説明

導電性ロール

【課題】過剰なトナーの搬送を抑制し良好なトナー離れを実現でき、適度な印刷濃度を保ち、長期に渡り印刷性能に優れる導電性ロールを提供する。
【解決手段】加硫ゴム組成物で形成されてなるトナー搬送部を少なくとも最外層に備えた導電性ロールであって、前記加硫ゴム組成物は、ゴム成分(A)に、粒径80nm以上500nm以下の粒径大の弱導電性カーボンブラック(B)と、粒径18nm以上80nm未満の粒径小の高導電性カーボンブラック(C)と、酸化チタン、アルミナ及びシリカからなる群から選択される1種以上の金属酸化物からなる無機フィラー(D)を配合しており、前記(B)(C)(D)の合計配合量は、ゴム成分(A)100質量部に対して15質量部以上60質量部以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性ロールに関し、詳しくは、電子写真装置に装着される現像ロール、クリーニングロール、帯電ロールまたは転写ロール等として用いられるトナー搬送部を有する導電性ロールに関し、過剰なトナーの搬送を抑制して良好なトナー離れを実現でき、長期に渡り印刷性能に優れるものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式による印刷技術においては、高速化、高画質化、カラー化、小型化といった改良が進み、広く世の中に普及してきた。これら改良において鍵となるのがトナーである。前記あらゆる要求を満たすために必要となるのが、トナーの微細化と、トナー粒径の均一化、トナーの球形化である。トナーの微細化については、トナー粒径が10μm以下、さらには5μm以下のものも出てきている。トナーの球形化については、真球度が99%を上回るものまで出てきている。さらに、高画質化を求めて従来の粉砕トナーに代わり重合トナーが主流となりつつある。かかる重合トナーはデジタル情報を印刷物にする際にドットの再現性が非常によく高品質な印刷物が得られる。
【0003】
このようなトナーの微細化、均一化、球形化及び重合トナーへの移行に対応して、レーザービームプリンター等の電子写真装置の画像形成機構において、トナーに高い帯電性を付与しながらトナーを付着させることなく感光体に搬送させることができる導電性ロールが求められており、該導電性ロールとしては電気抵抗値を約10の8乗Ω以下に調整したものが特に有用である。このような導電性ロールは、この高性能な機能を製品の使用寿命の最後まで維持させることが要望されている。
【0004】
このような問題に対して本出願人は以下のようなゴムローラを提案している。
特開2007−286236号公報(特許文献1)では、ゴム組成物で形成される高抵抗な表層と、電子導電性のゴム組成物で形成される低抵抗な基層を有する2層を備えた半導電性ローラを提供しており、表層と基層の電気抵抗値のバランスを図ることで良好な帯電特性を得ようとしている。しかし、両層の厚みを精度良く実現することが難しいため、極めて高い厚み精度が必要とされる。厚み精度を実現するためには、手のかかる管理が必要であると共に、管理した場合も製品歩留まりが良好でないことなどによりコスト高になりやすい。そのため、より簡素な工程管理で安価に製造できるよう改善の余地がある。
【0005】
特開2006−99036号公報(特許文献2)には、クロロプレンゴムを含む導電性ゴム層を最外層に備え、所定条件での誘電正接が0.1〜1.8である半導電性ゴム部材が記載されている。該半導電性ゴム部材は、極めて高い電荷をトナー等の付着物に付与することができるとともにトナーに付与した電荷の漏洩を防ぐことができる。
該半導電性ゴム部材において、前記要件を満たしながらゴム成分の種類やカーボンブラックの種類などを調整して、初期画像濃度の向上、耐久性(トナー帯電の経時安定性)の向上はそれぞれ極めて高いレベルで実現しているが、それら両方を一挙に実現できるようさらなる改善の余地がある。
【0006】
特開2004−170845号公報(特許文献3)には、電気特性が均一なイオン導電性ゴムを用い、誘電正接調整用充填剤を配合して誘電正接を0.1〜1.5としている導電性ゴムロールが記載されている。該導電性ゴムロールを用いれば、トナーに適切でかつ高い帯電を付加でき、結果として高画質な初期画像が得られる。さらに、トナーの帯電量が印刷枚数を経ても低下しにくく、結果として高画質が維持できる。
【0007】
前記特許文献3においては、イオン導電性を得るためにエピクロルヒドリンゴムに代表される塩素原子を含有するゴム成分を用いることがある。この場合、該塩素原子を含有するゴム成分は一般に表面自由エネルギーが高く、トナーやトナー外添剤と付着しやすい傾向がある。
あわせてイオン導電性を示すエチレンオキサイドモノマーが重合されている場合は、表面自由エネルギーが上がり濡れやすくなり、導電性ゴムロールに対するトナーの付着性が高くなる。
さらに表面に紫外線照射やオゾン暴露などを施し酸化膜を形成させると、その部分の酸素濃度が高くなるため表面自由エネルギーが上がり導電性ゴムロールに対するトナーの付着性がさらにます可能性がある。
加えて誘電正接を0.1〜1.5とした場合はトナーの帯電性を向上できトナーの搬送量を低減できるためハーフトーン画像など高画質な画像が実現できるが、一方でこの場合には現像ロール上のトナーの積層量が少なくなるため、現像ロールとして使用した場合にはトナーの付着性がさらに増す可能性がある。
【0008】
このような導電性ゴムロールへのトナーの付着は、ごく初期の画像や連続的に印刷した画像には影響をあまり及ぼさないが、例えば以下のような条件で印刷した場合にはその影響が無視できなくなる。例えば、通常帯電されたトナーは静電気力(クーロン力)により逆の電荷を持つ感光体に搬送されるところ、トナーと現像ロールの付着性が強いためこの静電気力によるトナーの搬送が妨げられ、トナーに付加する帯電量が変わらないにもかかわらず印刷濃度が低下するという問題が生じ得る。
・印刷をほどよく行い、トナーが現像ロールに比較的なじんだ時点
(例えば1%印字画像を2,000枚程度印刷した時点)
・トナーの平均粒径が8μm以下、特に6μm以下の場合
・連続的に印刷せず、例えば一日停止して翌日印刷した場合
・トナーの帯電量が比較的高い低温低湿環境において使用する場合
【0009】
特開2005−225969号公報(特許文献4)には、ポリエーテル結合を有するゴムを含むイオン導電性のゴム成分にワックスを配合することで、表面の自由エネルギーを低減させてトナー外添剤等の付着を長期にわたり防止でき、加工性に優れ、成形ムラや割れなどの表面欠陥をも防ぐことができる半導電性ゴム部材が開示されている。
しかし、現像ロールとして使用したときのトナーの付着性がまだ高く、前述の「印刷濃度の低下」がまだみられる。さらには、ワックスのブリード等に起因する低分子量成分と比較的高温環境下(約50℃程度)での粘着性によるトナーや感光体への汚染がわずかであるがみられる。これでは、高画質が要求されるプリンターにおいては使用できるゴムやポリマーが限定されかねず、さらなる改良の余地があった。
【0010】
【特許文献1】特開2007−286236号公報
【特許文献2】特開2006−99036号公報
【特許文献3】特開2004−170845号公報
【特許文献4】特開2005−225969号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前述した導電性ローラを現像ロールとして用いた場合、設計上は帯電されたトナーは静電気力(クーロン力)により逆の電荷を持つ感光体に搬送されるべき状態であっても、トナーと現像ロールの物理的な付着性が強いため、この静電気力によるトナーの搬送が妨げられ、トナーに付加する帯電量が変わらないにもかかわらず、印刷濃度が低下するという、所謂「現像効率の低下」という問題が生じ得る。このようにトナーの搬送量が多いにも関わらず現像効率の低下が生じる傾向があり、該傾向は、速度が20rpm以上の高速度プリンターで特に顕著である。
【0012】
また、現像効率が低下すると、トナーボックスで循環するトナーが多くなり、トナーの劣化が原因でトナー帯電量の低下が早まる結果、画像不良が発生するという問題が生じる。即ち、静電気的及び物理的なトナー離れの悪さが主因で現像ロールのトナー搬送量が多くなると、印刷の際、現像ローラにより搬送されるトナーの殆どが感光体による印刷に寄与せず、現像ローラに残ってトナーボックスに戻ってくるような状態となる。その結果、トナーがトナーボックス内で何度も循環して、トナーの劣化(擦れることで傷が付く等)が促進され、耐久使用の後半で画像不良が発生する。
【0013】
本発明は前記問題に鑑みてなされたものであり、過剰なトナーの搬送を抑制し良好なトナー離れを実現でき、適度な印刷濃度を保ち、長期に渡り印刷性能に優れる導電性ロールを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決するため、本発明は、加硫ゴム組成物で形成されてなるトナー搬送部を少なくとも最外層に備えた導電性ロールであって、
前記加硫ゴム組成物は、ゴム成分(A)に、粒径80nm以上500nm以下の粒径大の弱導電性カーボンブラック(B)と、粒径18nm以上80nm未満の粒径小の高導電性カーボンブラック(C)と、酸化チタン、アルミナ及びシリカからなる群から選択される1種以上の金属酸化物からなる無機フィラー(D)を配合しており、
前記(B)(C)(D)の合計配合量は、ゴム成分(A)100質量部に対して15質量部以上60質量部以下であることを特徴とする導電性ロールを提供している。
【0015】
本発明の導電性ロールの最外層を構成するトナー搬送部は、ゴム成分(A)に対して、前記3種類の充填剤(B)(C)(D)を必須成分として含む。
前記特許文献1〜4のように、ゴム成分(A)に対して、各充填剤(B)(C)(D)を個別に配合した場合には次のような問題が生じる。
粒径大の弱導電性カーボンブラック(B)のみを充填剤として配合した場合、ゴム成分(A)100質量部に対して20質量部以上の配合とすれば高い初期帯電量が得られるが、静電気的なトナー付着力が強くなり過ぎるという問題が生じる。
粒径小の高導電性カーボンブラック(C)のみを充填剤として配合した場合は、ゴム成分(A)100質量部に対して20質量部以上の配合とすれば高い印刷濃度を得ることができるが、導電性が高すぎ、十分なトナー帯電性が得られないという問題が生じる。
金属酸化物からなる無機フィラー(D)のみを充填剤として配合した場合、トナーの物理的な付着力を低減できる効果はあるが、十分なトナー帯電性が得られず、十分な印刷濃度が得られない。
このように、(B)乃至(D)の充填剤を個別に配合しただけでは、多量の配合を必要とし、「トナー付着力(トナー搬送量)の低減」「トナー帯電量およびその維持」、及び「適度な印刷濃度の維持」が背反性能となり、全てを同時達成することができず、導電性ロールの全体性能として不十分となる。
【0016】
しかし、本発明では(B)(C)(D)の充填剤を、その合計量が前記ゴム成分(A)100質量部に対して15質量部以上60質量部以下となるように配合することにより、前記背反性能を同時に達成し、全体性能に極めた優れた導電性ロールとすることができる。(B)(C)(D)の充填剤はゴム成分に対して非常に優れた分散性を示すので、このように配合量を比較的少なく調整することができる結果、導電性ロールの硬度を異常に上昇させることもなく、現像等の効率を低下させず、感光体等の他の部材へ機械的ダメージやトナーの劣化も防ぐことができる。
また、本発明の導電性ロールは、トナー搬送部は最外層が少なくとも加硫ゴムで形成されているので、表面をコーティングする技術とは異なり、電気特性の均一性や設計値の繰り返し再現性を低コストで容易に得ることができる。
【0017】
前記(B)(C)(D)の充填剤の合計配合量を、ゴム成分(A)100質量部に対して15質量部以上60質量部以下としているのは、15質量部未満であると各充填剤を配合する効果が十分に得られず、40質量部を超えると導電性ロールの硬度が高くなり、トナーの劣化が発生するおそれがあるためである。前記(B)(C)(D)の充填剤の合計配合量は、ゴム成分(A)100質量部に対して、15質量部以上40質量部以下であることが好ましい。
【0018】
本発明では、粒径80nm以上500nmの粒径大のカーボンブラックを「弱導電性カーボンブラック(B)」と定義している一方、粒径18nm以上80nm未満の粒径小のカーボンブラックを「高導電性カーボンブラック」と定義している。
これは、カーボンブラックの粒径80nmを境界として、カーボンブラックの導電性に顕著な差異が見られ、加硫ゴム組成物に配合された場合に異なる役割を担うからである。
即ち、弱導電性カーボンブラック(B)は、粒径が大きくストラクチャーの発達が小さく、導電性への寄与が小さく、これを配合することで導電性を高めることなく、分極作用によるコンデンサー的な働きを得ることができ、電気抵抗の均一化を損なうことなく帯電性のコントロールを実現できる。
一方、高導電性カーボンブラック(C)は、弱導電性カーボンブラックに比べて、粒径が小さくストラクチャーが発達しており、導電性への寄与が大きいため、これを配合すると導電性を高めることができる。例えば、現像ロールとして使用した場合に、プリンターが高速化され、感光体と接触する時間が短くなったり、プリンターが小型化して、感光体径が小さくなるなどして、現像ロールと感光体の接触面積が小さくなっても、高い印刷濃度を得ることができる。
【0019】
前記弱導電性カーボンブラック(B)としては、粒径が100nm以上のものを用いれば、前記効果をさらに有効に得ることができる。また、粒径が500nm以下、好ましくは250nm以下であると表面粗さを極めて小さくできる。前記弱導電性カーボンブラックの形状は表面積が小さいことから球形状または球形に近い形状が好ましい。
なお、本願明細書中において、「粒径」は「一次粒子径」を示している。
【0020】
弱導電性カーボンブラック(B)は、ゴム成分(A)100質量部に対し、1質量部以上40質量部以下の割合で配合しているのが好ましい。これは、1質量部未満であると十分な初期帯電量と静電気的なトナー付着力を得ることができず、40質量部を超えると静電気的なトナー付着力が強くなり過ぎ、導電性ロールの硬度も上昇するからである。
前記ゴム成分(A)100質量部に対する前記弱導電性カーボンブラック(B)の配合量の下限は2.5質量部以上が好ましく、上限は20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましい。
【0021】
弱導電性カーボンブラック(B)としては、前記粒径範囲内で種々の選択が可能であるが、中でも大粒径を得やすいファーネス法またはサーマル法により製造されたカーボンブラックが好ましく、ファーネスカーボンブラックがより好ましい。カーボンの分類で言うとSRF(約60〜95nm)やFT(約80〜500nm)、MT(約80〜500nm)が好ましい。また、顔料で用いられるカーボンブラックを用いても良い。
弱導電性カーボンブラック(B)は、よう素吸着量が10〜40mg/g、好ましくは10〜30mg/gで、DBP吸油量が25〜90ml/100g、好ましくは25〜55ml/100gのものを用いることが好ましい。
【0022】
高導電性カーボンブラック(C)は、ゴム成分(A)100質量部に対して1質量部以上40質量部以下の割合で配合をしていることが好ましい。これは、1質量部未満であると十分な導電性が得られないため高い印刷濃度を得ることができず、40質量部を超えると導電性が高くなり過ぎ、十分な帯電性が得られなくなることに加え、導電性ロールの硬度が上昇することに伴うトナーの劣化が発生するおそれがあるからである。
前記ゴム成分(A)100質量部に対する前記高導電性カーボンブラック(C)の配合量の下限は、5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましい。一方、上限は30質量部以下が好ましく、25質量部以下がより好ましい。
【0023】
粒径小の高導電性カーボンブラック(C)としては、前記粒径範囲内で種々のカーボンブラックが使用でき、例えば、ケッチェンブラック、ファーネスブラックもしくはアセチレンブラック等の導電性カーボンブラックが挙げられる。
また、カーボンの分類では、前記粒径範囲内の限りにおいて、SAFカーボン(平均粒径18〜22nm)、SAF−HSカーボン(平均粒径20nm前後)、ISAFカーボン(平均粒径19〜29nm)、N−339カーボン(平均粒径24nm前後)、ISAF−LSカーボン(平均粒径21〜24nm)、I−ISAF−HSカーボン(平均粒径21〜31nm)、HAFカーボン(平均粒径26〜30nm)、HAF−HSカーボン(平均粒径22〜30nm)、N−351カーボン(平均粒径29nm前後)、HAF−LSカーボン(平均粒径25〜29nm)、LI−HAFカーボン(平均粒径29nm前後)、MAFカーボン(平均粒径30〜35nm)、FEFカーボン(平均粒径40〜52nm)、SRFカーボン(平均粒径58nm〜)、SRF−LMカーボン、GPFカーボン(平均粒径49nm〜)等が例示される。なかでも、FEFカーボン、ISAFカーボン、SAFカーボンまたはHAFカーボンを用いることが好ましい。
【0024】
金属酸化物からなる無機フィラー(D)はゴム成分や目的とするロール物性等に応じ、酸化チタン、アルミナ及びシリカからなる群から選択される少なくとも1種以上を用いており、これら2種以上、さらには3種のフィラーを併用してもよい。これらフィラーのうち、弱導電性カーボンブラック(B)との分散性の相性が極めて良いため、特に、酸化チタンが好適に用いられる。
【0025】
無機フィラー(D)は、ゴム成分(A)100質量部に対して1質量部以上40質量部以下の割合で配合していることが好ましい。これは、1質量部未満であるとトナーの物理的な付着、即ち、トナー離れを向上させることができず、40質量部を超えるとトナー搬送部の硬度が高くなり過ぎたり、トナーに適切な帯電を付加できなくなるからである。
前記ゴム成分(A)100質量部に対する前記無機フィラー(D)の配合量の下限は2質量部以上、さらには5質量部以上が好ましく、上限は20質量部以下が好ましい。
【0026】
無機フィラー(D)としては、酸化チタン、アルミナ及びシリカのいずれとしても使用するトナーの粒径よりも小さいことが好ましく、例えば10μm以下の一次粒径が好ましい。また、コストや配合時の混合性を考慮すると、これら無機フィラーの一次粒径は1nm以上が好ましい。さらに他のフィラーとの分散性から10nm以上が好ましく、トナーとの作用を考えると5μm以下が好ましい。コスト面、性能面の両者を考えると、50nm以上1000nm以下が好ましく、100〜500nmがより好ましい。
【0027】
本発明で用いる酸化チタンとしては、特に限定されず公知のものを用いればよい。結晶型としてはアナターゼ型、ルチル型、これらの混晶型、アモルファスのいずれのものも用いることができるが、なかでもルチル型の酸化チタンを用いることが好ましい。酸化チタンは、例えば硫酸法や塩素法、または例えばチタンアルコキシド、チタンハライドもしくはチタンアセチルアセトネート等の揮発性チタン化合物の低温酸化(熱分解や加水分解)により得られる。
本発明で用いる酸化チタンにおいては粒径が500nm以下である粒子が50%以上含まれていることが好ましい。この場合に酸化チタンの分散性が良くなるからである。なかでも平均粒径が100〜500nmである酸化チタンを用いることが好ましい。
特に平均粒径が300〜500nmである粒子を主成分とし、平均粒径が300〜500nmであるルチル型の酸化チタンを用いることが好ましい。
【0028】
本発明で用いるシリカとしては、その種類は限定されず、市販品を用いればよい。市販品としては、東ソー・シリカ(株)製「ニプシールVN3(商品名)」などが挙げられる。シリカにはトナーの特性に合わせた表面処理が施されていてもよい。前記表面処理としては例えば疎水処理や親水処理などが挙げられる。
シリカとしては、平均一次粒子径が10〜500nmであるものが特に好ましい。また、BET比表面積が30〜300m2/gのものが好ましく、60〜250m2/gのものがより好ましい。
【0029】
アルミナはアルミニウムの酸化物(Al)である。
本発明で用いるアルミナとしては、一次粒径が1μm以下のものが80%以上を占めていることが好ましく、さらに0.5μm以下のものが50%以上を占めていることがより好ましい。このように粒径の小さなアルミナを用いることにより、均一に分散させることができ、下記に述べる放熱効果が向上するとともに、トナー搬送部の表面の均一性を確保しやすいという利点がある。
【0030】
アルミナは、熱伝導性に優れるので、トナー搬送部に含有されることにより、シール部とトナー搬送部の外周面との摩擦により生じる熱をトナー搬送部全体にすばやく分散させることができ、トナー搬送部の内部に伝達された熱は金属からなる芯金を経由して外部に逃すことができると共に、アルミナが配合されたトナー搬送部の表面からも放熱させることができる。そのため、シール部とトナー搬送部との摺動摩擦による発熱により加速されていたシール部の摩耗を抑えることができ、トナー漏れを長期間に渡って有効に防ぐことができる。
さらには、トナー搬送部が前記摺動部での発熱により高温とならないため、重合トナーを構成する熱可塑性樹脂が溶融しトナーが大径化、エッジ化し溶着して大きくなると共に角張ってくるのを防ぐことができる。よって、シール部およびトナー搬送部の耐久性を格段に向上させることができる。さらに、アルミナと酸化チタンを同時混合する場合、アルミナを混合することにより酸化チタンの混合効率も上がり、例えばこれらが異物としてゴム表面に検出されることが少なくなる。
【0031】
アルミナは、熱伝導性の観点からは、ゴム成分(A)100質量部に対して2.5質量部以上、40質量部以下、好ましくは30質量部以下、特に好ましくは25質量部以下含有されていることが好ましい。熱伝導性の観点から、アルミナを2.5質量部以上としているのは、2.5質量部未満であるとシール部とトナー搬送部との摺動摩擦により生じた熱を逃がす効果が得られにくいからである。一方、アルミナの含有量が40質量部を超えると、トナー搬送部の硬度が上昇し硬くなりすぎ、トナーの劣化も促進されると共にトナー搬送部の表面を研磨する研磨材の耐久性が悪くなり、再ドレスが必要となる。特にアルミナの含有量は30質量部以下とすると弱導電性カーボンブラック(B)や高導電性カーボンブラック(C)との混合性が良くなる利点がある。
【0032】
前記高導電性カーボンブラック(C)の配合量は、前記弱導電性カーボンブラック(B)より多いと共に、前記金属酸化物からなる無機フィラー(D)以上であることが好ましい。
このような配合のバランスとすることで、背反性能である「トナー付着力(トナー搬送量)の低減」「トナー帯電量およびその維持」、及び「適度な印刷濃度の維持」を同時達成しやすいという利点がある。
【0033】
ゴム成分(A)は、下記の(1)〜(4)のいずれかの要件を少なくとも1つ満たした加硫ゴム組成物とされていることが好ましい。
(1)塩素原子を有するゴム;
(2)SP値が18.0(MPa)1/2以上であるゴム;
(3)イオン導電性ゴム;
(4)イオン導電材を含むことによりイオン導電化されているゴム。
【0034】
(1)「塩素原子を有するゴム」としては塩素原子を有すれば公知のゴムであってよい。具体的には、例えばクロロプレンゴム、塩素化ブチルもしくはクロロスルホン化ポリエチレンなどのほとんど導電性を示さない非導電性ゴム、またはエピクロルヒドリン系共重合体などの導電性ゴムが挙げられる。
ゴムが塩素原子を有する場合、例えばプラス帯電トナーに対して極めて容易に帯電できる特長がある反面、塩素原子に起因することとして塩素原子を有さないゴムと比べて粘着性が大きい傾向がある。そのため、ゴム成分(A)が塩素原子を有するゴムを含む場合、本発明を適用すれば塩素原子を有するゴムの欠点である非静電気的な高粘着性と静電気的な付着力を効果的に抑制できる。
【0035】
非導電性ゴムの場合は、最外層をイオン導電性とするためにイオン導電性ゴムと組み合わせることが好ましい。イオン導電性ゴムとしては、例えば、ポリエーテル系共重合体またはエピクロルヒドリン系共重合体等のエチレンオキサイドを含有する共重合体が挙げられる。なお、塩素原子を有するゴムとして導電性ゴムを用いる場合でも、さらに塩素原子を有さないイオン導電性ゴムを組み合わせてもよい。
【0036】
(2)「SP値が18.0(MPa)1/2以上であるゴム」としては、エピクロルヒドリン系共重合体、ポリエーテル系共重合体、アクリルゴム、アクリロニトリル量が20%以上であるNBRゴムまたはクロロプレンゴムなどが挙げられる。
ここで、前記SP値とは溶解度パラメーターまたは溶解度定数のことであり、例えば「塗料の流動と顔料分散」(植木憲二監修、共立出版株式会社発行)等の文献で定義されており、各液体における凝集エネルギー密度の平方根であり、溶解性を特徴づける指標となる。SP値が高いほど極性が高い。2種類以上のゴムをブレンドする場合、SP値が18.0(MPa)1/2未満であるゴムを用いてよいが、みかけのSP値が18.0(MPa)1/2以上となるように配合量を調整する。みかけのSP値は、そのゴム固有のSP値とゴム成分全体を1としたときの混合質量比の積をゴム成分ごとに算出し、その和で表されるものである。例えば、a成分のSP値をXa、ゴム成分全体を1としたときの混合質量比Yaとし、b成分のSP値をXb、ゴム成分全体を1としたときの混合質量比Ybとすると、見かけのSP値はXa・Ya+Xb・Ybとなる。
【0037】
「SP値が18.0(MPa)1/2以上であるゴム」は、ゴムの種類を選定することでプラス帯電においてもマイナス帯電においても極めて高い帯電性を与える可能性がある反面、極性が高すぎて粘着性が大きい傾向がある。一方、極性が極めて高い場合、極性があることとフィラーのせん断効果で、複数種類の充填剤を配合しても、極めて分散しやすいことが実験によりわかった。
そのため、加硫ゴム組成物が「SP値が18.0(MPa)1/2以上であるゴム」を含む場合、前記(B)(C)(D)の3種類の充填剤を一緒に配合すれば、極性が高いゴムの利点を残したまま、その欠点である高粘着性を効果的に抑制できる。
【0038】
「SP値が18.0(MPa)1/2以上であるゴム」は、ほとんど導電性を示さない非導電性ゴムであっても、イオン導電性ゴムであってもよい。本発明では高導電性カーボンブラック(C)を必須成分として含むため、非導電性ゴムの場合であっても、導電性を有するが、導電性を付与するためにイオン導電性ゴムと組み合わせるか、高導電性カーボンブラック以外の他の電子導電材あるいはイオン導電剤を配合してもよい。
他の電子導電材としては、酸化亜鉛、チタン酸カリウム、アンチモンドープ酸化チタン、酸化スズもしくはグラファイト等の導電性金属酸化物;カーボン繊維等が挙げられる。
他の電子導電材の配合量は電気抵抗値などの物性を見ながら適宜選択すればよいが、例えばゴム成分100質量部に対して5〜40質量部であることが好ましく、10〜25質量部であることがより好ましい。また、これら他の電子導電材は一次粒径が80nm以下であることが好ましい。
【0039】
(3)「イオン導電性ゴム」としては、例えばポリエーテル系共重合体またはエピクロルヒドリン系共重合体等のエチレンオキサイドを含有する共重合体が挙げられる。
「イオン導電性ゴム」は、電気特性の均一性や設計値の繰り返し再現性を維持することが容易にできる反面、水とのなじみがよく表面自由エネルギーが高く濡れやすいため粘着性が大きい傾向がある。そのため、加硫ゴム組成物が「イオン導電性ゴム」を含む場合、本発明を適用すればその欠点である高粘着性を効果的に抑制できる。
【0040】
ゴム成分(A)のより好ましい態様としては、
(a)エピクロルヒドリン系共重合体単独、
(b)クロロプレンゴムと、エピクロルヒドリン系共重合体または/およびポリエーテル系共重合体との組み合わせ、
(c)クロロプレンゴムとNBRとの組み合わせ
が挙げられる。
なかでも、(b−1)クロロプレンゴムとエピクロルヒドリン系共重合体との組み合わせ、(b−2)クロロプレンゴムとエピクロルヒドリン系共重合体とポリエーテル系共重合体との組み合わせ、(c)クロロプレンゴムとNBRとの組み合わせが特に好ましい。
【0041】
ゴム成分(A)として2種類以上のゴムを組み合わせる場合、その配合比は適宜選択すればよい。
例えば、(b−1)クロロプレンゴムとエピクロルヒドリン系共重合体とを組み合わせる場合、ゴム成分(A)の総質量を100質量部とすると、エピクロルヒドリン系共重合体の含有量を5〜95質量部、好ましくは20〜80質量部、より好ましくは20〜50質量部とし、クロロプレンゴムの含有量を5〜95質量部、好ましくは20〜80質量部、より好ましくは50〜80質量部とすることが好適である。
(c)クロロプレンゴムとNBRとを組み合わせる場合、ゴム成分(A)の総質量を100質量部とすると、NBRの含有量を5〜95質量部、好ましくは20〜80質量部、より好ましくは20〜50質量部とし、クロロプレンゴムの含有量を5〜95質量部、好ましくは20〜80質量部、より好ましくは50〜80質量部とすることが好適である。
【0042】
エピクロルヒドリン系共重合体としては、例えば、エピクロルヒドリン単独重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−プロピレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−アリルグリシジルエーテル共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体、エピクロルヒドリン−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体等が挙げられる。
【0043】
エピクロルヒドリン系共重合体としてはエチレンオキサイドを含む共重合体が好ましく、エチレンオキサイド含量が30モル%以上95モル%以下、好ましくは55モル%以上95モル%以下、さらに好ましくは60モル%以上80モル%以下である共重合体が特に好適である。エチレンオキサイドは体積固有抵抗値を下げる働きがあるが、エチレンオキサイド含量が30モル%未満であるとその抵抗値の低減効果が小さい。一方、エチレンオキサイド含量が95モル%を超えると、エチレンオキサイドの結晶化が起こり分子鎖のセグメント運動が妨げられるため、逆に抵抗値が上昇する傾向があると共に、加硫ゴムの硬度上昇や加硫前のゴムの粘度上昇といった問題が生じやすい。
【0044】
なかでも、エピクロルヒドリン系共重合体としてはエピクロルヒドリン(EP)−エチレンオキサイド(EO)−アリルグリシジルエーテル(AGE)共重合体を用いることが特に好ましい。前記共重合体中のEO:EP:AGEの好ましい含有比率はEO:EP:AGE=30〜95モル%:4.5〜65モル%:0.5〜10モル%であり、さらに好ましい比率はEO:EP:AGE=60〜80モル%:15〜40モル%:2〜6モル%である。
また、エピクロルヒドリン系共重合体としては、エピクロルヒドリン(EP)−エチレンオキサイド(EO)共重合体を用いることもできる。前記共重合体中のEO:EPの好ましい含有比率はEO:EP=30〜80モル%:20〜70モル%であり、さらに好ましい比率はEO:EP=50〜80モル%:20〜50モル%である。
【0045】
エピクロルヒドリン系共重合体を配合する場合、その配合量はゴム成分の総質量100質量部に対し、5質量部以上であることが好ましく、15質量部以上であることがより好ましく、20質量部以上であることがさらに好ましい。
【0046】
クロロプレンゴムはクロロプレンの重合体で乳化重合により製造されるが、分子量調節剤の種類によりイオウ変性タイプ、非イオウ変性タイプに分類される。
イオウ変性タイプは、イオウとクロロプレンを共重合したポリマーをチウラムジスルフィド等で可塑化し、所定のムーニー粘度に調整するものである。非イオウ変性タイプとしては、メルカプタン変性タイプまたはキサントゲン変性タイプ等が挙げられる。メルカプタン変性タイプは、n−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタンまたはオクチルメルカプタン等のアルキルメルカプタン類を分子量調節剤として使用するものである。また、キサントゲン変性タイプはアルキルキサントゲン化合物を分子量調節剤として使用するものである。
また、クロロプレンゴムは生成クロロプレンゴムの結晶加速度により、結晶化速度が中庸のタイプ、結晶化速度が遅いタイプおよび結晶化速度が早いタイプに分けられる。
本発明においてはいずれのタイプを用いてもよいが、非イオウ変性で結晶化速度が遅いタイプが好ましい。
【0047】
クロロプレンゴムを配合する場合、その配合量はゴム成分(A)の総質量100質量部に対し1質量部以上100質量部未満の範囲で適宜選択できる。なかでも、帯電性付与効果等を鑑みれば、クロロプレンゴムが5質量部以上含まれていることが好ましい。さらに、ゴムの均一性の観点からクロロプレンゴムが10質量部以上含まれていることがより好ましい。クロロプレンゴムの配合量の上限値は80質量部以下であることが好ましく、60質量部以下であることがより好ましい。
【0048】
NBRとしては、アクリロニトリル含量が25%以下である低ニトリルNBR、アクリロニトリル含量が25〜31%である中ニトリルNBR、アクリロニトリル含量が31〜36%である中高ニトリルNBR、アクリロニトリル含量が36%以上である高ニトリルNBRのいずれを用いてもよい。
本発明においてはゴム比重を低減するために比重の小さい低ニトリルNBRを用いることが好ましい。クロロプレンゴムとの混合性を鑑みれば中ニトリルNBRまたは低ニトリルNBRを用いることが好ましく、より具体的にはSP値の観点からアクリロニトリル含量が15〜39%、好ましくは17〜35%、より好ましくは20〜30%のNBRを用いることが好適である。
NBRは、トナーの種類によって水素添加やカルボキシル化などを施し、帯電性を調整することも有効である。
【0049】
NBRを配合する場合、その配合量はゴム成分(A)の総質量100質量部に対し5〜65質量部であることが好ましく、10〜65質量部であることがより好ましく、20〜50質量部であることがさらに好ましい。プラス帯電性トナーを用いた場合はトナーの帯電量が低減するのでNBRの含有量は65質量部以下であることが好ましく、硬度上昇の抑制や温度依存性の低減効果を実質的に得るためにはNBRの含有量は5質量部以上であることが好ましい。
【0050】
加硫ゴム組成物に含まれるゴム成分以外の成分について以下に述べる。
加硫ゴム組成物を構成する加硫ゴムにはゴム成分を加硫するための加硫剤が含まれる。
加硫剤としては硫黄系、チオウレア系、トリアジン誘導体系、過酸化物、各種モノマー等が使用できる。これらは単独で使用しても2種以上を組み合わせて使用してもよい。硫黄系加硫剤としては粉末硫黄、またはテトラメチルチウラムジスルフィドもしくはN,N−ジチオビスモルホリンなどの有機含硫黄化合物等が挙げられる。チオウレア系加硫剤としてはテトラメチルチオウレア、トリメチルチオウレア、エチレンチオウレアおよび(C
2n+1NH)C=S(式中、nは1〜10の整数を表す。)で示されるチオウレア等が挙げられる。過酸化物としてはベンゾイルペルオキシドなどが挙げられる。
加硫剤の配合量はゴム成分(A)100質量部に対して0.2質量部以上5質量部以下であることが好ましく、1質量部以上3質量部以下であることがより好ましい。
【0051】
前記加硫剤として硫黄およびチオウレア類を併用することが好ましい。
硫黄は、ゴム成分(A)100質量部に対して0.1質量部以上5.0質量部以下、好ましくは0.2質量部以上2質量部以下の割合で含まれているのが良い。前記範囲としているのは、0.1質量部より小さいと組成物全体の加硫速度が遅くなり生産性が悪くなりやすいためである。一方、5.0質量部より大きいと圧縮永久ひずみが大きくなったり、硫黄や促進剤がブルームしたりする可能性があるためである。
また、チオウレア類はゴム成分(A)100gに対して合計0.0001mol以上0.0800mol以下、好ましくは0.0009mol以上0.0800mol以下、より好ましくは0.0015mol以上0.0400mol以下の割合で配合されているのが良い。前記チオウレア類を前記範囲で配合することにより、ブルームや感光体等の他の部材の汚染を起こりにくくすることができると共に、ゴムの分子運動をあまり妨げないためより低い電気抵抗を実現できる。また、チオウレア類の添加量を増やし架橋密度を上げるほど電気抵抗値を下げることができる。すなわち、チオウレア類の配合量が0.0001molより少ないと圧縮永久ひずみを改善しにくい。電気抵抗値を効果的に下げるにはチオウレア類の配合量が0.0009mol以上であることが好ましい。一方、チオウレア類の配合量が0.0800molより多いとゴム組成物表面からチオウレア類がブルームし感光体などの他の部材を汚染したり、破断伸び等の機械的物性が極度に悪化しやすい。
加硫剤の種類に応じて公知の加硫促進剤や加硫促進助剤をさらに配合してもよい。
【0052】
ゴム成分(A)に塩素原子を有するゴムが含まれる場合、受酸剤を配合することが好ましい。受酸剤を配合することにより、ゴム加硫時に発生する塩素系ガスの残留および他の部材の汚染を防止することができる。
受酸剤としては酸受容体として作用する種々の物質を用いることができるが、分散性に優れていることからハイドロタルサイト類または酸化マグネシウムを用いることが好ましく、特にハイドロタルサイトを用いることがより好ましい。さらに、これらに酸化マグネシウムや酸化カリウムと併用することもでき、これにより高い受酸効果が得られ、他の部材の汚染をより確実に防止することができる。
受酸剤の配合量は、ゴム成分(A)100質量部に対し1質量部以上10質量部以下、好ましくは1質量部以上5質量部以下としている。加硫阻害および他の部材の汚染を防止する効果を有効に発揮させるため受酸剤の配合量は1質量部以上であることが好ましく、硬度の上昇を防ぐため受酸剤の配合量は10質量部以下であることが好ましい。
【0053】
前記成分の他に、本発明の目的に反しない限り、前記(B)(C)(D)以外の他の充填剤、軟化剤、劣化防止剤(酸化防止剤、老化防止剤)、スコーチ防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、顔料、帯電防止剤、難燃剤、中和剤、造核剤、発泡剤、気泡防止剤または他の架橋剤等の添加剤を適宜配合してもよい。しかし、軟化剤はブリードによりトナーや感光体などの他の部材のわずかな汚染をも防ぐため配合しない方が好ましい。また、酸化防止剤を配合する場合は、所望により施される表面の酸化膜の形成が進むよう、その配合量を適宜選択することが好ましい。
【0054】
本発明の導電性ロールの製造方法について、以下に述べる。
トナー搬送部を構成する加硫ゴム組成物に含まれる成分をニーダ、ロールやバンバリーミキサ等の混合装置を用いて混練り後、ゴム押出機でチューブ状に予備成形し、この予備成形品を加硫する。
加硫時間は、加硫試験用レオメータ(例:キュラストメータ)により最適加硫時間を求めて決めるとよい。なお、他の部材への汚染と圧縮永久ひずみを低減させるため、なるべく十分な加硫量を得られる様に条件を設定することが好ましい。具体的に、加硫温度は100〜220℃であることが好ましく、120〜180℃であることがより好ましい。加硫時間は15〜120分間であることが好ましく、30〜90分間であることが好ましい。
ついで、加硫工程後に、芯金を挿入・接着した後、所要寸法にカットし、トナー搬送部となる最外層の表面に鏡面研磨を施すことが好ましい。該鏡面研磨後の表面粗さRzは、1〜8μmとすることが好ましい。
【0055】
ついで、研磨後にロールを水洗いしたあと、所望により、トナー搬送部の表面に紫外線照射あるいはオゾン曝露して酸化膜を形成している。
トナー搬送部の表面に酸化膜を形成することにより、トナー等の種類に応じて、ローラ表面の摩擦係数を低減させることができ、トナー離れを物理的に向上させることができる。
紫外線により、酸化膜を形成する場合には、紫外線照射機を用い、トナー搬送部の表面と紫外線ランプとの距離やゴムの種類等により異なるが、波長が100〜400nm、より好ましくは100〜300nmの紫外線を30秒〜30分、好ましくは1分〜10分程度照射することが好ましい。エネルギーとしては500〜4000mJ/cmを付加することが好適である。
【0056】
本発明の導電性ロールは、芯金を備え、レーザービームプリンター、インクジェットプリンター、複写機、ファクシミリまたはATMなどのOA機器における電子写真装置の画像形成機構に用いられることが好ましい。
なかでも、非磁性1成分トナーを搬送するための現像ロール、トナー供給ロール、クリーニングロール、帯電ロール、転写ロール等のトナー搬送部、トナーと接触する部材に用いられることが好ましい。この場合、トナー搬送部は少なくともその最外層が加硫ゴム組成物で形成されているので、電気特性の均一性や設計値の繰り返し再現性を低コストで容易に得ることができる。
【0057】
本発明の導電性ロールは、特に、非磁性1成分トナーを感光体に搬送するためのトナー搬送部を有する現像ロールとして好適に用いられる。電子写真装置の画像形成機構における現像方式としては感光体と現像ロールの関係で分類すると接触式または非接触式に大別されるが、本発明の導電性ロールはいずれの方式にも利用できる。なかでも本発明の導電性ロールを現像ロールとして用いる場合は感光体に概接触していることが好ましい。
【0058】
本発明の導電性ロールは、最外層となる加硫ゴム組成物からなるトナー搬送部1層のみから構成されていても良いし、組成の異なる2層以上から構成されていても良い。なかでも、トナー搬送部のみからなる構成の方が、製造が簡便で設計再現性が容易であり、低コストとできるので、生産効率の見地からは好ましい。
本発明の導電性ロールを現像ロール等のトナー搬送部に用いる場合、トナー漏れ防止用のシール部材を有することが好ましい。ここで、「シール部材」としてはトナー漏れ防止用に設けられたものに限らず、導電性ロールの外周面に摺動接触する部材をすべて含む。
【0059】
本発明の導電性ロールは、温度23℃、相対湿度55%の環境下での印加電圧5Vにおけるロール電気抵抗が10Ω以下、さらには10Ω以下であることが好ましい。
これは、トナー供給等の効率を維持し、トナーが感光体に移行する際に現像ロールの電圧降下が起こり、以後現像ロールから感光体へ確実にトナーを搬送できなくなって画像不良が生じることを防ぐためである。また、10Ω以下であると、より幅広い環境下でも使用でき、極めて有用である。
一方、下限値は流れる電流を制御して画像不良の発生を抑制し、感光体などの接触する他の部材への放電の可能性を排除するためには10Ω以上、さらに10Ω以上であることが好ましい。現像ロールとしては、10Ω〜10Ωである。
なお、ロール電気抵抗は実施例に記載の方法で測定する。
【発明の効果】
【0060】
前述したように、本発明の導電性ロールは、ゴム成分(A)に対して弱導電性カーボンブラック(B)、高導電性カーボンブラック(C)及び特定の金属酸化物からなる無機フィラー(D)を必須成分として特定量配合した加硫ゴム組成物からトナー搬送部を形成しているので、従来、背反性能であった「トナー付着力(トナー搬送量)の低減」「トナー帯電量およびその維持」、及び「適度な印刷濃度の維持」の全てを同時達成することができる。そのうえ、前記(B)(C)(D)の充填剤は非常に優れた分散性を示すので、配合量を比較的少なく調整することができ、導電性ロールの硬度も抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0061】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
本発明の導電性ロール10は、非磁性1成分トナー4を感光体に搬送するための現像ロールとしており、図1に示すように、加硫ゴム組成物から構成されるトナー搬送部1と、その中空部に圧入された円柱形状の芯金(シャフト)2と、トナーが漏れるのを防止するシール部3を備えている。
【0062】
前記トナー搬送部1は、円筒形状で肉厚を0.5〜15mm、好ましくは3〜15mmとしている。該肉厚を0.5〜15mmとしているのは、前記範囲より小さいと適当なニップを得にくく、前記範囲より大きいと部材が大きすぎて小型軽量化を図りにくいからである。
芯金2は、アルミニウム、アルミニウム合金、SUSもしくは鉄等の金属製、またはセラミック製等としており、前記トナー搬送部1と芯金2とは導電性接着剤で接合されている。
シール部3はテフロン(登録商標)などの不織布やシートで構成している。
【0063】
トナー搬送部1を形成する加硫ゴム組成物は、ゴム成分(A)100質量部に対して、粒径80nm以上500nmの粒径大の弱導電性カーボンブラック(B)を1質量部以上20質量部以下、粒径18nm以上80nm未満の粒径小の高導電性カーボンブラック(C)を5質量部以上30質量部以下、酸化チタン、アルミナ及びシリカからなる群から選択される1種以上の金属酸化物からなる無機フィラー(D)を1質量部以上40質量部以下の割合で配合しており、(B)(C)(D)の合計量は、ゴム成分(A)100質量部に対して5質量部以上60質量部以下の割合となるように調整している。
【0064】
ゴム成分(A)は、ゴム成分(A)の総質量を100質量部とすると、クロロプレンゴムを50〜80質量部、エピクロルヒドリン系共重合体の含有量を20〜50質量部としたブレンドゴム、あるいは、クロロプレンゴムの含有量を50〜80質量部、NBRの含有量を20〜50質量部としたブレンドゴムとしている。
エピクロルヒドリン系共重合体としてはエピクロルヒドリン(EP)−エチレンオキサイド(EO)−アリルグリシジルエーテル(AGE)共重合体を用いており、前記共重合体中のEO:EP:AGEの含有比率がEO:EP:AGE=60〜80モル%:15〜40モル%:2〜6モル%のものを用いている。
NBRとしては、クロロプレンゴムとの混合性が良い低ニトリルNBRを用いている。
【0065】
弱導電性カーボンブラック(B)としては、特に粒径が100nm以上250nm以下のSRF、FT、MTを用い、形状は球形状または球形に近い形状のものを用いている。かつ、よう素吸着量が10〜40mg/g、DBP吸油量が25〜90ml/100gのものを用いている。
【0066】
高導電性カーボンブラック(C)としては、粒径が18nm以上80nm未満のFEF、ISAF、SAFまたはHAFカーボンを用いている。
【0067】
金属酸化物からなる無機フィラー(D)としては、酸化チタン、アルミナ、シリカからなる群から選択される1種以上を用いている。
酸化チタンとしては、一次粒径0.3〜0.5μmを主成分とするルチル型の酸化チタンを用いている。
アルミナとしては、一次粒径が1μm以下のものが80%以上を占めていることが好ましく、さらに0.5μm以下のものが50%以上を占めているものを用いている。
シリカとしては、平均一次粒子径が10〜500nmで、BET比表面積が30〜300m2/gのものを用いている。
【0068】
加硫剤としては、硫黄およびチオウレア類を併用しており、硫黄をゴム成分(A)100質量部に対して0.1質量部以上5.0質量部以下、チオウレア類をゴム成分(A)100gに対して合計0.0001mol以上0.0800mol以下の割合で配合している。本実施形態ではチオウレア類としてはエチレンチオウレアを用いている。
また、受酸剤としてハイドロタルサイトを、ゴム成分(A)100質量部に対し1質量部以上10質量部以下配合している。
硫黄とチオウレア類を併用した前記加硫系とすることにより、組成物全体の加硫速度を速やかにして生産性を向上させ、圧縮永久ひずみ等の物性を良好にし、ブルームや他の部材の汚染を起こりにくくすることができると共に、ゴムの分子運動をあまり妨げないためより低い電気抵抗を実現できる。また、ハイドロタルサイトを配合することによりエピクロルヒドリン系共重合体の塩素による加硫阻害を防止している。
【0069】
図1に示した導電性ロール10の製造方法について、以下に述べる。
トナー搬送部1を構成する加硫ゴム組成物に含まれる成分をニーダ、ロールやバンバリーミキサ等の混合装置を用いて混練り後、ゴム押出機でチューブ状に予備成形し、この予備成形品を加硫する。加硫時間は、加硫試験用レオメータ(例:キュラストメータ)により最適加硫時間を求めて決めており、他の部材への汚染と圧縮永久ひずみを低減させるため、なるべく十分な加硫量を得られる様に条件を設定している。具体的に、加硫温度は100〜220℃(好ましくは120〜180℃)、加硫時間は15〜120分間(好ましくは30〜90分間)としている。
【0070】
ついで、加硫工程後に、芯金2を挿入・接着した後、所要寸法にカットし、トナー搬送部1の表面に鏡面研磨を施している。該鏡面研磨後の表面粗さRzは、1〜8μmとしている。
【0071】
ついで、研磨後にロールを水洗いしたあと、所望により、トナー搬送部1の表面に酸化膜を形成している。酸化膜を形成する場合には、紫外線照射機を用い、ロールと紫外線ランプ間の距離を10cmとして周方向90度毎に紫外線(波長184.9nmと253.7nm)を5分間照射し、ロールを4回回転させることで、ロール全周(360度)に酸化膜を形成している。
【0072】
以上のように製造される本発明の導電性ロール10は、温度23℃、相対湿度55%の環境下での印加電圧5Vにおけるロール電気抵抗が10〜10Ω(好ましくは10〜10Ω)である。また、JIS K 6253に記載のデュロメーター硬さ試験タイプAの硬度が40〜80度(好ましくは50〜80度)である。
【0073】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を具体的について説明する。
(実施例1−18,比較例1,2)
表1に記載の配合材料(表中の数値は質量部を示す)、及び、ゴム成分100質量部に対し0.75質量部の粉末硫黄、0.75質量部のエチレンチオウレア、及び5質量部のハイドロタルサイトをバンバリーミキサで混練り後、ゴム押出機にて外径φ22mm、内径φ9〜9.5mmのチューブ状に押し出し加工を施した。
【0074】
前記チューブを加硫用のφ8mmシャフトに装着し、加硫缶にて160℃で1時間加硫を行った後、導電性接着剤を塗布したφ10mmのシャフトに装着して160℃のオーブン内で接着した。その後、端部をカット成形し、円筒研磨機でトラバース研磨、ついで仕上げ研磨をして鏡面研磨を施し、表面粗さRzが3〜5μmになるように仕上げた。
なお、表面粗さRzはJIS B0601(1994)に準拠して測定した。その結果、φ20mm(公差0.05)の導電性ロールを得た。
【0075】
ついで、ロールを水洗いした後、紫外線照射を行い、表面に酸化膜を形成した。
紫外線照射は、紫外線照射機(セン特殊光源(株)製「PL21−200(商品名)」を用い、ロールと紫外線ランプ間の距離を10cmとして周方向90度毎に紫外線(波長184.9nmと253.7nm)を5分間照射することによって行い、ロールを90度ずつ4回回転させてロール全周(360度)に酸化膜を形成させた。
【0076】
【表1】

【0077】
【表2】

【0078】
【表3】

【0079】
各実施例及び比較例の導電性ロールの構成成分としては、具体的に以下の製品を用いた。
・クロロプレンゴム;昭和電工(株)製「ショウプレンWRT(商品名)」
・GECO(エピクロルヒドリン系共重合体);ダイソー(株)製「エピオンON301(商品名)」[EO(エチレンオキサイド)/EP(エピクロルヒドリン)/AGE(アリルグリシジルエーテル)=73mol%/23mol%/4mol%]
・NBR(アクリロニトリルブタジエンゴム);日本ゼオン(株)製「ニッポール401LL(商品名)」(低ニトリルNBR;結合アクリロニトリル含量18%)
・弱導電性カーボンブラック(B);旭カーボン(株)製「旭#8(商品名)」
(平均一次粒径120nm、DBP吸油量29ml/100g、よう素吸着量14mg/g)
・高導電性カーボンブラック(C);電気化学工業(株)製「デンカブラック(商品名)」(粒状、平均粒径35nm)
・酸化チタン;チタン工業(株)製「クロノスKR310(商品名)」(比重4.2、粒径0.3〜0.5μmを主成分とする)
・アルミナ;昭和電工(株)製「AL−160−SG−1(商品名)」(粒径1μm以下のものを91%、粒径500nm以下のものを64%含有)
・シリカ;東ソー・シリカ(株)製「ニプシールVN3(商品名)」(湿式法製造、一次粒子径16nm、窒素吸着比表面積170〜220m/g)
・ハイドロタルサイト(受酸剤);協和化学工業(株)製「DHT−4A−2(商品名)」
・硫黄;粉末硫黄
・エチレンチオウレア;川口化学工業(株)製「アクセル22−S(商品名)」
【0080】
各実施例及び比較例の導電性ロールについて、下記の特性測定を行なった。その結果を配合量と共に、前記表1乃至表3に示した。
【0081】
「ロール電気抵抗の測定」
図2に示すように芯金2を通したトナー搬送部1をアルミドラム13上に当接搭載し、電源14の+側に接続した内部抵抗r(100Ω)の導線の先端をアルミドラム13の一端面に接続すると共に電源14の−側に接続した導線の先端をトナー搬送部1の他端面に接続して測定した。
前記電線の内部抵抗rにかかる電圧を検出し、検出電圧Vとした。この装置において印加電圧をEとすると、ロール電気抵抗RはR=r×E/(V−r)となるが、今回−rの項は微少とみなし、R=r×E/Vとした。芯金2の両端に500gずつの荷重Fをかけ30rpmで回転させた状態で、印加電圧Eを5Vとした時の検出電圧Vを4秒間で100個測定し、上式によりRを算出した。なお、前記測定は温度23℃、相対湿度55%の恒温恒湿条件下で行った。
なお、表中にはlog10Rを記載した。
【0082】
「ロール硬度の測定」
JIS K 6253に従って、デュロメーター硬さ試験タイプAの硬度を測定した。
【0083】
「印刷濃度の評価」
導電性ロールとトナーとの付着性を調べるため、市販のレーザープリンター(プラス帯電の非磁性1成分トナーを使用した市販のプリンター、トナー推奨印刷枚数約7000枚相当)に実施例および比較例の各導電性ロールを現像ロールとして装着し、画像として出力したトナー量、すなわち印刷物上のトナー積層量、言い換えれば印刷濃度を指標として性能評価を行った。なお、印刷濃度の測定は、以下に示すような透過濃度の測定により代用できる。印刷濃度の測定は、具体的には下記方法により、初期の黒ベタ画像印刷物及び2,000枚目の黒ベタ画像印刷物について行い、各々得られた値から濃度変化率を得た。
【0084】
(初期の黒ベタ画像印刷物の印刷濃度)
1%印字にて100枚印刷し、101枚目に黒ベタ画像を印刷し、これを初期の黒ベタ印刷物とした。得られた黒ベタ画像印刷物上の任意の5点において反射透過濃度計(TECHKON社製「テシコン濃度計RT120/ライトテーブルLP20」)にて透過濃度を測定し、その平均値を印刷濃度(C100)とした。
表中では印刷濃度(C100)に関し下記のように評価した。すなわち、C100<1.7では薄すぎるので「×」と、1.7≦C100<1.8では薄いが使用可能な程度なので「△」と、1.8≦C100<1.9ではやや薄いが良好な濃度なので「○」と、1.9≦C100<2.0では最適な濃度なので「◎」と、2.0≦C100<2.1ではやや濃いが良好な濃度なので「○」とした。
【0085】
(2,000枚目の黒ベタ画像印刷物の印刷濃度)
初期の黒ベタ印刷物を得た後、さらに1%印字にて2,000枚目まで印刷し、2,001枚目に黒ベタ画像を印刷し、これを2,000枚目の黒ベタ印刷物とした。得られた黒ベタ画像印刷物上の任意の5点において反射透過濃度計(TECHKON社製「テシコン濃度計RT120/ライトテーブルLP20」)にて透過濃度を測定し、その平均値を印刷濃度(C2000)とした。
(濃度変化率)
前記測定で得られたC100、C2000の値から、下記式により濃度変化率を求めた。
濃度変化率(%)=(C2000/C100)×100
表中では、90%以下では「×」と、90%を超えて95%以下では「△」と、95%を超えて98%以下では「○」と、98%を超えて102%以下では「◎」と、102%を超えて105%以下では「○」として濃度変化率を評価した。
【0086】
「トナー搬送量の測定」
前記のようにして測定される印刷濃度とトナーの搬送性の関係を調べるために、下記のようなトナー帯電量測定器によりトナー搬送量の評価を行った。
前記101枚目の黒ベタ印刷後に、白ベタ画像(白紙)を102枚目に印刷した。レーザープリンターからカートリッジをはずし、カートリッジに装着されている現像ロールに対して上方から吸引型帯電量測定機(トレック社製「Q/M METER Model 210HS−2(商品名)」)によりトナーを吸引し、トナー質量(mg)を測定した。得られた値から下記式に基づきトナー搬送量(T100)を算出した。
トナー搬送量(mg/cm2)=トナー質量(mg)/吸引された面積(cm2
なお、トナー搬送量は低いほうが好ましい。具体的には、T100≧0.6の場合を「×」と、0.49<T100≦0.59の場合を「△」と、0.39<T100≦0.49の場合を「○」と、T100≦0.39の場合を「◎」と表中では評価した。
【0087】
「画像耐久性の評価」
2,000枚目の黒ベタ印刷物の印刷後、1%印字により印刷を行い、画像耐久性の評価を行なった。500枚印刷毎に所定の印字を行い、白く印刷される部分にトナーが乗って黒ずみ始めた印刷枚数を画像不良発生枚数として記録した。
ここでは、カートリッジの耐久枚数(即ち、7,000枚)×2倍(=14,000枚)以上の寿命があれば、非常に良好「◎」とし、13,000枚以上14,000枚未満であれば良好「○」とし、12,000枚以上13,000枚未満であれば「△」とし、12,000枚未満であれば「×」とした。
【0088】
高導電性カーボンブラック(C)を配合していない比較例2は、トナー搬送量が多くトナー離れが悪いことがわかった。その結果として現像効率が劣ることとなる。また、画像耐久性も悪かった。
無機フィラー(D)も高導電性カーボンブラック(C)も配合していない比較例1は、トナー搬送量が多くトナー離れが悪く、画像耐久性が悪いことに加え、濃度変化率が94%と低く、初期の印刷濃度を維持することができなかった。
【0089】
これに対して、弱導電性カーボンブラック(B)、高導電性カーボンブラック(C)及び無機フィラー(D)を全て配合し、かつ配合量を本発明の範囲内とした実施例1〜18では適切な印刷濃度が維持できる上に画像耐久性に優れ、かつトナー搬送量が小さく現像効率に優れていることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の導電性ロールの概略図である。
【図2】導電性ロールのロール電気抵抗の測定方法を示す図である。
【符号の説明】
【0091】
1 トナー搬送部
2 芯金
3 シール部
4 トナー
10 導電性ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加硫ゴム組成物で形成されてなるトナー搬送部を少なくとも最外層に備えた導電性ロールであって、
前記加硫ゴム組成物は、ゴム成分(A)に、粒径80nm以上500nm以下の粒径大の弱導電性カーボンブラック(B)と、粒径18nm以上80nm未満の粒径小の高導電性カーボンブラック(C)と、酸化チタン、アルミナ及びシリカからなる群から選択される1種以上の金属酸化物からなる無機フィラー(D)を配合しており、
前記(B)(C)(D)の合計配合量は、ゴム成分(A)100質量部に対して15質量部以上60質量部以下であることを特徴とする導電性ロール。
【請求項2】
前記ゴム成分(A)100質量部に対して、前記弱導電性カーボンブラック(B)を1質量部以上40質量部以下、前記高導電性カーボンブラック(C)を1質量部以上40質量部以下、前記金属酸化物からなる無機フィラー(D)を1質量部以上40質量部以下の割合で配合している請求項1に記載の導電性ロール。
【請求項3】
前記ゴム成分(A)100質量部に対して、前記弱導電性カーボンブラック(B)を1質量部以上20質量部以下、前記高導電性カーボンブラック(C)を5質量部以上30質量部以下、前記金属酸化物からなる無機フィラー(D)を1質量以上20質量部以下の割合で配合し、
前記(B)(C)(D)の合計配合量は、前記ゴム成分(A)100質量部に対して15質量部以上40質量部以下である請求項2に記載の導電性ロール。
【請求項4】
前記高導電性カーボンブラック(C)の配合量は、前記弱導電性カーボンブラック(B)より多いと共に、前記金属酸化物からなる無機フィラー(D)以上である請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の導電性ロール。
【請求項5】
前記ゴム成分(A)として、塩素原子を有するゴムと、溶解度パラメーターが18.0(MPa)1/2以上のゴムとのいずれか一方または両方を含む請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の導電性ロール。
【請求項6】
前記加硫ゴム組成物は、ゴム成分(A)としてイオン導電性ゴムを用い、またはイオン導電剤を配合して、イオン導電性を付与している請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の導電性ロール。
【請求項7】
前記無機フィラー(D)が、酸化チタンである請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の導電性ロール。
【請求項8】
電子写真装置の画像形成機構において、非磁性1成分トナーを用いた現像装置に用いられる現像ロールである請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の導電性ロール。
【請求項9】
前記トナー搬送部と、その中空部に圧入された円柱形状の芯金からなり、
前記トナー搬送部の表面には紫外線照射による酸化膜が形成されている請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の導電性ロール。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−222930(P2009−222930A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−66651(P2008−66651)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】