説明

差動伝送回路

【課題】ノイズによる悪影響を回避し、ノイズ耐性が高く良好なアイパターンを伝送できるようにした差動伝送回路を提供する。
【解決手段】送信回路10の送端トランジスタQ11,Q12のエミッタと、受信回路20の終端抵抗R21,R22の片端が接続された入力バッファ21の2個の入力端子との間に、2本の線路31,32で構成される差動伝送線路30を接続して構成した差動伝送回路において、終端抵抗R21,R22の各他端を、共通に、電流源I21を介して電圧端子VG22に接続すると共に、抵抗R23とキャパシタC21の直列回路を介して電圧端子VG23に接続した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信回路の第1および第2の送端トランジスタのエミッタと、受信回路の第1および第2の終端抵抗の片端が接続された入力バッファの2個の入力端子との間に、差動伝送線路を接続して構成した差動伝送回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
伝送回路に関する従来技術として、特許文献1に示す伝送回路がある。この伝送回路は送信回路の送端トランジスタのエミッタと受信回路の入力バッファとの間を1本の伝送線路で接続して構成したものである。
【0003】
この技術を用いた従来の差動伝送回路の一例を図5に示す。この従来例は、集積回路からなる送信回路10の送端トランジスタQ11,Q12のエミッタと、集積回路からなる受信回路20の終端抵抗R21,R22をもつ入力バッファ21との間を、プリント基板上において、2本の線路31,32からなる差動伝送線路30で接続したものである。終端抵抗R21,R22の他端は電圧端子VG21(例えば、GND端子)に接続されている。
【特許文献1】特開平6−152378号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、この差動伝送線路30の線路31,32を経由して、送信回路10から受信回路20に対して10Gb/sのランダム信号(図6(a)参照)を送信するとき、同相の5GHzのノイズが混入すると、図7(a)に示すように、アイパターンがうねる問題が発生する。また、5GHzのノイズでなく、100MHzのノイズが混入するときは、図7(b)に示すように、アイパターンの開口が劣化してしまう。
【0005】
本発明の目的は、このようなノイズによる悪影響を回避し、ノイズ耐性が高く良好なアイパターンで信号伝送ができるようにした差動伝送回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1にかかる発明の差動伝送回路は、送信回路の第1、第2の送端トランジスタのエミッタと、受信回路の終端用の第1、第2の抵抗のそれぞれの片端との間に、差動伝送線路又は差動伝送配線を接続して構成した差動伝送回路において、前記第1、第2の抵抗の各他端を、共通に、電流源に接続すると共に第3の抵抗の片端に接続し、該第3の抵抗の他端を第1のキャパシタを介して第1の電圧端子に接続したことを特徴とする。
請求項2にかかる発明は、請求項1に記載の差動伝送回路において、前記送信回路の前記第1、第2の送端トランジスタ、前記差動伝送線路又は差動伝送配線、前記受信回路の前記第1、第2の抵抗、前記電流源、前記第3の抵抗、および前記第1のキャパシタを、1個の集積回路内に構成したことを特徴とする。
請求項3にかかる発明は、請求項1又は2に記載の差動伝送回路において、前記第1、第2の送端トランジスタのコレクタをそれぞれ第4、第5の抵抗を介して第2の電圧端子に接続し、および/又は前記第1、第2の送端トランジスタのコレクタをそれぞれ第2、第3のキャパシタを介して第3の電圧端子に接続したことを特徴とする。
請求項4にかかる発明は、請求項3に記載の差動伝送回路において、前記第1、第2の送端トランジスタのコレクタを共通接続して、前記第4、第5の抵抗を共通の1個の抵抗とし、および/又は前記第2、第3のキャパシタを共通の1個のキャパシタとしたことを特徴とする。
請求項5にかかる発明は、請求項1又は2に記載の差動伝送回路において、前記第1、第2の送端トランジスタのコレクタをそれぞれ第4、第5の抵抗を介して第2の電圧端子に接続し、該第4、第5の抵抗の前記コレクタと反対側の端子を第2、第3のキャパシタを介して第3の電圧端子に接続したことを特徴とする。
請求項6にかかる発明は、請求項5に記載の差動伝送回路において、前記第1、第2の送端トランジスタのコレクタを共通接続して、前記第4、第5の抵抗を共通の1個の抵抗とし、前記第2、第3のキャパシタを共通の1個のキャパシタとしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、終端用の第1、第2の抵抗の各他端を、共通に、電流源に接続すると共に第3の抵抗の片端に接続し、該第3の抵抗の他端を第1のキャパシタを介して第1の電圧端子に接続したことにより、10Gb/s以上の信号伝送においても、従来回路よりよりノイズ耐性の高く開口の広いアイパターン特性の差動伝送回路を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
<第1の実施例>
図1は本発明の第1の実施例の差動伝送回路の構成を示す回路図である。本実施例の差動伝送回路は、集積回路からなる送信回路10の送端トランジスタQ11,Q12のエミッタと、集積回路からなる受信回路20の終端抵抗R21,R22をもつ入力バッファ21との間を、プリント基板上において、2本の線路31,32からなる差動伝送線路30で接続し、終端抵抗R21,R22の他端を、共通に、電流源I21を介して電圧端子VG22に、また抵抗R23と安定化用のキャパシタC21の直列回路を介して電圧端子VG23に、それぞれ接続したものである。電圧端子VG22,VG23は、例えばGND端子である。なお、差動伝送線路30はプリント基板上のパターン配線に限らず、ケーブルであっても良い。
【0009】
ここで、線路31,32のインピーダンスが50Ωのとき、R21=R22=50Ω、R23=25Ω、C21=5pFとすると、図6(a)に示す10Gb/sのランダム信号を送信回路10から受信回路20に向けて線路31,22を経由して送信するとき、その線路31,32に同相や逆相の5GHzのノイズあるいは100MHzのノイズが重畳した場合、それら抵抗R21,R22,R23、キャパシタC21でノイズに対するマッチング回路が構成されるため、図6(b)に示すように、受信回路20の入力バッファ21では、うねりやノイズを除去した波形の信号を受信することができる。しかも、電流源I21で定電流を引き抜いているので、伝送電流を所定量以上(例えば、40%以上)削減でき、消費電力も低減することができる。
【0010】
一般的に差動伝送回路では、fを周波数(GHz)とすると、配線長が(10×100/f)μmを超えると配線のインダクタンスを考慮した設計が必要となるが、本実施例によれば、これが緩和される。なお、差動伝送線路30は、特定の特性インピーダンスをもつ伝送線路ではなく、通常の差動伝送配線に代えてもよい。
【0011】
<第2の実施例>
図2は本発明の第2の実施例の差動伝送回路を示す回路図である。本実施例では、1個の集積回路(半導体チップ)40内に、前記送信回路10にと同じ構成の送信回路10A、前記受信回路10と同じ構成の受信回路20Aおよび前記差動伝送線路30と同様の差動伝送線路30Aをそれぞぞれ構成したものであり、図1と同じ要素には同じ符号を付けた。ここでは、差動伝送線路30Aはチップ内配線となる。
【0012】
本実施例でも、前記第1の実施例で説明したと同様にノイズ耐性が向上するので、このように1個の集積回路40内に構成すると、10Gb/sの高速なランダム信号を伝送する場合であっても、差動伝送線路30の配線長を100μm以上に長くすることが可能となる。また、第1の実施例と同様に、差動伝送線路30Aは、特定の特性インピーダンスをもつ伝送線路ではなく、通常の差動伝送配線に代えてもよい。
【0013】
<第3の実施例>
図3は本発明の第3の実施例の差動伝送回路の送信回路10の一部を示す回路図である。本実施例では、送信回路10において、送端トランジスタQ11のコレクタを抵抗R11を介して電圧端子VCCに接続すると共に、キャパシタC11を介して電圧端子VG11に接続し、また、送端トランジスタQ12のコレクタを抵抗R12を介して電圧端子VCCに接続すると共に、キャパシタC12を介して電圧端子VG12に接続したものである。電圧端子VG11,VG12は、例えばGND端子である。
【0014】
このようにすると、送端トランジスタQ11,Q12のコレクタに直接ワイヤを介して電圧端子VCCを接続した場合に、ワイヤの寄生素子成分により発振現象の恐れがあったが、これを予防できる。
【0015】
なお、抵抗R11,R12とキャパシタC11,C12の一方は削除可能である。また、送端トランジスタQ11,Q12のコレクタを共通接続して、抵抗R11とR12を共通の1個の抵抗とし、キャパシタC11とC12を共通の1個のキャパシタとしても、同様の効果がある。
【0016】
<第4の実施例>
図4は本発明の第4の実施例の差動伝送回路の送信回路10の一部を示す回路図である。本実施例では、送信回路10において、送端トランジスタQ11のコレクタを抵抗R11を介して電圧端子VCCに接続し、その抵抗R11のコレクタと反対側の接続点をキャパシタC11介して電圧端子VG11に接続し、また、送端トランジスタQ12のコレクタを抵抗R12を介して電圧端子VCCに接続し、その抵抗R12のコレクタと反対側の接続点をキャパシタC12介して電圧端子VG12に接続したものである。このような構成も、第3の実施例と同様の作用効果を得ることができる。
【0017】
なお、送端トランジスタQ11,Q12のコレクタを共通接続して、抵抗R11とR12を共通の1個の抵抗とし、キャパシタC11とC12を共通の1個のキャパシタとしても、同様の効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施例の差動伝送回路の回路図である。
【図2】本発明の第2の実施例の差動伝送回路の回路図である。
【図3】本発明の第3の実施例の差動伝送回路の送信回路の一部の回路図である。
【図4】本発明の第4の実施例の差動伝送回路の送信回路の一部の回路図である
【図5】従来の差動伝送回路の回路図である。
【図6】アイパターンについて、(a)は送信信号の波形図、(b)は第1の実施例の受信信号の波形図である。
【図7】アイパターンについて、(a)は5GHzのノイズ重畳時の受信信号の波形図、(b)は100MHzのノイズ重畳時の受信信号の波形図である。
【符号の説明】
【0019】
10,10A:送信回路
20,20A:受信回路、21:入力バッファ
30,30A:差動伝送線路
40:集積回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信回路の第1、第2の送端トランジスタのエミッタと、受信回路の終端用の第1、第2の抵抗のそれぞれの片端との間に、差動伝送線路又は差動伝送配線を接続して構成した差動伝送回路において、
前記第1、第2の抵抗の各他端を、共通に、電流源に接続すると共に第3の抵抗の片端に接続し、該第3の抵抗の他端を第1のキャパシタを介して第1の電圧端子に接続したことを特徴とする差動伝送回路。
【請求項2】
請求項1に記載の差動伝送回路において、
前記送信回路の前記第1、第2の送端トランジスタ、前記差動伝送線路又は差動伝送配線、前記受信回路の前記第1、第2の抵抗、前記電流源、前記第3の抵抗、および前記第1のキャパシタを、1個の集積回路内に構成したことを特徴とする差動伝送回路。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の差動伝送回路において、
前記第1、第2の送端トランジスタのコレクタをそれぞれ第4、第5の抵抗を介して第2の電圧端子に接続し、および/又は前記第1、第2の送端トランジスタのコレクタをそれぞれ第2、第3のキャパシタを介して第3の電圧端子に接続したことを特徴とする差動伝送回路。
【請求項4】
請求項3に記載の差動伝送回路において、
前記第1、第2の送端トランジスタのコレクタを共通接続して、前記第4、第5の抵抗を共通の1個の抵抗とし、および/又は前記第2、第3のキャパシタを共通の1個のキャパシタとしたことを特徴とする差動伝送回路。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の差動伝送回路において、
前記第1、第2の送端トランジスタのコレクタをそれぞれ第4、第5の抵抗を介して第2の電圧端子に接続し、該第4、第5の抵抗の前記コレクタと反対側の端子を第2、第3のキャパシタを介して第3の電圧端子に接続したことを特徴とする差動伝送回路。
【請求項6】
請求項5に記載の差動伝送回路において、
前記第1、第2の送端トランジスタのコレクタを共通接続して、前記第4、第5の抵抗を共通の1個の抵抗とし、前記第2、第3のキャパシタを共通の1個のキャパシタとしたことを特徴とする差動伝送回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−283411(P2008−283411A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−125136(P2007−125136)
【出願日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】