説明

左右連動操作装置

【課題】装置を小型化することができる左右連動操作装置を提供する。
【解決手段】グリップ支持部に一体取り付けされた軸部材32に、筒部材33を一体回動可能に取り付け、この筒部材33をグリップに連結する。軸部材32の上下の溝35a,35bには、スライダ部材36a,36bが連結され、これらスライダ部材36a,36bにワイヤーケーブル2a,2bが各々取り付けられる。筒部材33の上下には長孔38a,38bが形成され、これら長孔38a,38bに各スライダ部材36a,36bの当接ピン37a,37bが連結される。そして、グリップが回動操作されると、筒部材33がグリップと一体回動し、長孔38a,38bが当接ピン37a,37bを押し、スライダ部材36a,36bがスライド移動する。これにより、グリップの回転操作がワイヤーケーブル2a,2bの押し引きの動作に変換される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右のグリップが連動して動く左右連動操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両等の乗り物の入力操作装置として、例えば図14に示す左右連動操作装置81(特許文献1,2等参照)が考案されている。左右連動操作装置81には、左右に一対のグリップ82が設けられている。左右のグリップ82a,82bは、それぞれのグリップ支持部83にユニバーサルジョイント84を介して連結されている。このため、グリップ82a,82bは、左右方向の回動操作と、上下方向の傾倒操作とが可能である。本例の場合、グリップ82a,82bの左右回動操作が操舵操作に、グリップ82a,82bの上下傾倒操作が加減速操作に割り当てられている。
【0003】
左右のグリップ82a,82bは、4本のワイヤーケーブル85a〜85dによって連結されている。これら4本のワイヤーケーブル85a〜85dのうち、一対の85a,85bが操舵伝達用であり、一対の85c,85dが加減速伝達用となっている。例えば、右グリップ82aが中立位置から右操舵されると、一対のケーブル85a,85bのうち一方が引き込まれるとともに他方が押し出されることにより、右方向の回転力が左グリップ82bに伝達される。よって、左グリップ82bが右グリップ82aに追従して右回転する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−93415号公報
【特許文献2】特開2009−93416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図15に示すように、従来の左右連動操作装置81では、グリップ82の回動動作をワイヤーケーブル85a,85bに直線方向の力に変換して伝達するために、かさ歯車86が使用されている。かさ歯車86は、グリップ82の回動操作力を、略90度向きが異なるワイヤーケーブル85a,85bの押し引き方向の操作力に変換して、ワイヤーケーブル85a,85bに伝達する。しかし、かさ歯車86では、歯車中心87からケーブル取付部88までの距離rを確保する必要があるので、これが左右連動操作装置81の小型化に支障を来していた。
【0006】
本発明の目的は、装置を小型化することができる左右連動操作装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記問題点を解決するために、本発明では、左右のグリップのうち一方の操作力をケーブル線により他方に伝達して、一方の前記グリップの動作に他方を追従させることにより、左右の前記グリップを連動させる左右連動操作装置において、前記グリップ及びケーブル線のうち一方側に形成された斜め向きの斜面を、これらの他方側に形成された突部にて押すことにより、前記グリップの回転運動を、前記ケーブル線の軸方向の操作力に変換して当該ケーブル線に伝達する動力伝達機構を備えたことを要旨とする。
【0008】
この構成によれば、斜面を突部により押すという簡素な構造の動力伝達機構を採用したので、例えば歯車(かさ歯車)などの大掛かりな部品を使用しなくとも、グリップとケーブル線とを動力伝達可能に連結することが可能となる。よって、歯車を使用したときよりも、装置サイズを小型化することが可能となる。
【0009】
本発明では、前記動力伝達機構は、前記グリップと一体回動する第1可動部材と、前記ケーブル線と一体に直線移動する第2可動部材とを備え、前記第1可動部材及び前記第2可動部材の一方に前記斜面が形成され、他方に前記突部が形成されていることを要旨とする。
【0010】
この構成によれば、第1可動部材や第2可動部材に斜面やピンを設けるので、動力伝達機構において入力と出力とを、これら部材でしっかりと連結することが可能となる。
本発明では、前記動力伝達機構は、前記突部としてのピンと、前記斜面としての斜め向きの長孔とを備え、前記長孔及び前記ピンの位置関係により、前記グリップの回転運動を前記ケーブル線の軸方向の動き変換することを要旨とする。
【0011】
この構成によれば、長孔にピンを係止する動力伝達機構としたので、動力伝達機構の構造を、ピンと長孔とを設けるだけという簡素な構造で済ませることが可能となる。
本発明では、前記動力伝達機構は、前記突部としての複数の溝が斜めを向いた係止溝群と、前記斜面としての被係止溝群とを備え、これら突条溝同士の位置関係により、前記グリップの回転運動を前記ケーブル線の軸方向の動きを変換することを要旨とする。
【0012】
この構成によれば、複数の突条溝同士が噛み合う動力伝達機構としたので、動力伝達機構の入力と出力との間の接触面積を多くとることが可能となる。よって、グリップ操作時の高負荷に対して耐久性を向上することが可能となる。
【0013】
本発明では、前記ケーブル線は、一対設けられ、前記グリップの操作を、一方のケーブル線の引き動作と、他方のケーブル線の押し動作とで、他方のグリップに伝達する左右連動操作装置であって、前記動力伝達機構は、一対形成された各々の前記ケーブル線にそれぞれ設けられていることを要旨とする。
【0014】
この構成によれば、一方のグリップの操作力を他方のグリップに、2本のケーブル線の引き及び押しによって操作力を伝達するので、操作力を追従性よく相手側に伝えることが可能となる。よって、左右グリップの高い連動性を確保することが可能となる。
【0015】
本発明では、左右の前記グリップは、軸回りの回動操作と軸交差方向への傾倒操作とが可能であり、操作力の伝達時において互いに逆方向に動く2本の前記ケーブル線を、前記回動操作と前記傾倒操作との各々に設けることにより、合計4本の前記ケーブル線にて連結されていることを要旨とする。
【0016】
この構成によれば、一方のグリップに加えられた操作力を、2本(一対)のケーブル線の一方の引き動作と他方の押し動作とによって他方のグリップに伝達することにより、左右のグリップの一方を他方に追従させるので、応答性よく左右のグリップを連動させることが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、左右連動操作装置のサイズを小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施形態の左右連動操作装置の斜視図。
【図2】右グリップを斜め前方から見た拡大斜視図。
【図3】右グリップの斜め後方から見た拡大斜視図。
【図4】グリップ回転操作時の左右連動操作装置の動作状態を示し、(a)は右グリップの側面図、(b)は左グリップの側面図。
【図5】グリップ傾倒操作時の左右連動操作装置の動作状態を示し、(a)は右グリップの側面図、(b)は左グリップの側面図。
【図6】傾倒操作戻し機構の構成を示し、(a)はグリップが中立位置のときの側面図、(b)はグリップを下方向に倒し操作したときの側面図。
【図7】操作力方向変換装置付近の拡大斜視図。
【図8】操作力方向変換装置の分解斜視図。
【図9】(a)は操作力方向変換装置の組付斜視図、(b)は操作力方向変換装置の平面図及び裏面図。
【図10】(a)はグリップが左回動操作されたときの動作状態を示す斜視図、(b)はグリップが右回動操作されたときの動作状態を示す斜視図。
【図11】左右連動操作装置の電気的構成を示すブロック図。
【図12】第2実施形態の操作力方向変換装置の分解斜視図。
【図13】グリップが回動操作されたときの動作状態を示す斜視図。
【図14】従来の左右連動操作装置の斜視図。
【図15】グリップのかさ歯車付近の拡大斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1実施形態)
以下、本発明を車両に具体化した左右連動操作装置の第1実施形態を図1〜図11に従って説明する。
【0020】
図1〜図3に示すように、左右連動操作装置1には、ワイヤーケーブル2(本例は4本の2a〜2d)の両先端にグリップ3,3が取り付けられている。本例の場合、2つのグリップ3,3の一方を右グリップ3aと称し、他方を左グリップ3bと称する。なお、左右のグリップ3a,3bの構造は部品配置が左右対称をとるものの、基本的な構造は同じであるので、ここでは左右をまとめて説明する。また、ワイヤーケーブル2がケーブル線に相当する。
【0021】
図2及び図3に示すように、グリップ3は、ユニバーサルジョイント4を介してグリップ支持部5のジョイント連結部6に回動自在に連結されている。ユニバーサルジョイント4は、2部品がある角度で交わっていても一方から他方に動力を伝達可能な継ぎ手、いわゆる自在継ぎ手の一種である。ユニバーサルジョイント4には、略カップ状のヨーク本体7に可動ヨーク8が回動可能に取り付けられている。本例のグリップ3は、ヨーク本体7における出力軸7aの軸心L1回り(左右方向)の回動操作と、可動ヨーク8における連結軸8aの軸心L2回り(上下方向)の傾倒操作が可能となっている。グリップ3は、中立位置を基点に左右に略±40度まで回動操作が可能である。なお、軸心L1回りが軸回りに相当し、これと交わる方向が軸交差方向に相当する。
【0022】
本例の場合、グリップ3を中立位置から右に回動操作すると、車両が右旋回し、グリップ3を中立位置から左に回動操作すると、車両が左旋回する。また、グリップ3を中立位置から下方に傾倒操作すると、車両が加速し、下方に倒し込んだグリップ3を上方に傾倒操作すると、車両が減速する。
【0023】
ワイヤーケーブル2a〜2dは、一方のグリップ3が中立位置から回動操作(操舵操作)されたとき、その操舵操作力を他方のグリップ3に伝達する操舵操作力伝達用の2a,2bと、一方のグリップ3が中立位置から傾倒操作(加減速操作)されたとき、その加減速操作力を他方のグリップ3に伝達する加減速操作力伝達用の2c,2dとからなる。ワイヤーケーブル2a〜2dには、1本のケーブル線で操作側の引き動作及び押し動作の両方を相手側に伝達することが可能なプッシュプルケーブルが使用されている。
【0024】
グリップ支持部5の先端には、グリップ3と一体に上下方向に傾倒するアーム9が枢支されている。アーム9には、ユニバーサルジョイント4の軸方向に孔の開いた貫通孔10(図3参照)が形成され、この貫通孔10にユニバーサルジョイント4の可動ヨーク8が軸支されている。
【0025】
図4及び図5に示すように、加減速操作伝達用ワイヤーケーブル2cの一端は、右グリップ3aのアーム9の上部に連結された回動継ぎ手18に連結され、左グリップ3bのアーム9の下部に連結された回動継ぎ手19に他端が連結されている。加減速操作伝達用ワイヤーケーブル2dの一端は、右グリップ3aのアーム9の下部に連結された回動継ぎ手19に連結され、左グリップ3bのアーム9の上部に連結された回動継ぎ手18に他端が連結されている。つまり、加減速操作伝達用ワイヤーケーブル2c,2dは、左右のグリップ3a,3bに上下が入れ換えて接続されている。
【0026】
図4(a)に示すように、右グリップ3aが例えば下方向に傾倒操作されると、グリップ3a及びアーム9が一体となって同図の矢印C2方向に傾倒する。このとき、右グリップ3aでは、上の加減速操作伝達用ワイヤーケーブル2cが手前に引き込まれ、下の加減速操作伝達用ワイヤーケーブル2dが奥に押し込まれる。よって、図4(b)に示すように、左グリップ3bでは、加減速操作伝達用ワイヤーケーブル2dによって上部が押されるとともに、加減速操作伝達用ワイヤーケーブル2cによって下部が引き込まれる。このため、左グリップ3bが右グリップ3aに追従して下方に傾倒する。
【0027】
図6(a),(b)に示すように、グリップ3には、上下方向に傾倒操作されたグリップ3を元の中立位置に復帰させる傾倒操作戻し機構23が設けられている。この場合、グリップ支持部5とアーム9との間には、一対の戻しアーム部材24,25が枢支されている。第1戻しアーム部材24は、中立位置から下方向に傾倒操作されたグリップ3を中立位置に戻すものであり、グリップ幅方向に延びる軸24a回りに回動可能である。第1戻しアーム部材24の下端には、第1戻しアーム部材24に復帰力を付与する戻し付勢部材26が取り付けられている。戻し付勢部材26は、例えばコイルばねが使用される。
【0028】
また、第2戻しアーム部材25は、中立位置から上方向に傾倒操作されたグリップ3を中立位置に戻すものであり、グリップ幅方向に延びる軸25a回りに回動可能である。第2戻しアーム部材25の上端には、第2戻しアーム部材25に復帰力を付与する戻し付勢部材27が取り付けられている。戻し付勢部材27は、例えばコイルばねが使用される。
【0029】
一方、アーム9には、グリップ3の加減速操作時に戻しアーム部材24,25を押し込む係止ピン29が突設されている。係止ピン29は、グリップ3が中立位置のとき、一対の戻しアーム部材24,25に挟まれるように配置される。
【0030】
図6(a)に示す状態のとき、例えばグリップ3が下方に傾倒操作されると、係止ピン29が第1戻しアーム部材24を上方に押し上げることにより、第1戻しアーム部材24が同図の矢印E1方向に回動する。そして、図6(b)に示す下方向の傾倒操作後、グリップ3から手が離されると、第1戻しアーム部材24が戻し付勢部材26の付勢力によって同図の矢印E2方向に回動することにより、第1戻しアーム部材24が係止ピン29を下に押し、グリップ3が元の中立位置に復帰する。
【0031】
図5(a),(b)及び図7〜図9に示すように、ユニバーサルジョイント4の基端には、操作力方向変換装置31を介して一対の操舵操作伝達用ワイヤーケーブル2a,2bが連結されている。操作力方向変換装置31は、ユニバーサルジョイント4の図4における矢印A方向の回転力を、略90度向きが異なる操舵操作伝達用ワイヤーケーブル2a,2bの引き−押しの直進力に変換する。つまり、グリップ3が回動操作の動きは、操作力方向変換装置31によって回動方向に対して略90度直交する向きの直線方向の動きに変換される。
【0032】
図7〜図9に示すように、操作力方向変換装置31には、操作力方向変換装置31の回動軸として軸部材32がグリップ支持部5に取り付け固定されている。軸部材32は、ユニバーサルジョイント4の出力軸7aと同軸軸心位置をとっている。
【0033】
軸部材32の外周には、略円筒形状の筒部材33が軸部材32の軸心L3回り(図7参照)に回動可能に軸支されている。筒部材33は、グリップ3側の端部がユニバーサルジョイント4の出力軸7aとその同一軸心位置において固定されている。よって、グリップ3が回動操作されると、グリップ3とともに筒部材33もグリップ3と同期回動する。なお、筒部材33が第1可動部材に相当する。
【0034】
軸部材32と筒部材33との間には、ユニバーサルジョイント4の回動運動を、ワイヤーケーブル2の前後運動に変換して伝達する動力伝達機構34が設けられている。本例の場合、グリップ3の回動運動を2本の操舵操作伝達用ワイヤーケーブル2a,2bで伝達することから、動力伝達機構34が上下に一対設けられている。ここでは、上側を第1動力伝達機構34aとし、下側を第2動力伝達機構34bとする。なお、軸方向は、軸心L3方向に相当する。
【0035】
軸部材32の外周面においてその上部には、軸部材32の軸心L3に沿って延びる第1溝部35aが凹設されるとともに、その下部には、第1溝部35aと同様の第2溝部35bが凹設されている。第1溝部35aには、操舵操作伝達用ワイヤーケーブル2aが連結された略直方体状の第1スライダ部材36aが、第1溝部35aの内部において軸心L3方向に往復直線移動可能に収納されている。また、第2溝部35bには、操舵操作伝達用ワイヤーケーブル2bが連結された略直方体状の第2スライダ部材36bが、第2溝部35bの内部において軸心L3方向に往復直線移動可能に収納されている。なお、スライダ部材36a,36bが第2可動部材に相当する。
【0036】
第1スライダ部材36aの上面には、軸部材32の径方向外側に向かって突出する第1当接ピン37aが突設されている。また、筒部材33の胴体には、第1当接ピン37aの係止先として第1長孔38aが貫設されている。第1長孔38aは、軸心L3の直交方向に対して所定角度を以て、斜め向きに配置されている。なお、第1当接ピン37aが突部を構成し、第1長孔38aが斜面を構成する。
【0037】
また、第2スライダ部材36bの下面にも、第1スライダ部材36aと同様に第2当接ピン37bが突設されている。また、筒部材33の胴体において第1長孔38aと反対側の位置には、第2当接ピン37bの係止先として第2長孔38bが貫設されている。図9(b)に示すように、これら長孔38a,38bは、筒部材33を上から見たとき、重なる形状に形成されている。つまり、これら長孔38a,38bは、筒部材33の上下方向において面対称に形成されている。なお、第2当接ピン37bが突部を構成し、第2長孔38bが斜面を構成する。
【0038】
よって、グリップ3が回動操作(操舵操作)されると、図10に示すように、筒部材33が軸部材32に対して回転する。本例の場合、第1スライダ部材36aが第1当接ピン37aにより第1長孔38aに係止されているため、筒部材33の回動運動に連動して、第1スライダ部材36aが第1溝部35a内を、第2スライダ部材36bが第2溝部35b内を、互いに逆方向に直線運動する。よって、各スライダ部材36a,36bに連結されている操舵操作伝達用ワイヤーケーブル2a,2bがグリップ3の回動運動に連動して押し引きされる。
【0039】
図2及び図3に示すように、グリップ3とアーム9との間には、グリップ3の回転量を規制するストッパ部39が形成されている。グリップ3が中立位置から目一杯回動操作されると、ストッパ部39がアーム9の規制片40に当接して、それ以上の回動操作が不可となる。なお、規制片40は、右回動操作時及び左回動操作時の一対ある。
【0040】
図3及び図5(b)に示すように、グリップ3とアーム9との間には、左右方向に回動操作されたグリップ3を元の中立位置に復帰させる戻し付勢部材41が設けられている。戻し付勢部材41例えばトーションばね等が使用され、両端がアーム9とストッパ部39に引っ掛かった状態にある。
【0041】
図7に示すように、ユニバーサルジョイント4の出力軸7aには、ジョイント連結部6の内部において操舵側ポテンショメータ42が接続されている。操舵側ポテンショメータ42は、ユニバーサルジョイント4の出力軸7aの回転量を検出することにより、グリップ3の操舵量を検出する。また、アーム9には、複数のギヤからなるギヤ機構43を介して加減速側ポテンショメータ44が接続されている。加減速側ポテンショメータ44は、グリップ加減速時におけるギヤ機構43のギヤ回転量を検出することにより、グリップ3の加減速操作量を検出する。
【0042】
図11に示すように、左右連動操作装置1には、左右連動操作装置1を統括制御するコントローラ45が設けられている。コントローラ45には、ポテンショメータ42,44が接続されている。コントローラ45は、ポテンショメータ42,44から出力される検出信号を基に左右のグリップ3a,3bの操舵量及び加減速操作量を演算し、これら情報を必要とする他のECUに操舵量及び加減速操作量の情報を出力する。また、コントローラ45は、ポテンショメータ42,44から入力する検出信号を基に、左右のグリップ3a,3bが正しく連動しているか否かを常時監視する。
【0043】
次に、本例の左右連動操作装置1の作用/効果を説明する。
図10(a)に示すように、例えば右グリップ3aが左方向に回動操作(操舵操作)されたときには、右グリップ3aの筒部材33が同図の矢印M1方向に回転する。これにより、長孔38a,38bが同方向に移動するため、第1長孔38aが第1当接ピン37aを奥側に押すことにより、第1スライダ部材36aを同図の矢印N1方向に押し込むとともに、第2長孔38bが第2当接ピン37bを手前に引くことにより、第2スライダ部材36bを同図の矢印N2方向に引き込む。よって、操舵操作伝達用ワイヤーケーブル2aが押され、操舵操作伝達用ワイヤーケーブル2bが引き込まれる。
【0044】
このため、右グリップ3aにおける左方向の回動操作力が、操舵操作伝達用ワイヤーケーブル2a,2bを介して左グリップ3bに伝達される。従って、左グリップ3bも右グリップ3aと同様に左方向に回転し、左右のグリップ3a,3bが連動する。
【0045】
一方、図10(b)に示すように、右グリップ3aが右方向に回動操作(操舵操作)されたときには、右グリップ3aの筒部材33が同図の矢印M2方向に回転する。よって、第1長孔38aが第1当接ピン37aを手前側に引くことにより、第1スライダ部材36aを同図の矢印N2方向に引き込むとともに、第2長孔38bが第2当接ピン37bを奥側に押し込むことにより、第2スライダ部材36bを同図の矢印N1方向に押し込む。従って、操舵操作伝達用ワイヤーケーブル2aが引き込まれ、操舵操作伝達用ワイヤーケーブル2bが奥に押される。
【0046】
このため、右グリップ3aにおける右方向の回動操作力が、操舵操作伝達用ワイヤーケーブル2a,2bを介して左グリップ3bに伝達される。従って、左グリップ3bも右グリップ3aと同様に右方向に回転し、左右のグリップ3a,3bが連動する。
【0047】
以上により、本例においては、グリップ3の回動操作力を一対の操舵操作伝達用ワイヤーケーブル2a,2bに伝達する機構として、例えばかさ歯車等の歯車ではなく、筒部材33の回動によりスライダ部材36a,36bを直線移動させることで一対のワイヤーケーブル2a,2bを押し引きする操作力方向変換装置31を用いた。このため、ワイヤーケーブル2a,2b同士の距離Rx(図9参照)を狭くすることが可能となるので、グリップ支持部5ひいては左右連動操作装置1の装置サイズを小型化することが可能となる。
【0048】
本実施形態の構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)グリップ3の回動操作時、筒部材33を回動させることで、筒部材33の長孔38a,38bでスライダ部材36a,36bの当接ピン37a,37bを押し/引きすることにより、スライダ部材36a,36bを互いに離間する方向に直線移動させ、一対の操舵操作伝達用ワイヤーケーブル2a,2bを押し引きする。よって、グリップ3の回動操作力をワイヤーケーブル2a,2bの直線方向の押し引きの運動力に変換する動力伝達機構に、背景技術で述べたような、かさ歯車等の大掛かりな部品を使用せずに済む。このため、かさ歯車を使用したときよりも、グリップ支持部5ひいて左右連動操作装置1の装置サイズを小型化することができる。
【0049】
(2)グリップ3に筒部材33を一体固定し、操舵操作伝達用ワイヤーケーブル2a,2bにスライダ部材36a,36bを連結し、筒部材33とスライダ部材36a,36bとの間に、動力変換機構の主要部位である当接ピン37a,37b及び長孔38a,38bを設けた。よって、操作力方向変換装置31の入力及び出力、つまりグリップ3とワイヤーケーブル2a,2bとを、これら部材でしっかりと連結することができる。
【0050】
(3)本例の操作力方向変換装置31の構造は、当接ピン37a,37b及び長孔38a,38bという簡素な構成で済む。
(4)左右のグリップ3a,3bの一方の操作力をワイヤーケーブル2にて機械的に他方に伝達するので、複雑な機構を用いることなく、左右のグリップ3a,3bを連動させることができる。また、グリップ3a,3bの一方の回動操作力(操舵操作力)又は傾倒操作力(加減速操作力)を、2本(一対)の組のワイヤーケーブル2a,2b(2c,2d)の一方の引き動作と他方の押し動作とによって他方に伝達することにより、左右のグリップ3a,3bの一方を他方に追従させる。よって、例えば、単に1本のワイヤーケーブルで操作力を伝達するよりも、高い追従性にて相手が連れ動きするので、応答性よく左右のグリップ3a,3bを連動させることができる。
【0051】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態を図12及び図13に従って説明する。なお、第2実施形態は、操作力方向変換装置31の構造を変えたのみの一実施例であり、他の基本的な構成は同じである。よって、第1実施形態と同じ箇所は同一符号を付して詳しい説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0052】
図12に示すように、第1スライダ部材36aの上面には、軸心L3に対して斜め向きの複数の細かな溝からなる第1係止溝群45aが凹凸形成されている。第1係止溝群45aは、第1スライダ部材36aの上面一帯に亘り形成されている。
【0053】
一方、第2スライダ部材36bの底面にも、軸心L3に対して斜め向きの複数の細かな溝からなる第2係止溝群45bが凹凸形成されている。但し、第2係止溝群45bは、第1係止溝群45a対して面対称に形成されている。つまり、スライダ部材36a,36bが軸部材32に組み付いた状態で係止溝群45a,45bを上から見ると、溝形状が重なるものの、スライダ部材36a,36bを両方とも溝側を表に向けると、溝群が直交する形状をとる。なお、係止溝群45a,45bが突部を構成する。
【0054】
筒部材33の内面には、その上半分において第1スライダ部材36aの第1係止溝群45aと係止する第1被係止溝群46aが凹凸形成されている。第1被係止溝群46aも、軸心L3に対して斜めを向く複数の溝からなる。
【0055】
また、筒部材33の内面には、その下半分において第2スライダ部材36bの第2係止溝群45bと係止する第2被係止溝群46bが凹凸形成されている。第2被係止溝群46bも、軸心L3に対して斜めを向く複数の溝からなるとともに、第1被係止溝群46aと面対称に形成されている。なお、被係止溝群46a,46bが斜面を構成する。
【0056】
さて、図13に示すように、グリップ3が回動操作されて筒部材33が回転すると、溝が斜めを向く係止溝群45a,45b及び被係止溝群46a,46bによって、筒部材33の回転運動が、スライダ部材36a,36bの互いに離間する方向の直線運動力に変換される。よって、各スライダ部材36a,36bに接続されている操舵操作伝達用ワイヤーケーブル2a,2bが押し引きされ、左右のグリップ3a,3bが連動する。
【0057】
本実施形態の構成によれば、第1実施形態に記載の(1)〜(4)に加え、以下の効果を得ることができる。
(5)筒部材33とスライダ部材36a,36bとは、複数の溝によって接触するので、筒部材33とスライダ部材36a,36bとの接触面積が多くなる。よって、グリップ回動操作時の高負荷に対して、耐久性を向上することができる。
【0058】
なお、実施形態はこれまでに述べた構成に限らず、以下の態様に変更してもよい。
・第1実施形態において、操作力方向変換装置31は、筒部材33に長孔38a,38bを設け、長孔38a(38b)にスライダ部材36a(36b)の当接ピン37a(37b)が係止する構造に限定されない。例えば、グリップ3自体に長孔38a(38b)が存在し、ワイヤーケーブル2a(2b)に一体形成された当接ピン37a(37b)が長孔38a(38b)に直に連結されるものでもよい。
【0059】
・第1実施形態において、長孔38a,38bが筒部材33に形成され、当接ピン37a,37bがスライダ部材36a,36bに形成されることに限らず、この組合せを入れ換えてもよい。
【0060】
・第1実施形態において、1つのスライダ部材36a(36b)において、当接ピン37a(37b)及び長孔38a(38b)は1組だけ形成することに限定されず、複数設けてもよい。
【0061】
・各実施形態において、操作力方向変換装置31の構造や形状は、別のものに適宜変更可能である。
・各実施形態において、操作力方向変換装置31は、ユニバーサルジョイント4の出力軸7aに直固定されることに限らず、例えばギヤを介して連結されてもよい。
【0062】
・各実施形態において、左右のグリップ3a,3bが正しく連動していないとき、左右連動操作装置1の動作を停止させてもよい。
・各実施形態において、グリップ3は、中立位置から下方向(上方向)にのみ傾倒操作可能としてもよい。
【0063】
・各実施形態において、グリップ3の操作態様は、左右方向の回動操作や、上下方向の傾倒操作に限定されず、例えば左右方向の傾倒操作など、他の態様を採用することも可能である。よって、グリップ3の傾倒操作方向は、上下方向に限らず、例えば左右方向としてもよい。
【0064】
・各実施形態において、ケーブル線は、プッシュプル式のワイヤーケーブル2に限定されず、他の素材の線が使用可能である。
・各実施形態において、左右連動操作装置1は、ワイヤーケーブル2が合計4本ある構造のものに限定されず、例えばグリップ3の回動操作及び傾倒操作のそれぞれにワイヤーケーブル2が1本のみ存在する計2本のものでもよい。なお、操舵操作伝達用ワイヤーケーブル2a,2bが1本のみの場合、動力伝達機構34は、1つのみ設けられる。
【0065】
・各実施形態において、左右連動操作装置1は、グリップ3が回動操作及び傾倒操作の両方が可能なものに限らず、例えば回動操作又は傾倒操作の一方のみが可能なものでもよい。
【0066】
・各実施形態において、左右連動操作装置1は、車両に適用されることに限定されず、他の乗り物に使用可能である。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
【0067】
(イ)請求項1〜6のいずれかにおいて、前記グリップを操作して当該グリップから手を離したとき、当該グリップを元の中立位置に復帰させる復帰機構を備えた。この構成によれば、操作したグリップを元の中立位置に自動で戻すことが可能となる。
【0068】
(ハ)請求項1〜6、前記技術的思想(イ)のいずれかにおいて、前記動力伝達機構は、前記グリップの回転操作力を、略90度向きが異なる方向の操作力に変換して前記ケーブル線に伝達するものである。
【符号の説明】
【0069】
1…左右連動操作装置、2(2a〜2d)…ケーブル線としてのワイヤーケーブル、3(3a,3b)…グリップ、33…第1可動部材としての筒部材、34…動力伝達機構、36a,36b…第2可動部材としてのスライダ部材、37a,37b…突部及びピンを構成する当接ピン、38a,38b…斜面を構成する長孔、45a,45b…突部を構成する係止溝群、46a,46b…斜面を構成する被係止溝群。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右のグリップのうち一方の操作力をケーブル線により他方に伝達して、一方の前記グリップの動作に他方を追従させることにより、左右の前記グリップを連動させる左右連動操作装置において、
前記グリップ及びケーブル線のうち一方側に形成された斜め向きの斜面を、これらの他方側に形成された突部にて押すことにより、前記グリップの回転運動を、前記ケーブル線の軸方向の操作力に変換して当該ケーブル線に伝達する動力伝達機構を備えた
ことを特徴とする左右連動操作装置。
【請求項2】
前記動力伝達機構は、前記グリップと一体回動する第1可動部材と、前記ケーブル線と一体に直線移動する第2可動部材とを備え、前記第1可動部材及び前記第2可動部材の一方に前記斜面が形成され、他方に前記突部が形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の左右連動操作装置。
【請求項3】
前記動力伝達機構は、前記突部としてのピンと、前記斜面としての斜め向きの長孔とを備え、前記長孔及び前記ピンの位置関係により、前記グリップの回転運動を前記ケーブル線の軸方向の動き変換する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の左右連動操作装置。
【請求項4】
前記動力伝達機構は、前記突部としての複数の溝が斜めを向いた係止溝群と、前記斜面としての被係止溝群とを備え、これら溝群同士の位置関係により、前記グリップの回転運動を前記ケーブル線の軸方向の動きを変換する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の左右連動操作装置。
【請求項5】
前記ケーブル線は、一対設けられ、前記グリップの操作を、一方のケーブル線の引き動作と、他方のケーブル線の押し動作とで、他方のグリップに伝達する左右連動操作装置であって、
前記動力伝達機構は、一対形成された各々の前記ケーブル線にそれぞれ設けられている
ことを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか一項に記載の左右連動操作装置。
【請求項6】
左右の前記グリップは、軸回りの回動操作と軸交差方向への傾倒操作とが可能であり、操作力の伝達時において互いに逆方向に動く2本の前記ケーブル線を、前記回動操作と前記傾倒操作との各々に設けることにより、合計4本の前記ケーブル線にて連結されている
ことを特徴とする請求項5に記載の左右連動操作装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2012−99040(P2012−99040A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−248128(P2010−248128)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】