説明

導電性ローラ、その製造方法、及び画像形成装置

【課題】低硬度で成形性が良好な導電性ゴム体を有する導電性ローラ、及びその製造方法、並びにかかる導電性ローラを備えた画像形成装置の提供を目的とする。
【解決手段】画像形成装置10には帯電ローラ12、現像ローラ18、入口側搬送ローラ22、転写ローラ26、出口側搬送ローラ35といった各種導電性ローラが設けられている。これら導電性ローラにおいては、導電性だけでなく、感光ドラム11やシート材Pとのニップ幅を十分確保するために低硬度性の機能が要求される。この場合に、導電性ローラの表層を構成するゴム体には、金属細線を絡めて束子状とした金属束子状体が埋設されている。そして、この金属束子状体の隙間を埋めるようにシリコーンゴムが充填されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性ローラ、その製造方法、及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンタなどの画像形成装置は、感光ドラム等の像担持体を有している。そして、用紙等のシート材への画像形成は、像担持体の外周面に静電潜像を形成し、この静電潜像にトナーを付着させてトナー像を形成した後、転写領域においてシート材にトナー像を転写し、定着領域において定着させることで行われる。
【0003】
かかる画像形成装置には、静電潜像の形成の前段階において像担持体を均等に帯電させる帯電ローラ、像担持体に形成された静電潜像にトナーを付着させる現像ローラ、転写領域においてシート材にトナー像を転写させる転写ローラ、転写領域に搬送される前や当該転写領域を通過した後のシート材を除電する除電ローラ等といった複数種の導電性ローラが設けられている。
【0004】
これら導電性ローラは、金属製の軸部の外周面に円筒状の導電性ゴム体が設けられている。このように導電性ゴム体を設けることにより、導電性ローラの表層が低硬度となり像担持体やシート材に対して所定のニップ幅が確保される。そして、ニップ幅が確保されることにより、帯電,現像,転写,除電等が良好なものとなる。また、転写ローラや除電ローラに関してはシート材の搬送を円滑に行うことができる。
【0005】
ここで、上記ゴム体としては、ゴム材料にカーボンブラックなどの導電剤を混合して分散させたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この場合、導電剤により帯電や除電等の機能が果たされ、ゴム材料により所定のニップ幅を確保する機能が果たされる。しかしながら、上記のように導電剤を分散させた構成において帯電や除電等の各機能が十分果たされる導電性ローラを得るためには、ゴム材料に対して導電剤を多量に添加する必要がある。この場合、導電性ゴム体の低硬度化を図れなくなってしまい、さらには導電性ゴム体の成型段階においてゴム材料と導電剤との混合物の粘度が高くなり成形性が悪化してしまうといった不都合が生じる。特に、除電ローラにおいては帯電ローラや転写ローラに比べて低い体積抵抗率が要求されるため、上記問題はより顕著となる。
【特許文献1】特開2006―58378号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、低硬度で成形性が良好な導電性ゴム体を有する導電性ローラ、及びその製造方法、並びにかかる導電性ローラを備えた画像形成装置の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するのに有効な手段等につき、必要に応じて作用、効果、より踏み込んだ具体的手段等を示しつつ説明する。なお以下では、理解を容易にするため、発明の実施の形態において対応する構成を括弧書き等で適宜示すが、この括弧書き等で示した具体的構成に限定されるものではない。
【0008】
手段1.導電性を有する軸体(軸体41)と、導電性を有し当該軸体の外周面に設けられた円筒状の導電性ゴム体(ゴム体42)とを備え、
当該導電性ゴム体には、柔軟性を有する金属繊維を絡ませて集合させた金属繊維集合体(金属束子状体43)を、前記軸体と前記導電性ゴム体の外周面とを導通するように埋設したことを特徴とする導電性ローラ。
【0009】
手段1によれば、導電性ローラを構成する導電性ゴム体には金属繊維集合体が埋設されており、この金属繊維集合体により導電性ゴム体に導電性が付与されている。また、柔軟性を有する金属繊維を絡ませて金属繊維集合体が形成されているので、導電性ゴム体の変形に際して金属繊維集合体が追従して変形する。
【0010】
従来のように、ゴム材料にカーボンブラックなどの導電剤を混合して分散させた導電性ゴム体において軸体と導電性ゴム体の外周面との導通を確保するためには、ゴム材料内に分散された多数の導電剤がそれぞれ近接した位置に配置される必要がある。したがって、ゴム材料に対する導電剤の混合量が多くなり、これに伴って低硬度化を図れなくなる。
【0011】
これに対して、本手段の構成によれば、金属繊維を絡ませて集合させた金属繊維集合体により軸体と導電性ゴム体の外周面との導通が確保されているため、ゴム材料に対する金属繊維の混合量を抑えたとしても導電剤を混合した導電性ゴム体と同程度の体積抵抗率を得ることができる。よって、導電性ゴム体の低硬度化を図ることができる。特に、除電ローラのように低い体積抵抗率が要求される導電性ローラにおいては、低抵抗率化と低硬度化との両立を図ることができる。
【0012】
また、導電性ゴム体の成型時においては、金型に金属繊維集合体を配置し、その後、金属繊維集合体の形態を概ね保持させつつゴム材料を射出して硬化することで、金属繊維が全体に分散された導電性ゴム体を得ることができる。つまり、ゴム材料への金属繊維の分散工程を行うことなく、上記手段1における効果を得ることができる。
【0013】
手段2.前記ゴム材料は、液状ゴム材料を硬化してなることを特徴とする手段1に記載の導電性ローラ。
【0014】
手段2によれば、導電性ゴム体の成型時においては、当該ゴム体の金型に金属繊維集合体を配置し、硬化前の液状ゴム材料を流し込む(射出する)。そして、その液状ゴム材料を硬化させることで金属繊維集合体が埋設された導電性ゴム体を得ることができる。かかる構成とすることにより、金型に流し込むゴム材料の粘度はその液状ゴム材料特有の粘度となり、上記手段1のように低硬度化を可能とした導電性ローラにおいて成型時の作業性を良好なものとすることができる。
【0015】
なお、液状ゴム材料として液状シリコーンを用いるのが好ましい。液状シリコーンは一般的に粘度が低いため、上記手段1のように低硬度化を可能とした導電性ローラにおいて成型時の作業性を良好なものとすることができる。さらに、このような低粘度のゴム材料を用いることによりゴム材料を金型に流し込む際に金属繊維集合体が圧縮されてしまうことが抑制され、金型に配置した際の金属繊維集合体の形態を概ね保持させることが可能となる。また、シリコーンゴムは適度に低硬度であり十分な変形回復力を有するため、導電性ゴム体の低硬度化が良好に実現される。
【0016】
手段3.金型(金型50)に前記金属繊維集合体を配置する工程と、その金型に液状のゴム材料(液状シリコーンL)を流し込む工程と、その流し込んだゴム材料を硬化させる工程とを備えたことを特徴とする手段1又は手段2に記載した導電性ローラの製造方法。
【0017】
手段3によれば、金型に金属繊維集合体を配置し、その後、その金型に液状のゴム材料を流し込んで硬化させることで導電性ゴム体が成型される。これにより、金型に流し込むゴム材料の粘度はその液状のゴム材料特有の粘度となり、低硬度化を可能とした導電性ローラにおいて成型時の作業性を良好なものとすることができる。
【0018】
また、従来のようにゴム材料にカーボンブラックなどの導電剤を混合した導電性ゴム体を備えた構成においては、ゴム材料に導電剤を混合する工程と、その導電剤を分散させる工程とを少なくとも行う必要がある。これに対して、本手段における製造方法によれば、このような工程を行う必要はなく、それに代えて金属繊維集合体を金型内に配置するだけでよい。よって、工程数が削減され作業効率を向上させることができるとともに、混合用機械や分散用機械さらにはそれらを操作する作業者などを必要としないことから製造コストの削減を図ることができる。
【0019】
手段4.手段1若しくは手段2に記載の導電性ローラ、又は手段3の製造方法により製造された導電性ローラを備えたことを特徴とする画像形成装置。
【0020】
画像形成装置には、帯電ローラ(帯電ローラ12)、現像ローラ(現像ローラ18)、転写ローラ(転写ローラ26)、及び除電ローラ(入口側搬送ローラ22、出口側搬送ローラ35)などといったように導電性ローラが多様な箇所で使用される。そして、これらのローラにおいては感光ドラムやシート材とのニップ幅を確保するために、導電性ゴム体に対して低硬度化が要求されている。この場合に、上記手段1又は手段2の導電性ローラを各種ローラとして使用することにより、所望の体積抵抗率を得つつ導電性ゴム体の低硬度化を図ることができる。さらには、上記手段3の製造方法で製造した導電性ローラを各種ローラとして使用することにより、各種ローラの製造コストの削減が図れるのに伴って画像形成装置の製造コストの削減を図ることができる。
【0021】
手段5.シート材(シート材P)に画像を形成する画像形成領域(転写領域25)と、当該画像形成領域に向けてシート材を搬送する、又は当該画像形成領域にて画像が形成されたシート材を搬送する搬送ローラ(入口側搬送ローラ22、出口側搬送ローラ35)とを備えた画像形成装置であって、
前記搬送ローラを、手段1若しくは手段2に記載の導電性ローラ、又は手段3の製造方法により製造された導電性ローラとしたことを特徴とする画像形成装置。
【0022】
手段5によれば、搬送ローラが導電性ローラにより構成されているので、搬送ローラに対して除電機能を付与することができる。これにより、多機能な搬送ローラを提供することができるとともに、画像形成装置においては除電ローラを別途設ける必要がないため構成の簡素化及び製造コストの削減を図ることができる。また、シート材の搬送を良好なものとすべく、搬送ローラのゴム体を低硬度なものとする必要があるが、上記手段1のとおりゴム材料に金属繊維集合体を埋設した構成においては導電性を付与しつつ低硬度化を図ることができる。よって、搬送ローラとしての機能も十分に発揮させることができる。さらには、搬送ローラのゴム体は、低硬度であるとともに高い耐摩耗性が要求される。この場合に、ゴム材料よりも硬い金属繊維集合体が埋設されていることによりゴム体の耐摩耗性を向上させることができる。よって、上記手段1の導電性ローラを搬送ローラとして用いることにより、画像形成装置において多機能な搬送ローラを提供することができるだけでなく、低硬度であるとともに耐摩耗性が向上された搬送ローラを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、発明を具体化した実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は本実施の形態の画像形成装置10の構成を示す概略図である。
【0024】
画像形成装置10は、像担持体として感光ドラム11を備えている。感光ドラム11は、図示しない駆動手段により駆動されることで所定方向に回転する。感光ドラム11表面は、帯電ローラ12によって均一に帯電される。帯電ローラ12は、その表面が感光ドラム11の表面に接触するようにして配置されており、感光ドラム11の回転に伴って従動回転する。帯電ローラ12には高圧電源により所定の電圧が印加され、これにより感光ドラム11の表面はマイナスに均一に帯電される。
【0025】
帯電後の感光ドラム11表面は、図示しない露光装置により目的の画像情報に対応した露光を受ける。これにより、感光ドラム11表面には、目的の画像情報に対応した静電潜像が形成される。その静電潜像には、現像装置15によってマイナスに帯電されたトナーが付着される。
【0026】
現像装置15は、トナー容器16と、供給ローラ17と、現像ローラ18とを備えている。トナー容器16内にはトナーが貯留されているとともに、供給ローラ17及び現像ローラ18が配設されている。供給ローラ17と現像ローラ18とはそれぞれの表面が接触するように設けられており、供給ローラ17に担持されたトナーは当該供給ローラ17と現像ローラ18との摺動摩擦によりマイナスに帯電されるとともに現像ローラ18に搬送される。現像ローラ18はその表面が感光ドラム11の表面と接触するようにして配置されており、さらに現像ローラ18には高圧電源により所定の電圧が印加されている。したがって、現像ローラ18に担持されたトナーは感光ドラム11表面に形成された静電潜像に付着される。なお、現像装置15に現像ブレードを設ける構成としてもよい。
【0027】
感光ドラム11表面に付着されたトナーは、給紙トレイ21から転写領域25に搬送された用紙等のシート材Pに転写される。シート材Pの搬送について説明すると、給紙トレイ21には多数のシート材Pが貯留されている。給紙トレイ21に対しては、入口側搬送ローラ22が設けられている。入口側搬送ローラ22は、図示しない駆動手段により駆動されることで搬送方向に回転する。また、給紙トレイ21の底部には入口側搬送ローラ22に向けて付勢される図示しない分離シートが設けられており、当該分離シートにより入口側搬送ローラ22に対して抑えられたシート材Pが当該ローラ22の回転に伴って一枚ずつ転写領域25に向けて搬送される。すなわち、入口側搬送ローラ22はピックアップローラとしての機能を有する。また、本実施の形態では、入口側搬送ローラ22は導電性ローラであり、接地されている。つまり、入口側搬送ローラ22は除電ローラとしての機能を有している。これにより、給紙トレイ21からのシート材Pの搬送に併せて当該シート材Pが入口側搬送ローラ22により除電される。
【0028】
転写領域25には、転写ローラ26が設けられている。転写ローラ26は、その表面が感光ドラム11の表面に接触するようにして配置されており、図示しない駆動手段により駆動されることで感光ドラム11とは反対方向に回転する。転写ローラ26には高圧電源により所定の電圧が印加され、これにより転写領域25に搬送されたシート材Pをプラスに帯電させる。したがって、感光ドラム11表面のトナー像とタイミングを合わせるようにして転写領域25に搬送されたシート材P表面に、そのトナー像が転写される。
【0029】
転写領域25を通過したシート材Pは、定着装置30へ搬送される。定着装置30には、シート材Pの表面に熱を与える定着ローラ31と、当該定着ローラ31に向けてシート材Pに圧力をかける加圧ローラ32とが設けられている。これら定着ローラ31と加圧ローラ32との間をシート材Pが通過することにより、シート材Pの表面に転写されたトナー像が定着される。
【0030】
トナー像が定着されたシート材Pは、出口側搬送ローラ35により出口へ向けて搬送される。この場合に、出口側搬送ローラ35は入口側搬送ローラ22と同様に除電ローラとしての機能を有し、転写領域25においてプラスに帯電されたシート材Pを除電する。つまり、出口側搬送ローラ35は、シート材Pを除電しつつ出口に向けて搬送する。
【0031】
次に、上述した帯電ローラ12、現像ローラ18、入口側搬送ローラ22、転写ローラ26、及び出口側搬送ローラ35の構成について説明する。ただし、これら各種ローラ12,18,22,26,35は、ほぼ同一の構成であるため、入口側搬送ローラ22を例に挙げて説明する。図2(a)は入口側搬送ローラ22の斜視図であり、図2(b)は入口側搬送ローラ22の断面図である。
【0032】
入口側搬送ローラ22は、円柱状の軸体41と、軸体41の大径部41aに組み付けられる円筒状のゴム体42とを備えている。軸体41は、アルミニウム,ステンレス鋼等の金属により形成されており、電極及び支持部材としての機能を有する。
【0033】
ゴム体42は、適度に低硬度であり十分な変形回復力を有するシリコーンゴムにより形成されている。この場合に、ゴム体42の成形性を良好なものとするため、架橋前の粘度が低い液状シリコーンを用いている(例えば、1〜150Pa・s)。入口側搬送ローラ22はシート材Pを搬送する上で適度な硬度を有する必要があるため、上記のとおりゴム体42をシリコーンゴムにより形成するのが好ましい。なお、帯電ローラ12、現像ローラ18、及び転写ローラ26に関しては、感光ドラム11に対して十分なニップ領域を確保する上で適度な硬度を有する必要があるため、これらローラ12,18,26のゴム体42もシリコーンゴムにより形成するのが好ましい。
【0034】
ゴム体42には、金属束子状体43が埋設されている。金属束子状体43は、ステンレス製の柔軟な金属細線(金属繊維)を束子状に絡めることで形成されている。金属束子状体43は一部がゴム体42の表面に露出し、他の一部が軸体41の表面に接触するようにして埋設されている。これにより、ゴム体42の表面と軸体41とが導通されており、入口側搬送ローラ22が導線性ローラとして機能する。また、金属束子状体43内の隙間をシリコーンゴムが埋めており、さらに金属束子状体43は柔軟な金属細線により形成されている。これにより、ゴム体42の変形に際して金属束子状体43が追従して変形するため、上記のように金属束子状体43によりゴム体42に導電性を付与した構成においてゴム体42の弾性力が確保されている。
【0035】
次に、以上の構成の各種ローラ12,18,22,26,35の製造工程について図3を用いて説明する。但し、ここではゴム体42に着目して各工程を説明していく。また、準備工程として軸体41を成型する工程は完了しているものとする。
【0036】
ゴム体42は、2液型の液状シリコーンLをゴム体42の金型50内に射出して加硫させる、いわゆるLIM(LiquidInjection Molding)成型の手法により成型されている。
【0037】
この成型に際しては、先ず図3(a)に示すように、金型50の組み立てを行う。金型50は一対の型ブロック51a,51bを備えており、これら両ブロック51a,51bが組み付けられることにより金型50内にはゴム体42の形状に対応した円筒状の空間Sが形成される。なお、両型ブロック51a,51bの内壁にはフッ素樹脂やテフロン(登録商標)樹脂などの離型性の良好な離型材が塗布してある。
【0038】
その後、金型50の縦断面図である図3(b)に示すように、金型50の空間Sへの金属束子状体43の配置工程を行う。この場合に、金属束子状体43は定形性を有する。したがって、空間Sへの金属束子状体43の配置作業を容易に行うことができる。また、上記のとおり、金属束子状体43は柔軟性を有する金属細線からなるため、空間Sの形状に合わせて変形させることができる。
【0039】
その後、図3(c)に示すように、空間Sへの液状シリコーンLの射出工程を行う。この場合に、液状シリコーンLの射出は周知の射出成型機を用いて行う。なお、図3(c)では、射出成型機のノズル55部分を示す。ここで、液状シリコーンLは上記のとおり低粘度であるため、空間Sに配置された金属束子状体43は液状シリコーンLにより下方へと圧縮されてしまうことが抑制され、配置工程において配置した金属束子状体43の形態がほぼ保持される。また、金属束子状体43内の隙間を埋めながら液状シリコーンLが空間Sに充填される。
【0040】
その後、図3(d)に示すように、空間S内に充填した液状シリコーンLの架橋工程を行う。ここでは、金型50に対して100〜180℃の熱を加える。これにより、液状シリコーンLは、急速に反応が進行して硬化する。
【0041】
その後、図3(e)に示すように、金型50からゴム体42を取り出す取り出し工程を行う。このとき、上記のとおり各型ブロック51a,51bの内壁に離型材が塗布されていることにより、金型50からのゴム体42の型離れが良好となり、離型作業の作業性を向上させることができる。そして、この取り出したゴム体42に対して研磨工程を行うことにより、成型時のバリを除去する。また、この際、ゴム体42の外周面及び内周面を研磨することにより、金属束子状体43の一部をゴム体42の外周面及び内周面に露出させる。
【0042】
以上のようにゴム体42を成型した後、当該ゴム体42に対して軸体41を圧入する工程を行うことで、各種ローラ12,18,22,26,35の製造が完了する。ここで、各種ローラ12,18,22,26,35においてゴム体42に埋設する金属束子状体43の量を異ならせることで、それぞれの用途に適した体積抵抗率を得ることができる。
【0043】
以上詳述したように、本実施の形態によれば、以下の優れた効果を有する。
【0044】
帯電ローラ12、現像ローラ18、入口側搬送ローラ22、転写ローラ26、及び出口側搬送ローラ35などといった各種導電性ローラを構成するゴム体42には、金属束子状体43を埋設することで導電性を付与した。従来のようにカーボンブラックなどの導電剤を混合して分散させたゴム体において導電性を確保するためには、多数の導電剤がゴム体内にて近接した位置に配置される必要があるため、導電剤の混合量が多くなり、これに伴ってゴム体の低硬度化を図れなくなる。これに対して、金属束子状体は金属繊維を絡めて束子状としたものであるため、ゴム体42を構成するシリコーンゴムに対する金属束子状体43の混合量を抑えたとしても導電剤を多量に混合したゴム体と同程度の体積抵抗率を得ることができる。よって、ゴム体42の低硬度化を図ることができる。
【0045】
また、かかるゴム体42は、金型50に金属束子状体43を配置し、その後、その金型50に液状シリコーンLを射出し架橋させることで成型される。これにより、金型50に射出するゴム材料の粘度は液状シリコーンL特有の粘度となり、成型時の作業性を良好なものとすることができる。特に、液状シリコーンLは粘度が低いため、液状シリコーンLを金型50に流し込む際に金属束子状体43が圧縮されてしまうことが抑制され、金型50に配置した際の金属束子状体43の形態を概ね保持させることが可能となる。さらには、従来のように導電剤を混合させたゴム体においては、ゴム材料に導電剤を混合する工程と、その導電剤を分散させる工程とを少なくとも行う必要がある。これに対して、上記のように金属束子状体43を埋設した構成においては、このような工程を行う必要はなく、それに代えてかかる金属束子状体43を金型50内に配置するだけでよい。よって、工程数が削減され作業効率を向上させることができるとともに、混合用機械や分散用機械さらにはそれらを操作する作業者などを必要としないことから製造コストの削減を図ることができる。また、このように各種導電性ローラの製造コストの削減が図られるのに伴って、画像形成装置10の製造コストの削減を図ることができる。
【0046】
入口側搬送ローラ22及び出口側搬送ローラ35に対して上記構成の導電性ローラを用いることにより、これら搬送ローラ22,35に対して除電機能を付与することができる。これにより、多機能な搬送ローラ22,35を提供することができるとともに、画像形成装置10においては除電ローラを別途設ける必要がないため構成の簡素化及び製造コストの削減を図ることができる。また、搬送ローラ22,35はシート材Pの搬送を良好なものとすべく軸体41に設けられるゴム体42を低硬度なものとする必要があるが、金属束子状体43を埋設した構成においては導電性を付与しつつ低硬度化を図ることができる。よって、シート材Pを搬送する機能も十分に発揮させることができる。さらには、搬送ローラ22,35のゴム体42は、低硬度であるとともに高い耐摩耗性が要求される。この場合に、シリコーンゴムよりも硬い金属束子状体43が埋設されていることによりゴム体42の耐摩耗性を向上させることができる。よって、除電機能と搬送機能とを有する多機能な搬送ローラ22,35を提供することができるだけでなく、低硬度であるとともに耐摩耗性が向上された搬送ローラ22,35を提供することができる。
【0047】
なお、実施の形態は上記した内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。
【0048】
(1)上記実施の形態では、ゴム体42を構成するゴム材料としてシリコーンゴムを用いたが、これ以外のゴムを用いてもよい。例えば、ポリウレタンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、アクリルゴム、ブチルゴム等であってもよい。但し、ゴム体42の成型時において金属束子状体43をさほど圧縮させないようにする必要があるため、架橋前の粘度が低いものを用いるのが好ましい。
【0049】
(2)上記実施の形態では、金属束子状体43をステンレス製としたが、これ以外の鉄や銅などの金属細線(金属繊維)により金属束子状体43を形成する構成としてもよい。
【0050】
(3)上記実施の形態では、画像形成装置10に設けられた導電性ローラは全てゴム体42に金属束子状体43が埋設された構成のものを使用したが、一部の導電性ローラに対してのみかかる構成のものを使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】画像形成装置の構成を説明するための図。
【図2】(a)は導電性ローラの斜視図、(b)は導電性ローラの断面図。
【図3】導電性ローラの製造工程を説明するための図。
【符号の説明】
【0052】
10…画像形成装置、12…帯電ローラ、18…現像ローラ、22…入口側搬送ローラ、25…画像形成領域としての転写領域、26…転写ローラ、35…出口側搬送ローラ、41…軸体、42…ゴム体、43…金属繊維集合体としての金属束子状体、50…金型、L…液状シリコーン、P…シート材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有する軸体と、導電性を有し当該軸体の外周面に設けられた円筒状の導電性ゴム体とを備え、
当該導電性ゴム体には、柔軟性を有する金属繊維を絡ませて集合させた金属繊維集合体を、前記軸体と前記導電性ゴム体の外周面とを導通するように埋設したことを特徴とする導電性ローラ。
【請求項2】
前記ゴム材料は、液状ゴム材料を硬化してなることを特徴とする請求項1に記載の導電性ローラ。
【請求項3】
金型に前記金属繊維集合体を配置する工程と、その金型に液状のゴム材料を流し込む工程と、その流し込んだゴム材料を硬化させる工程とを備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載した導電性ローラの製造方法。
【請求項4】
請求項1若しくは請求項2に記載の導電性ローラ、又は請求項3の製造方法により製造された導電性ローラを備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
シート材に画像を形成する画像形成領域と、当該画像形成領域に向けてシート材を搬送する、又は当該画像形成領域にて画像が形成されたシート材を搬送する搬送ローラとを備えた画像形成装置であって、
前記搬送ローラを、請求項1若しくは請求項2に記載の導電性ローラ、又は請求項3の製造方法により製造された導電性ローラとしたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−256410(P2007−256410A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−78122(P2006−78122)
【出願日】平成18年3月22日(2006.3.22)
【出願人】(591140813)株式会社カテックス (11)
【Fターム(参考)】