説明

射出成形機

【課題】比較的大型なものであっても、インサート成形できるようにする。
【解決手段】C型に形成した保持フレーム2の内側Uに固定金型7と可動金型8を配設する一方でその外側には、タイバー18、タイバー18に進退自在に挿通された移動ダイプレート19、移動ダイプレート19をタイバー18の軸心方向に進退させるトグルリンク機構20、トグルリンク機構20を駆動する型開閉モータ21、可動金型8の装着される金型取付可動プレート14を移動ダイプレート19に一体に連結するプッシュロッド22からなる型締機構15を配設する。内側Uに可動金型8及び固定金型7の配置された保持フレーム2をC型に形成して、その内側Uに対して3方向を開放することができるから、比較的大きな大型部材30であったとしても、開放部を通じてインサート成形の行われる所定位置に設置することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、型閉された金型のキャビティに溶融樹脂を射出充填して成形体を製造する射出成形機に関し、特に比較的大型な部材に一体に構成された金属部などを金型内の所定位置に予め組み付けておき、この金属部などを組み付けた金型内に樹脂を射出充填することでインサート成形を行う射出成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、上方に設けた1つの可動金型に対して、ターンテーブルなどに取り付けた固定金型を型開閉可能な対向位置に移動させ、縦方向に型開閉を行う縦型射出成形機が用いられている。こうした従来の縦型射出成形機においては、固定金型又は可動金型にドア枠などの大型部材の一部を組み付け、この大型部材の一部を組み付けた固定金型と可動金型とを型締することで、大型部材と金型のキャビティに射出充填される樹脂とを一体に成形するインサート成形方法がある。
【0003】
上記技術に関連するものとして、特許文献1には、タイバーに進退自在に下プラテンを挿通し、この下プラテンに取り付けた下金型を上金型に対して型開閉し成形を行う縦型成形機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−321227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1等に開示されている従来の射出成形機においては、下金型を案内する複数のタイバーが、下金型と上金型の近傍でこれらを囲むようにして近傍に設けられていることから、一般的に4本や3本の等間隔で複数のタイバーが配設されているが、これらの内側に有する金型の所定位置へ、比較的大きいサイズであるドア枠などの大型部材の一部を設置するには、大型部材がタイバーに干渉することでタイバーが邪魔となることがあり、インサート成形を行う所定位置に前述したドア枠などの大型部材を配置するには物理的に困難な場合がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、インサート成形される部材が比較的大型なものであっても、その大きさに可及的に影響されることなくインサート成形を行うことが可能な射出成形機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る射出成形機は、
対向して設けられた一対の対向フレームとこれら一対の対向フレームを一体に連結する連結フレームとによりC型に形成した保持フレームを備えた射出成形機であって、
前記C型の保持フレームの内側に固定金型と可動金型とを対向して配置し、
前記対向フレームの一方に固定した前記固定金型に対し前記可動金型を進退させることで型開閉を行う型締機構を前記C型の保持フレームの外側に設けたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る射出成形機は、請求項1記載の射出成形機において、
前記固定金型に対して前記可動金型を型開閉する型締機構に、
前記対向フレームの他方に固定された固定ダイプレートとテールストックとに架設したタイバーと、
該タイバーに進退自在に挿通された移動ダイプレートと、
該移動ダイプレートを前記タイバーの軸心方向に進退させるトグルリンク機構と、
該トグルリンク機構を駆動する駆動源としての駆動手段と、
前記保持フレームの内側で前記可動金型の装着される金型取付可動プレートを前記移動ダイプレートに一体に連結するプッシュロッドと、を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る射出成形機は、請求項2記載の射出成形機において、
前記プッシュロッドの基端部を前記移動ダイプレートに固定する一方で先端部を前記金型取付可動プレートの前記可動金型を装着しない裏面に固定し、
前記可動金型の型開閉方向と同一方向になるようにして前記連結フレームに一体に設けられたガイドレールに、前記プッシュロッドの先端部に固定した金型取付可動プレートの側部を進退自在に嵌合させたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本射出成形機の発明によれば、一対の対向フレームとこれらを連結する連結フレームによりC型に形成した保持フレームの内側に固定金型と可動金型とを配設する一方、その外側には、対向フレームの他方に固定された固定ダイプレートとテールストックとに架設したタイバー、タイバーに進退自在に挿通された移動ダイプレート、移動ダイプレートを前記タイバーの軸心方向に進退させるトグルリンク機構、トグルリンク機構を駆動する駆動源としての駆動手段、及び、可動金型の装着される金型取付可動プレートを前記移動ダイプレートに一体に連結するプッシュロッド等からなる型締機構を配設することで、比較的大型な部材であったとしても、タイバーやこれを構成する型締機構が邪魔になることなく、インサート成形を行う金型の所定位置に設置することが可能となる。すなわち、従来の射出成形機では金型を囲むようにして複数のタイバーが配設されていたことで、インサート成形される大型部材をタイバーの内側に設置することが困難な場合があったが、本発明ではそのような不具合を解消することができる。
【0011】
さらに、連結フレームには可動金型の型開閉方向と同一方向になるようにして連結フレームの内面に沿ってガイドレールが設けられており、このガイドレールに可動金型の装着される金型取付可動プレートが進退自在に嵌合されているので、プッシュロッドの進退に連動して金型取付可動プレートが金型の開閉のために進退されるとき、固定金型に対して可動金型が位置ずれすることがないよう案内することができる。すなわち、従来の射出成形機においては、金型を案内するに際し、可動金型の装着された保持部材が複数のタイバーに案内自在に挿通されており、金型を囲むようにして配置された複数のタイバーによって可動金型が案内されていたわけだが、本発明では、タイバーは、可動金型とは離間した保持フレームの外側に配設していることから、タイバーが邪魔になることなくガイドレールを用いて可動金型を型開閉方向に案内することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一例の型開した状態の縦型射出成形機を示す正面図である。
【図2】同上、型開した状態の縦型射出成形機を示す側面図である。
【図3】同上、型閉した状態の縦型射出成形機を示す正面図である。
【図4】同上、型閉した状態の縦型射出成形機を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図1〜図4により以下に説明する。もちろん、本発明は、その発明の趣旨に反しない範囲で、実施形態において説明した以外の構成のものに対しても容易に適用可能なことは説明を要するまでもない。
【0014】
図1に示すように、射出成形機1にはC型に形成された保持フレーム2を有し、この保持フレーム2の上側には射出ユニット3が、下側には型締ユニット4が配設されている。
【0015】
保持フレーム2は、対向して平行に設けられた一対の対向フレーム5a,5bとこれら一対の対向フレーム5a,5bを一体に連結する連結フレーム6とからなり、前述したようにC型(言い換えればコ字型)に形成され、一対の対向フレーム5a,5bと連結フレーム6により囲まれた内側Uには後述する固定金型7と可動金型8を配置して、これら固定金型7と可動金型8を有する保持フレーム2の内側Uに対して、その前側及び左右側の3方に各種装置を有さないよう開放されている。
【0016】
また、射出ユニット3には、筒型の加熱シリンダ10を備え、その内部に設けた図示しないスクリュー11を回転させ、射出ユニット3の先端に設けた射出ノズル12へ溶融樹脂を送り出すようになっており、加熱シリンダ10内に粒状の樹脂が供給されると、加熱シリンダ10内で加熱され、続いて加熱された溶融樹脂は、スクリュー11の回転により計量された後、スクリュー11が前進されることで型締された金型のキャビティへ射出を行う。
【0017】
型締ユニット4には、一方の対向フレーム5aに金型取付固定プレート13を介して装着した固定金型7に対し、金型取付可動プレート14に装着した可動金型8を前進後退させ型締(型閉じ)及び型開きを行う型締機構15を備えている。本実施形態における型締機構15は、他方の対向フレーム5bに固定された固定ダイプレート16とテールストック17とに架設された複数(4本)のタイバー18、このタイバー18に進退自在に挿通された移動ダイプレート19、この移動ダイプレート19をタイバー18の軸心方向に進退させるトグルリンク機構20、このトグルリンク機構20を駆動する駆動源としての型開閉モータ(駆動手段)21、保持フレーム2の内側Uで可動金型8の装着される金型取付可動プレート14の裏面が移動ダイプレート19に一体に連結されたプッシュロッド22、及び型圧モータ23などから構成され、保持フレーム2の内側Uではない外側の下方に配設されており、型開閉モータ21の回転駆動力を駆動源としてトグルリンク機構20が屈曲作動されると、それに伴い移動ダイプレート19がタイバー18に案内されながら進退され、それに連動して、移動ダイプレート19に一体に固定されたプッシュロッド22が固定ダイプレート16の中心に形成した貫通孔24を介して金型取付可動プレート14を上下に進退することで、可動ダイプレート14の表面に装着された可動金型8を固定金型7に対して上下に進退させ、型開閉が繰り返し行われる。なお、移動ダイプレート19に基端部が固定されると共にその反対側である先端部が金型取付可動プレート14の裏面に固定されたプッシュロッド22の中心に固定されている金型取付可動ダイプレート14は、図2及び図4に示すように、その側部が、可動金型8の型開閉方向(縦方向)と同一方向になるようにして連結フレーム6の側壁面に一体に設けられたガイドレール25に進退自在に嵌合されていることで、可動金型8の開閉に伴い、金型取付可動プレート14に装着された可動金型8が、型開閉方向に進退されるときに振れることがないよう案内できるようになっている。
【0018】
以上のような本実施形態の射出成形機1によれば、一対の対向フレーム5a,5bとこれらを連結する連結フレーム6によりC型に形成した保持フレーム2の内側Uに固定金型7と可動金型8とを対向して配設する一方、その外側下方には、他方の対向フレーム5bに固定された固定ダイプレート16とテールストック17とに架設したタイバー18、タイバー18に進退自在に挿通された移動ダイプレート19、移動ダイプレート19をタイバー18の軸心方向に進退させるトグルリンク機構20、トグルリンク機構20を駆動する駆動源としての駆動手段たる型開閉モータ21、及び、可動金型8の装着される金型取付可動プレート14を移動ダイプレート19に一体に連結するプッシュロッド22等からなる、型締機構15を配設することで、比較的大型なドア枠などの大型部材30にインサート成形する場合であったとしても、タイバー18やこれを構成する型締機構15が邪魔になることなく、金型の所定位置(可動金型8の内側)に前記大型部材30を設置することが可能となる。すなわち、従来の射出成形機では金型を囲むようにして複数のタイバーが配設されていたことで、インサート成形される、大型部材の一部を、タイバー内側の金型の一方に設置するに際し、大型部材がタイバーに干渉してしまうことで設置が物理的に困難な場合があったが、本発明では、保持フレーム2の内側Uに対して3方向に開放部を有し、且つタイバー等を構成する型締機構15が金型を有する保持フレーム2の内側Uではなくその外側に配設したことから、比較的大型な大型部材30を、タイバーが邪魔になることなくインサート成形の行われる金型の所定位置に設定することが可能となる。
【0019】
さらに、連結フレーム6には可動金型8の型開閉方向と同一方向になるようにして連結フレーム6の内側壁面にガイドレール25が設けられており、このガイドレール25に可動金型8の装着される金型取付可動プレート14が進退自在に嵌合されているので、プッシュロッド22の進退に連動して金型取付可動プレート14が金型の開閉のために進退されるとき、固定金型7に対して可動金型8が位置ずれすることがないよう案内することができる。すなわち、従来の射出成形機においては、金型を案内するに際し、可動金型の装着された保持部材が複数のタイバーに案内自在に挿通されており、金型を囲むようにして配置された複数のタイバーによって可動金型が案内されていたわけだが、本発明では、タイバー18は、進退される可動金型8とは離間した保持フレーム2の外側に配設していることから、タイバーが邪魔になることなく可動金型8をガイドレール25を用いて型開閉方向に案内させ型締することが可能となる。
【0020】
さらに、保持フレーム2をC型に形成することでその内側Uに有する金型に対して3方向が開放されているので、可動金型8及び固定金型7の着脱作業やメインテナンス性を容易に行うことが可能となり、また、型開閉を行うための駆動源として、電力で駆動される型開閉モータ21を採用していることから、従来のように型開閉を行うのに油圧で作動するときには、射出成形機の稼動に伴い、油分が滴下したり飛散して周囲が汚れてしまうがそうした問題も解消することができる。
【0021】
さらに、固定金型7は金型取付固定プレート13の中心に、可動金型8は金型取付可動プレート14の中心にそれぞれ装着されており、可動金型8を金型取付可動プレート14を介して進退させるプッシュロッド22は、可動金型8の真裏側の中心に配置したことから、固定金型7に対して可動金型8を型締するに際し、センタープレスで行うことができるので、型締圧力の均等化を図ることができる。
【0022】
以上、本実施形態の一例を詳述したが、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。本実施形態においては、縦方向に金型の型開閉を行う縦型の射出成形機を一例として説明したが、特にそれに限定するものではなく、横方向に金型を型開閉する構造のものであってもよく、その場合は、C型の保持フレームの開放部が、上側及び左右側になるように、図2や図4に示した状態にある保持フレーム2を反時計方向に90度回転させた状態で設置するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0023】
1 射出成形機
2 保持フレーム
5a 一方の対向フレーム
5b 他方の対向フレーム
6 連結フレーム
7 固定金型
8 可動金型
15 型締機構
16 固定ダイプレート
17 テールストック
18 タイバー
19 移動ダイプレート
20 トグルリンク機構
21 型開閉モータ(駆動手段)
22 プッシュロッド
25 ガイドレール
U 内側

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向して設けられた一対の対向フレームとこれら一対の対向フレームを一体に連結する連結フレームとによりC型に形成した保持フレームを備えた射出成形機であって、
前記C型の保持フレームの内側に固定金型と可動金型とを対向して配置し、
前記対向フレームの一方に固定した前記固定金型に対し前記可動金型を進退させることで型開閉を行う型締機構を前記C型の保持フレームの外側に設けたことを特徴とする射出成形機。
【請求項2】
前記固定金型に対して前記可動金型を型開閉する型締機構に、
前記対向フレームの他方に固定された固定ダイプレートとテールストックとに架設したタイバーと、
該タイバーに進退自在に挿通された移動ダイプレートと、
該移動ダイプレートを前記タイバーの軸心方向に進退させるトグルリンク機構と、
該トグルリンク機構を駆動する駆動源としての駆動手段と、
前記保持フレームの内側で前記可動金型の装着される金型取付可動プレートを前記移動ダイプレートに一体に連結するプッシュロッドと、を備えることを特徴とする請求項1記載の射出成形機。
【請求項3】
前記プッシュロッドの基端部を前記移動ダイプレートに固定する一方で先端部を前記金型取付可動プレートの前記可動金型を装着しない裏面に固定し、
前記可動金型の型開閉方向と同一方向になるようにして前記連結フレームに一体に設けられたガイドレールに、前記プッシュロッドの先端部に固定した金型取付可動プレートの側部を進退自在に嵌合させたことを特徴とする請求項2記載の射出成形機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−37089(P2011−37089A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−185442(P2009−185442)
【出願日】平成21年8月10日(2009.8.10)
【出願人】(000222587)東洋機械金属株式会社 (299)
【Fターム(参考)】