説明

導体異物検出装置

【課題】機器を分解したりすることなく電極間に捕捉された導体異物を確実に除去してリセットすることができ、機器の故障や破損につながる摩耗を早期のうちに確実且つ継続的に検出し得る導体異物検出装置を提供する。
【解決手段】機器に供給される潤滑油のドレン排出管路途中に配置した管状ケーシング3内部に、潤滑油中に含まれる導体異物を捕捉可能で該導体異物を捕捉した際に短絡して導通するよう第一の電極4aと第二の電極4bとを網状に組み付けてなる電極フィルタユニット4を、反転軸5を中心に回動可能に配設し、電極フィルタユニット4の第一の電極4aと第二の電極4bとの導通時に反転手段7により電極フィルタユニット4を潤滑油のドレン流通方向と直交する捕捉ポジションPから反転軸5を中心に180°回動させると共に、警報手段から警報を発するよう構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導体異物検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、エンジンや減速器等の各種機器は、軸受や歯車、その他たくさんの摺動部分を有しており、該摺動部分の摩擦抵抗を低減して摩耗を防止するために、潤滑油を供給した状態で運転が行われるようになっているが、特にその使用条件が過酷な場合、摩耗の進行が速く、故障や破損が発生する可能性も高いことから、この種の機器においては、故障や破損につながるような摩耗を早期のうちに確実に検出する必要がある。
【0003】
尚、前述の如き機器の摩耗を検出する装置の一般的技術水準を示すものとしては、例えば、特許文献1があり、該特許文献1に開示されているものでは、潤滑油に浸った複数対の電極間に摩耗粉等の導体異物が付着して捕捉されると、該導体異物を介して電極が導通状態となり、その際の通電抵抗の変化を監視することにより、機器の摩耗を検出するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平5−40698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されているものにおいては、複数対の電極間に捕捉された導体異物を取り除いてリセットするためには、その都度、機器のケーシングにおけるカバー等を取り外して前記導体異物の除去作業を行う必要があり、非常に手間と時間がかかるという欠点を有していた。
【0006】
本発明は、斯かる実情に鑑み、機器を分解したりすることなく電極間に捕捉された導体異物を確実に除去してリセットすることができ、機器の故障や破損につながる摩耗を早期のうちに確実且つ継続的に検出し得る導体異物検出装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、機器に供給される潤滑油のドレン排出管路途中に配置される管状ケーシングと、
該管状ケーシング内部にその径方向へ延びる反転軸を中心に回動可能に配設され且つ前記機器から排出される潤滑油中に含まれる導体異物を捕捉可能で該導体異物を捕捉した際に短絡して導通するよう第一の電極と第二の電極とを網状に組み付けてなる電極フィルタユニットと、
該電極フィルタユニットの第一の電極と第二の電極との間に通電しつつ該第一の電極と第二の電極との導通を検出する検出手段と、
該検出手段から前記第一の電極と第二の電極との導通時に出力される導通検出信号に基づき前記電極フィルタユニットを前記潤滑油のドレン流通方向と直交する捕捉ポジションから前記反転軸を中心に180°回動させて反転させる反転手段と、
前記検出手段から前記第一の電極と第二の電極との導通時に出力される導通検出信号に基づき警報を発する警報手段と、
を備えたことを特徴とする導体異物検出装置にかかるものである。
【0008】
上記手段によれば、以下のような作用が得られる。
【0009】
前記電極フィルタユニットを潤滑油のドレン流通方向と直交する捕捉ポジションに配置した状態で、該電極フィルタユニットの網状に組み付けられた第一の電極と第二の電極との間に、機器から排出される潤滑油中に含まれる導体異物が捕捉されると、該導体異物を介し第一の電極と第二の電極とが短絡して導通し、これが検出手段によって検出されると、該検出手段から前記第一の電極と第二の電極との導通時に出力される導通検出信号に基づき反転手段により前記電極フィルタユニットが前記潤滑油のドレン流通方向と直交する捕捉ポジションから前記反転軸を中心に180°回動して反転するため、電極間に捕捉された導体異物は流通する潤滑油によって確実に除去される一方、前記検出手段から前記第一の電極と第二の電極との導通時に出力される導通検出信号に基づき警報手段から警報が発せられる。
【0010】
この結果、特許文献1に開示されているもののように、複数対の電極間に捕捉された導体異物を取り除いてリセットするために、その都度、機器のケーシングにおけるカバー等を取り外して前記導体異物の除去作業を行う必要がなくなり、手間と時間がかからず、機器の故障や破損につながる摩耗を早期のうちに確実且つ継続的に検出することが可能となる。
【0011】
前記導体異物検出装置においては、前記第一の電極と第二の電極との導通時に前記電極フィルタユニットを反転させた後、再び前記第一の電極と第二の電極との導通が発生するまでの導通発生周期を監視し、該導通発生周期の長さに応じて予め複数段階に設定された警報を発するよう、前記警報手段を構成することができ、このようにすると、摩耗がどの程度進行しているかを段階的に把握することが可能となり、修繕や部品の交換を実施する目安とする上で有効となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の導体異物検出装置によれば、機器を分解したりすることなく電極間に捕捉された導体異物を確実に除去してリセットすることができ、機器の故障や破損につながる摩耗を早期のうちに確実且つ継続的に検出し得るという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例を示す全体概要構成図である。
【図2】本発明の実施例における管状ケーシング内部に配設される電極フィルタユニット及びその反転手段を示す概要斜視図である。
【図3】本発明の実施例における電極フィルタユニットの網状に組み付けられた第一の電極と第二の電極及び検出手段を示す要部拡大図である。
【図4】本発明の実施例における導通発生周期を示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0015】
図1〜図4は本発明の実施例であって、エンジンや減速器等の機器1に供給される潤滑油のドレン排出管路2途中に管状ケーシング3を配置し、該管状ケーシング3内部に、前記機器1から排出される潤滑油中に含まれる摩耗粉等の導体異物を捕捉可能で該導体異物を捕捉した際に短絡して導通するよう第一の電極4aと第二の電極4bとを網状に組み付けてなる電極フィルタユニット4を、前記管状ケーシング3の径方向へ延びる反転軸5を中心に回動可能に配設し、前記電極フィルタユニット4に対し、その第一の電極4aと第二の電極4bとの間に通電しつつ該第一の電極4aと第二の電極4bとの導通を検出する検出手段6を接続し、該検出手段6から前記第一の電極4aと第二の電極4bとの導通時に出力される導通検出信号6aに基づき前記電極フィルタユニット4を前記潤滑油のドレン流通方向と直交する捕捉ポジションPから前記反転軸5を中心に180°回動させて反転させる反転手段7を、前記管状ケーシング3に取り付け、前記検出手段6に、該検出手段6から前記第一の電極4aと第二の電極4bとの導通時に出力される導通検出信号6aに基づき警報を発する警報手段8を接続したものである。
【0016】
本実施例の場合、前記管状ケーシング3は、ドレン排出管路2の水平部2aから下方へ分岐して該ドレン排出管路2の垂下部2bに合流するドレンバイパス管路9途中に配置するようにしてあるが、これは、潤滑油より比重が重く沈みやすい傾向を示す導体異物を捕捉しやすくすると共に、前記ドレン排出管路2の流路抵抗を増大させないようにするためである。
【0017】
又、図2及び図3に示す如く、前記電極フィルタユニット4は、第一の電極4aを縦糸とし、第二の電極4bを横糸として網状に組み付けて構成すると共に、該第一の電極4aと第二の電極4bとをつなぐ電気回路10途中に通電用の電源11と抵抗計12とを設けて前記検出手段6を構成してあるが、前記第一の電極4aと第二の電極4bとをそれぞれ外面が絶縁体によって被覆されたニクロム線等の導線とし、これらを網状に組み付けた電極フィルタユニット4の両面にサンドペーパーをかけ、図3中、仮想線で示す如く、第一の電極4aと第二の電極4bの両面の突出した箇所における被覆のみを部分的に削り取る形とすることにより、これらの箇所が導体異物を捕捉した際にのみ短絡して導通するよう構成してある。
【0018】
一方、摺動を伴う機器1では、一定量の摩耗粉等の導体異物が発生することは異常ではなく、導通が発生する度毎に警報を発することは必ずしも適切な対応であるとは言えないが、導通が発生する時間間隔、即ち導通発生周期Cが短くなると、導体異物の発生量が増加したり、或いは導体異物の大きさが大きくなったことを意味し、そのいずれも機器1の異常を示すものであるため、こうした実情を踏まえ、本実施例においては、図4に示す如く、前記第一の電極4aと第二の電極4bとの導通時に前記電極フィルタユニット4を反転させた後、再び前記第一の電極4aと第二の電極4bとの導通が発生するまでの導通発生周期Cを監視し、該導通発生周期Cの長さに応じて予め複数段階に設定された警報を発するよう、前記警報手段8を構成してある。
【0019】
次に、上記実施例の作用を説明する。
【0020】
前記電極フィルタユニット4を潤滑油のドレン流通方向と直交する捕捉ポジションPに配置した状態で、該電極フィルタユニット4の網状に組み付けられた第一の電極4aと第二の電極4bとの間に、機器1から排出される潤滑油中に含まれる導体異物が捕捉されると、該導体異物を介し第一の電極4aと第二の電極4bとが短絡して導通し、これが検出手段6によって検出されると、該検出手段6から前記第一の電極4aと第二の電極4bとの導通時に出力される導通検出信号6aに基づき反転手段7により前記電極フィルタユニット4が前記潤滑油のドレン流通方向と直交する捕捉ポジションPから前記反転軸5を中心に180°回動して反転するため、電極4a,4b間に捕捉された導体異物は流通する潤滑油によって確実に除去される一方、前記検出手段6から前記第一の電極4aと第二の電極4bとの導通時に出力される導通検出信号6aに基づき警報手段8から警報が発せられる。
【0021】
この結果、特許文献1に開示されているもののように、複数対の電極間に捕捉された導体異物を取り除いてリセットするために、その都度、機器1のケーシングにおけるカバー等を取り外して前記導体異物の除去作業を行う必要がなくなり、手間と時間がかからず、機器1の故障や破損につながる摩耗を早期のうちに確実且つ継続的に検出することが可能となる。
【0022】
しかも、本実施例においては、前記第一の電極4aと第二の電極4bとの導通時に前記電極フィルタユニット4を反転させた後、再び前記第一の電極4aと第二の電極4bとの導通が発生するまでの導通発生周期Cを監視し、該導通発生周期Cの長さに応じて予め複数段階に設定された警報を発するよう、前記警報手段8を構成してあるため、摩耗がどの程度進行しているかを段階的に把握することが可能となり、修繕や部品の交換を実施する目安とする上で有効となる。
【0023】
こうして、機器1を分解したりすることなく電極4a,4b間に捕捉された導体異物を確実に除去してリセットすることができ、機器1の故障や破損につながる摩耗を早期のうちに確実且つ継続的に検出し得る。
【0024】
尚、本発明の導体異物検出装置は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0025】
1 機器
2 ドレン排出管路
3 管状ケーシング
4 電極フィルタユニット
4a 第一の電極
4b 第二の電極
5 反転軸
6 検出手段
6a 導通検出信号
7 反転手段
8 警報手段
11 電源
12 抵抗計
C 導通発生周期
P 捕捉ポジション

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器に供給される潤滑油のドレン排出管路途中に配置される管状ケーシングと、
該管状ケーシング内部にその径方向へ延びる反転軸を中心に回動可能に配設され且つ前記機器から排出される潤滑油中に含まれる導体異物を捕捉可能で該導体異物を捕捉した際に短絡して導通するよう第一の電極と第二の電極とを網状に組み付けてなる電極フィルタユニットと、
該電極フィルタユニットの第一の電極と第二の電極との間に通電しつつ該第一の電極と第二の電極との導通を検出する検出手段と、
該検出手段から前記第一の電極と第二の電極との導通時に出力される導通検出信号に基づき前記電極フィルタユニットを前記潤滑油のドレン流通方向と直交する捕捉ポジションから前記反転軸を中心に180°回動させて反転させる反転手段と、
前記検出手段から前記第一の電極と第二の電極との導通時に出力される導通検出信号に基づき警報を発する警報手段と、
を備えたことを特徴とする導体異物検出装置。
【請求項2】
前記第一の電極と第二の電極との導通時に前記電極フィルタユニットを反転させた後、再び前記第一の電極と第二の電極との導通が発生するまでの導通発生周期を監視し、該導通発生周期の長さに応じて予め複数段階に設定された警報を発するよう、前記警報手段を構成した請求項1記載の導体異物検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−158423(P2011−158423A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−22030(P2010−22030)
【出願日】平成22年2月3日(2010.2.3)
【出願人】(591083406)株式会社ディーゼルユナイテッド (30)
【Fターム(参考)】