説明

少なくとも一つの誘電体層を含む電気部品の製造方法、及び少なくとも一つの誘電体層を含む電気部品

電気音響部品用の基板が供給されるステップと、前記基板に導電層が付けられるステップと、前記導電層が構造形成されるステップと、前記構造形成された導電層に非導電性層が付けられるステップと、前記非導電性層に基本となる金属被覆が施されるステップと、前記基本となる金属被覆は、電気分解処理法により厚くされて金属層が形成されるステップと、前記金属層が酸化され誘電体層が形成されるステップと、を含む電気音響部品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
請求項1に係る少なくとも一つの誘電体層を含む電気部品を製造する方法が詳述される。
【背景技術】
【0002】
広範囲の問題には、例えば、基板表面に1μmを超える厚い誘電体層を高い費用効率で生成することが含まれる。そのような層は、これまで、例えば蒸着処理、又はスパッタリング処理という手段によって基板上に生成されてきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、これらの処理はいずれも堆積率が制限される。そのため、例えばウェーハのような基板は、非常に長い時間、処理チェンバ内にあるため、処理は高価になる。例えばガイドバルク音響波(GBAW=guided bulk acoustic wave)で動作するデバイスのような、例えば電気音響デバイスの製造の際に、この問題が生じる。
【0004】
発明の一つの目的は、電気部品の製造の間に、高い費用効率で、基板上に厚い誘電体層を付けることができる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、誘電体層を含む電気部品を製造する方法により達成される。従属請求項は更なる方法の別形、及び電気音響部品にも関係する。
【0006】
基板上の誘電体層を含む電気部品を製造する方法の別形において、その方法は、方法ステップa)として基板に金属層を付けること、方法ステップb)として、金属層を酸化して誘電体層を形成し、金属層の少なくとも一つの部分領域はその層の厚さ全体にわたって十分に酸化されていること、を含む。
【0007】
この方法は、誘電体層の蒸着、又はスパッタリングのような既知の方法に対して、速くて費用効率の高い代替方法を構成する。発明に係る方法では、多くの基板が、据え付け状態(所謂バッチ処理)で、同時に処理され得る。そのような方法に適した据え付けにおいては、真空機器は必要でない。
【0008】
そのような処理の制御は、既知の処理よりも、簡単に構成できる。まず第一に、金属層が十分に酸化されているかどうかを、例えば光学的検査により、確認することが容易であり、第二に、処理は、これ以上酸化対象となる材料がなければ自動的に停止する。
【0009】
この方法のもう一つの利点は、このようにして生成された誘電体層の特性を酸化処理の処理パラメータにより制御できることである。その結果、金属層を付けた後においても、その層の特性はなお影響を受け得る。このことは、電気部品が、例えば、これまで誘電体層の対応する層厚設定により実施されてきた、例えば、GBAW部品のトリミングのような、精密な調整が必要とされる部品であるときに、特に有利である。音響トランスデューサの周波数位置が今まで通り酸化の前に測定されるならば、正確な周波数位置を達成するために必要な誘電体の組成を計算し、その後、対応する酸化の処理パラメータをセットアップすることができる。
【0010】
もう一つの方法の別形では、金属層の付着は、まず基板上に比較的薄い閉じたベース金属被覆が堆積され、その後この薄いベース金属被覆は、電気分解法により厚くされる。
【0011】
この方法の別形の一つの利点は、電気分解法により、非常に厚い金属層を高い費用効率で生成することができるということである。例えば蒸着のような費用のかかる方法が要求されるのは、非常に薄いスタート層に対してだけである。この方法のもう一つの利点は、従来の堆積法に比べてより低温で処理が進行することである。その結果、例えば、圧電性物質、及び/又はパイロ電気物質を含み得る基板は、割れの危険性が減少する結果、ローディングを著しく少なくし得る。この方法により、相当数のμm厚の層を生成することができる。
【0012】
好ましくは、金属層にはアルミニウムを含む材料が使用される。アルミニウム比率90%以上からなる材料の使用が好ましく、純粋アルミニウムの使用は更に好ましい。
【0013】
高い比率でアルミニウムを含む材料、又は金属アルミニウム自身は、共に、電気分解法により、非常に良好に厚くすることができ、酸化処理による酸化も良好になされ得るという利点を有する。この場合、相当数のμm厚の金属層が全体として十分に酸化され得るということも可能である。この場合、これらの層は、例えばウェーハ又はガラスのような基板上にも付けることができる。この場合において、この酸化処理は自由表面で始めることができ、その後、基板まで進行する。アルミニウムの更なる利点は、アルミニウム、すなわちAlは、例えばGBAW部品の誘電体層のような、電気部品の誘電体層に大変良く適しているということである。その一つの理由は、Al中での音響波の伝搬速度が大きく、それにより縦方向の音響波ガイド構造を可能にしているということである。もう一つの理由は、Alの熱伝導率が高いことであり、それにより、無駄に発生する熱を良く逃がすことができ、従って局所的な加熱を実質的に避けることができるという効果が生じる。
【0014】
もう一つの方法の別形は、方法ステップA)として、電気音響部品に対して基板を供給し、方法ステップB)として、その基板に導電層を付け、方法ステップC)として、導電層を構造形成し、方法ステップD)として、構造形成された導電層に非導電性層を付け、方法ステップE)として、非導電性層にベース金属被覆を付け、方法ステップF)として、電気分解法によりベース金属被覆を厚くして金属層を生成し、方法ステップG)として、金属層を酸化して誘電体層を生成することを含む。
【0015】
もう一つの別形では、方法ステップD)は、その直後に、引き続き非導電性層の処理を行ってもよい。この処理は層を平坦化することを含んでよいが、トリミング目的で局所的に層の厚さを変えることを含んでも良い。
【0016】
従って、方法ステップA)からG)までを含む方法を適用することにより、基板、構造形成された導電層、非導電性層、誘電体層という一連の層を含む電気部品を製造することができる。この場合、非導電性層は、酸化処理を使って生成された金属酸化物を含むことも考えられる。
【0017】
例として、方法ステップA)の基板には、LiNbO単結晶ウェーハ又はLiTaO単結晶ウェーハを使用することができる。
【0018】
方法ステップB)の導電層の付着は、例えば蒸着により実施することができる。この目的のために、例えばCu、Ag、Au、Pt、Ti、又はこれらの元素の組み合わせから選択された材料を使用することができる。
【0019】
方法ステップC)の導電層の構造形成は、例えばリフトオフ技法と組み合わせた写真技法を使って行われる。
【0020】
方法ステップD)の非導電性層に対しては、例えばSiO又はTeOが使用され得る。非導電性層は、例えばスパッタリング処理により付けられ得る。
【0021】
方法ステップE)のベース金属被覆は、例えば蒸着処理により実現され得る。
【0022】
ベース金属被覆、及び電気分解法により生成される金属層に対して、好ましくは、アルミニウム比率が90%以上の材料が使用される。
【0023】
方法ステップA)の基板に対しては、好ましくは圧電性材料が使用される。
【0024】
もう一つの方法の別形は、追加する方法ステップH)として、非導電性層の部分領域にレジストを塗布することを含む。この方法ステップは好ましくは方法ステップD)とE)の間で実行される。
【0025】
方法ステップH)によれば、まず、非導電性層の構造形成が可能になり、次に、部分領域しか覆わないが、非導電性層に更に一層を付けることができる。
【0026】
もう一つの方法の別形は、追加する方法ステップI)として、非導電性層の構造形成を含む。この方法ステップは、好ましくは方法ステップG)の後に実行される。方法ステップI)は、例えば、次に再び露出された導電層の領域への貫通メッキが実行され得るということを可能にする。この場合、方法ステップG)で生成される誘電体層はマスクとして役立ち得る。
【0027】
もう一つの方法の別形は、追加する方法ステップJ)として、表面にレジストを塗布することを含む。この方法ステップJ)は、好ましくは方法ステップG)の後に実行され、特に好ましくは方法ステップI)の後に実行される。例として、もし導電層の領域が方法ステップI)で露出された場合は、レジストが塗布された後、更に一層が表面の部分領域に付けられる。
【0028】
もう一つの方法の別形は、追加する方法ステップK)として、表面に接触層を付けることを含む。この方法ステップK)は、好ましくは方法ステップJ)の後に実行される。更なる方法ステップL)では、レジストと、その上に堆積された接触層は、その後、除去され得る。接触層は、それ以前にレジストで覆われていなかった領域に残る。接触層は、例えば導電層と電気的に接触した状態にあり得る。そして、例えば、後で、当該部品と電気接触するために役立ち得る。
【0029】
もう一つの方法の別形は、追加する方法ステップM)として、表面に電気絶縁カバー層を堆積することを含む。これは、電気絶縁だけでなく、更に、例えば環境上の影響に対して部品を保護するためにも役立ち得る。
【0030】
もう一つの方法の別形において、当該方法は、追加する方法ステップN)として、非導電性層の構造形成を含む。この方法ステップは、好ましくは方法ステップD)とE)の間で実行される。例として、構造形成された導電層の領域は、それによって再び露出され得る。方法ステップN)は方法ステップF)以前に実行されるという事実により、ベース金属被覆も露出された領域に付けられる。例として、導電層の領域がこの場合に関連し得る。
【0031】
もう一つの方法の別形は、追加する方法ステップO)として、金属層の部分領域にレジストを塗布することを含む。この方法ステップは、好ましくは方法ステップF)とG)との間で実行される。更なる方法ステップP)では、その後、金属層がエッチングされ得る。これは、例えば、湿式化学エッチングにより実行され得る。これにより、金属層は構造形成され得る。もし、方法ステップP)が方法ステップG)より前に実行されれば、当該層は酸化される前に構造形成される。
【0032】
もう一つの方法の別形は、追加する方法ステップQ)として、金属層に酸化レジストを塗布することを含む。この方法ステップは、好ましくは方法ステップF)の後で実行される。更なる方法ステップR)では、その後、金属層は選択的に酸化される。現発明に関連して、選択的酸化とは、例えば、先に酸化レジストによって保護された金属層の部分領域は酸化されないのに対して、他の保護されていない領域は完全に酸化されるということを意味すると理解されるべきである。現発明に関連して、完全な酸化とはある層がその厚さ全体において酸化されることを意味していると理解されるべきである。この方法の別形によれば、酸化された領域と金属領域の両方を含む層を生成することが可能になる。金属領域は、後に、例えば導電目的に使用できる。
【0033】
もう一つの方法の別形は、方法ステップR)の後に、次の方法ステップを含む。それらは、酸化レジストの除去、レジストの塗布、表面への接触層の堆積、レジスト上に堆積された接触層とともにレジストの除去、そしてまた、表面への電気絶縁カバー層の付着という各方法ステップである。これらの一連の方法ステップの結果、基板、構造形成された導電層、非導電性層、誘電体層、電気絶縁カバー層という一連の層を含み、また、対応する接触層の形態で必要な電気的接触を有する完成部品を製造することが可能である。
【0034】
もう一つの方法の別形は、方法ステップR)の後に、次の方法ステップを含む。それらは、酸化レジストの除去、及び酸化レジストの除去により露出された領域への接触層の付着という各ステップである。部品は、今、例えば接触層を経由して、回路基板に接続され得る(「フリップチップ」)。しかし、部品はまた、今や、その導電領域が、酸化レジストの除去によって同様に露出されたもう一つの部品に接続(「スタッキング」)されることも可能である。
【0035】
もう一つの方法の別形では、基板表面の一部は方法ステップG)の後、除去可能である。この場合、導電層で覆われた表面の反対側にある表面は除去される。それによって、基板の厚さは要望値に適合させることができる。基板の厚さは、例えば誘電体層の厚さと同じに設定することができる。
【0036】
誘電体層を含む電気部品を製造する方法に加えて誘電体層を含む電気部品も特定される。
【0037】
そのような電気部品は、例えば上記の方法の一つに従って製造することができる。
【0038】
当該部品は、例えばガイドバルク音響波で動作する部品(GBAW部品)であり得る。このような部品の場合、例として、導電層は次の元素、Cu、Ag、Au、Pt、Tiの1つを含むことができる。電気音響部品の基板は、例えばLiNbO又はLiTaOを含み得る。部品の非導電性層は、例えばSiO又はTeOを含み得る。
【0039】
電気音響部品の、ある層は、例えばAlを含む領域を有し得る。しかし、この層はまた、金属Alを含む領域をも有し得る。これらの金属Al領域は、例えば、導電層と電気的接触状態にあり得る。従って、当該部品の、ある層は、その部分領域に金属層、そして他の部分領域に誘電体層を含み得る。
【0040】
発明の特有の実施形態について、図を参照して以下でより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1a】異なる方法ステージにおける電気部品の概略図を示す。
【図1b】異なる方法ステージにおける電気部品の概略図を示す。
【図1c】異なる方法ステージにおける電気部品の概略図を示す。
【図1d】異なる方法ステージにおける電気部品の概略図を示す。
【図1e】異なる方法ステージにおける電気部品の概略図を示す。
【図1f】異なる方法ステージにおける電気部品の概略図を示す。
【図1g】異なる方法ステージにおける電気部品の概略図を示す。
【図2a】異なる方法ステージにおけるもう一つの電気部品の概略図を示す。
【図2b】異なる方法ステージにおけるもう一つの電気部品の概略図を示す。
【図2c】異なる方法ステージにおけるもう一つの電気部品の概略図を示す。
【図2d】異なる方法ステージにおけるもう一つの電気部品の概略図を示す。
【図2e】異なる方法ステージにおけるもう一つの電気部品の概略図を示す。
【図2f】異なる方法ステージにおけるもう一つの電気部品の概略図を示す。
【図2g】異なる方法ステージにおけるもう一つの電気部品の概略図を示す。
【図2h】異なる方法ステージにおけるもう一つの電気部品の概略図を示す。
【図2i】異なる方法ステージにおけるもう一つの電気部品の概略図を示す。
【図3a】電気部品の異なる実施形態の別形の概略図を示す。
【図3b】電気部品の異なる実施形態の別形の概略図を示す。
【図3c】電気部品の異なる実施形態の別形の概略図を示す。
【図4】電気部品の実施形態の概略図を示す。
【図5】電気部品のもう一つの実施形態の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1は電気部品の、ある実施形態の概略図を示す。この部品は、基板1、基板1上に配置された構造形成された導電層2、更に基板1上に配置された非導電性層3を含む。そのような電気部品は、例えば次の方法ステップ、すなわち、電気基板1を供給するステップ、その基板に導電層2を付けるステップ、導電層2に構造形成するステップ、及び構造形成された導電層2に非導電性層3を付けるステップにより得られる。
【0043】
この場合に、導電層2は構造形成されて電気音響トランスデューサを形成し得る。トランスデューサは、例えば、かみ合う櫛状電極を有し得る。この場合、各電極は細片型構造の導電層として実現され、音響波伝搬方向に直交して延伸する電極指を有し得る。導電層2は、更に、例えば音響反射体を有し得る。この場合、各反射体は例えば少なくとも一つの細片を有し得る。細片の幅は好ましくは波長の約1/4である。細片が複数の場合は、細片間の距離は、同様に波長の約1/4であり得る。トランスデューサは音響波の一方向、及び二方向放出に適合するように形成され得る。材料は、好ましくは、音響波の伝搬速度が、隣接層でよりも非導電性層3で低いように選定される。
【0044】
図1bは、レジスト4が非導電性層3の部分領域に塗布されることによって、図1aに図示された部品から生じ得る電気部品の、ある実施形態を示す。
【0045】
図1cは、図1bに図示された部品から生じ得る電気部品の、ある実施形態の概略図を示す。図1cに描かれた部品に到達するために、ベース金属被覆5を付けるという、更にもう一つの方法ステップが実行され得る。
【0046】
図1dに概略的に図示されるような電気部品の実施形態は、例えば、図1cに描かれた部品から生じ得る。この目的のために一方法ステップにおいて、レジスト4は、その上に堆積されたベース金属被覆5と共に再度除去され得る。更に、例えば電気分解法によりベース金属被覆を厚くして、厚い金属層を形成することができる。金属層6は、この結果生じ得る。
【0047】
図1eは、例えば図1dに図示された部品から生じ得る電気部品のある実施形態の概略図を示す。この目的のために金属層6は酸化され誘電体層を形成し得る。更なる方法ステップにおいて、非導電性層3は、次にエッチング法により構造形成され得る。エッチングは図1eに矢印で概略的に図示されている。可能なエッチング法として、例えば反応性イオンエッチングがある。誘電体層7はエッチング処理の間、マスクとして役立ち得る。例として、構造形成された導電層2の部分領域は、エッチング処理により露出された状態に成り得る。
【0048】
図1fは、例えば図1eに図示された部品から生じ得る電気部品の、ある実施形態を概略的に図示する。この目的のために、レジスト4は誘電体層7の部分領域上に塗布され得る。その後、接触層9が部品表面に付けられ得る。この接触層は、その後に、当該部品との電気的接触のために役立ち得る。
【0049】
図1gは、例えば図1fに図示された部品から生じ得る電気部品の、ある実施形態を概略的に図示する。この目的のために、レジスト層4は、その上に堆積された接触層とともに除去される。更なる方法ステップにおいて、電気絶縁カバー層10が当該部品に付けられ得る。
【0050】
図2aは、例えば図1aに図示された部品から生じ得る電気部品の、ある実施形態を概略的に図示する。この目的のために、非導電性層3は構造形成され得る。更なる方法ステップにおいて、その後、ベース金属被覆5が、構造形成された表面に付けられ得る。
【0051】
図2bは、例えば図2aに図示された部品から生じ得る電気部品の、ある実施形態を概略的に図示する。この目的のために、図2aに図示されたベース金属被覆5は厚くされ、金属層6を形成することができる。これは、例えば電気分解法により実施され得る。
【0052】
図2cに概略的に図示されるような電気部品の実施形態は、レジスト4を金属層6の部分領域に塗布することによって、例えば図2bに図示される部品から生じ得る。
【0053】
図2dに概略的に図示されるような電気部品の実施形態は、金属層6をエッチングし、レジスト4をその後除去することによって、例えば図2cに図示される電気部品から生じ得る。
【0054】
図2eに概略的に図示されるような電気部品の実施形態は、酸化レジスト11を金属層6の部分領域に付けることによって、例えば図2dに図示される電気部品から生じ得る。
【0055】
図2fに概略的に図示されるような電気部品の実施形態は、例えば、図2eに図示されるような電気部品から生じ得る。この目的のために、金属層6は選択的に酸化される。これは、例えば酸化レジストにより保護されていない部分領域は全体として完全に酸化され、一方、例えば酸化レジストにより保護されている部分領域は金属領域として残ることを意味する。その結果、当該部品のある層は、部分領域の金属層6と、他の部分領域の誘電体層7とを含み得る。
【0056】
図2gに概略的に図示されるような電気部品の実施形態は、例えば、酸化レジスト11を除去することによって、図2fに図示された部品から生じ得る。しかし、酸化前に存在する、電気分解法で厚くされた厚い金属層は、図2gに示すように、あらかじめ構造形成しておく必要はなく、図2bのような外見であっても良い。その後、連続した金属層6は図2fに示すように選択的に酸化され得る。
【0057】
図2hに概略的に図示されるような電気部品の実施形態は、第1の方法ステップにおいて、レジスト4が電気部品の表面の部分領域に塗布され、更なる方法ステップで、接触層9が電気部品表面に堆積されるという事実に基づき、例えば図2gに図示された電気部品から生じ得る。
【0058】
図2iに概略的に図示されるような電気部品の実施形態は、例えば図2hに図示された電気部品から生じ得る。この目的のために、レジスト4と、レジスト上に堆積された接触層9は除去される。更なる方法ステップで、電気絶縁カバー層10が電気部品表面の部分領域に付けられる。
【0059】
図3aに概略的に図示されるような電気部品の実施形態は、例えば接触層9が金属層6の露出表面上に堆積されることにより、図2gに図示された電気部品から生じ得る。
【0060】
図3bに概略的に図示されるような電気部品の実施形態は、例えば図3aに概略的に図示された電気部品から生じ得る。この目的のために、図3aに図示された電気部品は回路基板12に取り付けられる。この場合に、例として、接触層9は回路基板12の導電トラック13と導電接触状態にある。
【0061】
図3cに概略的に図示されるような電気部品の実施形態は、例えば図2gと図3aに図示されるような部品の組み合わせにより生じ得る。この目的のために、二つの部品が結合され、図3aに図示された部品の接触層9は、図2gに図示された部品の金属層6の露出表面と導電接触するようになる。結果として、元は別々の二つの部品の、構造形成された導電層2は、次に導電接続され得る。
【0062】
図4は、電気部品の、ある実施形態の概略図を示す。当該電気部品は基板1を含み、その端部領域上には電気接触を形成するために接触層9が堆積される。更に当該部品は二つのパッシベーション層8を含む。パッシベーション層8は、例えばSiを含み得る。二つのパッシベーション層8の間には、金属層6と誘電体層7との連続体である一つの層が配置される。例として、対応して構造形成されたそのような一連の層により、コイルを規定し得る。この場合、金属層6の一つが一つの接触層9に導電接続されることができ、もう一つの金属層6が他の接触層9に導電接続され得る。
【0063】
図5は、例えば、同一型の二つの電気部品を結合することによって生じ得る電気部品の、ある実施形態の概略図を示す。この目的のために、一つの部品は回転され、対応する領域を経由して第1の部品と結合された。
【0064】
このようにして製造された部品は、その上に構造形成された二つの導電層2が存在する一つの基板1を含む。非導電性層3は導電層2の上に付けられる。二つの導電層2の部分領域は、接触層9を介して互いに接続される。誘電体層7は非導電性層3に接した位置に置かれる。電気部品には電気絶縁カバー層10が装備される。
【0065】
もう一つの方法の別形において、ベース金属被覆5は層厚が厚くされる前に構造形成される。この場合に、ベース金属被覆5は部分領域で除去され得る。これは、これらの位置で、厚くした金属層6が全く形成されないか、又はほんの少し薄い、厚くした金属層6が形成されるという利点を有する。このことにより、今度は、厚い金属層6は次に構造形成される必要がないという利点が生じる。従って、例によれば、簡単な方法で、コンタクトホールが供給され得るし、又は、引き続き個片化が行われる予定の位置で金属層6と、金属層6から生じる誘電体層7とが実際に全く生成されないことも可能である。この方法によって与えられる更なる利点は、連続した厚い金属層6が存在しないため、歪みがほとんど生じないということである。この場合、ベース金属被覆5も、例えば接触露光のような高分解能を必要としない方法によって構造形成され得る。
【0066】
第1のベース金属被覆5が付けられ、その後、例えば電気分解法で厚くして金属層6を形成するという、方法の別形も考えられる。その後、第2のベース金属被覆5が付けられ、それも同様に厚くされて金属層6を形成する。その後、両金属層6は、一方法ステップで酸化され得る。同様に、方法の別形が考えられる。この方法では、まず、第1の金属層6が増厚法により生成され、その後、その層は酸化され、第2の金属層6が第1の酸化層の上に生成され、第2の金属層はその後同様にして第2の酸化ステップにて酸化される。
【0067】
バルク音響波で動作する電子部品の場合には、誘電体層の層厚は、好ましくはバルク音響波の波長の1/2よりも厚いことが好ましい。この層厚は、いくつかの実施形態では、好ましくは、波長よりも厚い場合もある。上記の方法で、たとえば、1〜30μmの層厚の誘電体層7を生成することが可能である。
【0068】
上述の方法の一つに従って生成した誘電体層7は、例えば、無線周波数技術での使用に適している。これらの方法は、例えば、GBAW部品、静電容量、コイル、抵抗、又は他の線の製造に適している。更に、例えば、スイッチ、半導体部品、又は表面波で動作する他の部品の製造に対する使用も考えられる。GBAW部品の場合は、一連の層からなる層システムにより波がガイドされ得る。
【0069】
層形成過程は、ベース金属被覆5を厚くするとき、異なる要因により影響を受け、又は制御され得る。電気分解法の場合、例として、ここで電流密度、電圧、電解液の選択、電解液濃度、そして温度を挙げることができる。更に、層厚の形成は直接に処理の継続時間に関係し得る。例えばアルミニウムの酸化はいろいろな方法で実施し得る。例として、ここで電気分解による酸化のために電解液中への浸し、そのような電解液中の通過、純粋化学的な酸化、又はプラズマアシスト酸化の各方法を挙げることができる。
【0070】
発明は代表的な実施形態の記載に限定されない。個々の特徴それ自身、又はそれらの組み合わせ自身が特許請求項、又は代表的な実施形態で明確には記載していない場合であっても、むしろ、発明は、いかなる新規な特徴及び特徴のいかなる組み合わせをも包含し、特に、特許請求項の特徴のいかなる組み合わせをも含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(1)上の誘電体層(7)を含む電気部品の製造方法であり、
基板(1)に金属層(6)を付ける方法ステップa)と、
前記金属層(6)を酸化して誘電体層(7)を形成する方法ステップb)と、を含み、
前記金属層(6)の少なくとも一つの部分領域は、該層の厚さ全体にわたり十分に酸化されている、
電気部品の製造方法。
【請求項2】
前記方法ステップa)は、比較的薄い閉じたベース金属被覆(5)を堆積する方法と、
前記ベース金属被覆(5)を厚くするための電気分解法と、
を含む請求項1に記載の電気部品の製造方法。
【請求項3】
材料にAlを含む金属層(6)が付けられる、
請求項1又は2に記載の電気部品の製造方法。
【請求項4】
Alの比率は90%以上である、
請求項3に記載の電気部品の製造方法。
【請求項5】
前記金属層(6)は前記電気分解法により少なくとも1μmの厚さまで厚くされた、
請求項2乃至4のいずれか1項に記載の電気部品の製造方法。
【請求項6】
電気音響部品用に基板(1)を供給する方法ステップA)と、
前記基板(1)に、導電層(2)を付ける方法ステップB)と、
前記導電層(2)を構造形成する方法ステップC)と、
前記構造形成された導電層(2)に非導電性層(3)を付ける方法ステップD)と、
前記非導電性層(3)にベース金属被覆(5)を付ける方法ステップE)と、
電気分解法により、前記ベース金属被覆(5)を厚くして金属層(6)を生成する方法ステップF)と、
前記金属層(6)を酸化して、誘電体層(7)を生成する方法ステップG)と、
を含む、請求項1に記載の電気部品の製造方法。
【請求項7】
前記方法ステップE)の前記金属層(6)に対して、Alの比率が90%以上である材料が使用される、
請求項6に記載の電気部品の製造方法。
【請求項8】
前記基板(1)に対して、圧電材料が使用される、
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の電気部品の製造方法。
【請求項9】
前記非導電性層(3)の部分領域にレジスト(4)を塗布する追加の方法ステップH)を含み、
該方法ステップH)は、前記方法ステップD)とE)との間で実行される、
請求項6乃至8のいずれか1項に記載の電気部品の製造方法。
【請求項10】
前記非導電性層(3)を構造形成する追加の方法ステップI)を含み、
該方法ステップI)は、前記方法ステップG)の後に実行される、
請求項6乃至9のいずれか1項に記載の電気部品の製造方法。
【請求項11】
表面にレジスト(4)を塗布する追加の方法ステップJ)を含み、
該方法ステップJ)は、前記方法ステップG)の後に実行される、
請求項6乃至10のいずれか1項に記載の電気部品の製造方法。
【請求項12】
前記方法ステップJ)は前記方法ステップI)の後に実行される、
請求項10又は11に記載の電気部品の製造方法。
【請求項13】
表面に接触層(9)を付ける追加の方法ステップK)を含み、
該方法ステップK)は、前記方法ステップJ)の後に実行される、
請求項11又は12に記載の電気部品の製造方法。
【請求項14】
前記レジスト(4)と、その上に堆積された前記接触層(9)とを除去する追加の方法ステップL)を含み、
該方法ステップL)は、前記方法ステップK)の後に実行される、
請求項13に記載の電気部品の製造方法。
【請求項15】
表面に電気絶縁カバー層(10)を堆積する追加の方法ステップM)を含む、
請求項6乃至14のいずれか1項に記載の電気部品の製造方法。
【請求項16】
前記非導電性層(3)を構造形成する追加の方法ステップN)を含み、
該方法ステップN)は、前記方法ステップD)とE)との間で実行される、
請求項6乃至15のいずれか1項に記載の電気部品の製造方法。
【請求項17】
前記金属層(6)の部分領域にレジスト(4)を塗布する追加の方法ステップO)を含み、
該方法ステップO)は、前記方法ステップF)とG)との間で実行される、
請求項6乃至16のいずれか1項に記載の電気部品の製造方法。
【請求項18】
前記金属層(6)をエッチングする追加の方法ステップP)を含み、
該方法ステップP)は、前記方法ステップO)の後に実行される、
請求項17に記載の電気部品の製造方法。
【請求項19】
前記金属層(6)に酸化レジスト(11)を塗布する追加の方法ステップQ)を含み、
該方法ステップQ)は、前記方法ステップF)の後に実行される、
請求項6乃至18のいずれか1項に記載の電気部品の製造方法。
【請求項20】
前記金属層(6)を選択的に酸化する追加の方法ステップR)を含み、
該方法ステップR)は、前記方法ステップQ)の後に実行される、
請求項19に記載の電気部品の製造方法。
【請求項21】
前記酸化レジスト(11)を除去する方法ステップと、
レジスト(4)を塗布する方法ステップと、
表面に接触層(9)を堆積する方法ステップと、
前記レジスト(4)を、その上に堆積された前記接触層(9)とともに除去する方法ステップと、
表面に電気絶縁カバー層(10)を付ける方法ステップと、が
前記方法ステップR)の後に続く、
請求項20に記載の電気部品の製造方法。
【請求項22】
前記酸化レジスト(11)を除去する方法ステップと、
前記酸化レジスト(11)の除去により露出された領域に接触層(9)を付ける方法ステップと、が
前記方法ステップR)の後に続く、
請求項20に記載の電気部品の製造方法。
【請求項23】
前記電気部品は、前記接触層(9)を介して回路基板(12)に接続される、
請求項22に記載の電気部品の製造方法。
【請求項24】
前記電気部品は、レジスト(11)の除去により、露出された前記接触層(9)の領域を介してもう一つの電気部品に接続される、
請求項22に記載の電気部品の製造方法。
【請求項25】
前記基板(1)が前記誘電体層(7)と同じ厚さを有するように、前記基板(1)の、前記導電層(2)で覆われた表面とは反対側にある表面の一部が前記方法ステップG)の後に除去される、
請求項6乃至24のいずれか1項に記載の電気部品の製造方法。
【請求項26】
請求項1乃至25のいずれか1項に記載の電気部品の製造方法に従って製造された電気音響部品。
【請求項27】
ガイドバルク音響波で動作する、
請求項26に記載の電気音響部品。
【請求項28】
前記誘電体層(7)は、バルク波の1/2波長よりも厚い、
請求項27に記載の電気音響部品。
【請求項29】
前記導電層(2)は、元素Cu、Ag、Au、Pt、Tiの内の少なくとも一つを含む、
請求項26乃至28のいずれか1項に記載の電気音響部品。
【請求項30】
前記基板(1)はLiNbO又はLiTaOを含む、
請求項26乃至29のいずれか1項に記載の電気音響部品。
【請求項31】
前記非導電性層(3)はSiOを含む、
請求項26乃至30のいずれか1項に記載の電気音響部品。
【請求項32】
前記誘電体層(7)は、Alを含む領域を有する、
請求項26乃至31のいずれか1項に記載の電気音響部品。
【請求項33】
前記誘電体層(7)は、金属Alを含む領域を有する、
請求項26乃至32のいずれか1項に記載の電気音響部品。
【請求項34】
前記金属Al領域は、前記導電層(2)と電気的接触状態にある、
請求項33に記載の電気音響部品。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図1d】
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【図1e】
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【図1f】
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【図1g】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【図2e】
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【図2f】
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【図2g】
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【図2h】
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【図2i】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−517200(P2011−517200A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−502379(P2011−502379)
【出願日】平成21年4月1日(2009.4.1)
【国際出願番号】PCT/EP2009/053883
【国際公開番号】WO2009/121906
【国際公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(300002160)エプコス アクチエンゲゼルシャフト (318)
【氏名又は名称原語表記】EPCOS  AG
【住所又は居所原語表記】St.−Martin−Strasse 53, D−81669 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】