説明

導電性部材及びそれを有するプロセスカートリッジ、並びに、そのプロセスカートリッジを有する画像形成装置

【課題】初期及び長期間にわたって使用しても、像担持体と導電性部材との間に安定した空隙を維持して、像担持体の表面を均一に帯電させることができると共に、耐久性を向上させた導電性部材を提供する。
【解決手段】導電性支持体1と、該導電性支持体1上に形成された電気抵抗調整層3と、該電気抵抗調整層3と像担持体が一定の空隙を保持するように該像担持体と当接して該電気抵抗調整層3の両端部に形成された空隙保持部材5,5と、を有する導電性部材10において、前記電気抵抗調整層3が導電性支持体1に接着剤2で固定されているものとする。前記接着剤2は、好ましくは、金、銀、ニッケル及びカーボンから選ばれる導電性粒子を含有する導電性接着剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、レーザービームプリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置において用いられる導電性部材及びそれを有するプロセスカートリッジ、並びに、そのプロセスカートリッジを有する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電子写真複写機、レーザープリンタ、ファクシミリ等の電子写真方式の画像形成装置においては、像担持体(感光体ドラム)に対して帯電処理を行う帯電部材、及び、像担持体上のトナーに対して転写処理を行う転写部材として、導電性部材が用いられている。図5は、従来の帯電ローラを有する電子写真方式の画像形成装置の説明図である。
【0003】
図5において、120は、従来の電子写真方式の画像形成装置である。従来の電子写真方式の画像形成装置120は、静電潜像が形成される像担持体101、像担持体101に接触して帯電処理を行う帯電ローラ102、レーザ光等の露光手段103、像担持体101の静電潜像にトナーを付着させる現像ローラ104、帯電ローラ102にDC電圧を印加するためのパワーパック105、像担持体101上のトナー像を記録紙107に転写処理する転写ローラ106、転写処理後の像担持体101をクリーニングするためのクリーニング装置108、及び、像担持体101の表面電位を測定する表面電位計109から構成されている。
【0004】
また、従来の電子写真方式の画像形成装置120は、プロセスカートリッジ着脱方式の装置となっている。即ち、従来の電子写真方式の画像形成装置120は、像担持体101、帯電ローラ102、現像ローラ104、及び、クリーニング装置108を含むプロセス機器を一括して画像形成装置本体に対して着脱自在のプロセスカートリッジ110としている。このプロセスカートリッジ110は、少なくとも、像担持体101及び帯電ローラ102を備えていればよい。このプロセスカートリッジ110は、画像形成装置に対して所定の箇所に装着されることにより、画像形成装置本体側の駆動系及び電気系と接続状態となる。なお、図5では、他の電子写真プロセスにおいて通常必要な機能ユニットは、本明細書において必要としないので、省略してある。
【0005】
次に、従来の電子写真方式の画像形成装置120の基本的な作像動作について説明する。
【0006】
像担持体101に接触された帯電ローラ102に対してDC電圧をパワーパック105から給電すると、像担持体101の表面は、一様に高電位に帯電する。その直後に、画像光が像担持体101の表面に露光手段103により照射されると、像担持体101の照射された部分は、その電位が低下する。このような帯電ローラ102による像担持体101の表面への帯電メカニズムは、帯電ローラ102と像担持体101との間の微少空間におけるパッシェンの法則に従った放電であることが知られている。
【0007】
画像光は、画像の白/黒に応じた光量の分布であるので、かかる画像光が照射されると、画像光の照射によって像担持体101の面に記録画像に対応する電位分布、即ち、静電潜像が形成される。このように静電潜像が形成された像担持体101の部分が現像ローラ104を通過すると、その電位の高低に応じてトナーが付着し、静電画像を可視像化したトナー像が形成される。かかるトナー像が形成された像担持体101の部分に、記録紙107が所定のタイミングでレジストローラ(図示せず)により搬送され、前記トナー像に重なる。そして、このトナー像が転写ローラ106によって記録紙107に転写された後、該記録紙107は、像担持体101から分離される。分離された記録紙107は、搬送経路を通って搬送され、定着ユニット(図示せず)によって、加熱定着された後、機外へ排出される。このようにして転写が終了すると、像担持体101は、その表面がクリーニング装置108によりクリーニング処理され、さらに、クエンチングランプ(図示せず)により、残留電荷が除去されて、次回の作像処理に備えられる。
【0008】
従来の帯電ローラを用いた帯電方式には、像担持体に帯電ローラを接触させる接触帯電方式のものがある(特許文献1,2を参照。)が、このような従来の接触帯電方式には、
(1)帯電ローラを構成している物質が帯電ローラから染み出し、これが被帯電体の表面に付着移行して帯電ローラ跡を残すこと、
(2)帯電ローラに交流電圧を印加したときに、被帯電体に接触している帯電ローラが振動するので、帯電音が発生すること、
(3)像担持体上のトナーが帯電ローラに付着する(特に、上述の染み出しによって、よりトナー付着がおこりやすくなる。)ので、帯電ローラの帯電性能が低下すること、
(4)帯電ローラを構成している物質が像担持体へ付着すること、及び、
(5)像担持体を長期停止したときに、帯電ローラが永久変形すること、
といった問題があった。
【0009】
このような問題を解決する技術として、帯電ローラを像担持体に近接させるようにした近接帯電方式による帯電装置(特許文献3,4を参照。)が提案されている。この近接帯電方式による帯電装置は、帯電ローラを像担持体に最近接距離(50〜300μm)になるように対向させて、帯電ローラに電圧を印加することにより、像担持体の帯電を行うようにしたものである。この近接帯電方式による帯電装置では、帯電ローラと像担持体とが接触していないので、従来の接触帯電方式による帯電装置において問題となっていた、帯電ローラを構成している物質が像担持体へ付着すること、及び、像担持体が長期停止したときに永久変形すること、といった問題はない。また、この近接帯電方式による帯電装置では、帯電ローラに付着するトナーが少なくなるので、像担持体上のトナー等が帯電ローラに付着することが少ない。したがって、近接帯電方式による帯電装置は、優れた帯電装置といえる。
【0010】
接触帯電方式では、像担持体を均一に帯電させるために、帯電ローラは、像担持体に対して均一に接触することが必要とされているので、近接帯電方式で一般的に用いられる帯電ローラは、芯金の周囲に電気抵抗調整層が被覆された構成となっている。しかしながら、電気抵抗調整層と導電性支持体とでは、線膨張係数が大きく異なるので、低温又は高温環境下において、電気抵抗調整層と導電性支持体との界面が剥離して位置ズレが発生する。この位置ズレにより、製造段階における焼成工程や長期間の使用において、電気抵抗調整層と導電性支持体との間に隙間が発生する。このような隙間が発生すると、その部分では、交流電圧印加時の微振動により、電気抵抗調整層の強度が低下したり、抵抗値が変動するという問題があった。特に、成形時に発生するウェルド部分で強度低下が生じた場合には、使用時の電気的・機械的ストレスや経時・環境での体積変動により、ウェルド部分でクラックが発生するという問題があった。また、隙間発生部分の抵抗変動が部分的画像不良の不具合を引き起こすという問題もあった。
【0011】
図6は、従来の導電性部材(帯電ローラ)断面図である。図6に示すように、導電性支持体301と電気抵抗調整層303との位置ズレは、導電性支持体301の両端部に段差を設けるなどの対策により防止することが可能であるが、このような場合には、導電性支持体301の周囲に電気抵抗調整層303を被覆する際に、導電性支持体301の段差部近傍に成形歪みが集中するので、この歪みの応力緩和により、電気抵抗調整層303にクラックが発生したり、電気抵抗調整層303の外径変動により、像担持体との間に安定した空隙を維持できなくなってしまうという問題があった。図6において、305は、空隙保持部材であり、そして、304は、表面層である。
【特許文献1】特開昭63−149668号公報
【特許文献2】特開平1−267667号公報
【特許文献3】特開平3−240076号公報
【特許文献4】特開平4−358175号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、かかる問題を解決することを目的としている。
【0013】
即ち、本発明は、初期及び長期間にわたって使用しても、像担持体と導電性部材との間に安定した空隙を維持して、像担持体の表面を均一に帯電させることができると共に、耐久性を向上させた導電性部材及びそれを有するプロセスカートリッジ、並びに、そのプロセスカートリッジを有する画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1に記載された発明は、上記目的を達成するために、導電性支持体と、該導電性支持体上に形成された電気抵抗調整層と、該電気抵抗調整層と像担持体が一定の空隙を保持するように該像担持体と当接して該電気抵抗調整層の両端部に形成された空隙保持部材と、を有する導電性部材において、前記電気抵抗調整層が導電性支持体に接着剤で固定されていることを特徴とする導電性部材である。
【0015】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記接着剤が導電性接着剤であることを特徴とするものである。
【0016】
請求項3に記載された発明は、請求項2に記載された発明において、前記導電性接着剤が金、銀、ニッケル及びカーボンから選ばれる導電性粒子を含有していることを特徴とするものである。
【0017】
請求項4に記載された発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載された発明において、前記接着剤が、予め、導電性支持体に塗布されていることを特徴とするものである。
【0018】
請求項5に記載された発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載された発明において、前記導電性支持体の表面が粗面化処理されていることを特徴とするものである。
【0019】
請求項6に記載された発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載された発明において、前記導電性支持体と前記空隙保持部材とが、前記接着剤で固定されていることを特徴とするものである。
【0020】
請求項7に記載された発明は、請求項6に記載された発明において、前記空隙保持部材の接着面が、予め、活性ガスで表面処理されていることを特徴とするものである。
【0021】
請求項8に記載された発明は、前記空隙保持部材の外周面が像担持体と当接したときに、該像担持体の外周面と前記導電性部材の外周面との間に一定間隔の空隙が形成されるように、前記電気抵抗調整層の外周面に対する前記空隙保持部材の外周面の高低差が設けられていることを特徴とするものである。
【0022】
請求項9に記載された発明によれば、前記電気抵抗調整層の外周面に対する前記空隙保持部材の外周面の高低差が、前記導電性支持体上に設置された該空隙保持部材の外周面と前記導電性支持体上に設置された該電気抵抗調整層の外周面とに施された切削加工、研削加工等の除去加工による一体加工で形成されていることを特徴とするものである。
【0023】
請求項10に記載された発明は、請求項1〜9のいずれか1項に記載された発明において、前記電気抵抗調整層上にトナーの付着を防止する表面層が形成されていることを特徴とするものである。
【0024】
請求項11に記載された発明は、請求項10に記載された発明において、前記表面層を構成する樹脂が、アクリルシリコン樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、及び、ポリビニルブチラール樹脂から選ばれる樹脂であることを特徴とするものである。
【0025】
請求項12に記載された発明は、請求項1〜11のいずれか1項に記載された発明において、前記導電性部材が円筒形状であることを特徴とするものである。
【0026】
請求項13に記載された発明は、請求項1〜12のいずれか1項に記載された発明において、導電性部材が帯電部材であることを特徴とするものである。
【0027】
請求項14に記載された発明は、請求項13に記載の帯電部材が被帯電体上に近接配置されるように設けられていることを特徴とするプロセスカートリッジである。
【0028】
請求項15に記載された発明は、請求項14に記載のプロセスカートリッジを有することを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0029】
請求項1に記載された発明によれば、前記電気抵抗調整層が導電性支持体に接着剤で固定されているので、導電性支持体と電気抵抗調整層と間の隙間の発生を防止すると共に、これに起因する電気抵抗調整層の強度低下及び電気抵抗値の変動を防止することができ、それらのために、初期及び長期間にわたって使用しても、像担持体と導電性部材との間に安定した空隙を維持して、像担持体の表面を均一に帯電させることができると共に、耐久性を向上させた導電性部材を提供することができる。
【0030】
請求項2,3に記載された発明によれば、前記接着剤が導電性接着剤であるので、導電性部材の電気抵抗の上昇を防止することができる。
【0031】
請求項4に記載された発明によれば、前記接着剤が、予め、導電性支持体に塗布されているので、導電性支持体と電気抵抗調整層との界面全面にわたり容易に接着することができる。
【0032】
請求項5に記載された発明によれば、前記導電性支持体の表面が粗面化処理されているので、より強固に導電性支持体と電気抵抗調整層とを接着することができる。
【0033】
請求項6に記載された発明によれば、前記導電性支持体と前記空隙保持部材とが前記接着剤で固定されているので、接着剤の二度塗りを避けて容易に空隙保持部材を導電性支持体に接着固定することができる。
【0034】
請求項7に記載された発明によれば、前記空隙保持部材の接着面が、予め、活性ガスで表面処理されているので、前記導電性支持体と前記空隙保持部材とをより強固に接着することができる。
【0035】
請求項8に記載された発明によれば、前記空隙保持部材の外周面が像担持体と当接したときに、該像担持体の外周面と前記導電性部材の外周面との間に一定間隔の空隙が形成されるように、前記電気抵抗調整層の外周面に対する前記空隙保持部材の外周面の高低差が設けられているので、像担持体との間の空隙を精度良く一定に保つことができ、しかも、空隙保持部材が配置されている電気抵抗調整層が環境変動で寸法変化しても、電気抵抗調整層の変化に追従することができ、そのために、空隙変動を抑えることができる。
【0036】
請求項9に記載された発明によれば、前記電気抵抗調整層の外周面に対する前記空隙保持部材の外周面の高低差が、前記導電性支持体上に設置された該空隙保持部材の外周面と前記導電性支持体上に設置された該電気抵抗調整層の外周面とに施された切削加工、研削加工等の除去加工による一体加工で形成されているので、該空隙保持部材と該電気抵抗調整層との高低差の形成を一体加工で行うことができ、そのために、像担持体の外周面と電気抵抗調整層の外周面との間に形成される空隙Gの変動(振れ)を小さくして空隙Gの精度をより高めることができる。
【0037】
請求項8,9に記載された発明によれば、前記電気抵抗調整層上にトナーの付着を防止する表面層が形成されているので、トナー固着性に優れた導電性部材が得られる。
【0038】
請求項10に記載された発明によれば、前記導電性部材が円筒形状であるので、該導電性部材を回転駆動させることができ、そのために、同一箇所からの連続放電を防止して通電ストレスによる表面の化学的劣化を低減することができ、よって、長寿化をはかることができる。
【0039】
請求項11に記載された発明によれば、導電性部材を帯電部材としたので、像担持体表面を非接触で帯電させることができ、そのために、帯電部材の汚れ等を防止すると共に、帯電部材を硬い材質で形成することにより高精度にすることができ、よって、帯電ムラを防止することができる。
【0040】
請求項12に記載された発明によれば、請求項11に記載の帯電部材が被帯電体上に近接配置されるように設けられたプロセスカートリッジとするので、長期に渡って安定した画質を得ることでき、且つ、交換もユーザメンテナンスが可能であり簡素化される。
【0041】
請求項13に記載された発明によれば、請求項12に記載のプロセスカートリッジを有する画像形成装置とするので、信頼性が高く、かつ、高画質な画像を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0043】
図1は、本発明の一実施の形態を示す導電性部材(帯電ローラ)の断面図である。図2は、本発明の一実施の形態を示す導電性部材(帯電ローラ)を形成する方法を示す説明図である。図3は、導電性部材(帯電ローラ)を像担持体上に配置した状態を示す模式図である。図4は、本発明の一実施の形態を示す画像形成装置の説明図である。
【0044】
図1において、10は、導電性部材(帯電ローラ)である。導電性部材(帯電ローラ)10は、導電性支持体1と、該導電性支持体1上に形成された電気抵抗調整層3と、該電気抵抗調整層3と像担持体(図3における6を参照。)が一定の空隙(図3におけるGを参照。)を保持するように該像担持体と当接して該電気抵抗調整層3の両端部に形成された空隙保持部材5,5と、を有している。そして、前記電気抵抗調整層3は導電性支持体1に接着剤2で固定されている。図1において、4は表面層である。
【0045】
このように、電気抵抗調整層3が導電性支持体1に接着剤2で固定されていると、導電性支持体1と電気抵抗調整層3と間の隙間の発生を防止すると共に、これに起因する電気抵抗調整層3の強度低下及び電気抵抗値の変動を防止することができ、それらのために、初期及び長期間にわたって使用しても、像担持体(図3における6を参照。)と導電性部材10との間に安定した空隙(図3におけるGを参照。)を維持して、像担持体の表面を均一に帯電させることができると共に、耐久性を向上させた導電性部材10を提供することができる。
【0046】
図3に示されているように、本発明の導電性部材(帯電部材)10は、像担持体6に任意の圧力で当接されて配置される。前記空隙保持部材5,5は、画像形成領域を外した非画像形成領域に形成されている。この状態で帯電部材に電圧を印加することにより、像担持体の帯電を行うことができる。導電性部材10を転写部材として使用する場合も、同様の形態で行うことができる。導電性部材10と像担持体6との間の空隙Gは、所定の値に保つ必要があり、好ましくは、100μm以下である。空隙Gが大きくなると、導電性部材10への電圧印加条件を高くする必要があるので、像担持体6の電気的劣化や異常放電が発生しやすくなる。
【0047】
前記接着剤2は、好ましくは、導電性接着剤である。そして、前記導電性接着剤は、例えば、金、銀、ニッケル及びカーボンから選ばれる導電性粒子を含有しているものである。かかる導電性接着剤のベース樹脂は、好ましくは、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂等がある。前記接着剤2は、一液性・二液性共に使用可能であり、特に限定されるものではないが、一液性のほうが作業性が高い。
【0048】
前記接着剤2が導電化されていない場合には、導電性部材10の抵抗上昇を招くので、使用時の帯電能力や転写能力が不足してしまう。したがって、前記接着剤2が導電性接着剤であると、導電性部材10の電気抵抗の上昇を防止することができる。
【0049】
前記接着剤2は、好ましくは、予め、導電性支持体1に塗布されている。このように、前記接着剤2が、予め、導電性支持体1に塗布されていると、導電性支持体1と電気抵抗調整層3との界面全面にわたり容易に接着することができる。したがって、かかる導電性部材10の製造段階において、また、かかる導電性部材10を長期間に渡って使用した際において、導電性支持体1と電気抵抗調整層3との剥離・隙間の発生を避けることができ、そのために、電気抵抗調整層3の強度低下及び電気抵抗値の変動が発生しなくなり、よって、使用時の機械的・電気的ストレス、及び、経時や環境での体積変動によるクラックが生じにくくなる。
【0050】
前記導電性支持体1の表面は、好ましくは、粗面化処理されている。このように、前記導電性支持体1の表面が粗面化処理されていると、粗面化表面と接着剤2とによる接着の相乗効果でより強固に導電性支持体1と電気抵抗調整層3とを接着することができる。粗面化処理としては、サンドブラスト処理、リン酸亜鉛処理等が挙げられる。
【0051】
前記導電性支持体1と前記空隙保持部材5,5とは、前記接着剤2で固定されている。このように、前記導電性支持体1と前記空隙保持部材5,5とが前記接着剤2で固定されていると、接着剤の二度塗りを避けて容易に空隙保持部材5,5を導電性支持体1に接着固定することができる。
【0052】
前記空隙保持部材5,5の接着面は、好ましくは、予め、活性ガスで表面処理されている。このように、前記空隙保持部材5,5の接着面が、予め、活性ガスで表面処理されていると、前記導電性支持体1と前記空隙保持部材5,5とをより強固に接着することができる。
【0053】
空隙保持部材5,5は、体積固有抵抗が1013Ω・cm以上の絶縁性の樹脂で構成されている。このような絶縁性の樹脂が必要となる理由は、像担持体との間に流れるショート電流の発生を無くすためである。空隙保持部材5,5に必要な特性は、像担持体6との空隙を環境及び長期(経時)に渡って安定して形成することであるので、空隙保持部材5,5を構成する材料としては、吸湿性及び耐摩耗性の小さい材料が好ましい。また、空隙保持部材5,5は、トナー及びトナー添加剤が付着しにくい像担持体6と当接して摺動するので、像担持体6を摩耗させないということも重要である。このような空隙保持部材5,5を構成する材料は、種々の条件に応じて適宜選択されるが、好ましくは、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリスチレン(PS)、ポリスチレン共重合体(AS、ABS)等の樹脂、或いは、PC、ポリウレタン、フッ素樹脂等の樹脂があげられる。本発明における空隙保持部材5,5は、このような樹脂を成型加工することにより成形される。
【0054】
本発明においては、電気抵抗調整層3の体積固有抵抗は、好ましくは、106 〜109 Ωcmである。電気抵抗調整層3の体積固有抵抗が109 Ωcmを越えると、帯電能力や転写能力が不足してしまい、また、電気抵抗調整層3の体積固有抵抗が106 未満であると、像担持体6全体への電圧集中によるリークが生じてしまう。しかしながら、本発明のように、電気抵抗調整層3の体積固有抵抗が106 〜109 Ωcmであると、十分な帯電能力及び転写能力を確保することができると共に、像担持体6への電力集中による異常放電の発生を防止することができ、それらのために、均一画像が得られる。
【0055】
電気抵抗調整層3に用いられる樹脂は、特に限定されるものではないが、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリスチレン(PS)、ポリスチレン共重合体(AS、ABS)等の樹脂、或いは、PC、ポリウレタン、フッ素樹脂等の熱可塑性樹脂があげられる。これらの樹脂は、加工性が良いので好ましい。かかる樹脂に分散させる高分子型イオン導電材料としては、ポリエーテルエステルアミドを含有する高分子化合物が好ましい。ポリエーテルエステルアミドは、イオン導電性の高分子材料であるので、マトリックスポリマー中に分子レベルで均一に分散、固定化される。したがって、金属酸化物、カーボンブラック等の電子伝導系導電剤を分散した組成物に見られるような分散不良に伴う電気抵抗値のばらつきが生じない。また、ポリエーテルエステルアミドは、高分子材料であるので、ブリードアウトが生じ難い。電気抵抗値を所望の値にするためには、それらの配合量は、好ましくは、熱可塑性樹脂30〜70重量%、及び、高分子型イオン導電剤70〜30重量%である。このような樹脂で構成される電気抵抗調整層3の厚みは、好ましくは、100μm以上、500μm以下である。電気抵抗調整層3の厚みが100μm未満となると、薄すぎとなってリークによる異常放電が発生し、また、電気抵抗調整層3の厚みが500μmを越えると、厚すぎとなって表面精度の維持が困難となる。
【0056】
このような材料で構成される半導電性樹脂組成物は、各材料の混合物を二軸混練機、ニーダー等で溶融混練することによって、容易に製造できる。電気抵抗調整層3としての導電性支持体1上への形成は、押出成形や射出成形等の手段で導電性支持体1に前記半導電性樹脂組成物を被覆することによって、容易に行うことができる。導電性支持体1上に電気抵抗調整層3のみを形成して導電性部材10を構成すると、電気抵抗調整層3にトナー及びトナーの添加剤等が固着して性能低下する場合があるが、本発明においては、電気抵抗調整層3上に表面層4が形成されているので、トナー、及び、トナーに添加されている添加剤が長期に渡って導電性部材表面に付着することを防止することができる。
【0057】
図3に示されているように、本発明の導電性部材(帯電ローラ)10には、空隙保持部材5,5の外周面が像担持体6と当接したときに、該像担持体6の外周面と前記導電性部材10の外周面との間に一定間隔の空隙Gが形成されるように、前記電気抵抗調整層3の外周面に対する前記空隙保持部材5,5の外周面の高低差が設けられている。このように、空隙保持部材5,5の外周面が像担持体6と当接したときに、該像担持体6の外周面と電気抵抗調整層3の外周面との間に一定間隔の空隙Gが形成されるように、該電気抵抗調整層3の外周面に対する前記空隙保持部材5,5の外周面の高低差が設けられていると、像担持体6との間の空隙Gを精度良く一定に保つことができ、しかも、空隙保持部材5,5が配置されている電気抵抗調整層3が環境変動で寸法変化しても、電気抵抗調整層3の変化に追従することができ、そのために、空隙変動を抑えることができる。
【0058】
前記電気抵抗調整層3の外周面に対する前記空隙保持部材5,5の外周面の高低差は、図2に示されているように、前記導電性部材10上に設置された該空隙保持部材5,5の外周面と前記導電性支持体1上に設置された該電気抵抗調整層3の外周面とに施された切削加工、研削加工等の除去加工による一体加工で形成される。このように、前記電気抵抗調整層3の外周面に対する前記空隙保持部材5,5の外周面の高低差が、前記導電性部材10上に設置された該空隙保持部材5,5の外周面と前記導電性支持体1上に設置された該電気抵抗調整層3の外周面とに施された切削加工、研削加工等の除去加工による一体加工で形成されると、像担持体6の外周面と電気抵抗調整層3の外周面との間に形成される空隙Gの変動(振れ)を小さくして空隙Gの精度をより高めることができる。
【0059】
本発明においては、前記電気抵抗調整層3上にトナーの付着を防止する表面層4が形成されている。このように、前記電気抵抗調整層3上にトナーの付着を防止する表面層4が形成されていると、トナー固着性に優れた導電性部材10が得られる。
【0060】
本発明においては、表面層4の体積固有抵抗は、電気抵抗調整層3の体積固有抵抗より大きくされている。このように、表面層4の体積固有抵抗が電気抵抗調整層3の体積固有抵抗より大きくされていると、像担持体欠陥部への電圧集中及び異常放電の発生を防止することができる。但し、表面層4の電気抵抗値を高くしすぎると帯電能力や転写能力が不足してしまうので、表面層4と電気抵抗調整層3との電気抵抗値の差を103 以下にすることが好ましい。表面層4を形成する材料は、好ましくは、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル等の樹脂である。これらの樹脂は、非粘着性に優れているので、トナーの固着防止の面で好ましい。また、かかる樹脂は、電気的に絶縁性であるので、樹脂に対して各種導電材料を分散することによって表面層4の電気抵抗を調整することができる。表面層4の電気抵抗調整層3上への形成は、上記表面層4を構成する樹脂材料を有機溶媒に溶解して塗料を作製し、この塗料をスプレー塗装、ディッピング、ロールコート等の手段によって行う。表面層4の膜厚は、好ましくは、10〜30μmである。
【0061】
表面層4を構成する樹脂は、1液性及び2液性のどちらも使用可能であるが、硬化剤を併用する2液性塗料を使用すると、耐環境性、非粘着性を高めることができる。2液性塗料の場合には、塗膜を加熱することにより、樹脂を架橋・硬化させる方法が一般的である。しかしながら、電気抵抗調整層3は、熱可塑性樹脂とすると、高い温度で加熱することができない。2液性塗料としては、分子中に水酸基を有する主剤、及び、水酸基と架橋反応を起こすイソシアネート系樹脂を用いることが好ましい。イソシアネート系樹脂を用いると、100℃以下の比較的低温で架橋・硬化反応が起こる。本発明者らは、トナーの非粘着性から検討を進めた結果、シリコーン系樹脂でトナーの非粘着性が高い樹脂であることを確認し、特に、分子中にアクリル骨格を有するアクリルシリコーン樹脂が良好であることを見出した。
【0062】
導電性部材は、電気特性(電気抵抗値)が重要であるので、表面層4を導電性にする必要がある。導電性にした表面層4は、表面層4を構成する樹脂材料中に導電剤を分散することにより形成される。導電剤は、特に制約を受けるものではないが、ケッチェンブラックEC、アセチレンブラック等の導電性カーボン、SAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRF、FT、MT等のゴム用カーボン、酸化処理等を施したカラー用カーボン、熱分解カーボン、インジウムドープ酸化スズ(ITO)、酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛、銅、銀、ゲルマニウム等の金属、及び、金属酸化物、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン等の導電性ポリマーが挙げられる。また、導電性付与材としては、イオン導電性物質もあり、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸リチウム、過塩素酸カルシウム、塩化リチウム等の無機イオン性導電物質、更に、変性脂肪酸ジメチルアンモニウムエトサルファート、ステアリン酸アンモニウムアセテート、ラウリルアンモニウムアセテート等の有機イオン性導電性物質がある。
【0063】
本発明においては、前記導電性部材10が円筒形状である。このように、前記導電性部材10が円筒形状であと、該導電性部材10を回転駆動させることができ、そのために、同一箇所からの連続放電を防止して通電ストレスによる表面の化学的劣化を低減することができ、よって、長寿化をはかることができる。
【0064】
本発明においては、前記導電性部材10は、好ましくは、帯電部材とされる。このように、前記導電性部材10が帯電部材とされると、像担持体表面を非接触で帯電させることができ、そのために、帯電部材の汚れ等を防止すると共に、帯電部材を硬い材質で形成することにより高精度にすることができ、よって、帯電ムラを防止することができる。
【0065】
本発明においては、導電性部材10及び像担持体6の形状は特に限定されず、また、像担持体6は、ベルト状、円筒状いずれの形式もとることができる。導電性部材10は、断面円形状(円筒形状)、断面楕円形状、円筒形状を扁平にしたブレード形状等の種々の形状をとることができるが、ともに円筒形状であることが好ましい。両者が常に同一面で対向していると、通電ストレスによる表面の化学的劣化が生じてしまうが、両者を円筒形状として回転駆動させると、同一箇所からの連続放電を防止することができ、そのために、通電ストレスによる表面の化学的劣化を低減させることができる。例えば、図3に示すように、導電性部材10の回転方向は、像担持体6と同方向、逆方向どちらも選択することができる。また、像担持体6との周速差をつける(像担持体6より速く回転させる、遅く回転させる)ことも可能である。また、像担持体6の回転に対して、間欠回転させることも機能を損なわない範囲において可能である。導電性部材10と像担持体6と間の空隙Gは、所定の値に保つ必要があり、好ましくは、100μm以下である。空隙Gが大きくなると導電性部材10への電圧印加条件を高くする必要があり、像担持体6の電気的劣化や異常放電が発生しやすいためである。
【0066】
請求項1〜11のいずれかに記載された導電性部材10は、好ましくは、帯電部材とされる。このような導電材は、像担持体表面を非接触で帯電させることができ、そのために、帯電部材の汚れ等を防止すると共に、帯電部材を硬い材質で形成することにより高精度にすることができ、よって、帯電ムラを防止することができる。
【0067】
請求項12に記載の導電性部材(帯電部材)10は、被帯電体上に近接配置されるように設けられた着脱可能なプロセスカートリッジ(図5における110を参照。)とする。このように、請求項12に記載の導電性部材(帯電部材)10が被帯電体上に近接配置されるように設けられたプロセスカートリッジとすると、長期に渡って安定した画質を得ることができ、且つ、交換もユーザメンテナンスが可能であり簡素化される。
【0068】
本発明においては、請求項13に記載のプロセスカートリッジ(図5における110を参照。)を有する画像形成装置とする。このように、請求項13に記載のプロセスカートリッジを有する画像形成装置とすると、信頼性が高く、かつ、高画質な画像を得ることができる。
【0069】
図4に示すように、本発明の画像形成装置においては、装置本体内の下部に給紙部22、その上方に像担持体6を有する作像部、及び、さらにその上方に排紙部となる対の排紙ローラ26,27をそれぞれ設けて、給紙部22から給紙した転写紙Pの左側の面に対応する作像部で画像を形成し、そして、その転写紙Pを排紙ローラ26,27によりビントレイ20あるいは排紙トレイ21に排出するようにしている。給紙部22には、上下2段にトレイ28,29が設けられていて、その各給紙段には給紙ローラ30がそれぞれ配設されている。23は書込みユニットであり、そこから像担持体6の一様に帯電された表面に光を照射して、そこに画像を書き込む。また、その像担持体6に対して転写紙搬送方向上流側には、転写紙のスキューを補正すると共に、像担持体6上の画像と転写紙の搬送タイミングを合わせるためのレジストローラ対13を設けている。
【0070】
さらに、像担持体6に対して転写紙搬送方向下流側には、定着ユニット25を設けている。作像部には、図4に示すように、前述した像担持体6が矢示A方向に回転可能に設けられており、その周囲には帯電装置(図5における102を参照。)と、その帯電装置により帯電された面に書込みユニット23により書込まれた像担持体6上の静電潜像を顕像化してトナー像とする現像装置(図5における104を参照。)と、そのトナー像を転写紙Pに転写する転写搬送ベルト7と、そのトナー像の転写後に像担持体6上に残った残留トナーを除去するクリーニング装置(図5における108を参照。)と、像担持体6上の不要な電荷を除電する除電ランプ(図示せず)とを、それぞれ配設している。この画像形成装置は、画像形成動作を開始させると、図4に示した像担持体6が矢印A方向に回転し、その表面が除電ランプにより除電されて基準電位に平均化される。次に、その像担持体6の表面は、帯電ローラ(図5における102を参照。)により一様に帯電され、その帯電面は、書込みユニット23から画像情報に応じた光の照射を受け、そこに静電潜像が形成される。その潜像は、像担持体6が矢示A方向に回転することにより現像装置(図5における104を参照。)の位置まで移動されると、そこで現像スリーブ(図示せず)によりトナーが付着されてトナー像(顕像)となる。
【0071】
一方、図4に示した給紙部22のトレイ28,29の何れかから給紙ローラ30により転写紙Pが給紙され、それがレジストローラ対13で一旦停止されて、その転写紙Pの先端と像担持体6上の画像の先端とが一致する正確なタイミングで搬送され、その転写紙Pに転写搬送ベルト7により像担持体6上のトナー像が転写される。その転写紙Pは、転写搬送ベルト7により搬送され、駆動ローラ部7aで転写紙Pの腰による曲率分離で、その転写搬送ベルト7から分離されて、定着ユニット25へ搬送され、そこで熱と圧力が加えられることによりトナーが転写紙Pに融着され、それが指定された排紙場所、すなわち排紙トレイ21あるいはビントレイ20の何れかに排出される。その後、像担持体6上に残った残留トナーは、次工程であるクリーニング位置まで回転移動し、クリーニング装置のクリーニングブレード(図5における108を参照。)により掻き取られ、再び次の作像工程に移る。
【0072】
本実施の形態においては、導電性部材10を具体化した帯電ローラについて主として説明したが、本発明における導電性部材10は、本発明の目的に反しない限り、帯電ローラ以外の帯電部材、例えば、ブレードのようなものであってもかまわない。また、本発明の導電性部材10は、トナー担持体又は転写部材としてもかまわない。
【0073】
(実施例1)
ステンレスからなるストレート形状の外径8mmの棒状体の表面にサンドブラスト加工による粗面化処理を施した後に、一液性エポキシ樹脂系導電性接着剤(3301、スリーボンド社製)を塗布して導電性支持体(芯軸)とした。そして、ABS樹脂(デンカABS GR−0500、電気化学工業社製)50重量%、及び、ポリエーテルエステルアミド(IRGASTAT P18、チバスペシャリティケミカルズ社製)50重量%を配合して樹脂組成物(体積固有抵抗:2×108 Ωcm)とし、この樹脂組成物を前記導電性支持体に射出成形により被覆して電気抵抗調整層を形成した。次いで、高密度ポリエチレン樹脂(ノバテックHD HY540、日本ポリケム社製)からなるリング状の空隙保持部材の内表面、即ち、接着面にコロナ放電により表面処理を施し、この空隙保持部材を電気抵抗調整層の両端部に外挿して、空隙保持部材と導電性支持体とを導電性接着剤で接着した後、図2に示されるように、切削によって前記空隙保持部材の外径(最大径)を12.12mmとすると共に、前記抵抗調整層の外径を12.00mmとした。続いて、この電気抵抗調整層の表面に、アクリルシリコーン樹脂(3000VH−P、川上塗料社製)、イソシアネート系硬化剤、及び、カーボンブラック(全固形分に対して35重量%)からなる樹脂組成物(表面抵抗:2×109 Ω)により膜厚約10μmの表面層を形成し、焼成工程を経て、導電性部材を得た。
【0074】
(実施例2)
ステンレスからなるストレート形状の外径8mmの棒状体の表面にリン酸亜鉛処理による粗面化処理を施した後に、一液性変性ウレタン樹脂系導電性接着剤(3302B、スリーボンド社製)を塗布して導電性支持体(芯軸)とした。そして、ABS樹脂(デンカABS GR−0500、電気化学工業社製)50重量%、及び、ポリエーテルエステルアミド(IRGASTAT P18、チバスペシャリティケミカルズ社製)50重量%を配合して樹脂組成物(体積固有抵抗:2×108 Ωcm)とし、この樹脂組成物を前記導電性支持体に射出成形により被覆して電気抵抗調整層を形成した。次いで、高密度ポリエチレン樹脂(ノバテックHD HY540、日本ポリケム社製)からなるリング状の空隙保持部材の内表面、即ち、接着面に酸素ガスのプラズマ照射により表面処理を施し、この空隙保持部材を電気抵抗調整層の両端部に外挿して、空隙保持部材と導電性支持体とを導電性接着剤で接着した後、図2に示されるように、切削によって前記空隙保持部材の外径(最大径)を12.12mmとすると共に、前記抵抗調整層の外径を12.00mmとした。続いて、この電気抵抗調整層の表面に、アクリルシリコーン樹脂(3000VH−P、川上塗料社製)、イソシアネート系硬化剤、及び、カーボンブラック(全固形分に対して35重量%)からなる樹脂組成物(表面抵抗:2×109 Ω)により膜厚約10μmの表面層を形成し、焼成工程を経て、導電性部材を得た。
【0075】
(実施例3)
ステンレスからなるストレート形状の外径8mmの棒状体の表面にサンドブラスト加工による粗面化処理を施した後に、一液性シリコーン樹脂系導電性接着剤(3303E、スリーボンド社製)を塗布して導電性支持体(芯軸)とした。そして、ABS樹脂(デンカABS GR−0500、電気化学工業社製)50重量%、及び、ポリエーテルエステルアミド(IRGASTAT P18、チバスペシャリティケミカルズ社製)50重量%を配合して樹脂組成物(体積固有抵抗:2×108 Ωcm)とし、この樹脂組成物を前記導電性支持体に射出成形により被覆して電気抵抗調整層を形成した。次いで、高密度ポリエチレン樹脂(ノバテックHD HY540、日本ポリケム社製)からなるリング状の空隙保持部材の内表面、即ち、接着面にUVオゾン照射により表面処理を施し、この空隙保持部材を電気抵抗調整層の両端部に外挿して、空隙保持部材と導電性支持体とを導電性接着剤で接着した後、図2に示されるように、切削によって前記空隙保持部材の外径(最大径)を12.12mmとすると共に、電気抵抗調整層の外径を12.00mmとした。続いて、この電気抵抗調整層の表面に、アクリルシリコーン樹脂(3000VH−P、川上塗料社製)、イソシアネート系硬化剤、及び、カーボンブラック(全固形分に対して35重量%)からなる樹脂組成物(表面抵抗:2×109 Ω)により膜厚約10μmの表面層を形成し、焼成工程を経て、導電性部材を得た。
【0076】
(実施例4)
ステンレスからなるストレート形状の外径8mmの棒状体の表面にリン酸亜鉛処理による粗面化処理を施した後に、二液性エポキシ樹脂系導電性接着剤(3380B、スリーボンド社製)を塗布して導電性支持体(芯軸)とした以外は、実施例1と同様にして導電性部材を得た。
【0077】
(実施例5)
ステンレスからなるストレート形状の外径8mmの棒状体の表面にリン酸亜鉛処理による粗面化処理を施した後に、一液性エポキシ樹脂系導電性接着剤(3301、スリーボンド社製)を塗布して導電性支持体(芯軸)とした。そして、ABS樹脂(デンカABS GR−0500、電気化学工業社製)50重量%、及び、ポリエーテルエステルアミド(IRGASTAT P18、チバスペシャリティケミカルズ社製)50重量%を配合して樹脂組成物(体積固有抵抗:2×108 Ωcm)とし、この樹脂組成物を前記導電性支持体に射出成形により被覆して電気抵抗調整層を形成した。次いで、高密度ポリエチレン樹脂(ノバテックHD HY540、日本ポリケム社製)からなるリング状の空隙保持部材の内表面、即ち、接着面に酸素ガスプラズマ照射により表面処理を施し、この空隙保持部材を電気抵抗調整層の両端部に外挿して、空隙保持部材と導電性支持体とを導電性接着剤で接着した後、図2に示されるように、切削によって前記空隙保持部材の外径(最大径)を12.12mmとすると共に、電気抵抗調整層の外径を12.00mmとした。続いて、この電気抵抗調整層の表面に、アクリルシリコーン樹脂(3000VH−P、川上塗料社製)、イソシアネート系硬化剤、及び、カーボンブラック(全固形分に対して35重量%)からなる樹脂組成物(表面抵抗:2×109 Ω)により膜厚約10μmの表面層を形成し、焼成工程を経て、導電性部材を得た。
【0078】
(比較例1)
エピクロルヒドリンゴム(エピクロマーCG、ダイソー社製)100重量部及び過塩素酸アンモニウム3重量部を配合してゴム組成物(体積固有抵抗:4×108 Ωcm)とし、このゴム組成物をステンレスからなる外径8mmの導電性支持体(芯軸)に押出成形により被覆してゴム被覆層を形成した後、このゴム被覆層に加硫処理を処理を施し、続いて、この加硫処理を施したゴム被覆層を研削により外径12mmに仕上げて電気抵抗調整層を形成した。この電気抵抗調整層の表面に、ポリビニルブチラール樹脂(デンカブチラール3000−K、電気化学工業社製)、イソシアネート系硬化剤、及び、酸化スズ(全固形分に対して60重量%)からなる樹脂組成物(表面固有抵抗:4×1010Ω)により、膜厚10μmの表面層を形成した。そして、この両端部周囲に一液性エポキシ配合樹脂接着剤(2202、スリーボンド社製)により厚さ50μmのテープ状部材(ダイタックPF025−H、大日本インキ社製)を貼り付け、焼成工程を経て、導電性部材を得た。
【0079】
(比較例2)
ABS樹脂(デンカABS GR−0500、電気化学工業社製)50重量%、及び、四級アンモニウム塩基を含有するイオン導電性の高分子化合物(レオレックスAS−1720、第一工業製薬製)50重量%からなる樹脂組成物とし、この樹脂組成物をステンレスからなる外径8mmの導電性支持体(芯軸)に射出成形により被覆して電気抵抗調整層を形成した。そして、この電気抵抗調整層の両端部に、ポリアミド樹脂(ノバミッド1010C2、三菱エンジニアリングプラスチック社製)で構成されるリング状の空隙保持部材を挿入して、一液性エポキシ配合樹脂接着剤(2202スリーボンド社製)により、導電性支持体と電気抵抗調整層とを接着した後、図2に示すように、切削によって前記空隙保持部材の外径を12.12mmとすると共に、電気抵抗調整層の外径を12.00mmとした。次いで、この電気抵抗調整層の表面に、フッ素樹脂(ルミフロンLF−600、旭硝子社製)、イソシアネート系硬化剤、及び、酸化スズ(全固形分に対して60重量%)からなる樹脂組成物(表面固有抵抗:4×1010Ω)により、膜厚約10μmの表面層を形成し、焼成工程をを経て、導電性部材を得た。
【0080】
(比較例3)
ポリプロピレン樹脂(MA2、日本ポリケム社製)40重量部及び四級アンモニウム塩基を含有するイオン導電性の高分子化合物(レオレックスAS−1720、第一工業製薬社製)60重量部を配合して樹脂組成物とし、この樹脂組成物を外径8mmの導電性支持体(芯軸)に射出成形により被覆して電気抵抗調整層を形成した。そして、この電気抵抗調整層の両端部に、ポリアミド樹脂(ノバミッド1010C2、三菱エンジニアリングプラスチック社製)で構成されるリング状の空隙保持部材を挿入して、合成ゴム系接着剤(1521、スリーボンド社製)により、導電性支持体と電気抵抗調整層とを接着した後、図2に示すように、切削によって前記空隙保持部材の外径を12.12mmとすると共に、電気抵抗調整層の外径を12.00mmとした。次いで、この電気抵抗調整層の表面に、フッ素樹脂(ルミフロンLF−600、旭硝子社製)、イソシアネート系硬化剤、及び、酸化スズ(全固形分に対して60重量%)からなる樹脂組成物(表面固有抵抗:4×1010Ω)により、膜厚約10μmの表面層を形成し、焼成工程をを経て、導電性部材を得た。
【0081】
(比較例4)
ABS樹脂(デンカABS GR−1500、電気化学工業社製)100重量に導電性カーボンブラック(ケッチェンブラックEC、ケッチェンブラックインターナショナル社製)20重量部を配合して樹脂組成物とし、この樹脂組成物をステンレスからなる外径8mmの導電性支持体(芯軸)に射出成形により被覆して電気抵抗調整層を形成した。そして、この電気抵抗調整層の両端部に、ポリアミド樹脂(ノバミッド1010C2、三菱エンジニアリングプラスチック社製)で構成されるリング状の空隙保持部材を挿入して、一液性エポキシ配合樹脂接着剤(2202スリーボンド社製)により、導電性支持体と電気抵抗調整層とを接着した後、図2に示すように、切削によって前記空隙保持部材の外径を12.12mmとすると共に、電気抵抗調整層の外径を12.00mmとした。次いで、この電気抵抗調整層の表面に、フッ素樹脂(ルミフロンLF−600、旭硝子社製)、イソシアネート系硬化剤、及び、酸化スズ(全固形分に対して60重量%)からなる樹脂組成物(表面固有抵抗:2×1010Ω)により、膜厚約10μmの表面層を形成し、焼成工程をを経て、導電性部材を得た。
【0082】
以上、実施例1〜4では、製造段階において、全項目で電気抵抗調整層の回転、空隙保持部材と電気抵抗調整層との間の隙間の発生等の不具合がなかったが、比較例1〜4では、外径切削加工時に電気抵抗調整層が回転して、芯金との間に位置ズレ及び隙間が発生した。また、空隙保持部材の回転、脱離も発生した。
【0083】
(試験1)
実施例1〜4及び比較例1〜4で得た導電性部材を、帯電部材として、画像形成装置(図5を参照。)に搭載して、300000枚の複写を行うことにより、ローラワレ又は微細クラックが発生するまでの耐久枚数を調べた。帯電ローラに印加する電圧は、DC=−800V、AC=2400Vpp(周波数=2KHz)とした。そして、評価環境は、23℃、60%RHとした。評価結果は、次の表1に示される。但し、表1における評価の基準は、
OK:実用上問題がない
NG:実用上問題がある
とした。
【0084】
【表1】

【0085】
表1を見ると、次のことがわかる。即ち、実施例1〜4のローラは、300000枚の複写でワレが発生しなかったが、比較例1〜4のローラは、ワレが発生した。
【0086】
(試験2)
実施例1〜4及び比較例1〜4で得た導電性部材を、帯電部材として、画像形成装置(図5を参照。)に搭載して、100000枚の複写を行うことにより、画像評価を行った。その際、帯電ローラに印加する電圧は、DC=−800V、AC=2400Vpp(周波数=2KHz)とした。そして、評価環境は、23℃、60%RHとした。評価結果は、次の表2に示される。
【0087】
【表2】

【0088】
表2を見ると、次のことがわかる。即ち、実施例1〜4のローラは、全項目で良好な結果が得られたが、比較例1〜4のローラは、不具合が見られた。
【0089】
(試験3)
前記試験2と同様に、図5に示す画像形成装置を使用して、感光体の帯電電位及び画像評価を行った。その際、帯電ローラに印加する電圧は、DC=−800V、AC=2400Vpp(周波数=2KHz)とした。そして、評価環境は、10℃15%RH、及び、23℃60%RHとした。評価結果は、次の表3,4に示される。
【0090】
【表3】

【0091】
【表4】

【0092】
表3,4を見ると、次のことがわかる。即ち、実施例1〜4のローラは、10℃15%RH、及び、23℃60%RHの各環境下で良好な結果が得られたが、比較例1〜4のローラは、低温低湿時、高温高湿時に画像上の不具合が見られた。特に、比較例1〜4のローラは、高温高湿において芯金と電気抵抗調整層の位置ズレ及び隙間が発生した。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の一実施の形態を示す導電性部材(帯電ローラ)の断面図である。
【図2】本発明の一実施の形態を示す導電性部材(帯電ローラ)を形成する方法を示す説明図である。
【図3】導電性部材(帯電ローラ)を像担持体上に配置した状態を示す模式図である。
【図4】本発明の一実施の形態を示す画像形成装置の説明図である。
【図5】従来の帯電ローラを有する電子写真方式の画像形成装置の説明図である。
【図6】従来の導電性部材(帯電ローラ)断面図である。
【符号の説明】
【0094】
1 導電性支持体
2 接着剤
3 電気抵抗調整層
4 表面層
5 空隙保持部材
6 像担持体
G 空隙
10 導電性部材(帯電ローラ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体と、該導電性支持体上に形成された電気抵抗調整層と、該電気抵抗調整層と像担持体が一定の空隙を保持するように該像担持体と当接して該電気抵抗調整層の両端部に形成された空隙保持部材と、を有する導電性部材において、前記電気抵抗調整層が導電性支持体に接着剤で固定されていることを特徴とする導電性部材。
【請求項2】
前記接着剤が導電性接着剤であることを特徴とする請求項1に記載の導電性部材。
【請求項3】
前記導電性接着剤が金、銀、ニッケル及びカーボンから選ばれる導電性粒子を含有していることを特徴とする請求項2に記載の導電性部材。
【請求項4】
前記接着剤が、予め、導電性支持体に塗布されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項5】
前記導電性支持体の表面が粗面化処理されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項6】
前記導電性支持体と前記空隙保持部材とが、前記接着剤で固定されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項7】
前記空隙保持部材の接着面が、予め、活性ガスで表面処理されていることを特徴とする請求項6に記載の導電性部材。
【請求項8】
前記空隙保持部材の外周面が像担持体と当接したときに、該像担持体の外周面と前記導電性部材の外周面との間に一定間隔の空隙が形成されるように、前記電気抵抗調整層の外周面に対する前記空隙保持部材の外周面の高低差が設けられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の導電性部材。
【請求項9】
前記電気抵抗調整層の外周面に対する前記空隙保持部材の外周面の高低差が、前記導電性支持体上に設置された該空隙保持部材の外周面と前記導電性支持体上に設置された該電気抵抗調整層の外周面とに施された切削加工、研削加工等の除去加工による一体加工で形成されていることを特徴とする請求項8に記載の導電性部材。
【請求項10】
前記電気抵抗調整層上にトナーの付着を防止する表面層が形成されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の導電性部材。
【請求項11】
前記表面層を構成する樹脂が、アクリルシリコン樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、及び、ポリビニルブチラール樹脂から選ばれる樹脂であることを特徴とする請求項10に記載の導電性部材。
【請求項12】
前記導電性部材が円筒形状であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項13】
導電性部材が帯電部材であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項14】
請求項13に記載の帯電部材が被帯電体上に近接配置されるように設けられていることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項15】
請求項14に記載のプロセスカートリッジを有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−350093(P2006−350093A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−177752(P2005−177752)
【出願日】平成17年6月17日(2005.6.17)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】