説明

導電性微粒子の製造方法

【課題】 めっき中に被めっき微粒子が凝集することなく、また傷発生のない、極めて均一な厚さのめっき層を有する導電性微粒子の製造方法、及び、樹脂微粒子の表面に錫/銀合金めっき層が形成された導電性微粒子の製造方法を提供する。
【解決手段】 粒子径10〜1000μmの導電性微粒子の製造方法であって、めっき槽内に回転可能なバレルを有するバレルめっき装置を用いてバレルをめっき液に浸漬させた状態で回転させつつ被めっき微粒子の表面にめっき層を形成するものであり、前記バレル4内に前記被めっき微粒子9と前記被めっき微粒子9よりも粒子径が大きなダミー粒子8とを入れ、前記バレル4を振幅0.05〜3.0mm、周波数20〜120Hzで振動させながらめっき層を形成させる導電性微粒子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、めっき中に被めっき微粒子が凝集することなく、また傷発生のない、極めて均一な厚さのめっき層を有する導電性微粒子の製造方法、及び、樹脂微粒子の表面に錫/銀合金めっき層が形成された導電性微粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性材料としては、導電性ペースト、導電性接着剤、異方導電性フィルム等が挙げられ、これらの導電性材料には、導電性微粒子と樹脂とからなる導電性組成物が用いられている。
【0003】
このような導電性微粒子としては、一般に、金属粉末、カーボン粉末、表面に金属めっき層が設けられた微粒子等が使用されている。表面に金属めっき層を有する導電性微粒子の製造方法としては、例えば、特許文献1〜8等において開示されている。
【0004】
これらの製造方法のなかでも、粒子径5000μm以下の微粒子にめっきを行う際には、バレルめっき装置を用いる方法が一般に使用されている。バレルめっき装置は、めっき液に浸漬した回転可能な多角形筒状のバレル内に被めっき品を入れ、バレルを回転させながらバレル内に配置した陰極と被めっき品とを接触させることで電気めっきを行うものである。しかし、従来のバレルめっき装置を用いた導電性微粒子の製造方法では、めっき中に被めっき微粒子同士が凝集しやすいという問題があった。
【0005】
これに対して、例えば、ダミーと称される導電性の金属ボールからなる多数個の給電体、及び、セラミックボール等からなる攪拌促進体をバレル内に投入してチップ抵抗器素体にめっき層を形成させる方法が提案されている。しかしながら、この方法では、めっき後チップ同士が合着し、個片のチップ部品として分離できないものが発生するという問題があった。
【0006】
特許文献9には、非導電性チップ部品と同一形状の調整体と多数個の金属給電体とを投入してめっきを行うことにより、チップ部品同士の合着不良を激減させるチップ部品へのバレルめっき方法が提案されている。しかしながら、この方法によればチップ部品の合着は抑制できるものの、微粒子へのめっきに応用しても微粒子の凝集等の抑制には不充分であった。
【0007】
また、従来から、錫/銀合金めっき層を形成するのに使用される電解めっき液としては、シアン化合物を含有するアルカリ性シアン液が知られている。しかし、アルカリ性シアン液はシアン化合物を含有しているため、極めて毒性が強く、取り扱いに特別の注意を払わなければならない上に、特別の排水処理を行う必要があり、さらに作業環境も悪化するという問題点があった。
【0008】
これに対して、特開平11−269692号公報には、錫/銀合金電解めっき液としてシアン化合物を含有しない酸性浴が提案されており、この酸性浴を使用して、光沢性、ハンダ付け性及びウイスカー性に優れた錫/銀合金めっき皮膜を形成することが可能であると記載されている。このような錫/銀合金電解めっき液を用いて電気めっきを行う場合は、めっき対象品を陰極とし、錫又は不溶解性電極を陽極とする。
【0009】
しかしながら、微粒子へ電気めっきする場合は、その表面積が電解めっき液量に対して非常に大きくなり、めっきの進行に伴って電解めっき液中の銀濃度が低下するため、電気めっきを継続すると、めっき皮膜の厚み方向において合金中の錫/銀組成が異なるものとなり、外層に向かうほど銀成分の割合が少なくなる結果、極端な場合には最外層が錫100%のめっき層になってしまうという問題点があった。
【特許文献1】特開昭52−147797号公報
【特許文献2】特開昭61−277104号公報
【特許文献3】特開昭61−277105号公報
【特許文献4】特開昭62−185749号公報
【特許文献5】特開昭63−190204号公報
【特許文献6】特開平1−225776号公報
【特許文献7】特開平1−247501号公報
【特許文献8】特開平4−147513号公報
【特許文献9】特開平11−200097号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、めっき中に被めっき微粒子が凝集することなく、全ての被めっき微粒子に対して均一なめっき層を形成することができる導電性微粒子の製造方法、及び、シアン化合物を含有しない電解めっき液を使用して、錫/銀合金からなる厚いめっき層を形成でき、錫/銀合金電解めっき液量に対してめっき対象品の表面積が非常に大きくなる場合でも、めっき層の合金組成が厚み方向において異なることがなく、均一な合金組成のめっき層を形成することのできる導電性微粒子の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明1は、粒子径10〜1000μmの導電性微粒子の製造方法であって、めっき槽内に回転可能なバレルを有するバレルめっき装置を用いてバレルをめっき液に浸漬させた状態で回転させつつ被めっき微粒子の表面にめっき層を形成するものであり、前記バレル内に前記被めっき微粒子と前記被めっき微粒子よりも粒子径が大きなダミー粒子とを入れ、前記バレルを振幅0.05〜3.0mm、周波数20〜120Hzで振動させながらめっき層を形成させる導電性微粒子の製造方法である。
本発明2は、金属下地層を形成した樹脂微粒子表面に、電解めっき法により錫/銀合金共晶めっき層を形成する導電性微粒子の製造方法であって、錫イオン及び銀イオンを含有する電解めっき液に銀含有成分を連続的又は断続的に供給し、電解めっき液中に含有される銀イオン濃度を一定の範囲に保ちながら電解めっきを行い、上記電解メッキ液に含まれる銀イオン濃度が初期濃度の15%以上低下する前に、銀含有成分として銀化合物を電解メッキ液に補充する導電性微粒子の製造方法である。
以下に本発明を詳述する。
【0012】
本発明1は、めっき槽内に回転可能なバレルを有するバレルめっき装置を用いて被めっき微粒子の表面にめっき層を形成する導電性微粒子の製造方法である。
【0013】
図1に本発明1の導電性微粒子の製造方法に好適に用いることができるバレルめっき装置の一実施形態の断面を示す模式図を示した。図1において、バレルめっき装置6は、めっき槽2とめっき槽2内に浸漬して回転可能であり少なくとも一部が有孔のバレル4とバレル4に振動を与える振動モータ7、及び、陽極5から構成される。バレル4は、めっき槽2の端に設けてある陰極電極に脱着可能に装着されており、この陰極電極に電気的に接続される陰極リード線3がバレル4内部に挿入設置されている。また、図1に示した実施形態では振動モータ7はバレルめっき装置6に設置されているが、加振枠を設けて振動を与えてもよく、効果的にバレル4に振動を付与できれば加振手段としては特に限定されない。陽極5はめっき液1に浸漬される。陰極電極及び陽極5は図示しない整流器にそれぞれ接続される。
【0014】
本発明1の導電性微粒子の製造方法では、このようなバレルめっき装置を用い、バレル内に被めっき微粒子と被めっき微粒子よりも粒子径が大きなダミー粒子とを入れ、バレルを振動させながらめっき層を形成させる。
【0015】
本発明1の導電性微粒子の製造方法に供される被めっき微粒子としては特に限定されず、例えば、金属微粒子、有機樹脂微粒子、無機微粒子等が挙げられる。
上記金属微粒子としては特に限定されず、例えば、鉄、銅、銀、金、錫、鉛、白金、ニッケル、チタン、コバルト、クロム、アルミニウム、亜鉛、タングステン、これらの合金等からなるもの等が挙げられる。
【0016】
上記有機樹脂微粒子としては特に限定されず、例えば、直鎖状重合体からなる微粒子、網目状重合体からなる微粒子、熱硬化性樹脂からなる微粒子、弾性体からなる微粒子等が挙げられる。
【0017】
上記直鎖状重合体からなる微粒子を構成する直鎖状重合体としては、例えば、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、メチルペンテンポリマー、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリスルフォン、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、ポリアセタール、ポリアミド等が挙げられる。
【0018】
上記綱目状重合体からなる微粒子を構成する綱目状重合体としては、例えば、ジビニルベンゼン、ヘキサトリエン、ジビニルエーテル、ジビニルスルフォン、ジアリルカルビノール、アルキレンジアクリレート、オリゴ又はポリ(アルキレングリコール)ジアクリレート、オリゴ又はポリ(アルキレングリコール)ジメタクリレート、アルキレントリアクリレート、アルキレントリメタクリレート、アルキレンテトラアクリレート、アルキレンテトラメタクリレート、アルキレンビスアクリルアミド、アルキレンビスメタクリルアミド等の架橋反応性モノマーの単独重合体;これらの架橋反応性モノマーと他の重合性モノマーとを共重合して得られる共重合体等が挙げられる。これらの重合性モノマーのなかでも、例えば、ジビニルベンゼン、ヘキサトリエン、ジビニルエーテル、ジビニルスルフォン、アルキレントリアクリレート、アルキレンテトラアクリレート等が好適である。
上記架橋反応性モノマーの重合方法としては特に限定されず、例えば、懸濁重合法、乳化重合法、シード重合法、分散重合法等の公知の合成方法を適宜選択して用いればよい。
【0019】
上記熱硬化性樹脂からなる微粒子を構成する熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール−ホルムアルデヒド系樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド系樹脂、ベンゾグアナミン−ホルムアルデヒド系樹脂、尿素−ホルムアルデヒド系樹脂、エポキシ系樹脂等が挙げられる。
【0020】
上記弾性体からなる微粒子を構成する弾性体としては、例えば、天然ゴム、合成ゴム等が挙げられる。
【0021】
上記無機微粒子としては特に限定されず、例えば、シリカ、酸化チタン、酸化鉄、酸化コバルト、酸化亜鉛、酸化ニッケル、酸化マンガン、酸化アルミニウム等からなる微粒子が挙げられる。
【0022】
なお、被めっき微粒子として上記有機樹脂微粒子又は無機微粒子を用いる場合には、上記有機樹脂微粒子又は無機微粒子の表面に導電下地層が形成されたものが好適に用いられる。上記導電下地層は、例えば、無電解めっき方法により形成することができるが、その他の公知の導電性付与方法によって形成することもできる。
【0023】
上記ダミー粒子は、上記被めっき微粒子よりも粒子径が大きいものである。上記ダミー粒子の粒子径の好ましい下限は、被めっき微粒子の粒子径に対して2倍、好ましい上限は50倍である。2倍未満であると、解砕能力が不足し凝集が発生することがあり、50倍を超えると、解砕能力が高すぎて被めっき微粒子に形成されためっき層が剥がれてしまうだけでなく、ダミー粒子同士の塊を考えた場合の空隙内に入る被めっき微粒子の数が多くなるため凝集が発生しやすくなる。より好ましい下限は5倍、より好ましい上限は30倍である。上記ダミー粒子としては、粒子径の異なるものを複数種組み合わせて用いてもよい。
【0024】
上記ダミー粒子の比重の好ましい下限は、被めっき微粒子の比重に対して1.0倍、好ましい上限は12.0倍である。バレルを回転させるとダミー粒子が掻き上げられ落下するときに被めっき微粒子群に埋没して行く傾向があり、比重が被めっき微粒子の比重よりも大きいと、高い攪拌効果及び解砕効果が得られる。比重が1.0未満であると、解砕効果が低下し凝集が発生することがあり、ダミー粒子の比重が大きいほど良好な結果が得られるが、比重が12.0を超えると、解砕効果が高すぎて被めっき微粒子に形成されためっき層が剥がれてしまうことがある。より好ましい下限は3.0倍、より好ましい上限は7.0倍である。
【0025】
上記ダミー粒子は導電性であっても非導電性であってもよいが、全ての被めっき微粒子に陰極リード線からの電流を効率的に伝えることができることから、導電性であることが好ましい。また、上記ダミー粒子としては、導電性ダミー粒子と非導電性ダミー粒子とを組み合わせて用いてもよい。
【0026】
上記ダミー粒子としては特に限定されないが、例えば、SUS(比重7.9)、窒化珪素(比重3.2)、アルミナ(比重3.6)、ジルコニア(比重6.0)、鉄(比重7.9)、銅(比重8.9)からなるものや、これらの各金属の表面にポリテトラフルオロエチレンをコートしたもの等が挙げられる。なかでも、比重7.9のSUSからなるものが好適に用いられる。
【0027】
本発明1の導電性微粒子の製造方法においては、バレル内に上記被めっき微粒子と上記ダミー粒子とを入れ、バレルを振動させながらめっき層を形成させる。図1に示したバレルめっき装置を用いる本発明の一実施形態では、まず、バレル4に上記被めっき微粒子と上記ダミー粒子とを投入し、バレル4をめっき液1に浸漬させた状態で回転させつつ、振動モータ7によりバレル4に振動を付与しながらめっきを行う。このときダミー粒子の攪拌効果によりめっき層の膜厚のばらつきが抑制される。また、被めっき微粒子同士の凝集は、ダミー粒子による攪拌による解砕効果とバレルを振動させることにより防止することが可能となる。このとき、ダミー粒子は振動モータ7の振動をバレル4内の被めっき微粒子に効果的に伝達させる役割を果たしている。
【0028】
上記振動は、振幅0.05〜3.0mm、周波数20〜120Hzの範囲に調整される。振幅が0.05mm未満であると、バレル内の粒子に振動がうまく伝わりにくく、3.0mmを超えると、衝撃が強くめっき被膜が剥がれたり、粒子が舞い上がりやすくなるのでバイポーラ現象が生じめっきの付きが悪くなる。また、周波数が20Hz未満であると、振動の回数が少なすぎて凝集が発生し、120Hzを超えると、めっき被膜が剥がれることがある。
なお、上記振動は、例えば、加速度センサーを用いて振幅、周波数を測定し、適正値となるように振動力及び周波数を変更することにより調整する。
【0029】
バレルへの上記被めっき微粒子及び上記ダミー粒子の投入量としては、以下のように設定することが好ましい。即ち、バレル内への被めっき微粒子の投入量(V)は、バレルの容積(V)の10〜60体積%であって、バレル内へのダミー粒子の投入量(V)が被めっき微粒子の投入量とダミー粒子の投入量との和(V+V)に対して10〜70体積%であり、バレル内に投入した前記被めっき微粒子と前記ダミー粒子との混合容量(V)がバレルの容積の10〜60体積%であることが好ましい。
【0030】
一般に、バレルへの投入量は、バレル内の混合効果を考慮し容積比20〜40体積%が適性範囲とされており、本発明においてもその範囲がより好ましいが、本発明の場合には、ダミー粒子の投入による混合効率の向上及び振動付与による凝集防止効果により60体積%近くまで投入することができる。バレル内への被めっき微粒子の投入量(V)がバレルの容積(V)の10%未満であると、陰極リード線の先端部分が被めっき微粒子とダミー粒子とで形成される塊から露出するため、水素ガスの発生が起こって電流効率が急激に低下することがあり、バレル内のガス発生が激しくなると、粒子が舞上げられめっき不能に陥ることがある。60体積%以上であると、混合効率が急激に低下し、凝集発生、膜厚ばらつきの増大等の弊害が生じやすい。より好ましい下限は15体積%、より好ましい上限は45体積%、更に好ましい下限は20体積%、更に好ましい上限は40体積%である。
【0031】
バレル内へのダミー粒子の投入量(V)が被めっき微粒子の投入量とダミー粒子の投入量との和(V+V)に対して10体積%未満であると、被めっき微粒子の凝集の発生率が増大しやすくなり、70体積%を超えると、めっき剥がれの発生が急増することがある。より好ましい下限は20体積%、より好ましい上限は60体積%、更に好ましい下限は30体積%、更に好ましい上限は50体積%である。
【0032】
バレル内に投入した被めっき微粒子とダミー粒子との混合容量(V)がバレルの容積の10体積%未満であると、非効率的であり、投入量は多いほどよいが、60体積%を超えると、混合効率が急激に低下し、凝集発生、膜厚ばらつきの増大等の弊害が生じやすい。より好ましい下限は20体積%、より好ましい上限は45体積%である。
【0033】
なお、被めっき微粒子の投入量とダミー粒子の投入量との和(V+V)とバレル内に投入した被めっき微粒子とダミー粒子との混合容量(V)とを比較すると次式の関係となる。
<(V+V
これはダミー粒子は被めっき微粒子よりも大きいため、これらを混合するとダミー粒子の空隙内に被めっき微粒子が入り込むため、単純に投入量の和をとった値よりも小さくなるためである。従って、Vは実測定により求める必要がある。
【0034】
本発明1の樹脂微粒子の製造方法において、上記被めっき微粒子の表面に形成されるめっき層としては特に限定されず、例えば、金、銀、銅、白金、亜鉛、鉄、鉛、錫、アルミニウム、コバルト、インジウム、ニッケル、クロム、チタン、アンチモン、ビスマス、ゲルマニウム、カドミウム、ケイ素等の金属からなるものが挙げられる。これらの金属は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0035】
本発明1の樹脂微粒子の製造方法によれば、めっき中に被めっき微粒子が凝集することなく、また傷発生のない、極めて均一な厚さのめっき層を有する導電性微粒子を製造することができる。
【0036】
本発明2の導電性微粒子の製造方法は、金属下地層を形成した樹脂微粒子表面に、電解めっき法により錫/銀合金めっき層を形成する方法である。
【0037】
本発明2の導電性微粒子の製造方法に供する樹脂微粒子としては特に限定されず、例えば、上述の本発明1の導電性微粒子の製造方法に供する有機樹脂微粒子及び有機樹脂微粒子と無機微粒子とのハイブリッド微粒子等が挙げられる。これらの樹脂微粒子の表面には、あらかじめ金属下地層が形成されていることが好ましい。上記金属下地層としては、樹脂微粒子と錫/銀合金めっき層との密着性を向上させるものであれば特に限定されず、例えば、鉄、銅、銀、金、錫、鉛、白金、ニッケル、チタン、コバルト、クロム、アルミニウム、亜鉛、タングステン等の金属単体、又はこれらの合金からなるものが挙げられる。上記金属下地層は、例えば無電解めっき法によって形成することができるが、その他公知の導電性付与方法によって形成してもよい。
【0038】
上記錫/銀合金めっき層は、電子部品実装時には溶融させる必要があることから、他の電子部品への熱による損傷を低減するために融点が低いことが好ましい。上記錫/銀合金めっき層の融点を低下させるには、共晶めっき層を形成させることが好ましい。共晶めっき層における銀の含有率は通常約3.5重量%である。このような錫/銀合金の共晶めっき層を得るためには、錫イオンが銀イオンに比べて過剰に存在する電解めっき液を用いるので、銀イオン濃度が一定の濃度範囲となることが必要である。
【0039】
本発明2の導電性微粒子の製造方法は、上記樹脂微粒子を電解めっき液中に浸漬し、樹脂微粒子表面に電解めっき法により錫/銀合金めっき層を形成する導電性微粒子の製造方法であって、錫イオン及び銀イオンを含有する電解めっき液に銀含有成分を連続的又は断続的に供給し、電解めっき液中に含有される銀イオン濃度を一定の範囲に保ちながら電解めっきを行う方法である。
【0040】
上記電解めっき液には、錫含有成分として錫化合物、銀含有成分として銀化合物がそれぞれ溶解する。
上記錫化合物としては、酸性浴中で錫イオンを放出できる化合物であれば特に限定されず、例えば、酸化第一錫、硫酸第一錫、塩化錫、硫化錫、ヨウ化錫、クエン酸錫、シュウ酸錫、酢酸第一錫等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記銀化合物としては、酸性浴中で銀イオンを放出できる化合物であれば特に限定されず、例えば、酸化銀、硫酸銀、塩化銀、硝酸銀等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0041】
上記電解めっき液には、錫及び銀の錯化剤として、例えば、アミノチオフェノール系、チオ尿素系、チラゾール系、スルフェンアミド系、チウラム系、ジチオカルバミン酸系、ビスフェノール系、ベンツイミダゾール系、有機チオ酸系等の化合物を添加してもよい。このような錯化剤を添加することにより、錫イオン及び銀イオンを長期間にわたって安定に溶解させておくことができる。
【0042】
また、上記電解めっき液には、光沢性、ハンダ付け性向上のために、不飽和脂肪族アルデヒドを添加してもよく、更に不飽和脂肪族アルデヒドとアミン系化合物とを添加してもよい。更に、光沢剤、平滑剤等の添加剤を併用してもよい。
【0043】
本発明2の導電性微粒子の製造方法を行うには、まず、めっき装置に投入される樹脂微粒子の重量から、めっき層を形成すべき樹脂微粒子の全表面積を算出する。算出された樹脂微粒子の全表面積から、上記電解めっき液中に含まれる錫イオン及び銀イオンの初期濃度を適宜決定する。次いで、電解めっきに消費される銀イオンの単時間当たりの濃度低下量を理論的に算出する。
【0044】
電解めっきにおいて、電解めっき液中に含まれる銀イオン濃度の低下量が初期濃度の15%を超えると、一定の錫/銀合金組成の均一なめっき層を形成しにくくなる。従って、電解めっき液に含まれる銀イオン濃度が初期濃度の15%以上低下する前に、銀含有成分として上記銀化合物を電解めっき液に補充することが好ましい。ここで、上記銀化合物を補充する場合には、例えば、電解めっき液における銀イオン濃度の減少時間を予め測定しておくことにより、電解めっき液に上記銀化合物を補充する標準的な回数と時間とを設定することが好ましい。また、電解めっきを行っている間に、電解めっき液中に含まれる銀イオン濃度を断続的又は連続的に測定し、銀イオン濃度を監視しながら銀化合物を補充してもよい。電解めっき液を補充するには、例えば、電解槽に電解めっき液を断続的に供給で
きる補充タンクを設け、補充タンクに上記銀化合物を含む電解めっき液を貯蔵しておき、必要に応じて電解槽に補充する方法等が挙げられる。
【0045】
本発明2の導電性微粒子の製造方法を行うための電解めっき装置としては特に限定されず、例えば、前述のバレルめっき装置等が好適である。この際、本発明1の導電性微粒子の製造方法により導電性微粒子を製造してもよい。
【0046】
本発明2の導電性微粒子の製造方法によれば、樹脂微粒子の表面に均一な組成の錫/銀合金めっき層が形成された導電性微粒子を作製することができる。
【0047】
本発明の導電性微粒子の製造方法により作製された導電性微粒子は、半導体チップ又は電子部品と実装基板とを接続する用途や導電性ペースト、導電性接着剤、異方導電性フィルム等に好適に用いることができる。この場合、導電性微粒子の粒子径の好ましい下限は10μm、好ましい上限は1000μmであり、より好ましい下限は50μm、より好ましい上限は800μm、更に好ましい下限は200である。
【発明の効果】
【0048】
本発明によれば、めっき中に被めっき微粒子が凝集することなく、全ての被めっき微粒子に対して均一なめっき層を形成することができる導電性微粒子の製造方法、及び、シアン化合物を含有しない電解めっき液を使用して、錫/銀合金からなる厚いめっき層を形成でき、錫/銀合金電解めっき液量に対してめっき対象品の表面積が非常に大きくなる場合でも、めっき層の合金組成が厚み方向において異なることがなく、均一な合金組成のめっき層を形成することのできる導電性微粒子の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0050】
(実施例1)
スチレンとジビニルベンゼンとを共重合させて得られた合成樹脂微粒子に導電下地層としてニッケルめっき及び銅めっきを形成し、平均粒径762.3μm、標準偏差10.5μmの銅めっき微粒子を得た。この銅めっき微粒子の比重は1.59であった。
【0051】
図1に示しためっき装置(バレル容量2.4L)を用いて、得られた銅めっき微粒子を被めっき微粒子としてハンダめっきを行った。ダミー粒子としては、SUS製φ12ボール(比重7.9)を使用した。バレル内への被めっき微粒子の投入量がバレルの容積の24体積%、バレル内へのダミー粒子の投入量が被めっき微粒子の投入量とダミー粒子の投入量との和に対して40体積%となるように被めっき微粒子及びダミー粒子をバレルに投入した。このとき、投入した被めっき微粒子とダミー粒子との混合容積を測定したところ34体積%であった。また、被めっき微粒子の粒子径に対するダミー粒子の粒子径の比率(サイズ比)は15.7であり、被めっき微粒子の比重に対するダミー粒子の比重の比率(比重比)は5.0であった。振動モータは最大振動力800N、周波数60Hzとした。このときバレルの振動を加速度センサーにて測定したところ、両振幅が0.6mm、周波数が60Hzであった。電流密度0.25A/dm2、回転数15rpmにて約3時間めっきを行い、最外殻がハンダめっき層である導電性微粒子を得た。
【0052】
得られた導電性微粒子を、目開き810μmのフルイにかけたところ、100%が通過した。得られた導電性微粒子300個の平均粒径は804.9μm、ハンダめっき層の厚さは21.3μmであった。
【0053】
得られた導電性微粒子1000個について光学顕微鏡で観察し、凝集が起こっているものの割合、及び、剥がれがあるものの割合を求め、更に、以下の基準により評価を行った。
結果を表1に示した。
◎:凝集、剥がれともに0%
〇:凝集、剥がれが50%未満
×:凝集、剥がれが50%以上
【0054】
(実施例2〜24、比較例1〜11)
被めっき微粒子の粒子径、ダミー粒子の種類及び粒子径、投入量を表1及び表2のようにした以外は実施例1と同様にして導電性微粒子を作製し、同様の評価を行った。ダミー粒子として、実施例3、10、11及び比較例2ではスチールボール表面にニッケルをコーティングしたものを用い、実施例6では円柱形状のステンレス粒子を用い、実施例8では樹脂微粒子表面に銅をコーティングしたものを用いた。
なお、表中、粒子径比は、ダミー粒子の粒子径/被めっき微粒子の粒子径を表し、比重比は、ダミー粒子の比重/被めっき微粒子の比重を表し、被めっき微粒子投入量は、被めっき微粒子の投入量/バレル容量×100を表し、ダミー粒子投入量は、ダミー粒子の投入量/(被めっき微粒子の投入量+ダミー粒子の投入量)×100を表し、混合容量は、被めっき微粒子とダミー粒子を混合したときの容量/バレル容量×100を表す。
結果を表1及び表2に示した。
【0055】
【表1】

【0056】
【表2】

【0057】
(実施例25)
スチレンとジビニルベンゼンとを共重合させて得られた合成樹脂微粒子に導電下地層としてニッケルめっきを形成し、平均粒径264.0μm、標準偏差1.68μmのニッケルめっき微粒子を得た。このときニッケルめっき微粒子の比重は1.24であった。
【0058】
このニッケルめっき微粒子を、バレルめっき装置の容量700mLの正六角形状のバレルに投入して電解銅めっきをおこなった。ダミー粒子としてはSUS製φ4ボール(比重7.9)を使用した。バレル内への被めっき微粒子投入量がバレルの容積の24体積%、バレル内へのダミー粒子の投入量が被めっき微粒子とダミー粒子の投入量の和に対して40体積%となるように被めっき微粒子及びダミー微粒子をバレルに投入した。このとき、投入した被めっき微粒子とダミー粒子との混合容積を測定したところ34体積%であった。被めっき微粒子の粒径に対するダミー粒子の粒径の比率(粒子径比)は15.2であり、被めっき微粒子の比重に対するダミー粒子の比重の比率(比重比)は6.4であった。振動モータは最大振動力350N、周波数50Hzとした。このときバレルの振動を加速度センサーにて測定したところ、両振幅が0.2mm、周波数が50Hzであった。電流密度0.25A/dm2、回転数15rpmとしてめっきを行い、最外殻が銅めっき層である導電性微粒子を得た。得られた導電性微粒子300個の平均粒径は270.2μm、銅めっき層の厚さは3.1μmであった。
得られた導電性微粒子について実施例1と同様の評価を行った。
結果を表3に示した。
【0059】
(実施例26〜27、比較例12)
ダミー粒子として、実施例26ではアルミナを用い、実施例27ではタングステンカーバイト鋼を用い、比較例12ではタングステンを用いた以外は実施例25と同様にして導電性微粒子を作製し、同様の評価を行った。
結果を表3に示した。
【0060】
【表3】

【0061】
(実施例28)
樹脂微粒子の表面に金属下地層として銅めっき層を形成した樹脂微粒子(銅めっき樹脂微粒子という)168mLを、バレルめっき装置の容量700mLの正五角形状のバレルに投入して電解めっきを行い、銅めっき層の表面に錫/銀合金の共晶めっき層を有する導電性微粒子を得た。
この銅めっき樹脂微粒子の全表面積は201.3dm2であり、バレル中に占める銅めっき樹脂微粒子の割合は24体積%であった。銅めっき樹脂微粒子の平均粒径は264.5μm、粒径の標準偏差は3.0μmであった。
用いた電解めっき液は、錫イオン濃度が23.0g/L、銀イオン濃度が0.27g/Lとなるように、錫化合物及び銀化合物を溶解させて150L調製した。バレルを電解槽に入れられた電解めっき液中に浸漬して回転させながら、電流密度0.25A/dm2、バレルの回転数15rpmの条件で158分間電解めっきを行った。このめっき条件で錫/銀合金めっき層中の銀含有率が共晶組成である3.5重量%の場合に、電解めっき液から析出する銀の量は0.066g/分となる。そこで、15.8分毎に銀イオン量換算で1.04gの銀化合物を補給しながらめっきを行った。158分間のめっき全工程において、電解めっき液の総補給回数は9回、総補給量は銀量換算9.36gであった。
【0062】
めっき工程中において、電解めっき開始より15.8分、39.5分、79.0分、118.6分経過後にそれぞれ少量の導電性微粒子のサンプリングを行い、めっき層の厚み(μm)及び銀含有量(重量%)を測定し、表4及び表5に示した。なお、めっき層の厚みは断面顕微鏡写真により、めっき層中の銀含有量は原子吸光光度法によりそれぞれ測定した。
【0063】
(比較例13)
電解めっき液中に全く銀化合物を補給しなかったこと以外は、実施例4と同様にして電解めっきを行い、銅めっき樹脂微粒子の表面に錫/銀合金めっきを施した導電性微粒子を得た。
上記めっき工程中において、実施例28と同様にして少量の導電性微粒子のサンプリングを行い、めっき層の厚み及び銀含有量を測定し、表4及び表5に示した。
【0064】
【表4】

【0065】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明によれば、めっき中に被めっき微粒子が凝集することなく、また傷発生のない、極めて均一な厚さのめっき層を有する導電性微粒子の製造方法、及び、樹脂微粒子の表面に錫/銀合金めっき層が形成された導電性微粒子の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】図1は、本発明1に好適に用いることのできるバレルめっき装置の一実施形態を示す模式図である。
【符号の説明】
【0068】
1 めっき液
2 めっき槽
3 陰極リード線
4 バレル
5 陽極
6 バレルめっき装置
7 振動モータ
8 ダミー粒子
9 被めっき微粒子




【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子径10〜1000μmの導電性微粒子の製造方法であって、
めっき槽内に回転可能なバレルを有するバレルめっき装置を用いてバレルをめっき液に浸漬させた状態で回転させつつ被めっき微粒子の表面にめっき層を形成するものであり、
前記バレル内に前記被めっき微粒子と前記被めっき微粒子よりも粒子径が大きなダミー粒子とを入れ、前記バレルを振幅0.05〜3.0mm、周波数20〜120Hzで振動させながらめっき層を形成させる
ことを特徴とする導電性微粒子の製造方法。
【請求項2】
ダミー粒子は、粒子径が被めっき微粒子の粒子径の2〜50倍であり、比重が被めっき微粒子の比重の1.0〜12.0倍であることを特徴とする請求項1記載の導電性微粒子の製造方法。
【請求項3】
バレル内へのダミー粒子の投入量が前記被めっき微粒子の投入量とダミー粒子の投入量との和に対して10〜70体積%であり、バレル内に投入した前記被めっき微粒子と前記ダミー粒子との混合容量がバレルの容積の10〜60体積%であることを特徴とする請求項1又は2記載の導電性微粒子の製造方法。
【請求項4】
金属下地層を形成した樹脂微粒子表面に、電解めっき法により錫/銀合金共晶めっき層を形成する導電性微粒子の製造方法であって、
錫イオン及び銀イオンを含有する電解めっき液に銀含有成分を連続的又は断続的に供給し、電解めっき液中に含有される銀イオン濃度を一定の範囲に保ちながら電解めっきを行い、
上記電解メッキ液に含まれる銀イオン濃度が初期濃度の15%以上低下する前に、銀含有成分として銀化合物を電解メッキ液に補充する
ことを特徴とする導電性微粒子の製造方法。



【図1】
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【公開番号】特開2006−37228(P2006−37228A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−195239(P2005−195239)
【出願日】平成17年7月4日(2005.7.4)
【分割の表示】特願2002−223364(P2002−223364)の分割
【原出願日】平成14年7月31日(2002.7.31)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】