮像して該対象物を含む画像を取得する撮像手段と、前記自車両の速度を含む車両運動に関する物理量を検出して、車両運動情報を出力する車両運動検出手段と、過去の画像から求めた前記対象物の路面上の位置、及び前記車両運動情報に基づいて、前記対象物の路面上での現在位置を予測し、予測した前記路面上での現在位置に対応する現在の画像上の位置から前記対象物を検出する対象物検出手段と、前記対象物検出手段で検出された前記対象物が路面に接する接地位置が撮影範囲内に存在する場合に、画像上における前記接地位置、及び前記撮像手段の前記自車両への取付位置に基づいて、前記対象物の路面上の現在位置を推定する第1の位置推定手段と、前記過去の画像から求めた前記対象物の路面上の位置、及び前記現在の画像上の対象物の大きさの前記過去の画像上の対象物の大きさに対する拡大率に基づいて、前記対象物の路面上の現在位置を推定する第2の位置推定手段と、前記対象物検出手段で予測された現在位置、前記第1の位置推定手段で推定された現在位置、及び前記第2の位置推定手段で推定された現在位置を統合する統合手段と、を含んで構成されている。
【0010】
また、本発明の対象物追跡プログラムは、コンピュータを、路面から所定高さの位置に取付けられて、自車両周辺の対象物を撮像する撮像手段で取得された該対象物を含む画像、及び前記自車両の速度を含む車両運動に関する物理量を検出して、車両運動情報を出力する車両運動検出手段から出力された車両運動情報を取得する取得手段、過去の画像から求めた前記対象物の路面上の位置、及び前記車両運動情報に基づいて、前記対象物の路面上での現在位置を予測し、予測した前記路面上での現在位置に対応する現在の画像上の位置から前記対象物を検出する対象物検出手段、前記対象物検出手段で検出された前記対象物が路面に接する接地位置が撮影範囲内に存在する場合に、画像上における前記接地位置、及び前記撮像手段の前記自車両への取付位置に基づいて、前記対象物の路面上の現在位置を推定する第1の位置推定手段、前記過去の画像から求めた前記対象物の路面上の位置、及び前記現在の画像上の対象物の大きさの前記過去の画像上の対象物の大きさに対する拡大率に基づいて、前記対象物の路面上の現在位置を推定する第2の位置推定手段、及び前記対象物検出手段で予測された現在位置、前記第1の位置推定手段で推定された現在位置、及び前記第2の位置推定手段で推定された現在位置を統合する統合手段として機能させるためのプログラムである。
【0011】
本発明の対象物追跡装置及びプログラムによれば、路面から所定高さの位置に取付けられた撮像手段が、自車両周辺の対象物を撮像して対象物を含む画像を取得する。また、車両運動検出手段が、自車両の速度を含む車両運動に関する物理量を検出して、車両運動情報を出力する。そして、対象物検出手段が、過去の画像から求めた対象物の路面上の位置、及び車両運動情報に基づいて、対象物の路面上での現在位置を予測し、予測した路面上での現在位置に対応する現在の画像上の位置から対象物を検出する。
【0012】
そして、第1の位置推定手段が、対象物検出手段で検出された対象物が路面に接する接地位置が撮影範囲内に存在する場合に、画像上における接地位置、及び撮像手段の自車両への取付位置に基づいて、対象物の路面上の現在位置を推定し、第2の位置推定手段が、過去の画像から求めた対象物の路面上の位置、及び現在の画像上の対象物の大きさの過去の画像上の対象物の大きさに対する拡大率に基づいて、対象物の路面上の現在位置を推定し、統合手段が、対象物検出手段で予測された現在位置、第1の位置推定手段で推定された現在位置、及び第2の位置推定手段で推定された現在位置を統合する。
【0013】
このように、接地位置が撮影範囲内に存在する場合には、接地位置に基づいて対象物の現在位置を推定し、接地位置が撮影範囲内に存在しない場合でも、画像上での対象物の拡大率に基づいて対象物の現在位置を推定するため、対象物が路面に接する接地位置が撮影範囲から外れたり、遮られたりしている場合であっても、自車両の直近まで対象物を追跡して、精度よく対象物の位置を推定することができる。
【0014】
また、前記拡大率を、前記過去の画像から抽出された特徴点の特徴点間の距離と、前記現在の画像から抽出され、かつ前記過去の画像から抽出された特徴点と対応する特徴点の特徴点間の距離との比率、または、前記過去の画像から抽出された複数の特徴点により形成される多角形の面積と、前記現在の画像から抽出され、かつ前記過去の画像から抽出された特徴点と対応する複数の特徴点により形成される多角形の面積との比率とすることができる。このように、特徴点を用いることにより、正確に拡大率を求めることができる。
【0015】
また、前記第2の位置推定手段は、前記車両運動情報を用いて、前記過去の画像から抽出された特徴点と前記現在の画像から抽出された特徴点との対応付けを行うようにすることができる。これにより、特徴点の対応付けの精度を向上させることができる。
【0016】
また、前記第2の位置推定手段は、前記現在の画像上での前記対象物のサイズが予め定めた大きさよりも小さい場合には、前記対象物の位置を推定しないようにすることができる。画像上での対象物のサイズが小さい場合には、拡大率の算出に誤差が生じやすく、また特徴点を抽出する場合でも、有効な特徴点の抽出が困難となるため、対象物のサイズが予め定めた大きさよりも小さい場合には、拡大率に基づく対象物の現在位置の推定は行わないようにするものである。
【0017】
また、前記統合手段は、前記第1の位置推定手段による接地位置の検出精度を示す第1の信頼度、及び前記第2の位置推定手段による前記拡大率の算出精度を示す第2の信頼度による重み付けを行って、前記予測された現在位置、前記第1の位置推定手段で推定された現在位置、及び前記第2の位置推定手段で推定された現在位置を統合するようにすることができる。これにより、精度の高い統合結果を得ることができる。
【0018】
また、前記統合手段の統合結果を、前記対象物と前記自車両との衝突を回避または緩和するための車両制御を行う車両制御システムへ出力する出力手段を更に含み、前記対象物検出手段は、前記車両制御システムによる車両制御が行われているときに前記過去の画像から抽出された対象物候補のうち、前記車両制御システムでの追跡対象となると判定された対象物候補のみを対象物として検出するようにすることができる。このように、車両制御システムでの追跡対象となる対象物のみを追跡することにより、処理時間を早めて、制御の応答性を向上させることができる。
【0019】
また、前記車両運動情報、及び前記統合手段の統合結果に基づいて、前記自車両の走行軌跡と前記対象物との位置関係を示す局所地図を生成する局所地図生成手段を更に含んで構成することができる。
【0020】
なお、本発明のプログラムを記憶する記憶媒体は、特に限定されず、ハードディスクであってもよいし、ROMであってもよい。また、CD−ROMやDVDディスク、光磁気ディスクやICカードであってもよい。更にまた、該プログラムを、ネットワークに接続されたサーバ等からダウンロードするようにしてもよい。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明の対象物追跡装置及びプログラムによれば、接地位置が撮影範囲内に存在する場合には、接地位置に基づいて対象物の現在位置を推定し、接地位置が撮影範囲内に存在しない場合でも、画像上での対象物の拡大率に基づいて対象物の現在位置を推定するため、対象物が路面に接する接地位置が撮影範囲から外れたり、遮られたりしている場合であっても、自車両の直近まで対象物を追跡して、精度よく対象物の路面上の現在位置を推定することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施の形態の対象物追跡装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】足元位置に基づく対象物までの距離の算出を説明するための図である。
【図3】足元位置が撮影範囲に含まれていない場合の例として、(A)画角内に足元位置が含まれていない場合、及び(B)足元位置が遮られている場合を示す図である。
【図4】足元と路面との境界エッジを説明するための図である。
【図5】特徴点間の距離の拡大率を説明するための図である。
【図6】拡大率に基づく対象物までの距離の算出を説明するための図である。
【図7】検出枠と現在位置の推定方法との関係を示す表である。
【図8】本実施の形態の対象物追跡装置における対象物追跡処理ルーチンを示すフローチャートである。
【図9】本実施の形態の対象物追跡装置における通常時の処理ルーチンを示すフローチャートである。
【図10】本実施の形態の対象物追跡装置におけるシステム作動時の処理ルーチンを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、本実施の形態では、自車両と歩行者との衝突時の衝撃を緩和するために歩行者エアバックのような緩和材を衝突時に作動させる衝突緩和システム(以下、単にシステムともいう)での追跡対象となる歩行者を対象物として追跡する対象物追跡装置に本発明を適用した場合について説明する。
【0024】
図1に示すように、本実施の形態に係る対象物追跡装置10は、路面から所定高さの位置で車両(図示省略)に搭載され、かつ、自車両の周辺の対象物を連続して撮像するCCDカメラ等からなる撮像装置12と、自車両の運動を検出する各種センサからなる車両運動検出部14と、撮像された撮像画像、取得された車両運動情報に基づいて、対象物である歩行者を追跡する処理を実行するコンピュータ20とを備えている。
【0025】
撮像装置12は、自車両の周辺領域を撮像し、画像信号を生成する撮像部(図示省略)と、撮像部で生成されたアナログ信号である画像信号をデジタル信号に変換するA/D変換部(図示省略)と、A/D変換された画像信号を一時的に格納するための画像メモリ(図示省略)とを備えている。なお、撮像装置12は、台数や画角については特に限定されるものではなく、任意の構成としてよい。また、撮像装置12によって出力される画像は、濃淡画像及びカラー画像の何れであってもよい。
【0026】
車両運動検出部14は、ジャイロセンサや車速計などの各種センサから構成され、各種センサの出力値により、自車両の速度、ヨーレート、ピッチ角、及び操舵角等の自車両の車両運動情報を検出する。また、介入制動や操舵支援等の車両運動制御が行われている場合には、その車両制御量を取得するようにしてもよい。
【0027】
コンピュータ20は、対象物追跡装置10全体の制御を司るCPU、後述する対象物追跡プログラム等各種プログラムを記憶した記憶媒体としてのROM、ワークエリアとしてデータを一時格納するRAM、及びこれらを接続するバスを含んで構成されている。このような構成において、各構成要素の機能を実現するためのプログラムを記憶媒体であるROMに記憶しておき、これをCPUが実行することによって、各機能が実現されるようにする。
【0028】
このコンピュータ20をハードウエアとソフトウエアとに基づいて定まる機能実現手段毎に分割した機能ブロックで説明すると、図1に示すように、コンピュータ20は、衝突緩和システムが作動中か否かを判定するシステム作動判定部22と、システムが作動中ではない場合に、システムでの追跡対象となる歩行者の判定処理を実行する通常時処理部30と、システム作動時に追跡対象の歩行者の追跡処理を実行するシステム作動時処理部40と、を含んだ構成で表すことができる。
【0029】
通常時処理部30は、撮像装置12で撮像された撮像画像から、歩行者らしい形状の領域を対象物候補として抽出する対象物候補抽出部32と、対象物候補を様々な姿勢の歩行者画像から構築した学習モデルと照合して評価値を算出する評価値算出部34と、対象物候補が衝突緩和システムでの追跡対象であるか否かを判定すると共に、システムでの追跡対象であると判定された場合には、その接地位置に基づいて対象物の位置を算出する対象物判定位置算出部36と、を含んだ構成で表すことができる。
【0030】
対象物候補抽出部32は、撮像画像全体を予め定めた複数種類のサイズの探索ウインドウで各々走査し、探索ウインドウ内の画像が歩行者の形状か否かをパターンマッチング等の処理により判定して、対象物候補を抽出する。なお、画像全体を走査するのではなく、車両運動情報として得られる撮像装置12の姿勢角等に基づいて、歩行者が存在する可能性が高い範囲を探索範囲として設定した上で、設定された範囲から対象物候補を抽出するようにしてもよい。
【0031】
評価値算出部34は、予め構築された学習モデルを用いて、対象物候補の歩行者らしさを示す評価値を算出する。例えば、SVM(Support Vector Machine)等の公知の手法を用いることができる。
【0032】
対象物判定位置算出部36は、対象物候補抽出部32で抽出された対象物候補を追跡し、評価値算出部34で算出された評価値の時系列変化を加味して、システムでの追跡対象か否かを判定する。例えば、システムでの追跡対象となる歩行者の画像の評価値の時系列変化のパターンを予め記憶しておき、このパターンと、対象物候補の評価値の時系列変化のパターンとを比較することで、対象物候補がシステムでの追跡対象となる歩行者か否かを判定する。そして、システムでの追跡対象となる歩行者(対象物)であると判定された場合には、足元が路面に接している接地位置(足元位置)に基づいて、対象物の路面上での位置を算出する。
【0033】
具体的には、対象物候補の領域を示す探索ウインドウ内の下側領域に対してパターンマッチングを行って足元位置を検知する。そして、図2に示すように、自車両から歩行者までの路面が局所的に平面であると仮定すると、自車両から歩行者までの距離Rについて、(1)式の関係式が成り立つ。
【0034】
【数1】

【0035】
ただし、Hcは、車両に取り付けられた撮像装置12の路面からの高さ、θは、撮像装置12の俯角(撮像装置12の光軸と水平面のなす角度)、yは、撮像画像の横方向をx軸、縦方向をy軸とした場合の撮像画像上での歩行者の足元位置のy座標、ycenterは、撮像画像の中心のy座標、dは、y方向の画素間距離、及びfは、撮像装置12の焦点距離である。ここで、撮像装置12は車両に対して固定されているため、撮像装置12の俯角θ及び高さHcは既知となる。従って、撮像画像中で歩行者の足元位置を検知すれば歩行者までの距離Rが(1)式より求められる。同様に画像中の歩行者の足元位置のx座標に基づいて、歩行者の方位が求められ、距離Rと合わせて歩行者の位置を算出できる。
【0036】
なお、上記では俯角θを固定で既知とした場合について説明したが、車両は道路の凹凸や加減速により上下方向にピッチ変動するため、俯角θを固定値として歩行者の位置を推定したのでは、大きな誤差が生じる場合がある。そこで、車両のピッチ変動に対応するため、撮像された画像から道路の白線やガードレール、建物の水平な稜線などを検出して、これらに基づいて俯角θを推定するようにしてもよい。
【0037】
システム作動時処理部40は、現在の対象物の路面上での位置を予測して、対応する現在の撮像画像上の位置に検出枠を設定することで対象物を検出する対象物検出部42と、検出枠の下側領域が撮影範囲内か否かを判定する検出枠範囲判定部44と、検出枠のサイズが予め定めた大きさ以上か否かを判定する検出枠サイズ判定部46と、検出枠範囲判定部44で検出枠の下側領域が撮影範囲内であると判定された場合に、検出枠内の画像の足元位置に基づいて、対象物の現在位置を推定する第1の位置推定部48と、検出サイズ判定部46で検出枠のサイズが予め定めた大きさ以上であると判定された場合に、過去の撮像画像の対象物の大きさに対する現在の撮像画像の対象物の大きさの拡大率に基づいて、対象物の路面上の現在位置を推定する第2の位置推定部50と、対象物検出部42で予測された対象物の現在位置、第1の位置推定部48で推定された対象物の現在位置、及び第2の位置推定部50で推定された対象物の現在位置を統合して最終的な対象物の現在位置を示す統合結果を出力する結果統合部52と、統合結果及び車両運動情報に基づいて、自車両の走行軌跡と対象物との位置関係を示す局所地図を生成する局所地図生成部54と、を含んだ構成で表すことができる。
【0038】
対象物検出部42は、現在の撮像画像の1フレーム前の撮像画像から求めた対象物の路面上の位置、及び車両運動情報を取得し、フレーム間の車両の移動量を算出して、対象物の路面上での現在位置を予測する。なお、ここでは、過去の撮像画像として1フレーム前の撮像画像を用いているが、フレーム間隔が特定されれば、これに限定されるものではない。また、車両運動情報に加えて、それまでの追跡情報や車両制御量を用いてもよい。そして、予測された対象物の路面上の現在位置に対応する現在の撮像画像上の位置に、対象物を囲う検出枠を設定する。検出枠のサイズは、前の撮像画像の検出枠または探索ウインドウのサイズ、及びフレーム間の車両の移動量に基づいて求めたり、予測された対象物の路面上の現在位置に対応する現在の撮像画像上の位置の周辺領域でパターンマッチングを行って、歩行者の形状を識別し、識別された歩行者の形状を囲うようなサイズにしたりする。また、予測された対象物の路面上の現在位置に対応する現在の撮像画像上の位置の周辺領域で、通常時処理部30の評価値算出部34と同様の処理により、現在の撮像画像における歩行者の存在を検証すると共に、予測された対象物の路面上での現在位置を修正するようにしてもよい。
【0039】
検出枠範囲判定部44は、検出枠の下側領域、すなわち歩行者の足元位置が撮影範内か否かを判定する。検出枠の下側領域は、例えば、検出枠の下から1/3の領域のように定めることができる。図3(A)に示すように、撮像装置12の画角内に足元位置が含まれていない場合や、同図(B)に示すように、ボンネット等の自車両の一部により足元位置が遮られている場合は、足元位置が撮影範囲に含まれていないと判定される。なお、撮像装置12の取付位置により、撮像画像上のどの位置にボンネット等が映り込むかということは、事前に把握することができるため、その情報を予め記憶しておくとよい。
【0040】
検出枠サイズ判定部46は、検出枠のサイズが予め定めた大きさより大きいか否かを判定する。後述する第2の位置推定部50で検出枠内の画像から特徴点を抽出するが、検出枠が小さい場合には、有効な特徴点を抽出することができないため、検出枠のサイズが予め定めた大きさより小さい場合には、第2の位置推定部50による位置推定処理は行わない。なお、基準となる予め定めた大きさは、撮像装置12の画素数、追跡対象物のサイズ等に基づいて定めておく。
【0041】
第1の位置推定部48は、歩行者の足元位置が撮影範囲にある場合に、通常時処理部30の対象物判定位置算出部36と同様の処理により、足元位置を用いて対象物の路面上の現在位置を推定する。また、足元位置を検知する際に、歩行者の服装や背景のテクスチャ(色や模様)によって、足元位置の検知の精度は変動する。例えば、図4(A)に示すように、白線上に黒い靴で接地している場合には、足元と路面との境界エッジは明確であり、精度よく足元位置を検知することができる。一方、同図(B)に示すように、アスファルト上に黒系の色の靴で接地している場合や、同図(C)に示すように、白線上に白い靴で接地している場合には、足元と路面との境界エッジが明確でなく、正確な足元位置の特定が困難なため、足元位置の検知精度が低下する。
【0042】
そこで、足元位置の検知精度に対する第1の信頼度wを算出する。第1の信頼度の指標としては、例えば、足元位置のエッジ強度L、足元位置のエッジ強度の分散値(エッジの太さ)σ、及び予測位置からのずれ量Δrを用いることができる。例えば、下記(2)式のように、エッジ強度Lが強いほど、エッジ強度の分散値σLが小さいほど、予測位置からのずれ量Δrが少ないほど値が大きくなる信頼度wを実験的に設定する。
【0043】
【数2】

【0044】
また、それぞれの指標に対する閾値を設定して、それぞれの指標と閾値との比較から予め定めた信頼度を選択するようにしてもよい。
【0045】
第2の位置推定部50は、現在の撮像画像の検出枠内、及び1フレーム前の撮像画像の検出枠内または探索ウインドウ内の画像から特徴点を抽出する。特徴点としては、例えば、エッジ点や、複数のエッジが交わるコーナー点を利用したり、色情報が取得できる場合であれば、色情報の変化点を利用したりすることができる。抽出された特徴点をフレーム間で対応付け、1フレーム前の撮像画像から抽出された特徴点の任意の特徴点間の距離と、その特徴点に対応する現在の撮像画像から抽出された特徴点の特徴点間の距離との比率に基づいて、対象物の路面上の現在位置を推定する。
【0046】
具体的には、図5(A)に示すように、1フレーム前の撮像画像から抽出された複数の特徴点から特徴点P1及び特徴点P2を選択して、特徴点P1と特徴点P2との間の距離Lを求める。また、同図(B)に示すように、現在の撮像画像から抽出された複数の特徴点から、1フレーム前の撮像画像の特徴点P1及び特徴点P2に対応する特徴点P1’及び特徴点P2’を選択して、特徴点P1’と特徴点P2’との間の距離Lを求める。そして、図6に示すように、L及びLに対応する実空間上の距離をSとすると、下記(3)式の関係が成立し、(3)式を整理して、下記(4)式の関係が導出される。
【0047】
【数3】

【0048】
ただし、zは、1フレーム前の撮像画像から推定された対象物までの距離、zは、現在の撮像画像から推定すべき対象物までの距離、及びfは、撮像装置12の焦点距離である。すなわち、1フレーム前の撮像画像から推定された対象物までの距離zに、1フレーム前の撮像画像から抽出された特徴点の特徴点間の距離に対する現在の画像から抽出された特徴点の特徴点間の距離の拡大率を乗算することにより、現在の対象物までの距離zを推定することができる。そして、検出枠内の任意の位置のx座標に基づいて、対象物の方位を推定し、推定された距離zと合わせて、対象物の路面上の推定位置とする。
【0049】
また、本実施の形態のように、対象物が自車両に比べて移動速度の遅い歩行者のような場合には、フレーム間における相対距離の変化分ΔRは、自車両の移動量と考えることができる。従って、フレーム間の自車両の移動量を取得できれば、下記(5)式に示すように、1フレーム前の撮像画像から推定された対象物までの距離zを用いることなく、現在の対象物までの距離zを推定することができる。
【0050】
【数4】

【0051】
なお、上記では、任意の特徴点2点の距離を用いる場合について説明したが、複数の特徴点の組合せから計算した距離の比を平均化したり、3点以上の特徴点で構成される多角形の面積比に基づいて拡大率を計算したりしてもよい。また、複数の特徴点の組合せのうち他の結果との差が大きいものを除いたり、検出枠内の中心に近いほど大きい重みを与えて重み付き平均を計算したりしてもよい。
【0052】
また、第1の位置推定部48で第1の信頼度wを算出したのと同様に、第2の位置推定部50でも、拡大率の算出精度に対する第2の信頼度wを算出する。第2の信頼度wの指標としては、例えば、特徴点の組合せを変えた場合の拡大率の分散値σ、特徴点間の距離の平均値μ、及び予測位置からのずれ量Δrを用いることができる。例えば、下記(6)式のように、拡大率の分散値σが小さいほど、特徴点間の距離の平均値μが大きいほど、予測位置からのずれ量Δrが少ないほど値が大きくなる信頼度wを実験的に設定する。
【0053】
【数5】

【0054】
また、それぞれの指標に対する閾値を設定して、それぞれの指標と閾値との比較から予め定めた信頼度を選択するようにしてもよい。
【0055】
結果統合部52は、対象物検出部42で予測された対象物の現在位置、第1の位置推定部48で推定された対象物の現在位置、及び第2の位置推定部50で推定された対象物の現在位置を統合して、最終的な対象物の路面上の現在位置を推定する。図7に示すように、検出枠の下側領域が撮影範囲内か否か、及び検出枠のサイズが予め定めた大きさより大きいか否かにより、得られる推定位置が下記(i)〜(iv)のように異なる。
【0056】
(i)検出枠の下側が撮影範囲内で、サイズが予め定めた大きさより大きい場合
・対象物検出部42により予測された現在位置
・第1の位置推定部48により推定された足元位置に基づく推定位置
・第2の位置推定部50により推定された拡大率に基づく推定位置
(ii)検出枠の下側が撮影範囲内で、サイズが予め定めた大きさより小さい場合
・対象物検出部42により予測された現在位置
・第1の位置推定部48により推定された足元位置に基づく推定位置
(iii)検出枠の下側が撮影範囲外で、サイズが予め定めた大きさより大きい場合
・対象物検出部42により予測された現在位置
・第2の位置推定部50により推定された拡大率に基づく推定位置
(iv)検出枠の下側が撮影範囲外で、サイズが予め定めた大きさより小さい場合
・対象物検出部42により予測された現在位置
そこで、(i)〜(iv)のそれぞれの場合に応じて、第1の信頼度w、及び第2の信頼度wを用いて推定位置を統合する。
【0057】
(i)の場合は、第1の位置推定部48による足元位置に基づく推定位置Rと、第2の位置推定部50による拡大率に基づく推定位置Rとを、第1の信頼度w、及び第2の信頼度wを用いて、下記(7)式のように統合する。
【0058】
【数6】

【0059】
また、対象物検出部42による予測位置に対する重みを設定して、(7)式に予測位置の項を追加してもよい。また、各信頼度を予め定めた閾値と比較して、各信頼度が予め定めた閾値より大きい場合に、対応する推定位置を利用するようにしてもよい。
【0060】
(ii)の場合は、対象物検出部42による予測位置Rと、第1の位置推定部48による足元位置に基づく推定位置Rとを、第1の信頼度wを用いて、下記(8)式のように統合する。
【0061】
R=R+R(1−w) (8)
【0062】
また、第1の信頼度wに応じて、下記(9)式のように閾値処理してもよい。
【0063】
【数7】

【0064】
(iii)の場合は、第1の位置推定部48による足元位置に基づく推定位置Rを、第2の位置推定部50による特徴点間の距離の拡大率に基づく推定位置Rに置き換えて、(ii)の場合と同様に統合する。
【0065】
(iv)の場合は、対象物検出部42による予測位置Rをそのまま最終的な対象物の推定位置とする。
【0066】
次に、本実施の形態の対象物追跡装置10の作用について説明する。撮像装置12によって、自車両前方の連続撮像が開始されると、コンピュータ20において、図8に示す対象物追跡処理ルーチンが実行される。
【0067】
ステップ100で、撮像装置12で撮像された撮像画像を取得する。また、撮像画像が撮像されたタイミングに同期して、車両運動検出部14の各種センサによって検出された車両運動情報を取得する。
【0068】
次に、ステップ102で、現在、衝突緩和システムが作動中か否かを判定する。システム作動中の場合には、ステップ104へ移行して、後述するシステム作動時の処理を実行する。一方、システム作動中ではない場合には、ステップ106へ移行して、後述する通常時の処理を実行する。
【0069】
ここで、図9を参照して、対象物追跡処理(図8)のステップ106で実行される通常時の処理ルーチンについて説明する。
【0070】
ステップ120で、取得された撮像画像に対して、予め定めたサイズの探索ウインドウで走査し、探索ウインドウ内の画像が歩行者の形状か否かをパターンマッチング等により判定し、マッチングした画像を対象物候補として抽出する。
【0071】
次に、ステップ122で、例えば、SVM等の手法により、予め構築された学習モデルを用いて、対象物候補の歩行者らしさを示す評価値を算出する。
【0072】
次に、ステップ124で、上記ステップ120で抽出された対象物候補と、過去に抽出された対象物候補とを対応付けることにより対象物候補を追跡し、上記ステップ122で算出された評価値の時系列変化を加味して、対象物候補がシステムでの追跡対象か否かを判定する。システムでの追跡対象であると判定された場合には、ステップ126へ移行して、対象物である歩行者の足元位置に基づいて、対象物の路面上での現在位置を算出して、リターンする。一方、システムでの追跡対象でないと判定された場合には、そのままリターンする。
【0073】
次に、図10を参照して、対象物追跡処理(図8)のステップ104で実行されるシステム作動時の処理ルーチンについて説明する。
【0074】
ステップ140で、1フレーム前の撮像画像から求めた対象物の路面上の位置を取得する。具体的には、本ステップが本ルーチンにおける1回目の処理の場合には、通常時の処理(図9)のステップ126で算出された位置を取得し、2回目移行の処理の場合には、後述するステップ156で統合された推定位置を取得する。
【0075】
次に、ステップ142で、対象物追跡処理(図8)のステップ100で取得した車両運動情報に基づいて、フレーム間の車両の移動量を算出して、取得した前回位置、及び車両の移動量に基づいて、対象物の路面上での現在位置を予測する。そして、予測された現在位置に対応する現在の撮像画像上での位置に、対象物を囲う検出枠を設定する。
【0076】
次に、ステップ144で、検出枠の下側領域、すなわち歩行者の足元位置が撮影範囲内か否かを判定する。撮影範囲内の場合には、ステップ146へ移行し、撮影範囲外の場合には、ステップ152へ移行する。
【0077】
ステップ146では、検出枠のサイズが予め定めた大きさより大きいか否かを判定する。大きい場合には、ステップ148へ移行し、小さい場合には、ステップ150へ移行する。
【0078】
ステップ148では、上記(i)の場合に該当するため、(1)式に従って足元位置に基づく推定位置Rを推定すると共に、(2)式に従って第1の信頼度wを算出する。また、(4)式または(5)式に従って拡大率に基づく推定位置Rを推定すると共に、(6)式に従って第2の信頼度wを算出する。
【0079】
ステップ150では、上記(ii)の場合に該当するため、(1)式に従って足元位置に基づく推定位置Rを推定すると共に、(2)式に従って第1の信頼度wを算出する。
【0080】
一方、上記ステップ144で検出枠の下側領域が撮影範囲外であると判定されてステップ152へ移行した場合には、検出枠のサイズが予め定めた大きさより大きいか否かを判定する。大きい場合には、ステップ154へ移行し、小さい場合には、ステップ156へ移行する。
【0081】
ステップ154では、上記(iii)の場合に該当するため、(4)式または(5)式に従って拡大率に基づく推定位置Rを推定すると共に、(6)式に従って第2の信頼度wを算出する。
【0082】
なお、上記ステップ152で否定された場合は、上記(iv)の場合に該当する。
【0083】
次に、ステップ156で、上記ステップ142で予測された現在位置と、上記ステップ148、150、154の各々で推定された推定位置とを統合する。具体的には、上記ステップ148から移行した場合には、足元位置に基づく推定位置Rと、拡大率に基づく推定位置Rとを、第1の信頼度w、及び第2の信頼度wを用いて、(7)式に従って統合する。ステップ150から移行した場合は、上記ステップ142で予測した予測位置Rと、足元位置に基づく推定位置Rとを、第1の信頼度wを用いて、(8)式に従って統合する。ステップ154から移行した場合は、上記ステップ142で予測した予測位置Rと、拡大率に基づく推定位置Rとを、第2の信頼度wを用いて、(8)式のRをRに置き換えた式に従って統合する。上記ステップ152で否定されて移行した場合には、予測位置Rをそのまま最終的な対象物の路面上の位置として推定する。
【0084】
次に、ステップ158で、上記ステップ156での統合結果、及び車両運動情報に基づいて、自車両の走行軌跡と対象物との位置関係を示す局所地図を生成する。
【0085】
走行中に、以上のような対象物追跡処理ルーチンが、撮像装置12で撮像された撮像画像が入力される毎に繰り返し実行されることにより、対象物の追跡が行われ、推定された現在位置に基づいて、衝突緩和システムが作動する。
【0086】
以上説明したように、本実施の形態の対象物追跡装置によれば、接地位置が撮影範囲内に存在する場合には、接地位置に基づいて対象物の路面上の現在位置を推定し、接地位置が撮影範囲内に存在しない場合でも、画像上での対象物の拡大率に基づいて対象物の路面上での現在位置を推定するため、接地位置が撮影範囲から外れたり、遮られたりしている場合であっても、自車両の直近まで対象物を追跡して、精度よく対象物の現在位置を推定することができる。
【0087】
なお、上記の実施の形態では、検出枠のサイズが予め定めた大きさより大きければ、拡大率に基づく現在位置の推定を行う場合について説明したが、足元位置に基づいて対象物の現在位置を推定できる場合には、その推定結果を優先させて、拡大率に基づく現在位置の推定は省略するようにしてもよい。
【0088】
また、上記実施の形態では、衝突緩和システムでの追跡対象となる対象物を追跡する場合について説明したが、介入制動や操舵支援等により車両と対象物との衝突を回避するような衝突回避システムに適用してもよい。また、対象物も歩行者に限らず、他車両や自転車等であってもよい。
【符号の説明】
【0089】
10 対象物追跡装置
12 撮像装置
14 車両運動検出部
20 コンピュータ
22 システム作動判定部
30 通常時処理部
40 システム作動時処理部
42 対象物検出部
44 検出枠範囲判定部
46 検出枠サイズ判定部
48 第1の位置推定部
50 第2の位置推定部
52 結果統合部
54 局所地図生成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面から所定高さの位置に取付けられて、自車両周辺の対象物を撮像して該対象物を含む画像を取得する撮像手段と、
前記自車両の速度を含む車両運動に関する物理量を検出して、車両運動情報を出力する車両運動検出手段と、
過去の画像から求めた前記対象物の路面上の位置、及び前記車両運動情報に基づいて、前記対象物の路面上での現在位置を予測し、予測した前記路面上での現在位置に対応する現在の画像上の位置から前記対象物を検出する対象物検出手段と、
前記対象物検出手段で検出された前記対象物が路面に接する接地位置が撮影範囲内に存在する場合に、画像上における前記接地位置、及び前記撮像手段の前記自車両への取付位置に基づいて、前記対象物の路面上の現在位置を推定する第1の位置推定手段と、
前記過去の画像から求めた前記対象物の路面上の位置、及び前記現在の画像上の対象物の大きさの前記過去の画像上の対象物の大きさに対する拡大率に基づいて、前記対象物の路面上の現在位置を推定する第2の位置推定手段と、
前記対象物検出手段で予測された現在位置、前記第1の位置推定手段で推定された現在位置、及び前記第2の位置推定手段で推定された現在位置を統合する統合手段と、
を含む対象物追跡装置。
【請求項2】
前記拡大率を、前記過去の画像から抽出された特徴点の特徴点間の距離と、前記現在の画像から抽出され、かつ前記過去の画像から抽出された特徴点と対応する特徴点の特徴点間の距離との比率、または、前記過去の画像から抽出された複数の特徴点により形成される多角形の面積と、前記現在の画像から抽出され、かつ前記過去の画像から抽出された特徴点と対応する複数の特徴点により形成される多角形の面積との比率とした請求項1記載の対象物追跡装置。
【請求項3】
前記第2の位置推定手段は、前記車両運動情報を用いて、前記過去の画像から抽出された特徴点と前記現在の画像から抽出された特徴点との対応付けを行う請求項2記載の対象物追跡装置。
【請求項4】
前記第2の位置推定手段は、前記現在の画像上での前記対象物のサイズが予め定めた大きさよりも小さい場合には、前記対象物の位置を推定しない請求項1〜請求項3のいずれか1項記載の対象物追跡装置。
【請求項5】
前記統合手段は、前記第1の位置推定手段による接地位置の検出精度を示す第1の信頼度、及び前記第2の位置推定手段による前記拡大率の算出精度を示す第2の信頼度による重み付けを行って、前記予測された現在位置、前記第1の位置推定手段で推定された現在位置、及び前記第2の位置推定手段で推定された現在位置を統合する請求項1〜請求項4のいずれか1項記載の対象物追跡装置。
【請求項6】
前記統合手段の統合結果を、前記対象物と前記自車両との衝突を回避または緩和するための車両制御を行う車両制御システムへ出力する出力手段を更に含み、
前記対象物検出手段は、前記車両制御システムによる車両制御が行われているときに前記過去の画像から抽出された対象物候補のうち、前記車両制御システムでの追跡対象となると判定された対象物候補のみを対象物として検出する請求項1〜請求項5のいずれか1項記載の対象物追跡装置。
【請求項7】
前記車両運動情報、及び前記統合手段の統合結果に基づいて、前記自車両の走行軌跡と前記対象物との位置関係を示す局所地図を生成する局所地図生成手段を更に含む請求項1〜請求項6のいずれか1項記載の対象物追跡装置。
【請求項8】
コンピュータを、
路面から所定高さの位置に取付けられて、自車両周辺の対象物を撮像する撮像手段で取得された該対象物を含む画像、及び前記自車両の速度を含む車両運動に関する物理量を検出して、車両運動情報を出力する車両運動検出手段から出力された車両運動情報を取得する取得手段、
過去の画像から求めた前記対象物の路面上の位置、及び前記車両運動情報に基づいて、前記対象物の路面上での現在位置を予測し、予測した前記路面上での現在位置に対応する現在の画像上の位置から前記対象物を検出する対象物検出手段、
前記対象物検出手段で検出された前記対象物が路面に接する接地位置が撮影範囲内に存在する場合に、画像上における前記接地位置、及び前記撮像手段の前記自車両への取付位置に基づいて、前記対象物の路面上の現在位置を推定する第1の位置推定手段、
前記過去の画像から求めた前記対象物の路面上の位置、及び前記現在の画像上の対象物の大きさの前記過去の画像上の対象物の大きさに対する拡大率に基づいて、前記対象物の路面上の現在位置を推定する第2の位置推定手段、及び
前記対象物検出手段で予測された現在位置、前記第1の位置推定手段で推定された現在位置、及び前記第2の位置推定手段で推定された現在位置を統合する統合手段
として機能させるための対象物追跡プログラム。
【請求項9】
コンピュータを、請求項1〜請求項7のいずれか1項記載の対象物追跡装置を構成する各手段として機能させるための対象物追跡プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−65338(P2011−65338A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−214402(P2009−214402)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】