説明

局所密閉型清浄化装置

【課題】局所密閉型清浄化装置冷却部の性能を向上することなく、局所密閉型清浄化装置の冷却部に起こりうる急な負荷変動を低減できる技術を提供する。
【解決手段】電子部品を製造する電子部品製造装置と該電子部品を搬送する電子部品搬送装置との間で電子部品を移送するためのインターフェース部を気密に閉鎖するチャンバと、チャンバから排出される清浄空気を循環清浄空気として該チャンバへ導く清浄空気循環通路と、清浄空気循環通路を流れる循環清浄空気を循環させる送風部と、清浄空気循環通路上に設けられ、循環清浄空気を冷却する冷却部と、清浄空気循環通路上の、循環清浄空気の流れにおける、冷却部の上流側に設けられる蓄熱部と、を備える。蓄熱部は、循環清浄空気の熱を蓄熱して冷却部の負荷の低減を図ると共に、循環清浄空気に含まれる分子状の汚染物質を捕集する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、局所密閉型清浄化装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの電子部品製造装置(半導体電子部品製造装置)は、一般的にクリーンルーム内に設置されて稼動するのが一般的である。クリーンルーム内には外気中に含まれていたクリーンルーム構成材や、他の半導体装置から生ずる微量の有機物、酸・塩基ガス、ボロン、リン等の化学汚染物質が浮遊している。このような化学汚染物質が、半導体の基盤表面に付着すると、例えばデバイスの電気特性が変化するといった歩留りが低下する虞がある。そのため、従来からクリーンルーム内の化学汚染物質の除去に関する様々な技術が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、電子部品製造装置と電子部品搬送装置との間で電子部品を移送するためのインターフェース部を備える局所密閉型清浄化装置に関する技術が開示されている。この技術は、本出願人が先に開示した技術である。この技術は、露点温度が−50度以下の低露点空気の導入量を調整する導入量調整手段を備え、少なくとも二つの移送口(インターフェース部と電子部品製造装置との間で電子部品を移送するための第1の移送口及び電子部品搬送装置とインターフェース部との間で電子部品を移送するための第2の移送口)のうちの一方の移送口が開放した際に、インターフェース部を気密に閉鎖するチャンバ内が正圧に保たれるように導入量調整装置が制御される。これにより、係る技術によれば、インターフェース部を気密に閉鎖するチャンバ内に導入する−50度以下の低露点空気や不活性ガスの有効利用を図りつつ、インターフェース部を−50度以下の低露点空気又は不活性ガス雰囲気に保つことができる。また、係る技術によれば、塵埃やパーティクルを除去することができ、更に電子部品製造装置側からの熱負荷から電子部品を保護することも可能である。
【0004】
ここで、半導体などの精密品の中には環境温度の変動によって処理、加工又は検査の精度が低下するものも存在する。このため、このような精密品を処理、加工又は検査するための恒温室の温度変動を抑える精密温度制御装置に関する技術が知られている。例えば、特許文献2には、精密温度制御を行うに際して、蓄熱材を空気調和手段の後段に設け、制御対象空間の温度変動を更に小さくする技術が開示されている。また、特許文献3には、ケミカルフィルタを空気調和手段の後段に設け、制御対象空間の温度変動を小さくすると共に化学的に清浄度の高い空気にすることが開示されている。更に、特許文献3には、精密温度制御後に、ケミカルフィルタでの水分の吸着熱の影響を抑えるため、充填率(かさ密度)の小さいケミカルフィルタを用いることが開示されている。
【特許文献1】特許第3839555号公報
【特許文献2】特開2007−85607号公報
【特許文献3】特開2002−158170号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電子部品製造装置と電子部品搬送装置との間で電子部品を移送するためのインターフェース部を備える局所密閉型清浄化装置に関する技術が知られている。ここで、図1は、従来の局所密閉型清浄化装置100xの内部の様子を正面からみた説明図を示す。従来の局所密閉型清浄化装置100xは、インターフェース部1x、送風機2x、冷却コイル3x、加熱コイル4x、ケミカルフィルタ5x、高性能フィルタ6x、レタンダクト12x、プレナムチャンバ15xを備える。インターフェース部1xは、電子部品を製造する電子
部品製造装置(図示せず)と電子部品を搬送する電子部品搬送装置(図示せず)との間で電子部品の授受を行う。送風機2xは、レタンダクト12xを流れる循環清浄空気を循環させる。冷却コイル3xは、レタンダクト12xを流れる循環清浄空気を冷却する。一方、加熱コイル4xは、レタンダクト12xを流れる循環清浄空気を加熱する。なお、冷却コイル3x及び加熱コイル4xは、制御装置17xと電気的に接続されている。制御装置17xは、温度センサ18xと電気的に接続されており、温度センサ18xからの信号に基づいて、循環清浄空気を所定の温度に維持するように、冷却コイル3x又は加熱コイル4xを制御する。制御装置17xは、温度センサ19xからの信号に加えて、圧力センサ19x、濃度センサ20xからの信号も入力される。制御装置17xは、圧力センサ19xからの信号に基づいて、ガス導入管のバルブや排気管のバルブの開閉を制御する。ケミカルフィルタ5xは、循環清浄空気に含まれる分子状の汚染物質を捕集する。高性能フィルタ6xは、塵埃やその他のパーティクルを捕集する。プレナムチャンバ15xと下方空間9xは、インターフェース部1内の空気の均一化を図る。移送装置7xは、アーム10xを有し、インターフェース部1x内に設けられ、移送口8xを介して、電子部品製造装置と電子部品搬送装置との間で電子部品を移送する。
【0006】
この従来の局所密閉型清浄化装置100xにおいて、インターフェース部1xの低露点空気を循環させる場合、循環清浄空気は、送風機2x、冷却コイル3x、加熱コイル4x、ケミカルフィルタ5x、高性能フィルタ6xの順に処理され、再度インターフェース部1xに供給される。ここで、通常、電子部品製造装置(図示せず)から出てくる電子部品はほぼ常温である。また、電子部品製造装置から取り出すと同時に電子部品搬送装置(図示せず)に移送するため、冷却コイル3xの負荷の原因は主に移送装置7xの動力と送風機2xの動力であるが変動が少ないため、冷却コイル3xの温度変動も少なく、循環する低露点空気を上記の順序で処理することに特に問題はない。
【0007】
但し、例えば、電子部品製造装置から出てくる電子部品が比較的高温である場合、上記従来の局所密閉型清浄化装置100xは、高温の電子部品をインターフェース部1xにしばらく滞在させて冷却し、その後電子部品搬送装置で次工程に搬送するといった使用態様を用いる。この場合、冷却コイル3xの入口側の空気温度が短時間で上昇することがある。ここで、図2は、冷却コイルの温度変化のグラフを示す。図2における破線は、従来の局所密閉型清浄化装置100xの冷却コイル3xの温度変化を示す。また、実線は、後述する本発明に係る局所密閉型清浄化装置の冷却コイルの温度変化のグラフを示す。同図に示すように、従来の局所密閉型清浄化装置100xでは、上記のような使用態様において、冷却コイル3xの入口側の空気温度が短時間で上昇する傾向がある。なお、このような場合に、仮に冷却コイル3xに発生する最大負荷に対応させて冷却コイル3xを設計すると、コイルが大きくなり多くの冷却水量が必要となる。また、急な負荷変動に対して温度制御の追従ができず、低露点空気温度の安定性が悪くなるといった懸念もある。
【0008】
なお、精密温度制御を行うに際して、蓄熱材を空気調和手段の後段に設け、制御対象空間の温度変動を更に小さくする技術や、ケミカルフィルタを空気調和手段の後段に設け、制御対象空間の温度変動を小さくすると共に化学的に清浄度の高い空気にすることが知られている。しかしながら、空気調和手段の後段に蓄熱材を配置する構成では、冷却コイルの負荷変動の低減や冷却コイルの負荷変動の平準化を図ることはできない。また、精密温度制御後に、ケミカルフィルタでの水分の吸着熱の影響を抑えるため、充填率(かさ密度)の小さいケミカルフィルタを用いる技術が知られている。しかしながら、この従来技術では、かさ密度の小さいケミカルフィルタ、換言すると熱容量の小さいケミカルフィルタでは、冷却コイルの入口側に起こりうる急な負荷変動の低減を図ることはできない。
【0009】
本発明では、上記の問題に鑑み、電子部品製造装置と電子部品搬送装置との間で電子部品を移送するためのインターフェース部を備える局所密閉型清浄化装置において、局所密
閉型清浄化装置冷却部の性能を向上することなく、局所密閉型清浄化装置の冷却部に起こりうる急な負荷変動を低減できる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明では、上述した課題を解決するために、電子部品製造装置と電子部品搬送装置との間で電子部品を移送するためのインターフェース部を備える局所密閉型清浄化装置において、該局所密閉型清浄化装置に供給される循環清浄空気を冷却する冷却部の上流側であって、該循環清浄空気の流れにおける上流側に、前記冷却部に提供される循環清浄空気の温度を所定温度に維持するための蓄熱部を設けることとした。これにより、本発明に係る局所密閉型清浄化装置の冷却部に起こりうる急な負荷変動を低減することができる。また、本発明では、上記蓄熱部によって、冷却部に提供される循環清浄空気の温度を所定温度に維持することができるので、冷却部の冷却性能を向上させる必要もない。
【0011】
詳細には、本発明に係る局所密閉型清浄化装置は、電子部品を製造する電子部品製造装置と該電子部品を搬送する電子部品搬送装置との間で電子部品を移送するためのインターフェース部を気密に閉鎖するチャンバと、前記チャンバから排出される清浄空気を循環清浄空気として該チャンバへ導く清浄空気循環通路と、前記清浄空気循環通路上に設けられ、前記循環清浄空気を循環させる送風部と、前記清浄空気循環通路上に設けられ、前記循環清浄空気を冷却する冷却部と、前記清浄空気循環通路上の、前記循環清浄空気の流れにおける、前記冷却部の上流側に設けられる蓄熱部と、を備える。そして、前記蓄熱部は、ケミカルフィルタからなり、かつ、前記循環清浄空気を該ケミカルフィルタの内部を通過させて整流する整流構造を有し、前記循環清浄空気の熱を蓄熱して前記冷却部の負荷の低減を図ると共に、前記循環清浄空気に含まれる分子状の汚染物質を捕集する。
【0012】
インターフェース部を気密に閉鎖するチャンバとは、インターフェース部自体を構成する外装パネルやフレームを一部又は全部利用して実質的にインターフェース部を気密に閉鎖するものであればよい。電子部品には、半導体ウエハやLCD基板、ハードディスク基板、その他薄板状の電子部品などが含まれる。インターフェース部自体は、電子部品製造装置と電子部品搬送装置との間で電子部品を移送する専用の移送装置が存在していなくてもよい。つまり、インターフェース部自体は、電子部品製造装置側の方に移送装置が存在し、インターフェース部が単なる通過領域や通過・待機領域であってもよい。さらに電子部品製造装置には、例えば半導体電子部品製造装置において使用されているプローバのように、電子部品に対して各種の検査を行う装置も含まれる。
【0013】
清浄空気循環通路は、チャンバから排出される清浄空気を循環清浄空気として該チャンバへ導く。清浄空気循環通路は、例えばレタンダクト(リターンダクト)によって構成することができる。送風部は、清浄空気循環路を流れる循環清浄空気を循環させる。冷却部は、清浄空気循環通路を流れる循環清浄空気を冷却する。冷却部は、例えば循環コイルによって構成することができる。
【0014】
ここで、本発明に係る局所密閉型清浄化装置は、上記冷却部の負荷変動を低減することを課題とし、このような課題を解決するため、清浄空気循環通路上の冷却部よりも上流側に蓄熱部が設けられていることを特徴とする。そして、この蓄熱部は、ケミカルフィルタからなり、かつ、前記循環清浄空気を該ケミカルフィルタの内部を通過させて整流する整流構造を有し、循環清浄空気の熱を蓄熱して冷却部の負荷の低減を図ると共に、循環清浄空気に含まれる分子状の汚染物質を捕集する。すなわち、本発明に係る局所密閉型清浄化装置では、蓄熱部が冷却部の上流側に設けられることで、循環清浄空気の温度が上昇した場合であっても、冷却部に供給される前に蓄熱部によって循環清浄空気の温度が蓄熱、換言すると吸収される。従って、循環清浄空気の温度が上昇した場合でも、冷却部の負荷変動を抑えることができる。更に、蓄熱部の蓄熱性能を向上させることで、冷却部自体の冷
却性能の低下(例えば冷却部の小型化)を図ることが可能である。なお、本発明に係る局所密閉型清浄化装置では、蓄熱部が循環清浄空気に含まれる分子状の汚染物質を捕集する。従って、別途汚染物質を捕集するフィルタ(例えば、ケミカルフィルタ)を設ける必要がない。その結果、局所密閉型清浄化装置の部品点数を削減することも可能である。
【0015】
また、本発明では、蓄熱部を上記のようなケミカルフィルタと兼用させることで、部品点数が削減される。その結果、局所密閉型清浄化装置のコンパクト化と製作コストの低減が実現できる。また、整流構造により、冷却コイルに供給される循環清浄空気の均一化を図ることができる。これにより、冷却コイルの冷却性能をより効果的に発揮させることができる。なお、蓄熱部は、例えば、セミラックによって構成され、かつ、ハニカム構造を有するようにしてもよい。
【0016】
なお、蓄熱部は、熱容量が大きい方が、より急な循環清浄空気の温度上昇にも対応できる。そこで、蓄熱部は、かさ密度が0.1g/cmのケミカルフィルタによって構成することが好ましい。
【0017】
ここで、本発明に係る局所密閉型清浄化装置をより具体化する態様の一例とし次の態様が例示される。すなわち、本発明に係る局所密閉型清浄化装置は、前記チャンバの電子部品製造装置側の側壁に形成され、前記インターフェース部と前記電子部品製造装置との間で電子部品を移送するための第1の移送口と、前記チャンバの電子部品搬送装置側の側壁に形成され、前記電子部品搬送装置と前記インターフェース部との間で電子部品を移送するための第2の移送口と、前記第1、第2の各移送口を開閉自在な開閉装置と、前記電子部品移送の際に電子部品が通過する移送空間と、を更に備える。そして、前記第1の移送口から移送される前記電子部品製造装置で製造された電子部品は、冷却が必要な温度を有し、前記移送空間において冷却された後、前記第2の移送口を介して前記電子部品搬送装置によって搬送される。本発明に係る局所密閉型清浄化装置の使用態様は、特に限定されるものではないが、電子部品製造装置で製造された電子部品が高温である場合において、冷却部の負荷変動を低減するものとして好適に用いることができる。冷却が必要な温度とは、電子部品製造装置で製造される際に熱が加えられ、冷却部(特に冷却部の入口側)の負荷変動に影響を与える温度である。
【0018】
また、本発明に係る局所密閉型清浄化装置をより具体化する態様の一例とし次の態様が例示される。すなわち、本発明に係る局所密閉型清浄化装置は、前記清浄空気循環通路からの循環清浄空気を清浄し、前記移送空間に供給するフィルタ装置と、前記清浄空気循環通路の下流側の端部と連通し、前記フィルタ装置からの吹き出し風速を一様にするためのプレナムチャンバと、更に備える構成とすることができる。フィルタ装置を備えることで、循環清浄空気の清浄をより確実に行うことができる。また、プレナムチャンパによれば、フィルタ装置からの吹き出し風速を一様にすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、電子部品製造装置と電子部品搬送装置との間で電子部品を移送するためのインターフェース部を備える局所密閉型清浄化装置において、局所密閉型清浄化装置冷却部の性能を向上することなく、局所密閉型清浄化装置の冷却部に起こりうる急な負荷変動を低減できる技術を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、本発明に係る局所密閉型清浄化装置の実施形態について図面に基づいて説明する。
【0021】
<構成>
図3Aは、実施形態に係る局所密閉型清浄化装置100を半導体製造装置101に適用した場合の概略構成を示す。また、図4は、局所密閉型清浄化装置100を電子部品搬送装置側からみた概略構成を示す。これらの各種装置は、クリーンルーム(CR)内に設置して使用することができる。本実施形態では、クリーンルームの天井部に複数のファン・フィルタ・ユニット103が設けられており、これら複数のファン・フィルタ・ユニット103により、局所密閉型清浄化装置100や半導体製造装置101など、クリーンルーム内に設置されている各装置に対して、ダウンフローが形成されている。なお、本実施形態では、ファン・フィルタ・ユニット103がクリーンルームの天井に設けられることで、クリーンルーム内の空気の流れがダウンフローであるが、クリーンルーム内の空気の流れは水平一方向流でもよく、また、一方向流ではなく、非一方向流であってもよい。
【0022】
局所密閉型清浄化装置100は、主要な構成として、インターフェース部1、レタンダクト12、送風機2、蓄熱材50、冷却コイル4、加熱コイル5、熱量制御装置17、プレナムチャンバ15、高性能フィルタ6を備えている。
【0023】
インターフェース部1は、電子部品(本実施形態では、半導体ウエハ。以下、単にウエハという。)を製造する半導体製造装置101とウエハを搬送する半導体搬送装置102との間でウエハの授受を行う。インターフェース部1には、ウエハを移送する移送装置7が設けられており、移送装置7は、アーム10を有し、半導体製造装置101と半導体搬送装置102との間でウエハの移送が可能である。本態様では、ウエハを収納するカセット19が設けられ、未処理のウエハをカセット19内に一時的にストックさせることもできる。本実施形態に係る局所密閉型清浄化装置100は、密閉型であり、局所密閉型清浄化装置100を構成するインターフェース部1も気密性が確保されている。具体的には、インターフェース部1の気密性を確保すべく、チャンバ16を構成する側板21a、21b及び天板22が設けられ、半導体搬送装置102側の側板21bには、半導体搬送装置102が所定位置に載置したポッド若しくは搬送ポッドとの間でウエハを移送するための移送口8bが設けられている。図3Bは、ポッドの概略構成を示す。ポッド11aは、その内部に形成され溝にウエハを入れることでウエハを収容する。そしてポッド11aには、ウエハを出し入れするための蓋11bが設けられている。また、半導体製造装置101側の側板21aには、半導体製造装置101との間で電子部品を移送する移送口8aが設けられている。更に、インターフェース部1には、上記移送口8a、8bを夫々独立して開閉自在な開閉装置23a、23bが設けられている。移送装置7を構成する移送アームがこれら移送口8a、8bを通過するとき以外は、移送口8a、8bは閉鎖される。これにより、インターフェース部1の気密性が確保される。
【0024】
インターフェース部1の下方には、インターフェース部1に均一な空気流を形成するための整流板24が設けられている。整流板24は、例えばパンチングメタルによって構成することができる。整流板24と後述するインターフェース部1の上部に設けられるプレナムチャンバ15とによって、インターフェース部1内の空気の均一化が実現されている。なお、図示では省略するが、例えば、移送装置7を構成するモータといった駆動装置は、整流板24よりも下方の下方空間9に配置することができる。なお、プレナムチャンバ15とインターフェース部1の上部との間には、後述する高性能フィルタ6が設けられており、この高性能フィルタ6と整流板24との間の空間が、本発明の移送空間に相当する。
【0025】
レタンダクト12は、本発明の清浄空気循環通路に相当し、インターフェース部1から排出される清浄空気を循環清浄空気としてチャンバ16へ導く。より詳細には、レタンダクト12は、一端がインターフェース部1の下方に設けられた下方空間9と接続され、他端がインターフェース部1の上部に設けられたプレナムチャンバ15と接続されている。そして、このレタンダクト12には、循環清浄空気の流れにおける上流側から下流側に向
けて、順に、蓄熱材50、冷却コイル4、加熱コイル5が設けられている。
【0026】
送風機2は、レタンダクト12を流れる循環清浄空気を循環させる。送風機2の吹き出し口(図4における送風機2の上部)の近傍には、ガス導入口25及びガス導入管26が設けられている。ガス導入口25及びガス導入管26によって、局所密閉型清浄化装置100内へ−50度以下の低露点空気が供給される。なお、低露点空気に代えて、窒素ガス(N)、アルゴンガスやヘリウムガスなどの希ガスといった不活性ガスを用いてもよい。なお、送風機2の下部近傍には、局所密閉型清浄化装置100の外部の外部排気管と連通する排気管27及び排気口28が設けられている。そして、排気管27及び排気口28を通じて、例えば、移送装置7を構成するモータのベアリングのグリース、配線、塗料などから発生するガス状不純物が排出可能である。なお、ガス導入管26及び排気管27の夫々に、夫々の管を流れるガスの流量を調整する流量調節バルブ13、14が設けられている。流量調節バルブ13、14は、例えば制御装置を設けて制御装置と接続してもよい。これにより、ガス導入管26又は排気管27を流れるガスの流量を制御することができる。
【0027】
蓄熱材50は、レタンダクト12を流れる循環清浄空気の熱を蓄熱する。これにより、蓄熱材50よりも下流側に設けられている冷却コイル4の負荷の低減を図ることができる。また、蓄熱材50は、循環清浄空気に含まれる分子状の汚染物質を捕集する。蓄熱材50には、活性炭やゼオライト等の無機系材料を基材とした熱容量の大きなケミカルフィルタを用いることが好ましい。このようなケミカルフィルタを蓄熱材50として用い、冷却コイル4よりも上流、換言すると冷却コイル4の前面に配置することで、循環清浄空気の温度の変動を平準化すると共に、分子状の汚染物質を除去して、循環清浄空気の汚染物質濃度の低減を実現することができる。より具体的には、蓄熱材50として、有機ガス、NH3等の塩基性ガス、NOx、SOx等の酸性ガスの何れか、若しくはこれら全てのガスを吸着する吸着剤を担持した、活性炭、ゼオライト等の無機質系材料によって構成される吸着フィルタであって、かさ密度が0.10g/cm以上であるケミカルフィルを用いることができる。なお、蓄熱材50は、ハニカム形状又はプリーツ形状とすることが好ましい。ここで、図5は、ハニカム形状の蓄熱材50を示す。このようなハニカム形状の蓄熱材50は、例えばセラミックからなるハニカム母材51に吸着剤を含漬させることで形成できる。なお、符号52は外枠部材を示す。また、蓄熱材50は、紙に活性炭を練りこんだものでもよい。なお、ケミカルフィルタとしては、例えば高砂熱学工業株式会社のTIOS(登録商標)や、高砂熱学工業株式会社のT・ACH(登録商標)を好適に用いることができる。
【0028】
冷却コイル4は、レタンダクト12を流れる循環清浄空気を冷却する。冷却コイル4は、冷却媒体として冷水を用いるものが例示される。また、冷却コイル4は、直膨コイルとしてもよい。加熱コイル5は、レタンダクト12を流れる循環清浄空気を暖める加熱コイル5は、加温媒体として温水を用いるものが例示される。また、加熱コイル5は、例えば電気ヒータによって構成してもよい。なお、本態様では、加熱コイル5が設けられているが、加熱コイル5を設けず、局所密閉型清浄化装置100をより簡易な構成としてもよい。冷却コイル9と加熱コイル5は、夫々が熱量制御装置17電気的に接続されている。熱量制御装置17は、移送空間に設けられた温度センサ18と接続されている。温度センサ18は、高性能フィルタ6を通過した直後の循環清浄空気の温度を検出する。なお、温度センサ18に加えて、移送空間内の圧力を検出する圧力センサや、移送空間内の化学汚染物質の濃度を検出する濃度センサを設けてもよい。そして、圧力センサや濃度センサについては、制御装置を設け、制御装置と電気的に接続してもよい。なお、圧力センサや濃度センサについては、従来の局所密閉型清浄化装置100xと同様の構成としてもよい(図1参照。)。
【0029】
熱量制御装置17は、温度センサ18からの信号に含まれる温度情報(高性能フィルタ6を通過した直後の循環清浄空気の温度)に基づいて、高性能フィルタ6を通過した循環清浄空気の温度を所定の温度に維持するよう、冷却コイル4や加熱コイル5を制御する。また、制御装置を設けることで、圧力センサや濃度センサからの振動に含まれる圧力に関する圧力情報や濃度に関する濃度情報に基づいて流量調節バルブ13、14を制御可能である。
【0030】
プレナムチャンバ15は、レタンダクト12の下流側の端部と連通し、インターフェース部1に供給する循環清浄空気を整流する。本態様では、プレナムチャンバ15は、高性能フィルタ6と天板27との間の空間によって構成されている。高性能フィルタ6は、インターフェース部1に供給される循環清浄空気を清浄する。本態様では、高性能フィルタ6は、局所密閉型清浄化装置100の上方かつ、プレナムチャンバ15との間に介在している。なお、高性能フィルタ6は、局所密閉型清浄化装置100の側面に設けるようにしてもよい。
【0031】
<動作>
次に、本実施形態に係る局所密閉型清浄化装置100の動作について作用効果と共に説明する。局所密閉型清浄化装置100が起動されると、移送口8a、8bの開閉装置21a、21bはいずれも閉鎖される。そして、ガス導入管26の流量調節バルブ13が開放し、局所密閉型清浄化装置100内に低露点空気が供給され、局所密閉型清浄化装置100内が低露点空気で満たされる。このとき、局所密閉型清浄化装置100内が所定の正圧となるように、排気管27の流量調節バルブ14が調整される。送風機2は、運転を開始し、レタンダクト12内に窒素ガスからなる循環清浄空気を循環させる。
【0032】
半導体搬送装置102が半導体製造装置101でこれから製造されるウエハを構成する基板を収納したポッド11a若しくは搬送ポッドを局所密閉型清浄化装置100の側板21bに設定された所定の位置に載置する。開閉装置23bが開放し、移送口8bを通じて、インターフェース部1の移送装置7の移送アーム10がポッド11a若しくは搬送ポッド内のウエハを受け取る。次に、移送装置7の移送アーム10がウエハを半導体製造装置101に移送する際、移送口8aの開閉を担う開閉装置23aが開放してウエハが半導体製造装置101内に移送される。
【0033】
移送装置7の移送アーム10が半導体製造装置101での処理が行われたウエハを半導体製造装置101に受け取りにいく場合、移送口8aの開閉を担う開閉装置23aが開放して移送装置7の移送アーム10がこの処理済みウエハを受け取る。次に、この処理済みウエハをポッド11a若しくは搬送ポッドの所定のスロット内に収納する。また移送装置7の移送アーム10が移送口8aから退避した時点で開閉装置21aは移送口8aを閉鎖する。
【0034】
ここで、本態様では、半導体製造装置101によって所定の処理が行われたウエハは高熱であり、インターフェース部1内で一定時時間滞在して、冷却される。これにより、インターフェース部1内から排出される循環清浄空気の温度が上昇する。温度が上昇したインターフェース部1から排出された循環清浄空気は、下方空間9を通り、蓄熱材50へ導かれる。本実施形態に係る蓄熱材50は、循環清浄空気の熱を蓄熱、すなわち吸収する機能に加えて、循環清浄空気内に汚染物質がある場合、その汚染物質を捕集する機能を有する。従って、温度が上昇したインターフェース部1から排出された循環清浄空気は、蓄熱材50を通過することで、熱が吸収され、更に、汚染物質が除去される。更に、本実施形態に係る蓄熱材50は、ハニカム構造のケミカルフィルタが用いられており、循環清浄空気の熱の吸収や汚染物質の除去が効果的に行われると共に、蓄熱材50を通過することで循環清浄空気が整流される。
【0035】
また、半導体製造装置101などの循環清浄空気が循環するルート(低露点循環清浄空気系とも言う)に設けられた機器からは、分子状の汚染物質が放出される。また、局所密閉型清浄化装置100では、新鮮低露点空気や不活性ガスの導入量が少なく、局所密閉型清浄化装置100内の汚染物質濃度が高くなることが懸念され、分子状の汚染物質を除去するケミカルフィルタが必要である。本実施形態に係る局所密閉型清浄化装置100では、蓄熱材50がケミカルフィルタの機能、すなわち分子状の汚染物質の除去機能を有していることから、別途ケミカルフィルタを設ける必要がない。つまり、部品点数を削減することができる。その結果、局所密閉型清浄化装置100のコンパクト化と製作コストの削減を図ることができる。
【0036】
ここで、先に説明した図2における実線は、本実施形態に係る局所密閉型清浄化装置の冷却コイルの温度変化を示す。破線で示す従来の局所密閉型清浄化装置の冷却コイルの温度変化と比較して、本実施形態に係る局所密閉型清浄化装置100では、冷却コイル4の上流側に蓄熱材50が設けられることで、冷却コイル4の温度(入口側)が低下している。なお、図2の冷却コイルの温度変化は、以下の条件によるものである。すなわち、半導体製造装置から高温のウエハがインターフェース部へ供給され、約4分ほど滞在する。ウエハが滞在開始から約一分後には、次のウエハが供給される。このような移送を繰り返す場合のインターフェース部(冷却コイルの入口側)の循環清浄空気の温度変化である。なお、蓄熱材としては、TIOS(登録商標)が用いられ、この蓄熱材のかさ密度は、0.244g/cmである。なお、かさ密度が大きくなると熱容量が大きくなり、通常圧力損失も大きくなる。この点、TIOS(登録商標)は、かさ密度を大きくて圧力損失が小さいことから蓄熱材として好適に用いることができる。
【0037】
なお、図6は、かさ密度を変えた場合のかさ密度を変えた場合の冷却コイルの温度変化のグラフを示す。図6は、かさ密度を0.100g/cm(図6における二点鎖線)、0.175g/cm(図6における一点鎖線)、0.244g/cm(図6における実線)とした場合の冷却コイルの温度変化のグラフを示す。同図に示すように、かさ密度を0.100g/cm以上の場合、いずれにおいても冷却コイル4の温度(入口側)が低下している。
【0038】
本実施形態に係る局所密閉型清浄化装置100では、温度変化の変動も緩やかになっている。つまり、冷却コイル4の付加変動の削減が実現されている。従って、本実施形態に係る局所密閉型清浄化装置100によれば、冷却コイルの小型化、冷却媒体である冷却水の小水量化、配管や弁等の小口径化、温度制御の安定化を図ることができる。また、例えば、冷却コイルを、冷凍機の冷媒を冷却コイルで蒸発させて冷却する、いわゆる直膨コイルによって構成した場合、冷凍機の小型化を図ることも可能となる。
【0039】
なお、ウエハを移送している移送装置7に対しては、汚染物質が除去された後の清浄なダウンフローが常に形成されているので、ウエハが汚染物質に汚染されることはない。また、塵埃やその他のパーティクルは高性能フィルタ6によって除去される。局所密閉型清浄化装置100内は常に清浄されている清浄循環清浄空気が充満している。従って、ウエハ表面に例えば自然酸化膜が形成されることはない。
【0040】
また、冷却コイル4や加熱コイル5を熱量制御装置17によって循環清浄空気の温度管理を実行することで、半導体製造装置101からの熱負荷によって局所密閉型清浄化装置100内の循環清浄空気の温度が上昇してウエハの温度が上昇するのを回避し、熱膨張による製品の不良を抑制できる。
【0041】
なお、圧力センサを設け、移送空間25内の圧力が低下した場合、圧力センサによって
そのことが検出し、所定の正圧になるまでガス導入管26の流量調節バルブ14を開放してもよい。また、濃度センサを設け、インターフェース部1内のガス濃度を検出してもよい。これにより、何らかの事情でインターフェース部1内に多量の汚染物質が発生した場合や酸素濃度が上昇した場合には、濃度センサがこれを検出し、直ちにガス導入管26の流量調節バルブ14が開放すると共に、排気管27の流量調節バルブ0が開放し、インターフェース部1がおかれている雰囲気中の汚染物質が所定の濃度以下になるまでパージ運転をするようにしてもよい。これにより、インターフェース部1内のガス濃度を、常に所定の濃度(許容濃度)以下に保つことができる。これにより、ウエハの汚染を抑制することができる。またウエハ上に形成されるデバイスの電気特性が変化することも抑制でき、更にウエハ上に不必要な自然酸化膜が形成されることも抑制することができる。
【0042】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明に係る局所密閉型清浄化装置はこれらに限らず、可能な限りこれらの組合せを含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】従来の局所密閉型清浄化装置の内部の様子を正面からみた説明図を示す。
【図2】冷却コイルの温度変化のグラフを示す。
【図3A】実施形態に係る局所密閉型清浄化装置を電子部品製造装置に適用した場合の概略構成を示す。
【図3B】ポッドの概略構成を示す。
【図4】局所密閉型清浄化装置を電子部品搬送装置側からみた概略構成を示す。
【図5】ハニカム形状の蓄熱材を示す。
【図6】かさ密度を変えた場合の冷却コイルの温度変化のグラフを示す。
【符号の説明】
【0044】
1・・・インターフェース部
2・・・送風機
4・・・冷却コイル
5・・・加熱コイル
6・・・高性能フィルタ
7・・・移送装置
8a、8b・・・移送口
12・・・レタンダクト
15・・・プレナムチャンバ
16・・・チャンバ
17・・・熱量制御装置
18・・・温度センサ
19・・・カセット
24・・・整流板
50・・・蓄熱材
100・・・局所密閉型清浄化装置
101・・・半導体製造装置
102・・・半導体搬送装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を製造する電子部品製造装置と該電子部品を搬送する電子部品搬送装置との間で電子部品を移送するためのインターフェース部を気密に閉鎖するチャンバと、
前記チャンバから排出される清浄空気を循環清浄空気として再度該チャンバへ導く清浄空気循環通路と、
前記清浄空気循環通路を流れる循環清浄空気を循環させる送風部と、
前記清浄空気循環通路上に設けられ、前記循環清浄空気を冷却する冷却部と、
前記清浄空気循環通路上の、前記循環清浄空気の流れにおける、前記冷却部の上流側に設けられる蓄熱部と、を備え、
前記蓄熱部は、ケミカルフィルタからなり、かつ、前記循環清浄空気を該ケミカルフィルタの内部を通過させて整流する整流構造を有し、前記循環清浄空気の熱を蓄熱して前記冷却部の負荷の低減を図ると共に、前記循環清浄空気に含まれる分子状の汚染物質を捕集する、
局所密閉型清浄化装置。
【請求項2】
前記蓄熱部は、かさ密度が0.1g/cm以上のケミカルフィルタからなる、請求項1に記載の局所密閉型清浄化装置。
【請求項3】
前記蓄熱部は、セミラックによって構成され、かつ、ハニカム構造を有する、請求項1又は請求項2に記載の局所密閉型清浄化装置。
【請求項4】
前記チャンバの電子部品製造装置側の側壁に形成され、前記インターフェース部と前記電子部品製造装置との間で電子部品を移送するための第1の移送口と、
前記チャンバの電子部品搬送装置側の側壁に形成され、前記電子部品搬送装置と前記インターフェース部との間で電子部品を移送するための第2の移送口と、
前記第1、第2の各移送口を開閉自在な開閉装置と、
前記電子部品移送の際に電子部品が通過する移送空間と、
を更に備え、
前記第1の移送口から移送される前記電子部品製造装置で製造された電子部品は、冷却が必要な温度を有し、前記移送空間において冷却された後、前記第2の移送口を介して前記電子部品搬送装置によって搬送される、
請求項1から請求項3のいずれか一に記載の局所密閉型清浄化装置。
【請求項5】
前記清浄空気循環通路からの循環清浄空気を清浄し、前記移送空間に供給するフィルタ装置と、
前記清浄空気循環通路の下流側の端部と連通し、前記フィルタ装置からの吹き出し風速を一様にするためのプレナムチャンバと、
を更に備える請求項1から請求項4のいずれか一に記載の局所密閉型清浄化装置。


【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−109250(P2010−109250A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−281404(P2008−281404)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(000169499)高砂熱学工業株式会社 (287)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】