説明

導電性材料の製造方法及び導電性材料の製造装置

【課題】パターニングされた微細な導電性金属層を有する導電性材料を高効率で生産可能な導電性材料の製造方法及び製造装置を提供する。
【解決手段】透明支持体16上に銀塩を含有する銀塩乳剤層を有する感光フイルムを露光して現像し、金属銀部20を形成する。その後、金属イオンを含む溶液中で金属銀部20をカソードとして被めっき材料24を通電する。その後、通電後の被めっき材料24に対して無電解めっき処理を行って、金属銀部20のみにめっき層34を担持させる。金属イオンを含む溶液中の金属イオンは銅、ニッケル、コバルト、スズのいずれかであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性材料の製造方法及び導電性材料の製造装置に関し、例えばPDP(プラズマディスプレイパネル)、液晶ディスプレイ等の各種表示装置からの漏洩電磁波を遮蔽するための電磁波シールド材、タッチパネル等各種電子機器の透明電極、電子機器のプリント配線、非接触ICのアンテナ回路等、各種導電性材料に用いて好適な導電性材料の製造方法及び導電性材料の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
PDP用の電磁波遮蔽膜等、導電性及び光透過性を共に要求される光透過性導電性材料として、金属等の導電層の細線を透明基板上にメッシュパターン状に形成したものが知られており、以下のような製造方法が知られている。
【0003】
(1)透明基材上に貼合あるいは無電解めっき等によって銅薄膜層を形成した後、フォトリソグラフィ法によって銅薄膜層をエッチングしてパターン化する方法(特許文献1、特許文献2等)。
【0004】
(2)パラジウム等の無電解めっき触媒粒子を含むインクを印刷によって透明基材上にパターン状に配置し、この上に無電解めっきを行い導電層を形成する方法(特許文献3、特許文献4等)。
【0005】
(3)透明基材表面に設けたハロゲン化銀感光層をパターン状に露光してパターン状に現像銀を形成し、これにめっきを施しパターン状の導電層を形成する方法(特許文献5、特許文献6等)。
【0006】
ここで、(1)の銅薄膜層をフォトリソグラフィ法によってエッチングしてパターニングする方法は、微細加工が可能であるために高開口率のメッシュを作成することができ、高い導電性と透明性を両立し易いという長所を持つ反面、基材への銅薄膜層の形成、銅薄膜層上への感光性樹脂層の形成、露光、樹脂層の除去、エッチングによる銅薄膜層の除去等、製造工程が複雑であり、また、形成した銅薄膜層の大部分を除去するために廃液処理に費用がかかるという欠点を有している。
【0007】
(2)のめっき触媒を印刷によってパターニングし、めっきする方法においては、印刷線幅を細くすることが困難で導電性層の線幅が太くなりやすく、ディスプレイ用途での透過率の低下やモアレの発生等の画質低下を引き起こし易いという問題を抱えている。また、無電解めっき触媒としては、高価なパラジウムを用いるか、もしくはパラジウムに比べめっき活性の劣る銅や銀等の他の金属微粒子触媒を用いる必要があり、コストあるいは生産性が悪いという欠点を有している。
【0008】
(3)のハロゲン化銀を用いる方法は、フォトリソグラフィ法に比べて工程がシンプルであり、また、印刷法に比べて細線の形成も容易であり、さらに導電層を継ぎ目無く連続して形成するのに適している等の長所があるものの、現像銀のめっき活性が低く、電気めっき、無電解めっきいずれのめっき方法においても、めっきに時間がかかり生産性が低いという問題を抱えていた。
【0009】
現像銀の無電解めっき活性を高める技術として、上述の特許文献6にはパラジウムを含有する溶液で現像銀を処理することにより無電解めっき速度を速められることが述べられているが、高価なパラジウム触媒を用いる必要があり、また、非導電層形成部に意図せず生じた現像銀(いわゆるかぶり銀)がパラジウムによって活性化されてしまい、意図しない部分にまでめっきを生じてしまう、いわゆるめっきかぶりが生じやすいという問題があった。特許文献7には、定着液中のチオ硫酸塩濃度を制限することにより無電解めっき後の表面抵抗が下がり、めっき工程時間を短縮できることが述べられているが、触媒として塩化パラジウムを使用しており、また、めっき速度も不十分であった。特許文献8には、水素化ホウ素ナトリウムや硝酸銀等の活性化液への浸漬によって、パラジウム触媒を用いることなく現像銀の無電解めっき活性が改善することが述べられているが、これら活性化液の安定性やコストが問題であり実用に耐えるものではなかった。
【0010】
一方、現像銀に限らず、無電解めっき速度を高める技術として、被めっき物を陰極として無電解めっき液中で電流を流す、あるいは負電位を与える技術が開示されている(特許文献9、特許文献10、特許文献11等)。しかしながらこれらの方法は、無電解めっき液中に設置する対極である陽極上にもめっき金属が析出が生じてしまうという問題を有している。無電解めっき層からの出し入れや電流印加タイミングの制御によっては陽極上へのめっき進行を回避することも可能だが、操作が煩雑となり、導電性膜を連続して大量生産する場合には不向きな方法といえる。
【0011】
一方、無電解めっきを用いず、現像銀に電気めっきを施そうとする試みも行われているが、例えば特許文献12に記載のように、現像銀の導電率が低いためにめっきが電極近傍や導電性の低い部分に集中してしまう等の不均一を生じ易く、また、ジュール熱による断線を避ける必要性から印加電圧もしくは電流が限られるために析出金属量が制限され、めっき量を増やしたい場合には電気めっきを限定された電流量で低速で行うか該特許記載のごとく多段で行う必要があり、実用に耐えるものではなかった。この問題は、現像銀に限らず、上述のごとく金属微粒子等を印刷法等でパターニングした場合でも同様である。すなわち、金属等の導電性微粒子の分散物で描かれた細線上に電気めっきを施したい場合、導電性微粒子間の接触抵抗や細線であることによる導電性の不十分さから、電気めっきを施す際の電流量が限られ、めっき量を増やしたい場合には低速もしくは多段の電気めっきを行う必要が生じる。導電率を上げるために導電性微粒子の密度や付着量を高めようとすると、線幅の増加や、導電層と基体との密着性の悪化の問題を生じるために限界がある。また、焼結等によって導電性微粒間の電気抵抗を事前に低減することも考えられるが、工程が複雑になりまた加熱による基材等の変質のおそれが生じる。
【0012】
従って、細線の形成が容易であり、且つ、生産性の高い導電性金属層の製造方法の開発が望まれていた。
【0013】
【特許文献1】特開平5−16281号公報
【特許文献2】特開平10−163673号公報
【特許文献3】特開平11-170420号公報
【特許文献4】特開2003−318593号公報
【特許文献5】国際公開第01/51276号パンフレット
【特許文献6】特開2004−221564号公報
【特許文献7】特開2007−12314号公報
【特許文献8】特開2006−228836号公報
【特許文献9】特開昭61−34180号公報
【特許文献10】特開平2−175895号公報
【特許文献11】特開2004−18975号公報
【特許文献12】特開2007−9326号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、かかる事情に鑑みなされたものである。すなわち、本発明の目的は、パターニングされた微細な導電性金属層を有する導電性材料を高効率で生産可能な製造方法及び製造装置を提供することである。さらに詳しくは、現像銀あるいは印刷等でパターニングして配置された導電性微粒子上にめっきによって金属層を積層し、金属の連続層を形成することにより導電性材料を製造する際のめっき速度を高めることにより、パターニングされた導電性金属層を有する導電性材料を高効率で製造可能な製造方法及び製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記本発明の課題は以下によって達成された。
[1] 本発明に係る導電性材料の製造方法は、基体の表面に導電性微粒子を配置する工程と、前記導電性微粒子をカソードとして、金属イオンを含む溶液中で通電する通電工程と、前記導電性微粒子上に無電解めっき処理によって金属を積層する無電解めっき工程とを有することを特徴とする。
[2] [1]において、前記通電工程の電流密度の範囲が0.01〜10A/dm2の範囲であることを特徴とする。
[3] [1]又は[2]において、前記通電工程の通電時間の範囲が0.01〜60秒の範囲であることを特徴とする。
[4] [1]〜[3]のいずれかにおいて、前記金属イオンが鉄、ニッケル、銅、銀、コバルト、亜鉛及び錫からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属イオンであることを特徴とする。
[5] [1]〜[4]のいずれかにおいて、前記通電工程の金属めっき量は、前記無電解めっき工程の金属めっき量の1/10以下であることを特徴とする。
[6] [1]〜[5]のいずれかにおいて、前記金属イオンを含む溶液がさらに錯化剤を含むことを特徴とする。
[7] [6]において、前記錯化剤がエチレンジアミン四酢酸塩、トリエタノールアミン塩、酒石酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、ピロリン酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする。
[8] [6]において、前記錯化剤がエチレンジアミン四酢酸塩であることを特徴とする。
[9] [8]において、前記錯化剤の含有量が0.0001〜1モル/リットルであることを特徴とする。
[10] [1]〜[9]のいずれかにおいて、前記金属イオンを含む溶液中の前記金属イオンの含有量が0.001〜0.1モル/リットルであることを特徴とする。
[11] [10]において、前記金属イオンを含む溶液がさらに錯化剤を含み、前記金属イオンの含有量に対する前記錯化剤の含有量の比率が1〜100の範囲であることを特徴とする。
[12] [1]〜[11]のいずれかにおいて、前記金属イオンを含む溶液中の前記金属イオンが銅、ニッケル、コバルト、スズのいずれかであることを特徴とする。
[13] [1]〜[12]のいずれかにおいて、前記導電性微粒子を配置する工程は、前記基体上に銀塩を含有する銀塩乳剤層を有する感光フイルムを形成する工程と、前記基体上の前記感光フイルムを露光、現像して、金属銀部を形成する工程とを有することを特徴とする。
[14] [1]〜[12]のいずれかにおいて、前記導電性微粒子を配置する工程は、前記基体上に前記導電性微粒子を含むペースト又はインクを印刷する工程を含むことを特徴とする。
[15] [1]〜[12]のいずれかにおいて、前記導電性微粒子を配置する工程は、前記基体上に前記導電性微粒子を含む感光性樹脂層を形成する工程と、フォトマスクを介して前記感光性樹脂層に光を照射、現像する工程とを有することを特徴とする。
[16] 本発明に係る導電性材料の製造装置は、導電性微粒子を有する被めっき材料にめっき処理を施して導電層を形成する導電性材料の製造装置であって前記導電性微粒子に接触して給電する給電ローラと、前記給電ローラより前記被めっき材料の搬送方向下流側に配置され、前記導電性微粒子を金属イオンを含む溶液中で通電処理する通電処理槽とを備える通電処理装置と、前記通電処理装置の後段に配置され、前記導電性微粒子上に無電解めっき処理によって金属を積層する無電解めっき処理装置とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明に係る導電性材料の製造方法及び導電性材料の製造装置によれば、現像銀あるいは印刷等でパターニングして配置された導電性微粒子上にめっきによって金属層を積層し、金属の連続層を形成することにより導電性材料を製造する際のめっき速度を高めることが可能となる。これにより、電磁波遮蔽膜や透明電極等に好適に用いることが可能な、パターニングされた細線からなる導電性金属層を基体上に有する導電性材料を高効率で生産することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明の導電性材料の製造方法及び導電性材料の製造装置について詳細に説明する。
【0018】
なお、本明細書において「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味である。
【0019】
本発明の導電性材料の製造方法は、下記工程を順次含むことを特徴とする。
(1)基体の表面に導電性微粒子を配置する工程。
(2)上記導電性微粒子をカソードとして、金属イオンを含む溶液中で通電する工程。
(3)上記導電性微粒子上に無電解めっき処理によって金属を積層する工程。
【0020】
<基体表面に導電性微粒子を配置する工程>
本発明において、基体表面に導電性微粒子を配置する方法は特に限定されるものではない。導電性微粒子は基体表面にパターニングして配置されることが好ましく、たとえば下記のような方法が好ましく使用できる。
【0021】
[1]ハロゲン化銀感光材料を用いる方法
基体表面にハロゲン化銀感光層を形成し、これを露光、現像することによって現像銀からなる導電性微粒子を基体表面に配置する方法である。
[2]印刷による方法
導電性微粒子を含むペーストないしインクを、基体上に印刷する方法である。
[3]フォトレジスト法
導電性微粒子を含む感光性樹脂層を基体上に設けた後、フォトレジスト法によって不要部分をエッチング除去する方法。
【0022】
<ハロゲン化銀感光材料を用いる方法>
以下に、基体表面に導電性微粒子を配置する方法としてハロゲン化銀感光材料を用いる場合の製造方法(以下、適宜、「本発明の製造方法」と称する)を詳述する。
【0023】
本発明に好適に用いることのできるハロゲン化銀感光材料は、前記感光材料と現像処理の形態によって主に次の2通りの方法が含まれる。
【0024】
(1)物理現像核を含まないハロゲン化銀感光材料を化学現像して金属銀部を該感光材料上に形成させる方法。
【0025】
特開2004−221564号公報、特開2006−228469号公報、特開2006−332459号公報、特開2007−129205号公報、特開2007−095331号公報等に記載の方法である。
【0026】
非導電層部の着色をもたらす物理現像核を含まないために光透過率が高い導電性材料の形成が可能であり、感光材料及び現像処理の構成が単純で生産性が高く、また、現像銀の形成に拡散転写を用いないために導電性層の微細化に有利な方式といえる。一方で現像銀の密度が感光材料のバインダで制限されるために高密度にし難く、拡散転写法に比べて現像銀層の導電率を上げにくい特徴がある。
【0027】
これを改良するために感光材料の銀/バインダ比や膨潤率の規定、圧密処理やバインダの溶出処理等の提案もなされている。
【0028】
(2)物理現像核含むハロゲン化銀感光材料を溶解物理現像し、物理現像核上に拡散転写方式によって現像銀を形成させる方法。
【0029】
特公昭42−23745号公報、国際公開第01/51276号パンフレット、国際公開第2004/7810号パンフレット等に記載の方法である。溶解物理現像により溶解した銀イオンを物理現像核上に沈積することにより銀密度を高めることが可能であり、導電率を上げ易い反面、銀イオンの拡散によって線巾が広がり易く、また、導電層形成部以外の物理現像核による透過率の低下や、感光材料や現像処理工程が複雑になる等の問題がある。
【0030】
ここでいう化学現像、熱現像、溶解物理現像、及び拡散転写現像は、当業界で通常用いられている用語どおりの意味であり、写真化学の一般教科書、例えば菊地真一著「写真化学」(共立出版社、1955刊行)、C.E.K.Mees編「The Theory of Photographic Processes, 4th ed.」(Mcmillan社、1977刊行)に解説されている。本件は液処理であるが、その他の出願については現像方式として、熱現像方式も適用される。例えば、特開2004−184693号公報、同2004−334077号公報、同2005−010752号公報、特願2004−244080号公報、同2004−085655公報記載の内容が適用できる。
【0031】
本発明に好適に用いることのできるハロゲン化銀感光材料の構成要素、露光方法並びに現像処理方法に関しては、上述の特許公報記載のものの他、公知のいずれの要素も好適に適用できる。本発明に特に好適なこれら要素については下記特許公報記載のものが特に好ましい。
【0032】
(a)ハロゲン化銀感光材料
特開2006−228469号公報、同2006−332459号公報、同2006−352073号公報、特願2006−24723号明細書
(b)露光方法
特開2006−261315号公報、同2007−72171号公報
(c)現像方法
特開2006−228473号公報、同2006−269795号公報、同2006−267635号公報、同2006−267627号公報、同2006−324203号公報
【0033】
また、現像後の感光材料に対して、特願2005−379199号明細書に記載のような硬膜処理、特開2007−129205号に記載のような平滑化処理、特願2006−336090号明細書に記載のような電解質水溶液処理、特願2007−93021号明細書に記載のような温水もしくは水蒸気処理等も好ましく行うことができる。
【0034】
ここで、ハロゲン化銀感光材料を用いる方法にて導電性微粒子を基体の表面に配置する1つの例を図1A〜図1Dを参照しながら説明する。
【0035】
先ず、図1Aに示すように、ハロゲン化銀10(例えば臭化銀粒子、塩臭化銀粒子や沃臭化銀粒子)をゼラチン12に混ぜてなる銀塩感光層14を基体としての例えば透明支持体16上に塗布する。なお、図1A〜図1Cでは、ハロゲン化銀10を「粒々」として表記してあるが、あくまでも本発明の理解を助けるために誇張して示したものであって、大きさや濃度等を示したものではない。
【0036】
その後、図1Bに示すように、銀塩感光層14に対して例えばメッシュパターンの形成に必要な露光を行う。ハロゲン化銀10は、光エネルギを受けると感光して「潜像」と称される肉眼では観察できない微小な銀核を生成する。
【0037】
その後、潜像を肉眼で観察できる可視化された画像に増幅するために、図1Cに示すように、現像処理を行う。具体的には、潜像が形成された銀塩感光層14を現像液(アルカリ性溶液と酸性溶液のどちらもあるが通常はアルカリ性溶液が多い)にて現像処理する。この現像処理とは、ハロゲン化銀ないし現像液から供給された銀イオンが現像液中の現像主薬と呼ばれる還元剤により潜像銀核を触媒核として金属銀に還元されて、その結果として潜像銀核が増幅されて可視化された銀画像(現像銀18)を形成する。
【0038】
現像処理を終えたあとに銀塩感光層14中には光に感光できるハロゲン化銀10が残存するのでこれを除去するために図1Dに示すように定着処理液(酸性溶液とアルカリ性溶液のどちらもあるが通常は酸性溶液が多い)により定着を行う。
【0039】
この定着処理を行うことによって、露光された部位には金属微粒子部(金属銀部20)が形成され、露光されていない部位にはゼラチン12のみが残存し、光透過性部22となる。すなわち、透明支持体16上に金属銀部20と光透過性部22との組み合わせが形成されることになる。この段階で、金属銀部20(導電性微粒子)を有する被めっき材料24が完成する。
【0040】
ハロゲン化銀10として臭化銀を用い、チオ硫酸塩で定着処理した場合の定着処理の反応式は以下の通りである。
AgBr(固体)+2個のS23イオン → Ag(S232
(易水溶性錯体)
【0041】
すなわち、2個のチオ硫酸イオンS23とゼラチン12中の銀イオン(AgBrからの銀イオン)が、チオ硫酸銀錯体を生成する。チオ硫酸銀錯体は水溶性が高いのでゼラチン12中から溶出されることになる。その結果、現像銀18が金属銀部20として定着されて残ることになる。
【0042】
従って、現像工程は、潜像に対し還元剤を反応させて現像銀18を析出させる工程であり、定着工程は、現像銀18にならなかったハロゲン化銀10を水に溶出させる工程である。詳細は、T.H.James, The Theory of the Photographic Process, 4th ed., Macmillian Publishing Co.,Inc, NY,Chapter15, pp.438−442. 1977を参照されたい。
【0043】
なお、現像処理は多くの場合アルカリ性溶液で行われることから、現像処理工程から定着処理工程に入る際に、現像処理にて付着したアルカリ溶液が定着処理溶液(多くの場合は酸性溶液である)に持ち込まれるため、定着処理液の活性が変わるといった問題がある。また、現像処理槽を出た後、膜に残留した現像液により意図しない現像反応がさらに進行する懸念もある。そこで、現像処理後で、定着処理工程に入る前に、酢酸(酢)溶液等の停止液で銀塩感光層14を中和もしくは酸性化することが好ましい。
【0044】
ここで、上述したハロゲン化銀塩乳剤層14を用いた方法(銀塩写真技術)と、フォトレジストを用いた方法(レジスト技術)との違いを説明する。
【0045】
レジスト技術では、露光処理により光重合開始剤が光を吸収して反応が始まりフォトレジスト膜(樹脂)自体が重合反応して現像液に対する溶解性の増大又は減少させ、現像処理により露光部分又は未露光部分の樹脂を除去する。なおレジスト技術で現像液とよばれる液は還元剤を含まず、未反応の樹脂成分を溶解する例えばアルカリ性溶液である。一方、本発明の銀塩写真技術の露光処理では上記に記載したように、光を受けた部位のハロゲン化銀10内において発生した光電子と銀イオンからいわゆる「潜像」と呼ばれる微小な銀核が形成され、その潜像銀核が現像処理(この場合の現像液は必ず現像主薬と呼ばれる還元剤を含む)により増幅されて可視化された銀画像になる。このように、レジスト技術と銀塩写真技術とでは、露光処理から現像処理での反応が全く異なる。
【0046】
レジスト技術の現像処理では露光部分又は未露光部分の重合反応しなかった樹脂部分が除去される。一方、銀塩写真技術の現像処理では、潜像を触媒核にして現像液に含まれる現像主薬と呼ばれる還元剤により還元反応がおこり、目に見える大きさまで現像銀18が成長するものであって、未露光部分のゼラチン12の除去は行われない。このように、レジスト技術と銀塩写真技術とでは、現像処理での反応も全く異なる。
【0047】
なお、未露光部分のゼラチン12に含まれるハロゲン化銀10は、その後の定着処理によって溶出されるものであって、ゼラチン12自体の除去は行われない(図1D参照)。
【0048】
このように、銀塩写真技術では反応(感光)主体がハロゲン化銀10であるのに対し、レジスト技術では光重合開始剤である。また、現像処理では、銀塩写真技術ではバインダ(ゼラチン12)は残存するが(図1D参照)、レジスト技術ではバインダがなくなる。このような点で、銀塩写真技術とフォトレジスト技術は大きく相違する。
【0049】
<印刷による方法>
次に、基体表面に導電性微粒子を配置する方法として、導電性微粒子を含むペーストないしインクを印刷によって基体表面に配置する場合の製造方法(以下、適宜、「本発明の製造方法」と称する)を詳述する。
【0050】
印刷による方法にて導電性微粒子を基体の表面に配置する1つの例としては、図2に示すように、透明支持体16の表面に導電性微粒子を含むペースト26を例えばスクリーン印刷する等がある。
【0051】
印刷方法としては、公知の印刷法、例えばグラビア印刷、オフセット印刷、活版印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷等を使用することが可能である。例えば、特開平11−170420号公報、同2003−109435号公報に記載のようにスクリーン印刷による方法、特開200−196285号公報、同2001−358496号公報記載のようにオフセット印刷による方法、特開2003−318593号公報記載のようにインクジェットによる方法、特開2004−40033号公報に記載のフレキソ印刷による方法等が好適に用いられる。
【0052】
また、基体上に表面処理を施したり、アンカーコート層を設けてもよい。表面処理の方法としては、プライマの塗布による処理、プラズマ処理、コロナ放電処理等が有効である。これらの処理により処理後の基体の臨界表面張力が3.5×10-4N/cm以上になることが好ましく、4.0×10-4N/cm以上がさらに好ましい。
【0053】
印刷に用いるペーストないしインクは、印刷することによって導電性パターンを得るための導電性微粒子を含有するほか、これらを分散させる溶剤、バインダ、分散剤等を含有することが好ましい。
【0054】
本発明における導電性微粒子は特に制限は無く、金属又は金属酸化物、カーボンブラック等及びこれらの混合物をいずれも好ましく使用できる。具体的には銀、銅、パラジウム、金、ニッケル、アルミニウム、タングステン、鉄、錫、コバルト、亜鉛、クロム、バナジウム、チタン等及びこれらの合金、酸化亜鉛、酸化錫、酸化チタン、酸化銀、五酸化バナジウム、三酸化モリブデン、酸化バリウム、三酸化タングステン、アルミナ等の金属酸化物、Sbをドープした酸化錫(ATO)、Inをドープした酸化錫(ITO)、酸化錫をドープした酸化インジウム(ITO)、Alをドープした酸化亜鉛、Nbをドープした酸化チタン等を好ましく使用できる。
【0055】
本発明においては、無電解めっき活性が高くないことが知られている貴金属以外の金属微粒子あるいはその酸化物をも好適に用いることができるという特徴がある。一方、導電性微粒子が貴金属のパラジウムの場合、元々の無電解めっき活性が高いために本発明の効果が得られ難く、従って、導電性微粒子はパラジウムを含まないことが好ましい。また、これら微粒子の粒子サイズは特に制限は無いが、大きすぎると導電層の線幅太りや輪郭の乱れを生じるため、微粒子のサイズは、同体積の球直径換算で0.01μm〜2μmであることが好ましい。また、微粒子の形状は特に制限は無いが、平板状あるいは針状等の異方性を有する形状の場合、少ない使用量で高い導電性を得ることが可能である点で好ましい。
【0056】
本発明のインクもしくはペーストに使用可能なバインダとしては、ゼラチン及びその誘導体、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、澱粉等の多糖類、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリエチレンオキサイド、ポリサッカライド、ポリビニルアミン、キトサン、ポリリジン、ポリアクリル酸、ポリアルギン酸、ポリヒアルロン酸等の親水性バインダが好ましい。これらは、官能基のイオン性によって中性、陰イオン性、陽イオン性の性質を有する。
【0057】
また、本発明において使用可能なその他のバインダとしては、次のような樹脂、例えばポリエステル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エチルセルロース樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル−メラミン樹脂、メラミン樹脂、エポキシ−メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アミノ樹脂、ポリイミド樹脂、(メタ)アクリル樹脂等のいずれも使用できる。これらの樹脂は必要に応じて、2種以上共重合してもよいし、2種類以上をブレンドして使用することも可能である。
【0058】
これらのバインダは無色であっても着色してもよく、着色することによってディスプレイ材料に用いた場合、反射光の抑制による視認性の向上等が期待できる。また、これらのバインダは一般的には使用されるが、バインダを用いずとも導電性微粒子の分散性及び印刷後の基体との密着性が保てる場合には、バインダの使用は必須ではない。
【0059】
本発明のインクもしくはペーストに使用可能な溶剤としては、水、アルコール類、グリコール類、ケトン類、エステル等を好適に使用できる。具体的には、水の他、ヘキサノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ステアリルアルコール、セリルアルコール、シクロヘキサノール、テルピネオール等のアルコール;エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート等のアルキルエーテル、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチルが挙げられ、印刷適性や作業性等を考慮して適宜選択すればよい。
【0060】
溶剤として高級アルコールを使用する場合はインキの乾燥性や流動性が低下するおそれがあるため、これらよりも乾燥性が良好なブチルカルビトール、ブチルセロソルブ、エチルカルビトール、ブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート等を併用すればよい。溶剤の使用量は、インク又はペーストの粘度によって決定されるが、上記金属粉末の添加量との兼ね合いから、通常、バインダ100質量部に対して100〜500質量部、好ましくは100〜300質量部であるのがよい。
【0061】
本発明のインク、ペーストの粘度としては、使用する印刷方式や溶媒に応じて適宜設定可能であるが、5mPa・s以上20000mPa・s以下が好ましい。
【0062】
本発明のインクもしくはペーストには上記の導電性微粒子、バインダ、溶剤に加えさらに界面活性剤、分散剤、増粘剤、レベリング剤、架橋剤等を好適に含有させることができる。
【0063】
<フォトレジスト法>
基体表面に導電性微粒子を配置する方法として、導電性微粒子を含む感光性樹脂層を基体上に設けた後、フォトレジスト法によって不要部分をエッチング除去する方法によって基体表面に配置する場合の製造方法は、例えば特開2004−172554号公報記載のような方法を用いることができる。
【0064】
すなわち、先ず、図3Aに示すように、透明支持体16上に、導電性微粒子を含む感光性樹脂層28を塗布等により形成する。その後、図3Bに示すように、感光性樹脂層28上に、任意のマスクパターンを有するフォトマスク30を配置し、この上から光(例えば紫外線)を照射する。
【0065】
次いで、図3Cに示すように、現像処理して、感光性樹脂層28のうち、光が照射されていない非露光部分を除去することにより、透明支持体16上にマスクパターンに対応したパターン形状を有する導電層32が形成される。
【0066】
次に、これらの方法で用いる基体について説明する。本発明に好適な基体としては、プラスチックフイルム、プラスチック板、及びガラス板等の支持体を用いることができる。
【0067】
上記プラスチックフイルム及びプラスチック板の原料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、及びポリエチレンナフタレート等のポリエステル類;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン、EVA等のポリオレフィン類;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂;その他、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリサルホン(PSF)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド、ポリイミド、アクリル樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)等を用いることができる。
【0068】
本発明においては、透明性、耐熱性、取り扱い易さ及び価格の点から、上記プラスチックフイルムは、ポリエチレンテレフタレートフイルムであることが好ましい。
【0069】
ディスプレイ用の電磁波シールド材では透明性が要求されるため、支持体の透明性は高いことが望ましい。この場合におけるプラスチックフイルム又はプラスチック板の全可視光透過率は70〜100%が好ましく、さらに好ましくは85〜100%であり、特に好ましくは90〜100%である。また、本発明では、前記プラスチックフイルム及びプラスチック板として本発明の目的を妨げない程度に着色したものを用いることもできる。
【0070】
本発明におけるプラスチックフイルム及びプラスチック板は、単層で用いることもできるが、2層以上を組み合わせた多層フイルムとして用いることも可能である。
【0071】
本発明における支持体としてガラス板を用いる場合、その種類は特に限定されないが、ディスプレイ用電磁波シールド膜の用途として用いる場合、表面に強化層を設けた強化ガラスを用いることが好ましい。強化ガラスは、強化処理していないガラスに比べて破損を防止できる可能性が高い。さらに、風冷法により得られる強化ガラスは、万一破損してもその破砕破片が小さく、且つ、端面も鋭利になることはないため、安全上好ましい。
【0072】
透明支持体は、可撓性を有する材料からなることが好ましい。また、透明支持体は、幅が2cm以上、且つ、長さが3m以上及び厚さが200μm以下であるフイルムであることが好ましく、幅が20cm以上、且つ、長さが30m以上及び厚さが150μm以下であるフイルムであることがより好ましい。
【0073】
本発明の基体としては、上記のプラスチックフイルム支持体が特に好ましく、また、これら支持体は、コロナ放電、グロー放電、UV(紫外線)露光、火炎処理、鹸化処理等によって表面処理されたものがより好ましい。また、アクリル系、ウレタン系、ポリエステル系、ブタジエン系、塩化ビニリデン系等のポリマーを含有する接着促進性プライマー層を、支持体表面に形成したものであることがより好ましい。
【0074】
<導電性微粒子をカソードとして、金属イオンを含む溶液中で通電する工程>
本発明の導電性材材料の製造方法は、上述の基体表面に導電性微粒子を配置する工程を経た後に、該導電性微粒子をカソードとして、金属イオンを含む溶液中で通電する工程を含むことを特徴とする(以下適宣この溶液を金属イオン含有活性化液と称する)。この工程は、後に続く導電性微粒子上へ無電解めっきを行う際の、無電解めっき活性を高める事を目的として行われる。
【0075】
上記いずれかの方法によって基板上に配置された導電性微粒子は、微粒子間の接触抵抗や分散バインダ起因の電気抵抗、あるいは導電性微粒子の配置量の不足等の理由により、例えば透光性電磁波シールド材料としては導電性が不十分なのが通常である。従って、これら微粒子上に電気めっきあるいは無電解めっきによってさらに金属層を積層し、導電性をさらに高めることが行われる。しかしながら、この追加の金属層の積層を電気めっきで行おうとする場合、これら基板が導電性が不十分なために生産性を高めることが困難なことは前述の通りである。
【0076】
一方で、この追加の金属層の積層を無電解めっきで行おうとする場合にも、問題がある。すなわち、例えばハロゲン化銀感光材料を用いて得られた現像銀は無電解めっき活性が不十分であり、これを改良する試みがなされているものの未だ満足できるものではないことは上述の通りである。また、印刷法等で配置された導電性微粒子は、分散バインダが表面を被覆していることによって無電解めっき活性が抑制されている上に、パラジウム微粒子等の特別な場合を除いて無電解めっき活性を持たないのが通常である。
【0077】
本発明者らは、このように従来技術の範囲では電気めっき、無電解めっき、いずれの場合にも追加の金属層の積層の際に問題があった状況に対し、これら導電性微粒子をカソードして金属イオンを含む溶液(金属イオン含有活性化液)の中で通電することにより、無電解めっきに対する活性を大幅に改善できることを見出し、本発明をなすに至ったものである。この通電は、無電解めっき活性を高めるための触媒金属を導電性微粒子上に極微量付与する工程である。従って、通電時に必要な電流量は電気めっきで金属層を積層する場合に対し極微量でよく、電気めっきを適用するには導電性が不十分な基板にも適用が可能となる。言い換えると、本発明は電気めっきに適さない導電性が不十分な基板に対して特に有効であり、電気めっきに適した導電性の十分な基板に対しては本発明の効果は得にくいと言える。具体的には、本発明において、導電性微粒子を配置した後の基板の表面抵抗としては、5オーム/sq〜10000オーム/sqの範囲であることが好ましく、10オーム/sq〜1000オーム/sqであることがより好ましい。
【0078】
〔通電方法〕
本発明における通電は、導電性微粒子を配置した基体を、後述の金属イオン含有活性化液で満たされた槽内に向けて搬送しながら給電を行う方法である。ここで給電は槽外に設置したローラ状の金属電極によって好ましく行うことができる。このとき対極となる陽極は槽内の活性化液中に設置され、導電性微粒子の活性化液中に浸漬された部分が陰極として作用する。このような搬送と給電を同時に行う方法によって、導電性が不十分な材料に給電する際の、電流が電極近傍に集中することで生じる不均一を回避することが可能となる。この方法によって、導電性の不十分な広い面積を有するシート、ウェッブ、あるいはロール状の材料に均一な給電が可能となる。
【0079】
通電時における電流の好ましい範囲は、導電性微粒子部の導電性によるが、少なすぎると無電解めっき活性が得られず、多すぎると導電性微粒子部が断線する懸念があるため、0.01A/dm2〜10A/dm2であることが好ましく、0.05A/dm2〜5A/dm2であることがより好ましく、0.1A/dm2〜1A/dm2であることが特に好ましい。
【0080】
また、通電時間は、短すぎると無電解めっき活性が得られず、長すぎると特に電極近傍の導電性微粒子上において電気めっきが進行してしまい、金属析出量の不均一を生じるために好ましくない。通電時間は0.01秒〜60秒が好ましく、0.1秒〜30秒がさらに好ましい。
【0081】
通電時に対極となる陽極は、活性化液中の金属イオンの種類に応じて可溶性陽極又は不溶性陽極いずれかから適宣選択できる。可溶性陽極としては、金属イオン種と同種の金属を含む金属が好ましく、不溶性陽極としては、カーボン、白金、白金コーティングを施したチタン等を好ましく使用できる。具体的には、金属イオンが銅である場合には含燐銅、電気銅、無酸素銅等の可溶性陽極が好ましく、含燐銅が特に好ましい。金属イオンがニッケルである場合には、電解ニッケルが特に好ましく、含硫黄ニッケル、カーボナイズドニッケル、デポラライズドニッケル等の可溶性陽極も好ましい。陽極は板状、棒状の他、ペレット、ボール、チップ状等の物をチタンバスケット等の中に入れて用いてもよく、アノードスライムを避けるためにアノードバックを適宣用いることができる。
【0082】
本発明で通電により導電性材料の抵抗値が低下するメカニズムは不明だが、導電性粒子表面に生成した金属酸化物等の低活性成分の活性化が原因と推察される。この通電処理後、直ちにめっき工程を行うことでより効率的にめっきが進行していると推察される。
【0083】
〔金属イオン含有活性化液の組成〕
以下に本発明の金属イオン含有活性化液の組成について説明する。本発明において、金属の語は特に断らない限り、アルカリ金属及びアルカリ土類金属以外の金属を指すこととする。従ってナトリム、カリウム等のアルカリ金属、カルシウム、ストロンチウム等のアルカリ土類金属のイオンを含む溶液は、本発明のイオン金属含有活性化液には含まれない。本発明の金属イオン含有活性化液における金属イオンの種類としては、後述の無電解めっき工程に好ましい種類のものを敵宣用いることが可能である。具体的には、鉄、コバルト、ニッケル、銅、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、イリジウム、白金、金、錫、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム、チタン、クロム等の金属のイオン及びこれらの混合物を好ましく利用できる。一方、ビスマス、アンチモン、砒素、マンガン、鉛等の金属イオンは無電解めっきを阻害する点で好ましくない。本発明における金属イオンとしては、鉄、ニッケル、銅、銀、コバルト、亜鉛、錫のいずれかから選ばれる金属のイオンであり、より好ましくは、鉄、ニッケル、銅、コバルト、錫のいずれかのイオンであり、最も好ましいのは2価の銅イオンである。
【0084】
金属イオン含有活性化液における金属イオンの種類は、後続の無電解めっき工程に用いる金属イオンと同じでも異なってもよい。金属イオンの選択の観点としては、無電解めっき活性を阻害しないこと、無電解めっき工程で置換めっきを生じないことを考慮して適宣選択可能である。同一の金属イオン種を選択する場合には置換めっきを生じる懸念が無く望ましい。
【0085】
また、通電液中の金属イオンの量は、通常の電解めっき浴のものと比較してごく微量である。通電によってめっきされる金属量(通電による金属めっき量)も微量であり、通電による金属めっき量は、後続の無電解めっき工程での金属量の1/10以下であり、1/100以下程度でもよい。通電による金属めっき量の下限値は、後続の無電解めっき工程での金属量の1/10000であり、1/1000としてもよい。このように、本発明の特徴である通電は、通常の電解めっきとは異なる。
【0086】
金属イオン含有活性化液における金属イオン以外の組成としては、錯化剤、酸やアルカリ等のpH調節剤、pH緩衝剤、界面活性剤、ハイドロキノン、タイロン、アスコルビン酸等の酸化防止剤、アルカリ金属塩、4級アルキルアンモニウム塩、過塩素酸塩、ホウ酸塩、チオシアン酸塩等の塩類を好ましく使用できる。また、グリシン等のアミノ酸類、ポリエチレングリコール、2−2’ビピリジルやフェナントロリン等の窒素含有添加剤、チオ尿素類、チアゾール類、メルカプト類、ジスルフィド類化合物等の硫黄含有添加剤を含有してもよい。
【0087】
本発明における好ましい錯化剤は、テトラポリリン酸、ヘキサメタリン酸、ピロリン酸等の無機錯化剤及び、主に有機カルボン酸、アミノポリカルボン酸、有機ホスホン酸、アミノホスホン酸及び有機ホスホノカルボン酸等の有機錯化剤を用いることができる。
【0088】
上記有機カルボン酸としては、アクリル酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、コハク酸、アシエライン酸、セバチン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、マレイン酸、イタコン酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸等を挙げることができる。
【0089】
上記アミノポリカルボン酸としては、イミノ二酢酸、ニトリロ三酢酸、ニトリロ三プロピオン酸、エチレンジアミンモノヒドロキシエチル三酢酸、エチレンジアミン四酢酸、グリコールエーテル四酢酸、1,2−ジアミノプロパン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、1,3−ジアミノ−2−プロパノール四酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、その他、特開昭52−25632号公報、同55−67747号公報、同57−102624号公報、及び特公昭53−40900号公報等に記載の化合物を挙げることができる。
【0090】
有機ホスホン酸としては、米国特許第3214454号明細書、同3794591号明細書、及び西独特許公開2227639号公報等に記載のヒドロキシアルキリデン−ジホスホン酸やリサーチ・ディスクロージャー(Research Disclosure)第181巻、Item 18170(1979年5月号)等に記載の化合物が挙げられる。
【0091】
上記アミノホスホン酸としては、アミノトリス(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、アミノトリメチレンホスホン酸等が挙げられるが、その他上記リサーチ・ディスクロージャー18170号、特開昭57−208554号公報、同54−61125号公報、同55−29883号公報及び同56−97347号公報等に記載の化合物を挙げることができる。
【0092】
有機ホスホノカルボン酸としては、特開昭52−102726号公報、同53−42730号公報、同54−121127号公報、同55−4024号公報、同55−4025号公報、同55−126241号公報、同55−65955号公報、同55−65956号等公報、及び前述のリサーチ・ディスクロージャー18170号等に記載の化合物を挙げることができる。これらのキレート剤はアルカリ金属塩やアンモニウム塩の形で使用してもよい。
【0093】
本発明の特に好ましい錯化剤は、エチレンジアミン四酢酸塩、トリエタノールアミン塩、酒石酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、ピロリン酸塩が好ましい。また、金属イオンの種類が活性化液と後続の無電解めっき工程とで同一の場合には、錯化剤を同一種とすることが好ましい。
【0094】
本発明において、これら錯化剤は必須ではないが、錯化剤を用いることで無電解めっき活性化領域が広がるために、錯化剤を用いることが好ましい。すなわち、導電性微粒子の導電性が不十分なために通電によって活性化可能な領域は電極近傍に制限され、広い面積を活性化するためには前述のごとく基体を搬送させながら給電する必要があるが、錯化剤を用いることで活性化可能な領域の電極からの距離を伸ばすことができる。このことにより、給電しながらの基体の搬送をより高速で行うことが可能となり、生産性が上がるとともに、めっきの均一性が向上でき好ましい。
【0095】
本発明において錯化剤は用いなくてもよいが、錯化剤の含有量は任意に適宜決めることが可能で、0.0001〜10モル/L、好ましくは0.001〜2.0モル/L、より好ましくは0.001〜1.0モル/Lを用いる。
【0096】
金属イオン含有活性化液における金属イオンの好ましい含有量は、導電性微粒子の導電率にもよるが、少なすぎると無電解めっき活性を付与できなくなり、多すぎると電極近傍に集中して電気めっきが進行してしまい、不均一を生じるので好ましくない。金属イオンの含有量は1リットルあたり、0.0001〜10モルの範囲であればよく、その上限値は、好ましくは2モルであり、より好ましくは1モルである。また、その下限値は、好ましくは0.0002であり、より好ましくは0.0004である。また錯化剤は金属イオンに対してモル比で1倍から100倍の範囲で用いることが好ましく、モル比で2倍から10倍の範囲で用いることがより好ましい。
【0097】
本発明において、導電性微粒子をカソードとして金属イオン含有活性化液中で通電する工程は、好ましい金属イオンの濃度範囲、電流値、通電時間において通常の電気めっきプロセスとは明らかに異なるものである。本発明において、この工程は上述のごとく後続の無電解めっきでの活性付与を目的とし、金属イオン活性化液中から導電性微粒子上に積層される金属の量は極微量のみを必要とする。したがって通常の電気めっき液と比較して本発明の活性化液中での金属イオン濃度は低く、電流量は少なく、通電時間が短いことを特徴とする。
【0098】
また、本発明は、前述の無電解めっき速度を高める技術として知られている、被めっき物を陰極として無電解めっき液中で電流を流す、あるいは負電位を与える技術とも明らかに異なる。すなわち本発明においては通電を行う金属含有活性化液は無電解めっき活性を有する必要が無く、また無電解めっき活性を有していないことが陽極への金属析出を回避する観点で望ましい。本発明に好適に用いられる無電解めっき活性を持たない金属イオン含有活性化液は、還元剤を含有しないか、含有する場合には液のpHを還元剤の作用が働かない領域に設定することによって好ましく調製可能である。
【0099】
<導電性微粒子上に無電解めっきによって金属を積層する工程>
(無電解めっき工程)
本発明における無電解めっき工程は、公知の無電解めっき技術によって可能である。無電解めっきとして用いることができる金属としては、銅、ニッケル、クロム、亜鉛、錫、金、白金、銀が挙げられ、導電性、めっき安定性の観点から銅であることが好ましい。
【0100】
無電解めっき時間は、15秒〜30分が好ましく、30秒〜15分がより好ましく、1〜10分がさらに好ましい。30分より長いと、高アルカリ浴に長時間浸漬されることによるゼラチン膜の変質が原因と思われる光透過性部の透明性の著しい劣化が見られる。また、30秒より短いと激しい厚みむらが生じてしまう。
【0101】
めっき温度は、10〜80℃が好ましく、15〜70℃がより好ましく、18〜65℃がさらに好ましい。
【0102】
無電解めっきが銅めっきである場合には、連続でも断続でもよいがエアレーションをすることが好ましく、エアレーションによって溶存酸素量を2〜4ppmに維持することが好ましい。また濾過を行い不純物や析出物を除去することが好ましい。
【0103】
以下に、無電解銅めっき液について説明する。
【0104】
−無電解銅めっき液−
本発明における無電解めっき液は、公知のいかなる技術も適用可能であり、銅イオン、還元剤、錯化剤、安定剤、pH調整剤等からなる。
【0105】
銅イオンを供給する金属塩としては、硫酸銅及びその水和物、塩化銅、酸化銅を好ましく使用でき、硫酸銅五水和物がコスト的に好ましい。還元剤としてホルムアルデヒド、グリオキシル酸、ヒドラジン、ジメチルアミンボラン、ホスフィン酸塩、テトラヒドロホウ酸塩等が好ましく、ホルムアルデヒドが特に好ましい。錯化剤としてEDTA,TIPAやトリエタノールアミン、酒石酸塩等が好ましく、EDTA及びトリエタノールアミンが特に好ましい。安定剤としては、黄血塩、2−2’ビピリジル、チオ尿素、シアン化物、o−フェナントロリン、ネオクプロイン等が好ましい。その他浴の安定化やめっき皮膜の平滑性を向上させるための添加剤としてポリエチレングリコール、チオ尿素系化合物、グリシン、アデニン等のアミノ酸類等を好ましく使用可能である。また、液組成を一定に保つ観点で、銅イオン供給源の対塩化合物(硫酸銅を用いる場合には硫酸ナトリウム等)や、還元剤の酸化物(ホルムアルデヒドを用いる場合にはギ酸ナトリウム等)を予め含有させることも好ましい。
【0106】
浴の安定化剤の添加量は、1×10-9〜1×10-4モル/Lが好ましく、1×10-8〜1×10-6モル/Lがより好ましい。銅イオンの濃度は、0.001〜0.3モル/Lが好ましく、0.005〜0.1モル/Lがより好ましく、0.01〜0.1モル/Lがさらに好ましい。錯化剤の濃度は、銅イオン濃度に対して0.5〜10倍モルが好ましく、0.8〜4倍モルがさらに好ましい。還元剤濃度は、0.001〜1モル/Lが好ましく、0.01〜1モル/Lがより好ましく、0.1〜0.7モル/Lが液の安定性とめっき速度との両立という点でさらに好ましい。また、液のpHは、用いる還元剤によって異なるが、還元剤としてホルムアルデヒドを用いる場合にはpHは10〜13.5の範囲が好ましく、11〜12.8の範囲がより好ましい。また、還元剤としてホスフィン酸を用いる場合にはpHは8〜13の範囲が好ましい。
【0107】
<導電性材料の製造装置>
図1Dに示す長尺の被めっき材料24に対して上述した通電処理及び無電解めっき処理を容易に実現することができる製造装置の一例について図4〜図7を参照しながら説明する。もちろん、導電性微粒子を印刷によって形成した被めっき材料やフォトレジスト法によって導電性微粒子を形成した被めっき材料にも適用させることができる。
【0108】
この製造装置は、図4Aに示すように、金属イオンを含む溶液中で金属銀部20をカソードとして被めっき材料24を通電し、その後、図4Bに示すように、通電後の被めっき材料24に対して無電解めっき処理を行って、金属銀部20のみにめっき層34を担持させる。
【0109】
つまり、図5に示すように、本実施の形態に係る製造装置100は、通電処理及び無電解めっき処理の順に被めっき材料24の表面を処理することができるように、被めっき材料24の搬送方向に沿って、金属製の給電ローラ102及びアノード電極104を備えた通電処理装置106、無電解めっき処理装置108の順に配置されている態様が挙げられる。
【0110】
以下に、通電処理装置106及び無電解めっき処理装置108について詳述する。
【0111】
〔通電処理装置106〕
本実施の形態に係る通電処理装置106は、露光・現像を施され、細線状の金属銀部20が形成された被めっき材料24に対し、通電処理を施して、金属銀部20を活性化するものである。
【0112】
具体的には、通電処理装置106は、例えば図6に示すように、被めっき材料24の金属銀部20に接触しながら給電を行う給電ローラ102を有する。被めっき材料24を挟んで給電ローラ102と対向する位置には、被めっき材料24の金属銀部20を給電ローラ102に押圧する弾性ローラ112が給電ローラ102に対してほぼ水平方向に配設されている。
【0113】
弾性ローラ112は、回転可能に支持されたシャフト114と、表面の弾性体層116とを備えている。弾性体層116としてウレタンゴム等が用いられる。弾性ローラ112を構成するシャフト114の両端部には、シャフト114の回転を阻害しないように押圧装置118が配設されている。押圧装置118には、筐体120の内部にバネ材122が配設されており、バネ材122がシャフト114に当接する当接部材124をシャフト114側に押圧している。また、バネ材122の背面側には、筐体120に設けられた調整ねじ126が当接しており、この調整ねじ126の螺合位置を調整することで、被めっき材料24を給電ローラ102に押圧する押圧力が調整されるようになっている。
【0114】
また、通電処理装置106は、給電ローラ102よりも被めっき材料24の搬送方向下流側に、金属イオンを含む溶液(金属イオン含有活性化液128)で満たされた通電処理槽130を備えている。
【0115】
通電処理装置106では、給電ローラ102に接触させた被めっき材料24の金属銀部20を通電処理槽130の金属イオン含有活性化液128中で液中ローラ132により搬送する。通電処理槽130内の金属イオン含有活性化液128中には、アノード電極104が配設されており、カソード電極を給電ローラ302として、直流電源134により給電する。これによって、被めっき材料24の金属銀部20に対する活性化が行われる。
【0116】
給電ローラ102は金属電極を設けていることが好ましい。また、給電ローラ102の直径は1cm以上20cm以下であることが好ましく、2cm以上10cm以下であることが特に好ましい。さらには、給電ローラ102を金属イオン含有活性化液128の液面から5mm以上30cm以下の距離に配置することが好ましく、1cm以上5cm以下であることが特に好ましい。これらの範囲にあると、被めっき材料24と給電ローラ102との接点から金属イオン含有活性化液128の液面までの距離Laを小さくすることができるため、金属イオン含有活性化液128に浸漬されるまでの間に被めっき材料24の金属銀部20の酸化等を抑制することができる。特に好ましい態様としては、給電ローラ102の位置が液面から1cm未満であってもよく、金属イオン含有活性化液128の液面中に配置してもよく、金属イオン含有活性化液128の液中に配置するものでもよい。この場合、被めっき材料24に給電した後、被めっき材料24の金属銀部20の酸化をさらに抑制することができる。
【0117】
給電ローラ102の表面粗さは、被めっき材料24の保持力とキズ付きの観点から、1μm〜50μmであることが好ましく、2μm〜20μmであることが特に好ましい。
【0118】
このように、通電処理装置106で通電処理された被めっき材料24上に形成された金属銀部20の被めっき面がめっき活性され、その後のめっき処理において、めっきかぶりなく高速のめっきが可能となり、大量生産することが可能となる。
【0119】
さらに、通電処理装置106は、被めっき材料24に付着した処理後の金属イオン含有活性化液128等を洗浄するため、洗浄装置を有していてもよい。
【0120】
給電ローラ102は、材質をSUS316、SUS316J1、SUS317、もしくはSUS317Lとしたもの、又はこれらの材質表面に銅材を被覆したものを用いている。また、給電ローラ102は、表面が放電加工されている。給電ローラ102の表面粗さRyは5μm以上、30μm未満が好ましく、10〜25μm未満がより好ましい。また、表面粗さRaは0.5〜5μmが好ましく、1〜2.5μmがより好ましい。ここで、Ry、Raは、JIS B 0601−1994 に規定される表面粗さである。表面粗さRy、Raの測定は、ミツトヨ製SJ−400で行った。
【0121】
弾性ローラ112の弾性体層116は、硬度が10〜70度、肉厚が約5mmの導電性ゴムからなる。弾性体層116の硬度は、高分子計器株式会社製 ASKER C型で測定した。
【0122】
弾性ローラ112のバネ材122の背面側に取り付けられた調整ねじ126の螺合位置を調整することで、被めっき材料24を給電ローラ102に押圧する圧力を所定の値に設定することができる。給電ローラ102と弾性ローラ112とのニップ部の圧力は、0.2〜0.6MPaが好ましく、0.3〜0.5MPaがより好ましい。この圧力は、ツーシートタイプの極超低圧用の富士プレスケール(富士フイルム株式会社製)を用いて測定した。この富士プレスケールは、2種類のフイルムから構成されており、一方のフイルムには支持体に発色剤(マイクロカプセル)が塗布され、他方のフイルムには顕色剤が塗布されており、発色剤層のマイクロカプセルがニップ部の圧力によって破壊され、その中の発色剤が顕色剤に吸着され、化学反応で赤く発色するものである。
【0123】
弾性ローラ112を給電ローラ102側に押圧することで、被めっき材料24と給電ローラ102とをほぼ均一に接触させることができる。給電ローラ102と弾性ローラ112とのニップ部の圧力が0.2MPaより小さいと、被めっき材料24と給電ローラ102とをほぼ均一に接触させることが困難となる。また、ニップ部の圧力が0.6MPaより大きいと、給電ローラ102と弾性ローラ112との間の被めっき材料24の搬送抵抗が大きくなり、被めっき材料24を安定して搬送させることが困難となる。
【0124】
〔無電解めっき処理装置108〕
無電解めっき処理装置108は、細線状の金属銀部20が形成された被めっき材料24に対し、無電解めっき処理を施し、金属銀部20に金属を担持させてめっき層34(図4B参照)を形成する装置である。
【0125】
具体的に、無電解めっき処理装置108は、図7に示すように、めっき液136が満たされためっき浴槽138と、このめっき浴槽138内に配置された複数(本実施の形態では2本)の支持ローラ140とを備え、めっき浴槽138内に被めっき材料24を水平搬送する方式の装置である。また、無電解めっき処理装置108には、めっき浴槽138への入液前及び入液後の被めっき材料24を支持・搬送する複数の搬送支持ローラ142、144が配設されている。
【0126】
ここで、無電解めっき処理として、公知の無電解めっき技術を適用することができ、例えばプリント配線板等で用いられている無電解めっき技術を適用することができる。無電解めっき処理は無電解銅めっき処理であることが好ましい。具体的には、めっき液136としては、無電解銅めっき液を適用することが好ましい。無電解銅めっき液に含まれる化学種としては、硫酸銅や塩化銅、還元剤としてホルマリンやグリオキシル酸、銅の配位子としてEDTA、TIPAやトリエタノールアミン等、その他、浴の安定化やめっき皮膜の平滑性を向上させるための添加剤としてポリエチレングリコール、黄血塩、ビピリジン、チオ尿素系化合物等が挙げられる。また、めっき液136には、めっき液136の安定性を高める観点からは、例えば、EDTA等の配位子等、種々の添加剤を用いることもできる。
【0127】
めっき浴槽138内の支持ローラ140、140の間で水平搬送される被めっき材料24の下部には、被めっき材料24の搬送路に沿って、被めっき材料24に微細気泡気液混合流体を噴出させる複数の噴出部材146が設けられている。この微細気泡気液混合流体(微細気泡含有のめっき液)はめっき液136と空気との混合流体であり、この微細気泡気液混合流体を噴出部材146へ供給するための気液混合供給装置148が配設されている。
【0128】
気液混合供給装置148は、めっき浴槽138と仕切板150で仕切られた供給部152の底部と複数の噴出部材146とを連結するパイプ154を備えており、パイプ154に循環ポンプ156、フィルタ158が配設されている。また、気液混合供給装置148は、めっき浴槽138の上部に気泡分離槽160を備えており、めっき浴槽138の底部を気泡分離槽160を介して供給部152と連結するパイプ162、164を備えている。パイプ162には循環ポンプ166、気液混合器168が配設されている。
【0129】
そして、気液混合器168を通過した微細気泡気液混合流体がパイプ162を通って気泡分離槽160に供給される。パイプ162は気泡分離槽160の底部に連結されており、気泡分離槽160内には液面から出ない位置に堰板170が配設されている。堰板170を挟んで気泡分離槽160の底部に連結されたパイプ164が、上方から供給部152内に挿入されている。微細気泡気液混合流体がパイプ162を通って気泡分離槽160に底部から供給されることで、微細気泡気液混合流体に含まれる気泡が液面に浮き上がる。これによって、微細気泡気液混合流体から気泡が分離され、気泡が分離された微細気泡気液混合流体が堰板170を越えて気泡分離槽160の底部に連結されたパイプ164を通って供給部152に供給される。
【0130】
供給部152に供給された微細気泡気液混合流体は、供給部152の底部に連結されたパイプ154を通ってフィルタ158を通過し、複数の噴出部材146に供給される。そして、複数の噴出部材146から被めっき材料24に微細気泡気液混合流体が噴出される。被めっき材料24がめっき浴槽138のめっき液136中を搬送される際に被めっき材料24の金属銀部20に無電解めっき処理が施される。また、微細気泡混合液体を噴出することで、めっき浴槽138内のめっき液136が攪拌混合され、液の均一化が図れる。
【0131】
[実施例1]
以下に本発明の実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、以下の実施例に示される材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0132】
(導電性基体Aの作成)
下記手順によって基体を作成し、該基体上に塗設したハロゲン化銀感光材料をメッシュパターン状に露光した後現像することにより、基体上に現像銀からなる導電性微粒子を配置した。導電性微粒子は、帯状の基体の長手方向に対して45°及び135°の角度をなして等間隔に配置されたメッシュパターンを形成しており、ライン/スペース幅は各々12μm/288μmであった。このようにして得られた導電性基体を導電性基体Aとした。導電性基体Aの表面抵抗は200オーム/sq、D65光源に対する透過率は85%であった。ここで表面抵抗の測定は、三菱化学(株)製ロレスタGP(4探針法)によって行った。
【0133】
<基体の作製>
二軸延伸したポリエチレンテレフタレート基体(厚み100μm)の乳剤面側及びバック面側に、基体に近い側から下記組成の下塗層第1層及び第2層を塗布した。塗布はバーコート法で行い、各層の塗布前の基体にはコロナ放電処理を施した。
【0134】
[乳剤面側]
(下塗層1層)
スチレン−ブタジエン共重合ラテックス 15g
2,4−ジクロル−6−ヒドロキシ−s−トリアジン 0.25g
ポリスチレン微粒子(平均粒径3μ) 0.05g
化合物(Cpd−20) 0.20g
コロイダルシリカ 0.12g
(スノーテックスZL:粒径70〜 100μm日産化学(株)製)
水を加えて 100g
さらに、10重量%のKOHを加え、pH=6に調整した塗布液を乾燥温度180℃2分間で、乾燥膜厚が0.9μmになるように塗布した。
【0135】
(下塗層第2層)
ゼラチン 1g
メチルセルロース 0.05g
化合物(Cpd−21) 0.02g
1225O(CH2CH2O)10H 0.03g
プロキセル 3.5×10-3
酢酸 0.2g
水を加えて 100g
この塗布液を乾燥温度170℃2分間で、乾燥膜厚が0.1μmになる様に塗布した。
【0136】
[バック面側]
(下塗層第1層)
アクリル系ラテックス 1g
アニオン系界面活性剤 0.06g
ノニオン系界面活性剤 0.06g
SbドープSnO2微粒子 0.3g
球状シリカ微粒子(平均粒子径0.3μ) 0.05g
カルボジイミド架橋剤 0.05g
水を加えて 100g
上記塗布液を乾燥温度180℃2分間で、乾燥膜厚が0.9μmになる様に塗布した。
【0137】
(下塗層第2層)
アクリル系ラテックス 1g
アニオン系界面活性剤 0.06g
カルナバワックス分散物 0.05g
エポキシ架橋剤 0.05g
水を加えて 100g
この塗布液を乾燥温度170℃2分間で、乾燥膜厚が0.1μmになる様に塗布した。
【0138】
<ハロゲン化銀乳剤Aの調製>
ゼラチン水溶液中で硝酸銀及び塩化ナトリウム及び臭化カリウムを含むハロゲン化アルカリ水溶液を攪拌しながらコントロールドダブルジェット法によって添加した後、さらにヨウ化カリウム溶液を添加した。ここでハロゲン化アルカリ中にヘキサクロロイリジウム(III)酸カリウム及びヘキサクロロロジウム酸アンモニウムを添加することにより、粒子にRhイオンとIrイオンを各々銀1モルあたり10−7モルドープした。
【0139】
フロキュレーション法によって水洗・脱塩を行い、ゼラチンを加え、pH5.6、pAg7.5に調整し、ベンゼンチオスルホン酸ナトリウム、ベンゼンチオスルフィン酸ナトリウム、1,3,3a,7−テトラアザインデンをそれぞれ銀1モルあたり10−4モル加えた後、チオ硫酸ナトリウムと塩化金酸を加え55℃にて最適感度を得るように化学増感を施した。
【0140】
このようにして、塩化銀を70モル%、臭化銀を29.2モル%、沃化銀を0.08モル%含む平均粒子径0.18μm、変動係数7%のヨウ塩臭化銀立方体粒子乳剤Aを得た。
【0141】
<ハロゲン化銀感光材料Aの作製>
下記によって調製したUL層及び乳剤層を基体に近い側から順に同時塗布することにより、ハロゲン化銀感光材料Aを得た。以下に各層の調製方法、塗布量及び塗布方法を示す。
【0142】
(乳剤層)
乳剤Aに増感色素(SD−2)5.7×10-4モル/モルAgを加えて分光増感を施した後、さらにKBr3.4×10-4モル/モルAg、化合物(Cpd−3)8.0×10-4モル/モルAgを加え、次いで1,3,3a,7−テトラアザインデン1.2×10-4モル/モルAg、ハイドロキノン1.2×10-2モル/モルAg、クエン酸3.0×10-4モル/モルAg、界面活性剤(Sa−1)、(Sa−2)、(Sa−3)を各々塗布量60mg/m2、40mg/m2、2mg/m2になる量添加し、得られた乳剤層塗布液を下記支持体上にAg2.0g/m2、ゼラチン0.3g/m2になるように塗布した。
【0143】
(UL層)
ゼラチン 1.0g/m2
化合物(Cpd−7) 40mg/m2
化合物(Cpd−YF) 50mg/m2
防腐剤(プロキセル) 1.5mg/m2
【0144】
【化1】

【0145】
【化2】

【0146】
得られたハロゲン化銀感光材料Aは、塗布銀量が2.0g/m2、乳剤層のAg/ゼラチン重量比が6.7、膨潤率が1.9である乳剤層を、最上層に有する感光材料であった。ここで乳剤層の膨潤率は以下のように求めた。すなわち、乾燥時の試料の切片を走査型電子顕微鏡で観察することにより乾燥時の乳剤層の膜厚(a)を求め、25℃の蒸留水に1分間浸漬した後液体窒素により凍結乾燥した試料の切片を走査型電子顕微鏡で観察することにより膨潤時の乳剤層の膜厚(b)を求め、膨潤率を次式で算出した。
膨潤率(%)=100×((b)−(a))/(a)
【0147】
ここで塗布は、幅30cmのPET支持体に28cmの幅で100m分行ない、塗布の中央部27cmを残すように両端を1.5cmずつ切り落としてロール状のハロゲン化銀感光材料を得た。
【0148】
<露光>
ハロゲン化銀感光材料Aに対して、下記露光を行った。すなわち、特開2004−1244号公報の発明の実施の形態記載のDMD(デジタル・ミラー・デバイス)を用いた露光ヘッドを55cm幅になるように並べ、感光材料の感光層上にレーザ光が結像するように露光ヘッド及び露光ステージを湾曲させて配置し、感材送り出し機構及び巻取り機構を取り付けた上、露光面のテンション制御及び巻取り、送り出し機構の速度変動が露光部分の速度に影響しないようにバッファ作用を有する撓みを設けた連続露光装置にて露光した。露光の波長は405nmで、ビーム形は12μmの略正方形、及びレーザ光源の出力は100μJであった。
【0149】
露光のパターンは12μm画素がロールの長手方向に対して45度の格子状にピッチが300μm間隔で幅27cm、長さ75cmの領域に行なった。
【0150】
<現像>
上記露光済みの感光材料を、下記組成からなる現像液及び定着液を用いて、富士フイルム社製自動現像機 FG−710PTSを用いて現像処理を行った。ここで処理条件は、現像35℃30秒、定着34℃23秒、水洗 流水(5L/min)の20秒処理で行った。このようにして、基体上に現像銀からなる導電性微粒子を配置した導電性基体Aを得た。
【0151】
(現像液組成)
ハイドロキノン 20g
亜硫酸ナトリウム 50g
炭酸カリウム 40g
エチレンジアミン・四酢酸 2g
臭化カリウム 3g
ポリエチレングリコール2000 1g
水酸化カリウム 4g
水道水を加えて 1000ml
pH 10.3に調整
【0152】
(定着液組成)
チオ硫酸アンモニウム液(75%) 300ml
亜硫酸アンモニウム・1水塩 25g
1,3−ジアミノプロパン・四酢酸 8g
酢酸 5g
アンモニア水(27%) 1g
水道水を加えて 1000ml
pH 6.2に調整
【0153】
<通電処理>
上記によって得た導電性基体Aに対して、下記組成からなる金属イオンを含む活性化液1−1を用い、下記方法によって通電処理1-1を行った。
【0154】
(通電処理1−1)
給電用電極として、下記活性化液1−1の液面から2cmの距離の上部に、直径1cmの円柱状のステンレス製の給電ローラを設置した。該給電ローラに隣接してニップ用ゴムローラを設置し、該給電ローラと該ゴムローラでニップさせつつ上記導電性基体Aを活性化液中に送り、垂直に浸漬した。陽極は、活性化液中に、導電性基体Aからの距離が2cmの位置となるよう配置した板状の含燐銅陽極を用いた。ここで、基体Aの配置は、導電性層面が給電ローラと接し、且つ、陽極側を向くように行った。外部直流電源によって、給電ローラ及び陽極板間に電圧を加えることにより、導電性微粒子をカソードとして、金属イオンを含む溶液中で通電処理を行った。通電時の活性化液の温度は25℃であり、通電は静置状態の27cm幅の導電性基体Aに対して、2.7A(電流密度換算:0.67A/dm2)で3秒間行った。なお、前記給電ローラの材質は、ステンレスであり、水素過電圧は−0.1Vvs.NHEであり、露光・現像により形成したメッシュ状パターン(導電性金属部)の水素過電圧は−0.2Vvs.NHEであった。
【0155】
(活性化液1−1の調製)
下記組成の金属イオン含有液を調製し、活性化液1-1とした。なお、溶媒は純水を用いた。
【0156】
硫酸銅・五水和物 0.015モル/L
EDTA(エチレンジアミン四酢酸ジナトリウム塩)
0.06モル/L
pH(NaOHを加えて調整) 12.5
【0157】
<無電解めっき処理>
上記通電処理1−1を施した導電性基体Aに対して、25℃の水道水で1分間水洗を行った後、下記組成からなる無電解めっき処理を施し、さらに水洗及び乾燥することにより、本発明の試料1−1を得た。
【0158】
(無電解めっき処理組成及び条件)
無電解めっき液として、硫酸銅0.06モル/L,ホルマリン0.2モル/L,EDTA0.24モル/L,ポリエチレングリコール100ppm、黄血塩10ppm、2,2’−ビピリジル10ppmを含有するpH=12.5の無電解Cuめっき液を用い、55℃にて10分間無電解銅めっき処理を行った。
【0159】
(試料1−2〜1−12の作成)
上記の試料1−1の作成方法に対して、通電処理に用いる活性化液及び通電条件を表1に示すように変更したことのみ異なる方法によって試料を作成し、試料1−2〜1−12とした。ここで表記載の活性化液は下記組成のものを用いた。
【0160】
(活性化液1−2)
活性化液1−1に対して、EDTAの代わりにピロリン酸カリウムを0.06モル/L用い、pHを8に調整したことのみ異なる方法によって調液を行い、活性化液1−2とした。
【0161】
(活性化液1−3)
活性化液1−1に対して、EDTAの代わりにロッシェル塩(酒石酸カリウムナトリウム塩)を0.06モル/L用い、pHを12.5に調整したことのみ異なる方法によって調液を行い、活性化液1−3とした。
【0162】
(活性化液1−4)
活性化液1−1に対して、EDTAの代わりにトリエタノールアミンを0.03モル/L用い、pHを12.5に調整したことのみ異なる方法によって調液を行い、活性化液1−4とした。
【0163】
(活性化液1−5)
活性化液1−1に対して、EDTA及びNaOHを添加しなかったことのみ異なる方法によって調液を行い、硫酸銅・五水和物を0.015モル/L含む水溶液を得、活性化液1−5とした。
【0164】
(活性化液1−6)
硫酸ニッケルを0.015モル/L含む水溶液を調製し、活性化液1−6とした。
【0165】
(活性化液1−7)
硫酸第一鉄を0.015モル/L含む水溶液を調製し、活性化液1−7とした。
【0166】
(活性化液1−8)
塩化第一錫を0.004モル/L、塩酸を0.004モル/L、タイロンを0.2g/L含む水溶液を調製し、活性化液1−8とした。
【0167】
(活性化液1−9)
硫酸コバルトを0.015モル/L含む水溶液を調製し、活性化液1−9とした。
【0168】
(活性化液1−10)
活性化液1−1に対して、硫酸銅・五水和物を添加せず、NaOHの添加量を変更してpHを12.5に調製したことのみ異なる方法によって調液を行い、活性化液1−10とした。
【0169】
(活性化液1−11)
活性化液1−1に対して、硫酸銅・五水和物、EDTA及びNaOHを添加しなかったことのみ異なる方法によって調液を行い、活性化液1−11とした。
【0170】
(試料1−13、1−14の作成)
上記の試料1−1の作成方法に対して、通電条件を表1に示すように変更し、後続する無電解めっき処理を施さない試料を作成し、試料1−13、1−14とした。
【0171】
[結果]
表1に各試料の作成条件及び評価結果を示す。
【0172】
【表1】

【0173】
本発明の試料においてはいずれも無電解銅めっき後にメッシュ状の銅からなる金属層が形成されており、また、表1に示すように、表面抵抗値の低下が認められ、導電性金属層を含む導電性材料が有効に作成されていた。
【0174】
一方、金属イオンを含有しない活性化液で通電処理した場合、あるいは金属イオン含有活性化液を用いても通電処理を行わなかった場合には表面抵抗値の低下及び銅めっき層の形成が認められず、導電性材料の作成には適していなかった。ここで表面抵抗の測定は前述の測定器を用いて、各試料の通電時の液面から2cm下の幅方向中央部分に関して行った。
【0175】
また、別途試料1−1〜1−9の作成方法に対して、金属イオン含有活性化液中での通電処理後に無電解めっき処理を行わなかったことのみ異なる試料1−13、通電時間を延長した試料1−14は、表面抵抗値の低下が確認されなかった。このことは、本発明の金属イオン含有活性化液中での通電処理では導電性金属層が殆ど形成されていないことを示している。本発明の金属イオン含有活性化液中での通電処理は後続の無電解めっき工程に対して基板を活性化する処理であり、金属層の形成を行う一般的な電気めっき処理とは明らかに異なる処理工程であると言える。
【0176】
[実施例2]
下記方法によって導電性材料の作成及び評価を行った。
【0177】
(試料2−1の作成)
実施例1の試料1−1に対して、活性化液中に添加剤として塩化ナトリウム30mg/L、PEG1000を100mg/L、ヤーヌスグリーンB及びビス(3−スルホプロピル)ジスルフィドを各々10mg/L加えたことのみ異なる条件にて本発明の導電性材料を作成し、試料2−1とした。
【0178】
(試料2−2〜試料2−17の作成)
上記試料2−1の作成方法に対して、活性化液中の金属イオンの量、錯化剤の量、pH、及び通電条件を表2に示すように変更したことのみ異なる方法によって試料を作成し、試料2−2〜試料2−17を得た。ここでpHの調整はNaOH添加量の変更又は硫酸の添加によって行った。得られた試料に関し、下記項目を評価した。
【0179】
(表面抵抗)
実施例1と同じ方法によって無電解めっき後の表面抵抗を測定した。
【0180】
(ざらつき)
無電解めっき後の試料に関し、活性化液液面直下の部分のめっき外観を目視によって観察し、下記ランク付けを行い表2に記した。
5:ざらつきが認められず好ましい外観
4:ざらつきが僅かに認められるものの好ましい外観
3:ざらつきが部分的に発生し、用途によりやや問題となるレベル
2:ざらつきが顕著に認められ、問題となるレベル
1:無電解めっき層の形成が見られずざらつき評価対象外
【0181】
(伸び)
無電解めっき後の試料に関し、無電解めっきによって金属層形成がなされている領域の広さを評価し、下記ランク付けを行い表2に記した。ここで、表面抵抗値として5オーム/sq以下を達成した部分を金属層形成がなされているとみなし、試料の幅方向の中央部分において金属層形成がなされている領域の長さを求めることにより、金属層形成がなされている領域の広さを評価した。
5:金属層形成長が7cm以上
4:金属層形成長が5cm以上7cm未満
3:金属層形成長が3cm以上5cm未満
2:金属層形成長が1cm以上3cm未満
1:金属層形成長が1cm未満
【0182】
[結果]
表2に各試料の作成条件及び評価結果を示す。
【0183】
【表2】

【0184】
通電処理を行わなかった試料以外のいずれの試料においても無電解めっき後に銅めっき層の形成及び表面抵抗値の低下が認められ、本発明によって導電性金属を含む導電性材料の形成が可能であった。すなわち、本実施例の範囲の金属イオン含有量、金属イオン/錯化剤比率、通電電流量において、発明の効果が発現する。表2には、さらに本発明の金属イオン活性化液に錯化剤を含有させること、及び金属イオンの濃度を適切に選択することにより、無電解めっき後のざらつき及び伸びが改善できることが示されている。また、錯化剤添加を行わず、銅イオン濃度を増やし、pHを硫酸によって下げることによって活性化液の組成を一般的な電気銅めっき液に近づけた場合の試料(試料2−8〜2−10)では、導電性層の形成は認められたもののざらつき及び伸びに関して不十分な点が認められた。この結果からも、本発明の金属イオン含有活性化液中での通電処理は、一般的な電気めっき処理とは異なるプロセスであることが窺い知れる。
【0185】
[実施例3]
実施例1の試料1−1及び試料1−6の作成方法に対して、無電解めっきの組成を下記のニッケルめっきに変更した場合においても導電性材料の形成が可能であった。
【0186】
(無電解ニッケルめっき液組成及び処理条件)
硫酸ニッケル 25g/L
次亜リン酸ナトリウム 20g/L
酢酸ナトリウム 10g/L
クエン酸ナトリウム 10g/L
pH 5.0
処理温度 90℃
【0187】
[実施例4]
実施例1の試料1−1の作成方法に対して、導電性基体Aに代えて、導電性微粒子銀を印刷によって基板上に配置した導電性基板Bを用いた場合においても、導電性材料の形成が可能であった。こここで印刷による導電性微粒子の配置は、特開2007−116137号公報の実施例2に記載の方法を用いた。以下に詳細を記す。
【0188】
透明プラスチック基材として、ゼラチン下塗り層を設けた、厚さ100μmの透明ポリエチレンナフタレート(PEN)フイルムを用い、その上に、スクリーン印刷法にて、下記の銀ペーストを印刷した。
【0189】
次いで、150℃で60分加熱処理した。得られたメッシュパターンは、ライン幅20μm、ピッチ300μmの銀の格子状メッシュであった。
【0190】
(銀ペーストの作製)
Carey−Leaの銀ゾル調製法(M.Carey Lea,Brit.J.Photog.,24巻297頁(1877)及び27巻279頁(1880)参照)に準拠して、硝酸銀溶液を還元し、銀を主成分とする銀金微粒子を調製し、限外ろ過を行って、副生成する塩を除いた。得られた微粒子の粒子サイズは、電子顕微鏡観察の結果、ほぼ10nmであった。
【0191】
この粒子を、イソプロピルアルコールを含有する溶剤とバインダと混合し、ペーストを作成した。
【0192】
この印刷パターンを構成する金属に対する銀の質量%は96%であった。
【0193】
[実施例5]
実施例2の試料2−1の作成方法に対して、通電処理を導電性基体Aを搬送しながら連続的に行うことにより、ウェッブ状の導電性材料を作成し、試料5−1を得た。すなわち、導電性基板Aに通電する操作と、導電性基板Aを給電ローラ及びニップ用ゴムローラーでニップしながら金属イオン活性化液中に搬入する操作とを同時に連続的に行うことにより、ウェブ状の基板に通電処理を行い、これを無電解めっきすることにより、ウェッブ状の導電性材料を得た。ここで、搬送は3m/分の速度で1分間行い、無電解めっき工程の処理時間は、実施例2の条件にあわせた。このようにして、長さ3m、幅27cmのウェッブ状の導電性材料を得た。得られた試料5−1は、ほぼ全面に一様に無電解銅めっき層が形成されており、表面抵抗値はウェッブの先端及び後端を除くと、一様に0.5オーム/sq前後の値を示した。
【0194】
上記の試料5−1に対して、さらに下記に示す電気銅めっき処理、黒化処理及び防錆処理を行った。
【0195】
以下に、めっき槽の処理時間、及び印加電圧を示す。ここで銅めっき液、水洗水及び防錆液の温度は25〜30℃、黒化液の温度は45℃、乾燥温度は50℃〜70℃で処理を行った。まためっき装置構成は、特開2007−197809公報実施例1と同様のものを用いた。すなわち、該特許公報図1に示す電解めっき槽と実質的に同じ機能槽構成の槽とを後述する工程になるように連続構成とし、後述の処理の実施が可能となるようにめっき槽を接続した電解めっき装置を用い、めっき処理を行った。ただし給電ローラーは入り口側のみを使用した。また給電ローラは鏡面仕上げしたステンレス製ローラ(10cmφ、長さ70cm)を使用し、給電ローラとフイルムのメッシュ面とが接している面の最下部とめっき液面との距離を9cmとした。また、ライン搬送速度を3m/分とした。
【0196】
[銅めっき液の組成(補充液も同組成)]
硫酸銅5水塩 200g
硫酸(47%) 200mL
塩酸(2N) 0.5mL
純水を加えて 1L
pH−0.1
【0197】
[黒化液(補充液も同組成)]
硫酸ニッケル6水塩 100g
チオシアン酸アンモニウム 15g
硫酸亜鉛7水塩 20g
サッカリンナトリウム2水和物 1g
純水を加えて 1L
pH5.0(硫酸と水酸化ナトリウムでpH調整)
【0198】
(防錆液)
上村工業(株)製のスルカップAT−21 100ml
純水を加えて 1L
めっき1 30秒 電圧 2V
水洗 30秒
乾燥 30秒
めっき2 30秒 電圧 2V
水洗 30秒
水洗 30秒
乾燥 30秒
黒化処理 30秒 電圧 5V
水洗 30秒
乾燥 30秒
黒化処理 30秒 電圧 5V
水洗 30秒
水洗 30秒
防錆 30秒
水洗 30秒
【0199】
得られた試料は、透明基体上に黒色の導電性金属メッシュ層が形成され、全光透過率80%、ヘイズ値3.5%、表面抵抗値が0.1オーム/sqの導電層を有する導電性材料であり、外観はプラズマディスプレイ材料等の電磁波遮蔽膜に好適に使用できるものであった。
【0200】
本実施例から、本発明の導電性材料の作成方法にさらに電気めっき工程、黒化処理工程等を好適に組み合わせられること、本発明によって形成した導電性材料はディスプレイ等に好適に使用可能な透明性を有し、電磁波遮蔽に必要な十分な導電性の付与が可能であることが示された。
【0201】
なお、本発明に係る導電性材料の製造方法及び導電性材料の製造装置は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0202】
【図1】図1A〜図1Dは、ハロゲン化銀感光材料を用いる方法によって基体上に導電性微粒子を配置する過程を示す工程図である。
【図2】印刷による方法によって基体上に導電性微粒子を配置する過程を示す工程図である。
【図3】図3A〜図3Cは、フォトレジスト法によって基体上に導電性微粒子を配置する過程を示す工程図である。
【図4】図4Aは通電処理を示す工程図であり、図4Bは、無電解めっき処理を示す工程図である。
【図5】本実施の形態に係る導電性材料の製造装置を模式的に示す説明図である。
【図6】本実施の形態に係る導電性材料の製造装置に好適に用いられる通電処理装置の一例を示す模式図である。
【図7】本実施の形態に係る導電性材料の製造装置に好適に用いられる無電解めっき処理装置の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0203】
10…ハロゲン化銀 12…ゼラチン
14…銀塩感光層 16…透明支持体
20…金属銀部 24…被めっき材料
26…ペースト 28…感光性樹脂層
30…フォトマスク 32…導電層
34…めっき層 100…製造装置
102…給電ローラ 104…アノード電極
106…通電処理装置 108…無電解めっき処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体の表面に導電性微粒子を配置する工程と、
前記導電性微粒子をカソードとして、金属イオンを含む溶液中で通電する通電工程と、
前記導電性微粒子上に無電解めっき処理によって金属を積層する無電解めっき工程とを有することを特徴とする導電性材料の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の導電性材料の製造方法において、
前記通電工程の電流密度の範囲が0.01〜10A/dm2の範囲であることを特徴とする導電性材料の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の導電性材料の製造方法において、
前記通電工程の通電時間の範囲が0.01〜60秒の範囲であることを特徴とする導電性材料の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の導電性材料の製造方法において、
前記金属イオンが鉄、ニッケル、銅、銀、コバルト、亜鉛及び錫からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属イオンであることを特徴とする導電性材料の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の導電性材料の製造方法において、
前記通電工程の金属めっき量は、前記無電解めっき工程の金属めっき量の1/10以下であることを特徴とする導電性材料の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の導電性材料の製造方法において、
前記金属イオンを含む溶液がさらに錯化剤を含むことを特徴とする導電性材料の製造方法。
【請求項7】
請求項6記載の導電性材料の製造方法において、
前記錯化剤がエチレンジアミン四酢酸塩、トリエタノールアミン塩、酒石酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、ピロリン酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする導電性材料の製造方法。
【請求項8】
請求項6記載の導電性材料の製造方法において、
前記錯化剤がエチレンジアミン四酢酸塩であることを特徴とする導電性材料の製造方法。
【請求項9】
請求項8記載の導電性材料の製造方法において、
前記錯化剤の含有量が0.0001〜1モル/リットルであることを特徴とする導電性材料の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の導電性材料の製造方法において、
前記金属イオンを含む溶液中の前記金属イオンの含有量が0.0001〜1.0モル/リットルであることを特徴とする導電性材料の製造方法。
【請求項11】
請求項10記載の導電性材料の製造方法において、
前記金属イオンを含む溶液がさらに錯化剤を含み、
前記金属イオンの含有量に対する前記錯化剤の含有量の比率が1〜100の範囲であることを特徴とする導電性材料の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の導電性材料の製造方法において、
前記金属イオンを含む溶液中の前記金属イオンが銅、ニッケル、コバルト、スズのいずれかであることを特徴とする導電性材料の製造方法。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の導電性材料の製造方法において、
前記導電性微粒子を配置する工程は、
前記基体上に銀塩を含有する銀塩乳剤層を有する感光フイルムを形成する工程と、
前記基体上の前記感光フイルムを露光、現像して、金属銀部を形成する工程とを有することを特徴とする導電性材料の製造方法。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の導電性材料の製造方法において、
前記導電性微粒子を配置する工程は、
前記基体上に前記導電性微粒子を含むペースト又はインクを印刷する工程を含むことを特徴とする導電性材料の製造方法。
【請求項15】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の導電性材料の製造方法において、
前記導電性微粒子を配置する工程は、
前記基体上に前記導電性微粒子を含む感光性樹脂層を形成する工程と、
フォトマスクを介して前記感光性樹脂層に光を照射、現像する工程とを有することを特徴とする導電性材料の製造方法。
【請求項16】
導電性微粒子を有する被めっき材料にめっき処理を施して導電層を形成する導電性材料の製造装置であって、
前記導電性微粒子に接触して給電する給電ローラと、前記給電ローラより前記被めっき材料の搬送方向下流側に配置され、前記導電性微粒子を金属イオンを含む溶液中で通電処理する通電処理槽とを備える通電処理装置と、
前記通電処理装置の後段に配置され、前記導電性微粒子上に無電解めっき処理によって金属を積層する無電解めっき処理装置とを有することを特徴とする導電性材料の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−99541(P2009−99541A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−222560(P2008−222560)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】