説明

工作機械における温度に依存した位置変化を補償するための方法およびデバイス

【課題】工作機械での温度に依存した位置変化を補償すること
【解決手段】本発明は、少なくとも1つのリニア軸を有する工作機械での温度に依存する位置変化を補償するための方法およびデバイスに関する。本発明の方法によれば、工作機械の第1リニア軸の第1温度測定位置にて少なくとも1つの第1温度を得て、第1基準温度と第1温度との間の第1温度差を得て、この第1温度差に応じて第1補償値を決定し、第1補償値に応じて工作機械での温度に依存する位置変化を補償する。本発明は、第1補償値を更に第1リニア軸の軸位置に応じて決定することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのリニア軸を有する工作機械での温度に依存した位置変化を補償するための方法およびデバイスに関する。本発明によれば、工作機械のリニア軸の温度測定位置にて、少なくとも1つの温度値を検出し、基準温度と検出された温度値との間の温度値の差を得て、その温度値の差に応じて補償値を決定し、工作機械を制御するときに、決定された補償値に応じ、温度に依存した位置変化、例えば工作機械上にクランプされた工具または加工品の温度に依存した変位量、または工作機械の構成部品および工作機械のリニア軸の温度に依存した変位量を補償する。
【0002】
更に本発明は、少なくとも1つのリニア軸を有する工作機械、特にNCまたはCNC工作機械を含むシステム、および工作機械での温度に依存した位置変化を補償するためのデバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
本発明は、熱シフトを補償するよう工作機械の数値制御またはプログラマブルロジック制御のために計算される補償値を計算することにより、補償を使用して工作機械での熱シフトをバランスさせることに関する。
【0004】
これに関連し、工作機械での熱シフトは、例えば構成部品、例えばフレーム構成部品が反る結果生じるものであり、かかる反りは、加熱、特に構成部品を不均一に加熱することにより、例えば片側に取り付けられているガイド部材またはドライブ部材からの熱入力によって生じ得る。片側にあるガイドおよびドライブにより、フレーム構成部品が加熱されると、片側の加熱に従って、この加熱された側で材料が膨張する。片側の加熱に起因し、フレーム構成部品は加熱されている側のほうが反対側よりも長さが長くなり、よって構成部品は反ることになる。かかるふるまいは、位置誤差を生じさせるが、この位置誤差は、工作機械および工作機械の軸を制御する間の補償によって補償しなければならない。
【0005】
一般に、工作機械の構成部品の上記変形は、工作機械の熱成長と称されている。工作機械は熱膨張係数に起因し、このような熱成長を呈する。熱成長は、一方で、例えば工作機械のスライドまたは工作機械のベッドがリニア熱膨張する結果でも生じる。リニア熱膨張のこの部分は、構成部品の均一な熱上昇と熱膨張係数とが乗算される結果生じる。
【0006】
しかしながら、熱成長の第2部分は、工作機械の構成部品で生じ得る不均一な温度差の結果生じる。かかる温度差の原因は、例えば工作機械の構成部品へのむらのある熱入力となり得る。例えば工作機械の構成部品において、その底部にドライブおよびガイドが取り付けられている場合、底部は構成部品の頂部、例えば工作機械のリニア軸のスライドよりも、より強くかつ急速に加熱される。従ってこの結果、工作機械のフレーム構成部品は、ガイドおよびドライブが載っており、加熱され、急激に温度が上昇する表面と、より低温であって、よりゆっくりとかつ余り加熱されない表面とを有する状況となることが多い。かかる片側加熱の結果、このような不均一な加熱を受ける構成部品の反りが生じる。
【0007】
工作機械での上記熱によって生じるシフトに関して、従来技術では、工作機械およびその構成部品を積極的にテンパリングすることによって、熱によって生じるシフトを低減または解消することが知られている。従って、工作機械の一部またはすべての構成部品を局部的にテンパリングするための、特に例えば工作機械上の発熱中心部、例えばスピンドルまたはドライブを冷却するための冷却ユニットにより、所定の温度または設定値に従ってガイドされる温度にされる媒体を使用することが可能である。
【0008】
ここで、不均一な加熱がなされる場合、構成部品の上記長さの変化を低減または解消するために、工作機械の一部またはすべての部品を積極的にテンパリングまたは冷却する手段によるかかるアプローチを効果的に利用できる。しかしながら、冷却材の入力が局部的に限定されることに起因し、温度差の発生を完全に防止することは不可能である。すなわち一部の温度差が大きくなるので、工作機械の構成部品の異なる側で温度差がある結果生じる、フレーム構成部品の反りの原因となり得る、熱によって生じる変形を、工作機械の積極的なテンパリングにより、完全に防止することはできない。すなわち、変形が大きくなる。
【0009】
この場合、工作機械の構成部品上の1つ以上の温度を測定し、軸目標位置を重ねることにより、工作機械の制御における測定された値に相関性のある補償値を計算し、工作機械で熱によって生じたシフトを補償することが従来技術で知られている。ここで、従来技術では、測定された温度または工作機械の構成部品での温度差に応じて補償値を計算する制御補償を行うことが知られている。
【0010】
この制御補償は、例えば次の式による方法によって実行できる。
【数1】

【数2】

【0011】
ここで、ΔA1は、工作機械の第1軸A1に対する補正値または補償値であり、ΔANは、工作機械のN番目の軸ANに対する補償値である。工作機械の軸A1の構成部品で基準温度TREFERENCE_11およびベース温度TBASE_11を検出し、対応する温度差を形成する。更に工作機械の別の軸A1〜AN上で基準温度およびベース温度の各々を検出し、対応する温度の値の差を得る。
【0012】
このような計算の過程において、軸の各々、特に工作機械のリニア軸に対し、補償補正値を計算し、補償補正値は温度差を考慮し、それぞれ補償要素を乗算する。K_11〜K_1NおよびK_N1〜K_NNは、それぞれの温度差に対してあらかじめ固定されるそれぞれの補償要素である。これら値は、満足できる補償結果を得ることができるように、工作機械でのシミュレーションまたは実験によって決定できる。
【0013】
計算された補償補正値ΔA1またはΔANにより、NC工作機械またはCNC工作機械のマシン制御であらかじめ決定される、工作機械のそれぞれの軸の目標軸位置を重ねるか、または補正することが好ましい。例えば軸A1の方向へ熱シフトを補償するように、計算された値ΔA1により軸A1の目標軸位置を補正できる。
【0014】
例えば、ドイツ公開特許出願第DE198 00 033 A1号または第DE10 2004 044838 A1号から、工作機械での温度に依存した位置変化を補償するための同様な方法が知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、工作機械での温度に依存する位置変化を補償するためのかかる方法は、不正確である。更に工作機械の軸のダイナミクスを高めることにより、工作機械での機械加工の一次処理時間および二次処理時間(更に部品ごとのコスト)を低減しようとする試みがなされてきた。その結果、高いダイナミクスを有する工作機械の世代ごとに、熱によって生じる偏差が大きくなる。よって、特に工作機械での熱シフトは工作機械のある世代から次の世代に、より密接な関係がある。その理由は、ドライブおよびガイド部材における摩擦、およびその摩擦の結果生じる加熱が加速度、特に最大速度と共に増加するので、工作機械のダイナミクスと共に上記熱によって生じる熱シフトが大きくなるからである。
【0016】
更に、工作機械は、互いにシリアルに依存する複数の軸を一般に有する。このことは、個々の軸の熱シフトが工具または加工品に向かって増大し、工具または加工品に作用する熱弾性シフトの結果、互いにシリアルに依存するすべての軸が依存することになる。このことは、発生する位置の誤差を指数関数的に高める。
【0017】
特に、熱の反りまたは熱変形に起因する位置の偏差は、リニア軸の(純粋な長手方向の膨張の場合のように)前進方向に生じるだけでなく、前進方向に直交する位置の変化も生じさせ得る。特に、大きな突出部、すなわち大きな移動距離を有する工作機械では、加工品上に残る不正確性の大部分の原因となるこれら上記作用の結果、より大きい熱成長が生じる。特に片側で同じ温度上昇入力があった場合にトレースバック(さかのぼって追跡)できる構成部品の不均一な加熱および反りがあると、均一な加熱の場合のリニアな熱膨張よりも、(特に別の空間方向での)顕著な、より大きい熱シフトが生じる。
【0018】
本発明の発明者たちは、実験を行い、これら実験において、工具の先端での偏差の比率が、単に工作機械の加工長さに対して標準化された1ミル当たり−0.15〜0.3のレンジ内にあったとしても、この比率は500mmの加工長さに対して約−100〜150μmとなり、これらの値では工作機械にある加工品の今日の機械加工精度の条件を満たすことはできず、更に低減または補償しなければならないことを見い出した。
【課題を解決するための手段】
【0019】
従来技術から知られる工作機械での温度に依存する位置変化を補償するための方法の上記欠点に鑑み、本発明の目的は、従来技術の欠点を解消し、熱シフトの補償をより効率的かつ正確に達成できる工作機械での温度に依存する位置変化を補償するための改善された方法を提供することにある。
【0020】
本発明の上記課題は、本発明に係わる独立請求項に記載されているように、少なくとも1つの第1リニア軸を有する工作機械での温度に依存する位置変化を補償するための方法、少なくとも1つの第1リニア軸を有する工作機械での温度に依存する位置変化を補償するためのデバイス、および少なくとも1つの第1リニア軸を有する工作機械と本発明の方法に従って工作機械での温度に依存する位置変化を補償するための本発明のデバイスとを備えるシステムにより解決される。本発明の好ましい実施形態の特徴は、従属請求項に記載されている。
【0021】
本発明によれば、少なくとも1本の第1リニア軸を有する工作機械での温度に依存する位置変化を補償するための方法は、工作機械の第1リニア軸の第1温度測定位置における少なくとも1つの第1温度を検出するステップと、第1基準温度と第1温度との間の第1温度差を決定するステップと、第1温度差に応じ、第1補償値を決定するステップと、第1補償値に応じて温度に依存する位置変化を補償するためのステップとを備える。本発明によれば、第1リニア軸の軸位置に応じて更に第1補償値を決定する。従って、本発明によれば、第1補償値を決定するためのステップにおいて、第1温度差および第1リニア軸の軸位置の双方に応じて、第1補償値を決定する。
【0022】
従って、本発明によれば、工作機械のリニア軸の軸位置に応じて温度に依存する位置変化の補償を更に実行する。このことは、従来技術と異なり、本ケースでは工作機械での温度に依存する位置変化を補償するための補償値の計算において、工作機械の少なくとも1つの軸、またはオプションとして複数の軸の位置を考慮する。特にこれによって、増加する個々の軸の位置に応じた熱シフトも、位置に応じて補償でき、すなわち軸のそのときの実際の位置に適応できるという利点が得られる。
【0023】
これに関連し、不均一な熱入力によって生じ、構成部品の反りを伴うことがある、工作機械での熱による位置変化は、位置から独立した部分だけでなく、位置に依存した部分を有する位置エラーを生じさせ、位置に依存した位置エラーは、従来技術から知られた補償方法では考慮できないことを、本発明者たちは特に認識した。
【0024】
しかしながら、熱シフトの位置に依存した補償を行う本発明によれば、軸位置に応じ、有利な態様で、各軸位置において熱シフトを正確に補償することが可能である。従って、従来技術のように、それぞれ測定される1つ以上の温度および温度差に応じるだけでなく、更に工具および/または加工品の位置に影響する工作機械の軸またはリニア軸の1つ以上の軸位置にも応じ、1つの補償値または1つ以上の補償値を計算することを提案する。ここで、対応して計算される補償値により、位置エラーの位置に依存した部分をバランスさせるか、または従来技術で知られている補償方法よりもより正確にその部分をバランスさせるのに、1本以上の軸の軸位置を使用できる。
【0025】
好ましくはこれに関連し、温度差を得た場合、リニア軸の移動方向の垂直な方向に対する、このような位置に依存した部分も決定することが好ましい。複数の軸がシリアルに依存するようなシリアル運動機構を有する工作機械に対しては、シリアルに互いに依存するすべての軸の軸位置を考慮することが好ましい。工作機械の軸のそれぞれの軸位置は、工作機械、例えばいわゆる工作機械のNCの制御ユニットから、工作機械の軸のそれぞれの軸位置を読み出すことができ、工作機械の1本以上の軸の軸位置に応じ、軸位置に応じた1つ以上の補償値を計算することができ、この補償値を工作機械の制御ループ内で積分し、例えば工作機械の構成部品および工作機械の軸の熱シフトを補償するために、それぞれの軸の軸ターゲット位置を補正するか、または計算された1つ以上の補償値に従って、これらターゲット値を重ねることができる。ここで、例えば工作機械のNCまたは工作機械のPLC内で、補償値を計算できる。工作機械のすべての軸の位置は、運動機構のチェーン内の工具または加工品の位置に寄与する工作機械のすべての軸の位置を検討することが好ましい。
【0026】
いくつかの空間的方向、特に好ましくは3つのすべての空間的方向に対して、補償値を決定することが好ましい。本発明によれば、工作機械の軸の軸位置を考慮することなく補償値を計算する場合よりも、改良された態様で、工作機械での熱に依存したシフトを補償することが可能となる。その理由は、本発明によれば、より強力に改善された熱補償を達成できるようにする補償に鑑み、位置に応じた熱シフトも検討できるからである。特に、不均一な熱入力およびその結果生じる構成部品の変形または反りに起因する熱成長を含む工作機械の熱成長を、改善された態様で成功裏に補償できる。
【0027】
要約すれば、本発明によれば、測定される1つ以上の温度および得られる温度差にそれぞれ応じるだけでなく、工具および/または加工品の位置に影響する工作機械の軸の1つ以上の軸位置にも応じ、1つ以上の補償値を決定する相関的アプローチにより、工作機械の軸の、熱によって生じるシフトを補償する。
【0028】
好ましくは、第1補償値は、位置に依存しない部分と、位置に依存する部分からなり、第1補償値の位置に依存する部分は好ましくは少なくとも第1リニア軸の軸位置に依存する。これによって、対応する、位置に依存しない部分、および位置に依存する部分により、軸位置に依存しない位置エラーおよび軸位置に依存する位置エラーの双方を補正または補償できるという利点が得られる。位置に依存しない部分は、比較温度と比較し、構成部品が均一に加熱される場合のリニア膨張から生じ得る。
【0029】
第1リニア軸の軸長さに対する第1リニア軸の軸位置の比に応じて第1補償値を決定することが好ましい。温度に依存する位置変化を補償する間により高い精度を得ることができるようにするために、好ましくは第1リニア軸の軸長さに対する第1リニア軸の軸位置の比の二乗に応じて第1補償値を決定することが可能である。従って、リニア軸の軸長さに対するリニア軸の軸位置の簡単な比に応じ、すなわち取り扱いが容易な無次元パラメータにより、1つ以上の補償値の位置に依存する部分を決定することが可能である。構成部品が、ある側の温度と異なる温度を他の側で有するとき、構成部品の反りは実質的に弧として生じるので、軸位置に応じた位置エラーは、基本的には線形ではなく、補償値がリニア軸の軸長さに対する軸位置の比に応じて決定されず、むしろリニア軸の軸長さに対する軸位置の比の二乗に応じて決定される場合に、より良好な補償結果を得ることができる。しかしながら、反りがまだ線形近似の範囲内にあるとき、リニア軸の軸長さに対する軸位置の比を簡単に使用することにより、良好な近似であり、工作機械での熱に依存するシフトの優良な位置に応じた補償が可能となる。
【0030】
第1補償値に応じて温度に依存する位置変化を補償するステップでは、第1リニア軸の方向に垂直な方向に、温度に依存する位置変化を補償することが好ましい。反りまで戻って追跡でき、工作機械の構成部品の不均一な加熱に起因して熱変形または熱シフトが生じる場合には、前進方向と垂直であり、かつリニア軸の前進方向の単なる長手方向の膨張とは異なる方向に、位置の偏差が生じないという別の特徴がある。従って、この場合、反りまで戻って追跡できる熱シフトをリニア軸の方向と垂直な方向に、好ましく、かつ有利に補償することもできるという利点が得られる。
【0031】
第1補償値に応じて温度に依存する位置変化を補償するステップにおいて、好ましくは第1リニア軸に直角に配置される、工作機械の第2リニア軸の方向に、温度に依存する位置変化を補償することが好ましい。このことは、例えば第2リニア軸の方向の位置エラーをバランスさせるように、第2リニア軸の軸ターゲット位置を適応化することにより、工作機械の第2リニア軸の方向に第1リニア軸の1つ以上の構成部品を不均一に加熱することによって生じる熱シフトを有利な態様で補償することを可能にする。
【0032】
温度に依存する位置変化を補償するステップは、第1補償値に応じて工作機械の第2リニア軸の第1軸のターゲット位置の値を適応化するステップを更に備え、第2リニア軸の軸ターゲット位置を適応化するステップを、第1リニア軸の軸位置に応じて実行することが好ましい。従って、第1リニア軸の構成部品の熱による反りによって生じる位置エラーを、第2リニア軸の方向の第2リニア軸の適応化された軸ターゲット位置により補償できるよう、計算された補償値に応じて工作機械のリニア軸の軸ターゲット位置を補正または適応化することにより、熱シフトまたは熱シフトに起因して生じる位置エラーを補償することが可能である。
【0033】
このケースでは、制御ユニット内、例えばいわゆるマシンNC(NCは数値制御のニューメリカルコントロールの略語)、またはマシンLCもしくはマシンPLC(PLCはプログラマブルロジックコントローラの略語)とも称されるプログラマブルロジックコントローラ(PLC)内で、できるだけ高速のタイミングサイクルで1つの補償値または複数の補償値の計算を実行する。次に、工作機械のリニア軸の1つ以上の軸ターゲット値に制御ユニット、いわゆるマシンNCにより、位置に応じて計算された補償値を重ね合わせることができる。更に、工作機械のフレーム構成部品の(不均一な)加熱により生じた変形を補償するために、例えばモータのスピンドルに起因して生じたシフトを補償するための別の補償部分を補償値に重ね合わせることが可能である。
【0034】
従って、工作機械での1つ以上の温度を測定し、工作機械の制御装置または位置コントローラ内の軸ターゲット位置を重ね合わせることにより、工作機械内の測定された温度に相関性のある1つ以上の補償値を計算することによって、工作機械での熱によって生じたシフトを好ましく補償できる方法を提案する。計算された補償値は、軸の方向の温度に依存する位置変化をそれぞれ補償するため、工作機械の1つ以上の軸ターゲット位置を補正するために使われることが望ましい。
【0035】
好ましい実施形態によれば、本発明に係わる方法は、工作機械の第2リニア軸の第3温度測定位置における少なくとも1つの第2温度を検出するステップと、第2基準温度と第2温度との間の第2温度差を得るステップと、第2温度差に応じ、第2補償値を決定するステップとを備え、第1補償値および第2補償値に応じて温度に依存する位置変化を補償し、第2リニア軸の軸位置に応じて更に第2補償値を決定することが好ましい。従って、第2の温度差を得ることにより、工作機械の第2リニア軸の1つ以上の構成部品の熱膨張および変形に起因する熱シフトも有利に補償できる。この目的のために、温度に依存するシフトを補償する際に、第1リニア軸の軸位置と第2リニア軸の軸位置の双方を考慮し、更に、より最適な熱補償さえも達成できるように、第2リニア軸の軸位置に応じて第2補償値を決定することが好ましい。
【0036】
温度に依存する位置変化を補償するステップは、第1補償値に応じて工作機械の第2リニア軸の第1軸のターゲット位置の値を適応化するステップ、および/または第2補償値に応じて工作機械の第1リニア軸の第2軸のターゲット位置の値を適応化するステップを備え、第2リニア軸の軸ターゲット位置を適応化するステップを、第2リニア軸の軸位置に応じて実行し、第1リニア軸の軸ターゲット位置を適応化するステップを第1リニア軸の軸位置に応じて実行し、第1リニア軸の軸ターゲット位置を適応化するステップを第2リニア軸の軸位置に応じて実行することが好ましい。これによって、リニア軸のうちの1つの前進方向に垂直な位置エラーを生じさせる構成部品の不均一な加熱に起因する変形およびシフトが、他のそれぞれのリニア軸の軸ターゲット位置を適応化することにより、それぞれ補償または補正できるように、それぞれの他のリニア軸の軸位置に応じて有利な態様で1つのリニア軸の軸ターゲット位置を有利に補償できるようになる。
【0037】
第1基準温度は、第1リニア軸の第2温度測定位置で測定された温度であり、第2基準温度は、第2リニア軸の第4温度測定位置で測定された温度であることが好ましい。別の例では、第2基準温度を、第1基準温度に等しくすることができ、特に工作機械の2つ以上(またはすべての)構成部品に対する工作機械の基準温度測定位置で検出された均一な基準温度に等しくすることができる。例えば、第1基準温度および第2基準温度を工作機械の周辺温度に依存する基準温度に等しくすることができる。このことは、例えば第1リニア軸に基づく第2リニア軸において、互いにシリアルに依存する軸の場合に、第1リニア軸の軸位置だけでなく、第2リニア軸の軸位置にも応じて、補償値を有利な態様で決定できる。従って、第2リニア軸の軸ターゲット位置を適応化するために、第1リニア軸の構成部品の変形だけでなく、第2リニア軸の構成部品の変形にも起因する熱シフトを最適に補償することが可能である。更に、第1リニア軸の軸位置に応じて第2補償値も決定する場合、第1リニア軸と第2リニア軸の双方の軸位置を考慮し、よって、より最適な熱補償を可能にするようなそれぞれの補償値を、双方のリニア軸に対して有利に決定できる。
【0038】
工作機械の第1リニア軸および第2リニア軸を、片側に突出部を含む、互いにシリアルに依存する2つの軸として実現し、第2リニア軸を、第1リニア軸に依存させ、第1補償値を更に第2リニア軸の軸位置に応じて決定することが好ましい。第1リニア軸の軸位置に応じて、更に第2補償値を決定することが好ましい。
【0039】
好ましい実施形態によれば、本発明に係わる方法は、第1温度差に応じて第3補償値を決定するステップ、および/または第2温度差に応じて第4補償値を決定するステップとを更に備え、第3補償値および第2補償値に応じて第1リニア軸の方向に温度に依存する位置変化を補償し、第1補償値および第4補償値に応じて第2リニア軸の方向に、温度に依存する位置変化を補償し、第1リニア軸の軸位置に応じて更に第3補償値を決定し、第2リニア軸の軸位置に応じて、更に第4補償値を決定することが好ましい。従って、第1リニア軸の1つ以上の構成部品の温度差と第2リニア軸の1つ以上の構成部品の温度差の双方を考慮するよう、補償値を計算し、これらリニア軸の1つ以上の軸位置をそれぞれ考慮し、検討する場合に、複数の補償値を計算する、互いにシリアルに依存する少なくとも2つの軸を有する工作機械で最適な熱補償を達成することが可能である。これによって、互いにシリアルに依存する構造体に起因し、効果が互いに重なり合うような、例えば片側に交換不能な突出部を有する、互いにシリアルに依存する複数の軸によって、工具および加工品の位置を決定する工作機械のコンフィギュレーションにおける熱シフトの優れた補償が可能となる。従って、構成部品に対する作用だけでなく、すべての構成部品で生じ得る温度に依存する作用の重なり合いからも熱シフトが生じる作用を補償することが可能である。ここで、軸位置、好ましくは工具または加工品の位置に影響する、関係するすべての移動軸の軸位置に応じて、軸および工作機械の構成部品における複数の温度差によって工具または加工品における熱シフトを決定することが好ましい。
【0040】
温度に依存する位置変化を補償するステップは、更に第1補償値および第4補償値に応じて工作機械の第2リニア軸の第1軸のターゲット位置の値を適応化するステップおよび/または第3補償値および第2補償値に応じて工作機械の第1リニア軸の第2軸のターゲット位置の値を適応化するステップを更に含むことが好ましい。
【0041】
工作機械は、互いにシリアルに依存し、突出部を含む複数のリニア軸を備え、複数のリニア軸の各々に対して、リニア軸の温度測定位置において、少なくとも1つの温度を得て、それぞれの基準温度とそれぞれの得られた温度との間のそれぞれの温度差を得て、リニア軸の各々に対し、互いにシリアルに依存するリニア軸の数に等しい数の複数の補償値の合計に対応する総補償値を決定することが好ましく、各補償値は、温度差のうちの1つに正確に直接比例していることが好ましい。一例として、上記記載に従ってリニア軸に対する補償値を計算するための一般式について記述する第7実施形態について以下説明する。
【0042】
従って、互いにシリアルに依存する複数のリニア軸の各々に対し、軸のうちの1つにおける温度差の1つにそれぞれ直接比例する補償値の合計に対応することが好ましい総補償値を決定し、よって総補償値が補償値の合計値に対応し、各補償値が別のリニア軸の別の温度差にリニアに依存し、各総補償値に対し、すべてのリニア軸のすべての温度差を考慮できるような熱補償を有利に実行することが可能である。
【0043】
この場合、当然ながら本発明により、位置に応じてそれぞれの補償値を決定するが、これら補償値は、リニア軸のうちの1つの少なくとも1つの軸位置、オプションとして互いにシリアルに依存するリニア軸の2つ以上またはすべてのリニア軸位置にも依存する。これに関連し、本発明の第6または第7実施形態に関して特に一般的な式について詳細に後述する。位置に依存する項の合計に応じて各補償値を形成し、各位置に依存する項は、リニア軸のうちの1つの軸位置に依存することが好ましい。位置に依存する項の各々は、リニア軸のうちの1つの軸長さに対する軸位置の比に依存することが好ましい。各補償値は、補償値が直接温度差に比例する、リニア軸のための位置に依存する項を含むことが好ましい。更に各補償値は少なくとも、互いにシリアルに依存する複数のリニア軸のすべての先行するリニア軸に対する位置に依存する項を更に含むことが好ましい。
【0044】
第1リニア軸が工作機械のベッド上で変位可能なスライドであるとき、別のファクター(AP1−AL1/2)/(AL1/2)(ここでAP1は、第1リニア軸の軸位置を示し、AL1は、第1リニア軸の軸長さを示す)を考慮するように、第1補償値を更に決定することが好ましい。従って、工作機械のベッド上に変位可能なスライドが配置されており、オプションとして工作機械のベッドが熱変形によりカーブまたは曲げられるようになっているリニア軸に対し、工作機械での熱シフトの位置に応じた熱補償を適用することもできる。工作機械のベッド上に変位可能なスライドを有するリニア軸に適応するように熱シフトの有利な補償をするために、このケースでは例えば工作機械のベッド上の変位可能なスライドの中心位置での熱シフトを補償するための計算された補償値を最小にすることを保証するような別のファクターを使用する。
【0045】
1つ以上の補償値を決定するステップを工作機械の数値制御デバイスの位置コントローラ内、または工作機械のプログラマブルロジックコントローラ内で実行することが好ましい。温度に依存する位置変化を補償するステップを、1つ以上の補償値に応じて工作機械の数値制御デバイスで実行することが好ましい。工作機械の制御ユニット、いわゆる工作機械のNCにて、補償値の計算が示唆される工作機械のマシン制御で、位置コントローラのサイクルでできるだけ高速のタイミングサイクルにて、位置に依存する補償値の計算を実行しなければならない。
【0046】
上記とは異なり、工作機械のPLC(PLC、例えば工作機械のプログラマブルロジックコントローラ)内で更に計算を行うこともできる。この場合工作機械の高速の変位運動が位置に応じた項に起因する補償値の前縁または後縁を引き起こすよう、この場合、もはや位置コントローラのサイクルと同期して補償値が計算されることはない。従って、制御装置(例えば工作機械のNC)内での補償値の計算は利点を有するが、しかしPLCのサイクルが工作機械の制御の位置コントローラのサイクルよりも大幅に低速でない限り、後縁または前縁効果は小さい。例えば多くの工作機械の制御のように、4msのPLサイクルが、例えば1msのNCの位置コントローラサイクルよりも4倍低速である場合、毎分100メートルまでの極端に速い最大前進速度でも、工作機械の軸(単数または複数)は、4ms内で6.7mmより長く移動できない。しかしながら、総軸長さが500mmの場合、このことは軸長さに対する軸位置の位置に応じた項により、最大1.3%の位置に応じた補償値におけるエラーを生じさせるだけであるので、NCと比較してPLCの速度が遅いことに起因し、工作機械のPLCにおける補償値の計算によって生じるエラーを無視できる。
【0047】
更に後述するように、上記方法および好ましい方法のうちの1つに従い、工作機械での温度に依存した位置変化を補償するための方法を実行するようになっている、少なくとも1つのリニア軸を有する工作機械での温度に応じた位置変化を補償するためのデバイスが提案される。これに関連し、上記方法のステップまたはその好ましい特徴を実行するように設定された実質的な手段について後述する。
【0048】
本発明によると上記方法のうちの少なくとも1つに従い、少なくとも1つのリニア軸を有する工作機械での温度に応じた位置変化を補償するためのデバイスが更に提供される。本発明のデバイスは、工作機械の第1リニア軸の第1温度測定位置において少なくとも1つの第1温度を検出するための第1温度検出手段と、第1基準温度と第1温度との間の第1温度差を得るための温度差を得る手段と、第1温度差に応じて第1補償値を決定するための補償値決定手段と、第1補償値に応じて温度に依存する位置変化を補償するための位置変化補償手段とを備える。本発明によると位置変化補償手段は、第1リニア軸の軸位置に応じて更に第1補償値を決定するようになっている。
【0049】
位置変化補償手段は、第1補償値に応じて工作機械の第2リニア軸の第1軸のターゲット位置の値を適応化するための(オプションとして、補償値決定手段によって決定される補償値のうちの1つ以上に応じて工作機械の更なるリニア軸の更なる軸ターゲット位置の値を更に適応化するための)軸ターゲット位置適応化手段を更に備え、この軸ターゲット位置適応化手段は、第1リニア軸の軸位置に応じて第2リニア軸の軸ターゲット位置の適応化を実行するようになっていることが好ましい。更に軸ターゲット位置適応手段は、工作機械の複数のリニア軸の軸位置に応じ、オプションとして工作機械のすべてのリニア軸の軸位置に応じて工作機械の複数のリニア軸のそれぞれの軸ターゲット位置の適応化を実行するようになっていることが好ましい。
【0050】
本発明のデバイスは、工作機械の第2リニア軸の第3温度測定位置において、少なくとも1つの第2温度を検出するための第2温度検出手段を更に備え、第2温度差を得る手段は、更に第2基準温度と第2温度との間の第2温度差を得るようになっており、位置変化補償手段は、第2温度差に応じて第2補償値を決定し、第1補償値および第2補償値に応じて温度に依存する位置変化を補償し、第2リニア軸の軸位置に応じて更に第2補償値を決定するようになっていることが好ましい。
【0051】
デバイスは、第1リニア軸の第2温度測定位置において、第1基準温度を検出するための第3温度検出手段および/または第1リニア軸の第4温度測定位置における第2基準温度を検出するための第4温度検出手段とを更に含むことが好ましい。
【0052】
1つ以上の補償値を決定するための補償値決定手段は、工作機械の数値制御デバイスの位置コントローラ内または工作機械のプログラマブルロジックコントローラ内に含まれることが好ましい。工作機械の数値制御デバイス内には、1つ以上の補償値に応じて温度に依存する位置変化を補償するための位置変化補償手段が、含まれることが好ましい。
【0053】
最後に、本発明によれば、少なくとも1つの第1リニア軸および工作機械での温度に依存した位置変化を補償するための上記デバイスのうちの1つを有する、工作機械を備えたシステムが、上記本発明の方法のうちの1つに従って提供される。
【0054】
要約すれば、本発明によれば、工作機械での温度に依存した位置変化を補償するための従来技術と比較して、改善された補償方法を実行できるようにする、少なくとも1つのリニア軸を有する工作機械での温度に依存した位置変化を補償するための方法およびデバイスが提供される。その理由は、リニア軸の構成部品または工作機械での、得られる温度差の他に工作機械の1つ以上のリニア軸の1つ以上の軸位置に応じ、更に位置に応じた部分が得られるので、従来技術と比較して改良された態様で、更に位置に応じて補償を実行できるからである。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】均一な加熱の影響およびその結果生じるリニアな熱膨張の作用下にある工作機械の第1リニア軸の変位可能なスライドを略図で示す。
【図2】不均一な加熱の影響下にある工作機械の構成部品、例えばスライドの反り変形を略図で示す。
【図3】均一でない加熱の場合の、温度に依存した変形中の工作機械の第1リニア軸のスライドの、位置に依存した位置エラーを示す。
【図4】A 工作機械のシリアルに依存する2つのリニア軸の構成部品の不均一な加熱の場合の熱変形を示す。 B 工作機械のシリアルに依存する2つのリニア軸の構成部品の不均一な加熱の場合の熱変形を示す。
【図5】不均一な加熱の場合の、工作機械のベッドの温度に依存した変形を例示する。
【図6】本発明の一実施形態に係わる、工作機械上の温度に依存した位置変化を補償するためのデバイスを略図で示す。
【発明を実施するための形態】
【0056】
次に添付図面を参照し、本発明の好ましい実施形態について説明する。しかしながら、本発明はここに記載する実施形態だけに限定されるものではない。本発明は、特許請求の範囲によって定められる。実施形態の同様または類似した特徴事項は、図中では同じ参照番号によって示されている。
【0057】
図1は、工作機械の第1リニア軸A1のスライドS1を示し、このスライドは、「軸1」の方向に変位でき、長さLおよび高さHを有する。均一に加熱された場合、すなわち均一に温度変化した場合、スライドS1はリニアに膨張する(これに関連するS1は、膨張していない状況のスライド、例えば特定の基準温度または基本温度の場合を示し、S1’は膨張した状態のスライドを示す)。高さの変化および長さの変化はそれぞれ次のように計算される。
【数3】

【数4】

【0058】
ΔLは、温度変化ΔTにより均一に加熱された場合の長さの変化を示し、αは、スライドS1の材料の熱膨張係数を示す。ΔHは、値ΔTだけ均一に加熱された場合、またはこの値だけ温度上昇した場合のスライドS1の高さの変化を示し、αは、スライドS1の材料の熱膨張係数である。
【0059】
従って、工作機械のスライドまたは工作機械のベッドがリニアに熱膨張することにより、値ΔTだけ均一に加熱される結果、熱成長が生じる。リニア熱膨張のこの部分は、構成部品の温度上昇ΔTに熱膨張係数αを乗算した値だけ生じる。
【0060】
熱成長の別の部分は、例えば工作機械の構成部品へ不均一な熱入力があったため、構成部品に温度差が生じた結果、発生するものである。既にこれまで説明したように、構成部品の底部表面には一般に、例えばドライブおよびガイドが取り付けられているので、この底部表面は構成部品、例えば工作機械のスライドの頂部表面よりも強力にかつ高速で温度が上昇し、この構成部品の片側の加熱、すなわち不均一に加熱される結果、図2に略図で示されるように、構成部品の反りが生じる。
【0061】
温度変化ΔTTOPおよびΔTBOTTOMによって示されるような、構成部品の頂部表面と底部表面の異なる加熱に起因し、スライドS1の頂部表面と底部表面の不均一な膨張が、スライドS1の長手方向に生じるので、図2に示されるような反りが生じる。
【0062】
これに関連し、スライドS1の頂部表面における長さは次のようになる。
【数5】

【0063】
温度変化が生じた後のスライドS1の底部表面の長さは次のようになる。
【数6】

【0064】
スライドS1の反りは、次の関係となる、図2に示されるような半径Rによって記述できる。
【数7】

【0065】
この半径Rは、次のように解くことができる。
【数8】

【0066】
しかしながらこの方法では、工作機械では、このように変形したスライドS1は、リニア軸「軸1」の方向のリニアな運動は行わず、例えば、図3に示されるように、弧状の運動で移動する。従って、熱変位量、すなわち熱による位置エラーは、第1リニア軸(矢印「軸1」の方向)に垂直な方向、すなわち位置に依存する基本値(一例として、ここでは10μm)およびスライド位置に応じた値からの第2リニア軸(矢印「軸2」の方向)の方向において、位置エラーは、例えば最小軸位置の場合、すなわち軸長さに対する軸位置の比が0の場合、10μmであり、最大位置エラーは、例として最大軸位置の場合、すなわち軸長さに対する軸位置の比が1の場合、位置エラーは30μmとなる。
【0067】
以下、説明する第1実施形態では、本発明によりスライドS1のかかる変形がどのようにうまく補償できるかの説明を示す。
【0068】
第1実施形態
本発明によれば、補正アプローチにより工作機械の軸の、熱によって生じる変位を補償し、この方法では、補償値を、測定された温度に応じて決定するだけでなく、工具および/または加工品の位置に影響する軸の軸位置に応じて決定するようにもなっている。
【0069】
矢印「軸1」の方向にスライドS1を変位できる第1リニア軸A1の、図3に示されている熱変形したスライドS1によれば、第1リニア軸の方向の位置に依存する補償量を強制的に決定する必要はない。その理由は、スライドの変形は、主に第1リニア軸A1に垂直な軸の方向(矢印「軸2」の方向)に主に生じるからである(図3ではS1は変形していない状態、すなわちTREFERENCE=TBASEにあるスライドを示し、S1’は、軸位置(A1)/軸長さ(A1)=1における変位位置にある、温度に依存して変形したスライドを示し、S1”は、軸位置(A1)/軸長さ(A1)=0における変位位置での温度に依存して変形したスライドを示す)。
【0070】
このように、軸1の方向に補償するための補償値ΔA1を、次のように計算できる。
【数9】

【0071】
この式は、従来技術の方法に対応している。その理由は、補償値ΔA1を計算する際に、補償ファクターK_11および温度差TREFERENCE−TBASEしか考慮しないからであり、温度差TREFERENCE−TBASEは、図3におけるスライドS1の頂部表面と底部表面との間の温度差を示す。
【0072】
しかしながら、第1リニア軸A1に垂直な方向の位置エラーは、スライドS1の熱変形に起因する位置に依存するので、この状況では、本発明に従って位置に依存した補償値を計算することによって補償を実行することが好ましい。これに関連し、本発明の第1実施形態によれば、例えば第1リニア軸A1に垂直な第2リニア軸A2の方向の熱変位に起因する第1位置エラーを補償するために、次のように補償値ΔA2を計算する。
【数10】

【0073】
ここで再び、補償値の計算は、温度差TREFERENCE−TBASEに依存する。更に、補償値ΔA2を計算するために、第1リニア軸A1の軸長さに対する第1リニア軸A1の軸位置の比を計算し、この比を補償ファクターK_22によって重みづけし、補償値ΔA2の計算に考慮する。更に追加補償ファクターK_21により、補償値ΔA2の位置に依存しない部分を可能にする。このように、図3に示されている位置偏差は、第1リニア軸A1の軸位置、すなわち矢印「軸1」の方向にスライドS1を変位させる軸の軸位置を考慮することによって成功裏に補償できる。
【0074】
第2実施形態
図3から理解できるように、スライドS1は、矢印「軸1」の方向に変位するときの熱の反りに起因する弧状の運動を行う。従って、次の式(11および12)に従って、改良された補償を計算するように、補償値ΔA2の位置に依存する項における第1軸A1の軸長さに対する第1軸A1の軸位置の比を線形に考慮するのではなく、この比の二乗を考慮することにより、第1実施形態の補償の精度を更に高めることが可能である。
【数11】

【数12】

【0075】
第1実施形態または第2実施形態に従って補償値ΔA2を計算した後に、例えば矢印「軸2」の方向に加工品を変位させる第2軸のターゲット軸位置に、この値を重ね、計算された補償値ΔA2に従ってそれぞれこの値を補正することにより、計算された補償値ΔA2に基づき、熱変位を補償できる。このことは、工作機械の制御装置、例えば工作機械のNC内で実行することが好ましい。
【0076】
第3実施形態
多くの公知の工作機械のように、片側の交換可能な突出部を有し、互いに依存する複数の軸により、工具および加工品の位置を決定した場合、互いにシリアルに依存する軸の構成部品の変形作用は、互いに重なり合うことになる。
【0077】
従って、軸の構成部品に対する作用だけでなく、関係する軸のすべての構成部品で生じる作用の重なり合いによっても、熱変位が生じる。特に工具または加工品の熱変位は、工具または加工品の位置に寄与する関連するすべての運動軸の軸位置に依存する、構成部品における温度差によって決定される。
【0078】
本発明の第3実施形態に関し、図4Aおよび図4Bに例として示されている直列に互いに依存する2つのリニア軸A1およびA2を、工作機械の第1リニア軸A1の変位可能な構成部品S1上に、工作機械の第2リニア軸A2の変位可能な工作機械S2が、変位可能に配置されている例として説明する。ここで第1リニア軸A1の工作機械S1は、矢印「軸1」の方向に変位でき、第2リニア軸の構成部品S2は、矢印「軸2」の方向に変位できる。
【0079】
構成部品S1およびS2の各々において、それぞれの構成部品の片側での第1測定位置で温度を検出し、それぞれの構成部品の反対側の第2測定位置で温度を検出し、それぞれの構成部品の反対側で得た温度値から温度差を決定する。しかしながら、本発明は、1つの軸で2つの温度の値を測定するということに限定されない。むしろ複数の軸で基本温度(例えば周辺温度)を検出し、基本温度に対するそれぞれの温度差を得るように、各軸で1つの温度だけを検出するようにすることも可能である。同様に、1つの軸で3つ以上の温度を検出することも可能である。
【0080】
図4Aおよび図4Bは、第1リニア軸A1のうちの構成部品S1において、頂部表面の温度値TY,TOPを検出し、底部表面で温度測定値TY,BOTTOMを検出し、これら値から第1リニア軸A1の構成部品S1の頂部表面と底部表面との間の不均一な加熱を示す温度差TY,BOTTOM−TY,TOPを得る。これに類似し、リニア軸A2の構成部品S2の後部表面での温度測定値TZ,REARを検出し、温度測定値TZ,FRONTを検出し、これら間から、第2リニア軸A2のうちの構成部品S2の均一でない加熱を示す温度差TZ,REAR−TZ,FRONTを決定する。
【0081】
図4Aおよび図4Bに示されるように、第1リニア軸A1の構成部品S1および第2リニア軸A2の構成部品S2でのかかる温度差により、それぞれの部品の反り、すなわち熱変形が生じ、それぞれの軸A1およびA2が矢印「軸1」および「軸2」の方向に変位すると、工具保持デバイスW内にオプションとしてクランプされた工具の熱シフトが生じる。
【0082】
図4Aおよび図4BではS1は、反りのない状態、すなわちTY,BOTTOM=TY,TOPにおける第1リニア軸A1の構成部品を示し、S1’は軸位置(A1)/軸長さ(A1)=0における変位位置での温度に応じて反った例である第1リニア軸A1の構成部品を示し、S1”は軸位置(A1)/軸長さ(A1)=1における変位位置での温度に応じて反った例である第1リニア軸A1の構成部品を示す。図4Aおよび図4Bでは、S2は、反っていない状態、すなわちTZ,REAR=TZ,FRONTにある第2リニア軸A2の構成部品を示し、S2’は軸位置(A2)/軸長さ(A2)=0における変位位置での温度に応じて反った例である第2リニア軸A2の構成部品を示し、S2”は、軸位置(A2)/軸長さ(A2)=1における変位位置での温度に応じて反った例である第2リニア軸A2の構成部品を示す。
【0083】
本発明の第3実施形態によれば、次の式(13)および(14)に記載されているように、軸A1に対する補償値ΔA1が得られ、軸A2に対する補償値ΔA2が得られる。これら式は、工具保持デバイスWでの工具の熱変位を補償するよう、上記実施形態のように、軸A1およびA2の軸ターゲット位置を補正または重ねるのに使用できる。
【数13】

【数14】

【0084】
これに関連し、第1実施形態によれば、第1被加数が第1リニア軸A1の温度差、すなわちTY,BOTTOM−TY,TOPに直接比例し、第2被加数が第2リニア軸A2の構成部品S2上で得られる温度差、すなわち温度差TZ,REAR−TZ,FRONTに直接比例するようになっている合計から、補償値ΔA1およびΔA2の各1つが形成される。
【0085】
更に被加数の各々は、補償値ΔA1内の補償ファクターK_110およびK_120によって表示される、位置に依存しない部分と、補償ファクターK_111およびK_122によって正規化される、位置に依存する部分とを含む。第2リニア軸A2に対する補償値ΔA2では、位置に依存しない部分に対する対応する補償ファクターは、K_210およびK_220によって表示され、それぞれの位置に依存する部分は、補償ファクターK_211およびK_222によって正規化される。
【0086】
更に、各々の位置に依存する部分は、軸長さに対する軸位置の比を含む。これに関連し、第1リニア軸A1の温度差に、直接比例し、例えば第1リニア軸A1の軸位置に依存する被加数と、第2リニア軸A2の第2の温度差に直接比例し、例えば第2リニア軸A2の軸位置に依存する被加数が含まれる。式(13)および(14)から理解できるように、この場合、例として軸長さに対する軸位置の比の無次元パラメータが選択されている。第2実施形態で例として説明したように、更に温度に依存するシフトの熱補償を改善するよう、軸長さに対する軸位置の比の平方を使用することも可能である。更に、シリアルに互いに依存しない、軸に対して式(13)および(14)を有利に使用することもできる。
【0087】
第4実施形態
この第4実施形態によれば、互いにシリアルに依存する軸において、熱シフトを更に改善した補償を行うことができる。上記第3実施形態では、第1リニア軸A1の温度差に比例するファクターが、第1リニア軸A1の軸位置に対する位置従属性を有し、第2リニア軸A2の第2温度差に直接比例する項が、第2リニア軸の軸位置に対する位置従属性を有するような被加数が形成されるよう、第1リニア軸A1および第2リニア軸A2に対してそれぞれ補償値ΔA1およびΔA2を計算した。
【0088】
しかしながら、第1リニア軸A1の温度差、すなわち温度差TY,BOTTOM−TY,TOPに直接比例する項において、補償値ΔA1に対する別の補償ファクターK_112により、第2リニア軸A2の軸位置を更に考慮する、温度に依存するシフトの更に改良した補償を行うことができる。更に、第1リニア軸A1の温度差に直接比例する項においても、補償ファクターK_211による第1リニア軸A1の軸位置および補償値ΔA2を計算するための補償ファクターK_212による第2リニア軸A2の軸位置の双方を検討することも可能である。
【0089】
このことは、次の式(15)および(16)内に記述されている。
【数15】

【数16】

【0090】
従って、互いにシリアルに依存する複数の軸からの特定の軸の温度差に比例する項に対し、この特定の軸の軸位置だけでなく、この特定の軸に依存する次の軸の軸位置も考慮することにより、温度に依存する変位を補償する。
【0091】
温度差TZ,REAR−TZ,FRONTがゼロに等しく、よって第2リニア軸A2の構成部品S2が変形しないような状況でも、変位量が第2リニア軸A2の軸位置に従属し得る構成部品S1の変形に起因する傾きによりまだ加工品が変位するので、このことは、補償を更に改善できる。
【0092】
例えばリニア軸A1およびA2のすべての構成部品が変形していない状態では、第2リニア軸A2の構成部品S2の変位により、矢印「軸1」の方向には加工品の変位が生じることはない。しかしながら、第1リニア軸A1の構成部品S1だけが変形し、このことが、リニア軸A2の傾きを生じさせ得る場合、構成部品S2の位置変化が矢印「軸1」の方向に加工品の変位をまだ生じさせ得るので、第1リニア軸A1の第1構成部品S1の温度差に依存する項において、第2軸A2の軸位置の位置従属性も考慮したときに、改善された温度に依存する変位補償を達成できる。
【0093】
第5実施形態
工具または加工品の温度に依存するシフトの熱補償を更に改善するために、本第5実施形態において、シリアルに互いに依存する2つのリニア軸A1およびA2の各々に対し、図4から、補償値ΔA1およびΔA2を計算することが示唆される。この補償値の各々は2つの被加数を含み、これら被加数の各々は、これら被加数の各々において考慮される2つの軸A1およびA2の各々の温度差および軸位置のうちの1つに直接比例する。
【0094】
この目的のために、次の式(17)および(18)に記載されているように、位置から独立したそれぞれの部分に対し、すべての補償ファクターK_110、K_120、K_210およびK_220内のすべてを使用し、位置に依存する部分に対し、他の補償ファクターK_111、K_112、K_121、K_122、K_211、K_212、K_221およびK_222を使用する。これら補償ファクターは、例えばシミュレーションまたは実験により決定でき、それらの大きさはそれぞれの項の効果によって決まる。特に項が熱変位にほとんど寄与しないか、またはこれら変位に全く寄与しない場合、項のうちの1つ以上はゼロまたはほぼゼロとなり得る。
【数17】

【数18】

【0095】
第6実施形態
次に、第6実施形態において、互いにシリアルに依存するN本の軸A1〜ANを含む構造体に対する式について記述する。これら式において、第4実施形態と同じように温度に依存する変位が生じる。軸A1〜ANのうちの1つに対する補償値の各被加数において、すなわちそれぞれの温度差に属す軸の軸位置およびこの軸に依存するすべての軸の軸位置をそれぞれ考慮する。
【0096】
これに関連し、式(19)〜(23)は、リニア軸A1〜ANの各々に対する被加数ΔA11〜ΔA1Nの合計から成る、第1リニア軸A1に対する補償値ΔA1の計算を記述するものである。
【数19】

【数20】

【数21】

【数22】

【数23】

【0097】
次の式(24)〜(28)は、1つの軸ANに対する補償値ΔANの計算を記述するものである。
【数24】

【数25】

【数26】

【数27】

【数28】

【0098】
第7実施形態
互いに依存する2つのリニア軸A1およびA2の第5の例から類推するように、次の式は、リニアに互いに依存するN本のリニア軸A1〜ANの一般的状態に対する式である。
【0099】
これに関連し、式(29)〜(33)は、第1リニア軸A1に対する補償値ΔA1の計算式である。式(34)〜(38)は、N番目のリニア軸ANに対する補償値ΔANの計算式である。この第7実施形態およびその前の第6実施形態では、パラメータMは、M>1かつM<Nである自然数を示す。
【数29】

【数30】

【数31】

【数32】

【数33】

【数34】

【数35】

【数36】

【数37】

【数38】

【0100】
第8実施形態
第8実施形態に基づき、例えば図5に示されているケースに対する補償値の変形計算式について説明する。このケースでは、軸は片側に突出部を有するリニア軸としては形成されておらず、図5では、軸A1のように、工作機械のベッドMB上で変位可能な複合スライドKとして形成されている。
【0101】
これに関連し、補償値のうちの1つ以上を計算する際には、熱変位の変化した位置従属性に起因し、第8実施形態によれば、例えば式(41)に記載されているように、補正ファクターKFA1に従い、補償値を計算する際に、変化した位置従属性に対する補正ファクターを更に考慮することが提案される。
【0102】
このケースでは、工作機械のベッドMBに配置されたリニア軸に直接比例する少なくとも1つの補償値の被加数に、補正ファクターKFA1を乗算する。
【0103】
更に、それぞれのリニア軸に対して補正ファクターKFAを挿入し、ここでは第1リニア軸A1に対し、好ましくは軸長さに対する軸位置の比の代わりに、それぞれの補償ファクター、例えばK_111およびK_M11によって正規化されたそれぞれの位置への依存(従属)性に対する補償ファクターKFA1を挿入する。
【数39】

【数40】

【数41】

【0104】
従って、例えば工作機械のベッド上で変位可能な複合スライドを1つの軸に対して使用する構造体のために温度に依存する変位の本発明による補償も利用することが好ましい。
【0105】
図6は、本発明の一実施形態に係わる工作機械での温度に依存する位置変化を補償するためのデバイス100を略図で示す。1本以上のリニア軸を有する、工作機械での温度に依存する位置変化を補償するためのデバイス100は、工作機械のリニア軸の特定の温度測定位置における温度を検出するための1つ以上の温度検出手段および工作機械のコントローラ(例えば工作機械のNCまたは工作機械のPLC)に対するインターフェース101と、第1基準温度と第1温度との間の第1温度差を得るための、温度差を得る手段102と、前記温度差を得る手段102によって得られる温度差に依存する1つ以上の補償値を決定するための補償値決定手段103と、補償値に従属し、温度に依存する位置変化を補償するための位置変化補償手段104とを備える。これに関連し、位置変化を補償する手段104は、更にリニア軸の1つ以上の軸位置に応じて、更に補償値のうちの1つ以上を決定するようになっている。例えばインターフェースを介して軸位置を読み出すことも可能である。このデバイス100は、例えば上記実施形態のうちの1つ以上に従い、工作機械での温度に依存するシフトの補償を実行するようになっている。
【0106】
要約すれば、本発明は、例えばガイドおよびドライブ、更に他の効果によって生じた片側の熱入力の結果として生じた不均一な加熱による、工作機械のフレーム構成部品の変形に起因して生じた、工作機械の工具または加工品における、熱によって生じたシフトを相関的に補償することに関するものである。ここで、補償値を決定するために、補償値の位置に依存する部分を計算するのに使用される軸長さに対する軸位置の比を使用することが好ましい。この目的のために、リニア軸の運動方向に垂直な方向に対し、位置に依存するこの部分も決定することが好ましい。複数の軸が互いにシリアルに依存するシリアル運動機構を有する工作機械に対しては、すべての空間方向に対する補償値部分を決定するのに、すべての軸の軸長さに対する軸位置の比を使用することが好ましい。工作機械のフレームの構成部品の不均一な加熱によって熱的に生じた変形を補償するための補償値に対し、例えばモーターのスピンドルのような回転軸に起因するシフトを補償するための補償部分を更にオプションとして重なる。
【0107】
例えば制御ユニットにおいて、すなわち工作機械のNCまたは工作機械のマシンPLCにおいて、できるだけ高速でタイミングサイクルにて補償値の計算を実行することが好ましい。次に、工作機械のNCにより、軸のそれぞれの軸ターゲット値に対し、位置に依存して計算される補償を重ね合わせることが好ましいか、または計算された補償値に基づき、軸のターゲット値を補正することが好ましい。
【0108】
従って、本発明は、工作機械の1つ以上の軸の構成部品の1つ以上の温度差の他に、補償値の計算において工作機械の軸の1つ以上の位置も考慮し、よって温度補償を有利な態様で位置に応じて実行するので、従来技術よりも良好に工作機械での熱シフトの補償を実行できる方法を提供するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの第1リニア軸を有する工作機械での温度に依存する位置変化を補償するための方法において、
前記工作機械の前記第1リニア軸の第1温度測定位置における少なくとも1つの第1温度を検出するステップと、
第1基準温度と前記第1温度との間の第1温度差を得るステップと、
前記第1温度差に応じて第1補償値を決定するステップと、
前記第1補償値に応じて温度に依存する位置変化を補償するためのステップとを備える方法において、
前記第1リニア軸の軸位置に応じて更に前記第1補償値を決定することを特徴とする、温度に依存する位置変化を補償するための方法。
【請求項2】
前記第1補償値は、位置から独立した部分と、少なくとも前記第1リニア軸の前記軸位置に依存する位置に依存する部分とを備えることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1リニア軸の前記軸長さに対する前記第1リニア軸の前記軸位置の比に応じて前記第1補償値を決定することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1リニア軸の前記軸長さに対する前記第1リニア軸の前記軸位置の比の二乗に応じて前記第1補償値を決定することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記第1補償値に応じて温度に依存する位置変化を補償する間に、前記第1リニア軸の方向に対して垂直な方向に、温度に依存する位置変化を補償することを特徴とする、請求項1〜4のうちの少なくとも1項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1補償値に応じて温度に依存する位置変化を補償する間に、前記工作機械の第2リニア軸の方向に、温度に依存する位置変化を補償することを特徴とする、請求項1〜5のうちの少なくとも1項に記載の方法。
【請求項7】
温度に依存する位置変化を補償する前記ステップは、前記第1補償値に応じて前記工作機械の第2リニア軸の第1軸のターゲット位置の値を適応化するステップを更に備え、前記第2リニア軸の軸ターゲット位置を適応化する前記ステップを、前記第1リニア軸の軸位置に応じて実行することを特徴とする、請求項1〜6のうちの少なくとも1項に記載の方法。
【請求項8】
前記工作機械の第2リニア軸の第3温度測定位置における少なくとも1つの第2温度を検出するステップと、
第2基準温度と前記第2温度との間の第2温度差を得るステップと、
前記第2温度差に応じ、第2補償値を決定するステップとを備え、
前記第1補償値および前記第2補償値に応じて温度に依存する位置変化を補償し、
前記第2リニア軸の軸位置に応じて更に前記第2補償値を決定することを更に特徴とする、請求項1〜7のうちの少なくとも1項に記載の方法。
【請求項9】
温度に依存する位置変化を補償する前記ステップは、前記第1補償値に応じて前記工作機械の前記第2リニア軸の第1軸のターゲット位置の値を適応化するステップ、および前記第2補償値に応じて前記工作機械の前記第1リニア軸の第2軸のターゲット位置の値を適応化するステップを備え、前記第2リニア軸の軸ターゲット位置を適応化するステップを、前記第2リニア軸の前記軸位置に応じて実行し、前記第1リニア軸の軸ターゲット位置を適応化するステップを前記第2リニア軸の軸位置に応じて実行することを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1基準温度は、前記第1リニア軸の第2温度測定位置で測定された温度であり、および/または前記第2基準温度は、前記第2リニア軸の第4温度測定位置で測定された温度であることを特徴とする、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記第2基準温度は、前記第1基準温度に等しく、特に前記工作機械の基準温度測定位置で検出された基準温度に等しいか、または前記工作機械の周辺温度に応じた基準温度に等しいことを特徴とする、請求項8または9に記載の方法。
【請求項12】
前記工作機械の前記第1リニア軸および前記第2リニア軸は、片側に突出部を含む、互いにシリアルに依存する2つの軸として実現されており、前記第2リニア軸は、前記第1リニア軸に依存し、前記第1補償値を更に前記第2リニア軸の軸位置に応じて決定することを特徴とする、請求項8〜11のうちの少なくとも1項に記載の方法。
【請求項13】
前記第1リニア軸の軸位置に応じて、更に第2補償値を決定することを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1温度差に応じて第3補償値を決定するステップと、前記第2温度差に応じて第4補償値を決定するステップとを備え、前記第3補償値および前記第2補償値に応じて前記第1リニア軸の方向に温度に依存する位置変化を補償し、前記第1補償値および前記第4補償値に応じて前記第2リニア軸の方向に、温度に依存する位置変化を補償し、
前記第1リニア軸の軸位置に応じて更に前記第3補償値を決定し、前記第2リニア軸の軸位置に応じて、更に前記第4補償値を決定することを特徴とする、請求項8〜13のうちの少なくとも1項に記載の方法。
【請求項15】
温度に依存する位置変化を補償する前記ステップは、更に前記第1補償値および前記第4補償値に応じて前記工作機械の前記第2リニア軸の第1軸のターゲット位置の値を適応化するステップと、前記第3補償値および前記第2補償値に応じて前記工作機械の前記第1リニア軸の第2軸のターゲット位置の値を適応化するステップを更に含むことを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記工作機械は、互いにシリアルに依存し、突出部を含む複数のリニア軸を備え、
前記複数のリニア軸の各々に対して、前記リニア軸の温度測定位置において、少なくとも1つの温度を得て、それぞれの基準温度とそれぞれの得られた温度との間のそれぞれの温度差を得て、
前記リニア軸の各々に対し、互いにシリアルに依存するリニア軸の数に等しい数の補償値の合計に対応する総補償値を決定し、各補償値は、温度差のうちの1つに正確に直接比例していることを特徴とする、請求項1〜15のうちの少なくとも1項に記載の方法。
【請求項17】
位置に応じた項の合計に応じて各補償値を形成し、各位置に依存する項は、前記リニア軸のうちの1つの軸位置に依存することを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記位置に依存する項の各々は、前記リニア軸のうちの1つの前記軸長さに対する前記軸位置の比に依存することを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
個々の各々の補償値は、前記補償値が直接温度差に比例する、前記リニア軸のための位置に依存する項と、更に前記複数のシリアルな構造のリニア軸の少なくともすべての先行するリニア軸に対する位置に依存する項とを含むことを特徴とする、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
前記第1リニア軸は、工作機械のベッド上で変位可能なスライドであり、前記第1補償値を決定する前記ステップにおいて、更にファクター(AP1−AL1/2)/(AL1/2)を考慮し、AP1は、前記第1リニア軸の前記軸位置にあり、AL1は、前記第1リニア軸の前記軸長さであることを特徴とする、請求項1〜20のうちの少なくとも1項に記載の方法。
【請求項21】
1つ以上の補償値を決定するステップを前記工作機械の数値制御デバイスの位置コントローラ内、または前記工作機械のプログラマブルロジックコントローラ内で実行することを特徴とする、請求項1〜20のうちの少なくとも1項に記載の方法。
【請求項22】
前記1つ以上の補償値に応じて温度に依存する位置変化を補償する前記ステップを、前記工作機械の前記数値制御デバイスで実行することを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
請求項1〜22のうちの少なくとも1項に従い、少なくとも1つの第1リニア軸を有する工作機械で温度に依存する位置変化を補償するためのデバイスであって、
前記工作機械の前記第1リニア軸の第1温度測定位置において少なくとも1つの第1温度を検出するための第1温度検出手段と、
第1基準温度と前記第1温度との間の第1温度差を得るための温度差を得る手段と、
前記第1温度差に応じて第1補償値を決定するための補償値決定手段と、
前記第1補償値に応じて温度に依存する位置変化を補償するための位置変化補償手段とを備える前記デバイスにおいて、
前記位置変化補償手段は、前記第1リニア軸の軸位置に応じて更に第1補償値を決定するようになっていることを特徴とするデバイス。
【請求項24】
前記位置変化補償手段は、前記第1補償値に応じて前記工作機械の第2リニア軸の第1軸のターゲット位置の値を適応化するための軸ターゲット位置適応化手段を更に備え、この軸ターゲット位置適応化手段は、前記第1リニア軸の前記軸位置に応じて前記第2リニア軸の軸ターゲット位置の適応化を実行するようになっていることを特徴とする、請求項23に記載のデバイス。
【請求項25】
前記工作機械の第2リニア軸の第3温度測定位置において、少なくとも1つの第2温度を検出するための第2温度検出手段を更に備え、前記温度差を得る手段は、第2基準温度と前記第2温度との間の第2温度差を得るように更に設定されており、前記位置変化補償手段は、前記第2温度差に応じて第2補償値を決定するように更に設定されており、
前記第1補償値および前記第2補償値に応じて温度に依存する位置変化を補償し、前記第2リニア軸の軸位置に応じて更に前記第2補償値を決定するようになっていることを更に特徴とする、請求項23または24に記載のデバイス。
【請求項26】
前記第1リニア軸の第2温度測定位置において、前記第1基準温度を検出するための第3温度検出手段および/または前記第1リニア軸の第4温度測定位置における前記第2基準温度を検出するための第4温度検出手段とを特徴とする、請求項23〜25のうちの少なくとも1項に記載のデバイス。
【請求項27】
1つ以上の補償値を決定するための前記補償値決定手段は、前記工作機械の数値制御デバイスの位置コントローラ内または前記工作機械のプログラマブルロジックコントローラ内に含まれることを特徴とする、請求項23〜26のうちの少なくとも1項に記載のデバイス。
【請求項28】
前記工作機械の前記数値制御デバイス内に、前記1つ以上の補償値に応じて温度に依存する位置変化を補償するための位置変化補償手段が、含まれることを特徴とする、請求項27に記載のデバイス。
【請求項29】
少なくとも1つの第2リニア軸を有する工作機械と、請求項1〜22のうちの少なくとも1項に記載の方法に従って前記工作機械での温度に依存する位置変化を補償するための、請求項23〜28のうちの少なくとも1項に記載のデバイスとを備えるシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−201011(P2011−201011A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−65604(P2011−65604)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(505377326)ディッケル マホ ゼーバッハ ゲーエムベーハー (8)
【Fターム(参考)】