説明

導電性接合材とそれを用いた接合体、及びその接合体の製造方法

【課題】反射率の低下を低減する導電性接合材とそれを用いた接合体、及び接合体の製造方法を提供する。
【解決手段】第1の接合材4と、前記第1の接合材4上に設けられている第2の接合材5とを有し、前記第1の接合材4は、第1の粒子9と第1のバインダー10とを含み、前記第2の接合材5は、第2の粒子11と第2のバインダー12とを含んで構成され、前記第2の粒子11は、前記第1の粒子9が化学反応により生成する化合物の反射率より相対的に高い反射率を有する粒子であることを特徴とする導電性接合材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、導電性接合材とそれを用いた接合体、及びその接合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種の電子機器の実装において、回路配線と電子部品とを接続する導電性接合材として半田が用いられてきたが、銀(Ag)が主体の導電性接合材を用いられるようになってきている。
【0003】
銀(Ag)が主体の導電性接合材は、導電性媒体である銀粉又は銀粉と他の金属粉と、バインダーであるエポキシ系熱硬化性樹脂を含んで構成されている。そして、電子部品を実装する際には、基板の金属表面上に導電性接合部材を所定の膜厚で塗布した後、更にその上面に電子部品の金属面を配置して圧接し、加熱処理を行って接合を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−225980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の導電性接合材では、例えば発光する半導体素子を実装してから時間があまり経過していない場合、発光する半導体素子から出射される光は、導電性接合材中に含まれる銀(Ag)により、高い反射率で光を反射することが可能であるが、長期間経過すると、銀(Ag)は大気中の硫黄(S)との反応により、黒色に変色してしまい、光の反射率が低下してしまう。
【0006】
そこで本発明では、反射率の低下を低減する導電性接合材とそれを用いた接合体、及びその接合体の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、実施形態の導電性接合材は、第1の接合材と、第1の接合材上に設けられている第2の接合材とを有し、第1の接合材は、第1の粒子と第1のバインダーとを含み、第2の接合材は、第2の粒子と第2のバインダーとを含んで構成され、第2の粒子は、第1の粒子が化学反応により生成する化合物の反射率より相対的に高い反射率を有する粒子であることを特徴としている。
【0008】
また、実施形態の導電性接合材を用いた接合体は、請求項5及び請求項6に記載の導電性接合材を用いた接合体の製造方法により接続されたことを特徴としている。
【0009】
また、実施形態の導電性接合材を用いた接合体の製造方法は、請求項1乃至請求項4に記載の導電性接合材を用いた接合体の製造方法であって、被接合部材上に第1の接合材を設ける工程と、第1の接合材上に第2の接合材を設ける工程と、第2の接合材上に電子部品をマウントする工程と、導電性接合材を硬化させる工程とを含むことを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係る導電性接合材を用いた接合体の断面図。
【図2】本発明の実施形態に係る導電性接合材の概略図。
【図3】本発明の実施形態に係る導電性接合材を用いた接合体の工程断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係る反射率の低下を低減する導電性接合材とそれを用いた接合体、及びその接合体の製造方法を、図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
まず、本発明の実施形態に係る導電性接合材と導電性接合材を用いた接合体について図1、図2を用いて説明する。図1に示すように、本実施形態における接合体1は、被接続部材2上に、導電性接合材3である第1の接合材4と第2の接合材5を順に積層して設け、更にその上に電子部品6を設けた構造となっている。
【0013】
被接続部材2は、フレーム7にめっき層8が形成されているものであり、本実施形態では銅のフレーム上に、銀(Ag)をめっきしたものを用いている。なお、本実施形態ではフレーム7に銅のフレームを用いているがこれに限られることは無く、例えば、42Alloy等のFe系合金等の金属フレーム、FR−4等の樹脂配線基板やセラミック配線基板等を用いてもよい。また、めっき層8も同様に、本実施形態では銀(Ag)によりめっきしているが、これに限られることはなく、例えばNi/Pd/Auのように複数のめっき層8を設けても良く、導電性の材料から形成されていればよい。また、所望の導電性と接続信頼性が得られれば、被接続部材表面にめっき層を設けなくてもよい。
【0014】
図2に示すように、導電性接合材3である第1の接合材4は、第1の粒子9と第1のバインダー10とを含んで構成され、第2の接合材5は、第1の接合材4の接合部分以外の領域Aを少なくとも覆うように設けられ、第2の粒子11と第2のバインダー12とを含んで構成されている。
【0015】
第1の粒子9は、導電性の高い材質である銀(Ag)粒子を用いており、1〜10μm程度の大きさのフレーク状であり、第1のバインダー10内に分散して設けられている。なお、本実施形態に示した大きさや形状に限られることはなく、例えば、大きさとしては任意の大きさのものを用いてよく、形状としては球状等どの様な形状でもよく、併用してもよい。また、本実施形態では銀(Ag)粒子だけを用いているが、これに限られることはなく、銀(Ag)粒子と他の導電性の金属を分散させたものを用いても良い。
【0016】
第1のバインダー10は、エポキシ樹脂と、硬化剤とを含んで構成されている。なお、本実施形態ではエポキシ樹脂を用いているが、これに限られることはなく、熱硬化性樹脂であればどの様な材質のものを用いても良い。
【0017】
第2の粒子11は、導電性の金属を用いており、金属単体を用いる場合は、銀(Ag)よりも硫化物及び酸化物の生成自由エネルギーが低く、また硫化物及び酸化物を形成すると、反射率が硫化銀(AgS)の反射率(10〜20%)よりも高いもの、あるいは光の透過率が高く、銀(Ag)による反射が可能なものを用いている。また、第2の粒子11は第2のバインダー12内に分散して設けられており、大きさとしては、0.1〜1μm程度で、球状の形状のものを用いている。なお、第2の粒子の形状は球状に限られることはなく、どの様な形状であっても良い。
【0018】
本実施形態では、第2の粒子11として亜鉛(Zn)を用いている。亜鉛(Zn)は、第1の粒子9より電気伝導率が低いが、銀(Ag)よりも硫化物及び酸化物の生成自由エネルギーが低く、第1の粒子9である銀(Ag)よりも早く硫化又は酸化することから、銀(Ag)の反射率の低下を低減することが出来る。また、硫化物である硫化亜鉛(ZnS)の光透過率は50〜60%程度で、酸化物である酸化亜鉛(ZnO)の光透過率は70〜80%程度であることから、亜鉛(Zn)の化合物が光透過性であることがわかり、第1の粒子9による光の反射が可能となるため、反射率の低下を低減することが可能となる。
【0019】
なお、本実施形態では亜鉛(Zn)を用いているが、これに限られることはなく、例えばアルミニウム(Al)やマグネシウム(Mg)でもよく、また亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)のうち少なくとも1種類以上を選択してもよい。
【0020】
アルミニウム(Al)の場合、硫化物である硫化アルミニウム(Al)の反射率は90%程度、また酸化物である酸化アルミニウム(Al)の反射率は80〜85%程度となっている。そして、マグネシウム(Mg)の場合、硫化物である硫化マグネシウム(MgS)の反射率は75%程度、また酸化物である酸化マグネシウム(MgO)の反射率は99%程度となっている。そのため、第1の粒子9である銀(Ag)よりも早く硫化又は酸化することにより、銀(Ag)の変色を低減することが出来、更に化合物の反射率が高いため、反射率の低下を低減することが可能となる。
【0021】
また、第2の粒子11として導電性の化合物を用いる事も可能である。例えば、硫化亜鉛(ZnS)、硫化アルミニウム(Al)、硫化マグネシウム(MgS)、酸化亜鉛(ZnO)から少なくとも1種類以上を選択してもよく、更に金属単体と化合物の組み合わせを選択してもよい。このように、あらかじめ第2の粒子11に化合物を用いることにより、安定した反射率を確保することが可能となるため、反射率の低下を低減することが可能となる。
【0022】
第2のバインダー12は、第1のバインダー10と同様に、エポキシ樹脂と、硬化剤とを含んで構成されている。なお、本実施形態ではエポキシ樹脂を用いているが、これに限られることはなく、熱硬化性樹脂であればどの様な材質のものを用いても良い。また、第2の粒子11に亜鉛(Zn)を含むものを用いる場合、酸素を透過し難い材質のものを用いるとよい。これにより、銀(Ag)の変色を防ぐことが可能となり、光の反射率の低下を低減することが可能となる。
【0023】
電子部品6としては、図1に示すように半導体素子を用いており、具体的にはLED素子を用いている。
【0024】
次に、導電性接合材を用いた接合体の製造方法について図3を用いて説明する。
【0025】
まず、図3(a)に示すように、被接続部材2上へ、スタンパ13を用いて第1の接合材4を供給する。本実施形態では、スタンパ13を用いて第1の接合材4を設けているが、被接続部材2上へ第1の接合材4を設けることが可能であればこれに限られることはなく、例えばディスペンサ等を用いて設けても良い。
【0026】
そして、図3(b)に示すように、第1の接合材4を覆うように、第2の接合材5をディスペンサ14により滴下して設ける。この時、第2の接合材5は、第1の接合材4の粘度より低いものを用いて設ける。これは、次の工程である図3(c)に示すように、電子部品6をマウンタ15により第2の接合材5上にマウントする際に、第2の接合材5を押し出し、第1の接合材4の接合部分以外の領域Aへと多く設けるためである。
【0027】
これにより、第1の粒子9である銀(Ag)の硫化又は酸化を低減することができ、そして第2の粒子11である亜鉛(Zn)が化合物となった際に、銀(Ag)により光を反射することが出来るため、反射率の低下を低減することが可能となる。
【0028】
更に、電子部品6と第1の接合材4との間の第2の接合材5を押し出すことにより、非導電物質である第2のバインダー12と、第1の粒子9よりも電気伝導率の低い第2の粒子11を減らす事が可能となるので、被接続部材2と電子部品6の電気伝導率の低下を低減することも可能となる。
【0029】
その後、図3(d)に示すように、導電性接合材3により接合された接合体1は加熱装置16により加熱され、導電性接合材3を硬化させる。
【0030】
以上、本発明の実施形態によれば、導電性接合材3は、第1の粒子9と第1のバインダー10とを含む第1の接合材4上に、第1の粒子9より化学反応がしやすいもの、又は反射率が第1の粒子9の化合物の反射率より高い化合物、あるいは光の透過率が高い化合物である第2の粒子11と第2のバインダー12とを含む第2の接合材5を積層して構成されている。また、導電性接合材3を用いた接合体1を製造する際には、被接続部材2上に、導電性接合材3である第1の接合材4と、第1の接合材4より粘度の低い第2の接合材5とを積層して設け、更にその上に電子部品6をマウントし、押し出された第2の接合材5を、第1の接合材4の接合部分以外の領域Aへと多く設けるようにして製造をおこなっている。これにより、長期経過しても第1の粒子9の化学反応を低減しながら光の反射率の低下を低減することが可能となる。更に、導電率の低下を低減することが可能となる。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0032】
1…接合体
2…被接続部材
3…導電性接合材
4…第1の接合材
5…第2の接合材
6…電子部品
7…フレーム
8…めっき層
9…第1の粒子
10…第1のバインダー
11…第2の粒子
12…第2のバインダー
13…スタンパ
14…ディスペンサ
15…マウンタ
16…加熱装置
A…領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の接合材と、前記第1の接合材上に設けられている第2の接合材とを有し、
前記第1の接合材は、導電性を有する第1の粒子と、第1のバインダーとを含み、
前記第2の接合材は、導電性を有する第2の粒子と第2のバインダーとを含んで構成され、
前記第2の粒子は、前記第1の粒子が化学反応により生成する化合物の反射率より相対的に高い反射率を有する粒子であることを特徴とする導電性接合材。
【請求項2】
前記第2の粒子は、金属粒子であり、前記金属粒子に含まれる金属元素は、前記第1の粒子より化学反応しやすいものであることを特徴とする請求項1記載の導電性接合材。
【請求項3】
前記第2の粒子は、Zn、Al、Mg、ZnS、Al、MgS、ZnOから選ばれる少なくとも1種を含んでいることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の導電性接合材。
【請求項4】
前記第1の粒子はAgであることを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の導電性接合材。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4に記載の導電性接合材を用いた接合体の製造方法であって、
被接合部材上に前記第1の接合材を設ける工程と、
前記第1の接合材上に前記第2の接合材を設ける工程と、
前記第2の接合材上に電子部品をマウントする工程と、
前記導電性接合材を硬化させる工程と、
を含むことを特徴とする導電性接合材を用いた接合体の製造方法。
【請求項6】
前記第2の接合材は前記第1の接合材より粘度が低いことを特徴とする請求項5記載の導電性接合材を用いた接合体の製造方法。
【請求項7】
請求項5及び請求項6に記載の導電性接合材を用いた接合体の製造方法により接続されたことを特徴とする導電性接合材を用いた接合体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−67155(P2012−67155A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−211408(P2010−211408)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】