説明

導電性組成物およびそれを用いた導電性部材

【課題】 環境への負荷が小さく、所望の導電性を有すると共に、貯蔵安定性の良好な導電性組成物を提供する。また、高くて均一な荷電性を有する導電性部材を提供する。
【解決手段】 導電性組成物は、炭素の二重結合を一つ有する単官能ビニルモノマーが天然ゴム粒子または脱蛋白質化天然ゴム粒子にグラフト共重合されてなる改質天然ゴム粒子を含む改質天然ゴムラテックスに、導電剤が分散されてなる。また、導電性部材を、当該導電性組成物から形成された薄膜を備えるよう構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単官能ビニルモノマーのグラフト化により改質された改質天然ゴム粒子を含む導電性組成物、およびそれを用いた導電性部材に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を採用する複写機、プリンター、ファクシミリ等の電子写真機器には、帯電ロール、現像ロール、転写ロール等の導電性ロールや、転写ベルト等の導電性ベルトといった導電性部材が使用されている。例えば、導電性ロールは、軸体と、軸体の外周面に形成された導電性の弾性層と、必要に応じて弾性層の外周側に積層される中間層や表層等と、から構成されている。導電性ロールには、帯電、現像、転写等の各々の用途に応じて、所定の導電性を有することが求められる。また、電気抵抗のばらつきの程度や、摩擦係数等の最外層の表面特性は、導電性ロールの機能において重要となる。例えば、特許文献1〜3には、最外層が、樹脂エマルジョン組成物あるいはゴムラテックス組成物から形成された導電性ロールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許2705232号公報
【特許文献2】特開2002−311686号公報
【特許文献3】特開2004−59801号公報
【特許文献4】特許第4025868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1、2に開示されているように、最外層を形成するゴムラテックス組成物等には、導電性を付与するために、カーボンブラック等に代表される導電剤が配合されている。しかし、導電剤をゴムラテックスに配合した場合、以下の二つの問題があった。(1)導電剤の配合により、ゴム粒子表面の電位バランスが壊れ、短時間でゴム粒子の凝集が生じてしまう。また、導電剤自身が継粉(ままこ)状態となり、沈降してしまう。このため、導電剤の分散工程や、得られたゴムラテックス組成物から薄膜を形成する成膜工程において、ゴムラテックス組成物の安定性が悪い。
(2)たとえ成膜できたとしても、導電剤が均一に分散されにくいことや、導電剤の凝集が発生していることから、表面の凹凸が少ない均一な膜の製造は難しい。また、膜表面において均一な導電性が得られにくく、導電性の制御も容易ではない。
【0005】
これらの問題を解決するために、通常、分散剤やレベリング剤等の添加剤が用いられる。しかし、添加剤を配合すると、乾燥後の析出、ゴムからのブリード(時間の経過で膜表面に添加剤が染み出してくる現象)による汚染が問題となる。さらに、添加剤は、導電性制御の阻害要因となったり、膜の吸湿による導電性のバラツキ要因となるおそれがある。これらの対策のために、さらなる添加剤の配合が必要になれば、材料の配合が煩雑になり、製造コストも上がるおそれがある。
【0006】
一方、近年において、石油資源の枯渇、二酸化炭素の排出による地球温暖化の問題が深刻化している。このため、石油由来材料の低減、および二酸化炭素の排出抑制等の環境面から、石油を原料とする合成ゴムの代替材料として、天然ゴムが見直されている。また、大気中への揮発性有機化合物(VOC)の排出規制により、有機溶剤の使用量を低減することが求められている。
【0007】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、環境への負荷が小さく、所望の導電性を有すると共に、貯蔵安定性の良好な導電性組成物を提供することを課題とする。また、当該導電性組成物を用いて、均一な導電性による高くて均一な荷電性を有する導電性部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記課題を解決するため、本発明の導電性組成物は、炭素の二重結合を一つ有する単官能ビニルモノマーが天然ゴム粒子または脱蛋白質化天然ゴム粒子にグラフト共重合されてなる改質天然ゴム粒子を含む改質天然ゴムラテックスに、導電剤が分散されてなることを特徴とする(請求項1に対応)。
【0009】
本発明の導電性組成物は、改質天然ゴム粒子が水に分散された改質天然ゴムラテックスをベース材料とする。つまり、本発明の導電性組成物は、有機溶剤を含まない。また、天然ゴムを用いているため、石油由来材料の使用を低減することができる。このように、本発明の導電性組成物は、環境対応型の材料である。
【0010】
上述したように、カーボンブラック等の導電剤は、ゴムラテックス中では、ゴムラテックスのミセル構造形成のため、分散しにくい。しかし、本発明の導電性組成物によると、ゴム成分として、単官能ビニルモノマーのグラフト化により改質された改質天然ゴム粒子を使用する。改質天然ゴム粒子が水に分散された改質天然ゴムラテックス中では、単官能ビニルモノマーと導電剤との親和性のため、導電剤は凝集しにくい。したがって、本発明の導電性組成物によると、導電剤を均一に分散させることができる。
【0011】
このように、本発明の導電性組成物によると、導電剤の分散性が良好であるため、成膜後の膜表面において、電気抵抗のばらつきが少なく略均一な導電性を得ることができる。また、導電剤の種類、配合量等を調整することにより、膜の導電性を制御することができる。さらに、導電剤が凝集、沈降しにくいため、本発明の導電性組成物の貯蔵安定性は良好である。また、グラフト成分(単官能ビニルモノマー)中に、酸素原子(−O−、=O)や窒素原子(>N、=N−、≡N)が含まれる場合には、原子上の孤立電子対と導電剤との電気的な相互作用により、導電性がより向上する。
【0012】
また、本発明の導電性組成物から形成された薄膜は、天然ゴム由来の柔軟性と高靱性とを有する。このため、例えば帯電ロールの表層に用いた場合には、感光体等との圧接による変形(へたり)が小さく、摩耗しにくい。したがって、当該薄膜を使用した層の厚さをより薄くすることも可能である。また、本発明の導電性組成物から形成された薄膜は、グラフト鎖により形成されたマトリックス中に、天然ゴム等の粒子が分散した相構造を有する。マトリックス部分が膜表面に出ることにより、膜表面の摩擦係数が小さくなる等、単官能ビニルモノマー由来の種々の特性が発現される。
【0013】
このように、本発明の導電性組成物によると、均一な導電性による高くて均一な荷電性を有し、摩擦係数が小さく、耐摩耗性および耐久性に優れた薄膜を形成することができる。
【0014】
(2)また、本発明の導電性部材は、上記本発明の導電性組成物から形成された薄膜を備えることを特徴とする(請求項8に対応)。
【0015】
上記本発明の導電性組成物から形成された薄膜を備えることにより、本発明の導電性部材は、均一な導電性による高くて均一な荷電性を有し、摩擦係数が小さく、耐摩耗性および耐久性に優れる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、環境への負荷が小さく、所望の導電性を有すると共に、貯蔵安定性の良好な導電性組成物を提供することができる。また、当該導電性組成物を用いることにより、荷電性が良好で、柔軟で耐久性に優れた薄膜を備える導電性部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の導電性部材の一実施形態である現像ロールの斜視図である。
【図2】図1のII−II断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の導電性組成物および導電性部材の実施形態について説明する。なお、本発明の導電性組成物および導電性部材は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。
【0019】
<導電性組成物>
本発明の導電性組成物は、改質天然ゴムラテックスに、導電剤が分散されてなる。
【0020】
[改質天然ゴムラテックス]
改質天然ゴムラテックスは、炭素の二重結合を一つ有する単官能ビニルモノマーが天然ゴム粒子または脱蛋白質化天然ゴム粒子にグラフト共重合されてなる改質天然ゴム粒子を含む。
【0021】
単官能ビニルモノマーは、炭素の二重結合(C=C)を一つ有する。本明細書の「ビニルモノマー」は、ビニル構造を有するモノマーを意味する。ビニル構造は、ビニル基(−CH=CH)の他、ビニル基の水素原子がメチル基(−CH)等の置換基で置換された態様を含む。
【0022】
単官能ビニルモノマーとしては、例えば、スチレン類、(メタ)アクリル酸エステル類、アクリロニトリル類、アクリルアミド類、酢酸ビニル類、N−ビニルピロリドン類、ビニルトルエン類から選ばれる一種以上を用いることができる。単官能ビニルモノマーの種類により、得られる膜の特性が変化する。すなわち、分子中のビニル構造と反対側の末端構造により、摩擦係数等の膜表面の特性が変化する。したがって、所望の特性が得られるように、単官能ビニルモノマーを適宜選択すればよい。例えば、(メタ)アクリル酸エステル類から選択すると、高い荷電性に加えて、より柔軟で強度の大きな膜を形成することができる。なお、本明細書では、アクリル酸エステル類およびメタクリル酸エステル類をまとめて、(メタ)アクリル酸エステル類と称す。
【0023】
(メタ)アクリル酸エステル類としては、例えば、(a)末端がアルキル基であるもの、(b)末端が水酸基であるもの、(c)末端がアミン基であるのもの、(d)末端がグリシジル基であるもの、(e)グリセリンを有するもの、(f)塩素基を有するもの、(g)モルホリンアクリレート、β−メタクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート等が挙げられる。
【0024】
具体的には、(a)として、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、メトキシポリプロピレングリコールモノメタクリレート、メトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、モノメチルアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、フェノキシポリプロピレングリコールモノメタクリレート、フェノキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート等が挙げられる。
【0025】
(b)として、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、ヒドロキシメタクリレート等が挙げられる。
【0026】
(c)として、ポリエチレンアミンモノアクリレート、ポリプロピレンアミンモノアクリレート、ポリエチレンアミン−ポリプロピレンアミンモノアクリレート、アミノメタクリレート等が挙げられる。
【0027】
(d)として、グリシジルメタクリレート、ポリエチレングリコールグリシジルメタクリレート、ポリプロピレングリコールグリシジルメタクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールグリシジルメタクリレート等が挙げられる。
【0028】
(e)として、グリセリンモノメタクリレート、ポリエチレングリコールグリセリンモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールグリセリンモノメタクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールグリセリンモノメタクリレート等が挙げられる。
【0029】
(f)として、3−クロロ−2−ヒドロキシモノメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシポリプロピレングリコールモノメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノメタクリレート等が挙げられる。
【0030】
単官能ビニルモノマーをグラフト共重合させるゴム粒子は、天然ゴム、蛋白質を除去した脱蛋白質化天然ゴムのいずれを使用してもよい。脱蛋白質化天然ゴムを使用すると、グラフト共重合における反応率を向上させることができる。
【0031】
天然ゴムとしては、例えば、フィールドラテックス、市販のアンモニア処理ラテックス等を使用すればよい。また、天然ゴムの脱蛋白質化は、種々の公知の方法を採用することができる。例えば、(i)天然ゴムラテックスに、蛋白質分解酵素またはバクテリアを添加して蛋白質を分解させる方法(特開平6−56902号公報参照)、(ii)天然ゴムラテックスを、石鹸等の界面活性剤により繰り返し洗浄する方法、(iii)天然ゴムラテックスに、次の一般式(I)で表される尿素系化合物およびNaClOからなる群から選択された蛋白質変性剤を添加し、ラテックス中の蛋白質を変性処理した後に除去する方法(特開2004−99696号公報参照)等が挙げられる。
RNHCONH ・・・(I)
[(式(I)中、RはH、炭素数1〜5のアルキル基である。]
改質天然ゴム粒子は、単官能ビニルモノマーを、所定の濃度に調製した天然ゴムまたは脱蛋白質化天然ゴムのラテックスに添加して、重合開始剤を加えてグラフト共重合させることにより製造することができる。
【0032】
重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム(KPS)、過硫酸アンモニウム(APS)の他、過酸化水素、過酸化ベンゾイル(BPO)、クメンハイドロパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイド(TBHPO)、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、2,2−アゾビスイソブチロニトリル等の過酸化物等、種々のラジカル開始剤を用いればよい。重合温度を低くするという観点から、レドックス系の重合開始剤を使用するとよい。レドックス系の重合開始剤として、過酸化物と組み合わされる還元剤には、例えば、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、メルカプタン類、酸性亜硫酸ナトリウム、還元性金属イオン、アスコルビン酸等が挙げられる。レドックス系の重合性開始剤として好適な組み合わせ例としては、TBHPOとTEPA、過酸化水素とFe2+塩、KPSと酸性亜硫酸ナトリウム等が挙げられる。重合開始剤の添加量は、単官能ビニルモノマーの種類、添加量、および改質の反応条件等に応じて、適宜調整すればよい。例えば、天然ゴム等のラテックス中のゴム分(乾燥ゴム重量、以下同じ)1kgに対して、0.001〜0.5モルとするとよい。
【0033】
なお、天然ゴム等のラテックスには、予め乳化剤を加えておいてもよい。また、単官能ビニルモノマーを予め乳化して、ラテックスに添加してもよい。乳化剤としては、公知の種々のアニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤のいずれも使用することができる。アニオン界面活性剤としては、カルボン酸系、スルホン酸系、硫酸エステル系等が挙げられる。ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンエーテル系、多価アルコール脂肪酸エステル系等が挙げられる。カチオン系界面活性剤としては、アルキルアミン塩型、イミダゾリニウム塩型等が挙げられる。
【0034】
単官能ビニルモノマーの添加量は、天然ゴム等のラテックス中のゴム分1kgに対して、0.01〜10モルとすることが望ましい。単官能ビニルモノマーの添加量が10モルを超えると、連鎖移動等の影響や、ホモポリマーの生成が増加してグラフト効率が低下する。反対に、0.01モル未満の場合には、単官能ビニルモノマーの濃度が低すぎることから、開始剤の失活が起きて反応の進行が低下する。その結果、単官能ビニルモノマーのグラフト量が少なくなり、所望の改質効果が得られない。重合反応は、5〜90℃下で、0.5〜12時間程度行えばよい。
【0035】
[導電剤]
導電剤は、電子導電剤およびイオン導電剤のいずれを用いてもよい。電子導電剤としては、カーボンブラック、グラファイト、c−ZnO(導電性酸化亜鉛)、c−TiO(導電性酸化チタン)、c−SnO(導電性酸化錫)等の金属酸化物が好適である。イオン導電剤としては、第四級アンモニウム塩、第四級ホスホニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリウム塩、ピラゾリウム塩、金属塩、リン酸塩、ホウ酸塩、フッ化ホウ素イオン、フッ化ホスホニウムイオン、フルオロアルキルスルホン酸塩、界面活性剤、ハロゲン化物イオン、ポリエチレンオキサイド(PEO)が好適である。例えば、金属塩としては、原子半径が小さいリチウム等の金属を用いることが望ましい。原子半径が小さいと、金属イオンが移動しやすいため、導電性の向上に効果的だからである。
【0036】
導電剤の含有量は、その種類に応じて、適宜決定すればよい。例えば、電子導電剤を用いる場合には、改質天然ゴムラテックスの100重量部に対して、5重量部以上とすることが望ましい。5重量部未満の場合には、充分な導電性を付与することができない。10重量部以上とするとより好適である。一方、電子導電剤を過剰に配合すると、得られる膜が硬くなり過ぎてしまい、伸び等の物性を低下させるおそれがある。また、貯蔵安定性を低下させるおそれもある。このような観点から、電子導電剤の含有量は、改質天然ゴムラテックスの100重量部に対して、200重量部以下とすることが望ましい。100重量部以下とするとより好適である。
【0037】
また、イオン導電剤を用いる場合には、改質天然ゴムラテックスの100重量部に対して、0.01重量部以上とすることが望ましい。0.01重量部未満の場合には、充分な導電性を付与することができない。0.5重量部以上とするとより好適である。一方、イオン導電剤を過剰に配合すると、得られる膜が軟らかくなり過ぎてしまい、伸び等の物性を低下させると共に、ブリードアウトするおそれがある。また、電子導電材の場合と同様、貯蔵安定性を低下させるおそれもある。このような観点から、イオン導電剤の含有量は、改質天然ゴムラテックスの100重量部に対して、20重量部以下とすることが望ましい。10重量部以下とするとより好適である。
【0038】
本発明の導電性組成物は、改質天然ゴムラテックスに導電剤を添加して、ミキサー、分散機等により導電剤を分散させて製造すればよい。なお、本発明の導電性組成物は、導電剤の他にも必要に応じて種々の添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、架橋剤、架橋促進剤、老化防止剤、加工助剤、充填剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、オイル等が挙げられる。
【0039】
架橋剤としては、例えば、硫黄、イソシアネート、ブロックイソシアネート、メラミン等の尿素樹脂、エポキシ硬化剤、ポリアミン硬化剤、ヒドロキシル硬化剤、有機過酸化物等が挙げられる。また、紫外線や電子線等のエネルギーによって架橋する光開始剤を使用してもよい。
【0040】
<導電性部材>
本発明の導電性部材は、上記本発明の導電性組成物から形成された薄膜を備える。本発明の導電性部材においても、上記本発明の導電性組成物における好適な態様を採用することが望ましい。本発明の導電性部材としては、帯電ロール、現像ロール、転写ロール、トナー供給ロール等の導電性ロールや、転写ベルト等の導電性ベルトを例示することができる。
【0041】
本発明の導電性部材の一例として、現像ロールの実施形態を示す。まず、本実施形態の現像ロールの構成について説明する。図1に、本実施形態の現像ロールの斜視図を示す。図2に、図1のII−II断面図を示す。
【0042】
現像ロール1は、軸体10と弾性層11と表層12とを備えている。軸体10は、ステンレス鋼製であり、円柱状を呈している。弾性層11は、カーボンブラックを配合したシリコーンゴム製であって、軸体10の外周面を被覆するように配置されている。表層12は、本発明の導電性組成物から形成された薄膜からなり、弾性層11の外周面を被覆するように配置されている。
【0043】
次に、本実施形態の現像ロールの製造方法について説明する。まず、弾性層11を形成するための弾性層用組成物を調製する。また、表層12を形成するための表層用組成物(本発明の導電性組成物)を調製する。次に、円筒状の金型に軸体10をセットして、軸体10の外周面に弾性層用組成物を射出成形する。脱型して、軸体10の外周面に弾性層11が形成されたベースロールを得る。続いて、表層用組成物に、ベースロールを浸漬することにより、ベースロールの外周面に表層用組成物の塗膜を形成する。形成された塗膜を乾燥し、加熱することにより、現像ロール1を得る。
【0044】
次に、本実施形態の現像ロールの作用効果について説明する。本実施形態の現像ロール1によると、表層12が本発明の導電性組成物から形成されている。表層12の均一な導電性により、現像ロール1は、高くて均一な荷電性を有する。また、表層12の表面の摩擦係数は小さい。加えて、表層12は、天然ゴム由来の柔軟性と高靱性とを有する。このため、現像ロール1が感光体と圧接しても、変形(へたり)が小さく、摩耗しにくい。したがって、現像ロール1は、耐摩耗性および耐久性に優れる。
【0045】
上記実施形態に示したように、導電性ロールは、軸体と、該軸体の外周面に形成された導電性の弾性層と、該弾性層の外周面に形成された表層と、を備えるように構成することができる。しかし、導電性ロールは、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、弾性層と表層との間に、少なくとも一層の中間層が介装された構成としてもよい。この場合、中間層を、本発明の導電性組成物から形成してもよい。
【0046】
ここで、軸体の材質は、導電性を有するものであればよく、上記ステンレス鋼の他、めっきを施した鉄、アルミニウム等の金属が好適である。軸体の形状は、上記円柱状の中実体の他、円筒状の中空体であってもよい。軸体の表面には、軸体と弾性層とを接着するために、接着剤、プライマー等を塗布してもよい。この場合、接着剤等についても導電化しておくとよい。また、弾性層には、カーボンブラックを配合したシリコーンゴムの他、既に公知の弾性材料(樹脂やゴムに、必要に応じて導電剤等の添加剤が配合された材料、および発泡剤が配合された導電性の発泡体等)を使用することができる。
【0047】
導電性ベルトとしては、基材と、該基材の表面に積層された導電性の弾性層と、を備えるように構成することができる。必要に応じて、弾性層の表面に、さらに表層が積層されていてもよい。導電性ベルトにおいて、弾性層あるいは表層を、本発明の導電性組成物から形成すればよい。また、基材の材質としては、張力を保持できる材料が好適である。例えば、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。
【0048】
本発明の導電性部材を製造する際における、本発明の導電性組成物の成膜方法には、例えば、ディッピング法、スプレーコート法、ロールコート法、スピンコート法、刷毛塗り法等を用いればよい。
【0049】
本発明の導電性組成物から形成された薄膜を、導電性ロールの表層に使用する場合には、膜厚を0.1〜100μm程度とするよよい。中間層に使用する場合には、膜厚を0.01μm〜1mm程度とするとよい。また、導電性ベルトの弾性層に使用する場合には、膜厚を0.01〜1mm程度とするよよい。表層に使用する場合には、膜厚を0.1〜100μm程度とするとよい。
【実施例】
【0050】
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0051】
<実施例1〜14>
[改質天然ゴムラテックスの製造]
天然ゴムラテックスとして、ゴールデンホープ社(マレーシア国)製のハイアンモニアラテックス(ゴム分濃度60.2重量%、アンモニア分濃度0.7重量%)を使用した。まず、ハイアンモニアラテックスを、ゴム分濃度が30重量%となるように希釈した。次いで、希釈したラテックスのゴム分100重量部に対して、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS:アニオン系界面活性剤)1.0重量部を添加し、ラテックスを安定させた。次に、ラテックスのゴム分100重量部に対して、尿素0.1重量部を添加し、室温で1時間攪拌することにより蛋白質分解処理を行った。その後、蛋白質分解処理が完了したラテックスを、10000rpmで30分間、遠心分離処理した。こうして分離した上層のクリーム分を、水あるいはSDS水溶液に、所定のゴム分濃度になるよう分散させて、脱蛋白質化天然ゴムラテックスを得た。
【0052】
次に、脱蛋白質化天然ゴムラテックス中の脱蛋白質化天然ゴム粒子に、単官能ビニルモノマーをグラフト共重合させた。単官能ビニルモノマーには、次式(1)に示すモノメチルアクリレート、次式(2)に示すフェノキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、次式(3)に示すスチレン、次式(4)に示すポリプロピレンアミンモノアクリレートの四種類を使用した。
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

以下、各々のグラフト重合の方法を順に説明する。
【0053】
(a)モノメチルアクリレートによる改質
まず、脱蛋白質化天然ゴムラテックスに、室温で、tert−ブチルハイドロパーオキサイド(TBHPO)を添加した後、テトラエチレンペンタミン(TEPA)を添加した。これら重合開始剤の添加量は、ラテックス中のゴム分1kgに対して、0.07モルとした。次に、ラテックスにモノメチルアクリレートを滴下して、2時間グラフト共重合を行った。モノメチルアクリレートの添加量は、ラテックス中のゴム分1kgに対して、2.0モルとした。その後、未反応のモノメチルアクリレートを減圧除去して、改質天然ゴムラテックスを得た。得られた改質天然ゴムラテックスを、以下、改質天然ゴムラテックス(a)と称す。
【0054】
(b)フェノキシポリエチレングリコールモノメタクリレートによる改質
まず、脱蛋白質化天然ゴムラテックスに、室温で、tert−ブチルハイドロパーオキサイド(TBHPO)を添加した後、テトラエチレンペンタミン(TEPA)を添加した。これら重合開始剤の添加量は、ラテックス中のゴム分1kgに対して、0.07モルとした。次に、ラテックスにフェノキシポリエチレングリコールモノメタクリレートを滴下して、2時間グラフト共重合を行った。フェノキシポリエチレングリコールモノメタクリレートの添加量は、ラテックス中のゴム分1kgに対して、2.0モルとした。その後、未反応のフェノキシポリエチレングリコールモノメタクリレートを減圧除去して、改質天然ゴムラテックスを得た。得られた改質天然ゴムラテックスを、以下、改質天然ゴムラテックス(b)と称す。
【0055】
(c)スチレンによる改質
まず、脱蛋白質化天然ゴムラテックスに、室温で、tert−ブチルハイドロパーオキサイド(TBHPO)を添加した後、テトラエチレンペンタミン(TEPA)を添加した。これら重合開始剤の添加量は、ラテックス中のゴム分1kgに対して、0.07モルとした。次に、ラテックスにスチレンを滴下して、2時間グラフト共重合を行った。スチレンの添加量は、ラテックス中のゴム分1kgに対して、2.0モルとした。その後、未反応のスチレンを減圧除去して、改質天然ゴムラテックスを得た。得られた改質天然ゴムラテックスを、以下、改質天然ゴムラテックス(c)と称す。
【0056】
(d)ポリプロピレンアミンモノアクリレートによる改質
まず、脱蛋白質化天然ゴムラテックスに、室温で、tert−ブチルハイドロパーオキサイド(TBHPO)を添加した後、テトラエチレンペンタミン(TEPA)を添加した。これら重合開始剤の添加量は、ラテックス中のゴム分1kgに対して、0.07モルとした。次に、ラテックスにポリプロピレンアミンモノアクリレートを滴下して、2時間グラフト共重合を行った。ポリプロピレンアミンモノアクリレートの添加量は、ラテックス中のゴム分1kgに対して、2.0モルとした。その後、未反応のポリプロピレンアミンモノアクリレートを減圧除去して、改質天然ゴムラテックスを得た。得られた改質天然ゴムラテックスを、以下、改質天然ゴムラテックス(d)と称す。
【0057】
一方、脱蛋白質化していない天然ゴム粒子に、単官能ビニルモノマーをグラフト共重合させて、改質天然ゴムラテックスを製造した。単官能ビニルモノマーには、上記式(1)に示すモノメチルアクリレートを使用した。以下、グラフト重合の方法を説明する。
【0058】
まず、脱蛋白質化していない天然ゴムラテックス(ゴールデンホープ社製のハイアンモニアラテックス)に、室温で、tert−ブチルハイドロパーオキサイド(TBHPO)を添加した後、テトラエチレンペンタミン(TEPA)を添加した。これら重合開始剤の添加量は、ラテックス中のゴム分1kgに対して、0.07モルとした。次に、ラテックスにモノメチルアクリレートを滴下して、2時間グラフト共重合を行った。モノメチルアクリレートの添加量は、ラテックス中のゴム分1kgに対して、2.0モルとした。その後、未反応のモノメチルアクリレートを減圧除去して、改質天然ゴムラテックスを得た。得られた改質天然ゴムラテックスを、以下、改質天然ゴムラテックス(e)と称す。
【0059】
[導電性組成物の製造]
改質天然ゴムラテックス(a)〜(e)に、導電剤を添加して、ミキサーと分散機により混合、分散することにより、十四種類の導電性組成物を調製した。なお、そのうちの二種類(実施例13、14)については、架橋剤も添加した。導電剤、架橋剤としては、以下のものを使用した。
電子導電剤:カーボンブラック(電気化学工業(株)製「デンカブラック(登録商標)HS−100」)、導電性酸化チタン(石原産業(株)製「タイペーク(登録商標)ET500W」)
イオン導電剤:テトラブチルアンモニウムクロライド(TBAC)(東京化成工業(株)製)、テトラエチルホスホニウムヒドロキサイド(日本化学工業(株)製)、1−ブチル−4−メチルピリジニウムヘキサフルオロホスファート(東京化成工業(株)製)、1,3−ジメチルイミダゾリウムクロライド(東京化成工業(株)製)、リチウムテトラフルオロスルホキシド(東京化成工業(株)製)、1−エチル−2,3,5−トリメチルピラゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(関東化学(株)製)
架橋剤:硫黄(鶴見化学工業(株)製)、イソシアネート(日本ポリウレタン工業(株)製「アクアネート(登録商標)AQ−100」)
得られた導電性組成物を、実施例1〜14の組成物とした。各組成物の組成については、下記表1および表2に示す通りである。表1および表2中、ゴム成分、導電剤、架橋剤、および分散剤の配合量の単位は重量部である。
【0060】
<比較例1〜3>
実施例と同様の天然ゴムラテックス(ゴールデンホープ社製のハイアンモニアラテックス)をそのまま使用して、導電性組成物を調製した。すなわち、天然ゴムラテックスに、導電剤のカーボンブラック(同上)またはTBAC(同上)を添加して、ミキサーと分散機により混合、分散することにより導電性組成物を調製した。得られた導電性組成物を、比較例1〜3の組成物とした。なお、比較例2の組成物には、導電剤に加えて分散剤(高分子ポリエステル系アミン塩:日本ルーブリゾール(株)製「ソルスパーズ(登録商標)24000GR」)が添加されている。比較例1〜3の組成物の組成を、下記表2に示す。
【表1】

【表2】

【0061】
<貯蔵安定性>
実施例および比較例の組成物を、常温で、7日間静置して、ラテックスおよび導電剤の凝集、沈降状態を目視により観察した。そして、ラテックスおよび導電剤が共に凝集、沈降していないものを貯蔵安定性が良好(表1および表2中、○印で示す)、ラテックスが若干凝集し、導電剤が凝集、沈降気味のものをやや不良(同、△印で示す)、ラテックスおよび導電剤が共に凝集し、固化しているものを不良(同、×印で示す)と評価した。結果を上記表1および表2に示す。
【0062】
表1および表2に示すように、実施例1〜14の組成物の貯蔵安定性は、いずれも良好であった。この結果から、改質天然ゴムラテックスを使用した実施例1〜14の組成物によると、導電剤が凝集、沈降しにくい、つまり、導電性の分散性が良好であることがわかる。これに対して、従来の天然ゴムラテックスを使用した比較例1〜3の組成物の貯蔵安定性は、良好ではなかった。比較例2の組成物によると、分散剤の添加により、貯蔵安定性が若干向上した。また、比較例3の組成物によると、イオン導電剤を使用することにより、貯蔵安定性が若干向上した。しかし、後述するように、比較例2、3の組成物から得られる薄膜の特性は、満足できるレベルではなかった。
【0063】
このように、実施例1〜14の組成物において、導電剤の分散性は良好である。また、実施例1〜14の組成物は、有機溶剤を含まない。さらに、天然ゴムを用いているため、石油由来材料の使用を低減することができる。したがって、実施例1〜14の組成物は、環境に優しい。
【0064】
<薄膜の評価>
実施例および比較例の組成物を、基材表面に塗布し、80℃で1時間保持することにより塗膜を乾燥させた。なお、架橋剤を添加した実施例13の組成物については、160℃で15分間、実施例14の組成物については、100℃で30分間保持することにより、塗膜を乾燥させた。得られた薄膜について、切断時引張応力(TS)、および切断時伸び(E)を測定した。これらの測定は、JIS K 6251(2004)に準じて行った。なお、試験片はダンベル状2号形を使用した。そして、切断時引張応力と切断時伸びとの積(TS×E)を、薄膜の強度の指標とした。すなわち、TS×Eの値が大きいほど、薄膜の強度が大きいことを示す。結果を上記表1および表2に示す。
【0065】
表1および表2に示すように、実施例1〜14の組成物から形成された薄膜において、強度が非常に大きくなった。これは、単官能ビニルモノマーによる改質、および導電剤の高分散の両方の効果であると考えられる。また、実施例8と実施例13とを比較すると、実施例13の組成物から形成された薄膜の方が、強度が大きい。これは、架橋構造の導入による効果であると考えられる。
【0066】
同様に、実施例および比較例の組成物から厚さ50μmの薄膜を形成し、当該薄膜における体積抵抗率、体積抵抗率のばらつき、および感光体への汚染の有無を調べた。体積抵抗率は、次のようにして求めた。すなわち、まず、薄膜の厚さ方向一方の表面の五箇所に、銀ペーストで10mm四方の電極(ガード電極付き)を描いた。次に、他方の表面に、銀ペーストで10mm四方の電極(ガード電極付き)を一つ描いた。そして、一方の表面に形成した各々の電極と他方の表面に形成した電極との間の電気抵抗を測定した。測定された電気抵抗の平均値を体積抵抗率とした。また、体積抵抗率のばらつきについては、測定された電気抵抗の最高値と最低値との差を、10の指数の差で示した[体積抵抗率のばらつき(桁)=log(最大値/最小値)]。結果を上記表1および表2に示す。
【0067】
表1および表2に示すように、実施例1〜14の組成物から形成された薄膜において、体積抵抗率のばらつきは小さかった。すなわち、実施例1〜14の組成物において、導電剤の分散性が良好であるため、形成された薄膜表面において、略均一な導電性を得ることができたと考えられる。
【0068】
また、感光体への汚染の有無は、次のようにして調べた。まず、カラーレーザープリンター(キャノン(株)製「レーザーショットLBP−2510」)のカートリッジ内の感光体に、薄膜を直接押し当てて、40℃×95%RH(相対湿度)の環境下で、一週間放置した。次に、当該感光体を、目視および顕微鏡にて観察した。そして、感光体の溶解や割れ、組成物からの染み出しが生じていないものを汚染無し(表1および表2中、○印で示す)、感光体の溶解や割れ、組成物からの染み出しが生じているものを汚染有り(同、×印で示す)と評価した。結果を上記表1および表2に示す。
【0069】
表1および表2に示すように、実施例1〜14の組成物から形成された薄膜によると、感光体への汚染は観察されなかった。一方、分散剤を含む比較例2の組成物から形成された薄膜、およびイオン導電剤を使用した比較例3の組成物から形成された薄膜によると、感光体への汚染が観察された。比較例3の薄膜については、組成物におけるイオン導電剤と天然ゴムとの親和性が低い。このため、圧接による物理的な力に加え、湿熱によるゴムの柔軟化により、組成物の成分が感光体へ移行しやすくなったと考えられる。
【0070】
<導電性部材の製造>
[現像ロール]
軸体の外周に、弾性層と表層とが順に積層されてなる現像ロールを製造した。まず、ステンレス鋼製の軸体(外径6mm、長さ250mmの円柱状)を、円筒状の金型にセットして、軸体の外周面に弾性層用組成物を射出成形した。弾性層用組成物には、カーボンブラック(同上)を配合したシリコーンゴム(信越化学工業(株)製「KE1350AB」)を使用した。脱型して、厚さ3mmの弾性層が形成されたベースロールを得た。次に、得られたベースロールを、実施例および比較例の各組成物に浸漬して(ディッピング法)、弾性層の外周面に塗膜を形成した。続いて、このベースロールを80℃下で1時間保持して、塗膜を乾燥させて、厚さ20μmの表層を形成した。なお、架橋剤を添加した実施例13の組成物から塗膜を形成したベースロールについては、160℃下で15分間、実施例14の組成物から塗膜を形成したベースロールについては、100℃下で30分間保持して、塗膜を乾燥させた。
【0071】
[帯電ロール]
軸体の外周に、弾性層と中間層と表層とが順に積層されてなる帯電ロールを製造した。まず、ステンレス鋼製の軸体(同上)を、円筒状の金型にセットして、軸体の外周面に弾性層用組成物を射出成形した。弾性層用組成物には、カーボンブラック(同上)を配合したシリコーンゴム(同上)を使用した。脱型して、厚さ3mmの弾性層が形成されたベースロールを得た。続いて、エピクロルヒドリンゴム(ECO)(ダイソー(株)製「エピクロマー(登録商標)CG−102」)100重量部と、ステアリン酸(花王(株)製「ルナック(登録商標)S−30」)1重量部と、酸化亜鉛2種(三井金属工業(株)製)5重量部と、受酸剤(協和化学工業(株)製「DHT−4A」)3重量部と、粉末硫黄(鶴見化学工業(株)製)1.5重量部と、チアゾール系加硫促進剤(大内新興化学工業(株)製「ノクセラー(登録商標)DM」)1.5重量部と、チラウム系加硫促進剤(大内新興化学工業(株)製「ノクセラーTS」)0.5重量部と、イオン導電剤のテトラブチルアンモニウムクロライド(東京化成工業(株)製)1重量部と、をニーダーで混練して、ヒドリンゴム系未硬化組成物を調製し、メチルエチルケトン/トルエン=1/1溶剤に溶解した。そして、この溶液に上記ベースロールを浸漬して(ディッピング法)、弾性層の外周面に塗膜を形成した。その後、160℃で30分間保持して、塗膜を硬化させて、弾性層の外周面に厚さ20μmの中間層を形成した。次に、弾性層および中間層が形成されたベースロールを、実施例および比較例の各組成物に浸漬して(ディッピング法)、中間層の外周面に塗膜を形成した。続いて、このベースロールを80℃下で1時間保持して、塗膜を乾燥させて、厚さ10μmの表層を形成した。なお、架橋剤を添加した実施例13の組成物から塗膜を形成したベースロールについては、160℃下で15分間、実施例14の組成物から塗膜を形成したベースロールについては、100℃下で30分間保持して、塗膜を乾燥させた。
【0072】
[転写ベルト]
基材の表面に、表層が形成されてなる転写ベルトを製造した。まず、カーボンブラック(同上)を配合したポリアミドイミド樹脂(東洋紡績(株)製「HR−16NN」)からなる基材(厚さ0.15mm、内周長1000mmの無端円筒状)を準備した。次に、得られた基材の表面に、実施例および比較例の各組成物を、ディッピング法により塗布して、塗膜を形成した。続いて、80℃下で1時間保持することにより、塗膜を乾燥させて、厚さ15μmの表層を形成した。なお、架橋剤を添加した実施例13の組成物から塗膜を形成したものについては、160℃下で15分間、実施例14の組成物から塗膜を形成したものについては、100℃下で30分間保持して、塗膜を乾燥させた。
【0073】
<導電性部材の評価>
[現像ロール]
製造した現像ロールを、カラーレーザープリンター(同上)に組み付けて、黒べた画像の画像出しを行った。初期画像を目視にて観察し、全画像面積中での濃度むら、かすれ、かぶりの占める面積が0.5%未満のものを非常に良好(表1および表2中、◎印で示す)、0.5%以上2.0%未満のものを良好(同、○印で示す)、2.0%以上のものを不良(同、×印で示す)と評価した。
【0074】
また、同カラーレーザープリンターにより、35℃×80%RHの環境下で、黒べた画像の画像出しを5000枚行った。その後、現像ロールの外観を目視にて観察し、トナーから外れたシリカ等の外添剤やトナー自体が、現像ロール表面に付着しているかどうか、および現像ロールの端部の削れの有無について調べた。また、得られた画像と初期画像との対比を行った。そして、現像ロール表面に付着物がほとんどなく、端部の削れがなく、初期画像と遜色ないものを耐久性有り(表1および表2中、○印で示す)、現像ロール表面に付着物が若干あり、端部にすじが発生し、薄い画像むらや濃度低下が見られるものを耐久性に問題あり(同、△印で示す)、現像ロール表面に多量の付着物があり、端部が削れてトナーが漏れ、濃い画像むらや大幅な濃度低下が見られるものを耐久性無し(同、×印で示す)と評価した。結果を上記表1および表2に示す。
【0075】
表1および表2に示すように、実施例1〜14の組成物から形成された表層を備える実施例1〜14の現像ロールによると、初期画質が良好であり、耐久性に優れることが確認された。
【0076】
[帯電ロール]
製造した帯電ロールを、カラーレーザープリンター(同上)に組み付けて、ハーフトーン画像の画像出しを行った。初期画像を目視にて観察し、全画像面積中での画像むら、すじ、斑点の占める面積が0.5%未満のものを非常に良好(表1および表2中、◎印で示す)、0.5%以上2.0%未満のものを良好(同、○印で示す)、2.0%以上のものを不良(同、×印で示す)と評価した。
【0077】
また、同カラーレーザープリンターにより、15℃×10%RHの環境下で、ハーフトーン画像の画像出しを5000枚行った。その後、帯電ロールの外観を目視にて観察し、トナーから外れたシリカ等の外添剤が、帯電ロール表面に付着しているかどうかを調べた。そして、帯電ロール表面にほとんど白粉が付着していない、若しくは部分的に付着しているものを耐久性有り(表1および表2中、○印で示す)、帯電ロール表面に白粉が薄く一面に付着しており、一部すじ状に付着しているものを耐久性に問題あり(同、△印で示す)、帯電ロール表面の全体に白粉が付着し、灰色を超えて白色に見えるものを耐久性無し(同、×印で示す)と評価した。結果を上記表1および表2に示す。
【0078】
表1および表2に示すように、実施例1〜14の組成物から形成された表層を備える実施例1〜14の帯電ロールによると、初期画質が良好であり、耐久性に優れることが確認された。
【0079】
[転写ベルト]
製造した転写ベルトを、マルチファンクションプリンター((株)リコー製「MPC−2500」)に組み付けて、黒べた画像の画像出しを行った。初期画像を目視にて観察し、全画像面積中での画像むら、転写ちりの占める面積が0.5%未満のものを非常に良好(表1および表2中、◎印で示す)、0.5%以上2.0%未満のものを良好(同、○印で示す)、2.0%以上のものを不良(同、×印で示す)と評価した。
【0080】
また、同マルチファンクションプリンターにより、20℃×50%RHの環境下で、ハーフトーン画像の画像出しを3万枚行った。その後、転写ベルトの表面を目視で観察し、さらに、初期画像同様に黒べた画像の画出しを行った。そして、転写ベルト表面(表層)の摩耗がなく、画像に斑点濃度むらがないものを耐久性有り(表1および表2中、○印で示す)、表層が若干白くなり、画像に薄い斑点濃度むらがあるものを耐久性に問題あり(同、△印で示す)、表層が摩耗し、画像に斑点濃度むらが顕著なものを耐久性無し(同、×印で示す)と評価した。結果を上記表1および表2に示す。
【0081】
表1および表2に示すように、実施例1〜14の組成物から形成された表層を備える実施例1〜14の転写ベルトによると、初期画質が良好であり、耐久性に優れることが確認された。
【符号の説明】
【0082】
1:現像ロール 10:軸体 11:弾性層 12:表層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素の二重結合を一つ有する単官能ビニルモノマーが天然ゴム粒子または脱蛋白質化天然ゴム粒子にグラフト共重合されてなる改質天然ゴム粒子を含む改質天然ゴムラテックスに、導電剤が分散されてなることを特徴とする導電性組成物。
【請求項2】
前記単官能ビニルモノマーは、(メタ)アクリル酸エステル類から選ばれる一種以上である請求項1に記載の導電性組成物。
【請求項3】
前記導電剤は、電子導電剤およびイオン導電剤から選ばれる一種以上である請求項1または請求項2に記載の導電性組成物。
【請求項4】
前記電子導電剤は、カーボンブラックおよび金属酸化物から選ばれる一種以上である請求項3に記載の導電性組成物。
【請求項5】
前記イオン導電剤は、第四級アンモニウム塩、第四級ホスホニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリウム塩、ピラゾリウム塩、金属塩から選ばれる一種以上である請求項3に記載の導電性組成物。
【請求項6】
前記電子導電剤の含有量は、前記改質天然ゴムラテックスの100重量部に対して、5重量部以上200重量部以下である請求項3または請求項4に記載の導電性組成物。
【請求項7】
前記イオン導電剤の含有量は、前記改質天然ゴムラテックスの100重量部に対して、0.01重量部以上20重量部以下である請求項3または請求項5に記載の導電性組成物。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の導電性組成物から形成された薄膜を備えることを特徴とする導電性部材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−248480(P2010−248480A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−44634(P2010−44634)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】