説明

導電性エラストマー混合物、その製造方法及びその使用

本発明は、導電性エラストマー混合物及び方法に関する。この混合物は、熱可塑性スチレンエラストマーと、導電性フィラーとしての金属含有粒子とを含んでいる。この混合物は、ポリマーであって、酸がグラフトされている、酸無水物がグラフトされている又は酸コポリマーであり、スチレンエラストマーと共に、IPN(相互貫入ポリマーネットワーク)ネットワーク構造を形成しているポリマーを更に含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
発明の背景
本発明は、熱可塑性スチレンエラストマーと、導電性フィラーとしての金属含有粒子とを含んだ導電性エラストマー混合物に関する。
【0002】
本発明は、更には、熱可塑性スチレンエラストマーと、導電性フィラーとしての金属含有粒子とを含んだエラストマー混合物の製造方法に関する。
【0003】
本発明は、また更には、導電性シールにおける、請求項1乃至13の何れか1項記載のエラストマー混合物の使用に関する。
【0004】
それらの電気的特性に関して言えば、ポリマー及びポリマー混合物は、通常、誘電体である。しかしながら、幾つかの用途では、ポリマー材料が或る程度の導電性であることが有利である。このような用途は、例えば、引火性物質用の帯電防止パッケージ、容器及び配管、静電塗装可能な成形品並びにそれ自体が知られている他の多くの用途を含んでいる。更には、絶え間なく増加している電子デバイスの数は、一方では、それら電子回路が他の電子デバイスを原因とする電磁障害から保護されねばならず、他方では、外側にあるこのようなデバイスを原因とする電子妨害が低減されねばならないという事実をもたらしてきた。言い換えれば、デバイスは、EMI遮蔽されねばならない。導電性は、多くの場合、マトリックス材料として働く実質的に非導電性であるポリマーを、導体フィラーとして働く金属若しくは金属被覆粒子、炭素若しくはグラファイト又はこれらの組み合わせと配合することによって達成される。
【0005】
用語エラストマーは、巨大分子(macro-molecules)から構成されており、伸展性と、張力解放後の元の形状への迅速回復とを特徴とする材料を指している。マトリックス材料が熱硬化性材料、例えばシリコンポリマーである導電性エラストマー混合物が知られている。このようなマトリックス材料は、エラストマー特性を達成するため及び、一般的には、製品を実用的にするために、架橋されねばならない。架橋は、非常にエネルギーと時間とを消費し、また、それは、特別な架橋装置を必要とするものであり、製品を製造するのを遅くし、高価にする。従来技術は、導電性熱可塑性エラストマー混合物も含んでいる。熱硬化性材料と比べると、これら材料は、処理が速く、安価ではあるが、それらの固有抵抗値は、多くの場合、熱硬化性材料のものよりも高い。
【0006】
エラストマー混合物を導電性とするために、それと配合された導電性粒子は互いに接触していなければならないか、又は、それら粒子間の距離は、効果的なトンネル電流がそれらの間に流れるのを可能とするように十分に小さくなくてはならない。更には、これら粒子は、マトリックス材料を貫通した鎖を形成すべきである(G. R. Ruschauら、J. Appl. Phys. 72, 1992年, p.953乃至959)。導電粒子の体積分率は、上述の条件が満たされるように十分に大きくなくてはならない。しかしながら、フィラーの体積分率の増加は、(とりわけ)エラストマー混合物の機械的特性、加工性又は表面の品質を損なわせる。更に、材料が、多くの場合、一層高価となる。それ故、導電性を向上させるために、体積分率を際限なく増加させることはできない。
【0007】
導電フィラーの導電性を、粒子の表面を様々な方法で処理することにより向上させることが知られている。或る選択肢は、粒子を導電性ポリマーで直接被覆することを採用することである。例えば、ニッケル粒子は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)が最初にニッケル粒子の表面へと塗付される方法を使用して、ポリピロールで被覆されてきた(Genetti W. B.ら、J. Mater. Sci. 33, 1998年, p.3085乃至3093)。SDSは、二重層をニッケル粒子の周りに形成する界面活性剤である。次に、ピロールが、この二重層の内側で重合に供された。これは、粒子充填ポリエチレンの固有導電率を相当向上させた。
【0008】
米国特許第6875375号は、エラストマーマトリックスと、導電性フィラーとしての金属被覆粒子とを含んだ導電性熱可塑性エラストマー混合物を開示している。導電性粒子は、自己組織化(self-assembled)分子層で少なくとも部分的に被覆されている。任意に、被覆は、この自己組織化分子の間に定着した分子導体を含有していても良い。このエラストマー混合物の固有抵抗率は低く、圧縮の影響を原因として実質的に増加することはない。
【0009】
また、ステアリン酸の添加が、米国特許第6875375号において開示された被覆材料のものに似た効果を有することも知られている。
【0010】
しかしながら、既知の導電性熱可塑性エラストマー混合物は、重要な問題を抱えている。即ち、このような混合物は、多くの場合、シールの製造のために使用される。典型的には、シールは細長い物体であり、多くの場合、閉ループをその断面がその長さに比べて小さくなるように形成している。このような製品が射出成形で製造される際、溶融したエラストマー混合物は、押し込まれて、長い距離に亘って、金型空洞を構成している狭い流路内を流れる。言い換えると、金型の内側の、ゲートであって、これを通してエラストマー混合物が金型空洞の中へと供給されるゲートと、ウェルドライン、即ち、金型空洞を満たす材料流が互いに合流する金型空洞内の位置との間の流れ距離は長い。結果的に、エラストマー混合物は、金型が満たされるプロセスの間中、大きな剪断力を受ける。広く知られているように、エラストマー混合物は、流動性エラストマー混合物の流量が、流路の表面付近では最低であり、流路の断面の中心線に近付くと増加するように、流路の中を流れる。このような流れの状況では、固体フィラーを含有したエラストマー混合物は、しばしば、非均質化(non-homogenization)に供され、このエラストマー混合物の流路の表面付近を流れるか又は既にその表面に付着した部分に実際に属する幾らかの粒子は、この部分から離れていき、流路の内側の部分において流れる混合物と共に伝播する。この現象のため、ゲート付近でのエラストマー混合物の導電性フィラーのコンシステンシーは、金型内へと供給されたエラストマー混合物の導電性フィラーのものよりも相当に低い。これは、ゲート付近の電気抵抗の値を相当増加させ、これが、シールがその導電性について設定された要求を満たさない理由である。
【0011】
発明の概説
本発明の目的は、新規であり、向上した導電性を有するエラストマー混合物と、導電性エラストマー混合物の製造方法とを提供することである。
【0012】
本発明に従う導電性エラストマーは、ポリマーであって、酸グラフト(acid-grafted)、酸無水物グラフト(acid-anhydride-grafted)又は酸共重合官能基を含有し、スチレンエラストマーと共にIPN(浸透性ポリマーネットワーク(Interpenetrate Polymer Network))ネットワーク構造を形成しているポリマーを更に含んでいることを特徴としている。
【0013】
本発明に従う方法は、熱可塑性スチレンエラストマーと、酸グラフト、酸無水物グラフト又は酸共重合官能基を含有しており、スチレンエラストマーと共にIPN(浸透性ポリマーネットワーク)ネットワーク構造を形成するポリマーとを互いに混ぜ合わせることと、金属含有導電性フィラーを先のIPN中へと混合させることとを特徴としている。
【0014】
本発明の発想は、酸グラフトされている、酸無水物グラフトされている又は酸コポリマーであるポリマーが、連続ネットワーク構造をマトリック中に形成することと、導電性フィラーが先のネットワーク構造の表面への道を見つけることと、この導電性フィラーが先のネットワーク構造に束縛されることとにある。
【0015】
本発明の或る利点は、混合物のポリマー及び導電性粒子が、金型内を流れる間、互いから分離しないことにある。
【0016】
本発明の或る実施形態の発想は、この混合物が好ましくはポリフェニレンオキシド(PPO)を更に含んでいることである。この利点は、PPOが、混合物の耐熱性及び残留圧縮(residual compression)の双方の値を向上させることにある。
【0017】
本発明の他の実施形態の発想は、混合物が、グラフトされていないポリオレフィン、ポリアミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート又はエチレン/ビニルアセテートを含んでいることである。この利点は、混合物の強度及び加工性が更に向上されることにある。
本発明の幾つかの実施形態を、添付の図面において説明する。
【0018】
本発明の幾つかの実施形態の詳細な説明
表1に従う混合物が調製された。
【表1】

【0019】
エラストマーは、Karaton 6933ESという名称で販売されており、Kraton Polymersによって製造されているSEBS(スチレン−エチル−ブチレン−スチレン)エラストマーであった。オイルは、Exxon Mobilによって製造されているPrimol 352ホワイトオイルであった。抗酸化剤は、Irganox 1010及び168の両方の材料を含んでおり、2つの材料の両方とも、Ciba Ceigyによって製造されている。PPOは、ポリフェニレンオキシドとポリスチレンとの混合物であり、General Electricによって製造され、Noryl 6370Cという名称で販売されている材料であった。PPは、HE 125Mという名称で販売され、Borealis Polymersによって製造されているポリプロピレンであった。PAは、Kopa 136という名称で販売されており、Kolon Engineering Plasticsによって製造されているポリアミド6であった。MAH−ポリマーは、Polybond 3200という名称で販売されており、Chemtura Corporationによって製造されている無水マレイン酸がグラフトされたポリプロピレンであった。
【0020】
まず、エラストマー、オイル及び抗酸化剤を、高速混合機において、オイルが吸収され、高流動性粉末(highly flowable pluver)が得られるように互いに混合することによって、混合物が配合された。次に、他の構成成分が先の粉末と混合され、混合物が、Berstrof ZE 40二軸スクリュー押出機内で配合された。押出機のスクリュー及び混合条件によって、500...5000s-1という剪断速度の範囲を達成することができた。このようにして、ポリマー及びMAH−ポリマーは、別個の連続IPN構造をエラストマー中に形成した。配合の間、相構造(phase structure)の形成が、溶融強度と、試験サンプルの伸び及び引張り強度の両方とを観察することによって調べられた。連続IPN構造は、試験サンプルの引張り強度を向上させた。
【0021】
配合の最中、押出機に対して設定された温度は、供給位置から順に、摂氏で表すと、20−120−200−220−240−200−200−200であった。スクリューは300rpmで回転し、供給量は20kg/時であった。
【0022】
SEBSの代わりに、エラストマーは、例えば、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン(SEPS)、スチレン−ブチレン−スチレン(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)、スチレン−エチル−ブチレン(SEB)若しくは他の類似の熱可塑性スチレンエラストマー、前記種類のうちの2種以上の熱可塑性スチレンエラストマーの混合物又は、1種以上のスチレンエラストマー成分に加えて、これらに対して非混和性(unmixable)のポリマーを有している混合物でも良い。
【0023】
混合物1はグラフトされていないポリプロピレンを含有しており、混合物2乃至6は、ポリプロピレンをグラフトされたMAHポリマーとしてのみ含有しているか、又は、それとグラフトされていないものとを含有し、エラストマーは微細なIPNネットワーク構造を形成した。このような現象は、配合が、高い(500...5000s-1)剪断速度で行われる際に起こる。ポリプロピレンは、ホモポリマー若しくはコポリマー、ブロックポリマー又は異相(heterophase)ポリマーでも良いことが気付かれるべきである。また、ポリエチレン又はエチレン−プロピレン−ジエンコポリマーなどの他のポリオレフィンでも良い。また、混合物6によって示されているように、ポリアミドもIPNネットワーク構造を形成し得る。また、IPNネットワーク構造は、少なくともポリブチレンテレフタレート(PBT)と、ポリカーボネート(PC)と、ポリエーテルスルフォン(PES)と、エチレンビニルアセテート(EVA)とによって形成されても良い。
【0024】
スチレンエラストマーのゴム部分は、鉱油を用いて軟化された。脂肪族油(alifatic oil)を使用することによって、オイルがスチレン部分に吸収されるのを防ぐことができ、良好な残留圧縮値を有する軟質混合物を達成するのを可能にする。
【0025】
これに関し、オイル、抗酸化剤又はPPOは必要ではなく、それらは、製造されるべき製品の特性がこれら薬品の使用を必要としない場合には省略され得ることが気付かれるべきである。例えば、製造されるべき製品の残留圧縮についての特別な要求が決められていない場合には、PPOを添加する必要はない。
【0026】
このように、上で製造された混合物2乃至6のIPNネットワーク構造は、マレイン酸がグラフトされたポリオレフィンを含んでいる。また、これに代えて又はそれと共に、酸コポリマーが使用されても良い。グラフト又は共重合において形成される官能基は、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸若しくはフマル酸、又はこれらの酸無水物でも良い。また、2種以上の互い異なる官能基が、ポリマーへとグラフト又は共重合されていても良い。このようなポリマーは、例えば、エチレン−ブチルアクリレート−グリシジルメタクリレートのターポリマーなどのグリシジル含有化合物を含んでいる。本願において、概念「コポリマー」及び「共重合」もまたターポリマー及びその製造を指すことが、別途気付かれるべきである。IPNネットワーク構造によって形成されるポリマーは、酸グラフト又は酸共重合ポリオレフィンに加えて、ポリオレフィン、ポリアミド又は他の半晶質ポリマーなどの他のポリマーも含んだ混合物でも良い。
【0027】
配合したサンプルが、室温のトルエンを用いて、12時間に亘って抽出された。次に、これらサンプルは、清浄なトルエンで洗浄された。不溶のポリマーは、ポリプロピレン、マレイン酸グラフトポリプロピレン又はこれらの混合物であり、その中に、微細なネットワーク構造、即ち、IPNネットワーク構造が、顕微鏡で確かめられた。全てのサンプルがこの構造を含有していたことが確証された。
【0028】
次に、導電性フィラーが、表2に従った量で、混合物1乃至9へと添加されて、9つのサンプル混合物が得られた。混合を向上させるために、エラストマー粉体(granule)は、ステアリン酸を用いて、配合前に、以下のように処理された。30mlのPrimol 352オイルが、70度の温度まで加熱された。これが、4gのステアリン酸と、酸が溶解するように混合された。この暖かい混合物が、先の粉体と混合された。ステアリン酸の代わりに、幾つかの他の巨大分子のカルボン酸が使用されても良い。しかしながら、酸処理が必要ではないことが気付かれるべきである。
【表2】

【0029】
Niフレークは、Novamet 75%という名称で販売されており、Novamet Specialty Products Corporationによって製造されているニッケル被覆グラファイトであった。Agボールは、N3000S3Nという名称で販売されている銀被覆のガラスボールを指しており、Ag繊維は、SF82TF8という名称で販売されており、Potter Industries Inc.によって製造されている銀被覆ガラス繊維を指している。
【0030】
サンプル混合物は、75重量部の導電性フィラー及び25重量部の混合物を含有していた。また、当然ながら、この比は、主に所望の値の導電性及びフィラーの比重に応じて、別のものでも良い。もちろん、導電性フィラーは、他の有機若しくは無機の金属被覆粒子又は全て金属からなる粒子でも良い。サンプルの混合物は、エラストマー混合物を調製するのに使用されたものと同様の押出機内で配合された。このとき、スクリュー構造体は、単に混合用であって、剪断速度は低かった。配合条件は、以下のようであった。押出機用に設定された温度を、供給位置から順に摂氏で表すと、20−150−200−200−200−200−200−200であった。スクリューは、150rpmで回転し、供給量は20kg/時であった。
【0031】
MAHポリマーのネットワーク構造のおかげで、それは、フィラー材料粒子を被覆していない。
【0032】
これに関し、熱可塑性エラストマー及びマレイン酸グラフトポリマーを押出機内へと、その始端の位置で供給すること、及び、導電性フィラーを熱可塑性エラストマー及びマレイン酸グラフトポリマーへとより遠方の供給口を通して供給することがまた可能であることが気付かれるべきである。これは、同一の押出成形動作の間に、完成した導電性エラストマー混合物を確保する。この混合手順は、当然、回分混合機において行われても良い。
【0033】
機械的特性及び残留圧縮を測定するために、試験部品が、エラストマー混合物1a乃至9aから射出成形された。残留圧縮は、24時間に亘り85℃の温度に保たれたサンプルで測定された。測定結果は、表3に示されている。
【表3】

【0034】
図3から分かり得るように、MAHポリマー含有エラストマー混合物2a乃至5a及び5a乃至9aの引張り強度、降伏強さ、降伏歪み及び残留圧縮は、MAHポリマー非含有エラストマー混合物1a及び6aのものよりも、相当良好である。
【0035】
また、100部のSEBSと、300部のオイルと、4部の抗酸化剤と、45部のPPOと、35部のPAと、Kraton FG1901Xの名称で販売されおり、酸がグラフトされた35部のSEBSとを含有した導電性エラストマー混合物も調製された。導電性フィラーはNiフレークから構成されており、その量は75部であり、混合物は25部を占めていた。このエラストマー混合物の残留圧縮は70%であった。即ち、むしろ劣っていた。
【0036】
図1は、本発明に従った導電性エラストマー混合物から製造されたシールを示した概略平面図である。図1に従った電磁放射線遮蔽での使用のためのシールが、エラストマー1a乃至9aから射出成形された。シールの断面は円形であった。金型空洞のゲートの位置、即ちエラストマー混合物が金型空洞の中へと射出された位置は、参照番号1によって示されている。ウェルドライン、即ち金型空洞内に広がるエラストマー流が互いに合流する点は、参照番号2によって示されている。本発明に従うエラストマー混合物は、当然、他の形状のシール又は他の製品の製造も同様に可能にすることが気付かれるべきである。製品は必ずしも射出成型によって製造される訳ではないことが更に気付かれるべきである。本発明に従うエラストマー混合物の溶融強度は、明らかに、以前から知られているエラストマー混合物のものよりも高いので、シート及び異形材(profile)などを押出法を使用することによって製造するのは、相当容易である。
【0037】
図1に従う導電性シールを形成する金型空洞において、ゲート1とウェルドライン2との間の流れ距離は長い。シールがその全ての部分で良好な導電性を有するべきことは明らかである。十分な導電性は、シールの全ての部分において導電性フィラーの十分な濃度を必要とする。
【0038】
図1に従うシールにおけるフィラー濃度は、Perkin Elmer TGA分析器を用いて測定された。抵抗値は、Agilent 34401Aマルチメーターを用い、測定対象物がアルミニウムシート上に置かれ、MIL-G-83528A規格に従う電極がこの対象物の上部に置かれて測定された。このメーターは、シートと電極の一端との間に接続された。読みは、シール材がアルミニウムシートと電極との間で垂直に生じさせる抵抗を示していた。フィラー濃度及び抵抗値は表4に示されている。
【表4】

【0039】
シールがエラストマー混合物1a乃至6aから製造された場合、ゲート1付近のフィラー濃度が、金型空洞内へと射出されたエラストマー混合物における75%というフィラー濃度よりも約3...4パーセント低いことが、表4から分かり得る。フィラー濃度の減少は、ゲート1付近において、電気抵抗を著しく増加させる。このようなシール材は実用的ではない。同様に、ウェルドライン2付近において、フィラー濃度は、射出されたエラストマー混合物における値よりも2...3%高く、電気抵抗値はウェルドライン2の位置では良好である。しかしながら、シールの実用性はその導電性が最も小さい部分によって決定されるので、これはシール材を実用的にするわけではない。
【0040】
実際、エラストマー混合物のフィラー濃度は、これは混合物の溶融粘度及び硬度の増加をもたらすであろうから、増加させられることはできない。溶融粘度の増加は、製品の形成可能性を制限し、硬度はシールとしての材料の使用を制限する。
【0041】
本発明のエラストマー混合物の利点は、製品の製造中に混合物が大きな剪断力を受ける場合、及び、混合物の流れ距離が長い場合に際立ってくる。
【0042】
エラストマー混合物1a乃至9aに加えて、調製の最中にフィラー粒子を処理するのにカルボン酸を使用しなかったこと以外はエラストマー混合物6aに対応した混合物が調製された。このエラストマー混合物の電気抵抗は、エラストマー混合物6aのものの更に10乃至100倍であった。
【0043】
幾つかの場合においては、本願において開示された特徴は、他の特徴に関わらず、それだけで使用され得る。一方、必要であれば、本願において開示された特徴は、別の組み合わせをつくるために、組み合わされても良い。
【0044】
図面及び関連する記載は、本発明の発想を例証するようにのみ意図されている。本発明の細部は、特許請求の範囲内で変わっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に従う導電性エラストマー混合物から製造されたシールを示した概略上面図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性スチレンエラストマーと、導電性フィラーとしての金属含有粒子とを含んだ導電性エラストマー混合物であって、
ポリマーであって、酸グラフト、酸無水物グラフト又は酸共重合官能基を含有し、前記スチレンエラストマーと共にIPN(相互貫入ポリマーネットワーク)ネットワーク構造を形成しているポリマーを更に含んだことを特徴とするエラストマー混合物。
【請求項2】
請求項1記載のエラストマー混合物であって、前記ポリマーがポリオレフィンを含んでいることを特徴とするエラストマー混合物。
【請求項3】
請求項2記載のエラストマー混合物であって、前記ポリオレフィンがポリプロピレンを含んでいることを特徴とするエラストマー混合物。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項記載のエラストマー混合物であって、前記IPNネットワーク構造がポリアミドを含んでいることを特徴とするエラストマー混合物。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項記載のエラストマー混合物であって、前記スチレンエラストマーが、以下のスチレンエラストマー:SEBS、SEPS、SBS、SIS、SEBのうちの少なくとも1種を含んでいることを特徴とするエラストマー混合物。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項記載のエラストマー混合物であって、100部のスチレンエラストマーと、10...50部のポリマーとを含んだことを特徴とするエラストマー混合物。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1項記載のエラストマー混合物であって、210...300部の鉱油を含んだことを特徴とするエラストマー混合物。
【請求項8】
請求項7記載のエラストマー混合物であって、前記鉱油が、パラフィン油などの脂肪族油であることを特徴とするエラストマー混合物。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか1項記載のエラストマー混合物であって、ポリフェニレンオキシド(PPO)を更に含んだことを特徴とするエラストマー混合物。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか1項記載のエラストマー混合物であって、前記導電性フィラーがニッケル又は銀被覆フィラーであることを特徴とするエラストマー混合物。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れか1項記載のエラストマー混合物であって、官能基として、前記ポリマーが、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸若しくはフマル酸又はこれらの酸無水物を含んでいることを特徴とするエラストマー混合物。
【請求項12】
請求項1乃至11の何れか1項記載のエラストマー混合物であって、前記IPNネットワーク構造を形成している前記ポリマーが、グラフトポリマー及び/又は酸共重合ポリマーのみを含んでいることを特徴とするエラストマー混合物。
【請求項13】
請求項1乃至12の何れか1項記載のエラストマー混合物であって、ステアリン酸などのカルボン酸を更に含んだことを特徴とするエラストマー混合物。
【請求項14】
熱可塑性スチレンエラストマーと、導電性フィラーとしての金属含有粒子とを含んだ導電性エラストマー混合物の製造方法であって、
前記熱可塑性スチレンエラストマーと、酸グラフト、酸無水物グラフト又は酸共重合官能基を含有しており、前記スチレンエラストマーと共にIPN(相互貫入ポリマーネットワーク)ネットワーク構造を形成するポリマーとを互いに混ぜ合わせることと、
金属含有導電性フィラーを前記IPN構造中へと混合させることと
を特徴とする方法。
【請求項15】
請求項14記載の方法であって、
前記熱可塑性スチレンエラストマー及び前記ポリマーを、第1混合機内で互いに混ぜ合わせることと、
前記スチレンエラストマー及び前記ポリマーによって形成されており且つ前記IPN構造を有した前記混合物を、前記第1混合機から取り出すことと、
前記導電性フィラーを、別の混合手順において、前記IPN構造中へと混合させることと
を特徴とする方法。
【請求項16】
請求項15記載の方法であって、前記混合機が押出機であることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項15記載の方法であって、前記混合機が回分混合機であることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項14記載の方法であって、
押出機の始端の位置で、前記熱可塑性スチレンエラストマー及び前記ポリマーを互いに混ぜ合わせることと、
前記押出機の終端の位置で、前記導電性フィラーを前記IPN構造中へと混合させることと
を特徴とする方法。
【請求項19】
請求項14乃至18の何れか1項記載の方法であって、前記フィラーを、それを混合物中へと混合させる前に、カルボン酸を用いて処理することを特徴とする方法。
【請求項20】
導電性シールにおける、請求項1乃至13の何れか1項記載のエラストマー混合物の使用。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2009−530466(P2009−530466A)
【公表日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−500881(P2009−500881)
【出願日】平成19年3月21日(2007.3.21)
【国際出願番号】PCT/FI2007/050151
【国際公開番号】WO2007/107639
【国際公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(501349387)
【Fターム(参考)】