説明

導電性金属粒子とそれを用いた導電性樹脂組成物及び導電性接着剤

【課題】液状樹脂中に均一に分散し、固定することで優れた電気導電性を確保しうる導電性金属粒子と、それを用いた樹脂・金属分散系の導電性組成物および導電性接着剤を提供する。
【解決手段】その表面がビニル樹脂又はビニルエステルからなる樹脂成分(C)によって実質的に被覆されている導電性金属粒子であって、金属原料となる金属塩化合物(A)を、上記樹脂成分(C)とともに、還元剤および溶剤として機能する多価アルコール又はその誘導体(B)と共存させながら、加熱条件下で還元させて形成させることを特徴とする導電性金属粒子などにより提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性金属粒子とそれを用いた導電性樹脂組成物および導電性接着剤に関し、さらに詳しくは、液状樹脂に均一に分散し、固定することで優れた電気導電性を確保しうる導電性金属粒子、及びそれを用いた樹脂・金属分散系の導電性樹脂組成物、さらには導電性接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のエレクトロニクス技術の著しい発展に伴い、電子・電気用途の導電性接着剤は、高機能化を求められている。例えば、チップ抵抗、チップコンデンサー、機能性部品などの接着には、これまで鉛はんだや鉛フリーはんだが主に用いられていたが、最近ではこれらに代わり金属粒子を含む導電性組成物(導電性接着剤)が用いられるようになってきた。また、IC、LEDをはじめとする半導体素子の基板への接着においても、これらの導電性接着剤が主流になっている。
【0003】
これら導電性接着剤は、はんだに比べて低温での接着が可能なこと、不可逆化学反応により接着温度(硬化温度)以上の耐熱性を持つこと、鉛などの環境負荷・人体への有害物質を含まないこと、作業性が良いこと、さらにリサイクルが容易であることから今後ますます需要拡大が見込まれる材料である。
【0004】
しかし、導電性接着剤は、鉛はんだ、鉛フリーはんだに代表される材料における金属結合とは異なり、樹脂バインダー中に金属粒子が分散された、いわゆる有機・無機混合硬化系であるため、電気伝導性・熱伝導性などの金属結合がもつ特性を代替することが難しく、現在鋭意開発が進められているところである。
【0005】
前記の各種特性を具備する導電性接着剤を製造するために、銀粉や金粉などの金属粉末を樹脂バインダー中に高重量充填する方法(例えば、特許文献1、2参照)、また、ナノパウダーなどの微細な金属粉末を樹脂バインダー中に高分散させる方法(例えば、特許文献3、4参照)、さらには、はんだボールや複合融着型金属粒子を樹脂バインダー中に分散させることで、金属粒子同士を熱融着させることにより電気特性・熱特性を確保しようとする方法(例えば、特許文献5、6参照)などが提案されている。
【0006】
しかし、銀粉や金粉などの金属粉末を樹脂バインダー中に高重量充填する方法では、金属粉末が増えることで樹脂バインダーの含有量が相対的に減ることになり、電気抵抗・熱抵抗は良くなるものの、ペースト粘度の上昇に伴い作業性・接着性・耐熱性の著しい劣化を招いてしまう。
【0007】
また、ナノパウダーなどの微細な金属粉末を樹脂バインダー中に高分散させる方法では、ナノパウダーの低温焼結を助長させて導電回路を確保するが、ナノパウダーが凝集しやすく、かつ低温焼結した金属膜強度が必ずしも強くないことから、保存安定性、接着力及び厚膜特性(硬化・焼結後のクラック)が十分ではないことが指摘されている。
【0008】
さらに、はんだボールや複合融着型粒子を樹脂バインダー中に分散させる方法は、Ag・Sn・In・Bi・Cu・Niなどの金属を適宜選択し融点調整を行い、複合粒子化する試みも行われているが、加熱による粒子表面の酸化、融点相の変化等によりヒートサイクル時に金属間でクラック等が発生し、長期間の安定した熱・電気の接合を確保することが難しいという問題がある。
【0009】
さらに、樹脂バインダー中に金属粉末を分散させた分散混合系の組成物(ペースト状)では、表面の極性や滑り性、および見かけの比重の減少が難しく、前記組成物中で金属粒子が分離、沈降して凝集するという問題がある。
【0010】
アンモニア、ヒドラジン、硝酸などで金属塩を還元し金属粉末を作る方法も知られている(例えば、特許文献7参照)。この方法は、硝酸銀水溶液を適宜希釈し、濃アンモニア水、抱水ヒドラジン溶液等の還元剤を温度と反応速度を考慮し滴下することで硝酸銀を還元し、デカンテーション後、銀を沈降分離する方法である。これにより得られる銀粉末の形状は、球状であるため、該粉末をボールミルに入れて解砕・研磨することにより、微細(〜20μm程度)の鱗片状の銀粉末に加工している。
【0011】
このように、金属粉末が球状である場合は、該粉末をボールミルなどで機械的に粉砕、圧縮、研磨、あるいは叩くことにより、例えば鱗片状(フレーク状)、デンドライト状(樹枝)に加工しなければならない。この場合、金属粉末の割れや展性・延性を制御し、かつ凝集を防ぐために、粒子の周りにアラビアゴムやタンニンなどの物質、又はステアリン酸、オレイン酸などの硬脂酸(不飽和高級カルボン酸)、ステアリン酸ナトリウムやステアリン酸カリウムなどの硬脂酸・脂肪酸エステル・脂肪酸塩をコート(被覆)する必要がある。これらの物質は比表面積が比較的大きく且つ単分子膜が作りやすい上、極めて安定に金属表面をコートできるためである。
このコートの重要な目的は、金属粉末同士の凝集を防ぎ、樹脂バインダー中での金属粉末の分散性向上と見かけ比重の低減(沈降防止)にあり、この操作を避けて行うことは困難である。
【0012】
ところが、コート材は、球状、鱗片状やデンドライト状の金属粉末が得られた後も強固な絶縁膜として存在するので、バインダー硬化時または硬化後にこれらの膜を完全に除去することは甚だ困難であることから、この欠点を解決する金属粉末はこれまで得られていない。
【0013】
それだけではなく、アンモニア、ヒドラジン、あるいは硝酸などの還元物質を用いた場合には、酸根やアンモニア根を中和洗浄する必要もあり、加えて、アラビアゴム、タンニン、硬脂酸・脂肪酸エステル・脂肪酸塩を用いた場合には、それ自体が熱・電気の不良導体であること、イオウ、ナトリウム、あるいはカリウムなどの微量金属も含まれていることから電子・電気材料として好ましくない影響を及ぼすことが知られている。
【0014】
金属粉末からコート材を高温加熱等の操作により除去した場合、使用工程で空気中の酸素や水分などが吸着することにより、金属表面の酸化が促進されたり、金属粉末同士の凝集が発生することも知られている。これは、コート材を使用しない場合も同様の問題がある。
【0015】
以上のことから理解されるように、球状以外の異形の金属粉末を作る場合、金属表面へのコートは不可欠であるものの、その加工処理を行うことによって電気伝導特性、熱伝導特性に及ぼす悪影響も混在していた。
【0016】
このような状況下、金属粉末表面の酸化を抑制し、金属粉末同士の凝集を発生させずに、樹脂バインダーに均一に分散できる電気伝導・熱伝導特性に優れた導電性組成物の出現が切望されていた。
【特許文献1】特開2003−234016号公報
【特許文献2】特開2002−265920号公報
【特許文献3】特開2003−309352号公報
【特許文献4】特開2002−299833号公報
【特許文献5】特開2001−298049号公報
【特許文献6】特開平10−249577号公報
【特許文献7】特開2001−64484号公報(実施例1、製造例1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点に鑑み、液状樹脂中に均一に分散し、固定することで優れた電気導電性を確保しうる導電性金属粒子及びそれを用いた樹脂・金属分散系の導電性樹脂組成物さらには導電性接着剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者は、上記従来の課題を解決するために鋭意研究を行った結果、金属原料となる金属塩化合物を特定の樹脂成分とともに、還元剤および溶剤として機能する特定の多価アルコール又はその誘導体と共存させながら、加熱条件下で還元させることにより、アンモニア、ヒドラジン、あるいは硝酸などを使用せず、さらに、いわゆる分散剤としてのアラビアゴムやタンニンなどの不純物の混在要因になる物質や、ステアリン酸やオレイン酸などの高級脂肪酸(硬脂酸)を用いることなく、溶液中で分散性のよい非球状の金属粉末を作成することができ、加えて、これらの金属粉末を特定の樹脂バインダー中に分散させることで、凝集、沈殿し分離することを防ぎ、有機・金属混合硬化物として硬化物中に金属粒子を均一かつ安定状態で分散させることができ、この結果、電気伝導・熱伝導に優れた組成物が得られることを見出して、本発明を完成させるに至った。
【0019】
本発明の第1の発明によれば、その表面がビニル樹脂又はビニルエステルからなる樹脂成分(C)によって実質的に被覆されている導電性金属粒子であって、金属原料となる金属塩化合物(A)を、上記樹脂成分(C)とともに、還元剤および溶剤として機能する多価アルコール又はその誘導体(B)と共存させながら、加熱条件下で還元させて形成させることを特徴とする導電性金属粒子が提供される。
【0020】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、金属塩化合物(A)が銀、銅、ニッケル、インジウムまたは錫から選ばれる一種以上の金属を含有する金属有機酸塩であることを特徴とする導電性金属粒子が提供される。
【0021】
また、本発明の第3の発明によれば、第1の発明において、金属粒子の形状が、球状、鱗片状、または棒状のいずれかであることを特徴とする導電性金属粒子が提供される。
【0022】
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3の発明のいずれかに係る導電性金属粒子が、樹脂バインダー(D)に均一に分散していることを特徴とする導電性樹脂組成物が提供される。
【0023】
また、本発明の第5の発明によれば、第4の発明において、樹脂バインダー(D)が、エポキシ樹脂であることを特徴とする導電性樹脂組成物が提供される。
【0024】
また、本発明の第6の発明によれば、第4の発明において、導電性金属粒子の含有量が、硬化後の組成物に対して0.01〜60体積%であることを特徴とする導電性樹脂組成物が提供される。
【0025】
さらに、本発明の第7の発明によれば、第4の発明において、さらに、前記以外の金属粒子、カーボン、またはグラファイトから選ばれる1種以上の導電性粉末を含むことを特徴とする導電性樹脂組成物が提供される。
【0026】
一方、本発明の第8の発明によれば、第4〜7のいずれかの発明の導電性樹脂組成物を用いてなる電子・電気部品用の導電性接着剤が提供される。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、多価アルコール又はその誘導体などの溶液中で金属を還元し、さらに溶液中で金属粒子保護膜を形成させることで、ステアリン酸、オレイン酸などの高級脂肪酸でコートすることなく粒子の分散性保護を可能にし、かつ球状以外の非球状すなわち異形の導電性金属粒子も得ることができる。加えて、機械的な粉末形状加工が不要で、樹脂バインダーと金属粉末とを大気中でロール混練などによって加圧・強制混合しないため、空気中の湿度や酸素に影響されることなく導電性組成物を作成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に、本発明の導電性金属粒子、それを用いた導電性樹脂組成物および導電性接着剤について、詳細に説明する。
【0029】
1.導電性金属粒子
本発明の導電性金属粒子は、その表面がビニル樹脂又はビニルエステルからなる樹脂成分(C)によって実質的に被覆されている導電性金属粒子であって、金属原料となる金属塩化合物(A)を、上記樹脂成分(C)とともに、還元剤および溶剤として機能する多価アルコール又はその誘導体(B)と共存させながら、加熱条件下で還元させて形成される。
【0030】
この導電性金属粒子は、銀、銅、ニッケル、インジウムあるいは錫などの金属粒子である。特に熱、電気的特性、耐酸化性に優れ、比較的容易に入手できる点で銀粉末が推奨される。これらの導電性粉末の充填材中には、ハロゲンイオン、金属イオンなどのイオン性不純物が実質的に含まれず、含まれていたとしても10ppm以下であることが望ましい。
【0031】
導電性金属粒子の形状は、特に限定されず、球状であるか、非球状、例えば鱗片状あるいは棒状などの異形である。特に好ましいのは、電気導電性が大きいことから鱗片状あるいは棒状などの異形である。
【0032】
(A)金属塩化合物
金属塩化合物は、本発明の導電性金属粒子の原料であり、例えば、硝酸銀、酢酸銀、硝酸銅、硫酸銅、酢酸銅、硝酸ニッケル、硫酸ニッケル、酢酸ニッケル、硝酸インジウム、硫酸インジウム、酢酸インジウム、硝酸錫、酢酸錫などの無機酸塩または有機酸塩が使用できる。ただし、無機酸塩はイオン性不純物の残留が懸念されることから、有機酸塩のほうが好ましい。
【0033】
有機酸塩を構成する有機酸基は、直鎖状でも分岐鎖状でも一部が環状であってもよいが、直鎖状であることが好ましい。例えば、蟻酸塩、酢酸塩、蓚酸塩、乳酸塩、マロン酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、グルタミン酸塩、クエン酸塩、サリチル酸塩などが挙げられ、中でも溶剤への溶解性が良く、取扱いが容易なことから蟻酸塩、酢酸塩が好ましい。
【0034】
(B)多価アルコール又はその誘導体
本発明において、多価アルコール又はその誘導体は、前記金属塩化合物を溶解させるとともに、濃度調整・反応調整(沸点調整)・金属還元する働きをする。
【0035】
多価アルコール又はその誘導体としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール等のエチレングリコール類;プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等のプロピレングリコール類;エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル等のエチレングリコールエーテル類;プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、ポリプロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のプロピレングリコールエーテル類;および蟻酸モノエステル、酪酸モノエステル、蟻酸ジエステル、酪酸ジエステル、プロピオン酸ジエステル等のメチレングリコールなどのグリコールエステルが挙げられる。
【0036】
これらの中でも、沸点が190〜250℃のもの、水酸基が1〜2個であるものが好ましい。特に好ましいのは、エチレングリコールである。上記多価アルコール又はその誘導体のうち、沸点が190℃未満の多価アルコール又はその誘導体には、室温での蒸気圧が高いので、作業中に蒸発するなどの問題があり、沸点が250℃を超えるものでは、硬化反応後に硬化物中に残留するか、硬化物中の耐熱温度を下げるなどの問題があり、いずれも好ましくない。
【0037】
(C)ビニル樹脂又はビニルエステル
ビニル樹脂又はビニルエステルは、金属表面の保護安定剤として機能する成分である。
【0038】
例えば、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリジノン、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸メチル、ポリビニルホルマールなどが挙げられ、その分子量Mwは50000以下が好ましい。この中で、特に好ましいのはポリビニルピロリジノンである。分子量Mwが50000を超えるものは、金属表面に薄い膜を形成しにくいので好ましくない。
【0039】
ビニル樹脂又はビニルエステルの使用量は、多価アルコール又はその誘導体の使用量に対して、0.01〜20重量%とすることが好ましい。0.01重量%よりも少ないと保護安定性が不足し、一方、20重量%よりも多くなると、金属表面に着く保護膜が厚くなる傾向にあるので好ましくない。
【0040】
金属表面に着く保護膜の膜厚は、特に制限されないが、0.01〜1μmであることが好ましい。0.01μmよりも薄いと樹脂バインダーへの分散性が悪化し、1μmよりも厚いと導電性が低下するので好ましくない。
【0041】
2.導電性金属粒子の製造方法
本発明の導電性金属粒子は、金属塩化合物(A)、およびビニル樹脂又はビニルエステル(C)を、多価アルコール又はその誘導体(B)と混合し、所定の温度に加熱し、金属塩化合物(A)を還元することで、導電性金属粒子を含む溶液として製造される。
【0042】
すなわち、加熱した多価アルコール又はその誘導体に金属塩化合物を加え、さらに特定の温度に加熱し、多価アルコール又はその誘導体中に還元された金属粒子を析出させ、これに溶液中でビニル樹脂又はビニルエステルの表面保護安定剤をコートして、導電性金属粒子を含む溶液が製造される。
【0043】
多価アルコール又はその誘導体の加熱温度、すなわち金属塩化合物の還元温度は、用いる原料の種類などによっても異なるが、通常、100〜200℃、好ましくは110〜190℃である。温度が100℃未満では、原料が十分に還元されず、200℃を超えると分解する場合があるので好ましくない。
【0044】
本発明の導電性金属粒子は、この方法で製造された導電性金属粒子を含む溶液から上澄みを分離することで得ることができる。分離手段は特に限定されず、遠心分離などを使用することができる。すなわち、導電性金属粒子を含む溶液を遠心分離し、例えば、アセトンとメタノールの混合溶剤で洗浄し、この遠心分離と洗浄を繰り返すことで、金属粒子が濃縮された混合液が得られる。得られた混合液は、後述するように、そのままで導電性組成物の成分とすることができるが、混合液から金属粒子のみを粉末状態で取り出すこともできる。
【0045】
金属粒子を粉末状態で取り出す場合は、純水とメタノールで当該溶液の洗浄を繰り返した後、減圧冷凍乾燥を行えば良い。洗浄剤は、例えば、純水とメタノール以外にもジメチルケトン、メチルエチルケトン、エタノール、イソプロパノールなどを使用できる。減圧冷凍乾燥の条件は、上記の溶剤および水が除去できる条件であれば特に限定されない。
【0046】
これにより得られる導電性金属粒子の形状は、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いた分析によって、球状以外の鱗片状、あるいは棒状などの非球状、すなわち異形であることが確認できる。この処理操作により、溶液から直接、導電性金属粒子が鱗片状あるいは棒状などの形状で得られることから、球状の場合に必要であった粉砕、叩くなどの機械的操作が不要となる。
【0047】
また、金属粒子のサイズは、使用するビニル化合物の種類、処理温度や時間などの条件によって異なるが、通常、鱗片状であれば、粒径0.1〜20μm、棒状であれば、幅0.1〜1μm、長さ1〜30μmである。特に好ましいのは、鱗片状であれば、粒径0.3〜10μm、棒状であれば、幅0.1〜0.8μm、長さ1〜20μmのものである。
【0048】
当業界では、これまで鱗片状、棒状などの金属粉末を使用することで、金属粒子間の接触面積や粒子間距離及び充填密度を向上できることは知られているが、前記の事情からコーティング剤を除去するか使用せず非球状の金属粒子を作成したり、使用することは困難であった。
【0049】
これに対し、本発明によれば、従来の還元法とは異なり、多価アルコール又はその誘導体の溶液中で金属を還元し、さらに溶液中で金属粒子保護膜を形成させることで導電性金属粒子を含む材料が得られ、ステアリン酸、オレイン酸、アラビアゴム、タンニンなどのコート無しに金属粒子の分散性保護を可能にし、かつ球状以外の粒子も形成し得る。
【0050】
加えて、機械的な粉末形状加工等による金属粉末の大気中での加圧・解砕・強制混合を伴わないため、空気中の湿度や酸素に影響されることなく求める金属粉末の作成が可能となることから、従来の問題を容易に解決することができる。
【0051】
3.導電性樹脂組成物
本発明の導電性樹脂組成物は、上記導電性金属粒子を樹脂バインダー(D)と混合し、必要により、溶剤やその他の添加剤、充填材を配合したものである。
【0052】
導電性金属粒子は、これが濃縮して含まれた混合液を樹脂バインダー中に分散させれば本発明の導電性樹脂組成物が得られる。金属粒子が混合液ではなく金属粉末の形態であれば、予めアルコールなどの溶剤に分散させ、更に樹脂バインダー中に分散後、必要に応じて溶剤を除去すればよい。
【0053】
本発明において、樹脂バインダーは、熱・光・UVなどのいずれかを作用させることで硬化し、かつ還元性の触媒あるいは還元反応による硬化物形成が可能な樹脂である。
具体的には、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル系樹脂、ポリイミド樹脂、アクリレート樹脂、フェノキシ樹脂などである。このうち、本発明では耐熱性、耐湿性、耐電気特性、接合強度、硬化特性の点で優れるエポキシ樹脂が好ましい。これらの樹脂は単一でも適宜混合して使用することもできる。
【0054】
エポキシ樹脂は、1分子中に1個以上のエポキシ基を有するものが好ましく、例えばビスフェノールA、ビスフェノールAD、ビスフェノールFなどである。また、カテコール、レゾルシンなどの多価フェノールまたはグリセリンやポリエチレングリコールのような多価アルコールとエピクロルヒドリンとを反応させて得られたポリグリシジルエーテル;p−オキシ安息香酸、β−オキシナフトエ酸のようなヒドロキシカルボン酸とエピクロルヒドリンとを反応させて得られたグリシジルエーテルエステル;あるいは、フタル酸、テレフタル酸のようなポリカルボン酸から得られるポリグリシジルエステル、さらには、ノボラック型エポキシやエポキシ化ポリオレフィンなどが挙げられる。これらは、単独で用いることもまた組み合わせて用いることもできる。
【0055】
樹脂バインダーが固体である場合は、溶剤に溶解して用いることができる。溶剤としては、例えば、エチルセロソルブアセテート、キシレン、ブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート、ジグライム、ノルマルメチルピロリジノンなどやテトラフェニルグリシジルエーテルメタン、トリフェニルグリシジルエーテルメタン、テトラフェニルグリシジルエーテルエタン等のグリシジルエーテル類、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエーテル、ダイマー酸グリシジルエステル、グリシジルエステル類のエポキシ基を有するものなどを使用することができる。
【0056】
本発明の用途を考慮すると、作業性の点から組成物中に硬化剤を含有し、エポキシ樹脂と硬化剤の反応を早めたり、硬化反応温度を低下させるような硬化促進剤を含ませた一液熱硬化型材料が好ましく、潜在硬化性を有していることが望ましい。潜在硬化型硬化剤・硬化促進剤を予め樹脂バインダー中に混合しておけば、外部からの熱・光・UVなどの条件付与により容易に導電性硬化物を形成することができる。これらの硬化剤や硬化促進剤は、加熱や電子線、あるいはその併用などにより速やかに硬化反応を生じることから、前記組成物中に混合しておき、硬化作用を行わせる時以外は室温よりも低い温度で保管することが望ましい。
【0057】
樹脂バインダーに使用される硬化剤または硬化促進剤は、1〜3級アミン、脂肪族ポリアミン、芳香族ポリアミン、ジシアンジアミド等、樹脂と速やかに硬化反応せしむるものであれば制限なく使用できる。
【0058】
潜在硬化型硬化剤または硬化促進剤は、通常固体であるが、加熱時に速やかに他の成分に溶解するものであればよい。例えばBis−フェノールA型エポキシ樹脂とポリアミンとを反応させエポキシ基をすべて消費させ残留アミノ基の活性水素をもつ内在アミンアダクト型硬化剤、ポリスチレン換算平均分子量が400〜4000のフェノールノボラック硬化剤およびその誘導体、N−フェニル尿素、N−ジメチル尿素、N−3−ニトロフェニル尿素、N−3−メトキシフェニル尿素などの尿素系硬化剤、炭素数3〜8の脂肪族ジカルボン酸とナイロン塩から合成されるポリアミン塩やジアリルメラミン等のメラミン誘導体、ジシアンジアミドと芳香族アミンから合成されるグアニジン化合物、アミンの活性水素基を別の基で置き換えたブロックタイプのアミン硬化剤、各種アミンをマイクロカプセル化したもの、ジエチレントリアミンなどをアルミノシリケート等に吸着させたモリキュラーレシーブなどが相当する。
【0059】
ただし、硬化に伴い酸素を発生するもの、水分等で遊離酸を生成するもの、鉄、アンチモン、鉛などを含む金属石鹸、ナトリウムやカリウムなどを含む塩、または鉛などを含む錯体は、電子・電気材料の特性および環境への問題を配慮すれば好ましくない。
【0060】
本発明における潜在硬化型硬化剤などは、熱化学反応によるものがより好ましい。光およびUVによる反応では、生成した金属粒子が外部からの光・UVの遮蔽物となり、低濃度・薄膜での金属生成の目的を除き、安定・均一の硬化や金属粒子の生成を促すことが困難な場合が生じる。
【0061】
これら以外に、本発明の目的を損なわず、保存安定性、硬化性、導電性に悪影響を及ぼさない範囲で、イミダゾール系、有機金属化合物などの硬化促進剤、トリアルコキシシラン、モノアルコキシチタネート等のシラン系、チタネート系のカップリング剤、酸化ケイ素、アルミナなどの沈降防止剤、アルキド樹脂、セルロ−ズなどのチクソトロフィー調整剤、アニオン、ノニオン系の界面活性剤、芳香族炭化水素や脂肪族炭化水素などの希釈剤を配合することもできる。
【0062】
フィラーとして、さらに前記以外の金属、カーボン、あるいはグラファイトから選ばれる1種以上の導電性粉末を含むことができる。これにより、本発明の導電性樹脂組成物は、追加されるフィラーの種類と量に応じて、様々な分野で幅広く使用できるものとなる。前記以外の金属とは、市販のフレーク状銀粉末などである。フィラーの粒径は、本発明の目的を損なわない限り、ナノ粒子径〜50μm径の範囲であれば自由に設定できる。
【0063】
本発明の導電性樹脂組成物は、上記樹脂バインダーに、導電性金属粒子を含む混合液、及び必要により各種添加剤を混合して調製される。この際、加熱することなく室温で短時間混合するだけで容易にペースト化することができる。必要であれば、30〜50℃に加熱し、0.1〜2時間混合してもよい。
【0064】
樹脂バインダーの含有量は、組成物全量に対して20体積%以上、好ましくは30〜60体積%とする。含有量が20体積%未満では、粘性が大きくなり対象物に対して良好な塗布を行うことができない。60体積%を超えると、粘性が低くなりすぎて流れ・ダレ・滲み等を生じ操作性が悪化する。特に好ましい樹脂バインダーの含有量は、40〜60体積%である。
【0065】
本発明の導電性金属粒子の含有量は、組成物が硬化して得られる硬化物中に、0.01〜60体積%となるようにする。金属粒子の含有量が0.01体積%よりも少ないと電気伝導性が悪化し、一方、60体積%を超えると、接着強度、塗布性、耐ヒートサイクル性が悪化するので好ましくない。なお、ここに記載した本発明の金属粒子の含有量は、前記フィラーを配合する場合でも同じである。
【0066】
4.導電性接着剤
本発明の導電性樹脂組成物は、電子・電気製品やその部品に対して幅広い用途があり、中でも導電性接着剤として好ましい特性を発揮する。
【0067】
すなわち、上記のようにして、樹脂バインダー中に非球状の微細な金属粒子を高細密混合できることから、印刷時やディスペンス時の目詰まりや粘度変化がなく、保存安定性が飛躍的に向上する。したがって、チップ、チップ部品、あるいは各種ICの接合に使用でき、それ以外にも、ファインピッチの印刷、スルーホールなどの流し込み、スピンコートも可能である。
【0068】
フィラーの含有量が上記範囲内で比較的少ない場合は、硬化物がほぼ透明であることから透明導電硬化物としても使える。金属粉末の含有量が少ないにも係らず、電気・熱の伝導が確保できることから、樹脂バインダーによる応力緩和性・接着性の特性も満足できる。
【0069】
本発明の導電性接着剤は、セラミック電子部品の基板などに1〜100μmの膜厚で塗布してから、例えば、チップ抵抗、チップコンデンサー、機能性部品などを載せ、加熱するか、光を照射することにより硬化させて接着することができる。
【0070】
導電性接着剤を加熱して接着する場合、温度条件などは樹脂バインダーの種類などにより異なるが、樹脂バインダーがエポキシ樹脂であれば、加熱温度を120〜200℃、加熱時間を40秒〜120分の範囲で調整することができる。
【0071】
いかなる理由によって、樹脂バインダー硬化物中の金属粒子間距離が縮まり、金属粒子が棒状の外観を呈するようになるかは、まだ完全には解明されていないが、本発明者は、樹脂バインダーのポリマー鎖が有する水酸基などの活性水素と金属粒子との間で一種のカップリング反応が起きて錯体が生じているものと推測している。
【実施例】
【0072】
以下に、実施例及び比較例を示して、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。
【0073】
なお、硬化物中の銀含有率、および銀を含んだ硬化物の特性は、下記の要領で評価した。判定基準で示す記号「◎」は使用に優れたもの、「○」は汎用の使用に供することができるもの、「△」は限定使用が可能なもの、「×」は使用に好ましくないものを表している。
【0074】
(1)銀含有率:銀を含んだ硬化物を砕き、硫酸と硝酸の混酸で分解後、KCNS標準液を用いた硫シアン酸塩滴定法(Volhard法)で測定した。
【0075】
(2)接着強度:1インチ角のアルミナ基板上に所定のペーストを10〜20μm厚で塗布し、1.5mm角ICチップを荷重10gでマウントした。所定条件で硬化後、プッシュプルゲージを用いてチップの水平方向剥離強度を測定した。
判定基準:◎ 50N以上、○ 30N〜50N未満、△ 10N〜30N未満、× 10N未満
【0076】
(3)熱時強度:上記のサンプルを260℃、20秒の熱板でダイヤルゲージを用いチップの水平方向剥離強度を測定した。
判定基準:◎ 30N以上、○ 10N〜30N未満、△ 5N〜10N未満、× 5N未満
【0077】
(4)電気伝導率:アルミナ基板上にAg/Pd焼成体で所定距離離れた対電極を形成し、この電極間を跨ぐ状態で当該樹脂組成物を硬化させた。硬化後、室温にてデジタルマルチメーター(アドバンテック(株))を用い、体積抵抗値を測定した。体積抵抗値と硬化物断面積・長さ(トキメック(株)、深さ厚み測定器)より、比抵抗値を算出した。
判定基準は、◎:3×10−4Ω・cm未満、○:3×10−4Ω・cm〜9×10−4Ω・cm未満、△:9×10−4Ω・cm〜5×10−3Ω・cm未満、×:5×10−3Ω・cm以上とした。
【0078】
(5)塗布性・分離確認:5ccの注射器に当該樹脂組成物(未硬化ペースト状)を10g充填し、0.25mmφのニードルをセットし、室温でディスペンサー(武蔵エンジニアリング(株) ML−500)を使用し、空気圧力0.8〜1.2kg/cm、0.25秒/打の条件でガラスエポキシ基板上に連続吐出させた。
組成物の分離やニードル詰まりにより塗布が不可能になるまでの時間を測定した。
判定基準:◎ 24時間以上、○ 12時間〜24時間未満、△ 6時間〜12時間未満、× 6時間未満
【0079】
(6)上記(2)で作成した硬化物サンプルを−55℃←→+125℃各30分/サイクルで熱衝撃試験機((株)タバイエスペック)に投入し、100サイクル後取り出し、室温でチップ接合強度を測定した。
判定基準:◎ 40N以上、○ 20N〜40N未満、△ 10N〜20N未満、× 10N未満
【0080】
(実施例1)
加圧密閉容器にエチレングリコール(関東化学(株)1級)を80ml入れ、160℃で40分加温した。この中へ、ポリビニルピロリジノン16g(関東化学(株)1級)と、硝酸銀(関東化学(株)1級)1.6gを溶解したエチレングリコール48mlを滴下した後、加圧密閉し、160℃でさらに90分間加熱攪拌したのち放冷させた。
放冷後、遠心分離機により上澄みを除去し、混合物を取り出し、本発明の導電性金属粒子を得た。銀粒子が混合液に濃縮されて含まれていることは、SEM(走査型電子顕微鏡)よって確認した。
次に、この混合物をビスフェノールA型エポキシ樹脂(Mw=380、JER)中に70重量%添加した後、メタノールを混合攪拌した。これを減圧蒸留装置に入れ、余剰のエチレングリコールを取り除いた。1液加熱硬化型バインダーの硬化剤は、m−クレゾールから合成されたノボラック樹脂(特開2001−64484に記載のポリスチレン換算平均分子量が2800の樹脂)を用い、前記エポキシ樹脂に対して50PHR加えた。
この混合物を自公転ミキサーに入れ、室温で3分攪拌した。さらに、少量のBCA(ブチルカルビトールアセテート)を入れ、粘度調整を行い、1液加熱硬化型の導電性樹脂組成物のサンプル(導電性ペースト)とした。
このサンプルをアルミナ基板上に塗布し、オーブン(大気中)で150℃×60分で硬化させ、導電性樹脂組成物の硬化サンプルとした。硬化物中の銀は、平均粒径0.5μm×5μmの棒状(ロッド状)であった。銀粉末の体積分率は21%であった。
【0081】
(実施例2)
実施例1で得られた導電性ペーストを用い、これにさらにフレーク状銀粉末(平均粒径4μm、福田金属箔粉工業(株)製)を加えて調整し、自公転ミキサーにより混合し、導電性樹脂組成物、金属体積分率29%(フレーク銀粉19%、ロッド銀粉10%)の硬化物を得た。
【0082】
(実施例3)
実施例1と同様に行い、金属粒子(濃縮された混合物)のエポキシ樹脂バインダーへの添加量を変え、導電性樹脂組成物を調製し、これを硬化させて金属体積分率0.05%の硬化物を得た。
【0083】
(実施例4)
実施例1と同様に行い、金属粒子(濃縮された混合物)のエポキシ樹脂バインダーへの添加量を変え、導電性樹脂組成物を調製し、これを硬化させて金属体積分率63%の硬化物を得た。
【0084】
(比較例1)
銀ナノ粉末を含むブチルカルビトール溶液(ナノ銀ペースト、日本ペイント(株)製)を調製し、これを実施例1と同様にアルミナ基板に塗布し、80℃→150℃→220℃と、窒素中で各30分加熱し、オーブン硬化しサンプルとした。硬化物中の金属体積分率は76%であった。原料組成と得られた硬化物の特性を表2に示す。
【0085】
(比較例2)
鱗片状銀粉末(平均粒径5μm、(株)徳力化学研究所製)を、実施例1のエポキシ樹脂バインダーに3本ロールを使用して強制分散させ、150℃→200℃と各30分、大気中で加熱し、オーブン硬化しサンプルとした。硬化物中の金属体積分率は36%であった。原料組成と得られた硬化物の特性を表2に示す。
【0086】
(比較例3)
In/Ag/Snの混合はんだ粉末(平均粒径20μm、千住金属(株)製)を85重量%、エポキシ樹脂バインダー中に自公転ミキサーを利用して分散させ、さらに2%のトリエタノールアミンをフラックスとして加えた。これを100℃→200℃→250℃と各30分、窒素中で加熱し、オーブン硬化しサンプルとした。硬化物中の金属体積分率は67%であった。原料組成と得られた硬化物の特性を表2に示す。
【0087】
(比較例4)
特許文献7に記載された方法で、硝酸銀水溶液に濃アンモニア水を添加した溶液に、ロジン・無水マレイン酸付加物とトリエタノールアミンの混合溶液を混合し、さらに抱水ヒドラジン溶液を滴下して、硝酸銀を還元した。これにより得られる銀粉末の形状は、球状であるため、該粉末をボールミルに入れて摩砕することにより、平均粒径2μmの鱗片状の銀粉末に加工した。
この鱗片状銀粉末を実施例1のエポキシ樹脂バインダーに3本ロールを使用して強制分散させ、150℃→200℃と各30分、大気中で加熱し、オーブン硬化しサンプルとした。硬化物中の金属体積分率は37%であった。原料組成と得られた硬化物の特性を表2に示す。
【0088】
【表1】

【0089】
【表2】

【0090】
「評価」
上記の実施例1〜4により、金属塩化合物の還元剤として多価アルコール又はその誘導体と、コート材としてのビニルエステルを含有する溶液中で生成した導電性金属粒子は、樹脂バインダーに均一に分散し、基板への塗布性が良好で、接着強度、熱時強度が大きく、電気伝導率、耐ヒートサイクル性にも優れることが分かる。
これに対して、従来技術である比較例1〜3は、銀ナノパウダー、鱗片状銀粉末、あるいは混合はんだ粉末を用いているので、基板への塗布性が悪いか、接着強度、あるいは電気伝導率のいずれかが不十分であることから導電性接着剤として利用できないことが分かる。また、比較例4は、金属塩化合物をアンモニアとヒドラジンで還元しているので、溶液中に球状の金属粒子が生成し、ボールミルによる摩砕が必要になった。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明によれば、電気伝導性・作業性・耐熱・耐湿性に優れ、金属粉末の凝集・分散・沈降を防ぎ得る導電性組成物が提供できる。この導電性組成物を用いた導電性接着剤は、電子・電気部品の接合、IC・LEDをはじめとする半導体の基材への接合、スルーホール・配線材料などに優れた特性を発揮することから、工業的価値は極めて大きい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その表面がビニル樹脂又はビニルエステルからなる樹脂成分(C)によって実質的に被覆されている導電性金属粒子であって、
金属原料となる金属塩化合物(A)を、上記樹脂成分(C)とともに、還元剤および溶剤として機能する多価アルコール又はその誘導体(B)と共存させながら、加熱条件下で還元させて形成させることを特徴とする導電性金属粒子。
【請求項2】
金属塩化合物(A)が、銀、銅、ニッケル、インジウムまたは錫から選ばれる一種以上の金属を含有する金属有機酸塩であることを特徴とする請求項1に記載の導電性金属粒子。
【請求項3】
金属粒子の形状が、球状、鱗片状または棒状のいずれかであることを特徴とする、請求項1に記載の導電性金属粒子。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の導電性金属粒子が、樹脂バインダー(D)に均一に分散していることを特徴とする導電性樹脂組成物。
【請求項5】
樹脂バインダー(D)が、エポキシ樹脂であることを特徴とする、請求項4に記載の導電性樹脂組成物。
【請求項6】
導電性金属粒子の含有量が、硬化後の組成物に対して0.01〜60体積%であることを特徴とする、請求項4に記載の導電性樹脂組成物。
【請求項7】
さらに、前記以外の金属粒子、カーボン、またはグラファイトから選ばれる1種以上の導電性粉末を含むことを特徴とする、請求項4に記載の導電性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項4〜7のいずれかに記載の導電性樹脂組成物を用いてなる電子・電気部品用の導電性接着剤。

【公開番号】特開2006−32165(P2006−32165A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−210433(P2004−210433)
【出願日】平成16年7月16日(2004.7.16)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【Fターム(参考)】