局部洗浄装置及びこの局部洗浄装置を備えた便所装置
【課題】 着座から用便,手洗いという一連の動作を通じて使い勝手のよい局部洗浄装置を提供する。
【解決手段】 温水洗浄便座210では、便座214を軸支する便座支持体217を、収納ケース216の上面の最高点よりも上方に突出させて設け、さらに便蓋212および便座214の回転中心軸Pを、便座取付用穴99の位置を基準として、便器の水平前方に向かって42mm、鉛直上方に向かって60mmの位置に設ける。便座214および便蓋212を閉じた状態から便蓋212を開けると、便蓋212が、リム面98aから60mmという低い高さの回転中心軸Pを軸として回転し、便蓋212の先端は、洗浄タンク91の上端よりも低い位置において、洗浄タンク91の前面に当接する。
【解決手段】 温水洗浄便座210では、便座214を軸支する便座支持体217を、収納ケース216の上面の最高点よりも上方に突出させて設け、さらに便蓋212および便座214の回転中心軸Pを、便座取付用穴99の位置を基準として、便器の水平前方に向かって42mm、鉛直上方に向かって60mmの位置に設ける。便座214および便蓋212を閉じた状態から便蓋212を開けると、便蓋212が、リム面98aから60mmという低い高さの回転中心軸Pを軸として回転し、便蓋212の先端は、洗浄タンク91の上端よりも低い位置において、洗浄タンク91の前面に当接する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、局部洗浄装置に関し、詳しくは、洗浄水を吐水する吐水機構を収納したケースおよび便座を有し、該ケースが便器上面に設けられた取付孔により便器に取り付けられ、洗浄水を吐水して局部洗浄を行なう局部洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、トイレにおける局部洗浄装置の設置率が高まっている。この局部洗浄装置は、吐水機構をはじめとする機能部品を収納するケースや、着座のための便座や臭気の発散を防止するための便蓋等から構成され、便器と洗浄水タンクとの組み合わせからなる便所装置に装着される。この装着の手法としては、一般には、洋風便器の後部に形成された穴を利用して便器に装着する手法が採用されている。
【0003】
一方、局部洗浄装置が設置されるトイレ室内は、比較的狭いのが通例であり、便所装置や局部洗浄装置とは別に、独立した手洗器を設けられない場合が多い。そこで、狭いスペースでの手洗いを可能とするために、従来より、洗浄水タンクの頂面をボウル形状としつつ、タンク上部に手洗用の水を吐水するための管(以下、手洗用吐水管という)を設ける手法が採用されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような手洗用吐水管を備えた便所装置に局部洗浄装置を装着する場合には、開いた状態の便座や便蓋と手洗吐水管とが干渉してしまい、手洗いの使い勝手が悪くなってしまうという問題があった。この干渉の状態を図33および図34に示す。図33は、収納ケース916内の機能部品との干渉を回避して、収納ケース916の上方に便座や便蓋の回転軸の中心Zを設けた場合を示す。この場合に便座や便蓋を開けると、便座や便蓋を開けたときの便座や便蓋の先端の垂直位置も高くなるため、図34に示すように、手洗吐水管が便座や便蓋に隠れてしまう。
【0005】
一方、図35に示すように、便座や便蓋の回転軸Zを前方寄りに設ければ、便座や便蓋の回転半径が短くなり、便座や便蓋と手洗吐水管との干渉を防止することができる。しかしながら、便蓋を開けた状態の図36に示すように、回転軸Zを前方に移動した分だけ便座の奥行きが縮まるため、便座における着座可能領域が狭くなり、着座が不安定になるおそれがあった。また、便座を閉じたときの便器の鉢部の有効領域(便座の穴の面積と鉢部の面積とが重なり合う領域)が狭くなるため、小便や局部洗浄後の洗浄水が便座や便器に付着しやすくなるという欠点もあった。
【0006】
そこで、本発明は、上記の課題を解決し、手洗い器との干渉を生じさせることなく、着座から用便,手洗いという一連の動作を通じて使い勝手のよい局部洗浄装置を提供することを目的として、以下の構成を採った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の局部洗浄装置は、洗浄水を吐水する吐水機構を収納したケースおよび便座を有し、該ケースが便器上面に設けられた取付孔により便器に取り付けられ、前記洗浄水を吐水して局部洗浄を行なう局部洗浄装置であって、前記ケースは、前記便座を軸支するための便座支持体を、該ケースの上面の最高点よりも上方に突出して備え、前記便座を、前記便座支持体に回転可能に軸支すると共に、該軸支の回転中心を、前記ケースが前記便器に装着された状態において、前記取付穴から便器の前方に向かって42mmの位置よりも後方であり、かつ前記取付穴から上方125mmの位置よりも低い位置に設けたことを要旨とする。
【0008】
この局部洗浄装置によれば、便座および便蓋の少なくとも一方の部材とケースとの軸支の回転中心を、ケースが便器に装着された状態において、取付穴から便器の前方に向かって42mmの位置よりも後方の位置に設ける。従って、便座や便蓋の奥行きを大きくとることが可能となり、着座時における安定感が向上する。
【0009】
さらに、本発明の局部洗浄装置は、軸支の回転中心を、ケースが便器に装着された状態において、取付穴から上方125mmの位置よりも低い位置に設けるので、便座や便蓋を開けたときにおける便座や便蓋の先端の位置は低くなる。従って、開けた便座や便蓋の先端部分が、便座や便蓋よりも後側に設けられる手洗い器の前方に突出し、手洗い動作を邪魔することがない。このように、便座または便蓋についての軸支の回転中心を、便器の後方寄りに、低い高さで設けることで、着座から用便,手洗いという一連の動作を通じて、使い勝手のよい局部洗浄装置を提供することが可能となる。
【0010】
また、ケースに、便座を軸支するための便座支持体を、該ケースの上面の最高点よりも上方に突出して備えたので、便座や便蓋の形状は、便座や便蓋の回転の際にケースと干渉しないような形状とすることができる。
【0011】
また、便座および便蓋についての軸支の回転中心を、ケースが便器に装着された状態において、取付穴から便器の前方に向かって42mmの位置よりも後方の位置に設けるとともに、取付穴から上方125mmの位置よりも低い位置に設ける構成としてもよい。この構成によれば、便蓋のみを開けたときにも、便蓋先端の位置は低くなるので、開けた便蓋の先端部分が、便蓋よりも後側に設けられる手洗い器の前方に突出し、手洗い動作を邪魔することがない。従って、大洗浄,小洗浄のいずれの場合にも、使い勝手のよい局部洗浄装置を提供することができる。
【0012】
なお、便座支持体を、便座の開閉状態によらず、外部から視認可能に形成することも可能である。このような構成を採れば、局部洗浄装置の機能に関する表示体やセンサ等を、便座支持体に設けることができる。
【0013】
さらに、ケースに回転可能に軸支され、開閉可能とされた便蓋を、該便蓋が閉状態のとき、ケースおよび便座の上面の全範囲を覆うように構成してもよい。この構成を採れば、便座とケースとの取り合い部に汚れが入り込むことがなく、清掃が容易となる。
【0014】
本発明を、便所装置として把握することもできる。即ち、本発明の便所装置は、請求項1に記載の局部洗浄装置と、該局部洗浄装置を装着可能な便器と、該便器と連結されるタンクと、該タンクの上方に設けられる手洗い器とを備える。このように構成された便所装置によれば、請求項1に記載の便座または便蓋とケースとの軸支の回転中心を、便器の後方寄りに、低い高さで設けた局部洗浄装置を備えるので、開けた便座や便蓋の先端部分が、便座や便蓋よりも後側に設けられる手洗い器の前方に突出し、手洗い動作を邪魔することがない。従って、着座から用便,手洗いという一連の動作を通じて、使い勝手のよい便所装置を提供することが可能となる。
【0015】
さらに、また、本発明は、以下に説明するような様々な態様を採ることができる。
便座が閉状態のとき、該便座の後端部がケースの上面の少なくとも一部を覆うように構成することも可能である。この構成によれば、局部に当たって跳ね返った洗浄水によって、ケースの前端が汚れることを防止できる。
【0016】
軸支の回転中心を、取付穴から上方125mmの位置より低く、かつ前記ケース高さの1/2より高い位置に設けることも好適である。こうすれば、ケースの下方を有効に利用し、ケースの下方に、局部洗浄に必要な部品を設けるスペースを確保することができる。また、便蓋および便座をケースに回転可能に軸支すると共に、該軸支の回転中心を、取付穴から上方125mmの位置より低く、かつケース高さの1/2より高い位置に設ける構成としてもよい。
【0017】
また、ケースに、便蓋および便座を軸支するための便座・便蓋支持体を、該ケースの上面から上方に突出して備え、該便座・便蓋支持体を、便座または便蓋の開閉状態によらず、外部から視認可能に形成してもよい。こうすれば、便座・便蓋支持体に表示体を設けた場合に、この表示体の状態を、常に見ることができる。また、便座・便蓋支持体にセンサを設け、このセンサを、便座または便蓋の開閉状態に応じて動作させる構成とすることもできる。
【0018】
便座を閉じた状態において、ケースと便座との軸支部分の表面を、該ケースから該便座にかけて略連続する面として形成することも、清掃性や美感が向上する点で好ましい。また、便蓋を閉じた状態において、ケースと便蓋との軸支部分の表面を、該ケースから該便蓋にかけて略連続する面として形成すれば、便蓋を閉じた状態での清掃性や美感を高めることができる。
【0019】
また、便座や便蓋の形状は、便座や便蓋の回転の際にケースと干渉しないような形状とする必要がある。そこで、ケースの全高を140mm以下とすれば、ケースの上面を便座や便蓋が通過することを考慮して、便座や便蓋を大きく抉り取った形状に成形する必要がない。この結果、便座や便蓋とケースとの取り合い部分における清掃性やデザイン性を高めることができる。
【0020】
軸支の回転中心から前記部材の回転範囲におけるケースの外法までの最短距離を、35mm以下とすることも好適である。こうすれば、便座や便蓋を抉る範囲は、軸支の回転中心から前方に略35mmの範囲のみとなり、抉り取る範囲を最小限に抑えることができる。
【0021】
便座,便蓋という部材を、軸支の回転中心よりも後方に40mm以下の値で突出するよう形成することも望ましい。このような構成を採れば、便座や便蓋の回転時に、便座や便蓋の軸支の回転中心よりも後方に突出した部分がケースの前面や上面に当たることを考慮して、ケースを特殊な形状とする必要がない。
【0022】
便座,便蓋という部材を軸支するための軸支機構を、ケースの側面および部材の側面に露出しないように配設することも可能である。この構成によれば、ケースや便座,便蓋の側面に軸支機構が露出しないので、横幅の狭いスペースにも設置が可能となる。
【0023】
また、本発明の局部洗浄装置に、次のような構成を持たせることも可能である。
洗浄水を吐水する吐水機構を収納したケースおよび便座を有し、前記便座および便蓋を前記ケースに回転可能に軸支すると共に、該軸支されたケースを、上部に手洗い器を有するタンクと組み付け可能な便器に装着し、所定の指示に基づいて洗浄水を吐出して人体の局部を洗浄する局部洗浄装置であって、前記軸支の回転中心を、前記便座および前記便蓋において同一とするとともに、該便座および便蓋を軸支するための軸支機構を、記ケースの側面,便座の側面および便蓋の側面に露出しないように配設し、前記軸支の回転中心を、前記便座および前記便蓋を開いたときに、該便座および該便蓋の先端の位置が前記手洗い器の吐水口よりも下方に位置するように配置したことを要旨とする。
【0024】
この局部洗浄装置によれば、便座および便蓋を軸支するための軸支機構を、ケースの側面,便座の側面および便蓋の側面に露出しないように配設するとともに、軸支機構における軸支の回転中心を便座および便蓋において同一とする。従って、使用者の使用に際する種々の動作において、軸支機構との干渉が防止されるとともに、便座および便蓋の双方の開閉動作を一度に行なう際に、便座と便蓋との回転軌跡が同じとなるため、小さな力でスムーズに双方を開閉することができる。また、軸支の回転中心を、便座および便蓋を開いたときに、該便座および該便蓋の先端の位置が前記手洗い器の吐水口よりも下方に位置するように配置するので、便座および便蓋を開けた後に手洗い動作を行なう際に、開けた便座や便蓋の先端部分が、便座や便蓋よりも後側に設けられる手洗い器の前方に突出し、手洗い動作を邪魔することがない。このように、軸支機構を、使用者の一連の動作がスムーズとなるように構成することで、より使い勝手のよい局部洗浄装置を提供することが可能となる。
【0025】
便蓋をケースに軸支する構成としては、ケースの外側に向かって軸支するもの、ケースの内側に向かって軸支するもの、または、ケースの内側および外側に向かって軸支するものを考えることができる。また、便座についても、ケースの外側に向かって軸支するもの、ケースの内側に向かって軸支するもの、または、ケースの内側および外側に向かって軸支するものを考えることができる。
【0026】
便座,便蓋およびケースの形状を、該便座,便蓋およびケースの後部に至るに連れて幅が漸減する形状とすることも、取付穴近傍の上面が内側に張り出した特殊な形状の便器にも装着可能となる点で好適である。
【0027】
また、軸支の回転中心を、便座および便蓋において同一とすれば、便座と便蓋との回転軌跡が同じとなるため、便座および便蓋の双方の開閉動作を一度に行なう際に、小さな力でスムーズに双方を開閉することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、手洗い器との干渉を生じさせることなく、着座から用便,手洗いという一連の動作を通じて使い勝手のよい局部洗浄装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以上説明した本発明の構成及び作用を一層明らかにするために、以下本発明の局部洗浄装置について、その実施の形態を実施例に基づいて説明する。図1は、本発明の第1実施例である温水洗浄便座210の外観を表わす概略斜視図である。なお、以下の説明において、「前方」とは、便器や便座の先端に向かう方向を、「後方」とは、便器や便座の背面に向かう方向を、それぞれ示すものとして説明する。
【0030】
この温水洗浄便座210は、便器に装着して用いられ、使用者による所定の操作に基づいて、局部の洗浄や乾燥等の種々の機能を実行する。本実施例の温水洗浄便座210は、普通便座に替えて、種々の便器に後から装着するタイプのものであり、便器本体とは別体として構成されている。
【0031】
図1に示すように、温水洗浄便座10は、用便の際に人が着座するための便座214、開閉可能な便蓋212、上ケース216bと下ケース216aとの組み合わせからなる収納ケース216を備える。便座214や便蓋212は、ポリプロピレンを用いて成形され、後述する回転軸部材240を用いて収納ケース216に着脱可能に装着されている。この装着の態様の詳細については後述する。従って、図1に記載した符号のうち、便座214および便蓋212の装着に関わる部分の符号についての説明は、ここでは省略する。
【0032】
収納ケース216は、ABS(アクリロトニル・ブタジエン・エチレン樹脂)を用いて成形されており、その内部には、局部の洗浄や乾燥等の各種の衛生機能を実行するための機能部品が収納されている。この機能部品の内容につき、図2および図3に基づいて簡単に説明する。図2は、温水洗浄便座210内の水の流れを示すブロック図である。収納ケース216の左側面には、連結管52を介して分岐金具51と接続される給水アダプタ53が固着されている。給水本管からの水は、分岐金具51によって温水洗浄便座210方向に分岐され、分岐された水は、連結管52,給水アダプタ53を通じて、収納ケース216内に供給される。
【0033】
図2に示すように、給水アダプタ53の下流側には、バルブユニット54,熱交換器ユニット59,ノズルユニット68が接続される。これらの各ユニットは、収納ケース216の内部に収納されている。
【0034】
バルブユニット54は、給水アダプタ53を通じて給水された水の水圧を調整する減圧弁55、熱交換器ユニット59へ水を供給するか否かを通電に応じて制御する電磁弁56、給水された水の流路に位置する穴の空いた円盤を回転させる流調モータ67、この円盤の回転角度によって通水路の面積を変え、熱交換器ユニット59に供給する水の流量を切り換える水勢調節弁57等から構成される。
【0035】
熱交換器ユニット59は、供給された水を加熱して温水を生成するいわゆる瞬間式のヒータ61、生成された温水の温度を検知する温水用サーミスタ62、生成された温水の一部を貯溜する貯湯タンク60、貯湯タンク60内の温水の有無を検知するフロートスイッチ63、ノズルユニット68へ送出された温水が熱交換器ユニット59内へ逆流するのを防止する逆止弁65等から構成される。
【0036】
ノズルユニット68は、洗浄ノズル69、洗浄ノズル69の位置を移動させる駆動装置、肛門洗浄の際に洗浄ノズル69に温水を供給するための第1開閉弁、ビデ洗浄の際に洗浄ノズル69に温水を供給するための第2開閉弁等から構成される。
【0037】
また、収納ケース216の内部には、上記の3つのユニットに加えて、洗浄後の局部の乾燥機能を実行する温風ユニット58,室内の臭気の除去を実行する脱臭ユニット49,室内温度を調整する室内暖房ユニット39が収納ケース216に収納される。温風ユニット58は、吸気口と吹出し口が形成されたハウジングを備え、このハウジング内に、吸気を吹出し口に向けて送風する温風ファン、吸気を加熱して温風を生成する温風ヒータ、温風の温度を検知する温風サーミスタ等を収納する。脱臭ユニット49は、吸気口と排気口が形成されたダクトを備え、このダクト内に、外気を吸気するためのファンモータや臭気を吸着する触媒等を収納する。室内暖房ユニット39は、吸気口と温風吹出し口が形成されたケーシングを備え、このケーシング内に、室内の温度を検知する室温サーミスタ、吸気を吹出し口に向けて送風する室暖ファンモータ、吸気を加熱して温風を生成する室暖ヒータ等を収納する。
【0038】
さらに、収納ケース216の内部には、上記の各ユニット,便座暖房装置および表示装置の動作を制御するコントローラユニット70が収納される。このコントローラユニット70の構成について、図3を参照しつつ説明する。図3は、温水洗浄便座210の制御部を示すブロック図である。コントローラユニット70は、プログラムに従って各種演算処理を実行するためのCPU81を中心に、バス88により相互に接続された次の各部を備えている。ROM82は、CPU81での各種演算処理の実行に必要なプログラムやデータ等を予め格納するメモリである。RAM83は、CPU81で各種演算処理を実行するのに必要な各種データを一時的に格納するためのメモリである。バックアップRAM84は、記憶された温水洗浄便座10の非通電状態においてもデータを保持する、データの書き込みや記憶が可能なメモリである。
【0039】
入力処理回路は、リモコン装置71若しくは本体操作部40に設けられた操作ボタン71a〜oの操作に基づく信号や着座センサ41等の各センサからの検出信号を入力し、CPU81の処理可能な信号に変換する。出力処理回路は、入力信号を受け取ったCPU81での演算結果に応じ、上記の6つの各ユニット54,59,68,58,49,39や,便座暖房装置75,表示装置78,外部出力コネクタ79に信号を出力する。以上説明した各部を備えることにより、コントローラユニット70は、温水洗浄便座210の動作を制御する。
【0040】
なお、第1実施例では、後述する収納ケース216の小型化に伴い、上記の各ユニットを、収納ケース216内に収納可能に小型化している。
【0041】
リモコン装置71について、図3を参照しつつ簡単に説明する。本実施例では、局部の洗浄を開始するためのお尻洗浄ボタン71aやビデ洗浄ボタン71b、温風の吹き出しを開始するための乾燥ボタン71d、停止ボタン71c、水勢に強弱の変化をつけた洗浄水の噴出を設定するマッサージ設定ボタン71e、洗浄ノズル69を揺動させた局部の洗浄を設定するムーブ設定ボタン71f、洗浄水の温度を調節する吐水温設定ボタン71h、水勢の強弱を設定する水勢設定ボタン71g、洗浄ノズル69の位置を前後方向へ移動するノズル位置調節ボタン71i、脱臭状態を設定する脱臭ボタン71i、温風の温度を調節する温風温度設定ボタン71j、便座温度を調節する便座温度設定ボタン71k、室内暖房のオン,オフを設定する室内暖房ボタン71m、便座ヒータや室内暖房ヒータへの通電時期を設定するタイマ予約ボタン71n、温水洗浄便座全体の運転状態を設定する運転入/切ボタン71o等を設けている。これらの操作ボタンが操作されると、リモコンから送信された動作信号を、後述する便座・便蓋支持体217上に設けられた受信部222cが受信する。コントローラユニット70は、受信部222cでの受信内容を認識し、熱交換器ユニット59等の各ユニットに動作信号を送出する。
【0042】
以上のように構成された温水洗浄便座210の便器本体への取付け方法について図4および図5を参照しつつ説明する。図4に示すように、温水洗浄便座210は、便器への装着部材として、収納ケース216の底面と嵌合して温水洗浄便座210を固定するベースプレート74、ベースプレート74を便器本体に取り付けるための取付用ボルト77、取付用ボルト77の抜けを防止するためのゴムブッシュ79等を備える。ベースプレート74は、便器のリム後方よりも若干幅狭に形成された金属板である。
【0043】
図4に示すように、ベースプレート74上には、便座取付用穴99の位置や大きさに対応して、3種類のボルト挿入口75a,75b,75cが形成されており、このうち、ボルト挿入口75cにはキャップ76が着脱可能に嵌合されている。このように3種類の挿入口75a,75b,75cを形成することで、便器の種類によって便座取付用穴99の位置や大きさ等が異なる場合にも温水洗浄便座210を装着可能としている。
【0044】
勿論、このような構成に代えて他の構成、例えば、ベースプレート74の裏側に縦横方向に通る溝を設けておき、この溝に取付用ボルト77の頭部を嵌め込むような構成を採用してもよい。この構成によれば、取付用ボルト77を溝に沿って移動させて、取付用ボルト77の位置を便座取付用穴99の位置に合わせることにより、温水洗浄便座210を前後方向の所望の位置に設置することができる。
【0045】
以上のように構成されたベースプレート74、取付用ボルト77やゴムブッシュ79等を用いて、以下の要領で温水洗浄便座の便器本体への取付けを行なう。この様子を図5に示す。まず、便器本体の便座取付用穴99にゴムブッシュ79を差し込み、ベースプレート74をリム後方に乗せて便座取付用穴99とボルト挿入口75との位置を合わせる。次に、ボルト挿入口75に、座金78を介して取付用ボルト77を差し込んで締め付ける。これによって、取付用ボルト77がゴムブッシュ79下端のナットと螺合し、取付用ボルト77の締め付けに伴ってナットが持ち上げられて、便器本体にベースプレート74が固定される。次に、リム上面に沿って、便器の奥行き方向に温水洗浄便座をスライドさせ、収納ケース216の底面に設けられた溝をベースプレート74に嵌め込む。すると、着脱用レバー34がロックされて、便器本体に温水洗浄便座210が固定される。
【0046】
次に、第1実施例の温水洗浄便座210が備える特徴的な構成につき、図1,図6ないし図16に基づいて説明する。まず、便蓋212,便座214を軸支する収納ケース216の基本的な構成につき、図1,図9を参照しつつ簡単に説明する。図9は、収納ケース216の外観を表わす斜視図である。
【0047】
図1および図9に示すように、収納ケース216は、下ケース216aと上ケース216bとを組み合わせることにより構成されている。従って、この分割された2つのケース216a,216bのうちのいずれかのケースの形状を変更することにより、多種多様な形状の便器への装着が可能となる。
【0048】
上ケース216bは、その前面側に、なだらかな傾斜の傾斜面216cを有し、この傾斜面216cは、下向きの傾斜を有しつつ、便座214中央の開口部の後端付近まで前方に延出している。
【0049】
傾斜面216cの中央付近には、傾斜面216cから上方に突出した形状の便座・便蓋支持体217を備える。この便座・便蓋支持体217に、便蓋212,便座214が回転可能に軸支される。この便座・便蓋支持体217は、上ケース216bと同一の材料を用いて上ケース216bと一体に形成される。勿論、便座・便蓋支持体217を収納ケース216とは別部材として形成し、傾斜面216cに後から装着する構成としても差し支えない。
【0050】
便座・便蓋支持体217は、その頂上部に円弧形状の曲面部217bを備える。この曲面部217bは、便蓋212並びに便座214の回転中心軸Pと同心の円弧形状に形成されている。この曲面部217bは、図1に示すように、便蓋212,便座214を閉じた状態において、左右の便蓋支持部212b,便座支持部214bの間から露出している。
【0051】
次に、便座214の外観を図6に示す。図6に示すように、便座214は、便器のリム部上縁に重なる座部214a、座部214aから上方へ湾曲しつつ後方に延出した斜面部214c、斜面部214cの左右から斜め上後方に延出した便座支持部214bを有する。この便座支持部214bと便座・便蓋支持体217とを、後述する回転軸部材240で嵌合することにより、便座214の開閉が可能となる。なお、便座支持部214bの頂上部は、便蓋212並びに便座214の回転中心軸Pと同心の円弧形状に形成されている。
【0052】
一方、斜面部214cは、左右の便座支持部214bの間においては後方に延出されず、この左右の便座支持部214bの間は、斜面形状に形成された端面214dとされている。このため、図6に示すように、左右の便座支持部214bの内側面と端面214dにより、略コの字型の抉り部が形成されている。この抉り部の抉り深さは、便座・便蓋支持体217の高さに対応して設けられており、これにより、便座214の開閉時における便座214と便座・便蓋支持体217との干渉が防止される。
【0053】
便蓋212の外観を図7に示す。図7に示すように、便蓋212は、便器の鉢部を塞ぐ蓋部分212a、蓋部分212aから上方へ湾曲しつつ後方に延出した斜面部212cを備える。蓋部分212aから斜面部212cにかけての曲率は、座部214aから斜面部214cにかけての曲率とほぼ同じ値とされている。このため、便蓋212および便座214を開いたときの便座214の自立性能が確保される。また、重ね合わせた便蓋212と便座214との間には、シャープな接合線が生成されるので、デザイン的にも良好となる。
【0054】
また、便蓋212は、斜面部212cの左端および右端から後方に延出した便蓋支持部212bを有する。この便蓋支持部212bと便座・便蓋支持体217とを、後述する回転軸部材240で嵌合することにより、便蓋212の開閉が可能となる。なお、便蓋支持部212bの頂上部は、便蓋212並びに便座214の回転中心軸Pと同心の円弧形状に形成されている。
【0055】
一方、斜面部212cは、左右の便蓋支持部212bの間においては後方に延出されず、この左右の便蓋支持部212bの間は、斜面形状に形成された端面212dとされている。このため、図7に示すように、左右の便蓋支持部212bの内側面と端面212dにより、略コの字型の抉り部が形成されている。この抉り部の抉り深さは、便座・便蓋支持体217の高さに対応して設けられており、これにより、便蓋212の開閉時における便蓋212と便座・便蓋支持体217との干渉が防止される。
【0056】
便蓋212および便座214を閉じた状態における、便座支持部214bおよび便蓋支持部212bと収納ケース216との納まり関係について説明する。円弧形状に形成された便座支持部214bの頂上部と便蓋支持部212bの頂上部と便座・便蓋支持体217上を覆うカバー218の表面とは、ほぼ同一の曲面とされている(図1を参照)。従って、便蓋212および便座214を閉じた状態において、便蓋支持部212bと便座支持部214bとカバー218の上面との間には大きな段差がないので、便蓋支持部212bからカバー218にかけての範囲を一気に拭くことができ、便蓋212および便座214の軸支部位付近の清掃が容易となる。勿論、カバー218を用いない場合には、便座・便蓋支持体217の表面と便座支持部214bの頂上部と便蓋支持部212bの頂上部とを、ほぼ同一の曲面とすることもできる。
【0057】
温水洗浄便座210の上面,底面を表わす図8(A),図8(B)に示すように、便蓋212,便座214を閉じた状態においては、収納ケース216の側面と便座214および便蓋212の側面とは、前後方向および上下方向に連続したほぼフラットな面とされている。即ち、回転軸部材240等の便座214や便蓋212を軸支するための部材は、収納ケース216や便座214,便蓋212の左右の側面から突出せず、収納ケース216や便座214,便蓋212の外部に露出していない。このため、温水洗浄便座全体として一体感のある美しいデザインが保たれている。
【0058】
また、温水洗浄便座210の幅は、図8(A),図8(B)に示すように、便蓋212および便座214の後部から収納ケース216の後端につれて、だんだんと狭くなっている。従って、便器の後方のリム部が、便器の左右から内側方向に張り出しているような便器であっても、便器と干渉することなく良好に装着することができる。
【0059】
なお、図8(A)に示すように、第1実施例では、便蓋支持部212bに対して便座支持部214bを小さく形成し、便蓋212,便座214を閉じた状態において、便座支持部214bが外部に露出するよう構成する。この便座支持部214bを露出しない構成とすることも可能である。例えば、便蓋支持部212bから便座支持部214bにかけて延出するカバー部を設けるとともに、このカバー部を、便蓋支持部212bから連続した円弧形状に形成し、カバー部が便座214の便座支持部214bを上方から覆うように構成してもよい。こうすれば、便座214および便蓋212を閉じた状態において、便座支持部214bが外部から見えず、温水洗浄便座210のデザインが一層良好なものとなる。
【0060】
次に、収納ケース216の詳細な構成につき、図9および図10を参照しつつ説明する。図9に示すように、便座・便蓋支持体217の左右両端面には、後述する回転軸部材240を挿入可能な径の孔である嵌合孔217aが形成されている。この左右の嵌合孔217aに嵌合された回転軸部材240を便座214および便蓋212と嵌合することにより、便座214および便蓋212は上下に回転可能となる。
【0061】
便座・便蓋支持体217の曲面部217bには、左側に、便器前方での使用者の起立もしくは着座を検出する人体検出センサ222a,人体検出センサ222aとリモコンからの信号(例えば、赤外領域の光信号)を受光する受信部222cという各種の機能部が設けられている。また、曲面部217bの右側には、局部洗浄の動作状態や設定状態を表示する表示部222bという機能部が設けられている。
【0062】
表示部222bは、曲面部217bの内部にLED等の発光デバイスを組み込むことにより構成されている。表示部222bには、「運転」,「温水」,「着座」,「節電」という各項目に対応して4つの表示箇所が設けられている。リモコンの運転入/切ボタン71nにより「入」が設定された場合には、「運転」という項目に対応する表示箇所が点灯する。同様に、温水の吐出がオン状態に設定されている場合、着座を検知した
場合、節電モードに設定された場合には、それぞれ、「温水」、「着座」、「節電」という各項目に対応する表示箇所が点灯する。
【0063】
人体検出センサ222a,受信部222c表示部222bという各種の機能部が設けられた曲面部217bは、曲面部217bに対して着脱自在に装着されたカバー218によって覆われている。このカバー218は、ポリプロピレン等の光透過性の高い樹脂で形成されている。従って、人体検出センサ222aや受信部222cの受光状態を悪化させることがなく、また、表示部222bからの発光状態の視認性を悪化させることもない。
【0064】
カバー218の形状は、曲面部217bに倣った曲面形状、即ち、便蓋212並びに便座214の回転中心軸Pと同心の円弧形状であり、カバー218の外側の円弧は、便座支持部214bおよび便蓋支持部212bの頂上部の円弧と略同径となるように形成されている。このカバー218により、人体検出センサ222a等の水濡れ等に伴う機器の損傷を回避することができる。また、カバー218を曲面部217bに対して着脱自在としたことにより、カバーの破損に伴う交換が容易となる。
【0065】
なお、第1実施例では、便座・便蓋支持体217に、人体検出センサ222a,受信部222c,表示部222bを設置するが、これ以外の機能部や表示部を、便座・便蓋支持体217や傾斜面216cに設置してもよい。例えば、収納ケース216内の温風ファンと管路で接続された開口を設け、便座214に着座した使用者の背中に向けて温風を吹き出す構成としても差し支えない。
【0066】
収納ケース216の側面形状を図10に示す。収納ケース216の高さhは、最も高い位置である便座・便蓋支持体217の頂部において95mmの高さに形成されており、設置に伴う省スペース化や軽量化を実現するシンプルなフォルムとされている。また、収納ケース216の右側の側面には、お尻洗浄等の主要な機能の実行を指示するための本体操作部40を、前述したリモコン装置71とは別に設けている。
【0067】
図10に示すように、第1実施例では、左右の嵌合孔217aの中心である回転中心軸Pを、収納ケース216の最大高さhの中点Tよりも上側に設ける。このため、便蓋212,便座214を開閉すると、便蓋212,便座214は、収納ケース216の側面や傾斜面216cの上方の部分のみを通過する。従って、収納ケース216の側面や傾斜面216cの下方の領域は、便蓋212,便座214の開閉動作の影響を受けないので、この下方の領域を利用して種々の部品を設けることができる。例えば、給水アダプタ53や便座暖房用のコード等の収納ケース216から所定の長さだけ突出して設けられる部品を、便蓋212,便座214の開閉動作に干渉することなく設けることが可能となる。また、収納ケース216の上側に回転軸部材240等の軸支部材が設けられるので、軸支部材と干渉しない収納ケース216の側面の下方に、本体操作部40を大きな範囲で設置することができる。また、収納ケース216の両側面の下方には軸支部材が存在しないので、収納ケース216の両側面の下方を両手で持ちやすくなり、温水洗浄便座210を容易に移動させることができる。従って、温水洗浄便座210の装着時における作業性が飛躍的に向上する。
【0068】
また、回転中心軸Pから便座・便蓋支持体217の外法までの距離rは、便蓋212,便座214の開閉の際に端面212d,端面214dが便座・便蓋支持体217の上方を通過する範囲(図10において斜線で示した範囲)において、約18mmという小さな値とされている。
【0069】
便座214および便蓋212と収納ケース216との装着部位の様子を図11に示す。図11に示すように、回転軸部材240は、中心軸240aと、この中心軸240aに装着される2つの回転軸(第1回転軸240bおよび第2回転軸240c)から構成されている。中心軸240aに装着された第1回転軸240b,第2回転軸240cは、中心軸240aと同じ軸心を有する。従って、第1回転軸240b,第2回転軸240cは、ともに軸線J−Jを回転中心とし、この軸線J−Jの周りに回転可能となる。
【0070】
一方、便蓋212の便蓋支持部212bは、円柱状に厚肉形成された肉厚端部212fに、回転軸部材240の第2回転軸240cと略同径で非貫通の嵌合孔212gを備える。また、便座214の便座支持部214bは、その中央を貫通する、回転軸部材240の第1回転軸240bと略同径の嵌合孔214kを備える。
【0071】
なお、第2回転軸240cないし嵌合孔212gの直径寸法や肉厚端部212fの厚みは、まず、便蓋支持部212bの後端から軸線J−J´までの距離fを約18mmとした上で、この距離fに適合するように定められる。また、第1回転軸240bないし嵌合孔214kの直径寸法や便座支持部214bの厚みは、まず、便座支持部214bの後端から軸線J−J´までの距離eを約16mmとした上で、この距離eに適合するように定められる。
【0072】
便座・便蓋支持体217の嵌合孔217aには、回転軸部材240の中心軸240aが嵌合され、中心軸240aに装着された第1回転軸240b,第2回転軸240cには、便座支持部214bの嵌合孔214k,便蓋支持部212bの嵌合孔212gがそれぞれ嵌合される。これにより、便蓋212,便座214は、便座・便蓋支持体217に支持されるとともに、それぞれ第2回転軸240c,第1回転軸240bの回転により、上下に開閉可能とされる。この開閉の際、第1回転軸240b,第2回転軸240cは、ともに中心軸240aの軸心を中心として回転する。このため、便蓋212並びに便座214の回転中心軸Pは、中心軸240aの軸心となる。
【0073】
なお、第1実施例では、便蓋212や便座214を閉じたときの第1回転軸240bや第2回転軸240cの回転速度を、回転の進行に伴って遅くする機構(以下、ソフト開閉機構という)を、回転軸部材240に内蔵する。このソフト開閉機構は、第1回転軸240bおよび第2回転軸240cの内部に設けられたスプリングにより、第1回転軸240bおよび第2回転軸240cに対して抵抗をかけ、回転動作にブレーキをかけることにより実現されている。これにより、便器の近傍付近においては、便蓋212や便座214の閉止速度が遅くなり、便蓋212や便座214の取扱いが簡便なものとなる。
【0074】
便座・便蓋支持体217により支持された状態の便蓋212,便座214の断面を図12に示す。この図12においては、便蓋212の断面を実線で、便座214および収納ケース216の断面を二点鎖線で表わしている。図12に示すように、便蓋212の嵌合孔212gには、回転軸部材240の第2回転軸240cが、中心軸240aの軸心(即ち、便蓋212の回転中心軸P)を回転中心として嵌合されている。この状態において、便蓋212の端面212dと便座・便蓋支持体217の曲面部217b上に装着されたカバー218(図示せず)との間には、約1mm程度のクリアランスが形成されている。
【0075】
また、便座214の嵌合孔214kには、第2回転軸240cの内側の第1回転軸240bが、中心軸240aの軸心(即ち、便座214の回転中心軸P)を回転中心として嵌合されている。この状態において、便座214の端面214dと便座・便蓋支持体217の曲面部217b上に装着されたカバー218(図示せず)との間には、約2mm程度のクリアランスが形成されている。
【0076】
曲面部217bの頂上部に装着されたカバー218の形状と便蓋支持部212bの頂上部の形状は、ともに、便蓋212並びに便座214の回転中心軸Pと同心の円弧形状であり、カバー218の外側の円弧は、便座支持部214bの頂上部の円弧と略同径となるように形成されている。このため、カバー218と左右の便蓋支持部212b,便座支持部214bとは、同じ円弧形状を有し、しかも同面に納まる。従って、部材同士の連続性や一体性が確保され、温水洗浄便座全体としての美感が確保される。
【0077】
このように便座・便蓋支持体217に支持された便蓋212や便座214を開閉したときの様子を、図13および図14を参照しつつ説明する。図13は、便蓋212が開状態にある場合の概略斜視図である。便蓋212の回転に伴って、端面212dは、回転中心軸Pを中心とした円弧軌跡を描きながら、曲面部217b上のカバー218との所定のクリアランスを保持しつつ、カバー218の周囲を回転移動する。
【0078】
図13に示すように、便蓋212を開けた状態においても、左右の便蓋支持部212b,便座支持部214bの間からは、便座・便蓋支持体217のカバー218で覆われた部分が露出している。
【0079】
また、便蓋212のみを開けた状態において、円弧形状の便蓋支持部212b,便座支持部214bの頂上部と便座・便蓋支持体217上を覆うカバー218の表面とは、ほぼ同一の曲面とされている。従って、便蓋212のみを開けた状態においても、便蓋支持部212bと便座支持部214bとカバー218の上面との間には大きな段差がなく、便蓋212および便座214の軸支部位付近の清掃が容易となる。勿論、カバー218を用いない場合には、便座支持部214bの頂上部と便座・便蓋支持体217の表面とを、ほぼ同一の曲面とすることもできる。
【0080】
さらに、便座214を開くと、便座214は、便蓋212と共通の回転中心軸Pを中心として回転する。このため、便座214の端面214dは、便座214の回転に伴い、カバー218の周囲を、カバー218との所定のクリアランスを保持しつつ移動する。本実施例では、端面214dとカバー218とのクリアランスを、端面212dとカバー218とのクリアランスよりも若干大きく設定している。
【0081】
図14に示すように、便蓋212および便座214を開けた状態においても、便座・便蓋支持体217のカバー218で覆われた部分が、左右の便蓋支持部212b,便座支持部214bの間から露出している。つまり、第1実施例では、便座・便蓋支持体217の曲面部217bが、便座214や便蓋212の開閉状態に拘わらず露出する構成となっており、曲面部217bに設けられた人体検出センサ222aや受信部222c,表示部222bの状態を、カバー218越しに常に確認することができる。
【0082】
また、便座214を開くと、便座214の斜面部214cに覆われていた上ケース216bの傾斜面216cが外部に露出する。なお、第1実施例では、便座214を閉じた状態では、便座214が傾斜面216cの全部を覆っており、傾斜面216cが全く見えない構成としているが、便座214を閉じた状態において傾斜面216cの一部が露出しており、便座214を開くとともに傾斜面216cの全部が露出する構成としてもよい。
【0083】
このように、曲面部217bとカバー218の形状を、便蓋212および便座214の回転中心軸Pを中心とした円弧形状としたことにより、便蓋212および便座214の開閉時におけるカバー218や曲面部217bとの干渉を簡単かつ確実に回避することができる。例えば、嵌合孔217aの位置を、便蓋212および便座214の開閉の際に端面212dおよび端面214dが干渉しない位置にずらしたり、端面212dおよび端面214dの形状を、便蓋212および便座214の開閉の際にカバー218と干渉しない形状に加工したりする必要がない。
【0084】
次に、便蓋212,便座214の回転中心軸Pの位置について、図15および図16を参照しつつ説明する。図15は、便器98に装着された状態の温水洗浄便座210について、便蓋212および便座214の回転中心軸P付近の縦断面を示す説明図である。この図15においては、便器98および便座214の断面を実線で、便蓋212および収納ケース216の断面を二点鎖線で表わしている。
【0085】
図15に示すように、便座取付用穴99付近に取り付けられたベースプレート74には、収納ケース216の底面に設けられた溝が嵌め込まれ、これにより温水洗浄便座210が便器98に固定されている。このように固定された状態において、便蓋212および便座214の回転中心軸Pは、便器98のリム面98aから大きく離間しない位置であって、しかも、便座取付用穴99の位置する便器98の後方寄りの位置に設けられている。
【0086】
また、図15に示す状態において、回転中心軸Pから便座214の後端Rまでの点PR間の距離、回転中心軸Pから便蓋212の後端Qまでの点PQ間の距離は、それぞれ図11に示した便座支持部214bの後端から軸線J−J´までの距離e、便蓋支持部212bの後端から軸線J−J´までの距離fに相当する。従って、点PR間の距離,点PQ間の距離は、それぞれ約18mm,約16mmという小さな値となる。
【0087】
便座取付用穴99と回転中心軸Pとの位置関係を図16のグラフに示す。図16は、図15における便座取付用穴99の位置を原点Oとし、原点Oからの水平距離をX軸、原点Oからの垂直距離をY軸にとったグラフであり、このグラフ上に回転中心軸Pの位置を座標として示している。即ち、このグラフにおいて、X軸は、回転中心軸Pの便座取付用穴99からの水平距離を、Y軸は、回転中心軸Pのリム面98aからの高さを、それぞれ意味する。この水平距離や高さについては、単位mmを用いて表わし、X座標の右方向は便器98の前方を、Y座標の上方向は便器98の上方を、それぞれ示す。
【0088】
第1実施例の温水洗浄便座210では、図16に示すように、便蓋212および便座214の回転中心軸Pを、便座取付用穴99から便器の水平前方に向かって42mm、便座取付用穴99から鉛直上方に向かって60mmの位置に設けている。
【0089】
このように構成された温水洗浄便座210を便器98に装着し、便蓋212や便座214を開閉したときの様子を、図17ないし図19に示す。なお、図17ないし図19に示す例では、ベースプレート74上の3種類のボルト挿入口75a,75b,75cのうち、後方寄りの穴であるボルト挿入口75cのキャップ76を外し、このボルト挿入口75cに取付用ボルト77を差し込んで、温水洗浄便座210を便器98に固定している。
【0090】
図17に示した便座214および便蓋212を閉じた状態から便蓋212を開けると、便蓋212が回転中心軸Pを軸として回転し、便蓋212の先端が洗浄タンク91に当接する。この状態を図18に示す。便蓋212は、リム面98から60mmという低い高さの回転中心軸Pを軸として回転する。このため、図18に示すように、便蓋212の先端は、洗浄タンク91の上端よりも低い位置において、洗浄タンク91の前面に当接している。
【0091】
便座214,便蓋212の回転中心軸Pは、便座取付用穴99から水平方向に42mmという便器98の後方寄りに位置するため、回転中心軸Pからリム面98aの先端までの距離は長く確保され、この距離の範囲をカバーするように便座214,便蓋212が設けられる。このため、便座214の着座可能領域は、図18に示すように、広く確保されている。
【0092】
便蓋212や便座214の回転中心軸P,即ち、回転軸部材240の軸心は便器98の後方寄りに位置するため、この回転軸部材240が嵌合される収納ケース216の位置も、便器98の後方寄りとなる。従って、図18に示すように、収納ケース216の前端は、鉢部94の後端よりも前方に進出せず、装着された収納ケース216が鉢部94の後部を覆ってしまうことがない。
【0093】
加えて、前述したように、収納ケース216は、閉状態の便座214の下側を潜りながら、便座214中央の開口部の後端まで、前方に延出している。つまり、図18において、便座214中央の開口部の後端と収納ケース216の前端と鉢部94の後端とは、ほぼ同一の鉛直線上に配置されている。この結果、便座214の開口部として刳り抜かれた領域は、収納ケース216の前端に遮られることなく、等しく下方の鉢部94に臨む。このように、便蓋212のみを開いたときにおける便器98の鉢部94の有効領域は、広く確保されている。
【0094】
図18に示した状態から便座214を開けると、便座214は、回転中心軸Pを軸として回転し、開状態の便蓋212に重なる。この状態を図19に示す。便座214は、リム面98から60mmという低い高さの回転中心軸Pを軸として回転する。このため、図19に示すように、開状態の便座214の先端の位置
は、便蓋212の先端と同様に、洗浄タンク91の上端よりも低い位置となる。
【0095】
また、前述したように、収納ケース216の前端は、鉢部94の後端よりも前方に進出せず、装着された収納ケース216が鉢部94の後部を覆ってしまうことがない。従って、便蓋212,便座214の双方を開いたときにおいても、便器98の鉢部94の有効領域は、広く確保されている。
【0096】
以上説明したように、第1実施例の温水洗浄便座210は、便蓋212および便座214の回転中心軸Pを、便座取付用穴99から便器の水平前方に向かって42mmという、便器98の後方寄りの位置に設ける。従って、便座214の着座可能領域を広く確保して、着座時における安定感を良好なものとすることができる。
【0097】
さらに、第1実施例の温水洗浄便座210は、便蓋212および便座214の回転中心軸Pを、便座取付用穴99から鉛直上方に向かって60mmという低い高さの位置に設けたので、開状態における便蓋212や便座214の先端の位置は、洗浄タンク91の上端よりも低い位置となる。従って、開けた便座214や便蓋212が、洗浄タンク91の上部に設けられた手洗用吐水管92ないし吐水口92aを覆ってしまうことがなく、手洗いをスムーズに行なうことができる。
【0098】
また、第1実施例では、便座214中央の開口部の後端と収納ケース216の前端と鉢部94の後端とを、ほぼ同一の鉛直線上に配置する。従って、便蓋212や便座214を開いたときにおける便器98の鉢部94の有効領域を広く確保することが可能となり、用便時における収納ケース216への汚れの付着を防止することができる。
【0099】
更に、第1実施例では、回転中心軸Pを便器98の後方寄りとするに伴って、後方にずれた分だけ便蓋212,便座214の奥行きを大きく形成している。従って、小さな便蓋や便座の付いた温水洗浄便座を無理に後方にずらして設置した場合と比較して、用便時における便座214や便器98への汚れの付着を効果的に防止することができる。
【0100】
第1実施例の温水洗浄便座210は、便座214を閉じた状態において、便座214が、前方に延出する収納ケース216の傾斜面216cを覆う。このため、局部に当たって跳ね返った洗浄水が収納ケース216に直接当たることがない。従って、収納ケース216が汚れることを防止できるほか、収納ケース216内に収納された各種の機能部品を水から保護することができる。
【0101】
なお、前述したように、第1実施例では、収納ケース216の高さhを95mmの高さとして、収納ケース216を小型化し、この収納ケース216内に熱交換器ユニット59等の機能部品を収納する。一方、このように収納ケース216の高さを低くしつつも、第1実施例では、収納ケース216の先端を、便座214の軸支位置よりも前方に、便座214中央の開口部の後端付近まで延出する。この延出により、便座214の軸支位置から便座214中央の開口部の後端付近までの範囲に、収納空間が形成される。従って、この収納空間を機能部品の収納スペースとして活用すれば、高さの低い収納ケース216であっても、より多くの機能部品を収納することが可能となる。
【0102】
また、第1実施例の温水洗浄便座210は、各種のユニットを収納する収納ケース216を、最も高い位置において95mmという低い高さで形成している。従って、収納ケース216の上面を便座214や便蓋212が通過することを考慮して、左右の便座支持部214b,便蓋支持部212bに挟まれた端面214d,端面214dを、深く抉り取った形状に成形する必要がない。この結果、便座214や便蓋212の成形が容易となり、便座214や便蓋212と収納ケース216との取り合い部分における清掃性を高めることができる。なお、ケースの全高を95mm未満とすれば、便座214や便蓋212の抉り部の大きさをさらに小さくすることが可能となる。
【0103】
さらに、便座214および便蓋212の回転中心軸Pから便座・便蓋支持体217の外法までの距離rを、便蓋212,便座214の開閉の際に端面212d,端面214dが便座・便蓋支持体217の上方を通過する範囲において、約18mmという小さな値とする。従って、便座214や便蓋212を、回転中心軸Pの軸線から前方に約18mmだけ抉り取った形状に成形すれば、便座214や便蓋212の回動の際における便座・便蓋支持体217との干渉を防ぐことが可能となり、便座214や便蓋212を抉り取る範囲を最小限に抑えることができる。なお、上記の回転中心軸Pから便座・便蓋支持体217の外法までの距離rを、上記の端面212d,端面214dが通過する範囲において、35mm以下の値とすれば、便座214や便蓋212を抉り取る範囲を従来よりも小さくすることが可能となる。
【0104】
また、第1実施例では、回転中心軸Pから便蓋212の後端Rまでの距離,回転中心軸Pから便座214の後端Qまでの距離を、それぞれ約18mm,約16mmという小さな値とする。このため、便座214や便蓋212は、回転中心軸Pよりも後方に、従来よりも短い長さで突出する。従って、便座214や便蓋212の回転の際に、便座214や便蓋212の回転中心軸Pよりも後方に突出した部分が収納ケース216の前面や上面に当たることが防止され、便座214や便蓋212のスムーズな回動が確保される。また、このような収納ケース216との干渉を防止するために、収納ケース216を特殊な形状とする必要がなく、収納ケース216の成形が容易となる。なお、上記の回転中心軸Pから便蓋212の後端Rまでの距離や回転中心軸Pから便座214の後端Qまでの距離を40mm以下の値とすれば、回転中心軸Pより後方への突出長が従来よりも短くなり、上記と同等の効果を得ることができる。
【0105】
第1実施例の温水洗浄便座210においては、収納ケース216の側面と便座214および便蓋212の側面とを、前後方向および上下方向に連続したほぼフラットな面に形成し、回転軸部材240を、収納ケース216,便座214および便蓋212の側面に露出しないように配設する。従って、横幅の狭いスペースにも設置が可能となる。また、収納ケース216の側面に設けられた本体操作部40を操作する際、回転軸部材240が操作の邪魔にならないので、操作をスムーズに行なうことができる。
【0106】
また、回転軸部材240を構成する便座214に嵌合される第1回転軸240b,便蓋212に嵌合される第2回転軸240cは、ともに同じ軸心を有し、便座214および便蓋212は、ともに共通の回転中心軸Pを中心として回転する。このため、便座214および便蓋212は、開閉時に同じ回転軌跡を描く。従って、便座214および便蓋212が閉じた状態から一度に便座214および便蓋212の双方を開けようとする場合において、便座214を小さな力で持ち上げるだけで、便座214および便蓋212の双方をスムーズに開けることができる。
【0107】
なお、第1実施例の温水洗浄便座210では、便座214を収納ケース216の内側および外側に向かって軸支する。即ち、温水洗浄便座210の上面を表わす図20に示すように、便座・便蓋支持体217の左右両端面の回転軸部材240は、円筒状に形成された便座支持部214bの嵌合孔214kを貫通しており、便座214は、収納ケース216の内側および外側の両方向に向かって回転軸部材240に軸支されている。また、第1実施例の温水洗浄便座210では、便蓋212を収納ケース216の内側に向かって軸支する。即ち、回転軸部材240は、便座支持部214bの嵌合孔214kを貫通した後、便蓋支持部212bの嵌合孔212gに嵌合しており、便蓋212は、収納ケース216の内側に向かって回転軸部材240に軸支されている。
【0108】
便蓋212,便座214が回転軸部材240に軸支される方向は、上記の第1実施例における方向に限らず、これ以外の方向としても差し支えない。例えば、図21は、便蓋212を収納ケース216の内側および外側に向かって軸支し、便座214を収納ケース216の内側に向かって軸支する変形例を示す。即ち、図21に示すように、便座・便蓋支持体217の左右両端面の回転軸部材240は、円筒状に形成された便蓋支持部212baの嵌合孔212gaを貫通し、この後、便座支持部214baの嵌合孔214kaに嵌合している。
【0109】
このように、便蓋212や便座214を、収納ケース216の内側に向かって軸支することにより、回転中心軸Pを便器の後方寄りに設けた分だけ便蓋212や便座214の大きさを大きくした場合であっても、軸支された便蓋212や便座214に十分な強度を確保することができる。また、便蓋212や便座214を外すためには大きな動きが必要となるので、通常の開閉動作の際に誤って外れてしまうという不具合を回避することができる。
【0110】
また、図22は、便蓋212および便座214を収納ケース216の外側に向かって軸支する変形例を示す。即ち、図22に示すように、収納ケース216pの左右から内側方向に延出した2本の回転軸部材240pは、便蓋支持部212bpの嵌合孔212gpに嵌合している。この回転軸部材240pの直下においては、図示しない2本の回転軸部材が、収納ケース216pの左右から内側方向に延出しており、この2本の回転軸部材に便座支持部の嵌合孔が嵌合している。即ち、便蓋212,便座214は、それぞれ、収納ケース216pの外側に向かって回転軸部材に軸支されている。
【0111】
このように、便蓋212や便座214を、収納ケース216の外側に向かって軸支することにより、回転中心軸Pが低い位置にあるにも拘わらず、収納ケース216内の左右の空間に、熱交換器ユニット59等の各ユニットを配置するスペースSPを大きくとることが可能となる。このスペースSPの範囲を、斜線を用いて図22に示す。また、回転中心軸Pを便器の後方寄りに設けた分だけ便座214や便蓋212の大きさを大きくした場合であっても、便座214や便蓋212を小さな動きで簡単に外すことができる。この結果、清掃時における便座214や便蓋212の着脱がスムーズとなる。
【0112】
次に、本発明の第2実施例について説明する。図23は、第2実施例としての温水洗浄便座10の外観を表わす斜視図である。図23に示すように、温水洗浄便座10は、第1実施例の温水洗浄便座210とほぼ同様の構成を採る。即ち、温水洗浄便座10は、便座12、便蓋14、上ケース16aと下ケース16bに分割された収納ケース16等を有し、この収納ケース16内に熱交換器ユニット59等の各ユニットを収納する。また、温水洗浄便座10は、図2で説明したと同様の各機能部や図3で説明したと同様の各制御部を備えている。便器本体への取付け方法についても、第1実施例の温水洗浄便座210とほぼ同様である。
【0113】
温水洗浄便座10の形状について説明する。図23に示すように、温水洗浄便座10では、収納ケース16の側面と便座12および便蓋14の側面とを、前後方向および上下方向に連続したほぼフラットな面に形成し、ヒンジ軸26,28を、収納ケース16の側面に露出しないように配設する。従って、横幅の狭いスペースにも設置が可能となる。
【0114】
収納ケース16の高さは、最も高い位置で140mmの高さとなるように形成されており、収納ケース16の左右の袖部16kにおいても140mmの高さとされている。この袖部16kの高さに対応して、便座12および便蓋14は、左右の袖部16kに臨む後方の部分が抉り取られた形状に成形されている。また、温水洗浄便座10の上面を表わした図24に示すように、温水洗浄便座10の横幅は、便蓋14および便座12の後部から収納ケース16の後端につれて、だんだんと狭くなっている。
【0115】
一方、第2実施例の温水洗浄便座10は、便座12,便蓋14を収納ケース16に軸支する態様に
関し、以下の三つの点で、第1実施例の温水洗浄便座210と異なる。即ち、第一の相違点は、便座12,便蓋14を別々の回転軸を用いて軸支する点であり、第二の相違点は、便座12および便蓋14を収納ケース16の外側に向かって軸支する点である。第三の相違点は、便座12,便蓋14の回転中心軸と便座取付用穴99との位置関係が異なる点である。以下、これらの点について説明する。
【0116】
まず、第一および第二の相違点について、図25を参照しつつ説明する。図25は、便座12および便蓋14を取り付けるヒンジ部の構造を示す説明図である。図25に示すように、上ケース16aの中央には、便座12および便蓋14を収納ケース16に連接する空間であるヒンジチャンバ16pが形成されている。勿論、収納ケース16の前面が下ケース16bの一部となるように下ケース16bを成形し、下ケース16bにヒンジチャンバ16pを形成する構成としても差し支えない。
【0117】
便座12および便蓋14は、その後方端部に、収納ケース16への連接部としてのヒンジブロック12a,14aを備える。このヒンジブロック12a,14aの内部には、便座12および便蓋14を閉じるときに抵抗を与えて緩やかに動作させるための開閉ユニット22,24が組み込まれている。
【0118】
ヒンジブロック12a,14aの右端面には、外側方向に突き出る円形断面のピン12b,14bが、開閉ユニット22,24の回転軸との同軸上に設けられている。一方、ヒンジブロック12a,14aの左端面の開閉ユニット22,24側には、ピン12b,14bと同軸となるように、外側方向に突き出る四角形断面のヒンジ軸26,28を設ける。
【0119】
ヒンジチャンバ16pは、便座12および便蓋14のヒンジブロック12a,14aを収納してこれらの回転動作を許容する大きさを有する。このヒンジチャンバ16pの間口方向の両端の内壁には、縦方向に装着溝16qが形成されている。装着溝16qは、後述するリテーナブロック30を収納ケース16に装着するために設けられた溝である。この装着溝16qの下端部分にはスリット16rが設けられており、このスリット16rによってリテーナブロック30が着脱可能に拘束される。
【0120】
リテーナブロック30は、便座12および便蓋14を収納ケース16に連接するための一対の部材であり、その下端部に弾性変形可能な爪30aを備えている。更に、右側のリテーナブロック30には、便座12のピン12bおよび便蓋14のピン14bを挿入してこれらを回転自在に支持するための支持孔30b,30cが設けられている。また、左側のリテーナブロック30には、便座12および便蓋14用のそれぞれの開閉ユニット22,24から突き出したヒンジ軸26,28を嵌合してこれらを固定する固定孔30d,30eを開ける。固定孔30d,30eは、ヒンジ軸26,28と同様に四角形の開口断面を有する。
【0121】
以上の構成において、収納ケース16への便座12及び便蓋14の装着は以下の要領で行なう。まず、便座12及び便蓋14のそれぞれの開閉ユニット22,24にヒンジ軸26,28を差し込み、内部の抵抗機構にこれらを連結する。次いで、一方のリテーナブロック30の支持孔30b,30cにそれぞれ便座12及び便蓋14のピン12b,14bを差し込むと同時に、ヒンジ軸26,28を固定孔30d,30eに嵌め込む。即ち、便座12及び便蓋14は、リテーナブロック30を介し、収納ケース16の外側に向かって収納ケース16に軸支される。
【0122】
これにより、便座12と便蓋14は2個のリテーナブロック30によって一体化され、便座12のヒンジブロック12aが下側に、便蓋14のヒンジブロック14aが上側に、2段配置として組み合せられる。即ち、便座12と便蓋14とは、別々のヒンジ軸26,28を用いて収納ケース16に軸支される。
【0123】
更に、図25に示すように、左右のリテーナブロック30及びヒンジブロック12a,14aをヒンジチャンバ16pの中に落とし込み、リテーナブロック30を装着溝16qの中に嵌め込む。そして、リテーナブロック30を最も下まで押し込むと、これと同時に爪30aがスリット16rの中に入り込んで係合し、リテーナブロック30はヒンジチャンバ16pの中に強固に固定される。
【0124】
以上の要領で便蓋14および便座12が収納ケース16に組み付けられる。便蓋14や便座12が開閉されたとき、ヒンジ軸28,26はリテーナブロック30の固定孔30e,30dに拘束されているので、これらのヒンジ軸28,26は回転せず、ヒンジ軸28,26をそれぞれ回転中心軸P1,P2として、開閉ユニット24,22がヒンジ軸28,26の周りを回動し、便蓋14と便座12とは姿勢を変えることになる。
【0125】
次に、第三の相違点について、図26および図27を参照しつつ説明する。図26は、便器98に装着された状態の温水洗浄便座10の右側面を示す説明図である。図26に示すように、便座取付用穴99付近に取り付けられたベースプレート74には、収納ケース16の底面に設けられた溝が嵌め込まれ、これにより温水洗浄便座10が便器98に固定されている。このように固定された状態において、便蓋14の回転中心軸P1,便座12の回転中心軸P2は、便器98のリム面98aから大きく離間しない位置であって、しかも、便座取付用穴99の位置する便器98の後方寄りの位置に設けられている。
【0126】
便座取付用穴99と回転中心軸P1,P2との位置関係を図27のグラフに示す。図27は、図26における便座取付用穴99の位置を原点Oとし、原点Oからの水平距離をX軸、原点Oからの垂直距離をY軸にとったグラフであり、このグラフ上に回転中心軸P1,P2の位置を座標として示している。即ち、このグラフにおいて、X軸は、回転中心軸P1,P2の便座取付用穴99からの水平距離を、Y軸は、回転中心軸P1,P2のリム面98aからの高さを、それぞれ意味する。この水平距離や高さについては、単位mmを用いて表わし、X座標の右方向は便器98の前方を、Y座標の上方向は便器98の上方を、それぞれ示す。
【0127】
第2実施例の温水洗浄便座10では、図27に示すように、便蓋14の回転中心軸P1を、便座取付用穴99から便器の水平前方に向かって32mm、便座取付用穴99から鉛直上方に向かって125mmの位置に設けている。また、便座12の回転中心軸P2については、便座取付用穴99から便器の水平前方に向かって42mm、便座取付用穴99から鉛直上方に向かって115mmの位置に設けている。
【0128】
このように構成された温水洗浄便座10を、第1実施例と同様に便器98に装着し、便蓋14や便座12を開閉したときの様子を、図28ないし図30に示す。なお、図28ないし図30に示す例では、ベースプレート74上の3種類のボルト挿入口75a,75b,75cのうち、後方寄りの穴であるボルト挿入口75cのキャップ76を外し、このボルト挿入口75cに取付用ボルト77を差し込んで、温水洗浄便座10を便器98に固定している。
【0129】
図28に示した便座12および便蓋14を閉じた状態から便蓋212を開けると、便蓋14が回転中心軸P1を軸として回転し、便蓋14の先端が洗浄タンク91に当接する。この状態を図29に示す。便蓋14は、リム面98から125mmという、第1実施例よりもやや高い位置に設けられた回転中心軸P1を軸として回転する。このため、図29に示すように、便蓋14の先端は、図18に示した便蓋212の先端位置よりもやや高い位置、即ち、洗浄タンク91の上端の位置において、洗浄タンク91の前面に当接している。
【0130】
便蓋14の回転中心軸P2は、便座取付用穴99から水平方向に42mmという、第1実施例の回転中心軸Pと同じ水平位置に設けられている。従って、回転中心軸P2からリム面98aの先端までの距離は、第1実施例の場合と同様に確保され、この距離の範囲をカバーするように便座12が設けられる。このため、便座12の着座可能領域は、図29に示すように、広く確保されている。
【0131】
便蓋14,便座12の回転中心軸P1,P2、即ち、ヒンジ軸28,26の軸心は便器98の後方寄りとされるため、このヒンジ軸28,26がリテーナブロック30を介して固定される収納ケース16の位置も、便器98の後方寄りとなる。従って、図29に示すように、収納ケース16の前端は、鉢部94の後端よりも前方に進出せず、装着された収納ケース16が鉢部94の後部を覆ってしまうことがなく、便蓋14のみを開いたときにおける便器98の鉢部94の有効領域は、広く確保されている。
【0132】
図29に示した状態から便座12を開けると、便座12は、回転中心軸P2を軸として回転し、開状態の便蓋14に重なる。この状態を図30に示す。便座12は、リム面98から115mmという、回転中心軸P1よりもやや低い高さの回転中心軸P2を軸として回転し、開状態の便座12の先端は、図30に示すように、便蓋14の先端とほぼ同じ高さとなる。
【0133】
また、前述したように、収納ケース16の前端は、鉢部94の後端よりも前方に進出せず、装着された収納ケース16が鉢部94の後部を覆ってしまうことがない。従って、便蓋14,便座12の双方を開いたとき、便器98の鉢部94の有効領域は、広く確保されている。
【0134】
以上説明したように、第2実施例の温水洗浄便座10では、便蓋14,便座12の回転中心軸P1,P2を、第1実施例における回転中心軸Pよりも、それぞれ60mm,50mmだけ高い位置に設けるが、このような位置に回転中心軸P1,P2を設けた場合であっても、開状態における便蓋14や便座12の先端は、洗浄タンク91の上端とほぼ同じ高さに止まる。従って、開けた便座12や便蓋14が、洗浄タンク91の上部に設けられた手洗用吐水管92ないし吐水口92aを覆ってしまうことがなく、手洗いをスムーズに行なうことができる。
【0135】
また、回転中心軸P1,P2の便座取付用穴99からの水平位置に関しては、便座12の回転中心軸P2を第1実施例における回転中心軸Pと同じ位置に、便蓋14の回転中心軸P1を第1実施例における回転中心軸Pよりも更に便器98の後方寄りの位置に、それぞれ設ける。従って、第1実施例の温水洗浄便座210と同様に、着座時における安定感を良好とし、用便時における便座12や便器98への汚れの付着を防止することができる。
【0136】
なお、第2実施例の温水洗浄便座10では、収納ケース16の高さを、最も高い位置において、リム面98aから回転中心軸P1,P2までの高さよりも僅かに高い140mmという値で形成する。従って、収納ケース16の上面を便座12や便蓋14が通過することを考慮して、便座12や便蓋14の形状を、回転軸側で深く抉り取った形状とする必要がない。この結果、便座12や便蓋14の成形が容易となる。なお、ケースの全高を140mm以下とすれば、便座12や便蓋14の抉り部の大きさをさらに小さくすることが可能となる。
【0137】
以上、第2実施例について説明した。なお、上記の第1実施例,第2実施例において採用した回転中心軸P,P1,P2の便座取付用穴99からの位置の値は、上記のような数値に限定されるものではなく、便座取付用穴99を基準として便器98の後方寄りかつ低い高さとなる値であればよい。具体的には、水平方向に関しては、便座取付用穴99から便器の前方に向かって42mm以下の位置に、高さ方向に関しては、便座取付用穴99から上方に向かって125mm以下の位置に、回転中心軸P,P1,P2を設ける構成とすれば、上記した第1実施例、第2実施例と同様の効果を実現することができる。
【0138】
まず、水平方向の位置の範囲に関して説明する。鉢部94の後端から便座取付用穴99までの距離は、便器の種類に応じて任意に定めることが可能である。この距離が短い便器に対し、図17ないし図19,図28ないし図30と同じ位置に温水洗浄便座210,10を装着した場合を想定する。なお、このような位置に温水洗浄便座210,10を装着するためには、ベースプレート74上の3種類のボルト挿入口75a,75b,75cのうち、前方寄りの穴であるボルト挿入口75bに取付用ボルト77を差し込んで、温水洗浄便座210,10を便器98に固定すればよい。
【0139】
上記のような便器に対して温水洗浄便座210,10を装着した場合、回転中心軸P,P1,P2と便座取付用穴99との相対位置が変化し、収納ケース216,16のより前側の位置に便座取付用穴99が位置する状態となる。この状態においては、便座取付用穴99から回転中心軸Pまでの距離は、便器の前方に向かって42mmよりも小さな値となる。鉢部94の後端に直近の後方に便座取付用穴99を設けたような場合には、この距離は、「便器の後方に向かって10mm」のようなマイナスの値となる。
【0140】
一方、装着された温水洗浄便座210,10と便器やタンクとの位置関係は、図17ないし図19,図28ないし図30に示した位置関係と同じである。従って、便蓋212,14や便座214,12を開けると、便蓋212,14や便座214,12の先端は、図18,図29や図19,図30に示した例と同じ位置、即ち、洗浄タンク91の上端以下の位置に配置される。つまり、便座取付用穴99から回転中心軸P,P1,P2までの水平距離の値が、便器の前方に向かって42mm以下の範囲で変化しても、便蓋212,14や便座214,12を開けたときの先端の位置には影響しない。
【0141】
一方、装着された温水洗浄便座210,10と便器やタンクとの位置関係は、図17ないし図19,図28ないし図30に示した位置関係と同じである。従って、便蓋212,14や便座214,12を開けると、便蓋212,14や便座214,12の先端は、図18,図29や図19,図30に示した例と同じ位置、即ち、洗浄タンク91の上端以下の位置に配置される。つまり、便座取付用穴99から回転中心軸P,P1,P2までの水平距離の値が、便器の前方に向かって42mm以下の範囲で変化しても、便蓋212,14や便座214,12を開けたときの先端の位置には影響しない。
【0142】
また、高さ方向に関しては、便座取付用穴99から上方に向かって125mm以下の位置に、回転中心軸P,P1,P2を設ける構成とすればよい。回転中心軸P,P1,P2の便座取付用穴99からの高さをより低くすれば、低くした分だけ便蓋212,14や便座214,12を開けたときの便蓋212,14や便座214,12の先端位置は、図18,図29や図19,図30に示した例の場合よりも低くなる。従って、便蓋212,14や便座214,12が前方から吐水口92aを覆い隠すことがない。
【0143】
例えば、収納ケース216,16の高さをより低くすれば、低くした分だけ便座・便蓋支持体217の嵌合孔217aや装着溝16qの位置も低くなり、回転中心軸P,P1,P2の高さをより低くすることができる。この収納ケース216,16の高さをより低くする方法としては、例えば、熱交換器ユニット59等の各ユニットを更に小型化する方法や、これらの各ユニットの一部を、便座214,12や温水洗浄便座210,10の外部に設ける方法等を考えることができる。また、実行可能な機能から脱臭機能や乾燥機能,室内暖房機能等の一部の機能を除外して、脱臭ユニット49や温風ユニット58,室内暖房ユニット39等を収納ケース216,16内から除去するとともに、これらの除去により空いたスペースに他のユニットを有効に配置することにより収納ケース216,16の厚みを薄くすることも考えられる。
【0144】
この他、収納ケース216内を、左部,中央部,右部という3つの領域に分割し、中央部に熱交換器ユニット59等の各ユニットを、左部および右部に回転軸部材240をそれぞれ配置する構成とすれば、収納ケース216の上面よりも上方に回転軸部材240を設ける場合と比較して、回転中心軸Pの高さをより低くすることができる。
【0145】
また、洗浄タンク91の前面から便器98のリム面98aの先端までの長さ(以下、取り付け有効長という)は、便器の種類に応じて異なっており、上記の図17ないし図19、図28ないし図30では、取り付け有効長が約550mmの値である大型サイズの便器に温水洗浄便座210,10を装着した場合を例として説明している。
【0146】
ここで、より取り付け有効長の短い通常サイズの便器に対し、上記の温水洗浄便座210,10を装着した場合を想定する。この場合において、温水洗浄便座210,10は、便座214,12の先端と便器の先端とが合わさるように装着されるので、温水洗浄便座210,10は、上記の図17ないし図19、図28ないし図30に表わした位置よりも便器の後方寄りの位置に設置される。このため、回転中心軸P,P1,P2の位置は、図17ないし図19、図28ないし図30に表わした位置から便座取付用穴99に近づく方向に移動し、より便器の後方寄りに位置することになる。従って、便座取付用穴99から回転中心軸P,P1,P2までの距離は、便器の前方に向かって42mmよりも小さな値となる。回転中心軸P,P1,P2の位置が便座取付用穴99よりも更に後方にまでずれた場合には、便座取付用穴99から回転中心軸P,P1,P2までの距離は、「便器の後方に向かって10mm」のようなマイナスの値となる。
【0147】
このような場合においても、回転中心軸P,P1,P2の便座取付用穴99からの高さは、図17ないし図19、図28ないし図30に表わした位置とほぼ同じ高さとなる。従って、便蓋212,14や便座214,12を開けると、便蓋212,14や便座214,12の先端は、図18,図29や図19,図30に示した例とほぼ同じ位置、即ち、洗浄タンク91の上端以下の位置に配置される。つまり、装着される便器の取り付け有効長の値によって、便座取付用穴99から回転中心軸P,P1,P2までの水平距離の値が、便器の前方に向かって42mm以下の範囲で変化しても、便蓋212,14や便座214,12を開けたときの先端の位置には影響しない。便座取付用穴99から上方に向かって125mm以下の位置に回転中心軸P,P1,P2を設けている限り、開いた状態の便蓋212,14や便座214,12が前方から吐水口92aを覆い隠してしまうことはないのである。
【0148】
以上より、便蓋212,14および便座214,12の回転中心軸P,P1,P2を、便座取付用穴99から便器の水平前方に向かって42mm以下、便座取付用穴99から鉛直上方に向かって125mm以下の位置に設ければ、手洗用吐水管92との干渉を生じさせることなく、着座から用便,手洗いという一連の動作を通じて使い勝手のよい温水洗浄便座210,10を実現することが可能となる。この回転中心軸P,P1,P2の設置範囲を、図16および図27のグラフ中に斜線部分を用いて示した。
【0149】
以上、本発明の実施の形態を、第1実施例,第2実施例を用いて説明した。なお、上記の各実施例においては、収納ケース16,216を上下2つに分割するが、このような構成に限るものではなく、分割しないものであってもよい。また、左右に分割したり、3つ以上の部材に分割するものであってもよい。
【0150】
また、便蓋を、便蓋を閉めた状態において、収納ケースの上面および便座の上面の全範囲を覆うように構成することも可能である。この構成を図31に示す。図31は、第1実施例の温水洗浄便座210から便蓋212の形状を変更することにより構成された温水洗浄便座410の側面を示す説明図である。図31に示すように、閉じた状態の便蓋412は、上方から収納ケース416と便座414をすっぽり覆っている。便蓋412と便座414は、ともに共通の回転中心軸P4を中心として回転可能に構成され、回転中心軸P4は、便座取付用穴99から便器の水平前方に向かって42mm以下、便座取付用穴99から鉛直上方に向かって125mm以下の位置に設けられている。このような便蓋412とすれば、便座414と収納ケース416とが軸支されている部分や、便座414の裏面と収納ケース416の表面との間に埃や水等が入り込むことを防止できるので、汚れにくい温水洗浄便座を提供することができ、清掃の頻度が格段に減少する。
【0151】
なお、上記の各実施例では、便座取付用穴99の位置を基準として、便座や便蓋の回転中心軸の位置を定めているが、便座取付用穴99を利用せずに装着される温水洗浄便座の場合には、温水洗浄便座が装着される便器上の任意の位置を選択し、この位置を基準として便座や便蓋の回転中心軸の位置を定めることも可能である。例えば、便器の便座取付用穴99に相当する位置に温水洗浄便座装着用の係止部材が設けられている場合には、この係止部材と温水洗浄便座との係止点を基準として、便座や便蓋の回転中心軸の位置を定めればよい。
【0152】
なお、便座の着座面積を広く取りつつ、便蓋および便座を開いたときに便蓋および便座の先端が洗浄タンクの上端に配置されるようにするためには、温水洗浄便座を便器に装着した場合において、便蓋や便座の回転中心軸から便器の先端までの距離と、便蓋や便座の回転中心軸から洗浄タンクの上端までの距離とが一致すればよい。これらの値が一致する場合には、回転中心軸を中心とした円弧軌跡上に、便器の先端および洗浄タンクの前面の上端の双方が位置することになるからである。
【0153】
そこで、便器の先端および洗浄タンクの前面の上端の双方を通過する円弧軌跡の中心位置、即ち、便蓋や便座の回転中心軸の理想的な位置を、いわゆるロータンク密結型の洗浄タンクが組み付けられた便器に温水洗浄便座を装着する場合を例として、以下の条件の下で検証した。まず、便座取付用穴から便器の先端までの距離を約470mmという値とした。また、洗浄タンクを便器に組み付けた状態において、洗浄タンクの前面から便座取付用穴までの距離を約80mmという値とし、リム面から洗浄タンクの前面の上端までの高さを約485mmという値とした。さらに、便座や便蓋の先端の位置に関しては、便座の先端は、便器のリム面の先端から鉛直上方に約20mmの位置に配置され、便蓋の先端は、便器のリム面の先端から鉛直上方に約50mmの位置に配置されるものと仮定した。このような条件下での検証の結果、便蓋や便座の回転中心軸の理想的な位置を求める以下の算式を導き出すことができた。
【0154】
便座取付用穴から回転中心軸Pまでの水平距離をm、便座取付用穴から回転中心軸Pまでの垂直距離をnとした場合、
理想的な便蓋の回転中心軸Pf(m,n)は、
n=1.26m+20.9
理想的な便座の回転中心軸Pz(m,n)は、
n=1.18m+21.9
となる。
【0155】
このような理想的な回転中心軸Pf,Pzの値の範囲を、図32のグラフに示す。図32は、上記の検証に用いた便器の便座取付用穴の位置を原点Oとし、原点Oからの水平距離をm軸、原点Oからの垂直距離をn軸にとったグラフである。即ち、このグラフにおいて、m軸は、回転中心軸Pの便座取付用穴からの水平距離を、n軸は、回転中心軸Pのリム面からの高さを、それぞれ意味する。この水平距離や高さについては、単位mmを用いて表わし、m座標の右方向は便器の前方を、n座標の上方向は便器の上方を、それぞれ示す。
【0156】
以上の数式ないしグラフを用いれば、便座取付用穴からの水平距離若しくは便座取付用穴からの高さのうちのいずれかの値を任意に定めることにより、便蓋や便座の理想的な回転中心軸の位置を求めることが可能となる。例えば、上記の検証にて用いた便器セットについて、装着される温水洗浄便座について便座の回転中心軸をリム面から50mmの高さとしたい場合には、上記の理想的な回転中心軸Pzを求める数式に「n=50」という値を代入することにより、mの値が24mmと求められる。従って、便座取付用穴からの高さが50mmの位置であって、便座取付用穴から水平前方に向かって24mmの位置に便座の回転中心軸を設ければ、便座を閉じたときには、便座への着座面積が広く確保され、便座を開いたときには、開状態の便座の先端がタンク上部での手洗いの邪魔をすることがない。
【0157】
また、便蓋と便座との回転中心軸を同一としたい場合には、図32の2つの線グラフの交点Gの座標を求め、この座標の位置に回転中心軸を設ければ良い。例えば、図32に示した例の場合には、交点Gの座標は(m,n)=(12.5,36.7)であるから、便座取付用穴から水平前方に向かって12.5mmの位置であって、便座取付用穴からの高さが36.7mmの位置に便座の回転中心軸を設ければ、便座への着座面積は、リム面の奥行きに対応して広く確保され、便座を開いたときには、開状態の便座の先端がタンク上部での手洗いの邪魔をすることがない。このように、便蓋と便座との回転中心軸を同一とする場合においても、理想的な回転中心軸の位置を簡単に求めることができる。
【0158】
さらに、図32に示した2つの線グラフよりも、nの値が小さくなる範囲に回転中心軸を設ければ、少なくとも、便座や便蓋を開いたときに、開いた状態の便座や便蓋の先端がタンク上部の手洗吐水管と干渉するのを防止することができる。かかる範囲においては、便座や便蓋の回転中心軸から洗浄タンクの前面の上端までの距離が、より長くなるからである。この範囲を、図32に、便蓋については白色の矢印で、便蓋については黒色の矢印で、それぞれ示した。また、この範囲を前記した数式で表わすと以下のような式となる。
【0159】
手洗吐水管と干渉しない便蓋の回転中心軸Pf(m,n)の範囲は、
n≦1.26m+20.9
手洗吐水管と干渉しない便座の回転中心軸Pz(m,n)の範囲は、
n≦1.18m+21.9
【0160】
以上本発明の実施例である温水洗浄便座210,10について説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々なる様態で実施し得ることは勿論である。例えば、上記実施例の温水洗浄便座210,10を便器および洗浄タンクを有する便器セットに取り付けた便所装置としての態様で、本発明を実施することもできる。
【0161】
特に、洗浄機能や乾燥機能等が予め便器セットに組み込まれているいわゆる一体型の衛生洗浄装置においては、便座,便蓋や各種の制御ユニットが組み付けられたタンクに取付けボルト等を装着しておき、この取付けボルトを便器部分に開口された取付穴に差し込むことにより、組み立てられる場合がある。このような場合には、組み立て後における便座や便蓋の回転中心を、取付穴の位置を基準として上記の値の範囲内に位置するように構成すれば、一体型の衛生洗浄装置においても、上記実施例と同様の効果を簡単に得ることができる。
【0162】
また、洗浄水タンクをキャビネット内に隠蔽しつつ、このキャビネットの前面に便器を、上面に手洗い器を設ける、いわゆるトイレユニットとしての態様で、本発明を実施することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0163】
【図1】本発明の第1実施例である温水洗浄便座210の外観を表わす説明図である。
【図2】温水洗浄便座210内の水の流れを示すブロック図である。
【図3】温水洗浄便座210の制御部を示すブロック図である。
【図4】ベースプレート74の外観を表わす説明図である。
【図5】温水洗浄便座の取付け方法を示す説明図である。
【図6】便座214の概略斜視図である。
【図7】便蓋212の概略斜視図である。
【図8】温水洗浄便座210の上面および底面を表わす説明図である。
【図9】温水洗浄便座210における収納ケース216の概略斜視図である。
【図10】収納ケース216の側面図である。
【図11】便座214および便蓋212と便座・便蓋支持体217との装着部位の様子を示す説明図である。
【図12】便座・便蓋支持体217により支持された状態の便蓋212,便座214の断面を示す説明図である。
【図13】便蓋212が開状態にある場合の概略斜視図である。
【図14】便蓋212と共に便座214が開状態にある場合の概略斜視図である。
【図15】便器98に装着された状態の温水洗浄便座210について、便蓋212および便座214の回転中心軸P付近の縦断面を示す説明図である。
【図16】便座取付用穴99と回転中心軸Pとの位置関係を示すグラフである。
【図17】回転中心軸Pが(42,60)という座標位置である場合において、便座214および便蓋212を閉じた状態を示す説明図である。
【図18】上記の回転中心軸Pの座標位置において、便蓋212のみを開いた状態を示す説明図である。
【図19】上記の回転中心軸Pの座標位置において、便座214および便蓋212を開いた状態を示す説明図である。
【図20】第1実施例において、便蓋212,便座214が収納ケース216に軸支される態様を示す説明図である。
【図21】便蓋212を収納ケース216の内側および外側に向かって軸支し、便座214を収納ケース216の内側に向かって軸支した変形例を示す説明図である。
【図22】便蓋212および便座214を収納ケース216の外側に向かって軸支した変形例を示す説明図である。
【図23】本発明の第2実施例である温水洗浄便座10の外観を表わす説明図である。
【図24】本発明の第2実施例である温水洗浄便座10の外観を表わす説明図である。
【図25】便座12および便蓋14を取り付けるヒンジ部の構造を示す説明図である。
【図26】便器98に装着された状態の温水洗浄便座10の右側面を示す説明図である。
【図27】便座取付用穴99と回転中心軸P1,P2との位置関係を示すグラフである。
【図28】回転中心軸P1,P2が、それぞれ(32,125),(42,115)という座標位置である場合において、便蓋14および便座12を閉じた状態を示す説明図である。
【図29】上記の回転中心軸P1,P2の座標位置において、便蓋14のみを開いた状態を示す説明図である。
【図30】上記の回転中心軸P1,P2の座標位置において、便蓋14および便座12を開いた状態を示す説明図である。
【図31】第1実施例の温水洗浄便座210から便蓋212の形状を変更して構成された温水洗浄便座410の側面を示す説明図である。
【図32】便蓋,便座の理想的な回転中心軸Pf,Pzの値の範囲を示すグラフである。
【図33】回転軸Zが上方に設けられた温水洗浄便座を便器に装着したときの様子を、第一の従来例として示す説明図である。
【図34】第一の従来例において、便蓋および便座を開いた状態を示す説明図である。
【図35】回転軸Zが前方に設けられた温水洗浄便座を便器に装着したときの様子を、第二の従来例として示す説明図である。
【図36】第二の従来例において、便蓋のみを開いた状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0164】
10…温水洗浄便座(局部洗浄装置)
12…便座
14…便蓋
69…洗浄ノズル(吐水機構)
91…洗浄タンク
92…手洗用吐水管
98…便器
99…便座取付用穴(取付孔)
216…収納ケース
217…便座・便蓋支持体
410…温水洗浄便座(局部洗浄装置)
412…便蓋
414…便座
416…収納ケース
【技術分野】
【0001】
本発明は、局部洗浄装置に関し、詳しくは、洗浄水を吐水する吐水機構を収納したケースおよび便座を有し、該ケースが便器上面に設けられた取付孔により便器に取り付けられ、洗浄水を吐水して局部洗浄を行なう局部洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、トイレにおける局部洗浄装置の設置率が高まっている。この局部洗浄装置は、吐水機構をはじめとする機能部品を収納するケースや、着座のための便座や臭気の発散を防止するための便蓋等から構成され、便器と洗浄水タンクとの組み合わせからなる便所装置に装着される。この装着の手法としては、一般には、洋風便器の後部に形成された穴を利用して便器に装着する手法が採用されている。
【0003】
一方、局部洗浄装置が設置されるトイレ室内は、比較的狭いのが通例であり、便所装置や局部洗浄装置とは別に、独立した手洗器を設けられない場合が多い。そこで、狭いスペースでの手洗いを可能とするために、従来より、洗浄水タンクの頂面をボウル形状としつつ、タンク上部に手洗用の水を吐水するための管(以下、手洗用吐水管という)を設ける手法が採用されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような手洗用吐水管を備えた便所装置に局部洗浄装置を装着する場合には、開いた状態の便座や便蓋と手洗吐水管とが干渉してしまい、手洗いの使い勝手が悪くなってしまうという問題があった。この干渉の状態を図33および図34に示す。図33は、収納ケース916内の機能部品との干渉を回避して、収納ケース916の上方に便座や便蓋の回転軸の中心Zを設けた場合を示す。この場合に便座や便蓋を開けると、便座や便蓋を開けたときの便座や便蓋の先端の垂直位置も高くなるため、図34に示すように、手洗吐水管が便座や便蓋に隠れてしまう。
【0005】
一方、図35に示すように、便座や便蓋の回転軸Zを前方寄りに設ければ、便座や便蓋の回転半径が短くなり、便座や便蓋と手洗吐水管との干渉を防止することができる。しかしながら、便蓋を開けた状態の図36に示すように、回転軸Zを前方に移動した分だけ便座の奥行きが縮まるため、便座における着座可能領域が狭くなり、着座が不安定になるおそれがあった。また、便座を閉じたときの便器の鉢部の有効領域(便座の穴の面積と鉢部の面積とが重なり合う領域)が狭くなるため、小便や局部洗浄後の洗浄水が便座や便器に付着しやすくなるという欠点もあった。
【0006】
そこで、本発明は、上記の課題を解決し、手洗い器との干渉を生じさせることなく、着座から用便,手洗いという一連の動作を通じて使い勝手のよい局部洗浄装置を提供することを目的として、以下の構成を採った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の局部洗浄装置は、洗浄水を吐水する吐水機構を収納したケースおよび便座を有し、該ケースが便器上面に設けられた取付孔により便器に取り付けられ、前記洗浄水を吐水して局部洗浄を行なう局部洗浄装置であって、前記ケースは、前記便座を軸支するための便座支持体を、該ケースの上面の最高点よりも上方に突出して備え、前記便座を、前記便座支持体に回転可能に軸支すると共に、該軸支の回転中心を、前記ケースが前記便器に装着された状態において、前記取付穴から便器の前方に向かって42mmの位置よりも後方であり、かつ前記取付穴から上方125mmの位置よりも低い位置に設けたことを要旨とする。
【0008】
この局部洗浄装置によれば、便座および便蓋の少なくとも一方の部材とケースとの軸支の回転中心を、ケースが便器に装着された状態において、取付穴から便器の前方に向かって42mmの位置よりも後方の位置に設ける。従って、便座や便蓋の奥行きを大きくとることが可能となり、着座時における安定感が向上する。
【0009】
さらに、本発明の局部洗浄装置は、軸支の回転中心を、ケースが便器に装着された状態において、取付穴から上方125mmの位置よりも低い位置に設けるので、便座や便蓋を開けたときにおける便座や便蓋の先端の位置は低くなる。従って、開けた便座や便蓋の先端部分が、便座や便蓋よりも後側に設けられる手洗い器の前方に突出し、手洗い動作を邪魔することがない。このように、便座または便蓋についての軸支の回転中心を、便器の後方寄りに、低い高さで設けることで、着座から用便,手洗いという一連の動作を通じて、使い勝手のよい局部洗浄装置を提供することが可能となる。
【0010】
また、ケースに、便座を軸支するための便座支持体を、該ケースの上面の最高点よりも上方に突出して備えたので、便座や便蓋の形状は、便座や便蓋の回転の際にケースと干渉しないような形状とすることができる。
【0011】
また、便座および便蓋についての軸支の回転中心を、ケースが便器に装着された状態において、取付穴から便器の前方に向かって42mmの位置よりも後方の位置に設けるとともに、取付穴から上方125mmの位置よりも低い位置に設ける構成としてもよい。この構成によれば、便蓋のみを開けたときにも、便蓋先端の位置は低くなるので、開けた便蓋の先端部分が、便蓋よりも後側に設けられる手洗い器の前方に突出し、手洗い動作を邪魔することがない。従って、大洗浄,小洗浄のいずれの場合にも、使い勝手のよい局部洗浄装置を提供することができる。
【0012】
なお、便座支持体を、便座の開閉状態によらず、外部から視認可能に形成することも可能である。このような構成を採れば、局部洗浄装置の機能に関する表示体やセンサ等を、便座支持体に設けることができる。
【0013】
さらに、ケースに回転可能に軸支され、開閉可能とされた便蓋を、該便蓋が閉状態のとき、ケースおよび便座の上面の全範囲を覆うように構成してもよい。この構成を採れば、便座とケースとの取り合い部に汚れが入り込むことがなく、清掃が容易となる。
【0014】
本発明を、便所装置として把握することもできる。即ち、本発明の便所装置は、請求項1に記載の局部洗浄装置と、該局部洗浄装置を装着可能な便器と、該便器と連結されるタンクと、該タンクの上方に設けられる手洗い器とを備える。このように構成された便所装置によれば、請求項1に記載の便座または便蓋とケースとの軸支の回転中心を、便器の後方寄りに、低い高さで設けた局部洗浄装置を備えるので、開けた便座や便蓋の先端部分が、便座や便蓋よりも後側に設けられる手洗い器の前方に突出し、手洗い動作を邪魔することがない。従って、着座から用便,手洗いという一連の動作を通じて、使い勝手のよい便所装置を提供することが可能となる。
【0015】
さらに、また、本発明は、以下に説明するような様々な態様を採ることができる。
便座が閉状態のとき、該便座の後端部がケースの上面の少なくとも一部を覆うように構成することも可能である。この構成によれば、局部に当たって跳ね返った洗浄水によって、ケースの前端が汚れることを防止できる。
【0016】
軸支の回転中心を、取付穴から上方125mmの位置より低く、かつ前記ケース高さの1/2より高い位置に設けることも好適である。こうすれば、ケースの下方を有効に利用し、ケースの下方に、局部洗浄に必要な部品を設けるスペースを確保することができる。また、便蓋および便座をケースに回転可能に軸支すると共に、該軸支の回転中心を、取付穴から上方125mmの位置より低く、かつケース高さの1/2より高い位置に設ける構成としてもよい。
【0017】
また、ケースに、便蓋および便座を軸支するための便座・便蓋支持体を、該ケースの上面から上方に突出して備え、該便座・便蓋支持体を、便座または便蓋の開閉状態によらず、外部から視認可能に形成してもよい。こうすれば、便座・便蓋支持体に表示体を設けた場合に、この表示体の状態を、常に見ることができる。また、便座・便蓋支持体にセンサを設け、このセンサを、便座または便蓋の開閉状態に応じて動作させる構成とすることもできる。
【0018】
便座を閉じた状態において、ケースと便座との軸支部分の表面を、該ケースから該便座にかけて略連続する面として形成することも、清掃性や美感が向上する点で好ましい。また、便蓋を閉じた状態において、ケースと便蓋との軸支部分の表面を、該ケースから該便蓋にかけて略連続する面として形成すれば、便蓋を閉じた状態での清掃性や美感を高めることができる。
【0019】
また、便座や便蓋の形状は、便座や便蓋の回転の際にケースと干渉しないような形状とする必要がある。そこで、ケースの全高を140mm以下とすれば、ケースの上面を便座や便蓋が通過することを考慮して、便座や便蓋を大きく抉り取った形状に成形する必要がない。この結果、便座や便蓋とケースとの取り合い部分における清掃性やデザイン性を高めることができる。
【0020】
軸支の回転中心から前記部材の回転範囲におけるケースの外法までの最短距離を、35mm以下とすることも好適である。こうすれば、便座や便蓋を抉る範囲は、軸支の回転中心から前方に略35mmの範囲のみとなり、抉り取る範囲を最小限に抑えることができる。
【0021】
便座,便蓋という部材を、軸支の回転中心よりも後方に40mm以下の値で突出するよう形成することも望ましい。このような構成を採れば、便座や便蓋の回転時に、便座や便蓋の軸支の回転中心よりも後方に突出した部分がケースの前面や上面に当たることを考慮して、ケースを特殊な形状とする必要がない。
【0022】
便座,便蓋という部材を軸支するための軸支機構を、ケースの側面および部材の側面に露出しないように配設することも可能である。この構成によれば、ケースや便座,便蓋の側面に軸支機構が露出しないので、横幅の狭いスペースにも設置が可能となる。
【0023】
また、本発明の局部洗浄装置に、次のような構成を持たせることも可能である。
洗浄水を吐水する吐水機構を収納したケースおよび便座を有し、前記便座および便蓋を前記ケースに回転可能に軸支すると共に、該軸支されたケースを、上部に手洗い器を有するタンクと組み付け可能な便器に装着し、所定の指示に基づいて洗浄水を吐出して人体の局部を洗浄する局部洗浄装置であって、前記軸支の回転中心を、前記便座および前記便蓋において同一とするとともに、該便座および便蓋を軸支するための軸支機構を、記ケースの側面,便座の側面および便蓋の側面に露出しないように配設し、前記軸支の回転中心を、前記便座および前記便蓋を開いたときに、該便座および該便蓋の先端の位置が前記手洗い器の吐水口よりも下方に位置するように配置したことを要旨とする。
【0024】
この局部洗浄装置によれば、便座および便蓋を軸支するための軸支機構を、ケースの側面,便座の側面および便蓋の側面に露出しないように配設するとともに、軸支機構における軸支の回転中心を便座および便蓋において同一とする。従って、使用者の使用に際する種々の動作において、軸支機構との干渉が防止されるとともに、便座および便蓋の双方の開閉動作を一度に行なう際に、便座と便蓋との回転軌跡が同じとなるため、小さな力でスムーズに双方を開閉することができる。また、軸支の回転中心を、便座および便蓋を開いたときに、該便座および該便蓋の先端の位置が前記手洗い器の吐水口よりも下方に位置するように配置するので、便座および便蓋を開けた後に手洗い動作を行なう際に、開けた便座や便蓋の先端部分が、便座や便蓋よりも後側に設けられる手洗い器の前方に突出し、手洗い動作を邪魔することがない。このように、軸支機構を、使用者の一連の動作がスムーズとなるように構成することで、より使い勝手のよい局部洗浄装置を提供することが可能となる。
【0025】
便蓋をケースに軸支する構成としては、ケースの外側に向かって軸支するもの、ケースの内側に向かって軸支するもの、または、ケースの内側および外側に向かって軸支するものを考えることができる。また、便座についても、ケースの外側に向かって軸支するもの、ケースの内側に向かって軸支するもの、または、ケースの内側および外側に向かって軸支するものを考えることができる。
【0026】
便座,便蓋およびケースの形状を、該便座,便蓋およびケースの後部に至るに連れて幅が漸減する形状とすることも、取付穴近傍の上面が内側に張り出した特殊な形状の便器にも装着可能となる点で好適である。
【0027】
また、軸支の回転中心を、便座および便蓋において同一とすれば、便座と便蓋との回転軌跡が同じとなるため、便座および便蓋の双方の開閉動作を一度に行なう際に、小さな力でスムーズに双方を開閉することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、手洗い器との干渉を生じさせることなく、着座から用便,手洗いという一連の動作を通じて使い勝手のよい局部洗浄装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以上説明した本発明の構成及び作用を一層明らかにするために、以下本発明の局部洗浄装置について、その実施の形態を実施例に基づいて説明する。図1は、本発明の第1実施例である温水洗浄便座210の外観を表わす概略斜視図である。なお、以下の説明において、「前方」とは、便器や便座の先端に向かう方向を、「後方」とは、便器や便座の背面に向かう方向を、それぞれ示すものとして説明する。
【0030】
この温水洗浄便座210は、便器に装着して用いられ、使用者による所定の操作に基づいて、局部の洗浄や乾燥等の種々の機能を実行する。本実施例の温水洗浄便座210は、普通便座に替えて、種々の便器に後から装着するタイプのものであり、便器本体とは別体として構成されている。
【0031】
図1に示すように、温水洗浄便座10は、用便の際に人が着座するための便座214、開閉可能な便蓋212、上ケース216bと下ケース216aとの組み合わせからなる収納ケース216を備える。便座214や便蓋212は、ポリプロピレンを用いて成形され、後述する回転軸部材240を用いて収納ケース216に着脱可能に装着されている。この装着の態様の詳細については後述する。従って、図1に記載した符号のうち、便座214および便蓋212の装着に関わる部分の符号についての説明は、ここでは省略する。
【0032】
収納ケース216は、ABS(アクリロトニル・ブタジエン・エチレン樹脂)を用いて成形されており、その内部には、局部の洗浄や乾燥等の各種の衛生機能を実行するための機能部品が収納されている。この機能部品の内容につき、図2および図3に基づいて簡単に説明する。図2は、温水洗浄便座210内の水の流れを示すブロック図である。収納ケース216の左側面には、連結管52を介して分岐金具51と接続される給水アダプタ53が固着されている。給水本管からの水は、分岐金具51によって温水洗浄便座210方向に分岐され、分岐された水は、連結管52,給水アダプタ53を通じて、収納ケース216内に供給される。
【0033】
図2に示すように、給水アダプタ53の下流側には、バルブユニット54,熱交換器ユニット59,ノズルユニット68が接続される。これらの各ユニットは、収納ケース216の内部に収納されている。
【0034】
バルブユニット54は、給水アダプタ53を通じて給水された水の水圧を調整する減圧弁55、熱交換器ユニット59へ水を供給するか否かを通電に応じて制御する電磁弁56、給水された水の流路に位置する穴の空いた円盤を回転させる流調モータ67、この円盤の回転角度によって通水路の面積を変え、熱交換器ユニット59に供給する水の流量を切り換える水勢調節弁57等から構成される。
【0035】
熱交換器ユニット59は、供給された水を加熱して温水を生成するいわゆる瞬間式のヒータ61、生成された温水の温度を検知する温水用サーミスタ62、生成された温水の一部を貯溜する貯湯タンク60、貯湯タンク60内の温水の有無を検知するフロートスイッチ63、ノズルユニット68へ送出された温水が熱交換器ユニット59内へ逆流するのを防止する逆止弁65等から構成される。
【0036】
ノズルユニット68は、洗浄ノズル69、洗浄ノズル69の位置を移動させる駆動装置、肛門洗浄の際に洗浄ノズル69に温水を供給するための第1開閉弁、ビデ洗浄の際に洗浄ノズル69に温水を供給するための第2開閉弁等から構成される。
【0037】
また、収納ケース216の内部には、上記の3つのユニットに加えて、洗浄後の局部の乾燥機能を実行する温風ユニット58,室内の臭気の除去を実行する脱臭ユニット49,室内温度を調整する室内暖房ユニット39が収納ケース216に収納される。温風ユニット58は、吸気口と吹出し口が形成されたハウジングを備え、このハウジング内に、吸気を吹出し口に向けて送風する温風ファン、吸気を加熱して温風を生成する温風ヒータ、温風の温度を検知する温風サーミスタ等を収納する。脱臭ユニット49は、吸気口と排気口が形成されたダクトを備え、このダクト内に、外気を吸気するためのファンモータや臭気を吸着する触媒等を収納する。室内暖房ユニット39は、吸気口と温風吹出し口が形成されたケーシングを備え、このケーシング内に、室内の温度を検知する室温サーミスタ、吸気を吹出し口に向けて送風する室暖ファンモータ、吸気を加熱して温風を生成する室暖ヒータ等を収納する。
【0038】
さらに、収納ケース216の内部には、上記の各ユニット,便座暖房装置および表示装置の動作を制御するコントローラユニット70が収納される。このコントローラユニット70の構成について、図3を参照しつつ説明する。図3は、温水洗浄便座210の制御部を示すブロック図である。コントローラユニット70は、プログラムに従って各種演算処理を実行するためのCPU81を中心に、バス88により相互に接続された次の各部を備えている。ROM82は、CPU81での各種演算処理の実行に必要なプログラムやデータ等を予め格納するメモリである。RAM83は、CPU81で各種演算処理を実行するのに必要な各種データを一時的に格納するためのメモリである。バックアップRAM84は、記憶された温水洗浄便座10の非通電状態においてもデータを保持する、データの書き込みや記憶が可能なメモリである。
【0039】
入力処理回路は、リモコン装置71若しくは本体操作部40に設けられた操作ボタン71a〜oの操作に基づく信号や着座センサ41等の各センサからの検出信号を入力し、CPU81の処理可能な信号に変換する。出力処理回路は、入力信号を受け取ったCPU81での演算結果に応じ、上記の6つの各ユニット54,59,68,58,49,39や,便座暖房装置75,表示装置78,外部出力コネクタ79に信号を出力する。以上説明した各部を備えることにより、コントローラユニット70は、温水洗浄便座210の動作を制御する。
【0040】
なお、第1実施例では、後述する収納ケース216の小型化に伴い、上記の各ユニットを、収納ケース216内に収納可能に小型化している。
【0041】
リモコン装置71について、図3を参照しつつ簡単に説明する。本実施例では、局部の洗浄を開始するためのお尻洗浄ボタン71aやビデ洗浄ボタン71b、温風の吹き出しを開始するための乾燥ボタン71d、停止ボタン71c、水勢に強弱の変化をつけた洗浄水の噴出を設定するマッサージ設定ボタン71e、洗浄ノズル69を揺動させた局部の洗浄を設定するムーブ設定ボタン71f、洗浄水の温度を調節する吐水温設定ボタン71h、水勢の強弱を設定する水勢設定ボタン71g、洗浄ノズル69の位置を前後方向へ移動するノズル位置調節ボタン71i、脱臭状態を設定する脱臭ボタン71i、温風の温度を調節する温風温度設定ボタン71j、便座温度を調節する便座温度設定ボタン71k、室内暖房のオン,オフを設定する室内暖房ボタン71m、便座ヒータや室内暖房ヒータへの通電時期を設定するタイマ予約ボタン71n、温水洗浄便座全体の運転状態を設定する運転入/切ボタン71o等を設けている。これらの操作ボタンが操作されると、リモコンから送信された動作信号を、後述する便座・便蓋支持体217上に設けられた受信部222cが受信する。コントローラユニット70は、受信部222cでの受信内容を認識し、熱交換器ユニット59等の各ユニットに動作信号を送出する。
【0042】
以上のように構成された温水洗浄便座210の便器本体への取付け方法について図4および図5を参照しつつ説明する。図4に示すように、温水洗浄便座210は、便器への装着部材として、収納ケース216の底面と嵌合して温水洗浄便座210を固定するベースプレート74、ベースプレート74を便器本体に取り付けるための取付用ボルト77、取付用ボルト77の抜けを防止するためのゴムブッシュ79等を備える。ベースプレート74は、便器のリム後方よりも若干幅狭に形成された金属板である。
【0043】
図4に示すように、ベースプレート74上には、便座取付用穴99の位置や大きさに対応して、3種類のボルト挿入口75a,75b,75cが形成されており、このうち、ボルト挿入口75cにはキャップ76が着脱可能に嵌合されている。このように3種類の挿入口75a,75b,75cを形成することで、便器の種類によって便座取付用穴99の位置や大きさ等が異なる場合にも温水洗浄便座210を装着可能としている。
【0044】
勿論、このような構成に代えて他の構成、例えば、ベースプレート74の裏側に縦横方向に通る溝を設けておき、この溝に取付用ボルト77の頭部を嵌め込むような構成を採用してもよい。この構成によれば、取付用ボルト77を溝に沿って移動させて、取付用ボルト77の位置を便座取付用穴99の位置に合わせることにより、温水洗浄便座210を前後方向の所望の位置に設置することができる。
【0045】
以上のように構成されたベースプレート74、取付用ボルト77やゴムブッシュ79等を用いて、以下の要領で温水洗浄便座の便器本体への取付けを行なう。この様子を図5に示す。まず、便器本体の便座取付用穴99にゴムブッシュ79を差し込み、ベースプレート74をリム後方に乗せて便座取付用穴99とボルト挿入口75との位置を合わせる。次に、ボルト挿入口75に、座金78を介して取付用ボルト77を差し込んで締め付ける。これによって、取付用ボルト77がゴムブッシュ79下端のナットと螺合し、取付用ボルト77の締め付けに伴ってナットが持ち上げられて、便器本体にベースプレート74が固定される。次に、リム上面に沿って、便器の奥行き方向に温水洗浄便座をスライドさせ、収納ケース216の底面に設けられた溝をベースプレート74に嵌め込む。すると、着脱用レバー34がロックされて、便器本体に温水洗浄便座210が固定される。
【0046】
次に、第1実施例の温水洗浄便座210が備える特徴的な構成につき、図1,図6ないし図16に基づいて説明する。まず、便蓋212,便座214を軸支する収納ケース216の基本的な構成につき、図1,図9を参照しつつ簡単に説明する。図9は、収納ケース216の外観を表わす斜視図である。
【0047】
図1および図9に示すように、収納ケース216は、下ケース216aと上ケース216bとを組み合わせることにより構成されている。従って、この分割された2つのケース216a,216bのうちのいずれかのケースの形状を変更することにより、多種多様な形状の便器への装着が可能となる。
【0048】
上ケース216bは、その前面側に、なだらかな傾斜の傾斜面216cを有し、この傾斜面216cは、下向きの傾斜を有しつつ、便座214中央の開口部の後端付近まで前方に延出している。
【0049】
傾斜面216cの中央付近には、傾斜面216cから上方に突出した形状の便座・便蓋支持体217を備える。この便座・便蓋支持体217に、便蓋212,便座214が回転可能に軸支される。この便座・便蓋支持体217は、上ケース216bと同一の材料を用いて上ケース216bと一体に形成される。勿論、便座・便蓋支持体217を収納ケース216とは別部材として形成し、傾斜面216cに後から装着する構成としても差し支えない。
【0050】
便座・便蓋支持体217は、その頂上部に円弧形状の曲面部217bを備える。この曲面部217bは、便蓋212並びに便座214の回転中心軸Pと同心の円弧形状に形成されている。この曲面部217bは、図1に示すように、便蓋212,便座214を閉じた状態において、左右の便蓋支持部212b,便座支持部214bの間から露出している。
【0051】
次に、便座214の外観を図6に示す。図6に示すように、便座214は、便器のリム部上縁に重なる座部214a、座部214aから上方へ湾曲しつつ後方に延出した斜面部214c、斜面部214cの左右から斜め上後方に延出した便座支持部214bを有する。この便座支持部214bと便座・便蓋支持体217とを、後述する回転軸部材240で嵌合することにより、便座214の開閉が可能となる。なお、便座支持部214bの頂上部は、便蓋212並びに便座214の回転中心軸Pと同心の円弧形状に形成されている。
【0052】
一方、斜面部214cは、左右の便座支持部214bの間においては後方に延出されず、この左右の便座支持部214bの間は、斜面形状に形成された端面214dとされている。このため、図6に示すように、左右の便座支持部214bの内側面と端面214dにより、略コの字型の抉り部が形成されている。この抉り部の抉り深さは、便座・便蓋支持体217の高さに対応して設けられており、これにより、便座214の開閉時における便座214と便座・便蓋支持体217との干渉が防止される。
【0053】
便蓋212の外観を図7に示す。図7に示すように、便蓋212は、便器の鉢部を塞ぐ蓋部分212a、蓋部分212aから上方へ湾曲しつつ後方に延出した斜面部212cを備える。蓋部分212aから斜面部212cにかけての曲率は、座部214aから斜面部214cにかけての曲率とほぼ同じ値とされている。このため、便蓋212および便座214を開いたときの便座214の自立性能が確保される。また、重ね合わせた便蓋212と便座214との間には、シャープな接合線が生成されるので、デザイン的にも良好となる。
【0054】
また、便蓋212は、斜面部212cの左端および右端から後方に延出した便蓋支持部212bを有する。この便蓋支持部212bと便座・便蓋支持体217とを、後述する回転軸部材240で嵌合することにより、便蓋212の開閉が可能となる。なお、便蓋支持部212bの頂上部は、便蓋212並びに便座214の回転中心軸Pと同心の円弧形状に形成されている。
【0055】
一方、斜面部212cは、左右の便蓋支持部212bの間においては後方に延出されず、この左右の便蓋支持部212bの間は、斜面形状に形成された端面212dとされている。このため、図7に示すように、左右の便蓋支持部212bの内側面と端面212dにより、略コの字型の抉り部が形成されている。この抉り部の抉り深さは、便座・便蓋支持体217の高さに対応して設けられており、これにより、便蓋212の開閉時における便蓋212と便座・便蓋支持体217との干渉が防止される。
【0056】
便蓋212および便座214を閉じた状態における、便座支持部214bおよび便蓋支持部212bと収納ケース216との納まり関係について説明する。円弧形状に形成された便座支持部214bの頂上部と便蓋支持部212bの頂上部と便座・便蓋支持体217上を覆うカバー218の表面とは、ほぼ同一の曲面とされている(図1を参照)。従って、便蓋212および便座214を閉じた状態において、便蓋支持部212bと便座支持部214bとカバー218の上面との間には大きな段差がないので、便蓋支持部212bからカバー218にかけての範囲を一気に拭くことができ、便蓋212および便座214の軸支部位付近の清掃が容易となる。勿論、カバー218を用いない場合には、便座・便蓋支持体217の表面と便座支持部214bの頂上部と便蓋支持部212bの頂上部とを、ほぼ同一の曲面とすることもできる。
【0057】
温水洗浄便座210の上面,底面を表わす図8(A),図8(B)に示すように、便蓋212,便座214を閉じた状態においては、収納ケース216の側面と便座214および便蓋212の側面とは、前後方向および上下方向に連続したほぼフラットな面とされている。即ち、回転軸部材240等の便座214や便蓋212を軸支するための部材は、収納ケース216や便座214,便蓋212の左右の側面から突出せず、収納ケース216や便座214,便蓋212の外部に露出していない。このため、温水洗浄便座全体として一体感のある美しいデザインが保たれている。
【0058】
また、温水洗浄便座210の幅は、図8(A),図8(B)に示すように、便蓋212および便座214の後部から収納ケース216の後端につれて、だんだんと狭くなっている。従って、便器の後方のリム部が、便器の左右から内側方向に張り出しているような便器であっても、便器と干渉することなく良好に装着することができる。
【0059】
なお、図8(A)に示すように、第1実施例では、便蓋支持部212bに対して便座支持部214bを小さく形成し、便蓋212,便座214を閉じた状態において、便座支持部214bが外部に露出するよう構成する。この便座支持部214bを露出しない構成とすることも可能である。例えば、便蓋支持部212bから便座支持部214bにかけて延出するカバー部を設けるとともに、このカバー部を、便蓋支持部212bから連続した円弧形状に形成し、カバー部が便座214の便座支持部214bを上方から覆うように構成してもよい。こうすれば、便座214および便蓋212を閉じた状態において、便座支持部214bが外部から見えず、温水洗浄便座210のデザインが一層良好なものとなる。
【0060】
次に、収納ケース216の詳細な構成につき、図9および図10を参照しつつ説明する。図9に示すように、便座・便蓋支持体217の左右両端面には、後述する回転軸部材240を挿入可能な径の孔である嵌合孔217aが形成されている。この左右の嵌合孔217aに嵌合された回転軸部材240を便座214および便蓋212と嵌合することにより、便座214および便蓋212は上下に回転可能となる。
【0061】
便座・便蓋支持体217の曲面部217bには、左側に、便器前方での使用者の起立もしくは着座を検出する人体検出センサ222a,人体検出センサ222aとリモコンからの信号(例えば、赤外領域の光信号)を受光する受信部222cという各種の機能部が設けられている。また、曲面部217bの右側には、局部洗浄の動作状態や設定状態を表示する表示部222bという機能部が設けられている。
【0062】
表示部222bは、曲面部217bの内部にLED等の発光デバイスを組み込むことにより構成されている。表示部222bには、「運転」,「温水」,「着座」,「節電」という各項目に対応して4つの表示箇所が設けられている。リモコンの運転入/切ボタン71nにより「入」が設定された場合には、「運転」という項目に対応する表示箇所が点灯する。同様に、温水の吐出がオン状態に設定されている場合、着座を検知した
場合、節電モードに設定された場合には、それぞれ、「温水」、「着座」、「節電」という各項目に対応する表示箇所が点灯する。
【0063】
人体検出センサ222a,受信部222c表示部222bという各種の機能部が設けられた曲面部217bは、曲面部217bに対して着脱自在に装着されたカバー218によって覆われている。このカバー218は、ポリプロピレン等の光透過性の高い樹脂で形成されている。従って、人体検出センサ222aや受信部222cの受光状態を悪化させることがなく、また、表示部222bからの発光状態の視認性を悪化させることもない。
【0064】
カバー218の形状は、曲面部217bに倣った曲面形状、即ち、便蓋212並びに便座214の回転中心軸Pと同心の円弧形状であり、カバー218の外側の円弧は、便座支持部214bおよび便蓋支持部212bの頂上部の円弧と略同径となるように形成されている。このカバー218により、人体検出センサ222a等の水濡れ等に伴う機器の損傷を回避することができる。また、カバー218を曲面部217bに対して着脱自在としたことにより、カバーの破損に伴う交換が容易となる。
【0065】
なお、第1実施例では、便座・便蓋支持体217に、人体検出センサ222a,受信部222c,表示部222bを設置するが、これ以外の機能部や表示部を、便座・便蓋支持体217や傾斜面216cに設置してもよい。例えば、収納ケース216内の温風ファンと管路で接続された開口を設け、便座214に着座した使用者の背中に向けて温風を吹き出す構成としても差し支えない。
【0066】
収納ケース216の側面形状を図10に示す。収納ケース216の高さhは、最も高い位置である便座・便蓋支持体217の頂部において95mmの高さに形成されており、設置に伴う省スペース化や軽量化を実現するシンプルなフォルムとされている。また、収納ケース216の右側の側面には、お尻洗浄等の主要な機能の実行を指示するための本体操作部40を、前述したリモコン装置71とは別に設けている。
【0067】
図10に示すように、第1実施例では、左右の嵌合孔217aの中心である回転中心軸Pを、収納ケース216の最大高さhの中点Tよりも上側に設ける。このため、便蓋212,便座214を開閉すると、便蓋212,便座214は、収納ケース216の側面や傾斜面216cの上方の部分のみを通過する。従って、収納ケース216の側面や傾斜面216cの下方の領域は、便蓋212,便座214の開閉動作の影響を受けないので、この下方の領域を利用して種々の部品を設けることができる。例えば、給水アダプタ53や便座暖房用のコード等の収納ケース216から所定の長さだけ突出して設けられる部品を、便蓋212,便座214の開閉動作に干渉することなく設けることが可能となる。また、収納ケース216の上側に回転軸部材240等の軸支部材が設けられるので、軸支部材と干渉しない収納ケース216の側面の下方に、本体操作部40を大きな範囲で設置することができる。また、収納ケース216の両側面の下方には軸支部材が存在しないので、収納ケース216の両側面の下方を両手で持ちやすくなり、温水洗浄便座210を容易に移動させることができる。従って、温水洗浄便座210の装着時における作業性が飛躍的に向上する。
【0068】
また、回転中心軸Pから便座・便蓋支持体217の外法までの距離rは、便蓋212,便座214の開閉の際に端面212d,端面214dが便座・便蓋支持体217の上方を通過する範囲(図10において斜線で示した範囲)において、約18mmという小さな値とされている。
【0069】
便座214および便蓋212と収納ケース216との装着部位の様子を図11に示す。図11に示すように、回転軸部材240は、中心軸240aと、この中心軸240aに装着される2つの回転軸(第1回転軸240bおよび第2回転軸240c)から構成されている。中心軸240aに装着された第1回転軸240b,第2回転軸240cは、中心軸240aと同じ軸心を有する。従って、第1回転軸240b,第2回転軸240cは、ともに軸線J−Jを回転中心とし、この軸線J−Jの周りに回転可能となる。
【0070】
一方、便蓋212の便蓋支持部212bは、円柱状に厚肉形成された肉厚端部212fに、回転軸部材240の第2回転軸240cと略同径で非貫通の嵌合孔212gを備える。また、便座214の便座支持部214bは、その中央を貫通する、回転軸部材240の第1回転軸240bと略同径の嵌合孔214kを備える。
【0071】
なお、第2回転軸240cないし嵌合孔212gの直径寸法や肉厚端部212fの厚みは、まず、便蓋支持部212bの後端から軸線J−J´までの距離fを約18mmとした上で、この距離fに適合するように定められる。また、第1回転軸240bないし嵌合孔214kの直径寸法や便座支持部214bの厚みは、まず、便座支持部214bの後端から軸線J−J´までの距離eを約16mmとした上で、この距離eに適合するように定められる。
【0072】
便座・便蓋支持体217の嵌合孔217aには、回転軸部材240の中心軸240aが嵌合され、中心軸240aに装着された第1回転軸240b,第2回転軸240cには、便座支持部214bの嵌合孔214k,便蓋支持部212bの嵌合孔212gがそれぞれ嵌合される。これにより、便蓋212,便座214は、便座・便蓋支持体217に支持されるとともに、それぞれ第2回転軸240c,第1回転軸240bの回転により、上下に開閉可能とされる。この開閉の際、第1回転軸240b,第2回転軸240cは、ともに中心軸240aの軸心を中心として回転する。このため、便蓋212並びに便座214の回転中心軸Pは、中心軸240aの軸心となる。
【0073】
なお、第1実施例では、便蓋212や便座214を閉じたときの第1回転軸240bや第2回転軸240cの回転速度を、回転の進行に伴って遅くする機構(以下、ソフト開閉機構という)を、回転軸部材240に内蔵する。このソフト開閉機構は、第1回転軸240bおよび第2回転軸240cの内部に設けられたスプリングにより、第1回転軸240bおよび第2回転軸240cに対して抵抗をかけ、回転動作にブレーキをかけることにより実現されている。これにより、便器の近傍付近においては、便蓋212や便座214の閉止速度が遅くなり、便蓋212や便座214の取扱いが簡便なものとなる。
【0074】
便座・便蓋支持体217により支持された状態の便蓋212,便座214の断面を図12に示す。この図12においては、便蓋212の断面を実線で、便座214および収納ケース216の断面を二点鎖線で表わしている。図12に示すように、便蓋212の嵌合孔212gには、回転軸部材240の第2回転軸240cが、中心軸240aの軸心(即ち、便蓋212の回転中心軸P)を回転中心として嵌合されている。この状態において、便蓋212の端面212dと便座・便蓋支持体217の曲面部217b上に装着されたカバー218(図示せず)との間には、約1mm程度のクリアランスが形成されている。
【0075】
また、便座214の嵌合孔214kには、第2回転軸240cの内側の第1回転軸240bが、中心軸240aの軸心(即ち、便座214の回転中心軸P)を回転中心として嵌合されている。この状態において、便座214の端面214dと便座・便蓋支持体217の曲面部217b上に装着されたカバー218(図示せず)との間には、約2mm程度のクリアランスが形成されている。
【0076】
曲面部217bの頂上部に装着されたカバー218の形状と便蓋支持部212bの頂上部の形状は、ともに、便蓋212並びに便座214の回転中心軸Pと同心の円弧形状であり、カバー218の外側の円弧は、便座支持部214bの頂上部の円弧と略同径となるように形成されている。このため、カバー218と左右の便蓋支持部212b,便座支持部214bとは、同じ円弧形状を有し、しかも同面に納まる。従って、部材同士の連続性や一体性が確保され、温水洗浄便座全体としての美感が確保される。
【0077】
このように便座・便蓋支持体217に支持された便蓋212や便座214を開閉したときの様子を、図13および図14を参照しつつ説明する。図13は、便蓋212が開状態にある場合の概略斜視図である。便蓋212の回転に伴って、端面212dは、回転中心軸Pを中心とした円弧軌跡を描きながら、曲面部217b上のカバー218との所定のクリアランスを保持しつつ、カバー218の周囲を回転移動する。
【0078】
図13に示すように、便蓋212を開けた状態においても、左右の便蓋支持部212b,便座支持部214bの間からは、便座・便蓋支持体217のカバー218で覆われた部分が露出している。
【0079】
また、便蓋212のみを開けた状態において、円弧形状の便蓋支持部212b,便座支持部214bの頂上部と便座・便蓋支持体217上を覆うカバー218の表面とは、ほぼ同一の曲面とされている。従って、便蓋212のみを開けた状態においても、便蓋支持部212bと便座支持部214bとカバー218の上面との間には大きな段差がなく、便蓋212および便座214の軸支部位付近の清掃が容易となる。勿論、カバー218を用いない場合には、便座支持部214bの頂上部と便座・便蓋支持体217の表面とを、ほぼ同一の曲面とすることもできる。
【0080】
さらに、便座214を開くと、便座214は、便蓋212と共通の回転中心軸Pを中心として回転する。このため、便座214の端面214dは、便座214の回転に伴い、カバー218の周囲を、カバー218との所定のクリアランスを保持しつつ移動する。本実施例では、端面214dとカバー218とのクリアランスを、端面212dとカバー218とのクリアランスよりも若干大きく設定している。
【0081】
図14に示すように、便蓋212および便座214を開けた状態においても、便座・便蓋支持体217のカバー218で覆われた部分が、左右の便蓋支持部212b,便座支持部214bの間から露出している。つまり、第1実施例では、便座・便蓋支持体217の曲面部217bが、便座214や便蓋212の開閉状態に拘わらず露出する構成となっており、曲面部217bに設けられた人体検出センサ222aや受信部222c,表示部222bの状態を、カバー218越しに常に確認することができる。
【0082】
また、便座214を開くと、便座214の斜面部214cに覆われていた上ケース216bの傾斜面216cが外部に露出する。なお、第1実施例では、便座214を閉じた状態では、便座214が傾斜面216cの全部を覆っており、傾斜面216cが全く見えない構成としているが、便座214を閉じた状態において傾斜面216cの一部が露出しており、便座214を開くとともに傾斜面216cの全部が露出する構成としてもよい。
【0083】
このように、曲面部217bとカバー218の形状を、便蓋212および便座214の回転中心軸Pを中心とした円弧形状としたことにより、便蓋212および便座214の開閉時におけるカバー218や曲面部217bとの干渉を簡単かつ確実に回避することができる。例えば、嵌合孔217aの位置を、便蓋212および便座214の開閉の際に端面212dおよび端面214dが干渉しない位置にずらしたり、端面212dおよび端面214dの形状を、便蓋212および便座214の開閉の際にカバー218と干渉しない形状に加工したりする必要がない。
【0084】
次に、便蓋212,便座214の回転中心軸Pの位置について、図15および図16を参照しつつ説明する。図15は、便器98に装着された状態の温水洗浄便座210について、便蓋212および便座214の回転中心軸P付近の縦断面を示す説明図である。この図15においては、便器98および便座214の断面を実線で、便蓋212および収納ケース216の断面を二点鎖線で表わしている。
【0085】
図15に示すように、便座取付用穴99付近に取り付けられたベースプレート74には、収納ケース216の底面に設けられた溝が嵌め込まれ、これにより温水洗浄便座210が便器98に固定されている。このように固定された状態において、便蓋212および便座214の回転中心軸Pは、便器98のリム面98aから大きく離間しない位置であって、しかも、便座取付用穴99の位置する便器98の後方寄りの位置に設けられている。
【0086】
また、図15に示す状態において、回転中心軸Pから便座214の後端Rまでの点PR間の距離、回転中心軸Pから便蓋212の後端Qまでの点PQ間の距離は、それぞれ図11に示した便座支持部214bの後端から軸線J−J´までの距離e、便蓋支持部212bの後端から軸線J−J´までの距離fに相当する。従って、点PR間の距離,点PQ間の距離は、それぞれ約18mm,約16mmという小さな値となる。
【0087】
便座取付用穴99と回転中心軸Pとの位置関係を図16のグラフに示す。図16は、図15における便座取付用穴99の位置を原点Oとし、原点Oからの水平距離をX軸、原点Oからの垂直距離をY軸にとったグラフであり、このグラフ上に回転中心軸Pの位置を座標として示している。即ち、このグラフにおいて、X軸は、回転中心軸Pの便座取付用穴99からの水平距離を、Y軸は、回転中心軸Pのリム面98aからの高さを、それぞれ意味する。この水平距離や高さについては、単位mmを用いて表わし、X座標の右方向は便器98の前方を、Y座標の上方向は便器98の上方を、それぞれ示す。
【0088】
第1実施例の温水洗浄便座210では、図16に示すように、便蓋212および便座214の回転中心軸Pを、便座取付用穴99から便器の水平前方に向かって42mm、便座取付用穴99から鉛直上方に向かって60mmの位置に設けている。
【0089】
このように構成された温水洗浄便座210を便器98に装着し、便蓋212や便座214を開閉したときの様子を、図17ないし図19に示す。なお、図17ないし図19に示す例では、ベースプレート74上の3種類のボルト挿入口75a,75b,75cのうち、後方寄りの穴であるボルト挿入口75cのキャップ76を外し、このボルト挿入口75cに取付用ボルト77を差し込んで、温水洗浄便座210を便器98に固定している。
【0090】
図17に示した便座214および便蓋212を閉じた状態から便蓋212を開けると、便蓋212が回転中心軸Pを軸として回転し、便蓋212の先端が洗浄タンク91に当接する。この状態を図18に示す。便蓋212は、リム面98から60mmという低い高さの回転中心軸Pを軸として回転する。このため、図18に示すように、便蓋212の先端は、洗浄タンク91の上端よりも低い位置において、洗浄タンク91の前面に当接している。
【0091】
便座214,便蓋212の回転中心軸Pは、便座取付用穴99から水平方向に42mmという便器98の後方寄りに位置するため、回転中心軸Pからリム面98aの先端までの距離は長く確保され、この距離の範囲をカバーするように便座214,便蓋212が設けられる。このため、便座214の着座可能領域は、図18に示すように、広く確保されている。
【0092】
便蓋212や便座214の回転中心軸P,即ち、回転軸部材240の軸心は便器98の後方寄りに位置するため、この回転軸部材240が嵌合される収納ケース216の位置も、便器98の後方寄りとなる。従って、図18に示すように、収納ケース216の前端は、鉢部94の後端よりも前方に進出せず、装着された収納ケース216が鉢部94の後部を覆ってしまうことがない。
【0093】
加えて、前述したように、収納ケース216は、閉状態の便座214の下側を潜りながら、便座214中央の開口部の後端まで、前方に延出している。つまり、図18において、便座214中央の開口部の後端と収納ケース216の前端と鉢部94の後端とは、ほぼ同一の鉛直線上に配置されている。この結果、便座214の開口部として刳り抜かれた領域は、収納ケース216の前端に遮られることなく、等しく下方の鉢部94に臨む。このように、便蓋212のみを開いたときにおける便器98の鉢部94の有効領域は、広く確保されている。
【0094】
図18に示した状態から便座214を開けると、便座214は、回転中心軸Pを軸として回転し、開状態の便蓋212に重なる。この状態を図19に示す。便座214は、リム面98から60mmという低い高さの回転中心軸Pを軸として回転する。このため、図19に示すように、開状態の便座214の先端の位置
は、便蓋212の先端と同様に、洗浄タンク91の上端よりも低い位置となる。
【0095】
また、前述したように、収納ケース216の前端は、鉢部94の後端よりも前方に進出せず、装着された収納ケース216が鉢部94の後部を覆ってしまうことがない。従って、便蓋212,便座214の双方を開いたときにおいても、便器98の鉢部94の有効領域は、広く確保されている。
【0096】
以上説明したように、第1実施例の温水洗浄便座210は、便蓋212および便座214の回転中心軸Pを、便座取付用穴99から便器の水平前方に向かって42mmという、便器98の後方寄りの位置に設ける。従って、便座214の着座可能領域を広く確保して、着座時における安定感を良好なものとすることができる。
【0097】
さらに、第1実施例の温水洗浄便座210は、便蓋212および便座214の回転中心軸Pを、便座取付用穴99から鉛直上方に向かって60mmという低い高さの位置に設けたので、開状態における便蓋212や便座214の先端の位置は、洗浄タンク91の上端よりも低い位置となる。従って、開けた便座214や便蓋212が、洗浄タンク91の上部に設けられた手洗用吐水管92ないし吐水口92aを覆ってしまうことがなく、手洗いをスムーズに行なうことができる。
【0098】
また、第1実施例では、便座214中央の開口部の後端と収納ケース216の前端と鉢部94の後端とを、ほぼ同一の鉛直線上に配置する。従って、便蓋212や便座214を開いたときにおける便器98の鉢部94の有効領域を広く確保することが可能となり、用便時における収納ケース216への汚れの付着を防止することができる。
【0099】
更に、第1実施例では、回転中心軸Pを便器98の後方寄りとするに伴って、後方にずれた分だけ便蓋212,便座214の奥行きを大きく形成している。従って、小さな便蓋や便座の付いた温水洗浄便座を無理に後方にずらして設置した場合と比較して、用便時における便座214や便器98への汚れの付着を効果的に防止することができる。
【0100】
第1実施例の温水洗浄便座210は、便座214を閉じた状態において、便座214が、前方に延出する収納ケース216の傾斜面216cを覆う。このため、局部に当たって跳ね返った洗浄水が収納ケース216に直接当たることがない。従って、収納ケース216が汚れることを防止できるほか、収納ケース216内に収納された各種の機能部品を水から保護することができる。
【0101】
なお、前述したように、第1実施例では、収納ケース216の高さhを95mmの高さとして、収納ケース216を小型化し、この収納ケース216内に熱交換器ユニット59等の機能部品を収納する。一方、このように収納ケース216の高さを低くしつつも、第1実施例では、収納ケース216の先端を、便座214の軸支位置よりも前方に、便座214中央の開口部の後端付近まで延出する。この延出により、便座214の軸支位置から便座214中央の開口部の後端付近までの範囲に、収納空間が形成される。従って、この収納空間を機能部品の収納スペースとして活用すれば、高さの低い収納ケース216であっても、より多くの機能部品を収納することが可能となる。
【0102】
また、第1実施例の温水洗浄便座210は、各種のユニットを収納する収納ケース216を、最も高い位置において95mmという低い高さで形成している。従って、収納ケース216の上面を便座214や便蓋212が通過することを考慮して、左右の便座支持部214b,便蓋支持部212bに挟まれた端面214d,端面214dを、深く抉り取った形状に成形する必要がない。この結果、便座214や便蓋212の成形が容易となり、便座214や便蓋212と収納ケース216との取り合い部分における清掃性を高めることができる。なお、ケースの全高を95mm未満とすれば、便座214や便蓋212の抉り部の大きさをさらに小さくすることが可能となる。
【0103】
さらに、便座214および便蓋212の回転中心軸Pから便座・便蓋支持体217の外法までの距離rを、便蓋212,便座214の開閉の際に端面212d,端面214dが便座・便蓋支持体217の上方を通過する範囲において、約18mmという小さな値とする。従って、便座214や便蓋212を、回転中心軸Pの軸線から前方に約18mmだけ抉り取った形状に成形すれば、便座214や便蓋212の回動の際における便座・便蓋支持体217との干渉を防ぐことが可能となり、便座214や便蓋212を抉り取る範囲を最小限に抑えることができる。なお、上記の回転中心軸Pから便座・便蓋支持体217の外法までの距離rを、上記の端面212d,端面214dが通過する範囲において、35mm以下の値とすれば、便座214や便蓋212を抉り取る範囲を従来よりも小さくすることが可能となる。
【0104】
また、第1実施例では、回転中心軸Pから便蓋212の後端Rまでの距離,回転中心軸Pから便座214の後端Qまでの距離を、それぞれ約18mm,約16mmという小さな値とする。このため、便座214や便蓋212は、回転中心軸Pよりも後方に、従来よりも短い長さで突出する。従って、便座214や便蓋212の回転の際に、便座214や便蓋212の回転中心軸Pよりも後方に突出した部分が収納ケース216の前面や上面に当たることが防止され、便座214や便蓋212のスムーズな回動が確保される。また、このような収納ケース216との干渉を防止するために、収納ケース216を特殊な形状とする必要がなく、収納ケース216の成形が容易となる。なお、上記の回転中心軸Pから便蓋212の後端Rまでの距離や回転中心軸Pから便座214の後端Qまでの距離を40mm以下の値とすれば、回転中心軸Pより後方への突出長が従来よりも短くなり、上記と同等の効果を得ることができる。
【0105】
第1実施例の温水洗浄便座210においては、収納ケース216の側面と便座214および便蓋212の側面とを、前後方向および上下方向に連続したほぼフラットな面に形成し、回転軸部材240を、収納ケース216,便座214および便蓋212の側面に露出しないように配設する。従って、横幅の狭いスペースにも設置が可能となる。また、収納ケース216の側面に設けられた本体操作部40を操作する際、回転軸部材240が操作の邪魔にならないので、操作をスムーズに行なうことができる。
【0106】
また、回転軸部材240を構成する便座214に嵌合される第1回転軸240b,便蓋212に嵌合される第2回転軸240cは、ともに同じ軸心を有し、便座214および便蓋212は、ともに共通の回転中心軸Pを中心として回転する。このため、便座214および便蓋212は、開閉時に同じ回転軌跡を描く。従って、便座214および便蓋212が閉じた状態から一度に便座214および便蓋212の双方を開けようとする場合において、便座214を小さな力で持ち上げるだけで、便座214および便蓋212の双方をスムーズに開けることができる。
【0107】
なお、第1実施例の温水洗浄便座210では、便座214を収納ケース216の内側および外側に向かって軸支する。即ち、温水洗浄便座210の上面を表わす図20に示すように、便座・便蓋支持体217の左右両端面の回転軸部材240は、円筒状に形成された便座支持部214bの嵌合孔214kを貫通しており、便座214は、収納ケース216の内側および外側の両方向に向かって回転軸部材240に軸支されている。また、第1実施例の温水洗浄便座210では、便蓋212を収納ケース216の内側に向かって軸支する。即ち、回転軸部材240は、便座支持部214bの嵌合孔214kを貫通した後、便蓋支持部212bの嵌合孔212gに嵌合しており、便蓋212は、収納ケース216の内側に向かって回転軸部材240に軸支されている。
【0108】
便蓋212,便座214が回転軸部材240に軸支される方向は、上記の第1実施例における方向に限らず、これ以外の方向としても差し支えない。例えば、図21は、便蓋212を収納ケース216の内側および外側に向かって軸支し、便座214を収納ケース216の内側に向かって軸支する変形例を示す。即ち、図21に示すように、便座・便蓋支持体217の左右両端面の回転軸部材240は、円筒状に形成された便蓋支持部212baの嵌合孔212gaを貫通し、この後、便座支持部214baの嵌合孔214kaに嵌合している。
【0109】
このように、便蓋212や便座214を、収納ケース216の内側に向かって軸支することにより、回転中心軸Pを便器の後方寄りに設けた分だけ便蓋212や便座214の大きさを大きくした場合であっても、軸支された便蓋212や便座214に十分な強度を確保することができる。また、便蓋212や便座214を外すためには大きな動きが必要となるので、通常の開閉動作の際に誤って外れてしまうという不具合を回避することができる。
【0110】
また、図22は、便蓋212および便座214を収納ケース216の外側に向かって軸支する変形例を示す。即ち、図22に示すように、収納ケース216pの左右から内側方向に延出した2本の回転軸部材240pは、便蓋支持部212bpの嵌合孔212gpに嵌合している。この回転軸部材240pの直下においては、図示しない2本の回転軸部材が、収納ケース216pの左右から内側方向に延出しており、この2本の回転軸部材に便座支持部の嵌合孔が嵌合している。即ち、便蓋212,便座214は、それぞれ、収納ケース216pの外側に向かって回転軸部材に軸支されている。
【0111】
このように、便蓋212や便座214を、収納ケース216の外側に向かって軸支することにより、回転中心軸Pが低い位置にあるにも拘わらず、収納ケース216内の左右の空間に、熱交換器ユニット59等の各ユニットを配置するスペースSPを大きくとることが可能となる。このスペースSPの範囲を、斜線を用いて図22に示す。また、回転中心軸Pを便器の後方寄りに設けた分だけ便座214や便蓋212の大きさを大きくした場合であっても、便座214や便蓋212を小さな動きで簡単に外すことができる。この結果、清掃時における便座214や便蓋212の着脱がスムーズとなる。
【0112】
次に、本発明の第2実施例について説明する。図23は、第2実施例としての温水洗浄便座10の外観を表わす斜視図である。図23に示すように、温水洗浄便座10は、第1実施例の温水洗浄便座210とほぼ同様の構成を採る。即ち、温水洗浄便座10は、便座12、便蓋14、上ケース16aと下ケース16bに分割された収納ケース16等を有し、この収納ケース16内に熱交換器ユニット59等の各ユニットを収納する。また、温水洗浄便座10は、図2で説明したと同様の各機能部や図3で説明したと同様の各制御部を備えている。便器本体への取付け方法についても、第1実施例の温水洗浄便座210とほぼ同様である。
【0113】
温水洗浄便座10の形状について説明する。図23に示すように、温水洗浄便座10では、収納ケース16の側面と便座12および便蓋14の側面とを、前後方向および上下方向に連続したほぼフラットな面に形成し、ヒンジ軸26,28を、収納ケース16の側面に露出しないように配設する。従って、横幅の狭いスペースにも設置が可能となる。
【0114】
収納ケース16の高さは、最も高い位置で140mmの高さとなるように形成されており、収納ケース16の左右の袖部16kにおいても140mmの高さとされている。この袖部16kの高さに対応して、便座12および便蓋14は、左右の袖部16kに臨む後方の部分が抉り取られた形状に成形されている。また、温水洗浄便座10の上面を表わした図24に示すように、温水洗浄便座10の横幅は、便蓋14および便座12の後部から収納ケース16の後端につれて、だんだんと狭くなっている。
【0115】
一方、第2実施例の温水洗浄便座10は、便座12,便蓋14を収納ケース16に軸支する態様に
関し、以下の三つの点で、第1実施例の温水洗浄便座210と異なる。即ち、第一の相違点は、便座12,便蓋14を別々の回転軸を用いて軸支する点であり、第二の相違点は、便座12および便蓋14を収納ケース16の外側に向かって軸支する点である。第三の相違点は、便座12,便蓋14の回転中心軸と便座取付用穴99との位置関係が異なる点である。以下、これらの点について説明する。
【0116】
まず、第一および第二の相違点について、図25を参照しつつ説明する。図25は、便座12および便蓋14を取り付けるヒンジ部の構造を示す説明図である。図25に示すように、上ケース16aの中央には、便座12および便蓋14を収納ケース16に連接する空間であるヒンジチャンバ16pが形成されている。勿論、収納ケース16の前面が下ケース16bの一部となるように下ケース16bを成形し、下ケース16bにヒンジチャンバ16pを形成する構成としても差し支えない。
【0117】
便座12および便蓋14は、その後方端部に、収納ケース16への連接部としてのヒンジブロック12a,14aを備える。このヒンジブロック12a,14aの内部には、便座12および便蓋14を閉じるときに抵抗を与えて緩やかに動作させるための開閉ユニット22,24が組み込まれている。
【0118】
ヒンジブロック12a,14aの右端面には、外側方向に突き出る円形断面のピン12b,14bが、開閉ユニット22,24の回転軸との同軸上に設けられている。一方、ヒンジブロック12a,14aの左端面の開閉ユニット22,24側には、ピン12b,14bと同軸となるように、外側方向に突き出る四角形断面のヒンジ軸26,28を設ける。
【0119】
ヒンジチャンバ16pは、便座12および便蓋14のヒンジブロック12a,14aを収納してこれらの回転動作を許容する大きさを有する。このヒンジチャンバ16pの間口方向の両端の内壁には、縦方向に装着溝16qが形成されている。装着溝16qは、後述するリテーナブロック30を収納ケース16に装着するために設けられた溝である。この装着溝16qの下端部分にはスリット16rが設けられており、このスリット16rによってリテーナブロック30が着脱可能に拘束される。
【0120】
リテーナブロック30は、便座12および便蓋14を収納ケース16に連接するための一対の部材であり、その下端部に弾性変形可能な爪30aを備えている。更に、右側のリテーナブロック30には、便座12のピン12bおよび便蓋14のピン14bを挿入してこれらを回転自在に支持するための支持孔30b,30cが設けられている。また、左側のリテーナブロック30には、便座12および便蓋14用のそれぞれの開閉ユニット22,24から突き出したヒンジ軸26,28を嵌合してこれらを固定する固定孔30d,30eを開ける。固定孔30d,30eは、ヒンジ軸26,28と同様に四角形の開口断面を有する。
【0121】
以上の構成において、収納ケース16への便座12及び便蓋14の装着は以下の要領で行なう。まず、便座12及び便蓋14のそれぞれの開閉ユニット22,24にヒンジ軸26,28を差し込み、内部の抵抗機構にこれらを連結する。次いで、一方のリテーナブロック30の支持孔30b,30cにそれぞれ便座12及び便蓋14のピン12b,14bを差し込むと同時に、ヒンジ軸26,28を固定孔30d,30eに嵌め込む。即ち、便座12及び便蓋14は、リテーナブロック30を介し、収納ケース16の外側に向かって収納ケース16に軸支される。
【0122】
これにより、便座12と便蓋14は2個のリテーナブロック30によって一体化され、便座12のヒンジブロック12aが下側に、便蓋14のヒンジブロック14aが上側に、2段配置として組み合せられる。即ち、便座12と便蓋14とは、別々のヒンジ軸26,28を用いて収納ケース16に軸支される。
【0123】
更に、図25に示すように、左右のリテーナブロック30及びヒンジブロック12a,14aをヒンジチャンバ16pの中に落とし込み、リテーナブロック30を装着溝16qの中に嵌め込む。そして、リテーナブロック30を最も下まで押し込むと、これと同時に爪30aがスリット16rの中に入り込んで係合し、リテーナブロック30はヒンジチャンバ16pの中に強固に固定される。
【0124】
以上の要領で便蓋14および便座12が収納ケース16に組み付けられる。便蓋14や便座12が開閉されたとき、ヒンジ軸28,26はリテーナブロック30の固定孔30e,30dに拘束されているので、これらのヒンジ軸28,26は回転せず、ヒンジ軸28,26をそれぞれ回転中心軸P1,P2として、開閉ユニット24,22がヒンジ軸28,26の周りを回動し、便蓋14と便座12とは姿勢を変えることになる。
【0125】
次に、第三の相違点について、図26および図27を参照しつつ説明する。図26は、便器98に装着された状態の温水洗浄便座10の右側面を示す説明図である。図26に示すように、便座取付用穴99付近に取り付けられたベースプレート74には、収納ケース16の底面に設けられた溝が嵌め込まれ、これにより温水洗浄便座10が便器98に固定されている。このように固定された状態において、便蓋14の回転中心軸P1,便座12の回転中心軸P2は、便器98のリム面98aから大きく離間しない位置であって、しかも、便座取付用穴99の位置する便器98の後方寄りの位置に設けられている。
【0126】
便座取付用穴99と回転中心軸P1,P2との位置関係を図27のグラフに示す。図27は、図26における便座取付用穴99の位置を原点Oとし、原点Oからの水平距離をX軸、原点Oからの垂直距離をY軸にとったグラフであり、このグラフ上に回転中心軸P1,P2の位置を座標として示している。即ち、このグラフにおいて、X軸は、回転中心軸P1,P2の便座取付用穴99からの水平距離を、Y軸は、回転中心軸P1,P2のリム面98aからの高さを、それぞれ意味する。この水平距離や高さについては、単位mmを用いて表わし、X座標の右方向は便器98の前方を、Y座標の上方向は便器98の上方を、それぞれ示す。
【0127】
第2実施例の温水洗浄便座10では、図27に示すように、便蓋14の回転中心軸P1を、便座取付用穴99から便器の水平前方に向かって32mm、便座取付用穴99から鉛直上方に向かって125mmの位置に設けている。また、便座12の回転中心軸P2については、便座取付用穴99から便器の水平前方に向かって42mm、便座取付用穴99から鉛直上方に向かって115mmの位置に設けている。
【0128】
このように構成された温水洗浄便座10を、第1実施例と同様に便器98に装着し、便蓋14や便座12を開閉したときの様子を、図28ないし図30に示す。なお、図28ないし図30に示す例では、ベースプレート74上の3種類のボルト挿入口75a,75b,75cのうち、後方寄りの穴であるボルト挿入口75cのキャップ76を外し、このボルト挿入口75cに取付用ボルト77を差し込んで、温水洗浄便座10を便器98に固定している。
【0129】
図28に示した便座12および便蓋14を閉じた状態から便蓋212を開けると、便蓋14が回転中心軸P1を軸として回転し、便蓋14の先端が洗浄タンク91に当接する。この状態を図29に示す。便蓋14は、リム面98から125mmという、第1実施例よりもやや高い位置に設けられた回転中心軸P1を軸として回転する。このため、図29に示すように、便蓋14の先端は、図18に示した便蓋212の先端位置よりもやや高い位置、即ち、洗浄タンク91の上端の位置において、洗浄タンク91の前面に当接している。
【0130】
便蓋14の回転中心軸P2は、便座取付用穴99から水平方向に42mmという、第1実施例の回転中心軸Pと同じ水平位置に設けられている。従って、回転中心軸P2からリム面98aの先端までの距離は、第1実施例の場合と同様に確保され、この距離の範囲をカバーするように便座12が設けられる。このため、便座12の着座可能領域は、図29に示すように、広く確保されている。
【0131】
便蓋14,便座12の回転中心軸P1,P2、即ち、ヒンジ軸28,26の軸心は便器98の後方寄りとされるため、このヒンジ軸28,26がリテーナブロック30を介して固定される収納ケース16の位置も、便器98の後方寄りとなる。従って、図29に示すように、収納ケース16の前端は、鉢部94の後端よりも前方に進出せず、装着された収納ケース16が鉢部94の後部を覆ってしまうことがなく、便蓋14のみを開いたときにおける便器98の鉢部94の有効領域は、広く確保されている。
【0132】
図29に示した状態から便座12を開けると、便座12は、回転中心軸P2を軸として回転し、開状態の便蓋14に重なる。この状態を図30に示す。便座12は、リム面98から115mmという、回転中心軸P1よりもやや低い高さの回転中心軸P2を軸として回転し、開状態の便座12の先端は、図30に示すように、便蓋14の先端とほぼ同じ高さとなる。
【0133】
また、前述したように、収納ケース16の前端は、鉢部94の後端よりも前方に進出せず、装着された収納ケース16が鉢部94の後部を覆ってしまうことがない。従って、便蓋14,便座12の双方を開いたとき、便器98の鉢部94の有効領域は、広く確保されている。
【0134】
以上説明したように、第2実施例の温水洗浄便座10では、便蓋14,便座12の回転中心軸P1,P2を、第1実施例における回転中心軸Pよりも、それぞれ60mm,50mmだけ高い位置に設けるが、このような位置に回転中心軸P1,P2を設けた場合であっても、開状態における便蓋14や便座12の先端は、洗浄タンク91の上端とほぼ同じ高さに止まる。従って、開けた便座12や便蓋14が、洗浄タンク91の上部に設けられた手洗用吐水管92ないし吐水口92aを覆ってしまうことがなく、手洗いをスムーズに行なうことができる。
【0135】
また、回転中心軸P1,P2の便座取付用穴99からの水平位置に関しては、便座12の回転中心軸P2を第1実施例における回転中心軸Pと同じ位置に、便蓋14の回転中心軸P1を第1実施例における回転中心軸Pよりも更に便器98の後方寄りの位置に、それぞれ設ける。従って、第1実施例の温水洗浄便座210と同様に、着座時における安定感を良好とし、用便時における便座12や便器98への汚れの付着を防止することができる。
【0136】
なお、第2実施例の温水洗浄便座10では、収納ケース16の高さを、最も高い位置において、リム面98aから回転中心軸P1,P2までの高さよりも僅かに高い140mmという値で形成する。従って、収納ケース16の上面を便座12や便蓋14が通過することを考慮して、便座12や便蓋14の形状を、回転軸側で深く抉り取った形状とする必要がない。この結果、便座12や便蓋14の成形が容易となる。なお、ケースの全高を140mm以下とすれば、便座12や便蓋14の抉り部の大きさをさらに小さくすることが可能となる。
【0137】
以上、第2実施例について説明した。なお、上記の第1実施例,第2実施例において採用した回転中心軸P,P1,P2の便座取付用穴99からの位置の値は、上記のような数値に限定されるものではなく、便座取付用穴99を基準として便器98の後方寄りかつ低い高さとなる値であればよい。具体的には、水平方向に関しては、便座取付用穴99から便器の前方に向かって42mm以下の位置に、高さ方向に関しては、便座取付用穴99から上方に向かって125mm以下の位置に、回転中心軸P,P1,P2を設ける構成とすれば、上記した第1実施例、第2実施例と同様の効果を実現することができる。
【0138】
まず、水平方向の位置の範囲に関して説明する。鉢部94の後端から便座取付用穴99までの距離は、便器の種類に応じて任意に定めることが可能である。この距離が短い便器に対し、図17ないし図19,図28ないし図30と同じ位置に温水洗浄便座210,10を装着した場合を想定する。なお、このような位置に温水洗浄便座210,10を装着するためには、ベースプレート74上の3種類のボルト挿入口75a,75b,75cのうち、前方寄りの穴であるボルト挿入口75bに取付用ボルト77を差し込んで、温水洗浄便座210,10を便器98に固定すればよい。
【0139】
上記のような便器に対して温水洗浄便座210,10を装着した場合、回転中心軸P,P1,P2と便座取付用穴99との相対位置が変化し、収納ケース216,16のより前側の位置に便座取付用穴99が位置する状態となる。この状態においては、便座取付用穴99から回転中心軸Pまでの距離は、便器の前方に向かって42mmよりも小さな値となる。鉢部94の後端に直近の後方に便座取付用穴99を設けたような場合には、この距離は、「便器の後方に向かって10mm」のようなマイナスの値となる。
【0140】
一方、装着された温水洗浄便座210,10と便器やタンクとの位置関係は、図17ないし図19,図28ないし図30に示した位置関係と同じである。従って、便蓋212,14や便座214,12を開けると、便蓋212,14や便座214,12の先端は、図18,図29や図19,図30に示した例と同じ位置、即ち、洗浄タンク91の上端以下の位置に配置される。つまり、便座取付用穴99から回転中心軸P,P1,P2までの水平距離の値が、便器の前方に向かって42mm以下の範囲で変化しても、便蓋212,14や便座214,12を開けたときの先端の位置には影響しない。
【0141】
一方、装着された温水洗浄便座210,10と便器やタンクとの位置関係は、図17ないし図19,図28ないし図30に示した位置関係と同じである。従って、便蓋212,14や便座214,12を開けると、便蓋212,14や便座214,12の先端は、図18,図29や図19,図30に示した例と同じ位置、即ち、洗浄タンク91の上端以下の位置に配置される。つまり、便座取付用穴99から回転中心軸P,P1,P2までの水平距離の値が、便器の前方に向かって42mm以下の範囲で変化しても、便蓋212,14や便座214,12を開けたときの先端の位置には影響しない。
【0142】
また、高さ方向に関しては、便座取付用穴99から上方に向かって125mm以下の位置に、回転中心軸P,P1,P2を設ける構成とすればよい。回転中心軸P,P1,P2の便座取付用穴99からの高さをより低くすれば、低くした分だけ便蓋212,14や便座214,12を開けたときの便蓋212,14や便座214,12の先端位置は、図18,図29や図19,図30に示した例の場合よりも低くなる。従って、便蓋212,14や便座214,12が前方から吐水口92aを覆い隠すことがない。
【0143】
例えば、収納ケース216,16の高さをより低くすれば、低くした分だけ便座・便蓋支持体217の嵌合孔217aや装着溝16qの位置も低くなり、回転中心軸P,P1,P2の高さをより低くすることができる。この収納ケース216,16の高さをより低くする方法としては、例えば、熱交換器ユニット59等の各ユニットを更に小型化する方法や、これらの各ユニットの一部を、便座214,12や温水洗浄便座210,10の外部に設ける方法等を考えることができる。また、実行可能な機能から脱臭機能や乾燥機能,室内暖房機能等の一部の機能を除外して、脱臭ユニット49や温風ユニット58,室内暖房ユニット39等を収納ケース216,16内から除去するとともに、これらの除去により空いたスペースに他のユニットを有効に配置することにより収納ケース216,16の厚みを薄くすることも考えられる。
【0144】
この他、収納ケース216内を、左部,中央部,右部という3つの領域に分割し、中央部に熱交換器ユニット59等の各ユニットを、左部および右部に回転軸部材240をそれぞれ配置する構成とすれば、収納ケース216の上面よりも上方に回転軸部材240を設ける場合と比較して、回転中心軸Pの高さをより低くすることができる。
【0145】
また、洗浄タンク91の前面から便器98のリム面98aの先端までの長さ(以下、取り付け有効長という)は、便器の種類に応じて異なっており、上記の図17ないし図19、図28ないし図30では、取り付け有効長が約550mmの値である大型サイズの便器に温水洗浄便座210,10を装着した場合を例として説明している。
【0146】
ここで、より取り付け有効長の短い通常サイズの便器に対し、上記の温水洗浄便座210,10を装着した場合を想定する。この場合において、温水洗浄便座210,10は、便座214,12の先端と便器の先端とが合わさるように装着されるので、温水洗浄便座210,10は、上記の図17ないし図19、図28ないし図30に表わした位置よりも便器の後方寄りの位置に設置される。このため、回転中心軸P,P1,P2の位置は、図17ないし図19、図28ないし図30に表わした位置から便座取付用穴99に近づく方向に移動し、より便器の後方寄りに位置することになる。従って、便座取付用穴99から回転中心軸P,P1,P2までの距離は、便器の前方に向かって42mmよりも小さな値となる。回転中心軸P,P1,P2の位置が便座取付用穴99よりも更に後方にまでずれた場合には、便座取付用穴99から回転中心軸P,P1,P2までの距離は、「便器の後方に向かって10mm」のようなマイナスの値となる。
【0147】
このような場合においても、回転中心軸P,P1,P2の便座取付用穴99からの高さは、図17ないし図19、図28ないし図30に表わした位置とほぼ同じ高さとなる。従って、便蓋212,14や便座214,12を開けると、便蓋212,14や便座214,12の先端は、図18,図29や図19,図30に示した例とほぼ同じ位置、即ち、洗浄タンク91の上端以下の位置に配置される。つまり、装着される便器の取り付け有効長の値によって、便座取付用穴99から回転中心軸P,P1,P2までの水平距離の値が、便器の前方に向かって42mm以下の範囲で変化しても、便蓋212,14や便座214,12を開けたときの先端の位置には影響しない。便座取付用穴99から上方に向かって125mm以下の位置に回転中心軸P,P1,P2を設けている限り、開いた状態の便蓋212,14や便座214,12が前方から吐水口92aを覆い隠してしまうことはないのである。
【0148】
以上より、便蓋212,14および便座214,12の回転中心軸P,P1,P2を、便座取付用穴99から便器の水平前方に向かって42mm以下、便座取付用穴99から鉛直上方に向かって125mm以下の位置に設ければ、手洗用吐水管92との干渉を生じさせることなく、着座から用便,手洗いという一連の動作を通じて使い勝手のよい温水洗浄便座210,10を実現することが可能となる。この回転中心軸P,P1,P2の設置範囲を、図16および図27のグラフ中に斜線部分を用いて示した。
【0149】
以上、本発明の実施の形態を、第1実施例,第2実施例を用いて説明した。なお、上記の各実施例においては、収納ケース16,216を上下2つに分割するが、このような構成に限るものではなく、分割しないものであってもよい。また、左右に分割したり、3つ以上の部材に分割するものであってもよい。
【0150】
また、便蓋を、便蓋を閉めた状態において、収納ケースの上面および便座の上面の全範囲を覆うように構成することも可能である。この構成を図31に示す。図31は、第1実施例の温水洗浄便座210から便蓋212の形状を変更することにより構成された温水洗浄便座410の側面を示す説明図である。図31に示すように、閉じた状態の便蓋412は、上方から収納ケース416と便座414をすっぽり覆っている。便蓋412と便座414は、ともに共通の回転中心軸P4を中心として回転可能に構成され、回転中心軸P4は、便座取付用穴99から便器の水平前方に向かって42mm以下、便座取付用穴99から鉛直上方に向かって125mm以下の位置に設けられている。このような便蓋412とすれば、便座414と収納ケース416とが軸支されている部分や、便座414の裏面と収納ケース416の表面との間に埃や水等が入り込むことを防止できるので、汚れにくい温水洗浄便座を提供することができ、清掃の頻度が格段に減少する。
【0151】
なお、上記の各実施例では、便座取付用穴99の位置を基準として、便座や便蓋の回転中心軸の位置を定めているが、便座取付用穴99を利用せずに装着される温水洗浄便座の場合には、温水洗浄便座が装着される便器上の任意の位置を選択し、この位置を基準として便座や便蓋の回転中心軸の位置を定めることも可能である。例えば、便器の便座取付用穴99に相当する位置に温水洗浄便座装着用の係止部材が設けられている場合には、この係止部材と温水洗浄便座との係止点を基準として、便座や便蓋の回転中心軸の位置を定めればよい。
【0152】
なお、便座の着座面積を広く取りつつ、便蓋および便座を開いたときに便蓋および便座の先端が洗浄タンクの上端に配置されるようにするためには、温水洗浄便座を便器に装着した場合において、便蓋や便座の回転中心軸から便器の先端までの距離と、便蓋や便座の回転中心軸から洗浄タンクの上端までの距離とが一致すればよい。これらの値が一致する場合には、回転中心軸を中心とした円弧軌跡上に、便器の先端および洗浄タンクの前面の上端の双方が位置することになるからである。
【0153】
そこで、便器の先端および洗浄タンクの前面の上端の双方を通過する円弧軌跡の中心位置、即ち、便蓋や便座の回転中心軸の理想的な位置を、いわゆるロータンク密結型の洗浄タンクが組み付けられた便器に温水洗浄便座を装着する場合を例として、以下の条件の下で検証した。まず、便座取付用穴から便器の先端までの距離を約470mmという値とした。また、洗浄タンクを便器に組み付けた状態において、洗浄タンクの前面から便座取付用穴までの距離を約80mmという値とし、リム面から洗浄タンクの前面の上端までの高さを約485mmという値とした。さらに、便座や便蓋の先端の位置に関しては、便座の先端は、便器のリム面の先端から鉛直上方に約20mmの位置に配置され、便蓋の先端は、便器のリム面の先端から鉛直上方に約50mmの位置に配置されるものと仮定した。このような条件下での検証の結果、便蓋や便座の回転中心軸の理想的な位置を求める以下の算式を導き出すことができた。
【0154】
便座取付用穴から回転中心軸Pまでの水平距離をm、便座取付用穴から回転中心軸Pまでの垂直距離をnとした場合、
理想的な便蓋の回転中心軸Pf(m,n)は、
n=1.26m+20.9
理想的な便座の回転中心軸Pz(m,n)は、
n=1.18m+21.9
となる。
【0155】
このような理想的な回転中心軸Pf,Pzの値の範囲を、図32のグラフに示す。図32は、上記の検証に用いた便器の便座取付用穴の位置を原点Oとし、原点Oからの水平距離をm軸、原点Oからの垂直距離をn軸にとったグラフである。即ち、このグラフにおいて、m軸は、回転中心軸Pの便座取付用穴からの水平距離を、n軸は、回転中心軸Pのリム面からの高さを、それぞれ意味する。この水平距離や高さについては、単位mmを用いて表わし、m座標の右方向は便器の前方を、n座標の上方向は便器の上方を、それぞれ示す。
【0156】
以上の数式ないしグラフを用いれば、便座取付用穴からの水平距離若しくは便座取付用穴からの高さのうちのいずれかの値を任意に定めることにより、便蓋や便座の理想的な回転中心軸の位置を求めることが可能となる。例えば、上記の検証にて用いた便器セットについて、装着される温水洗浄便座について便座の回転中心軸をリム面から50mmの高さとしたい場合には、上記の理想的な回転中心軸Pzを求める数式に「n=50」という値を代入することにより、mの値が24mmと求められる。従って、便座取付用穴からの高さが50mmの位置であって、便座取付用穴から水平前方に向かって24mmの位置に便座の回転中心軸を設ければ、便座を閉じたときには、便座への着座面積が広く確保され、便座を開いたときには、開状態の便座の先端がタンク上部での手洗いの邪魔をすることがない。
【0157】
また、便蓋と便座との回転中心軸を同一としたい場合には、図32の2つの線グラフの交点Gの座標を求め、この座標の位置に回転中心軸を設ければ良い。例えば、図32に示した例の場合には、交点Gの座標は(m,n)=(12.5,36.7)であるから、便座取付用穴から水平前方に向かって12.5mmの位置であって、便座取付用穴からの高さが36.7mmの位置に便座の回転中心軸を設ければ、便座への着座面積は、リム面の奥行きに対応して広く確保され、便座を開いたときには、開状態の便座の先端がタンク上部での手洗いの邪魔をすることがない。このように、便蓋と便座との回転中心軸を同一とする場合においても、理想的な回転中心軸の位置を簡単に求めることができる。
【0158】
さらに、図32に示した2つの線グラフよりも、nの値が小さくなる範囲に回転中心軸を設ければ、少なくとも、便座や便蓋を開いたときに、開いた状態の便座や便蓋の先端がタンク上部の手洗吐水管と干渉するのを防止することができる。かかる範囲においては、便座や便蓋の回転中心軸から洗浄タンクの前面の上端までの距離が、より長くなるからである。この範囲を、図32に、便蓋については白色の矢印で、便蓋については黒色の矢印で、それぞれ示した。また、この範囲を前記した数式で表わすと以下のような式となる。
【0159】
手洗吐水管と干渉しない便蓋の回転中心軸Pf(m,n)の範囲は、
n≦1.26m+20.9
手洗吐水管と干渉しない便座の回転中心軸Pz(m,n)の範囲は、
n≦1.18m+21.9
【0160】
以上本発明の実施例である温水洗浄便座210,10について説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々なる様態で実施し得ることは勿論である。例えば、上記実施例の温水洗浄便座210,10を便器および洗浄タンクを有する便器セットに取り付けた便所装置としての態様で、本発明を実施することもできる。
【0161】
特に、洗浄機能や乾燥機能等が予め便器セットに組み込まれているいわゆる一体型の衛生洗浄装置においては、便座,便蓋や各種の制御ユニットが組み付けられたタンクに取付けボルト等を装着しておき、この取付けボルトを便器部分に開口された取付穴に差し込むことにより、組み立てられる場合がある。このような場合には、組み立て後における便座や便蓋の回転中心を、取付穴の位置を基準として上記の値の範囲内に位置するように構成すれば、一体型の衛生洗浄装置においても、上記実施例と同様の効果を簡単に得ることができる。
【0162】
また、洗浄水タンクをキャビネット内に隠蔽しつつ、このキャビネットの前面に便器を、上面に手洗い器を設ける、いわゆるトイレユニットとしての態様で、本発明を実施することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0163】
【図1】本発明の第1実施例である温水洗浄便座210の外観を表わす説明図である。
【図2】温水洗浄便座210内の水の流れを示すブロック図である。
【図3】温水洗浄便座210の制御部を示すブロック図である。
【図4】ベースプレート74の外観を表わす説明図である。
【図5】温水洗浄便座の取付け方法を示す説明図である。
【図6】便座214の概略斜視図である。
【図7】便蓋212の概略斜視図である。
【図8】温水洗浄便座210の上面および底面を表わす説明図である。
【図9】温水洗浄便座210における収納ケース216の概略斜視図である。
【図10】収納ケース216の側面図である。
【図11】便座214および便蓋212と便座・便蓋支持体217との装着部位の様子を示す説明図である。
【図12】便座・便蓋支持体217により支持された状態の便蓋212,便座214の断面を示す説明図である。
【図13】便蓋212が開状態にある場合の概略斜視図である。
【図14】便蓋212と共に便座214が開状態にある場合の概略斜視図である。
【図15】便器98に装着された状態の温水洗浄便座210について、便蓋212および便座214の回転中心軸P付近の縦断面を示す説明図である。
【図16】便座取付用穴99と回転中心軸Pとの位置関係を示すグラフである。
【図17】回転中心軸Pが(42,60)という座標位置である場合において、便座214および便蓋212を閉じた状態を示す説明図である。
【図18】上記の回転中心軸Pの座標位置において、便蓋212のみを開いた状態を示す説明図である。
【図19】上記の回転中心軸Pの座標位置において、便座214および便蓋212を開いた状態を示す説明図である。
【図20】第1実施例において、便蓋212,便座214が収納ケース216に軸支される態様を示す説明図である。
【図21】便蓋212を収納ケース216の内側および外側に向かって軸支し、便座214を収納ケース216の内側に向かって軸支した変形例を示す説明図である。
【図22】便蓋212および便座214を収納ケース216の外側に向かって軸支した変形例を示す説明図である。
【図23】本発明の第2実施例である温水洗浄便座10の外観を表わす説明図である。
【図24】本発明の第2実施例である温水洗浄便座10の外観を表わす説明図である。
【図25】便座12および便蓋14を取り付けるヒンジ部の構造を示す説明図である。
【図26】便器98に装着された状態の温水洗浄便座10の右側面を示す説明図である。
【図27】便座取付用穴99と回転中心軸P1,P2との位置関係を示すグラフである。
【図28】回転中心軸P1,P2が、それぞれ(32,125),(42,115)という座標位置である場合において、便蓋14および便座12を閉じた状態を示す説明図である。
【図29】上記の回転中心軸P1,P2の座標位置において、便蓋14のみを開いた状態を示す説明図である。
【図30】上記の回転中心軸P1,P2の座標位置において、便蓋14および便座12を開いた状態を示す説明図である。
【図31】第1実施例の温水洗浄便座210から便蓋212の形状を変更して構成された温水洗浄便座410の側面を示す説明図である。
【図32】便蓋,便座の理想的な回転中心軸Pf,Pzの値の範囲を示すグラフである。
【図33】回転軸Zが上方に設けられた温水洗浄便座を便器に装着したときの様子を、第一の従来例として示す説明図である。
【図34】第一の従来例において、便蓋および便座を開いた状態を示す説明図である。
【図35】回転軸Zが前方に設けられた温水洗浄便座を便器に装着したときの様子を、第二の従来例として示す説明図である。
【図36】第二の従来例において、便蓋のみを開いた状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0164】
10…温水洗浄便座(局部洗浄装置)
12…便座
14…便蓋
69…洗浄ノズル(吐水機構)
91…洗浄タンク
92…手洗用吐水管
98…便器
99…便座取付用穴(取付孔)
216…収納ケース
217…便座・便蓋支持体
410…温水洗浄便座(局部洗浄装置)
412…便蓋
414…便座
416…収納ケース
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄水を吐水する吐水機構を収納したケースおよび便座を有し、該ケースが便器上面に設けられた取付孔により便器に取り付けられ、前記洗浄水を吐水して局部洗浄を行なう局部洗浄装置であって、
前記ケースは、前記便座を軸支するための便座支持体を、該ケースの上面の最高点よりも上方に突出して備え、
前記便座を、前記便座支持体に回転可能に軸支すると共に、該軸支の回転中心を、前記ケースが前記便器に装着された状態において、前記取付穴から便器の前方に向かって42mmの位置よりも後方であり、かつ前記取付穴から上方125mmの位置よりも低い位置に設けた局部洗浄装置。
【請求項2】
前記便座支持体を、前記便座の開閉状態によらず、外部から視認可能に形成したことを特徴とする請求項1記載の局部洗浄装置。
【請求項3】
前記ケースに回転可能に軸支され、開閉可能とされた便蓋を備え、該便蓋は、該便蓋が閉状態のとき、前記ケースおよび前記便座の上面を覆うことを特徴とする請求項1または2に記載の局部洗浄装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の局部洗浄装置と、該局部洗浄装置を装着可能な便器と、該便器と連結されるタンクと、該タンクの上方に設けられる手洗い器とを備えた便所装置。
【請求項1】
洗浄水を吐水する吐水機構を収納したケースおよび便座を有し、該ケースが便器上面に設けられた取付孔により便器に取り付けられ、前記洗浄水を吐水して局部洗浄を行なう局部洗浄装置であって、
前記ケースは、前記便座を軸支するための便座支持体を、該ケースの上面の最高点よりも上方に突出して備え、
前記便座を、前記便座支持体に回転可能に軸支すると共に、該軸支の回転中心を、前記ケースが前記便器に装着された状態において、前記取付穴から便器の前方に向かって42mmの位置よりも後方であり、かつ前記取付穴から上方125mmの位置よりも低い位置に設けた局部洗浄装置。
【請求項2】
前記便座支持体を、前記便座の開閉状態によらず、外部から視認可能に形成したことを特徴とする請求項1記載の局部洗浄装置。
【請求項3】
前記ケースに回転可能に軸支され、開閉可能とされた便蓋を備え、該便蓋は、該便蓋が閉状態のとき、前記ケースおよび前記便座の上面を覆うことを特徴とする請求項1または2に記載の局部洗浄装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の局部洗浄装置と、該局部洗浄装置を装着可能な便器と、該便器と連結されるタンクと、該タンクの上方に設けられる手洗い器とを備えた便所装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【公開番号】特開2006−70699(P2006−70699A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−301333(P2005−301333)
【出願日】平成17年10月17日(2005.10.17)
【分割の表示】特願平11−291919の分割
【原出願日】平成11年10月14日(1999.10.14)
【出願人】(000010087)東陶機器株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年10月17日(2005.10.17)
【分割の表示】特願平11−291919の分割
【原出願日】平成11年10月14日(1999.10.14)
【出願人】(000010087)東陶機器株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
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