導体回路の製造方法、コイルシート及び積層コイル
【課題】導体回路(コイルパターン)全体にわたってめっき厚さのばらつきを抑える技術を提供する。
【解決手段】積層コイルは、樹脂基板に形成されるコイルパターン109全体の電位が同一となるように、コイルパターン109を少なくとも一本の導電性材料を含む短絡線110で接続する短絡線接続工程と、コイルパターン109に電解めっきを施し、めっき層を形成するめっき工程と、コイルパターン109から短絡線110を除去する短絡線除去工程とを有する製造方法で製造される。
【解決手段】積層コイルは、樹脂基板に形成されるコイルパターン109全体の電位が同一となるように、コイルパターン109を少なくとも一本の導電性材料を含む短絡線110で接続する短絡線接続工程と、コイルパターン109に電解めっきを施し、めっき層を形成するめっき工程と、コイルパターン109から短絡線110を除去する短絡線除去工程とを有する製造方法で製造される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばセンサーコイルやモーターコイル等に用いられるプリントコイル等の導体回路の製造方法等に関するものであり、特に、コイル断面に占める導体の割合を示す占積率の高いコイルを形成する導体回路の製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、品質の揃ったプリントコイルを低コストで実現するための技術が多数提案されている。
公報開示の技術として、例えば、特許文献1には、絶縁基板上にプリント配線技術により形成されたコイルパターンを設けると共に、このコイルパターンに電気めっきによる電気めっき層を設け、コイルパターンの導体補強を行うように構成したプリントコイルの技術が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開平07−142254号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コイルの性能は電流と巻き数の積(アンペアターン)で表される。占積率が高いほど、即ち、単位断面積あたりの巻き数が多い程、単位断面積当たりのアンペアターンを高められる。
ところで、例えば平面コイルなどのように、導体長が例えば数メートルから数十メートルと非常に大きい導体回路は、めっき時に電位を印加する際の導体内の電気抵抗が無視できず、導体全体にわたって均一なめっき厚さを実現することが困難であった。その結果、高い占積率を有する積層コイルの形成が難しかった。
【0005】
本発明は、導体全体にわたってめっき厚さのばらつきを抑えた導体回路の製造方法を提供することを目的とする。
また、高い占積率を有するコイルシートおよび積層コイルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明にかかる導体回路の製造方法は、絶縁基板に形成された導体パターンを少なくとも一本の導電性材料を含む短絡線で接続する短絡線接続工程と、導体パターンに電解めっきを施し、めっき層を形成するめっき工程と、導体パターンから前記短絡線を除去する短絡線除去工程とを有する。
【0007】
上記課題を解決するために、本発明にかかる積層コイルは、絶縁樹脂基板に導体回路としてコイルパターンが形成された複数のコイルシートが積層された積層コイルであって、コイルパターン全体の電位が同一となるように導体パターンを短絡線で接続して電解めっきを施した際にコイルパターンの表面に形成される凹部又は凸部が重ならないように複数のコイルシートがずらして積層されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、導体回路の始端から終端にわたって、膜厚と線幅が均一な導体回路を形成することができる導体回路の製造方法を提供できる。また、占積率の高いコイルシート及び積層コイルを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態(実施形態)について詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態にかかる積層コイル1の外観斜視図であり、図2は、図1に示す積層コイル1の構造を説明するための斜視図である。
図1に示すように、積層コイル1は、積層コイル本体2と、積層コイル本体2の表裏面に接続し、コイルに電力を供給する接続コード3a,3bとからなる。
図2に示すように、積層コイル本体2は、後述するコイルシート11a〜11h(以下、説明のために「11」を用いることもある。)と放熱板10a,10bと絶縁シート14とからなる。放熱板10a,10bは、コイルシート11が通電時に発する熱を外部へ放出するため、積層コイル本体2の最も外側に貼り付けられている。また、絶縁シート14はコイルシート11の間、およびコイルシート11と放熱板10a,10bとの間に設けられている。各コイルシート11、絶縁シート14、放熱板10a,10b等が積層された後、カッター等の工具、レーザ等を用いて、図1に示す積層コイル1となる。尚、第1の実施形態では、8枚のコイルシート11a〜11hが積層された円形の積層コイルを例として説明を進めるが、本発明はコイルシートの枚数や形状に特に限定はなく、例えば、4枚でも12枚でも良い。また、形状も円形だけでなく、四角、台形であってもよい。
【0010】
コイルシート11a〜11hは、絶縁樹脂基板102(図5参照)を基材とし、両面に銅等の金属が渦巻状に形成されたコイルパターン21,22を有している(図3参照)。そして、コイルシート11a〜11hは、各コイルシート11に形成されたコイルパターン21,22が同心となるように配置されて積層されている。最も外側のコイルシート11a,11hには、接続コード3a,3bが接続されるための接続端子24,26が設けられている。
放熱板10a,10bは、例えば銅等の金属薄板で構成される。そして、放熱板10a,10bは、積層されたコイルシート11a〜11hを挟んで積層コイル本体2の最も外側に貼り付けられている。放熱板10a,10bは、最外のコイルシート11a,11hに接続された接続コード3a,3bの部分に逃げが形成されている。
【0011】
(コイルシートの構成)
ここで、コイルシート11の構成を説明する。
図3(a)は、図1に示す積層コイル1のコイルシート11のコイルパターン21が形成された面(以下、単に「表面」という場合がある。)を示す平面図である。図3(b)は、コイルシート11のコイルパターン22が形成された面(以下、単に「裏面」という場合がある。)を示す平面図である。
図3に示すように、コイルシート11は、絶縁樹脂基板102(図5参照)の表裏面に、プリント配線技術を使って渦巻状のコイルパターン21,22が形成されている。図3(b)では、裏面側のコイルパターン22を実線にて、表面側のコイルパターン21を破線にて描画している。
【0012】
コイルシート11は、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ナイロン樹脂、テフロン(登録商標)樹脂、ポリエステル樹脂等絶縁性を有する樹脂基板を基材として用いられる。また、できるだけ耐熱性の良好な樹脂基板が好ましく用いられる。コイルシート11の基材は、強度、及び、表裏面に形成されるコイルパターン21,22の巻き数及び導体回路形成後の占積率を考慮して、厚さが0.02mm〜0.1mm程度の樹脂基板が好ましい。具体的には、例えば、ポリイミド樹脂等を基材とする場合、約0.025mm厚が好ましい。
コイルシート11上に形成されるコイルパターン21,22は、例えば高純度の銅薄膜を、後述するエッチング処理等の工程を経て、所定の形状にした導体パターンを有している。具体的には、コイルパターン21は、図3(a)に実線として描かれているように、外周側端部に接続端子24が形成され、第1の実施形態では外周から内周に向かって右周りとなる渦巻き状に形成されている。コイルシート11は、内周側端部に直径が約φ0.3mmの貫通孔が形成され、その貫通孔の内壁にめっきを施すことでスルーホール導体25が形成される。スルーホール導体25により表裏面のコイルパターン21,22が電気的に接続されている。
【0013】
裏面のコイルパターン22は、図3(b)に実線として描画されているように、外周から内周に向かって左周り(内周から外周に向かって右回り)の渦巻状に形成されている。そして、外周側端部に接続端子26が形成されている。
このように、表面側のコイルパターン21と裏面側のコイルパターン22とは、内周側端部に形成されたスルーホール導体25を介して電気的に接続されている。その上、同じ面から見て同じ巻方向の渦状に巻かれている。よって、表裏面のコイルパターン21,22は電気的に直列に接続された一つのコイルとして機能している。尚、第1の実施形態にかかるコイルパターン21,22は、例えば、外径φ140mm内径φ90mmで、線幅約0.33mm、線間0.20mmで約50巻に形成されている(図3などでは巻数などを簡略化して記載している)。コイルパターン21,22の片面当たりの長さは約18.5mであり、両面で全長は約37mである。
【0014】
ここで、コイルシート11の表裏面の接続端子24,26は、コイルシート11の中心点から同じ半径を有する位置に形成されている。コイルシート11の中心とスルーホール導体25とを結ぶ仮想の基準線を設けて考えるとき、表面側及び裏面側の接続端子24,26はそれぞれ、基準線に対して中心角が22.5度となる位置に形成されている。即ち、2つの接続端子24,26は、基準線に対して線対称となる位置に形成されている。
コイルシート11の裏面側の接続端子26は、表面側の接続端子24に対して中心角45度の位置に形成されるので、相対する面の接続端子が対応するように8枚のコイルシート11a〜11hが積層されると(後述)、最外のコイルシート11a,11hに接続された接続コード3a,3bは、積層コイル1を表面から見ると、二次元的には同じ位置に接続される(360度=45度×8枚)。尚、本発明はコイルシートの枚数に特に限定はなく、例えば、4枚や、30枚のコイルシートを積層しても接続コード3a,3bを、二次元的に同じ位置に形成することができる。例えば、4枚の場合、コイルシート11裏面側の接続端子26を、表面側の接続端子24に対して中心角90度の位置に形成することで実現できる(90度×4枚=360度)。また、30枚の場合は、コイルシート11裏面側の接続端子26を、表面側の接続端子24に対して中心角12度の位置に形成することで実現できる(12度×30枚=360度)。
【0015】
(コイルシートの製造方法)
以上の構成を有するコイルシート11の製造方法について以下に説明する。
図4は、コイルシート11の製造時の状態を説明するための図である。
図4に示すように、コイルシート11は、プリント配線技術を使って、絶縁樹脂基板102(図5参照)が表裏面の縦横方向に複数並んだ状態でコイルパターン21,22が形成される。具体的には、後述する製造工程を経て基板50の表裏面にコイルパターン21,22が形成される。そして、コイルシート11のコア51が形成された後、図示しないカッター等の工具、或いは、レーザ等を用いて、コイルシート11のコア51ごとに分離される。以下の説明では簡略のため、特に図示の必要がない場合を除き、1つのコイルパターン21に着目して説明する。
【0016】
図5及び図6は、図3に示すコイルシート11の製造工程を示す説明図である。
図5(a)に示すように、出発材料は、ポリイミド樹脂等の絶縁樹脂基板102の両面に金属膜103a,103bが形成された積層板101である。金属膜は、銅、ニッケル、コバルトなどからなる金属膜や銅箔、ニッケル箔などを例示することができる。本実施形態においては、積層板101として、絶縁樹脂基板102の両面に銅箔103a,103bが施された両面銅張積層板101を用いる。そして、両面銅張積層板101は、例えば、ドリルや、レーザ(CO2,UV)にて所定の位置に貫通孔105が形成される(図5(b)参照)(貫通孔形成工程)。ここで、所定の位置とは、例えば、後述するコイルパターン21の内周側端部の位置が挙げられる。貫通孔105の直径は、例えば、約φ0.3mmである。尚、第1の実施形態では、出発材料として両面銅張積層板101を用いているが、これに限定されるものではない。例えば、絶縁樹脂基板102の両面に銅箔103a,103bを接着する接着工程を設けても良いし、銅箔103a,103bを電気化学的に形成する形成工程を設けても良い。接着によるとき、接着層として例えば10μm程度の厚さを要する。
【0017】
そして、図5(c)に示すように、無電解めっきと電解めっきの工程を経て、銅箔103a,103bの上に所定の厚さのめっき層(銅めっき層)を形成して追加金属膜(銅薄膜層)105a,105b及びスルーホール導体105Tを形成する(無電解めっき及び電解めっき工程、又は、厚銅形成工程)。例えば、20μm厚の銅箔103a,103bに対して、銅薄膜層105a及び105bの厚さを100μm厚まで成長させる。この工程において、貫通孔105の内周面に銅めっき層を形成して、或いは、銅で充填して、表裏面のコイルパターン21,22を電気的に接続可能な状態とする。尚、追加金属膜105a,105bの形成は必須でない。例えば、出発材料として、金属膜の厚さが100μm厚の両面銅張積層板101を用いれば、貫通孔105の電気的な接続を後の工程で行うことで、この厚銅形成工程を省くことができる。
【0018】
図6(a)に示すように、成長させた銅薄膜層105a,105b上にエッチングレジスト108を形成する(エッチングレジスト形成工程)。後述するコイルパターン109(図6(b)参照)となるべき所定の形状、及び、線間隔、線幅等を考慮して、エッチングレジスト108のレジストパターンを銅薄膜層105a,105b上に形成する。レジストパターンのパターニングは、厚銅形成工程にて形成された銅薄膜層105a,105bの上にドライフィルムを貼り付け、プリント配線板のパターン形成時に通常行われる露光・現像、エッチング及びフィルム剥離により行われる。このとき、貫通孔形成工程において形成された貫通孔(スルーホール導体)105を塞ぐようにエッチングレジスト108を形成する。貫通孔105の内周面に既に形成されている銅めっき層が、後のエッチング工程においてエッチングされないように準備する。
続いて、図6(b)に示すように、エッチング処理を施す(エッチング工程)。具体的には、エッチングレジスト108(図6(a)参照)が形成された絶縁樹脂基板102をエッチング液に浸漬して、所定時間攪拌しながらエッチングする。この工程において、エッチングレジスト108が施されていない箇所の銅箔103a,103bおよび銅薄膜層105a,105bがエッチング処理されて除去される。これにより、絶縁樹脂基板102上にコイル形状のコイルパターン(導体パターン)109が現れて、コイルシート11が形成される。
尚、導体パターンを構成する層の例として、図6(c)に4つ示す。(i)金属箔のみで構成されている層。(ii)金属箔の上層に電解めっき膜が形成された層。(iii)金属箔の上層に形成した無電解めっき層の上層にさらに電解めっき膜が形成された層。(iv)金属箔及び無電解めっき層を覆うように電解めっき膜が形成された層。
【0019】
図7は、コイルシート11に短絡線110を接続するときの状態を示す説明図である。
次に、図7(a)に示すように、形成されたコイルパターン109に対して、短絡線110が接続される(短絡線接続工程)。具体的には、コイルパターン109の全ターンの導体パターンを接続するように、内周側と外周側とをまたぐ状態で短絡線110が接続される。このとき、図7(b)に示すように、コイルパターン109が形成された絶縁樹脂基板102に短絡線110が押し付けられるように圧力を加えるが、この点は後述する。
ここで、図7(c)に示すように、コイルパターン109の始点から終点に向かって、始点と終点を結ぶ直線(仮想線)を形成する。ここで、始点は0とする。このとき、直線(仮想線)とコイルパターンが最初に交差する部分(交点)を1、次に交差する部分(交点)を2とし、順次交差する部分(交点)を3、4・・・とする。そして、最後に交差する部分(交点)をn−1とし、終点をnとする。そして、n−1からnまでのコイルパターンの部分をnターン目のコイルパターンとする。つまり、始点(0)から1までのコイルパターン部分が1ターン目のコイルパターンであり、1から2までのコイルパターン部分が2ターン目のコイルパターン部分である(図7(c)参照)。
【0020】
次に、短絡線110について説明する。
図8は、短絡線110の一例を説明するための図である。図8(a)は、短絡線110の構成を示す縦断面図であり、図8(b)は、加圧前後の絶縁体(異方性導電ゴム)の内部の状態の変化を説明するための図である。
図8(a)に示すように、短絡線110は、絶縁体(異方性導電ゴム)111とリード線(めっきリード)112とからなる。絶縁体111は弾性と絶縁性とを有する樹脂と導電性粒子115とからなる。導電性粒子は樹脂中に分散されている。本実施形態では、絶縁体111の一例として異方性導電ゴム(フィルム)を用いている。リード線112は異方性導電ゴム111に貼り付けられている。
めっきリード112は、めっき時に基板50(後述する図10参照)や異方性導電ゴム111と共にめっき槽内に浸漬される。よって、めっき液に対して耐性を有するか、或いは、めっき処理に対して影響を与えない金属が好ましい。また、めっきリード112は、加圧されたときに変形せず、めっき時に印加される電位を良好に通電させる(電気抵抗とならない)ために、ある程度の断面積を有することが好ましい。尚、断面積を大きくすれば断面二次モーメントが大きくなるので剛性を高めることができる。
【0021】
異方性導電ゴム111は、具体的には、例えば、シリコーン樹脂を母材とし、導電性粒子115として金−ニッケル合金粒子(Au/Ni粒子)が分散されている。
図8(b)に示すように、異方性導電ゴム111は、加重を加えることで内部の導電性粒子115が互いに接触して、導電性を発揮する。ここで、加重を加える際の圧力は、弱過ぎると導電性粒子115が互いに接触せず導電性が発揮できない。逆に圧力が強過ぎると、絶縁樹脂基板102や絶縁樹脂基板102上に形成されたコイルパターン109(図7(b)参照)を阻害し損傷を与える恐れがある。異方性導電ゴム111の弾性力や内部の導電性粒子115の含有率によって好ましい圧力は異なるが、例えば、300〜350g/cm2程度の圧力を加えて導電性を発揮する異方性導電ゴム111が好ましく選択される。
【0022】
図9は、加圧時の短絡線110付近の状態を示す図である。
図9に示すように、短絡線110は、コイルパターン109が形成された絶縁樹脂基板102の両面に接続される。そして、短絡線110の背面から絶縁板113によって加圧されて、絶縁樹脂基板102に押し付けられる。絶縁樹脂基板102に形成されたコイルパターン109は絶縁樹脂基板102表面に対して凸となっている。よって、短絡線110が押し付けられたとき、異方性導電ゴム111のコイルパターン109に接触している部分は圧力が加わって、めっきリード112からの電位をコイルパターン109に伝える。これに対して、異方性導電ゴム111のコイルパターン109間の部分には圧力が加わらないので、通電状態とならない。
【0023】
短絡線110のめっきリード112は通電性が良いので、めっき時に印加される電位はめっきリード112のどの部分でもほぼ同じ電位に維持される。そして、コイルパターン109はめっきリード112から異方性導電ゴム111を介して電位が印加されるので、コイルパターン109のどの部分もほとんど電位差がなく、所定の電位に維持される。その結果、コイルパターン109のどの部分も、ほぼ均一なめっき厚さを実現できる。
短絡線110は、コイルパターン109に押し付けられた部分だけが通電し、コイルパターン109間の加圧されていない部分は通電しないので、異方性導電ゴム111のコイルパターン109間の部分はめっきが形成されない。加圧されて通電された部分はコイルパターン109に接触していて、めっき液に直接触れないので、めっきは形成されない。よって、異方性導電ゴム111を用いることで、異方性導電ゴム111の表面にはほとんどめっきが生じないのにもかかわらず、コイルパターン109に効率よく銅めっき層を形成することができる。
【0024】
図10は、コイルシート11にめっきが施されるときの状態を示す説明図である。
図10に示すように、コイルシート11は、個々のコイルシート11にカットされる前の基板50の状態で、めっき槽に入れられ、めっき処理が施される(めっき工程)。
具体的には、コイルパターン(導体パターン)109が形成された基板50は短絡線110を介して負極に接続され、めっきの母材となる銅板60は対向する正極側に接続されて、めっき槽に浸漬される。めっき液として、例えば、硫酸銅等の銅水溶液を用いる。直流電流を所定時間印加してめっきを施す。尚、銅めっき層の厚さは、めっき工程の時間や印加する電位の大きさによって制御することが可能である。
【0025】
図11は、コイルパターン109から短絡線110が除去されるときの状態を示す説明図である。
図11に示すように、めっき工程が終了すると、コイルパターン109から短絡線110が除去される(短絡線除去工程)。
図11(a)に示す状態でめっき処理がされた後に短絡線110が除去されると、図11(b)に示すように、異方性導電ゴム111が接触していたコイルパターン109の箇所は銅めっき層が形成されず凹部となる。この凹部では、コイルパターン109の断面積が狭くなるので、積層コイル1(図1参照)として通電して使用すると電気抵抗が大きくなり、発熱の原因となるおそれがある。よって、コイルパターン109の断面積をより均一にするために、異方性導電ゴム111が接触する部分を移動させて再度めっきを繰り返し、より均一な断面を形成するようにする。
【0026】
図12は、コイルシート11に短絡線110を再接続するときの状態を示す説明図である。
図12に示すように、それ以前に短絡線110が接続された箇所(破線にて表示、図7参照)とは異なる箇所に短絡線110が再度接続される(短絡線再接続工程)。そして、前回のめっき工程と同様にして再度めっき処理を施し、めっき層を厚くする(再めっき工程)。再めっき工程が終了すると、短絡線110が除去される(短絡線除去工程)。
【0027】
図13は、コイルパターン109上に所定の厚さの銅めっき層が形成されたときの状態を示す説明図である。
この短絡線再接続工程、再めっき工程、短絡線除去工程を繰り返して、コイルパターン109上に所定の厚さの銅めっき層が形成されたとき、これらの工程の繰り返しを終了する。図13(a)にこのときの状態を示す。図6(b)に示したエッチング工程終了時のコイルパターン(導体パターン)109の断面が約縦100μm×横200μmであるのに比して、追加めっきを繰り返した後の断面は約縦250〜300μm×横300〜330μmである。
その後、表面研磨を行って、各コイルパターン109の上端面を平坦化する(表面研磨工程)。図13(b)に示すように、表面研磨後の断面は約縦220〜270μm×横300〜330μmの矩形となる。表面研磨が終了した後、図4に示したように、図示しないカッター等の工具、或いは、レーザ等を用いて、コイルシート11ごとに分離される。以上により、コイルシート11が完成する。
【0028】
(積層コイルの製造方法)
以上説明した製造方法を経て製造されたコイルシート11を用いて、積層コイル1が製造される製造方法について以下に説明する。
図14及び図15は、積層コイル1の製造工程を説明するための図である。
図14(a)に示すように、コイルシート11の間に層間樹脂絶縁層の一例としての絶縁シート14が配された状態で、各コイルシート11は積層される(積層工程)。このとき、各コイルシートは、相対するコイルシート11の接続端子26,24が二次元的には同じ位置となるように位置あわせされ、その後、積層される。即ち、第1の実施形態では、2つのコイルシート11は、周方向に45度ずつずらした状態で積層される。ここで、絶縁シート14は、変成エポキシ系樹脂シート、ポリフェニレンエーテル系樹脂シート、ポリイミド系樹脂シート、シアノエステル系樹脂シート等の絶縁性シート(フィルムも含む)で形成され、約20〜80μm厚である。尚、絶縁シート14は、積層コイル1の製造工程において、無機フィラーや熱硬化性樹脂等を含む層間樹脂絶縁層として形成されても良い。
【0029】
図14(b)に示すように、2枚のコイルシート11が積層された後、接続端子26,24の位置に貫通孔28が形成される(貫通孔形成工程)。
そして、図15(a)に示すように、無電解及び電解めっき工程を経て、形成された貫通孔28の内周面にめっきを施すことでスルーホール導体28Tを形成する(無電解めっき及び電解めっき工程)。その後、スルーホール導体28Tにエッチングレジストを被覆し、スルーホール導体28T以外のめっき層をエッチング除去する。これにより、重なり合うコイルシート11は電気的に接続される。
【0030】
その後、図15(b)に示すように、積層されたコイルシート11の上面と下面とに、接続端子24,26の位置に対応した箇所が切り抜かれた絶縁シート14及び放熱板10a,10bが積層される(放電板積層工程)。
そして、最外のコイルシート11a,11h(図2参照)の接続端子24,26に接続コード3a,3bが接続されて、積層コイル1が完成する。なお、絶縁シート14を積層する過程で、接続端子24,26の表面を絶縁シート14が覆ってしまう場合には、接続コード3a,3bを接続する際に、当該絶縁シート14を除去する。
【0031】
(効果の確認)
第1の実施形態にかかる積層コイル1において、半径方向のコイルパターン109の厚さの違いを確認した。
図16は、第1の実施形態にかかる積層コイル1の断面図であり、図17は、比較例として従来の方法で積層コイル1を製造したときの断面図である。即ち、比較例では、短絡線110を用いることなく、絶縁樹脂基板102上に形成されたコイルパターン109の外周側端部にリード線を接続し電位を印加してめっきを行った。
【0032】
図16に示すように、コイルパターン109の外周側付近、中央付近、内周側付近のいずれにおいても、銅めっき層の厚さはほぼ同じに形成される。
これに対して、図17に示すように、比較例では、リード線が接続された外周側端部付近では、導体パターン間の溝を埋めて隣のコイルパターン109とつながる程に銅めっき層が成長している。
第1の実施形態におけるコイルパターン109の中央付近では銅めっき層がほとんど形成されていない。比較例では、めっき時に印加される電位の電位降下の影響が少ない箇所(リード線が接続された外周側端部近辺)にめっきが集中し、コイルパターン109の中央付近では、銅薄膜層にわずかにめっき層が形成されるに過ぎない。即ち、コイルパターン109全体では均一な銅めっき層が形成されないことが判る。
このことから、第1の実施形態のように短絡線110を用いてめっき処理を行えば、コイルパターン109全体にわたって形成される銅めっき層の厚さのばらつきを抑制できることが確認できた。
【0033】
第1の実施形態にかかる導体回路(コイルパターン)の製造方法によれば、隣接する導体パターンやターン数の異なる導体パターンが同電位となるように、異方性導電ゴム111を含む短絡線110を接続する。導体パターンにめっきのための電位を印加してめっき処理を施して導体パターンにめっき層を形成する。導体パターンから短絡線110を除去する。よって、コイルシート11に形成される導体回路(コイルパターン)21,22は、銅めっき層の厚さのばらつきを抑制できる。その結果、高い占積率を有するコイルシート11を提供できる。
【0034】
短絡線再接続工程では、先のめっき工程において短絡線110が接続されてめっき層が形成されなかった箇所(凹部)とは異なる箇所に短絡線を接続して再めっき処理を施す。よって、形成されるコイルパターン109のめっき層の厚さをより均一にすることができる。
めっき工程では、短絡線110を介してコイルパターン109全体にほぼ同じ電位を印加できる。よって、コイルパターン109全体により均一な厚さのめっき層を形成できる。
【0035】
更に、短絡線110は異方性導電ゴム111とリード線112とからなっている。コイルパターン109に短絡線110を所定の圧力で押し付けてめっきのための電位を印加する。よって、めっき時に押圧して短絡線110を導電状態にできると共に、めっき終了後には短絡線110の除去が容易であり、作業性を向上させることができる。短絡線110とコイルパターン109とを確実に接触させることができるので、質の高いめっき処理が行える。異方性導電ゴム111に導電性粒子115が分散された異方性導電ゴム111はめっき層に取り込まれない。よって、短絡線除去工程における短絡線110の除去が容易となる。
更にまた、短絡線110は、めっきリード112を介して所定の圧力で押し付けられるとき異方性導電ゴム111内で導電性粒子115が接触して短絡線110が導通状態となる。よって、コイルパターン109に押し付けられる短絡線110の箇所だけが導電状態となる。不要な箇所はめっきされず、質の高いめっきが実現できる。
【0036】
また、上述した実施形態では、図12に示すように、それ以前に短絡線110が接続された箇所(破線にて表示)と90度異なる箇所に短絡線110が再度接続されて銅めっき層が形成されたコイルシート11を、45度ずらして積層する。かかる場合には、相対するコイルシート11同士が、短絡線110が接続された箇所が重ならないようにずらされて積層されることとなる。ゆえに、図13(b)に示す状態とするための表面研磨を行わずに、短絡線110が接続された箇所に若干の凹部が残ったままの状態でコイルシート11を重ねたとしても、凹部同士は重ならずにずれることとなる。これにより、コイルシート11の表裏面が平坦である場合よりも、コイルシート11と絶縁シート14との密着性が向上する。その結果、通電時に発する熱を効率よく外部へ放出するため放熱性が向上する。
【0037】
コイルパターン109は、コイルシート11の両面に同じ表面から見た場合に互いに同じ巻き方向に形成されている。コイルシート11の両面に形成されたコイルパターン109は、コイルパターン109の内周側端部に形成されたスルーホール導体25を介して電気的に接続される。よって、コイルシート11の表裏面でコイルパターン109の巻き数を稼ぐことができ、占積率を高めることができる。
また、コイルシート11は、コイルシート11の両面に形成されたコイルパターン109の外周側端部がコイルパターン109の中心に対して同じ半径で所定の中心角を有する位置に接続端子24,26として形成され、複数のコイルシート11は、接続端子24,26を介して直列に接続される。よって、複数のコイルシート11を簡易に積層できる。
【0038】
更に、重なり合う2つのコイルシート11の相対する面に形成されたコイルパターン109は、互いに同じ位置の外周側端部に形成されたスルーホールが接続端子24,26を形成して、電気的に接続される。よって、複数のコイルシート11を積層して高い占積率の積層コイル1を実現できる。
更にまた、重なり合う2つのコイルシート11は、絶縁シート14を介して積層される。よって、積層したコイルシート11間での短絡を簡易に防ぐことができる。
更にまた、最外層に放熱板10a,10bを更に有する。よって、通電時のコイルパターン109の発熱を外部に放出できる。
【0039】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では短絡線として異方性導電ゴム111とリード線112とからなる短絡線110を用いた。これに対して、第2の実施形態は短絡線として金属ワイヤーを用いる点で、第1の実施形態と相違する。ここでは、第1の実施形態にて説明したコイルシート11の製造方法のうち、第1の実施形態と相違する短絡線接続工程、めっき工程、短絡線除去工程を中心にして説明する。
貫通孔形成工程において、両面銅張積層板101を出発材料として貫通孔105が形成される。厚銅形成工程にて、無電解めっきと電解めっきが施されて、銅箔103a,103bの上に所定の厚さの銅めっき層が形成されて銅薄膜層105a,105bが形成される。エッチングレジスト形成工程にて、成長させた銅薄膜層105a,105b上にエッチングレジスト108が形成される。そして、エッチング工程にて、エッチング処理が施される。
【0040】
図18は、コイルシート11に短絡線210を接続するときの状態を示す説明図である。
図18(a)に示すように、形成されたコイルパターン109に対して、短絡線210が接続される(短絡線接続工程)。具体的には、すべてのコイルパターン109を接続するように内周側と外周側とをまたぐ状態で短絡線210が接続される点は、第1の実施形態と同じである。
短絡線210は、例えば、銅(Cu)やアルミニウム(Al)、金(Au)等の良好な導電性を有する細線で構成される。短絡線210は、めっき層に取り込まれる。よって、めっき層と主成分が同じ種類の金属で構成すれば、金属の違いによる電気抵抗の差異をなくすることができて好ましい。或いは、電気抵抗が低い金属が好ましい。
【0041】
図19は、コイルパターン109から短絡線210が除去されるときの状態を示す説明図である。
図19(a)に示すように、めっき工程終了時に短絡線210がめっき層に埋まっている。よって、例えば、ドリルやレーザ等を用いて、コイルパターン109に施されためっき層間の短絡線210を切断して除去する(短絡線除去工程)。また、図19(c)に示すように、めっき工程終了時にはコイルパターン109表面に凸部が形成されているので、表面研磨を行って、各コイルパターン109の上端面を平坦化する(表面研磨工程)(図19(b)参照)。
その後、第1の実施形態と同様にして、コイルシート11の間に絶縁シート14を配して、各コイルシート11を積層する(積層工程)。8枚のコイルシート11a〜11hが積層された後、接続端子26,24の位置に貫通孔28を形成する(貫通孔形成工程)。形成された貫通孔28の内周面にめっき層を形成して(無電解めっき及び電解めっき工程)、重なり合うコイルシート11を電気的に接続する。積層されたコイルシート11の上面と下面とに放熱板10a,10bを積層し(放熱板積層工程)、最外のコイルシート11a,11hの接続端子24,26に、接続コード3a,3bを接続して、積層コイル1を完成する。
【0042】
短絡線210を金属ワイヤーで構成するとき、コイルパターン109全体にほぼ同じ電位を印加でき、均一なめっき層を形成できる。このとき、コイルパターン109からはみ出した短絡線210は、例えば、レーザ等により簡易に除去できる。
短絡線210をめっき層と同じ主成分を有する金属で構成すれば、短絡線210はめっき層と同程度の電気抵抗を有するので、コイルパターン109内に金属ワイヤーを残すことができ、作業性が向上する。
また、図19(b)に示す状態とするための表面研磨を行わずに、短絡線210の上に若干の凸部が残ったままの状態でコイルシート11を重ねたとしても、コイルシート11を45度ずらして積層する場合には、凸部同士は重ならずにずれることとなる。これにより、コイルシート11の表面が平坦である場合よりも、コイルシート11と絶縁シート14との密着性が向上する。その結果、通電時に発する熱を効率よく外部へ放出するため放熱性が向上する。
【0043】
尚、上記した第1及び第2の実施形態では、コイルパターン109のように長いが湾曲した導体パターンの近接箇所に短絡線110,210を使って短絡する場合を例にして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、別個の導体パターンの近接箇所に短絡線を使って短絡させることで、均一なめっき層を形成することもできる。
【0044】
また、渦巻状のコイルパターン109を使って説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。図20は、角形に形成されたコイルパターン31を示す図である。図20に示すように、コイルシート30には、角形のコイルパターン31が形成され、コイルパターン31の外周側端部に接続端子34(裏面の外周側端部には接続端子36)、内周側端部にスルーホール導体35が形成されている。このような角形のコイルパターン31であっても、短絡線110を使って全体を同電位に保ち、均一なめっき層を形成することができる。
上記第1及び第2の実施形態では、コイルシート11の外周側端部に形成した貫通穴28(図14(b)参照)の内面にめっき層を形成して、重なり合うコイルシート11を電気的に接続する例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。図21は、積層されるコイルシート11の他の接続形式を示す図である。図21に示すように、積層コイル41において、コイルパターン11の外周側端部に形成される接続端子24,26に導電性物質42が配される。重なり合うコイルシート11は、導電性物質42を介して電気的に接続される。導電性物質42として、例えば、半田等の導電性ペーストや導電性ゴム等を用いる。導電性物質42を介して複数のコイルシート11を簡易に接続できる。
【0045】
上記した第1及び第2の実施形態では、長いが湾曲した導体パターンの一例としてコイルパターンを例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。図22は、導体パターンの他の例としての歪検出素子120の概略図である。図22(a)に示すように、歪検出素子120は、平行に配置された4本の細長い歪検出部121と、歪検出部121に比して幅広の折返接続部122とを有する形状である。図22(b)に示すように、製造時には複数の歪検出素子120が縦横に配列され接続パターンを介して直列に接続された、プリント配線板の一例としての基板70の状態で、電解メッキ等の処理が行われる。短絡線(図示省略)を用い歪検出素子120全体を同電位に保った状態で電解めっきを施すことで、均一なめっき層を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】第1の実施形態にかかる積層コイルの外観斜視図である。
【図2】図1に示す積層コイルの構造を説明するための分解斜視図である。
【図3】図1に示す積層コイルのコイルシートの平面図である。
【図4】コイルシート製造時の状態を説明するための図である。
【図5】図3に示すコイルシートの製造工程を示す説明図である。
【図6】図3に示すコイルシートの製造工程を示す説明図である。
【図7】コイルシートに短絡線を接続するときの状態を示す説明図である。
【図8】短絡線の一例を説明するための図である。
【図9】加圧時の短絡線付近の状態を示す図である。
【図10】コイルシートにめっきが施されるときの状態を示す説明図である。
【図11】コイルパターンから短絡線が除去されるときの状態を示す説明図である。
【図12】コイルシートに短絡線を再接続するときの状態を示す説明図である。
【図13】コイルパターン上に所定の厚さの銅めっき層が形成されたときの状態を示す説明図である。
【図14】図1に示す積層コイルの製造工程を説明するための図である。
【図15】図1に示す積層コイルの製造工程を説明するための図である。
【図16】図1に示す積層コイルの断面図である。
【図17】従来の方法で積層コイルを製造したときの断面図である。
【図18】第2の実施形態にかかるコイルシートに短絡線を接続するときの状態を示す説明図である。
【図19】第2の実施形態にかかるコイルパターンから短絡線が除去されるときの状態を示す説明図である。
【図20】角形に形成されたコイルパターンを示す図である。
【図21】積層されるコイルシートの他の接続形式を示す図である。
【図22】導体パターンの他の例としての歪検出素子の概略図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばセンサーコイルやモーターコイル等に用いられるプリントコイル等の導体回路の製造方法等に関するものであり、特に、コイル断面に占める導体の割合を示す占積率の高いコイルを形成する導体回路の製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、品質の揃ったプリントコイルを低コストで実現するための技術が多数提案されている。
公報開示の技術として、例えば、特許文献1には、絶縁基板上にプリント配線技術により形成されたコイルパターンを設けると共に、このコイルパターンに電気めっきによる電気めっき層を設け、コイルパターンの導体補強を行うように構成したプリントコイルの技術が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開平07−142254号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コイルの性能は電流と巻き数の積(アンペアターン)で表される。占積率が高いほど、即ち、単位断面積あたりの巻き数が多い程、単位断面積当たりのアンペアターンを高められる。
ところで、例えば平面コイルなどのように、導体長が例えば数メートルから数十メートルと非常に大きい導体回路は、めっき時に電位を印加する際の導体内の電気抵抗が無視できず、導体全体にわたって均一なめっき厚さを実現することが困難であった。その結果、高い占積率を有する積層コイルの形成が難しかった。
【0005】
本発明は、導体全体にわたってめっき厚さのばらつきを抑えた導体回路の製造方法を提供することを目的とする。
また、高い占積率を有するコイルシートおよび積層コイルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明にかかる導体回路の製造方法は、絶縁基板に形成された導体パターンを少なくとも一本の導電性材料を含む短絡線で接続する短絡線接続工程と、導体パターンに電解めっきを施し、めっき層を形成するめっき工程と、導体パターンから前記短絡線を除去する短絡線除去工程とを有する。
【0007】
上記課題を解決するために、本発明にかかる積層コイルは、絶縁樹脂基板に導体回路としてコイルパターンが形成された複数のコイルシートが積層された積層コイルであって、コイルパターン全体の電位が同一となるように導体パターンを短絡線で接続して電解めっきを施した際にコイルパターンの表面に形成される凹部又は凸部が重ならないように複数のコイルシートがずらして積層されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、導体回路の始端から終端にわたって、膜厚と線幅が均一な導体回路を形成することができる導体回路の製造方法を提供できる。また、占積率の高いコイルシート及び積層コイルを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態(実施形態)について詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態にかかる積層コイル1の外観斜視図であり、図2は、図1に示す積層コイル1の構造を説明するための斜視図である。
図1に示すように、積層コイル1は、積層コイル本体2と、積層コイル本体2の表裏面に接続し、コイルに電力を供給する接続コード3a,3bとからなる。
図2に示すように、積層コイル本体2は、後述するコイルシート11a〜11h(以下、説明のために「11」を用いることもある。)と放熱板10a,10bと絶縁シート14とからなる。放熱板10a,10bは、コイルシート11が通電時に発する熱を外部へ放出するため、積層コイル本体2の最も外側に貼り付けられている。また、絶縁シート14はコイルシート11の間、およびコイルシート11と放熱板10a,10bとの間に設けられている。各コイルシート11、絶縁シート14、放熱板10a,10b等が積層された後、カッター等の工具、レーザ等を用いて、図1に示す積層コイル1となる。尚、第1の実施形態では、8枚のコイルシート11a〜11hが積層された円形の積層コイルを例として説明を進めるが、本発明はコイルシートの枚数や形状に特に限定はなく、例えば、4枚でも12枚でも良い。また、形状も円形だけでなく、四角、台形であってもよい。
【0010】
コイルシート11a〜11hは、絶縁樹脂基板102(図5参照)を基材とし、両面に銅等の金属が渦巻状に形成されたコイルパターン21,22を有している(図3参照)。そして、コイルシート11a〜11hは、各コイルシート11に形成されたコイルパターン21,22が同心となるように配置されて積層されている。最も外側のコイルシート11a,11hには、接続コード3a,3bが接続されるための接続端子24,26が設けられている。
放熱板10a,10bは、例えば銅等の金属薄板で構成される。そして、放熱板10a,10bは、積層されたコイルシート11a〜11hを挟んで積層コイル本体2の最も外側に貼り付けられている。放熱板10a,10bは、最外のコイルシート11a,11hに接続された接続コード3a,3bの部分に逃げが形成されている。
【0011】
(コイルシートの構成)
ここで、コイルシート11の構成を説明する。
図3(a)は、図1に示す積層コイル1のコイルシート11のコイルパターン21が形成された面(以下、単に「表面」という場合がある。)を示す平面図である。図3(b)は、コイルシート11のコイルパターン22が形成された面(以下、単に「裏面」という場合がある。)を示す平面図である。
図3に示すように、コイルシート11は、絶縁樹脂基板102(図5参照)の表裏面に、プリント配線技術を使って渦巻状のコイルパターン21,22が形成されている。図3(b)では、裏面側のコイルパターン22を実線にて、表面側のコイルパターン21を破線にて描画している。
【0012】
コイルシート11は、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ナイロン樹脂、テフロン(登録商標)樹脂、ポリエステル樹脂等絶縁性を有する樹脂基板を基材として用いられる。また、できるだけ耐熱性の良好な樹脂基板が好ましく用いられる。コイルシート11の基材は、強度、及び、表裏面に形成されるコイルパターン21,22の巻き数及び導体回路形成後の占積率を考慮して、厚さが0.02mm〜0.1mm程度の樹脂基板が好ましい。具体的には、例えば、ポリイミド樹脂等を基材とする場合、約0.025mm厚が好ましい。
コイルシート11上に形成されるコイルパターン21,22は、例えば高純度の銅薄膜を、後述するエッチング処理等の工程を経て、所定の形状にした導体パターンを有している。具体的には、コイルパターン21は、図3(a)に実線として描かれているように、外周側端部に接続端子24が形成され、第1の実施形態では外周から内周に向かって右周りとなる渦巻き状に形成されている。コイルシート11は、内周側端部に直径が約φ0.3mmの貫通孔が形成され、その貫通孔の内壁にめっきを施すことでスルーホール導体25が形成される。スルーホール導体25により表裏面のコイルパターン21,22が電気的に接続されている。
【0013】
裏面のコイルパターン22は、図3(b)に実線として描画されているように、外周から内周に向かって左周り(内周から外周に向かって右回り)の渦巻状に形成されている。そして、外周側端部に接続端子26が形成されている。
このように、表面側のコイルパターン21と裏面側のコイルパターン22とは、内周側端部に形成されたスルーホール導体25を介して電気的に接続されている。その上、同じ面から見て同じ巻方向の渦状に巻かれている。よって、表裏面のコイルパターン21,22は電気的に直列に接続された一つのコイルとして機能している。尚、第1の実施形態にかかるコイルパターン21,22は、例えば、外径φ140mm内径φ90mmで、線幅約0.33mm、線間0.20mmで約50巻に形成されている(図3などでは巻数などを簡略化して記載している)。コイルパターン21,22の片面当たりの長さは約18.5mであり、両面で全長は約37mである。
【0014】
ここで、コイルシート11の表裏面の接続端子24,26は、コイルシート11の中心点から同じ半径を有する位置に形成されている。コイルシート11の中心とスルーホール導体25とを結ぶ仮想の基準線を設けて考えるとき、表面側及び裏面側の接続端子24,26はそれぞれ、基準線に対して中心角が22.5度となる位置に形成されている。即ち、2つの接続端子24,26は、基準線に対して線対称となる位置に形成されている。
コイルシート11の裏面側の接続端子26は、表面側の接続端子24に対して中心角45度の位置に形成されるので、相対する面の接続端子が対応するように8枚のコイルシート11a〜11hが積層されると(後述)、最外のコイルシート11a,11hに接続された接続コード3a,3bは、積層コイル1を表面から見ると、二次元的には同じ位置に接続される(360度=45度×8枚)。尚、本発明はコイルシートの枚数に特に限定はなく、例えば、4枚や、30枚のコイルシートを積層しても接続コード3a,3bを、二次元的に同じ位置に形成することができる。例えば、4枚の場合、コイルシート11裏面側の接続端子26を、表面側の接続端子24に対して中心角90度の位置に形成することで実現できる(90度×4枚=360度)。また、30枚の場合は、コイルシート11裏面側の接続端子26を、表面側の接続端子24に対して中心角12度の位置に形成することで実現できる(12度×30枚=360度)。
【0015】
(コイルシートの製造方法)
以上の構成を有するコイルシート11の製造方法について以下に説明する。
図4は、コイルシート11の製造時の状態を説明するための図である。
図4に示すように、コイルシート11は、プリント配線技術を使って、絶縁樹脂基板102(図5参照)が表裏面の縦横方向に複数並んだ状態でコイルパターン21,22が形成される。具体的には、後述する製造工程を経て基板50の表裏面にコイルパターン21,22が形成される。そして、コイルシート11のコア51が形成された後、図示しないカッター等の工具、或いは、レーザ等を用いて、コイルシート11のコア51ごとに分離される。以下の説明では簡略のため、特に図示の必要がない場合を除き、1つのコイルパターン21に着目して説明する。
【0016】
図5及び図6は、図3に示すコイルシート11の製造工程を示す説明図である。
図5(a)に示すように、出発材料は、ポリイミド樹脂等の絶縁樹脂基板102の両面に金属膜103a,103bが形成された積層板101である。金属膜は、銅、ニッケル、コバルトなどからなる金属膜や銅箔、ニッケル箔などを例示することができる。本実施形態においては、積層板101として、絶縁樹脂基板102の両面に銅箔103a,103bが施された両面銅張積層板101を用いる。そして、両面銅張積層板101は、例えば、ドリルや、レーザ(CO2,UV)にて所定の位置に貫通孔105が形成される(図5(b)参照)(貫通孔形成工程)。ここで、所定の位置とは、例えば、後述するコイルパターン21の内周側端部の位置が挙げられる。貫通孔105の直径は、例えば、約φ0.3mmである。尚、第1の実施形態では、出発材料として両面銅張積層板101を用いているが、これに限定されるものではない。例えば、絶縁樹脂基板102の両面に銅箔103a,103bを接着する接着工程を設けても良いし、銅箔103a,103bを電気化学的に形成する形成工程を設けても良い。接着によるとき、接着層として例えば10μm程度の厚さを要する。
【0017】
そして、図5(c)に示すように、無電解めっきと電解めっきの工程を経て、銅箔103a,103bの上に所定の厚さのめっき層(銅めっき層)を形成して追加金属膜(銅薄膜層)105a,105b及びスルーホール導体105Tを形成する(無電解めっき及び電解めっき工程、又は、厚銅形成工程)。例えば、20μm厚の銅箔103a,103bに対して、銅薄膜層105a及び105bの厚さを100μm厚まで成長させる。この工程において、貫通孔105の内周面に銅めっき層を形成して、或いは、銅で充填して、表裏面のコイルパターン21,22を電気的に接続可能な状態とする。尚、追加金属膜105a,105bの形成は必須でない。例えば、出発材料として、金属膜の厚さが100μm厚の両面銅張積層板101を用いれば、貫通孔105の電気的な接続を後の工程で行うことで、この厚銅形成工程を省くことができる。
【0018】
図6(a)に示すように、成長させた銅薄膜層105a,105b上にエッチングレジスト108を形成する(エッチングレジスト形成工程)。後述するコイルパターン109(図6(b)参照)となるべき所定の形状、及び、線間隔、線幅等を考慮して、エッチングレジスト108のレジストパターンを銅薄膜層105a,105b上に形成する。レジストパターンのパターニングは、厚銅形成工程にて形成された銅薄膜層105a,105bの上にドライフィルムを貼り付け、プリント配線板のパターン形成時に通常行われる露光・現像、エッチング及びフィルム剥離により行われる。このとき、貫通孔形成工程において形成された貫通孔(スルーホール導体)105を塞ぐようにエッチングレジスト108を形成する。貫通孔105の内周面に既に形成されている銅めっき層が、後のエッチング工程においてエッチングされないように準備する。
続いて、図6(b)に示すように、エッチング処理を施す(エッチング工程)。具体的には、エッチングレジスト108(図6(a)参照)が形成された絶縁樹脂基板102をエッチング液に浸漬して、所定時間攪拌しながらエッチングする。この工程において、エッチングレジスト108が施されていない箇所の銅箔103a,103bおよび銅薄膜層105a,105bがエッチング処理されて除去される。これにより、絶縁樹脂基板102上にコイル形状のコイルパターン(導体パターン)109が現れて、コイルシート11が形成される。
尚、導体パターンを構成する層の例として、図6(c)に4つ示す。(i)金属箔のみで構成されている層。(ii)金属箔の上層に電解めっき膜が形成された層。(iii)金属箔の上層に形成した無電解めっき層の上層にさらに電解めっき膜が形成された層。(iv)金属箔及び無電解めっき層を覆うように電解めっき膜が形成された層。
【0019】
図7は、コイルシート11に短絡線110を接続するときの状態を示す説明図である。
次に、図7(a)に示すように、形成されたコイルパターン109に対して、短絡線110が接続される(短絡線接続工程)。具体的には、コイルパターン109の全ターンの導体パターンを接続するように、内周側と外周側とをまたぐ状態で短絡線110が接続される。このとき、図7(b)に示すように、コイルパターン109が形成された絶縁樹脂基板102に短絡線110が押し付けられるように圧力を加えるが、この点は後述する。
ここで、図7(c)に示すように、コイルパターン109の始点から終点に向かって、始点と終点を結ぶ直線(仮想線)を形成する。ここで、始点は0とする。このとき、直線(仮想線)とコイルパターンが最初に交差する部分(交点)を1、次に交差する部分(交点)を2とし、順次交差する部分(交点)を3、4・・・とする。そして、最後に交差する部分(交点)をn−1とし、終点をnとする。そして、n−1からnまでのコイルパターンの部分をnターン目のコイルパターンとする。つまり、始点(0)から1までのコイルパターン部分が1ターン目のコイルパターンであり、1から2までのコイルパターン部分が2ターン目のコイルパターン部分である(図7(c)参照)。
【0020】
次に、短絡線110について説明する。
図8は、短絡線110の一例を説明するための図である。図8(a)は、短絡線110の構成を示す縦断面図であり、図8(b)は、加圧前後の絶縁体(異方性導電ゴム)の内部の状態の変化を説明するための図である。
図8(a)に示すように、短絡線110は、絶縁体(異方性導電ゴム)111とリード線(めっきリード)112とからなる。絶縁体111は弾性と絶縁性とを有する樹脂と導電性粒子115とからなる。導電性粒子は樹脂中に分散されている。本実施形態では、絶縁体111の一例として異方性導電ゴム(フィルム)を用いている。リード線112は異方性導電ゴム111に貼り付けられている。
めっきリード112は、めっき時に基板50(後述する図10参照)や異方性導電ゴム111と共にめっき槽内に浸漬される。よって、めっき液に対して耐性を有するか、或いは、めっき処理に対して影響を与えない金属が好ましい。また、めっきリード112は、加圧されたときに変形せず、めっき時に印加される電位を良好に通電させる(電気抵抗とならない)ために、ある程度の断面積を有することが好ましい。尚、断面積を大きくすれば断面二次モーメントが大きくなるので剛性を高めることができる。
【0021】
異方性導電ゴム111は、具体的には、例えば、シリコーン樹脂を母材とし、導電性粒子115として金−ニッケル合金粒子(Au/Ni粒子)が分散されている。
図8(b)に示すように、異方性導電ゴム111は、加重を加えることで内部の導電性粒子115が互いに接触して、導電性を発揮する。ここで、加重を加える際の圧力は、弱過ぎると導電性粒子115が互いに接触せず導電性が発揮できない。逆に圧力が強過ぎると、絶縁樹脂基板102や絶縁樹脂基板102上に形成されたコイルパターン109(図7(b)参照)を阻害し損傷を与える恐れがある。異方性導電ゴム111の弾性力や内部の導電性粒子115の含有率によって好ましい圧力は異なるが、例えば、300〜350g/cm2程度の圧力を加えて導電性を発揮する異方性導電ゴム111が好ましく選択される。
【0022】
図9は、加圧時の短絡線110付近の状態を示す図である。
図9に示すように、短絡線110は、コイルパターン109が形成された絶縁樹脂基板102の両面に接続される。そして、短絡線110の背面から絶縁板113によって加圧されて、絶縁樹脂基板102に押し付けられる。絶縁樹脂基板102に形成されたコイルパターン109は絶縁樹脂基板102表面に対して凸となっている。よって、短絡線110が押し付けられたとき、異方性導電ゴム111のコイルパターン109に接触している部分は圧力が加わって、めっきリード112からの電位をコイルパターン109に伝える。これに対して、異方性導電ゴム111のコイルパターン109間の部分には圧力が加わらないので、通電状態とならない。
【0023】
短絡線110のめっきリード112は通電性が良いので、めっき時に印加される電位はめっきリード112のどの部分でもほぼ同じ電位に維持される。そして、コイルパターン109はめっきリード112から異方性導電ゴム111を介して電位が印加されるので、コイルパターン109のどの部分もほとんど電位差がなく、所定の電位に維持される。その結果、コイルパターン109のどの部分も、ほぼ均一なめっき厚さを実現できる。
短絡線110は、コイルパターン109に押し付けられた部分だけが通電し、コイルパターン109間の加圧されていない部分は通電しないので、異方性導電ゴム111のコイルパターン109間の部分はめっきが形成されない。加圧されて通電された部分はコイルパターン109に接触していて、めっき液に直接触れないので、めっきは形成されない。よって、異方性導電ゴム111を用いることで、異方性導電ゴム111の表面にはほとんどめっきが生じないのにもかかわらず、コイルパターン109に効率よく銅めっき層を形成することができる。
【0024】
図10は、コイルシート11にめっきが施されるときの状態を示す説明図である。
図10に示すように、コイルシート11は、個々のコイルシート11にカットされる前の基板50の状態で、めっき槽に入れられ、めっき処理が施される(めっき工程)。
具体的には、コイルパターン(導体パターン)109が形成された基板50は短絡線110を介して負極に接続され、めっきの母材となる銅板60は対向する正極側に接続されて、めっき槽に浸漬される。めっき液として、例えば、硫酸銅等の銅水溶液を用いる。直流電流を所定時間印加してめっきを施す。尚、銅めっき層の厚さは、めっき工程の時間や印加する電位の大きさによって制御することが可能である。
【0025】
図11は、コイルパターン109から短絡線110が除去されるときの状態を示す説明図である。
図11に示すように、めっき工程が終了すると、コイルパターン109から短絡線110が除去される(短絡線除去工程)。
図11(a)に示す状態でめっき処理がされた後に短絡線110が除去されると、図11(b)に示すように、異方性導電ゴム111が接触していたコイルパターン109の箇所は銅めっき層が形成されず凹部となる。この凹部では、コイルパターン109の断面積が狭くなるので、積層コイル1(図1参照)として通電して使用すると電気抵抗が大きくなり、発熱の原因となるおそれがある。よって、コイルパターン109の断面積をより均一にするために、異方性導電ゴム111が接触する部分を移動させて再度めっきを繰り返し、より均一な断面を形成するようにする。
【0026】
図12は、コイルシート11に短絡線110を再接続するときの状態を示す説明図である。
図12に示すように、それ以前に短絡線110が接続された箇所(破線にて表示、図7参照)とは異なる箇所に短絡線110が再度接続される(短絡線再接続工程)。そして、前回のめっき工程と同様にして再度めっき処理を施し、めっき層を厚くする(再めっき工程)。再めっき工程が終了すると、短絡線110が除去される(短絡線除去工程)。
【0027】
図13は、コイルパターン109上に所定の厚さの銅めっき層が形成されたときの状態を示す説明図である。
この短絡線再接続工程、再めっき工程、短絡線除去工程を繰り返して、コイルパターン109上に所定の厚さの銅めっき層が形成されたとき、これらの工程の繰り返しを終了する。図13(a)にこのときの状態を示す。図6(b)に示したエッチング工程終了時のコイルパターン(導体パターン)109の断面が約縦100μm×横200μmであるのに比して、追加めっきを繰り返した後の断面は約縦250〜300μm×横300〜330μmである。
その後、表面研磨を行って、各コイルパターン109の上端面を平坦化する(表面研磨工程)。図13(b)に示すように、表面研磨後の断面は約縦220〜270μm×横300〜330μmの矩形となる。表面研磨が終了した後、図4に示したように、図示しないカッター等の工具、或いは、レーザ等を用いて、コイルシート11ごとに分離される。以上により、コイルシート11が完成する。
【0028】
(積層コイルの製造方法)
以上説明した製造方法を経て製造されたコイルシート11を用いて、積層コイル1が製造される製造方法について以下に説明する。
図14及び図15は、積層コイル1の製造工程を説明するための図である。
図14(a)に示すように、コイルシート11の間に層間樹脂絶縁層の一例としての絶縁シート14が配された状態で、各コイルシート11は積層される(積層工程)。このとき、各コイルシートは、相対するコイルシート11の接続端子26,24が二次元的には同じ位置となるように位置あわせされ、その後、積層される。即ち、第1の実施形態では、2つのコイルシート11は、周方向に45度ずつずらした状態で積層される。ここで、絶縁シート14は、変成エポキシ系樹脂シート、ポリフェニレンエーテル系樹脂シート、ポリイミド系樹脂シート、シアノエステル系樹脂シート等の絶縁性シート(フィルムも含む)で形成され、約20〜80μm厚である。尚、絶縁シート14は、積層コイル1の製造工程において、無機フィラーや熱硬化性樹脂等を含む層間樹脂絶縁層として形成されても良い。
【0029】
図14(b)に示すように、2枚のコイルシート11が積層された後、接続端子26,24の位置に貫通孔28が形成される(貫通孔形成工程)。
そして、図15(a)に示すように、無電解及び電解めっき工程を経て、形成された貫通孔28の内周面にめっきを施すことでスルーホール導体28Tを形成する(無電解めっき及び電解めっき工程)。その後、スルーホール導体28Tにエッチングレジストを被覆し、スルーホール導体28T以外のめっき層をエッチング除去する。これにより、重なり合うコイルシート11は電気的に接続される。
【0030】
その後、図15(b)に示すように、積層されたコイルシート11の上面と下面とに、接続端子24,26の位置に対応した箇所が切り抜かれた絶縁シート14及び放熱板10a,10bが積層される(放電板積層工程)。
そして、最外のコイルシート11a,11h(図2参照)の接続端子24,26に接続コード3a,3bが接続されて、積層コイル1が完成する。なお、絶縁シート14を積層する過程で、接続端子24,26の表面を絶縁シート14が覆ってしまう場合には、接続コード3a,3bを接続する際に、当該絶縁シート14を除去する。
【0031】
(効果の確認)
第1の実施形態にかかる積層コイル1において、半径方向のコイルパターン109の厚さの違いを確認した。
図16は、第1の実施形態にかかる積層コイル1の断面図であり、図17は、比較例として従来の方法で積層コイル1を製造したときの断面図である。即ち、比較例では、短絡線110を用いることなく、絶縁樹脂基板102上に形成されたコイルパターン109の外周側端部にリード線を接続し電位を印加してめっきを行った。
【0032】
図16に示すように、コイルパターン109の外周側付近、中央付近、内周側付近のいずれにおいても、銅めっき層の厚さはほぼ同じに形成される。
これに対して、図17に示すように、比較例では、リード線が接続された外周側端部付近では、導体パターン間の溝を埋めて隣のコイルパターン109とつながる程に銅めっき層が成長している。
第1の実施形態におけるコイルパターン109の中央付近では銅めっき層がほとんど形成されていない。比較例では、めっき時に印加される電位の電位降下の影響が少ない箇所(リード線が接続された外周側端部近辺)にめっきが集中し、コイルパターン109の中央付近では、銅薄膜層にわずかにめっき層が形成されるに過ぎない。即ち、コイルパターン109全体では均一な銅めっき層が形成されないことが判る。
このことから、第1の実施形態のように短絡線110を用いてめっき処理を行えば、コイルパターン109全体にわたって形成される銅めっき層の厚さのばらつきを抑制できることが確認できた。
【0033】
第1の実施形態にかかる導体回路(コイルパターン)の製造方法によれば、隣接する導体パターンやターン数の異なる導体パターンが同電位となるように、異方性導電ゴム111を含む短絡線110を接続する。導体パターンにめっきのための電位を印加してめっき処理を施して導体パターンにめっき層を形成する。導体パターンから短絡線110を除去する。よって、コイルシート11に形成される導体回路(コイルパターン)21,22は、銅めっき層の厚さのばらつきを抑制できる。その結果、高い占積率を有するコイルシート11を提供できる。
【0034】
短絡線再接続工程では、先のめっき工程において短絡線110が接続されてめっき層が形成されなかった箇所(凹部)とは異なる箇所に短絡線を接続して再めっき処理を施す。よって、形成されるコイルパターン109のめっき層の厚さをより均一にすることができる。
めっき工程では、短絡線110を介してコイルパターン109全体にほぼ同じ電位を印加できる。よって、コイルパターン109全体により均一な厚さのめっき層を形成できる。
【0035】
更に、短絡線110は異方性導電ゴム111とリード線112とからなっている。コイルパターン109に短絡線110を所定の圧力で押し付けてめっきのための電位を印加する。よって、めっき時に押圧して短絡線110を導電状態にできると共に、めっき終了後には短絡線110の除去が容易であり、作業性を向上させることができる。短絡線110とコイルパターン109とを確実に接触させることができるので、質の高いめっき処理が行える。異方性導電ゴム111に導電性粒子115が分散された異方性導電ゴム111はめっき層に取り込まれない。よって、短絡線除去工程における短絡線110の除去が容易となる。
更にまた、短絡線110は、めっきリード112を介して所定の圧力で押し付けられるとき異方性導電ゴム111内で導電性粒子115が接触して短絡線110が導通状態となる。よって、コイルパターン109に押し付けられる短絡線110の箇所だけが導電状態となる。不要な箇所はめっきされず、質の高いめっきが実現できる。
【0036】
また、上述した実施形態では、図12に示すように、それ以前に短絡線110が接続された箇所(破線にて表示)と90度異なる箇所に短絡線110が再度接続されて銅めっき層が形成されたコイルシート11を、45度ずらして積層する。かかる場合には、相対するコイルシート11同士が、短絡線110が接続された箇所が重ならないようにずらされて積層されることとなる。ゆえに、図13(b)に示す状態とするための表面研磨を行わずに、短絡線110が接続された箇所に若干の凹部が残ったままの状態でコイルシート11を重ねたとしても、凹部同士は重ならずにずれることとなる。これにより、コイルシート11の表裏面が平坦である場合よりも、コイルシート11と絶縁シート14との密着性が向上する。その結果、通電時に発する熱を効率よく外部へ放出するため放熱性が向上する。
【0037】
コイルパターン109は、コイルシート11の両面に同じ表面から見た場合に互いに同じ巻き方向に形成されている。コイルシート11の両面に形成されたコイルパターン109は、コイルパターン109の内周側端部に形成されたスルーホール導体25を介して電気的に接続される。よって、コイルシート11の表裏面でコイルパターン109の巻き数を稼ぐことができ、占積率を高めることができる。
また、コイルシート11は、コイルシート11の両面に形成されたコイルパターン109の外周側端部がコイルパターン109の中心に対して同じ半径で所定の中心角を有する位置に接続端子24,26として形成され、複数のコイルシート11は、接続端子24,26を介して直列に接続される。よって、複数のコイルシート11を簡易に積層できる。
【0038】
更に、重なり合う2つのコイルシート11の相対する面に形成されたコイルパターン109は、互いに同じ位置の外周側端部に形成されたスルーホールが接続端子24,26を形成して、電気的に接続される。よって、複数のコイルシート11を積層して高い占積率の積層コイル1を実現できる。
更にまた、重なり合う2つのコイルシート11は、絶縁シート14を介して積層される。よって、積層したコイルシート11間での短絡を簡易に防ぐことができる。
更にまた、最外層に放熱板10a,10bを更に有する。よって、通電時のコイルパターン109の発熱を外部に放出できる。
【0039】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では短絡線として異方性導電ゴム111とリード線112とからなる短絡線110を用いた。これに対して、第2の実施形態は短絡線として金属ワイヤーを用いる点で、第1の実施形態と相違する。ここでは、第1の実施形態にて説明したコイルシート11の製造方法のうち、第1の実施形態と相違する短絡線接続工程、めっき工程、短絡線除去工程を中心にして説明する。
貫通孔形成工程において、両面銅張積層板101を出発材料として貫通孔105が形成される。厚銅形成工程にて、無電解めっきと電解めっきが施されて、銅箔103a,103bの上に所定の厚さの銅めっき層が形成されて銅薄膜層105a,105bが形成される。エッチングレジスト形成工程にて、成長させた銅薄膜層105a,105b上にエッチングレジスト108が形成される。そして、エッチング工程にて、エッチング処理が施される。
【0040】
図18は、コイルシート11に短絡線210を接続するときの状態を示す説明図である。
図18(a)に示すように、形成されたコイルパターン109に対して、短絡線210が接続される(短絡線接続工程)。具体的には、すべてのコイルパターン109を接続するように内周側と外周側とをまたぐ状態で短絡線210が接続される点は、第1の実施形態と同じである。
短絡線210は、例えば、銅(Cu)やアルミニウム(Al)、金(Au)等の良好な導電性を有する細線で構成される。短絡線210は、めっき層に取り込まれる。よって、めっき層と主成分が同じ種類の金属で構成すれば、金属の違いによる電気抵抗の差異をなくすることができて好ましい。或いは、電気抵抗が低い金属が好ましい。
【0041】
図19は、コイルパターン109から短絡線210が除去されるときの状態を示す説明図である。
図19(a)に示すように、めっき工程終了時に短絡線210がめっき層に埋まっている。よって、例えば、ドリルやレーザ等を用いて、コイルパターン109に施されためっき層間の短絡線210を切断して除去する(短絡線除去工程)。また、図19(c)に示すように、めっき工程終了時にはコイルパターン109表面に凸部が形成されているので、表面研磨を行って、各コイルパターン109の上端面を平坦化する(表面研磨工程)(図19(b)参照)。
その後、第1の実施形態と同様にして、コイルシート11の間に絶縁シート14を配して、各コイルシート11を積層する(積層工程)。8枚のコイルシート11a〜11hが積層された後、接続端子26,24の位置に貫通孔28を形成する(貫通孔形成工程)。形成された貫通孔28の内周面にめっき層を形成して(無電解めっき及び電解めっき工程)、重なり合うコイルシート11を電気的に接続する。積層されたコイルシート11の上面と下面とに放熱板10a,10bを積層し(放熱板積層工程)、最外のコイルシート11a,11hの接続端子24,26に、接続コード3a,3bを接続して、積層コイル1を完成する。
【0042】
短絡線210を金属ワイヤーで構成するとき、コイルパターン109全体にほぼ同じ電位を印加でき、均一なめっき層を形成できる。このとき、コイルパターン109からはみ出した短絡線210は、例えば、レーザ等により簡易に除去できる。
短絡線210をめっき層と同じ主成分を有する金属で構成すれば、短絡線210はめっき層と同程度の電気抵抗を有するので、コイルパターン109内に金属ワイヤーを残すことができ、作業性が向上する。
また、図19(b)に示す状態とするための表面研磨を行わずに、短絡線210の上に若干の凸部が残ったままの状態でコイルシート11を重ねたとしても、コイルシート11を45度ずらして積層する場合には、凸部同士は重ならずにずれることとなる。これにより、コイルシート11の表面が平坦である場合よりも、コイルシート11と絶縁シート14との密着性が向上する。その結果、通電時に発する熱を効率よく外部へ放出するため放熱性が向上する。
【0043】
尚、上記した第1及び第2の実施形態では、コイルパターン109のように長いが湾曲した導体パターンの近接箇所に短絡線110,210を使って短絡する場合を例にして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、別個の導体パターンの近接箇所に短絡線を使って短絡させることで、均一なめっき層を形成することもできる。
【0044】
また、渦巻状のコイルパターン109を使って説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。図20は、角形に形成されたコイルパターン31を示す図である。図20に示すように、コイルシート30には、角形のコイルパターン31が形成され、コイルパターン31の外周側端部に接続端子34(裏面の外周側端部には接続端子36)、内周側端部にスルーホール導体35が形成されている。このような角形のコイルパターン31であっても、短絡線110を使って全体を同電位に保ち、均一なめっき層を形成することができる。
上記第1及び第2の実施形態では、コイルシート11の外周側端部に形成した貫通穴28(図14(b)参照)の内面にめっき層を形成して、重なり合うコイルシート11を電気的に接続する例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。図21は、積層されるコイルシート11の他の接続形式を示す図である。図21に示すように、積層コイル41において、コイルパターン11の外周側端部に形成される接続端子24,26に導電性物質42が配される。重なり合うコイルシート11は、導電性物質42を介して電気的に接続される。導電性物質42として、例えば、半田等の導電性ペーストや導電性ゴム等を用いる。導電性物質42を介して複数のコイルシート11を簡易に接続できる。
【0045】
上記した第1及び第2の実施形態では、長いが湾曲した導体パターンの一例としてコイルパターンを例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。図22は、導体パターンの他の例としての歪検出素子120の概略図である。図22(a)に示すように、歪検出素子120は、平行に配置された4本の細長い歪検出部121と、歪検出部121に比して幅広の折返接続部122とを有する形状である。図22(b)に示すように、製造時には複数の歪検出素子120が縦横に配列され接続パターンを介して直列に接続された、プリント配線板の一例としての基板70の状態で、電解メッキ等の処理が行われる。短絡線(図示省略)を用い歪検出素子120全体を同電位に保った状態で電解めっきを施すことで、均一なめっき層を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】第1の実施形態にかかる積層コイルの外観斜視図である。
【図2】図1に示す積層コイルの構造を説明するための分解斜視図である。
【図3】図1に示す積層コイルのコイルシートの平面図である。
【図4】コイルシート製造時の状態を説明するための図である。
【図5】図3に示すコイルシートの製造工程を示す説明図である。
【図6】図3に示すコイルシートの製造工程を示す説明図である。
【図7】コイルシートに短絡線を接続するときの状態を示す説明図である。
【図8】短絡線の一例を説明するための図である。
【図9】加圧時の短絡線付近の状態を示す図である。
【図10】コイルシートにめっきが施されるときの状態を示す説明図である。
【図11】コイルパターンから短絡線が除去されるときの状態を示す説明図である。
【図12】コイルシートに短絡線を再接続するときの状態を示す説明図である。
【図13】コイルパターン上に所定の厚さの銅めっき層が形成されたときの状態を示す説明図である。
【図14】図1に示す積層コイルの製造工程を説明するための図である。
【図15】図1に示す積層コイルの製造工程を説明するための図である。
【図16】図1に示す積層コイルの断面図である。
【図17】従来の方法で積層コイルを製造したときの断面図である。
【図18】第2の実施形態にかかるコイルシートに短絡線を接続するときの状態を示す説明図である。
【図19】第2の実施形態にかかるコイルパターンから短絡線が除去されるときの状態を示す説明図である。
【図20】角形に形成されたコイルパターンを示す図である。
【図21】積層されるコイルシートの他の接続形式を示す図である。
【図22】導体パターンの他の例としての歪検出素子の概略図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板上に連続している下層の導体パターンを形成する工程と、
前記連続する下層の導体パターンの2点以上を短絡線で短絡する第1の短絡工程と、
前記導体パターン上に電解めっき膜を形成する第1のめっき工程と、
前記導体パターンから前記短絡線を除去する第1の短絡線除去工程と、
からなる導体回路の製造方法。
【請求項2】
請求項1の導体回路の製造方法において、
さらに、前記第1のめっき工程により前記導体パターン上に形成された電解めっき膜の2点以上を短絡線で短絡する第2の短絡工程と、
前記第1の短絡線除去工程により露出した導体パターン上に電解めっき膜を形成する第2のめっき工程と、
前記電解めっき膜に接続した短絡線を除去する第2の短絡線除去工程と、を有し、
前記第1の短絡工程で導体パターンに接続した短絡線の箇所と前記第2の短絡工程で電解めっき膜に接続した短絡線の箇所は異なることを特徴とする導体回路の製造方法。
【請求項3】
請求項1の導体回路の製造方法において、
前記めっき工程では、前記短絡線を介して電解めっきのための電位を印加することを特徴とする導体回路の製造方法。
【請求項4】
請求項1の導体回路の製造方法において、
前記短絡線は、絶縁体とリード線とからなる導体回路の製造方法。
【請求項5】
請求項4の導体回路の製造方法において、
前記絶縁体は、弾性を有し、当該絶縁体中には導電性粒子が分散されていることを特徴とする導体回路の製造方法。
【請求項6】
請求項1の導体回路の製造方法において、
前記短絡線を前記導体パターンに所定の圧力で押し付けることを特徴とする導体回路の製造方法。
【請求項7】
請求項1の導体回路の製造方法において、
前記短絡線は、金属ワイヤーであって、前記第1の短絡線除去工程は前記導体パターンと導体パターンの間の金属ワイヤーを除去することを特徴とする導体回路の製造方法。
【請求項8】
請求項7の導体回路の製造方法において、
前記金属ワイヤーは、前記電解めっき膜の金属からなることを特徴とする導体回路の製造方法。
【請求項9】
請求項1の導体回路の製造方法において、
前記導体パターンは、前記絶縁基板上に渦巻状に形成されていることを特徴とする導体回路の製造方法。
【請求項10】
第1面と第1面とは反対側の第2面とを有する絶縁層と、
前記絶縁層の第1面上に形成されている第1のコイルパターンと、
前記絶縁層の第2面上に形成されている第2のコイルパターンと、
前記絶縁層を貫通して前記第1と第2のコイルパターンとを接続するスルーホール導体と、からなるコイルシートであって、
前記第1と第2のコイルパターンは下層導体パターンと下層導体パターン上に形成されている電解めっき膜とからなり、当該第1と第2のコイルパターンは複数にターンしており、全体に亘って厚みは略同一であることを特徴とするコイルシート。
【請求項11】
前記請求項10のコイルシートにおいて、
前記スルーホール導体は、前記コイルパターンの内周側端部の導体部分に接続していることを特徴とするコイルシート。
【請求項12】
前記請求項10のコイルシートにおいて、
前記コイルパターンの表面の少なくとも一部に凹部もしくは凸部が形成されていることを特徴とするコイルシート。
【請求項13】
請求項12に記載のコイルシートが複数積層された積層コイルであって、
隣接するコイルシートの第1のコイルパターンの凹部もしくは凸部は、積層コイルの断面方向においてずれていることを特徴とする積層コイル。
【請求項14】
請求項10のコイルシートが複数積層された積層コイルであって、
隣接するコイルシートは、導体により接続されていて、前記導体は、異なるコイルシートに形成されている第1のコイルパターンの外周側端部と第2のコイルパターンの外周側端部とを接続していることを特徴とする積層コイル。
【請求項15】
請求項14に記載の積層コイルにおいて、
前記導体はめっきで形成されていることを特徴とする積層コイル。
【請求項16】
請求項14に記載の積層コイルにおいて、
前記導体は導電性ペーストで形成されていることを特徴とする積層コイル。
【請求項17】
請求項14に記載の積層コイルにおいて、
重なり合う2つの前記コイルシートは、層間樹脂絶縁層又は絶縁性フィルムを介して積層されることを特徴とする積層コイル。
【請求項18】
請求項14に記載の積層コイルにおいて、
最外層に金属薄板を更に有することを特徴とする積層コイル。
【請求項1】
絶縁基板上に連続している下層の導体パターンを形成する工程と、
前記連続する下層の導体パターンの2点以上を短絡線で短絡する第1の短絡工程と、
前記導体パターン上に電解めっき膜を形成する第1のめっき工程と、
前記導体パターンから前記短絡線を除去する第1の短絡線除去工程と、
からなる導体回路の製造方法。
【請求項2】
請求項1の導体回路の製造方法において、
さらに、前記第1のめっき工程により前記導体パターン上に形成された電解めっき膜の2点以上を短絡線で短絡する第2の短絡工程と、
前記第1の短絡線除去工程により露出した導体パターン上に電解めっき膜を形成する第2のめっき工程と、
前記電解めっき膜に接続した短絡線を除去する第2の短絡線除去工程と、を有し、
前記第1の短絡工程で導体パターンに接続した短絡線の箇所と前記第2の短絡工程で電解めっき膜に接続した短絡線の箇所は異なることを特徴とする導体回路の製造方法。
【請求項3】
請求項1の導体回路の製造方法において、
前記めっき工程では、前記短絡線を介して電解めっきのための電位を印加することを特徴とする導体回路の製造方法。
【請求項4】
請求項1の導体回路の製造方法において、
前記短絡線は、絶縁体とリード線とからなる導体回路の製造方法。
【請求項5】
請求項4の導体回路の製造方法において、
前記絶縁体は、弾性を有し、当該絶縁体中には導電性粒子が分散されていることを特徴とする導体回路の製造方法。
【請求項6】
請求項1の導体回路の製造方法において、
前記短絡線を前記導体パターンに所定の圧力で押し付けることを特徴とする導体回路の製造方法。
【請求項7】
請求項1の導体回路の製造方法において、
前記短絡線は、金属ワイヤーであって、前記第1の短絡線除去工程は前記導体パターンと導体パターンの間の金属ワイヤーを除去することを特徴とする導体回路の製造方法。
【請求項8】
請求項7の導体回路の製造方法において、
前記金属ワイヤーは、前記電解めっき膜の金属からなることを特徴とする導体回路の製造方法。
【請求項9】
請求項1の導体回路の製造方法において、
前記導体パターンは、前記絶縁基板上に渦巻状に形成されていることを特徴とする導体回路の製造方法。
【請求項10】
第1面と第1面とは反対側の第2面とを有する絶縁層と、
前記絶縁層の第1面上に形成されている第1のコイルパターンと、
前記絶縁層の第2面上に形成されている第2のコイルパターンと、
前記絶縁層を貫通して前記第1と第2のコイルパターンとを接続するスルーホール導体と、からなるコイルシートであって、
前記第1と第2のコイルパターンは下層導体パターンと下層導体パターン上に形成されている電解めっき膜とからなり、当該第1と第2のコイルパターンは複数にターンしており、全体に亘って厚みは略同一であることを特徴とするコイルシート。
【請求項11】
前記請求項10のコイルシートにおいて、
前記スルーホール導体は、前記コイルパターンの内周側端部の導体部分に接続していることを特徴とするコイルシート。
【請求項12】
前記請求項10のコイルシートにおいて、
前記コイルパターンの表面の少なくとも一部に凹部もしくは凸部が形成されていることを特徴とするコイルシート。
【請求項13】
請求項12に記載のコイルシートが複数積層された積層コイルであって、
隣接するコイルシートの第1のコイルパターンの凹部もしくは凸部は、積層コイルの断面方向においてずれていることを特徴とする積層コイル。
【請求項14】
請求項10のコイルシートが複数積層された積層コイルであって、
隣接するコイルシートは、導体により接続されていて、前記導体は、異なるコイルシートに形成されている第1のコイルパターンの外周側端部と第2のコイルパターンの外周側端部とを接続していることを特徴とする積層コイル。
【請求項15】
請求項14に記載の積層コイルにおいて、
前記導体はめっきで形成されていることを特徴とする積層コイル。
【請求項16】
請求項14に記載の積層コイルにおいて、
前記導体は導電性ペーストで形成されていることを特徴とする積層コイル。
【請求項17】
請求項14に記載の積層コイルにおいて、
重なり合う2つの前記コイルシートは、層間樹脂絶縁層又は絶縁性フィルムを介して積層されることを特徴とする積層コイル。
【請求項18】
請求項14に記載の積層コイルにおいて、
最外層に金属薄板を更に有することを特徴とする積層コイル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
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【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2009−246363(P2009−246363A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−70572(P2009−70572)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)
【Fターム(参考)】
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